(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】接続構造
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20231110BHJP
F16F 1/373 20060101ALI20231110BHJP
F16F 1/376 20060101ALI20231110BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20231110BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
F16F15/08 K
F16F1/373
F16F1/376
F16F1/36 K
F16B5/02 Y
(21)【出願番号】P 2022547428
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2021027313
(87)【国際公開番号】W WO2022054423
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020153251
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】飯牟礼 聖
(72)【発明者】
【氏名】竹内 龍志
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/206803(WO,A1)
【文献】特開平10-252795(JP,A)
【文献】特開2016-003758(JP,A)
【文献】実開平04-039346(JP,U)
【文献】特開2018-034613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
F16F 1/38
F16F 1/36
F16F 1/393
F16F 1/373
F16F 1/376
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパ部材を介して、互いに相対移動可能に対向配置された第1部材と第2部材とを接続する接続構造であって、
前記ダンパ部材は、弾性変形可能な材料で形成されており、軸方向に貫通する貫通孔を有する円筒部と、前記円筒部の外周部に径方向外側に向かって設けられたフランジ部
とを有し、
前記第1部材は、前記円筒部の内周部に勘合する凸状支持部と、前記フランジ部の第1当接面に当接する第1当接部とを有し、
前記第2部材は、前記円筒部の前記外周部に嵌合する凹状支持部と、前記フランジ部の前記第1当接面の反対側の第2当接面に接する第2当接部とを有し、
前記ダンパ部材は、前記円筒部の前記内周部及び前記外周部に設けられる第1振動吸収部と、前記フランジ部の前記第1当接面又は前記第2当接面に設けられる第2振動吸収部とをさらに有し、
前記第1振動吸収部は、前記円筒部の径方向に突出し、前記円筒部の軸方向に延設された複数のリブであり、
前記複数のリブは、前記円筒部の前記内周部及び前記外周部に、周方向にわたって互い違いに設けられていて周方向における位置が異なるように配設される、
接続構造。
【請求項2】
前記第2振動吸収部は、前記フランジ部の前記第1当接面又は前記第2当接面から、前記円筒部の軸方向に突出した複数の突起である、請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記第1部材は、前記凸状支持部の突端から前記凸状支持部の内部に向けて形成されるネジ穴を有し、
前記第2部材は、前記凹状支持部の底部に設けられる貫通孔を有し、
前記第1部材と前記第2部材とが前記フランジ部を挟持した状態で、前記第2部材の貫通孔と前記ダンパ部材の貫通孔とに挿通され、前記ネジ穴にネジ留めされるネジをさらに含む、請求項
2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記ネジは、前記ネジ穴に挿入される先端側とは反対側のネジ頭側に、前記先端側よりも太い柱部を有する段付きネジである、請求項
3に記載の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上下方向に延びる筒部と、前記筒部の内側に配置され、上下方向に貫通する貫通孔を有する内郭部と、前記筒部と前記内郭部とを接続する梁部と、を有し、前記筒部の上端は、前記内郭部の上端より上側にあり、前記筒部の下端は、前記内郭部の下端より下側にある防振部材を介した振動部材の接続構造がある。防振部材の筒部の外周には上下方向の中間に周状の溝が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の防振部材は、筒部の外周には上下方向の中間に周状の溝が設けられているので、上下方向に抜く形式の金型で容易に製造することは困難である。
【0005】
そこで、容易に製造可能な接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の接続構造は、ダンパ部材を介して、互いに相対移動可能に対向配置された第1部材と第2部材とを接続する接続構造であって、前記ダンパ部材は、弾性変形可能な材料で形成されており、軸方向に貫通する貫通孔を有する円筒部と、前記円筒部の外周部に径方向外側に向かって設けられたフランジ部とを有し、前記第1部材は、前記円筒部の内周部に勘合する凸状支持部と、前記フランジ部の第1当接面に当接する第1当接部とを有し、前記第2部材は、前記円筒部の外周部に嵌合する凹状支持部と、前記フランジ部の前記第1当接面の反対側の第2当接面に当接する第2当接部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
容易に製造可能な接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の接続構造100の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の接続構造を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の接続構造100の断面構造を示す図である。接続構造100は、第1部材110、第2部材120、ダンパ部材130、及びネジ140を含む。以下では、
図1に加えて、
図2A乃至
図7を用いて説明する。
図2A及び
図2Bは、第1部材110を示す図である。
図3A及び
図3Bは、第2部材120を示す図である。
図4A乃至
図6は、ダンパ部材130を示す図である。
図7は、ネジ140を示す図である。
図2Bは、
図2AのA-Aの位置におけるY方向からのA-A矢視断面を示す。
図3Bは、
図3AのB-Bの位置におけるY方向からのB-B矢視断面を示す。
図6は、
図4AのC-Cの位置におけるZ方向からのC-C矢視断面を示す。
【0011】
以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、平面視とはXY面視のことである。
【0012】
接続構造100は、ダンパ部材130を介して、互いに相対移動可能に対向配置された第1部材110と第2部材120とをネジ140を用いて接続する接続構造である。以下では、一例として第2部材120が固定されていて、第2部材120に対して第1部材110がXY平面における360度の方向とZ方向とに移動可能(変位可能)に構成されている形態について説明する。例えば、振動素子等によって第1部材110が振動される構成にすることができる。しかしながら、第1部材110が固定されていて第2部材120が移動可能であってもよいし、第1部材110及び第2部材120が相対的に移動可能であって、かつ、第1部材110及び第2部材120が他の構成要素に対してともに移動可能であってもよい。
【0013】
第1部材110は、ネジボス111、ネジ穴112、第1当接部113を有する。第1部材110は、一例として樹脂製であり、一体的に成形される部品の一部分である。ただし、第1部材110は、樹脂以外の材料で作製されていてもよい。
【0014】
ネジボス111は、凸状支持部の一例であり、下側の約半分の円筒状の下部分111Aは、第1部材110の基部110Aに対して下方に突出しており、ダンパ部材130の円筒部131に勘合する。また、ネジボス111の上側の約半分の円筒状の上部分111Bは、基部110Aに対して上方に突出している。なお、ここではネジボス111の下側の約半分の下部分111Aが基部110Aから下方に突出している形態について説明するが、ネジボス111は、基部110Aのような基準になる位置又は面から下方に突出する円筒状の部分を有していればよく、ネジボス111の全体が基部110Aから下方に突出していてもよい。
【0015】
ネジ穴112は、下部分111Aの下端面111A1からネジボス111の内部に向かって設けられており、内壁にネジ溝が形成されている。下端面111A1は、凸状支持部の突端の一例である。ここでは一例として、下部分111Aの内部から上部分111Bの内部にわたってネジ穴112が設けられている。
【0016】
第1当接部113は、基部110Aのうちネジボス111の下部分111Aの周囲に位置する円環状の部分である。第1当接部113は、ダンパ部材130のフランジ部132の上面(第1当接面の一例)に当接する。第1当接部113の下面は平坦である。
【0017】
第2部材120は、カップ部121、第2当接部122、及び貫通孔123を有する。第2部材120は、一例として樹脂製であり、一体的に成形される部品の一部分である。ただし、第2部材120は、樹脂以外の材料で作製されていてもよい。
【0018】
カップ部121は、凹状支持部の一例である。カップ部121は、第2部材120の基部120Aから上方向に突出する円筒状の壁部121Aと底壁121Bとによって構成されており、内部に円柱状の凹部121Cを有する。凹部121Cは、壁部121Aと底壁121Bとに囲まれた部分である。底壁121Bは、凹状支持部の底部の一例である。カップ部121の壁部121Aの内周面はダンパ部材130の円筒部131の外周部に嵌合する。
【0019】
ここでは、カップ部121が基部120Aから上方向に突出する円筒状の壁部によって構成される形態について説明するが、カップ部121は円柱状の凹部121Cを有していればどのような形状であってもよい。例えば、カップ部121は、基部120Aよりも厚くXY平面に平行に延在する板状部材の上面から円柱状に凹む凹部であってもよい。
【0020】
第2当接部122は、カップ部121の上端部であり、円環状の部分である。第2当接部122は、第1部材110の第1当接部113と対向している。第2当接部122の上面は平坦である。第2当接部122は、ダンパ部材130のフランジ部132の下面(第2当接面の一例)に当接する。
【0021】
第2部材120の貫通孔123は、カップ部121の底部121Bを上下方向に貫通する孔部である。貫通孔123は、平面視で円形であり、平面視における底部121Bの中央に位置する。カップ部121の底壁121Bの中央に設けられた貫通孔123は、凹部121Cと接続してカップ部121の上下方向に貫通している。貫通孔123の開口径は、上側の凹部121Cの開口径よりも小さい。
【0022】
ダンパ部材130は、円筒部131、フランジ部132、リブ133、及び凸部134を有する。ダンパ部材130は、弾性変形可能な材料で形成されており、例えば、ラバー(シリコンゴム等)製である。ダンパ部材130は、第1部材110と第2部材120との間に設けられ、緩衝材として機能する。
【0023】
円筒部131は、軸方向(Z方向)に貫通する貫通孔131Aと円環部131Bを有する円筒状の部分である。円筒部131の上端の外周部にはフランジ部132が設けられ、内周面と外周面にはリブ133が設けられている。ダンパ部材130の貫通孔131Aは、このような構成の円筒部131の中央部を上端から下端まで貫通している。円環部131Bの中央部の貫通孔131Aの開口径は、円筒部131の上端部側よりも小さい。
【0024】
フランジ部132は、円筒部131の上端の外周部から径方向外側に向かって設けられた円環状の部分である。ここでは、フランジ部132が円筒部131の上端の外周部に設けられている形態について説明するが、フランジ部132は円筒部131の上端よりも下側の外周部から径方向外側に向かって設けられていてもよい。
【0025】
リブ133は、第1振動吸収部の一例であり、リブ133A及び133Bを有する。リブ133Aは円筒部131の内周部に設けられた畝状の突起であり、リブ133Bは円筒部131の外周部に設けられた畝状の突起である。リブ133A及び133Bは、円筒部131の軸方向(Z方向)に延設されている。以下では、リブ133A及び133Bを特に区別しない場合には単にリブ133と称す。
【0026】
リブ133A及び133Bは、
図6に示すように円筒部131の周方向に沿って内周部と外周部に交互に等間隔で設けられている。リブ133A及び133Bが円筒部131の周方向にわたって互い違いに設けられていて周方向における位置が異なるように配設される。各リブ133は、円筒部131の軸方向(Z方向)に沿って上端から下端まで延在している。より具体的には、リブ133Bの上端はフランジ部132の下面に接しており、リブ133Aの下端は、円筒部131の下端の円環部131Bの上面に接している。
【0027】
複数のリブ133Aは、ダンパ部材130がネジボス111の下部分111Aに嵌め込まれたときに下部分111Aの外周面に当接するように、円筒部131の径方向における内側に突出している。また、複数のリブ133Bは、ダンパ部材130がカップ部121の内部に嵌め込まれたときにカップ部121の内周面に当接するように、円筒部131の径方向における外側に突出している。リブ133Aとリブ133Bは、第2部材120に対する第1部材110のXY方向の振動を吸収する。
【0028】
凸部134は、第2振動吸収部の一例であり、フランジ部132の上面に設けられている。一例として4つの凸部134がフランジ部132の上面において、周方向に等間隔で設けられている。凸部134は、一例として円錐台状の突起である。凸部134は、第1部材110の第1当接部113に当接し、フランジ部132の下面に当接する第2部材120の第2当接部122との間に位置して、第2部材120に対する第1部材110のZ方向の振動を吸収する。
【0029】
上述のようなダンパ部材130は、
図1に示すように接続構造100が組み立てられた状態で、ダンパ部材130の円筒部131の下端面(円環部131Bの下面)と、カップ部121の底壁121Bの上面121B2との間に隙間(ギャップ)が生じるようなサイズを有する。換言すれば、円筒部131のうちのフランジ部132よりも下側の部分のZ方向の長さは、カップ部121の壁部121AのZ方向の長さよりも短くしておけばよい。
【0030】
また、上述のような構成を有するダンパ部材130は、上下方向に引き抜く形式の金型で製造可能である。これは、ダンパ部材130の内周面や外周面に、径方向に凹む凹部が存在しないためである。このため、ダンパ部材130は、横方向にスライド機構等のない簡易な構造の上下方向に引き抜く形式の金型で容易に製造可能である。
【0031】
ネジ140は、ネジ部141、柱部142、皿部143、及びネジ頭144を有する。ネジ140の先端は上側(+Z方向側)に位置する。ネジ部141は、螺旋状にネジ溝が形成されている部分であり、ネジ込み時に、第1部材110のネジボス111のネジ穴112の壁面にネジ溝を形成しながら係合可能なサイズを有する。ネジ部141は、ネジ140の先端側の一例である。
【0032】
柱部142は、ネジ部141よりもネジ頭144側にあり、柱部142の直径は、ネジ部141よりも太く、ダンパ部材130の貫通孔131Aよりも細い柱状の部分である。柱部142の外周面にはネジ溝は形成されていない。また、柱部142の直径は、第2部材120の貫通孔123の開口径よりも小さく、柱部142が貫通孔123に挿通されたときに、径方向に隙間が生じるように構成されており、左右に振動可能となっている。ネジ140は、このようにネジ部141よりも太い柱部142が一体に設けられた段付きネジの一例である。
【0033】
なお、ここでは、柱部142がネジ140の一部である形態について説明するが、柱部142が別体であってもよい。すなわち、ネジ140の柱部142の区間が、一般的なネジのようにネジ部141と等しい外径を有し、皿部143までネジ溝が形成されている柱状の区間であって、柱部142とZ方向の長さ及び外径が等しい円筒状の金属部材にネジ部141及び柱状の区間を挿通する構成であってもよい。
【0034】
皿部143は、柱部142とネジ頭144の間に設けられており、柱部142及びネジ頭144よりも大きい直径を有し、柱部142及びネジ頭144よりも径方向外側に延出している。皿部143の直径は、第2部材120の下端部の貫通孔123の開口径よりも大きい。
【0035】
ネジ頭144は、ネジ140のネジ部141とは反対側に設けられている。換言すれば、ネジ頭144は皿部143の下側に設けられている。ネジ頭144の下面側には、プラス型又はマイナス型の溝144Aが設けられている。
【0036】
このような接続構造100を組み立てるには、一例として、まず第1部材110のネジボス111の下側の下部分111Aにダンパ部材130を嵌め込む。この状態で、リブ133Aは下部分111Aの外周面に当接する。次に、第1部材110の下側に第2部材120を近づけて、カップ部121の内部にダンパ部材130を嵌め込み、第2部材120の下側から貫通孔123にネジ140を挿入する。
【0037】
そして、ネジ部141をネジボス111のネジ穴112に挿入し、ネジボス111の下端面111A1に柱部142の上端面142Aが当接するまで、ネジ部141をネジ穴112にネジ込む。このようにしてネジ140をネジ穴112にネジ留めする。ネジ部141、柱部142、及び皿部143のZ方向における位置関係としては、ネジ部141をネジ穴112にネジ込んでいる際に、ネジボス111の下端面111A1に柱部142の上端面142Aが当接する前に、皿部143の上端面143Aが第2部材120の底壁121Bの下面121B1に当接する位置関係にすればよい。すなわち、ネジボス111の下端面111A1に柱部142の上端面142Aが当接する際には、ダンパ部材130のフランジ部132のZ方向の厚さ(長さ)が初期の厚さ(長さ)よりも圧縮されて薄く(短く)なるように柱部142のZ方向の長さを設定しておけばよい。
【0038】
このような各部の位置関係によって、
図1に示すように接続構造100が組み立てられた状態では、ダンパ部材130のフランジ部132及び凸部134は、第1部材110の第1当接部113と、第2部材120の第2当接部122との間に挟まれてZ方向に押圧されて少し押し潰されて初期弾性力を有した状態になっている。また、ダンパ部材130のリブ133Aとネジボス111の外周面とは勘合当接しており、ダンパ部材130のリブ133Bとカップ部121の内周面とは勘合当接しているため、ダンパ部材130のリブ133はそれぞれ初期弾性力を有した状態になっている。また、ダンパ部材130の下端面とカップ部121の底壁121Bの上面121B2との間にはギャップがある。さらに、ネジ140の柱部142の外周面と貫通孔123の内周面との間にもギャップがあり、皿部143の上端面143Aと底壁121Bの下面121B1とが当接している。
【0039】
このように、接続構造100が組み立てられて、第2部材120に対して第1部材110をXY平面内で変位させる方向の力と、第1部材110を下方に押圧する力とがいずれも第1部材110に対して掛かっていない状態における第1部材110の位置は、内部でダンパ部材130の初期弾性力と釣り合っている初期位置である。
【0040】
このため、外部から第2部材120に対して第1部材110をXY平面内で変位させる方向の力が掛かると、円筒部131とリブ133A及び133Bとがさらに弾性変形することによって、第1部材110は第2部材120に対してXY平面内で変位する。第1部材110の変位量は、円筒部131とリブ133A及び133Bとが、ネジボス111の外周面とカップ部121の壁部121Aの内周面との間で弾性変形することによる変位量である。リブ133A及び133Bは、平面視で円筒部131に対して内側及び外側に波状に設けられているため、リブ133A及び133Bが径方向に潰れるように変形することによって、径方向に変位する。また、このときに円筒部131自体も径方向に押し潰されて少し収縮する。このようにダンパ部材130が径方向に変位することによって、第1部材110が第2部材120に対してXY平面内で変位可能になる。第1部材110をXY平面内で変位させる方向の力が解除されると、リブ133A及び133Bと円筒部131との弾性力により弾性変形が元に戻り、第1部材110は第2部材120に対する初期位置に戻る。
【0041】
また、第2部材120に対して第1部材110に対して下方に押圧する力が掛かると、凸部134に力が加わり、凸部134が上下方向において押し潰されるとともに、フランジ部132が変形することによって、変形前の凸部134及びフランジ部132の合計の厚さ(Z方向の長さ)よりも薄くなるように凸部134及びフランジ部132が変形する。4つの凸部134は、円環状のフランジ部132の上面において周方向に等間隔で設けられているため、フランジ部132は周方向において等間隔で下向きの力を受け、凸部134が設けられている部位周辺が、凸部134が設けられていない部位に対して、より下方向に歪む(薄くなる)ように変形する。
【0042】
また、このように凸部134及びフランジ部132が変形するときに、ネジ140の柱部142は、貫通孔123にクリアランスを有して挿通されているだけで係合していないため、ネジ140は第1部材110とともに第2部材120に対して下方向に変位可能である。
【0043】
このようにして、第1部材110に下方に押圧する力が掛かると、第1部材110は、第2部材120に対して変位可能になる。第1部材110を下方に押圧する力が解除されると、凸部134及びフランジ部132の弾性変形は弾性力により元に戻り、第1部材110は第2部材120に対する初期位置に戻る。
【0044】
以上のような接続構造100は、第1部材110及び第2部材120は、一体的に成形可能であり、ダンパ部材130については上下方向に引き抜く形式の金型で容易に製造可能である。接続構造100を組み立てるには、上述のように、第1部材110のネジボス111の下側の下部分111Aにダンパ部材130を嵌め込み、第1部材110の下側に第2部材120を近づけてカップ部121の内部にダンパ部材130を嵌め込み、第2部材120の下側から貫通孔123にネジ140を挿入してネジ部141をネジ穴112にネジ込めばよい。このように、接続構造100は、非常に容易に製造可能である。
【0045】
したがって、容易に製造可能な接続構造100を提供することができる。また、ダンパ部材130を第1部材110及び第2部材120に組み付ける際には、上下方向だけの移動で容易に組み付けることができるので、横方向から差し込むような動作を含む製造方法を必要とする構造では対応が難しい自動組立機への対応も容易である。このため、製造コストを低減できる。
【0046】
また、ダンパ部材130がリブ130A及び130Bと、凸部134とを有するので、第2部材120に対する第1部材110の横方向(XY平面内の方向)及び縦方向(Z方向)の変位に対応可能であり、また、横方向及び縦方向の振動等を吸収することができる。
【0047】
また、リブ133A及び133Bが円筒部131の周方向にわたって互い違いに設けられていて周方向における位置が異なるため、径方向に弾性変形しやすくなり、第1部材110のXY平面内でのどのような方向にも変位可能であり、振動等を吸収することができる。また、リブ130A及び130Bが円筒部131の周方向にわたって等間隔で設けられているため、横方向(XY平面内の方向)の変位と振動等の吸収をバランス良く実現することができる。
【0048】
また、ダンパ部材130がフランジ部132の上面から突出する凸部134を有するので、縦方向(Z方向)に弾性変形しやすくなり、より確実に縦方向(Z方向)の変位を可能にするとともに、縦方向(Z方向)の振動等を吸収することができる。
【0049】
また、第1部材110がネジ穴112の形成されたネジボス111を有し、第2部材120の貫通孔123にネジ140を挿通して、第1部材110と第2部材120とがダンパ部材130のフランジ部132を挟持した状態で組み付けられるので、フランジ部132を一定量潰した状態で組み付けることができ、初期位置での初期弾性力を有することができる。
【0050】
また、接続構造100の組み立て時に、ダンパ部材130のフランジ部132及び凸部134を第1当接部113と第2当接部122との間でZ方向に押し潰す度合は、ネジ40の柱部142の上端面142Aがネジボス111の下端面111A1に当接する位置で調整可能である。例えば、柱部142のZ方向の長さを変化させて押し潰す度合を調整し、ダンパ部材130の初期位置での初期弾性力を所望の値とすることができる。
【0051】
なお、以上では、ダンパ部材130がリブ133A及び133Bを有する形態について説明したが、リブ133A及び133Bのうちのいずれか一方を有する構成であってもよい。
【0052】
また、フランジ部132の上面に凸部134を有する形態について説明したが、凸部134は、フランジ部132の下面に設けられていてもよい。
【0053】
以上、本発明の例示的な実施形態の接続構造について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0054】
なお、本国際出願は、2020年9月11日に出願した日本国特許出願2020-153251に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0055】
100 接続構造
110 第1部材
111 ネジボス
112 ネジ穴
113 第1当接部
120 第2部材
121 カップ部
122 第2当接部
123 貫通孔
130 ダンパ部材
131 円筒部
132 フランジ部
133 リブ
134 凸部
140 ネジ
141 ネジ部
142 柱部
143 皿部
144 ネジ頭