(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】撥液層形成用樹脂組成物、並びに、それを用いた撥液性フィルム、撥液性積層体、包装材及び容器
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20231113BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231113BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231113BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20231113BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20231113BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
C08L23/02
B32B27/32 Z
B65D65/40 D
C08L23/26
C08L53/00
C08L83/04
(21)【出願番号】P 2020525539
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2019022824
(87)【国際公開番号】W WO2019240056
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2018113861
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】永井 暁
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 廣介
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025051(JP,A)
【文献】特開2014-177541(JP,A)
【文献】特開2014-223752(JP,A)
【文献】特開2017-179344(JP,A)
【文献】米国特許第06114443(US,A)
【文献】井出 文雄,実用 ポリマーアロイ設計,株式会社工業調査会,1996年,p.40-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/02
B32B 27/32
B65D 65/40
C08L 23/26
C08L 53/00
C08L 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオレフィン樹脂、(B)シリル化ポリオレフィン、並びに、前記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する部位及び前記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する(C)相溶化剤を含み、前記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が前記(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶であり、
前記(A)ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂であり、
前記(A)ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂である場合、前記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位はポリプロピレン構造を有し、前記(C)相溶化剤は、前記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する部位としてポリエチレンから構成されるポリエチレンユニットと、前記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位としてポリプロピレ
ンから構成されるポリプロピレンユニット
、又は、エチレン・ブチレン共重合体から構成されるエチレン・ブチレン共重合体ユニットとを有し、
前記(A)ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン樹脂である場合、前記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位はポリエチレン構造を有し、前記(C)相溶化剤は、前記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する部位としてポリプロピレ
ンから構成されるポリプロピレンユニット
、又は、エチレン・ブチレン共重合体から構成されるエチレン・ブチレン共重合体ユニットと、前記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位としてポリエチレンから構成されるポリエチレンユニットとを有する、撥液層形成用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)相溶化剤が、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体、及び、エチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)シリル化ポリオレフィンの含有量に対する前記(C)相溶化剤の含有量の質量比((C)相溶化剤の質量/(B)シリル化ポリオレフィンの質量)が0.05~20である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(D)シリコーンを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて形成された撥液層を備える撥液性フィルム。
【請求項6】
前記撥液層の一方の主面上に設けられた1層以上の樹脂層を更に備える、請求項5に記載の撥液性フィルム。
【請求項7】
前記撥液層中の前記(A)ポリオレフィン樹脂の融点T1(℃)と、前記1層以上の樹脂層のうち前記撥液層と接する樹脂層に含まれる樹脂の融点T2(℃)とが、T1<T2の関係を満たす、請求項6に記載の撥液性フィルム。
【請求項8】
基材と、該基材上に設けられた請求項5~7のいずれか一項に記載の撥液性フィルムと、を備え、前記撥液層が少なくとも一方の最表面に配置されている、撥液性積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の撥液性積層体を用いて形成された包装材。
【請求項10】
80℃以上の加熱処理を施す用途に用いられる、請求項9に記載の包装材。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて形成された撥液層を少なくとも内面に有する容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撥液層形成用樹脂組成物、並びに、それを用いた撥液性フィルム、撥液性積層体、包装材及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、飲料、医薬品、化学品等の多くの商品に対して、それぞれの内容物に応じた包装材が開発されている。特に、液体や半固体、ゲル状物質等の内容物の包装材としては、耐水性、耐油性、ガスバリア性、軽量性、フレキシブル性、意匠性などに優れるプラスチック材料が用いられている。
【0003】
また、液体や半固体、ゲル状物質等の内容物の包装材としては、より高機能を提供する目的で、複数の種類のプラスチック基材を積層したプラスチック積層体や、紙、金属箔、無機材料等とプラスチック基材との複合積層体、さらにはプラスチック基材に機能性組成物による処理を施した複合体などが提案されている。
【0004】
上述の高機能の一つとして、例えば、液体や半固体、ゲル状物質等の内容物の包装材内面への付着、すなわち包装体内部への残存を抑制する機能が求められている。より具体的には、ヨーグルト、ゼリー、シロップ等の容器の蓋材、お粥、スープ、カレー、パスタソース等のレトルト食品包装材、化学品や医薬品等の液体、半固体、ゲル状物質等の保存容器用フィルム材料などには、その内面に内容物が付着し、内容物を全て使い切ることができずに無駄が生じることや、内容物の付着により汚れが生じること、内容物の排出作業に手間がかかることを抑制することができる高い撥液性が求められている。
【0005】
これらの要求に対して、例えば特許文献1には、包装材の内面にシリコーン粒子等の疎水性微粒子を含有するシリコーン樹脂組成物層を設けた撥水性包装材が提案されている。また、特許文献2には、球状シリコンを添加した樹脂層を最内層とした内容物撥水性・離型性を有する包装材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-23224号公報
【文献】特開平8-337267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
包装材内面の樹脂層の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が、ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性等の機能を付与する材料として用いられている。しかしながら、撥液性を付与するためにポリオレフィン樹脂に上述したシリコーン粒子を添加した場合であっても、樹脂層内でのシリコーン粒子の凝集や、樹脂層からのシリコーン粒子の遊離が生じ易く、包装材内面への内容物の付着を抑制する効果が必ずしも十分ではなかった。
【0008】
本開示は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、内容物の付着を十分に抑制することができる撥液層を形成可能な樹脂組成物、並びに、それを用いた撥液性フィルム、撥液性積層体、包装材及び容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示は、(A)ポリオレフィン樹脂、(B)シリル化ポリオレフィン、並びに、上記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する部位及び上記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する(C)相溶化剤を含み、上記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が上記(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶である、撥液層形成用樹脂組成物を提供する。
【0010】
上記撥液層形成用樹脂組成物によれば、(A)ポリオレフィン樹脂と、ポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶である(B)シリル化ポリオレフィンと、(C)相溶化剤とを併用することにより、内容物の付着を十分に抑制することができる撥液層を形成することができる。(B)シリル化ポリオレフィンは撥液層に撥液性を付与する成分であるが、(A)ポリオレフィン樹脂にポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶である(B)シリル化ポリオレフィンのみを添加した場合は、形成される撥液層において(B)シリル化ポリオレフィン同士が凝集してしまい、分散性が悪く且つ撥液層表面に偏在し難く、十分な撥液性が得られ難い。これに対し、(C)相溶化剤を(B)シリル化ポリオレフィンと併用することで、(B)シリル化ポリオレフィンの分散性が向上すると共に、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が(C)相溶化剤を介して(A)ポリオレフィン樹脂と相溶することにより(B)シリル化ポリオレフィンのシリコーン部位が撥液層表面に偏在し易くなり、撥液層に効率的に撥液性を付与することができる。これにより、従来のシリコーン粒子を用いた場合よりも優れた撥液性を有する撥液層を形成することができる。
【0011】
上記撥液層形成用樹脂組成物において、上記(C)相溶化剤は、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体、及び、エチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。これらの(C)相溶化剤を用いることで、例えば、(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位のうちの一方にポリプロピレン、他方にポリエチレンを用いることが可能となる。これにより、撥液層にヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性等の機能を付与したり、レトルト食品包装材のような湯煎等の加熱処理が施される包装材用途への適性を付与したりといったことが容易となる。また、(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位のうちの一方にポリプロピレン、他方にポリエチレンを用いた場合に、上記(C)相溶化剤を用いることで、より効率的に撥液層に撥液性を付与することができる。
【0012】
上記撥液層形成用樹脂組成物において、上記(B)シリル化ポリオレフィンの含有量に対する上記(C)相溶化剤の含有量の質量比((C)相溶化剤の質量/(B)シリル化ポリオレフィンの質量)は、0.05~20であってもよい。この含有量の比が上記範囲内であることにより、形成される撥液層は、内容物の付着をより十分に抑制することができる。
【0013】
本開示はまた、(A)ポリオレフィン樹脂、及び、(B)シリル化ポリオレフィンを含み、上記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が上記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する、撥液層形成用樹脂組成物を提供する。
【0014】
上記撥液層形成用樹脂組成物によれば、(A)ポリオレフィン樹脂と、ポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する(B)シリル化ポリオレフィンとを併用することにより、形成される撥液層において、(B)シリル化ポリオレフィンの分散性が向上すると共に、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と相溶することにより(B)シリル化ポリオレフィンのシリコーン部位が撥液層表面に偏在し易くなり、撥液層に効率的に撥液性を付与することができ、内容物の撥液層への付着を十分に抑制することができる。
【0015】
上記撥液層形成用樹脂組成物は、(D)シリコーンを更に含んでいてもよい。(D)シリコーンを更に含むことにより、形成される撥液層において表面のSi存在量を増加させることができ、それによって撥液性をより向上させることができる。
【0016】
本開示はまた、上記本開示の撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を備える撥液性フィルムを提供する。かかる撥液性フィルムによれば、上記本開示の撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を備えることにより、撥液層への内容物の付着を十分に抑制することができる。また、上記撥液性フィルムによれば、水や油だけでなく、カレーやパスタソースなどの水中油分散型内容物に対しても良好な撥液性を発現することができる。
【0017】
上記撥液性フィルムは、上記撥液層の一方の主面上に設けられた1層以上の樹脂層を更に備えていてもよい。撥液性フィルムを撥液層以外の樹脂層を備えた多層構造とすることにより、撥液性に加えて更なる機能性(耐熱性、耐衝撃性等)を付与することが可能となる。また、撥液層の薄膜化が可能となり、コストダウンも可能である。
【0018】
撥液性フィルムが撥液層以外の樹脂層を備える場合、上記撥液層中の上記(A)ポリオレフィン樹脂の融点T1(℃)と、上記1層以上の樹脂層のうち上記撥液層と接する樹脂層に含まれる樹脂の融点T2(℃)とが、T1<T2の関係を満たしていてもよい。上記関係を満たすことにより、結晶化度の観点から、撥液層中の(B)シリル化ポリオレフィンが第2の樹脂層に移行することを抑制でき、撥液層表面への(B)シリル化ポリオレフィンの偏在化又はブリードアウトの効率を向上させることができるため、撥液性をより向上できる傾向がある。
【0019】
本開示はまた、基材と、該基材上に設けられた上記本開示の撥液性フィルムと、を備え、上記撥液層が少なくとも一方の最表面に配置されている、撥液性積層体を提供する。かかる撥液性積層体によれば、上記本開示の撥液性フィルムを備えることにより、撥液層への内容物の付着を十分に抑制することができる。また、撥液性フィルムを所望の機能を有する基材と積層することにより、撥液性積層体に機械強度やバリア性、遮光性等の機能を付与することができる。
【0020】
本開示はまた、上記本開示の撥液性積層体を用いて形成された包装材を提供する。かかる包装材によれば、上記本開示の撥液性積層体を用いて形成されているため、撥液層への内容物の付着を十分に抑制することができる。
【0021】
上記包装材は、80℃以上の加熱処理を施す用途に用いられるものであってもよい。本実施形態に係る包装材によれば、このような用途に用いられた場合であっても、加熱処理後も包装材内面への内容物の付着を抑制することができる。
【0022】
本開示は更に、上記本開示の樹脂組成物を用いて形成された撥液層を少なくとも内面に有する容器を提供する。かかる容器によれば、上記本開示の撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を備えているため、撥液層への内容物の付着を十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、内容物の付着を十分に抑制することができる撥液層を形成可能な樹脂組成物、並びに、それを用いた撥液性フィルム、撥液性積層体、包装材及び容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の一実施形態に係る撥液性積層体の概略断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る撥液性積層体の概略断面図である。
【
図3】撥液性積層体の撥液性の評価方法を説明する模式図である。
【
図4】撥液性積層体の撥液性の評価方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
[撥液性積層体]
本実施形態に係る撥液性積層体は、基材と、該基材上に設けられた撥液性フィルムと、を備え、撥液層が少なくとも一方の最表面に配置された構造を有するものである。
図1及び
図2は、本実施形態に係る撥液性積層体の概略断面図である。本実施形態に係る撥液性積層体は、
図1に示す撥液性積層体1のように、撥液層11からなる撥液性フィルム10と、基材14とが、接着剤13を介して積層された構造を有するものであってもよい。また、本実施形態に係る撥液性積層体は、
図2に示す撥液性積層体2のように、撥液層11及び第2の樹脂層12からなる撥液性フィルム10と、基材14とが、接着剤13を介して積層された構造を有するものであってもよい。撥液性フィルム10が第2の樹脂層12を備える場合、撥液性フィルム10は、撥液層11が撥液性積層体2の最表面となるように、第2の樹脂層12が基材14と対向するように配置される。
【0027】
<撥液層11>
撥液層11は撥液性を有する層である。撥液層11は、加熱によりヒートシール性を発現することができる層であってもよい。ここで、撥液性とは、撥水性及び撥油性の両特性を包含する概念であり、具体的には、液体状、半固体状、もしくはゲル状の水性又は油性材料に対し撥液する特性である。水性又は油性材料としては、水、油、ヨーグルト、ゼリー、プリン、シロップ、お粥、スープ、カレー、パスタソース等の食品、ハンドソープ、シャンプー等の洗剤、医薬品、化粧品、化学品などが挙げられる。また、ヒートシール性とは、一例として、100~200℃、0.1~0.3MPa、1~3秒間の条件にてヒートシールが可能である性質をいう。ヒートシールの条件は、撥液性積層体のヒートシールに要する条件に応じて容易に変更することが可能である。
【0028】
撥液層11の厚さは、0.1~100μmであることが好ましく、1~70μmであることがより好ましく、3~50μmであることが更に好ましく、5~30μmであることが特に好ましい。撥液層11の厚さが上記下限値以上であることにより良好な撥液性及びヒートシール性が得易くなる傾向がある。一方、厚さが上記上限値以下であることにより、撥液性積層体全体の厚さを薄くすることができる。
【0029】
撥液層11は、下記成分を含む撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成することができる。以下、撥液層形成用樹脂組成物について説明する。
【0030】
<撥液層形成用樹脂組成物>
本開示の一実施形態に係る撥液層形成用樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン樹脂(以下、「(A)成分」ともいう)、(B)シリル化ポリオレフィン(以下、「(B)成分」ともいう)、並びに、上記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する部位及び上記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する(C)相溶化剤(以下、「(C)成分」ともいう)を含み、上記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が上記(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶であるものである。
【0031】
本開示の他の実施形態に係る撥液層形成用樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン樹脂、及び、(B)シリル化ポリオレフィンを含み、上記(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が上記(A)ポリオレフィン樹脂と相溶するものである。
【0032】
すなわち、撥液層形成用樹脂組成物は、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶である場合、(C)相溶化剤を必須成分として含有し、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する場合、(C)相溶化剤を必要としない。また、撥液層形成用樹脂組成物は、(D)シリコーンを更に含んでいてもよい。以下、各成分について詳細に説明する。
【0033】
((A)ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂としては特に制限されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック、あるいはランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。αオレフィン成分としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを例示することができる。共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。上記以外でも、ポリオレフィン樹脂は、ポリノルボルネンなどの環状ポリオレフィンであってもよい。また、上記ポリオレフィン樹脂は、シール性及び強度物性(引張強度、衝撃強度など)の観点から、線状ポリオレフィンが好ましく、線状ポリオレフィンは直鎖状でも分岐状でもよい。
【0034】
撥液性積層体をレトルト食品包装材のような湯煎等の加熱処理が施される包装材用途に用いる場合、ポリオレフィン樹脂はポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン樹脂を含有することにより、袋状の包装材が湯煎等の加熱処理によって破袋することを防止し易くなる。
【0035】
ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、並びに、上述したようなエチレン及びプロピレン以外のα-オレフィンとプロピレンとの共重合体(プロピレン系共重合体)が挙げられる。ここでのブロックポリプロピレンとは、後述の(C)相溶化剤であるエチレン-プロピレンブロック共重合体とは異なり、一般的に重合段階のホモポリプロピレンに対してEPR(ゴム成分)及びポリエチレンを分散させた構造を持つものである。これらの中でも、ポリプロピレン樹脂はランダムポリプロピレン又はブロックポリプロピレンを含むことが好ましい。ランダムポリプロピレンを含むことにより、低温・短時間でのヒートシールがし易くなる傾向がある。ブロックポリプロピレンを含むことにより、耐熱性及び耐衝撃性が向上し、熱による袋状の包装材の破袋を防止し易くなる傾向がある。
【0036】
ポリオレフィン樹脂の融点は、最終用途に応じて適宜調整することができる。例えば、レトルト食品包装材用途であれば、ポリオレフィン樹脂の融点は130~170℃であることが好ましい。
【0037】
ポリオレフィン樹脂は所定の酸で変性された変性ポリオレフィンであってもよい。変性ポリオレフィンは、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等から導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分で、ポリオレフィンをグラフト変性することで得られる。また、ポリオレフィン樹脂として、水酸基変性ポリオレフィンやアクリル変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィンを使用することもできる。
【0038】
上述したポリオレフィン樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
((B)シリル化ポリオレフィン)
シリル化ポリオレフィンは、撥液層11に撥液性を付与する成分である。シリル化ポリオレフィンは、ポリオレフィンユニットにシリコーン部位を持たせたものである。
【0040】
シリル化ポリオレフィンとしては、例えば、PE-Siグラフト共重合体として東レ・ダウコーニング株式会社製の製品、PE-Siブロック共重合体として三井化学ファイン株式会社製のイクスフォーラ、PP-Siグラフト共重合体として東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。
【0041】
シリル化ポリオレフィンとしては、撥液層11の撥液性をより向上させる観点から、グラフト共重合体よりもブロック共重合体の方が好ましい。これは、ブロック共重合体の方が、撥液層11表面に偏在化又はブリードアウトし易い傾向にあるためである。
【0042】
上述したシリル化ポリオレフィンは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
シリル化ポリオレフィンは、そのポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と相溶するものであってもよく、相溶しない(非相溶である)ものであってもよい。但し、ポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶であるシリル化ポリオレフィンを用いる場合、以下の(C)相溶化剤と併用することを必須とする。なお、ポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶であるシリル化ポリオレフィンを用いる場合、(C)相溶化剤との併用が必要となるものの、(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンの材料の組み合わせの選択肢が増え、目的・用途に応じた設計が可能であると共に、撥液性をより向上させ易い傾向があるという利点がある。
【0044】
((C)相溶化剤)
相溶化剤は、(B)シリル化ポリオレフィンとしてポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶であるシリル化ポリオレフィンを用いる場合に用いられる。相溶化剤は、(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する部位及び上記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する成分である。相溶化剤を用いることにより、ポリオレフィン部位が(A)ポリオレフィン樹脂と非相溶である(B)シリル化ポリオレフィンと(A)ポリオレフィン樹脂との相溶性を向上させることができる。
【0045】
(A)ポリオレフィン樹脂と相溶する部位としては、(A)ポリオレフィン樹脂と相溶可能なポリオレフィン構造が挙げられ、(A)ポリオレフィン樹脂と同種のポリオレフィン構造を有する部位であることが好ましい。すなわち、(A)ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂である場合、(C)相溶化剤はポリエチレン構造を有することが好ましく、(A)ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン樹脂である場合、(C)相溶化剤はポリプロピレン構造を有することが好ましい。また、(A)ポリオレフィン樹脂がエチレン-αオレフィン共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体等の2種以上のオレフィンからなる共重合体である場合、(C)相溶化剤は、上記共重合体を構成するオレフィンのうち主成分となるオレフィンと同種のオレフィンを重合又は共重合させた構造を少なくとも有することが好ましい。
【0046】
(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位としては、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位と相溶可能なポリオレフィン構造が挙げられ、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位と同種のポリオレフィン構造を有する部位であることが好ましい。すなわち、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位がポリエチレン構造を有する場合、(C)相溶化剤はポリエチレン構造を有することが好ましく、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位がポリプロピレン構造を有する場合、(C)相溶化剤はポリプロピレン構造を有することが好ましい。また、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が、エチレン-αオレフィン共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体等の2種以上のオレフィンからなる共重合体に基づく構造を有する場合、(C)相溶化剤は、上記共重合体を構成するオレフィンのうち主成分となるオレフィンと同種のオレフィンを重合又は共重合させた構造を少なくとも有することが好ましい。
【0047】
(C)相溶化剤としては、例えば、ポリエチレン又はエチレン・α-オレフィン共重合体から構成されるポリエチレンユニットと、ポリプロピレン又はプロピレン・α-オレフィン共重合体から構成されたポリプロピレンユニットとから構成されるブロック共重合体、あるいは、ポリエチレンユニットと、エチレン・ブチレン共重合体ユニットとから構成されるブロック共重合体を用いることが可能である。このようなブロック共重合体は、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体のいずれの構造でも構わない。この場合、(A)ポリオレフィン樹脂もしくは(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位がポリエチレンであれば、当該部位と(C)相溶化剤のポリエチレン部位(ポリエチレンユニット)とが相溶し、(A)ポリオレフィン樹脂もしくは(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位がポリプロピレンであれば、当該部位と(C)相溶化剤のポリプロピレン部位(ポリプロピレンユニット)もしくはエチレン・ブチレン共重合体部位(エチレン・ブチレン共重合体ユニット)とが相溶する。
【0048】
上述した相溶化剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
((D)シリコーン)
シリコーンは、撥液層11の撥液性をより向上させる成分である。シリコーンとしては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンオリゴマー、シリコーンパウダー等が挙げられる。これらの中でも、より良好な撥液性が得られ易いことから、シリコーンオイルが好ましい。
【0050】
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0051】
シリコーンオイルとしては、例えば、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の製品、信越化学工業株式会社製の製品、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の製品、東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。
【0052】
シリコーンレジンとしては、信越化学工業株式会社製の製品、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の製品等が挙げられる。
【0053】
シリコーンオリゴマーとしては、信越化学工業株式会社製の製品、東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。
【0054】
シリコーンパウダーとしては、信越化学工業株式会社製の製品、東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。
【0055】
上述したシリコーンは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分の含有量は、撥液層形成用樹脂組成物の固形分全量を基準として、50.0~99.9質量%であることが好ましく、55.0~99.0質量%であることがより好ましく、60.0~98.0質量%であることが更に好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、良好なヒートシール性が得られ易い傾向がある。一方、(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、相対的に(B)成分及び(C)成分の含有量が増えるため、撥液性が向上し易い傾向がある。
【0057】
撥液層形成用樹脂組成物における(B)成分及び(C)成分の合計の含有量は、撥液層形成用樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.1~50.0質量%であることが好ましく、1.0~45.0質量%であることがより好ましく、2.0~40.0質量%であることが更に好ましい。(B)成分及び(C)成分の合計の含有量が上記下限値以上であると、撥液性が向上し易い傾向がある。一方、(B)成分及び(C)成分の合計の含有量が上記上限値以下であると、相対的に(A)成分の含有量が増えるため、良好なヒートシール性が得られ易い傾向がある。
【0058】
撥液層形成用樹脂組成物が(C)成分を含む場合、(B)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比((C)成分の質量/(B)成分の質量)は、0.01~50であってもよく、0.05~30であることが好ましく、0.05~20であることがより好ましい。この含有量の比が上記下限値以上であると、撥液層において(B)シリル化ポリオレフィンを十分に分散させることができ、より良好な撥液性を得ることができる傾向がある。一方、この含有量の比が上記上限値以下であると、過剰な(C)相溶化剤により(B)シリル化ポリオレフィンが被覆されることを防ぎ、より良好な撥液性を得ることができる傾向がある。また、含有量の比が上記上限値を超えるほど(C)相溶化剤を添加しても、(B)シリル化ポリオレフィンがそれ以上分散しない状態となり、撥液性の向上効果が見られなくなる傾向がある。
【0059】
撥液層形成用樹脂組成物が(D)成分を含む場合、その含有量は、撥液層形成用樹脂組成物全量を基準として0.1~20.0質量%であることが好ましく、1.0~15.0質量%であることがより好ましく、2.0~10.0質量%であることが更に好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値以上であると、撥液性が向上し易い傾向がある。一方、(D)成分の含有量が上記上限値以下であると、相対的に(A)成分の含有量が増えるため、良好なヒートシール性が得られ易い傾向がある。また、(D)成分の含有量が上記上限値を超えると、撥液層からの(D)成分の遊離が生じ易くなる傾向がある。
【0060】
撥液層形成用樹脂組成物は、撥液性を損なわない程度の範囲で、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等が挙げられる。
【0061】
撥液層11は、上記撥液層形成用樹脂組成物を製膜することで形成することができる。
【0062】
<第2の樹脂層12>
第2の樹脂層12は、ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性、酸素・水蒸気バリア性等を向上させるために撥液層11と基材14との間に設けられる層である。第2の樹脂層12は、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0063】
第2の樹脂層12に用いられる熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂、エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのエステル化物又はイオン架橋物、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物、ポリ酢酸ビニル又はそのケン化物、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、フラン樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
第2の樹脂層12に用いられる上記熱可塑性樹脂は、ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性が向上し易いことから、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、撥液層11に用いられる(A)ポリオレフィン樹脂と同様のものを用いることができる。
【0065】
第2の樹脂層12が撥液層11と接している場合、撥液層11中の(A)ポリオレフィン樹脂の融点T1(℃)と、第2の樹脂層12中の上記熱可塑性樹脂の融点T2(℃)とは、T1<T2の関係を満たすことが好ましい。上記関係を満たすことにより、結晶化度の観点から、撥液層11中の(B)シリル化ポリオレフィンが第2の樹脂層12に移行することを抑制でき、撥液層11表面への(B)シリル化ポリオレフィンの偏在化又はブリードアウトの効率を向上させることができるため、撥液性をより向上できる傾向がある。同じ観点から、融点T2は、融点T1よりも1℃以上高いことが好ましく、3℃以上高いことがより好ましい。
【0066】
第2の樹脂層12の厚さは、本撥液層形成用樹脂組成物を用いた商材の最終用途に応じて適宜設定できる。第2の樹脂層12の厚さは、例えば、0.1~300μmであることが好ましく、1~200μmであることがより好ましく、5~150μmであることが更に好ましく、10~100μmであることが特に好ましい。
【0067】
<撥液性フィルム10>
上述した撥液層11単層、又は、撥液層11及び第2の樹脂層12の2層により、撥液性を有する撥液性フィルム10が形成される。撥液性フィルム10は、基材14の表面の一部又は全部を覆うように形成されている。なお、撥液性フィルム10は、用途に応じて、基材14と積層せずに撥液性フィルム10単独で使用してもよい。
【0068】
撥液性フィルム10は、撥液層11及び第2の樹脂層12以外の他の樹脂層を更に1層以上含んでいてもよい。他の樹脂層の組成は、第2の樹脂層12の組成と同様であってもよく、異なっていてもよい。
【0069】
<基材14>
基材14は、支持体となる物であれば特に制限はなく、例えば紙、樹脂フィルム、金属箔等が挙げられる。紙としては、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙、クラフト紙等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロースアセテート、セロファン樹脂の少なくとも一種を含むフィルムが挙げられる。このフィルムは延伸フィルムでもよいし、非延伸フィルムでもよい。金属箔としては、例えばアルミ箔、ニッケル箔等が挙げられる。基材14は、材質の異なる複数の基材を積層したものであってもよい。
【0070】
基材14の厚さは特に限定されず、用途に応じて適宜調整することができるが、通常、1~500μmであり、好ましくは10~100μmである。
【0071】
基材14と撥液性フィルム10との貼り合わせ方法としては、以下のような、接着剤によるラミネート方法、及び、熱処理によるラミネート方法などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0072】
(接着剤によるラミネート方法)
接着剤によるラミネート方法としては、ドライラミネート、ウェットラミネート、ノンソルベントラミネートなどの各種公知のラミネート方法を用いることができる。これらのラミネート方法に用いられる接着剤13としては以下のものが挙げられる。
【0073】
<接着剤13>
接着剤13は、撥液性フィルム10と基材14とを接着するものである。接着剤13としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。上述した各種ポリオールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
接着剤13には更に、接着促進を目的として、上述したポリウレタン樹脂に、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤などを配合してもよい。
【0075】
また、接着剤13に求められる性能に応じて、上述したポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
【0076】
接着剤13の厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。
【0077】
(熱処理によるラミネート方法)
熱処理によるラミネート方法としては、大きく以下の方法が挙げられる。
(1)接着性樹脂を、あらかじめ製膜した撥液性フィルム10と基材14との間に押出し、ラミネートする方法。
(2)撥液性フィルム10を構成する樹脂層と接着性樹脂とを共押出しし、基材14とラミネートする方法。
(3)上記(1)もしくは(2)の方法で得られたラミネート基材を、更に熱ロールで加熱・加圧することにより接着させる方法。
(4)上記(1)もしくは(2)の方法で得られたラミネート基材を、更に高温雰囲気下で保管する、あるいは高温雰囲気下の乾燥・焼付け炉を通過させる方法。
【0078】
熱処理によるラミネート方法で用いられる接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。また、上記の方法では押出ラミネートにより基材14と撥液性フィルム10とを積層しているが、押出ラミネートを行わずに、酸変性ポリオレフィン系コーティング剤(溶解型、分散型)をあらかじめ基材14上に塗工形成した後、撥液性フィルム10を熱処理により積層させることも可能である。
【0079】
また、基材14には、接着性プライマー(アンカーコート)を設けることも可能である。その材料として、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアリルアミン系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素-酢酸ビニル系などを用いることが可能である。接着性プライマーには、必要に応じて、接着剤13として使用可能な上記の各種硬化剤や添加剤を配合してもよい。
【0080】
[包装材]
本実施形態に係る包装材は、上述した撥液性積層体を用いて形成されたものである。包装材として具体的には、ヨーグルト、ゼリー、シロップ等の容器の蓋材、お粥、スープ、カレー、パスタソース等のレトルト食品包装材(レトルトパウチ)などが挙げられる。包装材の内面(内容物側)に撥液層が配置されるように包装材を形成することで、液体や半固体、ゲル状物質等の内容物の包装材内面への付着や残存を抑制することができる。また、レトルト食品包装材のような袋状の包装材においては、包装材の最内層同士がブロッキングすることで内容物が排出され難くなる場合があるが、本実施形態に係る包装材によれば、最内層である撥液層同士がブロッキングし難く、内容物を効率的に排出することができる。
【0081】
上記包装材は、80℃以上の加熱処理を施す用途に用いられるものであってもよい。具体的には、レトルト食品包装材のような湯煎等の加熱処理が施される包装材用途に用いられるものであってもよい。本実施形態に係る包装材によれば、このような用途に用いられた場合であっても、加熱処理後も包装材内面への内容物の付着や残存を抑制できる。
【0082】
[容器]
本実施形態に係る容器は、上述した撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を少なくとも内面(内容物側)に有する容器である。容器として具体的には、化学品や医薬品等の液体、半固体、ゲル状物質等の保存容器、ハンドソープやシャンプー等を収容するボトルなどが挙げられる。容器の内面(内容物側)に撥液層が配置されるように容器を形成することで、液体や半固体、ゲル状物質等の内容物の容器内面への付着や残存を抑制することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
<撥液層形成用樹脂組成物の作製>
(A)成分である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、商品名「エボリュー」、株式会社プライムポリマー製)と、(B)成分であるシリル化ポリエチレン(PE-Siのグラフト共重合体、東レ・ダウコーニング株式会社製)とを混合し、撥液層形成用樹脂組成物を調製した。各成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量を基準として、(B)成分が5質量%、残部が(A)成分となるように調整した。
【0085】
<撥液性積層体の作製>
3層共押出し機を用いて、撥液層形成用樹脂組成物を押出し製膜し、厚さ100μmの撥液層からなる撥液性フィルムを得た。得られた撥液性フィルムと、基材である厚さ38μmのPETフィルム(商品名「エンブレット」、ユニチカ株式会社製)とを、ポリウレタン系接着剤(三井化学株式会社製)を用いてドライラミネートし、50℃で5日間エージングして、撥液性積層体を得た。
【0086】
[実施例2~10]
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分及び(B)成分の種類、並びに、(B)成分の含有量((A)成分の含有量はその残部)を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0087】
[実施例11]
<撥液層形成用樹脂組成物の作製>
(A)成分である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、商品名「エボリュー」、株式会社プライムポリマー製)と、(B)成分であるシリル化ポリエチレン(PE-Si-PEのトリブロック共重合体、商品名「イクスフォーラ」、三井化学ファイン株式会社製)と、(D)成分であるシリコーンオイル(ジメチルシリコーン、東レ・ダウコーニング株式会社製)とを混合し、撥液層形成用樹脂組成物を調製した。各成分の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の総量を基準として、(B)成分が5質量%、(D)成分が5質量%、残部が(A)成分となるように調整した。
【0088】
<撥液性積層体の作製>
上記撥液層形成用樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0089】
[実施例12~13]
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分及び(B)成分の種類を表1に示すように変更したこと以外は実施例11と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0090】
[実施例14]
<撥液層形成用樹脂組成物の作製>
実施例1と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物を作製した。
【0091】
<撥液性積層体の作製>
(A)成分である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、商品名「エボリュー」、株式会社プライムポリマー製)を、第2の樹脂層形成用樹脂組成物とした。3層共押出し機を用いて、撥液層形成用樹脂組成物と第2の樹脂層形成用樹脂組成物とを共押出し製膜し、厚さ15μmの撥液層と厚さ85μmの第2の樹脂層からなる撥液性フィルムを得た。得られた撥液性フィルムの第2の樹脂層と、基材である厚さ38μmのPETフィルム(商品名「エンブレット」、ユニチカ株式会社製)とを、ポリウレタン系接着剤(三井化学株式会社製)を用いてドライラミネートし、撥液性積層体を得た。
【0092】
[実施例15]
第2の樹脂層形成用樹脂組成物における(A)成分の種類を表1に示すように変更したこと以外は実施例14と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0093】
[実施例16]
<撥液層形成用樹脂組成物の作製>
(A)成分であるランダムポリプロピレン(プロピレン-エチレンランダム共重合体、商品名「プライムポリプロ」、株式会社プライムポリマー製)と、(B)成分であるシリル化ポリエチレン(PE-Si-PEのトリブロック共重合体、商品名「イクスフォーラ」、三井化学ファイン株式会社製)と、(C)成分であるPP-PEのブロック共重合体とを混合し、撥液層形成用樹脂組成物を調製した。各成分の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量を基準として、(B)成分が5質量%、(C)成分が0.1質量%、残部が(A)成分となるように調整した。
【0094】
<撥液性積層体の作製>
上記撥液層形成用樹脂組成物を用い、且つ、第2の樹脂層形成用樹脂組成物における(A)成分の種類を表1に示すように変更したこと以外は実施例14と同様にして、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0095】
[実施例17~56]
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分、(B)成分及び(C)成分の種類、並びに、(B)成分及び(C)成分の含有量((A)成分の含有量はそれらの残部)と、第2の樹脂層形成用樹脂組成物における(A)成分の種類とを、表1及び表2に示すように変更したこと以外は実施例16と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。なお、実施例25では、表1に示すように、撥液層形成用樹脂組成物に(D)成分を更に添加した。
【0096】
[比較例1]
撥液層形成用樹脂組成物に(B)成分を添加しなかったこと以外は実施例14と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0097】
[比較例2]
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分の種類と、第2の樹脂層形成用樹脂組成物における(A)成分の種類とを、表2に示すように変更したこと以外は比較例1と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0098】
[比較例3~4]
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分及び(B)成分の種類、並びに、(B)成分の含有量((A)成分の含有量はその残部)と、第2の樹脂層形成用樹脂組成物における(A)成分の種類とを、表2に示すように変更したこと以外は実施例14と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0099】
[比較例5]
撥液層形成用樹脂組成物に(B)成分を添加しなかったこと以外は実施例24と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0100】
表1及び表2中、各成分の詳細は以下のとおりである。表1及び表2中の「-」は、該当する成分を使用しなかったことを意味する。また、表1及び表2には、撥液層における(B)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比((C)成分の質量/(B)成分の質量)を示した。また、表1及び表2には、撥液層に用いた(A)成分である樹脂の融点T1(℃)と、第2の樹脂層に用いた(A)成分である樹脂の融点T2(℃)との大小関係を示した。更に、表1及び表2には、撥液層中の(A)成分と(B)成分(ポリオレフィン部位)との相溶性を示した。
【0101】
〔(A)ポリオレフィン樹脂〕
A1:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、商品名「エボリュー」、融点116℃、株式会社プライムポリマー製
A2:ランダムポリプロピレン(プロピレン-エチレンランダム共重合体)、商品名「プライムポリプロ」、融点134℃、株式会社プライムポリマー製
A3:ブロックポリプロピレン、商品名「ノバテック」、融点165~166℃、日本ポリプロ株式会社製
A4:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、商品名「ノバテックLL」、融点122℃、日本ポリエチレン株式会社製
【0102】
〔(B)シリル化ポリオレフィン〕
B1:PE-Siのグラフト共重合体、東レ・ダウコーニング株式会社製
B2:PE-Si-PEのトリブロック共重合体、商品名「イクスフォーラ」、三井化学ファイン株式会社製
B3:PP-Siのグラフト共重合体、東レ・ダウコーニング株式会社製
【0103】
〔(C)相溶化剤〕
C1:プロピレンとエチレンとのブロック共重合体
C2:エチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体
【0104】
〔(D)シリコーン〕
D1:シリコーンオイル(ジメチルシリコーン)、東レ・ダウコーニング株式会社製
【0105】
[撥液性評価]
<実施例1~6、11、14~15、34~40及び比較例1:熱処理なしでの撥液性>
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いた実施例1~6、11、14~15、34~40及び比較例1について、
図3に示した方法により、熱処理なしでの撥液性の評価を行った。まず、実施例及び比較例で得られた撥液性積層体を縦210mm×横300mmにカットしたサンプル100を、撥液層が内側となるように縦210mm×横150mmのサイズに2つに折り畳み(
図3の(a)を参照)、縦方向端部の1辺と横方向端部の1辺(折り返した辺とは反対側の辺)とを、ヒートシーラーで190℃、0.03MPa、2secの条件で10mm幅にわたって熱封緘してシール部51を形成し、縦方向端部の一辺が開口しているパウチを作製した(
図3の(b)を参照)。次に、パウチの開口部から100gのサラダ油52(商品名「日清サラダ油」、日清オイリオ社製)を注液した(
図3の(c)を参照)。その後、開口部をヒートシーラーで190℃、0.03MPa、2secの条件で10mm幅にわたって熱封緘してシール部51を形成し、パウチを密閉した(
図3の(d)を参照)。密閉したパウチの折り返した辺のある角部について、シール部51を除いた寸法で縦3cm×横3cmの三角形となる部分を切断して注ぎ口を形成した(
図3の(e)を参照)。注ぎ口と対角線上にある角部53を持ち、パウチを逆さにして30秒間保持し、容器56にサラダ油52を排出させて、秤57により排出量(g)を秤量した(
図3の(f)を参照)。秤量した排出量から、下記式により残液量(%)を求めた。
残液量(%)={(100-排出量)/100}×100
測定は3回行い、3回の平均残液量から下記評価基準により撥液性を評価した。平均残液量(%)及び撥液性の評価結果を表3及び表4に示す。
◎:平均残液量が2.0%未満
○:平均残液量が2.0%以上2.5%未満
△:平均残液量が2.5%以上3.5%未満
×:平均残液量が3.5%以上
【0106】
<実施例7~10、12~13、16~33、41~56及び比較例2~5:湯煎処理後及びレトルト処理後の撥液性>
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分としてランダムポリプロピレン(PP-PEランダム共重合体)又はブロックポリプロピレンを用いた実施例7~10、12~13、16~33、41~56及び比較例2~5について、
図4に示した方法により、湯煎処理後及びレトルト処理後の撥液性の評価を行った。まず、実施例及び比較例で得られた撥液性積層体を縦210mm×横150mmにカットしたサンプル200を2枚用意した。2枚のサンプル200を、それぞれの撥液層が内側となるように重ね、縦方向端部の1辺と横方向両端部の2辺とを、ヒートシーラーで190℃、0.03MPa、2secの条件で10mm幅にわたって熱封緘してシール部51を形成し、縦方向端部の一辺が開口しているパウチを作製した(
図4の(a)を参照)。次に、パウチの開口部から100gの水中油分散型液体54(商品名「ボンカレー」、大塚食品社製)を注液した(
図4の(b)を参照)。その後、開口部をヒートシーラーで190℃、0.03MPa、2secの条件で10mm幅にわたって熱封緘してシール部51を形成し、パウチを密閉した(
図4の(c)を参照)。
【0107】
湯煎処理の場合は、密閉したパウチを100℃で5分間湯煎処理した。一方、レトルト処理の場合は、密閉したパウチを高温高圧調理殺菌装置(日立キャピタル株式会社製)に投入後、高温の水蒸気で圧力0.2MPaの条件下で121℃で30分間、レトルト処理を行い、更に上記の湯煎処理を行った。
【0108】
上記処理後直ちに、密閉したパウチの上部を切断して注ぎ口を形成した(
図4の(d)を参照)。次いで、注ぎ口と反対側のシール部51を持ち、パウチを逆さにして30秒間保持し、容器56に水中油分散型液体54を排出させて、秤57により排出量(g)を秤量した(
図4の(e)を参照)。秤量した排出量から、下記式により残液量(%)を求めた。
残液量(%)={(100-排出量)/100}×100
測定は3回行い、3回の平均残液量から下記評価基準により撥液性を評価した。平均残液量(%)及び撥液性の評価結果を表3及び表4に示す。
◎:平均残液量が8.0%未満
○:平均残液量が8.0%以上10.0%未満
△:平均残液量が10.0%以上13.0%未満
×:平均残液量が13.0%以上
【0109】
[外観評価]
上記撥液性評価において、パウチ内から液体を排出した際の液体の排出挙動を目視にて観察し、下記評価基準により外観評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
○:液体をはじく様子が見られ、撥液性積層体への付着が少ない。
△:液体をはじく様子は見られるが、撥液性積層体に付着している。
×:液体をはじく様子が見られない。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
表3及び表4に示した結果から明らかなように、実施例1~56の撥液性積層体によれば、比較例1~5の撥液性積層体と比較して、撥液性を向上させることができることが確認された。
【0115】
また、実施例41~56の撥液性積層体は、撥液層中の樹脂の融点T1と第2の樹脂層中の樹脂の融点T2とがT1<T2の関係を満たしており、特に良好な撥液性が得られることが分かった。
【0116】
なお、実施例16の撥液性積層体は(C)成分/(B)成分の質量比が0.02と低く、また、実施例17の撥液性積層体は(C)成分/(B)成分の質量比が25と高く、これらは(C)成分/(B)成分の質量比が0.05~20の範囲内である他の実施例の撥液性積層体と比較して撥液性がやや低い結果であった。しかし、実施例16及び17の撥液性積層体は、比較例の撥液性積層体と比較すれば、撥液性を向上させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0117】
1,2…撥液性積層体、11…撥液層、12…第2の樹脂層、13…接着剤、14…基材、51…シール部、52…サラダ油、53…角部、54…水中油分散型液体、56…容器、57…秤、100,200…撥液性積層体の評価用サンプル。