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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】複合糸及び生地
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/04 20060101AFI20231113BHJP
   D03D 15/40 20210101ALI20231113BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20231113BHJP
   A47G 9/00 20060101ALI20231113BHJP
   A47G 27/00 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
D02G3/04
D03D15/40
A41D1/00 G
A47G9/00
A47G27/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020202016
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089549
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503247791
【氏名又は名称】アクトインテリア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519381458
【氏名又は名称】青島拜倫湾科技有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519381469
【氏名又は名称】青島紗支紡織科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒川 康之
(72)【発明者】
【氏名】孫 石林
(72)【発明者】
【氏名】王 曉東
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-001927(JP,A)
【文献】特開2019-196570(JP,A)
【文献】特開2009-133036(JP,A)
【文献】特開2015-183326(JP,A)
【文献】特開2019-077973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 3/00- 3/48
D03D15/00-15/68
A41D 1/00
1/18- 1/22
19/00-19/04
31/00-31/32
A42B 1/00- 1/248
A47G 9/00-11/00
27/00-27/06
D06M11/00-11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリロニトリルのニトリル基に塩型カルボキシル基及びアミド基のうち、少なくとも一方が導入された分子構造を有するアクリル改質繊維と、
レーヨンと、
セラミックパウダーを含有するポリエステル繊維と、を含み、
当該アクリル改質繊維を3~30質量%、当該レーヨンを20~82質量%、当該ポリエステル繊維を15~50質量%含むことを特徴とする複合糸。
【請求項2】
請求項1に記載の複合糸を含む生地。
【請求項3】
類、物、具、こたつ掛から選ばれた1種に用いられる請求項2記載の生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿により発熱することが可能な複合糸及び生地に関する。
【背景技術】
【0002】
吸湿により発熱することが可能な吸湿発熱繊維としてレーヨン等が用いられている。レーヨンは、湿度が高い環境下において十分な強度を発揮することができない。このため、高湿度環境下においては、レーヨンを用いた織物や生地等の強度が低下する問題がある。
【0003】
そこで、レーヨンの代わりに改質したアクリル繊維を用いることにより、吸湿発熱繊維の高湿度環境下における強度を改善することが行われている。このようなアクリル改質繊維としては、例えば、架橋アクリル系繊維であって、ニトリル基の1部には塩型カルボキシル基が、残部にはアミド基が導入されている高吸放湿性繊維が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-132858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のアクリル改質繊維は、化学的方法により処理が施されるよって製造される。この処理によって、アクリル繊維の平滑な表面が破壊され、繊維の強度が低下する。このため、当該アクリル改質繊維を用いて繊維製品を製造する場合、紡績性能に影響を与える恐れがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、吸湿により発熱することが可能であって、湿度が高い状況下においても十分な強度を有する複合糸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合糸は、ポリアクリロニトリルのニトリル基に塩型カルボキシル基及びアミド基のうち、少なくとも一方が導入された分子構造を有するアクリル改質繊維と、レーヨンと、セラミックパウダーを含有するポリエステル繊維と、を含み、当該アクリル改質繊維を3~30質量%、当該レーヨンを20~82質量%、当該ポリエステル繊維を15~50質量%含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の複合糸によれば、アクリル改質繊維を含むことにより、湿度が高い状況下において十分な強度を有し、また、レーヨンを含むことにより、かつ高い紡績性能を有する。また、蓄熱材を含有するポリエステル繊維を含むことにより、蓄熱性を発揮することが可能となる。
【0009】
本発明の複合糸において、前記蓄熱材は、セラミックパウダーである
【0010】
本発明の複合糸において、前記アクリル改質繊維を3~30質量%、前記天然繊維を2
0~82質量%、前記ポリエステル繊維を15~50質量%含む。
【0011】
本発明の生地は、上記の複合糸を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の生地は、類、物、具、こたつ掛から選ばれた1種に用いられるものであること好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合糸によれば、アクリル改質繊維を含むことにより、湿度が高い状況下において十分な強度を有し、また、天然繊維を含むことにより、かつ高い紡績性能を有する。また、蓄熱材を含有するポリエステル繊維を含むことにより、蓄熱性を発揮することが可能となる。したがって、本発明の複合糸を含有する生地の耐久性、紡績性及び発熱性能を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
複合糸は、ポリアクリロニトリルのニトリル基に塩型カルボキシル基及びアミド基のうち、少なくとも一方が導入された分子構造を有するアクリル改質繊維と、セルロース繊維又は、獣毛繊維を含む天然繊維と、蓄熱材を含有するポリエステル繊維と、を含む。
【0015】
アクリル改質繊維は、下記の化学式1に示されるPAN(polyacrylonitrile)を、例えば、NaOH等の適当な塩基で処理することによって得られる。アクリル改質繊維は、例えば、下記の化学式2に示される構造を有する。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
化学式2に示されるように、アクリル改質繊維は、ポリアクリロニトリルのニトリル基に塩型カルボキシル基及びアミド基のうち、少なくとも一方が導入された分子構造を有する。
【0019】
塩型カルボキシル基及びアミド基は、PANのニトリル基の塩基との反応によって導入される。具体的には、まずニトリル基が塩基と反応すると、アミド基が導入される。このアミド基に対してさらに塩基が反応すると、塩型カルボキシル基が導入される。それぞれの反応は、可逆的に進行する。また、アミドイオンは非常に劣った脱離基である。したがって、アクリル改質繊維は、一般的には、塩型カルボキシル基及びアミド基が導入された構造となる。
【0020】
アクリル改質繊維は、水分率(moisture regain)が20%以上であるとよく、好ましくは、20~50%、より好ましくは、28~45%であるとよい。
【0021】
水分率の測定は、例えば、紡績材料の水分含有率と水分率(moisture regain )の測定オーブン乾燥法を用いて測定することができる。このような測定オーブン乾燥法としては、例えば、中華人民共和国推奨国家標準であるGB/T 9995-1997が挙げられる。
【0022】
尚、アクリル改質繊維は、限界酸素指数(LOI)が40以下であることが好ましい。限界酸素指数(LOI)が40以下であることにより、難燃性の性質を付与することが可能となる。
【0023】
複合糸は、アクリル改質繊維を3~30質量%、好ましくは10~30質量%、より好ましくは、15~25質量%含むとよい。
【0024】
天然繊維のセルロース繊維は、例えば、綿、木綿、レーヨン、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維等を用いることができる。
【0025】
天然繊維の獣毛繊維は、例えば、絹、羊毛等を用いることができる。
【0026】
複合糸は、天然繊維を20~82質量%、好ましくは40~80質量%、より好ましくは、60~80 質量%含むとよい。尚、天然繊維は、水分率(moisture regain)が8%以上であることが好ましい。水分率(moisture regain)が8%以上であることにより、複合糸の吸湿発熱効果を高めることができる。
【0027】
ポリエステル繊維は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0028】
蓄熱材は、備長炭、カーボンブラック、竹の炭、セラミックパウダー、炭化ジルコニア等であることが好ましい。蓄熱材は、平均粒径が20~1000nmであるとよく、好ましくは、50~800nmであるとよく、より好ましくは、50~600nmであるとよい。平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された、体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径(平均粒径D50)を意味する。
【0029】
蓄熱材は、ポリエステル繊維に2~10質量%含有されているとよく、好ましくは、3~9質量%含有されているとよく、より好ましくは、4~8質量%含有されているとよい。
【0030】
蓄熱材を含有するポリエステル繊維は、例えば、蓄熱材を含有するポリエステルのマスターバッチと、ポリエステルのチップを溶融混合して紡糸することによって作成される。
【0031】
複合糸は、このような蓄熱材を含有するポリエステル繊維を15~50質量%、好ましくは25~45質量%、より好ましくは、30~40質量%含むとよい。
【0032】
複合糸は、例えば、次のように作成される。すなわち、アクリル改質繊維及び天然繊維を用いて混紡糸を作成し、この混紡糸及びポリエステル繊維を用いて複合糸を作成する。
【0033】
混紡糸の紡績方法は、特には限定されないが、例えば、サイロコンパクトを用いることができる。サイロコンパクトは、サイロスピニングとコンパクトスピニングを併用したサイロコンパクトスピニングとも称される紡績方法である。
【0034】
サイロコンパクトによって紡がれた混紡糸は、2つの紡績法(コンパクト紡績、サイロ紡績)の優れた特性と品質を有する。この混紡糸は、伝統的なリング紡績やサイロ紡績と比べて、毛羽がより少なく、強度がより高くなる傾向がある。混紡糸の糸番手は、10S~60Sとするとよく、好ましくは、30~60S、より好ましくは、40~50Sとするとよい。
【0035】
複合糸の紡績方法は、特には限定されないが、例えば、空気紡績を用いることができる。空気紡績は、混紡糸とポリエステル繊維の絡み合い点(Entanglement point)を容易に制御することができるため好ましい。絡み合い点(Entanglement point)は、50~500個/mであるとよく、好ましくは、50~300個/mであるとよく、より好ましくは、100~300個/mであるとよい。
【0036】
複合糸の太さは、75~300Dとするとよく、好ましくは、75~210D、より好ましくは、100~210Dとするとよい。
【0037】
以上で説明した複合糸は、これを含有する生地とすることが好ましい。生地中に複合糸は、20~100質量%含まれているとよく、好ましくは、25~85質量%含まれているとよく、より好ましくは、25~50質量%含まれているとよい。
【0038】
生地は、目付量が70~400g/mであるとよく、好ましくは、100~350g/mであるとよく、より好ましくは、130~300g/mであるとよい。
【0039】
また、この生地は、手袋、帽子、膝掛け等の衣類、ラグ等の敷物、掛布団、敷布団等の寝具、こたつ掛等から選ばれた1種に用いられることが好ましい。
【0040】
このような製品に生地が用いられることによって、ユーザは、これらの製品を使用する際に、温かさを感じることが可能となる。すなわち、繊維が水分を吸収すると、繊維分子と水分子が互いに引きつけて結合し、水分子の運動エネルギーが熱エネルギーとして放出される。
【0041】
以上のように、本発明の複合糸によれば、アクリル改質繊維を含むことにより、湿度が高い状況下において十分な強度を有し、また、天然繊維を含むことにより、かつ高い紡績性能を有する。また、蓄熱材を含むポリエステル繊維を含むことにより、蓄熱性を発揮することが可能となる。したがって、本発明の複合糸を含有する生地の耐久性、紡績性及び発熱性能を高めることができる。
【実施例
【0042】
[試験例1](吸湿発熱試験1)
[試料の作成]
以下の要領で実施例1に係る試料を作成した。
【0043】
(工程1-1)
塩基として水酸化ナトリウム及び有機溶剤を用いて、アクリル繊維の改質処理を行いアクリル改質繊維を得た。水酸化ナトリウムの濃度は10質量%とし、処理温度は95℃とした。また、処理時間は30分とした。すなわち、ニトリル基に塩型カルボキシル基及びアミド基のうち、少なくとも一方が導入されたアクリル改質繊維を得た。
【0044】
尚、工程1で得られたアクリル改質繊維の水分率(moisture regain)は28%であった。水分率の測定は、中華人民共和国推奨国家標準であるGB/T 9995-1997に基づいて行った。
【0045】
(工程1-2)
15質量%のアクリル改質繊維と85質量%のレーヨン(天然繊維)を混合して、40番手の混紡糸を作成した。具体的には、サイロコンパクトスピニングで混紡糸(サイロコンパクト糸)を作成した。尚、サイロコンパクト紡績機としてRX-240(製品型番、株式会社豊田自動織機製)を用いた。
【0046】
(工程1-3)
備長炭の粉末を含むポリエステルのマスターバッチとポリエステルのチップを混合し、溶融紡糸によって、太さが75Dの蓄熱材として備長炭を含有するポリエステル繊維を作成した。当該ポリエステル繊維の備長炭の含有量を5質量%とした。尚、備長炭は、平均粒径が500nmのものを用いた。
【0047】
(工程1-4)
(工程1-2)で作成した混紡糸及び(工程1-3)で作成した蓄熱材を含有するポリエステル繊維を用いて、複合糸を作成した。複合糸の絡み合い点(Entanglement point)を75個/mとした。複合糸の配合は、アクリル改質繊維10質量%、レーヨン55質量%、ポリエステル35質量%とした。
【0048】
(工程1-5)
(工程1-4)で作成した複合糸を用いて、目付が160g/mのニット生地を作成した。
【0049】
[吸湿発熱試験]
コットンで作成した実施例1と同一の目付(160g/m)のニット生地を比較例1とした。実施例1及び比較例1について、吸湿発熱試験を行った。
【0050】
(試験方法)
試験は、BOKEN中国上海分会社において、同社で規定されているBQE A 035-2011に基づいて行った。具体的には、20cm×20cmの試験片を4つ折りにして内部に熱電対温度センサーを取り付けた後、恒温機の中で20℃,相対湿度40%RHの環境下で2時間載置した。その後、20℃,相対湿度90%RHの環境に試験片を置いた際の温度変化を1分ごとに15分間測定した。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、実施例1は、測定開始から4分後に温度が最も高くなり、24.9℃となった。これに対して比較例1は、測定開始から4分後に温度が最も高くなり、23.9℃となった。したがって、実施例1の最高温度は、比較例1の最高温度よりも1℃高いことが分かった。
【0053】
[試験例2](蓄熱試験1)
試験例1で作成した実施例1及び比較例1について、下記に示す態様で蓄熱試験を行った。
【0054】
(試験方法)
試験は、BOKEN中国上海分会社において、同社で規定されているBQE A 036-2011に基づいて行った。具体的には、15cm×15cmの試験片の裏面中央部に熱電対温度センサーを取り付け、試料表面にレフランプ(擬似太陽光)を照射(10分)及び消灯(10分)させた際の温度変化を1分ごとに測定した。尚、実施例1及び比較例1を並べて測定し、試料を入れ替えて再度測定を行い、測定値の平均値を結果として記録した。その結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示すように、実施例1は、測定開始から10分後において温度が最も高くなり、74.0℃となった。これに対して、比較例1は、測定開始から10分後において温度が最も高くなり、54.7℃となった。したがって、実施例1と比較例1の最高温度における温度差は、19.3℃であった。
【0057】
[試験例3](吸湿発熱試験2)
[試料の作成]
以下の要領で実施例2に係る試料を作成した。
(工程2-1)
塩基として水酸化ナトリウム及び有機溶剤を用いて、アクリル繊維の改質処理を行いアクリル改質繊維を得た。水酸化ナトリウムの濃度は10質量%とし、処理温度は95℃とした。また、処理時間は30分とした。すなわち、ニトリル基に塩型カルボキシル基及びアミド基のうち、少なくとも一方が導入されたアクリル改質繊維を得た。尚、工程1で得られたアクリル改質繊維の水分率(moisture regain)は33%であった。
【0058】
(工程2-2)
20質量%のアクリル改質繊維と80質量%のレーヨン(天然繊維)を混合して、50番手の混紡糸を作成した。具体的には、サイロコンパクトスピニングで混紡糸(サイロコンパクト糸)を作成した。
【0059】
(工程2-3)
主成分として、酸化ケイ素とアルミナを含み、かつ粒径が1μm以下のセラミックの粉末を含むポリエステルのマスターバッチとポリエステルのチップを混合し、溶融紡糸によって、太さが50Dのセラミックの粉末を含有するポリエステル繊維を作成した。当該ポリエステル繊維のセラミックの含有量を5質量%とした。
【0060】
(工程2-4)
(工程2-2)で作成した混紡糸及び(工程2-3)で作成した蓄熱材を含有するポリエステル繊維を用いて、複合糸を作成した。複合糸の絡み合い点(Entanglement point)を200個/mとした。複合糸の配合は、アクリル改質繊維13.5質量%、レーヨン54.5質量%、セラミックの粉末を含有するポリエステル繊維32質量%とした。
【0061】
(工程2-5)
(工程2-4)で作成した複合糸を裏糸とし、太さが150DのPET繊維を表糸とし、目付が280g/mの経編みのフランネル生地を作成した。生地の成分は、アクリル改質繊維4質量%、レーヨン13質量%、セラミックの粉末を含有するポリエステル8質量%、普通のポリエステル75質量%とした。
【0062】
[吸湿発熱試験]
レーヨン及び蓄熱材を含むポリエステル繊維で作成した実施例2と同一の目付(280g/m)のフランネル生地を比較例2とした。比較例2の配合は、レーヨン17質量%、ポリエステル83質量%とした。実施例2及び比較例2について、吸湿発熱試験を行った。試験は、試験例1と同一の方法で行ったので説明を省略する。試験結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
表3に示すように、実施例2は、測定開始から5分後に温度が最も高くなり、24.7℃となった。これに対して比較例2は、測定開始から5分後に温度が最も高くなり、23.6℃となった。したがって、実施例2の最高温度は、比較例2の最高温度よりも1.1℃高いことが分かった。
【0065】
[試験例4](蓄熱試験2)
試験例3で作成した実施例2及び比較例2について、蓄熱試験を行った。尚、試験方法は試験例2と同一であるので説明を省略する。
【0066】
【表4】
【0067】
表4に示すように、実施例2は、測定開始から10分後において温度が最も高くなり、53.0℃となった。これに対して、比較例2は、測定開始から10分後において温度が最も高くなり、50.2℃となった。したがって、実施例2と比較例2の最高温度における温度差は、2.8℃であった。
【0068】
[試験例5](保湿試験)
(試料の作成)
試験例3に記載の方法によって実施例3に係る試料を作成した。実施例3の生地は、アクリル改質繊維3質量%、レーヨン13質量%、ポリエステル84質量%とした。実施例3は、目付が280g/mの経編みのフランネル生地とした。
【0069】
また、太さが150D複合糸(アクリレートとレーヨンの混紡と備長炭ポリエステル)を裏糸に用い、ポリエステル100%を表糸に用いて、目付が280g/mの経編みのフランネル生地を比較例3として作成した。
【0070】
(試験方法)
試験は、温度40℃、湿度90%の環境下における絶乾状態(絶対乾燥状態)の試料の質量変化を4時間測定した後、温度20度、湿度65%の環境下における質量変化を4時間測定した。水分率は、各環境下において1時間ごとに求めた。
【0071】
水分率は、次式に従って算出した。
水分率(moisture regain)=(試料重量-絶乾状態の試料重量)/試料重量
【0072】
【表5】
【0073】
表5に示すように、実施例3は、いずれの温度湿度帯においても比較例3よりも高い水分率を有することが分かった。言い換えれば、実施例3は、比較例3よりも保湿性能が優れているといえる。言い換えれば、実施例3は、比較例3よりも、しっとりとした肌触りであり、かつ静電気の発生頻度を抑制することができる。