(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】剥離フィルム付き蛍光体保護フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231113BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20231113BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20231113BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20231113BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B7/06
B32B27/00 M
C09J7/29
F21S2/00 400
G02B5/20
(21)【出願番号】P 2020005078
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】平 憲一郎
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182744(JP,A)
【文献】特開2016-204461(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139175(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
G02B 5/20-5/28
F21S 2/00
F21V 8/00
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも保護基材層とバリア層と蛍光体接着層とを備える保護フィルムと、
保護フィルムの一方の面に積層され保護フィルムから剥離可能なプロテクトフィルムと微粘着層とからなる剥離フィルムと、を備え、
プロテクトフィルムのヤング率E[MPa]に、プロテクトフィルムの厚さd1[μm]と保護基材層の厚さd2[μm]との比を掛けた積E×(d1/d2)が、
9000[MPa]以上であることを特徴とする剥離フィルム付き蛍光体保護フィルム。
【請求項2】
前記保護基材層と前記プロテクトフィルムとの合計の厚さが、剥離フィルム付き蛍光体保護フィルム総厚の60パーセント以上であることを特徴とする請求項1に記載の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルム。
【請求項3】
前記保護基材層の厚さが、9~38μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルム。
【請求項4】
前記蛍光体接着層の厚さが、0.001~5μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットを代表する蛍光体を製造するのに用いられる保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイのバックライトユニット、およびエレクトロルミネッセンス発光ユニット等の発光ユニットには、LEDから発生したレーザー光を入射させ、そのレーザー光の波長を変化させる波長変換シートである蛍光体が使用されている。蛍光体は、波長の変化によってその色彩が変化することから、さまざまな波長、さまざまな色彩に変化した光を表示光として、カラーの画面を表示することができる。
【0003】
上記蛍光体は酸素、又は水蒸気などと接触して長時間が経過することにより、性能が低下することがある。このような低下を防ぐ為、蛍光体を含む蛍光体層に保護フィルムを重ね、あるいはこの保護フィルムで蛍光体層を挟んだ蛍光体発光ユニットを形成している。
【0004】
例えば、特許文献1には、
対向配置された一対の基材と、前記一対の基材間に設けられると共に、層毎に異なる種類の蛍光体を有する複数の色変換層とを備えた色変換部材であって、
前記一対の基材はそれぞれ、前記複数の色変換層を保護するバリアフィルムであり、
前記複数の色変換層はそれぞれ、互いに異なる種類の蛍光体とその蛍光体を保持する樹脂層とを有し、
前記複数の色変換層における各樹脂層は、前記蛍光体の種類毎に異なる接着材を含む色変換部材、いわゆる蛍光体発光ユニットを提案している。
【0005】
ところで、テレビジョン等に使用される上記蛍光体発光ユニットには、ハンドリング等の理由から、100μm程の厚さを有する蛍光体保護フィルムを用いている。100μm程の大きな厚さを有する蛍光体保護フィルムの場合、保護フィルムの嵩増しフィルムが、高いヤング率を有することから、加熱する工程があっても、安定した製造が可能である。しかしながら、モバイル用途では、薄さが重要な項目となり、20~38μm程度に薄い構成が求められている。
【0006】
ところが、バリア層の形成工程において、高熱が掛かる為、薄いモバイル用途の蛍光体保護フィルムでは、流れ方向に高温によって発生する熱シワが発生する問題が生じる。
熱シワが生じた状態の保護フィルムを使用して、蛍光体発光ユニットを製造すると、積層する時に、均一な厚さの蛍光体層を形成することが困難になり、蛍光体の発光ムラなどの不具合が生じるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、蛍光体発光ユニットを製造するバリア層の形成工程において、高熱が掛かっても、薄い蛍光体保護フィルムに熱シワが生じない蛍光体保護フィルムを得る手段を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも保護基材層とバリア層と蛍光体接着層とを備える保護フィルムと、
保護フィルムの一方の面に積層され保護フィルムから剥離可能なプロテクトフィルムと蛍光体接着層とからなる剥離フィルムと、を備え、
プロテクトフィルムのヤング率E[MPa]に、プロテクトフィルムの厚さd1[μm]と保護基材層の厚さd2[μm]との比を掛けた積E×(d1/d2)が、
9000[MPa]以上であることを特徴とする剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムは、蛍光体に貼り合せて加熱する時には、高いヤング率を有する剥離フィルムが貼ってあるので、熱シワを生じずに、薄い保護フィルムを貼った蛍光体ユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態例における剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムの構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムを蛍光体に貼り合せた状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムを蛍光体に貼り合せた後、剥離フィルムを剥がした状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムについて、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態例における剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムの構成を示す断面図である。
本発明の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムは、蛍光体保護フィルム1と、剥離フィルム2とから構成されている。
上記蛍光体保護フィルム1は、外側から順に、光拡散層11、保護基材層12、バリア層13、蛍光体接着層14、から構成されている。光拡散層11は通常設けるが、保護基材層12によっては使用しなくても良い。
さらに、上記剥離フィルム2は、少なくとも外側から順に、プロテクトフィルム21、微粘着層22、から構成されている。
【0013】
前記光拡散層11は、バインダー樹脂と微粒子とを含んで構成された塗布膜を使用できる。光拡散層11は、光拡散層の表面から微粒子の一部が露出するように微粒子がバインダー樹脂に埋め込まれることにより、光拡散層の表面には微細な凸凹が生じても良い。
このように光拡散層を蛍光体保護フィルム1の表面に設けることにより、干渉縞の発生を確実に防止することができる。また、入射光を散乱して反射防止して、見やすくすることもできる。
【0014】
光拡散層11に使用される上記バインダー樹脂としては、光学的透明性に優れた樹脂を用いる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを用いることができる。中でも、耐光性や光学特性に優れるアクリル系樹脂が望ましい。もちろん、これらの単体樹脂だけではなく、複数の樹脂を組み合わせて使用することもできる。
【0015】
光拡散層11に使用される上記微粒子としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナなどの無機微粒子の他、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などの有機微粒子も用いることができる。バインダー樹脂の屈折率とできるだけ離れた屈折率を有する微粒子が好ましい。
微粒子の粒径は、0.1~10μmが好ましく、特に2~4μmがより好ましい。
0.1μm未満では、細かくて、バインダーに埋め込まれて、光拡散の効果を出しにくい。
また、10μmより大では、表面が粗過ぎて、適切な剥離フィルムとの粘着力を得られにくく、加熱中に剥離して、貼った効果が得られない。
【0016】
前記保護基材層12は、蛍光体保護フィルム1全体を支える層であって、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン-2,6-ナフタレートフィルム、および、それらの共重合体フィルムが使用できる。
【0017】
保護基材層12の厚さは、保護基材層12とプロテクトフィルム21との合計の厚さが、前記剥離フィルム付き蛍光体保護フィルム総厚の60パーセント以上となるように考慮して、決定することが望ましい。
また、保護基材層12単体の厚さは、9~38μmとする。保護基材層12の厚さが9μm未満の場合、保護フィルム全体の強度を保つことができない。他方、38μm未満の厚さであれば、効率的に生産できると共に、発光ユニット全体の厚さを薄くして、重量を低い状態に維持できる。
【0018】
前記バリア層13はガスバリア性を有する層であって、例えば、金属アルコキシド、金属アルコキシド加水分解物および金属アルコキシド重合物からなる群より選択される少なくとも一種の成分と、水酸基含有高分子化合物と、必要に応じてシランカップリング剤とを含む水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を無機薄膜層の表面に塗布し、例えば80~250℃で加熱乾燥させることで形成することができる。
このバリア層の形成工程においても、保護基材層には張力が働く。そして、この張力や加熱乾燥が保護フィルムのシワの原因にもなることもある。そのような場合には、乾燥温度を120℃以上にすることによって、水蒸気バリア性を向上させることができる。
上記バリア層を無機薄膜層とする場合、保護基材層側に密着補助層となるアンカーコート層を、外側にはオーバーコート層を設けることによって、無機薄膜層を保護するようにすることが望ましい。
【0019】
前記蛍光体接着層14は、蛍光体表面に保護フィルムを接着する接着層である。
蛍光体接着層14に使用する接着層の材料には、反応性の炭素-炭素二重結合を有する樹脂と、反応性の炭素-炭素二重結合を有さない一級水酸基を有する樹脂と、ポリイソシアネート化合物を含有するプライマー層形成用組成物を用いて形成される硬化物からなるプライマーや、金属キレート化合物、金属アルコキシド化合物および金属アシレート化合物からなる群より選択される少なくとも一種の有機金属化合物、並びに、シランカップリング剤を含有するプライマー層形成用組成物を用いて形成される硬化物からなるプライマー、などが使用できる。
【0020】
上記の反応性の炭素-炭素二重結合とは、ラジカル重合又はカチオン重合可能な炭素-炭素二重結合を指す。そのような基を含む樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有する基であって、例えば、スチリル基、メタ・アクリロイル基、アクリロイル基がある。そのような基を含み、重量平均分子量が300~100,000の樹脂が使用できる。
また、反応性の炭素-炭素二重結合を有する樹脂は、水酸基を有していても良い。
【0021】
反応性の炭素-炭素二重結合を有さない一級水酸基を有する樹脂は、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびキシレンジイソシアネート、並びに、それらを原料として用いたものが使用できる。
【0023】
蛍光体接着層14の厚さは、0.001~5μmとすることが好ましい。これは、0.001μm未満では、密着性が得られないこと、および5μmを超える場合はガスバリア性が低下する問題が発生する為である。このうち、特に0.02~1μmが好ましい。
【0024】
また、蛍光体接着層14に使用する硬化樹脂が熱硬化性の場合には、金属箔も使用できる。金属箔としては、アルミニウム箔、錫箔、銀箔、銅箔、ニッケル箔、などの単一元素で形成される金属箔や、黄銅箔、ステンレス箔、洋白箔、アルミニウム合金箔、などの合金で生成される金属箔が使用できる。金属箔では、特にアルミニウム箔が展延性が高く、2次加工した時の形状に沿って変形し易く、かつ、安価に使用することができる。金属箔は、遮光性やバリア性を得ることができると共に、形状保持性能も高い。
【0025】
プロテクトフィルム21は、保護フィルム1の製造過程で生じやすいシワを、発生しないように抑制する為のフィルムである。この為、耐熱性や剛性が高く、充分な弾力性を有するフィルムが求められる。
具体的には、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのようなフィルムが使用できる。この他、透明フィルムでは、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリサルファンフィルム、ポリイミドフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムなどが考えられる。
以上の中では、特に高温で熱固定された2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0026】
プロテクトフィルム21は、単層構造の樹脂フィルムで構成されていても良いが、複数の樹脂フィルムを積層した多層構造の樹脂フィルムで構成されていても良い。プロテクトフィルム21は、保護フィルムを傷などの損傷から保護する保護機能も有している。
また、プロテクトフィルム21は、蛍光体接着層に使用する硬化樹脂の性質によっては着色されたフィルムであっても良い。着色されていると、視認性が増し、蛍光体を製造する際に剥離し易いと共に、剥離フィルムの剥がし忘れを防止することができる。
【0027】
微粘着層22は、保護フィルム1にプロテクトフィルム21を製造過程で接着するための層であり、製造過程において蛍光体に保護フィルム1を貼りつけた状態で保持される。ただし、プロテクトフィルム21に自己粘着性がある場合には、微粘着層22は不要である。
【0028】
微粘着層22は、加熱処理したりして製造した後は、保護フィルム1から完全に剥がれて残らないこと、また、剥離時に保護フィルム1や蛍光体に歪等の問題を起こさないことが求められる。
微粘着層22に用いる粘着剤としては特に制限はないが、例えばアクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、でんぷん系粘着剤などが使用できる。
【0029】
図2は、本発明の剥離フィルム2付き蛍光体保護フィルム1を蛍光体3に貼り合せた状
態を示す断面図である。
図2に示すように、剥離フィルム2が蛍光体保護フィルム1に微粘着したまま、蛍光体3の表裏に蛍光体接着層14を向かい合わせてその中に挟んで包み、ヒートラミネーターで加熱・圧着して製造される。または、圧着した状態で紫外線照射し、硬化させる方法であっても良い。
【0030】
図3は、本発明の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムを蛍光体に貼り合せた後、剥離フィルム2を剥がした状態を示す断面図である。
蛍光体3に剥離フィルム2付き蛍光体保護フィルム1を加熱・圧着後、充分に冷却してから、あるいは紫外線で硬化後、剥離フィルム2を剥離する。蛍光体3は、この保護フィルム1付きの状態で使用される。
保護フィルムを貼り合せる時には、積層体全体として腰があって、充分に耐熱性の高い構成で製造されることで、製造中に熱シワなどは生じない。そして実際に蛍光体3をモバイル等に組み込んで使用する場合には、肉厚だったり透明性が無かったりする剥離フィルム2を剥がしてから組み込むので、薄くて軽くモバイルにも使用できる品質の良い蛍光体が得られる。
【実施例】
【0031】
量子ドット用バリアフィルムの光拡散層側に、剥離可能な微粘着剤でプロテクトフィルムを貼り合せることで、モバイル向けの薄肉とした熱シワ対策品を試作実験した。
実験品を評価するのに、プロテクトフィルムのヤング率Eに、プロテクトフィルムの厚さd1と、蛍光体に貼り合せた保護基材層の厚さd2の比(d1/d2)を掛けた、熱シワ伸ばし指数(E×(d1/d2))という評価基準を考案し、熱シワ発生との結果を考察した。
【0032】
<実験例1>
量子ドット用バリアフィルムの光拡散層側に剥離可能な微粘着剤でプロテクトフィルムを貼り合せることで、モバイル向けの薄肉とした熱シワ対策品を試作した。
保護基材層として、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ16μm)を使用した。また、プロテクトフィルムを2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm、ヤング率2800MPa)とした。
【0033】
バリア層は、まず、アンカーコート層としてエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物を0.5μm塗工し、その上に、酸化珪素を真空蒸着で無機薄膜層30nmの厚さに設け、オーバーコート層として、さらに、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物を0.5μm塗工した。
光拡散層は、アクリル系ポリオール樹脂にイソシアネート系硬化剤、ポリウレタン微粒子粒径2μmと、溶剤として酢酸エチルを加えて塗布し、80℃1分間で乾燥し、保護基材層の外面側に光拡散層を形成した。
蛍光体接着層は、テトラエトキシシランとポリビニルアルコールとを1:1で混合した溶液を塗工し180℃で1分間乾燥して0.5μmとし、保護基材層内側の無機薄膜層30nm側に蛍光体接着層を設けた。
微粘着剤として、アクリル系粘着剤とイソシアネート硬化剤、安定剤としてアセチルアセトン、溶剤として酢酸エチルを加え、塗工し、80℃1分間で乾燥させて、プロテクトフィルムの保護フィルム側に厚さ3.5μmの微粘着層を形成した。
その結果、この実験品の熱シワ伸ばし指数は、4375MPaとなった。
【0034】
<実験例2>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm、ヤング率2800MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、8750MPaとなった。
【0035】
<実験例3>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm、ヤング率2800MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、13125MPaとなった。
【0036】
<実験例4>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm、ヤング率2800MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、17500MPaとなった。
【0037】
<実験例5>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ30μm、ヤング率1500MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、2813MPaとなった。
【0038】
<実験例6>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ70μm、ヤング率1500MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、6563MPaとなった。
【0039】
<実験例7>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ100μm、ヤング率1500MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、9375MPaとなった。
【0040】
<実験例8>
プロテクトフィルムを2軸延伸直鎖状ポリエチレンフィルム(厚さ27μm、ヤング率260MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、439MPaとなった。
【0041】
<実験例9>
プロテクトフィルムを2軸延伸直鎖状ポリエチレンフィルム(厚さ60μm、ヤング率260MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、975MPaとなった。
【0042】
<実験例10>
プロテクトフィルムを2軸延伸直鎖状ポリエチレンフィルム(厚さ100μm、ヤング率260MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、1625MPaとなった。
【0043】
<実験例11>
プロテクトフィルムを2軸延伸直鎖状ポリエチレンフィルム(厚さ200μm、ヤング率260MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、3250MPaとなった。
【0044】
<実験例12>
プロテクトフィルムをアルミニウム箔(厚さ6μm、ヤング率62000MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、23250MPaとなった。
【0045】
<実験例13>
保護基材層として、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ23μm)を使用。プロテクトフィルムを2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm、ヤング率2800MPa)とした。その他は、実験例1と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、3043MPaとなった。
【0046】
<実験例14>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm、ヤング率2800MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、6087MPaとなった。
【0047】
<実験例15>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm、ヤング率2800MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、9130MPaとなった。
【0048】
<実験例16>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm、ヤング率2800MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、12174MPaとなった。
【0049】
<実験例17>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ30μm、ヤング率1500MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、1957MPaとなった。
【0050】
<実験例18>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ70μm、ヤング率1500MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、4365MPaとなった。
【0051】
<実験例19>
プロテクトフィルムを2軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ100μm、ヤング率1500MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、6522MPaとなった。
【0052】
<実験例20>
プロテクトフィルムを2軸延伸直鎖状ポリエチレンフィルム(厚さ27μm、ヤング率260MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、305MPaとなった。
【0053】
<実験例21>
プロテクトフィルムを2軸延伸直鎖状ポリエチレンフィルム(厚さ60μm、ヤング率260MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、678MPaとなった。
【0054】
<実験例22>
プロテクトフィルムを2軸延伸直鎖状ポリエチレンフィルム(厚さ100μm、ヤング率
260MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、1130MPaとなった。
【0055】
<実験例23>
プロテクトフィルムを2軸延伸直鎖状ポリエチレンフィルム(厚さ200μm、ヤング率260MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、2261MPaとなった。
【0056】
<実験例24>
プロテクトフィルムをアルミニウム箔(厚さ6μm、ヤング率62000MPa)とした。その他は、実験例13と同じに作成した。
熱シワ伸ばし指数は、16174MPaとなった。
【0057】
<評価内容>
上記実験例の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムを、蛍光体として、セレン化カドムミウムなどの発光部が硫化亜鉛のシェルに被覆されている量子ドットに使用した。
量子ドットを実験例の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムで表裏、蛍光体接着層を向かい合わせて、その中に挟んで包み、ヒートラミネーターで、ラミネート温度140℃、速度1m/min、ラミネート圧力0.5MPaで圧着した。
圧着後、室温に10分間放置後、剥離フィルムを剥離した。
剥離フィルムを剥離した状態を、拡大鏡で熱シワの発生有無を確認し、熱シワがあったものを×、熱シワが無かったものを〇とした。
【0058】
<評価結果>
熱シワ伸ばし指数が9000MPa未満の場合、熱シワが発生していたが、9000MPa以上では、熱シワの発生はなかった。
この為、熱シワ伸ばし指数が9000MPa以上とする必要があると判断した。
【0059】
以上の結果を表1にまとめた。
【0060】
【0061】
上記実験結果からわかるように、本発明の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムは、モバイルなどに使用する薄肉の蛍光体に使用する為に使用できる。
薄肉の蛍光体製造工程では、一時的に本発明の剥離フィルム付き蛍光体保護フィルムを使用することによって、熱シワを防止し、加工後、剥離することによって、生産効率の高い安定した供給が可能になった。
【0062】
特に、プロテクトフィルムのヤング率に、蛍光体に貼り合せた保護基材層の厚さと、プロテクトフィルムの厚さの比を掛けた熱シワ伸ばし指数によって、はっきりと評価できたので、プロテクトフィルムのヤング率や厚さ、保護基材層の厚さなどを選定するのに、非常に有効であり、本発明のメリットは大きい。
【符号の説明】
【0063】
1・・・・・・・・蛍光体保護フィルム
11・・・・・・・光拡散層
12・・・・・・・保護基材層
13・・・・・・・バリア層
14・・・・・・・蛍光体接着層
2・・・・・・・・剥離フィルム
21・・・・・・・プロテクトフィルム
22・・・・・・・微粘着層
3・・・・・・・・蛍光体