(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびその成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20231113BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2020548451
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036027
(87)【国際公開番号】W WO2020066679
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2018183563
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】橋口 朋晃
(72)【発明者】
【氏名】田口 精一
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-202757(JP,A)
【文献】国際公開第02/006400(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/137681(WO,A1)
【文献】特開2006-274182(JP,A)
【文献】特開2007-269842(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170423(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0028622(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸、及び、
乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合ポリエステル
を含有する、樹脂組成物
であって、
前記共重合ポリエステルが、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸とのランダム共重合体であり、
前記他のヒドロキシカルボン酸が、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシドデカン酸、3-ヒドロキシテトラデカン酸、3-ヒドロキシペンタデカン酸、及び、3-ヒドロキシヘキサデカン酸からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記共重合ポリエステル中の乳酸モル分率が10~70モル%であり、
前記ポリ乳酸100重量部に対して前記共重合ポリエステルの配合量が1~200重量部である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記他のヒドロキシカルボン酸が、3-ヒドロキシブタン酸である、請求項
1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリ乳酸100重量部に対して前記共重合ポリエステルの配合量が5~150重量部である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記共重合ポリエステル中の乳酸由来のモノマー単位が、D-乳酸由来のモノマー単位である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリ乳酸と前記共重合ポリエステル以外のポリヒドロキシアルカノエート樹脂の配合量が、前記ポリ乳酸100重量部に対して0~50重量部である、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸を含む樹脂組成物、及び、その成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、デンプンなど植物由来の再生可能原料から微生物発酵によって得た乳酸を重合して製造可能な、生分解性を有するポリエステル樹脂である。近年の循環型社会の構築や、二酸化炭素排出量増大による気候変動の抑制などの観点から、ポリ乳酸の利用は注目されている。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸は非常に硬い樹脂であるため、その使用可能な用途が限定されている。そのため、ポリ乳酸の軟質化技術が種々検討されている。ポリ乳酸の軟質化技術としては、可塑剤を添加する方法が知られている。これまでポリ乳酸に対する可塑剤としては、アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジオクチル(特許文献1)や、アセチルクエン酸トリブチル、トリアセチレン(特許文献2及び3)などが報告されているものの、何れも可塑化効果が低かったり、可塑剤のブリードアウトといった欠点を有するものであった。
【0004】
ブリードアウトを抑制するためには、低分子化合物ではなく、軟質のポリマーをポリ乳酸にブレンドすることが考えられる。
【0005】
特許文献4は、可塑化技術に関するものではないが、ポリ乳酸に対し、ポリカプロラクトンや、ブタンジオールとコハク酸の縮合体といった生分解性脂肪族ポリエステルを配合することにより、ポリ乳酸の耐衝撃性を改善する技術が報告されている。
【0006】
また、特許文献5は、これも可塑化技術に関するものではないが、ポリ乳酸と、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂に対して、相溶化剤として、ポリ乳酸とポリヒドロキシアルカノエートとのブロック体を配合することで、耐熱性と耐衝撃性を備えた樹脂組成物を提供することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許平4-335060号公報
【文献】特開平8-34913号公報
【文献】特開平11-116788号公報
【文献】特開平9-111107号公報
【文献】特開2010-202757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、ポリ乳酸に他のポリマーをブレンドすると、ポリ乳酸の透明性が損なわれる課題があった。また、ポリ乳酸とブレンドするポリマーとしては、同じく生分解性を有するものを用いることが望ましい。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、透明性を実質的に低下させることなく、生分解性ポリマーのブレンドによってポリ乳酸を可塑化して、軟質化されたポリ乳酸含有樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、モノマー成分の1つとして乳酸を含む共重合ポリエステルが、ポリ乳酸に対して高い可塑化能を示し、かつ、該共重合ポリエステルのブレンドによって透明性の実質的な低下が観察されないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、ポリ乳酸、及び、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合ポリエステルを含有する、樹脂組成物に関する。好ましくは、前記他のヒドロキシカルボン酸が、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシドデカン酸、3-ヒドロキシテトラデカン酸、3-ヒドロキシペンタデカン酸、3-ヒドロキシヘキサデカン酸からなる群より選択される少なくとも1種である。好ましくは、ポリ乳酸100重量部に対して前記共重合ポリエステルの配合量が1~200重量部である。好ましくは、前記共重合ポリエステル中の乳酸モル分率が10~70モル%である。好ましくは、前記他のヒドロキシカルボン酸が、3-ヒドロキシブタン酸である。また本発明は、前記樹脂組成物を成形してなる成形体にも関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明性を実質的に低下させることなく、生分解性ポリマーのブレンドによってポリ乳酸を可塑化して、軟質化されたポリ乳酸含有樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸、及び、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合ポリエステル、を含有する。これにより、ポリ乳酸の透明性を実質的に低下させることなく、ポリ乳酸を可塑化し、軟質のポリ乳酸含有樹脂組成物を提供することができる。
【0015】
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸とは、乳酸を構成モノマーとするポリエステルである。本発明では従来公知のポリ乳酸を使用でき、L-乳酸のホモポリマー、D-乳酸のホモポリマー、L-乳酸とD-乳酸のコポリマー、及び、それらのポリマーブレンドのいずれも使用することができる。ポリ乳酸を構成するL体とD体の比率も特に限定されない。また、ポリ乳酸は結晶性、非晶性いずれのものであってもよい。
【0016】
ポリ乳酸を製造するための原料としても特に限定されず、L-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸、又はこれらの混合物や、Lーラクチド、D-ラクチド、mesoーラクチド、又はそれらの混合物等を使用することができる。ポリ乳酸を製造する方法としては、脱水縮重合法や開環重合法など公知の方法を適用することができ、特に限定されない。
【0017】
ポリ乳酸の分子量としては特に制限はないが、数平均分子量が例えば1,000~700,000であってよく、好ましくは10,000~300,000であってよい。
【0018】
(共重合ポリエステル)
本発明で使用する共重合ポリエステルは、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合ポリエステルであって、生分解性を示すポリマー材料である。これをポリ乳酸に配合することで、ポリ乳酸の透明性を実質的に低下させることなく、ポリ乳酸を可塑化することができる。
【0019】
当該共重合ポリエステルは、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸がランダムに共重合したものであり、特許文献5に記載されているようなポリ乳酸とポリヒドロキシアルカノエートとのブロック体とは異なる。ブロック体を使用すると、ポリ乳酸の透明性が低下する。
【0020】
前記共重合体ポリエステル中の乳酸由来のモノマー単位は、L-乳酸由来のモノマー単位、D-乳酸由来のモノマー単位のいずれであってもよく、特に限定されるものではないが、D-乳酸由来のモノマー単位であることが一般的である。
【0021】
前記他のヒドロキシカルボン酸としては、3-ヒドロキシアルカン酸が好ましく、具体的には、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシドデカン酸、3-ヒドロキシテトラデカン酸、3-ヒドロキシペンタデカン酸、3-ヒドロキシヘキサデカン酸等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、前記他のヒドロキシカルボン酸として、3-ヒドロキシブタン酸を含むことが好ましい。前記共重合ポリエステルとしては、乳酸と3-ヒドロキシブタン酸との共重合ポリエステルであるP(LA-co-3HB)が最も好適に使用することができる。
【0022】
前記共重合ポリエステルを構成する乳酸と他のヒドロキシアルカン酸との比率は特に限定されない。しかし、ポリ乳酸を軟質化する効果が高いことから、前記共重合ポリエステルを構成する乳酸と他のヒドロキシアルカン酸の合計モル数に対する乳酸のモル分率は、10~70モル%であることが好ましい。より好ましくは15~60モル%、さらに好ましくは15~50モル%である。当該乳酸のモル分率の値は、HPLCを用いて決定することができる。
【0023】
前記共重合ポリエステルの分子量としては特に制限はないが、重量平均分子量が例えば1~100万であってよく、好ましくは1~50万であってよい。当該重量平均分子量の値は、タンデムTSKgel Super HZM-Hカラム(東ソー製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(島津製作所製)を用いて、標準ポリスチレンに基づき決定した。
【0024】
乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合ポリエステルを製造する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法であってよい。なかでも、P(LA-co-3HB)を製造する方法の一例としては、国際公開第2009/131186号や、国際公開第2006/126796号に記載されているような組み換え微生物を用いた製造方法が挙げられる。
【0025】
(配合割合)
本発明の樹脂組成物におけるポリ乳酸と前記共重合ポリエステルの配合比率は、前記共重合ポリエステルの配合によってポリ乳酸を軟質化することができる比率であれば特に限定されず、前記共重合ポリエステルの特性に応じて適宜設定すればよい。しかし、通常、ポリ乳酸100重量部に対する前記共重合ポリエステルの配合量は、軟質化効果と樹脂組成物の透明性を両立する観点から、1~200重量部が好ましく、5~100重量部がより好ましく、10~80重量部がさらに好ましい。前記配合量の下限値は20重量部以上であってもよいし、また、30重量部以上であってもよい。前記配合量の上限値は60重量部以下であってもよいし、また、50重量部以下であってもよい。
【0026】
(他の成分)
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸と前記共重合ポリエステル以外の熱可塑性樹脂を含むものであってもよい。そのような樹脂としては特に限定されず、従来公知の樹脂を使用することができ、具体的には、ポリ乳酸や前記共重合ポリエステル以外の生分解性を有する脂肪族ポリエステルや、芳香族ポリエステル等が挙げられる。
【0027】
しかし、ポリ乳酸との相溶性が低い樹脂は、ポリ乳酸の透明性を悪化させる可能性があるため、配合しない、又は、配合する場合にも少ない量で配合することが好ましい。特に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸との相溶性が低いポリヒドロキシアルカノエート樹脂の配合量は、ポリ乳酸100重量部に対し、0~100重量部程度が好ましく、0~50重量部程度がより好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の添加剤を適宜含有してもよい。そのような添加剤としては特に限定されないが、例えば、可塑剤、加水分解抑制剤、相溶化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、結晶核剤、無機系または有機系粒子、滑剤、離型剤、撥水剤、無機充填剤、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、難燃剤等が挙げられる。各添加剤の含有量は、その目的に応じて適宜決定することができる。また、添加剤は1種類のみを配合してもよいし、2種類以上を配合してもよい。
【0029】
前記可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられている可塑剤を使用することができ、具体的には、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、エポキシ系可塑剤等が挙げられる。
【0030】
(用途)
本発明の樹脂組成物は、各成分を溶融混練した後、溶融樹脂をストランド状に押し出してからカットし、ペレットとすることができる。得られたペレットを乾燥させて水分を除去した後、公知の成形加工方法によって成形加工することで、任意の成形体を得ることができる。成形加工方法としては、例えば、フィルム成形、シート成形、射出成形、ブロー成形、繊維の紡糸、押出発泡、ビーズ発泡等が挙げられる。
【0031】
フィルム成形体の製造方法としては、例えば、Tダイ押出し成形、カレンダー成形、ロール成形、インフレーション成形が挙げられる。ただし、フィルム成形法はこれらに限定されるものではない。また、本発明の樹脂組成物から得られたフィルムは、加熱による熱成形、真空成形、プレス成形が可能である。
【0032】
射出成形体の製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を成形する場合に一般的に採用される射出成形法、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法等の射出成形法を採用することができる。また、その他の目的に合わせて、上記の方法以外でもインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法、PUSH-PULL、SCORIM等を採用することもできる。ただし、射出成形法はこれらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、押出成形機を用いて、ペレット、または、フィルム状、シート状、又は繊維状等の成形体に加工しても良いし、射出成形により所定形状の成形体に加工することも可能である。
【0034】
また、本発明の樹脂組成物が発泡剤を含有する場合、本発明の成形体は発泡性の成形体であってもよいし、加工後に発泡させることで成形発泡体としてもよい。
【0035】
本発明の樹脂組成物は各種形状の成形体に加工することができる。該成形体としては、例えば、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品等が挙げられる。また、本発明の成形体は、その物性を改善するために、本発明の樹脂組成物とは異なる材料から構成される成形体(例えば、繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体等)と複合化することもできる。本発明の成形品の用途は特に限定されず、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
(原料)
共重合ポリエステル原料A:文献:Journal of Biotechnology、154(2011)、pp.255-260の記載に従って製造したP(LA-co-3HB)を東京農業大学より入手し、使用した。該共重合ポリエステル原料Aを構成する乳酸のモル分率は45モル%、重量平均分子量は約11万であった。これら乳酸のモル分率及び重量平均分子量の測定は、前記文献に記載の測定方法に準拠した。なお、該共重合ポリエステル原料A中の乳酸由来のモノマー単位は、D-乳酸由来のモノマー単位であった。
【0038】
比較用共重合ポリエステル原料B:国際公開第2015/115619号の記載に従って製造した3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシヘキサン酸との共重合体:P(3HB-co-3HH)を使用した。該比較用共重合ポリエステル原料Bの3HHのモル分率は11モル%であった。
【0039】
ポリ乳酸原料A:Natureworks社製ingeo10361Dを用いた。
【0040】
<実施例1>
ポリ乳酸原料Aと、共重合ポリエステル原料AであるP(LA-co-3HB)を、同方向噛合型二軸押出機(東芝機械社製:TEM-26SS)に投入して、設定温度100~130℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬し、ポリエステル樹脂組成物を得た。各原料は、ポリ乳酸原料Aと共重合ポリエステル原料Aの重量比率が80:20(ポリ乳酸100重量部に対し共重合ポリエステルが25重量部)となるように使用した。当該ポリエステル樹脂組成物をダイスからストランド状に引き取り、ペレット状にカットした。
【0041】
(シート成形)
得られたペレットを、150mm幅、リップ0.25mmのTダイを装着した1軸押出機ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製、20C200型)を用いて、加工温度160℃、スクリュー回転数10rpmで押し出し、厚み0.1mmのシートを得た。
【0042】
(ヘイズおよび全光線透過率)
得られたシートについて、ヘイズメーター:NDH7000SP(日本電色工業株式会社製)を使用して、ヘイズおよび全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0043】
(破断伸び率)
得られたシートから試験用ダンベルを打ち抜き、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用し、JIS K7161に準拠した条件で破断伸び率を測定した。その結果を表1に示す。
【0044】
<実施例2>
ポリ乳酸原料Aと共重合ポリエステル原料Aの重量比率を60:40(ポリ乳酸100重量部に対し共重合ポリエステルが66.7重量部)に変更した以外は実施例1と同様の方法でペレット及びシートを得て、ヘイズ、全光線透過率及び破断伸び率を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0045】
<実施例3>
ポリ乳酸原料Aと共重合ポリエステル原料Aの重量比率を40:60(ポリ乳酸100重量部に対し共重合ポリエステルが150重量部)に変更した以外は実施例1と同様の方法でペレット及びシートを得て、ヘイズ、全光線透過率及び破断伸び率を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0046】
<比較例1>
共重合ポリエステル原料Aを使用せず、ポリ乳酸原料Aのみを使用した以外は実施例1と同様の方法でペレット及びシートを得て、ヘイズ、全光線透過率及び破断伸び率を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
表1から、ポリ乳酸にP(LA-co-3HB)を複合化することで、ポリ乳酸のヘイズは実質的に上昇していない一方、破断伸び率は大きく向上していることが明らかである。このことより、P(LA-co-3HB)との複合化は、ポリ乳酸の透明性を実質的に低下させることなく、ポリ乳酸を可塑化できることが分かる。
【0049】
<比較例2>
共重合ポリエステル原料Aの代わりに、比較用共重合ポリエステル原料BであるP(3HB-co-3HH)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法でペレット及びシートを得て、ヘイズ及び全光線透過率を測定したところ、ヘイズは10.64%、全光線透過率は92.62%であった。
【0050】
この比較例では、各実施例及び比較例1と比較してヘイズが大きく上昇しており、P(3HB-co-3HH)との複合化は、ポリ乳酸の透明性を低下させることが分かる。
【0051】
<比較例3>
共重合ポリエステル原料Aの代わりに、比較用共重合ポリエステル原料BであるP(3HB-co-3HH)を使用したこと以外は実施例2と同様の方法でペレット及びシートを得て、ヘイズ、全光線透過率及び破断伸び率を測定したところ、ヘイズは13.35%、全光線透過率は92.26%、破断伸び率は38.6%であった。
【0052】
この比較例では、各実施例及び比較例1と比較してヘイズが大きく上昇しており、P(3HB-co-3HH)との複合化は、ポリ乳酸の透明性を低下させることが分かる。これに加えて、配合比率が同じ実施例2での破断伸び率が、この比較例の破断伸び率よりも大きかったことから、実施例で使用したP(LA-co-3HB)は、比較例で使用したP(3HB-co-3HH)よりもポリ乳酸の可塑化効果に優れていることが分かる。