(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/38 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
B65D33/38
(21)【出願番号】P 2019149010
(22)【出願日】2019-08-15
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】佐々 志歩
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-014529(JP,A)
【文献】特開2005-313994(JP,A)
【文献】特開2000-079952(JP,A)
【文献】特開2019-051946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体で形成されて首部を有する前部と、積層体で形成された後部とを対向
させて、前記首部の周縁を含む周縁部を熱融着して形成された包装袋であって、
前記首部は、前記包装袋の高さ方向中間部に基部を有して上方に向かって延びており、
前記首部の先端は、前記包装袋の上端よりも下方に位置し、
前記首部の前面を構成する積層体は、
前記首部の幅方向中央部において高さ方向に延びる凸状の主エンボスと、
前記主エンボスの幅方向両側に設けられた凹状の副エンボスと、を有し、
前記副エンボスが前記包装袋の幅方向に延びる線に対して前記主エンボス側かつ下側においてなす角度は、55度以上80度以下であり、
前記主エンボスおよび前記副エンボスは、前記基部をまたいで前記基部の上側から下側まで延びている、
包装袋。
【請求項2】
前記副エンボスの上端と、熱融着された前記周縁との距離が7mm以下である、
請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記首部の前面を構成する積層体の腰強度が、20mN/15mm以上である、
請求項1に記載の包装袋。
【請求項4】
前記首部の基部は、前記包装袋の高さ方向中央または高さ方向中央より上方に位置する、請求項1に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋、より詳しくは、他の容器に詰め替える各種液体の収容に好適に使用できる詰め替え用の包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調味料、洗剤、化粧品等の各種液体を、ボトル等の本容器とは異なる詰め替え用容器に収容して販売することが広く行われている。詰め替え用容器としては、積層フィルムで形成したパウチ(包装袋)が広く用いられている。このようなパウチは、本容器よりもプラスチック材料の使用量を削減できることや、内部の液体を本容器に移し替えた後に小さく折り畳めてゴミとしての容積を小さくできる等の利点がある。
【0003】
積層フィルムで形成したパウチの一形態として、特許文献1に記載のようなものが知られている。特許文献1に記載のパウチ(袋状容器)は、内容物が充填される胴部と、胴部の表裏のいずれか一方から分岐し、先端部が内容物の注出口となるノズル部とを備えている。特許文献1に記載のパウチは、ノズル部を本容器の口部に挿入してから袋状容器を傾けることにより、詰め替え時に内容物をこぼす可能性を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のパウチは、通常時においてノズル部が下向きに折れ曲がっている。そのため、詰め替え時にこの折れ線により注出口が開口した状態が安定せず、途中で開口が閉じて内容物が出にくくなってしまうことがある。
一方、通常時においてノズル部を上向きにすると、パウチの製造時において内容物の充填が煩雑となる。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、簡便に製造でき、注出口の開口状態が安定した包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、積層体で形成され首部を有する前部と、積層体で形成された後部とを対向させて、前記首部の周縁を含む周縁部を熱融着して形成された包装袋である。
首部は、包装袋の高さ方向中間部に基部を有して上方に向かって延びており、首部の先端は、包装袋の上端よりも下方に位置する。首部の前面を構成する積層体は、首部の幅方向中央部において高さ方向に延びる凸状の主エンボスと、主エンボスの幅方向両側に設けられた凹状の副エンボスとを有する。副エンボスが包装袋の幅方向に延びる線に対して主エンボス側かつ下側においてなす角度は、55度以上80度以下である。
主エンボスおよび副エンボスは、基部をまたいで基部の上側から下側まで延びている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の包装袋は、簡便に製造でき、注出口の開口状態が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る包装袋の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。
図1は、内容物が充填された本実施形態の包装袋1を示す斜視図である。包装袋1は、調味料、洗剤、化粧品等の各種液体の詰替え用容器として好適に使用できる。
【0011】
図2は、
図1のI-I線における断面図である。
図3は、
図1のII-II線における断面図である。
図1から
図3に示すように、包装袋1は、前部10と、後部40と、底部60とを備えている。前部10、後部40、および底部60は、いずれも積層フィルムで形成されている。
包装袋1は、正面視における形状が上下方向(高さ方向)に長い略長方形であり、左右方向(幅方向)における寸法は、高さ方向中間部においてわずかに小さくなっている。
包装袋1の幅方向の寸法は適宜設定できる。一例として、幅方向の寸法を60mm~120mm程度に設定すると、平均的な手のサイズの使用者が容易に片手でつかむことができ、好ましい。
【0012】
図2に示すように、底部60は、包装袋1の上部に向かって凸となるように折り曲げられた状態で、包装袋1の下部であって前部10と後部40の間に配置され、前部10および後部40と熱融着されている。前部10および後部40の周縁は、底部60と熱融着された部位を除き互いに熱融着されている。すなわち、包装袋1は、公知のスタンディングパウチ構造を有しており、内容物Cが充填密封された状態で自立可能に構成されている。
【0013】
上記構造を実現するために、前部10、後部40、底部60を形成する積層フィルムは、厚さ方向の少なくとも一方の面に、熱融着可能な樹脂層(シーラント層)を有する。シーラント層の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂を使用することができる。さらに、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することもできる。
シーラント層以外の層については、包装袋1に求める機能や特性等を考慮してその数や構成が適宜決定されてよい。例えば、所定の気体の透過を防ぐガスバリア層、内容物を光から守る遮光層、包装袋に所定の外観を付与するための印刷層、包装袋の表面にキズなどが付くことを防ぐオーバーコート層などが例示できる。
シーラント層以外の層として、プラスチックフィルムが用いられてもよい。プラスチックフィルムの材質としては、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択することができる。特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルムとする場合には、フィルム強度と価格においてより好ましい。そのほか延伸ポリアミドフィルムを用いる場合には、積層体に突き刺しに対する強靭性や、衝撃に対する強靭性を付与することができる。
フィルム状のシーラント層と上述したプラスチックフィルムとが、接着剤層を用いて接合されることにより積層フィルムが形成されてもよい。
【0014】
前部10は、包装袋1の上部に配置された第一部材11と、包装袋1の下部に配置された第二部材12とを有する。第一部材11の下部11aは、包装袋1の左右方向に延びる折り曲げ線Lに沿って折り曲げられて上方に延びている。第二部材12は、包装袋1の幅方向に延びる折り線を有さないフラットな状態で上方に延びている。下部11aと第二部材12の上部12aとは、非融着領域が折り曲げ部位から離れるにつれて徐々に細くなるように幅方向両側および上側の縁部が熱融着されている。
【0015】
上記のような構成により、前部10は、高さ方向中間部に内容物を注出するための首部15を有している。包装袋1の製造直後において、首部15は、折り曲げられていない第二部材12の剛性により上方に向いており、首部15の先端は包装袋1の上端よりも下方に位置している。首部15は、先端側において熱融着された縁部の一部が除去されており、本容器に挿入可能に細く形成されている。
首部15の基部の位置は、下部11aの折り曲げ線Lと一致している。首部15の基部は、包装袋1の高さ方向中央または高さ方向中央よりも上側に位置する。包装袋1の幅方向寸法は、首部15の基部で最小となっており、上端および下端に向かって徐々に増加している。
【0016】
首部15は、先端付近に開封しやすく加工された開封線15aを有する。開封線15aに沿って先端部を切り取り除去することにより、首部15の先端部に注出口を形成することができる。開封線15aを形成する方法としては、コールドカッターやレーザー加工等の公知の各種加工を用いることができる。
【0017】
首部15の非融着領域R1は、包装袋1の高さ方向と略平行に延び、非融着領域R1の先端部は、包装袋1の幅方向中央部に位置している。すなわち、非融着領域R1の幅方向中央は、包装袋1の幅方向中央と概ね一致している。
【0018】
首部15の前面を構成する第二部材12は、幅方向中央部に設けられた主エンボス121と、主エンボスの幅方向両側に一本ずつ設けられた副エンボス122および123の、計3つのエンボスを有する。
主エンボス121は、
図3に示すように、包装袋1の外側に向かって凸となる形状の凸エンボスである。主エンボス121は、首部15の基部よりも下側から、非融着領域R1の幅方向中央に沿って直線状に延びており、上端121aが開封線15aよりも上側に位置する。
【0019】
副エンボス122および123は、
図3に示すように、包装袋1の内側に向かって凸となる形状の凹エンボスであり、包装袋1の外観上は溝状である。副エンボス122および123は、いずれも直線状であり、主エンボス121に対して非平行である。副エンボス122および123の下端の位置は、包装袋1の高さ方向において主エンボス121と概ね同一である。主エンボス121と副エンボス122との距離は、主エンボス121と副エンボス123の距離と同一であり、いずれも上端に近づくにつれて主エンボス121との距離が増加している。副エンボス122および123は、首部15の基部よりも上側まで延びているが、上端は熱融着された縁部には達しておらず、主エンボス121の上端よりも下側に位置する。
【0020】
包装袋1において、幅方向両端部を封止する熱融着部20は、高さ方向にわたり概ね一定の幅で形成されている。これにより、包装袋1は、外形と概ね同一形状かつ外形よりも一回り小さい内部空間を有する。
【0021】
包装袋1は、第一部材11と第二部材12とを熱融着して首部15を形成した前部10と、シート状の後部40とを、折り曲げた底部60を挟んで対向させた状態で周縁部を熱融着することにより作製できる。このとき、包装袋1上端部の周縁は熱融着せずに開放しておき、内容物の充填口として用いる。首部15の先端は、包装袋1の上端よりも下方に位置しているため、首部15が上を向いていても内容物の充填作業は妨げられず、簡便に充填作業を行える。
上端部から包装袋1内に所望の内容物を充填した後に上端部を熱融着して封止すると、内容物が充填密封された包装袋1が完成する。
【0022】
包装袋1の内容物を本容器等の他の容器に移す際、使用者は、第一部材11の上側を後部側に折り曲げる。すると、首部15の先端側が包装袋の上部に突出し、他の容器に挿入しやすい状態となる。第一部材11の上側は、首部15の基部で折り曲げられ、首部15の基部は、包装袋1の高さ方向中央または高さ方向中央よりも上側に位置する。そのため、後部側に折り曲げられた第一部材11の上側は、包装袋1の下端よりも下側に延びることがなく、包装袋1を把持しやすい状態が維持される。
【0023】
使用者は、首部15の先端側を下方に向けながら、他の容器の開口に首部15の先端側を挿入する。首部15の先端側の形状は、折り曲げ線のない第二部材12のコシ(剛性)により好適に保持され、他の容器への挿入を簡便に行える。
【0024】
包装袋1を他の容器へ挿入すると、充填された内容物は、重力により首部15の非融着領域R1内に移動する。内容物は、包装袋1の内側から第二部材12を押し、その結果、第二部材12が主エンボス121および副エンボス122、123に沿って折れ曲がる。
このとき、主エンボス121は、包装袋1の外側から見て凸となるように折れ曲がり、副エンボス122、123は、包装袋1の外側から見て凹となるように折れ曲がる。その結果、首部の非融着領域R1の前側に、内容物の流路となる角柱状の立体空間が形成される。この立体空間は、主エンボス121および副エンボス122、123が骨の様に機能することにより、内容物を他の容器に詰め替える間、好適に保持される。したがって、包装袋1においては、詰め替え中における流路の閉塞や狭窄が好適に防止され、円滑に詰め替え作業を行うことができる。
【0025】
発明者らは、上述した効果が首部に形成するエンボスの態様により変化することを見出した。この点についての検討結果を以下に示す。
【0026】
前部10、後部40、および底部60の材質、層構成および寸法を同一とし、首部に形成するエンボスの態様のみ異なる包装袋を複数作製した。包装袋の各部寸法は、高さ183mm、最大幅100mm、非充填時における底面高さ 下端より30mm、首部形成位置 下端より118mm、首部長さ(開封前)50mmとした。
【0027】
エンボスにおいては、主エンボスの態様を固定し、副エンボスの態様のみを様々に変更した。
主エンボスは、長さ62mmの直線状の凸エンボスとした。
副エンボスは、それぞれ長さ31.4mmの直線状エンボスとし、以下のパラメータを変化させて、複数のサンプル包装袋を作製した。
・副エンボスの形状(凸エンボスまたは凹エンボス)
・副エンボスの上端と首部周縁の熱融着部位との距離(0mm、3mm、5mm、7mm、および8mmの5種類)
・副エンボスが包装袋の幅方向に延びる線に対して主エンボス側かつ下側においてなす角度(53°、58°、63°、73°、78°、および83°の6種類)
【0028】
各サンプル包装袋に、内容物として200mlの水を充填し、上端部を熱融着して密封した。
その後、首部先端を除去して注出口を形成し、首部より下側を、内容物が非融着領域R1内に移動しない程度に軽く把持して持ち上げ、この状態で注出口における第一部材と第二部材との最大距離を計測した。評価は以下の3段階とし、△および○を合格とした。
(×:bad):0mm(閉じている)
(△:fair):0mmを超え1mm未満
(○:good):1mm以上
各サンプルのエンボス態様および評価結果を表1に示す。
【0029】
【0030】
サンプル1から6の結果より、副エンボスの角度は、55°から80°程度が好ましいと考えられた。
サンプル4および7から10の結果により、副エンボスの上端と首部周縁の熱融着部位との距離は7mm以下が好ましく、上端と熱融着部位とが接触していてもよいことが示された。
サンプル11の結果から、副エンボスは凹エンボスである必要が示された。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態等の内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0032】
例えば、本発明の包装袋はスタンディングパウチには限られないため、底部を備えなくてもよい。
また、上述の実施形態では、前部が第一部材と第二部材とを接合して形成されている例を説明したが、他の構成として、1枚の積層フィルムを折り曲げることにより前部が形成されてもよい。
【0033】
第二部材の腰強度は、20mN/15mm以上であることが好ましい。この場合、首部の上向き状態が、第二部材により好適に保持され、意図せず首部が下方に折れ曲がることが防止される。
フィルム状の部材の腰強度は、例えば、ループスティフネステスター(東洋精機製作所社製)を用いて測定できる。測定条件は、例えばループ長さ80~110mm、サンプル幅12~15mm、サンプルの向きを加工の流れ方向(MD方向)として、押し込み量(押し潰し距離)12~15mmとすればよい。
【0034】
主エンボスおよび副エンボスは、完全な直線状でなくてもよく、例えばわずかに湾曲していてもよい。
【0035】
本発明の包装袋に収容する内容物は、液体には限られない。内容物の形態は、ゲル状、粉体、あるいは粒状等の固形状であってもよく、特に制限はない。
【符号の説明】
【0036】
1 包装袋
10 前部
15 首部
40 後部
121 主エンボス
122、123 副エンボス