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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】劣化状態推定システム
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20231113BHJP
   A47J 43/20 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B26D3/28 610S
B26D3/28 610F
A47J43/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019224239
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021091058
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000151139
【氏名又は名称】ワタナベフーマック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山口 保
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 郁也
(72)【発明者】
【氏名】高畑 政弘
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082016(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0212506(US,A1)
【文献】特開昭61-050758(JP,A)
【文献】特開2018-138327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0035221(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
A47J 43/20
H02P 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉及び食肉加工品をスライスする刃物と前記刃物が取り付けられた回転体とを有するスライス装置における前記刃物の劣化状態を推定する劣化状態推定システムであって、
前記刃物は、第1軸を回転中心として回転し、
前記刃物の前記第1軸は、前記回転体の回転中心である第2軸に対して偏心した状態で取り付けられ、
前記第1軸を回転させる第1モータの駆動電流を示す第1電流情報を取得する第1電流情報取得部、及び前記第1モータに出力させるトルク指令値を示す第1トルク情報を取得する第1トルク情報取得部を有し、前記スライス装置に設けられるデータ収集ユニットと、
ネットワークを介して前記データ収集ユニットから伝達される前記第1電流情報と前記第1トルク情報とに基づいて、前記第1モータに関する駆動電流と前記第1モータに関するトルク指令値との相関の有無を判定する判定部、及び前記判定部の判定結果に基づいて、前記刃物の劣化状態を推定する推定部を有し、前記ネットワークを介して前記データ収集ユニットと接続されるデータ分析ユニットと、
を備え
前記データ収集ユニットは、前記第2軸を回転させる第2モータの駆動電流を示す第2電流情報を取得する第2電流情報取得部、及び前記第2モータに出力させるトルク指令値を示す第2トルク情報を取得する第2トルク情報取得部を更に備え、
前記推定部は、前記判定結果に前記ネットワークを介して前記データ収集ユニットから伝達される前記第2電流情報と前記第2トルク情報とを加えて推定する劣化状態推定システム。
【請求項2】
前記刃物の劣化状態の推定は、前記判定結果と前記刃物の所定の劣化状態を示す状態情報とに基づいて前記刃物の劣化状態を推定する学習を行ったニューラルネットワークに前記判定結果を入力して行われる請求項に記載の劣化状態推定システム。
【請求項3】
前記推定部による前記刃物の劣化状態が予め設定された劣化状態である場合に報知する報知部を更に備える請求項1又は2に記載の劣化状態推定システム。
【請求項4】
前記データ分析ユニットは、前記推定部により推定された前記刃物の劣化状態を示す状態情報に基づいて、前記第1モータに出力させるトルク指令値を補正する第1トルク補正値、及び前記第2モータに出力させるトルク指令値を補正する第2トルク補正値を算定するトルク補正値算定部を更に備え、
前記スライス装置に設けられる第1モータ制御部が、前記第1モータに出力させるトルク指令値及び前記トルク補正値算定部から前記ネットワークを介して伝達された前記第1トルク補正値に基づいて前記第1モータを駆動し、
前記スライス装置に設けられる第2モータ制御部が、前記第2モータに出力させるトルク指令値及び前記トルク補正値算定部から前記ネットワークを介して伝達された前記第2トルク補正値に基づいて前記第2モータを駆動する請求項に記載の劣化状態推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉及び食肉加工品をスライスする刃物と当該刃物が取り付けられた回転体とを有するスライス装置における刃物の劣化状態を推定する劣化状態推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食肉の塊(肉塊)や、ハムやベーコン等の食肉加工品の食肉原木をスライスするスライス装置が利用されてきた。このようなスライス装置の一つとして、例えば所定の送り出し量で送り出される肉塊や食肉原木を自転しながら回動する丸刃で切り落とすように構成されたものがある(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1には、冷凍された細長いブロック状の食品をスライスに切断する装置が開示されている。この装置は、所定の中心軸線を中心に回転可能な丸鋸刃を有する。この丸鋸刃は、固定の回転軸線を中心に回転するアームに軸支されている。これにより、丸鋸刃はアームの回転軸線周りに公転しながら、丸鋸刃の中心軸線に周りに自転し、上記食品からスライスが切り落とされる。
【0004】
特許文献2には、マイナス20度程度の冷凍肉塊(肉塊)をスライスする食品スライサが開示されている。この食品スライサは、切断位置と非切断位置とを円周運動により公転し、かつ、回転中心で自転回転する回転丸刃により肉塊を切断する。回転丸刃の刃先は、回転丸刃の回転中心からの距離が漸次変化する波状に形成され、これにより、切断時の切屑を低減すると共に、切断力を増大させている。また、切断後の切断肉を当て板に当て付けて切断肉のカールを矯正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-202565号公報
【文献】特開2017-170561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の技術は、冷凍された肉塊を安全かつ衛生的にスライスすることを目的としている。しかしながら、スライス装置にあっては、冷凍された肉塊だけでなく、当該肉塊よりもやわらかい肉塊(例えば生肉)や骨が含まれる肉塊、ハムやベーコン等の食肉原木をスライスすることもある。また、スライスを継続して行うと、丸鋸刃や回転丸刃の劣化等も想定される。このため、硬さが異なる様々なものをスライスする実情や、丸鋸刃や回転丸刃の劣化等を鑑みた場合、特許文献1及び2に記載の技術では、常に適切にスライスすることができるとは言い難く、改良の余地がある。
【0007】
そこで、スライス装置が食肉及び食肉加工品を適切にスライスすることができる技術が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、食肉及び食肉加工品をスライスする刃物と前記刃物が取り付けられた回転体とを有するスライス装置における前記刃物の劣化状態を推定する劣化状態推定システムであって、当該劣化状態推定システムの特徴構成は、前記刃物の前記第1軸は、前記回転体の回転中心である第2軸に対して偏心した状態で取り付けられ、前記第1軸を回転させる第1モータの駆動電流を示す第1電流情報を取得する第1電流情報取得部、及び前記第1モータに出力させるトルク指令値を示す第1トルク情報を取得する第1トルク情報取得部を有し、前記スライス装置に設けられるデータ収集ユニットと、ネットワークを介して前記データ収集ユニットから伝達される前記第1電流情報と前記第1トルク情報とに基づいて、前記第1モータに関する駆動電流と前記第1モータに関するトルク指令値との相関の有無を判定する判定部、及び前記判定部の判定結果に基づいて、前記刃物の劣化状態を推定する推定部を有し、前記ネットワークを介して前記データ収集ユニットと接続されるデータ分析ユニットと、を備え、前記データ収集ユニットは、前記第2軸を回転させる第2モータの駆動電流を示す第2電流情報を取得する第2電流情報取得部、及び前記第2モータに出力させるトルク指令値を示す第2トルク情報を取得する第2トルク情報取得部を更に備え、前記推定部は、前記判定結果に前記ネットワークを介して前記データ収集ユニットから伝達される前記第2電流情報と前記第2トルク情報とを加えて推定する点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、データ分析ユニットがネットワークを介してデータ収集ユニットから第1モータに関するトルク指令値と第1モータの駆動電流とを取得し、第1モータに関するトルク指令値と第1モータの駆動電流との相関に基づいて、刃物の劣化状態を推定することができる。したがって、本劣化状態推定システムによりスライス装置の刃物の劣化状態を推定し、例えば劣化状態が、刃物が劣化していることを示すものである場合には、刃物を交換したり、刃物の回転速度を変更したりすることで、食肉及び食肉加工品を適切にスライスすることが可能となる。
【0010】
【0011】
また、このような構成とすれば、データ分析ユニットがネットワークを介してデータ収集ユニットから第2モータに関するトルク指令値と第2モータの駆動電流とを取得し、例えば第1モータに関するトルク指令値に起因せずに、第1モータの駆動電流が変化している場合に、第2モータに関するトルク指令値と第2モータの駆動電流とにより、劣化状態の推定結果が刃物の劣化状態に起因するものであるか、あるいは食肉及び食肉加工品の物性の変化に起因するものであるかを見分けることが可能となる。
【0012】
また、前記刃物の劣化状態の推定は、前記判定結果と前記刃物の所定の劣化状態を示す状態情報とに基づいて前記刃物の劣化状態を推定する学習を行ったニューラルネットワークに前記判定結果を入力して行われると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、より適切に刃物の劣化状態を判定することが可能となる。したがって、スライス装置に対して、食肉及び食肉加工品を適切にスライスする環境を提供できる。
【0014】
また、前記推定部による前記刃物の劣化状態が予め設定された劣化状態である場合に報知する報知部を更に備えると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、刃物の劣化が進んでいることをユーザ等に周知することができる。したがって、例えば刃物を交換したり、メンテナンスしたりすることで、スライス装置に対して、食肉及び食肉加工品を適切にスライスする環境を提供できる。
【0016】
また、前記データ分析ユニットは、前記推定部により推定された前記刃物の劣化状態を示す状態情報に基づいて、前記第1モータに出力させるトルク指令値を補正する第1トルク補正値、及び前記第2モータに出力させるトルク指令値を補正する第2トルク補正値を算定するトルク補正値算定部を更に備え、前記スライス装置に設けられる第1モータ制御部が、前記第1モータに出力させるトルク指令値及び前記トルク補正値算定部から前記ネットワークを介して伝達された前記第1トルク補正値に基づいて前記第1モータを駆動し、前記スライス装置に設けられる第2モータ制御部が、前記第2モータに出力させるトルク指令値及び前記トルク補正値算定部から前記ネットワークを介して伝達された前記第2トルク補正値に基づいて前記第2モータを駆動すると好適である。
【0017】
このような構成とすれば、データ分析ユニットの推定部52により推定された刃物の劣化状態を示す状態情報に基づき、第1軸を回転させる第1モータと第2軸を回転させる第2モータとの夫々から出力されるトルクを、刃物の劣化状態に応じた値に設定することができる。したがって、スライス装置に対して、刃物の劣化状態に応じた食肉及び食肉加工品のスライス環境を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】スライス装置の構成を示す図である。
図2】スライスユニットを示す図である。
図3】劣化状態推定システムの構成を示すブロック図である。
図4】加速度とトルク指令値及び駆動電流との関係を示す図である。
図5】トルク指令値と駆動電流との関係及び振動解析の結果を示す図である。
図6】加速度とトルク指令値及び駆動電流との関係を示す図である。
図7】トルク指令値と駆動電流との関係及び振動解析の結果を示す図である。
図8】正規確率プロットを示す図である。
図9】その他の実施形態に係る劣化状態推定システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る劣化状態推定システムは、スライス装置の刃物の劣化状態を推定する機能を備えている。以下、本実施形態の劣化状態推定システム1について説明する。
【0020】
図1は、スライス装置2の斜視図である。図2は、スライス装置2が有するスライスユニット4の正面図である。図3は、スライス装置2の主要部及び劣化状態推定システム1の構成を示すブロック図である。
【0021】
スライス装置2は、食肉及び食肉加工品をスライス可能に構成される。本実施形態における食肉とは精肉の塊であって、食肉加工品とはハムやベーコン等の食肉原木である。以下では、食肉及び食肉加工品の総称をスライス対象物として説明する。スライス装置2は、一方側にスライス対象物を載置する載置台3が設けられ、載置台3に載置されたスライス対象物は、所定の送り量でスライス位置に搬送される。
【0022】
スライス位置には、スライス対象物をスライスするスライスユニット4が設けられる。スライスユニット4によりスライスされた処理物は、スライス装置2の他方側に設けられたコンベヤ5を介して搬送される。
【0023】
図2及び図3に示されるように、スライスユニット4は、刃物10と当該刃物が取り付けられた回転体20とを有する。刃物10は第1軸11を回転中心として回転する。本実施形態では第1軸11は、第1モータ12により時計回りに回転するように構成される。回転体20は第2軸21を回転中心として回転する。本実施形態では、第2軸21は、第2モータ22により、スライスユニット4をスライス装置2の載置台3側から見て反時計回りに回転するように構成される。したがって、本実施形態では第1軸11と第2軸21とは互いに反対方向に回転するように構成される。
【0024】
ここで、刃物10及び回転体20の回転速度は、制御ユニット6の操作パネル7をユーザが操作して設定される。制御ユニット6は、第1モータ12の駆動を制御する第1モータ制御部13及び第2モータ22の駆動を制御する第2モータ制御部23の夫々に対して、第1モータ12及び第2モータ22の夫々に出力させるトルクの指令値(トルク指令値)を出力する。第1モータ制御部13は制御ユニット6から伝達される第1モータ12に対するトルク指令値に基づき、第1インバータ14を制御して(例えば、PWM制御)、第1モータ12を駆動する。これにより、第1軸11が回転し、刃物10が回転する。また、第2モータ制御部23は制御ユニット6から伝達される第2モータ22に対するトルク指令値に基づき、第2インバータ24を制御して(例えば、PWM制御)、第2モータ22を駆動する。これにより、第2軸21が回転し、回転体20が回転する。
【0025】
刃物10の第1軸11は、第2軸21に対して偏心した状態で取り付けられる。すなわち、第1軸11は、スライス装置2の載置台3側から見て、回転体20と重複する位置であって、第2軸21の外縁部よりも径方向内側の位置に設定される。ここで、刃物10は、円板状であって、外周面にスライス対象物をスライスする刃が形成されている。これにより、第1軸11及び第2軸21の双方が回転した場合には、刃物10が第1軸11を回転中心として自転しながら、第2軸21の周りを公転することで、上記送り量に基づいてスライス対象物をスライスすることが可能となる。
【0026】
次に、劣化状態推定システム1について説明する。図3に示されるように、本実施形態の劣化状態推定システム1は、データ収集ユニット8とデータ分析ユニット9とを備えている。本実施形態では、データ収集ユニット8はスライス装置2に設けられ、データ分析ユニット9は管理端末100に設けられる。データ収集ユニット8とデータ分析ユニット9とは互いにネットワークを介して接続される。このネットワークは、例えばスライス装置2が載置される会社内に設けられた社内LAN(Local Area Network)でも良いし、スライス装置2が載置される会社とは異なる他の会社等と接続可能なWAN(Wide Area Network)でも良い。もちろん、その他のネットワークを介して接続することも可能である。
【0027】
本実施形態におけるデータ収集ユニット8は、第1電流情報取得部31、第1トルク情報取得部32、第2電流情報取得部41、第2トルク情報取得部42、通信部43を有し、データ分析ユニット9は、判定部51、推定部52、報知部53、データ記憶部54、通信部55の各機能部を備えて構成される。これらの各機能部は、刃物10の劣化状態の推定に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0028】
第1電流情報取得部31は、第1モータ12の駆動電流を示す第1電流情報を取得する。第1モータ12の駆動電流とは、第1モータ12が回転力を出力するために、第1モータ12に通電される電流である。本実施形態では、上述したように第1モータ12の駆動電流は第1インバータ14により制御される。そこで、第1電流情報取得部31は、第1インバータ14を流れる電流を検出し、第1モータ12の駆動電流とする。このような第1モータ12の駆動電流を示す情報が、第1電流情報に相当する。
【0029】
第1トルク情報取得部32は、第1モータ12に出力させるトルク指令値を示す第1トルク情報を取得する。第1モータ12に出力させるトルク指令値とは、第1モータ12から出力されるトルク(出力トルク)の指示値である。本実施形態では、このトルク指令値に基づき第1モータ制御部13が第1インバータ14を制御する。トルク指令値は、制御ユニット6から第1モータ制御部13に伝達される。そこで、第1トルク情報取得部32は、第1モータ制御部13から第1モータ12に対するトルク指令値を取得する。このような第1モータ12に対するトルク指令値を示す情報が、第1トルク情報に相当する。
【0030】
第2電流情報取得部41は、第2モータ22の駆動電流を示す第2電流情報を取得する。第2モータ22の駆動電流とは、第2モータ22から回転力を出力するために、第2モータ22に通電される電流である。本実施形態では、上述したように第2モータ22の駆動電流は第2インバータ24により制御される。そこで、第2電流情報取得部41は、第2インバータ24を流れる電流を検出し、第2モータ22の駆動電流とする。このような第2モータ22の駆動電流を示す情報が、第2電流情報に相当する。
【0031】
第2トルク情報取得部42は、第2モータ22に出力させるトルク指令値を示す第2トルク情報を取得する。第2モータ22に出力させるトルク指令値とは、第2モータ22から出力されるトルク(出力トルク)の指示値である。本実施形態では、このトルク指令値に基づき第2モータ制御部23が第2インバータ24を制御する。トルク指令値は、制御ユニット6から第2モータ制御部23に伝達される。そこで、第2トルク情報取得部42は、第2モータ制御部23から第2モータ22に対するトルク指令値を取得する。このような第2モータ22に対するトルク指令値を示す情報が、第2トルク情報に相当する。
【0032】
第1電流情報、第1トルク情報、第2電流情報、及び第2トルク情報はデータ収集ユニット8の通信部43から、ネットワークを介して、データ分析ユニット9の通信部55に伝達され、データ記憶部54に記憶される。
【0033】
判定部51は、データ記憶部54に記憶されている第1電流情報と第1トルク情報とに基づいて、第1モータ12に関する駆動電流と第1モータ12に関するトルク指令値との相関の有無を判定する。第1電流情報はネットワークを介してデータ収集ユニット8の第1電流情報取得部31から伝達される。第1トルク情報はネットワークを介してデータ収集ユニット8の第1トルク情報取得部32から伝達される。第1モータ12に関する駆動電流とは、第1電流情報により示される第1モータ12の駆動電流である。第1モータ12に関するトルク指令値とは、第1トルク情報により示される第1モータ12に出力させるトルク指令値である。相関とは密接な関係である。したがって、判定部51は、第1電流情報取得部31から伝達される第1電流情報と第1トルク情報取得部32から伝達される第1トルク情報とに基づいて、第1電流情報により示される第1モータ12の駆動電流と第1トルク情報により示される第1モータ12に出力させるトルク指令値とに互いに密接な関係があるか否かを判定する。
【0034】
ここで、スライス対象物をスライスする場合、予めトルク指令値に対して駆動電流がどの程度の値になるか予測できる。また、このような駆動電流は、トルク指令値が同じ値であっても、例えばスライス対象物の種別やスライス対象の物性(スライス対象物の材質や硬さ等)に応じて異なることもある。そこで、判定部51は、第1モータ12の駆動電流が、スライス対象物のトルク指令値により想定される値であるか否かに基づき、第1電流情報により示される第1モータ12の駆動電流と第1トルク情報により示される第1モータ12に出力させるトルク指令値とに互いに密接な関係があるか否かを判定することが可能である。
【0035】
具体的には、第1モータ12の駆動電流が、スライス対象物のトルク指令値により想定される範囲内の値である場合に、第1電流情報により示される第1モータ12の駆動電流と第1トルク情報により示される第1モータ12に出力させるトルク指令値とに互いに密接な関係があると判定し、第1モータ12の駆動電流が、スライス対象物のトルク指令値により想定される範囲内の値でない場合に、第1電流情報により示される第1モータ12の駆動電流と第1トルク情報により示される第1モータ12に出力させるトルク指令値とに互いに密接な関係がないと判定することが可能である。
【0036】
また、例えば第1モータ12に関するトルク指令値の増大に応じて第1モータ12に関する駆動電流が増大した場合や、第1モータ12に関するトルク指令値の減少に応じて第1モータ12に関する駆動電流が減少した場合に、第1モータ12に関する駆動電流と第1モータ12に関するトルク指令値とに相関があると判定することも可能である。逆に、例えば第1モータ12に関するトルク指令値が変化(増大又は減少)しても、第1モータ12に関する駆動電流が変化(増大又は減少)しない場合や、第1モータ12に関するトルク指令値が変化(増大又は減少)しなくても、第1モータ12に関する駆動電流が変化(増大又は減少)した場合に、第1モータ12に関する駆動電流と第1モータ12に関するトルク指令値とに相関がないと判定することも可能である。
【0037】
更には、判定部51は、第1モータ12に関する駆動電流、及び第1モータ12に関するトルク指令値に基づき刃物10の回転軸である第1軸11の加速度について回帰分析(重回帰分析)を行い、第1軸11の加速度について、第1モータ12に関する駆動電流と第1モータ12に関するトルク指令値との相関の有無を判定するように構成することも可能である。更には、判定部51は、第1モータ12に関する駆動電流、第1モータ12に関するトルク指令値、第2モータ22に関する駆動電流、第2モータ22に関するトルク指令値に基づき、第1軸11の加速度について回帰分析(重回帰分析)を行い、第1軸11の加速度について、第1モータ12に関する駆動電流と第1モータ12に関するトルク指令値との相関の有無を判定するように構成することも可能である。判定部51による判定結果はデータ記憶部54に記憶され、後述する推定部52が利用する。もちろん、判定部51から直接、判定結果を推定部52に伝達するように構成することも可能である。
【0038】
推定部52は、判定部51の判定結果に基づいて、刃物10の劣化状態を推定する。判定部51の判定結果とは、上述した第1モータ12に関する駆動電流と第1モータ12に関するトルク指令値との相関の有無の判定結果であって、判定部51から推定部52に伝達される、あるいは、データ記憶部54から取得する。例えば、推定部52は、第1モータ12に関するトルク指示値に応じた第1モータ12に関する駆動電流でない場合には、刃物10が劣化していると推定する。
【0039】
また、上述したように判定部51が回帰分析に基づき相関の有無を判定する場合には、当該判定結果に基づき推定部52が第1モータ12に関する駆動電流と第1モータ12に関するトルク指令値との相関がないとする判定結果が伝達されたときに刃物10が劣化していると推定することが可能である。
【0040】
更には、判定部51は、第1モータ12に関する駆動電流、第1モータ12に関するトルク指令値、第2モータ22に関する駆動電流、第2モータ22に関するトルク指令値に基づき、第1軸11の加速度について回帰分析(重回帰分析)を行い、相関の有無を判定する場合でも、第1モータ12に関する駆動電流と第1モータ12に関するトルク指令値との相関がないとする判定結果が伝達されたときに刃物10が劣化していると推定することが可能である。
【0041】
具体的には、例えば第1モータ12に関するトルク指令値が一定値であるにも関わらず、第1モータ12の駆動電流が増大している場合に、第2モータ22に関するトルク指令値が一定値であるにも関わらず、第2モータ22の駆動電流が増大していると、刃物10の劣化ではなく、スライス対象物に何らかの変化があった(「柔らかい部位から硬い部位への刃物10の進入」や、「骨が含まれない部位から骨が含まれる部位への刃物10の進入」等)と想定される。このため、判定部51により、第1モータ12に関するトルク指令値と第1モータ12の駆動電流とが相関がないと判定された場合であっても、推定部52による刃物10が劣化しているとする誤推定を防止できる。
【0042】
同様に、第1モータ12に関するトルク指令値が一定値であるにも関わらず、第1モータ12の駆動電流が減少している場合に、第2モータ22に関するトルク指令値が一定値であるにも関わらず、第2モータ22の駆動電流が減少していると、刃物10の劣化ではなく、スライス対象物に何らかの変化があった(「硬い部位から柔らかい部位への刃物10の進入」や、「骨が含まれる部位から骨が含まれない部位への刃物10の進入」等)と想定される。このため、推定部52は、判定結果にネットワークを介してデータ収集ユニット8から伝達される第2電流情報と第2トルク情報とを加えて推定することで、第1モータ12の駆動電流の変化が、刃物10の劣化状態によるものであるか、スライス対象物の変化によるものであるかを判別することが可能となる。したがって、判定部51により、第1モータ12に関するトルク指令値と第1モータ12の駆動電流とが相関がないと判定された場合であっても、推定部52による刃物10が劣化しているとする誤推定を防止できる。推定部52による推定結果は、データ記憶部54に記憶するように構成しても良い。
【0043】
報知部53は、推定部52による刃物10の劣化状態が予め設定された劣化状態である場合に報知する。報知部53には、推定部52から刃物10の劣化状態の推定結果が伝達される、あるいはデータ記憶部54から取得する。この推定結果において、刃物10の劣化状態が予め設定された劣化状態であることが示される場合、すなわち、刃物10が予め設定された劣化状態である場合には、報知部53は刃物10が劣化していることを報知する。この報知部53による報知は、ネットワークを介して制御ユニット6に設けられる操作パネル7に報知情報(刃物10が劣化していることを明示する報知や警告等)を表示して行っても良いし、音声や光を出力することで報知するように構成することも可能である。また、ユーザやメーカのサービスマン(サービスセンター)が所有する携帯端末に劣化していることを示す情報を明示するように構成することも可能である。もちろん、管理端末100において報知するように構成することも可能である。
【0044】
また、報知部53による報知は、所定の劣化状態であることを示す報知以外に、刃物10の交換を促す報知であっても良いし、刃物10を研ぐことを促す報知であっても良い。
【0045】
以下、2つのスライス装置2の運転中に、取得した各データに基づく刃物10の評価について説明する。理解を容易にするために、2つのスライス装置2を、夫々、第1スライス装置及び第2スライス装置とする。以下のデータは、所定の一日における、第1スライス装置及び第2スライス装置の夫々の運転中に取得されたデータであって、データとして第1電流情報、第1トルク情報、第2電流情報、第2トルク情報と共に、刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度が取得される。なお、以下に示す図は、上記のように所定の一日において一定のサンプリング間隔にて取得されたデータであるので、スライス対象物の変更やスライス条件の変更だけでなく、ユーザの交代やスライス装置2のメンテナンスの実施も含まれる。
【0046】
図4の(A)には第1スライス装置における刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度と第1モータ12に関するトルク指令値との関係が示され、図4の(B)には第1スライス装置における刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度と第1モータ12の駆動電流との関係が示される。図4の(C)には第1スライス装置における刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度と第2モータ22に関するトルク指令値との関係が示され、図4の(D)には第1スライス装置における刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度と第2モータ22の駆動電流との関係が示される。また、図5の(A)には第1スライス装置における第1モータ12に関するトルク指令値と第1モータ12の駆動電流との関係が示され、図5の(B)には第1スライス装置における第2モータ22に関するトルク指令値と第2モータ22の駆動電流との関係が示される。各図には、線形近似した場合の数式と決定係数(R-二乗値)が示される。更に、図5の(C)には第1スライス装置における第2モータ22の駆動電流を用いてFFT解析を行った振動解析の結果が示される。
【0047】
同様に、図6の(A)には第2スライス装置における刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度と第1モータ12に関するトルク指令値との関係が示され、図6の(B)には第2スライス装置における刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度と第1モータ12の駆動電流との関係が示される。図6の(C)には第2スライス装置における刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度と第2モータ22に関するトルク指令値との関係が示され、図6の(D)には第2スライス装置における刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度と第2モータ22の駆動電流との関係が示される。また、図7の(A)には第2スライス装置における第1モータ12に関するトルク指令値と第1モータ12の駆動電流との関係が示され、図7の(B)には第2スライス装置における第2モータ22に関するトルク指令値と第2モータ22の駆動電流との関係が示される。各図には、線形近似した場合の数式と決定係数(R-二乗値)が示される。更に、図7の(C)には第2スライス装置における第2モータ22の駆動電流を用いてFFT解析を行った振動解析の結果が示される。
【0048】
図3図7より、第1スライス装置よりも第2スライス装置の方が、刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度のばらつきが大きく、振幅も大きいことがわかる。このため、第2スライス装置の刃物10の劣化状態が、第1スライス装置の刃物10の劣化状態よりも進んでいることがわかる。劣化状態推定システム1は、このような取得したデータを用いた回帰分析により評価することで、適切に刃物10の劣化状態を推定することが可能となる。
【0049】
なお、スライス装置2の運転中に取得されたデータでは、加速度が常に変動している。これは、所定の設定値でスライス対象物をスライスした場合であっても、スライス対象物の物性(例えば肉の硬さ等)によって実測値が異なるからである。しかしながら、この変動が、負荷変動(スライス対象物の物性の変化による変動)によるものか、あるいは刃物10の切れ味の低下(刃物10の劣化による変動)によるものかを切り分けることが容易ではない。そこで、第1軸11の振動の正否を判定するために、所定の基準値に基づきフィルタリングした結果を用いている。
【0050】
また、図8の(A)には、第1スライス装置における刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度について、第1電流情報、第1トルク情報、第2電流情報、第2トルク情報に基づき回帰分析を行い、データ数を百分位数にした際の回帰分析に基づく加速度の予測値の正規確率プロットが示される。同様に、図8の(B)には、第2スライス装置における刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度について、第1電流情報、第1トルク情報、第2電流情報、第2トルク情報に基づき回帰分析を行い、データ数を百分位数にした際の回帰分析に基づく加速度の予測値の正規確率プロットが示される。図8から、第1スライス装置よりも第2スライス装置の方が中央部分の勾配が大きいことから、刃物10の回転軸である第1軸11に発生する加速度の予測値の変化が大きいことがわかる。このため、上記の通り、第2スライス装置の刃物10の方が、第1スライス装置の刃物10よりも劣化が進んでいることがわかる。したがって、このような正規確率プロットに基づいて適切に刃物10の劣化状態を推定することが可能である。
【0051】
以上のように、劣化状態推定システム1がスライス装置2の刃物10の劣化状態を推定し、必要に応じて刃物10のメンテナンスを行うことが可能となる。したがって、スライス装置2がスライス対象物を適切にスライスできる環境を提供することが可能となる。また、以上のように構成することで、IoT(Internet of Things)技術により、ネットワークを介してスライス中のパラメータ(第1電流情報、第1トルク情報、第2電流情報、第2トルク情報等)をリアルタイムに収集すると共に、各所(例えばスライス装置2が配置される事業所)から生成されるデータを管理し、このようなデータに基づき、スライス加工における正規データとリアルタイムデータとを比較し分析することができるので、刃物10の品質の劣化具合を検出することが可能となる。
【0052】
〈その他の実施形態〉
上記実施形態では、推定部52は、判定部51の判定結果に第2電流情報取得部41と第2トルク情報取得部42とを加えて推定するとして説明したが、推定部52は判定部51の判定結果のみで推定するように構成することも可能である。
【0053】
上記実施形態では、推定部52は判定部51の判定結果に基づいて、刃物10の劣化状態を推定するとして説明した。刃物10の劣化状態の推定は、判定部51の判定結果と刃物10の所定の劣化状態を示す状態情報とに基づいて刃物10の劣化状態を推定する学習を行ったニューラルネットワークに判定部51の判定結果を入力して行うように構成することも可能である。ここで、ニューラルネットワークとは、コンピュータに実行させる人間の脳を模したアルゴリズムであって、例えば上述した判定部51の判定結果と刃物10の劣化状態を示す状態情報とが入力された場合に、あたかも人間の脳が判別したような結果として、刃物10の劣化状態の推定結果を出力するに構成されたものである。本実施形態のニューラルネットワークは、刃物10の劣化状態を適切に推定できるように、予め学習を行っているものが用いられる。
【0054】
具体的には、本実施形態ではニューラルネットワークは、刃物10の所定の劣化状態を示す状態情報を教師データとして入力した場合に、当該状態情報に沿った刃物10の劣化状態の推定結果や、メンテナンス時期の推定結果を出力するように学習が行われたものが用いられる。すなわち、上述した判定部51の判定結果をニューラルネットワークに入力する前に、予め、例えば所定の劣化度(劣化度合)で劣化している劣化状態を示す状態情報とラベル、劣化していない劣化状態を示す状態情報とラベルを与えて、ラベル毎の劣化度の特徴を学習させておく。これにより、判定部51の判定結果を与えた場合に、刃物10の劣化状態を容易に推定することが可能となる。
【0055】
また、メンテナンス時期の判定も同様に、予め、例えばメンテナンス時期まで余裕がある劣化状態の刃物10の状態情報とラベル、メンテナンスをすべき劣化状態の刃物10の状態情報とラベルを与えて、ラベル毎のメンテナンス時期の特徴を学習させておく。これにより、判定部51の判定結果を与えた場合に、刃物10のメンテナンス時期を容易に判定することが可能となる。
【0056】
換言すれば、推定部52は、刃物10が劣化している時の状態情報を教師データとして入力した場合に、刃物10が劣化しているとする判定結果を出力する学習、及び刃物10のメンテナンスが必要である時の状態情報を教師データとして入力した場合に、刃物10のメンテナンス時期の判定結果を出力する学習を行ったニューラルネットワークに判定部51の判定結果を入力して行うと良い。
【0057】
もちろん、判定部51の判定結果に代えて、第1電流情報、第1トルク情報を入力して刃物10の劣化状態を推定する学習を行ったニューラルネットワークを用いて刃物10の劣化状態を推定するように構成することも可能であるし、第1電流情報、第1トルク情報、第2電流情報、第2トルク情報を入力して刃物10の劣化状態を推定する学習を行ったニューラルネットワークを用いて刃物10の劣化状態を推定するように構成することも可能である。また、ニューラルネットワーク以外の人工知能(Artificial Intelligence)を利用して刃物10の劣化状態を推定するように構成することも可能である。
【0058】
ここで、図9は、その他の実施形態に係る劣化状態推定システム1の構成を示すブロック図である。図9に示されるように、劣化状態推定システム1は、更にデータ分析ユニット9が、推定部52により推定された刃物10の劣化状態を示す状態情報に基づいて、第1モータ12に出力させるトルク指令値を補正する第1トルク補正値、及び第2モータ22に出力させるトルク指令値を補正する第2トルク補正値を算定するトルク補正値算定部56を備えても良い。刃物10が劣化すると、スライス対象物をスライスする時に刃物10とスライス対象物との間で抗力が増大することが知られている。また、スライスされたスライス対象物の品質は、スライス対象物に対する刃物10の進入プロセス(例えば突き切り、押し切り、引き切り等)によって差異が生じることも知られている。このため、所定の設定値(第1モータ12に出力させるトルク指令値及び第2モータ22に出力させるトルク指令値)でスライス対象物をスライスした場合には、スライス対象物の品質が悪化する可能性がある。そこで、上述したトルク補正値算定部56が、劣化情報に基づいて第1モータ12に出力させるトルク指令値を補正する第1トルク補正値を算定すると共に、第2モータ22に出力させるトルク指令値を補正する第2トルク補正値を算定すると好適である。
【0059】
これにより、第1モータ制御部13が、制御ユニット6から伝達される第1モータ12に出力させるトルク指令値及びトルク補正値算定部56からネットワークを介して伝達される第1トルク補正値に基づいて第1モータ12を駆動すると共に、第2モータ制御部23が、制御ユニット6から伝達される第2モータ22に出力させるトルク指令値及びトルク補正値算定部56からネットワークを介して伝達される第2トルク補正値に基づいて第2モータ22を駆動することができる。すなわち、スライス対象物を適切にスライスする条件を常に最新の状態に更新することが可能となる。なお、第1トルク補正値及び第2トルク補正値は、夫々、第1モータ12に出力させるトルク指令値及び第2モータ22に出力させるトルク指令値を所定値だけ増減させる補正値であっても良いし、第1モータ12に出力させるトルク指令値及び第2モータ22に出力させるトルク指令値に代えて、第1モータ12に出力させるトルクの値及び第2モータ22に出力させるトルクの値を示す補正値であっても良い。
【0060】
以上のように構成することで、IoT技術を応用することにより、既存のデータとリアルタイムの取得されるデータ(リアルタイムデータ)とで教師データを生成することができる。また、スライス装置2単体の処理では実現不可能な高速処理を、IoT技術を利用して高性能な演算処理装置で演算し、将来的に発生する未知の現象(データ)の発生や変化にも応用が可能となり、スライス装置2へ制御パラメータをフィードバックし最適なスライス条件を自動的に生成することが可能となる。更には、これまで使用してきたスライス条件を記憶したライブラリを、ネットワークを介して常に、最適なものに更新することが可能となる。
【0061】
上記実施形態では、劣化状態推定システム1が、報知部53を備えるとして説明したが、劣化状態推定システム1は報知部53を備えなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、食肉及び食肉加工品をスライスする刃物と当該刃物が取り付けられた回転体とを有するスライス装置における刃物の劣化状態を推定する劣化状態推定システムに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:劣化状態推定システム
2:スライス装置
8:データ収集ユニット
9:データ分析ユニット
10:刃物
11:第1軸
12:第1モータ
13:第1モータ制御部
20:回転体
21:第2軸
22:第2モータ
23:第2モータ制御部
31:第1電流情報取得部
32:第1トルク情報取得部
41:第2電流情報取得部
42:第2トルク情報取得部
51:判定部
52:推定部
53:報知部
56:トルク補正値算定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9