(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】光通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/66 20130101AFI20231113BHJP
H04B 10/11 20130101ALI20231113BHJP
H04B 10/80 20130101ALI20231113BHJP
【FI】
H04B10/66
H04B10/11
H04B10/80
(21)【出願番号】P 2021554539
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019043897
(87)【国際公開番号】W WO2021090481
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】西村 直喜
(72)【発明者】
【氏名】澤 隆雄
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-016809(JP,A)
【文献】特開平06-164499(JP,A)
【文献】特開2016-201790(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079091(WO,A1)
【文献】特開平08-079184(JP,A)
【文献】特開2008-048334(JP,A)
【文献】特開2018-007069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャンネルに対応するように設けられ、
移動体からの通信光を受光する複数の受光素子と、
前記複数の受光素子のうち、光強度が所定値よりも高い高強度光を受光した受光素子の出力を無効化する制御を行う制御部と、
前記複数の受光素子に対応するように設けられ、前記複数の受光素子に前記通信光を導く複数の光ファイバと、を備え、
前記複数の光ファイバの入光端部の少なくとも一部は、水中の互いに異なる位置に配置されている、光通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の受光素子のうち、高強度外乱光を含む前記高強度光を受光した受光素子の出力を無効化する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の受光素子のうち、高強度通信光を含む前記高強度光を受光した受光素子の出力を無効化する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の光通信装置。
【請求項4】
前記複数の受光素子の各々は、光電変換部と、電子増倍部とを含み、
前記制御部は、前記高強度光を受光した受光素子の前記電子増倍部のゲインを落とすことにより、前記高強度光を受光した受光素子の出力を無効化する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記複数の受光素子に対応するように設けられ、前記複数の受光素子に前記通信光を集光する複数のレンズをさらに備える、請求項1に記載の光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信光により通信を行う光通信装置が知られている。このような光通信装置は、たとえば、特開2018-7069号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2018-7069号公報には、水中を航行する潜水艇に取り付けられた第1光通信機(光通信装置)と、海上の船舶や水中を航行する他の潜水艇に設けられた第2光通信機(光通信装置)とが開示されている。また、上記特開2018-7069号公報には、第1光通信機と第2光通信機との間で、可視光である通信光を用いた光信号が水中を介して伝送されることが開示されている。この第1光通信機および第2光通信機の各々は、1または複数の受光素子を筺体の内部に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2018-7069号公報に記載されるような、従来の光通信装置では、受光素子が、通信光だけでなく、太陽光などの外乱光も受光する場合がある。ここで、従来の光通信装置の複数の受光素子のうちのいずれかの受光素子が高強度の外乱光を受光した場合、高強度の外乱光を受光した受光素子の出力(信号)が飽和するため、高強度の外乱光を受光した受光素子が損傷するおそれがあるという問題点がある。また、高強度の外乱光を受光した受光素子の出力が飽和した場合、高強度の外乱光を受光した受光素子以外の受光素子の光通信にも悪影響が及ぶ場合がある。この場合、高強度の外乱光を受光した受光素子以外の受光素子による光通信を通常通りに行うことができないという問題点もある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、高強度外乱光を受光した受光素子が損傷することを防止することができ、かつ、複数の受光素子のうちのいずれかの受光素子が高強度外乱光を受光した場合にも、高強度外乱光を受光した受光素子以外の受光素子による光通信を通常通りに行うことが可能な光通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における光通信装置は、複数のチャンネルに対応するように設けられ、移動体からの通信光を受光する複数の受光素子と、複数の受光素子のうち、光強度が所定値よりも高い高強度光を受光した受光素子の出力を無効化する制御を行う制御部と、複数の受光素子に対応するように設けられ、複数の受光素子に通信光を導く複数の光ファイバと、を備え、複数の光ファイバの入光端部の少なくとも一部は、水中の互いに異なる位置に配置されている。ここで、「出力を無効化」とは、出力を停止すること、出力を無視することなどを含む広い概念である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記のように、複数の受光素子のうち、光強度が所定値よりも高い高強度光を受光した受光素子の出力を無効化する制御を行う制御部を設ける。これにより、複数の受光素子のうちのいずれかの受光素子が高強度光としての高強度外乱光を受光した場合、高強度外乱光を受光した受光素子の出力を無効化することができる。その結果、高強度外乱光を受光した受光素子の出力(信号)が飽和することに起因して、高強度外乱光を受光した受光素子が損傷することを防止することができる。また、高強度外乱光を受光した受光素子以外の受光素子による光通信に悪影響が及ぶことを防止することができるので、複数の受光素子のうちのいずれかの受光素子が高強度外乱光を受光した場合にも、高強度外乱光を受光した受光素子以外の受光素子による光通信を通常通りに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による水中光通信システムの概略を示した模式図である。
【
図2】一実施形態による水中通信装置の受光部の概略を示した模式図である。
【
図3】一実施形態による水中通信装置の光ファイバの配置例を示した模式図である。
【
図4】一実施形態による水中通信装置の受光素子および制御部を示したブロック図である。
【
図5】一実施形態による水中通信装置の受光素子が高強度光を受光した場合を説明するための模式図である。
【
図6】一実施形態による水中通信装置の無効化処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】一実施形態の変形例による水中通信装置の受光部の概略を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(水中光通信システム)
図1を参照して、一実施形態による光通信装置を備える水中光通信システム100の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、水中光通信システム100は、第1光通信装置1と、第2光通信装置2とを備える。なお、第1光通信装置1は、特許請求の範囲の「光通信装置」の一例である。
【0013】
第1光通信装置1は、海中などの水中に配置されている。具体的には、第1光通信装置1は、水中に固定された固定体80に設けられている。固定体80は、保持部材81を介して水底90に設置されることにより、水中に固定されている。
【0014】
第2光通信装置2は、海中などの水中に配置されている。具体的には、第2光通信装置2は、水中を移動する移動体82に設けられている。移動体82は、たとえば、AUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律型無人潜水機)を含む。
【0015】
本実施形態では、水中光通信システム100は、第1光通信装置1から発光された通信光を第2光通信装置2が受光することにより、第1光通信装置1と第2光通信装置2との間において光通信を行うとともに、第2光通信装置2から発光された通信光を第1光通信装置1が受光することにより、第2光通信装置2と第1光通信装置1との間において光通信を行うことが可能なように構成されている。なお、
図1では、第2光通信装置2が通信光を発光している例を図示している。
【0016】
本実施形態では、移動体82が海中を移動することにより、たとえば、海底に敷設された構造物の検査を行う。第2光通信装置2は、移動体82に設けられた検知部(図示せず)によって取得された検査結果を、通信光によって第1光通信装置1に送信するように構成されている。また、第1光通信装置1は、第2光通信装置2から送信された検査結果を受信するとともに、受信した検査結果を、陸上、または母船などに設けられた通信装置に送信するように構成されている。なお、第1光通信装置1と第2光通信装置2との間において光通信を行う場合には、移動体82を通信可能領域まで移動させ、光通信を行う。
【0017】
図2に示すように、第1光通信装置1は、複数の受光素子11を備える。複数の受光素子11は、水中における通信光を受光するように構成されている。複数の受光素子11は、複数のチャンネルに対応するように設けられている。チャンネルの数は、特に限られないが、
図2に示す例では、第1光通信装置1は、25個のチャンネルを備える。このため、
図2に示す例では、第1光通信装置1は、25個の受光素子11を備える。
【0018】
複数の受光素子11は、たとえば、光電子増倍管により構成されている。この場合、複数の受光素子11の各々は、光電変換部11a(
図4参照)と、電子増倍部11b(
図4参照)とを含む。光電変換部11aは、受光面を有し、通信光などの受光面で受光した光を電子に変換するように構成されている。電子増倍部11bは、高電圧を印加することにより、光電変換部11aにより変換された電子を増倍するように構成されている。また、複数の受光素子11は、アレイ状に配置されている。なお、アレイ状とは、列状、マトリクス状などを含む概念である。
図2に示す例では、複数の受光素子11は、5×5のマトリクス状に配置されている。
【0019】
また、第1光通信装置1は、複数の光ファイバ12を備える。複数の光ファイバ12は、複数の受光素子11に通信光などの光を導くように構成されている。複数の光ファイバ12は、複数の受光素子11に対応するように設けられている。すなわち、
図2に示す例では、複数の光ファイバ12は、25個設けられている。また、複数の光ファイバ12の各々は、通信光などの光の入光端部12a(集光端部)と、通信光などの光の出光端部12bとを含む。
【0020】
複数の入光端部12aの各々は、複数の受光素子11の各々の近傍に配置されている。複数の入光端部12aの各々は、複数の受光素子11の受光面に対向するように配置されている。また、複数の出光端部12bの各々は、所定の位置および向きに配置可能に構成されている。複数の出光端部12bの各々は、互いに異なる位置および向きに配置可能に構成されている。すなわち、複数の出光端部12bの少なくとも一部は、互いに異なる位置および向きに配置されることが可能である。
【0021】
また、第1光通信装置1は、保護容器である密閉耐圧容器13(二点鎖線により示す)を備える。密閉耐圧容器13は、水中に配置され、複数の受光素子11および後述する制御部15を収容するように構成されている。密閉耐圧容器13は、複数の受光素子11および制御部15を外部環境から隔離するように構成されている。密閉耐圧容器13は、たとえば、円筒形状を有する。
【0022】
複数の光ファイバ12は、出光端部12bが密閉耐圧容器13の内部に設けられるとともに、入光端部12aが密閉耐圧容器13の外部(すなわち、水中)に設けられるように構成されている。複数の入光端部12aの各々は、密閉耐圧容器13の外部(水中)において、所定の位置および向きに配置可能に構成されている。複数の光ファイバ12は、密閉耐圧容器13の挿通部13aを介して、密閉耐圧容器13の内部から外部に跨るように配置されている。挿通部13aは、密閉耐圧容器13の内部空間13bを密閉状態(水密状態)に維持しつつ、複数の光ファイバ12を挿通可能に構成されている。
【0023】
また、第1光通信装置1は、出光端部保持部14を備える。出光端部保持部14は、複数の受光素子11の各々の近傍において、複数の出光端部12bを保持するように構成されている。出光端部保持部14は、複数の受光素子11の各々および複数の出光端部12bの各々に対応するように、複数設けられている。すなわち、
図2に示す例では、複数の出光端部保持部14は、25個設けられている。複数の出光端部保持部14の各々は、複数の受光素子11の受光面に一体的に設けられている。複数の出光端部保持部14の各々は、挿通孔14aを有する。挿通孔14aは、出光端部12bが挿入されるように構成されている。複数の出光端部12bの各々は、挿通孔14aに挿通された状態で、出光端部保持部14により保持されるように構成されている。
【0024】
図3に示すように、複数の入光端部12aの少なくとも一部は、水中の互いに異なる位置に配置されている。入光端部12aの配置位置の数は、特に限られないが、図
3に示す例では、複数の入光端部12aが、互いに異なる5つの位置に配置されている例を図示している。この場合、移動体82は、互いに異なる5つの位置(通信可能領域)において光通信を行うことができる。
【0025】
また、複数の入光端部12aの少なくとも一部は、水中構造物83に取り付けられている。水中構造物83は、特に限られないが、たとえば、柱、棒、壁などであり得る。水中構造物83としては、第1光通信装置1用に構造物を設けてもよいし、既設の構造物を利用してもよい。入光端部12aは、固定具を介して、水中構造物83に取り付けられている。
【0026】
図2および
図4に示すように、第1光通信装置1は、制御部15を備える。制御部15は、CPUなどのプロセッサと、メモリとを含む制御回路である。制御部15は、複数の受光素子11の各々の出力を個別に取得可能に構成されている。また、制御部15は、複数の受光素子11の各々のゲインを個別に制御可能に構成されている。これにより、制御部15は、複数の受光素子11の各々の感度を個別に制御可能に構成されている。
【0027】
ここで、本実施形態では、
図5に示すように、制御部15は、複数の受光素子11のうち、光強度が所定値よりも高い高強度光を受光した受光素子11以外の受光素子11の出力を無効化することなく、高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化する制御を行うように構成されている。なお、
図5では、理解の容易化のために、高強度光を受光した受光素子11をハッチングにより図示している。
【0028】
たとえば、高強度外乱光が照射された場合、制御部15は、複数の受光素子11のうち、高強度外乱光を含む高強度光を受光した受光素子11以外の受光素子11の出力を無効化することなく、高強度外乱光を含む高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化する制御を行うように構成されている。受光素子11に受光され得る外乱光としては、たとえば、太陽光、移動体82のサーチ光などが挙げられる。
【0029】
また、たとえば、高強度通信光が照射された場合、制御部15は、複数の受光素子11のうち、高強度通信光を含む高強度光を受光した受光素子11以外の受光素子11の出力を無効化することなく、高強度通信光を含む高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化する制御を行うように構成されている。高強度通信光が照射される場合としては、たとえば、入光端部12aの近傍において通信光が照射される場合などが挙げられる。
【0030】
具体的には、制御部15は、受光素子11の出力に基づいて、受光素子11が、高強度外乱光、高強度通信光などを含む高強度光を受光したことを検出する制御を行うように構成されている。より具体的には、制御部15は、受光素子11の出力に基づいて、受光素子11の電子増倍部11bのゲイン(増幅率)を調整するとともに、調整した電子増倍部11bのゲインが限界値を超えた場合、受光素子11が高強度光を受光したことを検出するように構成されている。また、制御部15は、受光素子11が高強度光を受光したことを検出した場合、高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化する制御を行うように構成されている。
【0031】
受光素子11の出力を無効化する制御は、特に限られないが、たとえば、高強度光を受光した受光素子11の電子増倍部11bのゲインを十分に落とすことにより、受光素子11の出力を停止して、受光素子11の出力を無効化することができる。また、たとえば、高強度光を受光した受光素子11の出力を無視することにより、受光素子11の出力を無効化することができる。
【0032】
(無効化処理)
次に、
図6を参照して、本実施形態の第1光通信装置1による無効化処理の一例をフローチャートに基づいて説明する。なお、無効化処理は、複数の受光素子11の各々に対して個別に行われる処理である。すなわち、
図6では、1つの受光素子11に対して行われる無効化処理を示している。
【0033】
図6に示すように、まず、ステップ111において、受光素子11の出力の取得が行われる。すなわち、ステップ111では、外乱光、通信光などを含む受光素子11で受光した光の強度の取得が行われる。そして、ステップ112において、受光素子11の出力に基づいて受光素子11の電子増倍部11bのゲインの調整が行われる。そして、ステップ113において、調整後の電子増倍部11bのゲインが限界値を超えたか否かの判断が行われる。
【0034】
そして、ステップ113において電子増倍部11bのゲインが限界値を超えたと判断された場合、ステップ114に進む。そして、ステップ114において、電子増倍部11bのゲインが限界値を超えた受光素子11の出力が無効化される。そして、無効化処理が終了される。また、ステップ113において電子増倍部11bのゲインが限界値を超えていないと判断された場合、受光素子11の出力が無効化されることなく、無効化処理が終了される。ステップ113において電子増倍部11bのゲインが限界値を超えていないと判断された場合、受光素子11の出力が光通信に有効に用いられる。
【0035】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0036】
本実施形態では、上記のように、複数の受光素子11のうち、光強度が所定値よりも高い高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化する制御を行う制御部15を設ける。これにより、複数の受光素子11のうちのいずれかの受光素子11が高強度光としての高強度外乱光を受光した場合、高強度外乱光を受光した受光素子11の出力を無効化することができる。その結果、高強度外乱光を受光した受光素子11の出力(信号)が飽和することに起因して、高強度外乱光を受光した受光素子11が損傷することを防止することができる。また、高強度外乱光を受光した受光素子11以外の受光素子11による光通信に悪影響が及ぶことを防止することができるので、複数の受光素子11のうちのいずれかの受光素子11が高強度外乱光を受光した場合にも、高強度外乱光を受光した受光素子11以外の受光素子11による光通信を通常通りに行うことができる。
【0037】
また、本実施形態では、上記のように、制御部15を、複数の受光素子11のうち、高強度外乱光を含む高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化する制御を行うように構成する。これにより、第1光通信装置1が高強度外乱光の影響を受けやすい環境に配置された場合にも、高強度外乱光の影響を低減しつつ、光通信を行うことができる。
【0038】
また、本実施形態では、上記のように、制御部15を、複数の受光素子11のうち、高強度通信光を含む高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化する制御を行うように構成する。これにより、受光素子11が高強度通信光を含む高強度光を受光した場合、高強度通信光を含む高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化することができるので、高強度通信光を含む高強度光を受光した受光素子11に高負荷が掛かることを抑制することができる。その結果、高強度通信光の受光に起因した受光素子11の劣化を抑制することができるので、受光素子11の寿命を長くすることができる。また、受光素子11が高強度通信光を含む高強度光を受光した場合にも、高強度通信光を含む高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化することができるので、高強度通信光を含む高強度光を受光した受光素子11以外の受光素子11については、光通信を通常通りに行うことができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記のように、複数の受光素子11の各々を、光電変換部11aと、電子増倍部11bとを含むように構成する。また、制御部15を、高強度光を受光した受光素子11の電子増倍部11bのゲインを落とすことにより、高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化する制御を行うように構成する。これにより、単に受光素子11の電子増倍部11bのゲインを落とすだけで、高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化することができるので、高強度光を受光した受光素子11の出力を簡単に無効化することができる。
【0040】
また、本実施形態では、上記のように、第1光通信装置1を、複数の受光素子11に対応するように設けられ、複数の受光素子11に通信光を導く複数の光ファイバ12を備えるように構成する。これにより、複数の光ファイバ12により複数の受光素子11に通信光を導くことができるので、受光素子11に直接的に通信光を照射する場合に比べて、受光素子11により、より確実に通信光を受光することができる。また、複数の光ファイバ12により複数の受光素子11に通信光を導く場合、特定の光ファイバ12が高強度光の入りやすい環境に配置される場合がある。この場合、特定の受光素子11に高強度光が入りやすくなるため、複数の光ファイバ12により複数の受光素子11に通信光を導く場合に、高強度光を受光した受光素子11の出力を無効化することは、非常に効果的である。
【0041】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0042】
たとえば、上記実施形態では、光通信装置が、海中において用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、光通信装置が、海中以外の水中(湖、ダムなど)において用いられてもよい。また、光通信装置が、水中以外の環境(陸上など)において用いられてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、光通信装置が水中に固定された固定体に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、光通信装置が水中を移動する移動体に設けられていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、受光素子が、光電子増倍管により構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、受光素子が、アバランシェフォトダイオードにより構成されていてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、光通信装置が、光ファイバを備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光通信装置が、光ファイバを備えなくてもよい。たとえば、光通信装置が、レンズを備えていてもよい。
図7に示す変形例の第1光通信装置101は、上記実施形態の複数の光ファイバ12に代えて、複数のレンズ116を備える。複数のレンズ116は、複数の受光素子11に対応するように設けられ、複数の受光素子11に通信光を集光するように構成されている。これにより、複数のレンズ116により複数の受光素子11に通信光を集光することができるので、受光素子11によってより確実に通信光を受光することができる。複数のレンズ116の各々は、複数の受光素子11の各々の近傍に配置されている。また、
図7に示す変形例の密閉耐圧容器113は、上記実施形態の挿通部13aに代えて、窓部113aを含む。窓部113aは、密閉耐圧容器113の内部に通信光などの光を入光させるように構成されている。
【0046】
また、上記実施形態では、複数の入光端部の少なくとも一部が、水中の互いに異なる位置に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の入光端部の全部が、水中の1つの位置に配置されてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、複数の入光端部の少なくとも一部が、固定体以外の水中構造物に取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の入光端部の少なくとも一部が、固定体、密閉耐圧容器などに取り付けられてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、水中に固定された固定体と水中を移動する移動体との間で、光通信が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、水中を移動する移動体と水中を移動する移動体との間で、光通信が行われてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、複数の受光素子が、単一の密閉耐圧容器に収容される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の受光素子が、複数の密閉耐圧容器に分散して収容されてもよい。ただし、光通信装置の構造を簡素化する観点からは、複数の受光素子が、単一の密閉耐圧容器に収容されることが好ましい。
【0050】
また、上記実施形態では、複数の受光素子が、アレイ状に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の受光素子が、分散して配置されてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、移動体がAUVである例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、移動体は、有人潜水艇(HOV: Human Occupied Vehicle)であってもよい。また、移動体は、ケーブルを介して人が操縦する遠隔操縦ロボット(ROV: Remotely Operated Vehicle)であってもよい。また、移動体は、その他の船舶であってもよい。
【0052】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0053】
(項目1)
複数のチャンネルに対応するように設けられ、通信光を受光する複数の受光素子と、
前記複数の受光素子のうち、光強度が所定値よりも高い高強度光を受光した受光素子の出力を無効化する制御を行う制御部と、を備える、光通信装置。
【0054】
(項目2)
前記制御部は、前記複数の受光素子のうち、高強度外乱光を含む前記高強度光を受光した受光素子の出力を無効化する制御を行うように構成されている、項目1に記載の光通信装置。
【0055】
(項目3)
前記制御部は、前記複数の受光素子のうち、高強度通信光を含む前記高強度光を受光した受光素子の出力を無効化する制御を行うように構成されている、項目2に記載の光通信装置。
【0056】
(項目4)
前記複数の受光素子の各々は、光電変換部と、電子増倍部とを含み、
前記制御部は、前記高強度光を受光した受光素子の前記電子増倍部のゲインを落とすことにより、前記高強度光を受光した受光素子の出力を無効化する制御を行うように構成されている、項目1~3のいずれか1項に記載の光通信装置。
【0057】
(項目5)
前記複数の受光素子に対応するように設けられ、前記複数の受光素子に前記通信光を導く複数の光ファイバをさらに備える、項目1~4のいずれか1項に記載の光通信装置。
【0058】
(項目6)
前記複数の受光素子に対応するように設けられ、前記複数の受光素子に前記通信光を集光する複数のレンズをさらに備える、項目1~4のいずれか1項に記載の光通信装置。
【符号の説明】
【0059】
1、101 第1光通信装置(光通信装置)
11 受光素子
11a 光電変換部
11b 電子増倍部
12 光ファイバ
15 制御部
116 レンズ