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特許7383163糖尿病治療用の薬物の製造におけるGP73阻害剤の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】糖尿病治療用の薬物の製造におけるGP73阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231110BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20231110BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231110BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231110BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231110BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K31/7105
A61P3/10
A61K48/00
G01N33/53 D
G01N33/68
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022543685
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(86)【国際出願番号】 CN2021079613
(87)【国際公開番号】W WO2021180047
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】202010154792.3
(32)【優先日】2020-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CGMCC  CGMCC 18165
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522285462
【氏名又は名称】ベイジン スンゲン バイオメディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】リン チャンチン
(72)【発明者】
【氏名】スン ジーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ チー
(72)【発明者】
【氏名】チエ シュアン
(72)【発明者】
【氏名】シュー レイ
(72)【発明者】
【氏名】リー ジン
(72)【発明者】
【氏名】リン ジャンボー
(72)【発明者】
【氏名】チュー ヘンチー
(72)【発明者】
【氏名】チェン フェイ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ シュエチャオ
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105734059(CN,A)
【文献】国際公開第2018/091724(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0124022(US,A1)
【文献】Journal of Molecular Endocrinology,2022年12月,Vol. 70, No,2 ,#e220103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病およびその合併症の治療用医薬組成物の製造におけるGP73阻害剤の使用であって、前記GP73阻害剤が抗GP73モノクローナル抗体6B6又はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:9若しくはそれと少なくとも90%の相同性を有するGP73 siRNAであり、前記抗GP73モノクローナル抗体6B6は、中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターに保存され、寄託番号はCGMCC No.18165であり、寄託日は2019年6月20日であるハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体である前記使用。
【請求項2】
有効成分としてのGP73阻害剤を含む、ことを特徴とする糖尿病およびその合併症の治療用医薬組成物であって、前記GP73阻害剤が抗GP73モノクローナル抗体6B6又はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:9若しくはそれと少なくとも90%の相同性を有するGP73 siRNAであり、前記抗GP73モノクローナル抗体6B6は、中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターに保存され、寄託番号はCGMCC No.18165であり、寄託日は2019年6月20日であるハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体である前記医薬組成物。
【請求項3】
前記糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病が含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病が含まれる、
ことを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記糖尿病の治療には、(1)空腹および/または食後の血糖を下げること、(2)耐糖能を改善すること、(3)膵島α細胞および/または膵島β細胞を保護すること、(4)グルカゴンの糖上昇能力および/または糖新生能力を下げること、(5)グルカゴンの半減期を短縮すること、(6)GP73自体のインスリンに依存しない糖上昇作用および糖新生の機能を下げること、のうちのいずれか1つまたは複数が含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記糖尿病の治療には、(1)空腹および/または食後の血糖を下げること、(2)耐糖能を改善すること、(3)膵島α細胞および/または膵島β細胞を保護すること、(4)グルカゴンの糖上昇能力および/または糖新生能力を下げること、(5)グルカゴンの半減期を短縮すること、(6)GP73自体のインスリンに依存しない糖上昇作用および糖新生の機能を下げること、のうちのいずれか1つまたは複数が含まれる、
ことを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
糖尿病合併症には、糖尿病性腎症、糖尿病性眼合併症、糖尿病性足、糖尿病性末梢神経障害のうちのいずれか1つまたは複数が含まれ、ここで、糖尿病性眼合併症には、糖尿病性網膜症、糖尿病に関連するブドウ膜炎、糖尿病性白内障のうちの1つまたは複数が含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項8】
糖尿病合併症には、糖尿病性腎症、糖尿病性眼合併症、糖尿病性足、糖尿病性末梢神経障害のうちのいずれか1つまたは複数が含まれ、ここで、糖尿病性眼合併症には、糖尿病性網膜症、糖尿病に関連するブドウ膜炎、糖尿病性白内障のうちの1つまたは複数が含まれる、
ことを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
糖尿病およびその合併症を治療する医薬組成物には、さらに、糖尿病を治療する他の医薬または医薬組成物医薬が含まれ、場合によって、前記糖尿病を治療する他の医薬または組成物は、インスリン、ジメチルビグアニド、スルホニル尿素系血糖降下剤、aグリコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン類、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害剤、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)類似物、SGLT2阻害剤から1つまたは複数選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項10】
糖尿病およびその合併症を治療する医薬組成物には、さらに、糖尿病を治療する他の医薬または医薬組成物医薬が含まれ、場合によって、前記糖尿病を治療する他の医薬または組成物は、インスリン、ジメチルビグアニド、スルホニル尿素系血糖降下剤、aグリコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン類、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害剤、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)類似物、SGLT2阻害剤から1つまたは複数選択される、
ことを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
グルカゴンの阻害用医薬組成物の製造におけるGP73阻害剤の使用であって、前記GP73阻害剤が抗GP73モノクローナル抗体6B6又はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:9若しくはそれと少なくとも90%の相同性を有するGP73 siRNAであり、前記抗GP73モノクローナル抗体6B6は、中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターに保存され、寄託番号はCGMCC No.18165であり、寄託日は2019年6月20日であるハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体である前記使用。
【請求項12】
GP73阻害剤を含む、
ことを特徴とするグルカゴンの阻害用医薬組成物であって、前記GP73阻害剤が抗GP73モノクローナル抗体6B6又はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:9若しくはそれと少なくとも90%の相同性を有するGP73 siRNAであり、前記抗GP73モノクローナル抗体6B6は、中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターに保存され、寄託番号はCGMCC No.18165であり、寄託日は2019年6月20日であるハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体である前記医薬組成物。
【請求項13】
前記グルカゴンの阻害には、(1)グルカゴンの半減期を短縮すること、(2)グルカゴンの糖上昇能力および/または糖新生能力を下げることのうちのいずれか1つまたは複数が含まれる、
ことを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記グルカゴンの阻害には、(1)グルカゴンの半減期を短縮すること、(2)グルカゴンの糖上昇能力および/または糖新生能力を下げることのうちのいずれか1つまたは複数が含まれる、
ことを特徴とする請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
糖尿病検出試薬の製造における血清中の可溶性GP73検出試薬の使用。
【請求項16】
前記糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病が含まれる、
ことを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項17】
GP73を検出する試薬は、血清中の可溶性GP73を検出する試薬を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項18】
糖新生シグナル伝達経路阻害用医薬組成物の製造におけるGP73阻害剤の使用であって、前記GP73阻害剤が抗GP73モノクローナル抗体6B6又はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:9若しくはそれと少なくとも90%の相同性を有するGP73 siRNAであり、前記抗GP73モノクローナル抗体6B6は、中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターに保存され、寄託番号はCGMCC No.18165であり、寄託日は2019年6月20日であるハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体であり、かつ前記糖新生シグナル伝達経路を阻害することには、(1)肝細胞の糖新生による糖生成を阻害すること、(2)糖新生の鍵酵素Pcx、Pck1、G6pcの発現レベルをダウンレギュレートすること、(3)PKAリン酸化レベルおよびキナーゼ活性をダウンレギュレートすることのうちのいずれか1つまたは複数が含まれる前記使用。
【請求項19】
GP73阻害剤を含む、
ことを特徴とする糖新生シグナル伝達経路の阻害用医薬組成物であって、前記GP73阻害剤が抗GP73モノクローナル抗体6B6又はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:9若しくはそれと少なくとも90%の相同性を有するGP73 siRNAであり、前記抗GP73モノクローナル抗体6B6は、中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターに保存され、寄託番号はCGMCC No.18165であり、寄託日は2019年6月20日であるハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体であり、かつ前記糖新生シグナル伝達経路を阻害することには、(1)肝細胞の糖新生による糖生成を阻害すること、(2)糖新生の鍵酵素Pcx、Pck1、G6pcの発現レベルをダウンレギュレートすること、(3)PKAリン酸化レベルおよびキナーゼ活性をダウンレギュレートすることのうちのいずれか1つまたは複数が含まれる前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願発明は、中国特許庁に提出された、出願番号が202010154792.3で、発明の名称が「糖尿病治療用の薬物の製造におけるGP73阻害剤の使用」である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願のすべての内容は引用により本願発明に組み込まれる。
【0002】
本願発明は、中国特許庁に提出された、出願番号がPCT/CN2020/078342で、発明の名称が「糖尿病治療用の薬物の製造におけるGP73阻害剤の使用」であるPCT出願の優先権を主張し、当該出願のすべての内容は引用により本願発明に組み込まれる。
【0003】
本願発明は、生物医学の分野に関し、特に、糖尿病治療用の薬物の製造におけるGP73阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
国際糖尿病連合の推定によると、2017年、世界中で20~79歳の成人の糖尿病罹患率は約8.8%であり、約4.25億人になり、ここで、400万人が糖尿病で死亡し、全世界の死亡者総数の10.7%を占める。世界中でも糖尿病患者が多い国としての中国の患者数は、約1.144億人である。この数は、年々増加しており、2045年までに、全世界で、20~79歳の糖尿病患者が、少なくとも6.29億人になると予想される。
【0005】
糖尿病は、高血糖を特徴とする代謝性疾患であり、主に、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病および他の特殊型糖尿病などの4つのタイプに分けられる。1型糖尿病は、インスリン依存性糖尿病であり、主に、自己免疫反応に媒介される膵島β細胞の損傷によって引き起こされ、糖尿病患者総数の5%~10%を占める。1型糖尿病の発生と発展は、1)遺伝的感受性の段階と、2)ある環境要因によって自己免疫反応が発動される段階と、3)自己免疫反応の活動期で、インスリンの分泌機能がまだ正常な状態である段階と、4)自己免疫反応が継続的にあるが、インスリンの分泌機能が進行性的に低下する段階と、5)臨床的に糖尿病が発生したが、インスリン分泌機能の一部はまだ残存している段階と、6)膵島β細胞が完全に破壊される段階と、の6つの段階に分けられる。2型糖尿病は、主に、有機体のインスリン欠損およびインスリン抵抗性によって引き起こされ、患者総数の90%~95%を占める。2型糖尿病の発生と発展は、1)遺伝的感受性の段階と、2)高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性の段階と、3)耐糖能が低下する段階と、4)臨床糖尿病段階と、の4つの段階に分けられる。
【0006】
現在、研究結果は、グルカゴン(Glucagon、GCG)の過剰が糖尿病の発症の必須条件であることを示し、主な証拠は、1)インスリン欠損症の場合、グルカゴンによって肝臓のグルコースおよびケトン体の生成を増加させ、2)血糖のコントロールがよくない様々なタイプの糖尿病患者は、高グルカゴン血症があり、3)グルカゴン受容体欠損のマウスは、すべてのβ細胞が破壊されても糖尿病にならなく、4)グルカゴン受容体欠損のマウスの体内で膵臓に抗インスリン血清を注入すると、明らかに高いグルカゴン血症を引き起こし、膵島内のインスリンはグルカゴンの分泌に対して持続的なパラクリン阻害効果を有することである。グルカゴンは、主に、膵島α細胞から分泌されるペプチドホルモンであり、29個のアミノ酸からなる直鎖状ポリペプチドであり、分子量は3485ダルトンである。グルカゴンは、その受容体(GCGR)と相互作用し、cAMP、AMPKおよびJNKなどのシグナル伝達経路を介してグリコーゲン分解および糖新生を促進して、血中グルコース濃度を上昇させる。肝臓、脳、胃腸管、腎臓、脂肪組織、心臓などの器官は、グルカゴンの標的器官であるが、血糖上昇効果の主な標的器官は肝臓である。
【0007】
したがって、糖尿病は、インスリン欠損、インスリン抵抗性、グルカゴン過剰二重ホルモン障害性膵臓疾患である。現在、糖尿病治療用の薬物は、その種類が比較的多いが、依然としてインスリンを中心とすることを主としており、血糖コントロールが徐々に悪化することを変えることは困難であり、3分の1以上の患者は、血糖が十分にコントロールされていない。糖尿病の発症は、複数の遺伝的感受性および複数の環境要因の協働結果であり、それにより、当該疾患の不均一性および進行性病理学的変化がもたらされ、既存の治療法の治療効果には顕著な限界がある。また、一部の薬物の使用は、糖尿病の合併症および併存症によって制限される。また、薬物の投与期間が長くなるのにつれて、治療効果を失う薬物もあるため、新しい糖尿病治療薬を継続的に開発することは、現実的な意義が大きい。
【0008】
ゴルジタンパク質73(Golgi protein 73、GP73)は、ゴルジ体に位置する2型膜貫通タンパク質であり、ゴルジ膜タンパク質1(Golgi membrane protein 1、GOLM1)またはゴルジリンタンパク質2(Golgi phosphorprotein 2、GOLPH2)とも呼ばれる。それは、第9番染色体に位置し、長さが3042bpである。その遺伝子内には、読み枠の同じメチオニンコドンが2つあり、2つは互いに10コドン離れ、それぞれ400または391個のアミノ酸産物が転写される。GP73構造は、主に、N末端の1~12位の細胞質ドメイン、12~35位の膜貫通ドメイン、36~205位のコイルドコイルドメイン、206~348位のアモルファスドメインおよび349~401位の酸性断片領域の5つの部分に分けられる。アモルファスドメインが可変領域である以外に、他の幾つかのドメインは全部非常に高い保存性を有する。GP73の55番目のアミノ酸の近傍に、前駆タンパク質転換酵素(proprotein convertase、PC)の切断部位があり、全長GP73がPCによって切断された後、ゴルジ体から放出され、血液循環系に分泌され、血中に放出されたGP73断片は、可溶性GP73と呼ばれる。GP73は、正常な肝組織ではほとんど発現しないが、様々な原因によって発症した肝疾患においては、ほぼすべての肝細胞で発現し、特に、結合組織の周辺および肝硬変結節部位での発現が特に強い。70%以上の肝臓がん患者は、GP73タンパク質の血清および肝組織における発現レベルは、有意にアップレギュレーションし、正常組織の3~5倍になる。したがって、血清中のGP73は、肝臓がんの診断に有効な血清学的腫瘍マーカーであると考えられる。これに加え、食道がん、乳がん、前立腺がん患者の前立腺組織および尿、膀胱がんおよび子宮頸がんなどの複数の腫瘍におけるGP73の発現が有意にアップレギュレーションした。
【0009】
GP73の異常に高い発現は、複数の腫瘍と密接に関連するが、GP73の生物学的機能は、未だ十分に解明されていない。細胞外における可溶性GP73の機能については、よく分かっておらず、現在のところ、肝細胞と免疫細胞との間での小胞体ストレスの伝達が血清におけるGP73によって媒介されることを示す報告は1つしかなく、このようなカスケード増幅効果によって腫瘍大食細胞の動員が誘発され、腫瘍の微小環境における免疫寛容がもたらされた。
【0010】
この背景技術の部分に開示された情報は、単に本願発明の全体的な背景に対する理解を高めることを意図したものにすぎず、この情報が当業者に知られている先行技術を構成することを認めるか、またはいかなる形でも暗示するものと見なされるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明の実施例において、発明者らは、GP73が血糖調節に重要な役割を果たすことを発見し、特に、可溶性GP73がグルカゴンに特異的に結合して複合体を形成して、グルカゴンの血糖上昇機能および糖新生機能を増強し、グルカゴンの半減期を延長することができることをすでに発見し、可溶性GP73が、グルカゴンに依存しない方法により、肝臓および/または腎臓における糖生成および糖新生シグナル伝達経路を活性化することができることを発見し、発明者らは、さらに、可溶性GP73がマウスの空腹時血糖を上昇させ、耐糖能の異常およびピルビン酸耐性の異常を誘発することができることを発見し、発明者らはまた、上で発見された血糖に対するGP73の調節作用に基づいて、動物実験により、GP73阻害剤が糖尿病マウスの血糖値および糖化ヘモグロビンレベルを下げることができ、膵島β細胞に対する保護作用を有し、糖尿病を治療する効果を奏することを証明した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、下記の技術案を提供する。
【0013】
本願発明の第1態様では、糖尿病およびその合併症を治療する薬物の製造におけるGP73阻害剤の使用を提供する。
【0014】
本願発明の第2態様では、糖尿病およびその合併症を治療するための薬物を提供し、前記薬物は、有効成分としてのGP73阻害剤を含む。
【0015】
本願発明の第3態様では、糖尿病およびその合併症を治療するための方法を提供し、当該方法は、糖尿病に罹患している被験者に有効量のGP73阻害剤を投与するステップを含む。
【0016】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病が含まれる。
【0017】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記糖尿病の治療には、(1)空腹および/または食後の血糖を下げること、(2)耐糖能を改善すること、(3)膵島α細胞および/または膵島β細胞を保護すること、(4)グルカゴンの糖上昇能力および/または糖新生能力を下げること、(5)グルカゴンの半減期を短縮すること、(6)GP73自体のインスリンに依存しない糖上昇作用および糖新生の機能を下げること、のうちのいずれか1つまたは複数が含まれる。
【0018】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、糖尿病合併症には、糖尿病性腎症、糖尿病性眼合併症、糖尿病性足、糖尿病性末梢神経障害のうちのいずれか1つまたは複数が含まれ、ここで、糖尿病性眼合併症には、糖尿病性網膜症、糖尿病に関連するブドウ膜炎、糖尿病性白内障のうちの1つまたは複数が含まれる。
【0019】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記GP73阻害剤は、GP73のレベル、活性、機能および/または安定性をダウンレギュレートするポリペプチド、タンパク質、核酸配列または小分子化合物を含み、場合によって、前記GP73のレベル、活性、機能および/または安定性をダウンレギュレートするポリペプチド、タンパク質、核酸配列または小分子化合物は、(1)GP73をコードする遺伝子の転写、正確な切断および/または翻訳を阻害できる性質、(2)GP73と有機体内の受容体および/またはリガンドとの結合を阻害または妨害する性質、(3)GP73と有機体内の特異性相互作用分子との相互作用を阻害または妨害する性質、(4)GP73の有機体内での半減期を短縮する性質のうちの1つまたは複数を有する。さらに場合によって、GP73阻害剤は、抗GP73モノクローナル抗体またはその抗原結合部位を含む抗体断片、抗GP73モノクローナル抗体またはその抗原結合部位を含む抗体断片の融合タンパク質、GP73を特異的に阻害する核酸配列のうちの1つまたは複数を含む。
【0020】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記GP73は、有機体内に存在するかまたは体外で単離された天然または組換えの全長GP73、GP73断片、GP73突然変異体または修飾されたGP73から1つまたは複数選択され、場合によって、前記GP73は、全長GP73または1~55位のアミノ酸を含まないGP73から選択される。
【0021】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記抗GP73モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞から生成されたモノクローナル抗体、抗体ライブラリからスクリーニングされたモノクローナル抗体、単細胞PCRから生成されモノクローナル抗体、遺伝子工学により改造されたモノクローナル抗体、異種抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、ナノ抗体(Nanobody)、重鎖抗体(Heavy chain antibody)から1つまたは複数選択される。
【0022】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記抗体断片の種類として、Fab、Fab-SH、Fv、scFv、F(ab’)、DsFv、Diabody、Minibody、Tribody、Sc(Fv)、[Sc(Fv)、(ScFv-SA)から1つまたは複数選択される。
【0023】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記GP73を特異的に阻害する核酸は、siRNA、shRNA、microRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、miRNA、核酸アプタマーのうちの1つまたは複数を含み、場合によって、GP73を特異的に阻害するsiRNAは、配列番号:1~配列番号:9によって示されるヌクレオチド配列から1本または複数本選択されるか、または、配列番号:1~配列番号:9によって示されるいずれか1本のヌクレオチド配列と少なくとも60%、70%、80%、90%の相同性を有する配列から選択され、さらに場合によって、GP73を特異的に阻害するsiRNAは、配列番号:4によって示されるヌクレオチド配列またはそれと少なくとも60%、70%、80%、90%の相同性を有する配列から選択される。
【0024】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、糖尿病およびその合併症を治療する薬物には、さらに、糖尿病を治療する他の薬物が含まれ、糖尿病およびその合併症を治療する方法では、GP73阻害剤および糖尿病を治療する他の薬物を併用する。
【0025】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記糖尿病を治療する他の薬物は、インスリン、ジメチルビグアニド、スルホニル尿素系血糖降下剤、aグリコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン類、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害剤、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)類似物、SGLT2(ナトリウム-グルコース共輸送タンパク質-2)阻害剤から1つまたは複数選択される。
【0026】
上記の使用、薬物の可能な実現形態において、前記薬物は、さらに、少なくとも1つの薬学的に許容される補助材料を含む。
【0027】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記薬物の使用方法は、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、経口投与のうちの1つまたは複数である。
【0028】
上記の方法の可能な実現形態において、前記被験者は、ヒト、マウス、ラット、サル、ウサギ、豚、犬から1つまたは複数選択される。
【0029】
本願発明の第4態様では、グルカゴンを阻害する薬物の製造におけるGP73阻害剤の使用を提供する。
【0030】
本願発明の第5態様では、グルカゴンを阻害するための薬物を提供し、前記薬物はGP73阻害剤を含む。
【0031】
本願発明の第6態様では、グルカゴンを阻害するための方法を提供し、当該方法は、グルカゴンを阻害する必要のある被験者に有効量のGP73阻害剤を投与するステップを含む。
【0032】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記グルカゴンの阻害には、(1)グルカゴンの半減期を短縮すること、(2)グルカゴンの糖上昇能力および/または糖新生能力を下げることのうちのいずれか1つまたは複数が含まれる。
【0033】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記GP73阻害剤は、GP73のレベル、活性、機能および/または安定性をダウンレギュレートするポリペプチド、タンパク質、核酸配列または小分子化合物を含み、場合によって、前記GP73のレベル、活性、機能および/または安定性をダウンレギュレートするポリペプチド、タンパク質、核酸配列または小分子化合物は、(1)GP73をコードする遺伝子の転写、正確な切断および/または翻訳を阻害できる性質、(2)GP73と有機体内の受容体および/またはリガンドとの結合を阻害または妨害する性質、(3)GP73と有機体内の特異性相互作用分子との相互作用を阻害または妨害する性質、(4)GP73の有機体内での半減期を短縮する性質のうちの1つまたは複数を有する。さらに場合によって、GP73阻害剤は、抗GP73モノクローナル抗体またはその抗原結合部位を含む抗体断片、抗GP73モノクローナル抗体またはその抗原結合部位を含む抗体断片の融合タンパク質、GP73を特異的に阻害する核酸配列のうちの1つまたは複数を含む。
【0034】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、GP73は、有機体内に存在するかまたは体外で単離された天然または組換えの全長GP73、GP73断片、GP73突然変異体または修飾されたGP73から1つまたは複数選択され、場合によって、前記GP73は、全長GP73または1~55位のアミノ酸を含まないGP73から選択される。
【0035】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記抗GP73モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞から生成されたモノクローナル抗体、抗体ライブラリからスクリーニングされたモノクローナル抗体、単細胞PCRから生成されモノクローナル抗体、遺伝子工学により改造されたモノクローナル抗体、異種抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、ナノ抗体(Nanobody)、重鎖抗体(Heavy chain antibody)から1つまたは複数選択される。
【0036】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記抗体断片の種類として、Fab、Fab-SH、Fv、scFv、F(ab’)、DsFv、Diabody、Minibody、Tribody、Sc(Fv)、[Sc(Fv)、(ScFv-SA)から1つまたは複数選択される。
【0037】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記GP73を特異的に阻害する核酸は、siRNA、shRNA、microRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、miRNA、核酸アプタマーのうちの1つまたは複数を含み、場合によって、GP73を特異的に阻害するsiRNAは、配列番号:1~配列番号:9によって示されるヌクレオチド配列から1本または複数本選択されるか、または、配列番号:1~配列番号:9によって示されるいずれか1本のヌクレオチド配列と少なくとも60%、70%、80%、90%の相同性を有する配列から選択され、さらに場合によって、GP73を特異的に阻害するsiRNAは、配列番号:4によって示されるヌクレオチド配列またはそれと少なくとも60%、70%、80%、90%の相同性を有する配列から選択される。
【0038】
上記の使用、薬物の可能な実現形態において、前記薬物は、さらに、少なくとも1つの薬学的に許容される補助材料を含む。
【0039】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記薬物の使用方法は、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、経口投与のうちの1つまたは複数である。
【0040】
上記の方法の可能な実現形態において、前記被験者は、ヒト、マウス、ラット、サル、ウサギ、豚、犬から1つまたは複数選択される。
【0041】
本願発明の第7態様では、GP73-グルカゴン複合体を提供し、ここで、GP73はグルカゴンと結合する。
【0042】
上記のGP73-グルカゴン複合体の可能な実現形態において、前記GP73は、有機体内に存在するかまたは体外で単離された天然または組換えの全長GP73、GP73断片、GP73突然変異体または修飾されたGP73から1つまたは複数選択され、場合によって、前記GP73は、全長GP73または1~55位のアミノ酸を含まないGP73から選択される。
【0043】
上記のGP73-グルカゴン複合体の可能な実現形態において、前記GP73の種源として、ヒト、マウス、ラット、サル、ウサギ、豚、犬から1つまたは複数選択される。
【0044】
本願発明の第8態様では、GP73とグルカゴンとの結合エピトープを決定する方法を提供し、当該方法は、複合体結晶解析法、エピトープ決定部位切除法(Epitope Excision)、水素/重水素交換(Hydrogen/Deuterium Exchange)、Peptide-Panning法のうちの1つまたは複数を利用して、GP73とグルカゴンとの結合エピトープを決定するステップを含む。
【0045】
本願発明の第9態様では、GP73-グルカゴン複合体の形成を阻害する際のGP73阻害剤の阻害作用の強弱を決定する方法を提供し、当該方法は、方法1と方法2のうちのいずれか1つを含む。
【0046】
方法1:
候補GP73阻害剤とGP73をインキュベートした後、両者の混合物および/または複合体をグルカゴンと結合し、
GP73の、候補GP73阻害剤とインキュベートする前とインキュベートした後にグルカゴンと結合する能力を比較する。
【0047】
方法2:
インシリコシミュレーションを利用して、GP73の、候補GP73阻害剤とインキュベートする前とインキュベートした後にグルカゴンと結合する能力を比較する。
【0048】
GP73-グルカゴン複合体の形成を阻害する際のGP73阻害剤の阻害作用の強弱を決定する上記の方法の可能な実現形態において、候補GP73阻害剤の供給源には、ハイブリドーマ細胞、B細胞、記憶B細胞、抗体ライブラリ、化合物ライブラリ、GP73類似物、グルカゴン類似物から選択される1つまたは複数が含まれる。
【0049】
GP73-グルカゴン複合体の形成を阻害する際のGP73阻害剤の阻害作用の強弱を決定する上記の方法の可能な実現形態において、GP73のグルカゴンとの結合能力を決定する方法には、表面プラズモン共鳴(SPR)測定法、マイクロカロリメトリー(MST)測定法、競合ELISA法から選択される1つまたは複数が含まれる。
【0050】
本願発明の第10態様では、糖尿病検出試薬の製造におけるGP73を検出する試薬の使用を提供する。
【0051】
本願発明の第11態様では、糖尿病を検出するための試薬を提供し、前記試薬は、GP73を検出する試薬を含む。
【0052】
上記の使用、試薬可能な実現形態において、前記糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病が含まれる。
【0053】
上記の使用、試薬の可能な実現形態において、GP73を検出する試薬は、血清中の可溶性GP73を検出する試薬を含む。
【0054】
本願発明の第12態様では、糖新生シグナル伝達経路阻害剤を製造する薬物におけるGP73阻害剤の使用を提供する。
【0055】
本願発明の第13態様では、糖新生シグナル伝達経路を阻害するための薬物を提供し、前記薬物はGP73阻害剤を含む。
【0056】
本願発明の第14態様では、糖新生シグナル伝達経路を阻害するための方法を提供し、当該方法は、糖新生シグナル伝達経路を阻害する必要のある被験者に有効量のGP73阻害剤を投与するステップを含む。
【0057】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、糖新生シグナル伝達経路を阻害する前記ことには、(1)肝細胞の糖新生による糖生成を阻害すること、(2)糖新生の鍵酵素Pcx、Pck1、G6pcの発現レベルをダウンレギュレートすること、(3)PKAリン酸化レベルおよびキナーゼ活性をダウンレギュレートすることのうちのいずれか1つまたは複数が含まれる。
【0058】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記GP73阻害剤は、GP73のレベル、活性、機能および/または安定性をダウンレギュレートするポリペプチド、タンパク質、核酸配列または小分子化合物を含み、場合によって、前記GP73のレベル、活性、機能および/または安定性をダウンレギュレートするポリペプチド、タンパク質、核酸配列または小分子化合物は、(1)GP73をコードする遺伝子の転写、正確な切断および/または翻訳を阻害できる性質、(2)GP73と有機体内の受容体および/またはリガンドとの結合を阻害または妨害する性質、(3)GP73と有機体内の特異性相互作用分子との相互作用を阻害または妨害する性質、(4)GP73の有機体内での半減期を短縮する性質のうちの1つまたは複数を有する。さらに場合によって、GP73阻害剤は、抗GP73モノクローナル抗体またはその抗原結合部位を含む抗体断片、抗GP73モノクローナル抗体またはその抗原結合部位を含む抗体断片の融合タンパク質、GP73を特異的に阻害する核酸配列のうちの1つまたは複数を含む。
【0059】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、GP73は、有機体内に存在するかまたは体外で単離された天然または組換えの全長GP73、GP73断片、GP73突然変異体または修飾されたGP73から1つまたは複数選択され、場合によって、前記GP73は、全長GP73または1~55位のアミノ酸を含まないGP73から選択される。
【0060】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記抗GP73モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞から生成されたモノクローナル抗体、抗体ライブラリからスクリーニングされたモノクローナル抗体、単細胞PCRから生成されモノクローナル抗体、遺伝子工学により改造されたモノクローナル抗体、異種抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、ナノ抗体(Nanobody)、重鎖抗体(Heavy chain antibody)から1つまたは複数選択される。
【0061】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記抗体断片の種類として、Fab、Fab-SH、Fv、scFv、F(ab’)、DsFv、Diabody、Minibody、Tribody、Sc(Fv)、[Sc(Fv)、(ScFv-SA)から1つまたは複数選択される。
【0062】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記GP73を特異的に阻害する核酸は、siRNA、shRNA、microRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、miRNA、核酸アプタマーのうちの1つまたは複数を含み、場合によって、GP73を特異的に阻害するsiRNAは、配列番号:1~配列番号:9によって示されるヌクレオチド配列から1本または複数本選択されるか、または、配列番号:1~配列番号:9によって示されるいずれか1本のヌクレオチド配列と少なくとも60%、70%、80%、90%の相同性を有する配列から選択され、さらに場合によって、GP73を特異的に阻害するsiRNAは、配列番号:4によって示されるヌクレオチド配列またはそれと少なくとも60%、70%、80%、90%の相同性を有する配列から選択される。
【0063】
上記の使用、薬物の可能な実現形態において、前記薬物は、さらに、少なくとも1つの薬学的に許容される補助材料を含む。
【0064】
上記の使用、薬物、方法の可能な実現形態において、前記薬物の使用方法は、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、経口投与のうちの1つまたは複数である。
【0065】
上記の方法の可能な実現形態において、前記被験者は、ヒト、マウス、ラット、サル、ウサギ、豚、犬から1つまたは複数選択される。
【発明の効果】
【0066】
(1)本願発明の実施例において、発明者らは、GP73が血糖調節に重要な役割を果たすことを発見し、特に、可溶性GP73がグルカゴンに特異的に結合して複合体を形成して、グルカゴンの血糖上昇機能および糖新生機能を増強し、グルカゴンの半減期を延長することができることをすでに発見し、可溶性GP73が、グルカゴンに依存しない方法により、肝臓おける糖生成および糖新生シグナル伝達経路を活性化することができることを発見し、発明者らは、さらに、可溶性GP73がマウスの空腹時血糖を上昇させ、耐糖能の異常およびピルビン酸耐性の異常を誘発することができることを発見し、発明者らはまた、上で発見された血糖に対するGP73の調節作用に基づいて、動物実験により、例えば、抗GP73モノクローナル抗体でGP73をブロックおよび/または中和する方法、または、GP73レベルをダウンレギュレートすることで糖尿病を治療する方法、または、RNA干渉でGP73の発現量を特異的に下げて糖尿病を治療する方法により、GP73阻害剤が糖尿病マウスの血糖値および糖化ヘモグロビンレベルを下げることができ、膵島β細胞に対する保護作用を有し、糖尿病を治療する効果を奏することを証明した。
【0067】
(2)本願発明の実施例において、発明者らは、GP73とグルカゴンとの相互結合およびグルカゴンの検出力に対する影響を初めて発見し、したがって、GP73阻害剤を、グルカゴンを阻害する薬物の製造に用いることもできる。本願発明の実施例において、発明者らは、GP73-グルカゴン複合体の存在を証明し、GP73とグルカゴンとの相互作用に対するさらなる研究にガイダンス意味がある。
【0068】
(3)本願発明の実施例において、発明者らは、可溶性GP73が、グルカゴンに依存しない方法により、肝臓の糖生成および糖新生シグナル伝達経路を活性化することができることを初めて発見した。
【0069】
(4)本願発明の実施例において、発明者らは、GP73の糖尿病患者グループにおける発現レベルは、健常者グループにおけるGP73の発現レベルよりも顕著に高いことを発見し、したがって、GP73をマーカーとして糖尿病の検出に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
1つ以上の実施例は、それに対応する図面におけるピクチャによって例示的に説明され、これらの例示的な説明は実施例を限定するものではない。本明細書に専用される単語「例示的」は、「例、実施例または説明性として用いられる」ことを意味する。本明細書では、「例示的」として記載されるいずれの実施例は、他の実施例よりも好ましいまたはよいと解釈されるべきではない。
図1図1Aは、本願発明の実施例1における、健常者グループおよび糖尿病患者グループのうち、群に入っている人々の性別と年齢のマッチング状況を示し、結果は、2つの群の人々の性別と年齢の分布には有意差がないことを示す。図1Bは、本願発明の実施例1における、健常者グループおよび糖尿病患者グループの血清中の可溶性GP73タンパク質レベルを示し、結果は、糖尿病患者グループは血清中の可溶性GP73タンパク質レベルが健常者グループよりも有意に高い(P<0.01)ことを示す。
図2図2Aは、本願発明の実施例2における、組換えマウス可溶性GP73(rmsGP73)注射実験群およびPBS対照群のマウスの空腹時血糖値を示し、結果は、rmsGP73注射実験群はマウスの空腹時血糖がPBS対照群よりも有意に高い(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。図2Bは、本願発明の実施例2における、rmsGP73注射実験群およびPBS対照群のマウスの腹腔内耐糖能IPGTTレベルを示し、結果は、rmsGP73注射実験群のマウスがIPGTT異常(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)を呈することを示す。図2Cは、本願発明の実施例2における、rmsGP73注射実験群およびPBS対照群のマウスのピルビン酸耐性PTTレベルを示し、結果は、rmsGP73注射実験群のマウスのPTT異常(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)を示す。図2Dは、本願発明の実施例2における、rmsGP73注射実験群およびPBS対照群のマウスのインスリン耐性ITTレベルを示し、結果は、rmsGP73注射実験群のマウスは、対照群と有意差がない(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。
図3図3Aは、本願発明の実施例3における、蛍光色素Cy7対照群、Cy7標識rmsGP73タンパク質(rmsGP73-Cy7)実験群のマウスに静脈注射をした後の蛍光分布状況を示し、結果は、rmsGP73タンパク質を注射してから30分後、肝臓および腎臓への集積が明らかである。図3Bは、本願発明の実施例3における、Cy7対照群、rmsGP73-Cy7実験群のマウスに静脈注射をした後の各臓器における蛍光の分布状況を示し、結果は、非標識Cy7色素の広範な分布と異なって、rmsGP73タンパク質は、主に肝臓および腎臓に集積することを示す。図3Cは、本願発明の実施例3における、Cy7対照群、rmsGP73-Cy7実験群のマウスに静脈注射をした後の各臓器における蛍光強度値を示し、結果は、rmsGP73-Cy7群は肝臓、腎臓および脾臓における蛍光強度値が対照群よりも有意に高いことを示す。
図4図4Aは、本願発明の実施例4における、Reichert 4SPRで測定した組換えヒト可溶性GP73(rhsGP73)とグルカゴン(GCG)との結合および解離曲線を示す。図4Bは、本願発明の実施例4における、Reichert 4SPRで測定した組換えマウス可溶性GP73(rmsGP73)とGCGとの結合および解離曲線を示す。図4Cは、本願発明の実施例4における、組換えラット可溶性GP73(rrsGP73)とGCGとの結合および解離曲線を示す。図4Dは、本願発明の実施例4における、Reichert 4SPRで測定した組換えサル可溶性GP73(rMsGP73)とGCGとの結合および解離曲線を示す。図4Eは、本願発明の実施例4における、免疫共沈降実験での可溶性GP73とGCGとの体内結合能力を示し、結果は、マウス血清中の可溶性GP73がGCGと特異的に相互作用し、このような相互作用は、絶食時間が長くなるのにつれて徐々に増強することを示す。
図5図5Aは、本願発明の実施例5における、測定したGCGの半減期に対するrmsGP73の影響を示し、結果は、rmsGP73がGCGの半減期を有意に延長することができる(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。図5Bは、本願発明の実施例5における、GCG実験群、rmsGP73実験群およびrmsGP73+GCG実験群のマウスの血糖状況を示し、結果は、組換えマウス可溶性GP73タンパク質が、マウスの体内でGCGの糖上昇能力を有意に促進できる(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。図5Cは、本願発明の実施例5における、rmsGP73+GCG+IgG実験群およびrmsGP73+GCG+6B6実験群のマウスの血糖状況を示し、結果は、rmsGP73がマウスの体内でGCGの糖上昇能力を促進することが特異的な抗GP73抗体6B6によってブロックされ得る(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。
図6図6Aは、本願発明の実施例6における、マウス初代肝細胞が血清あり培養条件で、初代肝細胞の糖生成に対する濃度の異なるrmsGP73の影響を示し、結果は、rmsGP73が用量依存性方法でマウス初代肝細胞の糖生成を示す。図6Bは、本願発明の実施例6における、マウス初代肝細胞が無血清培養条件で、初代肝細胞の糖生成に対する濃度の異なるrmsGP73の影響を示し、結果は、rmsGP73タンパク質がいかなる他のホルモンの助けを借りずに、用量依存性方法で初代肝細胞の糖生成を直接促進することを示す。図6Cは、本願発明の実施例6における、マウス初代肝細胞が無血清培養条件で、rmsGP73タンパク質がマウス初代肝細胞の糖生成を促進することに対する抗GP73抗体6B6の影響を示し、結果は、6B6が、rmsGP73によって促進される初代肝細胞の糖生成を特異的にブロックできることを示す。図6Dは、本願発明の実施例6における、マウス初代肝細胞が無血清培養条件で、初代肝細胞での糖新生の律速酵素に対するrmsGP73の影響を示し、結果は、rmsGP73が3種類の糖新生鍵酵素(Pck1、PcxおよびG6pc)の発現のアップレギュレートを促進することを示す。図6Eは、本願発明の実施例6における、HepG2細胞株について、糖新生シグナル伝達経路の鍵キナーゼPKAの酵素活性に対するrhsGP73の影響を示し、結果は、陽性対照物IBMX(Sigma Aldrich、商品番号:I5879)と同様に、rhsGP73はPKAのリン酸化レベル(PKA-p)および他のキナーゼ活性(RRXρS/T)を促進することを示す。図6Fは、本願発明の実施例6における、PBS対照群、GCG実験群、rmsGP73実験群およびrmsGP73+GCG実験群のマウスの肝臓組織のCREB-p、CREBおよびα-Tubulinのイムノブロット図であり、結果は、rmsGP73が糖新生シグナル伝達経路の活性化を直接促進し、GCGの肝臓の糖新生能力を相乗的に増強することを示す。
図7図7Aは、本願発明の実施例7における、マウスIgGおよび抗GP73抗体6B6を30mg/kg注射した群の、注射後の毎週の空腹時血糖値を示し、結果は、6B6高用量が1型糖尿病マウスの血糖を有意に下げる作用がある(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。図7Bは、本願発明の実施例7における、マウスIgGおよび6B6抗体を7.5、15、30mg/kgの異なる用量で注射した群の、注射後の4週目の糖化ヘモグロビンHbA1cレベルを示し、結果は、抗GP73抗体6B6の中間用量および高用量が1型糖尿病マウスの糖化ヘモグロビンを有意に下げる作用がある(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。
図8図8Aは、本願発明の実施例8における、STZ+IgG群およびSTZ+6B6群のマウスの3色免疫蛍光染色図であり、結果は、抗GP73抗体6B6が1型糖尿病マウスの膵島α細胞およびβ細胞に対する顕著な保護作用を有することを示す。図8Bは、本願発明の実施例8における、STZ+IgG群およびSTZ+6B6群のマウスの膵島α細胞および膵島β細胞のカウント図であり、結果は、抗GP73抗体6B6が1型糖尿病マウスの膵島α細胞およびβ細胞に対する有意な保護作用を有する(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。図8Cは、本願発明の実施例8における、STZ+IgG群およびSTZ+6B6群のマウスの膵島α細胞および膵島β細胞のカウント図であり、結果は、抗GP73抗体6B6が1型糖尿病マウスの膵島α細胞およびβ細胞に対する有意な保護作用を有する(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。図8Dは、本願発明の実施例8における、STZ+IgG群およびSTZ+6B6群のマウスの膵島β細胞/α細胞の比の図であり、結果は、抗GP73抗体6B6が1型糖尿病マウスのβ細胞/α細胞の比に有意な影響がないことを示す。
図9図9Aは、本願発明の実施例9における、9本のGP73 siRNAにH22細胞をトランスフェクションした後のイムノブロット図であり、結果は、細胞の内因性GP73タンパク質レベルに対する異なる配列のノックダウン作用の効率が異なり、4番配列を候補siRNAとして選択することを示す。図9Bは、本願発明の実施例9における、対照(Ctr siRNA)群およびGP73 siRNA群に注射した後の4週目のマウスの空腹時血糖値を示し、結果は、GP73 siRNAが2型糖尿病マウスの空腹時血糖を有意に下げる作用を有する(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。図9Cは、本願発明の実施例9における、Ctr siRNA群およびGP73 siRNA群に注射した後の4週目のIPGTTレベルを示し、結果は、GP73 siRNAが2型糖尿病マウスのIPGTTに対する顕著な改善作用を有する(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。図9Dは、本願発明の実施例9における、GP73 siRNAが2型糖尿病マウスのIPGTTのAUC値(area under the curve)への影響の差が有意である(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。図9Eは、本願発明の実施例9における、Ctr siRNA群およびGP73 siRNA群に注射した後の4週目のITTレベルを示し、結果は、GP73 siRNAが2型糖尿病マウスのITTに対する顕著な改善作用を有する(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。図9Fは、本願発明の実施例9における、GP73 siRNAが2型糖尿病マウスのITTのAUC値への影響の差が有意である(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)ことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本願発明の実施例の目的、技術案および利点をより明確にするために、以下では、本願発明の実施例の技術案について明確かつ完全に説明し、説明された実施例は本願発明の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではないことは明らかである。本願発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力なしに得たすべての他の実施例は、いずれの本願発明の保護範囲に属されるべきである。
【0072】
また、本願発明をよりよく説明するために、以下の具体的な実施形態では、多くの具体的な詳細を示した。当業者は、一部の具体的な詳細がなくても、本願発明は実施され得ることを理解できるだろう。一部の実施例において、本願発明の要旨を強調するために、当業者に周知の原材料、要素、方法、手段についての詳細な説明を省略する。
【0073】
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲を通じて、用語「含む」またはその変形である「含有」または「備える」などは、他の要素または他の構成要素を排除するものではなく、述べられた要素または構成要素を含むと理解されるべきである。
【0074】
一、用語の説明
本願発明において、「GP73」という用語は、ゴルジ膜貫通糖タンパク質73(GP73)を言い、GOLM1(Golgi membrane protein 1))またはGOLPH2(Golgi phosphorprotein 2)とも呼ばれる。GP73の55番目のアミノ酸の近傍に、前駆タンパク質転換酵素(Proprotein convertase、PC)の切断部位があり、全長GP73がPCによって切断された後、ゴルジ体から放出され、血液循環系に分泌され、可溶性GP73と呼ばれる。本願発明では、GP73は、有機体内に存在するかまたは体外で単離された天然または組換えの全長GP73、GP73断片、GP73突然変異体または修飾されたGP73を包括的に指す。場合によって、前記GP73は、全長GP73または1~55位のアミノ酸を含まないGP73から選択される。「GP73」という用語は、他の単語と組み合わせて使用される場合にも、同様に、本明細書で定義された意味を有し、例えば、GP73阻害剤、抗GP73抗体、抗GP73モノクローナル抗体におけるGP73は、いずれも本明細書で定義された意味を有する。
【0075】
本願発明において、「GP73阻害剤」という用語は、GP73のレベル(遺伝子レベルまたはタンパク質レベルを含む)、活性、機能および/または安定性をダウンレギュレートすることができるいずれのポリペプチド、タンパク質、核酸配列または小分子化合物を指す。場合によって、前記GP73のレベル、活性、機能および/または安定性をダウンレギュレートするポリペプチド、タンパク質、核酸配列または小分子化合物は、(1)GP73をコードする遺伝子の転写、正確な切断および/または翻訳を阻害できる性質、(2)GP73と有機体内の受容体および/またはリガンドとの結合を阻害または妨害する性質、(3)GP73と有機体内の特異性相互作用分子との相互作用を阻害または妨害する性質、(4)GP73の有機体内での半減期を短縮する性質のうちの1つまたは複数を有する。GP73阻害剤は、抗GP73抗体(抗GP73モノクローナル抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体融合タンパク質を含む)、GP73を特異的に阻害するsiRNA、GP73を特異的に阻害するshRNA、GP73を特異的に阻害するmicroRNA、GP73を特異的に阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド、GP73を特異的に阻害する核酸アプタマー、GP73を特異的に阻害する小分子化合物、GP73を特異的に阻害する小分子化合物を含むが、これらに限定されない。
【0076】
本願発明において、「抗体」という用語は、4本のポリペプチド鎖からなる免疫グロブリン分子を指し、4本のポリペプチド鎖は、ジスルフィド結合により互いに連結された2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を指す。
【0077】
本願発明において、「モノクローナル抗体」という用語は、ある特定のエピトープのみに指向性を有する、高度に均質である抗体を指し、ハイブリドーマ技術、抗体ライブラリ技術、トランスジェニックマウス技術または単一細胞PCR技術などの既知の技術により製造できる。
【0078】
本願発明において、「キメラ抗体」という用語は、DNA組換え技術を利用して、異種モノクローナル抗体の軽鎖や重鎖可変領域の遺伝子をヒト抗体定常領域含有の発現ベクターに挿入し、哺乳動物細胞を形質転換してキメラ抗体を発現させることを指し、このように発現された抗体分子の軽鎖や重鎖の可変領域は異種であり、定常領域の供給源はヒトであり、こうすると、抗体分子全体のほぼ2/3の部分の供給源がヒトである。このように生成された抗体は、抗原に特異的に結合する親抗体の能力を保持しながら、異種抗体の免疫原性を下げる。
【0079】
本願発明において、「ヒト化抗体」という用語は、キメラ抗体の可変領域におけるFRに依然としてある程度の免疫原性が残っているため、異種成分を減少させるためには、遺伝子工学技術を利用して、キメラ抗体をベースに、ヒトFRで異種FRを置き換え、ヒト化の度合がより高い抗体を形成し、即ち、CDRが異種である以外に、残りは全部ヒト構造であるため、ヒト化抗体は、マウスモノクローナル抗体の抗原結合特異性を取得しながら、異種性を低下させるか、または、表面リモデリングなどの技術によって異種抗体のアミノ酸配列の大部分をヒト配列で置き換えながら、親の異種モノクローナル抗体の親和性および特異性を基本的に保持し、かつ、異種性を低下させ、ヒトのモノクローナル抗体への使用に有利である。
【0080】
本願発明において、「完全ヒト抗体」という用語は、遺伝子組み換えまたはトランス染色体技術により、ヒトコード抗体の遺伝子を全部遺伝子工学により改造された抗体遺伝子欠失動物に移して、動物にヒト抗体を発現させ、抗体の供給源が完全にヒトであるという目的を達成するか、またはヒト抗体ライブラリのスクリーニングによってモノクローナル抗体を取得するか、または単細胞PCR技術によってヒトモノクローナル抗体を取得する。
【0081】
本明細書において、「抗体の抗原結合断片」という用語は、全長抗体の一部を指し、典型的には標的結合領域または可変領域を指す。
【0082】
本明細書において、ナノ抗体、重鎖抗体、Fab、Fab-SH、Fv、scFv、F(ab’)、DsFv、Diabody、Minibody、Tribody、Sc(Fv)、[Sc(Fv)、(ScFv-SA)などの具体的に解釈していない名詞も、当該技術分野での通常の意味を有する。
【0083】
本明細書において、「治療」という用語は、有益または所望の結果をもたらすことができることを指し、当該結果は、1つまたは複数の症状を予防、緩和、改善または治癒すること、病症の重症度が低減すること、生存期間が予想の生存期間よりも長くなることを含むが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書において、「有効量」という用語は、前記有効成分が本願発明の実施例の方法によって投与される場合、疾患を治療するための有効成分を効果的に送達するのに十分な量を指し、患者に有効成分を1回または複数回投与して、診断または治療される患者に予想効果の量または用量を提供する。有効量は、参加している臨床医師が当業者として既知の技術および同様の状況下で得られた観察結果によって決定するものである。投与される有効成分の有効量または用量を決定する際に、参加している臨床医師は、複数の要因を考慮する必要があり、前記要因には、哺乳動物の種と、体積、年齢および一般的な健康と、係る具体的な疾患と、当該疾患の関与度合または重症度と、個別患者の応答と、投与される具体的な化合物と、投与モデルと、投与される製剤のバイオアベイラビリティ性質と、選択された投与計画と、併用薬物療法の使用と、他の関連する状況とが含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書において、「薬学的に許容される補助材料」は、通常の製剤用の薬学的ベクター、賦形剤および他の添加剤であってもよく、例えば、一般的な抗体薬物の補助材料などがある。
【0086】
二、検出方法又は実験方法
1、本願発明において、ヒト血清中の可溶性GP73の検出方法は、下記のとおりである。単純ランダムサンプリング方法を用いて、複数の健康検査センターの内分泌科から同じ期間内の190名の糖尿病患者を抽出し、複数の健康検査センターから同じ期間内の75名の健康な被験者をランダムに選択して対照群とすることである。一晩絶食後、患者および健常者グループの両方から静脈血を採取し、血清を-20℃の低温冷凍庫に保存する。すべてのサンプルを全部収集した後、磁気微粒子化学発光免疫分析法に基づくキット(熱景生物から購入)を用いて、ヒト血清中の可溶性GP73レベルを検出する。
【0087】
2、本願発明において、マウスグルコースの検出方法は、下記のとおりである。すべての血液サンプルは尾部から採取され、グルコースオキシダーゼ法で血糖を測定し、全自動血糖計(ACCU-CHEK;Roche会社)を用いて検出し、正常なマウスおよび糖尿病マウスの両方とも6時間絶食させた後、空腹時血糖を測定し、午前9時にランダム血糖値を測定し、血糖値が35mM(血糖計の検出の上限)を超える場合、35mM値と記録する。
【0088】
3、本願発明において、糖代謝実験の検出方法は、下記のとおりである。グルコース、インスリンおよびピルビン酸耐性試験において、マウスを12時間絶食させた後、D-グルコース(Sigma、商品番号:G8270、1.5g/kg体重)を腹腔内注射し、インスリン(Sigma、商品番号:I9278、0.75U/kg体重)またはピルビン酸ナトリウム(Sigma、商品番号:P2256、2g/kg体重)を尾静脈に注射し、注射後、0分、15分、30分、45分、60分、120分、24hに、マウスの尾静脈から採血し、血糖を測定し、腹腔内注射する耐糖能(IPGTT)、ピルビン酸耐性(PTT)およびインスリン耐糖能(ITT)を決定する。
【0089】
4、本願発明において、GP73の糖上昇実験の検出方法は、下記のとおりである。雄のC57BL/6Nマウスを選択して、6時間絶食させた後、rmsGP73(80μg/kg体重)を尾静脈に注射し、注射後、0分、15分、30分、60分、90分、120分に、マウスの尾静脈から採血し、血糖を測定する。
【0090】
5、本願発明において、マウス生体イメージング実験の検出方法は、下記のとおりである。雄のC57BL/6Nマウスを選択して、一晩絶食させ、1日前にマウスの全身を剃毛し、rmsGP73をCy7色素で標識し、Cy7色素対照およびrmsGP73-Cy7タンパク質の蛍光強度を96ウェルプレートで一致するように調整し、蛍光強度調整済みのCy7色素およびrmsGP73-Cy7は尾静脈注射によりマウスの体内(即ち、Cy7対照群およびrmsGP73-Cy7実験群は、各群に4匹ずつあり、注射量は200ul/匹である)に入り、マウスを麻酔ボックスに入れて麻酔を行い、注射後、0分および30分に生体イメージング機器でマウス生体のイメージングを行って、マウス体内の蛍光分布状況を観察し、その後、迅速にマウスを殺して、白色脂肪、筋肉、肝臓、脾臓、膵臓、腎臓、脳を取り出して、整然と並べて、マウスイメージング機器に入れて各臓器の測定蛍光強度を観察した。
【0091】
6、本願発明において、マイクロスケール熱泳動実験の検出方法は、下記のとおりである。Hisタグ付きの組換え可溶性GP73とRED-tris-NTAラベルとを室温で遮光して30分間インキュベートし、PCRチューブ内で15個の濃度勾配のGCGを調製し、濃度の異なるGCGと標識GP73タンパク質とを均一に混合して、室温で30分間インキュベートし、キャピラリーチューブを使用して上記の混合液をそれぞれ吸い取って、順番にキャピラリーカラムスロットに注入し、マイクロスケール熱泳動機器(NanoTemper会社)を利用し、NT115モードを選択してGP73タンパク質とGCGとの結合を検出し、フィッティング曲線から親和力値を計算する。
【0092】
7、本願発明において、OpenSPR実験の検出方法は、下記のとおりである。アミノチップ(AmineSensorChips、商品番号:SEN-AU-100-3-AMINE、lot:#SAB0122、Nicoya会社)により組換え可溶性GP73をカップリングし、濃度勾配の異なるグルカゴン(HY-P0082、lot:#34006)は移動相であり、openSPR(OpenSPR-XT、Nicoya会社製品)により、その結合および解離曲線を測定し、曲線フィッティングにより親和力値を得る。
【0093】
8、本願発明において、免疫共沈降実験の検出方法は、下記のとおりである。眼窩後静脈叢採血方法を用いて、マウスの血液を収集した後、遠心分離してマウス血清を取得し、抗マウスGP73抗体(Santa Cruz、商品番号:sc-365817)、抗グルカゴン抗体(Abcam、商品番号:ab92517)、RRXρS/T抗体(CST会社、商品番号:9624)、PKA-p抗体(CST会社、商品番号:5661)、α-Tubulin抗体(Sigma Aldrich、商品番号:T9026)またはPKA(CST会社、商品番号:5842)抗体のうちのいずれか1つを加えて、4℃の振とうで1時間インキュベートした後、アガロースビーズ(Protein A/G PLUS-Agarose、Santa Cruz、商品番号:sc-2003)を加えて引き続き2時間インキュベートする。アガロースビーズを結合したタンパク質をSDS溶解液に加え、沸騰水浴を10分間行い、遠心分離後に上清をとってSDS-PAGEを行う。電気泳動が終わった後、セミドライ転写システムを利用してゲル上のタンパク質をPVDF支持膜に転写し、5%のスキムミルクブロッキング液中で、室温の振とうで1時間インキュベートしてブロッキングし、二次抗体の種特異性に応じて、それぞれHRP標識ヤギ抗マウス二次抗体(中杉金橋、商品番号:ZB-2305)またはHRP標識ヤギ抗ウサギ二次抗体(中杉金橋、商品番号:ZB-2301)を加え、室温の振とうで1時間インキュベートする。適量のECL発色液をとって、PVDF膜に均一に滴下し、Tanon 5200全自動光学発光イメージング分析システムを利用してイメージングを行う。
【0094】
9、本願発明において、グルカゴン半減期の検出方法は、下記のとおりである。雌のC57BL/6Nマウスの尾静脈にGCG(1μg/kg体重)またはGCG(1μg/kg体重)と組換えマウス可溶性GP73タンパク質(1mg/kg体重)との混合物(室温で10分間インキュベートする)を注射し、それぞれ注射後、0分、1分、3分、5分、10分、20分、30分に、眼窩後静脈叢採血方法を用いてマウスの血液を収集する。採集チューブ内で、必要の濃度にしたがって3種類のタンパク質酵素阻害剤(DPP4、Protease inhibitor cocktailおよびAprotinin)を加えて、迅速に均一に混合し、室温で1時間静置し、3000rpmで10分間遠心分離して、マウス血清を取得する。GCGの濃度は、MILLIPLEX(登録商標)MAP RAT METABOLIC MAGNETIC BEAD PANEL KIT 96 Well Plate Assayキット(Millipore、商品番号RMHMAG-84K)を用いて検出する。得られたデータを使用して非コンパートメントモデルの薬物動態パラメータを計算し、その後、半減期値を逐次算出する。
【0095】
GCG(MCEから購入、商品番号:HY-P0082、バッチ番号:34006)、組換えマウスの可溶性GP73タンパク質rmsGP73、本実験室HEK293細胞発現製品(即ち、実施例2の組換えマウスの可溶性GP73)、タンパク質酵素阻害剤(Protease Inhibotor cocktail I、Milliporeから購入、商品番号:20-201)、DPP4阻害剤(Milliporeから購入、商品番号:DPP4-010)、Aprotinin(Sigmaから購入、商品番号:A6106)。
【0096】
10、本願発明において、免疫蛍光染色の方法は、下記のとおりである。マウスを殺した後、剥離した膵臓組織を、10%(v/v)のホルマリンで固定してパラフィンスライス標本を製造し、厚さ5μmのパラフィンスライスを作成し、免疫蛍光スライスを水に脱パラフィンした後、30分間ブロッキングし、抗マウスインスリン抗体(Abcam、商品番号:ab181547)または抗グルカゴン抗体(Abcam、商品番号:ab10988)と共に1時間インキュベートしてから、繰り返して3回洗浄する。対応する蛍光二次抗体を加えて、室温で1時間インキュベートした後、洗浄およびDAPI染色を行う。共焦点蛍光顕微鏡(Zeiss LSM710)またはオートデジタルスライドスキャナ(3D HISTECH)で画像を撮影する。膵臓毎に5~10個の等間隔スライスイメージを取り、各群に少なくとも3匹のマウスがあり、少なくとも3つの視野で陽性細胞を染色し、細胞の総数は200以上である。
【0097】
実施例1.糖尿病患者グループは、血清中の可溶性GP73レベルが健常者グループよりも有意に高い
実験方法:糖尿病患者グループと健常者グループとの間に血清中の可溶性GP73のレベルの差があるか否かを比較するために、、複数の健康検査センターの外来検診で身体検査を受けた75名の健常者グループおよび内分泌科で糖尿病と診断された190名の糖尿病患者について、一晩絶食後の血清中の可溶性GP73レベルを検出した。これらの群に入っている人々の性別と年齢のマッチングを行い、健常者グループおよび糖尿病患者グループにおける分布には有意差がない(図1Aに示されるように)。
【0098】
実験結果:健常者グループにおいて、可溶性GP73の平均血清濃度が52.81ng/ml(3.5~146ng/ml)であり、糖尿病患者グループにおいて、可溶性GP73の平均血清濃度が68.82ng/ml(19.36~198ng/ml)であり、2つの群には有意な統計的差(P<0.01)がある(図1Bに示されるように)。以上の結果は、血清中の可溶性GP73レベルは、糖尿病患者グループが健常者グループよりも有意に高いことを示す。
【0099】
実施例2.組換え可溶性GP73で糖代謝を調節する
実験方法:まず、哺乳動物細胞発現システムHEK293細胞でGP73タンパク質の発現精製を行って、遺伝子組換えマウス可溶性GP73タンパク質(rmsGP73)(NCBI Reference Sequence:NP_001030294.1)を取得した。当該タンパク質は、GP73の1~55番目のアミノ酸が欠失しており、血中の可溶性GP73の主な存在形態である(本願発明の実施例に係るマウス実験に使用される組換え可溶性GP73タンパク質は、いずれも当該組換えマウス可溶性GP73タンパク質であり、rmsGP73と略称する)。C57BL/6Nマウス(即ち、実験群およびPBS対照群は、各群にマウスが10匹ずつある)に尾静脈からrmsGP73およびPBSを300ng/匹の用量注射し、注射後に、24時間、48時間でマウスの空腹時血糖(血糖計および血糖試験紙はRoche会社から購入)を検出し、検出方法または実験方法の第3部分にしたって腹腔内注射を行って、耐糖能(IPGTT)、ピルビン酸耐性(PTT)およびインスリン耐糖能(ITT)を検出した。
【0100】
実験結果:注射実験群は、マウスの空腹時血糖が対照群よりも有意に高い(図2Aに示されるように)。重要なことは、代謝実験において、rmsGP73注射実験群のマウスは対照群と比較すると、耐糖能(IPGTT)異常(図2Bに示されるように)および糖新生能力を代表するピルビン酸耐性(PTT)異常(図2Cに示されるように)を呈し、インスリン感受性を代表するインスリン耐糖能試験(ITT)は、対照群マウスと有意な差がない(図2Dに示されるように)ということである。
【0101】
実施例3.組換え可溶性GP73のマウスの肝臓および腎臓への集積
実験方法:検出方法または実験方法の第5部分にしたがって、蛍光色素Cy7対照群、Cy7標識rmsGP73タンパク質(rmsGP73-Cy7)実験群のマウスに静脈注射をした後の蛍光分布状況、蛍光強度を検出した。
【0102】
実験結果:マウス生体イメージは、Cy7対照群と比較すると、rmsGP73-Cy7が主に肝臓および腎臓に集積する(図3Aに示されるように)ことを示す。その臓器を取って、Cy7対照群と比較すると、肝臓および腎臓でのrmsGP73-Cy7の蛍光強度が最も強い(図3Bに示されるように)。マウスの各臓器の蛍光強度についての分析処理を行って、rmsGP73-Cy7の肝臓、腎臓、脾臓での蛍光強度が、Cy7対照群によりも有意に高い(図3Cに示されるように)ことを発見した。
【0103】
実施例4.組換え可溶性GP73はグルカゴンと特異的に相互作用する
血糖値が一定の閾値まで下がると、グルカゴンが急速に分泌される。グルタミン、アルギニンおよびアラニンなどの一部のアミノ酸と、血漿中の遊離脂肪酸とは、グルカゴン分泌の強力な刺激剤である。胃阻害ペプチド(GIP)は、低血糖状態でグルカゴンの分泌を促進する。インスリン、γ-アミノ酪酸、レプチンおよびソマトスタチンなどは、グルカゴンの分泌を直接阻害し、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)は、グルカゴンの分泌を間接的に阻害する。また、中枢神経系は、重要な血糖値レセプターであり、迷走神経および/またはコリン作動性神経により、グルカゴンの分泌を直接的または間接的に調節する。血中のインスリンとグルカゴンとの比例(I/G)は、肝臓のグリコーゲンおよび糖新生をコントロールする鍵となる要因であり、高い比例のI/Gは、エネルギーが十分な状態であり、グリコーゲン合成が増加し、糖新生が阻害されることを示す。逆であると、グリコーゲンが分解し、糖新生が増強される。
【0104】
高グルカゴン血症は、様々なタイプの糖尿病で見られる。グルカゴンの分泌は、内因性インスリンに調節され、この調節メカニズムの喪失により、有機体がグルカゴンをより多く分泌し、血糖が上昇し、糖尿病が誘発される。2型糖尿病モデルにおいて、グルカゴンは、高血糖の発症の鍵となる要因であり、グルカゴン受容体が欠損している正常なマウスは、低血糖の症状を表したが、グルカゴン受容体が欠損している糖尿病マウス(db/db)は、高インスリンまたは高血糖の症状を表さなかった。2型糖尿病において、インスリンの直接や間接的な作用が損なわれるが、グルカゴンシグナルの増強により、グリコーゲン分解および糖新生をさらに悪化させ、それにより、グルコースが多くなり、血糖が上昇する。臨床研究も、グルカゴンをタイミング悪く分泌することは、2型糖尿病患者の高血糖の主な要因であることを示す。2型糖尿病患者は、インスリン分泌およびインスリン抵抗性が低いと同時に、空腹グルカゴンレベルの上昇、食後グルカゴン阻害機能の低下、および血糖およびインスリンによるグルカゴンの阻害分泌に対する細胞の感受性の低下などのグルカゴン調節不全を伴い、したがって、2型糖尿病は、一般的に、インスリン欠損およびインスリン抵抗性、グルカゴン過剰二重ホルモン障害性の膵臓疾患であると見なされる。グルカゴン受容体遺伝子がノックダウンされた(GCGR-/-)マウス(1型糖尿病モデルマウス)は、ほぼすべてのβ細胞が破壊されても、糖尿病の臨床所見を表さないが、肝細胞発現GCGRがアデノウイルスグルカゴン受容体(GCGR)の発現ベクターによって回復された後、マウスの血糖値が急速に上昇する。長期的に1型糖尿病に罹患し、かつ膵島細胞が残っている患者にとって、高血糖への重要な寄与物がグルカゴンである可能性がある。すべての研究結果は、いずれもグルカゴンが糖尿病進行の鍵となる要因であり、グルカゴン活性を下げて、糖尿病の治療をより一層進めることを示す。
【0105】
4.1 異なる種における組換え可溶性GP73およびGCGの親和力の測定
実験方法:GP73とグルカゴン(GCG、MCE会社から購入、HY-P0082)との相互作用を研究するために、まず、Reichert 4SPR(Life Sciences会社)、マイクロスケール熱泳動実験(microscale thermophoresis、MST、NanoTemper会社)およびOpenSPR(OpenSPR-XT、Nicoya会社)を用いて、組換え可溶性GP73とGCGとの結合活性を測定した。
【0106】
実験結果:組換えヒト可溶性GP73(rhsGP73)は、GCGと特異的に結合することができ、Reichert 4SPR、MSTおよびOpenSPRの3つの方法で測定された親和力は、それぞれKD=2.83μM、KD=2.45μMおよびKD=2.80μMである(図4Aおよび表1に示されるように)。組換えマウス(rmsGP73)、ラット(rrsGP73)およびサル(rMsGP73)の可溶性GP73も、同様に、GCGと特異的に結合することができる(図4B、C、Dおよび表1に示されるように)。各種の可溶性GP73は、いずれも当社が哺乳動物細胞発現精製を用いて製造したものである。サル可溶性GP73:NCBI Reference Sequence:XP_011769391.1;ラット可溶性GP73:NCBI Reference Sequence:XP_001056825.3;マウス可溶性GP73:NCBI Reference Sequence:NP_001030294.1;ヒト可溶性GP73:NCBI Reference Sequence:NP_057632.2。
【0107】
【表1】
【0108】
4.2 可溶性GP73およびGCGの体内結合活性の検出
実験方法:可溶性GP73およびGCGの体内結合活性を実証するために、異なる時間を絶食したC57BL/6Nマウスから採血した後、免疫共沈降実験を行った。マウス抗GP73モノクローナル抗体F12は、Santa cruz会社から購入した。
実験結果:血清中のGP73沈殿物はGCGと結合する(図4E)。興味深いことに、GP73-GCGの相互作用バンドは徐々に暗くなり、GP73-GCG複合体は、絶食時間が長くなるのにつれて徐々に増加することを示す(図4Eに示される)。
【0109】
実施例5.組換え可溶性GP73は、血漿GCGの半減期を延長し、GCGの糖上昇作用を促進する
前述の研究結果は、マウスの空腹時血糖の上昇および耐糖能の異常が、rmsGP73によって引き起こされることができ、そして、sGP73はGCGと特異的に結合することが可能であることを示し、我々に、sGP73は、GCGが急速に分解および/または脱アミド化されて機能しなくなることを回避するために、体内でGCGに対してシャペロン分子の機能を果たす可能性が高いことを示唆する。このため、rmsGP73のグルカゴン半減期に対する影響を実験研究した。
【0110】
実験方法:C57BL/6Nマウスを12匹(8週齢、体重20~25g、雌)を使用し、GCG群およびGCG+rmsGP73群の2つの群に分けられ、各群に6匹ずつある。実験方法の詳細は、検出方法または試験方法の第9部分を参照できる。
【0111】
実験結果:組換え可溶性GP73は、血漿グルカゴンの半減期を延長することができる(図5Aおよび表2に示される)。
【0112】
【表2】
【0113】
GCGの活性に対する可溶性GP73の影響を研究するために、GCG、rmsGP73、rmsGP73+GCGの3つの実験群を設定して糖上昇実験を行った。実験に使用されるマウスは、C57BL/6Nマウス(6~8週齢、体重20~25g、雄)であり、各群に6匹ずつあり、血糖の検出に使用される血糖計および血糖試験紙は、Roche会社から購入した。
【0114】
実験方法:GCG実験群:マウスの尾静脈にGCG(MCE会社から購入)を注射し、用量は100ng/匹であり、それぞれ0、15、30、60、90、120分に、マウスの血糖を検出した。rmsGP73実験群:マウスの尾静脈にrmsGP73タンパク質を注射し、用量は100μg/匹であり、それぞれ0、15、30、60、90、120分に、マウスの血糖を検出した。rmsGP73+GCG実験群:100μg/匹の組換えマウス可溶性GP73および100ng/匹のGCGを共に体外で室温で10分間インキュベートした後、マウスの尾静脈に同時注射し、それぞれ0、15、30、60、90、120分に、マウスの血糖を検出した。
【0115】
GCGを特異的に標的とする可溶性GP73タンパク質の糖上昇能力を一層決定するために、、rmsGP73とGCGとを共にインキュベートするプロセスにおいて、抗GP73特異性抗体6B6またはマウスIgGを加え、上の実験を繰り返し、即ち、GCG+rmsGP73+IgG、rmsGP73+GCG+6B6の2つの実験群を設定し、マウスはC57BL/6Nマウス(6~8週齢、体重20~25g、雄)であり、各群に6匹ずつあり、それぞれ0、15、30、60、90、120分に採血して、マウスの血糖を検出した。
【0116】
実験結果:マウスの尾静脈にGCGを注射した後、血糖値が急激に上昇し、rmsGP73はGCGの糖上昇能力を有意に促進する(図5Bに示される)。rmsGP73がGCGの糖上昇能力を促進することが特異性の抗GP73抗体6B6によってブロックされる(図5Cに示される)。
【0117】
本願発明に使用される抗GP73モノクローナル抗体6B6は、ヒト可溶性GP73抗原を使用して動物を免疫させ、マウス可溶性GP73抗原を用いてハイブリドーマクローンをスクリーニングすることによって得られるものである。具体的に言えば、本願発明の抗GP73モノクローナル抗体6B6は、下記の方法により製造される。ヒト可溶性GP73組換え抗原の精製品(NP_057632.2)を使用してBalb/cマウスを免疫させ、免疫マウスの脾臓細胞を取ってマウスの骨髄腫細胞SP2/0と融合させてから、マウス可溶性GP73抗原(NP_001030294.1)を使用してGP73特異的なハイブリドーマモノクローナルをスクリーニングし、安定した細胞株(当該ハイブリドーマ細胞6B6G6(6B6と略称)は、中国北京市朝陽区北辰西路1号院3号に位置する中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターにブダペスト条約に基づく国際寄託されており、同寄託センターに登録された登録番号は、CGMCC NO.18165であり、寄託日は2019年6月20日であり、提案された分類の名前は、マウスハイブリドーマ細胞である)を確立した。培養した当該モノクローナル細胞をマウスの腹腔内に注射し、腹水を採取し、モノクローナル抗体を精製した。
【0118】
実施例6.組換え可溶性GP73は、肝臓の糖新生シグナル伝達経路の活性化および肝臓の糖生成を促進する
実験方法:肝臓の糖新生および肝臓の糖生成に対する可溶性GP73の直接作用を研究するために、、マウスを12h飢餓状態にさせた後、マウスの初代肝細胞を抽出し、10%の血清含有低糖DMEM培養液を使用して細胞を培養し、6つの細胞培養皿に播種し、37℃の細胞培養ボックスで培養した。無血清培養の場合は、細胞が付着した後に無血清培地に交換し、引き続き一晩培養した。実験用の細胞には、血清ありおよび無血清の2つの培養方法が採用される。試験の前に、PBSで細胞を2回洗浄し、無糖DMEM培地に交換し、ピルビン酸、乳酸糖新生原材料を加え、6皿の細胞を対照群(PBSを加えたもの)の3皿および実験群(GP73精製タンパク質16nMを加えたもの)の3皿に分け、37℃細胞培養ボックスに入れて培養し、それぞれ0h、1h、2h、4h、8hに培地の上清を20ul吸い取って、グルコース含有量を検出し、最後に細胞を収集してタンパク質含有量を検出し、グルコース/タンパク質で、単位細胞タンパク質の糖生成量を得た。3つの6ウェルプレートに、0nM、4nM、8nM、16nM、32nM、63nMの濃度勾配にしたがってGP73精製タンパク質を追加し、37度の細胞培養ボックスに入れて培養し、4h後に培地の上清を収集してグルコース含有量を検出し、細胞を収集してタンパク質含有量を検出し、グルコース/タンパク質で、単位細胞タンパク質の糖生成量を得た。
【0119】
rmsGP73タンパク質がマウスの初代肝細胞の糖新生鍵酵素の発現に影響を与えることができるか否かを研究するために、上記の実験を繰り返し、細胞を取得した後、PBSで2回洗浄し、細胞を溶解させ、細胞RNAを抽出し、cDNAに逆転写し、糖新生鍵酵素Pcx、Pxk1、G6pcに基づいて上流および下流のプライマーを設計し、qRT-PCR実験を行った。
【0120】
組換えヒト可溶性GP73タンパク質(rhsGP73タンパク質)が肝細胞の糖新生鍵キナーゼPKAのリン酸化レベルおよび酵素活性に影響を与えることができるか否かを研究するために、HepG細胞でrhsGP73を加え、異なる時間後、細胞溶解液を取得し、イムノブロット実験を行った。
【0121】
実験結果:PBS対照群およびrmsGP73実験群は、血清あり培養の場合、マウス初代肝細胞の糖新生による糖生成量が異なり、rmsGP73実験群は、糖生成量が対照群よりも多く、かつ、飽和するまで、用量の増加に伴って多くなる(図6Aに示される)。PBS対照群およびrmsGP73実験群は、無血清培養の場合、マウス初代肝細胞の糖新生による糖生成量が異なり、rmsGP73の実験群は、糖生成量が対照群よりも多く、かつ、飽和するまで、用量の増加に伴って多くなる(図6Bに示される)。6B6は、GP73が初代肝細胞の糖新生による糖生成を促進することを特異的に阻害することができる(図6Cに示される)。PBS対照群と比較すると、rmsGP73群の糖新生鍵酵素Pcx(phosphoenolpyruvate carboxykinase 1)、Pck1 (pyruvate carboxylase)、G6pc(glucose-6-phosphatase)の発現レベルが、明らかにアップレギュレートする(図6Dに示される)。PBS対照群と比較すると、rhsGP73群のPKAリン酸化レベル(PKA-p)およびキナーゼ活性(RRXρS/T)が、明らかにアップレギュレートする(図6Eに示される)。
【0122】
糖新生プログラムの複雑な調節ネットワークにおいて、転写因子応答エレメント結合タンパク質CREB(cAMP-responsive element binding protein、CREB)は非常に重要な調節因子であり、それらは肝臓でグルカゴン-cAMP-PKAシグナル伝達経路を介して糖新生を促進し、したがって、CREBのリン酸化レベルは糖新生の状態を代表する。
【0123】
実験方法:マウスの体内での糖新生に対するrmsGP73の影響を研究するために、C57BL/6Nマウス(雄、8週齢、体重20~25g)は、PBS、rmsGP73、GCG、rmsGP73+GCGの4つの群を設定し、各群に3匹ずつあり、それぞれPBS、rmsGP73(100μg/匹)、GCG(100ng/匹)およびrmsGP73+GCG(100μg/匹のrmsGP73および100ng/匹のGCG、体外で、室温で共に10分間インキュベートした後に注射する)を尾静脈に注射し、注射してから48時間後、マウスを殺して、肝臓組織を単離して、イムノブロット実験を行った。イムノブロット実験には、ウサギ抗pCREBポリクローナル抗体(Abcam会社から購入、ab32096)およびウサギ抗CREBモノクローナル抗体(CST会社から購入、#9197)が使用された。
【0124】
実験結果:GCGを単独で注射すると、CREBのリン酸化レベルを増強することができ、rmGP73は、GCG活性化CREBリン酸化を有意に増強し、rmsGP73がGCGとの相互作用により、その肝臓の糖新生能力を増強し、GCGの活性を促進する(図6Fに示される)ことを示す。同時に、rmsGP73を単独で処理しても、依然として肝臓の糖新生を促進でき、我々に、可溶性GP73がGCGに依存する方法及びGCGに依存しない方法の両方で、糖新生シグナル伝達経路の活性化に関与することを再度示唆した。
【0125】
実施例7.1型糖尿病マウスに対する抗GP73抗体の糖低下作用
実験方法:6B6抗体の体内糖低下効果を一層研究するために、C57BL/6Nマウスの腹腔にSTZを注射して、1型糖尿病が誘発されたマウスモデル(6~8週齢、体重20~25g、雄)を用いて、10日の安定期間後に、マウスを、対照マウスIgG群、7.5、15、30mg/kg用量の6B6群の計4つの群にランダムに割り当て、各群に7匹ずつある(具体的な群分け状況は、表3に示すとおりである)。実験が終了するまで、毎日尾静脈に投与し、7日おきにマウスの体重と空腹時血糖をモニターした。
【0126】
実験結果:6B6抗体治療群のマウスの体重は、対照群のマウスと有意差がない(表4に示されるように)。6B6抗体は、マウスの空腹時血糖を有意に下げる効果を有し、用量依存的な作用も有する(表5および図7Aに示されるように)。
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
実験方法:4週間治療した後、採血して糖化ヘモグロビン(HbA1c)、アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および血中脂質のレベルを測定した。HbA1c検出キットは、Crystal Chem会社(商品番号:80310)から購入し、TECAN SPARK多機能酵素マーカーを用いて検出した。肝機能および血中脂質検出キットは、瑞爾達社(商品番号:ALT191230およびAST200218)から購入し、RIELE会社のPhotometer L100生化学分析装置を用いて検出した。
【0131】
実験結果:IgGで治療した糖尿病対照群のマウス血清において、HbA1cの平均は8.78±1.7%であり、中間用量および高用量の6B6抗体で治療した糖尿病マウスのHbA1cの平均は、それぞれ6.99±1.6および6.71±1.5(表6および図7B)であり、抗GP73抗体6B6が、STZ-誘発性T1DマウスのHbA1cレベルを用量依存方法で下げることを示す。肝機能および血中脂質結果は、抗体を連続的に4週間注射した後、マウスASTのレベルが中間用量の抗体によって有意に下げられ(表6)、抗体がSTZ誘発性肝臓損傷に対してある程度の保護作用を有する可能性があることを示唆する。これに加え、抗体治療群のマウスは、トリグリセリドおよびコレステロールのレベルも対照群マウスよりも有意に低い(表6)。
【0132】
【表6】
【0133】
実施例8.1型糖尿病マウスの膵島に対する抗GP73抗体の保護作用
実験方法:GP73によってSTZの誘発による膵島損傷に対する保護効果がブロックされることを一層研究するために、STZの腹腔内注射によって誘発される1型糖尿病マウスモデルを用いた。この実施例において、C57BL/6Nマウスを一晩絶食させ(雄、8~10週齢、20~22g)、STZ(175mg/kg)の単回腹腔内注射を行った。10日の安定期間後、動物の体重および空腹時血糖に基づいて、コンピュータによって生成されるランダムプロセスを使用して、マウスをマウスIgG対照群および24mg/kg用量の6B6実験群の計2つの群にランダムに割り当て、各群に3匹ずつある。実験が終了するまで、毎日尾静脈を介して投与した。4週間投与した後、マウスを殺して、膵島組織を取得した後、ホルマリンで固定して、パラフィンスライスを製造し、3色免疫蛍光を用いて染色した。ここで、DAPI青色が細胞の核であり、インスリン染色が陽性のβ細胞は緑色であり、グルカゴン染色が陽性のα細胞は赤色である。
【0134】
実験結果:抗GP73抗体によってブロックされた後、膵島α、β細胞の数はそれぞれ1倍以上増加し(図8A~C)、抗GP73抗体6B6は、1型糖尿病マウスの膵島α細胞およびβ細胞のいずれに対しても顕著な保護作用を有することを示す。β細胞/α細胞の比は20%から約23%まで上昇し、やや上昇したが、統計学的有意差がない(図8D)。
【0135】
実施例9.2型糖尿病マウスに対するGP73を特異的にブロックするRNAiの糖低下作用
GP73をブロックすることによる血糖降下作用をさらに確認するために、、高脂肪食誘発性2型糖尿病モデルを構築し、GP73特異性RNAi oligosノックダウン方法を用いて、2型糖尿病マウスに対する糖低下作用を研究する。
【0136】
実験方法:、まず、マウスGP73の異なる位置について計9本のRNAi oligos(表7、配列番号.1~9)を合成し、H22マウス肝臓細胞をトランスフェクションすることにより、24時間トランスフェクションした後、細胞を収集してイムノブロット実験を行った。
【0137】
実験結果:No.4 RNAi oligos配列は、細胞内因性GP73に対してよいノックダウン効率を有する(図9A)。その後、、吉瑪基因会社で3’末端コレステロール修飾、両末端チオバックボーン修飾および全鎖メトキシ修飾のNo.4 GP73 RNAi oligos(GP73 siRNA)を合成し、このような化学修飾されたsiRNAの体内での安定性は3~6日であり、配列が乱されたRNAi oligosを対照とする(Ctr siRNA;表7)。
【0138】
実験方法:これを基に、、C57BL/6Nマウス(雄、8~10週齢、20~22g)を選択して、高脂肪飼料で20週間飼育した後、動物を6時間絶食させた後、空腹時血糖を検出し、血糖値が11.3mMを超えると、モデリングに成功した。空腹時血糖にしたがって、Ctr siRNA群およびGP73 siRNA実験群にランダムに分け、各群に6匹ずつあり、5日ごとに1回注射し、注射方法は、先に、1回あたり4nMを尾静脈に注射し、その後、腹腔に4nMを注射した。1回目の注射から4週間後、マウスを殺し、血糖および糖化ヘモグロビンなどの指標を検出した。
【0139】
実験結果:GP73 siRNA注射群は、高脂肪誘発性2型糖尿病マウスの空腹時血糖が効果的に下がった(表8および図9B)。重要なことは、Ctr siRNA群と比較すると、GP73 siRNA注射実験群のマウスは、有意な耐糖能改善(図9C-D)およびインスリン感受性の向上(図9E-F)を示す。4週間治療した後、Ctr siRNAで治療した糖尿病対照群のマウスの血清では、HbA1cの平均が4.39±0.67%であり、GP73 siRNAで治療した糖尿病のマウスのHbA1cの平均は、それぞれ3.37±0.53%(表9)であり、GP73特異性siRNAが、高脂肪誘発性T2DマウスのHbA1cレベルを下げることができることを示す。肝機能および血中脂質の結果は、GP73 siRNAを連続的に4週間注射した後、マウスの血清中のAST、ALTおよびコレステロールのレベルを有意に下げ、我々に、GP73のブロックは、血中脂質低下、肝機能保護の作用を有する(表9)ことを示唆する。
【0140】
【表7】
【0141】
【表8】
【0142】
【表9】
【0143】
本願発明において、血清中のGP73レベルの上昇は、ヒト糖尿病と密接に関連し、糖尿病を治療する魅力的な標的であることが証明され、GP73はグルカゴンと相互作用し、グルカゴン依存およびグルカゴン不依存の2つの方法で、肝臓および/または腎臓の糖新生を促進するため、GP73を阻害することは、糖尿病を治療する効果的な策略である。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本願発明の実施例は、糖尿病治療用の薬物の製造におけるGP73阻害剤の使用を提供し、当該使用で血糖を調節し、発明者らはさらに、動物実験により、GP73阻害剤が糖尿病マウスの血糖値および糖化ヘモグロビンレベルを下げることができ、膵島β細胞に対して保護作用を有し、糖尿病の治療効果を奏することを証明した。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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