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特許7383257圧縮システムおよび圧縮システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】圧縮システムおよび圧縮システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 3/00 20060101AFI20231113BHJP
   F22B 1/16 20060101ALI20231113BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
F22B3/00
F22B1/16 Z
F22B35/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020005750
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021113632
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】八木 翼
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081712(JP,A)
【文献】特開2019-090580(JP,A)
【文献】特開2014-070886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B1/16,3/00,35/00
F04D27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱量が変動する凝縮性ガスと液体とを熱交換することで該液体から蒸気を発生させる熱交換器と、
前記熱交換器が発生させた蒸気を回転体の回転数に応じた量だけ吸い込んで圧縮する圧縮機と、
前記熱交換器と前記圧縮機の間の気圧を検出する検出手段と、
前記回転数を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記検出手段が検出した前記気圧が基準範囲内にある場合は前記回転数を第1回転数に維持し、該気圧が該基準範囲の限界値である第1閾値に達したことを該検出手段が検出した場合は該回転数を該第1回転数とは異なる第2回転数に切り替えて該第2回転数を維持する制御を行うものであることを特徴とする圧縮システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回転体が前記第2回転数で回転しているときに前記気圧が前記基準範囲内であって前記第1閾値とは異なる第2閾値に達したことを前記検出手段が検出した場合、該回転体を前記第1回転数に切り替えて維持する制御を行うものであることを特徴とする請求項1記載の圧縮システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記回転体が前記第2回転数で回転しているときに前記気圧が前記基準範囲外に設定された第3閾値に達したことを前記検出手段が検出した場合、前記第1回転数および該第2回転数とは異なる第3回転数に切り替えて該第3回転数を維持する制御を行うものであることを特徴とする請求項2記載の圧縮システム。
【請求項4】
前記基準範囲は、前記第3閾値と前記第2閾値の間の範囲よりも広い範囲であることを特徴とする請求項3記載の圧縮システム。
【請求項5】
前記第3回転数と前記第2回転数の回転数差は、該第2回転数と前記第1回転数の回転数差よりも大きな回転数差であることを特徴とする請求項3または4記載の圧縮システム。
【請求項6】
熱量が変動する凝縮性ガスと液体とを熱交換器により熱交換することで該液体から発生した蒸気を回転体の回転数に応じた量だけ吸い込んで送り出す圧縮機と、該熱交換器と該圧縮機の間の気圧を検出する検出手段とを備えた圧縮システムの制御方法において、
前記気圧を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記気圧が基準範囲内にある場合は前記回転数を第1回転数に維持する第1定回転運転工程と、
前記気圧が該基準範囲の限界値である第1閾値に達したことを前記検出手段が検出した場合に前記回転数を前記第1回転数とは異なる第2回転数に切り替えて該第2回転数を維持する第2定回転運転工程とを有することを特徴とする圧縮システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を吸い込んで圧縮する圧縮機を備えた圧縮システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥等の被処理物を乾燥させる乾燥設備では、乾燥機から排出された排出蒸気の熱を熱交換器で交換して同じく乾燥機から回収されたドレンを加熱し、そのドレンを再蒸発させて低圧の蒸気とし、その低圧の蒸気を1段目の圧縮機で吸引して圧縮した後、続く2段目の圧縮機でさらに高圧に圧縮し、高温高圧の蒸気として再利用する、いわゆる蒸気再圧縮(VRC)技術が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このVRC技術が採用された乾燥設備においては、熱交換器で発生させた蒸気を1段目の圧縮機によって吸い込むことで、熱交換器と1段目の圧縮機の間の気圧を大気圧よりも低下させている。ここで、熱交換器と1段目の圧縮機の間の気圧とは、熱交換器内にあるドレンが蒸発する部分の気圧を含む。そして、そのドレンが蒸発する部分の気圧が低下することで、熱交換器においてドレンが蒸発しやすくなる。しかし、乾燥機から排出される排出蒸気の熱量は、乾燥させる被処理物の種類や水分量等の物性、乾燥機内の被処理物の挙動、および乾燥機への被処理物の投入量等の要因によって変動する。また、熱交換器内にあるドレンの量も多少変動する場合がある。排出蒸気の熱量や熱交換器内にあるドレンの量が変動すると、熱交換器においてドレンに加わる熱量も変動し、結果として熱交換器で発生する蒸気の発生量も変動する。そして、熱交換器で発生する蒸気の発生量が多くなると、熱交換器と1段目の圧縮機まで間の気圧は上昇してしまい、逆に熱交換器で発生する蒸気の発生量が少なくなると、熱交換器と1段目の圧縮機の間の気圧は低下してしまう。このため、従来の乾燥設備では、熱交換器と、1段目の圧縮機と、熱交換器と1段目の圧縮機の間の気圧を検出する検出手段と、その検出手段の検出結果に応じて一段目の圧縮機を制御する制御手段とを備えた圧縮システムが採用されている。この圧縮システムでは、検出手段の検出結果に応じて1段目の圧縮機内に設けられた回転体(例えば、ロータ)の回転数を変更して1段目の圧縮機が吸い込む蒸気量を調整する駆動制御を行うことで、熱交換器と1段目の圧縮機の間の気圧を大気圧よりも低い一定気圧に維持している。なお、この1段目の圧縮機の駆動制御として、熱交換器と1段目の圧縮機の間の気圧に基づいたPID制御が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-90579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱交換器で発生する蒸気の発生量は、短かな時間間隔で見ればほぼ常時変動しているため、上述の圧縮システムにおける駆動制御では、乾燥設備が動作している時間の多くにおいて1段目の圧縮機内の回転体は回転数の変更を繰り返すことになる。そして、回転体の回転数を変更するための加速および減速には多くの電力を消費する。このため、圧縮システムにおける消費電力が増大するという問題があった。
【0006】
なお、以上の記載では、圧縮システムを、水分等の蒸発成分を多く含む固体状の被処理物から蒸発成分の少ない乾燥物を得る乾燥設備に用いる場合について説明したが、液状体の被処理物から水分等の蒸発成分を蒸発させ、濃縮された液状物を得る濃縮設備についても同様の問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、消費電力を削減した圧縮システムおよび圧縮システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、圧縮機の駆動制御と、熱交換器と1段目の圧縮機の間の気圧と、熱交換器において得られる蒸気量との関係について鋭意研究を重ねたところ、回転端の回転数を一定回転数に維持すると、熱交換器において得られる蒸気量が自然に安定すること、換言すれば蒸気量が自律的に収束することを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、上記目的を解決する本発明の圧縮システムは、熱量が変動する凝縮性ガスと液体とを熱交換することで該液体から蒸気を発生させる熱交換器と、
前記熱交換器が発生させた蒸気を回転体の回転数に応じた量だけ吸い込んで圧縮する圧縮機と、
前記熱交換器と前記圧縮機の間の気圧を検出する検出手段と、
前記回転数を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記検出手段が検出した前記気圧が基準範囲内にある場合は前記回転数を第1回転数に維持し、該気圧が該基準範囲の限界値である第1閾値に達したことを該検出手段が検出した場合は該回転数を該第1回転数とは異なる第2回転数に切り替えて該第2回転数を維持する制御を行うものであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の圧縮システムにおいて、前記制御手段は、前記回転体が前記第2回転数で回転しているときに前記気圧が前記基準範囲内であって前記第1閾値とは異なる第2閾値に達したことを前記検出手段が検出した場合、該回転体を前記第1回転数に切り替えて維持する制御を行うものであってもよい。
【0015】
前記第1閾値と異なる前記第2閾値に達したことを検出した場合に前記第1回転数に切り替えているので、前記回転数の切り替えが頻繁に発生することが防止される。これにより、圧縮システムの動作が安定するとともに、該回転数の不要な切り替えによる消費電力の増加を防止できる。
【0016】
さらに、本発明の圧縮システムにおいて、前記制御手段は、前記回転体が前記第2回転数で回転しているときに前記気圧が前記基準範囲外に設定された第3閾値に達したことを前記検出手段が検出した場合、前記第1回転数および該第2回転数とは異なる第3回転数に切り替えて該第3回転数を維持する制御を行うものであってもよい。
【0017】
この態様によれば、前記第2回転数に切り替えた後も、万一前記気圧が前記基準範囲から離れていき第3閾値に達してしまった場合に第3回転数に切り替えることで、該気圧が該基準範囲からさらに離れてしまうことを抑制できる。
【0018】
またさらに、本発明の圧縮システムにおいて、前記基準範囲は、前記第3閾値と前記第2閾値の間の範囲よりも広い範囲であってもよい。
【0019】
前記基準範囲を広くすることで、前記回転数の切り替えが発生しにくくなるので、この圧縮システムの消費電力がより抑制できる。
【0020】
加えて、本発明の圧縮システムにおいて、前記第3回転数と前記第2回転数の回転数差は、該第2回転数と前記第1回転数の回転数差よりも大きな回転数差であってもよい。
【0021】
こうすることで、万一前記気圧が第3閾値に達してしまった場合、該気圧が該基準範囲からさらに離れてしまうことをより強く抑制し、速やかに該気圧を前記基準範囲に近づけることができる。
【0022】
また、上記目的を解決する本発明の圧縮システムの制御方法は、熱量が変動する凝縮性ガスと液体とを熱交換器により熱交換することで該液体から発生した蒸気を回転体の回転数に応じた量だけ吸い込んで送り出す圧縮機と、該熱交換器と該圧縮機の間の気圧を検出する検出手段とを備えた圧縮システムの制御方法において、
前記気圧を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記気圧が基準範囲内にある場合は前記回転数を第1回転数に維持する第1定回転運転工程と
前記気圧が該基準範囲の限界値である第1閾値に達したことを前記検出手段が検出した場合に前記回転数を前記第1回転数とは異なる第2回転数に切り替えて該第2回転数を維持する第2定回転運転工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の圧縮システムおよび圧縮システムの制御方法によれば、消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態の乾燥設備の系統図である。
図2図1に示す乾燥設備を、熱交換器4と蒸気ブロワ5を中心に概略的に示したブロック図である。
図3図1に示す乾燥設備において、第1蒸気圧力センサが検出した気圧と蒸気ブロワのロータ回転数との関係を示す制御説明図である。
図4】蒸気ブロワの動作の変形例を示す図3と同様の制御説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の説明では、水分等の蒸発成分を多く含む固体状の被処理物から蒸発成分の少ない乾燥物を得る乾燥設備に、本発明に係る圧縮システムを用いる場合を例にして説明する。
【0027】
図1は、圧縮システムが用いられた乾燥設備の系統図である。
【0028】
この乾燥設備D1では、乾燥機1と、集塵機2と、ドレンタンク3と、熱交換器4と、1段目の圧縮機である蒸気ブロワ5と、2段目の圧縮機である蒸気圧縮機6と、設備用ヘッダ7と、過熱ヒータ8と、制御手段9とを備えている。
【0029】
乾燥機1は、伝導伝熱型乾燥機であって、より具体的には、被処理物を連続処理できる連続式伝導伝熱乾燥機である。この乾燥機1は、乾燥室11と、乾燥室11内に配置された多管式加熱管12を有する。乾燥室11は、略円形あるいは略楕円形の横断面を有する中空状のものであり、不図示の機枠等によって水平方向に延在した状態で支持されている。以下、乾燥室11が延在する方向を、延在方向と称することがある。乾燥室11には、投入口111、排出口112、キャリア蒸気口113および排気口114が設けられている。投入口111は、汚泥等の被処理物を投入する口であり、図1に示す乾燥室11における左側寄りであって、乾燥室11の上端部分に設けられている。投入口111から投入された被処理物は、乾燥室11内に滞留している間に、乾燥処理が施されることによって乾燥し、乾燥物になる。排出口112は、この乾燥物が排出される開口である。排出口112は、図1に示す乾燥室11における右側寄りであって、乾燥室11の底よりも高い位置に設けられている。排出口112には、ロータリーバルブ1121が設けられている。投入口111から投入された被処理物は、図1に示す乾燥室11内を左側から右側に移動し、やがて排出口112から排出される。
【0030】
キャリア蒸気口113は、過熱ヒータ8によって得られた過熱蒸気であるキャリア蒸気を乾燥室11内に導入する口である。過熱ヒータ8とキャリア蒸気口113との間には、キャリア蒸気(過熱蒸気)の温度を測定する温度センサ85とキャリア蒸気温度計器81が設けられている。キャリア蒸気温度計器81は、温度センサ85からの信号を受信する。そして、このキャリア蒸気温度計器81のキャリア蒸気温度設定値に基づき過熱ヒータ8が制御される。なお、キャリア蒸気温度計器81の機能を制御手段9が担い、キャリア蒸気温度計器81を省略していてもよい。キャリア蒸気は、設備用ヘッダ7から供給される。図1においては乾燥用蒸気経路から分岐して流量調整弁82を通って過熱ヒータ8に至る形でキャリア蒸気の経路が示されている。
【0031】
排気口114は、乾燥室11内で被処理物が乾燥することで蒸発した蒸気を、キャリア蒸気口113から導入されたキャリア蒸気とともに乾燥室11外に排出する口である。排気口114からは主に蒸気が排出されるが、この他に臭気成分や後述する非凝縮性ガスが含まれることもある。以後において排気口114から排出された気体を乾燥排気と称する。この乾燥排気は、凝縮性ガスの一例に相当する。排気口114には、集塵機2が接続されている。集塵機2にはバグフィルタ21が設けられている。乾燥室11から排出された乾燥排気は、集塵機2のバグフィルタ21により微粉の除去等が行われた後、熱交換器4まで送られる。なお、この集塵機2には、バグフィルタ21を清掃するためにの吹き付け機構22が設けられており、乾燥排気がバグフィルタ21に流れ込む方向(バグフィルタ21の1次側)とは逆方向(バグフィルタ21の2次側)から所定のタイミングで、微粉が付着したバグフィルタ21の1次側に向けての過熱蒸気の吹き付けが行われ、付着した微粉が乾燥室11内に払い落とされる。なお、吹き付け機構22に供給される過熱蒸気は、設備用ヘッダ7から供される蒸気を不図示の温度制御装置で温度制御しながら不図示の過熱ヒータにより過熱することで得られるものである。
【0032】
多管式加熱管12は、延在方向に沿った回転軸を中心に乾燥室11内に回転自在に配置されたものであり、回転軸部分には中空の軸部材121が設けられている。多管式加熱管12は、軸部材121が不図示のモータ等によって回転させられることで回転軸を中心に回転するものである。また、多管式加熱管12は、軸部材121を中心にこの軸部材121の方向すなわち延在方向に並行に配置された複数の加熱管122aから構成されている。これら複数の加熱管122aは、回転軸を中心にして幾つかの同心円状に配列されており、同心円間あるいは同心円上に配列された加熱管122aは、互いに所定の間隔をあけて配置されている。複数の加熱管122aの延在方向両端部分それぞれには、加熱管122aと連通する管板と鏡板から成る半球状のヘッダー123が設けられている。この両端部分のヘッダー123の間には、図示省略したが、ヘッダー123の回転方向に所定の間隔をあけて複数のアングル鋼材が架け渡されている。これらアングル鋼材には、延在方向に所定の間隔をあけて、不図示のリフタと送り羽根がそれぞれ複数設けられている。リフタは、多管式加熱管12が回転すると、乾燥室11内に滞留する被処理物を掻き上げるものである。送り羽根は、多管式加熱管12が回転すると、乾燥室11内に滞留する被処理物を排出口112側に送るものである。
【0033】
また、軸部材121の投入口側にはロータリージョイントを介して乾燥用蒸気が供給されてヘッダー123内に流れ込み、さらにヘッダー123から各加熱管122aに流れ込むことにより各加熱管122aが加熱される。また、ここでの乾燥用蒸気の一部は、乾燥室11や集塵機2の保温用蒸気として、それぞれの外面に備えられたスチームトレース配管あるいは保温用ジャケット(以下、スチームトレース配管等という)にも供給される。
【0034】
本実施形態では、飽和蒸気が乾燥用蒸気として各加熱管122a内に送られる態様を採用しているため、各加熱管122aは、延在方向において略一定の温度に加熱された状態が保たれる。各加熱管122aに供給された乾燥用蒸気が凝縮して生じたドレンは、排出口側のヘッダー123内に流れ込み、さらにヘッダー123内に設けられた不図示のサイホン管に流れ込む。そして、サイホン管に流れ込んだドレンは、中空の軸部材121の排出口側端に接続されたロータリージョイントを通過して、詳しくは後述するドレンタンク3に回収される。なお、スチームトレース配管等で生じたドレンもまたドレンタンク3に回収される。このドレンタンク3に回収されたドレンは、液体の一例に相当する。乾燥室11とドレンタンク3の間には、ニードル弁が内蔵されたスチームトラップ31aが設けられている。スチームトラップ31aは、膨張弁兼スチームトラップとして機能する。同様に、スチームトレース配管等とドレンタンク3の間には、ニードル弁が内蔵されたスチームトラップ31bが設けられている。ドレンは、例えば、スチームトラップ31a、31bの1次側(上流側)であれば0.5MPaGの159℃である。一方、スチームトラップ31a、31bを通過したドレンは、一部が再蒸発(以下、再蒸発スチームと称することもある)し、例えば、約-0.04MPaGの約86℃まで温度低下する。
【0035】
ドレンタンク3に回収されたドレンは、ドレンポンプ32によって、矢印SLの経路で、三方弁33を経由して、熱交換器4に送られる。熱交換器4は、熱交換器4内部にドレンが溜められる貯留部411(図2参照)が設けられている。この貯留部411は、三方弁33を経由して供給されるドレンで常に液上限レベルまで満たされている。この種の熱交換器を当該分野では満液式熱交換器と称することがある。
【0036】
熱交換器4内の貯留部411は、熱交換器4に設けられた不図示の液位レベル計により概ね一定の液位となる様に三方弁33の開度が制御され、余剰のドレンは矢印Cの経路でドレンタンク3に戻される。また、ドレンタンク3には上述の再蒸発スチームも流入し、該再蒸発スチームは、ドレンタンク3の上部から矢印SAの経路で熱交換器4の貯留部411の上部であって蒸気が充満する空間部に送られる。なお、再蒸発スチームは熱交換器4ではなく直接蒸気ブロワ5に吸引させる経路を設けてもよい。すなわち、熱交換器4には、集塵機2を通過した乾燥排気が供給されるとともに、ドレンと再蒸発スチームが供給される。
【0037】
なお、ドレンタンク3には不図示の液位レベル計が設けられ、ドレンタンク3が一定の液位を越える場合には、ドレンタンク3からドレンが排水され、一定の液位を越えない様に制御される。
【0038】
図2は、図1に示す乾燥設備を、熱交換器4と蒸気ブロワ5を中心に概略的に示したブロック図である。
【0039】
図2の左端には乾燥機1が示され、図1に示すスチームトラップ31a、31bは、31として弁の記号で記されている。
【0040】
図2に示す熱交換器4は、縦型(縦置き)であり、熱交換器4内には上下方向に延在した多数の円筒直管であるチューブ42が設けられている。チューブ42の上下の両端は管板43に接続され、熱交換器4内では、この管板43とチューブ42により、乾燥排気は、ドレンや再蒸発スチームなどとは隔てられている。熱交換器4内には、ドレンを貯留する貯留部411が設けられており、この貯留部411には、上述のごとくドレンが常に満たされている。図2では、ドレンタンク3および熱交換器4におけるドレンを灰色で表している。各チューブ42の断面形状は円形に限らず、矩形等であってもよい。多数のチューブ42は、熱交換器4内の貯留部411に貯留されたドレンに浸かっている状態であり、各チューブ42の内部を、乾燥排気が上から下に向かって通過することで、乾燥排気とドレンとの間で熱交換が行われ、ドレンは受熱により再蒸発して蒸気が発生し、この蒸気は再蒸発スチームと共に蒸気ブロワ5によって吸引される。一方、熱交換によって、乾燥排気は、凝縮水を生じ、図1に示すように、凝縮水は、第2ドレンポンプ911によって、矢印Y1の経路で水処理施設等へ排水される。また、熱交換器4から流出した乾燥排気は第2熱交換器921に流れ込む。該第2熱交換器921は、不図示のクリーングタワーからの冷却水等が供給されており、これにより乾燥排気の水分がさらに凝縮される。該凝縮水も第2ドレンポンプ911により矢印Y2の経路で水処理施設等に排水される。第2熱交換器921から流出した乾燥排気は排気ファン922により吸引され、乾燥排気に臭気成分が含まれる場合などでは不図示の脱臭設備等に排気される。
【0041】
図2に示すように、熱交換器4から蒸気を吸引する蒸気ブロワ5は、内部に2つのロータ51を有するルーツ式圧縮機である。蒸気ブロワ5は、熱交換器4で発生させた蒸気を、ロータ51の回転数に応じた量だけ吸い込んで圧縮するものである。このロータ51は回転体の一例に相当し、蒸気ブロワ5は圧縮機の一例に相当する。熱交換器4から蒸気ブロワ5に繋がる蒸気の吸引経路には、熱交換器4と蒸気ブロワ5の間の気圧を検出する第1蒸気圧力センサ52が配置されている。この第1蒸気圧力センサ52は、検出手段の一例に相当する。なお、第1蒸気圧力センサ52は、熱交換器4の貯留部411の上部であって蒸気が充満する空間部、すなわちドレンが蒸発する部分に配置してもよい。以下、このドレンが蒸発する部分をドレン蒸発部と称する。なお、熱交換器4と蒸気ブロワ5の間にある吸引経路とドレン蒸発部とは連続しておりほぼ同一の気圧になる。このため、熱交換器4と蒸気ブロワ5の間に配置した第1蒸気圧力センサ52は、実質的にドレン蒸発部の気圧を測定しているとも言える。蒸気ブロワ5の動作は、第1蒸気圧力センサ52の検出結果に応じて制御手段9によって制御される。蒸気ブロワ5の動作については後に詳述する。
【0042】
制御手段9は、ストレージなどの記憶手段と、ディスプレイなどの表示手段と、記憶手段にデータを記憶させたり記憶されたデータを書き換えるための入力手段とをそなえた制御装置である。記憶手段には、ロータ51の回転数や後述する閾値などの各種設定値が記憶されている。また、記憶手段には、各種の演算やPID制御等を行うプログラムが記憶されている。なお、制御手段9は、蒸気ブロワ5に内蔵されたものであってもよい。また、制御手段9は、リレー等を使った回路のみで構成されていてもよい。
【0043】
本実施形態の、熱交換器4と、蒸気ブロワ5と、第1蒸気圧力センサ52と、制御手段9とが圧縮システムPSになる。
【0044】
蒸気ブロワ5は、熱交換器4で発生させた蒸気を吸引することで、ドレン蒸発部の気圧および熱交換器4から蒸気ブロワ5に繋がる蒸気の吸引経路の気圧を大気圧よりも低下させている。ドレン蒸発部の気圧を低下させることで、熱交換器4においてドレンが蒸発しやすくなる。また、熱交換器4内で発生する蒸気は大気圧以下の飽和蒸気であり、蒸気ブロワ5により昇圧される。なお、蒸気ブロワ5では、過熱度を制御するため注水が行われる場合がある。
【0045】
蒸気ブロワ5で昇圧された蒸気は、下流側の蒸気圧縮機6によってさらに昇圧され、高温高圧蒸気になる。蒸気圧縮機6は、スクリュー式圧縮機である。この蒸気圧縮機6においても、過熱度を制御するため注水が行われる場合がある。蒸気ブロワ5から蒸気圧縮機6に繋がる蒸気の通過経路には、その通過経路にある蒸気の気圧を検出する第2蒸気圧力センサ62が配置されている。蒸気圧縮機6の動作は、第2蒸気圧力センサ62の検出結果に応じて制御手段9によって制御される。蒸気圧縮機6の動作については後に詳述する。なお、この実施形態では、熱交換器4と、蒸気ブロワ5と、第1蒸気圧力センサ52と、蒸気圧縮機6と、第2蒸気圧力センサ62と、制御手段9とを備え、蒸気ブロワ5と蒸気圧縮機6を直列に並べた2段圧縮システムが形成されている。前段の蒸気ブロワ5は、大気圧以下での蒸気を吸引して大気圧程度に昇圧するために用いられるものであり、後段の蒸気圧縮機6は、大気圧程度の蒸気を高圧化するために用いられるものである。
【0046】
蒸気圧縮機6で得られた高温高圧蒸気は、設備用ヘッダ7に送られる。なお、図1に示すように、蒸気圧縮機6と設備用ヘッダ7の間には、逆止弁61が設けられている。なお、蒸気圧縮機6と設備用ヘッダ7の間に蒸気の流量センサを設置してもよい。設備用ヘッダ7からは、乾燥用蒸気が、乾燥機1に向けて送られる。この設備用ヘッダ7には、不図示の補助蒸気ボイラによって加熱された補助蒸気が送られてくる配管SPが接続されている。また、設備用ヘッダ7には、設備用ヘッダ7の圧力、つまり乾燥用蒸気の圧力を測定するヘッダ圧力センサ75が設けられている。乾燥用蒸気圧力計器71は、ヘッダ圧力センサ75からの出力信号(圧力値)を受信して、予め設定されている圧力設定値とにより各種の演算やPID制御信号等への変換とその制御信号の出力、圧力表示等を行なう。なお、乾燥用蒸気圧力計器71の各機能を制御手段9が担い、乾燥用蒸気圧力計器71を省略していてもよい。図1に示すように、補助蒸気が送られてくる配管SPには、補助蒸気用制御弁72が設けられている。
【0047】
また、本実施形態では、乾燥機1のキャリア蒸気口113に、キャリア蒸気と共に非凝縮性ガスが供給可能に接続されている。非凝縮性ガスは、少なくとも図1に示されたこの乾燥設備D1の範囲内における温度と圧力の下では液体にならない気体であり、具体的には、外気を用いてもよいし、窒素ガス等を用いてもよい。乾燥機1のキャリア蒸気口113に接続される非凝縮性ガスの供給経路には、非凝縮性ガス用制御弁74が設けらており、この非凝縮性ガス用制御弁74の開度が制御されることで、非凝縮性ガスの供給量が調整される。
【0048】
ここで、本実施形態の乾燥設備D1における、乾燥機1への乾燥用蒸気の供給制御について説明する。
【0049】
ヘッダ圧力センサ75が検出した設備用ヘッダ7の圧力が、乾燥用蒸気圧力計器71にて乾燥条件として最適な予め設定されている圧力設定値SNに対して低ければ、乾燥用蒸気圧力計器71からの制御信号により補助蒸気用制御弁72が開かれて補助蒸気が供給される。その際、乾燥用蒸気圧力計器71によって、圧力設定値SNと設備用ヘッダ7の実際の圧力値との偏差により、PID制御信号等を用いて補助蒸気用制御弁72の開度は制御される。なお、設備用ヘッダ7の乾燥用蒸気は、乾燥設備D1の起動時には補助蒸気を主にして賄われ、定常運転ではほとんどが蒸気圧縮機6からの高温高圧蒸気で賄われる。
【0050】
続いて非凝縮性ガスの供給制御に関して説明する。乾燥用蒸気の圧力は、通常はほぼ圧力設定値SNに保たれている。しかし、蒸気ブロワ5が、後述する第1回転数R1(図3参照)とは異なる回転数で駆動された場合、乾燥用蒸気の圧力が圧力設定値SNとは異なる圧力になってしまうことがある。非凝縮性ガスの供給制御は、設備用ヘッダ7の乾燥用蒸気の圧力が圧力設定値SNとは異なる値になった場合、その圧力を圧力設定値SNに戻すために行われる制御である。具体的には、圧力設定値SNと設備用ヘッダ7の実際の圧力値との偏差により、乾燥用蒸気圧力計器71からのPID制御信号を用いて非凝縮性ガス用制御弁74の開度が制御される。このPID制御信号は上述の補助蒸気用制御弁72の開度制御のPID信号とは別途に演算されて出力されるものである。なお、この制御による非凝縮性ガスの供給は、高温高圧蒸気の圧力値、すなわち設備用ヘッダ7の圧力値が、圧力設定値SNよりも若干低い圧力値から、圧力設定値SNよりも高い圧力値により定まるある一定の圧力範囲内において、圧力設定値SNと設備用ヘッダ7の圧力値との偏差に基づき行なうようにしてもよい。また、設備用ヘッダ7の圧力値が、圧力設定値SNよりも低い圧力値状態から一定時間内に生じた圧力値の上昇速度(圧力上昇速度)が所定速度を超えた場合、圧力設定値SNと設備用ヘッダ7の圧力値との偏差に基づき非凝縮性ガスの供給に関する制御が開始され、設備用ヘッダ7の圧力値が圧力設定値SNを超えた後に圧力設定値SN未満となるまで本制御が継続されるようにしてもよい。
【0051】
また、上述したようなPID制御信号による非凝縮性ガス用制御弁74を制御する方法以外の方法として、乾燥用蒸気圧力計器71が有するタイマー機能を用いる方法もある。具体的には、非凝縮性ガス用制御弁74を全開にしておくタイマー時間T1と、全閉にしておくタイマー時間T2を乾燥用蒸気圧力計器71に予め設定し、設備用ヘッダ7の乾燥用蒸気の圧力値が圧力設定値SNを越えた場合に、タイマー時間T1とタイマー時間T2とに基づき非凝縮性ガス用制御弁74を交互に全開と全閉を繰り返させる制御動作を行なわせる方法である。この制御中に、設備用ヘッダ7の圧力値が圧力設定値SN以下となった時点で、このタイマー時間T1とタイマー時間T2とによる制御は終了される。
【0052】
なお、非凝縮ガスの供給は蒸気ブロワから排出される蒸気量を抑えるためのものであるから、本発明の圧縮システムPSと併用されることにより、より本発明の圧縮システムPSにおける第1回転数R1(図3参照)を維持し易く省エネ効果を高めることができる。
この様にして、設備用ヘッダ7における乾燥用蒸気の圧力値を検知して、乾燥用蒸気圧力計器71の制御信号に基づき、非凝縮性ガス用制御弁74から非凝縮性ガスがキャリア蒸気口113を通じて乾燥室11に供給され、キャリア蒸気に対しての非凝縮性ガスの混合量が調整される。
【0053】
非圧縮性ガスが混合されたキャリア蒸気には、乾燥室11において被処理物が乾燥することで蒸発した蒸気が加わり乾燥排気として排気口114から排出される。乾燥排気は集塵機2を経て熱交換器4に向かい、熱交換器4内のチューブ42を介してドレンと熱交換される。
【0054】
なお、非凝縮性ガスがキャリア蒸気に混合されると、熱交換器4の熱交換能力は低下し、乾燥排気からドレンに伝熱される熱量は急速に減少する。少量の非凝縮性ガスの混合によりこの効果は奏せられる。例えば、非凝縮性ガスを1%混合させると、熱交換器4における熱交換能力は約40%低下し、10%混合させると約80%低下する。したがって、熱交換器4の熱交換能力の制御を、反応応答性良く効率的に行うことができる。この結果、熱交換器4でドレンから蒸発して蒸気ブロワ5に吸引される蒸気量が減少する。そして、最終的には、蒸気ブロワ5が、後に図3を用いて説明する第2低速回転数R4または第3低速回転数R5で駆動制御され、蒸気圧縮機6も同様の駆動制御が行われることで、蒸気圧縮機6で生成される高温高圧蒸気、すなわち、設備用ヘッダ7における乾燥用蒸気の圧力が圧力設定値SNに速やかに収束することになる。
【0055】
つまり第1実施形態における乾燥設備D1によれば、設備用ヘッダ7における乾燥用蒸気の圧力が圧力設定値SNよりも高圧になった場合、非凝縮性ガスをキャリア蒸気に混合することで速やかに乾燥用蒸気の圧力を低下させて乾燥機1へ供給する乾燥用蒸気の熱量を調整することができる。
【0056】
また、万一設備用ヘッダ7が圧力設定値SNよりもはるかに過剰な圧力になった場合、乾燥用蒸気圧力計器71の制御により調整弁73が開かれて、過剰な蒸気は屋外等に大気放出などが行なわれるものであるが、上述した制御により設備用ヘッダ7の圧力は圧力設定値SNに速やかに収束するため、屋外等への大気放出などの無駄を減らすことができる。さらにまた、従来であれば多管式加熱管12に供給される乾燥用蒸気を直接調整する絞り弁901の操作が必要なくなる。
【0057】
次に、蒸気ブロワ5の動作について説明する。
【0058】
図3は、図1に示す乾燥設備において、第1蒸気圧力センサが検出した気圧と蒸気ブロワのロータ回転数との関係を示す制御説明図である。
【0059】
制御手段9は、第1蒸気圧力センサ52が検出した熱交換器4と蒸気ブロワ5の間の気圧の情報を受信し、その気圧に対応して蒸気ブロワ5に内蔵されたロータ51の回転数を制御する。この第1蒸気圧力センサ52が気圧を検出する工程が検出工程の一例に相当する。なお、制御手段9は、ロータ51を駆動するモータに加える電源周波数をインバータで制御することでロータ51の回転数を制御するが、ロータ51を駆動するモータとしてサーボモータを用いサーボ制御してもよい。図3に示すように、制御手段9は、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が基準範囲W1内にある場合には、ロータ51が第1回転数R1に維持されるように蒸気ブロワ5を制御する。このロータ51を第1回転数R1に維持する制御を実行する工程が定回転運転工程の一例に相当する。第1回転数R1は、乾燥設備D1の気相系のバランスを考慮して設定された、この圧縮システムPSに求められる蒸気量に基づいて決定された回転数である。具体的には、蒸気圧縮機6から設備用ヘッダ7に送られる高温高圧蒸気の量と、設備用ヘッダ7から送り出される乾燥用蒸気の量とがバランスする様に蒸気圧縮機6の設定回転数を決定し、そこから蒸気ブロワ5の第1回転数R1を決定している。基準範囲W1は、乾燥機1において乾燥させる一般的な被処理物(乾燥機1の投入口111から投入された物)の物性と一般的な投入量から計算される乾燥排気の熱量と、その熱量によって熱交換器4でドレンから蒸発する蒸気量とから想定される範囲である。ただし、この基準範囲W1は、経験則から求めた範囲であってもよく、乾燥設備D1全体のバランスを維持するために必要な気圧の限界値に安全率を乗じて得られる値を臨界値として設定した範囲であってよい。
【0060】
乾燥機1において乾燥させる被処理物の物性や投入量等の種々の要因によって乾燥排気の熱量は変動するので、熱交換器4で発生する蒸気量はその熱量に応じて変動する。そして、ドレン蒸発部の気圧もその発生する蒸気量に応じて変動する。これに対し、ロータ51を第1回転数R1に維持すると、熱交換器4において発生した蒸気量が増加したときにはドレン蒸発部の気圧が高まるので、熱交換器4における蒸気の発生が抑制される方向に作用する。また、熱交換器4において発生した蒸気量が低下したときにはドレン蒸発部の気圧が低下するので、熱交換器4における蒸気の発生が促進される方向に作用する。これらによって、熱交換器4において得られる蒸気量は第1回転数R1に対応した蒸気量に収束していく。従って、通常は、ロータ51を第1回転数R1に維持することで、圧縮システムPSに求められる蒸気量を熱交換器4において得ることができる。
【0061】
しかしながら、被処理物の物性や投入量等が想定を超えた場合などには、ドレン蒸発部の気圧が基準範囲W1を超えてしまうことも考えられる。そこで、制御手段9は、ロータ51を第1回転数R1で回転させているときに、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が基準範囲W1の上限値である第1上限閾値UT1に達した場合、ロータ51の回転数を第1回転数R1よりも回転数の多い第2高速回転数R2に変更して維持するように蒸気ブロワ5を制御する。この第1上限閾値UT1は、第1閾値の一例に相当し、第2高速回転数R2は、第2回転数の一例に相当する。第2高速回転数R2では、第1回転数R1のときと比較して、蒸気ブロワ5から送り出される蒸気量は増大するため、ドレン蒸発部の気圧を低下させる方向に作用する。この作用により、ドレン蒸発部の気圧が基準範囲W1を超えて上昇した場合でも、ドレン蒸発部の気圧を速やかに基準範囲W1内に戻すことができる。制御手段9は、ロータ51の回転数を一旦第2高速回転数R2に変更した場合、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第1高圧範囲W2にある間は第2高速回転数R2を維持する制御を行う。
【0062】
図3に示すように、第1高圧範囲W2の下限値である第2下限閾値LT2は、基準範囲W1の上限値である第1上限閾値UT1よりも低い圧力値である。すなわち、制御手段9は、ロータ51が第2高速回転数R2で回転しているときにドレン蒸発部の気圧が基準範囲W1内であって第1上限閾値UT1とは異なる第2下限閾値LT2に達したことを第1蒸気圧力センサ52が検出した場合、第1回転数R1に切り替えて維持する制御を行う。この第2下限閾値LT2は、第2閾値の一例に相当する。第2下限閾値LT2を第1上限閾値UT1よりも低い値にすることで、ロータ51の回転数の切り替えが頻繁に発生する所謂チャタリングが防止される。これにより、圧縮システムPSの動作が安定するとともに、ロータ51の回転数の不要な切り替えによる消費電力の増加を防止できる。
【0063】
制御手段9は、ロータ51を第2高速回転数R2で回転させているときに、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第1高圧範囲W2の上限値であり、第1上限閾値UT1よりも高い第2上限閾値UT2に達した場合、ロータ51の回転数を第2高速回転数R2よりもさらに回転数の多い第3高速回転数R3に変更して維持するように蒸気ブロワ5を制御する。この第2上限閾値UT2は、第3閾値の一例に相当し、第3高速回転数R3は、第3回転数の一例に相当する。第3高速回転数R3では、第2高速回転数R2のときと比較して、蒸気ブロワ5から送り出される蒸気量はさらに増大するため、ドレン蒸発部の気圧をより低下させる方向に作用する。この作用により、ドレン蒸発部の気圧が第1高圧範囲W2を超えて上昇した場合でも、ドレン蒸発部の気圧を速やかに第1高圧範囲W2内に戻すことができる。制御手段9は、ロータ51の回転数を一旦第3高速回転数R3に変更した場合、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第2高圧範囲W3にある間は第3高速回転数R3を維持する制御を行う。
【0064】
第2高圧範囲W3の下限値である第3下限閾値LT3は、第1高圧範囲W2の上限値である第2上限閾値UT2よりも低い圧力値である。すなわち、制御手段9は、ロータ51が第3高速回転数R3で回転しているときにドレン蒸発部の気圧が第1高圧範囲W2内であって第2上限閾値UT2とは異なる第3下限閾値LT3に達したことを第1蒸気圧力センサ52が検出した場合、第2高速回転数R2に切り替えて維持する制御を行う。第3下限閾値LT3を第2上限閾値UT2よりも低い値にすることで、ロータ51の回転数の切り替えが頻繁に発生する所謂チャタリングが防止される。これにより、圧縮システムPSの動作が安定するとともに、ロータ51の回転数の不要な切り替えによる消費電力の増加を防止できる。
【0065】
制御手段9は、ロータ51を第3高速回転数R3で回転させているときに、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第2高圧範囲W3の上限値である第3上限閾値UT3に達した場合、異常を報知する。また、異常を報知した後または報知と同時に、圧縮システムPSの動作を停止してもよく、乾燥設備D1全体を停止させてもよい。
【0066】
基準範囲W1、第1高圧範囲W2、第2高圧範囲W3は、この順に沿って徐々に範囲が狭くなる。すなわち、基準範囲W1が最も広い範囲(すなわち第1上限閾値UT1と第1下限閾値LT1の差圧に相当する幅)に設定され、第2高圧範囲W3が最も狭い範囲に設定されている。基準範囲W1、第1高圧範囲W2、第2高圧範囲W3の範囲の広さを同一に設定してもよいが、基準範囲W1を広い範囲にすることで、ロータ51の回転数の切り替えが発生しにくくなるので、圧縮システムPSの消費電力がより抑制できる。また、第3高速回転数R3と第2高速回転数R2の回転数差H2は、第2高速回転数R2と第1回転数R1の回転数差H1よりも大きな回転数差に設定されている。こうすることで、ドレン蒸発部の気圧が第2上限閾値UT2に達してしまった場合、ドレン蒸発部の気圧が基準範囲W1からさらに離れてしまうことをより強く抑制し、速やかにドレン蒸発部の気圧を基準範囲W1に近づけることができる。
【0067】
なお、図3にも示されている通り、第1上限閾値UT1、第2上限閾値UT2、第3上限閾値UT3、第2下限閾値LT2及び第3下限閾値LT3の設定値の大小関係は、第2下限閾値LT2<第1上限閾値UT1<第3下限閾値LT3<第2上限閾値UT2<第3上限閾値UT3の関係においてチャタリングを生ぜず、第1回転数R1、第2高速回転数R2及び第3高速回転数R3の間での回転数の変更が段階的に行われる。
【0068】
一方、制御手段9は、ロータ51を第1回転数R1で回転させているときに、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が基準範囲W1の下限値である第1下限閾値LT1に達した場合、ロータ51の回転数を第1回転数R1よりも回転数の少ない第2低速回転数R4に変更して維持するように蒸気ブロワ5を制御する。この第1下限閾値LT1は第1閾値の一例に相当し、第2低速回転数R4は第2回転数の一例に相当する。第2低速回転数R4では、第1回転数R1のときと比較して、蒸気ブロワ5から送り出される蒸気量は減少するため、ドレン蒸発部の気圧を上昇させる方向に作用する。この作用により、ドレン蒸発部の気圧が基準範囲W1よりも低下した場合でも、ドレン蒸発部の気圧を速やかに基準範囲W1内に戻すことができる。制御手段9は、ロータ51の回転数を一旦第2低速回転数R4に変更した場合、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第1低圧範囲W4にある間は第2低速回転数R4を維持する制御を行う。
【0069】
第1低圧範囲W4の上限値である第4上限閾値UT4は、基準範囲W1の下限値である第1下限閾値LT1よりも高い値である。すなわち、制御手段9は、ロータ51が第2低速回転数R4で回転しているときにドレン蒸発部の気圧が基準範囲W1内であって第1下限閾値LT1とは異なる第4上限閾値UT4に達したことを第1蒸気圧力センサ52が検出した場合、第1回転数R1に切り替えて維持する制御を行う。この第4上限閾値UT4は、第2閾値の一例に相当する。第4上限閾値UT4を第1下限閾値LT1よりも高い値にすることで、ロータ51の回転数の切り替えが頻繁に発生する所謂チャタリングが防止される。これにより、圧縮システムPSの動作が安定するとともに、ロータ51の回転数の不要な切り替えによる消費電力の増加を防止できる。
【0070】
制御手段9は、ロータ51を第2低速回転数R4で回転させているときに、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第1低圧範囲W4の下限値であり、第1下限閾値LT1よりも低い第4下限閾値LT4に達した場合、ロータ51の回転数を第2低速回転数R4よりもさらに回転数の少ない第3低速回転数R5に変更して維持するように蒸気ブロワ5を制御する。この第4下限閾値LT4は、第3閾値の一例に相当し、第3低速回転数R5は、第3回転数の一例に相当する。第3低速回転数R5では、第2低速回転数R4のときと比較して、蒸気ブロワ5から送り出される蒸気量はさらに減少するため、ドレン蒸発部の気圧をより上昇させる方向に作用する。この作用により、ドレン蒸発部の気圧が第1低圧範囲W4よりも低下した場合でも、ドレン蒸発部の気圧を速やかに第1低圧範囲W4内に戻すことができる。制御手段9は、ロータ51の回転数を一旦第3低速回転数R5に変更した場合、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第2低圧範囲W5にある間は第3低速回転数R5を維持する制御を行う。
【0071】
第2低圧範囲W5の上限値である第5上限閾値UT5は、第1低圧範囲W4の下限値である第4下限閾値LT4よりも高い値である。すなわち、制御手段9は、ロータ51が第3低速回転数R5で回転しているときにドレン蒸発部の気圧が第1低圧範囲W4内であって第4下限閾値LT4とは異なる第5上限閾値UT5に達したことを第1蒸気圧力センサ52が検出した場合、第2低速回転数R4に切り替えて維持する制御を行う。第5上限閾値UT5を第4下限閾値LT4よりも高い圧力値にすることで、ロータ51の回転数の切り替えが頻繁に発生する所謂チャタリングが防止される。これにより、圧縮システムPSの動作が安定するとともに、ロータ51の回転数の不要な切り替えによる消費電力の増加を防止できる。
【0072】
制御手段9は、ロータ51を第3低速回転数R5で回転させているときに、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第2低圧範囲W5の下限値である第5下限閾値LT5よりも低下した場合、異常を報知する。また、異常を報知した後または報知と同時に、圧縮システムPSの動作を停止してもよく、乾燥設備D1全体を停止させてもよい。
【0073】
基準範囲W1、第1低圧範囲W4、第2低圧範囲W5は、この順に沿って徐々に範囲が狭くなる。すなわち、基準範囲W1が最も広い範囲に設定され、第2低圧範囲W5が最も狭い範囲に設定されている。基準範囲W1、第1低圧範囲W4、第2低圧範囲W5の範囲の広さを同一に設定してもよいが、基準範囲W1を広い範囲にすることで、ロータ51の回転数の切り替えが発生しにくくなるので、圧縮システムPSの消費電力がより抑制できる。また、第3低速回転数R5と第2低速回転数R4の回転数差H4は、第2低速回転数R4と第1回転数R1の回転数差H3よりも大きな回転数差に設定されている。こうすることで、ドレン蒸発部の気圧が第4下限閾値LT4より低下してしまった場合、ドレン蒸発部の気圧が基準範囲W1からさらに離れてしまうことをより強く抑制し、速やかにドレン蒸発部の気圧を基準範囲W1に近づけることができる。
なお、図3にも示されている通り、第1下限閾値LT1、第4下限閾値LT4、第5下限閾値LT5、第4上限閾値UT4及び第5上限閾値UT5の設定値の大小関係は、第5下限閾値LT5<第4下限閾値LT4<第5上限閾値UT5<第1下限閾値LT1<第4上限閾値UT4の関係においてチャタリングを生ぜず、第1回転数R1、第2低速回転数R4及び第3低速回転数R5の間での回転数の変更が段階的に行われる。また、第2下限閾値LT2及び第4上限閾値UT4との関係においては第4上限閾値UT4<第2下限閾値LT2である。
【0074】
蒸気圧縮機6も、制御手段9によって蒸気ブロワ5と同様の制御を行うことができる。すなわち、第1蒸気圧力センサ52の代わりに第2蒸気圧力センサ62が用いられる他は、蒸気ブロワ5と同じ図3に示した制御を行うことができる。ただし、第2蒸気圧力センサ62が検出する、蒸気ブロワ5から蒸気圧縮機6に繋がる蒸気の通過経路の気圧は、蒸気ブロワ5から送り出される蒸気量によって定まるので、ドレン蒸発部の気圧よりも変動しにくい。従って、基準範囲を蒸気ブロワ5の基準範囲W1よりも広い範囲にしてもよく、第2高圧範囲W3および第2低圧範囲W5を省略してもよい。また、蒸気圧縮機6の動作を蒸気ブロワ5と同期させてもよい。
【0075】
本発明の乾燥設備D1は一例として上述したように構成されるものであり、以下に乾燥設備D1全体の運転方法についての一例を説明する。
【0076】
始めに排気ファン922とこの下流の不図示の設備が起動され、自動制御により乾燥室11内の圧力が概ね大気圧程度(-0.02~+0.1kPaG程度)に保たれる。また、第2ドレンポンプ911とこの下流の不図示の設備が起動される。第2熱交換器921には冷却水が供給される。
【0077】
次に、設備用ヘッダ7内が0.5MPaG、約159℃となるように補助蒸気が乾燥用蒸気圧力計器71に制御されて供給され、設備用ヘッダ7からの蒸気は、一部は多管式加熱管12に乾燥用蒸気として、一部は乾燥室11及び集塵機2に保温のために供給される。多管式加熱管12は、不図示のモータの起動により回転され、回転した状態で蒸気が流れ込む。
【0078】
この多管式加熱管12の加熱、乾燥室11及び集塵機2の保温の段階では、多管式加熱管12内やスチームトレース配管等内の空気などの非凝縮性ガスがドレンと共にドレンタンク3に流れ込む。この非凝縮性ガスは、ドレンタンク3の不図示の排出口よりドレンタンク3から放出される。なお、この様に本乾燥設備の起動時には不要である非凝縮性ガスを、乾燥設備D1外に放出する操作は、ドレンタンク3以外にも、不図示の適宜の箇所から適宜のタイミングで行なわれる。また、ドレンタンク3が一定の液位を越える場合には、ドレンタンク3からドレンは排水される。
【0079】
多管式加熱管12内の不図示の温度センサが所定の温度に達した後、上述のドレンタンク3からの非凝縮性ガスの排出口は閉じられる。そして、ドレンポンプ32が起動され、熱交換器4にドレンが供給される。
【0080】
次に、過熱ヒータ8が通電され、キャリア蒸気温度計器81の制御により、設備用ヘッダ7からの蒸気の一部はキャリア蒸気として約160℃の状態で乾燥室11に流れ込む。集塵機2の吹き付け機構22に供給される設備用ヘッダ7からの蒸気は約0.4MPaG、約200℃の状態に調整され、適宜の時間間隔で吹き付けが開始される。これらの操作により起動段階で存在する乾燥室11内や熱交換器4のチューブ45内の空気などの非凝縮性ガスは排気ファン922により排出される。生じたドレンは第2ドレンポンプ911により排出される。
【0081】
次に、蒸気ブロワ5と蒸気圧縮機6が起動される。蒸気ブロワ5と蒸気圧縮機6は制御手段9によって上述した制御が行われる。この段階では既に熱交換器4からドレンの蒸発が生じているので、蒸気は蒸気ブロワ5に吸引される。起動段階で存在する蒸気ブロワ5内や蒸気圧縮機6内、これら前後の経路内の非凝縮性ガスも、適宜の排出口より放出され、一定時間後に排出口は閉じられる。
【0082】
次に、排出口112のロータリーバルブ1121が起動され、投入口111から被処理物として例えば下水汚泥が投入される。汚泥は多管式加熱管12と接触して水分が蒸発され、蒸発した水分はキャリア蒸気と共に排気口114から集塵機2を経て乾燥排気として約112℃の状態で熱交換器4に流れ込む。
【0083】
なお、乾燥室11内に被処理物がない空の状態から被処理物を投入する起動方法以外に、起動前に被処理物を乾燥室11内にある程度に充填された状態から起動することもできる。また、起動前に乾燥室11内に充填するものとして、乾燥物を充填しておくことでも構わない。
【0084】
被処理物は投入口111側から排出口112側に移動されつつ乾燥され、乾燥物として排出口112からロータリーバルブ1121を経て排出される。
【0085】
被処理物の投入は、少量の投入量から開始し、投入量の設定値になるように徐々に増加される。設定値に至った時点で起動段階を終え、定常運転の段階となる。
【0086】
乾燥設備D1が安定した状態で運転される場合、蒸気圧縮機6の吐出側では0.5MPaG、約159℃の高温高圧蒸気が得られ、この蒸気は設備用ヘッダ7に供給される。設備用ヘッダ7の蒸気は、上述した乾燥用蒸気やキャリア蒸気などとして利用されることになる。
【0087】
しかしながら実際には被処理物は常に一定の物性とは限らず、また、乾燥室11内における被処理物の分散状態等も変動する。この変動により、熱交換器4においてドレンが蒸発して生成する蒸気量も変動する。ここで、上述したように、被処理物の物性等が想定される範囲内である場合、蒸気ブロワ5のロータ51を第1回転数R1に維持することで、熱交換器4において生成される蒸気量は第1回転数R1に対応した所望の蒸気量に収束していく。被処理物の物性等が想定される範囲を超えて変化する場合等には、熱交換器4において生成される蒸気量の変動が大きすぎて収束しきれずにドレン蒸発部の気圧が大きく上昇または大きく下降してしまうことがある。その場合、制御手段9は、上述したように、ロータ51の回転数を段階的に変化させることで熱交換器4において生成される蒸気量を所望の蒸気量に近づける制御を行う。また、制御手段9は、蒸気圧縮機6においても同様の制御を行う。これらの制御により、蒸気圧縮機6の吐出側の高温高圧蒸気の蒸気量と圧力の増減が生じることがある。
【0088】
熱交換器4において生成される蒸気量が増加した状態が長期間継続した場合、設備用ヘッダ7の圧力が圧力設定値SNを超えて高圧になる虞がある。過大に高圧になった場合、過剰な蒸気が調整弁73から大気等に放出されることになる。しかし、非凝縮性ガスが混合された乾燥排気を用いることで、熱交換器4での熱交換が抑制されて、ドレンからの蒸発が抑えられる。これにより設備用ヘッダ7の圧力は圧力設定値SN以下に速やかに収束することになる。なお、乾燥設備D1を停止するときは、まず被処理物の投入を停止し、乾燥室11内の被処理物が全て乾燥されるまで乾燥用蒸気とキャリア蒸気を供給する運転を継続し、続いて起動時とは逆の順序で各装置の停止と各所の弁の開閉が行なわれる。場合により、乾燥室11内の被処理物を全て乾燥させない状態で各装置を停止し、乾燥室11内に被処理物を残した状態で次の運転(起動)を行なうことも可能である。
【0089】
次に、蒸気ブロワ5の動作の変形例を説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素や値の名称には、これまで用いた符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0090】
図4は、蒸気ブロワの動作の変形例を示す図3と同様の制御説明図である。
【0091】
図4に示すように、この変形例では、第3下限閾値LT3および第5上限閾値UT5の値が図3に示した蒸気ブロワ5の制御と異なる。具体的には、第3下限閾値LT3を第2下限閾値LT2と同一値に設定し、第5上限閾値UT5を第4上限閾値UT4と同一値に設定している。すなわち、制御手段9は、一旦第3高速回転数R3でロータ51を回転させたら、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第2下限閾値LT2(第3下限閾値LT3)になるまで第3高速回転数R3を維持し、第2下限閾値LT2に達したら、一気に第1回転数R1に変更して維持する。また、制御手段9は、一旦第3低速回転数R5でロータ51を回転させたら、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第4上限閾値UT4(第5上限閾値UT5)になるまで第3低速回転数R5を維持し、第4上限閾値UT4に達したら、一気に第1回転数R1に変更して維持する。
【0092】
この変形例では、図3に示した蒸気ブロワ5の制御に対して第3高速回転数R3で駆動する第2高圧範囲W3が広いので、第2上限閾値UT2以上に高まったドレン蒸発部の気圧を早期に基準範囲W1に戻すことができる。また、図3に示した蒸気ブロワ5の制御に対して第3低速回転数R5で駆動する第2低圧範囲W5が広いので、第4下限閾値LT4以下に低下したドレン蒸発部の気圧を早期に基準範囲W1に戻すことができる。
【0093】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。
【0094】
例えば、乾燥機1は、多管式加熱管12を有する連続式伝導伝熱型乾燥機であったが、撹拌部や回転軸部が間接加熱部を成す所謂パドルドライヤ等の連続式伝導伝熱型乾燥機であってもよい。
【0095】
また、熱交換器4は縦型(縦置き)であったが、横型(横置き)であってもよい。
【0096】
また、例えば、熱交換器4は、乾燥排気とドレンが気体通過部を介して熱交換できる態様であれば、満液式熱交換器でなくとも他の形式の熱交換器であってもよい。
【0097】
さらに、熱交換器4においてドレンと熱交換される蒸気は乾燥排気以外に他のプロセスによって生じさせた凝縮性ガスであってもよく、他のプロセスによって生じさせた凝縮性ガスと乾燥排気の混合ガスであってもよい。
【0098】
また、本実施形態では、基準範囲W1、高圧側に2段階、低圧側に2段階、合計で5つの範囲を設定し、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧に応じて蒸気ブロワ5および蒸気圧縮機6を制御する例を示したが、高圧側および低圧側の少なくとも一方を省略してもよい。省略した場合、第1蒸気圧力センサ52が検出した気圧が第1上限閾値UT1または第1下限閾値LT1に達しても第1回転数R1を維持し続け、気圧が第5上限閾値UT5または第5下限閾値LT5に達したら異常を報知する態様としてもよい。また、高圧側と低圧側それぞれの設定範囲の段階数は1段階でもよく、3段階以上であってもよく、さらに高圧側と低圧側の段階数が異なっていてもよい。
【0099】
またさらに、制御手段9に備えられた記憶手段に記憶されている第1回転数R1などの回転数や、第1上限閾値などの各種閾値および、その閾値によって定まる基準範囲W1などの各種範囲は、記憶手段に記憶されている値を書き換えることで変更可能なものであってもよい。
【0100】
以上の記載では、水分等の蒸発成分を多く含む固体状の被処理物から、蒸発成分の少ない乾燥物を得る場合について説明したが、本発明は、液状体の被処理物から水分等の蒸発成分を蒸発させ、濃縮された液状物を得る場合についても適用可能であり、この場合には、乾燥設備D1は濃縮設備になり、乾燥機1は濃縮機になり、乾燥室11は濃縮室になる。また、乾燥用蒸気は濃縮用蒸気になり、乾燥物は濃縮物になる。
【0101】
なお、以上説明した各変形例の記載にのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の変形例に適用してもよい。
以上説明した圧縮システムは、熱量が変動する凝縮性ガスと液体とを熱交換することで該液体から蒸気を発生させる熱交換器と、
前記熱交換器が発生させた蒸気を回転体の回転数に応じた量だけ吸い込んで圧縮する圧縮機と、
前記熱交換器と前記圧縮機の間の気圧を検出する検出手段と、
前記回転数を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記検出手段が検出した前記気圧が基準範囲内にある場合は前記回転数を第1回転数に維持する制御を行うものであることを特徴とする。
ここで、前記凝縮性ガスは、乾燥機から排出された排出蒸気であってもよく、前記液体は、乾燥機から回収されたドレンであってもよい。また、前記制御手段は、前記圧縮機に内蔵されたものであってもよく前記圧縮機とは別に設けられたものであってもよい。また、前記第1回転数は、記憶手段に記憶され、該記憶手段を書き換えることによって変更可能であってもよい。さらには、前記基準範囲は、記憶手段に記憶され、該記憶手段を書き換えることによって変更可能であってもよい。またさらには、前記基準範囲を超えた場合、異常を報知してもよい。
この圧縮システムによれば、前記気圧が前記基準範囲内にあるときは前記回転体の前記回転数を前記第1回転数に維持するので、この圧縮システムの消費電力を抑制できる。なお、前記第1回転数に維持していると、前記熱交換器において得られる蒸気量が増加したときには前記気圧が高まり、該熱交換器における蒸気の発生が抑制される方向に作用する。また、前記熱交換器において得られる蒸気量が低下したときには前記気圧が下がり、該熱交換器における蒸気の発生が促進される方向に作用する。これらによって、前記熱交換器において得られる蒸気量は前記第1回転数に応じた蒸気量に収束するので、該第1回転数を適切に設定することで、この圧縮システムに求められる蒸気量を得ることができる。
また、この圧縮システムにおいて、前記制御手段は、前記気圧が前記基準範囲の限界値である第1閾値に達したことを前記検出手段が検出した場合、該回転数を該第1回転数とは異なる第2回転数に切り替えて該第2回転数を維持する制御を行うものであってもよい。
こうすることで、万一前記気圧が前記基準範囲に達した場合でも、前記第2回転数に切り替えるので速やかに前記気圧を該基準範囲内に戻すことができる。
また、以上説明した圧縮システムの制御方法は、熱量が変動する凝縮性ガスと液体とを熱交換器により熱交換することで該液体から発生した蒸気を回転体の回転数に応じた量だけ吸い込んで送り出す圧縮機と、該熱交換器と該圧縮機の間の気圧を検出する検出手段とを備えた圧縮システムの制御方法において、
前記気圧を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記気圧が基準範囲内にある場合は前記回転数を第1回転数に維持する定回転運転工程とを有することを特徴とする。
この圧縮システムの制御方向によれば、前記気圧が前記基準範囲内にあるときは前記回転数を前記第1回転数に維持するので、圧縮システムの消費電力が抑制できる。
【符号の説明】
【0102】
4 熱交換器
5 蒸気ブロワ
51 ロータ
52 第1蒸気圧力センサ
9 制御手段
PS 圧縮システム
R1 第1回転数
W 基準範囲
図1
図2
図3
図4