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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】樹脂含浸化粧紙、及び樹脂含浸化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/04 20060101AFI20231113BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20231113BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231113BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231113BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20231113BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B32B27/04 A
B32B5/24 101
B32B27/00 A
B32B27/30 A
B32B27/38
B32B27/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019199943
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021070296
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】原田 千穂
(72)【発明者】
【氏名】伊瀬谷 隆弘
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-016846(JP,A)
【文献】特開平10-016374(JP,A)
【文献】特開2015-174242(JP,A)
【文献】特開平11-91060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D06N 7/00-7/06
D21H 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧紙の全体に含浸樹脂を含浸させた樹脂含浸化粧紙であって、
前記化粧紙は、
原紙と、
前記原紙の表面側に設けた絵柄模様層と、
前記絵柄模様層の表面上、又は前記絵柄模様層中に配置された発泡剤によって形成された発泡樹脂層と、
前記発泡樹脂層の表面上に設けた熱硬化性樹脂層と、を備え、
前記熱硬化性樹脂層は、エポキシ系樹脂、カゼイン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂の少なくとも一つを含むことを特徴とする樹脂含浸化粧紙。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂層は、厚さが1μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂含浸化粧紙。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂層は、厚さが5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂含浸化粧紙。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂層は、前記発泡樹脂層の表面積のうち30%以上の範囲に設けられることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の樹脂含浸化粧紙。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂層は、前記発泡樹脂層の表面積のうち50%以上の範囲に設けられることを特徴とする請求項4に記載の樹脂含浸化粧紙。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂層は、着色インキを含有することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の樹脂含浸化粧紙。
【請求項7】
前記発泡剤は、発泡後の平均粒径が15μm以上250μm以下であり、発泡開始温度が100℃以上220℃以下であることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の樹脂含浸化粧紙。
【請求項8】
前記絵柄模様層が形成する絵柄と前記発泡樹脂層の配置位置とが同調していることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の樹脂含浸化粧紙。
【請求項9】
前記発泡剤は、発泡前の平均粒径が前記絵柄模様層の層厚の2/3倍以上50倍以下であることを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の樹脂含浸化粧紙。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の樹脂含浸化粧紙と、
前記樹脂含浸化粧紙に一体化された基材と、を備えることを特徴とする樹脂含浸化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂含浸化粧紙、及び樹脂含浸化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂が含浸された樹脂含浸化粧紙と、基材との積層体に、金属板を当接して加熱加圧成型を行って、樹脂含浸化粧紙と基材とが一体化された樹脂含浸化粧板を得る、樹脂含浸化粧板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の樹脂含浸化粧板の製造方法では、金属板にエンボス形状を設けて、樹脂含浸化粧板の表面に凹凸模様を付与して、手触り感を付与するようになっている。また、エンボス形状の粗密度合を調整して、グロスマット表現を付与することもできる。
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂含浸化粧板の製造方法では、付与しようとする凹凸模様毎に金属板を用意する必要があり、コストが増大する可能性がある。そのため、発泡樹脂層を設けることで凹凸模様を付与することが考えられる。しかしながら、凹凸模様の盛り上げ部が保護されていないと、耐汚染性及び長期保管後の意匠安定性が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-262956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたもので、コストを抑えつつグロスマット表現及び手触り感に優れ、且つ耐汚染性及び長期保管後の意匠安定性を向上させた樹脂含浸化粧紙及び樹脂含浸化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る樹脂含浸化粧紙は、化粧紙に含浸樹脂を含浸させた樹脂含浸化粧紙であって、化粧紙は、原紙と、原紙の表面側に設けた絵柄模様層と、絵柄模様層の表面上、又は絵柄模様層中に配置された発泡剤によって形成された発泡樹脂層と、発泡樹脂層の表面上に設けた熱硬化性樹脂層と、を備え、熱硬化性樹脂層は、エポキシ系樹脂、カゼイン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂の少なくとも一つを含む。
本発明の他の態様に係る樹脂含浸化粧板は、樹脂含浸化粧紙と、樹脂含浸化粧紙に一体化された基材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加熱加圧成型によって発泡剤を発泡でき、樹脂含浸化粧紙の表面に凹凸模様を適切に形成できる。凹凸模様毎の金属板を用意する必要がないため、コストを抑えつつ、グロスマット表現及び手触り感に優れた樹脂含浸化粧紙及び樹脂含浸化粧板を提供することができる。また、発泡樹脂層の表面上に、エポキシ系樹脂、カゼイン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂の少なくとも一つを含む熱硬化性樹脂層を設けたことで、凹凸模様の盛り上げ部を保護することができる。これにより、耐汚染性及び長期保管後の意匠安定性を向上させた樹脂含浸化粧紙及び樹脂含浸化粧板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】加熱加圧成型後の樹脂含浸化粧板を表す断面図である。
図2】加熱加圧成型前の樹脂含浸化粧板を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る化粧紙、樹脂含浸化粧紙及び樹脂含浸化粧板について、図面を参照しつつ説明する。本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識を基に設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も、本発明の範囲に含まれるものである。また、各図面は、理解を容易にするため適宜誇張して表現している。
【0009】
(構成)
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る樹脂含浸化粧板1は、樹脂含浸化粧紙2と基材3との積層体に加熱加圧成型を行い、樹脂含浸化粧紙2と基材3とを一体化させてなる化粧板である。すなわち、樹脂含浸化粧板1は、基材3と、基材3の表面3a側に設けられた樹脂含浸化粧紙2と、を備えている。本発明の実施形態に係る樹脂含浸化粧板1は、例えば、建築物の床面、壁面、天井等の内装、家具、各種キャビネット等の表面装飾材料、建具の表面化粧、車両内装等に用いられる樹脂含浸化粧板である。図1は、加熱加圧成型後の樹脂含浸化粧板1を示し、図2は、加熱加圧成型前の樹脂含浸化粧板1を示す。
【0010】
(基材)
基材3の種類は、特に制限されるものではなく、目的とする樹脂含浸化粧板1の用途に応じて、任意の基材を用いることができる。例えば、木材単板、合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板、硬質繊維板等の木質基材や、板紙、織布、不織布、樹脂含浸紙、樹脂含浸布等の繊維質基材、石膏ボード、スレート板、珪酸カルシウム板、スラグ石膏板、木毛セメント板、スラグセメント板、軽量気泡コンクリート板、ガラス繊維強化コンクリート板等の無機質基材、鋼板、真鍮板、アルミニウム板、ジュラルミン板、ステンレス板等の金属基材、アクリル樹脂板、スチロール樹脂板、ABS(Acrylonitrile butadiene styrene)樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、ナイロン樹脂板、ポリスチレン樹脂板、ポリプロピレン樹脂板、ポリエステル樹脂板、ガラス繊維強化プラスチック板等の合成樹脂基材等或いはこれらから選ばれる2種以上の複合体又は積層体等を採用できる。
【0011】
(樹脂含浸化粧紙)
本発明の実施形態に係る樹脂含浸化粧紙2は、化粧紙4の全体に含浸樹脂5を含浸させた後、乾燥させて形成されている。化粧紙4は、原紙6と、絵柄模様層7と、発泡樹脂層8と、熱硬化性樹脂層9と、を備える。絵柄模様層7は、原紙6の表面6a上に設けられている。発泡樹脂層8は、絵柄模様層7の表面7a上、又は絵柄模様層7中に配置された発泡剤によって形成されている。図1では、絵柄模様層7の表面7a上に配置された発泡剤によって発泡樹脂層8を形成した例を示している。熱硬化性樹脂層9は、発泡樹脂層8の表面8a上に設けられている。
【0012】
(原紙)
原紙6としては、含浸樹脂5の含浸が可能な吸水性のよい紙等の繊維質シート状体を用いることができる。例えば、薄葉紙、チタン紙、上質紙、晒又は未晒クラフト紙等を採用できる。特に、印刷適性と樹脂含浸適性との両面を考慮すると、チタン紙が最も好適である。また、基材3の表面3aの質感を活かす場合には、含浸樹脂5の含浸により透明化する性質を有する、所謂透明紙を用いることが好ましい。原紙6の厚さは、特に制限されるものではないが、坪量20g/m以上200g/m以下の範囲が好ましい。
【0013】
(絵柄模様層)
絵柄模様層7は、樹脂含浸化粧紙2に絵柄模様による意匠性を付与するための層である。絵柄模様層7は、染料又は顔料等の着色剤を適当なバインダー樹脂とともに希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキ等を用いて形成される。印刷インキの種類は、特に制限されるものではなく、油性インキでもよいし、水性インキであってもよい。すなわち、印刷インキとしては、撥液性を有しない、通常の印刷インキを用いることができる。
特に、含浸樹脂5の含浸適性を考慮すると、水性インキが最も好適である。水性インキは、油性インキと比較して、含浸樹脂の水溶液との馴染みがよい。それゆえ、水性インキを用いた場合、樹脂含浸化粧板1製造時の含浸工程において、化粧紙4に含浸樹脂5を迅速且つ均一に含浸でき、さらに、含浸樹脂5との一体化によって優れた絵柄模様層7に強度を発現できる。また、水性インキの種類は、特に制限されるものではないが、カゼイン、エマルジョン樹脂を主成分とするバインダー樹脂を含むものが好ましい。
【0014】
このようなバインダー樹脂は、インキの印刷後に乾燥工程を経ることによって、難水溶化する性質を有している。それゆえ、このようなバインダー樹脂を含むバインダー樹脂を用いた場合、樹脂含浸化粧板1製造時の樹脂含浸工程において、含浸樹脂5の水溶液に絵柄模様層7が再溶解し難く、絵柄模様を保持でき、さらに含浸樹脂5の汚染を防止できる。
エマルジョン樹脂としては、例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、スチレン系、ウレタン系等を採用できる。また、バインダー樹脂には、カゼイン、エマルジョン樹脂の他に、インキの安定性を向上させるために、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の水溶性樹脂や多糖類、セルロース誘導体等の水溶性高分子等を併用してもよい。
【0015】
絵柄模様層7の形成方法は、特に制限されるものではなく、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、インクジェット印刷法等、任意の印刷方法を用いることができる。また絵柄模様層7と原紙6との層間に、下地着色を目的としたベタインキ層を設けてもよく、ベタインキ層を設ける場合には、ベタインキ層の形成方法として、上記各種印刷方法の他、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、スプレーコート法、リップコート法、ダイコート法等、任意のコーティング方法を用いることもできる。
絵柄模様層7が形成する絵柄の種類は、特に制限されるものではなく、目的とする樹脂含浸化粧板1の用途に応じて、任意の絵柄を用いることができる。例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学図形、文字、記号、単色無地等、或いはこれらから選ばれる2種以上の組み合わせ等を採用できる。
【0016】
(発泡樹脂層)
発泡樹脂層8は、樹脂含浸化粧紙2の表面の凹凸模様10によるグロスマット表現及び手触り感を付与するための層である。発泡剤の種類は、特に制限されるものではなく、任意の発泡剤を用いることができる。例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド等のアゾ系、オキシベンゼンスルホニルヒドラジド、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系等の熱分解型の化学発泡剤、マイクロカプセル発泡剤等を採用できる。
特に、マイクロカプセル発泡剤が最も好適である。マイクロカプセル発泡剤は、カプセルと、カプセルに封入された揮発物質とを有している。そして、マイクロカプセル発泡剤は、揮発物質が揮発してカプセルを膨張させることで、発泡状態となる。カプセルの材料としては、例えば、塩化ビニリデンーアクリルニトリル共重合体等を用いることができる。また、揮発物質の材料としては、例えば、脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0017】
発泡剤としては、発泡前の平均粒径が絵柄模様層7の層厚の2/3倍以上50倍以下であるものが好ましい。絵柄模様層7の層厚の2/3倍未満であると、グロスマット感や手触り感が弱くなる可能性がある。一方、絵柄模様層7の層厚の50倍より大きくなると、発泡後の発泡樹脂層8が化粧紙4から脱落等して耐傷付性が弱くなる可能性がある。ここで、平均粒径は、顕微鏡観察による平均粒径である。顕微鏡観察による平均粒径は、例えば、発泡剤を顕微鏡観察して、画像処理ソフト等により、顕微鏡観察した発泡剤の粒径を100個測定し、測定結果を個数平均することにより得られる。なお、発泡剤の粒径としては、発泡剤の粒子の長軸径と短軸径との平均値を採用できる。
【0018】
発泡剤としては、発泡後の平均粒径が15μm以上250μm以下となるものが好ましい。15μm未満であると、グロスマット感や手触り感が弱くなる可能性がある。一方、250μmより大きくなると発泡後の発泡樹脂層8が化粧紙4から脱落等して耐傷付性が弱くなる可能性がある。より好適なのは30μm以上200μm以下である。ここで、発泡後の発泡剤の平均粒径は、発泡前の発泡剤の平均粒径と同様に、顕微鏡観察による平均粒径である。また、平均粒径の取得に用いられる、発泡後の発泡剤の粒径としては、発泡剤の発泡によって形成された空隙の長軸径と短軸径との平均値を採用することができる。
また、発泡剤の発泡開始温度は、100℃以上220℃以下が好ましい。100℃未満であると、発泡開始のタイミングが早いため、発泡後の発泡樹脂層8が加熱加圧される時間が長くなり、発泡後の発泡樹脂層8が潰され、グロスマット感や手触り感が弱くなる可能性がある。一方、220℃より高くなると、樹脂含浸化粧板1の製造時に金属板(鏡面板)を当接して行われる加熱加圧成型で、発泡樹脂層8が十分に発泡されず、グロスマット感や手触り感が弱くなる可能性がある。より好適なのは、120℃以上200℃以下である。
【0019】
発泡後の発泡樹脂層8が形成する凹凸模様10の種類は、特に制限されるものではなく、絵柄模様層7が形成する絵柄と意匠的に同調するものでもよいし、非同調のものでもよい。特に、意匠性に優れた樹脂含浸化粧板1を得ることを考慮すると、絵柄模様層7が形成する絵柄と意匠的に同調するものが最も好適である。絵柄模様層7が形成する絵柄と凹凸模様10とを意匠的に同調させる場合、発泡樹脂層8の配置位置を、絵柄模様層7が形成する絵柄と同調させる。すなわち、絵柄模様層7が形成する絵柄の中で、艶消状の質感を表現したい箇所の上に発泡樹脂層8を配置する。例えば、発泡樹脂層8は、絵柄模様層7が形成する絵柄の中で、その絵柄の他の部分よりも相対的に明度の低い暗色部分を覆うように、絵柄模様層7の表面上に配置する。暗色部分の面積に占める発泡樹脂層8で覆われた面積の比率は、70%以上が好ましい。特に、90%以上が最も好適である。絵柄模様層7の絵柄を木目模様とする場合には、絵柄模様層7の木目模様と意匠的に同調した導管模様状に、発泡樹脂層8を配置する。発泡樹脂層8の色は、特に限定されるものではなく、無色でもよく、有色でもよい。
なお、発泡樹脂層8を、絵柄模様層7中に配置する場合には、発泡樹脂層8は、絵柄模様層7が形成する絵柄の中で、その絵柄の他の部分よりも相対的に明度の低い暗色部分に混入して、絵柄模様層7中に配置する。暗色部分の体積と発泡樹脂層8の体積との合計値に占める発泡樹脂層8の体積の比率は、70%以上が好ましい。特に、90%以上が最も好適である。
【0020】
発泡樹脂層8の配置方法は、特に制限されるものではなく、例えば、発泡樹脂層8を適当なバインダー樹脂とともに希釈溶媒中に分散してなる印刷インキを絵柄模様層7上に印刷する方法を採用できる。バインダー樹脂としては、例えば、二液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を持つ熱硬化型樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂、カゼイン、エマルジョン樹脂を主成分とするものを用いることができる。熱硬化型樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アミノアルキド系樹脂、シリコーン系樹脂等を採用できる。また、電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等を採用できる。
また、発泡樹脂層8の印刷インキの印刷方法は、絵柄模様層7と同様に、特に制限されるものではなく、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、インクジェット印刷法等、任意の印刷方法を用いることができる。
【0021】
(熱硬化性樹脂層)
熱硬化性樹脂層9としては、公知の樹脂含浸化粧板の製造時に使用される熱硬化性樹脂を用いることができる。例えば、エポキシ系樹脂、カゼイン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂等を採用できる。特に、エポキシ系樹脂、カゼイン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂の少なくとも一つを含むことが好ましい。
熱硬化性樹脂層9の印刷方法は、絵柄模様層7と同様に、特に制限されるものではなく、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、インクジェット印刷法等、任意の印刷方法を用いることができる。
【0022】
熱硬化性樹脂層9は、厚さが1μm以上15μm以下であることが好ましい。熱硬化性樹脂層9の厚さが1μm未満であると、樹脂含浸化粧紙2の耐傷付性及び耐汚染性が低下する可能性がある。一方、熱硬化性樹脂層9の厚さが15μmを超えると、樹脂含浸化粧紙2の意匠性及び長期保管後の意匠安定性が低下する可能性がある。より好適なのは、5μm以上10μm以下である。
熱硬化性樹脂層9は、発泡樹脂層8の表面積のうち30%以上の範囲に設けられる。熱硬化性樹脂層9が発泡樹脂層8の表面積のうち30%未満の範囲であると、樹脂含浸化粧紙2の耐傷付性が低下する可能性がある。より好適なのは、50%以上である。
熱硬化性樹脂層9は、着色インキを含有する。着色インキのビヒクルとしては、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を一種又は二種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものが使用できる。
【0023】
(樹脂含浸化粧板の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係る樹脂含浸化粧板1の製造方法について説明する。
まず、原紙6の表面6a上に絵柄模様層7を設け、絵柄模様層7の表面7a上に発泡樹脂層8を設け、発泡樹脂層8の表面8a上に熱硬化性樹脂層9を設けることで化粧紙4を形成する。そして、含浸樹脂5を水に溶解又は分散させた水系含浸液に化粧紙4を浸漬し、化粧紙4に含浸樹脂5を含浸させる。
含浸樹脂5としては、公知の樹脂含浸化粧板の製造時に使用される熱硬化性樹脂を用いることができる。例えば、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂等を採用できる。含浸樹脂5の含浸は、化粧紙4の、絵柄模様層7が形成されている表面側から行ってもよいし、反対面側から行ってもよい。また、片面ずつ2回に分けて含浸させたり、両面を同時に含浸させたりしてもよい。含浸樹脂5の含浸率(含浸後の化粧紙4の質量に占める含浸樹脂の質量の比率)は、20%以上80%以下が好ましい。特に、40%以上70%以下が最も好適である。また、物性に優れた樹脂含浸化粧板1を得るためには、原紙6の全体に均一に含浸樹脂5を含浸させることが重要である。
【0024】
続いて、含浸樹脂5が含浸された化粧紙4を乾燥させることで樹脂含浸化粧紙2が得られる。続いて、樹脂含浸化粧紙2を基材3上に載置し(図2)、樹脂含浸化粧紙2における発泡樹脂層8及び熱硬化性樹脂層9が形成された面に金属板(鏡面板)を当接して、樹脂含浸化粧紙2と基材3との積層体に加熱加圧成型を行い、樹脂含浸化粧紙2と基材3とを一体化させて、樹脂含浸化粧板1が得られる。その際、加熱加圧成型時の熱によって発泡剤が発泡し、発泡樹脂層8が配置された位置が盛り上がり凹凸模様10が形成される(図1)。そして、形成された凹凸模様10により、樹脂含浸化粧板1にグロスマット感や手触り感が発現される。
【0025】
なお、基材3と樹脂含浸化粧紙2との間には、接着剤等を介在させてもよいし、接着剤等を介在させなくてもよい。また、必要に応じて、公知のメラミン樹脂化粧板に採用されている方法と同様に、コア紙を介在させてもよい。コア紙としては、例えば、チタン紙、晒又は未晒クラフト紙、ガラス繊維不織布等の適宜の原紙に、未硬化状態の熱硬化性樹脂が含浸されているものを用いることができる。また、熱硬化性樹脂は、目的とする樹脂含浸化粧板1に要求される物性等に応じて、任意の熱硬化性樹脂を用いることができる。例えば、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂等を採用できる。コア紙の例としては、従来よりメラミン樹脂化粧板用のコア紙として広く採用されている、フェノール樹脂含浸クラフト紙が挙げられる。
【0026】
樹脂含浸化粧紙2を基材3上に積層した状態で接着するための加熱加圧成型方法としては、例えば、金属板を当接して平圧プレスする方法、円圧式の連続ラミネート方式等を用いることができる。特に、金属製無端ベルトを使用した連続ラミネート方式が好ましい。連続ラミネート方式によれば、表面の反りや波打ち等がなく、しかも層間密着性がよく、稠密に硬化一体化された高品質の樹脂含浸化粧板1を高速度で連続的に製造できる。
連続ラミネート方式を用いた場合、樹脂含浸化粧板1の表面形状は、連続ラミネート方式で使用される金属板や金属製無端ベルト、硬化型樹脂等で作製されたエンボスシートの表面形状がそのまま賦形されたものとなる。それゆえ、金属板や金属製無端ベルト、硬化型樹脂等で作製されたエンボスシートとして、表面を鏡面状等の平滑に研磨したものを用いることで、表面の光沢度や平滑性に優れた樹脂含浸化粧板1を得ることができる。
勿論、必要に応じて、所望の任意の艶消状やテクスチャー状の金属板や金属製無端ベルト、硬化型樹脂等で作製されたエンボスシートを用いることで、目的とする樹脂含浸化粧板1の用途に応じて任意の表面仕上げ状態の樹脂含浸化粧板1を得ることも可能である。
本発明の樹脂含浸化粧板1は、以上に詳述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形を加えて実施することができる。
【0027】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る樹脂含浸化粧紙2は、化粧紙4に含浸樹脂5を含浸させたものであって、化粧紙4は、原紙6と、絵柄模様層7と、発泡樹脂層8と、熱硬化性樹脂層9と、を備える。絵柄模様層7は、原紙6の表面6a側に設けた。発泡樹脂層8は、絵柄模様層7の表面7a上、又は絵柄模様層7中に配置された発泡剤によって形成した。熱硬化性樹脂層9は、エポキシ系樹脂、カゼイン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂の少なくとも一つを含んでおり、この熱硬化性樹脂層9を発泡樹脂層8の表面8a上に設けた。これにより、加熱加圧成型によって発泡剤を発泡でき、樹脂含浸化粧紙の表面に凹凸模様を適切に形成できる。また、凹凸模様10毎の金属板を用意する必要がないため、コストを抑えつつ、グロスマット表現及び手触り感に優れた樹脂含浸化粧紙2及び樹脂含浸化粧板1を提供することができる。また、熱硬化性樹脂層9によって凹凸模様10の盛り上げ部を保護することができ、耐汚染性及び長期保管後の意匠安定性を向上させた樹脂含浸化粧紙2及び樹脂含浸化粧板1を提供することができる。
【0028】
また、熱硬化性樹脂層9の厚さを1μm以上15μm以下にした。これにより、意匠性が悪くなることを抑制し、耐久性及び長期保管後の意匠安定性を向上させた樹脂含浸化粧紙2及び樹脂含浸化粧板1を提供することができる。
また、熱硬化性樹脂層9の厚さを5μm以上10μm以下にした。これにより、意匠性が悪くなることを抑制し、耐久性及び長期保管後の意匠安定性をさらに向上させた樹脂含浸化粧紙2及び樹脂含浸化粧板1を提供することができる。
また、熱硬化性樹脂層9を発泡樹脂層8の表面積のうち30%以上の範囲に設けた。これにより、耐傷付性及び意匠性が低下することを抑制した樹脂含浸化粧紙2及び樹脂含浸化粧板1を提供することができる。
また、熱硬化性樹脂層9を発泡樹脂層8の表面積のうち50%以上の範囲に設けた。これにより、耐傷付性及び意匠性が低下することを、より効果的に抑制した樹脂含浸化粧紙2及び樹脂含浸化粧板1を提供することができる。
また、熱硬化性樹脂層9に着色インキを含有させた。これにより、発泡樹脂層8による白化を抑制し、意匠性を向上させた樹脂含浸化粧紙2及び樹脂含浸化粧板1を提供することができる。
【0029】
そして、発泡樹脂層8は、発泡後の平均粒径が15μm以上250μm以下とし、発泡開始温度が100℃以上220℃以下とした。それゆえ、発泡樹脂層8の発泡後の平均粒径や発泡開始温度を適切な数値としたため、従来の樹脂含浸化粧板の製造方法により、加熱加圧成型時に発泡樹脂層8を発泡でき、樹脂含浸化粧板1の表面に凹凸模様10を適切に形成できる。これにより、樹脂含浸化粧板1にグロスマット感や手触り感を発現できる。また化粧紙4における発泡樹脂層8の配置位置を調整することで、樹脂含浸化粧板1の表面に任意の凹凸模様10を付与でき、凹凸模様10毎の金属板を用意する必要がない。そのため、コストを抑えつつ、グロスマット表現及び手触り感に優れた樹脂含浸化粧板1を形成可能な化粧紙4を提供できる。
【0030】
また、発泡樹脂層8の発泡後の平均粒径が15μm以上250μm以下であり、発泡樹脂層8の発泡開始温度が100℃以上220℃以下であるため、適切な凹凸模様10を形成でき、グロスマット感、手触り感、耐傷付性に優れた化粧紙4を提供できる。
さらに、本発明の実施形態に係る化粧紙4は、絵柄模様層7が形成する絵柄と発泡樹脂層8の配置位置とが同調しているため、絵柄模様層7が形成する絵柄と樹脂含浸化粧板1の表面の凹凸模様10とが意匠的に同調した樹脂含浸化粧板1を形成できる。
また、本発明の実施形態に係る化粧紙4は、発泡樹脂層8が発泡前の平均粒径が絵柄模様層7の層厚の2/3倍以上50倍以下である。それゆえ、適切な凹凸模様10を形成でき、グロスマット感、手触り感、耐傷付性に優れた樹脂含浸化粧板1を提供できる。
また、本発明の実施形態に係る樹脂含浸化粧板1は、樹脂含浸化粧紙2と、樹脂含浸化粧紙2に一体化された基材3とを備えるようにした。そのため、コストを抑えつつ、グロスマット表現及び手触り感に優れた樹脂含浸化粧板1を提供することができる。
【実施例1】
【0031】
以下に、本発明に係る樹脂含浸化粧板1の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、原紙6として、吸水性のよい化粧紙用のチタン紙を用意した。続いて、原紙6の表面6aに、カゼインを主成分とした水性インキで木目模様を印刷し、層厚10μmの絵柄模様層7を形成した。印刷方法としては、グラビア印刷方式を用いた。続いて、インラインで、絵柄模様層7の表面7aに、発泡剤を含有したエポキシを主成分とした水性インキで、絵柄模様層7の木目模様と意匠的に同調した導管模様を印刷して、導管模様状に発泡樹脂層8を配置した。印刷方法としては、ダイレクトグラビア印刷方式を用いた。発泡樹脂層8としては、発泡前の平均粒径が100μm(絵柄模様層7の層厚の10倍)、発泡後の平均粒径が120μm、発泡開始温度が180℃となるものを用いた。
【0032】
続いて、発泡樹脂層8の表面8aにオーバーコート層となる熱硬化性樹脂層9を印刷し、化粧紙4を形成した。印刷方法としては、グラビア印刷方式を用い、熱硬化性樹脂層9には、エポキシ系樹脂を用いた。熱硬化性樹脂層9の厚さは0.5μmとし、熱硬化性樹脂層9を設ける範囲は、発泡樹脂層8の表面積のうち25%とした。すなわち、発泡樹脂層8は複数あるが、その全てにおいて、夫々、表面積の25%の範囲を熱硬化性樹脂層9で覆う。続いて、化粧紙4に含浸樹脂5を含浸させた後、オーブンにて乾燥させて、樹脂含浸化粧紙2を形成した。含浸樹脂5としては、水性メラミン系樹脂液を用いた。続いて、樹脂含浸化粧紙2を基材3上に載置した。基材3としては、パーティクルボード基材を用いた。続いて、樹脂含浸化粧紙2における発泡樹脂層8及び熱硬化性樹脂層9が形成された面に約160℃の熱プレスを行ない、樹脂含浸化粧紙2と基材3との積層体に加熱加圧成型を行い、樹脂含浸化粧紙2と基材3とを一体化させて、実施例1の樹脂含浸化粧板1を形成した。熱プレス時のプレートは、フラットのものを使用した。樹脂含浸化粧板1では、絵柄模様層7のうち、発泡樹脂層8及び熱硬化性樹脂層9のない領域がグロス仕上げとなり、発泡樹脂層8及び熱硬化性樹脂層9のある領域がマット仕上げとなる。
【0033】
(実施例2)
実施例2では、熱硬化性樹脂層9として、カゼイン系樹脂を用いた。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
(実施例3)
実施例3では、熱硬化性樹脂層9として、アクリル系樹脂を用いた。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
(実施例4)
実施例4では、熱硬化性樹脂層9として、ウレタン系樹脂を用いた。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
【0034】
(実施例5)
実施例5では、熱硬化性樹脂層9の厚さを1μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
(実施例6)
実施例6では、熱硬化性樹脂層9の厚さを5μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
(実施例7)
実施例7では、熱硬化性樹脂層9の厚さを7μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
(実施例8)
実施例8では、熱硬化性樹脂層9の厚さを10μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
(実施例9)
実施例9では、熱硬化性樹脂層9の厚さを15μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
【0035】
(実施例10)
実施例10では、熱硬化性樹脂層9の範囲を5%増加させ、発泡樹脂層8の表面積の30%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
(実施例11)
実施例11では、熱硬化性樹脂層9の範囲を25%増加させ、発泡樹脂層8の表面積の50%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
(実施例12)
実施例12では、熱硬化性樹脂層9の範囲を35%増加させ、発泡樹脂層8の表面積の60%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
【0036】
(実施例13)
実施例13では、熱硬化性樹脂層9の範囲を55%増加させ、発泡樹脂層8の表面積の80%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
(実施例14)
実施例14では、熱硬化性樹脂層9の範囲を75%増加させ、発泡樹脂層8の表面積の100%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
(実施例15)
実施例15では、熱硬化性樹脂層9に着色インキを加えた。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
【0037】
(比較例1)
比較例1では、熱硬化性樹脂層9を省略した。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で、樹脂含浸化粧板1を作製した。
【0038】
(性能評価)
実施例1~15、比較例1の樹脂含浸化粧板1に対し、以下に示す性能評価を行なった。
(クロスカット試験)
クロスカット試験では、樹脂含浸化粧板1にカッターにてクロスカットを入れ、剥離が起きるか否かを評価する。クロスカット時に著しい剥離がない場合を「○」とし、著しい剥離がある場合を「×」とする。
(汚染試験)
汚染試験では、樹脂含浸化粧板1に黒クレヨン及び赤インキを被覆させ、1時間後にアルコールで拭き取り、拭き取り残し度合を評価した。拭き取り残り度合が30%未満である場合を「○」とし、拭き取り残し度合が30%以上70%未満である場合を「△」とし、拭き取り残し度合が70%以上である場合を「×」とした。
【0039】
(触感評価)
触感評価では、官能試験として10人の試験員で評価を行なった。評価が良いとした人が7~10名である場合に「○」とし、評価が良いとした人が1~6名である場合に「△」とし、評価が良いとした人が0人である場合に「×」とした。
(意匠評価)
意匠評価では、官能試験として10人の試験員で評価を行なった。評価が良いとした人が7~10名である場合に「○」とし、評価が良いとした人が1~6名である場合に「△」とし、評価が良いとした人が0人である場合に「×」とした。
【0040】
(長期環境試験)
長期環境試験では、温度40℃、湿度90%の環境下に樹脂含浸化粧板1を2ヵ月間放置した後、意匠の変化に関する官能試験として10人の試験員で評価を行なった。評価が良いとした人が7~10名である場合に「○」とし、評価が良いとした人が1~6名である場合に「△」とし、評価が良いとした人が0人である場合に「×」とした。
(総合判定)
上記のクロスカット試験、汚染試験、触感評価、意匠評価、長期環境試験による五項目によって総合的に評価した。特に優れているものを「◎」とし、優れているものを「○」とし、問題が殆どないものを「△」とし、問題があるものを「×」とした。
【0041】
(評価結果)
これらの評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように、クロスカット試験は、実施例1~15、及び比較例1の全てにおいて剥離は見られず、密着性に問題はなかった。しかしながら、熱硬化性樹脂層9を省略した比較例1に比べて、熱硬化性樹脂層9を設けた実施例1~15では、耐汚染性や長期保管後の意匠安定性が向上した。特に、実施例1~4の評価結果が示すように、熱硬化性樹脂層9としてエポキシ系樹脂、カゼイン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂を採用したものは、耐汚染性及び長期保管後の意匠安定性について、優れているか、又は問題が殆どなかった。また、実施例5~9の評価結果が示すように、熱硬化性樹脂層9を厚くするほど、耐傷付性は向上するが、意匠性が低下する傾向があった。また、実施例10~14の評価結果が示すように、熱硬化性樹脂層9の塗布面積を増加させるほど、耐汚染性は向上するが、意匠性が低下する傾向があった。さらに、実施例15の評価結果が示すように、熱硬化性樹脂層9に着色インキを加えることで、意匠表現の自由度が向上するだけでなく、発泡樹脂層8の白化も抑制でき、意匠性が向上した。総合判定としては、実施例6、7、12、15の樹脂含浸化粧板1が、特に優れていた。実施例5~14では、熱硬化性樹脂層9としてエポキシ系樹脂を使用しているが、エポキシ系樹脂の代わりに、カゼイン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等を用いたとしても、基本的な物性に大きな差はなく、略同等の結果が得られる。
【0044】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0045】
1…樹脂含浸化粧板、2…樹脂含浸化粧紙、3…基材、3a…表面、4…化粧紙、5…含浸樹脂、6…原紙、6a…表面、7…絵柄模様層、7a…表面、8…発泡樹脂層、8a…表面、9…熱硬化性樹脂層、10…凹凸模様
図1
図2