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特許7383242伸縮梯子、伸縮梯子の製造方法、地下作業支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】伸縮梯子、伸縮梯子の製造方法、地下作業支援システム
(51)【国際特許分類】
   E06C 1/30 20060101AFI20231113BHJP
   E06C 1/34 20060101ALI20231113BHJP
   E06C 5/44 20060101ALI20231113BHJP
   E02D 29/12 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
E06C1/30
E06C1/34
E06C5/44
E02D29/12 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019101393
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020193538
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】509292412
【氏名又は名称】特殊梯子製作所有限会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519174001
【氏名又は名称】株式会社低炭素ファシリテイ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】寺本 隆
(72)【発明者】
【氏名】松井 繁朋
(72)【発明者】
【氏名】平川 長
(72)【発明者】
【氏名】赤松 毅人
(72)【発明者】
【氏名】池田 順治
(72)【発明者】
【氏名】熊岡 哲也
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-366616(JP,A)
【文献】特開2019-035289(JP,A)
【文献】特開2007-013507(JP,A)
【文献】実開昭47-004799(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0153231(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06C 1/30
E06C 1/34
E06C 1/36
E06C 5/44
E02D 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、
横桟とを備え、
支柱が、外筒体と、外筒体の両端にそれぞれ接続された内筒体とを備え、
内筒体が、外筒体内に入れ子状に収容可能とされており、
支柱がマグネシウム合金からなる、伸縮梯子。
【請求項2】
互いに太さの異なる複数の内筒体を備えており、
内筒体同士が、端部に向かうにつれて徐々に細くなり、先端が最も細くなるようにして接続されている、請求項1記載の伸縮梯子。
【請求項3】
外筒体に、外筒体を折り畳み可能とするヒンジ部が設けられている、請求項1又は2記載の伸縮梯子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載の伸縮梯子が、熱間成形された素管を冷間成形してなる支柱を用いている、伸縮梯子の製造方法。
【請求項5】
支柱と横桟とを備え、支柱が、外筒体と、外筒体の両端にそれぞれ接続された内筒体とを備え、内筒体が、外筒体内に入れ子状に収容可能とされている伸縮梯子と、
通信網と無線接続する無線接続手段と、
無線接続手段と接続され、洞道内での無線通信環境を構築する中継手段とを備え、
伸縮梯子をマンホールに設置し、伸縮梯子の一部を洞道内に下した際、伸縮梯子の地上に突出した部分に無線接続手段が位置し、伸縮手段の洞道内に位置する部分に中継手段が位置する、地下作業支援システム。
【請求項6】
支柱と横桟とを備え、支柱が、外筒体と、外筒体の両端にそれぞれ接続された内筒体とを備え、内筒体が、外筒体内に入れ子状に収容可能とされている伸縮梯子と、
通信網と無線接続する無線接続手段と、
無線接続手段と接続する映像撮影手段とを備え、
伸縮梯子をマンホールに設置し、伸縮梯子の一部を洞道内に下した際、伸縮梯子の地上に突出した部分に無線接続手段と映像撮影手段とが位置する、地下作業支援システム。
【請求項7】
支柱と横桟とを備え、支柱が、外筒体と、外筒体の両端にそれぞれ接続された内筒体とを備え、内筒体が、外筒体内に入れ子状に収容可能とされている伸縮梯子と、
通信網と無線接続する無線接続手段と、
伸縮梯子の位置を把握する位置把握手段とを備え、
伸縮梯子をマンホールに設置し、伸縮梯子の一部を洞道内に下した際、伸縮梯子の地上に突出した部分に無線接続手段と位置把握手段とが位置する、地下作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、伸縮梯子、その伸縮梯子の製造方法、その伸縮梯子を用いた地下作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の支柱と、支柱間に設けられた複数の横桟とを備えた伸縮梯子が開示されている。この伸縮梯子の支柱は、径の異なる複数の筒状体を入れ子状に収納可能に接続することで構成されており、繰り出し竿のように伸長時と収縮時とで容易に長さを変えることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-35289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の伸縮梯子は、一方向にのみ繰り出す、いわゆる一方向繰り出し式である。そのため、一方端部(例えば基端)に位置する筒状体が最も太く、他方端部に位置する筒状体が最も細い。このような一方向振り出し式の場合、筒状体を継ぐ本数が少なければ特に問題ないが、継ぎ数が多くなると基端側の筒状体が必要以上に太くなり、重量がかさむ場合がある。
【0005】
そこで本発明は、軽量化を図ることができる伸縮梯子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の伸縮梯子1は、支柱2と、横桟6とを備え、支柱2が、外筒体4と、外筒体4の両端にそれぞれ接続された内筒体5とを備え、内筒体5が、外筒体4内に入れ子状に収容可能とされていることを特徴としている。
【0007】
上記伸縮梯子1においては、互いに太さの異なる複数の内筒体5を備えており、内筒体5同士が、端部に向かうにつれて徐々に細くなり、先端が最も細くなるようにして接続されていることが好ましい。
【0008】
また、外筒体4に、外筒体4を折り畳み可能とするヒンジ部4aが設けられていることが好ましい。
【0009】
また、支柱2がマグネシウム合金からなることが好ましい。
【0010】
本発明の伸縮梯子の製造方法は、熱間成形された素管を冷間成形してなる支柱2を用いていることを特徴としている。
【0011】
本発明の地下作業支援システムは、上記いずれかの伸縮梯子1と、インターネット回線と無線接続する無線接続手段11と、無線接続手段11と接続され、洞道30内での無線通信環境を構築する中継手段12とを備え、伸縮梯子1をマンホール20に設置した際、伸縮梯子1の地上に突出した部分に無線接続手段11が位置し、伸縮手段の洞道30内に位置する部分に中継手段12が位置することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の他の地下作業支援システムにおいては、上記いずれかの伸縮梯子1と、通信網40と無線接続する無線接続手段11と、無線接続手段11と接続する映像撮影手段14とを備え、伸縮梯子1をマンホール20に設置し、伸縮梯子1の一部を洞道30内に下した際、伸縮梯子1の地上に突出した部分に無線接続手段11と映像撮影手段14とが位置することを特徴としている。
【0013】
本発明の別の地下作業支援システムにおいては、上記いずれかの伸縮梯子1と、通信網40と無線接続する無線接続手段11と、伸縮梯子1の位置を把握する位置把握手段16とを備え、伸縮梯子1をマンホール20に設置し、伸縮梯子1の一部を洞道30内に下した際、伸縮梯子1の地上に突出した部分に無線接続手段11と位置把握手段16とが位置することを特徴としている。
【0014】
本発明のさらに別の地下作業支援システムにおいては、上記いずれかの伸縮梯子1と、マンホール20に付された識別コード15と、識別コード15に対応する情報を蓄積したデータベースと、識別コードを入力する入力手段と、識別コード15に基づき情報を出力する出力手段とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の伸縮梯子は、支柱が、外筒体と、外筒体の両端にそれぞれ接続された内筒体とを備え、内筒体が、外筒体内に入れ子状に収容可能とされている、すなわち、いわゆる両方向繰り出し式とされているため、一方向繰り出し式のものと比べて軽量化を図ることができる。
【0016】
梯子全体を単純梁と見立てた場合、中央付近に大きな曲げモーメントがかかり、端部付近にはほとんど曲げモーメントはかからない。そのため、内筒体同士が、端部に向かうにつれて徐々に細くなり、先端が最も細くなるようにして接続されていれば、応力度を小さくしつつ、軽量化を図ることができる。
【0017】
外筒体に、外筒体を折り畳み可能とするヒンジ部が設けられていれば、一層の小型化が可能となり持ち運びが容易になる。
【0018】
また、支柱がマグネシウム合金からなれば、より軽量化を図りやすい。
【0019】
熱間成形された素管を冷間成形すると機械的性能が向上する。そのため、本発明の伸縮梯子の製造方法によれば軽量化を図りやすい。
【0020】
本発明の地下作業支援システムは、伸縮梯子をマンホールに設置した際、伸縮梯子の地上に突出した部分に無線接続手段が位置し、伸縮手段の洞道内に位置する部分に中継手段が位置するため、洞道内であっても通信網を介して地上との通信を確保することができる。
【0021】
また、本発明の他の地下作業支援システムは、伸縮梯子をマンホールに設置し、伸縮梯子の一部を洞道内に下した際、伸縮梯子の地上に突出した部分に無線接続手段と映像撮影手段とが位置するため、作業員の上り下りを遠隔から監視することができ、作業員の安全を確保することができる。
【0022】
本発明の別の地下作業支援システムは、伸縮梯子をマンホールに設置し、伸縮梯子の一部を洞道内に下した際、伸縮梯子の地上に突出した部分に無線接続手段と位置把握手段とが位置するため、遠隔から伸縮梯子の位置を把握することができる。
【0023】
本発明のさらに別の地下作業支援システムは、マンホールに付された識別コードと、識別コードに対応する情報を蓄積したデータベースと、識別コードを入力する入力手段と、識別コードに基づき情報を出力する出力手段とを備えているため、作業にあたって必要な情報をデータベースから簡単に引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の一実施形態に係る伸縮梯子の概略図であって、図1Aが伸長時、図1Bが収縮時、図1Cが折り畳み時を示す。
図2】抜け止め機構を示す要部拡大断面図である。
図3】ロック機構を示す要部拡大断面図であって、図3Aが非ロック時、図3Bがロック時を示す。
図4】この発明の一実施形態に係る地下作業支援システムの概略図である。
図5】上記地下作業支援システムのブロック図である。
図6】この発明の他の実施形態に係る地下作業支援システムの概略図である。
図7】この発明の別の実施形態に係る地下作業支援システムの概略図である。
図8】この発明のさらに別の実施形態に係る地下作業支援システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、この伸縮梯子1の一実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。本発明の伸縮梯子1は、図1A図1Bに示すように、互いに略平行に配置された一対の支柱2、2と、一対の支柱2、2間に設けられた複数の横桟6とを備えている。
【0026】
支柱2は、筒状体3から構成されている。筒状体3は、外筒体4と、外筒体4の両端にそれぞれ接続された内筒体5とを備えている。
【0027】
外筒体4は、軸方向両端に開口を有する略円筒状とされている。また、軸方向の略中央部には、図1Cに示すように、外筒体4を折り畳み可能とするヒンジ部4aが設けられている。ヒンジ部4aの近傍には、キャスターや車輪等の移動手段4bが設けられており、折り畳んだ状態で搬送し易くなっている。
【0028】
内筒体5は略円筒状とされている。この内筒体5は、図1Bに示すように、外筒体4に入れ子状に収容可能とされている。具体的には、外筒体4の内径(内寸)と外径(外寸)をほぼ等しくする第1内筒体5が、それぞれ外筒体4の両端に摺動可能に接続されている。また、第1内筒体5の内径と外径をほぼ等しくする第2内筒体5が、第1内筒体5の端部(外筒体4と接続されている側とは反対側の端部)に摺動可能に接続されている。以下同様にして、複数の内筒体5が接続されている。すなわち、外筒部が最も太く、端部に向かうにつれて徐々に細くなり、先端が最も細くなるようにして、互いに外径(太さ)の異なる複数の内筒体5が接続されている。なお、図1に示す伸縮梯子1では、梯子使用時(伸長時)に外筒体4よりも下方に位置する側には第6内筒体5まで(図1Aに示すn1~n6)、上方に位置する側には第7内筒体5まで(図1Aに示すn1~n7)接続されている。ただ、内筒体5を何本継ぐかについては梯子の必要長さに応じて適宜変更可能である。
【0029】
筒状体3には、接続された筒状体3の抜けを防止するための抜け止め機構7が設けられている。具体的には、図2に示すように、大径側(第1内筒部に対する外筒体4、隣り合う内筒体5の数字が小さい側)に内側突出部7aが設けられ、小径側(外筒体4に対する第1内筒部、隣り合う内筒体5の数字が大きい側)に外側突出部7bが設けられており、小径側の内筒体5を所定量引き出すと内側突出部7aと外側突出部7bとが係合し、それ以上引き出せないようになっている。
【0030】
また、本発明の伸縮梯子1は、内筒体5の引き出し状態を維持するためのロック機構8を備えている。このロック機構8は、図3に示すように、バネ等の付勢手段8bによって付勢されたピン8aと、ピン孔8cとを備えている。付勢手段8bとピン8aは小径側の筒状体3に配置され、ピン孔8cは大径側の筒状体3に設けられている。そして、小径側の筒状体3を所定量引き出し、ピン8aがピン孔8cに差し掛かると付勢手段8bによる付勢力によって自動的にピン孔8cに挿入され、小径側の筒状体3の軸方向の移動が規制されるようになっている(図3B参照)。なお、ロック機構8としてはこれに限らず、公知の種々のものを採用可能である。
【0031】
図1に戻って、横桟6は略角筒状であって、外筒体4同士や内筒体5同士を繋ぐようにして設けられている。横桟6同士は互いに略平行である。外筒体4同士を繋ぐ横桟6は4本とされ、内筒体5同士を繋ぐ横桟6は1本とされている。
【0032】
支柱2と横桟6の材質としては、金属やプラスチックを採用することができる。また、支柱2と横桟6とで異なる材質を使用してもよい。なお、強度確保と軽量化の観点から言えばマグネシウム合金を用いることが好ましい。具体的にはAZ31が好ましい。
【0033】
ただ、AZ31をそのまま使用すると、梯子の材質として一般的に使用されているアルミニウム合金(A6061TD-T8)に機械的性能が劣る場合がある。具体的には、降伏点応力(0.2%耐力)を比較するとAZ31の方が低い。そこで、支柱2(筒状体3)については以下のようにして製造している。
【0034】
まず、熱間成形(熱間押出)によって素管を作る。続いて、冷間成形(冷間引抜)を行って筒状体3を形成する。冷間成形は、断面減少率が10~20%減、好ましくは12~18%減、さらに好ましくは14~15%減となるように行う。なお、断面減少率とは、冷間成形前の素管の断面積をA0、冷間成形後の素管(筒状体3)の断面積をA1としたとき、(A0-A1)/A0で算出される値である。以下、機械的性能の比較を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
アルミニウム合金(A6061TD-T8)の引張強さは265MPa、0.2%耐力は190MPaであることから、冷間成形後では十分な強度が得られていることが分かる。また、断面減少率を所定の範囲に収めているため、機械的性能を向上させつつも、冷間成形時における破断や割れを抑制することができる。
【0037】
横桟6については冷間成形を行う必要はない。ただし、冷間成形を行ってもよい。
【0038】
続いて、上記伸縮梯子1を用いた地下作業支援システム10について説明する。地下作業支援システム10は、図4図5に示すように、伸縮梯子1と、通信網40と無線接続する無線接続手段11と、無線接続手段11と接続され、洞道30内での無線通信環境を構築する中継手段12とを備えている。
【0039】
そして、伸縮梯子1をマンホール20に設置し、伸縮梯子1の一部を洞道30内に下した際、伸縮梯子1の地上に突出した部分に無線接続手段11が位置し、伸縮手段の洞道30内に位置する部分に中継手段12が位置するよう構成されている。具体的に説明すると、マンホール20に降下用の梯子を設置する場合、マンホール20から地上側に600mm以上突出させるが、この突出した部分に無線接続手段11が配置されている。また、縦穴状とされたマンホール20に対して横穴状とされた洞道30内に位置する部分に中継手段12が配置されている。無線接続手段11や中継手段12は収縮状態の伸縮梯子1に予め取り付けられていてもよいし、伸縮梯子1を伸長させた後で取り付けてもよい。
【0040】
なお、通信網40としては、例えばインターネットが挙げられるが、他のネットワークでもよい。無線接続手段11としては、例えば可搬性のあるモバイルルータが挙げられる。中継手段12は、例えば無線LANルータが挙げられる。無線接続手段11と中継接続手段とは有線での接続が好ましい。ただ、無線接続であってもよい。
【0041】
(地下での通信確保)
上記構成の地下作業支援システム10を用いれば、洞道30内であっても通信網40を介して地上との通信を確保することができる。
【0042】
そのため、中継手段12と接続可能な情報端末13(ウェアラブルデバイス、スマートデバイス等であって、演算部(CPU)と記憶媒体(RAM及び/又はROM、HDD、SSD等)と入力部(キーボード、ジョイスティック、マイク等)と出力部(ディスプレイ及び/又はスピーカ)とを少なくとも備えたもの)を作業員に持たせたり、伸縮梯子1の洞道30内に位置する部分に、中継手段12と接続可能な映像撮影手段14を取り付けることにより、種々のことが可能となる。
【0043】
(遠隔指示)
例えば、地上の指令所50から洞道30内の作業員にリアルタイムに指示を出すことができる。眼鏡型のウェアラブルデバイスであって、レンズ部にディスプレイを備えるものであれば、ディスプレイに作業内容をリアルタイムに表示させることもできる。また、洞道30内の作業員から地上の指令所50に情報を送ることができるため、情報端末13がカメラ機能を有していれば、作業の映像をリアルタイムで指令所50に送ることができる。なお、映像を送る方法としては、別途専用のカメラを持たせ、カメラを直接、中継手段12と無線接続したり、間に通信端末を介在させて接続することにより行ってもよい。このように、リアルタイムで双方向のやりとりが可能となるため、現場に派遣する作業員の数を減らしたり、作業効率の向上を図ることができる。
【0044】
(洞道30内の状況把握)
また、伸縮梯子1に取り付けた映像撮影手段14によって、洞道30内の状況をリアルタイムで把握することができる。そのため、作業員の安全を確保できる。
【0045】
続いて、本発明の異なる実施形態に係る地下作業支援システム10Aについて説明する。この地下作業支援システム10Aでは、図6に示すように、無線接続手段11と映像撮影手段14とを備えており、伸縮梯子1をマンホール20に設置し、伸縮梯子1の一部を洞道30内に下した際、伸縮梯子1の地上に突出した部分に無線接続手段11と映像撮影手段14とが位置するよう構成されている。具体的に説明すると、マンホール20に降下用の梯子を設置する場合、マンホール20から地上側に600mm以上突出させるが、この突出した部分に無線接続手段11と映像撮影手段14とが配置されている。映像撮影手段14は、例えば監視カメラであって、動画や静止画を撮影する撮影部と、撮影した映像をデジタルデータ化する演算部と、デジタルデータを外部に出力するする出力部とを備えている。デジタルデータは、通信網40と無線接続する無線接続手段11を介して指令所50にリアルタイムに送られる。なお、映像撮影手段14自体が無線接続手段11を備えていてもよい。この映像撮影手段14は、主に下(マンホール20側)を向いている。
【0046】
(安全確保)
上記構成の地下作業支援システム10Aでは、作業員が問題なく梯子を上り下りできたかどうかを地上の指令所50からリアルタイムで確認できる。
【0047】
続いて、本発明のさらに異なる実施形態に係る地下作業支援システム10Bについて説明する。この地下作業支援システム10Bでは、図7に示すように、通信網40と無線接続する無線接続手段11と、伸縮梯子1の位置を把握する位置把握手段16とを備え、伸縮梯子1をマンホール20に設置し、伸縮梯子1の一部を洞道30内に下した際、伸縮梯子1の地上に突出した部分に無線接続手段11と位置把握手段16とが位置している。具体的に説明すると、マンホール20に降下用の梯子を設置する場合、マンホール20から地上側に600mm以上突出させるが、この突出した部分に無線接続手段11と位置把握手段16とが配置されている。位置把握手段16としては、例えばGPS等の衛星測位、WiFi(登録商標)測位を用いた発信機が挙げられる。位置把握手段16によって把握された位置情報については、位置把握手段16と一体または別体とされた無線接続手段11を通じて指令所50に送る。
【0048】
(位置確認、安全確認、作業員の回収)
上記地下作業支援システム10Bでは、伸縮梯子1の現在地をリアルタイムで把握できる。そのため、どこで作業しているかを指令所50で常に把握することができる。例えば、長時間、伸縮梯子1の場所が変わらない場合、問題が発生した可能性があることを把握できる。また、作業しているはずの作業員と連絡が取れない場合も同様である。さらに、伸縮梯子1の位置がわかることで、作業完了後にどこにピックアップしに行けばよいかを簡単に把握することができる。
【0049】
続いて、本発明のさらに異なる実施形態に係る地下作業支援システム10Cについて説明する。この地下作業支援システム10Cでは、図8に示すように、マンホール20に付された識別コード15と、識別コード15に対応する情報を蓄積したデータベースと、識別コード15を入力する入力手段と、識別コード15に基づき情報を出力する出力手段とを備えている。識別コード15は、例えばバーコードや二次元コードである。入力手段は、例えば情報端末13に内蔵されたカメラやバーコードスキャナである。出力手段は、例えば情報端末13のディスプレイである。データベースは、情報端末13に搭載された記憶媒体に記録されている。ただし、外部の機器に記録されたものであってもよく、例えば指令所50に設置されている機器に記録されていてもよい。この場合、地下作業支援システム10Bとしては、地上との通信を確保するため、さらに、通信網40と無線接続する無線接続手段11と、無線接続手段11と接続され、洞道30内での無線通信環境を構築する中継手段12とを備えることになる。データベースの情報は、例えば位置情報、作業結果を入力するためのフォーマット、作業時の注意事項である。
【0050】
(作業の簡略化)
上記地下作業支援システム10Cでは、作業員がマンホール20に付された識別コード15を情報端末13に入力することにより、マンホール20の位置情報、作業結果を入力するためのフォーマット、作業時の注意事項を呼び出すことができ、効率よく作業を行うことができる。また、位置情報を指令所50に送信すれば、どのマンホール20で作業を行っているかをリアルタイムで把握することができる。この場合、例えば、複数個所でばらばらに作業を行っている多数の作業員を車両でピックアップするにあたって、最短距離を通って向かうなど、車両を効率的に走らせることもできる。なお、さらに伸縮梯子1にも識別コード15aを付し、フォーマットへの作業結果の入力の補助等を行ってもよい。例えばデータベースに伸縮梯子1を使用する人を予め登録しておき、情報端末13に識別コード15aを入力することで、作業者の名前が自動的にフォーマットへ入力されるようにしてもよい。
【0051】
上記各地下作業支援システム10~10Cにおいては、洞道30内を照らす照明17、発電機やバッテリ等の可搬性の電極供給手段18やガスセンサ等のセンサ19を別途備えていてもよい。電極供給手段18が伸縮梯子1に取り付けられていれば、電力を必要とする機器に適宜、電力を供給することができる。なお、電極供給手段18は、地上に配置することが好ましい。各機器との接続は電源ケーブルを用いるが、無線給電でもよい。ガスセンサ等のセンサ19を備えていれば、洞道30内での作業の安全性をより高めることができる。なお、センサ19については、地下、特に洞道30内に配置されることが好ましい。予め伸縮梯子1に取り付けておいてもよい。
【0052】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、支柱2の外筒体4や内筒体5の断面形状は円に限らず、三角形、矩形、五角形以上の多角形であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 伸縮梯子
2 支柱
3 筒状体
4 外筒体
4a ヒンジ部
4b 移動手段
5 内筒体
6 横桟
7 抜け止め機構
7a 内側突出部
7b 外側突出部
8 ロック機構
8a ピン
8b 付勢手段
8c ピン孔
10、10A、10B、10C 地下作業支援システム
11 無線接続手段
12 中継手段
13 情報端末
14 映像撮影手段
15 識別コード(マンホール用)
15a 識別コード(伸縮梯子用)
16 位置把握手段
17 照明
18 電力供給手段
19 センサ
20 マンホール
30 洞道
40 通信網
50 指令所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8