(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】若齢者学習能力向上のための経口組成物及び機能性食品
(51)【国際特許分類】
A61K 36/258 20060101AFI20231113BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231113BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20231113BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231113BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231113BHJP
A61K 125/00 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
A61K36/258
A23L33/105
A61K9/16
A61K47/26
A61P25/28
A61K125:00
(21)【出願番号】P 2019230367
(22)【出願日】2019-12-20
(62)【分割の表示】P 2018115554の分割
【原出願日】2018-06-18
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】519337226
【氏名又は名称】チョイスジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【氏名又は名称】森 博
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昭宏
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0005144(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第101327010(CN,A)
【文献】特開2016-128427(JP,A)
【文献】NISHIJO H. et al.,RED GINSENG AMELIORATES LEARNING DEFICITS IN YOUNG RATS WITH HIPPOCAMPAL LESIONS AND AGED RATS,Japanese Journal of Physiology,2003年,Vol.53, Supplement,S90,S283
【文献】薬理と治療,1984年04月,Vol. 12, No. 4,pp. 30-36
【文献】Planta Medica,1993年,Vol. 59,pp. 106-114
【文献】Psychopharmacology,2003年11月25日,(2004) Vol. 172,pp. 430-434
【文献】Nutritional neuroscience,2001年12月31日,Vol.4, No.4,p.295-310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/258
A23L 33/105
A61K 9/16
A61K 47/26
A61P 25/28
A61K 125/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
若齢者学習能力向上のための経口組成物の製造方法であって、
高麗人参(Panax ginseng)の根茎を蒸煮する工程と、
得られた高麗人参の蒸煮した根茎を乾燥して乾燥物を得る工程と、
得られた乾燥物を抽出溶媒で抽出して抽出物を得る工程と、
得られた抽出物にブドウ糖を含有させて、顆粒状に成形する工程と、を有し、
前記経口組成物は、前記抽出物及びブドウ糖を含有し、顆粒状であり、
対象者が13歳以上18歳以下の男女(ヒト)であり、ジンセノサイド量換算で、1日当たり、2~100mg経口摂取されるように用いられる若齢者学習能力向上のための経口組成物
の製造方法。
【請求項2】
若齢者学習能力向上のための機能性食品の製造方法であって、
高麗人参(Panax ginseng)の根茎を蒸煮する工程と、
得られた高麗人参の蒸煮した根茎を乾燥して乾燥物を得る工程と、
得られた乾燥物を抽出溶媒で抽出し、抽出物を得る工程と、
得られた抽出物にブドウ糖を含有させて、顆粒状に成形する工程と、を有し、
前記機能性食品は、前記抽出物及びブドウ糖を含有し、顆粒状であり、
対象者が13歳以上18歳以下の男女(ヒト)であり、ジンセノサイド量換算で、1日当たり、2~100mg経口摂取されるように用いられる若齢者学習能力向上のための機能性食品
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、若齢者の脳機能を改善させる作用を有し、学習能力向上に寄与する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者社会に伴い、認知症患者が急増しており、脳機能改善作用を有する物質の探索が盛んに行われている。
高麗人参(朝鮮人参)抽出物においても、脳機能改善作用について報告されている。例えば、特許文献1には朝鮮人参の実抽出物を有効成分として含む脳活性化用組成物が開示されている。また、特許文献2にはニンジン抽出物、イチョウ葉抽出物、サフラン柱頭の抽出物、ダイズ抽出物を配合した虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置するための漢方薬組成物が開示されている。また、特許文献3には人参由来の糖リポタンパク質ジントニンを有効成分として含む学習能力向上および記憶増進用薬学組成物が開示されている。また、特許文献4には人参由来のジンセノサイドRg3薬用組成物水溶液を記憶改善に使用する薬剤に使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-515611号公報
【文献】特開2012-214500号公報
【文献】特表2014-532048号公報
【文献】特許第5525814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年、高齢者ではなく、10代の若齢者においても、脳機能を改善し、学習能力や記憶力を増強することが望まれている。
しかしながら、従来の脳機能改善作用を有するとされている物質は、高齢者の認知症の予防、改善を対象としているものが多く、認知症等を改善する効果があったとしても、脳の発育期である若齢者に対しても脳機能改善作用を示すか否かについての詳細は不明であるのが実情である。特許文献1~4で開示された高麗人参抽出物においても、若齢者に対して脳機能改善作用を示すか否かについて評価されてはいない。
【0005】
かかる状況下、本発明の目的は、若齢者の学習能力向上効果を有する経口組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 高麗人参(Panax ginseng)の根茎、葉部及び茎部の1種以上から選択される部位の加工物を有効成分として含有する若齢者学習能力向上のための経口組成物。
<2> 前記加工物が、蒸煮した根茎の乾燥物の粉砕物又は抽出物である<1>に記載の経口組成物。
<3> 形態が、錠剤状、粉末状、液状、顆粒状又はカプセル状である<1>又は<2>に記載の経口組成物。
<4> 蒸煮した根茎の乾燥物の抽出物及びブドウ糖を含有し、顆粒状である<3>に記載の経口組成物。
<5> <1>から<4>のいずれかに記載の経口組成物を含有する機能性食品。
【0008】
<1A> <1>から<4>のいずれかに記載の経口組成物を、若齢者に経口投与して学習能力を向上させる方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く。)。
<2A> 対象となる若齢者が、10歳以上20歳以下である<1A>に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、若齢者に対する学習能力向上効果が認められる経口組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】ベントン視覚記銘検査における摂取前・摂取後の平均点数である。
【
図4】内田クレベリン検査の計算課題における摂取前・摂取後の平均正答数である。
【
図5】TK式田中AB知能検査の6つの問題領域である。
【
図6】TK式田中AB知能検査における摂取前・摂取後の平均知能偏差値である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0012】
本発明は、高麗人参(Panax ginseng)の根茎、葉部及び茎部の1種以上から選択される部位の加工物を有効成分として含有とする若齢者学習能力向上のための経口組成物(以下、「本発明の経口組成物」と記載する。)に関する。
【0013】
本発明の経口組成物の原料は、ウコギ科の多年宿根草である高麗人参(Panax ginseng)の根茎、葉部又は茎部である。高麗人参は天然物であってもよく、人工的に栽培してものであってもよい。通常廃棄する高麗人参の葉部や茎部も有効利用することができるが、根茎(特には6年根)が好ましく使用される。
【0014】
高麗人参の使用部位(根茎、葉部又は茎部)は、前処理せずにそのまま使用することができるうえ、細断等の前処理を行って使用することもできる。
【0015】
本発明において「加工物」は、高麗人参の使用部位(根茎、葉部又は茎部)に対し任意の加工処理を行ったものを意味する。
任意の加工処理としては、本発明の効果を損なわないものであるならば、適宜のものが選択でき、例えば、蒸煮処理、乾燥処理、加熱処理、抽出処理などが挙げられる。これらの処理は適宜組み合わせて行うことができる。
【0016】
蒸煮処理とは対象となる原料植物(高麗人参の使用部位)を水蒸気共存下で加熱する処理である。蒸気加熱は蒸し器等の常圧で行ってもよいし、圧力釜等を利用して加圧した状態で行ってもよい。蒸煮する温度、時間は、高麗人参の使用部位や、後工程での処理方法等を考慮して適宜決定すればよいが、好適条件の一例を挙げると、常圧90℃~100℃、8~15時間である。
【0017】
乾燥処理とは具体的には対象となる原料植物(高麗人参の使用部位)を、天日乾燥、加熱乾燥、フリーズドライ、減圧乾燥等の公知の乾燥方法で乾燥したものである。乾燥物は、使用性の観点から、通常、粉砕して粉末化され、乾燥粉砕物として使用される。粉砕方法は、特に限定はなく従来公知の粉砕器を使用すればよい。粉末の粒径は、その使用態様によって適宜決定される。
【0018】
加熱方法は公知の方法が採用でき、加熱条件は高麗人参の含有成分の作用を損なわない範囲で任意であり、対象となる原料植物(高麗人参の使用部位)、又はこれを必要に応じて他の処理(粉砕処理、細断処理、乾燥処理等)したものを任意の方法で加熱することである。
【0019】
抽出処理とは、対象となる原料植物(高麗人参の使用部位)、又はこれを必要に応じて粉砕処理、細断処理、乾燥処理、加熱処理したものを、圧搾又は溶媒抽出するなどして、有効成分の含有量を高めた形態のものにすることを総括した概念である。具体的には高麗人参の使用部位を抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。なお、抽出液を乾燥して得られる乾燥物も、抽出物に該当するものとする。
【0020】
抽出処理に使用する抽出溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級脂肪族アルコールが挙げられる。これらの抽出溶媒は単独又はこれら2種以上の混合物として使用することができ、2種以上の溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。
【0021】
なお、抽出溶媒には、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を含んでいてもよい。例えば、pH調整剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0022】
原料植物から抽出物を抽出する方法は特に限定されず、常法に従って行なれる。例えば、原料植物を抽出溶媒に浸漬し、室温あるいは加熱して原料植物に含まれる可溶性成分を抽出する方法が挙げられる。また、抽出物に含まれる残渣を取り除くため、濾過や遠心分離を行ってもよい。また、得られた抽出液はそのまま利用してもよいが、常法に従って、熟成、希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0023】
高麗人参の加工物は、それぞれ単独で使用してもよいし、他の成分と混合して使用してもよい。また、異なる加工処理を行ったもの(例えば、乾燥物と抽出物)を混合して使用してもよい。
【0024】
本発明において、好適な高麗人参の加工物として、蒸煮した根茎の乾燥物の粉砕物又は抽出物が挙げられる。蒸煮して乾燥させることにより根茎に含有される成分が凝縮される。特には、根茎(好ましくは6年根)を皮つきのまま蒸煮処理後、乾燥した乾燥物(いわゆる、紅参)を粉砕した粉砕物や抽出物(エキス)が好ましい。抽出物の抽出溶媒は、好適にはエタノール、又はエタノールと水の混合溶媒である。
【0025】
本発明の経口組成物の好適な態様は、蒸煮した根茎の乾燥物の抽出物及びブドウ糖を含有し、顆粒状の経口組成物である。このような態様であれば、水やお湯に容易に溶解することができ、茶様飲料として常飲することができる。
【0026】
高麗人参の使用部位の加工物は、若齢者学習能力向上作用を有する。そのため、当該加工物を、本発明の経口組成物の有効成分として利用することができる。
【0027】
本明細書において、本発明の経口組成物の対象である「若齢者」とは10歳以上20歳以下の男女を意味する。より好適な対象は、13歳以上18歳以下の男女である。
【0028】
また、「学習能力向上」とは、学習および/または記憶に関与する脳機能の向上を意味する。学習および/または記憶に関与する脳の作用としては例えば、注意、情報取得、情報処理、作動記憶、記憶検索、意思決定等が含まれるが、これらに限定されない。
本発明においては、学習能力向上は、ベントン視覚記銘検査、内田クレベリン検査、TK式田中AB知能検査のいずれかの検査(特にはベントン視覚記銘検査)で有意差が認められるか否かで評価するものとする。具体的には、実施例に記載する。
【0029】
本発明の経口組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で上述の高麗人参由来の成分以外にも、脳機能の改善(例えば集中力向上、注意力向上等)に寄与する成分を配合していてもよい。
【0030】
本発明の経口組成物の形態は、特に制限されず使用する用途により適宜選択することができる。具体的には粉末状、顆粒状、カプセル状、タブレット状、グミ状、ガム状、キャンディー状、丸剤、錠剤状、棒状、板状、液状、クリーム状、軟膏状、シート状等の剤型・形態をとることができる。この中でも、錠剤状、粉末状、液状、顆粒状又はカプセル状であることが好ましい。
なお、製剤化する場合、保存や取扱いを容易にするために、薬学的に許容され得る担体やその他任意の助剤を添加することができる。
【0031】
本発明の経口組成物の摂取量は、高麗人参の使用部位、加工方法、経口組成物の形態や、対象者の年齢、性別などの個別差にもよって適宜決定すればよい。摂取量の一例は、含有するジンセノサイド(Rg1+Rb1+Rg3)量換算で、1日当たり、通常、2~100mg程度である。
【0032】
本発明の経口組成物は、安全な植物由来であるため、安全で嗜好的にも優れる。そのため、日常的に経口摂取しやいように、各種の食品、飲料と混ぜて機能性食品とすることで、長期的に摂取することも容易である。ここでいう「機能性食品」とは、一般食品に加えて、健康食品、栄養補助食品、栄養機能食品、栄養保健食品等、健康の維持の目的で摂取する食品および/又は飲料を意味している。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等を添加していてもよい。
【0033】
本発明の機能性食品の対象となる、食品、飲料は特に限定されるものではない。例えば、食品として、例えば、菓子,パン等の穀物の加工品が挙げられる。また、飲料としては、各種の茶類、清涼飲料水、酒類、栄養ドリンクなどが挙げられる。本発明の経口組成物は、このような食品、飲料に添加することにより、簡易に経口摂取することができる。
【0034】
本発明の経口組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、動物用の経口組成物として使用してもよく、また、ペットフード等の動物用機能性食品へ添加することもできる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
<1.試料の調製>
原料として高麗人参の根茎(6年根)を洗浄後、常圧、水蒸気共存下、95℃、10時間の条件で蒸煮処理を行った。次いで、常温で30時間、乾燥処理(通風乾燥)を行った。乾燥処理後の根茎を所定のタンクに入れ、加熱したエタノールで抽出し、ろ過で不純物を取り除くことにより、抽出物(エキス)を得た。この操作を繰り返し、得られたエキスを混合して目的とする高麗人参エキス(「ONG-90HN」と命名)を得た。この高麗人参エキスが17重量%となるように、基剤(ブドウ糖、乳糖、ビタミンCの混合物)に配合し、実施例の試料(顆粒状)を得た。
【0037】
プラセボ品として、を含まない基剤からなる試料(顆粒状)を調製した。
【0038】
<2.評価>
実施例の試料の効果を検証するために、二重盲検ランダム化並行群間比較試験を行った。
健常な小児男女(13歳以上18歳以下)40名を対象に、比較例の試料(プラセボ茶)を摂取する20名はプラセボ群として、実施例の試料を摂取する20名は試験物群として割り当て、摂取前、摂取28日(4週間)後でのベントン視覚記銘検査、内田クレペリン検査(計算課題)及びTK式田中AB式知能検査を用いて評価した。
詳細以下の通りである。
【0039】
割付けには、試験に関係ない責任者が年齢、性別で無作為抽出法を用いて、プラセボ群に20名、試験物群に20名に割付けた。
プラセボ群20名(平均年齢15.6歳:男児4名、女児16名)
試験物群20名(平均年齢15.9歳:男児4名、女児16名)
【0040】
試験物群では上記実施例の試料を1日1包(3g)を、水(約100mL)に溶解し、経口摂取させた(試験物群)。また、プラセボ群では上記比較例の試料を1日1包(3g)を、水(約100mL)に溶解し、経口摂取させたプラセボ群)。試験物群、プラセボ群共に摂取期間は28日間(4週間)とした。
【0041】
<試験結果>
(解析対象者)
試験物群、プラセボ群40名のうち、途中離脱により試験物群から3名除外したため、37名を解析対象とした。なお、摂取日数を用いて算出した摂取率は、プラセボ群91.3%(n=20)、試験物群94.7%(n=17)であった。
【0042】
(評価1)ベントン視覚記銘検査
ベントン視覚記銘検査は、視覚による記憶検査である。被験者には数種類の無意味図形が描かれたカード(
図1の例参照)を10秒見せて覚えてもらい、その後カードを伏せて、白い紙に図形の形・位置・大きさなどを出来るだけ正確に描くよう指示した。カードは10枚あり、ほぼ誤りなく描かれた場合に1点を付与し、合計10点満点で成績をつけた。同レベルに設定した検査が3セット(それぞれA、B、C)準備されており、摂取前にA、摂取後にBを実施することで、出来るだけ試験ごとによる練習の効果を排除するようにした。
表1にベントン視覚記銘検査における点数を各群の摂取前後で比較した結果を示した。プラセボ群では摂取前後の比較に有意な差は認められなかった。一方、試験物群においては摂取後の点数が摂取前よりも有意に高い傾向が認められた(p<0.1)。
また、表2にプラセボ群と試験物群で比較した結果を示した。プラセボ群と試験物群の比較では、有意な差は認められなかった(
図2)。
【0043】
【0044】
【0045】
ベントン視覚記銘検査において、プラセボ群では摂取前後の比較に有意な差は認められなかった。一方、試験物群では、摂取後の点数が摂取前よりも有意に高い傾向が認められた。また、プラセボ群では摂取後に平均点数が0.40の下降を示し、試験物群では摂取後に0.71の上昇が示されたことから、実施例1の試料を摂取することで記憶力を向上する効果がある可能性が示唆された。
【0046】
(評価2)内田クレペリン検査用紙を使用した計算課題
内田クレペリン検査の用紙(
図3の例参照)を使用して、簡単な一桁の足し算を10分間行い、その正答数を摂取前、摂取後で比較した。
表3に内田クレペリン検査用紙を使用した計算課題における正答数を各群の摂取前後で比較した結果を示した。プラセボ群、試験物群ともに摂取後の点数は摂取前よりも有意に高い点数となった(p<0.01)。
表4に正答数をプラセボ群と試験物群で比較した結果を示した。プラセボ群と試験物群の比較においては、摂取前、摂取後ともに試験物群が有意に高い傾向が認められた(p<0.1、
図4)。
【0047】
【0048】
【0049】
内田クレペリン検査用紙を使用した計算課題において、プラセボ群、試験物群ともに摂取後の点数は摂取前よりも有意に高い値となった。プラセボ群では摂取後に平均点数が66.05の上昇を示し、試験物群では摂取後に80.36の上昇が示された。両群ともに摂取後の点数が上昇したのは、問題に対する慣れが生じたのではないかと考えられる。しかし、数値的にみると点数の上昇はプラセボ群に比べて試験物群の方が大きかったことから、試験物の摂取が計算能力にプラスの効果があるのではないかと考えられた。
【0050】
(評価3)TK式田中AB式知能検査
言語式(A式)と非言語式(B式)を併用し、総合的に知能が測定できる知能検査である。この検査は6つの問題領域(
図5参照)からなっており、易しい問題から難しい問題まで、幅広い問題で構成されている。また問題の配列が螺旋式となっているため、測定誤差が少ない検査となっている。この検査を25分間行った。
表5にTK式田中AB式知能検査における知能偏差値を各群の摂取前後で比較した結果を示した。プラセボ群、試験物群ともに摂取後の知能偏差値は摂取前よりも有意に高い点数が認められた(p<0.01、
図6)。
【0051】
【0052】
表6に問題領域別の粗点を摂取前後で比較した結果を示した。プラセボ群では、問題A,B,C,D,Eにおいて摂取後は摂取前よりも有意に高い点数となった(p<0.01)が、問題F(数学的能力)においては摂取前後に有意な差は認められなかった。試験物群では、問題A,B,C,D,Eにおいて摂取後は摂取前よりも有意に高い点数となった(p<0.01)。問題F(数学的能力)においても摂取後は摂取前よりも有意に高い点数となった(p<0.05)。
【0053】
【0054】
表7に知能偏差値をプラセボ群と試験物群で比較した結果を示した。プラセボ群と試験物群の知能偏差値の比較では、有意な差は認められなかった。
表8に問題領域別の粗点をプラセボ群と試験物群で比較した結果を示した。摂取前の問題C(言語的関係理解)において試験物群が有意に低い点数となった(p<0.05)。摂取後のプラセボ群と試験物群では、全ての問題において有意な差は認められなかった。
【0055】
【0056】
【0057】
TK式田中AB式知能検査において、プラセボ群、試験物群ともに摂取後の知能偏差値は摂取前よりも有意に高い値となった。プラセボ群では摂取後に知能偏差値が9.05の上昇を示し、試験物群では摂取後に11.18の上昇が見られた。両群ともに摂取後の点数が上昇したのは、問題に対する慣れが生じたのではないかと考えられる。しかし、数値的にみると知能偏差値の上昇はプラセボ群に比べて試験物群の方が大きかったことから、試験物の摂取が知能検査問題にプラスの効果があるのではないかと考えられた。問題領域別の粗点を摂取前後で比較すると、問題A,B,C,D,Eにおいてはプラセボ群、試験物群ともに摂取後は摂取前よりも有意に高い点数となった。問題F(数学的能力)に関して、プラセボ群では摂取前後に有意な差はみられなかったが、試験物群では摂取後は摂取前よりも有意に高い点数となった。このことから、試験物の摂取が特に数学的能力に対してプラスの効果があるのではないかと考えられた。また、問題領域別にプラセボ群と試験物群で比較すると、問題C(言語的関係理解)において摂取前はプラセボ群が有意に高い点数となったが、摂取後には有意な差は認められなかった。
【0058】
以上の通り、ベントン視覚記銘検査の試験物群において、摂取後にスコアの有意な上昇傾向が確認された。また、内田クレペリン検査及びTK式田中AB式知能検査の試験物群においても、摂取後にスコアの有意な上昇が確認された。
以上の結果から、若齢者の高麗人参エキスの摂取が学習能力の向上効果を有すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の経口組成物を摂取することにより、若齢者の学習能力向上するため、産業的に有望である。