(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】原子力環境において制御ドラム装置と併用可能な回転装置
(51)【国際特許分類】
G21C 7/14 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
G21C7/14 800
(21)【出願番号】P 2022202403
(22)【出願日】2022-12-19
(62)【分割の表示】P 2020529729の分割
【原出願日】2018-11-01
【審査請求日】2022-12-19
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ライオンズ、ジョン、エル
(72)【発明者】
【氏名】アラファト、ヤシール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・ウィク、ジュリエ
(72)【発明者】
【氏名】チェーニアク、ルーク、ディー
(72)【発明者】
【氏名】ヤンケル、ジェームズ、エル
(72)【発明者】
【氏名】ヘイゼル、マシュー、アール
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515191(JP,A)
【文献】特開平4-320993(JP,A)
【文献】特開平8-129093(JP,A)
【文献】特開平11-248450(JP,A)
【文献】特開2013-24758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力環境において制御ドラム装置(6、106)と併用可能な回転装置(4、104)であって、当該制御ドラム装置は、水平な回転軸(20、120)を中心として回転可能なシャフト(12、112)と、当該シャフト上に位置する反射材(16、116)と、当該シャフト上に位置する吸収材(18、118)と、通電されると当該シャフトを、当該反射材が当該原子力環境の炉心(22)に対向する運転位置と当該吸収材が当該炉心に対向する停止位置との間で回転させるように作動可能なモータ(24、124)とを有し、
当該回転装置は、
当該運転位置にある当該シャフトに、当該停止位置の方へ回転させる力を印加するように構成された回転機構(30、130)であって、当該モータが、通電状態にあるときは当該印加力に逆らう力を発生して当該シャフトが当該運転位置に保持されるようにするが、非通電状態のときは当該印加力に逆らう力を発生しないことを特徴とする回転機構(30、130)と、
回転制御システム(32、132)とを具備するものであり、
当該回転制御システムは、
当該シャフト(12、112)上に位置し、中実部(66、166)と多数の半径方向フィン(64)とを有する導電性構造体(60、160)と、
一対の磁石(54、154)とを具備するものであり、
当該シャフト(12、112)が当該運転位置にあることに応じて、当該一対の磁石(54、154)の間には当該フィン(64)が位置し、
当該シャフト(12、112)が当該停止位置にあることに応じて、当該一対の磁石(54、154)の間には当該中実部(66、166)が位置し、
当該中実部(66、166)が当該一対の磁石(54、154)の間の空間を通り抜けることに応じて当該中実部に渦電流が誘起されることにより、当該シャフト(12、112)の回転が遅くなる
ことを特徴とする回転装置(4、104)。
【請求項2】
前記回転機構(30)は、前記シャフトに接続され、前記シャフトが前記運転位置にあるときの第1の位置と前記シャフトが前記停止位置にあるときの第2の位置との間を回動できる構成を有するおもり(40)を備え、当該おもりは、当該第2の位置よりも当該第1の位置にあるときの方が垂直方向に高く、前記モータが非通電状態になると当該第1の位置から当該第2の位置へ重力によって回動可能であることを特徴とする、請求項1の回転装置。
【請求項3】
前記おもりは、重心(42)が前記回転軸から離隔するように前記シャフトに取り付けられた釣り合いおもりであり、前記シャフトに取り付けられた当該釣り合いおもりは、前記シャフトが前記運転位置にあるときの前記第1の位置と前記シャフトが停止位置にあるときの前記第2の位置との間を前記シャフトと共に回動可能な構成であることを特徴とする、請求項2の回転装置。
【請求項4】
前記重心は、前記第2の位置にあるとき、前記回転軸と垂直方向に一直線に並び、前記回転軸の下方に位置することを特徴とする、請求項3の回転装置。
【請求項5】
前記回転機構はさらに、一対の磁石(44)を含む回転始動器(34)を具備し、当該磁石対の一方は前記制御ドラム上に位置するように構成され、当該磁石対のもう一方は前記制御ドラムを支持する支持体(14)上に位置するように構成され、当該磁石対の磁石は、その両極が互いに反対向きになるように、また、前記シャフトが前記運転位置にあるときは前記制御ドラムを前記運転位置から離脱させる方へ付勢するように配置され、前記モータは、通電状態のときは当該磁石の付勢力に逆らう力を発生し、非通電状態のときは当該付勢力に逆らう力を発生しないことを特徴とする、請求項4の回転装置。
【請求項6】
前記回転機構はさらに、前記制御ドラムと、前記制御ドラムを支持する支持体(114)との間を延びるばね(133)を含む回転始動器(134)を具備し、当該ばねは、前記シャフトが前記運転位置にあるとき前記制御ドラムを前記運転位置から離脱する方へ付勢するように配置されており、前記モータは、通電状態のとき当該ばねの付勢力に逆らう力を発生し、非通電状態のときは当該付勢力に逆らう力を発生しないことを特徴とする、請求項1の回転装置。
【請求項7】
前記回転制御システムがさらに、前記停止位置にあるときは前記制御ドラムと係合する構成の固定止め具を具備する、請求項3の回転装置。
【請求項8】
前記回転機構が、前記運転位置にある前記シャフトに前記力を印加して前記シャフトを前記停止位置の方へ付勢するばね(133)を含む、請求項1の回転装置。
【請求項9】
前記回転制御システムがさらに、前記停止位置にあるときは前記制御ドラムと係合する構成の固定止め具を具備する、請求項8の回転装置。
【請求項10】
請求項1の回転装置であって、前記回転制御システムはさらに、第1の部分(68、168)および第2の部分(70、170)を有するロック(38、138)を備え、当該第1の部分は、前記制御ドラムおよび前記制御ドラムを支持する支持体(14、114)のうちの一方の上に位置するように構成され、当該第2の部分は、前記制御ドラムおよび当該支持体のうちのもう一方の上に位置するように構成され、当該ロックは、当該第1の部分および当該第2の部分が互いに固定された関係にある施錠位置と、当該第1の部分および当該第2の部分のうちの一方が当該第1の部分および当該第2の部分のうちのもう一方に対して移動可能である解錠位置との間で移動可能な構成であることを特徴とする、請求項1の回転装置。
【請求項11】
前記ロックが前記施錠位置にあるときは前記シャフトは前記停止位置にあり、前記施錠位置にある前記ロックは、前記シャフトを前記停止位置から離脱する方へ回転させないように構成されていることを特徴とする、請求項10の回転装置。
【請求項12】
前記第1の部分がボルトであり、前記第2の部分がボルト受けであり、前記施錠位置において当該ボルトが当該ボルト受けに嵌合し、前記解錠位置において当該ボルトが当該ボルト受けから離脱していることを特徴とする、請求項11の回転装置。
【請求項13】
前記ボルト受けが前記シャフトに形成された切欠きであり、前記支持体上に位置する前記ボルトが、前記ボルト受けに嵌合する第1の位置と前記ボルト受けから離脱した第2の位置との間を前記支持体上において移動可能であるように構成されている、請求項12の回転装置。
【請求項14】
前記ロックがさらに、前記支持体上に位置する構成のアクチュエータ(72、172)を具備し、前記ボルトが当該アクチュエータ上に位置し、当該アクチュエータが前記ボルトを前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動させるように作動できるように構成されている、請求項13の回転装置。
【請求項15】
炉心を有する原子力環境で使用可能であり、請求項1の回転装置を具備する制御ドラム装置(6、106)であって、当該制御ドラム装置が、
水平な回転軸(20、120)を中心として回転可能なシャフト(12、112)と、
当該シャフト上に位置する反射材と当該シャフト上に位置する吸収材とを有する制御ドラム(6、106)と、
通電されると、当該シャフトを当該反射材が当該炉心に対向する運転位置と当該吸収材が当該炉心に対向する停止位置との間で回転させるように作動可能なモータ(24、124)と
をさらに具備する制御ドラム装置(6、106)。
【請求項16】
原子力環境において制御ドラム装置(6、106)と併用可能な回転制御システム(32、132)であって、当該制御ドラム装置は、水平な回転軸(20、120)を中心として回転可能なシャフト(12、112)と、当該シャフト上に位置する反射材(16、116)と、当該シャフト上に位置する吸収材(18、118)と、通電されると当該シャフトを、当該反射材が当該原子力環境の炉心に対向する運転位置と当該吸収材が当該炉心に対向する停止位置との間で回転せるように作動可能なモータ(24、124)とを有し、
当該回転制御システムが渦電流制動器を有し、
当該渦電流制動器は、
当該シャフト(12、112)上に位置し、中実部(66、166)と多数の半径方向フィン(64)とを有する導電性構造体(60、160)と、
一対の磁石(54、154)とを具備するものであり、
当該シャフト(12、112)が当該運転位置にあることに応じて、当該一対の磁石(54、154)の間には当該フィン(64)が位置し、
当該シャフト(12、112)が当該停止位置にあることに応じて、当該一対の磁石(54、154)の間には当該中実部(66、166)が位置し、
当該中実部(66、166)が当該一対の磁石(54、154)の間の空間を通り抜けることに応じて当該中実部に渦電流が誘起されることにより、当該シャフト(12、112)の回転が遅くなり、
当該回転制御システムがさらに、
アクチュエータ(72、172)と、
当該アクチュエータ上に位置するボルト(68、168)とを有し、
当該アクチュエータが、当該ボルトを、当該停止位置にある当該シャフトと係合する第1の位置と当該シャフトと係合しない第2の位置との間で移動させるように作動可能であり、当該ボルトが当該第1の位置において当該シャフトを回転させないように構成されていること
を特徴とする回転制御システム。
【請求項17】
前記ボルトが前記第1の位置において、前記シャフトに形成されたボルト受け(70、170)に嵌合する、請求項16の回転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願において開示し特許請求する発明は概して原子力発電機器に関し、具体的には、原子力環境において制御ドラムと併用可能な回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連の技術分野において、核分裂炉には多くのタイプのあることが知られている。一般的に、そのような原子炉は、原子炉容器と、その内部に配置される或る量の核分裂性物質と、核分裂反応の反応度を制御する多数の制御構造とより成る。或る特定のタイプの原子炉では、この制御構造は制御棒の形をとる。そのような制御棒は、核分裂性物質の中に挿入する長さを増加させるとそれに応じて核分裂反応の反応度を次第に低下させる吸収材装置として機能する。
【0003】
この制御構造には、ほぼ円筒形の制御ドラムを枢動自在なシャフトに取り付けた別のタイプがある。制御ドラムは反射材と吸収材を含む。シャフトは、運転状態の原子力環境において反射材が原子力環境の炉心に対向するように、回転軸を中心として回転可能である。シャフトを吸収材が炉心に対向するように回転軸を中心として回転させると、原子炉が停止状態に導かれる。例えば、反射材は、運転状態では中性子を反射して炉心の方へ押し戻し、停止状態では中性子を吸収する。このタイプの制御ドラムは所期の目的達成に概して有効であるが、それなりの制約もある。
【0004】
そのような制御ドラムは、作動に電力を必要とするステッピングモータによって回転させるのが一般的である。原子炉の緊急停止が望まれる状況で、ステッピングモータを作動させ制御ドラムを停止位置へ移動させるための電力が喪われると、破局的な状況に陥る虞がある。また、原子力環境を或る場所から別の場所へ物理的に輸送できる場合には、原子炉の意図しない起動を防止するために、制御ドラムの吸収材を確実に炉心に対向させるのが望ましい。制御ドラムの反射材が、不測の事態により、炉心に完全にまたは部分的に対向する位置に移動した場合、そうした原子炉の意図しない起動が起こる可能性がある。制御ドラムを制御するステッピングモータは一般的に、反射材が炉心と対向しないように制御ドラムの配向を維持することができるが、そのようなステッピングモータへの電力の供給が喪われると、制御ドラムが制御不能になる可能性があり、或る場所から別の場所への原子力環境の輸送はそうした電力喪失の有意な可能性を伴う。したがって、改善策が望まれる。
【発明の概要】
【0005】
原子力環境において制御ドラムと併用可能な改良型回転装置について説明する。当該制御ドラムは、水平な回転軸を中心として回転可能なシャフトに取り付けられ、吸収材と反射材とを含む。当該回転装置は、運転位置にある当該シャフトに、停止位置の方へ回転させる力を印加する構成の回転機構を含み、モータが通電状態のときはこの印加力に逆らう力を当該モータが発生して、当該シャフトが当該運転位置に保持されるようにする。当該モータは、非通電状態のときは、この印加力に逆らう力を発生しない。当該回転装置は、当該シャフトの回転を抑制する回転制御システムをさらに含む。
【0006】
したがって、本願において開示し特許請求する発明の一局面は、制御ドラムを運転位置から停止位置へ移動させるための電力の供給が喪われた場合に作動できる回転装置を提供することである。
【0007】
本願において開示し特許請求する発明の別の局面は、電力の供給が喪われても当該制御ドラムを当該停止位置へ迅速に移動させる回転装置を提供することである。
【0008】
本願において開示し特許請求する発明の別の局面は、原子力環境を或る場所から別の場所へ輸送する状況下で電力の供給が喪われた場合でも、当該制御ドラムを当該停止位置に保持することができる回転装置を提供することである。
【0009】
したがって、本願において開示し特許請求する発明の一局面は、原子力環境において、水平な回転軸を中心として回転可能なシャフトと、当該シャフト上に位置する反射材と、当該シャフト上に位置する吸収材と、通電されると当該シャフトを、当該反射材が当該原子力環境の炉心に対向する運転位置と当該吸収材が当該炉心に対向する停止位置との間で回動させるように作動可能なモータとを有する制御ドラム装置と併用可能な改良型回転装置を提供することである。当該回転装置は、概して、当該運転位置にある当該シャフトに、当該停止位置の方へ回転させる力を印加する構成の回転機構であって、当該モータが、通電状態にあるときは当該印加力に逆らう力を発生して当該シャフトが当該運転位置に保持されるようにするが、非通電状態にあるときは当該印加力に逆らう力を発生しないことを特徴とする回転機構と、当該シャフトが当該停止位置にあるときは当該シャフトを回転させないように構成された回転制御システムとを含むと言える。
【0010】
本願において開示し特許請求する発明の他の局面は、原子力環境において、水平な回転軸を中心として回転可能なシャフトと、当該シャフト上に位置する反射材と、当該シャフト上に位置する吸収材と、通電されると当該シャフトを、当該反射材が当該原子力環境の炉心に対向する運転位置と当該吸収材が当該炉心に対向する停止位置との間で回動させるように作動可能なモータとを有する制御ドラム装置と併用可能な改良型回転制御システムにより提供される。当該回転制御システムは、概して、アクチュエータと、当該アクチュエータ上に位置するボルトとを有し、当該アクチュエータが、当該ボルトを、当該停止位置にある当該シャフトと係合する第1の位置と当該シャフトと係合しない第2の位置との間で移動させるように作動可能であり、当該ボルトが当該第1の位置にあるときは当該シャフトを回転させないように構成されていると言える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本願において開示し特許請求する発明の詳細を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0012】
【
図1】本願において開示し特許請求する発明の第1の実施態様に基づく、改良型回転装置を有する改良型制御ドラム装置を、運転位置にある状態で示す斜視図である。
【0013】
【
図2】制御ドラム装置が停止位置にある点を除き、
図1に類似する図である。
【0014】
【
図3】
図1の制御ドラム装置の一部を示す図である。
【0015】
【
図4】制御ドラム装置の一部が停止位置にある点を除き、
図3に類似する図である。
【0016】
【
図5】
図1の制御ドラム装置の別の部分を示す図である。
【0017】
【
図6】制御ドラム装置の別の部分が停止位置にある点を除き、
図5に類似する図である。
【0018】
【
図7】本願において開示し特許請求する発明の第2の実施態様に基づく、改良型回転装置を有する別の改良型制御ドラム装置を、運転位置にある状態で示す斜視図である。
【0019】
【
図8】
図7の別の制御ドラム装置の一部を示す図である。
【0020】
【
図9】別の制御ドラム装置の一部が停止位置にある点を除き、
図8に類似する図である。
【0021】
【
図10】
図7の別の制御ドラム装置の別の部分を示す図である。
【0022】
【
図11】別の制御ドラム装置の別の部分が停止位置にある点を除き、
図10に類似する図である。
【0023】
同じ参照番号は、本明細書を通して同じ部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願において開示し特許請求する発明の第1の実施態様に基づく改良型回転装置4を、改良型制御ドラム装置6の一部として
図1、2に示す。制御ドラム装置6は、原子炉および原子力発電所を非限定的な例とする原子力環境8の一部である。
【0025】
図1、2からわかるように、制御ドラム装置6は回転装置4のほかに、制御ドラム10と、制御ドラム10を取り付けたシャフト12とを含むと言える。原子力環境8は、シャフト12を回転自在に支持する支持体14を含む。制御ドラム10は、原子力環境8において、中性子を反射するように構成された反射材16と、中性子を吸収するように構成された吸収材18とを含むと言える。シャフト12は、支持体14とシャフト12との間に接続されたステッピングモータ24の作動により、回転軸20を中心として回転することができる。
【0026】
ステッピングモータ24を電気的に作動させることで、シャフト12およびその上に位置する制御ドラム10を、
図1に略示するような運転位置と
図2に略示するような停止位置との間で回転させることができる。
図1の運転位置では、反射材16が概して原子力環境8の炉心22に対向するため、炉心22内の核分裂反応の反応度が高まる。
図2の停止位置では、吸収材18が概して炉心22に対向するため、中性子が吸収されて核分裂反応の反応度が低くなる。
【0027】
制御ドラム装置6は、前述のステッピングモータ24に加えて、ステッピングモータ24またはシャフト12に接続され、回転軸20を中心とするシャフト12の回転運動を表す一連のパルスを出力するエンコーダ27を含む。このパルスは、炉心22および/または他の構造体に対する制御ドラム10の回転位置を継続的に把握するために、制御ドラム装置6の制御システムによって検知される。
【0028】
例示する実施態様において、回転軸20の配向は、参照符号26で表すように水平方向である。この水平方向26は、参照符号28で表す垂直方向と直交することがわかる。
【0029】
回転装置4は、回転機構30および回転制御システム32を含むと言える。以下に詳述するように、回転機構30は、運転位置において、シャフト12を停止位置の方へ付勢するように当該シャフトに力を印加する。ステッピングモータ24は、通電中であれば、この付勢力に逆らう力を発生させる。ステッピングモータ24への電力の供給が喪われるなどしてステッピングモータ24が非通電状態になると、この付勢力に逆らう力が消滅するため、シャフト12が回転機構30の付勢力により
図1の運転位置から
図2の停止位置へ回転する。ここでは「力」という用語を用いているが、回転可能なシャフト12にかかるそのような力の発生源は回転軸20から少し離れたところにあり、その結果、シャフト12にトルクが発生するから、この「力」という用語は、回転軸12の文脈において、「トルク」という用語と同じ意味で使用できることがわかる。
【0030】
以下に詳述するように、回転制御システム32は、回転始動器34、渦電流制動器36およびロック38を含むと言える。同様に以下に詳述するように、回転始動器34は、シャフト12の回転を、
図1、3、5に略示する運転位置から離脱する方へ始動させる。渦電流制動器36は、シャフト12が停止位置に近づくにつれて当該シャフト12の回転速度を抑制する。ロック38は、シャフト12が停止位置から回転して離脱しないようにする。
【0031】
図1~4から理解できるように、回転機構30は、回転軸20から離隔した位置に重心42を有するおもり40を含むと言える。おもり40は、シャフト12に固着され、シャフト12と共に運転位置と停止位置との間を移動する。重心42が回転軸20から離隔した位置にあるため、おもり40は、シャフト12に、重力の作用によって、回転軸20からの重心42の離隔位置に応じたトルクを加える釣り合いおもりであると言える。例えば、
図1、3に示すように、シャフト12が運転位置にあり、重心42が回転軸20の垂直方向直上に位置するときは、シャフト12にかかるおもり40の力は垂直下向きの力に限られるため、シャフト12にトルクはかからない。そのような状況では、おもり40は回転軸20の上方で釣り合う状態にあると言える。しかし、重心42が回転軸20の直上位置から離脱すると、回転軸20と重心42との間の水平方向26の距離が、おもり40がシャフト12に力を及ぼす位置の回転軸20からの離隔距離となり、シャフト12にトルクがかかる。
【0032】
したがって、回転始動器34は、ステッピングモータ24が非通電状態で運転停止が必要な事態になると、シャフト12の回転を始動して、
図1、3の運転位置から停止位置の方へシャフト12を回転させる。詳説すると、
図3、4からわかるように、回転始動器34は参照番号44A、44Bで表す(集合的または個別に参照符号44で表すことがある)一対の永久磁石を含む。永久磁石44はそれぞれ、互いに反対側にあるN極46およびS極48を含む。永久磁石44Aは、支持体14に取り付けた支柱50上に、また、永久磁石44Bは、おもり40に形成した磁石受け52内に位置する。永久磁石44は、シャフト12が
図3の運転位置にあるとき、N極46とS極48が互いに反発するような向きに配置構成されている。
【0033】
この点に関して、おもり40は、シャフト12が運転位置にあるときは、
図3に略示するような第1の位置にあり、シャフト12が停止位置にあるときは、
図4に略示するような第2の位置にあると言える。互いに磁気反発力を及ぼしあう永久磁石44が平衡状態になる状況の発生を回避するため、シャフト12が運転位置にあるときの永久磁石44A、44Bの相対位置を実際には若干ずらして、平衡状態が生じないようにする。その結果、永久磁石44によりシャフト12を停止位置の方へ付勢する別のトルクが発生するが、このトルクは、ステッピングモータ24が、通電状態にある間は、打ち消す。永久磁石44A、44Bの相対位置のずれは、シャフト12の回転角にして約5~8度であるが、これは、永久磁石の相対位置が、シャフト12が運転位置から、場合に応じて、5~8度回転すると、互いに完全に対向するような関係にあることを意味する。
図1、3に略示するように、シャフト12が運転位置にあり、おもり40が第1の位置にあるとき、永久磁石44はすでに、互いに回転角にして約5~8度ずれた状態にあるため、ステッピングモータ24への電力の供給が喪われるやいなや、磁石の相互反発力が、シャフト12を当初の5~8度の回転角からさらに停止位置の方へ回転させる。
【0034】
図1~4からわかるように、おもり40の重心42は、垂直方向28で見ると、第1の位置(
図1、3)のほうが第2の位置(
図2、4)よりも高い。シャフト12は水平方向26と平行であるため、おもり40の位置エネルギーは、第1の位置の方が第2の位置より大きく、そのような比較的大きいエネルギーが、制御ドラム10を取り付けたシャフト12を運転位置から停止位置へ回転させるにあたり利用される。おもり40が例示的な第2の位置(
図2および4)にあるとき、重心42は回転軸20の垂直下方に位置するので、第2の位置における重心42と第1の位置における重心42は互いに垂直方向28において一直線に並ぶ。
【0035】
したがって、通電状態にあるステッピングモータ24は、おもり40が第1の位置にあるとき、永久磁石44の相互反発力がシャフト12を付勢する力に逆らう力を発生するため、シャフト12は運転位置に保たれる。しかし、ステッピングモータ24が非通電状態になると、永久磁石44によるこの付勢力がシャフト12の回転を始動して、おもり40を第1の位置から第2の位置の方へ移動させる。重心42が回転軸20から水平方向26にずれ始めるや否や、おもり40に作用する重力がシャフト12を引き続き回転させるため、おもり40が第2の位置、すなわちシャフト12の停止位置へ到達する。このように、ステッピングモータ24への電力の供給が喪われると、おもり40に作用する重力によってシャフト12が停止位置へ回転する。
【0036】
しかし、時として運転を緊急に停止する必要がある状況では、シャフト12をできるだけ迅速に
図2の停止位置へ移行させることが望ましい。そのような停止位置への移行は、例えばシャフト12が停止位置を越えて回転したあと最終的に停止位置に落ち着くまで前進後進を繰り返さないようにすることが望ましい。このため、シャフト12が停止位置に近づくとシャフトの回転速度を調節する渦電流制動器36が提供される。
【0037】
詳説すると、渦電流制動器36は参照符号54A、54Bで表す(集合的または個別に参照符号54で表すことがある)一対の永久磁石を含む。永久磁石54は、それぞれN極56とS極58を有し、N極56のうちの1つがS極58のうちの1つと対向するように支持体14上に配置され、このため、永久磁石54は互いに引き合う。渦電流制動器36はまた、シャフト12と共に回転するように当該シャフトに取り付けられたはずみ車60を含む。はずみ車60は、例えばアルミニウム、銅、鋼、または他の適当な導電性材料から作られる。はずみ車60は、多数の切欠き62の間に形成した多数の半径方向フィン64と、切欠き62のない中実部66とを有する。本願で用いる表現「多数の」およびその変化形は、広義には、1を含む任意の数量(ゼロは除く)を指す。
【0038】
おもり40が
図3の第1の位置にあるとき、フィン64の一部は永久磁石54の間に位置し、中実部66は永久磁石54の間の空間から垂直方向28において上方に離隔したところにある。シャフト12が
図3の運転位置から
図4の停止位置に向けて回転すると、一連のフィン64が順次、永久磁石54の間の空間を通り抜ける。中実部66が永久磁石54の間を通過し始めると、永久磁石54の磁場(前述のようにN極56とS極58は互いに引き合う配置構成である)によって中実部66に渦電流が誘起される。レンツの法則によると、中実部66に誘起される渦電流は永久磁石54の磁場とは反対向きの独自の磁場を形成するため、そのような反対方向の磁場によってシャフト12の回転速度が遅くなる。フィン64は中実部66に比べて周方向の広がりが小さいので、フィン64には有意な大きさの渦電流は誘起されない。
【0039】
永久磁石54の間で中実部66を回動させてシャフト12を制動すると、シャフト12の回転が遅くなるため、シャフト12をおもり40の重心42が垂直方向で最も低くなるところに位置決めすることができる。すなわち、渦電流制動器36によって中実部66にかかる制動力は、シャフト12およびそれに固着した中実部66の回転速度により直接決まる。シャフト12の回転速度が遅くなると、磁場による制動力がそれに応じて減少するため、おもり40は、重心42が回転軸20の垂直下方にある最も低い位置へ、その位置を越えたあとでその位置に自然に落ち着くまで前進後進を繰り返したりすることなく、回動する。もっと正確に言えば、中実部66の速度に応じた永久磁石54の磁場による制動力が中実部66の回動を遅くするため、中実部66がゆっくり回動して到達するのは、本質的に、おもり40に作用する重力が、おもり40を重心42が最も低くなる位置に保持する点であり、重心42がその最も低くなる位置を越えることはない。このため、シャフト12は、運転位置から停止位置へ、停止位置の前後で前進後進を繰り返すことなく、迅速に移行し、原子力環境8が迅速に停止するという望ましい結果が得られる。
【0040】
前述のように、回転制御システム32は、
図1、2および
図5、6に略示するロック38をさらに含む。ロック38は、第1の部分を構成すると言えるボルト68と、第2の部分を構成すると言える、シャフト12の表面に形成したボルト受け70とを含む。ロック38はさらに、支持体14に取り付けた線形アクチュエータの形のアクチュエータ72を含む。この線形アクチュエータは、ボルト68を、ロック38の施錠位置に対応する第1の位置(例えば
図6に略示)と、ロック38の解錠位置に対応する第2の位置(例えば
図5に略示)との間で移動させるように作動可能である。
【0041】
アクチュエータ72は電動であるが、ボルト68は、アクチュエータ72が通電されない限り第1の位置と第2の位置との間で移動することはない。したがって、シャフト12を施錠状態にしたければ、シャフト12を停止位置まで回転させ、アクチュエータ72に通電してボルト68を
図5の第2の位置から、
図6に示す、ボルト68がボルト受け70に嵌合する第1の位置へ線形移動させる。ボルト68は、ボルト受け70に嵌合すると停止位置から離脱しようとするシャフト12の回動を抑制する。アクチュエータ72が通電状態か非通電状態かに拘わらず、ボルト68は第1の位置に留まる。したがって、シャフト12は、アクチュエータ72が通電状態にあるか否かに拘わらず、例えば原子力環境8の輸送時に施錠状態に保持される。シャフトの解錠が望まれる場合、アクチュエータ72を通電状態にしてボルト68を
図6の第1の位置から
図5の第2の位置に戻し、ステッピングモータ24を通電状態にしてシャフト12を
図6の停止位置から
図5の運転位置へ回転させる。
【0042】
したがって、ステッピングモータ24の電源を喪失した場合に、回転装置4は制御ドラム装置6を運転位置から停止位置へ回転できることがわかる。さらに、ロック38は、ボルト68が
図6の第1の位置に移動した後、アクチュエータ72が引き続き通電状態にあるか否かに拘わらず、シャフト12を
図6の施錠位置に保持する。このような特徴の組み合わせは、有利なことに、ステッピングモータ24への電力の供給が喪われた場合でも必要に応じて原子力環境8を迅速に停止したり、アクチュエータ72への給電が可能か否かに拘わらずロック38によって原子力環境8を停止位置に保持したりするのを可能にする。他の恩恵も自明である。
【0043】
改良型制御ドラム装置106を
図7に示し、その一部を
図8~11に示す。制御ドラム装置106は、本願において開示し特許請求する発明の第2の実施態様に基づく改良型回転装置104を含む。制御ドラム装置106は、支持体114上に回転自在に支持されたシャフト112に取り付けた制御ドラム110が反射材116と吸収材118を含み、シャフト112がステッピングモータ124の作動により回転軸120を中心として回転できる点で、制御ドラム装置6と類似している。回転装置104と回転装置4の相違点は、回転機構130および回転制御システム132が回転機構30および回転制御システム32とは異なることである。
【0044】
詳説すると、回転機構130は、支持体114とシャフト112との間を延びるばね133を含む。
図8の運転位置において、このばね133の撓みによる弾性力は、シャフト112を
図8の運転位置から
図9の停止位置の方へ付勢するが、通電時のステッピングモータ124がこの弾性力に逆らう力を発生させる。ばね133は、ステッピングモータ124が非通電状態になると、シャフト112を
図8の運転位置から
図9の停止位置へ回転させるに必要な力、すなわちトルクをシャフト112に加える。したがって、ばね133には、回転制御システム132の回転始動器134としての機能もある。
【0045】
回転装置104はさらに、フライホイール160と協働できる渦電流制動器136を含む。この渦電流制動器136は、フライホイール160の中実部166が渦電流制動器136の一対の永久磁石154の間に位置するとき、すなわちシャフト112が停止位置に到達しようとするときに、シャフト112の回転速度を遅くする。
【0046】
例示する実施形態において、ばね133は、
図9の停止位置では弾性力を発生させるたわみのない自由な状態である。シャフト112が停止位置に到達しようとするとき、渦電流制動器136は、フライホイール160に対してシャフト112の回転速度を減らすように作用するため、シャフト112は、ばね133が弾性力を発生させるたわみのない自由な状態にある停止位置に落ち着く。このため、シャフト112が
図9の停止位置を越えたり、停止位置の近くで前進後進を繰り返したりすることがなく、シャフト112を停止位置に迅速に回動させて、制御ドラム装置106が配置された原子力環境108を停止できるという利点が得られる。
【0047】
しかしながら、回転機構130または回転制御システム132若しくはその両方が、例えば、シャフト112から半径方向に突出する構造体と、支持体114上に固定された止め具とを含む別の実施形態があることを理解されたい。このような幾何学的構成では、シャフト112が停止位置にあっても、ばね133が依然として弾性的に変形した状態にあり、半径方向に突出する構造体が固定止め具に対して付勢されて、シャフト112が
図9の停止位置に保持されるようにすることができる。この点に関して、かかるばねを、そのような半径方向に突出する構造体および固定止め具と組み合わせて用いると、渦電流制動器136が不要になる可能性があることがわかる。そのようなシナリオは完全に実現可能である。しかしながら、シャフト112が停止位置に到達するときのシャフト112の回転速度は不明である場合があり、半径方向に突出する構造体が固定止め具に当接して跳ね返り、シャフト112が或る程度前後に回動を繰り返す可能性があることがわかる。したがって、渦電流制動器136は、そのような半径方向に突出する構造体および固定止め具と組み合わせて使用する価値がある。
【0048】
回転制御システム132はさらに、アクチュエータ172、ボルト168およびボルト受け170を含むロック138を具備する。詳説すると、アクチュエータは、支持体114の第1のブラケット172上に位置する線形ステッピングモータ176と、支持体114の第2のブラケット178上に位置する回転自在な座部180と、ステッピングモータ176と回転自在な座部180との間を延びる螺設シャフト182とより成る。螺設シャフト182上には、ボルト168が固着された螺設カラー184が螺合している。
【0049】
ステッピングモータ176は、通電状態のとき、螺設シャフト182を回転させるが、この回転により、螺設カラー184が、それに固着されたボルト168と共に、第1のブラケット174と第2のブラケット178との間を螺設シャフト182に沿って無回転で並進する。すなわち、螺設シャフト182が回転すると、螺設カラー184は、シャフト182と共に回転せず、シャフト182に沿って無回転で並進する。したがって、アクチュエータ172を電気的に作動して、ボルト168を、ロック138の施錠位置(例えば
図11に略示)である第1の位置と、ロック138の解錠位置(例えば
図10に略示)である第2の位置との間で移動させることができる。ロック138が施錠位置にあるとき、ボルト168は、ボルト受け170に嵌合した状態にあり、シャフト112が回転して
図11の停止位置から離脱しないようにする。ロック138が解錠位置にあるとき、ボルト168はボルト受け170から離脱した状態にあるため、シャフト112は
図11の停止位置と
図10の運転位置との間を回転することができる。
【0050】
アクチュエータ172は電力が供給されない限り動作を停止するので、例えば制御ドラム装置106を配置した原子力環境108の輸送中に、アクチュエータ172への電力供給の有無にかかわらずシャフト112を停止位置に保持すると共に、ロック138が施錠位置にある状態でアクチュエータ172への電力の供給を停止することが可能である。このようにすると、シャフト112が停止位置に保持されるため、原子力環境108の意図しない起動が回避されるという利点がある。さらに、回転機構130および回転制御システム132は、ステッピングモータ124への電力の供給が停止した状況で、シャフト112を運転位置から停止位置へ非常に短時間で回転させる。これにより、制御ドラム160が配置された原子力環境108の迅速な停止が可能になる。
【0051】
回転装置104に関して本明細書に含まれるあらゆる教示事項は、本発明の趣旨から逸脱することなく、回転装置4に実装できることを理解されたい。この点に関して、本願のあらゆる教示事項を如何なる様式で組み合わせても、本発明の範囲内の有利な回転装置を実現することができる。その他の変形例についても自明である。
【0052】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。