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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】情報表示媒体及びそれに関する製造方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/435 20140101AFI20231113BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20231113BHJP
   B42D 25/333 20140101ALI20231113BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20231113BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B42D25/435
B42D25/328
B42D25/333
G02B5/18
G09F3/02 W
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022032812
(22)【出願日】2022-03-03
(62)【分割の表示】P 2018537592の分割
【原出願日】2017-09-04
(65)【公開番号】P2022082555
(43)【公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2016172797
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016172798
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016172799
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016208886
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017099619
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】香田 祖光
(72)【発明者】
【氏名】籠谷 彰人
(72)【発明者】
【氏名】戸田 敏貴
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-193361(JP,A)
【文献】特開2005-313354(JP,A)
【文献】特開2013-222027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00-25/485
G09F 3/00- 3/20
G07D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、金属、及び合金から選択された1つ以上の材料からなる光反射層が配置され、
上記光反射層に、外縁形状及び凹凸領域の形状の一方又は両方の組み合わせで認証情報のある第1情報を表示する第1の領域と、
一部又は全部が上記第1の領域中の上記第1情報を表示する上記光反射層の部分に重なるように設定されると共に、上記光反射層の部分的な材料の除去で形成された形状で識別情報を表示する第2情報表示領域と、を有し、
上記基材は、上記一方の面における上記第1の領域に対応する面に複数の凸部または凹部により構成される凹凸構造が形成されると共に上記第1の領域に連続する第2の領域に対応する面が平坦若しくは上記第1の領域よりも粗さが小さい面形状に構成された構造形成層を有し、
上記光反射層は、上記構造形成層の上記第1の領域および上記第2の領域に対応する面に対し、上記構造形成層と異なる、金属、及び合金から選択された1つ以上の材料によって形成されることを特徴とする情報表示媒体。
【請求項2】
上記光反射層は、上記第1の領域に連続した第2の領域を有し、
上記第2情報表示領域は、上記第1の領域と第2の領域の両方の領域に跨るように設定されていることを特徴とする請求項1に記載した情報表示媒体。
【請求項3】
上記識別情報を表示する光反射層の部分的な材料除去による領域の幅は、パルスレーザーの照射による材料の除去で形成可能な領域幅であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した情報表示媒体。
【請求項4】
上記第1の領域が、互いに隣接した2つ以上のサブ領域からなり、上記サブ領域のうちの1つ以上のサブ領域における上記光反射層を構成する単位面積当たりの上記材料の量が、それ以外の上記サブ領域における上記光反射層を構成する単位面積当たりの上記材料の量より50%以上少なくなっていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した情報表示媒体。
【請求項5】
上記第1の領域は、アスペクト比が0.1以上1未満の上記凹凸構造が形成されている第1サブ領域と、アスペクト比が1以上2以下の上記凹凸構造が形成されている第2サブ領域とを含み、
上記第2サブ領域に形成される上記光反射層は、上記第1サブ領域に形成される上記光反射層に比べ、光反射層を構成する単位面積当たりの材料の量が50%以上少なくなっていることを特徴とする請求項4に記載した情報表示媒体。
【請求項6】
上記光反射層の部分的な材料除去による識別情報は、材料除去の部分若しくは材料除去による材料残留部分により情報が形成されることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載した情報表示媒体。
【請求項7】
上記第1情報が、線画、カリグラフ、肖像画、ランドマーク、風景若しくはそれらの組合せからなることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した情報表示媒体。
【請求項8】
上記第1情報が幾何学模様、彩紋若しくはそれらの組合せからなることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した情報表示媒体。
【請求項9】
上記第1情報がロゴ、シンボル、符号、アイコン柄からなることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した情報表示媒体。
【請求項10】
上記識別情報が、マイクロ文字として記録されていることを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか1項に記載した情報表示媒体。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の情報表示媒体をすき込み、又は貼り合わした有価証券。
【請求項12】
上記請求項11に記載の有価証券の検証方法であって、
上記情報表示媒体の認証情報を反射光または透過光により識別し、
上記情報表示媒体の認証情報を反射光または透過光の拡大観察により識別する、
ことを特徴とする有価証券の検証方法。
【請求項13】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の情報表示媒体への識別情報記録方法であって、
上記光反射層に対し、パルスレーザーによって当該光反射層を部分的に除去することで上記識別情報を形成することを特徴とする情報表示媒体への識別情報記録方法。
【請求項14】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の情報表示媒体への識別情報記録方法であって、
上記構造形成層の内部において、上記光反射層が覆われていない側から上記構造形成層の平均厚さまでの領域が焦点位置となるように集光されたパルスレーザーを照射することによって上記材料の除去を実行することで、上記識別情報を形成することを特徴とする情報表示媒体への識別情報記録方法。
【請求項15】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の情報表示媒体への識別情報記録方法であって、
上記構造形成層の内部において、上記光反射層が覆われている側から上記構造形成層の平均厚さまでの領域が焦点位置となるように集光されたパルスレーザーを照射することによって上記材料の除去を実行することで、上記識別情報を形成することを特徴とする情報表示媒体への識別情報記録方法。
【請求項16】
請求項13~請求項15のいずれか1項に記載の情報表示媒体への識別情報記録方法を有することを特徴とする情報表示媒体の製造方法。
【請求項17】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の情報表示媒体と、その情報表示媒体の裏面側に形成された接着層とを有することを特徴とするラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報表示媒体に関する技術である。特に、本開示は、パルスレーザーの照射により作製されるのに好適な情報表示媒体に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
銀行券や商品券などの有価証券、証明書、ブランド品、高価格品、電子機器、個人認証媒体などの物品には、その物品の有する価値や情報を他者から保護するために、偽造が難しいことが望まれている。そのため、こうした物品には、偽造の難しい偽造防止技術や情報表示手法が組み込まれている。
例えば、偽造を難しくするため、上述の物品に対し、偽造の難しい情報表示媒体を付したり、物品の一部に表示部を形成したりすることがある。
【0003】
例えば、紙幣や証明書、チケットなどの偽造防止として、透かし模様を形成することが一般的に知られている。透かし模様は、証紙時の紙の厚みの違いで得られるものから、型押しによる形成、更にはレーザー加工により形成されることも知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来の透かし模様の形成は証紙時に行われるため、オンデマンドな透かし模様を形成できなかった。更に、特許文献1のようにレーザー加工による透かし模様の形成には、特定の波長を吸収する顔料を証紙時に混ぜ込む必要があり、高コストになるといった問題がある。
また、従来透かし模様は紙基材に用いられてきたが、近年有機分子からなるポリマー材料を基材として用いた紙幣などが流通し始めていることから、有機分子からなる基材への透かし模様の形成方法が確立されていない。
【0005】
また、偽造の難しい表示部の表示として、偽造防止インクを利用する方法が知られている。例えば特許文献2には、特殊な色料や顔料を利用し、反射光の分光特性を変化させることで反射観察時において容易に情報を認識させることが記載されている。
また、情報表示手法として、回折格子やホログラム、レンズアレイ、散乱構造などの凹凸構造が利用される場合もある。これら凹凸構造を形成するためには、電子線描画装置やレーザー描画装置などの高価な製造設備が必要であると共に、構造を解析することが困難であるため、偽造防止効果を発揮しえる。
【0006】
更に、特許文献3には、アスペクト比が大きな凹凸構造を備えた領域と、平坦であるか又はアスペクト比がより小さな凹凸構造を備えた領域とを含む構造形成層において、次のような光学素子の製造方法が開示されている。すなわち、構造形成層上に、金属反射層を真空蒸着法によって均一な表面密度で形成する。その後、金属反射層をエッチングするエッチング液に対して耐久性を有する材料を真空蒸着法によって均一な表面密度で形成する。次いで、得られた積層体をエッチング処理に供する。こうすることで、アスペクト比が大きな凹凸構造に起因して、エッチング液に対して耐久性を有する材料が不連続膜となり、エッチング液を浸透させるため、アスペクト比が大きな凹凸構造を備えた領域のみにおいて金属反射層を除去することができる。これにより、高い位置精度で金属反射層を形成することができ、より偽造防止効果を高めることが出来る。
【0007】
しかしながら、特許文献3の手法では、金属反射層およびエッチング液に対して耐久性のある材料をドライプロセスにて形成しているにもかかわらず、エッチング処理の際にウェットプロセスを利用している。そのため、生産時に複数のプロセスを通さなければならなくなり、コストが高くなってしまう。
また、あらかじめエッチング液に対して耐久性のある材料を形成するということは、固定の絵柄のみとなるように金属反射層を除去することとなり、オンデマンドにて金属反射層を除去することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3486275号公報
【文献】特許第2999354号公報
【文献】特許第5051311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、偽造防止効果を高めることのできる情報表示媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために、本開示の一態様は、基材の一方の面に、金属、合金、金属化合物、及び半金属化合物から選択された1つ以上の材料からなる光反射層が配置され、上記光反射層に、外縁形状及び凹凸領域の形状の一方又は両方の組み合わせで第1情報を表示する第1の領域と、一部又は全部が上記第1の領域中の上記第1情報を表示する上記光反射層の部分に重なるように設定されると共に、上記光反射層の部分的な材料の除去で識別情報を表示する第2情報表示領域と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本開示の他の態様は、有機基材と、上記有機基材に形成された描画部とを有し、上記描画部は、上記有機基材の表面を部分的に除去して形成された除去部と上記有機基材の表面を炭化して形成され上記除去部位置よりも光透過率が低い炭化凹部との組合せで形成された第1の描画部と、上記有機基材の内部に形成された空隙部と上記有機基材の内部に形成され上記空隙部よりも光透過率が低い炭化部との組合せで形成されて上記第1の描画部よりも微細な第2の描画部と、を有する。
【0012】
また、本開示の他の態様は、有機基材と、上記有機基材に形成された描画部とを有し、上記描画部は、上記有機基材の表面を部分的に除去して形成された除去部と上記有機基材の表面を炭化して形成され上記除去部位置よりも光透過率が低い炭化凹部との組合せで形成される。
【0013】
また、本開示の他の態様は、有機基材と、上記有機基材に形成された描画部とを有し、上記描画部は、上記有機基材の内部に形成された空隙部と上記有機基材の内部に形成され上記空隙部よりも光透過率が低い炭化部との組合せで形成される。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、偽造防止効果を高めることのできる情報表示媒体を提供することが出来る。
また、例えば、偽造防止のための追加材料等を必要とせずに、オンデマンドに加工することができるため、認証情報と識別情報を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の一部を示す部分断面図である。
図2】第1の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図3】第1の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図4】第1の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図5】第1の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図6】第1の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図7】第1の実施形態に係る情報表示媒体の一例を示す正面図である。
図8】第1の実施形態に係る情報表示媒体の一例を示す正面図である。
図9】第1の実施形態に係る情報表示媒体の製造方法の一例を示す鳥瞰図である。
図10】第1の実施形態に係る情報表示媒体の製造方法の一例を説明する部分断面図である。
図11】第1の実施形態に係る情報表示媒体の製造方法の一例を示す模式図である。
図12】第2の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の一部を示す部分断面図である。
図13】第2の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図14】第2の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図15】第2の実施形態に係る情報表示媒体の一例を示す正面図である。
図16】第2の実施形態に係る情報表示媒体の一例を示す部分拡大鳥瞰図である。
図17】第2の実施形態に係る情報表示媒体の他の例を示す部分拡大鳥瞰図である。
図18】第2の実施形態に係る情報表示媒体の他の例を示す部分拡大鳥瞰図である。
図19】第2の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図20】第2の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図21】第2の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図22】第2の実施形態に係る情報表示媒体の製造プロセスの一例を示す鳥瞰図である。
図23】第2の実施形態に係る情報表示媒体のサブ領域の一例を示す鳥瞰図である。
図24】第2の実施形態に係る情報表示媒体のサブ領域の一例を示す鳥瞰図である。
図25】第2の実施形態に係る情報表示媒体のサブ領域の一例を示す鳥瞰図である。
図26】第2の実施形態に係る情報表示媒体の一例を示す正面図である。
図27】第2の実施形態に係る情報表示媒体の検証方法を説明するための概念図である。
図28】第3の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の一部を示す部分断面図である。
図29】第3の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図30】第3の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図31】第3の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図32】第3の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図33】第3の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図34】第3の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図35】第3の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図36】第3の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図37】第3の実施形態に係る情報表示媒体の一例を示す正面図である。
図38】第3の実施形態に係る情報表示媒体の製造方法の一例を示す概念図である。
図39】第3の実施形態に係る局所的エネルギー印加の一例を示す断面図である。
図40】第3の実施形態に係る情報表示媒体の真偽判定方法の一例を示す斜視図である。
図41】第3の実施形態に係る情報表示媒体の他の例を示す正面図である。
図42】第3の実施形態に係る情報表示媒体の真偽判定方法の他の例を示す斜視図である。
図43】第4の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の一部を示す部分断面図である。
図44】第4の実施形態に係る情報表示媒体を形成する構造形成層の一部を示す部分斜視図である。
図45】第4の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図46】第4の実施形態に係る情報表示媒体の断面構造の他の例の一部を示す部分断面図である。
図47】第4の実施形態に係る情報表示媒体の一例を示す平面図である。
図48】第4の実施形態に係る情報表示媒体の製造方法の一例を示す概念図である。
図49】第5の実施形態の1に係る情報表示媒体の部分断面図である。
図50】第5の実施形態の2に係る情報表示媒体の部分断面図である。
図51】第5の実施形態の3に係る情報表示媒体の部分断面図である。
図52】第5の実施形態の4に係る情報表示媒体の部分断面図である。
図53】第5の実施形態の5に係る情報表示媒体の部分断面図である。
図54】第5の実施形態の6に係る情報表示媒体の部分断面図である。
図55】第5の実施形態の7に係る情報表示媒体を示し、(A)は当該情報表示媒体の一部を示す鳥瞰図、(B)は当該情報表示媒体の部分断面図である。
図56】第5の実施形態の8に係る情報表示媒体の一部を示す鳥瞰図である。
図57】第5の実施形態の9に係る情報表示媒体の一部を示す鳥瞰図である。
図58】本開示に係る情報表示媒体の製造方法の一例を示す図である。
図59】本開示に係る情報表示媒体の製造方法の一例を説明する部分断面図である。
図60】本開示に係る情報表示媒体の正面図である。
図61】本開示に係る情報表示媒体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率、凹み形状等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
「第1の実施形態」
本開示に基づく第1の実施形態について説明する。
本実施形態の情報表示媒体は、基材の一方の面に、部分的に金属又は金属酸化物からなる光反射層が配置され、光反射層の外縁形状によって認証情報である第1情報を表示する第1の領域と、第1の領域中の第1情報を表示する光反射層に設定され、その光反射層の部分的な除去で形成された識別情報を表示する第2情報表示領域とを有する。上記の光反射層の外縁形状と、第2の実施形態で説明する凹凸領域の形状とを組み合わせて、若しくは第2の実施形態で説明する凹凸領域の形状で認証情報である第1情報を構成するようにしても良い。 基材自体に第3の情報が形成され、第3の情報の領域と第2情報表示領域とが別途重なっていても良い。
【0018】
第1情報は、例えば模様として記録される。特に、模様からなる第1情報は曲線状の模様であることが好ましい。第1情報は、彩紋、線画、幾何学模様、カリグラフ、ロゴ、シンボル、肖像画、ランドマーク、風景、アイコン、符号若しくはそれらの組合せから構成されていても良い。第一情報は、典型的には、意匠性を有している。これによりブランド価値を高められる。
第1情報を表示する光反射層中に形成された識別情報は、例えば、固有コード、個人のプロファイル、シリアル番号、特定のマーク等であり、典型的には肉眼では観察しにくいマイクロ文字として記録される。これらは、肉眼では観察しづらいため、意匠性を損なわない一方で、拡大して観察すれば容易に識別が可能である。
識別情報は、例えば、第1の領域における第1情報を形成する光反射層に対し、パルスレーザーによって当該光反射層を部分的に除去することで形成する。
このように、第1の領域における第1情報を形成する光反射層に対し、当該光反射層を部分的に除去し、識別情報を記録することで、認証情報である第一情報と識別情報を不可分に記録することで、情報表示媒体の改ざんを防止することができる。また、認証情報と重ねて識別情報を記録するため、情報表示媒体の表示面を有効に活用できる。
【0019】
以上のような情報表示媒体を、すき込む若しくは貼り合わせることで、認証情報及び識別情報を含んだ有価証券を構成するようにしてもよい。
このような有価証券は、例えば、情報表示媒体の認証情報を反射光または透過光により識別し、情報表示媒体の認証情報を透過光の拡大観察により第1情報を識別することで、当該有価証券の検証を行えばよい。
【0020】
次に、第1の領域もしくは第2情報表示領域を形成する光反射層の構成例(部分的除去の例)について説明する。図1図6は、第1の実施形態に係る情報表示媒体100の一例を示す部分断面図である。
ここで、図1図6から分かるように、第1の実施形態では、光反射層20が形成される基材10の面(図中上面)が平坦な場合の例である。
情報表示媒体100は、基材10と光反射層20とを含む構成からなる。
【0021】
<基材>
基材10には、樹脂を母材としたものを用いることができる。基材10は、典型的にはプラスチックである。樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、光硬化樹脂から選択した1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。基材10は光透過性を有していることが望ましい。また、基材10は、単層構造でもよく、多層構造を有していてもよい。更には、液晶材料など光学異方性を有する材料から構成されていてもよい。加えて、樹脂への染料や顔料の添加などにより、着色されていてもよい。
【0022】
また、基材10の材料として、金属酸化物やそれらの混合物を使用することができる。金属酸化物やそれらの混合物として、SiO(二酸化ケイ素)やTiO(二酸化チタン)、MgO(酸化マグネシウム)を用いることができる。更に、基材10の材料が、樹脂であってもよい。
ただし、基材10は、光反射層20と異なる屈折率を有する。
なお、金属酸化物を基材10とする場合、基材10は、例えば、ドライコーティング技術により形成できるし、グラビア印刷などのウェットコーティング技術により形成できる。ドライコーティング技術としては、蒸着、スパッタリング、CVD(化学気相成長)が例示できる。
【0023】
樹脂を基材10とする場合、基材10は、例えば押出成形、キャスティング、ウェットコーティング技術により形成できる。また、樹脂からなる基材10をドライコーティング技術により形成されてもよい。
なお、基材10が光透過性を有している場合、基材10そのものによって情報が提示されていてもよい。例えば、レリーフホログラム構造や、光散乱構造、光干渉構造などが設けられていることで、それら構造による光学効果により、目視観察において、情報を認識することができる。
【0024】
また、基材10は、光を散乱させて透過する材料で形成されていてもよい。そのような材料としては紙などである。その際、紙の厚さを変化させることによる透かしを設け、情報を提示してもよい。
基材10の厚さは、5μm以上200μm以下が好ましい。より好ましくは20μm以上150μm以下である。これらの厚さとすることで、基材10の強度が光反射層20を形成しやすくするために必要な十分な強度となる。実際には、光反射層20を設ける際に反射観察または透過観察に必要な厚さがあればよい。
また、基材10は同一領域内において均一な膜厚であってもよく、膜厚が連続的または不連続的に変化していてもよい。
【0025】
<光反射層20>
光反射層20は、基材10の一方の面に形成される。なお、光反射層20は、単層構造でもよく、多層構造を有していてもよい。
光反射層20の材料として、金属、合金、金属化合物、及び半金属化合物から選択した1種以上の材料を使用することができる。金属として、アルミニウムや銀、金、銅、錫、ニッケルを使用することができる。合金として、鋼、ステンレス、ジュラルミンを使用することができる。更に、金属化合物として、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、窒化チタン、アルミナ、フッ化マグネシウム、酸化タングステン(WO)、酸化イットリウム(Y)を用いることができる。半金属化合物として、シリカ、酸化ゲルマニウムを用いることができる。特に金属光沢のある材料が好ましい。
【0026】
光反射層20は、例えば気相成長により形成できる。気相成長として、蒸着、スパッタリング、CVD(化学気相成長)が使用できる。また、光反射層20が設けられる方法であれば、ゾルゲル法などのウェットコーティング技術を用いてもよい。
光反射層20の層厚は5nm以上100nm以下が好ましい。より好ましくは、20nm以上60nm以下である。この層厚にすることで、目視観察するにあたって十分な光の反射率が得られると共に、以下に説明する光学効果をより見えやすくすることができる。
【0027】
また、光反射層20は同一領域内において均一な膜厚であることが好ましいが、膜厚が連続的または不連続的に変化していてもよい。更に、光反射層20が周期構造を形成していてもよい。
更に、第1情報、若しくは識別情報を形成する光反射層20は、特定の形状で形成されていてもよい。特定の形状としては、彩紋、線画、肖像画、ランドマーク、風景、符号、シンボル、アイコン、カリグラフ、幾何学模様、コード、番号、マークが例示できる。例えば第1情報を形成する場合には、直線状または曲線状の模様からなる特定の模様により装飾性を高めても良い。識別情報を形成する場合には、例えばマイクロ文字を形成する特定のパターンにすると良い。
【0028】
図1においては、光反射層20は以下に説明する製造プロセスにより、一部の材料が除去されることで、領域112aが形成されている。
領域112aにより、情報表示媒体100を反射観察した際、光反射層20がある領域と、光反射層20が除去された領域112aにおいて、反射率が異なる。また、情報表示媒体100を透過観察した際、光反射層20が光透過性のない材料、あるいは光透過性を遮断する厚さであった場合、領域112aの部分において透過率が向上する。
そのため、反射観察時あるいは透過観察時において、領域112aにより第1情報を表現することができる。
【0029】
図2は、情報表示媒体100において、別の構成を説明するための断面図の一例である。
図2の情報表示媒体100においては、光反射層20を基材10へ密着させるための接着層13、光反射層20へのダメージを防ぐために保護層14を設けた例を示している。こうした場合においても、光反射層20へ例えば、パルスレーザーを用いて局所的なエネルギーを与えることにより、領域112aを設けることが可能である。
なお、図1において領域112aは断面の角部において直角、かつ矩形形状に形成されているが、角丸となっていてもよく、矩形形状以外でもよい。以下、矩形形状と異なる場合における説明を図3図6を用いて説明する。
また、光反射層20が除去された領域112aの下部の基材10の光反射層20側の面は、炭化していても良い。光反射層20が除去された領域112aの下部の基材10の光反射層20側の面が炭化していることで、光反射層20が除去された領域112aで光を吸収し、領域112aの視認性が向上する。
【0030】
図3図6の情報表示媒体100は、それぞれ光反射層20が異なる断面構造となるように除去されて形成されている例を示している。
図3における領域112bは、完全に光反射層20の材料の一部を基材10まで貫通するように除去しない場合を示している。そして、領域112b内において、異なる厚さとなるように光反射層20の材料を除去している。
こうすることで、領域112bにおいて異なる光反射層20の厚さとなるため、各厚さにおいて透過率が異なるようになる。そのため、情報表示媒体100を透過観察した場合、領域112bにおける透過率の違いが目視観察可能となる。
更に、光反射層20を薄くすることで反射率も低下する。そのため、例えば基材10に情報が書き込まれており、その情報と領域112bとが重なりあった場合、領域112bの反射率は低下しているため、基材10に形成されている情報を反射観察時に確認することができる。
【0031】
なお、図4は光反射層20を基材10まで貫通させて除去した領域112aと、光反射層20を異なる厚さとなるように除去している領域112cとが同時に形成された場合を示している。
こうすることで、完全に光反射層20を除去した領域112aにより得られる情報と、異なる厚さの光反射層20を有する領域112cにより得られる情報とを組み合わせることが可能となる。
【0032】
なお、図3において、領域112bは光反射層20の断面形状が丸角となっている。図4においては、領域112a、112cの断面形状が直角(階段状)となっている。本実施形態においては、光反射層20の透過率や反射率を変調できればよく、いずれの断面形状となっていても良い。
図5および図6は、光反射層20の断面形状において、光反射層20の材料を除去した構造断面112d、112eが曲線構造を有している場合を示している。こうすることでも、上述のような反射観察時における効果、透過観察時における効果が得られる。
光反射層20を部分的に除去した領域112a~112eは、形成される大きさによって光反射層20における反射率及び透過率を変調することが可能となる。
【0033】
ここで、領域112a~領域112eが形成されている領域の横幅が300μm以上5mm以下、より好ましくは500μm以上3mm以下である場合、領域112a~112eにより異なる厚さとなった光反射層20の反射率、透過率の変化を目視にて観察可能となる。この際、領域112a~112eが形成されている第1の領域により、特定の形状が形成されていてもよい。特定の形状は、例えばコードや記号、数字、テキスト、などである。
また、領域112a~112eが形成されている領域の横幅が500nm以上300μm以下、より好ましくは1μm以上100μm以下である場合、領域112a~112eを設ける密度を変化させることで、光反射層20の反射率、透過率の変化を部分的に形成することができる。これによって、その反射率、透過率の変化を目視にて観察可能となる。
【0034】
一方、領域112a~領域112eが形成されている領域の横幅が500nm以上300μm以下、より好ましくは1μm以上100μm以下として領域112a~112eが形成されている領域において、絵柄や記号、数字、文字、幾何学模様などといった特定の形状が形成されていてもよい。こうすることで、領域112a~112eを拡大して透過観察または反射観察した際に、特定の形状を観察可能な第2情報表示領域を設定することが出来る。
以上のように、光反射層20を部分的に削除する領域の横幅を調整することで、第1情報を形成する第1の領域や、第1の領域中の第1情報を形成する光反射層20において部分的に材料を削除することで、識別情報を形成する第2情報表示領域を設定することが出来る。
【0035】
図7は、部分的な削除によって光反射層20の異なる反射率、透過率を有する領域120、121、122、123、124、21を含む情報表示媒体200を示している。図7(a)は情報表示媒体200の外観、図7(b)は情報表示媒体200の一部の領域125の拡大図を示している。
ここで、図7においては、領域120、121、122、123、124は第1の領域となり、図7(b)のように、領域120と重なる領域21が第2情報表示領域となる。なお、領域21の一部が領域120からはみ出すように設定されていても良い。識別情報を形成する材料除去部分の一部が領域120内に配置されていても良い。
【0036】
領域120は、光反射層20を基材10まで貫通させて除去して模様とした、すなわち外縁形状で第1情報を表示する第1領域である。また、領域121、122、123、124、21はそれぞれ光反射層20の除去量が異なる領域である。
情報表示媒体200を反射にて目視観察すると、光反射層20の除去量の違いにより、情報表示媒体200の反射率が各領域によって異なるため、その違いを目視にて確認することができる。特に、光反射層20として金属を用いた場合には、よりわかりやすくなる。
【0037】
また、基材10に情報が形成されていた場合、領域120~124において透過率が異なっているため、基材10に形成されていた情報を目視反射観察時において観察可能となる。こうすることで、より複雑な情報を提示することが可能となる。
情報表示媒体200を透過にて目視観察すると、光反射層20の除去量の違いにより、情報表示媒体200の透過率が各領域にて異なり、その違いを目指にて確認することができる。
情報表示媒体200において、領域120を線形状、領域121を三日月形状、領域122から124を星形形状といった絵柄形状としている。実際には絵柄だけではなく記号や数字、文字、幾何学模様などといった特定の形状で形成されていてもよい。
【0038】
更には、各領域内部において、更に光反射層20の一部を除去することで、領域内部に異なる情報を有する領域を形成していてもよい。
例えば図7(b)は、領域125において、領域125内に含まれる領域120の一部分にて、更に光反射層20を部分的に除去することで、識別情報を表示する領域21を設けている。識別情報としては文字、数字、記号の組合せによる固有コード、個人のプロファイル、シリアル番号、”AB+”等の特定のマーク等のマイクロ文字が好ましく用いられる。こうすることで、情報表示媒体200を拡大して透過観察または反射観察した際、領域120内に更に第2情報表示領域を構成する領域21にある識別情報を認識することが可能となる。
【0039】
なお、パルスレーザーの照射によって識別情報を形成することで、簡易に、微小な領域にマイクロ文字などを形成することが出来る。
以上のように、光反射層20を各領域に分けて部分的に除去し、かつその除去量を変調することで、一つの情報表示媒体200に、複数の情報を、領域を重ねて付与することが可能となる。なお、その複数の情報は反射観察、あるいは透過観察時において確認することが可能となる。
【0040】
図8は、光反射層20の異なる反射率、透過率を有する領域120、121、122、123、124、126を含む情報表示媒体200を示している。図8(a)は情報表示媒体200の外観、図8(b)及び図8(c)は情報表示媒体200の一部の領域127の拡大図を示している。
領域120は、光反射層20を基材10まで貫通させて除去した領域である。また、領域121、122、123、124、126はそれぞれ光反射層20の除去量が異なる領域である。
【0041】
情報表示媒体200を反射にて目視観察すると、光反射層20の除去量の違いにより、情報表示媒体200の反射率が各領域にて異なるため、その違いを目視にて確認することができる。特に、光反射層20として金属材料を用いた場合には、よりわかりやすくなる。
また、基材10に情報が形成されていた場合、領域120~124において透過率が異なっているため、基材10に形成されていた情報を目視反射観察時において観察可能となる。こうすることで、より複雑な情報を提示することが可能となる。
【0042】
情報表示媒体200を透過にて目視観察すると、光反射層20の除去量の違いにより、情報表示媒体200の透過率が各領域にて異なり、その違いを目指にて確認することができる。
情報表示媒体200において、領域120を線形状、領域121を三日月形状、領域122~124を星形形状といった絵柄形状としている。実際には絵柄だけではなく、他の特定の形状で形成されていてもよい。他の特定の形状は、記号や数字、文字、幾何学模様などである。
【0043】
更には、各領域内部において、更に光反射層20の除去することで、領域内部に異なる情報を有する領域を形成していてもよい。
ここで、異なる情報を形成する際、レーザーで記録する絵柄を繰り返しの柄とすることで、光反射層20と位置がずれても、レーザーで記録した柄を識別できる。レーザー光50を特定の方向に常にスキャン走査するように制御し、かつ形成する絵柄の繰り返しの間隔を、領域20の彩紋等の配置間隔と異なるようにするか、配置方向を異なるものとし、更に、絵柄が彩紋の幅に収まるよう調整する。こうすることで、図8(b)のように領域120のいずれかの部分にてさらなる情報を確認することができるようになる。
【0044】
例えば図8(b)は、領域127において、領域127内に含まれる領域120の一部分にて、更に光反射層20を部分的に除去することで、領域126を設け、文字情報を示している。実際には文字情報だけでなく、絵柄や記号、数字、幾何学模様などであってもよい。こうすることで、情報表示媒体200を拡大して透過観察した際、領域120内に更に領域126を認識することが可能となる。領域120と重なる領域126は第2情報表示領域となる。なお、領域126の一部が領域120からはみ出すように設定されていても良い。識別情報を形成する材料除去部分の一部が領域120内に配置されていても良い。
【0045】
図8(b)における領域126は、図8(c)においてレーザー光50がレーザー走査方向Bに沿って走査されることにより生成されている。
実際には、レーザー走査方向は直線だけでなく、曲線でもよく、情報表示媒体200にあらかじめ形成されている領域120へ、更なる情報を形成できるような走査となっていればよい。
【0046】
<情報表示媒体の製造方法>
以下、情報表示媒体100および200の製造方法について説明する。
情報表示媒体100、200は、基材10へ光反射層20を形成した後、光反射層20へ局所的にレーザー光などでエネルギーを与えることで、光反射層20を部分的に除去あるいは完全に除去することで製造される。
あるいは、情報表示媒体100、200は、基材10へ光反射層20を形成した後、図10のように、光反射層20の上に更にパターニングカバー層140を形成し、化学的処理を行うことで、光反射層20を部分的に除去あるいは完全に除去することでも製造される。
光反射層20へ局所的にエネルギーを与える方法として、パルスレーザー源やサーマルヘッドを用いる手法がある。なお、図9にパルスレーザー源を用いた場合の図を示す。
【0047】
パルスレーザー源52より射出されたレーザー光は、レンズ51を通って、反射鏡53に反射し、情報表示媒体100、200を形成する光反射層20に焦光するように入射される。すると、焦点にてレーザー光によるエネルギーが局在化し、そのエネルギーによって光反射層20が溶解・揮発され、除去される。なお、光反射層20を貫通するように材料除去を行う場合には、必ずしも光反射層20に焦光しなくても良い。
レーザー光による加工の際に、情報表示媒体100、200を移動させる、又は、レーザー光50の焦点位置のX、Y、Zの三次元座標を制御することで、光反射層20を除去する領域を設定できる。
【0048】
あるいは、反射鏡53がマイクロミラーアレイ構造であり、そのマイクロミラーアレイ構造をコンピュータ制御させることで、レーザー光の位相を制御し、レーザー光の焦点位置を制御することも可能である。
なお、パルスレーザー源52としては、パルス幅が100フェムト秒以上1ピコ秒以下であることが望ましい。そうすることで、レーザー光がレンズ51を通り、焦点位置にて瞬間的に高エネルギー状態となり、光反射層20を除去、ないしは削ることが可能となる。また、高エネルギー状態となる時間が非常に短いため、照射位置に影響が集中する。
光反射層20をレーザー光50にて除去する際、その除去する位置合わせを正確にするために以下のようなシステムを組み込んでもよい。
【0049】
図11に示すように、レーザー光50の基材10または光反射層20からの反射光を、ハーフミラー53を通してディテクター54で測定する。こうすることで、反射光の強度変化をディテクター54を介してモニタリングできる。すなわち、基材10に光反射層20が設けられているかどうかを確認することができる。
ただし、レーザー光50の強度が強い場合、光反射層20にレーザー光50が照射された瞬間に除去されてしまう可能性があるため、レーザー光50の光強度を低下させた状態で、反射光の強度変化をディテクター54にてモニタリングする必要がある。あるいは、レーザー光50の焦点位置を基材10の表面からずらした状態で、反射光の強度変化をディテクター54にてモニタリングする必要がある。
【0050】
図11に示すように、基材搬送方向Aに沿って基材10が搬送された場合、レーザー光50が光反射層20に差し掛かった際、ディテクター54では反射光強度が高くなるため、光反射層20がレーザー光50が照射可能な領域に差し掛かったことがわかる。そののちに、予め設定した加工パターンがレーザー光50によって光反射層20に形成されることで、光反射層20の位置に合わせた加工が可能となる。
更には、反射鏡53を反射型の空間光変調器とし、空間光変調器の各セルの位相をコンピュータ制御させることで、レーザー光の位相を制御し、レーザー光の焦点位置を制御することも可能である。なお、空間光変調器は透過型であっても良い。
【0051】
なお、空間光変調器はレーザー光の焦点位置を制御するだけでなく、レーザー光50の焦点長さを制御することに加え、レーザー光50を複数ビームに分割させて集光させることが可能となる。
レーザー光50の焦点長さを長くすることで、光反射層20を除去する際、装置の振動などの外乱の影響を受けずに安定した加工が可能となる。
レーザー光50の焦点長さを長くする方法として、上述のように空間光変調器を用いる手法以外では、レンズ51をアキシコンレンズ等に置き換えることで、焦点長さを長くすることも可能である。
【0052】
また、光反射層20へ化学的処理を行う方法として、図10に示す図のように、光反射層20へパターニングカバー層140を部分的に設け、化学的処理(ウェットエッチング、あるいはドライエッチング手法など)を行うことで、光反射層20を部分的に除去、あるいは完全に除去することが可能となる。
光反射層20を部分的に除去、あるいは完全に除去したのちに、パターニングカバー層140をそのままにしておいてもよく、除去してもよい。
図10においては、パターニングカバー層140をドットパターンで設けた例を示しているが、ドットパターンだけでなく、ラインパターン、ベタパターンなどであってもよい。あるいはパターニングカバー層140により絵柄や記号、数字、文字、幾何学模様などといった特定のパターンが形成されていてもよい。
【0053】
情報表示媒体100、200を形成した後に、上記の製造方法を適用することが可能であるため、情報表示媒体100、200の製造ラインへの後加工方法として適用できる。また、局所的にエネルギーを与える場合の製造方法を用いる場合、情報表示媒体100、200へのオンデマンド加工が可能となる。
また、化学的処理による場合の製造方法を用いた場合には、金属箔のエッチングプロセスと同時に後加工にて実施可能となる。
このように、情報表示媒体100、200に対して本開示の製造方法を適用すると、図7及び図8に示した情報表示媒体200における各領域120、121、122、123、124、21、126において、それぞれ異なる光学表現ができ、更にそれぞれにおいて異なる情報を提供することができる。そうした光学表現の組合せ及び情報の組合せにより、情報表示媒体100、200が真正品であると判断できる。
【0054】
「第2の実施形態」
次に、本開示に基づく第2の実施形態について図面を参照して説明する。
第2の実施形態では、基材が凹凸構造を有する構造形成層を備え、その凹凸によって、金属反射層に凹凸領域の形状で第1情報が表示される場合の例である。
なお、各図面において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図12図14は、本実施形態に係る情報表示媒体の一例を示す部分断面図である。いずれも光反射層20において、光反射層20を形成する材料の一部を除去した第2情報表示領域21を有する場合における部分断面図を示している。
第2の実施形態では、基材の表層に構造形成層が形成されている。図12では基材が構造形成層10でのみ構成されている場合を例示している。
【0055】
(実施形態1)
図12に示す、実施形態1の情報表示媒体100では、構造形成層10の表面に、凹凸構造が形成された第1の領域30と平坦な構造が形成されている第2の領域31が形成されている。そして、それら構造が形成された界面に光反射層20が形成されている。加えて、第1の領域30内には、光反射層20の一部分が除去されている第2情報表示領域21を含む。これによって、第1の領域30に凹凸領域の形状で表示される第1情報が形成されると共に、第2情報表示領域21に識別情報が形成されている。
【0056】
なお、第2の領域31は、必ずしも平坦な面形状である必要はなく、第1の領域30に比べて粗さが小さい面形状となっていればよい。以下の他の実施形態でも同様である。
粗さは、例えば、算術平均粗さ(Ra:JIS B0601)を用いて計測できる。
構造形成層10を有する基材には、樹脂を母材としたものを用いることができる。基材は、典型的にはプラスチックである。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、光硬化樹脂を用いることができる。基材は光透過性を有していることが好ましい。構造形成層10を有する基材は、単層構造でもよく、多層構造を有していてもよい。更には、液晶材料など光学異方性を有する材料から構成されていてもよい。加えて、それら樹脂への染料や顔料の添加などにより、着色されていてもよい。
【0057】
また、基材の材料として、金属酸化物やそれらの混合物を使用することができる。金属酸化物やそれらの混合物として、SiO(二酸化ケイ素)やTiO(二酸化チタン)、MgO(酸化マグネシウム)を用いることができる。更に、基材の材料は、樹脂であってもよい。ただし、基材は、光反射層20と異なる屈折率を有する。
なお、金属酸化物を基材とする場合、基材は、例えば、ドライコーティング技術により形成できるし、グラビア印刷などのウェットコーティング技術により形成できる。ドライコーティング技術としては、蒸着、スパッタリング、CVD(化学気相成長)が例示できる。
【0058】
樹脂を基材とする場合には、例えば押出成形、キャスティング、ウェットコーティング技術により形成できる。また、ドライコーティング技術により形成されてもよい。
なお、基材が光透過性を有している場合、基材そのものによって情報が提示されていてもよい。例えば、レリーフホログラム構造や、光散乱構造、光干渉構造などが設けられていることで、それら構造による光学効果により、目視観察において、情報を認識することができる。
基材の厚さは、5μm以上200μm以下が好ましい。より好ましくは20μm以上150μm以下である。これらの厚さとすることで、基材の強度が光反射層20を形成しやすくするために必要な十分な強度となる。実際には、光反射層20を設ける際に反射観察または透過観察に必要な厚さがあればよい。
【0059】
光反射層20は、図12に示すように構造形成層10のうち凹凸構造(第1の領域の部分)、平坦な構造(第2の領域の部分)が形成されている界面に形成される。なお、単層構造でもよく、多層構造を有していてもよい。平坦とは、凹凸構造の面よりも粗さが小さいことを指す。
光反射層20の材料として、金属、合金、金属化合物、及び半金属化合物を使用することができる。金属として、アルミニウムや銀、金、銅、錫、ニッケルを使用することができる。合金として、鋼、ステンレス、ジュラルミンを使用することができる。更に、金属化合物として、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、窒化チタン、アルミナ、フッ化マグネシウム、酸化タングステン(WO)、酸化イットリウム(Y)を用いることができる。半金属化合物として、シリカ、酸化ゲルマニウムを用いることができる。特に、光反射層20の材料は、金属光沢のある材料が好ましい。
【0060】
なお、光反射層20は、気相成長により形成できる。気相成長として蒸着、スパッタリング、CVD(化学気相成長)が使用できる。また、光反射層20が設けられる方法であれば、ゾルゲル法などのウェットコーティング技術を用いてもよい。
光反射層20の層厚は5nm以上100nm以下が好ましい。より好ましくは、20nm以上60nm以下が好ましい。そうすることで、目視観察するにあたって十分な光の反射率が得られる。
また、光反射層20は同一領域内において均一な膜厚であってもよく、膜厚が連続的または不連続的に変化していてもよい。更に、光反射層20が周期構造を形成していてもよい。
【0061】
更に、光反射層20が特定の形状で形成されていてもよい。特定の形状は、記号、数字、文字、幾何学模様などである。
第2情報表示領域21は、第1の領域30内のすべてに特定の形状で形成されていてもよいが、第1の領域30内の一部分においてのみ形成されていてもよい。なお、第2情報表示領域21は、例えば光反射層20を形成する材料を単位面積当たり50%以上100%以下の範囲で除去することで形成される。この際の単位面積は、基材10の表面の単位表面積(例えば1mm平方)とすることができる。
なお、第2情報表示領域21の形成方法の詳細は後述する。
【0062】
(実施形態2)
図13に示す、実施形態2の情報表示媒体100は、実施形態1の情報表示媒体100と基本構造が同じである。ただし、実施形態2では、第1の領域30内における一部の領域に位置する光反射層20について材料除去が行われることで第2情報表示領域21が設定されている場合の例である。更に、図13には、第2情報表示領域21の形成方法の一例も示している。図13に示す第2情報表示領域21の形成方法は、上記の実施形態1にも適用することができる。
実施形態1及び実施形態2の情報表示媒体100は、第2情報表示領域が第1の領域内に完全に内包される場合の例である。
【0063】
図13に例示する第2情報表示領域21の形成方法は、次の通りである。
なお、第2の実施形態では、識別情報のための第2情報表示領域21の形成方法は、レーザーの照射によって光反射層20の部分的な材料除去を行う場合で例示する。
形成は、図13における構造形成層10の平均層厚Hに対し、レンズ51により集光されたレーザー光50を、構造形成層10において構造が形成されている界面と相対する界面から入射して、予め設定した描画データに基づき、レーザー光50の集光位置を移動させて、識別情報を形成する。
【0064】
このとき、レーザー光50の集光位置を、構造形成層10の凹凸構造が形成されていない界面から平均層厚Hの半分の位置より手前側(光反射層20から離れた側)に設定して移動させることで、構造形成層10において、凹凸構造が形成されている第1の領域30における光反射層20を形成する材料の一部が除去され、第2情報表示領域21を形成する。この際、構造形成層10において平坦な構造が形成されている第2の領域31においては、光反射層20を形成する材料が除去されない、または、単位面積当たりに光反射層20を形成する材料が除去された量が30%未満となるように、パワーを調整する。場合によっては、単位面積当たりに光反射層20を形成する材料が除去された量が15%未満とするように、パワーを調整しても良い。
【0065】
(実施形態3)
図14に示す、実施形態3の情報表示媒体100は、実施形態1の情報表示媒体100と基本構造が同じである。ただし、実施形態3では、第1の領域30と第2の領域31との両方の領域の一部の領域に位置する光反射層20について材料除去が行われることで第2情報表示領域21が設定されている場合の例である。更に、第2情報表示領域21の形成方法の一例も示している。
実施形態3の情報表示媒体100は、第2情報表示領域21が第1の領域30と一部が重なるように設定した場合の例である。
形成は、図14における構造形成層10の平均層厚Hに対し、レンズ51により集光されたレーザー光50を、構造形成層10において構造が形成されている界面と相対する界面から入射して、予め設定した描画データに基づき、レーザー光50の集光位置を移動させて、識別情報を形成する。
【0066】
このとき、レーザー光50の集光位置を、構造形成層10の凹凸構造が形成されていない界面から平均層厚Hの半分の位置より奥側(光反射層20側)に設定して移動させることで、構造形成層10において凹凸構造が形成されている第1の領域30に加えて、平坦な構造が形成されている第2の領域31における光反射層20を形成する材料の一部も除去されることで、第2情報表示領域21を形成する。この際、構造形成層10において、平坦な構造が形成されている第2の領域31においても、単位面積当たりに光反射層20を形成する材料が除去された量が50%以上となるように、パワーを調整する。本実施形態では、実施形態2と実施形態3とはレーザーのパワーなどは同一条件に設定して実施した。
なお、第1の領域30および第2の領域31にて形成される第2情報表示領域21は、第1の領域30、第2の領域31それぞれの全領域に形成されるわけではなく、部分的に形成される。
【0067】
図13および図14において、矢印Aはレーザー光50のスキャン方向の例を示している。
ここで、上述の通り、図13においては、レーザー光50がスキャンされた領域のうち、凹凸構造が形成されている第1の領域30においてのみ第2情報表示領域21が形成されている。また、図14においては、レーザー光50がスキャンされた領域のうち、凹凸構造が形成されている第1の領域30、平坦な構造が形成されている第2の領域31のいずれにおいても第2情報表示領域21が形成されている。
【0068】
このように、同じパワーに設定しても、焦点位置を調整してレーザー光50をスキャンすることによって、第2情報表示領域21を形成する領域を第1の領域30のみ若しくは第1の領域30と第2の領域31の両方に重なるようにすることが可能となる。
ここで、第2情報表示領域21の形成方法は、上記のようなレーザー光50でスキャンして描画する方法だけでなく、フォトマスクを用いてレーザー光50を照射する領域を制御する方法、液晶画面を用いてレーザー光50を照射する方向を制御する方法、ミラー配列を用いてレーザー光50を照射する方向を制御する方法、ガルバノミラーを用いてレーザー光50を照射する方向を制御する方法などでも構わない。
【0069】
ここで、レーザー光50の照射により第2情報表示領域21が形成される際、光反射層20を形成する材料は、レーザー光50によりエネルギーを受け、そのエネルギーによる熱で光反射層20を形成する材料が昇華することにより、材料除去が実施される。また、光反射層20を形成する材料によっては、昇華ではなく分解や炭化される。材料が分解、炭化された場合は、人の目に見えない大きさ(平均直径300μm以下)に分解、炭化されるため、通常の観察時においては、その分解、炭化された物質を目視確認することはできないため、問題なく情報の表示に使用できる。
【0070】
また、第2情報表示領域21において、光反射層20を形成する材料が単位面積当たり50%以上除去されることで、情報表示媒体100の反射観察時に、第2情報表示領域21とそれ以外の光反射層20が除去されていない領域とにおいて、第2情報表示領域21の反射率が低下する。あるいは、情報表示媒体100の透過観察時に、第2情報表示領域21とそれ以外の光反射層20が除去されていない領域とにおいて、第2情報表示領域21の透過率が向上する。なお、第2情報表示領域21は、光反射層20のうちの上記レーザーによって材料除去をされた部分であるが、識別情報は、材料除去された部分に限定されず、材料除去された間の部分で表示されている場合もある。
【0071】
こうすることで、情報表示媒体100により表示される情報を複数組み合わせることが可能であり且つ2つ以上の情報を、重ねて提示することが出来る。例えば、第1の領域30に形成されている凹凸構造により提示される情報と、レーザー光50により形成された第2情報表示領域21により提示される情報とを領域を重ねた状態で情報表示媒体100に含めることが可能となる。
また、第2情報表示領域21により提示される情報は、マイクロ文字などの極微小で且つ第1の領域30に記録された情報内に隠れて提示される情報であるため、反射観察、あるいは透過観察した際に初めて提示されることとすることが出来て、識別情報を、潜像情報のように情報表示媒体100へ埋め込むことが可能となる。なお、実施形態3の例では、第2情報表示領域21が第2の領域にも形成されるが、識別情報を潜像情報のようにする場合には、第2の領域に形成される第2情報表示領域21の面積を30%以下好ましくは15%以下に設定することが好ましい。
【0072】
ここで、第2情報表示領域21で形成される識別情報は、レーザー光50を集光することにより形成されるため、細い領域幅で形成できると共に、その領域幅を変調することが可能となる。具体的には、1回のレーザースキャンにより、領域幅を1μmから100μmまで変調可能である。また、レーザー光50でのスキャン時のスキャンピッチを狭くしたり、光反射層20に対する距離を変更したりすることにより、第2情報表示領域21の幅を変調することも可能となる。
なお、上述のように第2情報表示領域21により提示される識別情報を潜像とするためには、第2情報表示領域21の領域幅を1μmから300μmまでにするとよい。人の目の解像度より、300μm以下の線幅は通常観察時に目視観察することが難しいためである。更に、第1情報の領域内に識別情報を埋め込むことで更に識別情報が目視観察し難くなる。
【0073】
逆に、第2情報表示領域21の領域幅をmmオーダーとすることで、識別情報を通常観察時に目視観察することが可能となる。
レーザー光50としては、連続発振レーザー(CWレーザー)よりも断続的なレーザー(パルスレーザー)が良く、より具体的にはピコ秒レーザー、フェムト秒レーザーが最も良い。
パルスレーザーとしてのピコ秒レーザーとしては、ファイバーまたは固体結晶により発振するレーザーであればよい。また、フェムト秒レーザーとしては、ファイバー、固体結晶(チタンサファイア結晶など)により発振するレーザーを例示できる。
【0074】
ピコ秒レーザーおよびフェムト秒レーザーは、レーザーパルスのパルス幅が非常に短くなっているため、レーザーを集光し、照射することで、その集光点近傍の微小空間にて非常に強いエネルギーが発生する。そのエネルギー若しくはそのエネルギーに伴う熱により光反射層20を形成する材料が昇華、または微小に分解、炭化されることで、材料が除去される。
これらパルスレーザーを用いることで、レーザー焦点において瞬間的に高エネルギーを印加することが可能となり、その結果、材料の昇華、分解、炭化が生じる。そのため、従来の識別情報生成に必要なレーザー光吸収材料、レーザー光発熱材料等を用いる必要がなくなり、製造コストを下げることが可能となる。また、パルスの繰り返し周波数は、1kHz~1GHzのものを用いることができる。この繰り返し周波数を変えることでも、レーザーのパワーを変調できる。また、Q値を変えることでも、パワーを変調できる。
【0075】
(実施形態4)
図15に示す実施形態4の情報表示媒体100は、第2情報表示領域21として、凹凸構造が形成されている第1の領域30内に内包するように形成した第2情報表示領域21aと、第1の領域30と第2の領域31とに跨るように形成した第2情報表示領域21bとを備える。
第1の領域30内の凹凸構造は、レリーフ構造や、ランダムドット構造である。レリーフ構造としては、1次元レリーフ構造や、2次元レリーフ構造を用いることができる。
1次元レリーフ構造は、例えば、格子ベクトルがX方向や、Y方向と平行となっているもの、X、Y方向と特定の角度をなした方向に並列するものである。2次元レリーフ構造は、2つの方向の格子ベクトルを有するものであり、その格子ベクトルは、例えば、それぞれがX方向、Y方向と平行となっているもの、X、Y方向と特定の角度をなした方向に並列するものである。
【0076】
レリーフ構造の断面形状は波型、のこぎり波、方形波、階段型等である。
具体的には、図15では、第2情報表示領域21aは、第1の領域30のみに形成され、光反射層20を形成する材料が除去されることで、第1の領域30内に数字「12345」という識別情報が形成されている。また、第2情報表示領域21bは、第1の領域30および第2の領域31に跨るように形成され、光反射層20を形成する材料を除去することで、彩紋柄のような幾何学模様が識別情報として形成されている。
また、図15において凹凸構造が形成されている第1の領域30は、凹凸構造により発生する光の反射、回折、屈折、干渉、散乱によって第2情報表示領域21aにより提示されている識別情報とは異なる情報が提示されている。ここで、凹凸構造による第1情報や第2情報表示領域21bの識別情報などを構成する形状は、背景柄や装飾などを構成して、特別な内容を明示していなくて良い。
【0077】
また、より好ましくは、第2情報表示領域21a、21bを形成する線が、より微細な線画、幾何学模様、彩紋、カリグラフから形成される場合である。こうすることで、第2情報表示領域21a、21bを拡大観察した際に、また異なる識別情報を提示することが可能となる。
加えて、第2情報表示領域21a、21bは、情報表示媒体100の製造プロセスにおいて、製造される各情報表示媒体100に対し、毎回異なる情報を提示するよう形成することが可能となる。これは、レーザー光50により毎回異なる情報に基づき光反射層20を除去することが可能なためである。
【0078】
(実施形態5)
第2情報表示領域の形成方法の他の例を説明する。
領域70が第2情報表示領域であり、この実施形態5は、第1の領域60内にだけ領域70を形成する例である。
図16に示す実施形態5の情報表示媒体100は、レーザー光50が、第1の領域60および第2の領域61をまたがって移動させて領域70を形成する場合の例を説明する図である。また、第1の領域60は、3つのサブ領域62a、62b、62cを含んでいる。なお、PATHと記載された点線の矢印はレーザー光50が通った経路を示している。
【0079】
また、図16において、レーザー光50は第1の領域60を形成する凹凸構造が形成されている側、および第2の領域61を形成する平坦な構造が形成されている側とは相対する界面から入射されており、かつレーザー光50の焦点位置は構造形成層10の平均層厚Hの半分よりも光反射層20から離れる側に設定している。そのため、前述のように、凹凸構造が形成されている第1の領域60の光反射層20が除去され、第2の領域61の光反射層20は除去されず、領域70のような波線柄が第1の領域60にだけ形成される。
【0080】
(実施形態6)
第2情報表示領域の形成方法の他の例を説明する。
領域70が第2情報表示領域であり、この実施形態6は、第1の領域60と第2の領域61に跨って領域70を形成する例である。
図17に示す実施形態6の情報表示媒体100は、レーザー光50が第1の領域60、および第2の領域61をまたがって移動した場合の領域70の形成について説明する別の例を示す図である。また、第1の領域60は、3つのサブ領域62a、62b、62cを含んでいる。なお、PATHと記載された点線の矢印はレーザー光50が通った経路を示している。
【0081】
図17において、レーザー光50は第1の領域60を形成する凹凸構造が形成されている側、および第2の領域61を形成する平坦な構造が形成されている側とは相対する界面から入射されており、かつレーザー光50の焦点位置は構造形成層10の平均層厚Hの半分よりも奥(光反射層20に近い側)に設定されている。そのため、前述のように、凹凸構造が形成されている第1の領域60および第2の領域61の両方の光反射層20が除去され、実施形態6では、領域70のような波線柄が、第1の領域60、第2の領域61をまたがって形成される。
【0082】
ここで、図16図17に示す例では、第1の領域60において、3つのサブ領域62a、62b、62cが周期的に配置しているが、それぞれのサブ領域62a、62b、62cを文字、数字、絵柄、幾何学模様、彩紋柄のように配置することで、サブ領域62a、62b、62cに形成されている凹凸構造による光の反射、回折、屈折、干渉、散乱によって情報が提示されていてもよい。
また、サブ領域62a、62b、62cにより形成された文字、数字、絵柄、幾何学模様、彩紋柄などに沿ってレーザー光50を照射することで、サブ領域62a、62b、62cにより形成される情報と、レーザー光50により形成される領域70によって得られる情報との位置情報を誤差なく合わせることが可能となる。
【0083】
図16図17において、領域70を形成するために、レーザー光50をその領域70に沿ってPATHのように移動させるベクタースキャン方式としているが、ラスタースキャン方式で形成してもよい。
また、レーザー光50により単一焦点を結像するようにし、ベクタースキャン、またはラスタースキャン方式にて領域70を形成してもよいし、レーザー光50を複数焦点に結像するようにし、特定の面積エリア内で領域70を一括形成してもよい。また、レーザー光50を複数焦点に結像するようにした場合、その複数焦点により文字、数字、絵柄、幾何学模様、彩紋柄などとすることで、領域70を形成してもよい。
【0084】
(実施形態7)
図18に示す実施形態7の情報表示媒体100は、レーザー光50が第1の領域60、および第2の領域61をまたがって移動して領域70を形成する場合を説明する別の例を示す図である。また、実施形態7では、第1の領域60は4つのサブ領域62a、62b、62c、62dを含んでいる。なお、PATHと記載された点線の矢印はレーザー光50が通った経路を示している。
図18において、レーザー光50は第1の領域60を形成する凹凸構造が形成されている側、および第2の領域61を形成する平坦な構造が形成されている側とは相対する界面から入射されており、かつレーザー光50の焦点位置は構造形成層10の平均層厚Hの半分よりも手前(光反射層20から離れる側)に設定されている。そのため、凹凸構造が形成されている第1の領域60の光反射層20だけが除去されて、領域70が第1の領域60に形成される。
【0085】
ここで、実施形態7では、サブ領域62a、62b、62cが形成されている凹凸構造のアスペクト比が0.1以上1未満であり、サブ領域62dが形成されている凹凸構造のアスペクト比が1以上2以下に設定されている。
凹凸構造のアスペクト比が異なることで、凹凸構造表面の表面積が異なる。凹凸構造のアスペクト比が高い方が表面積が大きくなるため、光反射層20を形成した際、その光反射層20の見かけの層厚はアスペクト比が低い領域とアスペクト比が高い領域とでは、アスペクト比が高い領域の方が薄く形成される。
そのため、レーザー光50を照射した際、アスペクト比が高い領域では光反射層20の層厚が薄いため、除去されやすくなる。
【0086】
図18においては、サブ領域62dにおいて凹凸構造のアスペクト比が高いため、レーザー光50をPATHに沿ってラスタースキャン方式で照射した際、サブ領域62dにおける光反射層20が、サブ領域62a、62b、62cよりも多く除去され、領域70となる。図16では、サブ領域62dを「OK」という文字となるように配置しているため、情報表示媒体100をレーザー光50でスキャンしながら照射すると、領域70にて、その「OK」という文字が識別情報として形成されて表示される。
図18にて示したサブ領域62dまたは領域70による情報は、文字情報だけでなく、例えば数字、絵柄、幾何学模様、彩紋柄などによる情報が提示されていてもよい。
【0087】
(実施形態8)
図19に示す実施形態8の情報表示媒体200は、上述の実施形態1~実施形態3の情報表示媒体200と同様な構造であるが、光反射層20の上に接着層40が形成されている場合を示している。
接着層40を有することで情報表示媒体200を様々な基材41へ貼付させることが可能となる。例えば、図20に示す情報表示媒体200のように、基材41へ接着層40を貼付させた状態の構成とすることが可能となる。
【0088】
情報表示媒体200の構成を図19および図20のようにすることで、構造形成層10へ凹凸構造あるいは平坦な構造を形成するだけでなく、構造形成層10そのものが凹凸構造、平坦な構造を保護する保護層としての役割を持つこととなる。実際には構造形成層10において、凹凸構造、平坦な構造が形成されていない側にて、保護層が形成されていてもよい。その際、保護層として、レーザー光50の波長が透過するような材料を用いるとなお良い。
図21に示す情報表示媒体200は、図20に示した構成に、更にキャリア層42を設けた構成を示している。このキャリア層42は情報表示媒体200を製造する際、構造形成層10、光反射層20、接着層40を形成する際の製造プロセスにて有用である。また、情報表示媒体200を基材41に貼付した際に、情報表示媒体200を保護する目的としても有用である。
【0089】
図19図20及び図21に示す情報表示媒体200は、例えば構造形成層10を形成した後に、凹凸構造及び平坦な構造の形成、光反射層20の形成、及び接着層40の形成をこの順に実施することで製造されるが、実際の製造プロセスに合わせ、その形成する順番を変更してもよい。
また、レーザー光50が入射する界面は、図19図20及び図21において構造形成層10のうち、凹凸構造あるいは平坦な構造が形成されている界面とは相対する界面(図中下側)としているが、接着層40、基材41が透明な材料、またはレーザー光50を透過する材料であれば、接着層40が形成されている界面、あるいは基材41が形成されている界面からレーザー光50を入射することで光反射層20を形成する材料を除去して、第2情報表示領域21、70を形成することが可能である。
ここで、上述の情報表示媒体100、200の裏面側に接着層を形成し,剥離紙を貼り付けてラベルとしても良い。
【0090】
[情報表示媒体の製造方法]
以下、情報表示媒体100および200の製造方法の例について説明する。
情報表示媒体100、200は、例えば下記の工程1~工程3を備え、その工程順に実施されて製造される。
工程1は、構造形成層10の面に、予め凹凸構造、平坦な構造が形成された版を押し当てることにより、構造形成層10の界面へ構造を形成する工程である。
工程2は、工程1で構造を形成した界面へ光反射層20を形成する工程である。
工程3は、構造形成層10の構造を形成していない界面より、レーザー光50の焦点位置を制御しながら照射することで、第1の領域30、60、第2の領域31、61に含まれる光反射層20を除去するかしないかを制御し、第2情報表示領域21、70を形成する工程である。
【0091】
このとき、工程1の前に、キャリア層42へ構造形成層10を形成する工程4を備えていても良い。
また工程2で形成した光反射層20の上に接着層40を形成する工程4と、接着層40を介して基材41に貼付する工程5とを備えていても良い。
また工程3において、基材41のうち、接着層40と接していない側の界面から、レーザー光50の焦点位置を制御しながら照射するようにしても良い。
レーザー光50を情報表示媒体100、200へ照射する方法として、図20に図を示す。
【0092】
この例では、レーザー源52から射出されたレーザー光50は、反射鏡53を通り、レンズ51を通って、情報表示媒体100、200へ入射する。なお、反射鏡53とレンズ51を通過する順番は逆であってもよい。こうすることで、光反射層20を除去することが可能となる。
なお、図22において情報表示媒体100、200は、同図の矢印方向に搬送されているとしている。つまり、情報表示媒体100、200を搬送している最中にレーザー光50により光反射層20の除去の制御が可能となる。
【0093】
反射鏡53として、通常の平面ミラーだけでなく、ガルバノミラー、マイクロミラーアレイ構造、液晶ディスプレイとし、それらをコンピュータ制御させることで、レーザー光の照射位置や位相を制御することが可能となる。また、レーザー光の焦点位置を制御することも可能である。
加えて、反射鏡53がマイクロミラーアレイ構造、または液晶ディスプレイであった場合、レーザー光50の位相を制御することで、複数の焦点位置を形成することが可能である。こうすることで、実際の製造プロセスの加工時間を短縮することが可能となる。
レーザー光50の焦点位置を制御する他の手法として、レンズ51の位置を制御する、あるいはレンズ51を液体レンズまたは液晶レンズとすることで、レンズ51の焦点位置を制御することが可能となる。
【0094】
[凹凸構造の例]
第1の領域30、60およびサブ領域62に形成される凹凸構造の例として、図23に示すようなレリーフ構造、あるいは図23に示すようなランダムドット構造がある。
図23に示したレリーフ構造は、1次元レリーフ構造であり、その格子ベクトルがX方向に平行となっているが、Y方向と平行となっていてもよく、X、Y方向と特定の角度をなした方向に並列するように形成されていてもよい。
また、レリーフ構造が2次元レリーフ構造であってもよい。更に、図23におけるレリーフ構造の断面形状は波型となっているが、のこぎり波、方形波、階段型となっていてもよい。あるいは、特定の周期関数に沿った形状であればよい。
【0095】
ここで、凹凸構造が周期構造となっている際のアスペクト比は、構造周期P1と構造深さ(または高さ)D1により求められる。具体的には、アスペクト比=構造深さ(または高さ)D1/構造周期P1にて算出される。そのため、上述のような本実施形態の効果を実現するためには、レリーフ構造の周期と深さ、高さをサブ領域62毎に設定する必要がある。
特定の周期関数を持つレリーフ構造として、例えば図24のような構造が考えられる。具体的には浅い構造と深い構造が組み合わされた周期構造である。この場合におけるアスペクト比は、最も深い構造を形成している構造の幅P2とその構造深さ(または高さ)D2からアスペクト比を算出する。
【0096】
図24のようにサブ領域62内にて浅い構造と深い構造が周期的に混在している場合、上述の議論より深い構造が形成されている部分にて光反射層20が除去される。こうすることでサブ領域62内にて光反射層20の除去量を変えることができるため、凹凸構造形状のアスペクト比に応じて、光反射層20を、情報表示媒体100、200内にてグラデーションとすることもでき、反射観察時あるいは透過観察時により中間諧調を表現することが可能となる。
加えて、光反射層20の除去する領域をより細かく設定することが可能となるため、光反射層20の有無による透過型回折格子を形成することも可能となり、情報表示媒体100、200を透過観察した際に、回折光による形成される情報を目視にて確認することが可能となる。
【0097】
図23図24のように凹凸構造をレリーフ構造とすることで、光の反射、回折、吸収を制御することが可能となる。これら、光の反射、回折、吸収により、第1の領域30、60において、情報を提示することが可能となる。
図25に示したランダムドット構造では、各ドットがX方向およびY方向にて等しい長さを持った形状となっているが、X方向に長い、あるいはY方向に長い形状であってもよい。その際、その長さが等しい、またはランダムとなっていてもよい。
また、図25におけるランダムドット構造の各ドットの断面形状が、四角形となっているが、半円形上、半楕円形状、三角形状、曲線形状であってもよい。
【0098】
ランダムドット構造のアスペクト比は、構造の幅P3と構造深さ(または高さ)D3に依存する。具体的には、アスペクト比=構造深さ(または高さ)D3/構造の幅P3にて算出される。そのため、上述のような本開示の効果を実現するためには、ランダムドット構造の幅P3と深さ、または高さD3をサブ領域62毎に設定する必要がある。
ランダムドット構造がX方向、あるいはY方向に長い形状となっていた場合、そのアスペクト比はランダムドット構造の短軸方向の幅と構造深さまたは高さにより算出される。
【0099】
ランダムドット構造において、X方向、Y方向の長さが同一である場合、光を無指向に散乱させることが可能となる。また、X方向、あるいはY方向のどちらかが長い場合には、その長い方向と直交する方向に光を散乱させ、指向性を持たせることが可能となる。加えて、ランダムドット構造の断面形状が、四角形で、かつ、Z方向を法線方向とする平坦な界面がある場合には、光の干渉が生じやすくなり、呈色する。これら、光の散乱、干渉により、第1の領域30、60において、情報を提示することが可能となる。
【0100】
[ウェットエッチングを組み合わせた情報表示媒体]
本実施形態は、光反射層20をレーザー光50により除去するため、いわゆるドライエッチング手法と同一である。従来のウェットエッチングとは異なり、すべてドライプロセスにて情報表示媒体100、200を製造できるため、製造プロセスコストを低下させることが可能となる。しかしながら、ウェットプロセスとの組み合わせも可能である。
ウェットプロセスにより光反射層20を除去することで第1情報を形成する。第1情報は、固定の絵柄や記号、数字、文字、幾何学模様、彩紋柄などである。
更に、上述のレーザー光50によるドライプロセスにより、オンデマンドな識別情報を形成するように、光反射層20を除去することで形成可能となる。識別情報は、固有コード、個人のプロファイル、シリアル番号、特定のマークなどからなる。
【0101】
図26に示す情報表示媒体200は、ウェットプロセスにより形成された領域80を含み、第1の領域30、60と第2の領域31、61を含んでいる。加えて、印刷層90により「〇〇〇LABEL」という文字情報が形成されている。更に、本実施形態の製造方法により、第2情報表示領域21、70が形成され「1234ABC」という文字情報が識別情報として形成されている。
図26では、第2情報表示領域21、70かなる識別情報が数字と文字からなる情報となっているが、識別情報が絵柄や記号、幾何学模様、彩紋柄により形成されていてもよい。また、領域80をまたいで第2情報表示領域21、70が形成されていてもよい。
【0102】
このように、本実施形態の情報表示媒体100、200およびその情報表示媒体の製造方法により、第1の領域30、60および、それらを形成するサブ領域62と、第2の領域31、61とにおいて、レーザー光50を照射してスキャンすることにより、光反射層20を除去した第2情報表示領域21、70からなる識別情報を形成することで、第1の領域30、60により提示される第1情報と、第2情報表示領域21、70により提示される識別情報との2つの情報を重ねた情報で提供することができる。また、第2情報表示領域21、70により提示される識別情報をオンデマンドに形成することができる。
凹凸構造を有する第1の領域30、60または、平坦な構造を有する第2の領域31、61に対し、上述のようにレーザー光50の焦点位置により第2情報表示領域21、70を形成するかしないかを選択することできる。また、サブ領域62に形成されている凹凸構造のアスペクト比を変調することによる光反射膜の除去量を変えることによっても、第2情報表示領域21、70を形成することを制御することができる。
【0103】
[情報表示媒体の検証方法]
情報表示媒体の検証方法は、パルスレーザーを、情報表示媒体における識別情報を有すると推定される部分に照射することで、隠された情報を提示されることで検証する。照射によって提示された情報を撮像装置で撮像し、撮像した画像に基づき識別情報を確認しても良い。照射によって現れた識別情報を検証することで、例えば真偽判定を行うことができる。
【0104】
図27は、その情報表示媒体100、200の検証方法を示している。
媒体250には、図27(a)に示すように、情報表示媒体100、200が貼付されており、かつ印刷情報91により幾何学模様と文字情報が形成されている。図27(b)に示す媒体250は、媒体250に対し検証機260からパルスレーザーが照射されることで、第2情報表示領域21、70が形成され「OK」という文字情報が提示、つまり現れた状態を示している。
加えて、図27(c)は、検証のために、検証機260へ媒体250を挿入した状態の一例を模式的に示している。
【0105】
媒体250を検証する際、情報表示媒体100、200においては、第1の領域30、60において、複数のサブ領域62が形成されており、かつ、アスペクト比の低い凹凸構造とアスペクト比の高い凹凸構造が形成されていることが望ましい。加えて、複数のサブ領域62を構成する凹凸構造により、光の反射、回折、屈折、干渉、散乱が生じ、それによって情報が提示されていることが望ましい。
また、情報表示媒体100、200はあらかじめ光反射層20の一部が除去されていてもよいが、その際に検証機260によって光反射層20が除去される領域を除いておくことが望ましい。
【0106】
この場合、情報表示媒体100、200には、アスペクト比の高い凹凸構造を含むサブ領域62dが含まれており、そのアスペクト比の高い凹凸構造を含むサブ領域62dの光反射層20が、検証機260に組み込まれているレーザー光50によって除去されることで、第2情報表示領域21、70が形成され、サブ領域62dの形成位置に伴った情報が提示される。
このように媒体250を検証機260に挿入し、特定のサブ領域62dにおける光反射層20を除去しておくことで、媒体250が真正品であるかを示す隠された識別情報を表示、確認することができる。隠された識別情報が提示された媒体250を目視にて確認することで、真正品であることを検証することもでき、予め検証機260に組み込まれている撮像装置261にて隠された情報を取得、分析することで、真正品であることを検証してもよい。
【0107】
なお、媒体250が真正品であるかを示す隠された識別情報は、検証機260へ挿入しなければ提示されないようにすることが望ましく、検証機260挿入前には情報表示媒体100、200が提示する第1情報に隠れて、識別情報が、目視確認できないデザイン、または大きさとなって形成されていることが望ましい。
このように、本開示の情報表示媒体100、200を有する媒体250にて、検証機260を用いてその媒体250が真正品であるかどうかを判断する真偽判定方法を組み込むことができる。
【0108】
以上のように、本実施形態では、凹凸構造が形成された情報表示媒体において、光反射層20を形成後、レーザーにて光反射層20を形成する材料をオンデマンドに除去して、識別情報を第1情報に重なるように形成することが可能となる。
また、レーザー照射による材料除去によって識別情報を形成する際に、第1の領域と第2の領域の両方に跨るようにレーザー照射を移動させても、レーザーの焦点位置を制御することで、オンデマンドで、第1の領域、あるいは第1の領域と第2の領域の両方に対して識別情報を形成することが出来る。
【0109】
加えて、第1の領域が、互いに隣接した2つ以上のサブ領域からなり、サブ領域の少なくとも1つのサブ領域における光反射層20を構成する単位面積当たりの材料の量が、それ以外のサブ領域における光反射層20を構成する単位面積当たりの材料の量よりも少なくなっていてもよい。
この場合、サブ領域毎に光反射層20を構成する材料の量を変調することができるため、凹凸構造による光学表現と、材料の量を変調することにより得られる光反射による光学表現との位置合わせが可能となるとともに、より複雑な光学表現がオンデマンドで形成可能となる。
【0110】
更に、第1の領域が、アスペクト比が0.1以上1未満の上記凹凸構造が形成されている第1サブ領域と、アスペクト比が1以上2以下の上記凹凸構造が形成されている第2サブ領域とを含み、構造形成層内部において、光反射層20が覆われていない側から構造形成層の平均厚さまでの領域が焦点位置となるように集光されたパルスレーザーを照射することで、第2サブ領域における光反射層20を構成する単位面積当たりの上記材料の量を50%以上少なくするようにしても良い。
この場合、サブ領域を形成する凹凸構造のアスペクト比によって、光反射層20を構成する材料の量を変調することができるため、凹凸構造による光学表現と、材料の量を変調することにより得られる光反射による光学表現との位置合わせが可能となるとともに、より複雑な光学表現がオンデマンドで形成可能となる。
【0111】
またこのとき、識別情報を形成するためのレーザーの照射位置が、第1の領域を構成する複数のサブ領域を通過することで、その通過位置においてサブ領域における光反射層20を構成する上記材料の量を50%以上除去するようにしても良い。あるいは、パルスレーザーの照射位置が第1の領域および第2の領域を通過することで、その通過位置において第1の領域および第2の領域における光反射層20を構成する上記材料の量を50%以上除去するようにしても良い。
光反射層20を50%以上除去したエリアの光学的な反射率が低下、あるいは透過率が上昇することにより、情報表示媒体を反射/透過観察時に、その光反射層20を除去したエリアによって新たな情報(識別情報)を表示することが可能となる。また、光反射層20の除去する量を変調することにより、グラデーションのような表現を持つ情報を記録することが可能となる。更に、こうした新たな情報表示をオンデマンドに加工することが可能となる。
【0112】
ここで、識別情報をマイクロ文字などの微小な表示とすると共に、第1表示に重なるように形成することで、通常状態では、識別情報を視認し難くすることが出来る。
また、本実施形態の識別情報を有する情報表示媒体を付した媒体の真偽判定方法は、例えばパルスレーザーが組み込まれている検証装置に上記媒体を挿入し、パルスレーザーにより識別情報を有する情報表示媒体部分を照射することで、隠された情報を提示することで出来る。
あるいは、上記隠された状態の識別情報を上記検証装置に組み込まれている撮像装置により読み取り、検証しても良い。
こうすることで、識別情報を有する情報表示媒体へ隠された情報を提示させることが可能となり、媒体が真正品であるのかを確認できる。
【0113】
以上のように、本開示の情報表示媒体は、反射観察において、部分的に異なる領域において複数の情報を表示することができるため、偽造防止向けの光学効果として利用することができ、銀行券や商品券などの有価証券、証明書、ブランド品、高価格品、電子機器、および、個人認証媒体などの物品にすき込みまたは貼り合せて含まれる価値や情報を保護するための偽造防止媒体として利用できる。
更に、偽造防止以外の目的で使用することができ、例えば、玩具や学習教材、商品の装飾品、ポスター等としても利用することができる。
また、オンデマンドに情報を追加付与できることから、製造物品に対するオンデマンド情報付与やトレーサビリティ情報の管理に応用することもできる。また、付与した情報をQRコード(登録商標)などとすることで、カメラや携帯電話、スマートフォンなど撮像機能を有する読み取り機器を用いた機械認証システムへも利用することができる。
【0114】
更に、凹凸構造のアスペクト比により光反射層20を除去する領域を定めることができることから、本開示を含む媒体を特定の装置へ挿入し、その装置内にてレーザーが照射されることで、アスペクト比の高い構造部分の光反射層20を除去し、特定の形状、情報が提示されるかどうかをその装置内部の撮像装置、あるいは目視にて確認することで、その媒体が真正品であるかを確認するといった、機械認証システムや真偽判定システムへ利用することができる。
更に、本開示は透過観察により隠された情報を目視確認できるため、上述の偽造防止以外の目的で使用することができる。例えば、玩具や学習教材、商品の装飾品、ポスター等としても利用することができる。
【0115】
「第3の実施形態」
次に、第3の実施形態について説明する。
なお、各図面において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には全て同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態の情報表示媒体は、有機基材と、有機基材に形成された描画部とを有する。描画部は、第1の描画部(粗い描画)及び第2の描画部(微細な描画)の一方又は両方の描画部を有する。有機基材は、有機材料からなる基材である。
有機材料は、有機樹脂や、紙等である。有機材料として、アクリルやポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、パリレンが例示できる。
第1の描画部は、有機基材の表面を部分的に除去して形成された除去部と有機基材の表面を炭化して形成され除去部位置よりも光透過率が低い炭化凹部との組合せで形成されている。第2の描画部は、有機基材の内部に形成された空隙部と有機基材の内部に形成され上記空隙部よりも光透過率が低い炭化部との組合せで形成されている。第1の描画部よりも第2の描画部の方が微細な描画となっている。
【0116】
除去部は、例えば有機基材の表面近傍に焦点を合わせたパルス数の少ないパルスレーザー照射で形成する工程によって形成することが出来る。炭化凹部は、例えば有機基材の表面近傍に焦点を合わせたパルス数の多いパルスレーザー照射で形成する工程で形成することが出来る。空隙部は、有機基材の内部に焦点を合わせたパルス数の少ないパルスレーザー照射で形成する工程で形成することが出来る。炭化部は、有機基材の内部に焦点を合わせたパルス数の多いパルスレーザー照射で形成する工程で形成することができる。
そして、例えば上記のような本実施形態の情報表示媒体がすき込んだり、有価証券用の基材に貼り合わせたりして有価証券としても良い。
【0117】
また、情報表示媒体の裏面側に接着層と剥離紙を設けて、ラベルとしても良い。
図28図36は、第3の実施形態に係る情報表示媒体の一例を示す部分断面図である。なお、図28図32図36においては、情報表示媒体100において、情報表示領域を除いた領域にて改質領域331、332、333を設けた場合の部分断面図を示しており、図33図35は情報表示媒体100において、情報表示領域を含む領域にて改質領域331を設けた場合の部分断面図を示している。
印加領域330が、描画部が形成される部分であり、改質領域が、除去部、炭化凹部、空隙部又は炭化部が形成される部分である。
【0118】
図28における情報表示媒体100は、有機材料である繊維素材からなる基材10に局所的にエネルギーが印加される印加領域330を含み、印加領域330は、改質領域331を含む。
図28において、改質領域331は、基材10を削って形成された場合を示しているが、基材10の表面を炭化、あるいは膨潤、白化、固化、軟化させて改質領域331とする場合でもよい。炭化、あるいは膨潤、白化、固化、軟化させた場合の方が、削った場合に比べ光透過率が低くなる。
基材10は、繊維素材からなっているため、光を散乱させる効果を有している。なお、繊維素材を緻密に配列させることで、基材10に対し光を透過させる効果を付与することも可能である。更に、繊維素材の配列密度に応じて、基材10の光透過率を変えることも可能である。
【0119】
また、基材10は、単層構造でもよく、多層構造を有していてもよい。更には、基材10には、局所的なエネルギー印加により、応答性のある材料が添加されていてもよい。例えば、熱応答性のあるサーモクロミック材料や、光応答性のあるフォトクロミック材料、蛍光材料、りん光材料、圧力応答性のある材料、溶剤応答性のあるソルバトクロミック材料、エネルギー印加により分子が炭化する材料などである。加えて、着色料や染料などの添加により、基材10は着色されていてもよい。
基材10において、従来技術の紙の透かし模様を形成するように、既に繊維素材の粗密が形成されていてもよく、基材10の一部が除去されていてもよい。
印加領域330を形成する手法として、例えば、パルスレーザーによる手法が挙げられる。また、サーマルヘッドによる手法や電子ビームによる手法、イオンビームによる手法などでもよい。
【0120】
図28においては、例えば、パルスレーザーによって局所的なエネルギー印加がなされる印加領域330が形成され、基材10を曲線状に削る場合の除去部としての改質領域331が形成された場合を示している。
また、図29においては、基材10を直線状に削る場合の除去部としての改質領域331aが形成された場合を示している。
除去部としての改質領域331は、図28のように曲線状に形成されていてもよく、図29のように階段状に多段に形成されていてもよく、単一の段にて形成されていてもよい。更に、改質領域331は、曲線および直線が融合された形状にて形成されていてもよい。
なお、基材10において、改質領域331が形成されていない領域を有していても良い。
【0121】
図30における情報表示媒体100は、有機材料からなる基材10が、改質領域331を含む印加領域330を含む構成である。
図30において、改質領域331として、基材10を削ることで除去部を形成した例を示している。この場合、基材10の光透過率を上げることができる。また、例えば、基材10に照射するパルスレーザーのパルス数を変えることで、基材10を炭化、あるいは膨潤、白化、固化、軟化させて炭化凹部とすることができる。更に、改質領域331において屈折率変化が生じていてもよい。
【0122】
また、図31においては、基材表面近傍に焦点を合わせパルスレーザーのパルス数を上げて、表面の改質領域331bとして、炭化させた炭化凹部を形成している。
この場合には、表面が削れた場合より基材の光透過率は低下する。
上記の除去部と炭化凹部とのコントラストにより、濃淡のある描画を有する第1の描画部を設けることができる。
基材10は、有機材料からなっているため、有機材料が光透過性を有している場合には、光透過性のある基材となる。
基材10において、透かし模様を形成するように、既に有機材料密度の粗密や、白化領域密度の粗密、炭化領域密度の粗密などで形成されていてもよい。また、基材10の一部が除去されていてもよい。
【0123】
図31においては、印加領域330において、基材10を曲線状に削る場合の改質領域331が形成された場合を示している。なお、図29と同様に基材10における改質領域331は直線状に多段の断面形状で形成されていてもよく、単一の段にて形成されていてもよい。また、改質領域331は曲線と直線が融合された形状で形成されていても良い。
図32において、改質領域332、333が、基材10の内部にて形成されている例を示している。このうち改質領域332は、炭化部であり、改質領域333は、空隙部である。なお、図32における改質領域332、333は、それぞれ異なる改質がなされた場合を示しているが、同様な改質がなされていてもよい。
改質領域332、333が形成されている位置は、基材10における厚さ方向に同じ位置となるように形成されていてもよく、異なっている位置に形成されていてもよい。
【0124】
改質領域332が形成されている領域と、改質領域333が形成されている領域とにおいて、例えば光透過率が異なるように形成することが可能となる。また、改質領域332と改質領域333とが形成されている領域が、光透過率ではなく、屈折率、散乱率、反射率、白濁率、炭化率などの違いにより形成してもよい。
また、基材10に金属イオンが含有させ、基材10内部に局所的エネルギーを印加することで、改質領域333として金属微粒子を形成しても良い。更には、金属以外の微粒子を形成しても良い。
なお、基材10において、改質領域332、333が形成されていない領域を有していても良い。
上記の炭化部と空隙とのコントラストにより、濃淡のある描画を有する第2の描画部を設けることができる。
【0125】
図33は基材10に対し、情報表示領域340が形成されている場合を示している。この例では、更に、情報表示領域340においても改質領域331が形成されている場合を示している。実際には、情報表示領域340に改質領域331が形成されていなくてもよく、情報表示領域340の一部分に改質領域331が形成されていてもよい。
情報表示領域340に形成された改質領域331は、情報表示領域340を削って形成した場合を示しているが、情報表示領域340を炭化、あるいは膨潤、白化、固化、軟化させて形成する場合でもよい。更に、改質領域331において屈折率変化が生じていてもよい。
【0126】
図34は基材10内部に対し、情報表示領域341が形成されている場合を示している。なお、情報表示領域341は、基材10に対し、色素やインキなどを埋め込む、含浸させるなどにより形成されている。また、基材10を形成時に既に埋め込まれている顔料や箔などにより形成される情報媒体であっても良い。更に、図34は情報表示領域341においても改質領域331が形成されている場合を示している。実際には、情報表示領域341に改質領域331が形成されていなくてもよく、情報表示領域341の一部分に改質領域331が形成されていてもよい。
情報表示領域341に形成された改質領域331は、情報表示領域341を削った場合を示しているが、情報表示領域340を炭化、あるいは膨潤、白化、固化、軟化させる場合でもよい。更に、改質領域331において屈折率変化が生じていてもよい。
【0127】
図35は基材10に対し、情報表示領域342が、印加領域330及び改質領域331が形成されていない側の界面にて形成されている場合を示している。基材10が光透過性を有していた場合、情報表示領域342が形成されている界面と逆側の界面において改質領域331が形成されている場合には、情報表示領域342により示される情報が、改質領域331を通して観察することが可能となる。
なお、情報表示領域342と改質領域331が形成されている領域が一致していても良いし、異なっていても良い。
【0128】
情報表示領域342と改質領域331が形成されている領域が、一部分または全部にて一致している場合には、例えば改質領域331によって情報表示領域342により示される情報が散乱されることで、情報の一部を見えにくくさせることができる。また、改質領域331の屈折率の分布により、情報表示領域342により示される情報を、拡大又は縮小させて提示することができる。
図36は、有機材料からなる基材10において、基材の界面に改質領域331を形成し、更に基材内部に改質領域332、333を形成した場合の断面図を示している。
図36では、改質領域(除去部)331と改質領域332、333それぞれが異なる位置にて形成されているが、同じ位置に形成されていても良い。
【0129】
こうすることで、基材10の界面(表面)に形成した改質領域331(除去部)と、基材内部に形成した改質領域332(空隙部)のそれぞれにおいて、異質な描画を実現できる。除去部による描画は、空隙部と比較し描画の線幅が広くなる。そのため、除去部は、空隙部より粗い描画となり、ややぼやけイメージとなる。逆に、空隙部は、除去部より微細な描画でシャープなイメージとなる。このように除去部と空隙部を用いることで、描画の階調を豊かにすることができる。また、同様に炭化凹部と炭化部でも同様にその描画の線幅を変えることができる。炭化凹部による描画は、炭化部と比較し描画の線幅が広くなる。そのため、炭化凹部は、炭化部より粗い描画となり、ややぼやけイメージとなる。逆に、炭化部は、炭化凹部より微細な描画でシャープなイメージとなる。このように炭化凹部と炭化部を用いることで、描画の階調を豊かにすることができる。
改質領域331それぞれの領域において異なる情報を提示することが可能となる。なお、改質領域331と改質領域332、333には異なる改質を施しても良いし、同じ改質を施しても良い。
【0130】
図37に示す情報表示媒体200は、基材に対し、印加領域330、改質領域331、332、333、情報表示領域340、341、342、更に透かし領域350を形成した場合を示している。
図37の一部において、印加領域330、改質領域331、32、33と、情報表示領域340、341、342が重なり合っている場合を有しているが、それぞれが独立して形成されていても良い。
また、情報表示領域340、341、342により提示される情報と、印加領域330、改質領域331、332、333とが位置合わせされて形成されていても良く、位置合わせされずに形成されていてもよい。
【0131】
更に、透かし領域350と重なるように印加領域330、改質領域331、32、33が形成されていても良い。
こうすることで、情報表示媒体200が表示する情報が、透かし領域350、印加領域330および改質領域331、332、333、情報表示領域340、341、342それぞれの組合せにより、複数の情報を形成することが可能となる。なお、得られる効果については後述する。
図37においては、印加領域330および改質領域331、332、333、更には情報表示領域340、341、342にて、文字情報を提示している。実際には文字情報だけではなく、記号や幾何学模様、絵柄などといった特定の形状で形成されていてもよい。
【0132】
[情報表示媒体の製造方法]
以下、情報表示媒体100および200の製造方法について説明する。
情報表示媒体100、200は、基材10を形成した後、基材10の界面あるいは内部へ局所的にエネルギーを与え、目的とする描画パターンに基づき基材10を部分的に改質することで製造される。
あるいは、情報表示媒体100、200は、基材10を形成した後、情報表示領域を設け、基材10の界面あるいは内部へ局所的にエネルギーを与えることで、基材10を部分的に改質することでも製造される。
【0133】
更に、情報表示媒体100、200は、基材10を形成した後、情報表示領域を設け、基材10の界面あるいは内部へ局所的にエネルギーを与えることで、基材10を部分的に改質し、情報表示領域の界面へ局所的にエネルギーを与えることで、情報表示領域を部分的に改質することでも製造される。
基材10、および情報表示領域340、341、342へ局所的にエネルギーを与える方法として、パルスレーザー源やサーマルヘッド、電子ビーム、イオンビームを用いる手法がある。なお、図38にパルスレーザー源52を用いた場合の図を示す。
【0134】
パルスレーザー源52より射出されたレーザー光は、レンズ51を通って、反射鏡53に反射し、情報表示媒体100、200、又は情報表示媒体100、200の製造ライン上にて、情報表示媒体100、200の特定位置に焦点が合うように入射される。すると、焦点にてレーザー光によるエネルギーが局在化することで、改質領域331、332が形成される。
なお、図38ではレーザー光がレンズ51を通った後に反射鏡53を通っているが、その順番が逆となっていても良い。
【0135】
レーザー光による加工の際、情報表示媒体100、200がロールトゥロールで製造されている場合、レーザー光の焦点位置のX、Y、Zを制御することで、改質領域331、332の形成位置を定めることが可能となる。
また、情報表示媒体100、200が枚葉で製造されている場合、情報表示媒体100、200が設置されたステージを移動させる、又は、レーザー光の焦点位置のX、Y、Zを制御することで、改質領域331、332の形成位置を定めることが可能となる。
あるいは、反射鏡53がマイクロミラーアレイ構造であり、そのマイクロミラーアレイ構造をコンピュータ制御させることで、レーザー光の位相を制御し、レーザー光の焦点位置を制御することも可能である。
【0136】
更には、反射鏡53を反射型の空間光変調器とし、空間光変調器の各セルの位相をコンピュータ制御させることで、レーザー光の位相を制御し、レーザー光の焦点位置を制御することも可能である。なお、空間光変調器は透過型であっても良い。
なお、パルスレーザー源52としては、パルス幅が100フェムト秒以上1ピコ秒以下であることが望ましい。そうすることで、レーザー光がレンズ51を通り、焦点にて瞬間的に高エネルギー状態となり、効果的に改質領域331、32、33を形成することが可能となる。また、高エネルギー状態となる時間が非常に短いため、照射位置に影響が集中する。
【0137】
また、パルスレーザー源52として、光ファイバーを利用したファイバーレーザー、固体レーザー、半導体レーザーのいずれかを用いることが望ましい。固体レーザーとしては、チタンサファイア結晶やYVO結晶を用いた固体レーザーが例示できる。更に、パルスレーザー源52の波長域は近赤外から赤外領域であることが望ましい。
上述のパルスレーザー源52を用いることで、レーザー光の焦点にて瞬間的に高エネルギーな状態を形成することが可能となり、基材10及び情報表示領域340、341、342へより高精細な加工が可能となる。
【0138】
図39は、パルスレーザー源52が基材10あるいは情報表示領域340、341、342に対し、局所的にエネルギーを与える場合の模式図を示している。局所的とは、図39のようにスポット的に与えられていることが望ましい。こうすることで、より高精細な改質領域331、332、333を形成することが可能となる。
なお、図39(a)は基材10の界面にパルスレーザー光50の焦点を合わせた場合を示しており、図39(b)は基材10の内部にパルスレーザー光50の焦点を合わせた場合を示している。また、図39(c)は、界面近傍でもやや界面から離れたところに焦点を合わせた場合を示している。このように、焦点位置を変えることによって、描画の線幅を変えることができ、描画の階調が豊かになる。
【0139】
また、図39でのエネルギー局在部380において、パルスレーザーのパルス数を変えることにより、炭化部、炭化凹部、除去部、空隙部を選択して形成することができる。パルス数が高い場合には、炭化部、炭化凹部が形成され、パルス数が低い場合には、除去または空隙が形成される。単位秒あたりのパルス数は、10~50kHzとすることができ、除去部、空隙部を形成する場合には、例えば単位秒あたりのパルス数を10~1kHzとし、炭化部、炭化凹部を形成する場合には、単位秒あたりのパルス数を1k~50kHzとすることができる。
【0140】
更に、パルスレーザー源52を用いた場合には、改質領域331、332、333を高速に形成、パターニングすることが可能となるため、高速加工が可能となる。また、そのパルス数を変えることで、異なる改質領域を形成することができ、様々な階調、濃淡の描画を得ることができるため、豊かな表現の描画となる。
上述のように、パルスレーザー源52を用いた場合には、高精細加工、高速加工が可能となるため、情報表示媒体100、200に対し、オンデマンド加工が可能となる。
【0141】
[情報表示媒体の観察方法及び効果]
上述の説明より、本開示を用いることで、下記に説明するような効果、及び観察方法が可能となる。
例えば、改質領域331、332、333において、基材の厚さを薄くするような改質を施した際、図40に示したように、情報表示媒体200を透かして観察すると、改質領域331、332、333によって、文字情報が透かしとして観察することが可能となる。
更に、図41及び図42に示すように印加領域370において、極薄く基材10を除去することで、反射観察時にはその差が目視観察できないが、透過観察にてその差を観察することができる。といった潜像を情報表示媒体へ形成することが可能となる。
【0142】
なお、上述のように本開示はオンデマンドで高速、高精細加工が可能となるため、情報表示媒体に合わせて印加領域330、370、改質領域331、32、33を形成することが可能となる。また、予め情報表示媒体100、200に形成されていた情報表示領域340、341、342により形成されるデザイン、情報に合わせたオンデマンド加工が可能となるため、情報表示媒体100、200に対し、より複雑な情報を付与することが可能となる。
パルスレーザー源52を用いた加工では、上述のように目視にて観察することが可能な情報をオンデマンド加工することもできるが、高精細加工が可能なことから、目視にて観察可能な情報の内部に、拡大観察することで観察可能となる情報を埋め込むことも可能となる。
【0143】
ここで、従来の透かし模様の形成は証紙時に行われるため、オンデマンドな透かし模様を形成できなかった。更に、従来、レーザー加工による透かし模様の形成には、特定の波長を吸収する顔料を証紙時に混ぜ込む必要があり、高コストになるといった問題があった。
また、従来、透かし模様は紙基材に用いられてきたが、近年有機分子からなるポリマー材料を基材として用いた紙幣などが流通し始めていることから、有機分子からなる基材への透かし模様の形成方法が確立されていない。
【0144】
これに対し、本開示は、上記課題に対し、有機分子からなる紙基材などの基材に対して追加材料などを用いずにオンデマンドに透かし模様を形成することを可能とする情報表示媒体及び有価証券、有機分子からなる基材に対するオンデマンドでの透かし模様を形成することを可能とする情報表示媒体および有価証券を提供する。
すなわち、本開示の態様によれば、有機基材に対して追加材料などを用いずにオンデマンドに透かし模様を形成することを可能とする情報表示媒体及び有価証券、有機分子からなる基材に対するオンデマンドでの透かし模様を形成することを可能とする情報表示媒体および有価証券を提供することが可能となる。
【0145】
そして、本開示の情報表示媒体は、反射観察において、部分的に異なる領域において複数の情報を表示することができるため、偽造防止向けの光学効果として利用することができ、物品にすき込みまたは貼り合せて、含まれる価値や情報を保護するための偽造防止媒体として利用できる。物品としては、銀行券や商品券などの有価証券、証明書、ブランド品、高価格品、電子機器、および、個人認証媒体が例示できる。
また、蛍光インキの印刷層やホログラムが形成されている基材に粘着層を形成することで、ラベルとすることができる。
【0146】
また、オンデマンドに情報を追加付与できることから、製造物品に対するオンデマンド情報付与やトレーサビリティ情報の管理に応用することもできる。また、付与した情報を情報コードとすることで、カメラや携帯電話、スマートフォンなど撮影機能を有する読み取り機器を用いた機械認証システムへも利用することができる。情報コードとしては、QRコード(登録商標)が例示できる。
更に、本開示は透過観察により隠された情報を目視確認できるため、上述の偽造防止以外の目的で使用することができる。例えば、玩具や学習教材、商品の装飾品、ポスター等としても利用することができる。
【0147】
「第4の実施形態」
次に、第4の実施形態について図面を参照しながら説明する。
<情報表示媒体100>
本実施形態の情報表示媒体100は、図43に示すような偽造防止手段を施した情報表示媒体である。
情報表示媒体100は、下層側から表面側にむけて、支持層を構成する構造形成層10と、光反射層20と、金属イオン含有層412とがこの順に積層した積層体から構成される。この積層体の下層に更に粘着層や基材層などの他の層を有していても良いし、金属イオン含有層の上に、表面保護層などの他の層を有していても良い。
【0148】
更に、情報表示媒体100は、金属イオン含有層412の一部の領域に微粒子413を含む。
構造形成層10は光透過性を有している。構造形成層10は、単層構造でもよく、多層構造を有していてもよい。更に、構造形成層10は、液晶材料など光学異方性を有する材料から構成されていてもよい。加えて、樹脂への顔料や染料の添加などにより、着色されていてもよい。
構造形成層10の材料として、金属酸化物や、それらの混合物を使用することができる。金属酸化物としては、例えばSiO(二酸化ケイ素)やTiO(二酸化チタン)、MgO(酸化マグネシウム)が例示できる。更に、構造形成層10の材料は、樹脂であってもよい。
【0149】
なお、金属酸化物で構造形成層10を形成する場合には、例えば、ドライコーティング技術により形成できる。また、グラビア印刷などのウェットコーティング技術により形成できる。ドライコーティング技術としては、蒸着、スパッタリング、CVD(化学気相成長)が例示できる。
樹脂で構造形成層10を形成する場合には、例えばウェットコーティング技術により形成できる。また、ドライコーティング技術により形成してもよい。
構造形成層10の厚さは、100nm以上5000nm以下が好ましい。この厚さの範囲に規定することで、後に説明する凹凸構造414を形成しやすくなる。実際には、凹凸構造414が形成できるだけの厚さがあればよい。
【0150】
また、構造形成層10は、同一領域内において均一な膜厚であってもよく、膜厚が連続的または不連続的に変化していてもよい。
構造形成層10における光反射層20との界面10aの構造例を図44に示す。図44(a)は、構造形成層10において平坦な界面10aの領域の一例を示し、図44(b)は、構造形成層10において凹凸構造による1次元方向に周期的に配列しているレリーフ構造(グレーティング構造)が形成されている界面10aの領域の一例を示している。
構造形成層10における光反射層20との界面10aは、全面が図44(a)に示す平坦な構造であっても良いが、一部の領域の界面10aが図2(b)で例示される凹凸構造414から構成されていても良い。
【0151】
構造形成層10の界面10aに形成される凹凸構造414は、図44(b)に示したような1次元方向に配列しているレリーフ構造のほかに、2次元方向へ周期的に配列しているレリーフ構造例えば、クロスグレーティング構造)、ランダムな凹凸ドット構造、ランダム周期レリーフ構造(ランダムグレーティング構造)などであってもよい。例えば、レリーフ構造あるいはクロスグレーティング構造が形成されたときには、レリーフ構造の格子ベクトル方向に沿って光が回折され、その回折光によって情報を提示することができる。また、ランダムな凹凸ドット構造が形成されたときには、光が散乱され、その散乱光によって情報を提示することができる。更に、ランダムグレーティング構造が形成されたときには、その格子ベクトル方向に特に強く光が散乱され、その指向性のある散乱光によって情報を提示することができる。
【0152】
構造形成層10は、平面方向の各領域においてそれぞれ異なる凹凸構造414が形成されることで、特定の形状を表現することができる。特定の形状は、絵柄や記号、数字、文字、幾何学模様などである。
また、凹凸構造414が形成される領域の形状が、上記の特定の形状を表現していてもよい。
光反射層20は、単層構造でもよく、多層構造を有していてもよい。
また、光反射層20の材料としては、例えば金属、合金を使用することができる。金属としては、アルミニウムや銀、金、銅、錫、ニッケルが例示できる。合金としては、鋼、ステンレス、ジュラルミンが例示できる。更に、光反射層20の材料は、窒化チタンなど金属光沢のある材料であってもよい。
【0153】
加えて、光反射層20の材料は、金属化合物でも良い。金属化合物としては、高屈折率材料として知られる二酸化チタン(TiO)や二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タングステン(WO)、酸化イットリウム(Y)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)が例示できる。
なお、光反射層20は、例えば、ドライコーティング技術により形成される。ドライコーティング技術としては、蒸着、スパッタリング、CVD(化学気相成長)が例示できる。また、光反射層20は、ウェットコーティング技術を用いて形成しても良い。
【0154】
光反射層20の層厚は5nm以上100nm以下が好ましい。より好ましくは、20nm以上60nm以下である。この層厚の範囲に規定することで、情報表示媒体を目視観察するに当たって十分な光の反射率が得られ、偽造防止効果を向上させることができる。
また、光反射層20は同一領域内において均一な膜厚であってもよく、膜厚が連続的または不連続的に変化していてもよい。更に、周期構造を形成していてもよい。
更に、光反射層20は、絵柄や記号、数字、文字、幾何学模様などといった特定の形状で形成されていてもよい。
金属イオン含有層412は、一部分または全部の領域に微粒子413を含み形成されている。
【0155】
図42においては、一部の領域において、複数の微粒子413が距離を開けて配置される場合を例示しているが、微粒子413は互いに近接して配置されていてもよく、各微粒子413同士が接触して配置されていてもよい。微粒子を含有させた領域の一部または全部は、構造形成層10における特定のパターンを形成した領域と厚さ方向で重なるように配置することが好ましい。
金属イオン含有層412は、主材料としてのバインダー高分子材料に対し、溶剤を用いて金属化合物を分散することで形成される。バインダー高分子材料は、ポリビニルピロリドンやゼラチンが例示できる。溶剤としては、水やエタノールが例示できる。金属化合物としては、硝酸銀やテトラクロリド金酸が例示できる。
【0156】
金属イオン含有層412を形成する際には、例えばウェットコーティング技術により形成できる。更に、コーティング後にベークすることで、金属イオン含有層412を形成してもよい。
金属イオン含有層412の層厚は500nm以上50000nm以下が好ましい。より好ましくは、1000nm以上5000nm以下であり、ウェットコーティング技術により形成できる膜厚であればよい。
また、金属イオン含有層412は同一領域内において均一な膜厚であってもよく、膜厚が連続的または不連続的に変化していてもよい。更に、周期構造を形成していてもよい。
【0157】
更に、金属イオン含有層412に、複数の微粒子の配置によって特定のパターンが形成されていてもよい。特定のパターンは、例えば絵柄や記号、数字、文字、幾何学模様などである。
本実施形態の微粒子413は、金属イオン含有層412に含まれている金属イオンが還元されることで、金属イオン含有層412内に形成される。そのため、微粒子413を形成する材料は、金属イオン含有層412に含まれる材料に依存する。例えば、金属イオン含有層412において硝酸銀が溶解していた場合、銀イオンが金属イオン含有層412に含まれているため、得られる微粒子413は銀により形成される。金属イオン含有層412への微粒子413の形成手法については、後ほど説明する。
金属イオン含有層412において形成されている微粒子413は、金属イオンを還元する3次元的な位置によって、金属イオン含有層412において微粒子413を含有させる領域を、3次元的に設定することが可能となる。
【0158】
<他の情報表示媒体100>
他の情報表示媒体100は、図45に示すように、構造形成層10の一部の領域421の界面10aに凹凸構造414が形成され、その上に、光反射層20及び金属イオン含有層412が形成されている例である。
図45に示す情報表示媒体100は、は金属イオン含有層412に微粒子413を形成する前の状態を例示しており、この図45に示す情報表示媒体100の金属イオン含有層412に対し、後述のような手法によって、金属イオン含有層412に含まれている金属イオンの還元処理を施して、図4に示すような、金属イオン含有層412に微粒子413が形成されている情報表示媒体100とする。
【0159】
図46に示す情報表示媒体100において、凹凸構造414が構造形成層10の一部に領域に形成されている。又、光反射層20には、後述のように、局所的に光反射層20を除去する処理が施されて、光を反射しないか光反射率が大幅に低い領域が形成されている。以下、光を反射しないか光反射率が大幅に低い領域を光低反射部411Bとも呼ぶ。
これによって、情報表示媒体100は、凹凸構造414及び光反射層20が形成されている領域420と、光低反射部411Bが配置されている領域21と、構造形成層10が平坦であり、かつ光反射層20が形成されている領域422と、光低反射部411Bが配置されている領域423とを有する。
【0160】
また、図46に示すように、領域420、422と重なる金属イオン含有層412の領域には、微粒子413が含有している。
領域421、423における、光反射層20の光低反射部411Bは、光反射層20を構成する塗布材を部分的にコーティングしないことで設けられる。
図46の例では、領域421、423の光低反射部411Bは、光反射層20を一旦設けた後に、レーザーなどによって局所的にエネルギーを与えて除去することで設けた場合の例である。また、化学的エッチングプロセスを用いることによっても光反射層20を除去することができる。
【0161】
光低反射部411Bを有する領域421及び423を設けることで、光反射層20で光が反射しやすい領域420及び422により得られる情報をより効果的にみせることが可能となる。例えば、領域420において凹凸構造414が形成されているため、凹凸構造414により反射、散乱、回折、干渉、あるいは吸収した光が目視観察可能となる。一方、領域421においては、光の反射が低いため、凹凸構造414による反射、散乱、回折、干渉、あるいは吸収が生じないかわずかである。つまり、光反射層20の有無により、目視観察における情報を表示することができる。
【0162】
また、予め凹凸構造414により提示されていた情報と、光低反射部411Bを設けた領域421との位置を合わせることができる。そうすることで、凹凸構造414による情報をよりわかりやすく観察者に提示することができる。なお、凹凸構造414が形成されていない領域422及び423においても同様である。
更に、金属イオン含有層412に微粒子413が形成されていることで、微粒子413により光の反射、散乱、回折、干渉、あるいは吸収が生じる。例えば、微粒子413が銀や金といった金属により形成されると、入射した光が微粒子413の表面にて表面プラズモンが生じ、特定波長の光が微粒子413により吸収、散乱される。また、形成された微粒子413が周期的に配置されていることにより、光の回折や散乱が生じる。更に、形成された微粒子413が隣接ないしは接触して連続的に形成された場合、光の反射が生じる。そのため、微粒子413により、凹凸構造414により生じる光学現象とは異なる光学現象を実現することができる。
【0163】
以下、微粒子413は金属材料からなり、その微粒子413により表面プラズモンが生じ、特定波長の光が微粒子413により吸収、散乱することで、呈色することを前提として記載する。
光低反射部411Bを設けた領域421及び423を設けることで、光反射層20を除去しない領域420及び422により得られる情報をより効果的にみせることが可能となる。例えば、領域420において凹凸構造414が形成されているため、凹凸構造414により反射、散乱、回折、干渉、あるいは吸収した光が目視観察可能となる。一方、領域421においては、光の反射が低いため、凹凸構造414による反射、散乱、回折、干渉、あるいは吸収が生じないが小さい。つまり、光反射層20の有無により、目視観察における情報を表示することができる。
【0164】
また、予め凹凸構造414により提示されていた情報と、光低反射部411Bの領域431との位置を合わせることができる。そうすることで、凹凸構造414による情報をよりわかりやすく観察者に提示することができる。なお、凹凸構造414が形成されていない領域432および433においても同様である。
一方、金属イオン含有層412に形成されている微粒子413による呈色は、いずれの領域においても観察可能である。そのため、例えば、領域420における凹凸構造414による情報と微粒子413による呈色とが同時に目視観察可能となる。
【0165】
このように、凹凸構造414の有無、あるいは光反射層20の有無により得られる情報に加え、微粒子413を形成することで、更に情報を付与することが可能となる。
加えて、後に説明する微粒子413の形成手法を用いることで、微粒子413を形成する領域と、光反射層20を除去する領域(光低反射部411B)とが、一つの加工プロセスにおいて位置合わせよく形成することが可能となる。そうすると、光反射層20の有無、凹凸構造414の有無、微粒子413の有無それぞれの組み合わせを実現できるため、より複雑な情報提示が可能になると同時に、情報表示媒体100のデザイン性を向上することができる。
【0166】
<情報表示媒体200>
図47は、情報表示媒体200の一例を示している。なお、以下の説明においては光反射層20として金属材料が使用された場合を想定している。
図47において、凹凸構造414が構造形成層10に形成されず、光反射層20が形成されている領域450と、光低反射部411Bの領域451とにより、3つのひし形が連なった柄が形成されている。更に、凹凸構造414が形成されている領域452において、アルファベットの“A”が、凹凸構造414と微粒子413により形成されている領域453において、アルファベットの“B”が、凹凸構造414はないが微粒子413のみが形成されている領域454において、アルファベットの“D”が形成される。更に、最後に後の製造方法にて説明する手法(微粒子413を形成する手法)によりパターニング領域455、456において、アルファベットの“C”および3つのひし形が連なった縁取り柄が形成されている。なお、領域456においては、金属イオン含有層412において微粒子413が形成されている。
【0167】
領域450においては、光反射層20によって反射する光を目視観察でき、領域451においては、構造形成層10が観察可能となる。ここで、例えば情報表示媒体200が透明な接着材料などを介して基材へ貼付されている場合には、領域451においては、その基材に予め形成された情報が目視観察可能となる。その際、接着材料が着色していてもよい。
領域452において、凹凸構造414が例えばグレーティング構造であった場合、アルファベット“A”において光が回折するため、目視観察時においてアルファベット“A”は、虹色に色変化するように見えることで、情報を得ることができる。
【0168】
領域453において、領域452と同様に凹凸構造414がグレーティング構造であった場合、アルファベット“B”は虹色に色変化するように見える。加えて、微粒子413による呈色があった場合には、凹凸構造414による虹色変化と微粒子413による呈色とが混色し、領域452とは異なる色表現を実現することが可能となる。
領域454において、光反射層20によって反射する光が、微粒子413による呈色により、色の付いた反射光が目視観察可能となる。例えば、光反射層20としてアルミを用い、微粒子413による呈色が黄色であった場合、目視観察時において領域454は金色の光沢を呈する。
【0169】
領域455においては、光反射層20がアルファベットの“C”を示すように除去されることで、アルファベットの“C”が目視観察可能となる。
領域456においては、光反射層20が除去されている領域であると同時に、微粒子413により抵触している領域でもあるため、目視観察時には色の付いた縁取り柄が観察可能となる。
以上のように、光反射層20、微粒子413を各領域に分けて部分的に形成することで、一つの情報表示媒体200に複数の情報を付与することが可能となる。また、凹凸構造414、光反射層20、金属イオン含有層412を形成した後に微粒子413を形成する、更には光反射層20の除去が可能なため、後加工により情報を付与することが可能となる。
【0170】
<情報表示媒体の製造方法>
以下、情報表示媒体100、200の製造方法について説明する。
情報表示媒体100、200は、例えば下記(1)~(5)の工程を経て製造される。(1)まず、構造形成層10へ凹凸構造414を形成し、光反射層20を形成する。
(2)次に、光反射層20を部分的に除去して、局所的に低光反射部を形成する。
(3)次に、金属イオン含有層412を設けて、積層体とする。
(4)次に、積層体における金属イオン含有層412中において、局所的にエネルギーを与えることで、金属イオン含有層412内における金属イオンを還元し、金属イオン含有層412中に微粒子413を形成する。
(5)更に、光反射層20へ局所的にエネルギーを与えることで、光反射層20を除去する。
【0171】
以上の処理によって情報表示媒体100、200が製造される。なお、上記製造方法のうち、(2)と(5)は必ずしも製造時に必要ではなく、必要に応じて実施するとよい。
金属イオン含有層412へ局所的にエネルギーを与える方法として、パルスレーザー源やサーマルヘッドを用いる手法がある。なお、図48にパルスレーザー源を用いた場合の図を示す。
即ち、パルスレーザー源52より射出されたレーザー光50は、レンズ51を通って、反射鏡53に反射し、情報表示媒体100、200を形成する金属イオン含有層412に焦点が合うように入射される。すると、焦点にてレーザー光によるエネルギーが局在化し、そのエネルギーによって金属イオンが還元され、焦点にて微粒子413が形成される。
【0172】
更に、レーザー光50の焦点を光反射層20に合わせると、局在化されたエネルギーによって光反射層20が除去されて低反射状態の層となる。この技術は、レーザーアブレーションとして公知の技術である。
また、例えばレーザー光50の焦点を構造形成層10に合わせた場合には、その位置において構造形成層10を除去することも可能である。
レーザー光50による加工の際に、情報表示媒体100、200の設置位置、又はレーザー光50の焦点のX、Y、Zを制御することで、微粒子413を形成する領域や光反射層20を除去する領域を選択することが可能となる。
【0173】
あるいは、反射鏡53がマイクロミラーアレイ構造であり、そのマイクロミラーアレイ構造をコンピュータ制御させることで、レーザー光50の位相を制御し、レーザー光50の焦点位置を制御することも可能である。
上記の製造方法により、金属イオン含有層412に対し微粒子413を形成し、光反射層20における一部の領域を除去することが可能となる。更には、微粒子413を形成する領域と光反射層20を除去する領域を同一とすることもできる。
【0174】
情報表示媒体100、200を形成した後に、上記の製造方法を適用することが可能であるため、情報表示媒体100、200の製造ラインへの後加工方法として適用できる。そのため、本開示の製造方法を用いることで、情報表示媒体100、200へのオンデマンド加工が可能となる。
このように、情報表示媒体100、200に対して本開示の製造方法を適用すると、各領域450、451、452、453、454、455、456においてそれぞれ異なる光学表現ができ、更にそれぞれにおいて異なる情報を提供することができる。そうした光学表現の組み合わせ及び情報の組み合わせにより、情報表示媒体100、200が真正品であると判断できる。
【0175】
(効果その他)
本実施形態の情報表示媒体は、光を透過する支持層と、光反射層と、金属イオン含有層の順番で積層されることで形成される積層体からなり、上記光反射層と上記金属イオン含有層とが接しており、上記金属イオン含有層の一部の領域に微粒子が含まれている。
このとき、同一平面に対し上記光反射層が部分的に配置され、上記金属イオン含有層における上記微粒子を含む領域と、上記光反射層が設けられている領域とが積層体の厚さ方向で重なる部分があるように配置されていてもよい。
また、上記金属イオン含有層における上記微粒子を含む領域と、上記光反射層が設けられている領域とが積層体の厚さ方向で位置合わせされて重なるように配置されていてもよい。
【0176】
また、上記光を透過する金属イオン含有層と、上記光反射層と、上記支持層の界面にて構造が形成されて上記支持層が構造形成層となる積層体からなり、上記構造形成層と上記光反射層の一方の面とが接すると共に、上記光反射層のもう一方の面と上記金属イオン含有層と接し、上記金属イオン含有層の一部の領域に微粒子が含まれ、上記光反射層は、上記構造形成層と接している界面において部分的に設けられ、上記構造形成層は、上記光反射層と接している界面の一部に凹凸構造が設けられていてもよい。
また、上記金属イオン含有層における上記微粒子を含む領域、上記光反射層が設けられている領域および上記凹凸構造が設けられている領域のうちの少なくとも2つの領域は、積層体の厚さ方向で重なる部分があるように配置されていてもよい。
また、上記光反射層は、例えば金属材料又は金属酸化物材料から構成されている。
【0177】
また、上記の情報表示媒体の製造方法において、上記積層体を設けた後に、上記金属イオン含有層へ局所的に光エネルギーを与えることで、上記金属イオン含有層内に上記微粒子を形成すると良い。
また、上記の情報表示媒体の製造方法において、上記積層体を設けた後に、上記光反射層へ局所的にエネルギーを与えることで、上記光反射層の層位置に対し、局所的に光を反射しないか光反射率が低くなった領域を形成すると良い。
このような構成によれば、表面側の光を透過する金属イオン含有層一部の領域に微粒子を含有させることで、下層に形成した表示パターンを偽造し難くすることが可能となる。
また必要に応じて、含有させる微粒子の3次元の特定のパターンで配置する事によって、金属イオン含有層にも情報表示パターンを形成することも可能となる。
【0178】
また、追加材料等を必要とせずに、金属イオン含有層にあるいは光反射層に対してオンデマンドに加工することができるため、それぞれにおいて認証情報や識別情報、装飾柄などを付与することが可能となる。加えて、微粒子を形成する加工と光反射層への加工を同時に行うことができるため、それぞれの位置を合わせた加工、あるいは位置を合わせない加工のいずれもが実施可能となる。
そして、本開示の情報表示媒体は、反射観察において、部分的に異なる領域において複数の情報を表示することができるため、偽造防止向けの光学効果として利用することができる。したがって、有価証券、証明書、ブランド品、高価格品、電子機器、および、個人認証媒体などの物品に含まれる価値や情報を保護するための偽造防止媒体として利用できる。
更に、偽造防止以外の目的で使用することができ、例えば、玩具や学習教材、商品の装飾品、ポスター等としても利用することができる。
【0179】
「第5の実施形態」
以下、第5の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[情報表示媒体]
図49は、第5の本実施形態の1に係る情報表示媒体の部分断面図であり、情報表示媒体100は、偽造防止手段を施した情報表示媒体である。
【0180】
情報表示媒体100は、光透過性を有する有機材料からなる基材10の内部に情報表示領域560(図60参照)を有する。
ここで、基材10は、例えば、光透過性を有する有機樹脂から形成されている。光透過性を有する有機材料樹脂としては、アクリルやポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、パリレンが例示できる。また、基材10は、単層構造でもよく、多層構造を有していてもよい。更には、基材10は、液晶材料など光学異方性を有する材料から構成されていてもよい。加えて、基材10は、樹脂への染料の添加などにより、着色されていてもよい。
【0181】
また、基材10は局所的エネルギー印加により、応答性のある材料が添加されていてもよい。例えば、熱応答性のあるサーモクロミック材料や、光応答性のあるフォトクロミック材料、蛍光材料、りん光材料、圧力応答性のある材料、溶剤応答性のあるソルバトクロミック材料、エネルギー印加により分子が炭化する材料などである。加えて、基材10には金属イオンが含有されていてもよい。
【0182】
有機材料樹脂高分子材料を基材10とする際には、例えばウェットコーティング技術により形成できる。また、ドライコーティング技術により形成されてもよい。
基材10は、単体として基材10を形成していても良く、キャリアフィルムなどへコーティングすることで基材10を形成しても良い。
なお、基材10が光透過性を有しており、基材10そのものによって情報が提示されていてもよい。例えば、レリーフホログラム構造や、光散乱構造、光干渉構造などが設けられていることで、それら構造による光学効果により、目視観察において、情報を認識することができる。
【0183】
基材10の厚さは、5μm以上200μm以下が好ましい。より好ましくは20μm以上150μm以下である。これらの厚さとすることで、基材10の内部へ加工するために十分な強度となる。
また、基材10は同一領域内において均一な膜厚であってもよく、膜厚が連続的または不連続的に変化していてもよい。
【0184】
図49における情報表示媒体100の基材10の内部には、2つの連続改質部521a、521bが設けられている。
ここで、各連続改質部521a、521bは、他の領域と性質が異なる改質部520を基材10の内部において隣接する改質部520の一部または全部が重なるように連続的に形成してなる、非改質領域511との界面530を連続的な曲面形状としたものである。
【0185】
そして、界面530は、光学界面として作用し、その曲面形状により情報表示領域560に情報が表示されるようになっている。
ここで、改質部520は、基材10の内部にて局所的にエネルギーを付加することにより、基材10の内部のエネルギー印加部にて形成される。改質部520は、例えば、基材10に対し屈折率変化、あるいは、除去、炭化、膨潤、白化、固化、軟化させることにより形成される。
【0186】
改質部520を形成する手法としては、例えば、パルスレーザーによる手法が挙げられる。また、サーマルヘッドによる手法や電子ビームによる手法、イオンビームによる手法などでもよい。
ここで、一方の連続改質部521aにより形成される界面530の曲面形状は、周期関数で表される曲面形状であり、繰り返しパターンにより形成されている。
このように、界面530の曲面形状を、周期関数で表される曲面形状とすることにより、回折格子構造を形成し、この回折格子構造により回折された回折光によって情報が情報表示領域560に形成される。
【0187】
なお、界面530の曲面形状は、2つ以上の周期関数による重畳関数で表される曲面形状であってもよい。また、界面530の曲面形状は、曲面を形成するものであれば、周期関数で表される曲面形状や重畳関数で表される曲面形状でなくてもよい。
また、他方の連続改質部521bにより形成される界面530の曲面形状は、周期関数で表される曲面形状において基材10の膜厚方向に対して高さの異なる段差が形成された曲面形状である。これにより、回折格子構造を形成し、この回折格子構造により回折された回折光によって情報が情報表示領域560に表示される。
【0188】
次に、第5の実施形態の2に係る情報表示媒体について、図50を参照して説明する。
図50に示す情報表示媒体100は、図49に示す情報表示媒体100と基本構成は同様であるが、連続改質部521が1つで構成され、その連続改質部521の非改質領域511との界面530の曲面形状が、図49に示す情報表示媒体100における連続改質部521a、521bの非改質領域511との界面530の曲面形状と異なっている。
【0189】
即ち、図50に示す情報表示媒体100において、連続改質部521の非改質領域511との界面530の曲面形状は、周期関数で表される曲面形状は、基材10の内部においてフレネルレンズ形状となっている。即ち、当該曲面形状は、基材10の内部においてフレネル化された特定の自由曲面構造を形成する。これにより、フレネル化された特定の自由曲面構造により反射された反射光によって情報が情報表示領域560に表示される。そして、反射観察時には、光学的な疑似立体効果を付与することが可能となる。
【0190】
次に、第5の実施形態の3に係る情報表示媒体について、図51を参照して説明する。
図51に示す情報表示媒体100は、図49に示す情報表示媒体100と基本構成は同様であるが、基材10の内部に設けられるのが連続改質部521a、521bではなく、非連続改質部522である点で相違している。
ここで、非連続改質部522は、改質部520を基材10の内部において隣接する改質部520が重ならないように非連続的に形成してなる、非改質領域511との疑似界面531を連続的な曲面形状としたものである。
【0191】
そして、疑似界面531は、光学界面として作用し、その曲面形状により情報表示領域560に情報が表示されるようになっている。
そして、疑似界面531の曲面形状は、周期関数で表される曲面形状であり、繰り返しパターンにより形成されている。このように、疑似界面531の曲面形状を、周期関数で表される曲面形状とすることにより、回折格子構造を形成し、この回折格子構造により回折された回折光によって情報が情報表示領域560に表示される。
【0192】
次に、第5の実施形態の4に係る情報表示媒体について、図52を参照して説明する。
図52に示す情報表示媒体100は、図51に示す情報表示媒体100と基本構成は同様であるが、疑似界面531の曲面形状が複数の周期関数による重畳関数で表される曲面形状となっている点で相違している。
これにより、疑似界面531の曲面形状を、複数の周期関数による重畳関数で表される曲面形状とすることにより、回折格子構造を形成し、この回折格子構造により回折された回折光によって情報が情報表示領域560に表示される。疑似界面531の曲面形状を、複数の周期関数による重畳関数で表される曲面形状とすることで、この光学効果を生じ易くなる。
【0193】
次に、第5の実施形態の5に係る情報表示媒体について、図53を参照して説明する。
図53に示す情報表示媒体100は、図51に示す情報表示媒体100と基本構成は同様であるが、疑似界面531の曲面形状がレンズ形状となっている点で相違している。
これにより、レンズ形状により反射された反射光によって情報が情報表示領域560に表示される。そして、反射観察時には、光学的な疑似立体効果を付与することが可能となる。
【0194】
次に、第5の実施形態の6に係る情報表示媒体について、図54を参照して説明する。
図54に示す情報表示媒体100は、図51に示す情報表示媒体100と基本構成は同様であるが、疑似界面531の曲面形状がフレネルレンズ形状となっている点で相違している。
これにより、フレネルレンズ形状により反射された反射光によって情報が情報表示領域560に表示される。そして、反射観察時には、光学的な疑似立体効果を付与することが可能となる。
【0195】
なお、図54における疑似界面531はフレネルレンズ形状を示しているが、自由曲面形状を断続的にスライスした界面形状となっていてもよい。その際、反射観察時において、自由曲面形状に対応した光学的な疑似立体効果を付与することが可能となる。
第5の実施形態の1~2のように、改質部520が重なり合うように形成された連続改質部521a、521b、521が形成された場合、又は第5の実施形態の3~6のように改質部520が重なり合わないように形成された非連続改質部522が形成された場合、いずれにおいても、改質部520が形成される基材10の膜厚方向の位置は、ランダムとなっていても良い。こうすることで、基材10に入射した光が散乱し、その散乱光の濃淡や指向性により情報を表示することが可能となる。即ち、界面530あるいは疑似界面531の曲面形状により、光散乱構造を形成し、この光散乱構造により散乱された散乱光によって情報が情報表示領域560に表示されることが可能となる。
また、改質部520または連続改質部521a、521b、521、あるいは非連続改質部522を形成する密度を変えることにより、基材10へ入射した光による散乱光の濃淡を変調することが可能となり、その濃淡により情報を表示することが可能となる。
【0196】
次に、本開示の第7実施形態に係る情報表示媒体について、図55を参照して説明する。
図55に示す情報表示媒体100は、基材10の内部において、第1及び第2実施形態における連続改質部521が、y軸方向に沿って予め設定した形成ピッチPにて連続的に複数形成されることで改質領域523を形成したものである。
【0197】
この際、情報表示媒体100に対して、入射角度θinの角度にて光が入射された場合、界面530により形成された回折格子構造により生じる回折光は以下の(1)式に当てはまる。
P(sinθin-sinθdiff)=mλ …(1)
ここで、Pは回折格子形成ピッチ、θinは入射角度、θdiffは回折角度、mは整数からなる次数、λは入射光、あるいは回折光の波長である。
(1)式により回折格子形成ピッチPにより回折光の特性が左右されることがわかる。
【0198】
実際には、改質領域523において、連続改質部521の形成ピッチPを部分的に変えながら形成することで、情報表示媒体100を観察する際に、その形成ピッチPの違いから各部分において異なる波長の回折光、又は異なる回折角度の回折光が観察でき、それによって情報を表示することが可能となる。
更に、周期的な形成ピッチではなくとも、図49に示した連続改質部521bからなる界面530や、図52に示した改質部520により形成される非連続改質部522の疑似界面531により、入射光の位相差を制御する位相ホログラム構造を形成することが可能となる。こうすることで、従来からキノフォームと呼ばれるような回折像の明るい計算ホログラム構造を、形成することが可能となり、スポット状の改質部520により立体的な光学表現を得ることが可能となる。
【0199】
また、改質部520を基材10に対して膜厚方向においても制御して形成できるため、従来の体積型ホログラム構造を形成する干渉縞を改質部520により形成することが可能となる。こうすることで、改質部520により立体的な光学表現を得ることが可能となる。
加えて、改質部520または連続改質部521の外形を多段形状とし、疑似的にノコギリ波のような断面とすることにより、ブレーズド回折格子構造を形成し、従来よりも明るい回折光を得ることが可能となる。
【0200】
次に、第5実施形態の8に係る情報表示媒体について、図56を参照して説明する。
図56に示す情報表示媒体100は、基材10の内部において、第1及び第2実施形態における連続改質部521を予め設定した形成ピッチPで複数形成して改質領域523を形成し、各連続改質部521の界面530によって疑似界面532を形成したものである。こうすることで、先に説明したのと同様に、疑似界面532による回折格子構造が形成でき、それによる回折光によって情報を表示することが可能となる。
【0201】
図56に示す情報表示媒体100において、連続改質部521は基材10内部において曲線を描くように形成されているが、直線であっても良く、直線と曲線が組み合わされてもよい。また、基材10の膜厚方向を変えながら形成しても良い。こうすることで、より複雑な回折格子構造を形成することが可能となる。
図56に示す情報表示媒体100のように、連続改質部521を、曲線を描くように形成することで、疑似界面532により形成される回折光において、人が目視観察時に、視差を付与することが可能となる。そうすることで、回折光により得られる情報を立体的な光学表現とすることが可能となる。
【0202】
図57には、第5の実施形態の9に係る情報表示媒体が示されている。
図57に示す情報表示媒体100は、基材10の内部において、第5の実施形態の3~6における非連続改質部522を予め設定した形成ピッチPで複数形成して改質領域523を形成し、各非連続改質部522の疑似界面531によって疑似界面532を形成したものである。こうすることで、疑似界面532による回折格子構造が形成でき、それによる回折光によって情報を表示することが可能となる。
【0203】
[情報表示媒体の製造方法]
以下、情報表示媒体100の製造方法について説明する。
情報表示媒体100は、下記の工程を行うことで製造される。
・ 基材10を形成した後に、基材10の内部へ局所的にエネルギーを与えることで、部分的に改質部520を形成する工程、
・ 予め設計されたパターンにそって改質部520の形成を連続的に繰り返す工程。
【0204】
つまり、第1及び第2実施形態に係る情報表示媒体100は、基材10の内部に局所的にエネルギーを印加することにより、基材10の内部のエネルギー印加部にて他の領域と性質が異なる改質部520を形成する工程と、改質部520を基材10の内部において隣接する改質部520の一部または全部が重なるように連続的に形成して、非改質領域511との界面530を連続的な曲面形状とした連続改質部521を形成する工程とを含んで製造される。
【0205】
また、第5の実施形態の3~6に係る情報表示媒体100は、基材10の内部に局所的にエネルギーを印加することにより、基材10の内部のエネルギー印加部にて他の領域と性質が異なる改質部520を形成する工程と、改質部520を基材10の内部において隣接する改質部520が重ならないように非連続的に形成して、非改質領域511との疑似界面531を連続的な曲面形状とした非連続改質部522を形成する工程とを含んで製造される。
【0206】
更に、第5の実施形態の7に係る情報表示媒体100は、前述のように、基材10の内部に連続改質部521を形成するとともに、連続改質部521を、予め設定した設定方向に沿って、予め設定した形成ピッチPにて連続的に複数形成して改質領域523を形成することで製造される。
また、第5の実施形態の8に係る情報表示媒体100は、前述のように、基材10の内部に連続改質部521を形成するとともに、連続改質部521を、予め設定した設定方向に沿って、予め設定した形成ピッチPにて連続的に複数形成して、各連続改質部521の界面530によって疑似界面532を形成した改質領域523を形成することで製造される。
【0207】
また、第5の実施形態の9に係る情報表示媒体100は、前述のように、基材10の内部に非連続改質部522を形成するとともに、非連続改質部522を予め設定した形成ピッチPで複数形成して、各非連続改質部522の疑似界面531によって疑似界面532を形成した改質領域523を形成することで製造される。
第5の実施形態の1~9に係る情報表示媒体100の製造方法において、改質部520は、基材10の内部において2つ以上同時に形成される。これにより、連続改質部521、非連続改質部522、改質領域523を形成するためのプロセス時間を短縮することが可能になる。
【0208】
ここで、基材10へ局所的にエネルギーを与える方法として、パルスレーザー源やサーマルヘッド、電子ビーム、イオンビームを用いる手法がある。なお、図58にパルスレーザー源52を用いた場合の図を示す。
パルスレーザー源52より射出されたレーザー光50は、レンズ51を通って、反射鏡53に反射し、情報表示媒体100又は情報表示媒体100の製造ライン上にて、情報表示媒体100の特定位置に焦点が合うように入射される。すると、焦点にてレーザー光50によるエネルギーが局在化することで、スポット状の改質部520が形成される。
【0209】
なお、図58ではレーザー光50がレンズ51を通った後に反射鏡53を通っているが、その順番が逆となっていても良い。
レーザー光50による加工の際、情報表示媒体100がロールトゥロールで製造されている場合、レーザー光50の焦点位置(x方向、y方向及びz方向の位置)を制御することで、改質部520の形成位置を選択、制御することが可能となる。
【0210】
また、情報表示媒体100が枚葉で製造されている場合、情報表示媒体100が設置されたステージを移動させる、又は、レーザー光50の焦点位置(x方向、y方向及びz方向の位置)を制御することで、改質部520の形成位置を選択、制御することが可能となる。
あるいは、反射鏡53がマイクロミラーアレイ構造であり、そのマイクロミラーアレイ構造をコンピュータ制御させることで、レーザー光の位相を制御し、レーザー光の焦点位置を制御することも可能である。
【0211】
更には、反射鏡53を反射型の空間光変調器とし、空間光変調器の各セルの位相をコンピュータ制御させることで、レーザー光の位相を制御し、レーザー光の焦点位置を制御することも可能である。なお、空間光変調器は透過型であっても良い。
なお、パルスレーザー源52としては、パルス幅が100フェムト秒以上1ピコ秒以下であることが望ましい。そうすることで、レーザー光50がレンズ51を通り、焦点位置にて瞬間的に高エネルギー状態となり、効果的に改質部520を形成することが可能となる。また、高エネルギー状態となる時間が非常に短いため、照射位置以外に影響を与えることはない。
【0212】
また、パルスレーザー源52として、光ファイバーを利用したファイバーレーザー、あるいはチタンサファイア結晶を用いた固体レーザーのどちらかを用いることが望ましい。更に、パルスレーザー源52の波長域は近赤外から赤外領域であることが望ましい。
上述のパルスレーザー源52を用いることで、レーザー光の焦点にて瞬間的に高エネルギーな状態を形成することが可能となり、基材10へより高精細な加工が可能となる。
【0213】
図59は、パルスレーザー源52が基材10に対し、局所的にエネルギーを印加してエネルギー印加部500を形成する場合の模式図を示している。局所的とは、図59に示すように、レンズ51を通ったエネルギーがスポット的に与えられていることを意味する。こうすることで、より高精細な改質部520を形成することが可能となる。
更に、パルスレーザー源52を用いた場合には、改質部520を高速に形成、パターニングすることが可能となるため、高速加工が可能となる。
上述のように、パルスレーザー源52を用いた場合には、高精細加工、高速加工が可能となるため、情報表示媒体100、200に対し、オンデマンド加工が可能となる。
【0214】
従来のホログラムを形成する手法として、ホログラムを形成する微細凹凸構造が形成された版を用いて、その版を樹脂材料に押しつけ、微細凹凸構造を樹脂材料にエンボスする方法が良く知られている。このエンボス加工によりホログラムを製造するために、下記の2つのプロセスを有する。
・ 版製造プロセス
・ エンボスプロセス
【0215】
一方、本プロセスは樹脂材料フィルムに対して直接的に加工を施し、ホログラムのような回折格子を形成するため、版製造プロセスに加えエンボスプロセスが必須とはなくなる。その結果、製造コストの低下へと繋がる。
図60は、第5の実施形態の1~9に係る情報表示媒体100を示すもので、情報表示媒体100は、基材10の内部に、連続改質部521、非連続改質部522、あるいは改質領域523を形成し、それらによる界面530又は疑似界面531、532により、情報表示領域560を形成した場合を示している。界面530または疑似界面531、532により、光学的に回折光を生じさせることで、情報表示領域560において情報を表示する。図60においては、表示される情報は数字情報の「12345」の場合を示している。
【0216】
ここで、表示される情報は数字だけでなく、他の特定のパターンであっても良い。他の特定のパターンとは、文字情報、絵柄、記号、幾何学模様などである。
図61は、本開示の第10実施形態に係る情報表示媒体100を示すもので、この情報表示媒体100は、基材10の内部に、連続改質部521、非連続改質部522、あるいは改質領域523を形成し、それらによる界面530又は疑似界面531、532により得られる情報表示領域560を設けるとともに、基材10の表面に、インキなどの印刷により形成される印刷部570、更に、基材10に新たに貼付した基材10Aの内部に、連続改質部521、非連続改質部522、あるいは改質領域523を形成し、それらによる界面530または疑似界面531、532により得られる情報表示領域561を設けている。
【0217】
実際には、予め基材10Aの内部に情報表示領域561を加工したものを、基材10に貼付することで情報表示媒体100を得ることもできるし、上述のように基材10Aを貼付後に基材10Aの内部に情報表示領域561を加工してもよい。
図61に示すように、情報表示領域560以外の情報により情報表示媒体100を形成していても良い。また、単一の基材10において情報表示領域560を形成するだけでなく、追加にて形成した基材10Aに対し、情報表示領域561を形成することで、新たに目視確認可能となる情報を記録してもよい。
また、情報表示領域560および印刷部570を重ね合わせてもよい。
こうすることで、情報表示媒体100に対し、印刷部570と、基材10に形成した情報表示領域560と、基材10Aに形成した情報表示領域561と、複数の情報を形成することが可能となる。
【0218】
(効果その他)
第5の実施形態に係る情報表示媒体は、光透過性を有する有機材料からなる基材の内部に情報表示領域を有する情報表示媒体であって、上記基材の内部に、他の領域と性質が異なる改質部を上記基材の内部において隣接する改質部の一部または全部が重なるように連続的に形成してなる、非改質領域との界面を連続的な曲面形状とした連続的改質部を設け、上記曲面形状により上記情報表示領域に情報が表示されることを要旨とする。
こうすることで、連続的な曲面形状によって非改質領域と連続改質部との界面が形成され、その界面形状により光学応答を変調し、情報を基材の内部の情報表示領域に記録することが可能となる。なお、界面形状が基材の内部に形成されるため、偽造、模造、改ざん行為などによって表示情報を剥がした場合には、容易に表示情報が破壊され、偽造、模造、改ざんが困難となり、より高い偽造防止効果を発揮することができる。
【0219】
また、第5の実施形態の別の態様に係る情報表示媒体は、光透過性を有する有機材料からなる基材の内部に情報表示領域を有する情報表示媒体であって、上記基材の内部に、他の領域と性質が異なる改質部を上記基材の内部において隣接する改質部が重ならないように非連続的に形成してなる、非改質領域との疑似界面を連続的な曲面形状とした非連続改質部を設け、上記曲面形状により上記情報表示領域に情報が表示されることを要旨とする。
こうすることで、連続的な曲面形状によって非改質領域と非連続改質部との疑似界面が形成され、その疑似界面の形状により光学応答を変調し、情報を基材の内部の情報表示領域に記録することが可能となる。なお、疑似界面の形状が基材の内部に形成されるため、偽造、模造、改ざん行為などによって表示情報を剥がした場合には、容易に表示情報が破壊され、偽造、模造、改ざんが困難となり、より高い偽造防止効果を発揮することができる。
【0220】
また、前述の情報表示媒体において、上記連続改質部が、上記基材の内部において少なくとも2つ以上設けられていることが好ましい。
また、前述に情報表示媒体において、上記非連続改質部が、上記基材の内部において少なくとも2つ以上設けられていることが好ましい。
こうすることで、連続改質部または非連続改質部による光学応答による表示情報を、基材の内部において複数設けることが可能となる。
【0221】
また、前述の情報表示媒体において、上記曲面形状が、繰り返しパターンにより形成されていることが好ましい。
こうすることで、以下の光学効果および情報を提示することが可能となる。
また、前述の情報表示媒体において、上記曲面形状により、上記基材の内部においてフレネル化された特定の自由曲面構造を形成し、上記フレネル化された特定の自由曲面構造により反射された反射光によって上記情報が上記情報表示領域に表示されてもよい。
また、前述の情報表示媒体において、上記曲面形状が、周期関数で表される曲面形状であることが好ましい。また、前述の情報表示媒体において、上記曲面形状が、少なくとも2つ以上の周期関数による重畳関数で表される曲面形状であってもよい。
こうすることで、以下の光学効果および情報を提示することが可能となる。
また、前述の情報表示媒体において、上記曲面形状により、回折格子構造を形成し、上記回折格子構造により回折された回折光によって上記情報が上記情報表示領域に表示されてもよい。
【0222】
また、前述の情報表示媒体において、上記曲面形状により、上記基材の内部において体積型ホログラム構造を形成し、上記体積型ホログラム構造により回折された回折光によって上記情報が上記情報表示領域に表示されてもよい。
また、前述の情報表示媒体において、上記曲面形状により、キノフォーム構造を形成し、上記キノフォーム構造により回折された回折光によって上記情報が上記情報表示領域に表示されてもよい。
また、前述の情報表示媒体において、上記曲面形状により、光散乱構造を形成し、上記光散乱構造により散乱された散乱光によって上記情報が上記情報表示領域に表示されてもよい。
【0223】
また、第5の実施形態の別の態様に係る情報表示媒体の製造方法は、光透過性を有する有機材料からなる基材の内部に情報表示領域を有する情報表示媒体の製造方法であって、上記基材の内部に局所的にエネルギーを印加することにより、上記基材の内部のエネルギー印加部にて他の領域と性質が異なる改質部を形成する工程と、上記改質部を上記基材の内部において隣接する改質部の一部または全部が重なるように連続的に形成して、非改質領域との界面を連続的な曲面形状とした連続改質部を形成する工程とを含むことを要旨とする。
これにより、連続的な曲面形状によって非改質領域と連続改質部との界面が形成され、その界面形状により光学応答を変調し、情報を基材の内部の情報表示領域に記録することが可能となる。なお、界面形状が基材の内部に形成されるため、偽造、模造、改ざん行為などによって表示情報を剥がした場合には、容易に表示情報が破壊され、偽造、模造、改ざんが困難となり、より高い偽造防止効果を発揮することができる。
【0224】
また、この情報表示媒体の製造方法において、上記連続改質部が、上記基材の内部において1つ形成されることが好ましい。
こうすることで改質領域(連続改質部)を緻密に配置し、上記曲面形状を形成することが可能となる。
また、この情報表示媒体の製造方法において、上記連続改質部が、上記基材の内部において2つ以上形成されてもよい。
こうすることで、改質領域(連続改質部)を緻密に配置できると共に、改質領域を形成する領域面積を広くすること可能となる。
【0225】
また、第5の実施形態の別の態様に係る情報表示媒体の製造方法は、光透過性を有する有機材料からなる基材の内部に情報表示領域を有する情報表示媒体の製造方法であって、上記基材の内部に局所的にエネルギーを印加することにより、上記基材の内部のエネルギー印加部にて他の領域と性質が異なる改質部を形成する工程と、上記改質部を上記基材の内部において隣接する改質部が重ならないように非連続的に形成して、非改質領域との疑似界面を連続的な曲面形状とした非連続改質部を形成する工程とを含むことを要旨とする。
これにより、連続的な曲面形状によって非改質領域と非連続改質部との疑似界面が形成され、その疑似界面の形状により光学応答を変調し、情報を基材の内部の情報表示領域に記録することが可能となる。なお、疑似界面の形状が基材の内部に形成されるため、偽造、模造、改ざん行為などによって表示情報を剥がした場合には、容易に表示情報が破壊され、偽造、模造、改ざんが困難となり、より高い偽造防止効果を発揮することができる。
【0226】
また、この情報表示媒体の製造方法において、上記非連続改質部が、上記基材の内部において1つ形成されることが好ましい。
こうすることで改質領域(非連続改質部)を緻密に配置し、上記曲面形状を形成することが可能となる。
また、この情報表示媒体の製造方法において、上記連続改質部が、上記基材の内部において少なくとも2つ以上形成されてもよい。
こうすることで、改質領域(非連続改質部)を緻密に配置できると共に、改質領域を形成する領域面積を広くすることが可能となる。
また、これらの情報表示媒体の製造方法において、上記改質部が、上記基材の内部において少なくとも2つ以上同時に形成されることが好ましい。
こうすることで、改質領域(連続改質部又は非連続改質部)を形成するためのプロセス時間を短縮することが可能となる。
【0227】
以上のように、本実施形態に係る情報表示媒体およびその製造方法によれば、基材の内部に偽造防止効果を高めることのできる情報表示領域を形成することで、より高い偽造防止効果を発揮することができる情報表示媒体を提供できる。
そして、本開示に係る情報表示媒体100は、反射観察において、部分的に異なる領域において複数の情報を表示することができるため、偽造防止向けの光学効果として利用することができ、有価証券、証明書、ブランド品、高価格品、電子機器、および、個人認証媒体などの物品に含まれる価値や情報を保護するための偽造防止媒体として利用できる。
更に、本開示に係る情報表示媒体100は、偽造防止以外の目的で使用することができ、例えば、玩具や学習教材、商品の装飾品、ポスター等としても利用することができる。
【実施例
【0228】
以下に、本開示の具体的実施例について説明するが、本開示はこの形態に限定されるものではない。
「第1の実施例」
プラスチック基材上に、光反射層20としてアルミニウムを膜厚50nm程度となるように蒸着した。
次に、フェムト秒レーザーを用いて、光反射層20であるアルミニウムを部分的に除去した。
上記のようにして得られた情報表示媒体において、反射観察時にはアルミニウムによる金属光沢が確認できたが、透過観察時には、部分的に除去されたアルミニウムによって、透過率が異なり、アルミニウムによる透かし柄を目視確認できた。
【0229】
「第2の実施例」
(第2の実施例-1)
PETフィルムキャリア基材上に、構造形成層としてUV硬化性樹脂を2μm厚さとなるように形成した後に、予め構造ピッチ300nm、構造深さ350nmを有する2次元グレーティング構造の領域(第1の領域)と、構造ピッチ800nm、構造深さ200nmを有するランダムドット構造の領域(第1の領域)と、平坦な構造の領域(第2の領域)を含む金属版を用いて、構造形成層にそれら構造を形成した。
【0230】
以上のように構造を形成した後、光反射層20としてアルミニウムを膜厚50nmとなるように蒸着した。その後、フェムト秒レーザーをPETフィルムキャリア基材側から、構造形成層の厚さ1μm位置が焦点位置となるように狙って照射し、スキャンすることで、構造ピッチ300nm、構造深さ350nmを有する2次元グレーティング構造の領域におけるアルミニウムが除去された。なお、アルミニウムが除去された領域の線幅は2μmから5μmであった。
また、情報表示媒体の別の位置において、フェムト秒レーザーの強度を上げ、PETフィルムキャリア基材側から、構造形成層の厚さ1μm位置が焦点位置となるように狙って照射し、スキャンすることで、平坦な構造の領域以外の照射領域におけるアルミニウムが除去された。なお、アルミニウムが除去された領域の線幅は2μmから5μmであった。
【0231】
更に、情報表示媒体の別の位置において、フェムト秒レーザーをPETフィルムキャリア基材側から、構造形成層の厚さ1.5μm位置が焦点位置となるように狙って照射し、スキャンすることで、照射領域におけるアルミニウムが除去された。なお、アルミニウムが除去された領域の線幅は2μmから5μmであった。
上記のようにして得られた情報表示媒体において、反射観察時にはアルミニウムが除去された領域は線幅が細すぎるため、第1の領域により形成された絵柄、文字、数字などによる第1情報に紛れて目視観察にて形成されていることを確認することが難しく、一方で透過観察時には、アルミニウムが除去された領域の透過率が向上しているため、アルミニウムを除去した領域により透かし柄のような識別情報を目視確認できた。
【0232】
(第2の実施例-2)
PETフィルムキャリア基材上に、構造形成層としてUV硬化性樹脂を2μm厚さとなるように形成した後に、予め構造ピッチ300nm、構造深さ350nmを有する2次元グレーティング構造の領域と、構造ピッチ800nm、構造深さ200nmを有するランダムドット構造の領域と、平坦な構造の領域を含む金属版を用いて、構造形成層にそれら構造を形成した。
構造を形成した後、光反射層20としてアルミニウムを膜厚50nmとなるように蒸着した。その後、フェムト秒レーザーをPETフィルムキャリア基材側から、構造形成層の厚さ1μm位置が焦点位置となるように狙って照射し、広幅でスキャンすることで、平坦な構造の領域以外の照射領域におけるアルミニウムが除去された。なお、アルミニウムが除去された領域の線幅は3mm以上であった。
【0233】
更に、情報表示媒体の別の位置において、フェムト秒レーザーをPETフィルムキャリア基材側から、構造形成層の厚さ1.5μm位置が焦点位置となるように狙って照射し、スキャンすることで、照射領域におけるアルミニウムが除去された。なお、アルミニウムが除去された領域の線幅は2mm以上であった。
上記のようにして得られた情報表示媒体において、反射観察時にはアルミニウムが除去された領域は凹凸構造による光学効果を目視にて確認することができなかった。一方で、アルミニウムが残っている領域では光学効果を目視確認することができた。また、広幅でスキャンしたことで、アルミニウムを除去した領域により形成された情報を目視にて確認できた。
【0234】
「第3の実施例」
(第3の実施例-1)
紙基材上に、光学可変インキを印刷した。
次に、パルスレーザーを用いて、紙機材および光学可変インキを部分的に除去した。
上記のようにして得られた情報表示媒体において、反射観察時には紙機材への加工が目視にて観察できず、光学可変インキへの加工が目視にて確認できたが、透過観察時には、部分的に除去され、厚さの異なる紙機材において、光透過率が異なり、透かし柄を目視確認できた。
【0235】
(第3の実施例-2)
プラスチック基材に対し、パルスレーザーを用いて、プラスチック基材中へプラスチックが溶解、昇華して空隙となる空隙部と、炭化する炭化部とを部分的に形成した。
上記のようにして得られた情報表示媒体において、反射観察時には空隙部においては、光が散乱し、炭化部においては光が吸収されるが、炭化部による光の吸収量の方が多く、炭化の濃淡により情報を観察可能となった。また、透過観察時には、単価の濃淡及び、空隙による光の散乱度合いの違いにより、反射観察時とは異なる情報を目視にて確認することができた。
【0236】
「第4の実施例」
プラスチック基材上に、構造形成層としてアクリル系のUV硬化樹脂をコーティングし、予め凹凸構造が形成されている金属版を用いて凹凸構造をUV硬化樹脂へパターニングさせ、UV硬化させた。その上に、光反射層としてアルミニウムを膜厚50nm程度となるように蒸着した。
次に、硝酸銀とポリビニルピロリドンを水に溶解させた溶液をアルミニウム上にコーティングし、乾燥させることで金属イオン含有層を形成した。その後、フェムト秒レーザーを用いて、金属イオン含有層内に平均粒径100nm程度の銀微粒子を形成した。更に、同じフェムト秒レーザーを用いて、アルミニウムを部分的に除去した。
上記のようにして得られた情報表示媒体において、銀微粒子により金属イオン含有層が黄色に呈色したことを目視確認できた。また、その呈色した領域とアルミニウムが重なっている領域において、金色の金属光沢が得られた。更に、凹凸構造により回折した光も目視確認できた。
【0237】
「第5の実施例」
(実施例1)
基材10の内部に、パルスレーザーを用いて、改質領域523をピッチ1μmとなるように形成した。
上記のようにして得られた情報表示媒体100において、情報表示媒体100を傾けることで回折光を目視にて確認することができた。また、透過観察時においても回折光を目視確認できた。
【0238】
(実施例2)
基材10の内部に、パルスレーザーを用いて、基材10が炭化するように改質領域523を設けた。
炭化の濃淡による情報を目視確認できた。また、非常に弱い回折光を確認することができた。
【0239】
(実施例3)
既に印刷インキにより情報が基材10の下側界面に形成された基材10の内部に、パルスレーザーを用いて、改質領域523をピッチ1μmとなるように形成した。
上記のようにして得られた情報表示媒体100において、情報表示媒体100を傾けることで回折光を目視にて確認することができた。また、透過観察時においても回折光を目視確認できた。更に、基材10の下側界面に形成された印刷インキによる情報も劣化することなく確認することができた。
【0240】
以上、各実施形態により本開示を説明したが、本開示の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組合せに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる組合せによって画されうる。
また、本願が優先権を主張する、日本国特許出願2016-172797号(2016年9月5日出願)、日本国特許出願2016-172798号(2016年9月5日出願)、日本国特許出願2016-172799号(2016年9月5日出願)、日本国特許出願2016-208886号(2016年10月25日出願)、および日本国特許出願2017-099619号(2017年5月19日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。
【符号の説明】
【0241】
10 基材(構造形成層)
20 光反射層
21、70 第2情報表示領域
21a、21b 第2情報表示領域
30、60 第1の領域
31、61 第2の領域
50 レーザー光
51 レンズ
52 レーザー源
53 反射鏡、ハーフミラー
62 サブ領域
62a、62b、62c、62d サブ領域
100、200 情報表示媒体
260 検証機
261 撮像装置
330、331、332、333 改質領域
330、370印加領域
340、341情報表示領域
411B 光低反射部
412 金属イオン含有層
413 微粒子
511 非改質領域
520 改質部
521、521a、521b 連続改質部
523 改質領域
531、532疑似界面
560、561情報表示領域
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