(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】皮膚状態改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20231110BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20231110BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231110BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231110BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231110BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20231110BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P17/10
A61P17/00 101
A61K47/26
A61K47/36
A61K8/99
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2022505481
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 KR2020002018
(87)【国際公開番号】W WO2021162145
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-01-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Journal of Nutrition and Health(2019),52(2),149-156頁に、「Dietary effect of Lactobacillus plantarum CJLP55 isolated from kimchi on skin pH and its related biomarker levels in adult subjects(翻訳:キムチ乳酸菌Lactobacillus plantarum CJLP55摂取が成人男女の皮膚酸度及び関連構成因子の変化に及ぼす影響)」として公開
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 11401BP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ユン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ソン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・オ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ヒ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヘ・シン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-533319(JP,A)
【文献】特開2008-179601(JP,A)
【文献】特開2017-190327(JP,A)
【文献】特表2019-522649(JP,A)
【文献】特開2010-047504(JP,A)
【文献】特開2010-215641(JP,A)
【文献】特表2012-533290(JP,A)
【文献】Korean J Physiol Pharmacol,2017年,Vol. 21, No. 3,pp. 335-343
【文献】Journal of Applied Microbiology,2011年,Vol. 110,pp. 1195-1202
【文献】森下美香 ほか,漬物由来乳酸菌Lactobacillus plantarum TK61406の摂取が腸内環境、肌状態および集中力に及ぼす影響,日本農芸化学会2017年度大会講演要旨集,2017年03月05日,講演番号:3A07a02
【文献】International Journal of Cosmetic Science,2010年,Vol. 32,pp. 139-142
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/747
A61K 8/9728
A61K 8/99
A23L 33/135
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルスプランタルムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)又はこの培養液を含む、皮膚状態改善用組成物であって、
前記皮膚状態の改善は
、ニキビの改
善である、皮膚状態改善用組成物。
【請求項2】
前記ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液は、3重量%~15重量%の含量で含まれるものである、請求項1に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項3】
前記組成物は、マルトデキストリン及びブドウ糖をさらに含むものである、請求項1に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項4】
前記組成物は、経口投与用であるものである、請求項1に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項5】
前記組成物は、皮脂内の中性脂肪、コレステロール、コレステロールエステル及び遊離脂肪酸からなる群から選択される一つ以上を減少させるか、セラミドを増加させるものである、請求項1に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属又はスタフィロコッカス(Staphylococcus)属微生物に対する抗菌活性を有するものである、請求項1に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項7】
前記プロピオニバクテリウム属微生物は、プロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)である、請求項6に記載の皮膚状態改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液を含む皮膚状態改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の健康を改善し、皮膚の美しさを整えるために、皮膚表面に塗る化粧品などを用いた、いわゆるアウタービューティー(outer beauty)にのみ焦点を合わせた既存の認識に加えて、最近は、多様な素材及び製品の摂取によるインナービューティー(inner beauty)に対する関心が高まっている。皮膚表面で発生するニキビ、皮膚炎などの皮膚トラブルは、皮脂分泌の増加、毛嚢の過剰角質化、皮膚有害菌の集落形成、炎症の発生などにより誘発されると知られており、このような皮膚トラブルの根本的な原因解決に関連し、胃腸関係と皮膚との間の相関関係に対する理論である「腸-皮膚軸(gut-skin axis)」に対する研究も進められている。
【0003】
一方、多様な発酵食品で発見され、健康に有益な微生物として知られた乳酸菌を、皮膚健康の改善のための目的で利用しようとする試みと研究があった。乳酸菌の培養液やこれを含む組成物を皮膚に塗布するなどの方法で適用して化粧料として用いた時、皮膚に生息する有害菌に対して抗菌活性を有するという点や、皮膚のしわ、老化の改善効果があるという点に対する研究結果はあった。しかし、乳酸菌を皮膚に直接適用することなく、これを摂取した時、皮膚状態への影響に対しては知られておらず、研究が行われたことがない。
【0004】
そこで、本出願の発明者は、プロバイオティクスとして機能することができ、健康に役立ちながらも、さらに皮膚状態を改善する効能があり、他の菌株に比べて皮膚有害菌の生育阻害をより顕著に示すことができる、乳酸菌菌株の新たな効果と用途を見出したことにより、本出願の発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、ニキビのような皮膚トラブルの発生と進行を抑制し、皮膚の油分は減少させながらも保湿を維持することができる皮膚状態改善用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、前記目的を達成するために、ラクトバチルスプランタルムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)又はこの培養液を含む、皮膚状態改善用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本出願の皮膚状態改善用組成物は、プロピオニバクテリウム属のような皮膚有害菌に対する生育抑制効果に基づいて、ニキビの重症度を改善させ、皮膚の油分、皮脂を減少させ、水分の量を維持させながら皮膚の酸度を改善することにより、皮膚状態を改善することができ、皮膚トラブルの発生と進行を抑制することができるという長所がある。
【0008】
ただし、本出願の効果は、前記で言及した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は、下記記載から当業者に明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1a】人体適用試験において、乳酸菌(ラクトバチルスプランタルムCJLP55)摂取群と偽薬群の対象者に、各食品を12週間摂取させた後測定した油分が改善した対象者の数を比べたものであって、油分が30%以上改善した対象者の数を比べたグラフである。各グラフの左側はITT、右側はPP分析の結果を意味する。
【
図1b】人体適用試験において、乳酸菌(ラクトバチルスプランタルムCJLP55)摂取群と偽薬群の対象者に、各食品を12週間摂取させた後測定した油分が改善した対象者の数を比べたものであって、油分が50%以上改善した対象者の数を比べたグラフである。各グラフの左側はITT、右側はPP分析の結果を意味する。
【
図2】人体適用試験において、皮膚菌叢の塩基配列を分析してITT(
図2のA)及びPP(
図2のB)分析の結果をプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属微生物の各種(species)の割合を示したグラフである。両グラフのいずれも、P.acnesは94%、P.unassignedは5%、P.granulosumは1%で示された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本出願を具体的に説明する。
【0011】
本出願は、ラクトバチルスプランタルムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)又はこの培養液を含む、皮膚状態改善用組成物を提供する。
【0012】
本出願での用語「培養液」は、菌株を培養して得た培養液自体、又は菌株を除去して得た培養上清液、そしてこれらの濾過物、濃縮物、又は乾燥物を意味するものであって、「培養上清液」、「条件培養液」又は「調整培地」と混用して使用されてよい。
【0013】
本出願での用語「改善」は、症状の好転、抑制、又は遅延を含む全ての行為を意味するものであって、予防又は治療と混用して使用されてよい。
【0014】
前記予防は、組成物を対象体に投与して該当疾病を抑制させるか、発病を遅延させる全ての行為であってよく、前記治療は、組成物を対象体に投与して既感染された該当疾病の症状を好転させる全ての行為であってよい。
【0015】
本出願での用語「皮膚状態の改善」は、美容的側面、又は医学的側面に関係なく皮膚状態を改善する全ての行為を意味するものであって、皮膚健康の改善又は過敏皮膚状態の改善と混用して使用されてよい。
【0016】
前記ラクトバチルスプランタルムCJLP55は、乳酸菌の一種あって、グラム陽性菌であり、好気的/嫌気的な条件で全て成長の可能な特徴がある。具体的には、寄託番号KCTC11401BP(寄託機関:生命工学研究院遺伝子銀行、寄託日:2008.10.16)に寄託された微生物であってよく、例えば、キムチ、野菜発酵物、味噌、醤油、チョングッチャン、塩辛などの発酵食品から分離されてよい。前記ラクトバチルスプランタルムCJLP55は、胃酸に対する耐酸性、胆汁酸に対する耐胆汁酸性、及び腸上皮細胞付着性に優れた特性があるため、人を含む動物の胃腸管内で腸内菌叢に有益な影響を及ぼすことができるので、プロバイオティクス(probiotics)として用いることができる。
【0017】
前記培養液は、前記ラクトバチルスプランタルムCJLP55を培養して得るものであって、前記乳酸菌細胞を含む培養液自体であるか、又は乳酸菌細胞を除去して得た培養上清液であってよく、また、これらの濾過物、濃縮物、又は乾燥物であってよい。前記乳酸菌細胞の除去された培養液は、ラクトバチルスプランタルムCJLP55により生産、分泌される成分を含み、これにより皮膚状態の改善活性を有するものであってよい。
【0018】
前記濾過物は、ラクトバチルスプランタルムCJLP55の培養液から浮遊する固体粒子を除去することにより、沈殿物を除いた水溶性の上澄液のみを得るものであって、綿、ナイロンなどのフィルター、例えば、0.2um~5umのフィルターを用いて粒子を濾過するか、冷凍濾過法、遠心分離法などを使用することができるが、これに制限されない。
【0019】
前記濃縮物は、前記培養液の固形分濃度を高めるものであって、前記乳酸菌細胞を含む培養液の濃縮物であるか、乳酸菌細胞を除去した培養上清液の濃縮物であってよい。前記濃縮物は、真空濃縮、板型濃縮、薄膜濃縮などにより濃縮されたものであってよいが、これに制限されず、例えば、公知の濃縮機を用いて40℃~60℃の温度で行うことができる。前記濃縮物の濃度に応じて、本出願の組成物に含まれる培養液の含量を適宜調節することができる。
【0020】
前記乾燥物は、凍結乾燥、真空乾燥、熱風乾燥、噴霧乾燥、減圧乾燥、泡沫乾燥、高周波乾燥、赤外線乾燥などの方法により乾燥したものを含むが、これに制限されない。例えば、ラクトバチルスプランタルムCJLP55細胞を含む培養液を凍結乾燥させた凍結乾燥物を用いる場合、これを含む組成物を経口摂取するか、剤形化、包装、保管するなどにおいて有利な長所があり、前記菌株を長期間保存することができるため、本出願の組成物が投与された対象体内、特に腸内で凍結乾燥された前記菌株が再び正常な生理的活性を示し、成長及び物質代謝を行うことができるという長所がある。
【0021】
前記ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液は、本出願の組成物内に3重量%~15重量%の含量で含まれてよい。具体的には、前記ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液は、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、5.5重量%、6重量%、6.5重量%、及び7重量%から選択された一つの下限及び/又は15重量%、14重量%、13重量%、12重量%、11重量%、10.5重量%、10重量%、9.5重量%、及び9重量%から選択された一つの上限で構成された範囲の含量で含まれてよい。一例として、3~15重量%、3.5~14重量%、4~13重量%、4.5~12重量%、5~11重量%、5.5~10.5重量%、6~10重量%、6.5~9.5重量%、又は7~9重量%の含量であってよい。ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液の含量が前記範囲内の場合、摂取時に腸内で有益な乳酸菌の増殖、有害菌の抑制、排便活動の円滑などの機能をすることができ、皮膚状態の改善効果を十分に改善することができながらも、本出願の組成物を摂取しようとする際に、味と香りの側面で拒否感を感じない可能性がある。
【0022】
前記組成物は、マルトデキストリン及びブドウ糖をさらに含んでよい。前記マルトデキストリン及びブドウ糖は、賦形剤として含まれるものであってよい。前記組成物は、本出願の組成物に含まれたラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液による皮膚状態の改善効果を阻害しないものであれば、本出願の技術分野で通常賦形剤として使用され得る如何なる成分であっても制限なしに含まれてよい。前記マルトデキストリン及びブドウ糖は、本出願の組成物に含まれるにつれて、これを摂取する人の表皮細胞及び/又は皮脂腺から遊離脂肪酸の分泌を抑制する効果を示すことができる。前記マルトデキストリン及びブドウ糖の含量は、前記ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液による皮膚状態の改善効果を阻害しない水準で制限なしに設定されてよく、例えば、前記マルトデキストリンは、本出願の組成物内に前記ブドウ糖と同量で含まれてよい。
【0023】
本出願の組成物は、経口投与用であってよい。前記「経口投与用」は、本出願の組成物が人又は動物の口腔を介して投与/摂取されるように用いられることを意味し、これにより、本出願の組成物は、医薬品又は食品の形態で用いられてよい。前記組成物が経口投与される場合、ここに含まれたラクトバチルスプランタルムCJLP55は、人又は動物の胃腸管内でプロバイオティクスとして機能することができ、また、皮膚にも影響を与え、皮膚状態を改善できる効果を示すことができる。
【0024】
前記皮膚状態の改善は、皮脂の抑制、皮脂成分の改善、及びニキビの改善、及び皮膚炎の改善からなる群から選択される一つ以上であってよい。本出願の組成物は、皮脂の量を減少させるか分泌を減少させることにより、皮脂を抑制することができる。また、皮脂内の成分のうち皮膚トラブルが誘発できる成分、例えば、中性脂肪、コレステロール、コレステロールエステル、遊離脂肪酸などの含量を減少させるか、皮脂内の成分のうち皮膚保湿維持の効果を示すなど、皮膚状態が改善できる成分、例えば、セラミドなどの含量を増加させることにより、皮脂の成分を改善することができる。前記ニキビの改善は、結節(nodule)、丘疹(papule)、膿疱(pustule)、面疱(comedone)の減少、ニキビの重症度の減少であってよい。そして、本出願の組成物は、皮脂の分泌を抑制して皮脂の量を減少させ、皮脂内の成分を改善させることにより、皮脂により誘発され得る皮膚炎を改善することができる。
【0025】
前記組成物は、皮脂内の中性脂肪、コレステロール、コレステロールエステル及び遊離脂肪酸からなる群から選択される一つ以上を減少させるか、セラミドを増加させるものであってよい。前記中性脂肪は、皮脂腺から分泌されるものであってよく、前記コレステロール、コレステロールエステル及び遊離脂肪酸は、皮脂腺及び表皮から全て分泌されるものであってよい。前記セラミドは、セラミド1~7であってよく、具体的には、セラミド2であってよく、前記セラミド2の増加により皮膚の保湿改善効果を示すことができる。
【0026】
前記組成物は、皮膚の油分を減少させ、皮膚の水分を増加させることができる。具体的には、本出願の組成物は、皮膚表面の油分(例えば、中性脂肪、コレステロール、コレステロールエステル、遊離脂肪酸など)の量を減少させるか、皮脂の量を減少させることができる。また、前記組成物は、皮膚の水分の量を増加させるか、水分が減少されることを阻害することにより、水分の量を維持することができるので、皮膚の保湿効果を示すことができる。
【0027】
前記組成物は、皮膚の酸度を改善することができる。前記酸度の改善は、皮膚のpHを減少させること、又は皮膚のpH増加を阻害することを意味する。皮膚の酸度は、皮膚の健康を示す主要指標として用いることができ、健康な皮膚は、一般的にpH4~pH6の弱酸性の酸度を維持するに対し、アトピー皮膚炎、ニキビなどの皮膚疾患の発生時、皮膚のpHが増加され得るため、pHを減少させる場合、皮膚状態を改善することができる。皮膚の酸度は、表皮で生成される乳酸、遊離アミノ酸、遊離脂肪酸などの総含量により決定され得、前記組成物は、皮膚の乳酸含量を増加させるものであってよい。
【0028】
前記組成物は、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属(キューティバクテリウム属、Cutibacterium)又はスタフィロコッカス(Staphylococcus)属微生物に対する抗菌活性を有するものであってよい。前記プロピオニバクテリウム属又はスタフィロコッカス属微生物は、ニキビ及び/又は皮膚炎のような皮膚疾患を誘発するものであってよい。本出願の組成物は、前記微生物の成長、生育を阻害することにより、抗菌活性を有することができ、前記微生物の数を減少させるか、微生物の数が増加することを阻害するものであってよい。例えば、前記組成物は、皮膚表面に分布する前記微生物に対して抗菌活性を有することができ、これにより、前記微生物により誘発される皮膚疾患を予防、治療、改善することができる。
【0029】
前記プロピオニバクテリウム属微生物は、プロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes、又はキューティバクテリウムアクネス、Cutibacterium acnes)であってよい。前記プロピオニバクテリウムアクネスは、ニキビ又は皮膚炎が誘発できる皮膚有害菌であって、皮脂腺から分泌される脂肪酸を用いて生長することができる。本出願の組成物は、前記プロピオニバクテリウムアクネスの成長、生育を阻害することから、抗菌活性を有することができ、これにより、前記プロピオニバクテリウムアクネスにより誘発される皮膚疾患を予防、治療、改善することができる。
【0030】
本出願の組成物は、前記皮膚状態の改善のための目的で、食品組成物又は薬学的組成物として用いることができる。
【0031】
本出願の組成物が食品組成物として用いられる場合、前記食品の種類には、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、機能性食品、健康機能食品などがあり、通常の意味での食品を全て含み、例えば、食品の加工、調理過程などで前記組成物に含まれた有効成分であるラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液が破壊されるか、機能を失わないものであってよい。
【0032】
前記健康機能食品は、皮脂や油分を減少させ、保湿を維持し、皮膚有害菌に対する抗菌活性を有することにより、ニキビ及び/又は皮膚炎を予防/改善するか、皮膚状態を改善することができるものである。皮膚状態の改善効果のあるラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液を有効成分として含む健康機能食品は、ニキビ及び/又は皮膚炎の予防又は改善、皮膚状態の改善に有用に使用され得る。
前記健康機能食品は、栄養供給以外にも生体調節機能が効率的に示されるように加工された医学、医療効果の高い食品であって、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることができる。前記健康機能食品は、本出願の技術分野で通常使用される方法により製造することができ、当業界で通常添加する原料及び成分を添加して製造することができる。また、前記健康機能食品の剤形も、健康機能食品として認められる剤形であれば、制限なしに多様な形態の剤形に製造することができ、一般薬品とは異なり、食品を原料にして薬品の長期服用時に発生できる副作用などがなく、携帯性に優れるという長所があるので、ニキビ及び/又は皮膚炎の予防又は改善のために、当該疾患の発病段階前又は発病後、治療のための薬剤と同時に、又は別個として使用され得る。前記健康機能食品は、一般食品に比べて積極的な健康維持や増進の効果を有する健康食品(health food)と、健康補助目的の健康補助食品(health supplement food)を含み、場合によっては、健康機能食品、健康食品、健康補助食品の用語は混用されてよい。
【0033】
前記健康機能食品で、有効成分(ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液)を食品にそのまま添加するか、他の食品又は食品成分とともに使用されてよく、通常の方法により適宜使用されてよい。前記有効成分の混合量は、その使用目的(ニキビ及び/又は皮膚炎の予防又は改善用、皮膚状態の改善用)により適宜決定され得る。前記有効成分は、ニキビ及び/又は皮膚炎の予防又は改善、皮膚状態の改善の効果を有する限り、健康機能食品に多様な含量で含まれてよい。しかし、健康及び衛生を目的とするか、又は健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は前記範囲以下であってよい。前記健康機能食品は、前記有効成分を含む以外には、特別な制限なしに他の成分を必須成分として含んでよい。例えば、通常の飲料のように様々な香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含んでよい。前述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってよい。前述以外の香味剤として、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど))及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、通常の技術者の選択により適宜決定され得る。
【0034】
前記健康機能食品は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増粘剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含んでよい。このような成分は、独立的に又は組み合わせて使用することができ、このような添加剤の割合も、通常の技術者により適宜選択され得る。
【0035】
本出願の組成物が薬学的組成物として用いられる場合、前記薬学的組成物は、ニキビ及び/又は皮膚炎の予防又は改善用であってよい。
前記組成物は、同一又は類似の機能を示す有効成分1種以上とともに投与されてよい。投与のためには、本出願の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、追加で許容可能な担体を1種以上含んでよい。前記「許容可能な」の意味は、有効成分(ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液)の活性を抑制しなくとも適用(処方)対象が適応可能な以上の毒性を有しないという意味である。前記「担体」は、細胞又は組織内への化合物の付加を容易にする化合物として定義される。前記組成物は、担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することにより単位用量形態に製造されるか、又は多用量容器内に内入させることにより製造されてよく、分散剤又は安定化剤を追加的に含んでよい。また、前記組成物が含む前記有効成分は、コロイド懸濁液、粉末、食塩水、脂質、リポソーム、微小球体(microspheres)、又はナノ球状粒子のような担体に運搬されてよい。これらは運搬手段と複合体を形成するか、関連されてよく、脂質、リポソーム、微細粒子、金、ナノ粒子、ポリマー、縮合反応剤、多糖類、ポリアミノ酸、デンドリマ、サポニン、吸着増進物質又は脂肪酸のような、本出願の属する技術分野に公知された運搬システムを使用して生体内に運搬されてよい。この外にも、前記担体は、製剤時に通常用いられるラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシア、ゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含んでよいが、これに制限されるものではない。また、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加で含んでよい。前記担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分のうち1成分以上を混合して用いることができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など、他の通常の添加剤を添加してよい。
【0036】
本出願の組成物を薬学的に使用する場合、実際臨床投与の際に経口及び非経口の様々な剤形で投与され得るが、製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、生薬抽出物又は生薬発酵物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース又はラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単なる賦形剤以外に、マグネシウムステアレート及びタルクのような潤滑剤も使用される。前記散剤は、本出願の有効成分と、乳糖、澱粉、微結晶セルロースなど、薬学的に許容可能な適当な担体とを単に混合することにより製造されてよい。顆粒剤は、本出願の前記有効成分、薬学的に許容可能な適当な担体、及びポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの薬学的に許容可能な適当な結合剤を混合した後、水、エタノール、イソプロパノールなどの溶媒を用いた湿式顆粒法、又は圧縮力を用いた乾式顆粒法を用いて製造されてよい。また、錠剤は、前記顆粒剤をマグネシウムステアレートなどの薬学的に許容可能な適当な滑沢剤と混合した後、打錠機を用いて打錠することにより製造されてよい。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当し、通常使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用され得る。
【0037】
本出願の組成物を薬学的に使用する場合、前記有効成分(ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液)は、予防、改善、又は治療しなければならない疾患及び個体の状態に応じて経口剤、注射剤(例えば、筋肉注射、腹腔注射、静脈注射、注入(infusion)、皮下注射、インプラント)、吸入剤、鼻腔投与剤、膣剤、直腸投与剤、舌下剤、トランスダーマル剤、トピカル剤などで投与されてよいが、これに制限されるものではない。投与経路により、通常使用され、非毒性でかつ薬学的に許容可能な運搬体、添加剤、ビヒクルを含む適当な投与ユニットの剤形に製剤化されてよい。前記投与時に有効成分であるラクトバチルスプランタルムCJLP55の量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、目的部位及び疾患の重症度などに応じてその範囲が多様である。前記組成物内の前記有効成分は30μM以上、例えば、32μM以上、35μM以上、37μM以上、又は40μM以上の濃度で含まれてよい。また、前記有効成分は0.05mg、0.1mg、0.15mg、0.2mg、0.3mg、0.5mg、1mg、2mg、3mg、5mg、10mg、20mg、30mg、50mg及び100mgから選択された一つの下限線、及び/又は500mg、450mg、400mg、350mg、320mg、300mg、280mg、250mg、200mg、150mg及び100mgから選択された一つの上限線からなる範囲の量で含有されてよく、一例として、0.05~500mg、0.05~450mg、0.05~400mg、0.05~350mg、0.05~300mg、0.05~250mg、0.1~500mg、0.1~450mg、0.1~400mg、0.1~350mg、0.1~300mg、0.1~250mg、0.1~200mg、0.2~500mg、0.2~400mg、0.2~300mg、0.5~300mg、1~300mg、5~300mg、又は10~300mgの量で含有されてよい。
【0038】
また、前記組成物を薬学的に使用する場合、前記組成物は、薬学的に有効な量で投与されてよい。本出願において「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の割合で疾患を治療するに十分な量を意味し、有効用量の水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野によく知られた要素により決定され得る。前記有効用量は、投与個体の体重1kg当り一般的に1日0.01mg~5000mgであり、医師又は薬剤師の判断により一定の時間間隔で1日1回~数回に分割投与することもできるが、これに制限されない。前記組成物は、個別治療剤で投与するか、他の汚染物質により誘発される疾患の治療剤、又は皮膚老化の改善のための治療剤と併用して投与されてよく、従来の治療剤とは同時に、別途に、又は順次に投与されてよく、単一又は多重投与されてよい。前記要素を全て考慮して、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは通常の技術者により容易に決定され得る。具体的には、前記組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内への活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度、疾病種類、併用される薬物により異なることがあり、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などにより増減してよく、治療中の状態の重症度などにより異なることがある。必要に応じて、便宜上、1日の総投与量を一日中数回分割投与されてよい。一例として、一日投与量は、毎日約0.0001mg/kg~約10g/kgであり、例えば、約0.001mg/kg~約1g/kgの量を1日1回投与してよい。さらに、投与期間は、1日~2ヶ月であってよいが、疾患の予防又は治療の効果が現れるまで制限なしに投与されてよい。また、医師又は薬剤師の判断により一定の時間間隔で1日数回、例えば、一日2回~3回分割投与されてよい。
【0039】
本出願の他の一様態は、ラクトバチルスプランタルムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)又はこの培養液を含む組成物を対象体に投与する段階を含む皮膚状態改善方法を提供する。
前記対象体は、制限なしに含まれてよいが、一例として、人を含む動物、又は人を含まない動物であってよい。前記組成物を投与する対象体の皮膚の健康状態が、正常な個体と比べて否定的な状態であるか、皮膚疾患を有する状態である場合、例えば、皮脂の増加、ニキビ又は皮膚炎などの状態である場合、前記組成物を投与することにより、前記皮膚状態を治療又は改善することができる。また、前記組成物を投与する対象体の皮膚の健康状態が正常な場合、前記組成物を投与することにより、前記対象体の皮膚状態が否定的な状態に至ること又は皮膚疾患の発病を予防又は防止することができる。
【0040】
前記投与することは、前記組成物を対象体に経口投与することであってよい。前記経口投与に関する説明は、前述の通りである。
【0041】
前記対象体に投与する段階前に、ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液を含む組成物を準備する段階を追加で含んでよい。組成物を準備する段階は、ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこの培養液を有効成分にして、担体、賦形剤など、他の成分を追加で混合することであってよい。前記ラクトバチルスプランタルムCJLP55、この培養液、皮膚状態の改善、担体、賦形剤、他の成分、投与方法、投与量などに関する説明は、前述の通りである。
【0042】
以下、本出願を実験例により詳細に説明する。
【0043】
ただし、下記実験例は、本出願を具体的に例示するものであり、本出願の内容が下記実施例により限定されない。
【0044】
[実験例1]
ラクトバチルスプランタルムCJLP55のニキビ原因菌(P.acnes)に対する生育抑制効果の確認
ニキビのような皮膚トラブルを誘発する原因菌として知られたプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes、又はCutibacterium acnes、以下「P.acnes」)に対するラクトバチルスプランタルムCJLP55菌株の生育抑制効果を確認するために、P.acnesの培養培地に様々な種類の乳酸菌とともに接種することで、P.acnesの増殖が抑制されるか否かをin vitro上で確認した。
【0045】
ラクトバチルスプランタルムCJLP55菌株は、韓国登録特許公報10-1255050B1に開示された菌株であって、生命工学研究院遺伝子銀行に2008年10月16日KCTC11401BPとして寄託された菌株を用いた。
【0046】
乳酸菌菌株には、ラクトバチルスプランタルムの標準菌株KCTC3108を用い、P.acnesの生育を抑制する活性が公知(Mi-Sun Kang et al.、2012、The Journal of Microbiology、50(1)、137-142)されたラクトバチルスロイテリ(Lactobacillus reuteri)KCTC3594及び本出願のラクトバチルスプランタルムCJLP55菌株を用いた。ニキビ有害菌P.acnes(寄託番号:KCTC3314、培養培地:Reinforced Clostridial Medium、RCM培地、培養温度:37℃)の場合、嫌気性培養槽でガスパックシステム(AnaeroPack、MITSUBISHI GAS CHEMICAL)を用いて密封し、嫌気条件下で培養した。
【0047】
前記本発明のラクトバチルスプランタルムCJLP55菌株、そして標準菌株のラクトバチルスプランタルムKCTC3108及びラクトバチルスロイテリKCTC3594菌株を、MRS培地(Difco 0881)に1.0×107CFU/mlだけ点滴して24時間培養した後、0.8%のagarが含まれたRCM培地に前記P.acnes菌株を1.0×107CFU/ml接種させてオーバーレイさせた。24時間追加培養した後、各実験菌株及び対照群菌株の群集周辺で、P.acnes菌株の成長が抑制されるにつれて現れる阻止帯(clear zone)の直径を測定した。
【0048】
その結果、下記表1に示されたように、ラクトバチルスロイテリの標準菌株の群集では、阻止帯が全然形成されなかったが、ラクトバチルスプランタルムの標準菌株(KCTC3108)及び本発明のラクトバチルスプランタルムCJLP55菌株の群集では、阻止帯が形成された。ここで、ラクトバチルスプランタルムCJLP55菌株の群集周辺に形成される阻止帯の直径が、標準菌株の群集よりも大きいものと表れた。前記阻止帯の直径の大きさは、当該群集の菌株が示す抗菌活性に優れている場合にさらに大きく表れるので、本発明のラクトバチルスプランタルムCJLP55菌株は、P.acnesの成長を抑制する抗菌活性を示し、一般的なラクトバチルスプランタルムの標準菌株と比べると、P.acnesに対する抗菌活性がより優れていることを確認することができた。
【0049】
【0050】
前記のような結果からみると、本発明のラクトバチルスプランタルムCJLP55菌株の場合、従来のニキビ有害菌の活性をある程度抑制できると知られた他の乳酸菌菌株よりもP.acnesの成長を抑制する活性がより優れて示され、特にラクトバチルスプランタルムの標準菌株であるKCTC3108と比べても、ニキビ有害菌の成長抑制活性のより優れた特性があることを新たに確認することができた。したがって、本発明の前記ラクトバチルスプランタルムCJLP55又はこれを含む培養液は、P.acnes菌株により発生可能なニキビの改善などのための成分として用いられ得るため、皮膚状態を改善するための用途の組成物の有効成分として有用に用いることができる。
【0051】
[実験例2]
ラクトバチルスプランタルムCJLP55の摂取による皮脂の減少及び皮膚トラブルの改善効果の確認
ニキビ発生の原因菌になるP.acnesの生育を抑制する効果が優れていると確認されたラクトバチルスプランタルムCJLP55を摂取した場合に、人体に現れる皮脂の減少及び皮膚トラブルの改善効果に対する確認のために、人体適用試験を行った。人体適用試験は、成人90人を対象にして慶熙大学生命倫理委員会の承認(承認番号:KHSIRB18-016)を受けて行った。
【0052】
[2-1]研究対象者の選定及び実験群の割り当て
ニキビのある満18~39歳の健康な男女を対象にして、下記表2による部位別皮脂基準(SM815 sebum meter、Courage-Khazaka社、ドイツ)及び下記表3によるニキビ重症度評価システム(Investigator’s Global Assessment(IGA)、食品医薬品安全評価院提供)を適用して、原州セブランスキリスト病院皮膚科で額とT-ゾーン部位の皮脂分泌の水準が「oily」であり、ニキビ重症度が2~3等級に判定された対象者を募集、選定した。そして、二重盲検を維持しながら、対象者を偽薬群(Placebo group)と乳酸菌(ラクトバチルスプランタルムCJLP55)の摂取群とに分類して試験を行った。
人体適用試験の全体対象者の結果(ITT、intent to treat)と、対象者の中から選抜時には油分数値が対象者に該当したが、0週次には油分数値が85以上に測定された人や、12週間の摂取期間に抗生剤服用及び皮膚科施術を受けた対象者を除いた対象者の結果(PP、per protocol)とに対して別途統計処理を行った。
【0053】
【0054】
【0055】
[2-2]摂取食品の製造及び摂取方法
偽薬群に摂取させる偽薬(対照食品)は、ラクトバチルスプランタルムCJLP55を含有していない製品であって、マルトデキストリン50重量%及び粉末ブドウ糖50重量%を含有するように製造した。乳酸菌摂取群に摂取させる食品は、ラクトバチルスプランタルムCJLP55を9重量%、マルトデキストリンを45.5重量%、粉末ブドウ糖を45.5重量%で含有するようにして製造した。前記のように製造された各食品は、模様、色、香りが同一のものであり、摂取量と摂取方法は、1日1回、食事に関係なく朝又は夕方に1回1袋(2g)をそのまま口に入れて食べるか、20ml~40mlの水又は牛乳と混ぜて総12週間服用するようにし、他の薬物を服用する際は、2時間の間隔を置いて服用するようにした。
【0056】
前記乳酸菌摂取群の場合、腸にプロバイオティクスが到達して有益な機能を示す最小量に該当する1010CFU/1日になるようにラクトバチルスプランタルムCJLP55を摂取させたものである。
【0057】
[2-3]統計分析の方法
人体適用試験を介して得た全ての資料の記述統計は、SPSS23.0プログラム(IBM、USA)を用いて実施した。全ての被験者の資料は、摂取前後(0~6週又は0~12週)の測定結果に対するstudent’s paired t-testを実施し、12週摂取期間の群間有意性は、student’s unpaired t-testを実施した。有意性は、P-value<0.05で検証した。
【0058】
[2-4]乳酸菌摂取による油分、水分及びpH改善効果の確認
先ず、偽薬群及び乳酸菌摂取群を対象にして、12週間前記実験例2-2により製造された食品を、前記摂取方法により摂取させた後、皮膚の油分、水分及びpHの変化を確認した。0、6、12週次に対象者に、洗顔してから温度18~26℃、湿度26~53%が維持された空間に30分以上とどまるようにした後、額とT-ゾーン部位にプローブを用いてSebum meter(SM815、Courage-Khazaka Electronic GmbH、ドイツ)、Corneum meter(CM825)及びpH meter(PH905)により油分、水分及びpHをそれぞれ測定した。個別対象者の各週次別の水分、油分及び酸度の数値は、5回繰り返し測定値の平均である。
油分、水分及びpH測定結果のうち、ITT分析の結果に該当する偽薬群42人、乳酸菌摂取群42人の測定結果を下記表4に示し、PP分析の結果に該当する偽薬群39人、乳酸菌摂取群39人の測定結果を下記表5に示した。
【0059】
油分変化に対するITT分析の結果、偽薬群の個人別油分数値の範囲が徐々に大きくなったのに対し、乳酸菌摂取群の個人別油分数値の範囲は、摂取期間の増加につれて範囲が徐々に小さくなるものと測定された。乳酸菌摂取群の6週次、12週次の油分含量は、0週次に比べて有意的に顕著に減少するものと示され、偽薬群と比べると群間有意性も示された。油分変化に対するPP分析の結果でも、偽薬群とは異なり、摂取期間の経過につれて油分数値の範囲が小くなり、6週次、12週次の油分含量が0週次に比べて有意的に減少した。偽薬群と比べても群間有意性があると示された。前記のようなITT、PP分析の結果からみると、ラクトバチルスプランタルムCJLP55の摂取による油分と皮脂の減少効果は、6週次から有意に示され、12週次からはその効果が顕著に示されることを確認することができた。特に、0週次と比べると、油分の30%又は50%以上好転した対象者の数が、ITT、PP分析の結果で全て統計的に有意に高く示された(
図1a及び
図1b)。
【0060】
皮膚保湿の指標である表皮水分の変化に対するITT及びPP分析の場合、6週次までは偽薬群と乳酸菌摂取群とで全て保湿が改善し、群間有意性が示されなかったが、12週次からは偽薬群よりも乳酸菌摂取群で保湿がさらに有意的に増加し、群間有意性が示されることを確認した。
【0061】
pHで測定した皮膚の酸度変化に対するITT及びPP分析の結果の場合にも、6週次までは酸度改善効果は有意に示されたが群間有意性はなかったのに対し、12週次では乳酸菌摂取群でpH減少につれて酸度がより有意的に改善し、群間有意性が示された。
【0062】
【0063】
【0064】
また、前記のように皮膚健康を示す主要指標の一つである皮膚酸度は、表皮から生成される乳酸(lactate)及び遊離アミノ酸(free amino acid、FAA)などの総含量により決定され得る。これにより、前記成分の含量の変化もともに測定した。
【0065】
0、6、12週次に対象者の額及びT-ゾーン部位にテープストリップ(22-mm D-SQUAME Tape、Cu Derm、USA)を用いて表皮組織を採取した。乳酸の場合、表皮組織に蒸溜水を添加し、超音波処理(sonication)することにより抽出した抽出物内のL-乳酸(L-lactate)成分を、キット(EnzyChromTM L-lactate assay kit、Bioassay system、USA)を用いて前記キットの使用法により565nmで測定した。遊離アミノ酸の場合、前記テープにクロロホルム/メタノール(2:1、v/v)溶液で超音波処理することにより抽出した抽出物を対象にして、キット(L-amino acid quantitation colorimetric/fluorometric kit、Biovision Co.、USA)を使用し、前記キットの使用法により測定した。
前記のような方法により測定した表皮の乳酸含量の変化及び総遊離アミノ酸含量の変化に対するITT分析の結果を下記表6に、PP分析の結果を下記表7に示した。
表皮の乳酸含量の変化に対するITT分析の結果によれば、6週次及び12週次のいずれも、偽薬群と乳酸菌摂取群の群間有意性はなかった。しかし、PP分析の結果では、12週次に乳酸菌摂取群の乳酸含量が有意的に増加したのに対し、偽薬群の乳酸含量は減少して、群間有意性が示された。表皮の総遊離アミノ酸の場合には、ITT及びPP分析の結果の全てで6週次、12週次のいずれも群間の有意的差が発見されなかった。
【0066】
前記のような酸度変化と酸度関連指標成分の含量変化に対するPP分析の結果からみると、ラクトバチルスプランタルムCJLP55を摂取することによる酸度の改善効果は、乳酸の含量増加によるものであることを確認することができた。
【0067】
【0068】
【0069】
[2-5]乳酸菌摂取による皮膚脂質含量変化の確認
偽薬群及び乳酸菌摂取群を対象にして、12週間前記実験例2-2により製造された食品を前記摂取方法により摂取させた後、皮膚の脂質成分を確認し、これらの含量を確認した。0、6、12週次に対象者の顔の皮膚部位にテープ(22-mm D-SQUAME Tape、Cu Derm、USA)を付着して皮脂の脂質を採取した。採取されたテープをクロロホルム/メタノール(2:1、v/v)に浸して2時間超音波処理を介して脂質を抽出した。これを窒素で乾燥させ、さらにクロロホルム溶液に溶解させることにより、HPTLCを介して中性脂肪(TG、triglyceride)、コレステロールエステル(CE、cholesterol esters)、遊離脂肪酸(FFA、free fatty acid)、コレステロール(Chol)及びセラミド(Cer)を分離した(展開条件:1次展開液CHCl3/メタノール/水(10:2.5:0.25、v/v/v)up to 2cm、2次展開液CHCl3/メタノール/酢酸(11.25:1.25:0.13、v/v/v)up to 5cm、3次展開液ヘキサン/ジエチルエテール/アセトン(2.5:10:0.63、v/v/v)up to 6cm、4次展開液ヘキサン/ジエチルエテール(12:0.73)up to 9.5cmの順で展開)。各分離された分画は、TLC IIIスキャナーでスキャンして外部標準法で定量計算し、ITT及びPP分析の結果を下記表8及び表9にそれぞれ示した。
【0070】
その結果、総脂質含量の場合、ITT及びPP分析の結果の全てで6週次から乳酸菌摂取群で脂質含量の減少効果が群間有意性を示した。この中、中性脂肪の場合、ITT、PP分析の結果の全てで6週次以後から乳酸菌摂取群の中性脂肪の減少に対する群間有意性が示され、12週次には、その効果がさらに顕著であった。コレステロールエステルの含量の場合にも、乳酸菌摂取群でその減少効果が12週次に群間有意性が示された。総遊離脂肪酸の含量は、群間有意性がなく、コレステロール含量の減少は、乳酸菌摂取群で6週次以後から群間有意性が示され、12週次にさらに顕著に示された。
【0071】
セラミドの場合、セラミド1-7が分画され、ITT分析の結果では、群間有意性が示されなかった。しかし、PP分析の結果、主要セラミドであるセラミド2(Cer2)の含量が、12週次に乳酸菌摂取群で有意的に増加して示された。
【0072】
【0073】
【0074】
前記のような人体適用試験の結果を総合してみると、試験対象者に摂取させた食品の賦形剤として含まれたマルトデキストリン及び粉末ブドウ糖の摂取は、摂取6週次にのみ表皮細胞及び皮脂腺で一部脂質の分泌のみを抑制するのに対し、本出願のラクトバチルスプランタルムCJLP55の摂取は、中性脂肪、コレステロール及びコレステロールエステルのような脂質の含量と分泌を抑制させることにより、皮脂の総含量を減少させる効果が発生し、表皮細胞でのセラミドの生成を選択的に増加させ、皮膚の保湿を維持するという効果があるので、最終的にニキビ重症度を改善できる効果が発生すると予想される。
【0075】
[2-6]乳酸菌摂取による皮膚有害菌の減少効果の確認
ラクトバチルスプランタルムCJLP55の摂取による、皮膚で増殖する皮膚有害菌の菌叢変化を分析するために、先ず片方の頬の同一の部位で30秒間擦って皮膚表面の試料を採取し、-80℃に保管した。0週次及び12週次に得た各皮膚試料は、16S rRNA V3-V4領域に対する次世代塩基配列分析(NGS、next generation sequencing、MiSeq)を(株)マクロゼンに依頼して実施し、このように得た塩基配列データの前処理及びデータ分析を介して皮膚菌叢の変化を分析した。
【0076】
試験対象者のうち偽薬群1人、乳酸菌摂取群3人の試料からDNAライブラリーの製作が不可能であるため、ITT分析は、偽薬群41人/乳酸菌摂取群39人を対象にし、PP分析は、偽薬群38人/乳酸菌摂取群36人を対象にして、その結果を下記表10に示した。ITT及びPP分析の結果のいずれも、乳酸菌摂取群の場合、12週次にプロピオニバクテリウム属及びスタフィロコッカス属微生物の割合が偽薬菌と比べると有意な差があることが確認された。偽薬群の場合、皮膚有害菌として知られた前記プロピオニバクテリウム属及びスタフィロコッカス属微生物が0週次に比べて有意的に増加したのに対し、乳酸菌摂取群の場合、12週間有意的な変化がなく、前記有害菌の増殖が抑制されたことが確認できた。
【0077】
また、前記プロピオニバクテリウム属に割り当てられた配列に対する種(species)の水準の分析を行った結果、ITT及びPP分析の全てで平均94%の配列がP.acnesであることが確認された(
図2)。
【0078】
【0079】
[2-7]乳酸菌摂取による皮膚粗さ変化の確認
偽薬群及び乳酸菌摂取群を対象にして、12週間前記実験例2-2により製造された食品を前記摂取方法により摂取させた後、除去された角質の量を測定することにより皮膚粗さ変化を確認した。0、6、12週次に対象者の掌側前腕(volar forearm)からテープストリップを用いて皮膚角質層を採取し、濃度計(densitometer、SLB Myimager、Seoulin、韓国)の固定位置で写真を撮影し、除去された角質の量を前記濃度計で測定して数値化することにより比較した。個別対象者の週次別角質の量は、5つのテープストリップに対する測定値の平均で計算し、ITT分析の結果を下記表11に、PP分析の結果を下記表12に示した。
【0080】
各群の角質の数値化により測定した皮膚粗さのITT分析の結果の場合、6週次及び12週次の変化に対する群間有意性がなかったが、PP分析の場合、偽薬群に比べて乳酸菌摂取群の皮膚粗さが有意的に大幅減少したことを確認し、6週次から乳酸菌摂取群の粗さ改善に対する群間有意性が示され、12週次には減少効果がさらに顕著であった。
【0081】
前記のような結果からみると、ラクトバチルスプランタルムCJLP55を摂取した対象者は、角質が減少して皮膚の粗さが減少し、これは、前記乳酸菌の摂取により皮膚の保湿維持効果が改善したことを意味する。
【0082】
【0083】
【表12】
前記では本出願の代表的な実験例を例示的に説明したが、本出願の範囲は前記のような特定の実験例にだけ限定されず、当該分野で通常の知識を有する者であれば本出願の特許請求の範囲に記載された範疇内で適宜変更が可能であろう。