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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022572006
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2021043416
(87)【国際公開番号】W WO2022137981
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2020217437
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】池添 祐基
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛教
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一成
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013096(JP,A)
【文献】特開2004-138009(JP,A)
【文献】特開2013-118332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、
前記固定体内に収容される可動体と、
前記可動体を前記固定体内で左右方向に沿って往復動可能にガイドするガイド手段と、
前記可動体及び前記固定体の一方に固定され上下方向に沿った磁束を発生する磁束源と、
前記磁束源が発生させる磁束と交差するように前記可動体及び前記固定体の他方に固定され、前後方向に沿って延在し左右方向に沿って並設される導電線からなるコイルと、を備え、
前記磁束源は、左側磁石、少なくとも1つの中央磁石、及び右側磁石を含み、
前記左側磁石、少なくとも1つの前記中央磁石、及び前記右側磁石は、左右方向に沿って併設されており、
前記コイルは、
前記左側磁石からの磁束と交差する左側束線部、及び、前記中央磁石からの磁束と交差する右側束線部からなる左側コイルと、
前記中央磁石からの磁束と交差する左側束線部、及び、前記右側磁石からの磁束と交差する右側束線部からなる右側コイルと、を含み、
前記左側コイルの右側束線部と前記中央磁石との間の空間を上下方向に貫通する前記中央磁石による磁束の数は、前記左側コイルの左側束線部と前記左側磁石との間の空間を上下方向に貫通する前記左側磁石による磁束の数よりも小さく、
前記右側コイルの左側束線部と前記中央磁石との間の空間を上下方向に貫通する前記中央磁石による磁束の数は、前記右側コイルの右側束線部と前記右側磁石との間の空間を上下方向に貫通する前記右側磁石による磁束の数よりも小さい、
ことを特徴とする振動発生装置。
【請求項2】
前記中央磁石の上下方向の厚さは、前記左側磁石の上下方向の厚さよりも小さく、且つ、前記右側磁石の上下方向の厚さよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記中央磁石は、左右方向において前記左側磁石の略2倍の幅寸法を有し、前記左側コイルの右側束線部及び前記左側コイルの右側に隣接するコイルの左側束線部に向かって磁束を発生させる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動子(可動体)を往復動可能に保持するガイド部を備えたリニア振動アクチュエータが知られている(特許文献1参照。)。ガイド部は、筐体内に収容される筐体とは別の部材であり、一対のレール部材によって構成されている。一対のレール部材に形成された一対のガイド溝(凹部)は、可動子の両側に設けられた一対の端縁(凸部)とかみ合うように構成されている。そして、可動子は、一対のガイド溝にガイドされながらガイド溝に沿って往復動できるように構成されている。
【0003】
可動子の駆動は、可動子に取り付けられた六つの磁石と、コイル保持部を介して筐体に取り付けられた六つのコイルとによって実現されている。そして、六つの磁石は、同じ強さの磁力を有し、往復動方向に沿って並置されている。また、六つのコイルは、可動子の上方に配置される三つのコイルと、可動子の下方に配置される三つのコイルとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/151232号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような構成では、往復動方向に可動体が移動すると、コイルを垂直に通過する磁界の強さが変化し、その変化を妨げる方向に誘導電流が生じてしまい、可動体を移動させようとする駆動力(ローレンツ力)が低下してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、コイルを通過する磁界の強さの変化に起因する駆動力の低下を抑制できる振動発生装置を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る振動発生装置は、固定体と、前記固定体内に収容される可動体と、前記可動体を前記固定体内で左右方向に沿って往復動可能にガイドするガイド手段と、前記可動体及び前記固定体の一方に固定され上下方向に沿った磁束を発生する磁束源と、前記磁束源が発生させる磁束と交差するように前記可動体及び前記固定体の他方に固定され、前後方向に沿って延在し左右方向に沿って並設される導電線からなるコイルと、を備え、前記磁束源は、左側磁石、少なくとも1つの中央磁石、及び右側磁石を含み、前記左側磁石、少なくとも1つの前記中央磁石、及び前記右側磁石は、左右方向に沿って併設されており、前記コイルは、前記左側磁石からの磁束と交差する左側束線部、及び、前記中央磁石からの磁束と交差する右側束線部からなる左側コイルと、前記中央磁石からの磁束と交差する左側束線部、及び、前記右側磁石からの磁束と交差する右側束線部からなる右側コイルと、を含み、前記左側コイルの右側束線部と前記中央磁石との間の空間を上下方向に貫通する前記中央磁石による磁束の数は、前記左側コイルの左側束線部と前記左側磁石との間の空間を上下方向に貫通する前記左側磁石による磁束の数よりも小さく、前記右側コイルの左側束線部と前記中央磁石との間の空間を上下方向に貫通する前記中央磁石による磁束の数は、前記右側コイルの右側束線部と前記右側磁石との間の空間を上下方向に貫通する前記右側磁石による磁束の数よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
上述の振動発生装置は、コイルを通過する磁界の強さの変化に起因する駆動力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】振動発生装置の斜視図である。
図1B】振動発生装置の上面図である。
図2】振動発生装置の分解斜視図である。
図3A】可動体の全体の斜視図である。
図3B】可動体の分解斜視図である。
図4A】磁束源の図示が省略された状態の可動体の分解斜視図である。
図4B】サイドケースに取り付けられた可動体の上面図である。
図5A】ガイド手段を構成する部材の詳細図である。
図5B】ガイド手段を構成する部材の詳細図である。
図6A】振動発生装置の断面図である。
図6B】振動発生装置の断面図である。
図7A】ガイド手段を構成する部材の斜視図である。
図7B】ガイド手段を構成する部材の斜視図である。
図8A】筐体に固定されたコイルの斜視図である。
図8B】筐体に固定されたコイルの上面図である。
図9A】ケース、コイル、及び磁束源の断面図である。
図9B】ケース、コイル、及び磁束源の断面図である。
図9C】ケース、コイル、及び磁束源の断面図である。
図10A】下側ケース、下側コイル、及び磁束源の上面図である。
図10B】下側ケース、下側コイル、及び磁束源の上面図である。
図10C】下側ケース、下側コイル、及び磁束源の上面図である。
図11A】ケース、コイル、及び磁束源の断面図である。
図11B】ケース、コイル、及び磁束源の断面図である。
図12A】左側磁石及び第1中央磁石の拡大図である。
図12B】左側磁石及び第1中央磁石の拡大図である。
図13A】ケース、コイル、及び磁束源の断面図である。
図13B】ケース、コイル、及び磁束源の断面図である。
図13C】ケース、コイル、及び磁束源の断面図である。
図14】下側ケース、コイル、及び磁束源の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る振動発生装置101について説明する。図1A及び図1Bは、振動発生装置101の外形図である。具体的には、図1Aは、振動発生装置101の斜視図であり、図1Bは、振動発生装置101の上面図である。図2は、振動発生装置101の分解斜視図である。
【0011】
図1A図1B、及び図2のそれぞれにおけるX1は三次元直交座標系を構成するX軸の一方向を表し、X2はX軸の他方向を表す。また、Y1は三次元直交座標系を構成するY軸の一方向を表し、Y2は他方向を表す。同様に、Z1は三次元直交座標系を構成するZ軸の一方向を表し、Z2はZ軸の他方向を表す。本実施形態では、振動発生装置101のX1側は、振動発生装置101の前側(正面側)に相当し、振動発生装置101のX2側は、振動発生装置101の後側(背面側)に相当する。また、振動発生装置101のY1側は、振動発生装置101の左側に相当し、振動発生装置101のY2側は、振動発生装置101の右側に相当する。そして、振動発生装置101のZ1側は、振動発生装置101の上側に相当し、振動発生装置101のZ2側は、振動発生装置101の下側に相当する。他の図においても同様である。
【0012】
振動装置VEは、制御部CTR及び振動発生装置101を有する。振動発生装置101は、固定体としての筐体HSと、筐体HS内に収容される可動体MBと、筐体HSに取り付けられるコイル4と、を有する。制御部CTRは、筐体HSに固定された絶縁基板BM上に設けられた入力端子ITに接続されている。なお、図1Aの破線は、制御部CTRと絶縁基板BM上に設けられた入力端子ITとが電気的に接続されていることを模式的に示している。
【0013】
筐体HSは、図1Aに示すように、略直方体の外形を有し、XY平面に平行な面(上面及び下面)の面積が最も広くなるように構成されている。本実施形態では、筐体HSは、オーステナイト系ステンレス等の非磁性材料で形成されている。但し、筐体HSは、合成樹脂で形成されていてもよい。或いは、筐体HSは、磁性材料で形成されていてもよい。具体的には、筐体HSは、ケース1及びサイドケース2で構成されている。
【0014】
ケース1は、図2に示すように、筐体HSの天面を形成する上側ケース1Uと、筐体HSの底面を形成する下側ケース1Dとを含む。上側ケース1U及び下側ケース1Dは何れも平板状の部材である。本実施形態では、上側ケース1U及び下側ケース1Dは同じ形状及び同じ大きさを有する。すなわち、上側ケース1U及び下側ケース1Dは同一部品として構成されている。
【0015】
また、上側ケース1Uは、前後対称且つ左右対称となるように形成されている。下側ケース1Dについても同様である。そして、上側ケース1Uと下側ケース1Dとは、互いに上下対称となるように配置されている。
【0016】
サイドケース2は、筐体HSの側面を構成するように形成されている。本実施形態では、サイドケース2は、平板状に形成された四つの側板部2Aを備えている。具体的には、側板部2Aは、図2に示すように、互いに対向する第1側板部2A1及び第3側板部2A3と、第1側板部2A1及び第3側板部2A3のそれぞれに垂直で且つ互いに対向する第2側板部2A2及び第4側板部2A4とを有する。
【0017】
ケース1は、締結部材3によりサイドケース2に締結される。具体的には、締結部材3は、上側締結部材3U及び下側締結部材3Dを含む。本実施形態では、締結部材3は、プラスドライバで操作できるように構成された雄ネジであり、サイドケース2の四隅に形成された雌ネジ孔2Tとかみ合うように構成されている。サイドケース2の四隅に形成された雌ネジ孔2Tは、Z軸方向に沿ってサイドケース2の角部を貫通するように形成されており、第1雌ネジ孔2T1~第4雌ネジ孔2T4を含む。そして、上側ケース1Uは、四つの上側締結部材3U(第1上側雄ネジ3U1~第4上側雄ネジ3U4)により、サイドケース2に締結されている。具体的には、第1上側雄ネジ3U1は、サイドケース2の右前隅に形成された第1雌ネジ孔2T1の上側開口にねじ込まれ、第2上側雄ネジ3U2は、サイドケース2の左前隅に形成された第2雌ネジ孔2T2の上側開口にねじ込まれ、第3上側雄ネジ3U3は、サイドケース2の左後隅に形成された第3雌ネジ孔2T3の上側開口にねじ込まれ、第4上側雄ネジ3U4は、サイドケース2の右後隅に形成された第4雌ネジ孔2T4の上側開口にねじ込まれる。同様に、下側ケース1Dは、四つの下側締結部材3D(第1下側雄ネジ3D1~第4下側雄ネジ3D4)により、サイドケース2に締結されている。具体的には、第1下側雄ネジ3D1は、サイドケース2の右前隅に形成された第1雌ネジ孔2T1の下側開口にねじ込まれ、第2下側雄ネジ3D2は、サイドケース2の左前隅に形成された第2雌ネジ孔2T2の下側開口にねじ込まれ、第3下側雄ネジ3D3は、サイドケース2の左後隅に形成された第3雌ネジ孔2T3の下側開口にねじ込まれ、第4下側雄ネジ3D4は、サイドケース2の右後隅に形成された第4雌ネジ孔2T4の下側開口にねじ込まれる。
【0018】
コイル4は、駆動手段DMを構成する部材である。本実施形態では、コイル4は、絶縁材料で表面を被覆された導電線が巻回されて形成される巻き線コイルであり、ケース1に固定されるように構成されている。図2は、明瞭化のため、導電線の詳細な巻回状態の図示を省略している。コイル4を図示する他の図においても同様である。コイル4は、積層コイル又は薄膜コイル等であってもよい。具体的には、コイル4は、上側ケース1Uの下側(Z2側)の面に固定される上側コイル4Uと、下側ケース1Dの上側(Z1側)の面に固定される下側コイル4Dと、を含む。そして、上側コイル4Uは、Y軸方向に沿って並置され且つ直列接続される第1上側コイル4U1、第2上側コイル4U2、及び第3上側コイル4U3を含み、下側コイル4Dは、Y軸方向に沿って並置され且つ直列接続される第1下側コイル4D1、第2下側コイル4D2、及び第3下側コイル4D3を含む。なお、以下では、第1上側コイル4U1及び第1下側コイル4D1は左側コイル4Lとも称され、第2上側コイル4U2及び第2下側コイル4D2は中央コイル4Cとも称され、第3上側コイル4U3及び第3下側コイル4D3は右側コイル4Rとも称される。
【0019】
制御部CTRは、可動体MBの動きを制御できるように構成されている。本実施形態では、制御部CTRは、電子回路及び不揮発性記憶装置等を含む装置であり、コイル4を流れる電流の向き及び大きさを制御できるように構成されている。制御部CTRは、コンピュータ等の外部装置からの制御指令に応じてコイル4を流れる電流の向き及び大きさを制御するように構成されていてもよく、外部装置からの制御指令を受けずにコイル4を流れる電流の向き及び大きさを制御するように構成されていてもよい。なお、本実施形態では、制御部CTRは、筐体HSの外部に設置されているが、筐体HSの内部に設置されていてもよい。
【0020】
可動体MBは、筐体HSを振動させることができるように構成されている。本実施形態では、可動体MBは、筐体HS内に取り付けられた状態で往復動することにより、筐体HSを振動させることができるように構成されている。
【0021】
次に、図3A図3B図4A、及び図4Bを参照し、可動体MBの詳細について説明する。図3A図3B図4A、及び図4Bは、可動体MBの外形図である。具体的には、図3Aは、可動体MBの全体の斜視図であり、図3Bは、可動体MBの分解斜視図である。図4Aは、磁束源5の図示が省略された状態の可動体MBの分解斜視図である。図4Bは、サイドケース2に取り付けられた可動体MBの上面図である。
【0022】
可動体MBは、磁束源5及び磁束源保持部材6を含み、弾性支持部材7によって弾性的に支持されるように構成されている。具体的には、可動体MBは、所定の固有振動数を有するとともに、所定方向に延びる振動軸VA(図3A参照。)に沿って筐体HS(サイドケース2)に対して往復動(振動)できるように構成されている。
【0023】
磁束源5は、駆動手段DMを構成する部材であり、磁束を発生させることができるように構成されている。本実施形態では、磁束源5は、永久磁石であり、左側磁石5L、中央磁石5C、及び右側磁石5Rを含む。中央磁石5Cは、第1中央磁石5C1及び第2中央磁石5C2を含む。左側磁石5L、第1中央磁石5C1、第2中央磁石5C2、及び右側磁石5Rは何れも、二極に着磁された永久磁石であり、Y軸方向に沿って並置されている。
【0024】
磁束源保持部材6は、磁束源5を保持できるように構成されている。本実施形態では、磁束源保持部材6は、合成樹脂で形成された矩形枠状の部材であり、左側磁石5L、第1中央磁石5C1、第2中央磁石5C2、及び右側磁石5RをY軸方向に沿って略等間隔で保持できるように構成されている。
【0025】
弾性支持部材7は、筐体HSと可動体MBとの間に介在して可動体MBを弾性的に支持できるように構成されている。本実施形態では、弾性支持部材7は、金属板で形成されたU字形状の板ばねであり、磁束源保持部材6の左端部に固定される左側板ばね7Lと、磁束源保持部材6の右端部に固定される右側板ばね7Rと、を含む。
【0026】
締結部材8は、弾性支持部材7を磁束源保持部材6に締結するための部材である。本実施形態では、締結部材8は、マイナスドライバで操作できるように構成された雄ネジであり、磁束源保持部材6に形成された雌ネジ孔6Tとかみ合うように構成されている。具体的には、締結部材8は、左側板ばね7Lを磁束源保持部材6の左端部に締結するための左側雄ネジ8Lと、右側板ばね7Rを磁束源保持部材6の右端部に締結するための右側雄ネジ8Rと、を含む。
【0027】
図4Aに示すように、締結部材8は、サイドケース2の側板部2Aに形成された貫通孔2H(図2参照。)、及び、弾性支持部材7に形成された貫通孔7Hを通じ、弾性支持部材7に形成された雌ネジ孔7T、及び、磁束源保持部材6に形成された雌ネジ孔6Tに締結される。具体的には、左側雄ネジ8Lは、サイドケース2の第2側板部2A2に形成された左側貫通孔2HL(図2参照。)、及び、左側板ばね7Lに形成された左側貫通孔7HLを通じ、左側板ばね7Lに形成された左側雌ネジ孔7TL、及び、磁束源保持部材6の左端部に形成された左側雌ネジ孔6TLにねじ込まれる。同様に、右側雄ネジ8Rは、サイドケース2の第4側板部2A4に形成された右側貫通孔2HR(図2参照。)、及び、右側板ばね7Rに形成された右側貫通孔7HRを通じ、右側板ばね7Rに形成された右側雌ネジ孔7TR、及び、磁束源保持部材6の右端部に形成された右側雌ネジ孔6TRにねじ込まれる。
【0028】
サイドケース2は、弾性支持部材7が締結部材を介さずにサイドケース2に固定されるように構成されている。具体的には、サイドケース2は、図4Bに示すように、弾性支持部材7の外端を挟持できるように形成された突出部2Pを有する。より具体的には、サイドケース2は、左側板ばね7Lの左端を挟持できるように形成された左側突出部2PLと、右側板ばね7Rの右端を挟持できるように形成された右側突出部2PRと、を有する。左側板ばね7Lは、その左端が第2側板部2A2の内面と左側突出部2PLとの間に差し込まれて固定され、右側板ばね7Rは、その右端が第4側板部2A4の内面と右側突出部2PRとの間に差し込まれて固定される。
【0029】
駆動手段DMは、振動力発生部の一例であり、可動体MBを振動軸VAに沿って振動させることができるように構成されている。本実施形態では、駆動手段DMは、コイル4及び磁束源5で構成され、制御部CTRを通じてコイル4に供給される電流の向き及び大きさに応じた、コイル4と磁束源5との間に作用する電磁力を利用し、弾性支持部材7によって弾性的に支持された可動体MB(磁束源5)を振動軸VAに沿って振動させることができるように構成されている。
【0030】
次に、図5A図5B図6A図6B図7A、及び図7Bを参照し、ガイド手段GMについて説明する。図5A及び図5Bは、ガイド手段GMを構成する部材の詳細図である。具体的には、図5Aは、分解された状態にある上側ケース1U、下側ケース1D、サイドケース2、及び磁束源保持部材6の左側面図である。図5Bは、組み合わされた状態にある上側ケース1U、下側ケース1D、及び磁束源保持部材6の左側面図である。図5A及び図5Bでは、明瞭化のため、ケース1及びサイドケース2には細かいドットパターンが付され、磁束源保持部材6には粗いドットパターンが付されている。また、図5Bでは、明瞭化のため、図5Aでは図示されているサイドケース2の図示が省略されている。図6A及び図6Bは、振動発生装置101の断面図である。具体的には、図6Aは、図1Bに示す一点鎖線L1を含むXZ平面に平行な平面における振動発生装置101の断面をY1側から見たときの図である。図6Bは、図6Aにおけるコイル4及び磁束源5の図示が省略された図である。図7A及び図7Bは、ガイド手段GMを構成する部材の斜視図である。具体的には、図7Aは、組み合わされた状態にある上側ケース1U、下側ケース1D、及び磁束源保持部材6の斜視図である。図7Bは、組み合わされた状態にある下側ケース1D及び磁束源保持部材6の斜視図である。図7A及び図7Bでは、明瞭化のため、磁束源保持部材6に粗いドットパターンが付されている。また、図7Bでは、磁束源保持部材6により磁束源5が保持された状態が示されている。
【0031】
ガイド手段GMは、可動体MBを固定体としての筐体HS内で左右方向(Y軸方向)に沿って往復動可能にガイドできるように構成されている。本実施形態では、ガイド手段GMは、上側ケース1Uと一体的に形成されるとともに上側ケース1Uから下方(Z2方向)に延設された上側ガイド部1UGと、下側ケース1Dと一体的に形成されるとともに下側ケース1Dから上方(Z1方向)に延設された下側ガイド部1DGとを含む。そして、ガイド手段GMは、可動体MBを構成する磁束源保持部材6に形成された突出部である被ガイド部6Gが上側ガイド部1UG及び下側ガイド部1DGによって左右方向に沿って摺動自在にガイドされるように構成されている。
【0032】
具体的には、上側ガイド部1UGは、サイドケース2の第1側板部2A1(図2参照。)に対向してY軸方向に延びる上前側ガイド部1UGFと、サイドケース2の第3側板部2A3(図2参照。)に対向してY軸方向に延びる上後側ガイド部1UGBと、を含む。同様に、下側ガイド部1DGは、サイドケース2の第1側板部2A1(図2参照。)に対向してY軸方向に延びる下前側ガイド部1DGFと、サイドケース2の第3側板部2A3(図2参照。)に対向してY軸方向に延びる下後側ガイド部1DGBと、を含む。
【0033】
磁束源保持部材6に形成された被ガイド部6Gは、サイドケース2の第1側板部2A1(図2参照。)に対向してY軸方向に延びる前側被ガイド部6GFと、サイドケース2の第3側板部2A3(図2参照。)に対向してY軸方向に延びる後側被ガイド部6GBと、を含む。
【0034】
そして、図5Bに示すように、上前側ガイド部1UGFの先端と下前側ガイド部1DGFの先端とは、前側被ガイド部6GFを挟んで互いに対向するように組み合わされ、且つ、上後側ガイド部1UGBの先端と下後側ガイド部1DGBの先端とは、後側被ガイド部6GBを挟んで互いに対向するように組み合わされる。
【0035】
本実施形態では、上前側ガイド部1UGFの先端、及び、下前側ガイド部1DGFの先端は何れも、前側被ガイド部6GFと接触するように組み合わされる。すなわち、前側被ガイド部6GFは、上前側ガイド部1UGFの先端と下前側ガイド部1DGFの先端との間に形成される空間と略同じ形状を有するように構成されている。具体的には、前側被ガイド部6GFは、磁束源保持部材6の長手方向の全長の大部分にわたって連続的に延びる一つの略直方体形状の突出部として形成されている。しかしながら、前側被ガイド部6GFは、磁束源保持部材6の長手方向に沿って断続的に配置される複数の突出部の組み合わせであってもよい。後側被ガイド部6GBについても同様である。また、本実施形態では、磁束源保持部材6は、前後対称となるように形成されている。すなわち、前側被ガイド部6GFと後側被ガイド部6GBとは同じ形状及び同じ大きさを有するように形成されている。但し、前側被ガイド部6GFと後側被ガイド部6GBとは異なる形状を有していてもよい。
【0036】
図5A及び図5Bに示す例では、磁束源保持部材6は、ケース1及びサイドケース2に組み合わされたときに、前側被ガイド部6GFの上面FS1が上前側ガイド部1UGFの先端面FS2と接触し、且つ、前側被ガイド部6GFの下面FS3が下前側ガイド部1DGFの先端面FS4と接触するように構成されている。また、磁束源保持部材6は、上側前面FS5(前面のうち前側被ガイド部6GFの上方に位置する部分)が上前側ガイド部1UGFの内面FS6と接触し、下側前面FS7(前面のうち前側被ガイド部6GFの下方に位置する部分)が下前側ガイド部1DGFの内面FS8と接触するように構成されている。一方で、磁束源保持部材6は、前側被ガイド部6GFの前面FS9がサイドケース2の第1側板部2A1の内面FS10(図6A参照。)と接触しないように構成されている。なお、ケース1は、上前側ガイド部1UGFの外面FS11とサイドケース2の第1側板部2A1の内面FS10とが接触し、且つ、下前側ガイド部1DGFの外面FS12とサイドケース2の第1側板部2A1の内面FS10とが接触するように構成されている。
【0037】
同様に、磁束源保持部材6は、ケース1及びサイドケース2に組み合わされたときに、後側被ガイド部6GBの上面BS1が上後側ガイド部1UGBの先端面BS2と接触し、且つ、後側被ガイド部6GBの下面BS3が下後側ガイド部1DGBの先端面BS4と接触するように構成されている。また、磁束源保持部材6は、上側後面BS5(後面のうち後側被ガイド部6GBの上方に位置する部分)が上後側ガイド部1UGBの内面BS6と接触し、下側後面BS7(後面のうち後側被ガイド部6GBの下方に位置する部分)が下後側ガイド部1DGBの内面BS8と接触するように構成されている。一方で、磁束源保持部材6は、後側被ガイド部6GBの後面BS9がサイドケース2の第3側板部2A3の内面BS10(図6A参照。)と接触しないように構成されている。なお、ケース1は、上後側ガイド部1UGBの外面BS11とサイドケース2の第3側板部2A3の内面BS10とが接触し、且つ、下後側ガイド部1DGBの外面BS12とサイドケース2の第3側板部2A3の内面BS10とが接触するように構成されている。
【0038】
上述のように、被ガイド部6Gは、上側ガイド部1UGと下側ガイド部1DGとの間で、図7A及び図7Bのそれぞれにおける双方向矢印AR1で示す方向に摺動できるように構成されている。具体的には、被ガイド部6Gは、その上面を上側ガイド部1UGの先端面と接触させ、その下面を下側ガイド部1DGの先端面と接触させながら左右方向(Y軸方向)に往復動できるように構成されている。
【0039】
この構成により、磁束源保持部材6は、前後方向及び上下方向のそれぞれにおける移動が制限される一方で、左右方向における円滑な移動が許容される。
【0040】
次に、図8A図8B図9A図9C、及び、図10A図10Cを参照し、駆動手段DMの詳細について説明する。図8A及び図8Bは、固定体としての筐体HSに固定されたコイル4の詳細図である。具体的には、図8Aは、下側ケース1Dに固定された下側コイル4Dの斜視図である。図8Bは、下側ケース1Dに固定された下側コイル4Dの上面図である。図8A及び図8Bでは、明瞭化のため、下側コイル4Dにドットパターンが付されている。図9A図9Cは、図7Aに示す一点鎖線L2を含むYZ平面に平行な仮想平面におけるケース1、コイル4、及び磁束源5の断面をX1側から見たときの図である。具体的には、図9Aは、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の中心に位置するときのケース1、コイル4、及び磁束源5の断面図である。図9Bは、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の右端に位置するときのケース1、コイル4、及び磁束源5の断面図である。図9Cは、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の左端に位置するときのケース1、コイル4、及び磁束源5の断面図である。図9A図9Cでは、明瞭化のため、磁束源5としての永久磁石には、断面を表すパターンの代わりに、N極部分に粗いクロスパターンが付され、S極部分に細かいクロスパターンが付されている。他の図においても同様である。図10A図10Cは、下側ケース1Dに固定された下側コイル4Dの上を左右方向(Y軸方向)に移動可能な磁束源5の上面図である。具体的には、図10Aは、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の中心に位置するときの下側ケース1D、下側コイル4D、及び磁束源5の上面図である。図10Bは、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の右端に位置するときの下側ケース1D、下側コイル4D、及び磁束源5の上面図である。図10Cは、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の左端に位置するときの下側ケース1D、下側コイル4D、及び磁束源5の上面図である。
【0041】
なお、図9A図9C及び図10A図10Cでは、明瞭化のため、バネを表す図形によって弾性支持部材7の伸縮状態が模式的に表されている。
【0042】
駆動手段DMの構成要素の一つであるコイル4は、図2に示すように、上側ケース1Uの下側(Z2側)の面に固定される上側コイル4Uと、下側ケース1Dの上側(Z1側)の面に固定される下側コイル4Dと、を含む。
【0043】
下側コイル4Dは、図8A及び図8Bに示すように、下側ケース1Dの上面(Z1側の面)に接着剤で固定される三つのコイル(第1下側コイル4D1、第2下側コイル4D2、及び第3下側コイル4D3)を含む。図8A及び図8Bを参照する以下の説明は、下側コイル4Dに関するが、上側コイル4Uにも同様に適用される。上側ケース1Uと下側ケース1Dとは同じ形状及び同じ大きさを有し、上側コイル4Uと下側コイル4Dとは同じ形状及び同じ大きさを有するためである。
【0044】
下側ケース1Dの上面には、図2及び図8Bに示すように、上方(Z1方向)に突出する略直方体形状の下側突出部1DPが形成されている。具体的には、下側突出部1DPは、第1下側コイル4D1を保持するための左下側突出部1DPL、第2下側コイル4D2を保持するための中央下側突出部1DPC、及び、第3下側コイル4D3を保持するための右下側突出部1DPRを含む。
【0045】
第1下側コイル4D1は、左下側突出部1DPLの左側(Y1側)に位置し且つ左下側突出部1DPLに沿って延びる左側束線部4D1Lと、左下側突出部1DPLの右側(Y2側)に位置し且つ左下側突出部1DPLに沿って延びる右側束線部4D1Rと、を含む。なお、束線部は、コイルを構成する導電線が前後方向(X軸方向)に沿って延びる部分を意味する。
【0046】
図8Bでは、明瞭化のため、第1下側コイル4D1における左側束線部4D1L及び右側束線部4D1Rには、第1下側コイル4D1における他の部分に付されているドットパターンよりも細かいドットパターンが付されている。第2下側コイル4D2及び第3下側コイル4D3についても同様である。
【0047】
第2下側コイル4D2は、中央下側突出部1DPCの左側(Y1側)に位置し且つ中央下側突出部1DPCに沿って延びる左側束線部4D2Lと、中央下側突出部1DPCの右側(Y2側)に位置し且つ中央下側突出部1DPCに沿って延びる右側束線部4D2Rと、を含む。
【0048】
同様に、第3下側コイル4D3は、右下側突出部1DPRの左側(Y1側)に位置し且つ右下側突出部1DPRに沿って延びる左側束線部4D3Lと、右下側突出部1DPRの右側(Y2側)に位置し且つ右下側突出部1DPRに沿って延びる右側束線部4D3Rと、を含む。
【0049】
第1下側コイル4D1の左側束線部4D1L及び右側束線部4D1Rは、磁束源5が発生させる磁束が通過する部分、すなわち、可動体MBを左右方向に移動させるためのローレンツ力に基づく駆動力を発生させる部分である。第2下側コイル4D2の左側束線部4D2L及び右側束線部4D2R、並びに、第3下側コイル4D3の左側束線部4D3L及び右側束線部4D3Rについても同様である。
【0050】
駆動手段DMの構成要素の別の一つである磁束源5は、図9A図9Cに示すように、上側コイル4Uと下側コイル4Dとの間の空間内において、左右方向(Y軸方向)に移動可能に配置されている。具体的には、磁束源5は、左側磁石5L、第1中央磁石5C1、第2中央磁石5C2、及び右側磁石5Rを含む。そして、左側磁石5L、第1中央磁石5C1、第2中央磁石5C2、及び右側磁石5Rのそれぞれは、図9A図9Cでは不図示の磁束源保持部材6により、互いに所定の間隔を空けた状態で保持されている。
【0051】
本実施形態では、図9Bに示すように、左側磁石5Lは、その幅W1が右側磁石5Rの幅W2と略同じになるように構成されている。また、第1中央磁石5C1は、その幅W3が第2中央磁石5C2の幅W4と略同じになるように構成されている。また、左側磁石5Lは、その幅W1が第1中央磁石5C1の幅W3の略2分の1となるように構成されている。
【0052】
本実施形態では、コイル4を構成している六つのコイルは、同じ形状及び同じ大きさを有するように構成されている。すなわち、第1上側コイル4U1の左側束線部4U1Lの幅W5、第1上側コイル4U1の右側束線部4U1Rの幅W6、第2上側コイル4U2の左側束線部4U2Lの幅W7、第2上側コイル4U2の右側束線部4U2Rの幅W8、第3上側コイル4U3の左側束線部4U3Lの幅W9、第3上側コイル4U3の右側束線部4U3Rの幅W10、第1下側コイル4D1の左側束線部4D1Lの幅W11、第1下側コイル4D1の右側束線部4D1Rの幅W12、第2下側コイル4D2の左側束線部4D2Lの幅W13、第2下側コイル4D2の右側束線部4D2Rの幅W14、第3下側コイル4D3の左側束線部4D3Lの幅W15、及び、第3下側コイル4D3の右側束線部4D3Rの幅W16は全て同じ大きさである。
【0053】
そして、左側磁石5Lは、その幅W1が第1上側コイル4U1の左側束線部4U1Lの幅W5と略同じになるように構成されている。また、第1中央磁石5C1は、その幅W3が、第1上側コイル4U1の右側束線部4U1Rの幅W6と第2上側コイル4U2の左側束線部4U2Lの幅W7との合計と略同じになるように構成されている。
【0054】
可動体MB(磁束源5)が可動範囲の中心に位置するときには、図9Aに示すように、左側磁石5Lは、N極部分(上側部分)が第1上側コイル4U1の左側束線部4U1Lと対向するように、且つ、S極部分(下側部分)が第1下側コイル4D1の左側束線部4D1Lと対向するように配置されている。また、第1中央磁石5C1は、S極部分(上側部分)が第1上側コイル4U1の右側束線部4U1R及び第2上側コイル4U2の左側束線部4U2Lのそれぞれと対向するように、且つ、N極部分(下側部分)が第1下側コイル4D1の右側束線部4D1R及び第2下側コイル4D2の左側束線部4D2Lのそれぞれと対向するように配置されている。また、第2中央磁石5C2は、N極部分(上側部分)が第2上側コイル4U2の右側束線部4U2R及び第3上側コイル4U3の左側束線部4U3Lのそれぞれと対向するように、且つ、S極部分(下側部分)が第2下側コイル4D2の右側束線部4D2R及び第3下側コイル4D3の左側束線部4D3Lのそれぞれと対向するように配置されている。また、右側磁石5Rは、S極部分(上側部分)が第3上側コイル4U3の右側束線部4U3Rと対向するように、且つ、N極部分(下側部分)が第3下側コイル4D3の右側束線部4D3Rと対向するように配置されている。
【0055】
図10Bの破線矢印で示すように下側コイル4Dに電流が流れると、可動体MB(磁束源5)は、ガイド手段GMによってガイドされながら、右方向(Y2方向)に摺動する。具体的には、第1下側コイル4D1に上面視で反時計回りに電流が流れ、第2下側コイル4D2に上面視で時計回りに電流が流れ、且つ、第3下側コイル4D3に上面視で反時計回りに電流が流れると、可動体MB(磁束源5)は、右方向(Y2方向)に摺動する。
【0056】
下側ケース1Dに固定された下側コイル4Dを構成している導電線内を移動する荷電粒子にローレンツ力が作用し、その反力によって磁束源5としての左側磁石5L、第1中央磁石5C1、第2中央磁石5C2、及び右側磁石5Rが右方向に移動させられるためである。
【0057】
同様に、図10Cの破線矢印で示すように下側コイル4Dに電流が流れると、可動体MB(磁束源5)は、ガイド手段GMによってガイドされながら、左方向(Y1方向)に摺動する。具体的には、第1下側コイル4D1に上面視で時計回りに電流が流れ、第2下側コイル4D2に上面視で反時計回りに電流が流れ、且つ、第3下側コイル4D3に上面視で時計回りに電流が流れると、可動体MB(磁束源5)は、左方向(Y1方向)に摺動する。
【0058】
可動体MB(磁束源5)が右方向(Y2方向)に摺動すると、可動体MB(磁束源保持部材6)の右端部に固定された右側板ばね7Rは収縮する。収縮した右側板ばね7Rは、可動体MBを右方向に移動させようとする力が消失したとき、すなわち、コイル4を流れる電流が消失したときに、可動体MBを可動範囲の中心に戻そうとする復元力(可動体MBを左方向に押し戻そうとする復元力)を発生させる。反対に、可動体MB(磁束源5)が右方向(Y2方向)に摺動すると、可動体MB(磁束源保持部材6)の左端部に固定された左側板ばね7Lは伸長する。伸長した左側板ばね7Lは、可動体MBを右方向に移動させようとする力が消失したとき、すなわち、コイル4を流れる電流が消失したときに、可動体MBを可動範囲の中心に戻そうとする復元力(可動体MBを左方向に引き戻そうとする復元力)を発生させる。可動体MB(磁束源5)が左方向(Y1方向)に摺動する場合も同様である。
【0059】
そのため、可動範囲の中心からずれた位置にある可動体MBは、コイル4に対する電流の供給が停止されると、弾性支持部材7の復元力によって可動範囲の中心に戻される。このようにして、駆動手段DMは、可動体MBを左右方向に振動させることができる。
【0060】
次に、図11A及び図11Bを参照し、磁束源5の詳細について説明する。図11A及び図11Bは、ケース1、コイル4、及び磁束源5の断面図であり、図9Aに対応している。具体的には、図11Aは、振動発生装置101における、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の中心に位置するときのケース1、コイル4、及び磁束源5の断面図である。図11Bは、参考例としての振動発生装置101Xにおけるケース1、コイル4、及び磁束源5の断面図である。
【0061】
振動発生装置101は、中央磁石5Cの高さH1が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの高さH2より小さい点、すなわち、コイル4と中央磁石5Cとの間の隙間(距離)がコイル4と左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれとの間の隙間(距離)より大きい点で、振動発生装置101Xと異なるが、その他の点で振動発生装置101と共通している。そのため、以下では、共通部分の説明が省略され、相違部分が詳説される。
【0062】
振動発生装置101Xでは、磁束源5は、中央磁石5Cの高さH11が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの高さH12と同じになるように構成されている。すなわち、磁束源5は、コイル4と中央磁石5Cとの間の距離がコイル4と左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれとの間の距離と同じになるように構成されている。この場合、コイル4の束線部を通過する磁界の強さは、位置的に不均一なものとなってしまう。なお、図11A及び図11Bでは、明瞭化のため、コイル4を通過する磁界の強さがコイル4の断面に付されたドットパターンの粗密によって表されている。具体的には、図11A及び図11Bでは、コイル4の断面に付されたドットパターンが細かいほど磁界が強いことを示している。
【0063】
より具体的には、図11Aは、第1上側コイル4U1の左側束線部4U1L及び右側束線部4U1R、第2上側コイル4U2の左側束線部4U2L及び右側束線部4U2R、第3上側コイル4U3の左側束線部4U3L及び右側束線部4U3R、第1下側コイル4D1の左側束線部4D1L及び右側束線部4D1R、第2下側コイル4D2の左側束線部4D2L及び右側束線部4D2R、並びに、第3下側コイル4D3の左側束線部4D3L及び右側束線部4D3Rのそれぞれを通過する磁界の強さが何れも同程度であることを示している。
【0064】
それに対し、図11Bは、第1上側コイル4U1の右側束線部4U1Rの右側部分、第2上側コイル4U2の左側束線部4U2Lの左側部分、第2上側コイル4U2の右側束線部4U2Rの右側部分、第3上側コイル4U3の左側束線部4U3Lの左側部分、第1下側コイル4D1の右側束線部4D1Rの右側部分、第2下側コイル4D2の左側束線部4D2Lの左側部分、第2下側コイル4D2の右側束線部4D2Rの右側部分、並びに、第3下側コイル4D3の左側束線部4D3Lの左側部分のそれぞれを通過する磁束の密度が、コイル4の他の束線部を通過する磁束の密度よりも高くなっていることを示している。以下では、コイル4における、比較的磁束密度が高い部分は「磁束集中部分」と称される。
【0065】
図11Bに示す振動発生装置101Xでは、可動体MB(磁束源5)が右方に移動すると、磁束集中部分も左方に移動する。そのため、第1上側コイル4U1の右側束線部4U1R、第2上側コイル4U2の左側束線部4U2L及び右側束線部4U2R、第3上側コイル4U3の左側束線部4U3L、第1下側コイル4D1の右側束線部4D1R、第2下側コイル4D2の左側束線部4D2L及び右側束線部4D2R、並びに、第3下側コイル4D3の左側束線部4D3Lのそれぞれを通過する磁界の強度は、可動体MB(磁束源5)の移動に応じて変化する。その結果、磁界強度(磁束密度)の変化に起因する電磁誘導によってコイル4において誘導起電力が生成され、可動体MBの右方への移動が妨げられてしまう。可動体MB(磁束源5)が左方に移動する場合についても同様である。
【0066】
一方、図11Aに示す振動発生装置101では、磁束集中部分が発生しないように構成されているため、可動体MB(磁束源5)が左右方向に移動しても、コイル4の束線部を通過する磁界の強度が急激に変化することはなく、磁界強度(磁束密度)の変化に起因する過度の誘導起電力が生成されることもなく、可動体MBの移動が過度に妨げられてしまうこともない。図11Aに示す例では、磁束集中部分の発生は、中央磁石5C(第1中央磁石5C1及び第2中央磁石5C2)の高さH1が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの高さH2よりも小さいという構成によって実現されている。
【0067】
ここで、図12A及び図12Bを参照し、磁束集中部分が発生する理由について説明する。図12A及び図12Bは、第1上側コイル4U1の左側束線部4U1Lに対向している左側磁石5Lと、第1上側コイル4U1の右側束線部4U1R及び第2上側コイル4U2の左側束線部4U2Lに対向している第1中央磁石5C1の拡大図である。具体的には、図12Aは、図11Aにおける一点鎖線で囲まれた範囲R1の拡大図であり、図12Bは、図11Bにおける一点鎖線で囲まれた範囲R2の拡大図である。図12A及び図12Bにおける点線は、磁束源5から延びる磁束の一部を模式的に表している。
【0068】
図12A及び図12Bに示すように、左側磁石5Lから延びる磁束は、左側磁石5Lの左端部に近い位置から延びる磁束ほど左方に広がるように形成され、左側磁石5Lの右端部に近い位置から延びる磁束ほど右方に広がるように形成される。すなわち、左側磁石5Lから延びる磁束は、左側磁石5Lの中央部に近い位置から延びる磁束ほどZ軸に沿って真っ直ぐに延び、左側束線部4U1Lを垂直に通過するように形成される。
【0069】
同様に、第1中央磁石5C1から延びる磁束も、第1中央磁石5C1の左端部に近い位置から延びる磁束ほど左方に広がるように形成され、第1中央磁石5C1の右端部に近い位置から延びる磁束ほど右方に広がるように形成される。すなわち、第1中央磁石5C1から延びる磁束は、第1中央磁石5C1の中央部に近い位置から延びる磁束ほどZ軸に沿って真っ直ぐに延び、右側束線部4U1R及び左側束線部4U2Lのそれぞれを垂直に通過するように形成される。
【0070】
そのため、図12Bに示すように、振動発生装置101Xでは、右側束線部4U1Rと第1中央磁石5C1との間の隙間が振動発生装置101の場合に比べて小さいため、右側束線部4U1Rの右側部分を垂直に通過する磁束の数が多くなり、磁束集中部分が発生してしまう。左側束線部4U2Lの左側部分についても同様である。
【0071】
そこで、振動発生装置101は、第1中央磁石5C1の高さH1を左側磁石5Lの高さH2よりも小さくすること、すなわち、左側磁石5Lと左側束線部4U1Lとの間の隙間よりも第1中央磁石5C1と右側束線部4U1Rとの間の隙間を大きくすることで、右側束線部4U1Rの右側部分を垂直に通過する磁束の数が少なくなるように構成されている。
【0072】
具体的には、図12Bに示す振動発生装置101Xでは、右側束線部4U1Rと第1中央磁石5C1との間の空間SP1Xを上下方向に貫通する第1中央磁石5C1による磁束の数が、左側束線部4U1Lと左側磁石5Lとの間の空間SP2を上下方向に貫通する左側磁石5Lによる磁束の数よりも多い。空間SP2の上面を通らずに空間SP2の右側面を通って右方に延びる磁束の数が、空間SP1Xの上面を通らずに空間SP1Xの右側面を通って右方に延びる磁束の数よりも多いためである。
【0073】
これに対し、図12Aに示す振動発生装置101は、右側束線部4U1Rと第1中央磁石5C1との間の空間SP1を上下方向に貫通する第1中央磁石5C1による磁束の数が、左側束線部4U1Lと左側磁石5Lとの間の空間SP2を上下方向に貫通する左側磁石5Lによる磁束の数よりも少なくなるように構成されている。すなわち、図12Aに示す振動発生装置101は、振動発生装置101Xの場合と比べ、空間SP1の上面を通らずに空間SP1の左側面を通って左方に延びる磁束の数が多くなるように構成されている。
【0074】
なお、空間SP1を上下方向に貫通する磁束は、空間SP1の下面を通過し、且つ、空間SP1の上面を通過する磁束である。空間SP1Xを上下方向に貫通する磁束、及び、空間SP2を上下方向に貫通する磁束についても同様である。
【0075】
また、空間SP1は、右側束線部4U1Rと同じ幅及び同じ奥行きを有する直方体状の空間であり、空間SP1Xは、右側束線部4U1Rと同じ幅及び同じ奥行きを有する直方体状の空間であり、空間SP2は、左側束線部4U1Lと同じ幅及び同じ奥行きを有する直方体状の空間である。
【0076】
この構成により、振動発生装置101では、振動発生装置101Xの場合に比べ、右側束線部4U1Rの右側部分を垂直に通過する磁束の数が少なくなり、磁束集中部分の発生が抑制される。第1中央磁石5C1から延びる磁束は、第1中央磁石5C1から離れるほど、Z軸に対して傾斜するように延びるためである。
【0077】
なお、上述の説明は、右側束線部4U1Rの右側部分に磁束集中部分が形成されるのを抑制するための構成に関するが、左側束線部4U2Lの左側部分、右側束線部4U2Rの右側部分、左側束線部4U3Lの左側部分、右側束線部4D1Rの右側部分、左側束線部4D2Lの左側部分、右側束線部4D2Rの右側部分、及び、左側束線部4D3Lの左側部分のそれぞれに磁束集中部分が形成されるのを抑制するための構成にも同様に適用される。
【0078】
ここで、図13A図13Cを参照し、磁束集中部分の発生を抑制するための他の構成について説明する。図13A図13Cは、ケース1、コイル4、及び磁束源5の断面図であり、図9Aに対応している。具体的には、図13Aは、振動発生装置101の別の構成例である振動発生装置101Aにおける、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の中心に位置するときのケース1、コイル4、及び磁束源5の断面図である。図13Bは、振動発生装置101の更に別の構成例である振動発生装置101Bにおける、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の中心に位置するときのケース1、コイル4、及び磁束源5の断面図である。図13Cは、振動発生装置101の更に別の構成例である振動発生装置101Cにおける、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の中心に位置するときのケース1、コイル4、及び磁束源5の断面図である。
【0079】
図13Aに示す振動発生装置101Aは、主に、上側コイル4U及び下側コイル4Dのそれぞれが左側コイル4Lと右側コイル4Rとで構成され、且つ、中央磁石5Cが二極に着磁された一つの永久磁石で構成されている点で、振動発生装置101と異なる。すなわち、振動発生装置101は、主に、上側コイル4U及び下側コイル4Dのそれぞれが左側コイル4L及び右側コイル4Rに加えて中央コイル4Cを有し、且つ、中央磁石5Cが二極に着磁された二つの永久磁石(第1中央磁石5C1及び第2中央磁石5C2)で構成されている点で、振動発生装置101Aと異なる。また、振動発生装置101Aは、中央磁石5Cの高さH21が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの高さH22と同じであり、且つ、中央磁石5Cの磁力が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの磁力より弱い点で、振動発生装置101と異なる。すなわち、振動発生装置101は、図11Aに示すように、中央磁石5Cの高さH1が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの高さH2より小さく、且つ、中央磁石5Cの磁力が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの磁力と同じである点で、振動発生装置101Aと異なる。なお、図13Aでは、明瞭化のため、磁力が弱い中央磁石5Cには、磁力が強い左側磁石5L及び右側磁石5Rに付されているクロスパターンよりも粗いクロスパターンが付されている。
【0080】
この構成により、振動発生装置101Aは、薄厚の中央磁石5Cを利用する振動発生装置101と同様に、コイル4の束線部を通過する磁界の強さが不均一になるのを抑制することができる。なお、同様の効果を得るために、振動発生装置101Aは、左側磁石5L、中央磁石5C、及び右側磁石5Rのそれぞれの磁力が同じになるように、且つ、中央磁石5Cの高さH21が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの高さH22よりも小さくなるように構成されていてもよい。
【0081】
図13Bに示す振動発生装置101Bは、主に、中央磁石5Cが二つの永久磁石(第1中央磁石5C1及び第2中央磁石5C2)で構成されている点、並びに、左側磁石5Lの幅W31、第1中央磁石5C1の幅W32、第2中央磁石5C2の幅W33、及び、右側磁石5Rの幅W34が何れも略同じである点で、振動発生装置101Aと異なる。また、振動発生装置101Bは、左側磁石5L、第1中央磁石5C1、第2中央磁石5C2、及び右側磁石5Rのそれぞれの磁力が略同じである点、並びに、第1中央磁石5C1及び第2中央磁石5C2のそれぞれの高さH31が、左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの高さH32より小さい点で、振動発生装置101Aと異なる。しかしながら、振動発生装置101Bは、その他の点において、振動発生装置101Aと共通である。
【0082】
この構成により、振動発生装置101Bは、磁力の弱い中央磁石5Cを利用する振動発生装置101Aと同様に、コイル4の束線部を通過する磁界の強さが不均一になるのを抑制することができる。
【0083】
図13Cに示す振動発生装置101Cは、主に、第1中央磁石5C1及び第2中央磁石5C2のそれぞれの高さH41が、左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの高さH42と略同じである点、並びに、第1中央磁石5C1の幅W42及び第2中央磁石5C2の幅W43が、左側磁石5Lの幅W41及び右側磁石5Rの幅W44よりも小さい点で、振動発生装置101Bと異なる。
【0084】
この構成により、振動発生装置101Cは、薄厚で且つ幅広の中央磁石5Cを利用する振動発生装置101Bと同様に、コイル4の束線部を通過する磁界の強さが不均一になるのを抑制することができる。
【0085】
上述のように、振動発生装置101は、中央磁石5Cの幅、高さ(中央磁石5Cとコイル4との間の距離)、奥行き、及び磁力等の少なくとも一つが適切に設定されることにより、コイル4の束線部を通過する磁界の強さが不均一になるのを抑制できる。その結果、コイル4及び磁束源5で構成される駆動手段DMは、可動体MBが左右方向に変位したときに、駆動力(電磁力)が小さくなってしまうのを抑制できる。本実施形態では、駆動手段DMは、左右方向における可動体MBの変位量とは無関係に、略一定の駆動力(電磁力)を出力することができる。一方で、図11Bに示す振動発生装置101Xでは、駆動手段DMの駆動力(電磁力)は、可動体MB(磁束源5)の変位量が大きいほど小さくなる傾向を有する。
【0086】
なお、中央磁石5Cの上面及び下面には磁性材料で形成された板状部材が貼り付けられていてもよい。中央磁石5Cから出てコイル4を通過する磁界の強度を弱めるためである。この場合、左側磁石5L、中央磁石5C、及び右側磁石5Rのそれぞれの高さは同じであってもよい。
【0087】
この構成は、振動発生装置101A~振動発生装置101Cの場合と同様に、コイル4の束線部を通過する磁界の強さが不均一になるのを抑制することができる。
【0088】
次に、図14を参照し、磁束集中部分の発生を抑制するための更に別の構成について説明する。図14は、ケース1、コイル4、及び磁束源5の上面図であり、図10Aに対応している。具体的には、図14は、振動発生装置101の別の構成例である振動発生装置101Dにおける、可動体MB(磁束源5)が可動範囲の中心に位置するときのケース1、コイル4、及び磁束源5の上面図である。
【0089】
図14に示す振動発生装置101Dは、中央磁石5Cの奥行きDP1が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの奥行きDP2よりも小さい点で、振動発生装置101と異なるが、その他の点で振動発生装置101と共通している。
【0090】
図14に示す例では、磁束集中部分の発生は、中央磁石5C(第1中央磁石5C1及び第2中央磁石5C2)の奥行きDP1が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの奥行きDP2よりも小さいという構成によって抑制されている。
【0091】
この構成により、振動発生装置101Dは、薄厚の中央磁石5Cを利用する振動発生装置101と同様に、コイル4の束線部を通過する磁界の強さが不均一になるのを抑制することができる。
【0092】
上述のように、本発明の実施形態に係る振動発生装置101は、例えば図2に示すように、上側ケース1Uと下側ケース1Dとを有する固定体としての筐体HS(図1A参照。)と、上側ケース1Uと下側ケース1Dとの間の空間に収容される可動体MBと、可動体MBを筐体HS内で左右方向に沿って往復動可能にガイドするガイド手段GMと、可動体MB及び筐体HSのうちの一方(図2に示す例では可動体MB)に固定された磁束源5、並びに、可動体MB及び筐体HSのうちの他方(図2に示す例では筐体HS)に固定されたコイル4からなり、左右方向の駆動力を可動体MBに付与する駆動手段DMと、を備えている。
【0093】
そして、ガイド手段GMは、例えば図5Aに示すように、上側ケース1Uと一体的に形成されるとともに上側ケース1Uから下方に延設された上側ガイド部1UGと、下側ケース1Dと一体的に形成されるとともに下側ケース1Dから上方に延設された下側ガイド部1DGとを含む。また、ガイド手段GMは、可動体MB(磁束源保持部材6)に形成された被ガイド部6Gが上側ガイド部1UG及び下側ガイド部1DGによって左右方向に沿って摺動自在にガイドされるように構成されている。
【0094】
この振動発生装置101は、上側ケース1Uの一部と下側ケース1Dの一部とを利用してガイド手段GMを構成するため、可動体MBを筐体HS内で左右方向に往復動可能にガイドするガイド手段GMを備えながらも部品点数の増加を抑制できる。また、この構成は、振動発生装置101が大型化してしまうのを抑制できる。
【0095】
ガイド手段GMは、図5Bに示すように、被ガイド部6Gが上側ガイド部1UGと下側ガイド部1DGとの間の空間で左右方向に沿って摺動自在にガイドされるように構成されていてもよい。
【0096】
具体的には、例えば図5Aに示すように、上側ガイド部1UGは、上側ケース1Uの前側にある上前側ガイド部1UGFと上側ケース1Uの後側にある上後側ガイド部1UGBとを含んでいてもよい。また、下側ガイド部1DGは、下側ケース1Dの前側にある下前側ガイド部1DGFと下側ケース1Dの後側にある下後側ガイド部1DGBとを含んでいてもよい。そして、被ガイド部6Gは、可動体MBを構成する磁束源保持部材6の前側にある前側被ガイド部6GFと、可動体MBを構成する磁束源保持部材6の後側にある後側被ガイド部6GBとを含んでいてもよい。
【0097】
より具体的には、磁束源保持部材6は、上前側ガイド部1UGFの先端部と下前側ガイド部1DGFの先端部との間に形成された略直方体形状の空間である凹状空間内に嵌め込まれるように、その前面から前方に突出するように形成された凸状の前側被ガイド部6GFを有していてもよい。また、磁束源保持部材6は、上後側ガイド部1UGBの先端部と下後側ガイド部1DGBの先端部との間に形成された略直方体形状の空間である凹状空間内に嵌め込まれるように、その後面から後方に突出するように形成された凸状の後側被ガイド部6GBを有していてもよい。
【0098】
この構成では、ガイド手段GMは、被ガイド部6Gが左右方向(Y軸方向)以外の方向に移動するのを抑制できる。すなわち、ガイド手段GMは、可動体MBが前後方向(X軸方向)及び上下方向(Z軸方向)に移動するのを抑制できる。そのため、この構成は、筐体HSと可動体MBとの間に介在して可動体MBを弾性的に支持できるように構成された弾性支持部材7の形状を簡素化できる。弾性支持部材7は、可動体MBの前後方向(X軸方向)及び上下方向(Z軸方向)における移動を抑制する必要がないためである。
【0099】
筐体HSは、上部及び下部が開放された筒状のサイドケース2を備えていてもよい。この場合、筐体HSは、図5A及び図6Aに示すように、上側ケース1Uがサイドケース2の上端部に上から当接して位置決めされるとともに、下側ケース1Dがサイドケース2の下端部に下から当接して位置決めされるように構成されていてもよい。
【0100】
この構成は、上後側ガイド部1UGBの先端部と下後側ガイド部1DGBの先端部との間に形成される凹状空間の所望のサイズが高精度に実現されるのを可能にする。そのため、この構成は、左右方向における可動体MBの滑らかな摺動を実現できる。
【0101】
上側ケース1Uと下側ケース1Dとは、望ましくは、同じ形状及び同じ大きさを有するように構成されている。この構成は、振動発生装置101を構成する部品の点数を更に削減できる。
【0102】
また、本発明の実施形態に係る振動発生装置101は、例えば図2に示すように、固定体としての筐体HS(図1A参照。)と、筐体HS内に収容される可動体MBと、可動体MBを筐体HS内で左右方向に沿って往復動可能にガイドするガイド手段GMと、可動体MB及び筐体HSの一方(図2に示す例では可動体MB)に固定され上下方向に沿った磁束を発生する磁束源5と、磁束源5が発生させる磁束と交差するように可動体MB及び筐体HSの他方(図2に示す例では筐体HS)に固定され、前後方向に沿って延在し左右方向に沿って並設される導電線からなるコイル4と、を備えている。
【0103】
磁束源5は、例えば図3Aに示すように、左側磁石5L、少なくとも一つの中央磁石5C、及び右側磁石5Rを含む。左側磁石5L、少なくとも一つの中央磁石5C、及び右側磁石5Rは、左右方向に沿って併設されている。
【0104】
コイル4は、図9Aに示すように、左側磁石5Lからの磁束と交差する左側束線部、及び、中央磁石5Cからの磁束と交差する右側束線部からなる左側コイル4Lと、中央磁石5Cからの磁束と交差する左側束線部、及び、右側磁石5Rからの磁束と交差する右側束線部からなる右側コイル4Rと、を含むように構成されている。
【0105】
そして、振動発生装置101は、左側コイル4Lの右側束線部と中央磁石5Cとの間の空間を上下方向に貫通する中央磁石5Cによる磁束の数が、左側コイル4Lの左側束線部と左側磁石5Lとの間の空間を上下方向に貫通する左側磁石5Lによる磁束の数よりも小さくなるように、且つ、右側コイル4Rの左側束線部と中央磁石5Cとの間の空間を上下方向に貫通する中央磁石5Cによる磁束の数が、右側コイル4Rの右側束線部と右側磁石5Rとの間の空間を上下方向に貫通する右側磁石5Rによる磁束の数よりも小さくなるように構成されている。
【0106】
そして、振動発生装置101は、望ましくは、中央磁石5Cの幅、高さ(中央磁石5Cとコイル4との間の距離)、奥行き、及び磁力等の少なくとも一つが適切に設定されることにより、コイル4を構成する各束線部を通る磁束の数が束線部間で略均一になるように構成される。
【0107】
この構成は、コイル4と磁束源5との相対的な位置関係にかかわらず、コイル4を通過する磁界の強度が位置的に不均一になってしまうのを抑制できる。具体的には、この構成は、コイル4の束線部を通過する磁束の数が束線部間で不均一になってしまうのを抑制できる。そのため、この構成は、可動体MBが左右方向に移動したときに、コイル4における特定の束線部を通過する磁界の強度が変化してしまい、電磁誘導によって誘導起電力が生成されて所望の方向への移動が妨げられてしまうのを抑制できる。これは、図11Bに示すような、コイル4を通過する磁界の強度が位置的に不均一になっている構成に比べ、振動発生装置101が、同じ消費電力で大きな駆動力を実現できること、或いは、同じ駆動力を実現するための消費電力を抑制できることを意味する。
【0108】
例えば、磁束源5は、図11Aに示すように、中央磁石5Cの上下方向の厚さが、左側磁石5Lの上下方向の厚さよりも小さく、且つ、右側磁石5Rの上下方向の厚さよりも小さくなるように構成されていてもよい。コイル4の束線部を通過する磁束のうちの、中央磁石5Cが発生させる磁束の数を小さくすることによって、コイル4の束線部を通過する磁界の強度が位置的に不均一になってしまうのを抑制するためである。
【0109】
この構成は、図13Cに示すように中央磁石5Cの左右方向の幅が左側磁石5L及び右側磁石5Rのそれぞれの左右方向における幅よりも小さくなるように磁束源5が構成される場合に比べ、コイル4を通過する磁界の強度が位置的に不均一になってしまうのをより確実に抑制できる。この構成は、左側磁石5L、中央磁石5C、及び右側磁石5Rのそれぞれの左右方向における幅を、コイル4の束線部の左右方向における幅に適合させることができるためである。
【0110】
また、磁束源5は、図13Aに示すように中央磁石5Cが、左右方向において左側磁石5Lの略2倍の幅寸法を有し、左側コイル4Lの右側束線部及び左側コイル4Lの右側に隣接するコイル(右側コイル4R)の左側束線部に向かって磁束を発生させるように構成されていてもよい。
【0111】
この構成は、図13Bに示すように中央磁石5Cが、左側コイル4Lと同じ左右幅を有する磁石を二つ並べることで構成される場合に比べ、振動発生装置101を構成する部品の点数を削減できる。
【0112】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
【0113】
例えば、上述の実施形態では、下側ケース1D、上側ケース1U、及びサイドケース2は互いに独立した別個の部材として形成されている。しかしながら、サイドケース2は、下側ケース1D又は上側ケース1Uに一体化されていてもよい。例えば、上側ケース1Uとサイドケース2とは、統合されて一部品として形成されていてもよい。
【0114】
また、上側ガイド部1UG及び下側ガイド部1DGは、第2側板部2A2及び第4側板部2A4のそれぞれと対向するように形成されていてもよい。この場合、被ガイド部6Gは、可動体MBの左端部及び右端部に形成されていてもよい。例えば、被ガイド部6Gは、磁束源保持部材6の左端部から左方に突出する棒状部材と、磁束源保持部材6の右端部から右方に突出する棒状部材との組み合わせであってもよい。この場合、ガイド手段GMは、上側ガイド部1UGが上右側ガイド部及び上左側ガイド部を有し、下側ガイド部1DGが下右側ガイド部及び下左側ガイド部を有するように構成されていてもよい。そして、磁束源保持部材6の左端部から左方に突出する棒状部材は、上左側ガイド部の先端部と下左側ガイド部の先端部との間で摺動可能に支持されるように構成され、磁束源保持部材6の右端部から右方に突出する棒状部材は、上右側ガイド部の先端部と下右側ガイド部の先端部との間で摺動可能に支持されるように構成されていてもよい。或いは、磁束源保持部材6の左端部から左方に突出する棒状部材は、上左側ガイド部及び下左側ガイド部の少なくとも一方に形成されたガイド孔に差し込まれるように構成され、磁束源保持部材6の右端部から右方に突出する棒状部材は、上右側ガイド部及び下右側ガイド部の少なくとも一方に形成されたガイド孔に差し込まれるように構成されていてもよい。
【0115】
また、上述の実施形態では、磁束源保持部材6は、上前側ガイド部1UGFの先端部と下前側ガイド部1DGFの先端部との間に形成された略直方体形状の空間である凹状空間内に嵌め込まれるように、その前面から前方に突出するように形成された凸状の前側被ガイド部6GFを有する。また、磁束源保持部材6は、上後側ガイド部1UGBの先端部と下後側ガイド部1DGBの先端部との間に形成された略直方体形状の空間である凹状空間内に嵌め込まれるように、その後面から後方に突出するように形成された凸状の後側被ガイド部6GBを有する。しかしながら、磁束源保持部材6は、凸状の被ガイド部6Gの代わりに、凹状の被ガイド部を有していてもよい。例えば、磁束源保持部材6は、凸状の前側被ガイド部6GFの代わりに、凹状の前側被ガイド部を有していてもよい。この場合、上前側ガイド部1UGF及び下前側ガイド部1DGFのそれぞれの先端部は、内側に折り曲げられ、凹状の前側被ガイド部とかみ合うように形成されていてもよい。後側被ガイド部6GBについても同様である。
【0116】
また、上述の実施形態では、振動発生装置101は、コイル4が固定体としての筐体HSに取り付けられ、磁束源5が可動体MBに取り付けられるように構成されている。すなわち、振動発生装置101は、ムービングマグネット方式の振動発生装置として構成されている。しかしながら、振動発生装置101は、コイル4が可動体MBに取り付けられ、磁束源5が筐体HSに取り付けられるように構成されていてもよい。すなわち、振動発生装置101は、ムービングコイル方式の振動発生装置として構成されていてもよい。
【0117】
また、上述の実施形態では、振動発生装置101は、コイル4のコイル軸と磁束源5の移動方向とが垂直になるように構成されている。しかしながら、振動発生装置101は、コイル4のコイル軸と磁束源5の移動方向とが平行になるように構成されていてもよい。
【0118】
また、上述の実施形態では、コイル4は、上側ケース1Uの下面に固定される上側コイル4Uと、下側ケース1Dの上面に固定される下側コイル4Dと、を含むように構成されている。しかしながら、上側コイル4U及び下側コイル4Dの何れか一方は省略されてもよい。
【0119】
本願は、2020年12月25日に出願した日本国特許出願2020-217437号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0120】
1・・・ケース 1D・・・下側ケース 1DG・・・下側ガイド部 1DGB・・・下後側ガイド部 1DGF・・・下前側ガイド部 1DP・・・下側突出部 1DPC・・・中央下側突出部 1DPL・・・左下側突出部 1DPR・・・右下側突出部 1U・・・上側ケース 1UG・・・上側ガイド部 1UGB・・・上後側ガイド部 1UGF・・・上前側ガイド部 2・・・サイドケース 2A・・・側板部 2A1・・・第1側板部 2A2・・・第2側板部 2A3・・・第3側板部 2A4・・・第4側板部 2H・・・貫通孔 2HL・・・左側貫通孔 2HR・・・右側貫通孔 2P・・・突出部 2PL・・・左側突出部 2PR・・・右側突出部 2T・・・雌ネジ孔 2T1・・・第1雌ネジ孔 2T2・・・第2雌ネジ孔 2T3・・・第3雌ネジ孔 2T4・・・第4雌ネジ孔 3・・・締結部材 3D・・・下側締結部材 3D1・・・第1下側雄ネジ 3D2・・・第2下側雄ネジ 3D3・・・第3下側雄ネジ 3D4・・・第4下側雄ネジ 3U・・・上側締結部材 3U1・・・第1上側雄ネジ 3U2・・・第2上側雄ネジ 3U3・・・第3上側雄ネジ 3U4・・・第4上側雄ネジ 4・・・コイル 4C・・・中央コイル 4D・・・下側コイル 4D1・・・第1下側コイル 4D1L・・・左側束線部 4D1R・・・右側束線部 4D2・・・第2下側コイル 4D2L・・・左側束線部 4D2R・・・右側束線部 4D3・・・第3下側コイル 4D3L・・・左側束線部 4D3R・・・右側束線部 4L・・・左側コイル 4R・・・右側コイル 4U・・・上側コイル 4U1・・・第1上側コイル 4U2・・・第2上側コイル 4U3・・・第3上側コイル 5・・・磁束源 5C・・・中央磁石 5C1・・・第1中央磁石 5C2・・・第2中央磁石 5L・・・左側磁石 5R・・・右側磁石 6・・・磁束源保持部材 6G・・・被ガイド部 6GB・・・後側被ガイド部 6GF・・・前側被ガイド部 6T・・・雌ネジ孔 6TL・・・左側雌ネジ孔 6TR・・・右側雌ネジ孔 7・・・弾性支持部材 7L・・・左側板ばね 7R・・・右側板ばね 7H・・・貫通孔 7HL・・・左側貫通孔 7HR・・・右側貫通孔 7T・・・雌ネジ孔 7TL・・・左側雌ネジ孔 7TR・・・右側雌ネジ孔 8・・・締結部材 8L・・・左側雄ネジ 8R・・・右側雄ネジ 101、101A~101D、101X・・・振動発生装置 BM・・・絶縁基板 BS1・・・上面 BS2・・・先端面 BS3・・・下面 BS4・・・先端面 BS5・・・上側後面 BS6・・・内面 BS7・・・下側後面 BS8・・・内面 BS9・・・後面 BS10・・・内面 BS11・・・外面 BS12・・・外面 CTR・・・制御部 DM・・・駆動手段 FS1・・・上面 FS2・・・先端面 FS3・・・下面 FS4・・・先端面 FS5・・・上側前面 FS6・・・内面 FS7・・・下側前面 FS8・・・内面 FS9・・・前面 FS10・・・内面 FS11・・・外面 FS12・・・外面 GM・・・ガイド手段 HS・・・筐体 IT・・・入力端子 MB・・・可動体 VA・・・振動軸 VE・・・振動装置
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14