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特許7383224金属遮光板、カメラモジュールおよび電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】金属遮光板、カメラモジュールおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/00 20210101AFI20231113BHJP
   C23F 1/00 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
G03B11/00
C23F1/00 102
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019167045
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021018401
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2019133737
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西辻 清明
(72)【発明者】
【氏名】島村 槙一
(72)【発明者】
【氏名】相澤 弘康
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-072151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0051085(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1743938(CN,A)
【文献】特表2019-529707(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0089827(KR,A)
【文献】特開2002-229095(JP,A)
【文献】特開2010-197880(JP,A)
【文献】特開2017-015815(JP,A)
【文献】特開2008-257134(JP,A)
【文献】特開2002-222764(JP,A)
【文献】特開2005-134845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 11/00-11/06
G02B 5/00-5/136
C23F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の金属板に、該円形の中心軸と共通の中心軸を持つ円形若しくは楕円形の貫通孔を備えた金属遮光板であって、
金属板の外径部は、その断面において、金属板の表面と裏面の間に突起部を備えており、
突起部は、金属板の表面に対応する点と裏面に対応する点とを結ぶ直線より金属板側にあるか、その直線と接していることを特徴とする金属遮光板。
【請求項2】
該円形の中心軸と共通の中心軸を持つ円形若しくは楕円形の貫通孔を備えた金属遮光板であって、
貫通孔は、金属板の裏面から金属板をエッチングする事により形成した第2孔と、金属板の表面から金属板をエッチングすることで第2孔と連通した、第2孔より大きな第1孔と、を備えており、
貫通孔の内径部の断面において、金属板の表面と裏面の間に突起部が備えられており、
突起部の先端は金属板の片面から他面に向けて両面から相互に先細る形状であり、且つ第1孔側から突起部の先端に向かう単調に変化する曲線の先端における接線と、裏面が形成する直線と、がなす角度が鋭角であり、
金属板の外径部は、その断面において、金属板の表面と裏面の間に突起部を備えており、
突起部は、金属板の表面に対応する点と裏面に対応する点とを結ぶ直線より金属板側にあるか、その直線と接していることを特徴とする金属遮光板。
【請求項3】
前記貫通孔の内径部の断面において、前記突起部が、前記金属板の厚さ方向の中間点より前記裏面に近接して備えられていることを特徴とする請求項2に記載の金属遮光板。
【請求項4】
前記金属板が、鉄-ニッケル系合金または鉄-ニッケル-コバルト系合金であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の金属遮光板。
【請求項5】
前記鉄-ニッケル系合金がインバーであり、鉄-ニッケル-コバルト系合金がスーパーインバーであることを特徴とする請求項4に記載の金属遮光板。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の金属遮光板を備えていることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項7】
請求項6に記載のカメラモジュールを備えていることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラユニットで使用する遮光板に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の電子機器などのカメラモジュールのレンズユニットには、外光の絞りとして機能する遮光板という部材が使用されている。遮光板は、不要な外光がレンズに入射することで画像中に生じるゴーストやフレアといった画像不良を抑制するための部材である。カメラモジュールは、複数のレンズをレンズホルダ(レンズ鏡筒)内部に積み重ねた上で固体撮像素子(CCD、CMOSなどのイメージセンサ)と組み合わせてレンズユニットを構成する。
【0003】
従来、加工の容易さから樹脂製の遮光板が使用されてきた。しかしながら、樹脂製の遮光板では外光の透過を遮る遮光性が不十分であるという問題がある。そのため、遮光性が高い金属製の遮光板が注目されている。
【0004】
通常、レンズユニットは複数のレンズが組み合わされて構成されているが、そのようなレンズ系の中に複数の遮光板(絞り板などとも呼ばれる)が使用されているのが通常である。
遮光板は、小さな円形の金属板の中心部に円形の孔が形成された部材である。
【0005】
先行技術としては、金属遮光板の表面にモスアイ構造を形成する技術が開示されている(特許文献1)。この技術は、金属遮光板の表面反射によるゴーストやフレアを防止することに主眼を置いており、その対策として金属遮光板の表面にモスアイ構造を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/060198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、金属遮光板を製造する方法に関して、例えば、金属板の打ち抜き加工で作製した遮光板は、中心部の円形の孔の内壁面が垂直に形成される。そのため、内壁面に対して斜めに入射した光が反射によって、レンズユニットの内部に設置されたイメージセンサまで到達してゴーストやフレアといった画像不良を発生する問題が生じる。
【0008】
別の金属遮光板を製造する方法として、金属板をエッチングして作製する方法が考えられる。エッチングして作製する方法として、金属板を片面からエッチングして孔を形成する片面エッチングと、金属板の両面から同時にエッチングして孔を形成する両面エッチングが存在する。しかしながら、片面エッチングでは、エッチング断面形状を制御することが困難である。また、両面エッチングでは、金属板の両面からエッチングが進行して、エッチング交点が形成される。しかしながら、そのエッチング交点は、通常、金属板の片面から他面に向けて両面から相互に先細る形状を有することとなる。特に、金属遮光板の外径部においては、先細る形状がレンズホルダ(レンズ鏡筒)内部にて接触して破損することで、異物となり、画像不良の原因となる問題がある。
【0009】
上記の事情に鑑み、本発明は、金属遮光板をレンズユニットに組み込む作業を行う場合
に、金属遮光板の外径部とレンズユニットの鏡筒の内面とが接触する虞が無く、接触することで異物が発生する虞が無い金属遮光板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する手段として、請求項1に記載の発明は、円形の金属板に、該円形の中心軸と共通の中心軸を持つ円形若しくは楕円形の貫通孔を備えた金属遮光板であって、
金属板の外径部は、その断面において、金属板の表面と裏面の間に突起部を備えており、
突起部は、金属板の表面に対応する点と裏面に対応する点とを結ぶ直線より金属板側にあるか、その直線と接していることを特徴とする金属遮光板である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、円形の金属板に、該円形の中心軸と共通の中心軸を持つ円形若しくは楕円形の貫通孔を備えた金属遮光板であって、
貫通孔は、金属板の裏面から金属板をエッチングする事により形成した第2孔と、金属板の表面から金属板をエッチングすることで第2孔と連通した、第2孔より大きな第1孔と、を備えており、
貫通孔の内径部の断面において、金属板の表面と裏面の間に突起部が備えられており、
突起部の先端は金属板の片面から他面に向けて両面から相互に先細る形状であり、且つ第1孔側から突起部の先端に向かう単調に変化する曲線の先端における接線と、裏面が形成する直線と、がなす角度が鋭角であり、
金属板の外径部は、その断面において、金属板の表面と裏面の間に突起部を備えており、
突起部は、金属板の表面に対応する点と裏面に対応する点とを結ぶ直線より金属板側にあるか、その直線と接していることを特徴とする金属遮光板である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記貫通孔の内径部の断面において、前記突起部が、前記金属板の厚さ方向の中間点より前記裏面に近接して備えられていることを特徴とする請求項2に記載の金属遮光板である。
【0013】
また、請求項4は、前記金属板が、鉄-ニッケル系合金または鉄-ニッケル-コバルト系合金であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の金属遮光板である。
【0014】
また、請求項5は、前記鉄-ニッケル系合金がインバーであり、鉄-ニッケル-コバルト系合金がスーパーインバーであることを特徴とする請求項4に記載の金属遮光板。
【0015】
また、請求項5は、請求項1~4のいずれかに記載の金属遮光板を備えていることを特徴とするカメラモジュールである。
【0016】
また、請求項6は、請求項5に記載のカメラモジュールを備えていることを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金属遮光板によれば、円形の金属板の外径部の断面において、金属板の表面から裏面に至る間に突起部を備えており、その突起部は、外径部の断面において、金属板の表面に対応する点と裏面に対応する点とを結ぶ直線より金属板側にあるか、その直線と接している。即ち、突起部は外径部の表面端部および裏面端部より内側若しくは同じ直線上にある。その為、本発明の金属遮光板を、レンズユニットに組み込む作業を行う場合に、金属遮光板の外径部の突起部と、レンズユニットの鏡筒の内面と、が接触する事が無くなる。その為、金属遮光板が歪んでしまう事や金属の尖点が欠けて異物となる虞が無い。
【0018】
また、本発明のカメラモジュールによれば、本発明の金属遮光板を備えているため、フレアやゴーストを抑制することができる。
【0019】
また、本発明の電子機器によれば、本発明のカメラモジュールを備えているため、フレアやゴーストを抑制した画像情報を取得可能な電子機器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の金属遮光板の外径部の断面形状を例示する断面説明図である。
図2】金属遮光板の各部の名称を説明する説明図であって、(a)は内径部と外径部を説明図する上面図、(b)は図2(a)のA-A´切断線における内径部と外径部の断面形状を例示する断面説明図である。
図3】金属遮光板の製造工程の一例を外径部の断面を用いて説明する断面説明図である。
図4】金属遮光板の製造工程の一例を内径部の断面を用いて説明する断面説明図である。
図5】金属遮光板の外径部の断面形状を例示する断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<金属遮光板>
(第一の実施形態)
本発明の金属遮光板の第一の実施形態について、図1図2を用いて説明する。なお、図の上側を表面、下側を裏面として説明を進める。
図1は、本発明の金属遮光板の外径部9(図2参照)の断面形状を例示した説明図である。図1(a)は、外径部9の断面における金属板1の表面端部6-1と裏面端部7-1とを結ぶ直線(破線で示した直線)の内側に突起部5-1がある状態を例示した断面説明図である。図1(b)は、突起部5-1が表面端部6-1と裏面端部7-1とを結ぶ直線に接した状態を例示した断面説明図である。
【0022】
なお、図1(a)、(b)では、突起部5-1が、表面端部6-1と裏面端部7-1の中央部に形成された場合を例示したが、中央部に限定する必要は無く、表面端部6-1側または裏面端部7-1側に偏っていても良い。
【0023】
図2(a)は本発明の金属遮光板10の上面図、(b)は(a)の切断線A-A´における金属遮光板の10断面図を例示した説明図である。
【0024】
本発明の金属遮光板10は、図2(a)に例示したように、円形の金属板1に、該円形の中心軸と共通の中心軸を持つ円形若しくは楕円形の貫通孔を備えた金属遮光板である。
【0025】
金属板1の外径部9は、その断面において、金属板1の表面端部6と裏面端部7の間に突起部5を備えている。
また、突起部5は、金属板1の表面端部6と裏面端部7とを結ぶ直線より金属板1側にあるか、その直線と接していることが特徴である。
【0026】
図1に示した様に、先端が尖った突起部5-1が、金属板1の表面端部6-1と裏面端部7-1を結ぶ直線より金属板1側にあるか、その直線と接していることで、金属遮光板10の外径部9が物体と接触した場合であっても、突起部5-1が物体と接触する機会は低減される。即ち、表面端部6-1と裏面端部7-1のいずれか一方が接触するか、またはそれらと共に突起部5-1が接触する場合がある。これらは、突起部5-1より尖ってはいない為、機械的及び物理的な強度が高い。また、取り扱い方法として、金属遮光板1
0の外径部9が物体に接触しない様に注意を払って取り扱うため、物体に接触する危険性は低い。
【0027】
なお、図2(a)に例示した金属遮光板10において、外周部9突起部5(図2参照(b))が全周に亘って備えられていても良いし、一部に備えられていても良い。
【0028】
また、金属板1の形成材料としては、熱膨張係数が小さい材料であることが好ましい。例えば、鉄-ニッケル系合金であってよい。鉄-ニッケル系合金は、熱膨張係数がステンレス鋼より更に小さい。そのため、鉄-ニッケル系合金製の遮光板は外気温の変化に伴う変形が小さく、これによって、遮光板自体の反りや熱膨張および熱収縮に伴う内径の変形といったことを要因とする外気温の変化に伴う外光の入射量のおける変化を抑えることができる。なお、外光の入射量とは、遮光板を通じてレンズに入射する外光の入射量である。それにより、外光の入射量における変化に伴うゴーストやフレアを防ぐために有効である。鉄-ニッケル系合金の中でも、例えば、30質量%以上のニッケルと、残余分として鉄を含む合金である。鉄-ニッケル系合金の中でも、36質量%のニッケルを含む合金、すなわちインバーが好ましい。インバーにおいて、36質量%のニッケルに対する残余分は、主成分である鉄以外の添加物を含む場合がある。添加物は、例えば、クロム、マンガン、炭素、およびコバルトなどである。鉄-ニッケル系合金に含まれる添加物は、最大でも1質量%以下である。
【0029】
また、金属板1を形成する材料としては、鉄-ニッケル-コバルト系合金であってもよい。鉄-ニッケル-コバルト系合金は、熱膨張係数が鉄-ニッケル系合金より更に小さい。そのため、鉄-ニッケル-コバルト系合金製の遮光板は外気温の変化に伴う変形がより小さく、これによって、遮光板自体の反りや熱膨張および熱収縮に伴う内径の変形といったことを要因とする外気温の変化に伴う外光の入射量のおける変化を抑えることができる。それにより、外光の入射量における変化に伴うゴーストやフレアを防ぐためにより有効である。鉄-ニッケル-コバルト系合金は、鉄、ニッケル、およびコバルトを主成分とし、かつ、例えば、30質量%以上のニッケル、3質量%以上のコバルト、および、残余分としての鉄を含む合金である。鉄-ニッケル-コバルト系合金の中でも32質量%のニッケルと4質量%以上5質量%以下のコバルトを含む合金、すなわちスーパーインバーが好ましい。スーパーインバーにおいて、32質量%のニッケルと4質量%以上5質量%以下のコバルトに対する残余分は、主成分である鉄以外の添加物を含む場合がある。添加物は、例えば、クロム、マンガン、および炭素などである。鉄-ニッケル-コバルト系合金に含まれる添加物は、最大でも0.5質量%以下である。
【0030】
また、金属板1の形成材料としては、鉄-ニッケル合金の他に、鉄-白金(Fe-Pt)系、鉄-鉛(Fe-Pb)系あるいはクロム(Cr)基合金の中の熱膨張係数がインバー材と同等であるものを使用しても良い。これらの材料の中から、熱膨張係数、エッチング加工性、経済性などが優れた材料を選択すれば良い。
【0031】
(第二の実施形態)
次に、本発明の金属遮光板の第二の実施形態について図1及び2を用いて説明する。
本発明の金属遮光板10は、円形の金属板1に、該円形の中心軸と共通の中心軸を持つ円形の貫通孔13を備えている。
【0032】
貫通孔13は、金属板1の裏面から金属板1をエッチングする事により形成した第2孔11と、金属板1の表面から金属板1をエッチングすることで第2孔11と連通した、第2孔11より大きな第1孔12と、を備えている。
【0033】
貫通孔13の内径部8の断面において、金属板1の表面端部6´と裏面端部7´の間に
突起部5´が備えられている。
【0034】
突起部5´の先端は金属板の片面から他面に向けて両面から相互に先細る形状であり、厚さは0μm以上7μm以下であってよい。7μmを超えると垂直な壁面の面積が多くなり、有害光の反射の影響が無視出来なくなる。先端が薄いほど、突起部5´の先端から反射される光が少なくなる為である。且つ第1孔12側から突起部5´の先端に向かう単調に変化する曲線の先端における接線と、裏面が形成する直線と、がなす角度が鋭角であることが好ましい。鋭角であることにより、斜めから入射する有害光を効果的に反射させることで排除することが可能となる。
【0035】
ゴーストやフレアを防止する手段としては、遮光板の第2孔12の内壁面からの反射光を防止できる手段であれば限定されない。上記に説明した突起部5の先端を薄くする手段の様な形状的な手段の他に、従来から使用されて来た各種の反射防止膜や微細な凹凸形状であるモスアイ構造の様な反射防止構造を遮光板の第2孔12の内壁面に形成することであっても良い。
【0036】
また、貫通孔13の内径部8の断面において、突起部5´が、金属板1の厚さの中間点より裏面寄りに備えられていることにより、斜めから深い角度で入射する有害光を反射することができ、ゴーストやフレアを低減することが可能である。
【0037】
なお、金属板1の外径部9は、第一の実施形態における外径部9と同様である。
【0038】
(金属遮光板の製造方法)
次に、本発明の金属遮光板の製造方法について、図3図4を用いて説明する。
【0039】
図3は、本発明の金属遮光板の外径部、図4は開口部の内径部の断面形状の製造工程を説明したものである。
製造工程としては、別工程としても良いし、同時進行するプロセスであっても良い。別工程とすることにより、外径部と内径部の断面形状をそれぞれ独立に形成することが可能である点において優れている。
また、金属板1の表裏面に形成されるレジスト2、2´を調整して開口部3、3´の寸法を変更する事によって、断面形状を制御することができる。
【0040】
(外径部の製造方法)
図3を用いて、本発明の金属遮光板の外径部の製造方法を説明する。
図3(a)は、金属遮光板に使用する金属板1である。金属板1の厚さは、例えば10μm以上100μm以下であってよい。金属板1の厚さが10μm以上である場合には、金属板1の反りが遮光板10の形状に対して影響を与えることが抑えられる。また、金属板1の厚さが100μm以下である場合には、外径部9を形成する際のエッチングの精度が低下することが抑えられる。図の上側を表面、下側を裏面として説明を進める。なお、金属板1としては、ステンレス鋼からなる金属板を、エッチング加工の容易さと製品としての耐防錆特性の観点から好適に使用することができるが、これに限定する必要は無い。
【0041】
図3(b)に示した様に、まず、金属板1の表面側にエッチング防止層4を形成後、裏面側にレジスト2を形成し、レジスト2の露光・現像処理により、開口部3を形成する。なお、レジスト2の材料としては、感光性樹脂からなる感光性レジストであれば特に限定されない。また、エッチング防止層4としては、例えば、ドライフィルムレジストやニスなどを好適に使用することができるが、同等の特性を備えた材料であれば特に限定する必要は無い。また、レジスト2の形成方法としては、ドライフィルムレジストを使用する場合は、ラミネータを使用すれば良いが、感光性レジスト液を使用する場合は、基板上に塗
布する塗工方法を使用すればよい。例えば、ロールコート法、ダイコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、などを挙げることができる。
【0042】
次に、図3(c)に示した様ように、裏面側をエッチング処理する。図3(c)では、開口部3に露出している金属板1をエッチングする。この処理により金属板1の裏面側が、例えば、金属板1の半分程度の厚さまで除去される。なお、エッチング処理の方法としては、塩化第二鉄を使用したエッチング液を用いたスプレーエッチング装置を好適に使用することができるが、同等のエッチング処理が可能であれば、金属板1のエッチング方法(エッチング液の種類、エッチング方式など)は特に限定されない。
【0043】
次に、図3(d)に示した様に、レジスト2とエッチング防止層4を剥離した後、金属板1の裏面側にエッチング防止層4´を形成する。この際エッチング防止層4´により裏面側のエッチング箇所が埋められることが好ましい。更に、表面側にレジスト2´を形成する。なお、レジスト2およびエッチング防止層4の剥離には、それらに適した剥離処理を行えばよい。
【0044】
次に、図3(e)に示した様に、レジスト2´の露光・現像処理により、開口部3´を形成する。図3(e)では、例えば、裏面側の開口部3を形成したのと同じ寸法のレジストパターンによる同じ寸法の開口部3´が形成される。これらの開口部3、3´の寸法関係で、エッチング処理後の金属板1の断面形状が変化する。
【0045】
次に、図3(f)に示したように、表面側をエッチング処理する。表面のエッチングがエッチング防止層4´に到達した後は、金属板1に対するエッチング液の供給が、エッチング防止層4´によって制御される。これにより、金属板1が10μm以上100μm以下の広い範囲において、精度の高い断面形状を形成できる。これに対して、裏面のエッチング箇所がエッチング防止層4´によって埋められていない場合には、第2孔12と第1孔11とが繋がることによって金属板1が貫通されると、第2孔12と第1孔11との接続部を通じて、エッチング液が、金属板1の裏面に向けて漏れてしまう。結果として、第2孔12の形状、および、第1孔11の形状における精度が低下してしまう。図3(f)では、例えば、金属板1の半分程度の厚さまで除去された状態を例示している。
【0046】
次に、図3(g)に示した様に、レジスト2´とエッチング防止層4´が除去されることにより、金属遮光板が得られる。
【0047】
(内径部の製造方法)
次に、図4を用いて、本発明の金属遮光板の内径部の製造方法を説明する。
図4(a)は、金属遮光板に使用する金属板1である。金属板1の厚さは、例えば10μm以上100μm以下であってよい。金属板1の厚さが10μm以上である場合には、金属板1の反りが遮光板10の形状に対して影響を与えることが抑えられる。また、金属板1の厚さが100μm以下である場合には、内径部8を形成する際のエッチングの精度が低下することが抑えられる。図の上側を表面、下側を裏面として説明を進める。なお、金属板1としては、ステンレス鋼からなる金属板を、エッチング加工の容易さと製品としての耐防錆特性の観点から好適に使用することができるが、これに限定する必要は無い。
【0048】
図4(b)に示したように、まず、金属板1の表面側にエッチング防止層4を形成後、裏面側にレジスト2を形成し、レジスト2の露光・現像処理により、開口部3を形成する。なお、レジスト2の材料としては、感光性樹脂からなる感光性レジストであれば特に限定されない。また、エッチング防止層4としては、例えば、ドライフィルムレジストやニスなどを好適に使用することができるが、同等の特性を備えた材料であれば特に限定する必要は無い。また、レジスト2の形成方法としては、ドライフィルムレジストを使用する場合は、ラミネータを使用すれば良いが、感光性レジスト液を使用する場合は、基板上に塗布する塗工方法を使用すればよい。例えば、ロールコート法、ダイコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、などを挙げることができる。
【0049】
次に、図4(c)に示した様に、裏面側をエッチング処理する。図4(c)では、この処理により金属板1の裏面側が、例えば、金属板1の半分の厚さを超えないようにエッチングされる。なお、エッチングの方法としては、塩化第二鉄を使用したエッチング液を用いたスプレーエッチング装置を好適に使用することができるが、同等のエッチング処理が可能であれば、金属板1のエッチング方法(エッチング液の種類、エッチング方式など)は特に限定されない。
【0050】
次に、図4(d)に示したように、レジスト2とエッチング防止層4を剥離した後、金属板1の裏面側にエッチング防止層4´を形成する。この際エッチング防止層4´により裏面側のエッチング箇所が埋められることが好ましい。更に、表面側にレジスト2´を形成する。なお、レジスト2およびエッチング防止層4の剥離には、それらに適した剥離処理を行えばよい。
【0051】
次に、図4(e)に示した様に、レジスト2´の露光・現像処理により、開口部3´を形成する。図4(e)では、裏面側の開口部3より大きい開口部3´が形成される。
【0052】
次に、図4(f)に示した様に、表面側をエッチングする。表面のエッチングがエッチング防止層4´に到達した後は、金属板1に対するエッチング液の供給が、エッチング防止層4´によって制御される。これにより、金属板1が10μm以上100μm以下の広い範囲において、精度の高い断面形状を形成できる。これに対して、裏面のエッチング箇所がエッチング防止層4´によって埋められていない場合には、第2孔12と第1孔11とが繋がることによって金属板1が貫通されると、第2孔12と第1孔11との接続部を通じて、エッチング液が、金属板1の裏面に向けて漏れてしまう。結果として、第2孔12の形状、および、第1孔11の形状における精度が低下してしまう。図4(f)では金属板1の表面側が、金属板1の残された厚さが除去される。
【0053】
次に、図4(g)に示したように、レジスト2´とエッチング防止層4´が除去され、金属遮光板が得られる。
【0054】
図3図2における外径部9、図4図2における内径部8、における製造工程を説明したものである。これらは独立に処理を進行させる事で加工が進むのであるが、図3における開口部3と開口部3´の寸法は同程度であるのに対し、図4における開口部3と開口部3´の寸法の差は大きくしてある。このようにすることで、図3における突起部5が形成される位置が、金属板1の厚さ方向において、表面端部6および裏面端部7からほぼ等距離の位置、即ち厚さ方向の中央部となる。一方、図4における突起部5´が形成される位置は、裏面端部7´に近接した位置となる。
【0055】
なお、図1に示した様に、金属板1の外径部9(図2参照)における断面形状において、突起部5-1の先端が、表面端部6-1と裏面端部7-1を結ぶ直線より金属板1側にあるか、またはその直線と接する様にする方法としては、例えば、図3における金属板1とレジスト2、2´との密着性をより強くすることにより、レジスト2、2´に近い部分の金属板1のエッチング速度を小さくすればよい。逆に図5に示した様な、突起部5-2の先端が、表面端部6-2と裏面端部7-2を結ぶ直線より外側(金属板1から離れる方向)にある形状とするには、例えば、図3における金属板1とレジスト2、2´との密着性をより強くすれば良い。
【0056】
金属板1とレジスト2、2´との密着性は、金属板1にレジスト2、2´を形成する前に、密着性を増強するプライマー処理や表面粗さを大きくすることなどの表面処理が有効である。また、レジストパターンを形成後の熱処理を行った場合の方が、熱処理しない場合より、密着力が強くなる。また、熱処理温度を適用可能な範囲で高くした方が、密着力が強くなる。
【0057】
以上の様にして得られた本発明の金属遮光板をレンズ系の中に備えたカメラモジュールは、レンズ系が収納されたレンズユニットの鏡筒の内面で反射した光や、レンズ系に斜め入射した光を遮光することができるため、フレアやゴーストを抑制したカメラモジュールとすることができる。
【0058】
また、本発明の金属遮光板を備えたカメラユニットを使用した電子機器は、フレアやゴーストが抑制された画像を取得可能な電子機器となる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・金属板
2、2´・・・レジスト
3、3´・・・(レジストパターンの)開口部
4・・・エッチング防止層
5、5´、5-1、5-2・・・突起部
6、6´、6-1、6-2・・・表面端部(金属板の表面)
7、7´、7-1、7-2・・・裏面端部(金属板の裏面)
8・・・(金属遮光板の)内径部
9・・・(金属遮光板の)外径部
10・・・金属遮光板
11・・・第2孔
12・・・第1孔
13・・・貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5