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特許7383218貼付剤支持体用フィルム、積層体、及び貼付剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】貼付剤支持体用フィルム、積層体、及び貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20231113BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231113BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231113BHJP
   A61K 31/27 20060101ALN20231113BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/34
A61K47/32
A61K31/27
A61P25/28
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019071531
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020169137
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 徹三
(72)【発明者】
【氏名】高柳 浩介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 愛沙子
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-127531(JP,A)
【文献】特開平07-138152(JP,A)
【文献】特開2014-105325(JP,A)
【文献】米国特許第04237889(US,A)
【文献】特開平08-231385(JP,A)
【文献】登録実用新案第3145046(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を一方の面側に配置可能な、厚さが12μm以上100μm以下のバリア性材料からなる貼付剤支持体用フィルムであって、
上記バリア性材料のヤング率が800MPa以上3000MPa以下であり、
上記貼付剤支持体用フィルムは、層全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造を有して、上記凹部と凸部の並び方向の20%引張荷重が5N/15mm以下であり、
上記バリア性材料が、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体、のいずれかから選ばれる樹脂からなることを特徴とする貼付剤支持体用フィルム。
【請求項2】
上記凹部と凸部の並び方向に直交する方向の20%引張荷重に対する上記凹部と凸部の並び方向の20%引張荷重の比が、1/20以上1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項3】
上記凹凸構造は、上記凹部と上記凸部との高低差が上記貼付剤支持体用フィルムの厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項4】
上記高低差は、15μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項3に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項5】
上記高低差は、100μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項3に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項6】
上記バリア性材料が、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体、のいずれかから選ばれる樹脂からなることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項7】
上記バリア性材料が、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項8】
上記凹凸構造は、複数の上記凸部の少なくとも一つの凸部の頂部、及び複数の上記凹部の少なくとも一つの凹部の底部のうち少なくとも一方が、断面平坦形状となっていることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項9】
上記凹部の底部及び凸部の頂部が、断面平坦な平坦部となっており、
上記平坦部における平坦度は、レーザ顕微鏡の200倍観察時の算術平均粗さ(Ra)が0.3μm以下であることを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項10】
複数の領域を有し、領域毎に個別の凹凸パターンで上記凹凸構造が形成されていることを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項11】
上記貼付剤支持体用フィルムの厚さは、18μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1~請求項10のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項12】
請求項1~請求項1のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルムの片面に機能層が積層された積層体。
【請求項13】
上記請求項1~請求項1のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルム、又は請求項1の積層体の一方の面側に、薬剤を含有した粘着材層と剥離ライナーとがこの順に形成された貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤支持体用フィルム、積層体、及び貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能であるなどの性質がある。このため、プラスチックフィルムは、様々なものに利用されている。プラスチックフィルムの用途としては、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材や、点滴パック、買物袋、ポスター、テープ、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。このような用途に対し、用途に応じて適正なプラスチック材料が選択される。更に、プラスチックフィルムを複数種類重ね、積層体とすることもなされている。また、複数のプラスチック材料を1つの層中に混ぜることで、単一材料の欠点を補うようにした用い方もある。多くの場合、耐熱性や機械強度、若しくは透明性などにより適正なフィルム材料を選択している。
【0003】
一般に、プラスチックフィルムの機械特性やバリア特性は、材料や層構成により決まってしまう。例えば、プラスチックフィルムは、強度重視の材料では伸び性が小さくなる傾向があり、高い強度を有しつつ十分な伸び性を確保できるフィルム材料が切望されている。また、バリア性が必要な場合には、バリア特性の良い材料に限定して使用するか、別の工程でバリア層を積層する必要が出てくるため、製造時の手間やコストが問題となってくる場合がある。
【0004】
ところで、肌に貼るシップで代表される貼付剤は、肌に貼る面を構成する粘着材中に薬剤を入れ、皮膚から体内へと薬剤を吸収させるものである。貼付剤の外側表面を構成する支持体は、フィルム又は不織布の積層体で構成されている。この貼付剤の支持体に求められる機能としては、薬剤に対しバリア性(薬剤バリア性)があること、伸び性があることなどが挙げられる。薬剤バリア性は、薬剤が効率良く皮膚から吸収されるように、支持体が薬剤を吸収しない、若しくは薬剤を吸収し難い性能のことである。伸び性は、貼付剤を肌に貼った後のごわつき感を抑えたり、貼った貼付剤が動作時に剥がれにくくなるようにしたりといった重要な要素である。
【0005】
しかしながら、薬剤バリア性と伸び性と強度とは、兼備するのが難しいのが現状である。特に、薬剤バリア性があるプラスチックフィルムの材料としては、二軸延伸PET(PolyEthylene Terephthalate)やエチレン-ビニルアルコール共重合体やシクロオレフィンコポリマーなどのような、一部の材料に限定されてしまい、これら材料は、強度が大きいため、伸び性が低いという欠点がある。
【0006】
例えば特許文献1では、PETやエチレン-ビニルアルコール共重合体などの材料を貼付剤の支持体として用いているが、これら材料では伸び性が低く、伸びに要する応力も高く、貼付剤として使用したときのごわつき感や、激しい動作時に剥がれやすいといった欠点がある。このように、従来から、貼付剤支持体用フィルムには、薬剤バリア性と伸び性、伸びに要する低応力、強度の兼備が求められているものの、なかなか達成できていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6176846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、薬剤バリア性と伸び性、伸びに要する低応力、強度が良好な支持体としての貼付剤支持体用フィルム、これを用いた積層体や貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、本発明の第一態様は、粘着剤層を一方の面側に配置可能な、厚さが10μm以上100μm以下のバリア性材料からなる貼付剤支持体用フィルムであって、上記バリア性材料のヤング率が800MPa以上3000MPa以下であり、上記貼付剤支持体用フィルムは、層全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造を有して、上記凹部と凸部の並び方向の20%引張荷重が5N/15mm以下であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様である貼付剤支持体用フィルムによれば、薬剤バリア性と伸び性、伸びに要する低応力、強度が良好である。このため、貼付剤として使用したときに体の動きに対しての追従性が良く、ごわつき感が低減し、激しい動作時にも剥がれにくいという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一例を示す斜視図である。
図2】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一例を示す断面模式図である。
図3】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図4】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図5】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図6】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図7】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図8】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図9】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図10】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
図11】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
図12】本発明に関わる別の実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、フィルム厚さ・凹凸構造の高低差・凹凸構造の間隔を説明する断面模式図である。
図13】本発明に関わる別の実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、フィルム厚さ・凹凸構造の高低差・凹凸構造の間隔を説明する断面模式図である。
図14】本発明に関わる実施例と従来の支持体フィルムの伸び挙動例を示すグラフである。
図15】貼付剤支持体用フィルムの断面形状を変えた場合において、フィルム全体伸びと局所的な歪みの最大値との関係を示したグラフである。
図16】貼付剤支持体用フィルムの断面形状を変えて示す断面図である。
図17】本実施形態の機能層を積層した積層体の例を示す断面模式図である。
図18】従来の貼付剤支持体用フィルムを用いた貼付剤の一例を示す断面模式図である。
図19】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムを用いた貼付剤の一例を示す断面模式図である。
図20】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムを用いた貼付剤の別の一例を示す断面模式図である。
図21】本実施形態の積層体を用いた貼付剤の一例を示す断面模式図である。
図22】本実施形態の積層体を用いた貼付剤の別の一例を示す断面模式図である。
図23】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、複数の区画を組み合わせた際の凹凸構造の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
図24】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、複数の区画を組み合わせた際の凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。
【0013】
(貼付剤支持体用フィルムの構成)
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、図1及び図2に示すように、層全体が厚さ方向にうねった形状(側方から見て蛇行した形状)に構成されることで、面に沿って凹部2bと凸部2aを繰り返す凹凸構造2を有する。
図1に示す貼付剤支持体用フィルム1の例では、凹凸構造2の凹部2b及び凸部2aが、紙面奥行き方向に直線状に延在している。
凹凸構造2は、凹部2bと凸部2aとの高低差Hが貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも大きくなるように形成されているのが好ましい(図12図13参照)。凹凸構造2は、例えば、層全体を面方向に沿って蛇行した形状に加工することで設けることができる。ここで、貼付剤支持体用フィルム1は複数層から構成されていても良い。貼付剤支持体用フィルム1が複数層から構成される場合、各層が同一の材料から構成されていても良いし、互いに異なる材料から構成されていても良い。
【0014】
貼付剤支持体用フィルム1は、図2に示すように、上面又は下面の一方の面側に、薬剤入りの粘着剤層3が配置可能な層である。図2は、粘着剤層3を上面側に配置した例を示している。貼付剤支持体用フィルム1は、粘着剤層3に含有される薬剤に対し薬剤バリア性を有する材料から構成される。貼付剤支持体用フィルム1の材料は、貼付剤への使用が想定される薬剤に対して、薬剤バリア性を有する公知のプラスチック材料から適宜、選択すればよい。
【0015】
貼付剤支持体用フィルム1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体を好ましく使用することが出来る。貼付剤は体表面に貼ることで、その粘着剤層3に含まれている薬効成分を皮膚に浸透させ、例えば、血液を通じて全身に作用させるものである。かかる貼付剤に使用される貼付剤支持体用フィルム1は、その薬効成分をバリアし、吸着しない又は吸着し難いことが重要である。上記に一例としてあげた材料では、薬効成分へのバリア性(非吸着性)が良好で、貼付剤の薬効成分を減らすことなく支持体としての機能を果たすことができる。このような材料で貼付剤支持体用フィルム1を形成した場合、例えばリバスチグミン、ツロブテロールのような薬剤に対して、薬剤バリア性を備えることができる。
【0016】
また、貼付剤支持体用フィルム1の材料のヤング率としては、800MPa以上3000MPa以下である。本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1を使用する際、貼付剤としての強度を保持するためには、上記ヤング率の範囲であることが望ましい。ヤング率が800MPaより低い場合には、貼付剤として必要な強度の保持が難しくなり、貼付剤を肌に貼って使用後に剥がす際、フィルムが破断するなどの不具合が発生する場合がある。またヤング率が3000MPaを超える場合には、強度が高すぎて装用感(貼り心地)が損なわれる場合がある。
ここで、上述のポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体を使用すれば、材料のヤング率を、800MPa以上3000MPa以下とすることが可能である。
【0017】
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、凹凸構造2を構成する凹部2bと凸部2aの並び方向(図1図2の左右方向)の10%引張荷重が4N/15mm以下、及び20%引張荷重が5N/15mm以下となっている。10%引張荷重とは、貼付剤支持体用フィルム1が所定方向に引っ張られ10%伸びた際の引張荷重を指す。20%引張荷重とは、貼付剤支持体用フィルム1が所定方向に引っ張られ20%伸びた際の引張荷重を指す。10%引張荷重及び20%引張荷重の下限値は特にないが、10%引張荷重及び20%引張荷重の下限値は、例えば0.1N/15mm以上とする。
【0018】
10%引張荷重が4N/15mm、又は20%引張荷重が5N/15mmを超えると、肌への追従性が不十分で、ごわつき感などの装用感が著しく低下し、効果が発揮されないおそれがある。
なお、本明細書における10%引張荷重や20%引張荷重の測定は、JISK7127:1999 プラスチック-引張特性の試験方法-の試験条件に準拠して測定を行う。具体的には、サンプル幅は15mm、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/minの条件において、張力ゼロの状態からフィルムが破断するまで引っ張り力を付与しつつ、貼付剤支持体用フィルム1が10%伸びた際の引張荷重、及び20%伸びた際の引張荷重を求める。
【0019】
10%引張荷重を4N/15mm以下、20%引張荷重を5N/15mm以下への設定は、フィルム1の材料、フィルム1の厚み、凹凸構造2の凹部2bや凸部2aの形状、特に、フィルム1の厚み、凹凸構造2の凹部2bや凸部2aの形状を調整することで可能である。
ヤング率が800MPa以上3000MPa以下の材料の場合、凹凸構造2がない平板形状の状態では、例えば10%引張荷重が15N/15mm以上と大きいが、凹凸構造2を設けることで、10%引張荷重を大幅に小さくすることができる。フィルム1の20%の伸び状態では、凹凸構造2の凹部2bや凸部2aの形状が変形途中となっている。
【0020】
また、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の凹部2bと凸部2aの並び方向に直交する方向の20%引張荷重N1に対する、凹部2bと凸部2aの並び方向の20%引張荷重N2の比(N2/N1)が、1/20以上、1/3以下であることが好ましい。この20%引張荷重の比(N2/N1)が1/20よりも小さい場合には、材料強度に対して伸ばす力が弱すぎるため、ハンドリング性が失われ、使用時や製造工程における取り扱いが難しくなる場合がある。また、20%引張荷重の比(N2/N1)が1/2を超えると、2方向に伸びやすくなり、使用の際に、肌などの被貼付部に対し綺麗に貼りづらくなるだけでなく、また製造工程において成形安定性や寸法安定性が損なわれ、製造が困難なものとなる場合がある。
【0021】
(凹凸構造2について)
凹凸構造2について、隣り合う凸部2a同士の間隔D1及び隣り合う凹部2b同士の間隔D2(図12図13参照)は、各々、等間隔など周期性を持って配置してもよいし、異なっていても良い。間隔D1、D2は、貼付剤に要望される所望の延伸状態に応じて適宜設定することが可能である。
また、凹凸構造2の形状(凹部2bと凸部2aの繰り返しの形状)としては、例えば図2図9に示すような形状が例示できる。凹凸構造2の形状は、厚さ方向の断面図において、直線や曲線を種々組み合わせた形状とすることができる。凹凸構造2の形状は、貼付剤支持体用フィルム全面で同一パターンでも良いし、凹凸構造2の形状が、異なるパターンを組み合わせて形成されていても良い。
【0022】
なお、図2図9の形状パターンは参考例であり、これらの形状に限定されるものではない。
また、凹凸構造2は、複数の凸部2aの頂部及び複数の凹部2bの底部のうち、少なくとも一方が、断面平坦形状となっていても良い。
ここで、図2図6は、凸部2aの頂部及び凹部2bの底部が共に断面平坦形状である場合を例示している。
図3図7は、凸部2aの頂部が断面平坦形状であり、凹部2bの底部が断面V字形状である場合を例示している。
【0023】
図4図8は、凸部2aの頂部が断面V字状に尖った形状であり、凹部2bの底部が断面平坦形状断面である場合を例示している。
また、凹凸構造2は、図5図9に示すように、凸部2aの頂部及び凹部2bの底部は、それぞれ層厚方向に断面V字形状に尖った形状となっており、例えば、凹凸構造2が断面鋸刃状に形成されていても良い。
図6図9は、断面において面の向きが変更される境界である稜線部(断面V字形状の部分を除く)の角を丸めた形状とした例である。
【0024】
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、凸部2aの頂部、又は凹部2bの底部が断面平坦形状であることがより好ましい。平坦部があることで、機能層である印刷層を積層した際に視認性が良好となると共に、粘着剤層3等を貼り合わせた場合に密着性が確保しやすくなる。平坦とは、印刷適性を有する平坦度を有することを指す。貼付剤支持体用フィルムの平坦度は、例えば、レーザ顕微鏡の200倍観察時の算術平均粗さ(Ra)が0.3μm以下であることが好ましい。
本実施形態では、凹凸構造2は、凹部2b及び凸部2aがそれぞれ、図10及び図11に示すように、フィルム1の面方向に沿って直線状に延在するような凹凸パターンで構成されている。凹部2b及び凸部2aは同幅で構成しても良いし、幅が異なるように構成しても良い。なお、平面図は、凹部2b及び凸部2aの延在方向を示す模式的な図である。
【0025】
図10は、凹凸構造2を形成する領域10を辺10a、10bを境界とした長方形形状とし、短辺10bに平行となるように、凹部2b及び凸部2aの延在方向を設定した例である。すなわち、面方向に沿って、領域10の長辺10a方向に向けて凹部2b及び凸部2aが並ぶように凹凸構造2を形成した例である。
図11は、凹凸構造2を形成する領域10を長方形形状とし、凹部2b及び凸部2aの延在方向を、短辺10b及び長辺10aの両方から傾くように設定した例である。
また凹凸構造2は、凹部2b及び凸部2aの延在方向の少なくとも一部が曲線で構成されるような凹凸パターンで構成しても良い。凹部2b及び凸部2aは同幅で構成しても良いし、幅が異なるように構成しても良い。
【0026】
なお、以上の凹凸パターンは一例であり、これらの形状に限定されるものではない。
例えば、一つの領域10内に、凹部2b及び凸部2aの基本の延在方向を直線形状としつつ、一部に曲線に沿って延在する部分を設けたりしても良い。
また、凹凸構造2を形成する領域10についても、長方形形状を例示したが、領域10の形状は、長方形形状に限定されるものではない。領域10の輪郭が、円形形状等であっても良い。
【0027】
また、貼付剤支持体用フィルム1の全面を、凹凸構造2を設ける領域10とする必要もない。例えば、図10における左右両側の縁部や凹凸の延在方向の中央部などに、凹凸構造2を形成しない箇所があっても良い。図10の場合、左右方向に伸び性が大きくなっているので、その伸びを拘束しない位置であれば、貼付剤支持体用フィルム1に、部分的に凹凸構造2がない部分が存在していても問題はない。
すなわち、凹凸構造2は、貼付剤支持体用フィルムの一部に形成されていてもよい。但し、上述の10%引張荷重や20%引張荷重が確保しやすいように、凹凸構造2は、貼付剤支持体用フィルム全面の70%以上が好ましい。より好ましくは、80%以上、更には90%以上である。凹凸構造2を部分的に設ける場合には、凹凸構造2は、相対的に、フィルムの外縁側よりも中央側に多く配置されるように構成することが好ましい。
【0028】
(貼付剤支持体用フィルム1の厚さ及び凹凸部2aの高さ等)
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは、10μm以上100μm以下である。貼付剤支持体用フィルム1の厚さは、好ましくは10μm以上70μm以下である。貼付剤支持体用フィルム1の厚さは、必ずしも均一である必要はない。凹凸形状加工後のフィルムにあっては、凸部2a位置での厚さt1と凹部2b位置での厚さt2は一致していなくても良い。本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の厚さは、例えば、凸部2a位置での厚さt1の5箇所と凹部2b位置での厚さt2の5箇所の厚さ測定をした平均値で表されるものとする。
【0029】
凹凸構造2の凹部2bと凸部2aの高低差Hは、15μm以上200μm以下の範囲であると良い。凹部2bと凸部2aの高低差Hが15μm未満の場合には、歪みの調整効果を得ることは難しく、また、300μmを超える場合には、製造上、凹凸構造2をつけることが難しくなるおそれがある。より好ましくは、高低差Hが15μm以上150μm以下の範囲内であるとより良い。また高低差Hは、貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも厚いことが好ましい。
凹凸構造2は、凹部2bと凸部2aが規則的に並んでいる周期的構造であると好ましい。凹凸構造2を非周期的な構造としないことで、意図した伸び性を得やすいと同時に、凹凸構造2の設計や製作を簡便にすることができる。但し、非周期的な凹凸構造2や部分的に凹凸構造2の幅を変更することは任意である。
【0030】
(作用その他)
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、凹凸構造2を有する特異構造によって所要の伸び性が付与されている。ここで、本実施形態のような凹凸構造2を設けない平板形状の貼付剤支持体用フィルム(比較フィルムとも呼ぶ)を構成した場合、比較フィルムの伸び挙動は、図14の符号21に示したように、フィルムが伸び始めてから短い距離でのみ弾性変形が生じ、すぐに降伏点(以降、ネッキングが始まる起点を降伏点と呼ぶ)を迎える。降伏点以降は、ネッキングを伴う塑性変形が生じ、破断点に到達すると、フィルムが破断する。
【0031】
一方、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、例えば図1の左右方向、即ち凹凸構造2の凹部2bと凸部2aの並び方向に引っ張った場合、まず弾性変形による凹凸構造2の形状変形が生じ、その後、形状変形の一部に塑性変形を生じる。更に引っ張り続けると引っ張り応力により凹凸構造2の高低差Hが小さくなりフラットに近づくことで形状変形できなくなる。すなわち、主に凹凸構造2が潰れて広がる段階(あまり力をかけずに伸びる領域)と、潰れた凹凸構造2が更に引き伸ばされて、ほぼフラットになる段階(力が掛かって伸びる領域)を経て降伏点に達し、最終的には比較フィルムと同様にネッキングが発生し、破断する。この破断するときの強度は、材料のヤング率と厚さにより決定される。
【0032】
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、このような多段階からなる形状変形を行うことで、図14の符号22に示したように、従来の貼付剤支持体用フィルムよりも降伏点を迎えるまでの伸び量が大きくなり、かつ伸びに要する応力が小さくなる。このため、本実施形態の貼付剤支持体用フィルムは、ネッキングせず容易に伸びる性質に寄与する。また破断強度は、材料に起因するため強度は高くなる。なお、凹凸構造2の高低差Hが小さくなりフラットに近づくまで引っ張った状態では、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、フィルム1の20%よりも多く伸びた状態となっている。本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、20%の伸びは、符号22での降伏点位置での伸びよりも小さい。
【0033】
このように、一般的に伸び性が低いとされる材料で作られた貼付剤支持体用フィルム1であっても、形状に工夫を与えることより、比較フィルムに対し、高い伸び性を付与でき、伸びに必要となる応力を低くすることができる。つまり、本実施形態の貼付剤支持体用フィルムは、高い伸び性と強度、ならびに伸びに必要な応力を低く兼備することができる。
このとき、貼付剤支持体用フィルム1の断面の形状を適切に制御することにより、任意の伸び性を得ることができる。例えば、フィルムを破断させずに大きく伸ばすようにしたい、又は伸びに要する低い応力を得たい場合には、凹凸構造2の凸部2aと凹部2bの高低差Hを大きくし、稜線頂部又は稜線谷部は丸みをあまり帯びないようにするなどの調整を行うとよい。
【0034】
(貼付剤支持体用フィルム1の全体の伸びと局所的な歪みの最大値との関係)
図15は、本実施形態にかかる貼付剤支持体用フィルム1の凹凸構造2の形状を変えた場合における、全体の伸びと局所的な歪みの最大値との関係を示したものである。縦軸が局所的な歪みの最大値であり、横軸がフィルム全体の伸びである。点線で示す凹凸構造2を持たない平板状の貼付剤支持体用フィルムを比較例としている。
また、図15で示す評価に用いた高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1の断面形状を、図16に示す。図16(a)に示す形状Aは、凹凸構造2の凹部2bと凸部2aの高低差Hが比較的大きく、図16(b)に示す形状Bは、凹凸構造2の凹部2bと凸部2aの高低差Hが比較的小さくなっている。(但し貼付剤支持体用フィルム1の厚さより大きくして層厚を等しくしている。)そして、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、その凹凸構造2の違いにより、全体の伸びと局所的な歪みの最大値の関係が大きく変化することが分かる。
【0035】
例えば図16(a)の形状Aのように凹凸構造2の凹部2bと凸部2aの高低差Hを比較的大きくすることで、図15に示すように、貼付剤支持体用フィルム1全体の伸びを局所的な歪みよりも小さくすることが出来る。形状Aを採用した貼付剤支持体用フィルム1では、フィルム自体が破断などのクラックが生じづらい。その他、一例として表面に硬い機能層を積層(例えば、蒸着やハードコートなど)した状態で引っ張っても、硬い機能層にクラックが入りにくくすることができる。硬い機能層は、上述の局所的な歪みの分だけ負荷が掛かるためである。つまり、形状Aを採用した貼付剤支持体用フィルム1は、機能層を積層した積層体へ応用することで、硬い機能層の破壊を抑えつつ伸び性を持たせることも可能である。
【0036】
図16(b)の形状Bでは、凹凸構造2の凹部2bと凸部2aの高低差Hが比較的小さい形状であるが、この場合は、図15に示すように、貼付剤支持体用フィルム1全体の伸びよりも局所的な歪みの方が大きくなる場合もあり得る。しかしながら、フィルム全体の伸びは、形状無しのフィルムと比較して大きく高い伸び性を示すものである。これらの凹凸構造2は、所望とする貼付剤支持体用フィルムの伸び性と強度、又は積層する機能化層の材料や形態などを勘案し最適化すればよい。例えば、エムエスシーソフトウェア株式会社製 汎用非線形有限要素解析ソリューション Marc(登録商標)を用いて最適化することで、目的とする実用的な貼付剤支持体用フィルム1を得ることが可能となる。
更に、伸び性を高めるためには、凹凸構造2の高低差Hは、貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも大きいと良い。このようにすることにより、貼付剤支持体用フィルム1の断面がフラットになりにくく、歪みの調整効果を効果的に得ることが出来る。
【0037】
(貼付剤支持体用フィルム1の特性)
また、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、応力を掛けた際に伸びる効果があるため、衝撃耐性も高く、凹凸構造2が潰れることによる衝撃吸収性も高いという特性も有している。
更に、凹凸構造2が図1のような1次元的構造の場合、凹凸延在方向に直行方向には曲げ剛性が強いという性質もある。曲げ剛性は、断面二次モーメントとヤング率の掛け算の積分によって決まる。本実施形態の高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1は、同樹脂量の通常のフラットな貼付剤支持体用フィルム1に比べ、この断面二次モーメントが大きくなるため、曲げ剛性は高まる。
【0038】
(貼付剤支持体用フィルム1の製造方法)
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の製造方法については、例えば熱プレスによる方法や、押出成形による方法を用いることができる。
熱プレスによる方法では、貼付剤支持体用フィルム1を片側表面に配置した多層のフラットフィルムを、その貼付剤支持体用フィルム1側表面に凹凸形状を設けた加熱ロール間、若しくは加熱した平板状のプレス機に通すことで、貼付剤支持体用フィルム1に凹凸構造2を付与することが可能である。この際、プレス深さやプレス圧を調整することによって、所望の凹凸形状が付与され、冷却後に凹凸構造2を付与した貼付剤支持体用フィルム1を多層フィルムから剥離することにより、本実施形態のうねった形状の貼付剤支持体用フィルム1を得ることができる。
又は、製膜した単層でフラットの貼付剤支持体用フィルム1を、プレス表裏に凹凸形状を設け精密位置合わせされたプレス機に通すことにより、うねった形状の貼付剤支持体用フィルム1を得ることが可能である。
【0039】
また、押出成形による方法では、複数の押出機を使用し、複数の種類が異なる樹脂をフィードブロック法、又はマルチマニホールド法により共押出することで、貼付剤支持体用フィルム1を片側表面に配置した2層以上の多層構成のフィルムを得ることができる。フィルム化するための冷却工程において、貼付剤支持体用フィルム1を配置した面に、凹凸構造2に対応する凹凸が表面に設けられた冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、凹凸構造2をつけることが出来る。このとき、冷却ロールと接する貼付剤支持体用フィルム1のフィルム厚さに対し、凹凸構造2の山谷の高低差Hが大きいときには、貼付剤支持体用フィルム1の冷却ロールと反対面の界面にも同様に凹凸構造2が付加されるため、冷却後に凹凸構造2を付与した貼付剤支持体用フィルム1を多層フィルムから剥離することにより、本実施形態のうねった形状の貼付剤支持体用フィルム1を得ることができる。
【0040】
更に押出成形による別の方法では、1台の押出機から単層にて押出し、フィルム化するための冷却工程において、凹凸構造2に対応する凹凸が表面に設けられた1対の冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、凹凸構造2が付与された、うねった形状の貼付剤支持体用フィルム1を得ることが可能である。
その他、射出成形など、凹凸構造2を付加するいずれかの方法が選択可能であり、特に方法が限定されるものではない。
【0041】
(積層体、及び貼付剤)
本実施形態にかかる貼付剤支持体用フィルム1は、後工程で表面に印刷層や蒸着層、ハードコート層、反射防止層、粘着剤との密着性向上のためのアンカーコート層などの機能層を積層した積層体とすることもできる。又は、別の熱可塑性樹脂などの層6を積層した積層体とすることもできる(図17参照)。別の熱可塑性樹脂は、例えば上述のような機能層を構成する場合もあるし、更に強度などの機能アップ層を構成する場合もある。
【0042】
図18は、一般的な貼付剤の概略断面図を示したものである。この一般例では、フラットな貼付剤支持体用フィルム50の片面に薬剤を含有した粘着剤層3があり、粘着剤層3の表面に剥離ライナー4を設けた構成である。肌に貼る場合は剥離ライナーを剥がし、粘着剤層3を肌に貼って使用する。そして、粘着剤層3中に含有された薬剤が皮膚から吸収され、作用するものである。
このような一般的な貼付剤支持体用フィルム50では、伸びに要する低い応力と伸び性が不足しており、貼付剤を肌に貼った後のごわつき感や、伸び性不足のために、動作時に貼付剤の端部などが剥がれてくる場合があるという問題を抱えている。
【0043】
一方、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1又は積層体を使用することで、伸びに要する低い応力と伸び性を持たすことができるようになり、上述のごわつき感や剥がれが解消される。
一例として、図19に本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1を使用した場合の貼付剤5の断面図を示す。本実施形態では、薬剤バリア性の高い材料を用いることで、薬剤が効率良く皮膚に吸収される効果があり、また貼付剤支持体用フィルム1の材料自体はヤング率が高く伸びにくい材料であっても、伸びに要する低い応力と高い伸び性を示す。また、破断時には材料自体の硬さにより強度が保たれる。
【0044】
図20では、貼付剤支持体用フィルム1の反対面(下面)に粘着剤層3を貼り貼付剤5とした例を示す。また図21は、機能層6を積層した積層体の、貼付剤支持体用フィルム1面に粘着剤層3を配した貼付剤5の例を示す。図22は、機能層6を積層した積層体の、機能層6側の面に粘着剤層3を配した貼付剤5の例を示す。図22の例は、機能層6として、粘着剤に対するアンカーコート層などの層を配した場合である。また図21では、粘着剤層3と貼付剤支持体用フィルム1との間に空隙があるように示されているが、粘着剤層3を埋めて空隙を無くしても良い。同様に図22では、粘着剤層3と機能層6との間に空隙が示されているが、粘着剤層3が空隙に充填されても良い。
【0045】
(貼付剤支持体用フィルム1の別な実施形態)
また、貼付剤支持体用フィルム1は、図23図24のように、複数の領域10を有し、領域10毎に個別の凹凸パターンで凹凸構造2が形成されるようにしても良い。
図23図24は、一連の貼付剤支持体用フィルム1において、複数の区画で区分することで、複数の領域10(図23図24は4つの領域10に区分した例)を設定した場合であり、凹凸構造2の延在方向を実線で示している。符号10cは、隣り合う境界10cの境界線を示す。
【0046】
図23は、凹凸構造2の延在方向が、各区画の縁と平行であり、隣接する区画内の凹凸構造2の延在方向とは互いに交差する方向(好ましくは直交する方向)の配置となっている。伸び性の良いフィルムには、加工時にフィルムが伸びて安定製膜が難しいという問題があるが、図22のような配置とすることで、成形加工時に安定した製膜が可能となる。この結果、最終製品では区画毎にカットしたり、打ち抜き加工を行ったりすることで、所望の一方向へ伸びる貼付剤支持体用フィルム1を提供できる。隣接する区画同士の間には、明瞭な境界がなくてもよく、また、一連の貼付剤支持体用フィルム1上に存在する区画の数や区画サイズは任意に設定することが可能である。また、各領域10間に凹凸構造2を有しない領域10が存在していても良い。
【0047】
カットする位置も任意に設定することが可能であり、例えば図23に示した配置において、各領域10を縦若しくは横方向に半裁することで、縦方向と横方向等の2方向に伸びやすい2区画分の貼付剤支持体用フィルム1を得ることができる。この場合、フィルムの半分を固定し、残りの半分のみ伸ばしたい場合などに効果がある。すなわち、複数領域10で一つの最終製品を構成するように設計しても構わない。この場合、貼付剤を肌に貼る場合に、最初はフィルムの伸びない半分を肌に貼って固定し、残りの半分を伸ばして貼ることも可能である。
【0048】
図24に示す貼付剤支持体用フィルム1は、各領域10の一辺から、これと交差する他辺へと角度付けされた凹凸構造2がストレートに延在している。それ以外の構成は、図23に示す貼付剤支持体用フィルム1と同様である。凹凸構造2の、領域10を区画する境界10cの線に対する角度は任意であり、領域10毎に境界10cに対する傾斜角度が異なっていても良い。
【0049】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、粘着剤層3を一方の面側に配置可能な、厚さが10μm以上100μm以下のバリア性材料からなる貼付剤支持体用フィルム1であって、バリア性材料のヤング率が800MPa以上3000MPa以下であり、層全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで、面に沿って凹部2bと凸部2aを繰り返す凹凸構造2を有して、貼付剤支持体用フィルム1の凹部2bと凸部2aの並び方向の20%引張荷重が5N/15mm以下である。凹部2bと凸部2aはそれぞれ直線状に延在している。
この構成によれば、バリア性材料からなる貼付剤支持体用フィルム1の強度を所定強度に確保しつつ伸び性を向上させることが可能となって、薬剤バリア性と伸び性、強度が良好な支持体としての貼付剤支持体用フィルム1を提供できる。
【0050】
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、例えば、強度を確保するためにヤング率が大きくて硬い薬剤バリア性を有するフィルム材料を採用しても、凹凸構造2を設け、うねった形状とすることで貼付剤支持体用フィルム1に伸びに要する低い応力と伸び性を付与させることができる。ここで、破断時には、ヤング率の大きい材料特性が支配的になるため、更に強度を保持させることが可能となり、薬剤バリア性、伸びに要する低い応力、伸び性、強度を兼備する、貼付剤支持体用フィルムを提供可能となる。
【0051】
(2)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、凹凸構造2の凹部2bと凸部2aの高低差Hが、貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも大きい。
この構成によれば、製造工程でうねった形状の形状再現性が良く、伸びに要する低い応力や伸び性といった効果をより確実に得ることができる。
(3)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の材料が、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体、のいずれかから選ばれる樹脂からなる。
この構成によれば、貼付剤支持体用フィルム1に薬剤バリア性を付与することが出来る。
【0052】
(4)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の凹凸延在方向に対する、凹凸直交方向の20%引張荷重の比が、1/20以上1/3以下である。
これにより、小さすぎる力では伸びず、また1方向に伸びるため、製造工程で、例えばフィルムの伸びにくい方向で巻き取るようにしてロール形状などとすることで、フィルムを管理する際や、使用時に貼付剤支持体用フィルム1の扱いが容易となる。
(5)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の凹凸構造2は、複数の凸部2aの少なくとも一つの凸部2aの頂部、及び複数の凹部2bの少なくとも一つの凹部2bの底部のうち少なくとも一つの断面形状が、平坦形状となっている。
この構成によれば、表面に平坦性があることで、印刷適性の向上や、機能層や粘着剤層との密着強度が良好となる。
【0053】
(6)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、凹凸の高低差Hは、15μm以上200μm以下である。
この構成によれば、確実に伸びに要する低い応力と伸び性を向上させることができる。
(7)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、複数の領域10を有し、領域10毎に個別の凹凸パターンで凹凸構造2が形成されている。
この構成では、最終製品の原反として使用する場合、各領域10の伸びがある程度相殺しあうこことで、過剰な伸びが抑制されて、ロール形状などにしてフィルムを管理する際に、貼付剤支持体用フィルム1の取扱いが容易となる。
また、最終製品の貼付剤支持体用フィルム1として使用する場合、伸び易い方向を2方向以上に設定しやすくなる。
【0054】
(8)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の片面に機能層6が積層された積層体としてもよい。
この構成によれば、伸びに要する低い応力と伸び性が良い積層体を提供可能となる。
(9)本実施形態の貼付剤5は、貼付剤支持体用フィルム1又は積層体の一方の面側に、薬剤を含有した粘着剤層3が積層すると共に、その粘着剤層3の上に剥離ライナー4が形成されている。
この構成によれば、薬剤バリア性、伸びに要する低い応力、伸び性、強度を兼備する、肌への追従性の良い貼付剤5を提供可能となる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは、任意である。
【実施例
【0056】
以下、本発明者らが作成した実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)ソアノール D2908(日本合成化学工業株式会社製、ヤング率880MPa)を用いた。貼付剤支持体用フィルム1は、共押出成形により、貼付剤支持体用フィルム1側を凹凸の付いたロールにニップし、2層構造に製膜して凹凸構造2を付与した。その後、貼付剤支持体用フィルム1を共押出フィルムと剥離し、実施例1のサンプルとした。共押出の材料としては、低密度ポリエチレン(LDPE)ノバテックLD LC701(日本ポリエチレン株式会社製)を用いた。
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは30μmとし、凹凸構造2は、台形断面形状を周期的に並べる形状(以下、台形凹凸構造2とも記載する)とした。台形凹凸構造2の高低差Hは60μm、ピッチは255μm、上辺長さは205μm、下辺長さは224μmとした。
【0057】
(実施例2)
凹凸構造2は台形凹凸構造とし、高低差Hを100μm、ピッチを425μm、上辺長さを205μm、下辺長さを236μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例2のサンプルを作製した。
(実施例3)
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは90μmとし、凹凸構造2は台形凹凸構造とした。台形凹凸構造2の高低差Hを200μm、ピッチを500μm、上辺長さを205μm、下辺長さを268μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例3のサンプルを作製した。
【0058】
(実施例4)
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは12μmとし、凹凸構造2は台形凹凸構造とした。台形凹凸構造2の高低差Hを31μm、ピッチを140μm、上辺長さを61μm、下辺長さを68μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例4のサンプルを作製した。
(実施例5)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、環状オレフィン・コポリマー(COC)TOPAS 8007(ポリプラスチックス株式会社製、ヤング率1613MPa)を用い、貼付剤支持体用フィルム1の厚さは18μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例5のサンプルを作製した。
【0059】
(実施例6)
凹凸構造2を、高低差Hが50μm、ピッチが100μmの波状断面形状に変更した。それ以外は実施例5と同様の方法で実施例6のサンプルを作製した。
(実施例7)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、ユニチカポリエステル樹脂(A-PET)MA-2101M(ユニチカ株式会社製、ヤング率1520MPa)を用い、貼付剤支持体用フィルム1の厚さは18μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例7のサンプルを作製した。
(実施例8)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、東洋紡エステルフィルム(二軸延伸PET)E-5100(東洋紡株式会社製、ヤング率2620MPa)を用い、貼付剤支持体用フィルム1の厚さは12μmとした。貼付剤支持体用フィルム1は、熱プレス法により、凹凸構造2を形成した。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例8のサンプルを作製した。
【0060】
(比較例1)
押出成形時に貼付剤支持体用フィルム1側に凹凸のない鏡面のロールを用いて、表裏に凹凸形状のないフラットなサンプルを作製した。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例1のサンプルを作製した。
(比較例2)
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは120μmとし、凹凸構造2は、台形凹凸構造とした。台形凹凸構造2の高低差Hを200μm、ピッチを500μm、上辺長さを205μm、下辺長さを268μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例2のサンプルを作製した。
【0061】
(比較例3)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、環状オレフィン・コポリマー(COC)TOPAS 8007(ポリプラスチックス株式会社製、ヤング率1613MPa)を用い、押出成形時に貼付剤支持体用フィルム1側に凹凸のない鏡面のロールを用いて、表裏に凹凸形状のないフラットなサンプルを作製した。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例3のサンプルを作製した。
(比較例4)
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは6μmとし、凹凸構造2は、台形断面形状を周期的に並べる形状とした。台形凹凸構造2の高低差Hは31μm、ピッチは140μm、上辺長さは61μm、下辺長さは68μmとした。それ以外は比較例3と同様の方法で比較例4のサンプルを作製した。
【0062】
(比較例5)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、低密度ポリエチレン(LDPE)ノバテックLD LC701(日本ポリエチレン株式会社製)を用い、貼付剤支持体用フィルム1の厚さは12μmとした。凹凸構造2は、台形凹凸構造とした。台形凹凸構造2の高低差Hを31μm、ピッチを140μm、上辺長さを61μm、下辺長さを68μmとした。また、共押出の材料としては、ポリ乳酸(PLA)Ingeo 3052D(NatureWorks社製)を用いた。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例5のサンプルを作製した。
(比較例6)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、ポリ乳酸(PLA)Ingeo 3052D(NatureWorks社製、ヤング率2600MPa)を用い、貼付剤支持体用フィルム1の厚さは18μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例6のサンプルを作製した。ポリ乳酸(PLA)Ingeo 3052Dは、バリア性材料ではない。
(10%引張荷重、20%引張荷重、降伏伸度、及び破断強度評価方法)
【0063】
各実施例及び比較例における、貼付剤支持体用フィルム1の10%引張荷重、20%引張荷重、及び伸び性能を評価するため、引張試験評価を実施した。
引張試験評価は、JISK7127:1999 プラスチック-引張特性の試験方法-の試験条件に準拠し、株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機(RTC‐1250A)を用いて実施した。サンプル幅は15mm、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/minにおいて、ゼロの状態からフィルムが破断するまで引っ張り力を付与しつつ、貼付剤支持体用フィルム1が10%伸びた際の引張荷重、及び20%伸びた際の引張荷重を求めた。また、降伏点までの伸び率を降伏伸度とし、破断時の強度を破断強度として実施した。
【0064】
評価は次の通りである。
貼付剤支持体用フィルム1の10%引張荷重は4N/15mm以下を「○」とし、それを超えた場合は「×」とした。
貼付剤支持体用フィルム1の20%引張荷重は5N/15mm以下を「○」とし、それを超えた場合は「×」とした。
貼付剤支持体用フィルム1の降伏伸度は20%以上を「○」とし、それ未満を「×」とした。
貼付剤支持体用フィルム1の破断強度は8N以上を「○」とし、それ未満を「×」とした。
【0065】
(薬剤バリア性評価方法)
各実施例及び比較例における貼付剤支持体用フィルム1の薬剤バリア性能を評価するため、吸着性試験評価を実施した。
サンプルを100mm角にカットした後、サンプル中央に貼付剤(リバスタッチパッチ18mg、小野薬品工業株式会社製)を貼付した。薬剤が揮発・拡散しないようにアルミ箔で密閉し、40℃75%の環境で6ヶ月保管した。その後、フィルムから貼付剤を剥がし、フィルムに吸着した薬剤をメタノールで55℃・3時間以上抽出し、超高速液体クロマトグラフィー 1260 HPLCシステム(Agilent Technologies社製)により薬剤の吸着量を測定した。
薬剤吸着量は、元々の貼付剤の薬剤量の10%未満であれば「○」、それ以上であれば「×」とした。
【0066】
各実施例における条件、及び評価結果の一覧表を表1に示す。また、各比較例における条件、及び評価結果の一覧表を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
(評価結果)
表1からわかるように、実施例1~8では、二層構成のフィルムにおいて、貼付剤支持体用フィルム1と空気、及び保護層との界面に凹凸構造2同士が平行に延在して設けられており、保護層と空気との界面が略平坦である構成で、貼付剤支持体用フィルム1の厚さが5~150μmであるため、成形加工時の不具合もなく、使用時には適切な剥離強度で剥離できる。剥離後の貼付剤支持体用フィルム1は、降伏点伸び性も良好で、薬剤吸着性も良い結果を示すことが分かる。
【0070】
一方、表2における比較例1、3では、貼付剤支持体用フィルム1がフラットなフィルムであるため、使用時には降伏点伸度が低く、10%引張荷重、20%引張荷重も大きく伸びないフィルムであった。
比較例2では、貼付剤支持体用フィルム1の厚さが厚過ぎるため、10%引張荷重、20%引張荷重ともに大きすぎるため、追従性が不十分であった。
また比較例4では、貼付剤支持体用フィルム1の厚さが薄過ぎるため、破断強度が低く、貼付剤としての要件を満たしていない結果となった。
比較例5では、貼付剤支持体用フィルム1の材料として低密度ポリエチレン(LDPE)を用いたため、破断強度が低くなってしまった。また、薬剤バリア性も悪く、貼付剤としての要件を満たしていない結果となった。
比較例6では、貼付剤支持体用フィルム1の材料としてポリ乳酸(PLA)を用いたため、薬剤バリア性が悪く、貼付剤としての要件を満たしていない結果となった。
【符号の説明】
【0071】
1 貼付剤支持体用フィルム
2 凹凸構造2
2a 凸部2a
2b 凹部2b
3 粘着剤層
4 剥離ライナー
5 貼付剤
6 機能層又は別の熱可塑性樹脂層
10 領域
10c 縁(境界)
H 高低差
t1 凸部2aの厚さ
t2 凹部2bの厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24