(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】アースチェッカー及びアースチェッカー用の装着部材
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20231113BHJP
【FI】
G01R31/52
(21)【出願番号】P 2019223580
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-11-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 配布日:平成31年1月1日 配布場所:ヒューグルエレクトロニクス飯田橋ビル 公開者:ヒューグルエレクトロニクス株式会社 リーフレットを配布
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】増田 勝
(72)【発明者】
【氏名】河口 直敏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英明
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特許第6134412(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0049506(US,A1)
【文献】特開平07-301651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0164770(US,A1)
【文献】特開2016-225244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源である交流電力を直流電力に変換する電源回路と、アース対象物に装着される装着部材と、表示灯と、を有し、前記電源回路と、前記アース対象物と、前記装着部材と、前記表示灯とを含む閉回路が形成されたとき前記表示灯が点灯するようにしたアースチェッカーであって、
前記閉回路を複数有し、
当該複数の閉回路に含まれる前記表示灯が、一の表示部にまとめて配置され
、
前記装着部材は、第1挟持部材の一端側と第2挟持部材の一端側とで前記アース対象物を挟み込むようにしたクリップ状の部材であって、
前記第1挟持部材の前記一端側は、前記第2挟持部材の前記一端側と対向する導電性の水平部と、当該水平部の先端が前記第2挟持部材側に折れ曲がった折曲部と、を有し、
前記第2挟持部材の前記一端側は、前記第1挟持部材の前記水平部と平行な水平部を有し、当該水平部に、前記装着部材を前記閉回路に介挿するためのケーブルを接続する導通部材を前記第1挟持部材側に突出するように有し、
前記第1挟持部材の前記折曲部は、当該折曲部が前記第2挟持部材と接した状態で、前記導通部材と前記第1挟持部材の前記水平部とが接触しないように形成され、
前記第1挟持部材の前記水平部と前記第2挟持部材の前記導通部材とが前記アース対象物に接するように、前記装着部材を装着するようになっていることを特徴とするアースチェッカー。
【請求項2】
前記閉回路は、接地電位に接続された接地部材を含んで形成されることを特徴とする請求項1に記載のアースチェッカー。
【請求項3】
少なくとも5つの前記閉回路を有することを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のアースチェッカー。
【請求項4】
商用電源である交流電力を直流電力に変換する電源回路と、アース対象物と、当該アース対象物に装着される装着部材と、表示灯と、を含む閉回路が形成されたときに前記表示灯が点灯するようになっているアースチェッカー用の前記装着部材であって、
第1挟持部材の一端側と第2挟持部材の一端側とで前記アース対象物を挟み込むようになっており、
前記第1挟持部材の前記一端側は、前記第2挟持部材の前記一端側と対向する導電性の水平部と、当該水平部の先端が前記第2挟持部材側に折れ曲がった折曲部と、を有し、
前記第2挟持部材の前記一端側は、前記第1挟持部材の前記水平部と平行な水平部を有し、当該水平部に、前記閉回路に介挿されるためのケーブルを接続する導通部材を前記第1挟持部材側に突出するように有し、
前記第1挟持部材の前記折曲部は、当該折曲部が前記第2挟持部材と接した状態で、前記導通部材と前記第1挟持部材の前記水平部とが接触しないように形成され、
前記第1挟持部材の前記水平部と前記第2挟持部材の前記導通部材とが前記アース対象物に接するように、前記アース対象物に装着されるようになっていることを特徴とするアースチェッカー用の装着部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースチェッカー及びアースチェッカー用の装着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機溶剤を取り扱う現場では、静電気放電の火花等による着火事故を防止するため、有機溶剤を入れる金属容器を接地するようにしている。また、有機溶剤を取り扱う現場では作業を行う際に、金属容器等の接地が確実に行われているかどうかを確認するようにしている。この接地の確認を行う装置として、例えば、アース対象物を、配線の先端に設けられたクリップで挟むことでアース側配線と検知側配線とが導通し、表示灯が点灯することで、容器の接地が行われていることを通知するようにした装置が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5478152号
【文献】特許第6134412号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、アース対象物をクリップで挟み、ランプが点灯するか否かを視認することで、接地が確実に行われているかどうかを容易に認識することができる。
しかしながら、特許文献1に記載の方法にあっては、一対のクリップを有するアース線を、アース対象物とアースとにそれぞれ接続することで、アース対象物を、アース線を介してアースに接続するようにし、アース対象物に接続される側のクリップに接地状況を表すランプが設けられている。そのため、接地状況を確認するためには、有機溶剤が入れられた金属容器の配置場所それぞれにおいてクリップに設けられたランプの点灯状況を確認する必要がある。特に、複数の金属容器の接地状況を確認する場合等には、複数の金属容器の配置場所まで出向く必要があり、手間がかかり使い勝手が悪い。
【0005】
また、特許文献2に記載の方法にあっては、接地状況を表すランプは検知ボックスに設けられている。そのため、接地状況を確認する際には、金属容器の配置場所まで行く必要はないが、検知ボックスの配置場所まで行く必要がある。ある程度離れた場所からでも視認できるようにするためには、高輝度ランプを用いること等が必要である。しかしながら、電源として電池を用いているため、離れた場所からでも視認できるような十分な輝度を得るためには、ある程度の容量が必要となり、また電池の交換作業を行う必要がある。特に防爆規格認証を受けた場合には、部品交換を行うに際して制約を受けるため、容易に交換することが困難である。
そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、接地状況の確認を容易に行うことができ使い勝手のよいアースチェッカー及びアースチェッカー用の装着部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、商用電源である交流電力を直流電力に変換する電源回路と、アース対象物に装着される装着部材と、表示灯と、を有し、前記電源回路と、前記アース対象物と、前記装着部材と、前記表示灯とを含む閉回路が形成されたとき前記表示灯が点灯するようにしたアースチェッカーであって、前記閉回路を複数有し、当該複数の閉回路に含まれる前記表示灯が、一の表示部にまとめて配置され、前記装着部材は、第1挟持部材の一端側と第2挟持部材の一端側とで前記アース対象物を挟み込むようにしたクリップ状の部材であって、前記第1挟持部材の前記一端側は、前記第2挟持部材の前記一端側と対向する導電性の水平部と、当該水平部の先端が前記第2挟持部材側に折れ曲がった折曲部と、を有し、前記第2挟持部材の前記一端側は、前記第1挟持部材の前記水平部と平行な水平部を有し、当該水平部に、前記装着部材を前記閉回路に介挿するためのケーブルを接続する導通部材を前記第1挟持部材側に突出するように有し、前記第1挟持部材の前記折曲部は、当該折曲部が前記第2挟持部材と接した状態で、前記導通部材と前記第1挟持部材の前記水平部とが接触しないように形成され、前記第1挟持部材の前記水平部と前記第2挟持部材の前記導通部材とが前記アース対象物に接するように、前記装着部材を装着するようになっているアースチェッカーが提供される。
また、本発明の他の態様によれば、商用電源である交流電力を直流電力に変換する電源回路と、アース対象物と、当該アース対象物に装着される装着部材と、表示灯と、を含む閉回路が形成されたときに前記表示灯が点灯するようになっているアースチェッカー用の前記装着部材であって、第1挟持部材の一端側と第2挟持部材の一端側とで前記アース対象物を挟み込むようになっており、前記第1挟持部材の前記一端側は、前記第2挟持部材の前記一端側と対向する導電性の水平部と、当該水平部の先端が前記第2挟持部材側に折れ曲がった折曲部と、を有し、前記第2挟持部材の前記一端側は、前記第1挟持部材の前記水平部と平行な水平部を有し、当該水平部に、前記閉回路に介挿されるためのケーブルを接続する導通部材を前記第1挟持部材側に突出するように有し、前記第1挟持部材の前記折曲部は、当該折曲部が前記第2挟持部材と接した状態で、前記導通部材と前記第1挟持部材の前記水平部とが接触しないように形成され、前記第1挟持部材の前記水平部と前記第2挟持部材の前記導通部材とが前記アース対象物に接するように、前記アース対象物に装着されるようになっているアースチェッカー用の装着部材が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、接地状況の確認を容易に行うことができ使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアースチェッカーの一例を示す外観図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るアースチェッカーの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに、特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るアースチェッカーの一例を示す外観図である。
図1において(a)は正面図、(b)は平面図であり、(a)に示すアースチェッカーを上から見た平面図を180度回転させた図である。(c)は右側面図、(d)は底面図である。なお、左側面図は、図(c)に示す右側面図を反転させた図と同等であるので省略する。また、背面図は、後述の筐体2の板面であり何も配置されていないため省略する。
【0011】
アースチェッカー1は、略直方体の筐体2を有し、筐体2は、一面が開口された中空の直方体状の本体2aと、開口部を塞ぐ蓋部2bとを備え、蓋部2bの四辺の縁部をネジ止めすることによって、蓋部2bは本体2aに取り付けられている。また、本体2aの、蓋部2bと向かい合う面の四隅には、本体2aの幅方向に突出して本体取り付け用穴3が設けられている。
【0012】
蓋部(表示部)2bには、5つの表示灯11a~11e(以下、単に表示灯11ともいう。)が水平方向に一列に設けられている。表示灯11それぞれの配置位置の下部には、各表示灯11を識別するための識別板12a~12e(以下、単に識別板12ともいう。)が表示灯11a~11e毎に設けられている。識別板12として、例えば、各表示灯11それぞれに対応付けられた黒、黄、赤、水色、橙の5色を有するプレートが設けられている。また、識別板12a~12eの下部の、幅方向中央部には、注意書きを表すプレート13aが設けられ、その右側には、防爆規格認定品であることを表すプレート13bが設けられている。本実施形態に係るアースチェッカー1は、防爆規格を満足することを前提としている。
【0013】
筐体2の上面2cには、回路用のアースケーブル16aを接続する端子16と、安全保持器用のアースケーブル17aを接続する端子17と、電源ケーブル18aを接続するAC100V用の電源入力端子18とを備える。
筐体2の底面2dには、表示灯11a~11eそれぞれに対応するクリップケーブル21a~21e用の端子19a~19eと、クリップケーブル21a~21e(以下、単にクリップケーブル21ともいう。)それぞれの一端に設けられたクリップ(装着部材)22a~22e及びクリップケーブル21a~21eをまとめて掛けるためのフック20a~20eが設けられている。
筐体2の右側面2eには、その中央部に、アースチェッカー1の品名を表すプレート13cが設けられている。
【0014】
クリップ22a~22eの一例を
図2(a)~
図2(c)に示す。
図2(b)は、
図2(a)のA部の拡大図、
図2(c)は、
図2(a)の矢印B方向から見た矢視図である。
クリップ22a~22eは同一構造を有するので、ここではクリップ22として説明する。また、クリップケーブル21a~21eは、同一構造を有するので、ここではクリップケーブル21として説明する。クリップケーブル21は、リード線Lbとリード線Lwとを有している。また、クリップケーブル21a~21eのそれぞれには、識別板12の色と同一色のテープが巻かれており、クリップケーブル21a~21eのそれぞれに巻かれたテープの色と、識別板12の色とが一致するように、クリップケーブル21を、端子19に接続することで、アース対象物と、クリップ22と、表示灯11との対応関係を容易に認識できるようになっている。
【0015】
クリップ22は、導電性の第1挟持部材31と第2挟持部材32とを備え、第1挟持部材31と第2挟持部材32とは、クリップ22の長手方向中央部近傍でバネ支柱33周りに回動自在に取り付けられている。また、第1挟持部材31と第2挟持部材32とは、バネ支柱33により支持されたバネ34によって、一端同士が接触するように付勢されている。第1挟持部材31と第2挟持部材32の他端側を使用者が握ることによって、バネ支柱33を軸として、第1挟持部材31と第2挟持部材の先端同士が離れるようになっている。
【0016】
第1挟持部材31の一端には、鍵形部31aが形成されている。鍵形部31aは、クリップ22の長手方向と平行に延びる水平部31aaと、水平部31aaの先端部が第2挟持部材32側に略直角に折り曲げられてなる折曲部31abとで構成される。
第2挟持部材32の一端には、固定部32aが形成されている。固定部32aは鍵形部31aの水平部31aaと略平行な水平部32aaを有し、水平部32aaの先端部はこの先端部の第1挟持部材31と対向する面と、第1挟持部材31の折曲部31abの、第2挟持部材32と対向する端面とが接するようになっている。このとき、折曲部31abの端面と、第2挟持部材32の面とが接した状態で、後述の六角穴付きボタンボルト35と、第1挟持部材31と接しないように形成されている。
【0017】
水平部32aaの、水平部31aaと対向する位置には、水平部32aaを貫通する貫通穴が形成され、絶縁ワッシャ35aを介して、リード線Lbの端部に固定されている圧着端子Lb1を導電性の六角穴付きボタンボルト35で水平部32aaに固定し、水平部32aaを挟んで逆側を、絶縁ワッシャ35b、平座金35c、バネ座金35dを介してナット36で止めることにより、リード線Lbを、第2挟持部材32の水平部32aaに固定している。
【0018】
第1挟持部材31及び第2挟持部材32それぞれの、バネ支柱33よりも他端側の位置には、クリップケーブル21a~21eをガイドするガイド部31b及び32bが形成されている。ガイド部31b及び32bは、第1挟持部材31及び第2挟持部材32のそれぞれの本体の両脇に一対の壁状に形成され、第1挟持部材31に形成されたガイド部31bと第2挟持部材32に形成されたガイド部32bとは、互いに向かい合う方向に延びて形成されている。
【0019】
第2挟持部材32に形成されたガイド部(導通部材)32bの一方には、貫通穴が形成され、ガイド部32bの内側にリード線Lwの先端部に設けられた圧着端子Lw1を配置し、ガイド部32bの外側から貫通穴にネジ37を挿入し、内側からナット38により圧着端子Lw1を挟むようにネジ止めすることによって、圧着端子Lw1を、ガイド部32bの内側に固定している。
そして、第2挟持部材32に固定されたリード線Lbとリード線Lwとは、ガイド部32bの近傍で、クリップケーブル21と第2挟持部材32とを樹脂バンド39で固定することで、第2挟持部材32に固定されている。
【0020】
アース対象物をクリップ22で挟むことにより、リード線Lb、圧着端子Lb1、六角穴付きボタンボルト35、アース対象物、第1挟持部材31、第2挟持部材32のバネ支柱33の部分、ガイド部32b、リード線Lwからなる閉回路が形成され、対応するLED54が点灯する。なお、アースをとるために、クリップ22でアース対象物を挟む場合には、六角穴付きボタンボルト35がアース対象物と接するように挟む。
クリップ22でいずれの物体も挟んでいない状態では、六角穴付きボタンボルト35と、第1挟持部材31とは接しない。すなわち導通状態とならないため、閉回路が形成されず、LED54は点灯しない。
【0021】
図3は、アースチェッカー1の一例を示す概略構成図である。
アースチェッカー1は、100V交流電源ACと接続され交流電力を直流電力に変換する電源回路51と、安全保持器(バリア)52と、同一構成を有する5つの本質安全回路53a~53e(以下、単に本質安全回路53ともいう。)と、アース部55と、を備える。
安全保持器52は、入力電圧を必要電圧に抑える公知の安全保持器である。安全保持器52は、例えば、
図3に示すようにヒューズ52aと第一抵抗52bと第二抵抗52cとが直列に接続され、ヒューズ52aと第一抵抗52bとの間、第一抵抗52bと第二抵抗52cとの間にそれぞれツェナーダイオード52d、52eのカソードが接続され、アノードはアースラインleに接続される。
【0022】
本質安全回路53a~53eは、クリップ22a~22eに対応して設けられ、それぞれ安全保持器52に接続される。本質安全回路53a~53eは、それぞれ同一構成を有し、LED(light emitting diode)54a~54eと、クリップ22a~22eと、を含んで構成される。
アース部(接地部材)55は、本質安全回路53a~53e毎に設けられた本質安全回路用のアース端子T1及びT2(D種接地又はA種接地)と、安全保持器52用のアース端子T3(A種接地)と、を備え、アース端子T1及びT2同士が接続されている。また、アース部55は接地電位に接続されている。また、電源回路51は電源用アース、筐体2は筐体用アースにより接地されている。
【0023】
以上の構成を有するアースチェッカー1において、クリップ22がアース対象物の例えば金属容器60に装着され、且つ、金属容器60に絶縁物質等が付着していない場合には、
図3に示すように、電源回路51、安全保持器52、本質安全回路53e、クリップ22e、アース端子T1、アース端子T2、安全保持器52のアースラインle、電源回路51を通る閉回路が形成される。そのため、LED54eが点灯する。また、本質安全回路53eはアース部55に接続されているため、除電が行われる。
【0024】
一方、クリップ22eがアース対象物の金属容器60に装着されていない場合、或いは確実に取り付けられていない場合、つまり、六角穴付きボタンボルト35がアース対象物と接していない場合、或いは、金属容器60に乾燥した有機溶剤が付着している等、クリップ22eをアース対象物に装着しているにも関わらず、金属容器60とクリップ22eとが導通しない場合には、クリップ22eとLED54eとをつなぐ経路が形成されない。そのため、閉回路が形成されず、LED54eが点灯しない。使用者は、LED54eが点灯しないことからクリップ22eが確実に接続されていないことを認識することができる。
【0025】
また、例えば、
図4に示すように、断線等が生じ、回路用のアースがアース端子T1に接続されていない場合には、閉回路が形成されないため、LED54eは点灯しない。そのため、異常が生じていることを認識することができる。
ここで、アースチェッカー1が、回路用のアース端子としてT1のみしか設けられていない構成を有する場合、クリップ22とアース端子T1との間で断線が生じたとしても、アースラインleはアース端子T1に接続されているため、閉回路が形成され、LED54eが点灯してしまう。つまり、断線を検出することができない。
【0026】
これに対し、本発明の実施形態においては、
図4に示すようにアース部55を介して閉回路を形成するようにし、アースラインleにアース端子T1とT2とを介挿しているため、クリップ22eとアース部55との間で断線が生じたときにはLED54eを消灯させることができる。つまり、異常が生じたことを通知することができる。
【0027】
また、アースチェッカー1は、5系統の本質安全回路53a~53eを備えており、いずれかのLED54が点灯すると、
図1に示すアースチェッカー1の正面図において、接地状況に応じて、横一列に並べられた表示灯11a~11eのうち対応する表示灯11が点灯する。そのため、アースチェッカー1の近傍で、表示灯11a~11eの点灯状況を確認すれば、アース対象物が配置してある場所に出向くことなく、接地状況を認識することができる。特に、複数の有機溶剤を利用する現場等では、複数の有機溶剤それぞれを用いた作業が、比較的離れた場所で行われることが多い。本実施形態に係るアースチェッカー1では、アースチェッカー1の盤面を参照することによって、5つのアース対象物に対する接地状況を認識することができる。そのため、工場等での接地状況の確認作業に伴う負担軽減を図ることができると共に、使い勝手を向上させることができる。また、5つのアース対象物の接地状況を、1箇所で表示することができるため、接地状況を確認するためのランプ等が複数箇所に配置されている場合に比較して、アースチェッカー1の配置場所をより確保しやすく、これに伴い、表示灯11としてより見え易いタイプの表示灯を用いることができる。その結果、接地状況をより見え易く表示することができる。
【0028】
また、本実施形態においては、5系統の本質安全回路53a~53eに対し一つの安全保持器52を設けている。通常、本質安全回路53a~53eのそれぞれに対し一つの安全保持器52を設けているが、本実施形態では、本質安全回路53a~53eの消費エネルギや、表示灯11の視認性等を考慮して、安全保持器52を選定している。つまり、LED54の輝度や安全保持器52の特性等を考慮して、使用するLED54や安全保持器52等を選定することによって、一つの安全保持器52で、5つ本質安全回路53a~53eの安全保護を行うことができ、且つ、十分な輝度を発生させることができる。そのため、一つの安全保持器52を設けるだけで防爆を図ることができ、その分、アースチェッカー1の小型化を図ることができると共に、コスト削減を図ることができる。
【0029】
ちなみに、アースチェッカー1において、安全保持器52の最大電圧は15V、ヒューズ保護電流は100mAであり、35℃以下で1000時間流し続けられる最大電流である。この安全保持器52を用いて本質安全回路53の保護を行う場合、保護対象の装置のエネルギは、0.5W以下である必要がある。
一方、本質安全回路53a~53eはそれぞれ66mAが定格最大値(8VDC設計)である。各本質安全回路53a~53eは、全てのLED54が点灯したとき、約55mA消費する。安全保持器52は、100mAで動作しており、本質安全防爆構造の規定の上限である最大電流の2/3、つまり、100mA×2/3=約66.7mAを満足している。
また、アース対象物ごとにアースチェッカーの筐体2を設ける必要はなく、複数のアース対象物で一つの筐体2を設ければよい。そのため、アースチェッカー1本体の配置場所の自由度を向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態に係るアースチェッカー1では、電源回路51において、100Vの商用交流電源を直流電源に変換した値を利用して、アースチェックを行っている。そのため、十分な輝度で表示灯11a~11eを点灯させることができる。その結果、アースチェッカー1から離れた場所であっても、表示灯11a~11eの点灯状況を容易に認識することができる。また、電源として乾電池を用いた場合には、定期的に乾電池を交換する必要があり、特に防爆認定を受けている場合には、交換する部品の選定等に制約を受ける必要があり、場合によっては再度防爆認定を受ける必要があり手間がかかる。また、乾電池を交換するにしても、アースチェッカー1を防爆区域外に持ち出してから交換作業を行い、交換後再度アースチェッカー1を防爆区域内に持ち込んで所定の位置に設置する必要がある。アースチェッカー1が設けられていなくとも、アース対象物を用いた作業を進めることが可能であるため、気づかないうちに、アースチェッカー1を設置しない状態で、作業を進めてしまうこともあり得る。これに対し、本実施形態に係るアースチェッカー1においては、商用電源を用いており、乾電池の交換等を行う必要がないため、より長い時間、アースチェッカー1を継続して作動させることができる。そのため、アースチェッカー1が作動していない状態で、アース対象物を用いた作業が実行されてしまうことを抑制することができる。
【0031】
また、上記実施形態においては、クリップ22をアース対象物に装着していないときには、通常アース対象物を介して導通する第1挟持部材31と六角穴付きボタンボルト35とが接触し得ない構造とし、クリップ22をアース対象物に装着するときには、六角穴付きボタンボルト35とアース対象物とが接触するように装着したときにのみ導通するようにしている。そのため、アース対象物にクリップ22を装着する場合には、ある程度注意を払って装着する必要がある。そのため、アース対象物の表面の絶縁物質の付着状況に注意を払うように仕向けることができ、例えば、乾燥した有機溶剤が付着した金属容器を使用しないように仕向けることができる。
【0032】
また、クリップ22をアース対象物に装着するときには、六角穴付きボタンボルト35と第1挟持部材31の水平部31aaの部分でアース対象物と接するようにしており、六角穴付きボタンボルト35及び水平部31aaのアース対象物と接する部分は、アース対象物に絶縁性の膜等が付着していた場合、この絶縁性の膜等を貫通しにくい形状となっている。そのため、クリップ22でアース対象物を挟んだ際にクリップ22が絶縁性の膜等を貫通して導通部分に接することを抑制することができ、接地状況の誤判定を抑制することができる。
【0033】
なお、上記実施形態においては、5つのアース対象物について接地状況を検出する場合について説明したが、これに限るものではなく、任意数のアース対象物を検出することができる。この場合、アース対象物の数と、LED54の消費電力、また、安全保持器52の仕様等によって、安全保持器52の数が増減する可能性があり、すなわちアースチェッカー1全体の大型化につながる可能性がある。したがって、アース対象物の数、LED54の消費電力、また、安全保持器52の仕様等と、アースチェッカー1の配置場所の広さ等を考慮してこれら各部を選定すればよい。
【0034】
また、上記実施形態において、クリップ22の形状は、
図2に示す形状に限るものではない。アース対象物に装着していないときに、第2挟持部材32に設けた六角穴付きボタンボルト35と第1挟持部材31とが接触せず、アース対象物に装着したときには、六角穴付きボタンボルト35と第1挟持部材31とがアース対象物を介して導通し、且つ、アース対象物に装着したときに、六角穴付きボタンボルト35及び第1挟持部材31とがアース対象物に付着している膜等を貫通しない形状であればよい。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【実施例】
【0035】
LED54の消費電流と光量との関係を測定し確認を行った。
LED用の光度計として、照度計を代用した。
なお、表1に示す機器を用いて測定を行った。
【0036】
【0037】
測定は、
図5に示す模擬装置100を用いて行った。すなわち、ダンボール箱で作成した暗箱102にアースチェッカー1のLED54に相当するLED102aと照度計103の受光面103aとを、お互いの先端から10cmの距離となる位置に対向して配置した。
この状態で、アースチェッカー1の定格電圧相当の電圧を電源装置101から入力し、1系統分のLED102aを点灯させ照度を測定した。また、電流計104及び電圧計105により、電源装置101の出力電流及び出力電圧を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0038】
【0039】
表2に示すように、アースチェッカー1の電源電圧に相当する平均電源電圧が8.3Vであるとき、平均消費電流は13.4mA、平均照度はLEDの先端から10cmの位置において13.5Lxであった。
13.5Lxを光源であるLED102aから10cmだけ離れた位置で測定したことから、直射照度として受光したと仮定すると、光度は、140mCdと推定することができる。(光度Cd=照度Lx/距離Dm2)。
以上から、一般的なLED(照明用は除く)の光度は100mCd~200mCd程度であるため、アースチェッカー1のLED光度は妥当であると判断することができる。つまり、比較的離れた位置からでも、十分に視認することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 アースチェッカー
2 筐体
2a 本体
2b 蓋部
11、11a~11e 表示灯
21、21a~21e クリップケーブル
22、22a~22e クリップ
31 第1挟持部材
32 第2挟持部材
51 電源回路
52 安全保持器
53、53a~53e 本質安全回路
54、54a~54e LED
55 アース部