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特許7383226触覚情報生成プログラム、触覚情報入力装置、および、触覚情報通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】触覚情報生成プログラム、触覚情報入力装置、および、触覚情報通信システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
G06F3/01 560
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019175807
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021051690
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】荻野 孝士
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-232317(JP,A)
【文献】特表2013-501287(JP,A)
【文献】特表2012-520522(JP,A)
【文献】特開2009-217805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面における対象物の接触位置および前記接触位置での押込み量を検出する入力装置の制御部に、複数の振動素子を備える出力装置に向けて出力する伝送データを生成させるためのプログラムであって、
前記制御部に、
前記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定することと、
前記接触位置での前記押込み量に基づき、前記対象領域ごとの押込み量を設定することであって、前記対象領域における前記所定の範囲に入る部分の、前記所定の範囲に占める面積の割合に応じて、当該対象領域の前記押込み量を設定することと、
前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を、当該対象領域の前記押込み量に応じた強さで振動させるための前記伝送データを生成することと、を実行させる
触覚情報生成プログラム。
【請求項2】
操作面における対象物の接触位置を検出する入力装置の制御部に、複数の振動素子を備える出力装置に向けて出力する伝送データを生成させるためのプログラムであって、
前記制御部に、
前記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域であって第1の基準領域と前記第1の基準領域に隣接する第2の基準領域とを含む前記複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定することと、
前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を振動させるための前記伝送データを生成することと、
前記接触位置が含まれる前記基準領域が、前記第1の基準領域から前記第2の基準領域に変わったとき、前記接触位置が前記第1の基準領域内に位置したときの当該接触位置に基づいて生成した前記伝送データを、前記出力装置に向けたデータとして、前記入力装置が備える通信部に送信させることと、を実行させる
触覚情報生成プログラム。
【請求項3】
操作面における対象物の接触位置を検出する入力装置の制御部に、複数の振動素子を備える出力装置に向けて出力する伝送データを生成させるためのプログラムであって、
前記制御部に、
前記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域であって互いに異なる大きさの基準領域を含む前記複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定することと、
前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を振動させるための前記伝送データを生成することと、を実行させる
触覚情報生成プログラム。
【請求項4】
前記複数の基準領域は、一定の大きさを有する
請求項1または2に記載の触覚情報生成プログラム。
【請求項5】
操作面における対象物の接触位置、および、前記接触位置での押込み量を検出するタッチ検出部と、
複数の振動素子を備える出力装置に向けて出力する伝送データを生成する制御部と、を備える入力装置であって、
前記制御部は、
前記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定することと、
前記接触位置での前記押込み量に基づき、前記対象領域ごとの押込み量を設定することであって、前記対象領域における前記所定の範囲に入る部分の、前記所定の範囲に占める面積の割合に応じて、当該対象領域の前記押込み量を設定することと、
前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を、当該対象領域の前記押込み量に応じた強さで振動させるための前記伝送データを生成することと、を実行する
触覚情報入力装置
【請求項6】
操作面における対象物の接触位置を検出するタッチ検出部と、
複数の振動素子を備える出力装置に向けて出力する伝送データを生成する制御部と、を備える入力装置であって、
前記制御部は、
前記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域であって第1の基準領域と前記第1の基準領域に隣接する第2の基準領域とを含む前記複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定することと、
前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を振動させるための前記伝送データを生成することと、
前記接触位置が含まれる前記基準領域が、前記第1の基準領域から前記第2の基準領域に変わったとき、前記接触位置が前記第1の基準領域内に位置したときの当該接触位置に基づいて生成した前記伝送データを、前記出力装置に向けたデータとして、前記入力装置が備える通信部に送信させることと、を実行する
触覚情報入力装置
【請求項7】
操作面における対象物の接触位置を検出するタッチ検出部と、
複数の振動素子を備える出力装置に向けて出力する伝送データを生成する制御部と、を備える入力装置であって、
前記制御部は、
前記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域であって互いに異なる大きさの基準領域を含む前記複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定することと、
前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を振動させるための前記伝送データを生成することと、を実行する
触覚情報入力装置
【請求項8】
複数の振動素子を含む振動部と、
前記振動素子を駆動する駆動部と、を備える出力装置と、
操作面における対象物の接触位置、および、前記接触位置での押込み量を検出するタッチ検出部と、
前記出力装置に向けて出力される伝送データを生成する制御部と、を備える入力装置と、を備える触覚情報通信システムであって、
前記制御部は、
記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定することと、
前記接触位置での前記押込み量に基づき、前記対象領域ごとの押込み量を設定することであって、前記対象領域における前記所定の範囲に入る部分の、前記所定の範囲に占める面積の割合に応じて、当該対象領域の前記押込み量を設定することと、
前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置を示すデータと、前記対象領域ごとの前記押込み量を示すデータとを含む伝送データを生成することと、を実行し、
前記駆動部は、前記伝送データに基づき、前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を、当該対象領域の前記押込み量に応じた強さで振動させる
触覚情報通信システム。
【請求項9】
複数の振動素子を含む振動部と、
前記振動素子を駆動する駆動部と、を備える出力装置と、
操作面における対象物の接触位置を検出するタッチ検出部と、
前記出力装置に向けて出力される伝送データを生成する制御部と、を備える入力装置と、を備える触覚情報通信システムであって、
前記制御部は、
記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域であって第1の基準領域と前記第1の基準領域に隣接する第2の基準領域とを含む前記複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定することと、
前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置を示すデータを含む伝送データを生成することと、
前記接触位置が含まれる前記基準領域が、前記第1の基準領域から前記第2の基準領域に変わったとき、前記接触位置が前記第1の基準領域内に位置したときの当該接触位置に基づいて生成した前記伝送データを、前記出力装置に向けたデータとして、前記入力装置が備える通信部に送信させることと、を実行し、
前記駆動部は、前記伝送データに基づき、前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を振動させる
触覚情報通信システム。
【請求項10】
複数の振動素子を含む振動部と、
前記振動素子を駆動する駆動部と、を備える出力装置と、
操作面における対象物の接触位置を検出するタッチ検出部と、
前記出力装置に向けて出力される伝送データを生成する制御部と、を備える入力装置と、を備える触覚情報通信システムであって、
前記制御部は、前記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域であって互いに異なる大きさの基準領域を含む前記複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定して、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置を示すデータを含む伝送データを生成し、
前記駆動部は、前記伝送データに基づき、前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を振動させる
触覚情報通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔でのコミュニケーションに用いられる触覚情報生成プログラム、触覚情報入力装置、および、触覚情報通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ネットワークを通じた画像や音声の送受信を利用することで、第1の空間内の対象者が、第1の空間から離れた第2の空間内の人物とコミュニケーションを取ることが可能とされてきた。近年、第2の空間内の状況を、三次元的な画像および音声によって対象者に示すことにより、対象者の臨場感を向上させる、すなわち、対象者に自分が第2の空間にいるかのように感じさせるシステムも提案されている(例えば、特許文献1参照)。こうしたシステムは、視覚および聴覚による知覚を通じて、対象者の臨場感を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-128683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人が人や動物と同一の空間内で直にコミュニケーションを取る際には、視覚および聴覚に加えて、触覚によっても情報を伝え合うことができる。互いに離れた空間内に位置する対象間においても、触覚による知覚を通じた情報の伝達が可能であれば、対象間のコミュニケーションにおける臨場感の向上や、コミュニケーションの目的の多様化が可能である。
【0005】
本発明は、触覚を利用した情報の伝達を可能とした触覚情報生成プログラム、触覚情報入力装置、および、触覚情報通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する触覚情報出力装置は、操作面における対象物の接触位置を検出する入力装置が生成した伝送データを受信する受信部と、複数の振動素子を含む振動部と、前記伝送データに基づいて、前記振動素子を駆動する駆動部と、を備え、前記伝送データは、前記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に対応する配列で並ぶ複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域を対象領域とした場合の、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置を示すデータを含み、前記駆動部は、前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を振動させる。
【0007】
上記課題を解決する触覚情報生成プログラムは、操作面における対象物の接触位置を検出する入力装置の制御部に、複数の振動素子を備える出力装置に向けて出力する伝送データを生成させるためのプログラムであって、前記制御部に、前記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定することと、前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を振動させるための前記伝送データを生成することと、を実行させる。
【0008】
上記課題を解決する触覚情報通信システムは、複数の振動素子を含む振動部と、前記振動素子を駆動する駆動部と、を備える出力装置と、操作面における対象物の接触位置を検出するタッチ検出部と、前記出力装置に向けて出力される伝送データを生成する制御部と、を備える入力装置と、を備える触覚情報通信システムであって、前記制御部は、前記操作面内の領域を、前記複数の振動素子の配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域に仮想的に分割し、前記接触位置を含む所定の範囲に入る前記基準領域である対象領域を特定して、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置を示すデータを含む伝送データを生成し、前記駆動部は、前記伝送データに基づき、前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を振動させる。
【0009】
上記各構成によれば、第1のユーザが入力装置を触ったとき、この接触の位置に対応する位置の振動素子が出力装置にて振動する。したがって、出力装置に触れている第2のユーザは、入力装置に対する第1のユーザの動作に沿った振動を知覚することができる。これにより、触覚を利用した情報の伝達が可能となる。
【0010】
上記出力装置において、前記入力装置は、前記接触位置での押込み量を検出し、前記伝送データは、前記接触位置での前記押込み量に基づいて設定された前記対象領域ごとの押込み量を示すデータを含み、前記駆動部は、前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を、当該対象領域の前記押込み量に応じた強さで振動させてもよい。
【0011】
上記プログラムにおいて、前記入力装置は、前記接触位置での押込み量を検出し、前記制御部に、前記接触位置での前記押込み量に基づき、前記対象領域ごとの押込み量を設定することと、前記伝送データとして、前記複数の振動素子のなかで、前記複数の基準領域内での前記対象領域の位置に対応する位置に配置された前記振動素子を、当該対象領域の前記押込み量に応じた強さで振動させるための前記伝送データを生成することと、を実行させてもよい。
【0012】
上記各構成によれば、振動素子は、第1のユーザによる入力装置への接触時の押圧の強さに応じた強さで振動する。したがって、第2のユーザは、第1のユーザの動作によって生じる振動により似た振動を知覚することができる。これにより、ユーザ間のコミュニケーションにおける臨場感を高めることができる。
【0013】
上記出力装置において、前記複数の振動素子は、二次元状の配列を有していてもよい。
上記構成によれば、複数の振動素子が一次元状の配列を有する構成と比較して、多様な振動分布での出力装置の振動が可能である。したがって、触覚情報出力装置を用いて多様な動作を伝えることができる。
【0014】
上記出力装置において、前記複数の振動素子は、三次元状の配列を有していてもよい。
上記構成によれば、立体的な振動分布での出力装置の振動が可能である。したがって、触覚情報出力装置を用いてより多様な動作を伝えることができる。
【0015】
上記出力装置において、前記複数の振動素子には、前記駆動部からの駆動によって発する最大の振動の強さが互いに異なる振動素子が含まれてもよい。
上記構成によれば、位置による振動の強弱の差が大きい振動分布で、出力装置の振動が可能である。したがって、操作面内での押圧力の差が大きい動作を伝えることに適した触覚情報出力装置が実現される。
【0016】
上記出力装置において、前記入力装置は第1の入力装置であり、前記触覚情報出力装置は、操作面における接触位置の検出に基づき生成した伝送データを他の触覚情報出力装置に向けて出力する第2の入力装置に重ねられていてもよい。
【0017】
上記構成によれば、第2のユーザは、出力装置から振動を受けることと、第2の入力装置に対する動作とを、近しいタイミングで行うことができる。したがって、双方向な情報の伝達が可能である。
【0018】
上記プログラムにおいて、前記対象領域ごとの押込み量を設定することは、前記対象領域における前記所定の範囲に入る部分の、前記所定の範囲に占める面積の割合に応じて、当該対象領域の前記押込み量を設定することを含んでもよい。
【0019】
上記構成によれば、接触位置の周囲の領域に対応する振動素子の振動の強さのバランスが適切に制御されるため、第2のユーザは、第1のユーザの動作によって生じる振動により近しい自然な振動を知覚することができる。したがって、ユーザ間のコミュニケーションにおける臨場感を高めることができる。
【0020】
上記プログラムにおいて、前記複数の基準領域には、第1の基準領域と、前記第1の基準領域に隣接する第2の基準領域とが含まれ、前記制御部に、前記接触位置が含まれる前記基準領域が、前記第1の基準領域から前記第2の基準領域に変わったとき、前記接触位置が前記第1の基準領域内に位置したときの当該接触位置に基づいて生成した前記伝送データを、前記出力装置に向けたデータとして、前記入力装置が備える通信部に送信させること、を実行させてもよい。
【0021】
上記構成によれば、第1のユーザが、操作面上で対象物を動かす動作を行ったとき、当該動作の流れに適したタイミングで、出力装置が振動してその振動位置が移動する。そのため、出力装置から振動を受ける第2のユーザが、第1のユーザの動作を把握しやすい。
【0022】
上記プログラムにおいて、前記複数の基準領域は、一定の大きさを有してもよい。
上記構成によれば、操作面内での押圧力の差が小さい動作を伝えることに適した入力装置が実現できる。
【0023】
上記プログラムにおいて、前記複数の基準領域は、互いに異なる大きさの前記基準領域を含んでもよい。
上記構成によれば、操作面内での押圧力の差が大きい動作を伝えることに適した入力装置が実現できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、触覚を利用した情報の伝達を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態の触覚情報通信システムの構成を示す図。
図2】一実施形態の触覚情報通信装置の構成を示す図。
図3】一実施形態の触覚情報出力装置における振動素子の配列の一例を示す図。
図4】一実施形態の触覚情報通信装置の外観の一例を分解して示す図。
図5】一実施形態の触覚情報入力装置における基準領域の配列および対象範囲の設定の一例を示す図。
図6】一実施形態の触覚情報入力装置における伝送データの生成処理の手順を示すフローチャート。
図7】一実施形態の触覚情報出力装置における振動素子の駆動処理の手順を示すフローチャート。
図8】適用例1の触覚情報出力装置における振動素子の配列の一例を示す図。
図9】適用例1の触覚情報入力装置における基準領域の配列および対象範囲の設定の一例を示す図。
図10】変形例の触覚情報入力装置における基準領域の配列および対象範囲の設定の一例を示す図。
図11】適用例2の触覚情報出力装置における振動素子の配列の一例を示す図。
図12】変形例の触覚情報出力装置における振動素子の配列の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1図7を参照して、触覚情報出力装置、触覚情報生成プログラム、および、触覚情報通信システムの一実施形態を説明する。本実施形態における触覚は広義での触覚を意味し、当該触覚による知覚対象は、皮膚を通じて知覚される肌触り、圧力、温度等の刺激の全般を含む。本実施形態の触覚情報通信装置は、触覚による圧力の知覚を利用した情報の伝達を可能とする。
【0027】
[触覚情報通信装置の構成]
図1が示すように、触覚情報通信装置10は、触覚情報入力装置の一例である入力装置20と、触覚情報出力装置の一例である出力装置30とを備えている。
【0028】
互いに異なる空間に位置する2つの触覚情報通信装置10である第1触覚情報通信装置10Aと第2触覚情報通信装置10Bとは、インターネット等のネットワークNWを通じて、相互にデータの送信および受信を行う。詳細には、第1触覚情報通信装置10Aの入力装置20と、第2触覚情報通信装置10Bの入力装置20とが、ネットワークNWを通じてデータの送受信を行うことにより、第1触覚情報通信装置10Aと第2触覚情報通信装置10Bとの間でのデータの授受が実現される。
【0029】
入力装置20は、ユーザの触覚情報通信装置10を触る動作を受け付け、この動作に基づいて伝送データDoを生成する。出力装置30は、他の触覚情報通信装置10からの伝送データDoに基づき、振動を発する。
【0030】
すなわち、第1触覚情報通信装置10Aの入力装置20が生成した伝送データDoは、第2触覚情報通信装置10Bに送信され、この伝送データDoに基づき、第2触覚情報通信装置10Bの出力装置30が振動する。また、第2触覚情報通信装置10Bの入力装置20が生成した伝送データDoは、第1触覚情報通信装置10Aに送信され、この伝送データDoに基づき、第1触覚情報通信装置10Aの出力装置30が振動する。
【0031】
第1触覚情報通信装置10Aの入力装置20と、第2触覚情報通信装置10Bの出力装置30とから、触覚情報通信システムが構成される。また、第2触覚情報通信装置10Bの入力装置20と、第1触覚情報通信装置10Aの出力装置30とからも、触覚情報通信システムが構成される。
【0032】
図2を参照して、触覚情報通信装置10の詳細な構成を説明する。図2が示すように、入力装置20は、通信部21と、タッチ検出部22と、制御部23と、記憶部24とを備えている。
【0033】
通信部21は、ネットワーク通信部21aと、近距離通信部21bとを備えている。ネットワーク通信部21aは、ネットワークNWを通じて、当該入力装置20と他の触覚情報通信装置10の入力装置20との接続処理を実行し、接続された装置間でデータの送信および受信を行う。近距離通信部21bは、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信、あるいは、有線の通信にて、当該入力装置20と、当該入力装置20と同一の触覚情報通信装置10の出力装置30との接続処理を実行し、接続された装置間でデータの送信および受信を行う。
【0034】
具体的には、ネットワーク通信部21aは、入力装置20が生成した伝送データDoを他の触覚情報通信装置10に送信する。また、ネットワーク通信部21aは、他の触覚情報通信装置10が生成した伝送データDoを受信し、近距離通信部21bは、ネットワーク通信部21aが受信した伝送データDoを、触覚情報通信装置10内で出力装置30に送信する。
【0035】
タッチ検出部22は、入力装置20が備える操作面に対する指等の対象物の接触を検出する。詳細には、タッチ検出部22は、操作面内での対象物の接触位置と、対象物の接触による接触位置での操作面の押込み量とを検出可能に構成されている。当該押込み量の検出は、言い換えれば、対象物の接触によって接触位置に加えられた押圧力の検出である。
【0036】
タッチ検出部22は、例えば、タッチセンサーと圧力センサーとを備えるパネルに具体化される。タッチセンサーは、例えば、操作面内の各位置での静電容量の変化を検出することに基づき、対象物の接触位置を検出する。圧力センサーは、例えば、操作面のたわみを、圧電素子等の回路素子の出力信号や静電容量の変化等を利用して検出することに基づき、押込み量を検出する。
【0037】
制御部23は、CPU、および、RAM等の揮発性メモリを含む。制御部23は、記憶部24に記憶されたプログラムやデータに基づいて、通信部21やタッチ検出部22による処理の制御、記憶部24における情報の読み出しや書き込み、各種の演算処理等、入力装置20が備える各部の制御を行う。
【0038】
触覚情報通信システムにおいて、制御部23は、タッチ検出部22の検出結果に基づき、伝送データDoを生成する。
記憶部24は、不揮発性メモリを含み、制御部23が実行する処理に必要なプログラムやデータを記憶している。なお、制御部23における各機能は、複数のCPUや、RAM等からなるメモリ等の各種のハードウェアと、これらを機能させるソフトウェアとによって具体化されてもよく、あるいは、共通する1つのハードウェアに複数の機能を与えるソフトウェアによって具体化されてもよい。制御部23における伝送データDoの生成機能を実現するソフトウェアは、触覚情報生成プログラムとして記憶部24に記憶されている。
【0039】
入力装置20は、通信機能とタッチパネルによる入力機能とを備えた多機能端末であってもよい。例えば、スマートフォンやタブレット端末に、上記触覚情報生成プログラムを含むアプリケーションソフトウェアがインストールされることにより、これらの装置が入力装置20として機能してもよい。
【0040】
出力装置30は、通信部31と、振動部32と、駆動部33とを備えている。
通信部31は、近距離通信部31aを備える。近距離通信部31aは、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信、あるいは、有線の通信にて、出力装置30と、当該出力装置30と同一の触覚情報通信装置10の入力装置20との接続処理を実行し、接続された装置間でデータの送信および受信を行う。具体的には、近距離通信部31aは、受信部として機能し、他の触覚情報通信装置10にて生成された伝送データDoを、触覚情報通信装置10内で入力装置20から受信する。
【0041】
振動部32は、複数の振動素子を備える。振動素子は、例えば、偏心回転質量式の振動モーター、リニア共振アクチュエーター、ピエゾアクチュエーター等である。複数の振動素子の各々は、互いに独立して振動可能に構成されている。各振動素子は、駆動部33からの制御信号に応じたタイミングおよび強さで振動する。
【0042】
駆動部33は、CPU、および、RAM、ROM等のメモリを含み、駆動部33が記憶しているプログラムやデータに基づいて、振動部32を駆動する。詳細には、駆動部33は、近距離通信部31aが受信した伝送データDoに基づき、振動部32の振動素子の駆動のための制御信号を生成する。
【0043】
[出力装置の構成]
図3が示すように、出力装置30の振動部32が備える複数の振動素子32Mは、所定の配列で並んでいる。振動素子32Mの配列は、特に限定されず、触覚情報通信装置10に利用目的等に応じて、選択されればよい。
【0044】
例えば、複数の振動素子32Mは、一次元状に配列されていてもよいし、二次元状に配列されていてもよいし、三次元状に配列されていてもよいし、一次元状の配列では、複数の振動素子32Mは、1つの直線上に並び、二次元状の配列では、複数の振動素子32Mは、1つの平面上に並ぶ。
【0045】
また、複数の振動素子32Mは、規則的な間隔で配列されていてもよいし、不規則な間隔で配列されていてもよい。また、複数の振動素子32Mの数は限定されず、複数の振動素子32Mにおける最大周波数や最大振幅等の特性は、同一であってもよいし、同一でなくてもよい。
【0046】
図3では、一例として、同一の特性を有する16個の振動素子32Mが、4行4列の正方格子状に等間隔で配列された形態を示す。各振動素子32Mには、駆動部33から振動素子32Mごとの制御信号が入力され、複数の振動素子32Mの各々は、振動素子32Mごとに独立したタイミングおよび強さで振動可能である。振動の強さは、振動の周波数や振幅によって制御される。
【0047】
図4は、入力装置20がスマートフォンに具体化され、出力装置30が、二次元状に配列された複数の振動素子32Mを有する板状の装置に具体化される場合の、触覚情報通信装置10の一例を示す。
【0048】
入力装置20と出力装置30とは、入力装置20の背面に出力装置30が接するように、厚さ方向に沿って重ねられる。入力装置20の背面は、入力装置20における操作面20Sの反対側の面である。例えば、入力装置20の背面を覆うカバー40内に出力装置30が収容され、入力装置20の背面とカバー40との間に出力装置30が挟まれる。なお、出力装置30とカバー40とは一体となっていてもよい。
【0049】
このように、入力装置20の背後に出力装置30が配置される形態であれば、出力装置30の振動が入力装置20にも伝わる。そのため、ユーザが入力装置20に対する動作を行うために触覚情報通信装置10に触れている状態で、ユーザは、出力装置30の振動も知覚することができる。
【0050】
なお、触覚情報通信装置10が支持台上に置かれて使用される場合に、出力装置30の振動が支持台に伝わると、ユーザに伝わる振動が小さくなってしまう。これを避けるために、触覚情報通信装置10は、出力装置30の背後、すなわち、出力装置30と支持台とに挟まれる部分に、出力装置30からの振動を操作面20S側に跳ね返す部材を備えていることが好ましい。もしくは、出力装置30の背面、すなわち、出力装置30のなかで支持台に向けられる面が、上記振動を跳ね返す材料から構成されていてもよい。
【0051】
また、入力装置20を押圧する動作が入力装置20にて検出されやすいように、入力装置20が撓むことの可能な空間が入力装置20の背後に確保されていることが好ましい。
[伝送データの生成処理]
入力装置20の制御部23が行う伝送データDoの生成処理について、詳細に説明する。まず、図5を参照して、操作面20S内の領域に対して仮想的に設定される領域について説明する。
【0052】
図5が示すように、制御部23は、操作面20S内に、複数の基準領域Arを設定する。言い換えれば、操作面20S内の領域が、複数の基準領域Arに仮想的に分割される。
基準領域Arは、例えば、矩形状の領域である。複数の基準領域Arは、伝送データDoの送信先の出力装置30における複数の振動素子32Mの配列と一致した配列に並ぶ。すなわち、基準領域Arの個数、並ぶ方向、中心間の間隔は、振動素子32Mの個数、並ぶ方向、中心間の間隔とそれぞれ一致する。
【0053】
複数の基準領域Arが配置される領域の全体の大きさは、複数の振動素子32Mが配置される領域の全体の大きさと同等とされる。複数の基準領域Arは隙間なく配置され、各基準領域Arの大きさの関係には、各振動素子32Mにおける最大の振動強さの関係が反映されることが好ましい。上記最大の振動強さは、駆動部33からの駆動により振動素子32Mが発し得る振動の最大の強さである。例えば、各振動素子32Mが同一の特性を有し、各振動素子32Mの最大の振動強さに差がない場合には、各基準領域Arの大きさは一定とされる。また例えば、複数の振動素子32Mにおいて最大の振動強さが一定でない場合には、振動素子32Mにおける最大の振動強さが大きいほど、当該振動素子32Mの位置に対応する位置の基準領域Arが大きくされる。
【0054】
例えば、出力装置30において、同一の特性を有する16個の振動素子32Mが、4行4列の正方格子状に等間隔で配列される場合、図5が示すように、同一の大きさを有する16個の基準領域Arが、中心間が等間隔となるように4行4列の正方格子状に配列される。
【0055】
操作面20S内において、複数の基準領域Arは、ユーザの指等である対象物の接触を受け付ける範囲に配置されていればよい。例えば、複数の基準領域Arが操作面20S内の領域の全体に広がっていて、操作面20S内の位置の全てが、複数の基準領域Arのいずれかに属していてもよいし、あるいは、複数の基準領域Arが配置される領域は、操作面20S内の一部の領域であってもよい。
【0056】
また、制御部23は、操作面20Sへの対象物の接触に基づき検出される当該対象物の接触位置Ptに応じて、対象範囲Rgを設定する。対象範囲Rgは、接触位置Ptを中心とする矩形内の範囲である。接触位置Ptから対象範囲Rgの外縁までの距離W、すなわち、接触位置Ptから上記矩形の各辺までの距離Wは、予め設定される。例えば、距離Wは、対象範囲Rgが、接触位置Ptへの対象物の接触によって当該接触に起因した振動が伝わると予想される範囲になるように、設定される。
【0057】
図6を参照して、制御部23による伝送データDoの生成の手順を説明する。図6に示すフローは、操作面20Sに対する対象物の接触が検出されたとき、制御部23によって開始される。
【0058】
まず、ステップS10の処理として、入力データDiが生成される。入力データDiは、識別情報Id、接触位置Ptの座標、および、接触位置Ptでの押込み量である基本押込み量Fbの各々を示すデータを含む。識別情報Idは、操作面20Sに接触する対象物ごとの識別情報であって、例えば、複数の指が操作面20Sに接触することが想定される場合に、各指に対して割り当てられる識別情報である。複数の対象物の接触に対し、接触が検出された順に、識別情報Idとして、0から昇順で整数が割り当てられる。入力データDiは、識別情報Idごとに生成される。接触位置Ptの座標は、x座標とy座標とからなる二次元座標である。基本押込み量Fbは、検出可能な押込み量の最大値を1として規格化した値として算出され、すなわち、0以上1以下の数値で表される。
【0059】
続いて、ステップS11の処理として、対象範囲Rgが特定される。すなわち、入力データDiに含まれる接触位置Ptの座標と、予め定められている距離Wとから、対象範囲Rgに含まれる座標が算出される。
【0060】
続いて、ステップS12の処理として、対象範囲Rgに入る基準領域Arである対象領域Atが特定される。対象領域Atには、その全体が対象範囲Rgに入る基準領域Arと、その一部が対象範囲Rgに入る基準領域Arとが含まれ得る。例えば、先の図5に示した例では、基準領域Ar1とその周囲の9個の基準領域Arが、対象領域Atである。このうち、接触位置Ptを含む中央の基準領域Ar1は、その全体が対象範囲Rgに入り、基準領域Ar1を囲む8つの基準領域Arの各々は、その一部が対象範囲Rgに入る。なお、接触位置Ptの位置や対象範囲Rgの大きさによっては、その全体が対象範囲Rgに入る基準領域Arは存在しない場合もあり得る。
【0061】
続いて、ステップS13の処理として、各対象領域Atについて、対象範囲Rgに入る部分の対象範囲Rgの全体に占める面積の割合である面積比Teが、算出される。例えば、対象範囲Rgの半分を占める対象領域Atが存在した場合、この対象領域Atの面積比Teは、0.5である。
【0062】
続いて、ステップS14の処理として、各対象領域Atについて押込み量Ftが算出される。まず、接触位置Ptを含む対象領域Atの押込み量Ftには、入力データDiに含まれる基本押込み量Fbが適用される。そして、接触位置Ptを含む対象領域At以外の対象領域Atについては、基本押込み量Fbに、ステップS13で求めた各対象領域Atの面積比Teを乗じた値が、各対象領域Atの押込み量Ftとされる。
【0063】
続いて、ステップS15の処理として、伝送データDoが生成される。伝送データDoは、対象領域Atごとのデータ構造体から構成される。各データ構造体は、識別情報Id、複数の基準領域Ar内での対象領域Atの位置、および、対象領域Atの押込み量Ftの各々を示すデータを含む。すなわち、伝送データDoは、全体として、識別情報Id、複数の基準領域Ar内での各対象領域Atの位置、および、各対象領域Atの押込み量Ftの各々を示すデータを含む。
【0064】
複数の指が操作面20Sに接触する場合のように、複数の対象物が操作面20Sに接触する場合には、対象物の接触が検出されるごとに、ステップS10~ステップS15の処理が繰り返され、伝送データDoが生成される。
【0065】
ここで、複数の指が操作面20S内の近接した位置に接触する場合等には、互いに異なる対象物についての伝送データDoの生成のフローにて、同一の基準領域Arが対象領域Atとして特定される場合がある。すなわち、同一の基準領域Arについて、互いに異なる識別情報Idを含む複数のデータ構造体が生成される場合がある。この場合、識別情報Idとして最も若い番号を有するデータ構造体のみが送信対象として残される。すなわち、最も接触の検出が早い対象物の伝送データDoにのみ、当該基準領域Arである対象領域Atの位置および押込み量Ftが含められ、他の伝送データDoには、当該基準領域Arについての情報は含められない。
【0066】
また、1つの指が操作面20S上を動く場合のように、1つの対象物の接触位置が操作面20S内で移動する場合、接触位置Ptの含まれる基準領域Arが変わるごとに、ステップS10~ステップS15の処理が繰り返され、伝送データDoが生成される。
【0067】
ステップS15の処理の後、生成された伝送データDoは、ネットワーク通信部21aを介して、他の触覚情報通信装置10に送信される。例えば、ユーザの入力装置20に対する動作が、瞬間的に操作面20Sを触って操作面20Sから離れる第1の動作である場合、伝送データDoは、操作面20Sから対象物が離れたことが検出されたときに、送信される。
【0068】
また、ユーザの入力装置20に対する動作が、操作面20S上で対象物を動かす第2の動作である場合、接触位置Ptの含まれる基準領域Arが変わったことが検出されたときに、接触位置Ptが移動前の基準領域Ar内に位置するときに生成された伝送データDoが送信される。移動前の接触位置Ptを含む基準領域Arが第1の基準領域Arであり、移動後の接触位置Ptを含む基準領域Arが第2の基準領域Arであり、第1の基準領域Arと第2の基準領域Arとは互いに隣り合う。そして、第2の操作における対象物の移動の終点が検出されたとき、すなわち、操作面20Sから対象物が離れたことが検出されたときに、終点を接触位置Ptとして生成された伝送データDoが送信される。
【0069】
なお、ユーザの動作が第1の動作であるか第2の動作であるかは、タッチ検出部22にて検出される接触位置Ptの変化に基づいて、判定される。
[振動部の駆動処理]
出力装置30の駆動部33が行う振動部32の駆動処理について、詳細に説明する。図7に示すフローは、他の触覚情報通信装置10からの伝送データDoを、入力装置20を介して出力装置30が受信したときに、駆動部33によって開始される。
【0070】
まず、ステップS20の処理として、伝送データDoを構成するデータ構造体ごとに、対象領域Atに対応する振動素子32Mが特定される。言い換えれば、対象領域Atの位置に基づいて、各対象領域Atに対応する振動素子32Mが特定される。すなわち、複数の振動素子32Mのなかで、複数の基準領域Arのなかの対象領域Atの位置に対応する位置に配置されている振動素子32Mが、当該対象領域Atに対応する振動素子32Mとされる。例えば、対象領域Atが4行4列の正方格子における右上角部に位置する場合、4行4列の正方格子状に並ぶ複数の振動素子32Mのなかで右上角部に位置する振動素子32Mが、当該対象領域Atに対応する振動素子32Mとされる。
【0071】
続いて、ステップS21の処理として、各対象領域Atに対応する振動素子32Mに対し、対応する対象領域Atの押込み量Ftに応じた強さで振動素子32Mを振動させるための制御信号が、各振動素子32Mに対して一斉に送信される。すなわち、上記制御信号は、出力可能な最大の強さに対して、0以上1以下で表される押込み量Ftに応じた比率の強さで、振動素子32Mを振動させるための信号である。
【0072】
ステップS21の処理により、各対象領域Atに対応する振動素子32Mが、各対象領域Atの押込み量Ftに応じた強さで、一斉に振動する。すなわち、入力装置20における対象物の接触位置Ptおよびその周囲に対応する位置の振動素子32Mが、出力装置30にて振動する。
【0073】
出力装置30が伝送データDoを受信する度に、ステップS20およびステップS21の処理が行われる。これにより、例えば、入力装置20にて、複数の指が順に操作面20Sに接触する場合には、各指の接触順に従って、各指の接触位置に応じた位置の振動素子32Mが、出力装置30にて振動する。また、例えば、入力装置20にて、1本の指が操作面20S上を動く場合には、指の移動に従って振動の位置が動くように、出力装置30にて振動素子32Mが振動する。
【0074】
なお、複数の振動素子32Mの配列の軸方向と複数の基準領域Arの配列の軸方向とは、互いに独立して設定されていればよい。例えば、複数の振動素子32Mと複数の基準領域Arとの各々が二次元状に配列されているとき、振動素子32Mの並びにおける二次元の軸が延びる方向と、基準領域Arの並びにおける二次元の軸が延びる方向とは、操作面20S等の基準面に対して一致した方向である必要はない。具体的には、例えば、振動素子32Mの並びにおけるX方向が、操作面20Sに沿って右から左に進む方向であり、基準領域Arの並びにおけるX方向が、操作面20Sに沿って左から右に進む方向であり、振動素子32Mの並びにおけるY方向と基準領域Arの並びにおけるY方向とが、操作面20Sに沿って下から上に進む方向であるとする。この場合、第1触覚情報通信装置10Aにて操作面20Sと対向する位置から見て右上角部に位置する基準領域Arには、第2触覚情報通信装置10Bにて操作面20Sと対向する位置から見て左上角部に位置する振動素子32Mが対応する。そして、操作面20Sと対向する位置から見て、第1触覚情報通信装置10Aにおける操作面20S上での対象物の移動の軌跡と、第2触覚情報通信装置10Bにおける振動位置の移動の軌跡は、線対称な形状を描く。
【0075】
このように、複数の振動素子32Mと複数の基準領域Arとは、それぞれの配列の軸方向を基準として、一致する配列に並んでいればよく、各配列の軸方向は、操作面20S等の基準面に対して一致していてもよいし、異なっていてもよい。複数の振動素子32Mと複数の基準領域Arとが、それぞれの配列の軸方向を基準として、一致する配列に並んでいるとき、これらの配列は互いに対応する配列であり、1つの振動素子32Mに対して1つの基準領域Arが対応付けられる。振動素子32Mと基準領域Arとの対応付けは、座標や識別情報を用いて管理されていればよい。複数の基準領域Arのなかで1つの基準領域Arを特定する識別情報は、すなわち、複数の基準領域Arのなかでの上記基準領域Arの位置に割り当てられた識別情報と捉えられる。したがって、基準領域Arに割り当てられている座標や識別番号は、複数の基準領域Arのなかの対象領域Atの位置を示すデータとして機能する。
【0076】
[作用]
本実施形態によれば、例えば、第1のユーザが第1触覚情報通信装置10Aの入力装置20を触ったとき、この接触の位置に対応する位置の振動素子32Mが、第2触覚情報通信装置10Bの出力装置30にて振動する。したがって、上記出力装置30に触れている第2のユーザは、上記入力装置20に対する第1のユーザの動作に沿った振動を知覚することができる。さらに、上記振動素子32Mは、第1のユーザによる接触時の押圧の強さに応じた強さで振動する。したがって、第2のユーザは、第1のユーザの動作によって生じる振動により似た振動を知覚することができる。これにより、触覚を利用した情報の伝達が可能となる。
【0077】
また、接触位置Ptを含む所定の大きさの対象範囲Rgを用い、対象範囲Rgに入る基準領域Arに対応する振動素子32Mが振動される。すなわち、接触位置Ptを含む基準領域Arに対応する振動素子32Mのみでなく、その周辺の振動素子32Mも振動される。そして、周辺の振動素子32Mの振動の強さは、基本押込み量Fbに基づき、基準領域Arにおける対象範囲Rgに入る部分の面積比率に応じて設定される。そのため、第1のユーザの動作によって生じる振動により近しい自然な振動が出力装置30にて出力される。
【0078】
このように、第2のユーザは、第1のユーザの動作によって生じる振動を模した振動を感じることにより、第1のユーザから直接に触られているかのような臨場感を感じつつ、第1のユーザとコミュニケーションを取ることができる。また、反対に、第2のユーザが第2触覚情報通信装置10Bの入力装置20を触ったとき、この接触の位置および強さに応じて、第1触覚情報通信装置10Aの出力装置30が振動し、この振動が第1のユーザに知覚される。これにより、第1のユーザも、第2のユーザの動作によって生じる振動を模した振動を臨場感をもって感じつつ、第2のユーザとコミュニケーションを取ることができる。したがって、ユーザ間のコミュニケーションにおける臨場感の向上が可能であり、また、画像や音声では伝えることのできない動作およびそれに伴う意志や感情をユーザ間で伝えることも可能となるため、コミュニケーションの目的の多様化も可能である。また、伝送データDoは、映像データと比較してデータ容量が小さいため、映像によるコミュニケーションよりも低い通信負荷で、遠隔コミュニケーションが実現できる。
【0079】
また、複数の対象物が操作面20S内の近接した位置に接触する場合等に、互いに異なる対象物についての伝送データDoの生成のフローにて、同一の基準領域Arが対象領域Atとして特定される場合、最も検出が早い対象物の伝送データDoにのみ、当該基準領域Arについての情報が含められる。すなわち、各振動素子32Mについて、接触が早い対象物に対応する振動が優先して実行される。そのため、複数の対象物の間の位置に対応する振動素子32Mが重複して過剰に振動されることが抑えられ、複数の対象物を操作面20Sに接触させる動作での振動により近しい自然な振動が出力装置30にて出力される。人間は、自身への到達のタイミングが早い振動ほど明瞭に感じる傾向があるため、早いタイミングの振動が優先して実行されることで、人間の知覚傾向に応じた無駄のない振動の出力が可能であるとともに、振動の出力のための処理が複雑になることが抑えられる。
【0080】
なお、接触の早さに代えて、接触の強さが基準とされてもよい。すなわち、各振動素子32Mについて、接触時の基本押込み量Fbが大きい対象物に対応する振動が優先して実行されてもよい。
【0081】
また、ユーザの入力装置20に対する動作が、タップ等の上記第1の動作である場合、操作面20Sから対象物が離れたことが検出されたときに、伝送データDoが送信される。これにより、第1の動作の流れに適したタイミングで出力装置30が振動するため、出力装置30から振動を受けるユーザが、第1の動作を把握しやすい。
【0082】
また、ユーザの入力装置20に対する動作が、スワイプ等の上記第2の動作である場合、接触位置Ptの含まれる基準領域Arが変わったことが検出されたときに、伝送データDoが送信される。これにより、第2の動作の流れに適したタイミングで、出力装置30が振動してその振動位置が移動するため、出力装置30から振動を受けるユーザが、第2の動作を把握しやすい。
【0083】
なお、一方の触覚情報通信装置10から他方の触覚情報通信装置10へ伝送データDoが送信され続けると、通信の遅延に起因した出力装置30での振動の出力の遅れが生じる場合がある。また、出力装置30が振動し続けていると、ユーザは、振動の位置や大きさを知覚し難くなる。こうした問題の改善のために、入力装置20は、ユーザの動作を受け付けて伝送データDoの生成および送信を行う動作期間と、動作の受け付けを停止する停止期間とを、交互に繰り返すことが好ましい。停止期間には、伝送データDoの生成および送信は行われず、例えば、入力装置20が保持している各パラメータの初期化が行われる。動作期間と停止期間との各々は、例えば1秒等の短期間に設定される。
【0084】
また、伝送データDoのデータ容量の削減のために、隣り合う対象領域Atの押込み量Ftを参照して、例えば、一方の対象領域Atに対応する振動素子32Mの振動によって、他方の対象領域Atに対応する振動素子32Mの振動を補填できると判定される場合には、他方の対象領域Atについての情報、すなわち、当該対象領域Atのデータ構造体が伝送データDoから削除されてもよい。こうした判定には、データの最適化のための学習モデルが用いられることが好ましい。
【0085】
[適用例・変形例]
触覚情報通信装置10の具体的な適用例および変形例を説明する。
<適用例1>
適用例1において、触覚情報通信装置10は、遠隔でのハイタッチに利用される。触覚情報通信装置10において、出力装置30は入力装置20の背後に配置され、触覚情報通信装置10の全体が、例えば、手を模した立体物に形成される。第1のユーザが、第1触覚情報通信装置10Aである手の模型に対して自分の手を合わせるように、第1触覚情報通信装置10Aを叩くと、この動作に応じて第2触覚情報通信装置10Bが振動し、この振動を第2のユーザが感じる。反対に、第2のユーザが、第2触覚情報通信装置10Bである手の模型に対して自分の手を合わせるように、第2触覚情報通信装置10Bを叩くと、この動作に応じて第1触覚情報通信装置10Aが振動し、この振動を第1のユーザが感じる。
【0086】
例えば、触覚情報通信装置10と共に、ネットワークに接続された表示装置および撮影装置が用いられる。そして、撮影された第2のユーザの様子が、第1のユーザの付近の表示装置に表示され、撮影された第1のユーザの様子が、第2のユーザの付近の表示装置に表示される。第1のユーザと第2のユーザとは、表示装置でお互いの様子を確認しつつ、タイミングを合わせて、触覚情報通信装置10に対する上記の動作を行う。これにより、第1のユーザと第2のユーザとは、触覚情報通信装置10に対する自分の動作と前後して、相手の動作に基づく触覚情報通信装置10からの振動を受ける。その結果、第1のユーザと第2のユーザとは、お互いに手を合わせてハイタッチをしているかのように感じられ、臨場感の高いコミュニケーションが可能である。
【0087】
図8が示すように、ハイタッチに用いられる場合、出力装置30において、振動素子32Mは、例えば、ユーザの人差し指と中指と薬指とに沿った3列に配列される。そして、中央の列の各振動素子32Mにおける最大の振動強さは、当該振動素子32Mに隣接する端部の列の振動素子32Mにおける最大の振動強さよりも大きいことが好ましい。また、各列内において、中央の振動素子32Mにおける最大の振動強さは、端部の振動素子32Mにおける最大の振動強さよりも大きいことが好ましい。図8では、最大の振動強さが大きいほど、振動素子32Mを示す円を大きく示している。
【0088】
そして、図9が示すように、入力装置20においては、振動素子32Mの配列に対応する配列の基準領域Arが設定される。縦に延びる指に沿って配置される振動素子32Mとの対応のためには、基準領域Arは縦長の矩形状であることが好ましく、対象範囲Rgも縦長の矩形状であることが好ましい。接触位置Ptから対象範囲Rgの外縁である上記矩形の長辺までの距離Wおよび短辺までの距離Hの各々は、予め設定されている。また、基準領域Arの大きさは、対応する振動素子32Mにおける最大の振動強さに応じた大きさであることが好ましい。すなわち、中央の列の各基準領域Arは、当該基準領域Arと隣接する端部の列の基準領域Arよりも大きく、各列内において、中央の基準領域Arの大きさは、端部の基準領域Arよりも大きいことが好ましい。
【0089】
入力装置20と出力装置30とは、基準領域Arの配列と振動素子32Mの配列とが入力装置20と出力装置30との重なる方向に沿って重なるように、配置されていることが好ましい。
【0090】
上記構成では、ハイタッチのための動作にて強く衝撃を受ける位置の基準領域Arに対応する振動素子32Mが大きく振動しやすい。したがって、ハイタッチのための動作よって生じる振動により近しい振動が出力装置30にて出力される。そのため、ユーザが、出力装置30から感じる振動を通じて、相手の動作を把握しやすいため、円滑なコミュニケーションが可能であるとともに、臨場感も高められる。
【0091】
以上、適用例1として例示したように、触覚情報通信装置10の外形は、用途に応じた形状を有していればよい。触覚情報通信装置10が、動作の対象となる例えば身体の一部を模した形状を有していれば、触覚情報通信装置10に対して動作を行うこと、および、動作に起因した振動を触覚情報通信装置10から受けることについてのユーザの違和感が低減できる。そのため、円滑なコミュニケーションが可能であるとともに、臨場感も高められる。
【0092】
なお、操作面20Sに接する対象物は、指に限らず、掌の一部や全部であってもよい。また、操作面20Sは曲面であってもよい。すなわち、複数の基準領域Arと複数の振動素子32Mとは、曲面に沿って並んでいてもよい。また、触覚情報通信装置10において、入力装置20と出力装置30とは一体に構成されていてもよい。
【0093】
また、適用例1として例示したように、触覚情報通信装置10が、第1のユーザに、第2のユーザの画像および音声を伝送する装置、および、第2のユーザに、第1のユーザの画像および音声を伝送する装置と共に用いられてもよい。こうした構成によれば、第1のユーザと第2のユーザとはお互いの様子を確認しながら動作を行うことができるため、円滑なコミュニケーションが可能である。
【0094】
また、適用例1として例示したように、複数の振動素子32Mには、最大の振動強さが異なる振動素子32Mが含まれてもよいし、複数の基準領域Arには、互いに異なる形状や大きさの基準領域Arが含まれてもよい。例えば、図10が示すように、複数の基準領域Arおよび振動素子32Mの配列は、四分木分割等の手法を利用して設定されてもよい。また、対象範囲Rgの形状も、矩形に限らず、図10に示すように円形であってもよいし、矩形や円形以外の形状であってもよい。
【0095】
<適用例2>
入力装置20は、出力装置30と組み合わされずに、動作を行うユーザである動作者に単独で用いられてもよい。また、出力装置30は、入力装置20と組み合わされずに、振動を受けるユーザである受振対象に単独で用いられてもよい。すなわち、動作者が位置する空間に入力装置20が配置され、受振対象が位置する空間に出力装置30が配置され、これらの入力装置20と出力装置30とから、触覚情報通信システムが構成される。この場合、出力装置30は、近距離通信部31aに代えて、ネットワークへの接続処理を行うネットワーク通信部を備え、ネットワークを介して、入力装置20から伝送データDoを受信する。また、出力装置30は、受振対象に取り付けられていてもよい。
【0096】
上記構成の一例として、適用例2の触覚情報通信システムは、遠隔での動物との触れ合いに用いられる。適用例2において、出力装置30は、首輪状の外形を有し、猫や犬等の動物に取り付けられている。こうした出力装置30においては、図11が示すように、1列に並ぶ振動素子32Mの配列が採用されることが好ましい。
【0097】
入力装置20は、首輪状の外形を有し、出力装置30が取り付けられている動物を模したぬいぐるみ等に取り付けられている。動作者が動物を撫でるように、入力装置20を触ると、この動作に応じて出力装置30が振動し、この振動を受振対象である動物が感じる。これにより、動作者は、離れた空間にいる動物とコミュニケーションを取ることができる。したがって、動物アレルギーがあるユーザや、ペットを飼う環境を有していないユーザも、ペットを飼っているように動物をかまうことができる。また、互いに離れた空間にいる複数のユーザで、受信対象をペットとして共有することもできる。なお、出力装置30が取り付けられている動物の画像や音声を伝送する装置が、動作者の付近に配置され、動作者は、動物の反応を見ながら動作を行うことが好ましい。
【0098】
なお、出力装置30が取り付けられる受振対象は人間であってもよく、すなわち、出力装置30は、ウェアラブル型の装置であってもよい。例えば、出力装置30は、受振対象の腕や脚に取り付けられ、動作者が入力装置20に対して動作を行うことで、出力装置30の振動を通じて、受振対象に身体の動きが指示されてもよい。この場合、入力装置20は、人形に対し、腕や脚等、出力装置30の取付部位に対応する部位に取り付けられる。もしくは、入力装置20が人型の外形を有して、出力装置30の取付部位に対応する部位に操作面20Sを有していてもよい。上記構成によれば、動作者は、離れた空間にいる受振対象に対して、動きの指導を行うこともできる。こうした場合も、受振対象の画像や音声を伝送する装置が、動作者の付近に配置され、動作者は、受振対象の状況を見ながら動作を行うことが好ましい。
【0099】
また、入力装置20がスマートフォンやタブレット端末であり、操作面20Sに画像が表示されてもよい。例えば、受振対象を模した人物の画像が操作面20Sに表示され、当該画像のなかで、出力装置30の取付部位に対応する部位、例えば、腕が表示されている領域に、基準領域Arが、出力装置30での振動素子32Mの配列に対応した配列で設定される。こうした構成によれば、動作者が、入力装置20に対し、画像内での腕を触る動作を行うと、この動作に応じて、出力装置30が振動し、受振対象の腕が振動を受ける。
【0100】
<他の変形例>
図12が示すように、複数の振動素子32Mは、三次元状の配列を有していてもよい。すなわち、複数の32Mは、所定の体積を有する仮想的な立体の内部に配置され、三次元空間を規定する3軸の各々に沿って並んでいてもよい。
【0101】
・対象領域Atは、接触位置Ptからの距離によって規定される対象範囲Rgとは異なる基準に基づき特定されてもよい。また、対象領域Atごとの押込み量Ftの設定方法は、上記実施形態とは異なっていてもよい。すなわち、押込み量Ftは、面積比Teに応じて設定されなくてもよい。例えば、対象領域Atである基準領域Arを示すデータと、対象領域Atごとの押込み量Ftを示すデータとを含むデータセットが複数用意されて予め入力装置20に記憶されており、接触位置Ptおよび基本押込み量Fbに応じて、上記データセットのいずれかが選択されてもよい。この場合、対象領域Atは、接触位置Ptを含む所定の範囲に入る基準領域Arであって、この所定の範囲はデータセットごとに決まっている。
【0102】
また、振動素子32Mの振動の強さは、対象領域Atごとの押込み量Ftに依らず、予め定められた強さとされてもよい。例えば、スワイプ等の上記第2の動作においては、動作の始点および終点でのみ基本押込み量Fbが検出されて、始点および終点に対応する位置では、対象領域Atごとの押込み量Ftに応じた強さで振動素子32Mが振動される。そして、始点と終点との間に対応する位置では、予め定められた強さ、もしくは、始点の基本押込み量Fbに応じた強さで、各対象領域Atに対応する振動素子32Mが振動される。また例えば、振動素子32Mは、接触位置Ptおよび基本押込み量Fbに応じて予め定められている強さで振動されてもよい。
【0103】
・入力装置20は、基準領域Arの配列を規定するデータと、当該配列に適した対象範囲Rgの大きさを規定するデータとを含む複数の設定用データを記憶していてもよい。基準領域Arの配列は、設定用データごとに異なる。すなわち、複数の設定用データは、互いに異なる振動素子32Mの配列を有する出力装置30に対応するデータである。入力装置20は、伝送データDoの送信相手である出力装置30での振動素子32Mの配列に応じて、複数の設定用データのなかから選択したデータを用いて、基準領域Arおよび対象範囲Rgを設定する。言い換えれば、入力装置20では、出力装置30での振動素子32Mの配列に応じて、入力装置20に適用される基準領域Arの配列および対象範囲Rgの大きさを切り替え可能である。出力装置30は、当該出力装置30での振動素子32Mの配列を示すパラメータを保持し、入力装置20との接続時に当該パラメータを入力装置20に受け渡す。このパラメータに基づいて、入力装置20は設定用データを選択する。なお、第1触覚情報通信装置10Aの出力装置30と、第2触覚情報通信装置10Bの出力装置30とが、同一の配列の振動素子32Mを備える場合には、第1触覚情報通信装置10Aの入力装置20は、第1触覚情報通信装置10Aの出力装置30との接続時に、当該出力装置30から上記パラメータを受け取ってもよい。
【0104】
・触覚情報通信システムへの入力対象となる動作は、意志や感情の伝達相手への接触を伴う動作であれば、特に限定されない。また、触覚情報通信システムの用途も特に限定されず、娯楽、交遊、学習、業務等の各種の用途に用いられればよい。
【0105】
以上説明したように、上記実施形態および適用例、変形例によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)入力装置20の制御部23は、操作面20S内の領域を、出力装置30における複数の振動素子32Mの配列に応じた配列で並ぶ複数の基準領域Arに仮想的に分割し、接触位置Ptを含む所定の範囲に入る基準領域Arである対象領域Atを特定して、複数の基準領域Ar内での対象領域Atの位置を示すデータを含む伝送データDoを生成する。出力装置30の駆動部33は、伝送データDoに基づき、複数の振動素子32Mのなかで、複数の基準領域Ar内での対象領域Atの位置に対応する位置に配置された振動素子32Mを振動させる。こうした構成によれば、第1のユーザが入力装置20を触ったとき、この接触の位置に対応する位置の振動素子32Mが出力装置30にて振動する。したがって、出力装置30に触れている第2のユーザは、入力装置20に対する第1のユーザの動作に沿った振動を知覚することができる。これにより、触覚を利用した情報の伝達が可能となる。
【0106】
(2)制御部23は、接触位置Ptでの基本押込み量Fbに基づき、対象領域Atごとの押込み量Ftを設定し、伝送データDoに、対象領域Atごとの押込み量Ftを示すデータを含める。駆動部33は、複数の振動素子32Mのなかで、複数の基準領域Ar内での対象領域Atの位置に対応する位置に配置された振動素子32Mを、当該対象領域Atの押込み量Ftに応じた強さで振動させる。こうした構成によれば、振動素子32Mは、第1のユーザによる入力装置20への接触時の押圧の強さに応じた強さで振動する。したがって、第2のユーザは、第1のユーザの動作によって生じる振動により似た振動を知覚することができる。これにより、ユーザ間のコミュニケーションにおける臨場感を高めることができる。
【0107】
(3)制御部23は、対象領域Atにおける上記所定の範囲に入る部分の、当該範囲に対する面積比Teに応じて、対象領域Atの押込み量Ftを設定する。こうした構成によれば、接触位置Ptの周囲の領域に対応する振動素子32Mの振動の強さのバランスが適切に制御され、第2のユーザは、第1のユーザの動作によって生じる振動により近しい自然な振動を知覚することができる。したがって、ユーザ間のコミュニケーションにおける臨場感を高めることができる。
【0108】
(4)制御部23は、接触位置Ptが含まれる基準領域Arが、第1の基準領域Arから、第1の基準領域Arに隣接する第2の基準領域Arに変わったとき、接触位置Ptが第1の基準領域Ar内に位置したときの当該接触位置Ptに基づいて生成した伝送データDoを、出力装置30に向けたデータとして、ネットワーク通信部21aに送信させる。こうした構成によれば、第1のユーザが操作面20S上で対象物を動かす動作を行ったとき、この動作の流れに適したタイミングで、出力装置30が振動してその振動位置が移動する。そのため、出力装置30から振動を受ける第2のユーザが、第1のユーザの動作を把握しやすい。
【0109】
(5)複数の振動素子32Mが二次元状に配列されている構成では、複数の振動素子32Mが一次元状に配列されている構成と比較して、多様な振動分布での出力装置30の振動が可能である。したがって、触覚情報通信システムを用いて多様な動作を伝えることができる。
【0110】
(6)複数の振動素子32Mが三次元状に配列されている構成では、立体的な振動分布での出力装置30の振動が可能である。したがって、触覚情報通信システムを用いてより多様な動作を伝えることができる。
【0111】
(7)複数の基準領域Arが一定の大きさを有する構成では、操作面20S内での押圧力の差が小さい動作を伝えることに適した入力装置20が実現される。また、複数の振動素子32Mにおける最大の振動強さが一定である構成では、位置による振動の強弱の差が小さい振動分布で、出力装置30の振動が可能である。したがって、操作面20S内での押圧力の差が小さい動作を伝えることに適した出力装置30が実現される。
【0112】
(8)複数の基準領域Arが、互いに異なる大きさの基準領域Arを含む構成では、操作面20S内での押圧力の差が大きい動作を伝えることに適した入力装置20が実現できる。また、複数の振動素子32Mに、最大の振動強さが互いに異なる振動素子32Mが含まれる構成では、位置による振動の強弱の差が大きい振動分布で、出力装置30の振動が可能である。したがって、操作面20S内での押圧力の差が大きい動作を伝えることに適した出力装置30が実現される。
【0113】
(9)触覚情報通信装置10において、出力装置30は、生成した伝送データDoを他の出力装置30に送信する入力装置20に重ねられている。こうした構成によれば、出力装置30に触れる第2のユーザは、出力装置30から振動を受けることと、入力装置20に対する動作とを、近しいタイミングで行うことができる。したがって、双方向な情報の伝達が可能である。
【符号の説明】
【0114】
Ar…基準領域、At…対象領域、Di…入力データ、Do…伝送データ、Fb…基本押込み量、Ft…押込み量、Pt…接触位置、Rg…対象範囲、10,10A,10B…触覚情報通信装置、20…入力装置、20S…操作面、21…通信部、21a…ネットワーク通信部、21b…近距離通信部、22…タッチ検出部、23…制御部、24…記憶部、30…出力装置、31…通信部、31a…近距離通信部、32…振動部、32M…振動素子、33…駆動部。
図1
図2
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図10
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図12