(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】粉体定量供給装置
(51)【国際特許分類】
B65G 65/48 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
B65G65/48 E
(21)【出願番号】P 2021178904
(22)【出願日】2021-11-01
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390015820
【氏名又は名称】グローバルマテリアルズエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097179
【氏名又は名称】平野 一幸
(72)【発明者】
【氏名】平田 輝也
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-337035(JP,A)
【文献】特開2007-163355(JP,A)
【文献】特開2021-081195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
落下する粉体が載置される秤台と、
前記秤台に取り付けられ、前記秤台上の粉体の計測値を求めるセンサとを備える粉体定量供給装置であって、
上側スリットを有すると共に、前記上側スリット内の粉体を挟持する上側空マス及び上側仕切板とを有する上側供給盤と、
下側スリットを有すると共に、前記下側スリット内の粉体を挟持する下側空マス及び下側仕切板とを有する下側供給盤と、
前記上側スリットと前記下側スリットの回転方向位置を一致させた状態で、前記上側供給盤と前記下側供給盤とを同期回転させる回転軸とを備えることを特徴とする粉体定量供給装置。
【請求項2】
前記センサは、前記下側仕切板が前記秤台上の粉体を掻き落とし、且つ、前記上側スリット内の粉体が前記秤台上に載置されるタイミングで、前記計測値を求める請求項1記載の粉体定量供給装置。
【請求項3】
前記下側スリットの容積は、前記上側スリットの容積よりも大きい請求項1又は2記載の粉体定量供給装置。
【請求項4】
前記センサは、ロードセルである請求項1から3のいずれかに記載の粉体定量供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体定量供給装置に係り、細かな粉体を定量供給するのに適する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2007-163355号公報)、特許文献2(特開2004-309244号公報)に開示されているように、細かな粉体の計測値を求めながら、定量供給する装置が知られている。
【0003】
このような装置では、装置の下方にセンサを備える秤台を設け、粉体を秤台上へ掻き落として、計測を行うようになっている。しかしながら、秤台上に落下した粉体が、飛び散るなど、回転方向に自由に移動できる状態とされており、粉体の移動により、計測値が不安定になりやすいという問題点があった。
【文献】特開2007-163355号公報
【文献】特開2004-309244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、秤台に掻き落とされる粉体の姿勢を安定させ得る粉体定量供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る粉体定量供給装置は、落下する粉体が載置される秤台と、秤台に取り付けられ、秤台上の粉体の計測値を求めるセンサとを備え、上側スリットを有すると共に、上側スリット内の粉体を挟持する上側空マス及び上側仕切板とを有する上側供給盤と、下側スリットを有すると共に、下側スリット内の粉体を挟持する下側空マス及び下側仕切板とを有する下側供給盤と、上側スリットと下側スリットの回転方向位置を一致させた状態で、上側供給盤と下側供給盤とを同期回転させる回転軸とを備える。
【0006】
この構成により、粉体は、上側供給盤内にあるときは、上側空マスと上側仕切板とにより、回転方向の位置を拘束され、また、下側供給盤内にあるときは、下側空マスと下側仕切板とにより、回転方向の位置を拘束される。
【0007】
更に、回転軸が、上側スリットと下側スリットの回転方向位置を一致させた状態で、上側供給盤と下側供給盤とを同期回転させるため、粉体は、下側供給盤から秤台上へ掻き落とされる状態においても、回転方向位置を拘束されたままの状態にあり、粉体は回転方向に移動できない。その結果、安定した計測値により、円滑に粉体を定量供給できる。
【0008】
センサは、下側仕切板が秤台上の粉体を掻き落とし、且つ、上側スリット内の粉体が秤台上に載置されるタイミングで、計測値を求めるのが好ましい。
【0009】
このようにすると、センサの計測値の安定性を一層向上できる。
【0010】
下側スリットの容積は、上側スリットの容積よりも大きいのが好ましい。
【0011】
粉体は、上側スリットから下側スリットに至るものであり、このようにすると、上側スリット内に粉体が充満していたとしても、下側スリットに至った際、粉体があふれないことを保証できるからである。
【0012】
センサは、ロードセルであるのが好ましい。
【0013】
こうすれば、精度の高いセンサを安価に導入することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上側供給盤と下側供給盤の各スリットを挟持する、空マスと仕切板とにより、粉体の回転方向の位置を拘束したまま、秤台上に掻き落とすことができ、安定した計測値が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における粉体定量供給装置の外観図、
図2は、同粉体定量供給装置の分解斜視図である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、本形態における粉体定量供給装置は、構成される。即ち、ロードセル13(センサの一例)の計測値に基づき制御部Cにより指示される回転数で、モータMは、その出力軸(図示せず)を回転させる。
【0017】
ロードセル13の計測値は、質量、重さ又は体積のいずれでも良く、精度良く測定できるのであれば、ロードセルではない他のセンサを用いても良い。
【0018】
制御部Cは、所定の定量に対して、ロードセル13の計測値が低い場合は回転数を上げ、高い場合は回転数を下げる。
【0019】
制御部Cは、例えば、比例制御やPID制御等を用いればよい。但し、本発明は、制御法に特徴を有するものではないため、これ以上の詳細な説明は、省略する。
【0020】
減速機1は、モータMの出力軸の回転を所定の減速比にしたがって減速するとともに、回転方向を90度を変更し、起立する回転軸2を回転させる。これは、本例では横型の減速機を使用しているためである。即ち、当業者に自明なように縦型の減速機を使用しても良く、その場合には、モータMの出力軸と回転軸2とが、同軸であるか、又は平行となる。さらに可能であれば、減速機を省略しても差し支えない。要するに、起立する回転軸2を適切に駆動できれば十分であって、この条件が満たされる以上、いずれの構成を採用しても本願発明の保護範囲内に属することとなる。
【0021】
出力軸2の上側に、本装置の主要機構が配設される。上側から3つのケーシングが配設される。主要機構は、本形態では、3段構成となっており、上から順に第1ケーシング5、第2ケーシング7、第3ケーシング10が備えられる。第1ケーシング5の上方の投入口5aが粉体の入り口となる。勿論、図示していないホッパ等を第1ケーシング5の上側に追加しても良い。
【0022】
これらのケーシング5、7、10は、いずれも円筒状の側壁を有しており、粉体が半径外向きに漏れ出ることはない。
【0023】
しかしながら、
図2に示す構成は一例に過ぎず、例えば、第1~第3ケーシング5、7、10の少なくとも一部を一体化するなど、当業者にとって自明の設計変更を種々行うことができる。一方、粉体の出口は、第3ケーシング10の吐出口14である。
【0024】
図1に示すように、本形態の部分構成は、上下に重なり合っており、
図1のみでは位置関係が分かりづらいため、
図2に分解斜視図として示してある。
【0025】
第1ケーシング5、第2ケーシング7、第3ケーシング10及びこれらのケーシング5、7、10に固定される部材は、回転軸2の回転方向Nについて、不動である。
【0026】
一方、上側から撹拌体3、上側供給盤6、下側供給盤9は、いずれも回転軸2に、例えばキーとキー溝(いずれも図示せず。)により軸着され、回転軸2と同期して回転する。
【0027】
上側から1段目は、撹拌体3と第1ケーシング5とのセットである。
【0028】
撹拌体3は、上方が細くなるように形成される円錐台状をなす本体3aと、本体3aの底部に、外向きに突出するように設けられる撹拌翼3bとを有する。
【0029】
図示した例では、90度おきに4本の撹拌翼3bを備えているが、これは一例に過ぎず、例えば、6本又は8本にするなど種々変更できる。
【0030】
第1ケーシング5の内側底部には、撹拌翼3bが粉体を摺りきり回転する第1滑面5cが設けられ、第1滑面5cの一部には、第1開口部5bが開設されている。
【0031】
撹拌体3は、第1ケーシング5と同じレベルにおいて、回転軸2に軸着され、粉体をこのレベルに位置する水平面内で攪拌する。
【0032】
撹拌翼3bは、第1滑面5cに接するか、又はそのやや上方を摺るように回転する。これにより、第1ケーシング5内に至った粉体は、撹拌翼3bに円周方向に運搬され、第1滑面5c上を移動して、第1開口部5bに至り、第2段目へ落下するか、或いは、第1滑面5cを経由せず直ちに第1開口部5bに至り、第2段目へ落下することになる。
【0033】
上側から2段目は、上側供給盤6と、第2ケーシング7とのセットである。このセットは、上側から1段目のセットの真下に位置する。
【0034】
上側供給盤6は、回転軸2に軸着されて下側供給盤9と同期回転する。
【0035】
第2ケーシング7の底部には、第2滑面7bが配設され、回転軸2の回転方向Nの一定位置には、第2開口部7aが開設されている。
【0036】
上側供給盤6は、上側スリット6dを有すると共に、上側スリット6d内の粉体を挟持する上側空マス6a及び上側仕切板6bとを有する。更に、上側供給盤6には、他に複数の上側羽根板6cを有し、隣接する上側羽根板6cの間には、同様のスリットがある。しかしながら、最も重要なのは、上側空マス6a及び上側仕切板6bにより挟持される上側スリット6dである。
【0037】
上から3段目は、下側供給盤9と、第3ケーシング10とのセットである。このセットは、上側から2段目のセットの真下に位置する。
【0038】
下側供給盤9は、下側スリット9dを有すると共に、下側スリット9d内の粉体を挟持する下側空マス9a及び下側仕切板9bとを有する。更に、下側供給盤9には、他に複数の下側羽根板9cを有し、隣接する下側羽根板9cの間には、同様のスリットがある。しかしながら、最も重要なのは、下側空マス9a及び下側仕切板9bにより挟持される下側スリット9dである。
【0039】
図3に拡大して示されるように、上側スリット6dと下側スリット9dは、回転方向Nに関し、常に同じ位置に有り、上側スリット6dの容積よりも下側スリット9dの容積は大きく設定されている。そして、上側供給盤6と下側供給盤9とが、同期回転し、上側スリット6dと下側スリット9dとが、第2ケーシング7の第2開口部7aの位置に至った際、粉体は、上側スリット6dから第2開口部7aを介して、下側スリット9d内へ落下する。
【0040】
ここで重要なのは、粉体は、第2段目においては、上側空マス6a及び上側仕切板6bにより、回転方向位置を拘束されたままの状態にあり、第3段目においては、下側空マス9a及び下側仕切板9bにより、回転方向位置を拘束されたままの状態にある点である。
【0041】
図2に示すように、第3ケーシング10の底部には、第2ケーシング7と同様に、第3滑面10bが配設され、回転軸2の回転方向Nの上記一定位置と一致する位置に、第3開口部10aが開設されている。
図4に拡大して示されるように、第3開口部10a内には、ロードセル13が底面に取り付けられた秤台12が設けられる。秤台12には、落下する粉体が載置される。
【0042】
第3開口部10aのうち、秤台12が設けられていない部分は、吐出口14となる。
【0043】
なお、図示した構成は、一例に過ぎず、当業者に自明なように、各板の枚数を変更したり、間隔を変更したり、種々変更できる。
【0044】
次に、
図5~
図9を参照しながら、ロードセル13が計測値を求める前後の動作を説明する。
【0045】
まず、
図5~
図9において、ハッチングを付した第1滑面5c、第2滑面7b及び第3滑面10b、秤台12及びロードセル13は、回転方向Nについて静止しており、上側供給盤6と下側供給盤9とは、回転方向Nについて同期回転する。
【0046】
図5に示す状態より少し前の時間において、上側スリット6dは、第1ケーシング5の第1開口部5b付近に位置する。この状態において、粉体Pが上側スリット6d内へ入り込む。
【0047】
その後時間が経過すると、
図5に示すように、上側スリット6は、回転方向Nに進み、第2ケーシング7の第2開口部7a及び第3ケーシング10の第3開口部10aの直前に至る。また秤台12上には、上側スリット6dよりも回転方向Nの先側にあるスリットに入っていた粉体P1が載置されている。
【0048】
更に、小時間が経過すると、
図6に示すように、上側スリット6の上側仕切板6bが、第2開口部7aの縁Eを乗り越え、上側スリット6内の粉体P2が秤台12に落下し載置され始める。同時に、下側供給盤9の下側仕切板9bが、秤台12に載置されていた粉体P1を回転方向Nに掻き寄せ始め、該粉体P1は、吐出口14へ吐出され始める。
【0049】
上側供給盤6と下側供給盤9とが、回転方向Nに更に進むと、
図7、
図8に示すように、上側スリット6から粉体P2が秤台12上へ落下すると共に、秤台12上にあった粉体P1の吐出口14への吐出が進行する。
【0050】
ついには、
図9に示すように、秤台12上にあった全ての粉体P1が吐出口14への吐出され、上側スリット6内の全ての粉体P2が秤台12上へ載置される。このタイミングは、回転軸2の回転方向Nの位置を制御することにより、検出可能であるが、このタイミングにおいて制御部Cがロードセル13の計測値を求め、それに応じて、モータMの回転状態が制御される。
【0051】
図5~
図9を見れば分かるように、上側スリット6の容積は一定であり、粉体Pの密度もほぼ一定であるから、ロードセル13の計測値もほぼ一定となり、大きく変動することは、一般に少ないと言い得る。
【0052】
図4に拡大して示されているように、秤台12の半径方向内側と半径方向外側には、一対の隔壁W1、W2を設けて、粉体Pが半径方向に移動しないように拘束することができる。従って、従来の装置においても、粉体Pが半径方向に飛び散らないように手当されていたと言うことができる。
【0053】
しかしながら、秤台12自身の回転方向Nの前後に隔壁を設ける事はできない。なぜなら、このような隔壁を設けると、下側供給盤9と干渉して、下側供給盤9の回転が阻害されるからである。
【0054】
一方、本発明に係る装置は、上側スリット6d内の粉体を挟持する上側空マス6a及び上側仕切板6bとを有する上側供給盤6と、下側スリット9dを有すると共に、下側スリット9d内の粉体を挟持する下側空マス9a及び下側仕切板9bとを有する下側供給盤9と、上側スリット6dと下側スリット9dの回転方向位置を一致させた状態で、上側供給盤6と下側供給盤9とを同期回転させている。
【0055】
このため、秤台12自身の回転方向Nの前後に隔壁を設けないという条件を満足しながら、秤台12上の粉体を回転方向Nの前後へ移動できないように拘束することができる。その結果、ロードセル13の計測値を従来の装置よりも格段に安定させ得る。
【0056】
更には、上側スリット6d及び下側スリット9dの容積には、特段の制限がないから、これらの容積を従来よりも大きく設定することが可能となり、粉体の供給量をより多く採ることも可能となる。従来の装置では、このような利点が得られない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明の実施の形態1における粉体定量供給装置の外観図
【
図2】本発明の実施の形態1における粉体定量供給装置の分解斜視図
【
図3】本発明の実施の形態1における粉体定量供給装置の一部を示す斜視図
【
図4】本発明の実施の形態1における粉体定量供給装置の一部を示す斜視図
【
図5】本発明の実施の形態1における粉体定量供給装置の動作説明図
【
図6】本発明の実施の形態1における粉体定量供給装置の動作説明図
【
図7】本発明の実施の形態1における粉体定量供給装置の動作説明図
【
図8】本発明の実施の形態1における粉体定量供給装置の動作説明図
【
図9】本発明の実施の形態1における粉体定量供給装置の動作説明図
【符号の説明】
【0058】
1 減速機
2 回転軸
3 攪拌体
3a 本体
3b 攪拌翼
5 第1ケーシング
5a 投入口
5b 第1開口部
5c 第1滑面
6 上側供給盤
6a 上側空マス
6b 上側仕切板
6c 上側羽根板
6d 上側スリット
7 第2ケーシング
7a 第2開口部
7b 第2滑面
9 下側供給盤
10 第3ケーシング
10a 第3開口部
10b 第3滑面
12 秤台
13 ロードセル
14 吐出口
C 制御部
M モータ
P、P1、P2、P3 粉体