(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】シフトレジスタ回路および表示装置
(51)【国際特許分類】
G11C 19/28 20060101AFI20231113BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20231113BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20231113BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20231113BHJP
H03K 19/096 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
G11C19/28 230
G09G3/36
G09G3/20 622E
G09G3/20 622C
G09G3/20 611J
G09G3/20 670E
G02F1/133 550
H03K19/096 230
(21)【出願番号】P 2019028404
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小倉 潤
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-024350(JP,A)
【文献】国際公開第2009/034750(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 19/28
G09G 3/36
G09G 3/20
G02F 1/133
H03K 19/096
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイレベルとローレベルとを周期的に繰り返すクロックに基づいて出力信号を第1出力端子および第2出力端子から出力する回路であって、
前記クロックが入力されるクロック入力端子と、
ソースが前記第1出力端子と電気的に接続し、ドレインが前記クロック入力端子と電気的に接続した出力用TFTと、
ゲートが前記出力用TFTのゲートと電気的に接続し、ソースが前記第2出力端子と接続し、ドレインが前記出力用TFTのドレインと電気的に接続した転送用TFTと、
前記出力用TFTのゲートと前記転送用TFTのゲートとに電気的に接続した第1ノードと、
前記転送用TFTのゲートとソースとの間に接続されたブートストラップコンデンサと、
前記第1ノードの電圧をハイ電圧に切り替える信号が入力される第1入力端子と、
前記第1ノードの電圧をロー電圧に切り替える信号を入力される第2入力端子と、
前記クロック入力端子と電気的に接続した第2ノードと、
ゲートが前記第2ノードと電気的に接続し、ソースが前記第1ノードと電気的に接続した第1TFTと、
ゲートが前記第1ノードと電気的に接続し、ドレインが前記第1TFTのドレインと電気的に接続し、ソースが前記第2ノードと電気的に接続した第2TFTと、を備え、
前記第1TFTのドレインと前記第2TFTのドレインにはロー電圧が印加される、シフトレジスタ回路。
【請求項2】
前記クロックと同時にハイレベルとならないように、ハイレベルとローレベルとを周期的に繰り返す第2クロックが入力される第2クロック入力端子と、
ゲートが前記第2クロック入力端子と電気的に接続し、ソースが前記第1出力端子と電気的に接続した第1プルダウンTFTと、
ゲートが前記第2クロック入力端子と電気的に接続し、ソースが前記第2出力端子と電気的に接続した第2プルダウンTFTと、
ゲートが前記第2ノードと電気的に接続し、ソースが前記第1出力端子と電気的に接続した第3プルダウンTFTと、
ゲートが前記第2ノードと電気的に接続し、ソースが前記第2出力端子と電気的に接続した第4プルダウンTFTと、を備え、
前記第1乃至第4プルダウンTFTのドレインにはロー電圧が印加される、請求項
1記載のシフトレジスタ回路。
【請求項3】
前記出力用TFTと前記転送用TFTとはアモルファスシリコン又は酸化物半導体を有する、請求項1記載のシフトレジスタ回路。
【請求項4】
マトリクス状に配置された複数の表示画素を含む表示部と、
複数の前記表示画素が配列する行に沿って配置されたゲート線と、
複数の前記表示画素が配列する列に沿って配置されたソース線と、
前記ゲート線を駆動するゲート駆動回路と、を備え、
前記ゲート駆動回路は、請求項1乃至請求項
3のいずれか1項記載のシフトレジスタ回路を多段接続した回路を備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレジスタ回路およびシフトレジスタ回路を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示パネルや有機EL表示パネルなどを備えた表示装置が様々な電子機器に搭載され、表示画面の高精細化、および、表示画面を囲む領域をより小さくして画面の占める面積を増大する狭額縁化が進められている。
【0003】
表示装置の表示画面を囲む領域には、例えば、基板上薄膜トランジスタ(TFT:Thine Film Transistor)と基板上に設けられた配線とにより形成された種々の回路が配置されている。表示画面の高精細化に伴い表示画面の周囲に引き回される配線の数が多くなり、狭額縁化の要求により限られた領域により多くの配線や回路を配置するために、回路を構成する素子の数や素子の大きさを抑制することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/069021号公報
【文献】特表2008-508654号公報
【文献】特開2018-088301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、複数のゲート線を駆動するゲート線駆動回路は、表示画面の周囲に配置され、TFTとシフトレジスタ回路を備えている。ゲート線駆動回路に含まれるシフトレジスタ回路は、複数のゲート線を駆動する出力用TFTのゲートを、ブートストラップにより昇圧して動作する。ブートストラップには出力用TFTのゲート‐ソース間に明示的にコンデンサを備える場合と、ゲート‐ソース間に生じる寄生容量を利用する場合とが提案されている。
【0006】
また、出力用TFTと転送用TFT(次段のシフトレジスタへの入力及び前段のシフトレジスタへのリセットを行うTFT)とを別に設け、出力と転送との負荷を分散させて、出力用TFTに対する負荷を低減させる構成の回路も用いられている。
【0007】
例えば特許文献1では、転送用TFTの出力と出力用TFTの出力とを分けた構成を採用し、かつ、出力用TFTのゲート‐ソース間にブートストラップコンデンサを配置したシフトレジスタ回路の構成が提案されている。
【0008】
しかしながら、転送用TFTを設けた構成であっても、ブートストラップコンデンサを出力用TFTのゲート‐ソース間に配置すると、出力用TFTがゲート配線上の負荷容量を充電しながら自らのゲート電位をブートストラップによって充電する必要があるため、出力用TFTの負荷が大きい状態が解消されない。
【0009】
さらに、表示装置の高精細化が進むと、1本のゲート線と交差するソース線の数が従来よりも多くなり、ゲート線と複数のソース線との間に生じる容量はソース線の電位変動の影響を受けて大きく変動する可能性がある。出力用TFTのゲート‐ソース間に設けられたブートストラップコンデンサの電圧が、ゲート線とソース線との間に生じる容量に伴って変動すると、シフトレジスタ回路の動作が不安定になり、表示される画像の画質が低下する可能性があった。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、回路規模が大きくなることを抑制するとともに安定して動作するシフトレジスタ回路および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1態様によるシフトレジスタ回路は、ハイレベルとローレベルとを周期的に繰り返すクロックに基づいて出力信号を第1出力端子および第2出力端子から出力する回路であって、前記クロックが入力されるクロック入力端子と、ソースが前記第1出力端子と電気的に接続し、ドレインが前記クロック入力端子と電気的に接続した出力用TFTと、ゲートが前記出力用TFTのゲートと電気的に接続し、ソースが前記第2出力端子と接続し、ドレインが前記出力用TFTのドレインと電気的に接続した転送用TFTと、前記出力用TFTのゲートと前記転送用TFTのゲートとに電気的に接続した第1ノードと、前記転送用TFTのゲートとソースとの間に接続されたブートストラップコンデンサと、前記第1ノードの電圧をハイ電圧に切り替える信号が入力される第1入力端子と、前記第1ノードの電圧をロー電圧に切り替える信号を入力される第2入力端子と、前記クロック入力端子と電気的に接続した第2ノードと、ゲートが前記第2ノードと電気的に接続し、ソースが前記第1ノードと電気的に接続した第1TFTと、ゲートが前記第1ノードと電気的に接続し、ドレインが前記第1TFTのドレインと電気的に接続し、ソースが前記第2ノードと電気的に接続した第2TFTと、を備え、前記第1TFTのドレインと前記第2TFTのドレインにはロー電圧が印加される。
【0013】
また、上記第1態様によるシフトレジスタ回路は、前記クロックと同時にハイレベルとならないように、ハイレベルとローレベルとを周期的に繰り返す第2クロックが入力される第2クロック入力端子と、ゲートが前記第2クロック入力端子と電気的に接続し、ソースが前記第1出力端子と電気的に接続した第1プルダウンTFTと、ゲートが前記第2クロック入力端子と電気的に接続し、ソースが前記第2出力端子と電気的に接続した第2プルダウンTFTと、ゲートが前記第2ノードと電気的に接続し、ソースが前記第1出力端子と電気的に接続した第3プルダウンTFTと、ゲートが前記第2ノードと電気的に接続し、ソースが前記第2出力端子と電気的に接続した第4プルダウンTFTと、を備え、前記第1乃至第4プルダウンTFTのドレインにはロー電圧が印加される。
また、上記第1態様によるシフトレジスタ回路は、前記出力用TFTと前記転送用TFTとはアモルファスシリコン又は酸化物半導体(IGZO)を有する。
【0014】
第2態様による表示装置は、マトリクス状に配置された複数の表示画素を含む表示部と、複数の前記表示画素が配列する行に沿って配置されたゲート線と、複数の前記表示画素が配列する列に沿って配置されたソース線と、前記ゲート線を駆動するゲート駆動回路と、を備え、前記ゲート駆動回路は、上記第1態様のいずれかのシフトレジスタ回路を多段接続した回路を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回路規模が大きくなることを抑制するとともに安定して動作するシフトレジスタ回路および表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態の表示装置の一構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すシフトレジスタ回路の一構成例を概略的に示した図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す単位シフトレジスタ回路の一構成例を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す単位シフトレジスタ回路の動作の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、モデル化した単位シフトレジスタ回路の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
ブートストラップコンデンサの配置と転送用TFTと出力用TFTとのゲートノードの電圧応答との関係の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第
1比較例の単位シフトレジスタ回路を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、第
2比較例の単位シフトレジスタ回路を概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、
第3比較例の単位シフトレジスタ回路を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態のシフトレジスタ回路および表示装置の効果を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態のシフトレジスタ回路が備える単位シフトレジスタ回路の一構成例を概略的に示す図である。
【
図12】
図12は、8相クロックで駆動されるゲートドライバ回路の一構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らないことに留意すべきである。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の表示装置の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の表示装置は、表示パネル100と、表示パネル100の動作を制御する制御回路200と、を備えている。制御回路200は、外部から入力された画像データに基づいて、表示パネル100の動作を制御する回路である。表示パネル100は、例えば、アレイ基板(図示せず)と、アレイ基板と対向して配置された対向基板(図示せず)と、アレイ基板と対向基板との間に保持された液晶層LQとを備えた液晶表示パネルである。
【0019】
アレイ基板は、例えばマトリクス状に配置された複数の画素PXに対応して形成された画素電極PEと、複数の画素電極PEが配列する行に沿って配置された複数のゲート線G1、G2、…GNと、複数の画素電極PEが配列する列に沿って配置された複数のソース線S1、S2、…SMと、ゲート線G1、G2、…GNとソース線S1、S2、…SMとが交差する位置それぞれの近傍に配置された画素スイッチSPと、複数のゲート線G1、G2、…GNを駆動するゲート線駆動回路GDと、複数のソース線S1、S2、…SMを駆動するソース線駆動回路SDと、を備えている。ゲート線駆動回路GDは、シフトレジスタ回路10を備えている。シフトレジスタ回路10は、ゲート線G1、G2、…、GNの駆動信号を生成する。
【0020】
対向基板は、複数の画素電極PEと対向した共通電極CEを備えている。なお、共通電極CEは、例えば絶縁層を介して複数の画素電極PEと対向するようにアレイ基板上に配置されていてもよい。
【0021】
画素スイッチSPは例えば薄膜トランジスタであって、複数の画素PXのそれぞれにおいて、画素スイッチSPのゲートは対応するゲート線Gと電気的に接続し(若しくはゲート線Gと一体に形成され)、画素スイッチSPのソースは対応するソース線Sと電気的に接続し(若しくはソース線Sと一体に形成され)、画素スイッチSPのドレインは対応する画素電極PEと電気的に接続し(若しくは画素電極PEと一体に形成され)ている。
【0022】
ゲート線駆動回路GDによりゲート線G1、G2、…GNが順次駆動されると、対応する画素スイッチSPのゲートにハイレベルの電圧が印加されて画素スイッチSPのソース‐ドレイン間が導通し、画素スイッチSPを介して対応するソース線S1、S2、…SMから画素電極PEへ所定の電圧が印加される。
【0023】
図2は、
図1に示すシフトレジスタ回路の一構成例を概略的に示した図である。
シフトレジスタ回路10は、複数の単位シフトレジスタ回路SR1、SR2、…SRn(n=N)を備えている。単位シフトレジスタ回路SR1、SR2、…SRnは多段接続され、ゲート線G1、G2、…Gnのそれぞれに単位シフトレジスタ回路SR1、SR2、…SRnの1つが接続している。
【0024】
単位シフトレジスタ回路SR1、SR2、…SRnは、クロックClkAが入力される第1クロック入力端子と、クロックClkBが入力される第2クロック入力端子と、スタート信号Vが入力される第1入力端子と、リセット信号RSTが入力される第2入力端子と、ゲート線G1、G2、…Gnと接続された第1出力端子と、次段の単位シフトレジスタ回路と接続された第2出力端子と、前段の段位シフトレジスタ回路と接続された第3出力端子と、を備えている。
【0025】
クロックClkA、ClkBは、複数の単位シフトレジスタ回路SR1、SR2、…SRnに共通の信号であり、ハイレベルとローレベルとを周期的に繰り返す信号である。
例えばシフトレジスタ回路SRkには、前段のシフトレジスタ回路SR(k-1)から出力された信号(V_OUT)がスタート信号Vとして入力され、後段のシフトレジスタ回路SR(k+1)から出力された信号(V_OUT)がリセット信号RSTとして入力される。
【0026】
図3は、
図2に示す単位シフトレジスタ回路の一構成例を概略的に示す図である。
複数の単位シフトレジスタ回路SR1、SR2、…SRnの構成は同様であるため、ここでは単位シフトレジスタ回路SRnについて説明し、他の単位シフトレジスタ回路の構成については説明を省略する。
【0027】
単位シフトレジスタ回路SRnは、高電位側TFTM2と、低電位側TFTM5と、転送用TFTM3bと、出力用TFTM3と、プルダウンTFTM4、M4bと、ブートストラップコンデンサCbtと、ノード(第1ノード)Anと、擬インバータ回路と、を備えている。擬インバータ回路は、第1TFTM6と、第2TFTM7と、コンデンサCAと、ノード(第2ノード)Bnと、を備えている。
【0028】
本実施形態において、単位シフトレジスタ回路SRnに含まれる複数のTFTは、結晶質シリコンを含み、例えばアモルファスシリコン又は酸化物半導体(IGZO)により形成された半導体層を備えていてもよく、ポリシリコンにより形成された半導体層を備えていてもよい。
【0029】
高電位側TFTM2は、ゲートがスタート信号Vの入力端子(V_in)と電気的に接続されている。高電位側TFTM2のドレインには、ハイ電圧VGHが印加され、ソースは出力用TFTM3のゲートおよび転送用TFTM3bのゲートと電気的に接続している。
【0030】
低電位側TFTM5は、ゲートがリセット信号RSTの入力端子(RST_in)と電気的に接続されている、低電位側TFTM5のドレインには、ロー電圧VGL(=Vss)が印加され、ソースは出力用TFTM3のゲートおよび転送用TFTM3bのゲートと電気的に接続している。
【0031】
転送用TFTM3bのゲートは、出力用TFTM3のゲートと電気的に接続しているとともに、高電位側TFTM2のソース、低電位側TFTM5のソース、および擬インバータ回路と電気的に接続している。転送用TFTM3bのドレインは、出力用TFTM3のドレインおよびクロックClkAの入力端子(第1クロック入力端子)と電気的に接続している。転送用TFTM3bのソースは、次段の単位シフトレジスタ回路へのスタート信号Vの出力端子(第2出力端子)および前段の単位シフトレジスタ回路への出力端子(第3出力端子)と電気的に接続している。転送用TFTM3bのゲート‐ソース間には、ブートストラップコンデンサCbtが電気的に接続されている。
【0032】
出力用TFTM3のゲートは、転送用TFTM3bのゲートと電気的に接続しているとともに、高電位側TFTM2のソース、低電位側TFTM5のソース、および擬インバータ回路と電気的に接続している。出力用TFTM3のドレインは、転送用TFTM3bのドレインおよびクロックClkAの入力端子(第1クロック入力端子)と電気的に接続している。出力用TFTM3のソースは、ゲート線G1、G2、…Gnの駆動信号を出力する出力端子(第1出力端子)と電気的に接続している。
【0033】
プルダウンTFTM4bのゲートは、クロックClkBの入力端子(第2クロック入力端子)と電気的に接続している。プルダウンTFTM4bのドレインには、ロー電圧Vss(=VGL)が印加されている。プルダウンTFTM4bのソースは、次段の単位シフトレジスタ回路へのスタート信号Vの出力端子(第2出力端子)と電気的に接続している。
【0034】
プルダウンTFTM4のゲートは、クロックClkBの入力端子(第2クロック入力端子)と電気的に接続している。プルダウンTFTM4bのドレインには、ロー電圧Vss(=VGL)が印加されている。プルダウンTFTM4bのソースは、ゲート線G1、G2、…Gnの駆動信号を出力する出力端子(第1出力端子)と電気的に接続している。
【0035】
プルダウンTFTM4、M4bは、クロックClkBがハイレベルのときに、ソース-ドレイン間が導通し、ゲート線G1、G2、…Gnおよび次段の単位シフトレジスタ回路への出力電圧がローベル(=Vss)に保持される。
【0036】
第1TFTM6のゲートは、第2TFTM7のソースと電気的に接続しているとともに、コンデンサCAを介してクロックClkAの入力端子(第1クロック入力端子)と電気的に接続している。第1TFTM6のドレインには、ロー電圧Vss(=VGL)が印加されている。第1TFTM6のソースは、出力用TFTM3のゲートおよび転送用TFTM3bのゲートと電気的に接続している。第1TFTM6は、ノードBnの電位がハイレベル(VGH)になっているときに、ノードAnの電位をロー電圧VGL(=Vss)電位に向けて変化させる。
【0037】
第2TFTM7のゲートは、出力用TFTM3のゲートおよび転送用TFTM3bのゲートと電気的に接続している。第2TFTM7のドレインには、ロー電圧Vss(=VGL)が印加されている。第2TFTM7のソースは、第1TFTM6のゲートと電気的に接続しているとともに、コンデンサCAを介してクロックClkAの入力端子(第1クロック入力端子)と電気的に接続している。第2TFTM7は、ノードAnの電位がハイレベル(VGH)になっているときに、ノードBnの電位をロー電圧VGL(=Vss)に向けて変化させる。
【0038】
コンデンサCAは、ダイオード接続TFTの代わりに配置されており、ダイオード接続TFTの劣化により出力が不安定となることを回避することができる。なお、上記のようにコンデンサCAはダイオード接続TFTに代えて用いられるものであって大容量である必要はなく、コンデンサCAを採用したとしてもシフトレジスタ回路の回路規模が大きくなることを抑制することができるものである。
【0039】
上記第1TFTM6、第2TFTM7、および、コンデンサCAは、出力用TFTM3のゲートおよび転送用TFTM3bのゲートの電圧を安定させるための回路である。
【0040】
図4は、
図3に示す単位シフトレジスタ回路の動作の一例を説明するための図である。
ここでは、入力信号であるクロックClkA、ClkB、スタート信号V、および、リセット信号RSTと、ノードAnの電圧Va、ノードBnの電圧Vb、および、出力電圧V_OUTと、の一例を示している。
【0041】
ノードAnは、出力用TFTM3のゲートおよび転送用TFTM3bのゲートと電気的に接続したノードであり、単位シフトレジスタ回路SRnの出力を制御する電圧が印加されるノードである。
【0042】
ノードBnは、第1TFTM6のゲートおよび第2TFTM7のソースと電気的に接続したノードであって、ノードAnの電圧を安定化させるために設けられたノードである。
【0043】
クロックClkAとクロックClkBとは同時にハイレベルとなることがなく、ハイレベルとローレベルとが周期的に切り替わる信号である。
【0044】
クロックCLKAがローレベルであり、スタート信号Vがハイレベルとなると、ノードAnにハイ電圧VGHが印加される。この状態でクロックCLBがハイレベルとなり、出力電圧V_OUTはロー電圧VGLに維持される。このとき第2TFTM7のソース-ドレイン間が導通し、ノードBnはロー電圧VGL(=Vss)が印加される。
【0045】
続いて、スタート信号Vがローレベルとなり、高電位側TFTM2のソース-ドレイン間が非導通状態となる。その後、クロックClkAがハイレベルとなると、転送用TFTM3bのドレインおよび出力用TFTM3のドレインにハイレベルの電圧が印加され、これに伴いブートストラップコンデンサCbtの電圧が上昇する。ブートストラップコンデンサCbtの一端は、転送用TFTM3bのゲートおよび出力用TFTM3のゲートと電気的に接続しているため、ブートストラップコンデンサCbtの電圧上昇に伴い、ノードAnの電圧が上昇する。このことにより、転送用TFTM3bおよび出力用TFTM3のソース-ドレイン間が導通し、出力電圧V_OUTおよびゲート駆動信号G_OUTがハイレベルとなる。
【0046】
クロックClkAがローレベルとなると、ブートストラップコンデンサCbtの電圧が降下し、伴ってノードAnの電圧も降下することにより、転送用TFTM3bおよび出力用TFTM3のソース-ドレイン間が非導通状態となる。
【0047】
クロックClkAがローレベルになると、出力電圧V_OUTおよびゲート駆動信号G_OUTは、クロックClkAのローレベルの電位(VGL)になる。続いて、クロックClkBとリセット信号RSTとがハイレベルとなると、低電位側TFTM5のソース-ドレイン間が導通してノードAnにロー電圧VGL(=Vss)が印加される。
【0048】
(効果)
次に本実施形態のシフトレジスタ回路および表示装置の効果の一例について説明する。
図5は、モデル化した単位シフトレジスタ回路の一例を示す図である。
図5において、R1は転送用TFTM3bのオン抵抗であり、R2は出力用TFTM3のオン抵抗であり、C1は転送用TFTM3bのゲート‐ソース間の容量(ブートストラップコンデンサCbtの容量)であり、C2は出力用TFTM3のゲート‐ソース間の容量(ブートストラップコンデンサCboの容量)であり、C3は転送用TFTM3b側の出力端の容量負荷であり、C4はゲート出力端の容量負荷である。すなわち、C3は、高電位側TFTM2と低電位側TFTM5とのゲート容量に接続配線容量を加えた容量であり、C4はゲート配線容量(=C_out)に相当する。
【0049】
上記モデル回路にて、転送用TFTM3bと出力用TFTM3とのゲートノードAnの電圧をVaとし、このノード電圧Vaの過渡応答が、ブートストラップコンデンサCbtとブートストラップコンデンサCboの容量の大きさによりどのように変化するか検討した。
【0050】
ここでは、出力用TFTのゲート‐ソース間にブートストラップコンデンサCboを接続した第1比較例(C1<<C2)と、出力用TFTのゲート‐ソース間にブートストラップコンデンサCboを接続し、かつ、転送用TFTのゲート‐ソース間にブートストラップコンデンサCbtを接続した第2比較例(C1=C2)と、転送用TFTのゲート‐ソース間にブートストラップコンデンサCbtを接続した第3比較例(C1>>C2)と、について、ノード電圧Vaの過渡応答の変化を比較する。
【0051】
図
7は、第1比較例の単位シフトレジスタ回路を概略的に示す図である。
図
8は、第2比較例の単位シフトレジスタ回路を概略的に示す図である。
図
9は、第3比較例の単位シフトレジスタ回路を概略的に示す図である。なお、
図3に示す単位シフトレジスタ回路は、第3比較例の構成に対応するものである。
【0052】
図5に示すモデル回路において、ノード電圧Vaは下記式にて表すことができる。
【数1】
上記数式にて、Vglは転送用TFTM3bと出力用TFTM3のゲートのロー電圧であり、Vghは転送用TFTM3bと出力用TFTM3のゲートのハイ電圧であり、Vghlはゲートのハイ電圧とロー電圧との差であり、τ1、τ2は時定数である。
【0053】
上記数式によれば、ノード電圧Vaの過渡応答特性を決める時定数はτ1とτ2との2つであるが、この差は出力負荷の差に依存している。すなわち、出力負荷がゲート配線容量に相当する出力用TFTM3のゲート‐ソース間にブートストラップコンデンサCboを接続したとき(第1比較例および第2比較例)、ノード電圧Vaの過渡応答特性は出力用TFTM3の充電能力に依存する。
【0054】
一方で、第3比較例のように転送用TFTM3b側のみにブートストラップコンデンサCbtを設けると、転送用TFTM3bの出力負荷は出力用TFTM3の出力負荷と比較して小さく、ノード電圧Vaの充電も早く行われる。
【0055】
図6は、ブートストラップコンデンサの配置と転送用TFTと出力用TFTとのゲートノードの電圧応答との関係の一例を示す図である。
この例では、例えばR1を150kΩとし、R2を25kΩとし、C3を0.5pFとし、C4を80pFとし、Vghを16Vとし、Vglを-12Vとし、C1+C2を2.8pFに固定してそれぞれの大小関係を変化させたときに、ノード電圧Vaの初期値を16V(=Vgh)とし、ノード電圧Vaが2Vgh-Vgl=44Vまで昇圧していく過程を示している。
【0056】
図6に示した例によれば、C1を大きくするほどノード電圧Vaの応答が早くなり、C2を大きくするほどノード電圧Vaの応答は遅くなる傾向がみられた。
上記のことから、第1比較例および第2比較例のように出力用TFTM3にブートストラップコンデンサCboを接続したときよりも、第3比較例のように転送用TFTM3bのみにブートストラップコンデンサCbtを接続したときの方が、ノード電圧Vaの応答速度が速くなり、より高速に応答するシフトレジスタ回路を実現することが可能となる。
【0057】
さらに、出力用TFTM3のソースの電位は、ゲート線G1、G2、…Gnを介してソース線の電位変動の影響を受けるため、出力用TFTM3のゲート‐ソース間に接続されたブートストラップコンデンサCboもソース線の電位変動の影響を受けることとなる。
【0058】
図10は、実施形態のシフトレジスタ回路および表示装置の効果を説明するための図である。
例えばゲート線G1、G2、…Gnは複数の画素PXに渡って配置され、複数のソース線S1、S2、…Smと交差している。そのため、ゲート線G1、G2、…Gnの電位は、ソース線と交差する位置にて生じる配線間容量C_lineとカップリングしている。上記回路モデルでは、C4は静的なコンデンサ(=C_out)として説明したが、実際にはこのコンデンサC4の電位は配線間容量C_lineの影響を受けて変動している。
【0059】
上記のことから、出力用TFTM3にブートストラップコンデンサを接続すると、Q=CVの関係から、ゲート配線容量(=C_out)に充電された電荷がブートストラップコンデンサにもCboに比例して充電されてしまうため、単位シフトレジスタ回路SRnのノード電圧Vaに対する配線間容量C_lineの変動による影響も大きくなってしまう。
【0060】
これに対して、転送用TFTM3bにブートストラップコンデンサCbtを接続した場合には、出力端の負荷容量が小さいため、出力端の負荷容量によるシフトレジススタ回路への影響も小さくすることができる。
【0061】
上記のように、本実施形態のシフトレジスタ回路によれば、回路を構成する素子数を増やすことなく安定した動作を行うことを実現することができる。すなわち、本実施形態によれば、回路規模が大きくなることを抑制するとともに安定して動作するシフトレジスタ回路および表示装置を提供することができる。
【0062】
また、本実施形態のシフトレジスタ回路では、転送回路と出力回路とが分離されているため、ゲート出力端子からのノイズや負荷によりゲートドライバGDの機能が影響を受けることを抑制できる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のシフトレジスタ回路および表示装置について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図11は、第2実施形態のシフトレジスタ回路が備える単位シフトレジスタ回路の一構成例を概略的に示す図である。
【0065】
本実施形態のシフトレジスタ回路は、プルダウンTFTM8、M8bをさらに備える点と、ノードBnの構成とが上述の第1実施形態と異なっている。
【0066】
プルダウンTFTM8のゲートは、ノードBnおよびコンデンサCAを介してクロックClkAの入力端子と電気的に接続している。プルダウンTFTM8のドレインには、ロー電圧Vss(=VGL)が印加されている。プルダウンTFTM8のソースは、ゲート駆動信号の出力端子と電気的に接続している。
【0067】
プルダウンTFTM8bのゲートは、ノードBnおよびコンデンサCAを介してクロックClkAの入力端子と電気的に接続している。プルダウンTFTM8bのドレインには、ロー電圧Vss(=VGL)が印加されている。プルダウンTFTM8bのソースは、次段の単位シフトレジスタ回路への出力信号の出力端子と電気的に接続している。
【0068】
上記プルダウンTFTM8、M8bを設けることにより、ノードBnの電圧がハイレベルであるときに、単位シフトレジスタ回路SRnの出力端子の電圧をロー電圧Vssとなり、選択期間以外の全ての期間において出力端子の電圧がロー電圧Vssとすることができる。これにより、シフトレジスタ回路の動作をより安定させることができる。
【0069】
本実施形態のシフトレジスタ回路は、上記構成以外は上述の第1実施形態と同様であり、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、
図11に示す単位シフトレジスタ回路SRnを構成する回路素子の数は第1実施形態よりも多くなるが、プルダウンTFTM8、M8bは例えば所定の温度環境で動作する際に出力端子にリーク電流が流れることによりシフトレジスタ回路の出力が不安定となることを回避することができればよく、大型の素子を用いる必要がないものである。したがって、本実施形態のシフトレジスタ回路により回路規模が大きくなることはない者である。
【0071】
また、本実施形態の表示装置において、複数(3つ以上)のクロックを用いて動作するようにゲートドライバGDの構成を採用してもよい。
図12は、8相クロックで駆動されるゲートドライバ回路の一構成例を概略的に示す図である。
図13は、
図12に示すゲートドライバ回路の駆動タイミングの一例を示す図である。
【0072】
この場合、ゲートドライバGDは、4x-3番目のゲート線G(4x-3)を駆動する第1シフトレジスタ回路と、4x-2番目のゲート線G(4x-2)を駆動する第2シフトレジスタ回路と、4x-1番目のゲート線G(4x-1)を駆動する第3シフトレジスタ回路と、4x番目のゲート線G(4x)を駆動する第4シフトレジスタ回路と、を備えている。
【0073】
第1シフトレジスタ回路には、クロックClk1がクロックClkAとして入力され、とクロックClkX1がクロックClkBとして入力される。
第2シフトレジスタ回路には、クロックClk2がクロックClkAとして入力され、とクロックClkX2がクロックClkBとして入力される。
【0074】
第3シフトレジスタ回路には、クロックClk3がクロックClkAとして入力され、とクロックClkX3がクロックClkBとして入力される。
第4シフトレジスタ回路には、クロックClk_4がクロックClkAとして入力され、とクロックClkX4がクロックClkBとして入力される。
【0075】
例えば、ゲート線G1~G1280を駆動するとき、それぞれのシフトレジスタ回路は320本のゲート線を順次駆動することとなる。
上記のゲートドライバGDの構成であっても、上述の第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10…シフトレジスタ回路、SR1…単位シフトレジスタ回路、100…表示パネル、200…制御回路、G1~GN…ゲート線、S1~SM…ソース線、M2…高電位側TFT、M3…出力用TFT、M3b…転送用TFT、M4…プルダウンTFT(第1プルダウンTFT)、M4b…プルダウンTFT(第2プルダウンTFT)、M5…低電位側TFT、M8…プルダウンTFT(第3プルダウンTFT)、M8b…プルダウンTFT(第4プルダウンTFT)、Cbt…ブートストラップコンデンサ