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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】調光モジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20231113BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20231113BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1333
E06B9/24 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020095429
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021189331
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉野 昌明
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-165011(JP,A)
【文献】特開2020-38264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1333
E06B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持基材と、透明支持基材上に配置された矩形状の調光シートと、調光シートの端縁部に貼付された防水テープと、を備えた調光モジュールであって、
調光シートの4つのコーナー部において、
一方の辺から延伸した下側の防水テープの上に、隣接するもう一方の辺から延伸した上側の防水テープが貼付されており、
下側の防水テープは、その長手方向の先端部が、上側の防水テープより外側に延伸して備えられており、
少なくとも、下側の防水テープの両側の端縁部と上側の防水テープの調光シート側の端縁部との交点、および下側の防水テープの調光シート側の端縁部と上側の防水シートの外側の端縁部との交点、に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止する樹脂封止部が形成されている事を特徴とする調光モジュール。
【請求項2】
透明支持基材と、透明支持基材上に配置された矩形状の調光シートと、調光シートの端縁部に貼付された防水テープと、を備えた調光モジュールであって、
調光シートの4つのコーナー部において、
一方の辺から延伸した下側の防水テープの上に、隣接するもう一方の辺から延伸した上側の防水テープが貼付されており、
下側の防水テープは、その長手方向の先端部が、上側の防水テープによって被覆されており、
下側の防水テープの両側の端縁部と、上側の防水テープの調光シート側の端縁部と、の交点に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止する樹脂封止部が形成されている事を特徴とする調光モジュール。
【請求項3】
透明支持基材と、透明支持基材上に配置された矩形状の調光シートと、調光シートの端縁部に貼付された防水テープと、を備えた調光モジュールであって、
調光シートの4つのコーナー部において、
一方の辺から延伸した下側の防水テープの上に、隣接するもう一方の辺から延伸した上側の防水テープが貼付されており、
下側の防水テープは、その長手方向の先端部の何れか一方が、上側の防水テープによって被覆されており、
下側の防水テープの長手方向の先端部が上側の防水テープによって被覆されている側では、下側の防水テープの調光シート側の端縁部と、上側の防水テープの調光シート側の端縁部と、の交点に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止した樹脂封止部が形成されており、
下側の防水テープの長手方向の先端部が上側の防水テープより外側に延伸して備えられている側では、下側の防水テープの端縁部と、上側の防水テープの端縁部と、の交点に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止した樹脂封止部が形成されている事を特徴とする調光モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の調光モジュールの製造方法であって、
前記透明支持基材上に矩形状の前記調光シートを配置し、前記調光シートの前記端縁部に前記防水テープを貼付する貼付工程と、
前記下側の防水テープの両側の端縁部と、前記上側の防水テープの両側の端縁部と、の交点に形成される前記隙間を樹脂で封止する事により樹脂封止部を形成する封止工程と、を備えており、
貼付工程は、前記調光シートの4つの前記コーナー部において、少なくとも、下側の防水テープの両側の端縁部と上側の防水テープの調光シート側の端縁部との交点、および下側の防水テープの調光シート側の端縁部と上側の防水シートの端縁部との交点、に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止する樹脂封止部を形成する工程である事を特徴とする調光モジュールの製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の調光モジュールの製造方法であって、
前記透明支持基材上に矩形状の前記調光シートを配置し、前記調光シートの前記端縁部に前記防水テープを貼付する貼付工程と、
前記下側の防水テープの両側の端縁部と、前記上側の防水テープの調光シート側の端縁部と、の交点に形成される前記隙間を樹脂で封止する事により樹脂封止部を形成する封止工程と、を備えており、
貼付工程は、前記調光シートの4つの前記コーナー部において、一方の辺から延伸した前記下側の防水テープの上に、隣接するもう一方の辺から延伸した前記上側の防水テープを貼付する際に、前記下側の防水テープの長手方向の前記先端部が、前記上側の防水テープによって被覆される様に貼付する工程である事を特徴とする調光モジュールの製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の調光モジュールの製造方法であって、
前記透明支持基材上に矩形状の前記調光シートを配置し、前記調光シートの前記端縁部に前記防水テープを貼付する貼付工程と、
前記下側の防水テープの両側の端縁部と前記上側の防水テープの調光シート側の端縁部との交点に形成される前記隙間および前記下側の防水テープの前記調光テープ側の前記端縁部と前記上側の防水テープの前記調光シートの反対側の前記端縁部との交点に形成される前記隙間を樹脂で封止する事により樹脂封止部を形成する封止工程と、を備えており、
貼付工程は、前記下側の防水テープの長手方向の先端部の内、いずれか一方の先端部を前記上側の防水テープによって被覆される様に貼付し、もう一方の先端部を前記上側の防水テープより外側に延伸する様に貼付する工程である調光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調光シートを使用した調光モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、調光層を挟む一対の透明電極層とを備えている。一対の透明電極層間の電位差に応じて液晶分子の配向状態が変わることにより、調光シートの光透過率やヘイズが変わる。この様に、調光シートは光の透過率を制御可能な事から、例えば、建物や車両等の窓ガラスに貼り付けて使用される事がある。
【0003】
調光シートがこの様な用途で使用されると、屋外と屋内との境界部などの温度差の大きい2つの空間の境界部に配置される場合等では、雨水や結露等に起因した水分が調光シートに付着することが起こり得る。水分が調光層の内部に浸入すると、調光シートにおける光透過率やヘイズの可変機能が低下する。
【0004】
この様な調光シートの光透過率やヘイズの可変機能が低下するのを防止する先行技術として、調光シートの防水性を高めることのできる調光ユニット(以後、調光モジュールとも記す。)が特許文献1に開示されている。この調光ユニットは、調光シートと、調光シートをその上に配置する支持基材と、調光シートの一対の電極を外部に取り出す配線部と、調光シートの側面と配線部から水分の侵入を防ぐ防水部と、を備えている。この様な構成により、調光シートの防水性を高めることが可能となっている。
【0005】
この技術においては、調光シートの端面や配線部を被覆する防水部により調光シートの防水性を高める事が可能となっている。
【0006】
例えば、調光シートの端面を覆う被覆部として防水テープを用いる場合、図4(a)に例示した様に、支持基材1上に配置された矩形状の調光シート2の2つの辺が直交するコーナー部3に、一方の辺から延伸した防水テープ4を下側にして、もう一方の辺から延伸した防水テープ5を上側にして重ね合わせて接着する事により継ぎ目が形成される。その継ぎ目には、図4(b)に例示した様に、隙間7が形成される。
【0007】
そのコーナー部3に形成された隙間7から水が浸入しない様にする為、例えば、図5(a)に例示した様に、従来は隙間7を塞ぐ様に、予め調光シート2のコーナー部3にコーナーテープ8を貼付していた。
【0008】
図5(b)に例示した様に、調光シート2のコーナー部3に、粘着層だけからなる両面テープであるコーナーテープ8を設けてから、調光シート2の一方の辺から延伸する下側の防水テープ4と、隣接するもう一方の辺から延伸する上側の防水テープ5とを、コーナーテープ8の上で突き合わせて接着する事により防水機能を確保していた。しかしながら、粘着層だけからなる両面テープを所定の位置に貼り付ける作業や、防水テープを突き合わせて接着する作業は、現合での寸法合わせと切断が不可欠である為、非常に高い精度が求められる。さらに、上記のようにコーナー部3には複数枚のテープが重ねて貼付されるため、他の領域に比べて厚さが増し調光シートとしての薄型化、平坦化の妨げになるといった新たな課題も存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6669218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、簡易な処理により調光シートの防水性を確保することができ、かつ防水性を付与しても当該調光シートの薄型化と平坦化を担保できる調光ユニットとその製造方法を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する手段として、本発明の第一の態様は、透明支持基材と、透明支持基材上に配置された矩形状の調光シートと、調光シートの端縁部に貼付された防水テープと、を備えた調光モジュールであって、
調光シートの4つのコーナー部において、
一方の辺から延伸した下側の防水テープの上に、隣接するもう一方の辺から延伸した上側の防水テープが貼付されており、
下側の防水テープは、その長手方向の先端部が、上側の防水テープより外側に延伸して備えられており、
少なくとも、下側の防水テープの両側の端縁部と上側の防水テープの調光シート側の端縁部との交点、および下側の防水テープの調光シート側の端縁部と上側の防水シートの端縁部との交点、に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止する樹脂封止部が形成されている事を特徴とする調光モジュールである。
【0012】
また、本発明の第二の態様は、透明支持基材と、透明支持基材上に配置された矩形状の調光シートと、調光シートの端縁部に貼付された防水テープと、を備えた調光モジュールであって、
調光シートの4つのコーナー部において、
一方の辺から延伸した下側の防水テープの上に、隣接するもう一方の辺から延伸した上側の防水テープが貼付されており、
下側の防水テープは、その長手方向の先端部が、上側の防水テープによって被覆されており、
下側の防水テープの両側の端縁部と、上側の防水テープの調光シート側の端縁部と、の交点に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止する樹脂封止部が形成されている事を特徴とする調光モジュールである。
【0013】
また、本発明の第三の態様は、透明支持基材と、透明支持基材上に配置された矩形状の調光シートと、調光シートの端縁部に貼付された防水テープと、を備えた調光モジュールであって、
調光シートの4つのコーナー部において、
一方の辺から延伸した下側の防水テープの上に、隣接するもう一方の辺から延伸した上側の防水テープが貼付されており、
下側の防水テープは、その長手方向の先端部の何れか一方が、上側の防水テープによって被覆されており、
下側の防水テープの長手方向の先端部が上側の防水テープによって被覆されている側では、下側の防水テープの調光シート側の端縁部と、上側の防水テープの調光シート側の端縁部と、の交点に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止した樹脂封止部が形成されており、
下側の防水テープの長手方向の先端部が上側の防水テープより外側に延伸して備えられている側では、下側の防水テープの端縁部と、上側の防水テープの端縁部と、の交点に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止した樹脂封止部が形成されている事を特徴とする調光モジュールである。
【0014】
また、本発明の第四の態様は、第一の態様に記載の調光モジュールの製造方法であって、
前記透明支持基材上に矩形状の前記調光シートを配置し、前記調光シートの前記端縁部に前記防水テープを貼付する貼付工程と、
前記下側の防水テープの両側の端縁部と、前記上側の防水テープの両側の端縁部と、の交点に形成される前記隙間を樹脂で封止する事により樹脂封止部を形成する封止工程と、を備えており、
貼付工程は、前記調光シートの4つの前記コーナー部において、少なくとも、下側の防水テープの両側の端縁部と上側の防水テープの調光シート側の端縁部との交点、および下側の防水テープの調光シート側の端縁部と上側の防水シートの端縁部との交点、に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止する樹脂封止部を形成する工程である事を特徴とする調光モジュールの製造方法である。
【0015】
また、本発明の第五の態様は、第二の態様に記載の調光モジュールの製造方法であって、
前記透明支持基材上に矩形状の前記調光シートを配置し、前記調光シートの前記端縁部に前記防水テープを貼付する貼付工程と、
前記下側の防水テープの両側の端縁部と、前記上側の防水テープの調光シート側の端縁部と、の交点に形成される前記隙間を樹脂で封止する事により樹脂封止部を形成する封止工程と、を備えており、
貼付工程は、前記調光シートの4つの前記コーナー部において、一方の辺から延伸した前記下側の防水テープの上に、隣接するもう一方の辺から延伸した前記上側の防水テープを貼付する際に、前記下側の防水テープの長手方向の前記先端部が、前記上側の防水テープによって被覆される様に貼付する工程である事を特徴とする調光モジュールの製造方法である。
【0016】
また、本発明の第六の態様は、第三の態様に記載の調光モジュールの製造方法であって、
前記透明支持基材上に矩形状の前記調光シートを配置し、前記調光シートの前記端縁部に前記防水テープを貼付する貼付工程と、
前記下側の防水テープの両側の端縁部と前記上側の防水テープの調光シート側の端縁部との交点に形成される前記隙間および前記下側の防水テープの前記調光テープ側の前記端縁部と前記上側の防水テープの前記調光シートの反対側の前記端縁部との交点に形成される前記隙間を樹脂で封止する事により樹脂封止部を形成する封止工程と、を備えており、
貼付工程は、前記下側の防水テープの長手方向の先端部の内、いずれか一方の先端部を前記上側の防水テープによって被覆される様に貼付し、もう一方の先端部を前記上側の防水テープより外側に延伸する様に貼付する工程である事を特徴とする調光モジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記構成を採ることにより、簡易な処理により調光シートの防水性を確保することができ、かつ防水性を付与しても当該調光シートの薄型化と平坦化を担保できる調光ユニットとその製造方法を提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の実施形態にかかる調光モジュールを例示する説明図であって、(a)は上面図、(b)は断面図、を示している。
図2】本発明の第二の実施形態にかかる調光モジュールを例示する説明図であって、(a)は上面図、(b)は断面図、を示している。
図3】本発明の第三の実施形態にかかる調光モジュールを例示する説明図であって、(a)は上面図、(b)は断面図、を示している。
図4】支持基材上に配置した矩形状の調光シートの4つの端縁部に下側の防水テープと上側の防水テープを貼付した状態を例示する説明図であって、(a)は上面図、(b)は断面図、を示している。
図5】従来の調光モジュールを例示する説明図であって、(a)は上面図、(b)は断面図、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一の実施形態>
本発明の第一の実施形態にかかる調光モジュールを、図1を用いて説明する。
本発明の調光モジュール10-1は、透明支持基材1と、透明支持基材1上に配置された矩形状の調光シート2と、調光シート2の端縁部全域に貼付された防水テープ4、5と、を備えた調光モジュールである。
【0020】
図1(a)、(b)に示した様に、本発明の調光モジュール10-1は、調光シート2の4つのコーナー部3において、一方の辺から延伸した下側の防水テープ4の上に、隣接するもう一方の辺から延伸した上側の防水テープ5が貼付されている。
ここで、下側とは透明支持基材1に近い側、上側とは透明支持基材1から遠い側、という意味である。以下においても同様の意味とする。
【0021】
防水テープ4、5を調光シート2の端縁部に貼付する方法は特に限定する必要は無い。例えば、人の手による貼付け作業で貼付しても良い。また、防水テープ4、5は片面に粘着剤が形成された通常の粘着テープと同様の形態であり、テープ貼り機を用意して使用する事も可能である。テープ貼り機を人手によって操作する事で貼り付ける事もできる。また、透明支持基材1をテープ貼り機に自動的に搬送し、透明支持基材1の所定の位置に調光シート2を位置合わせして配置し、更に、自動的にテープ貼りを行う機構を備えた装置を使用する事も可能である。
【0022】
また、下側の防水テープ4は、その長手方向の先端部が、上側の防水テープ5より外側に延伸して備えられている。
【0023】
この様に、下側の防水テープ4の上に跨って上側の防水テープ5が貼付されている場合、下側の防水テープ4の両側の端縁部4-1、4-2には隙間7が形成される(図4(b)参照)。具体的には、下側の防水テープ4の両側の端縁部4-1、4-2と上側の防水テープの調光シート2側の端縁部5-2との交点、および下側の防水テープ4の調光シート側の端縁部4-2と上側の防水シートの外側の端縁部5-1との交点、に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止する樹脂封止部6が形成されている事が特徴である。
【0024】
なお、下側の防水シート4の外側の端縁部4-1と上側の防水シート5の外側の端縁部5-1との交点に形成される隙間は、樹脂封止部6を形成する必要は無いが、形成しても構わない。その隙間は、下側の防水シート4の外側の端縁部4-1と上側の防水シート5の調光シート側の端縁部5-2との交点に形成される隙間および下側の防水シート4の調光シート側の端縁部4-2と、上側の防水シート5の外側の端縁部5-1との交点に形成される隙間に樹脂封止部6が形成されている為であり、二重に樹脂封止部を形成する必要は無いからである。
【0025】
隙間を樹脂で封止した樹脂封止部6は、容易に形成可能である。具体的な手法を限定する必要は無いが、例えば、樹脂を溶剤に溶解したワニス状の樹脂を作製し、それをディスペンサにより当該箇所に吐出させる事であっても良いし、また、封止樹脂を印刷インキ化し、スクリーン印刷などの印刷技術を用いて、一括して印刷する事も可能である。
【0026】
なお、下側の防水テープ4と上側の防水テープ5は、あるコーナー部3において下側と上側の関係にある事を示している。矩形状の調光シート2には4つのコーナー部3がある。各コーナー部3には、隣接する2つの辺から下側の防水テープ4と上側の防水テープ5がコーナー部3に向かって延伸し、重ね合わされている。
【0027】
その為、例えば、あるコーナー部3では、下側の防水テープ4は下側となっており、上には上側の防水テープが貼付されているが、その防水テープ4が延伸しているもう一方のコーナー部3においては、必ずしも下側になっている必要は無い。即ち、上側の防水テープになっていても構わない。
【0028】
同様に、あるコーナー部3では、上側の防水テープ5は上側となっており、下には下側の防水テープが貼付されているが、その防水テープが延伸しているもう一方のコーナー部3においては、必ずしも上側になっている必要は無い。
【0029】
調光シート2の4つの辺に、4つの防水テープを貼る場合、色々な順番で貼る事ができる。例えば、2つの防水テープを先に透明支持基材1上の調光シート2の対向する辺に貼り付ける事で、2つの下側の防水テープを構成する。次に、残る2つの対向する辺に、2つの防水テープを貼り付ける事で2つの上側の防水テープを構成する事ができる。この時、下側の防水テープの長手方向の先端部を、上側の防水テープの幅を超えて外側に突出させた状態で上側の防水テープを貼り付けた場合が、本実施形態である。
【0030】
(透明支持基材)
透明支持基材1は、透明な基材である。透明支持基材1の材料としては、例えば、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が用いられる。本実施形態では、特に、透明支持基材1としては、光学用のポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に用いられる。透明支持基材1の厚さは、調光シート2の厚さよりも薄い。透明支持基材1の厚さは、25μm以上200μm以下であることが好ましく、25μm以上190μm以下であることがより好ましい。透明支持基材1の厚さが上記下限値以上であれば、調光シート2を単独で取り扱う場合と比較して、取り扱いの容易性を向上させる適度な剛性が調光モジュールに付与される。一方、透明支持基材1の厚さが上記上限値以下であれば、調光シート2の可撓性と比較して、調光モジュールの可撓性が過度に小さくなることが抑えられ、例えば、曲面に調光モジュールを取り付ける場合にも、曲面に調光モジュールを沿わせやすい。
【0031】
(調光シート)
調光シート2は、透明支持基材1に貼り付けられている。調光シート2の表面と対向する位置から見た平面視において、透明支持基材1の外形は調光シート2の外形よりも大きい。言い換えれば、上記平面視において、調光シート2の外縁は全て、透明支持基材1の外縁の内側に位置する。すなわち、調光シート2は、透明支持基材1上のみに位置した状態で透明支持基材1の表面に取り付けられている。調光シート2および透明支持基材1の外形形状は特に限定されない。一例として、調光シート2の外形と透明支持基材1の外形とが、いずれも矩形形状である形態を挙げる事ができる。本実施形態の説明では、説明を容易にする目的で調光シート2が矩形状である場合について説明しているが、これに限定する必要はない。調光シート2は、調光層と、一対の透明電極層を備えているが、詳細は省略する。
【0032】
(防水テープ)
防水テープ4、5は、透明支持基材1の上に配置された調光シート2の端縁部に貼付する事により、調光シート2を水分から遮断する粘着テープである。水分の透過性や含有率が低く、水分との接触による膨潤などが無い、所謂防水性が高い樹脂基材が望ましい。その様な樹脂材料としては、例えば、アクリルフォーム基材などを挙げる事ができる。防水テープ4、5は、その様な樹脂フィルムに、粘着層が形成された粘着テープである事が好ましい。粘着層の材料としては、樹脂フィルムと同様に防水性が優れた粘着組成物である事が望ましい。その様な粘着組成物としては、例えば、アクリル系粘着剤などを挙げる事ができる。
【0033】
防水テープの代わりに、ホットメルト接着剤を使用しても良い。ホットメルト接着剤としては、エチレン酢酸ビニル(EVA)系、または、エチレンメタクリル酸メチル(EMMA)系のホットメルト接着剤が好適に用いられる。ホットメルト接着剤からなる防水部は、例えば、グルーガンを用いて形成される。EVA系およびEMMA系の材料は、ポリエチレンテレフタレートフィルムに対する接着性が高い。したがって、透明支持基材1としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には、防水部の材料として、EVA系あるいはEMMA系の材料を用いることが好ましい。
【0034】
また、防水テープの代わりに、熱圧着シートを使用しても良い。熱圧着シートとしては、EVA系熱圧着シートが好適に用いられる。熱圧着シートを用いる場合、例えば、防水部のなかで調光シート2の表面に接する部分が、当該表面に熱圧着によって固定されるとともに、防水部のなかで透明支持基材1の表面に接する部分が、当該表面に熱圧着によって固定される。
【0035】
(樹脂封止部)
樹脂封止部6を構成する材料は、透明支持基材1と、調光シート2と、防水テープ4、5との接着性が高い材料であってかつ透明性が高い事が望ましい。また、防水テープ4、5の側面や防水テープ4、5の粘着層によって囲まれた隙間に良好に入り込むことができる良好な親和性と、適切な粘度が求められる。また、樹脂封止部6を構成する樹脂は、時間経過と共に硬化する硬化性樹脂であっても良いし、粘着性のままであっても良い。異物の付着を避ける必要がある場合は、硬化性樹脂が好ましい。また、隙間を封止する密封性を備えたエラストマーであっても良い。
樹脂封止部6を構成する具体的な材料としては、例えば、シリコン樹脂製などを挙げる事ができる。
【0036】
(製造方法)
次に、本発明の調光モジュールの製造方法について、図1図4を用いて説明する。
本発明の調光モジュールの製造方法は、透明支持基材1上に矩形状の調光シート2を配置し、その調光シート2の端縁部に防水テープ4、5を貼付する貼付工程と、下側の防水テープ4の両側の端縁部4-1、4-2と、上側の防水テープ5の両側の端縁部5-1、5-2と、の交点に形成される隙間7(図4(b)参照)を樹脂で封止する事により樹脂封止部6を形成する封止工程と、を備えている。
【0037】
貼付工程においては、4つの防水テープをどの様な順番で貼り付けても構わない。例えば、図1(a)に例示した様に、図の縦方向の2つの防水テープを貼り付けて下側の防水テープ4とし、次に図の横方向の2つの防水テープを貼り付けて上側の防水テープ5としても良い。また、その逆にしても良い。また、図1(a)の縦方向の2つの防水テープの内、左側の防水テープを1番目に貼り、次に図の横方向の2つの防水テープの内、上側の防水テープを2番目に貼り、次に図の縦方向の2つの防水テープの内、右側の防水テープを3番目に貼り、次に図の横方向の2つの防水テープの内、下側の防水テープを4番目に貼る事でも良い。4つのコーナー部3における上下関係はそれぞれ異なって来るが、隙間が形成される位置は変わらない。なお、ここで縦方向とは、図1(a)における2本の電極帯11-1、11-2が調光シート2から延出する方向である。また、同様に横方向とは、電極帯11-1、11-2が調光シート2から延出する方向と直交する方向である。
【0038】
封止工程は、調光シートの4つのコーナー部3において、少なくとも、下側の防水テープ4の両側の端縁部4-1、4-2と上側の防水テープ5の調光シート側の端縁部5-2との交点、および下側の防水テープ4の調光シート側の端縁部4-2と上側の防水シート5の端縁部5-1、5-2との交点、に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止する樹脂封止部6を形成する工程である事が特徴である。
【0039】
封止工程は、下側の防水テープ4の端縁部4-1、4-2と上側の防水テープ5の端縁部5-1、5-2の交点に形成される隙間に、液状の樹脂を各種の印刷法やディスペンサを用いて樹脂の液滴を形成し、隙間に毛細管現象により充填される様にする事ができる。印刷法としては、特に限定されないが、例えば、スクリーン印刷法、平版オフセット印刷法、凹版オフセット印刷法、凸版印刷法などを挙げる事ができる。
【0040】
<第二の実施形態>
本発明の第二の実施形態にかかる調光モジュールを、図2を用いて説明する。
【0041】
第二の実施形態が第一の実施形態と異なる点は、下側の防水テープ4と上側の防水テープ5の重なり方である。それに伴い、樹脂封止部を形成する箇所が異なってくる。
【0042】
第二の実施形態では、図2に示した様に、一方の辺から延伸した下側の防水テープ4の上に、隣接するもう一方の辺から延伸した上側の防水テープ5が貼付されており、下側の防水テープ4は、その長手方向の先端部9が、上側の防水テープ5によって被覆されている。
【0043】
その為、第一の実施形態において必要だった樹脂封止部6が不要になるものが出てくる。それは、第一の実施形態においては、下側の防水テープ4の調光シート側の端縁部4-2と上側の防水テープ5の外側の端縁部5-1の交点があったが、第二の実施形態においては、下側の防水テープ4の調光シート側の端縁部4-2と上側の防水テープ5の外側の端縁部5-1の交点が無くなり、隙間が形成されない為、樹脂封止部を形成する必要が無い。
その他の樹脂封止部6は、第一の実施形態と同様に、第二の実施形態においても形成されている事が必要である。
【0044】
調光シート2の4つの辺に、4つの防水テープを貼る場合、色々な順番で貼る事ができる。例えば、2つの防水テープを先に透明支持基材1上の調光シート2の対向する辺に貼り付ける事で、2つの下側の防水テープを構成する。次に、残る2つの対向する辺に、2つの防水テープを貼り付ける事で2つの上側の防水テープを構成する事ができる。この時、
下側の防水テープの長手方向の先端部を、上側の防水テープの幅の内側に被覆した状態で上側の防水テープを貼り付けた場合が、第二の実施形態である。
【0045】
(製造方法)
第一の実施形態と基本的に同じ方法で製造する事ができる。異なるのは、樹脂封止部を形成する箇所だけである。
【0046】
<第三の実施形態>
本発明の第三の実施形態にかかる調光モジュールを、図3を用いて説明する。
【0047】
第三の実施形態が第一と第二の実施形態と異なる点は、下側の防水テープ4と上側の防水テープ5の重なり方である。それに伴い、樹脂封止部を形成する箇所が異なってくる。
【0048】
第三の実施形態では、図3に示した様に、図3の上側は、第二の実施形態と同様に、下側の防水テープ4の長手方向の先端部9の何れか一方が、上側の防水テープ5によって被覆されており、図3の下側は、第二の実施形態と同様に、もう一方の先端部が上側のテープ5の外側に延伸して備えられている。
【0049】
その為、下側の防水テープ4の長手方向の先端部9が上側の防水テープ5によって被覆されている側では、下側の防水テープ4の端縁部4-1、4-2と、上側の防水テープ5の調光シート側の端縁部5-2と、の交点に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止した樹脂封止部6が形成されている。
【0050】
また、下側の防水テープ4の長手方向の先端部9が上側の防水テープ5より外側に延伸して備えられている側では、下側の防水テープ4の端縁部4-1、4-2と、上側の防水テープ5の調光シート側の端縁部5-2と、の交点に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止した樹脂封止部が形成されている。また、下側の防水テープ4の調光シート側の端縁部4-2と上側の防水テープ5の外側の端縁部5-1との交点に形成される隙間に、その隙間を樹脂で封止した樹脂封止部が形成されている。
【0051】
調光シート2の4つの辺に、4つの防水テープを貼る場合、色々な順番で貼る事ができる。例えば、2つの防水テープを先に透明支持基材1上の調光シート2の対向する辺に貼り付ける事で、2つの下側の防水テープを構成する。次に、残る2つの対向する辺に、2つの防水テープを貼り付ける事で2つの上側の防水テープを構成する事ができる。この時、
第一の実施形態と第二の実施形態を組み合わせた場合が、第三の実施形態である。
【0052】
(製造方法)
第一および第二の実施形態と基本的に同じ方法で製造する事ができる。異なるのは、樹脂封止部を形成する箇所だけである。
【0053】
以上で説明した様に、本発明の調光モジュールによれば、支持基材上に配置された矩形状の調光シートの端縁部に防水テープを貼り付ける事により調光シートの防水性を確保可能な構成を備えている。具体的には、調光シートの各辺に防水シートを貼付した構成となっている。コーナー部(角部)においては、一方の辺から延伸した下側の防水テープの上に、隣接するもう一方の辺から延伸した上側の防水テープが貼付された構成となっている。この様な構成においては、下側の防水テープの端縁部において、上から貼付された上側の防水テープとの間に隙間が形成される場合がある。その隙間を通して外部から水分などが侵入する為、その隙間を樹脂で封止した構成となっている。この様にして、防水テープを調光シートの端縁部に貼り付ける作業と、コーナー部に形成される隙間を樹脂で封止する作業と、行う事によって調光モジュールを得る事ができる。その為、製造する作業を容易に実施可能な調光ユニットとなっている。加えて、コーナー部に複数枚のテープが重ね貼りされることもなくなり、調光シート全域にわたって平坦且つ薄型が実現される。
【0054】
また、本発明の調光モジュールの製造方法によれば、本発明の調光モジュールを製造可能とする事ができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・透明支持基材
2・・・調光シート
3・・・(調光シートの)コーナー部
4・・・下側の防水テープ
4-1・・・(下側の防水テープの外側(調光シートとは反対側)の)端縁部
4-2・・・(下側の防水テープの調光シート側の)端縁部
5・・・上側の防水テープ
5-1・・・(上側の防水テープの外側(調光シートとは反対側)の)端縁部
5-2・・・(上側の防水テープの調光シート側の)端縁部
6・・・樹脂封止部
7・・・隙間
8・・・コーナーテープ
9・・・(下側の防水テープの長手方向の)先端部
10、10´・・・調光モジュール
11-1、11-2・・・電極帯
図1
図2
図3
図4
図5