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▶ ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン,ナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド,ダブリンの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】組織アンカー
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20231113BHJP
   A61B 17/04 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
A61M37/00 500
A61B17/04
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019520433
(86)(22)【出願日】2017-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2017076305
(87)【国際公開番号】W WO2018069543
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】1617509.3
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501339171
【氏名又は名称】ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン,ナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド,ダブリン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベルトロ,ニッキー
(72)【発明者】
【氏名】オーサーブハイル,エオイン
(72)【発明者】
【氏名】モリス,シームス
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/066533(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0260340(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0051815(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/08
A61M 37/00
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を含む組織アンカーであって、前記本体は、非展開状態と展開状態との間で前記組織アンカーを並進させるために互いに対して第1「X」方向において移動可能な第1区域および第2区域と、前記第1区域の組織接触表面から突き出る少なくとも1つの突起体、および前記第1区域から突き出る前記少なくとも1つの突起体に対向するように前記第2区域の組織接触表面から突き出る少なくとも1つの突起体であって、少なくとも1つの区域上の少なくとも1つの突起体は、前記第1「X」方向に対して垂直な第2「Z」方向に向かって傾斜している、突起体と、を含み、各突起体は根底部と先端部の間に延び、長さが100~3000マイクロメートルの範囲で「Z」方向の深さが1000マイクロメートルより小さいマイクロニードルを備え、前記第1区域上の前記少なくとも1つの突起体の前記先端部と前記第2区域上の前記少なくとも1つの突起体の前記先端部が、前記アンカーが前記非展開状態および/または展開状態にあるとき、前記第1「X」方向および前記第2「Z」方向において重なり合い、前記少なくとも1つの突起体は、前記少なくとも1つの突起体の前記根底部および前記先端部が第3「Y」方向において互いに離間するような角度傾斜で配置されている、組織アンカー。
【請求項2】
各突起体は逆刺を含む、請求項1に記載の組織アンカー。
【請求項3】
前記第1区域および前記第2区域はそれぞれ、複数の突起体を含む、請求項1または請求項2に記載の組織アンカー。
【請求項4】
前記第1区域および前記第2区域は等しい個数の突起体を含む、請求項3に記載の組織アンカー。
【請求項5】
前記第1区域および前記第2区域の両方の上の前記突起体は長方形配列に配置されている、請求項3または請求項4に記載の組織アンカー。
【請求項6】
前記第1区域および前記第2区域上の前記突起体は同心円配列に配置されている、請求項3または請求項4に記載の組織アンカー。
【請求項7】
前記第1区域および/または前記第2区域の組織接触表面は、前記少なくとも1つの突起体のうちの各突起体の根底部に配置されるかまたは前記根底部の近傍に配置された凹陥部を含む、請求項1~請求項6のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項8】
前記第1区域は第1セットの突起体と、前記第1セットから離間された第2セットの突起体と、を含み、前記第2区域は、前記第1区域の前記第1セットおよび前記第2セットの突起体との間の経路に沿って前記第1区域に対して移動可能である、請求項1~請求項7のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項9】
前記第1区域上の前記突起体のうちの1つまたは複数の突起体は、前記第1「X」方向に対して傾斜した状態で延長する、請求項1~請求項8のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項10】
前記第1区域および前記第2区域を互いにして固定するよう動作可能なロックを含む、請求項1~請求項9のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項11】
前記第1区域は、前記第2区域をその内部に少なくとも部分的に受容するよう適応された溝部を画成する、請求項1~請求項10のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項12】
前記溝部は一方の端部において開放されている、請求項11に記載の組織アンカー。
【請求項13】
前記突起体のうちの少なくとも1つの突起体は導電性物質を含む、請求項1~請求項12のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項14】
少なくとも1つのバイオセンサを含む、請求項1~請求項13のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項15】
前記本体は少なくとも部分的に生体吸収性物質から形成される、請求項1~請求項14のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項16】
前記本体は少なくとも部分的に多孔性物質から形成される、請求項1~請求項15のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項17】
前記第1区域および前記第2区域は互いに対して可逆的に移動可能である、請求項1~請求項16のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項18】
前記第1区域および前記第2区域は弓形状の経路に沿って互いに対して移動可能である、請求項1~請求項17のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項19】
前記本体は巻かれた状態と巻かれていない状態との間で移動可能である、請求項1~請求項18のうちのいずれか1項に記載の組織アンカー。
【請求項20】
請求項1~請求項19のうちのいずれか1項に記載の組織アンカーの配列と、前記組織アンカーのうちの少なくとも2つの組織アンカー間で繋がれた少なくとも1つの張力部材と、を含む、創傷閉鎖システム。
【請求項21】
前記張力部材は縫合糸を含む、請求項20に記載の創傷閉鎖システム。
【請求項22】
前記組織アンカーの配列を事前決定された配向において配置するためのテンプレートを含む、請求項20または請求項21に記載の創傷閉鎖システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨および軟骨に加えて皮膚、硬膜、腸、膀胱、心臓組織、および動脈壁を含む広い範囲の組織において展開され得る組織アンカーに関する。組織アンカーは複数の医療適用を有し得る。これらの医療適用は、外的または内的に使用され得る創傷閉鎖システムを含むがこれに限定されない。
【0002】
加えて、係るアンカーは、治療的ならびに診断的手術装置およびインターベンショナル装置を皮膚に固着するために使用され得る。これらの装置は、外科用のカテーテル、ドレーン、カニューレ、およびストーマドレッシングを含む。アンカーは、内視鏡および放射線による案内の適用を含む開放および/または最低侵襲性の技術を利用して展開され得る。
【0003】
アンカーは、修復メッシュを1つまたは複数の部位に固定するためのヘルニア修復、および、骨、腱を含む組織構造の再付着、および関節唇修復などの用途においても、使用され得る。アンカーは、追加的に、薬剤送達、タトゥー除去、バイオセンシング、および経皮的電気神経刺激(TENS)用途のために、ならびに、EMGおよびECGなどの筋肉組織における他の生体電気活動の測定のために、使用され得る。
【背景技術】
【0004】
広い範囲の外科処置および医療処置では、組織外傷は一般に最小化されることが望ましい。組織外傷の最小化は、感染症のリスクの軽減に加えて、手術時間の短縮および患者の回復の両方において有益であり、それにより、必要とされる手術機材が最少化され、その結果、所与の外科処置および医療処置を行うために必要な外科医および/またはサポート人員の総数も最少化され得る。
【0005】
例えば、縫合糸を用いない創傷閉鎖装置およびシステムは、創傷の外科的閉鎖においてますます利用されるようになってきている。係るシステムに対する利益としては、処置時間ならびに鎮静状態にある患者時間の低減、瘢痕低減、低い感染率、美容術における改善が挙げられる。ステープルおよび縫合糸が係るシステムにより置き換えられる場合においては、追加的な利益は、創傷の治療後に患者が診察室または診療所に戻ってステープルおよび/または縫合糸を除去してもらう必要がないことによりもたらされる。これらのシステムのマイナス面は、係るシステムが、大部分は、固着装置を組織表面に対して付着させるにあたり接着剤に依存することである。本質的に、接着ボンドの機械的完全性は、局所的な組織組成物により、および、組織から発するかまたは創傷自体から浸出する被覆、pHならびに湿気により、損なわれ得る。さらに、局所皮膚接着剤が縫合修復および軟組織アンカーよりも機械的に劣っていることの他にも、アレルギー性接触皮膚炎または他の医療用接着剤に関連する皮膚損傷を生じさせ得ること、は知られている。
【0006】
同様に、組織アンカーの用途においては、例えば医療装置、医療用メッシュ、バイオセンサ等の内的または外的な固着などに対して、組織に対する十分な固着が保証される一方で組織外傷が最少化されること、および、係る組織アンカーの展開が簡略化され、それにより展開に要求される時間および労力が再び低減されること、も有益である。
【0007】
したがって本発明の目的は、例えば創傷閉鎖用途等の複数の外科適用および医療適用に対して使用され得る改善された組織アンカーを提供することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、組織アンカーを非展開状態と展開状態との間で並進させるために互いに対して第1方向に移動可能な第1区域および第2区域を有する本体と、少なくとも1つの区域上の少なくとも1つの突起体は他方の区域上の少なくとも1つの突起体に向って傾斜する、第1区域から突き出る少なくとも1つの突起体および第2区域から突き出る少なくとも1つの突起体と、を含み、アンカーが非展開状態および/または展開状態にあるとき、第1区域および第2区域上の少なくとも1つの突起体は第1方向に対して実質的に垂直である第2方向において重なり合う、組織アンカーが提供される。
【0009】
好適には、本体は、本体が展開状態にあるとき第1区域および第2区域上の少なくとも1つの突起体が第2方向において重なり合うよう、構成される。
【0010】
好適には、各突起体は根底部および先端部を含み、各突起体は、第1方向に対して実質的に平行な方向において根底部から先端部まで位置合わせされている。
【0011】
好適には各突起体は逆刺を含む。
【0012】
好適には、第1区域および第2区域はそれぞれ複数の突起体を含む。
【0013】
好適には、第1区域および第2区域はそれぞれ同数の突起体を含む。
【0014】
好適には、第1区域および第2区域の両方の区域上の突起体は長方形配列に配置される。
【0015】
好適には第1区域および第2区域上の突起体は同心円配列に配列される。
【0016】
好適には突起体はマイクロ形状を含む。
【0017】
好適には第1区域および第2区域はそれぞれ、それぞれの少なくとも1つの突起体がそこから延長する組織接触表面を画成する。
【0018】
好適には、第1区域および/または第2区域の組織接触表面は、それぞれの少なくとも1つの突起体の根底部に配置されるかまたは係る根底部の近傍に配置された凹陥部を含む。
【0019】
好適には、第1区域は、第1組の突起体と、第1組から離間された第2組の突起体と、を含み、第2区域は、第1区域の第1組および第2組の突起体の間の経路に沿って第1区域に対して移動可能である。
【0020】
好適には、第1区域上の突起体のうちの1つまたは複数の突起体は、第1方向に対して傾斜して延長する。
【0021】
好適には、組織アンカーは、第1区域および第2区域を互いに対して固定するよう動作可能なロックを含む。
【0022】
好適には、第1区域は、その中に第2区域を少なくとも部分的に受容するよう適応された溝部を画成する。
【0023】
好適には溝部は、一方の端部において開放されている。
【0024】
好適には、突起体のうちの少なくとも1つの突起体は導電性物質を含む。
【0025】
好適には、本体の1つの領域は突起体を含まない。
【0026】
好適には、組織アンカーは本体上に提供された連結部を含む。
【0027】
好適には、組織アンカーは少なくとも1つのマイクロニードルを含む。
【0028】
好適には、突起体のうちの少なくとも1つの突起体はマイクロニードルを含む。
【0029】
好適には、組織アンカーは少なくとも1つのバイオセンサを含む。
【0030】
好適には、本体は少なくとも部分的に生体再吸収性物質から形成されている。
【0031】
好適には、本体は少なくとも部分的に多孔性物質から形成されている。
【0032】
好適には、第1区域および第2区域は、互いに対して可逆的に移動可能である。
【0033】
好適には、第1区域および第2区域は、少なくとも1つの傾斜した突起体の長手方向軸に対して実質的に平行な方向において互いに対して移動可能である。
【0034】
好適には、第1区域および第2区域は、実質的に弓形状の経路に沿って互いに対して移動可能である。
【0035】
好適には、本体は、巻かれた状態と巻かれていない状態との間の移動可能である。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に係る組織アンカーの配列と、組織アンカーのうちの少なくとも2つの組織アンカーの間でつながれた少なくとも1つの張力部材と、を含む創傷閉鎖システムが提供される。
【0037】
好適には、張力部材は縫合糸を含む。
【0038】
好適には、創傷閉鎖システムは、1つの配列の組織アンカーを事前決定された向きに配置するためのテンプレートを含む。
【0039】
好適には、1つの配列のアンカーは、少なくとも2つの実質的に平行な組のアンカーにおいて配置される。ここでは核アンカーは、第1区域および第2区域が前述の平行方向において互いに対して移動可能となるよう、向けられる。
【0040】
本発明の第3の態様によれば、アンカーの本体の第1区域から突き出る少なくとも1つの突起体と、本体の第2区域から突き出る少なくとも1つの突起体と、を組織に挿入するステップと、組織アンカーを非展開状態から展開状態に並進させるために第1区域を第2区域に対して第1方向に移動させるステップであって、本体が非展開状態および/または展開状態にあるとき第1区域および第2区域上の少なくとも1つの突起体が第1方向に対して実質的に垂直な第2方向において重なり合い、それにより、本体が展開状態にあるとき、局所的な剪断変形が、突起を包囲する組織において生じるよう、移動させるステップと、を含む、組織アンカーを組織に固定する方法が提供される。
【0041】
好適には、第1区域および第2区域上の少なくとも1つの突起体は、本体が展開状態にあるとき、第2方向において重なり合う。
【0042】
好適には、この方法は、アンカーが展開状態になったときに第2区域に対して第1区域をロックするステップを含む。
【0043】
好適には、第2区域に対して第1区域を移動させるステップは、2つの段階、すなわち、相対的移動により主に突起体が組織に挿入される第1段階と、主に突起体を包囲する組織に局所的な剪断変形が発生する第2段階と、において行われる。
【0044】
好適には、この方法は、1つの配列の組織アンカーを展開するステップと、組織アンカーのうちの少なくとも2つの組織アンカーの間に少なくとも1つの張力部材を接続するステップと、を含む。
【0045】
好適には、この方法は、1つの配列の組織アンカーを組織切開部の各側に配置するステップと、切開部の両側を圧着するために少なくとも1つの張力部材を利用するステップと、を含む。
【0046】
好適には、第1方向における移動は、直線状の移動および/または曲線状の移動を含む。
【0047】
本明細書で使用される「逆刺」という用語は、通常は、逆刺が係合する基板から逆刺が脱離する可能性を小さくするために逆刺がそこから突き出る物体または表面に対して角度を有する鋭利または尖った突起体または突起物を意味することが意図される。
【0048】
本明細書で使用される「マイクロ形状」または「マイクロニードル」という用語は、特定の寸法(通常は長さまたは高さが100~3,000マイクロメートル(μm)の範囲)を有する形状またはニードル/逆刺を意味することが意図されるものであり、例えば、逆刺として、および/または、逆刺と、薬剤送達用またはバイオセンシング用のシステムと、の組み合わせとして使用され得る、「マイクロニードル」を含み得る。
【0049】
添付する図面を参照して、本発明についてここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1a】非展開状態にある本発明の好適な実施形態に係る組織アンカーの上方から見た平面図である。
図1b】非展開状態にある図1aの組織アンカーの左側面図である。
図1c】再び非展開状態にある図1aおよび図1bで示される組織アンカーの下方から見た平面図である。
図2a】展開状態にある図1の組織アンカーの上方から見た平面図である。
図2b図1dの組織アンカーの側面立面図である。
図2c】再び展開状態にある図1dおよび図1eで示される組織アンカーの下方から見た平面図である。
図3】アンカーが固定される組織の区域上において非展開状態にある図1 および図2の組織アンカーの側面図である。
図4】1つの配列のマイクロニードルを組織へと引き込むために部分的に展開された状態にある図3の組織アンカーを示す図である。
図5】アンカーのマイクロニードルを包囲する組織に剪断変形が生じるよう完全に展開された状態にある図3および図4の組織アンカーを示す図である。
図6】本発明の組織アンカーのマイクロニードルのうちの1つのマイクロニードルの概略斜視図である。
図7図6に示すマイクロニードルの概略側面立面図である。
図8図6のマイクロニードルと比較して代替的な断面形状を有する本発明の組織アンカーのマイクロニードルの概略斜視図である。
図9】切開部または創傷の周囲における配列として配置された、各組織アンカーが非展開状態にある、1つの配列の組織アンカーを示す図である。
図10】組織アンカーが展開状態に移動された状態にある図9の配列を示す図である。
図11】縫合糸がアンカー間に展開され状態にある図10の組織アンカーの配列を示す図である。
図12】縫合糸およびアンカーを使用して創傷の対向する側面が一緒に引き寄せられた状態にある図11に示す組織アンカーの配列を示す図である。
図13図1図8に示す組織アンカーの配列を担持するテンプレートの斜視図である。
図14図13のテンプレートの平面図である。
図15】非展開状態にある本発明に係る組織アンカーの第1の代替的実施形態の下方から見た平面図である。
図16】非展開状態にある本発明に係る組織アンカーの第2の代替的実施形態の下方から見た平面図である。
図17a】本発明に係る組織アンカーの第3の代替的実施形態を示す図である。
図17b】本発明に係る組織アンカーの第3の代替的実施形態を示す図である。
図17c】本発明に係る組織アンカーの第3の代替的実施形態を示す図である。
図17d】本発明に係る組織アンカーの第3の代替的実施形態を示す図である。
図18a】本発明に係る組織アンカーの第4の代替的実施形態を示す図である。
図18b】本発明に係る組織アンカーの第4の代替的実施形態を示す図である。
図18c】本発明に係る組織アンカーの第4の代替的実施形態を示す図である。
図18d】本発明に係る組織アンカーの第4の代替的実施形態を示す図である。
図18e】本発明に係る組織アンカーの第4の代替的実施形態を示す図である。
図18f】本発明に係る組織アンカーの第4の代替的実施形態を示す図である。
図19a】本発明に係る組織アンカーの第5の代替的実施形態を示す図である。
図19b】本発明に係る組織アンカーの第5の代替的実施形態を示す図である。
図19c】本発明に係る組織アンカーの第5の代替的実施形態を示す図である。
図19d】本発明に係る組織アンカーの第5の代替的実施形態を示す図である。
図20a】本発明に係る組織アンカーの第6の代替的実施形態を示す図である。
図20b】本発明に係る組織アンカーの第6の代替的実施形態を示す図である。
図20c】本発明に係る組織アンカーの第6の代替的実施形態を示す図である。
図20d】本発明に係る組織アンカーの第6の代替的実施形態を示す図である。
図20e】本発明に係る組織アンカーの第6の代替的実施形態を示す図である。
図21a】本発明に係る組織アンカーの第7の代替的実施形態を示す図である。
図21b】本発明に係る組織アンカーの第7の代替的実施形態を示す図である。
図21c】本発明に係る組織アンカーの第7の代替的実施形態を示す図である。
図21d】本発明に係る組織アンカーの第7の代替的実施形態を示す図である。
図22a】本発明に係る組織アンカーの第8の代替的実施形態を示す図である。
図22b】本発明に係る組織アンカーの第8の代替的実施形態を示す図である。
図22c】本発明に係る組織アンカーの第8の代替的実施形態を示す図である。
図22d】本発明に係る組織アンカーの第8の代替的実施形態を示す図である。
図23a】本発明に係る組織アンカーの第9の実施形態を示す図である。
図23b】本発明に係る組織アンカーの第9の実施形態を示す図である。
図23c】本発明に係る組織アンカーの第9の実施形態を示す図である。
図23d】本発明に係る組織アンカーの第9の実施形態を示す図である。
図23e】本発明に係る組織アンカーの第9の実施形態を示す図である。
図24a】本発明に係る組織アンカーの第10の実施形態を示す図である。
図24b】本発明に係る組織アンカーの第10の実施形態を示す図である。
図24c】本発明に係る組織アンカーの第10の実施形態を示す図である。
図24d】本発明に係る組織アンカーの第10の実施形態を示す図である。
図25a】本発明に係る組織アンカーの第11の実施形態を示す図である。
図25b】本発明に係る組織アンカーの第11の実施形態を示す図である。
図25c】本発明に係る組織アンカーの第11の実施形態を示す図である。
図25d】本発明に係る組織アンカーの第11の実施形態を示す図である。
図26a】本発明に係る組織アンカーの第12の実施形態を示す図である。
図26b】本発明に係る組織アンカーの第12の実施形態を示す図である。
図26c】本発明に係る組織アンカーの第12の実施形態を示す図である。
図26d】本発明に係る組織アンカーの第12の実施形態を示す図である。
図27a】第12の実施形態の変更版である本発明に係る組織アンカーの第13の実施形態を示す図である。
図27b】第12の実施形態の変更版である本発明に係る組織アンカーの第13の実施形態を示す図である。
図27c】第12の実施形態の変更版である本発明に係る組織アンカーの第13の実施形態を示す図である。
図27d】第12の実施形態の変更版である本発明に係る組織アンカーの第13の実施形態を示す図である。
図28a】本発明に係る組織アンカーの第14の実施形態を示す図である。
図28b】本発明に係る組織アンカーの第14の実施形態を示す図である。
図28c】本発明に係る組織アンカーの第14の実施形態を示す図である。
図28d】本発明に係る組織アンカーの第14の実施形態を示す図である。
図28e】本発明に係る組織アンカーの第14の実施形態を示す図である。
図28f】本発明に係る組織アンカーの第14の実施形態を示す図である。
図28g】本発明に係る組織アンカーの第14の実施形態を示す図である。
図28h】本発明に係る組織アンカーの第14の実施形態を示す図である。
図28i】本発明に係る組織アンカーの第14の実施形態を示す図である。
図29a】本発明に係る組織アンカーの第15の実施形態を示す図である。
図29b】本発明に係る組織アンカーの第15の実施形態を示す図である。
図29c】本発明に係る組織アンカーの第15の実施形態を示す図である。
図29d】本発明に係る組織アンカーの第15の実施形態を示す図である。
図30a】本発明に係る組織アンカーの第16の実施形態を示す図である。
図30b】本発明に係る組織アンカーの第16の実施形態を示す図である。
図30c】本発明に係る組織アンカーの第16の実施形態を示す図である。
図30d】本発明に係る組織アンカーの第16の実施形態を示す図である。
図31a】本発明に係る組織アンカーの第17の実施形態を示す図である。
図31b】本発明に係る組織アンカーの第17の実施形態を示す図である。
図31c】本発明に係る組織アンカーの第17の実施形態を示す図である。
図31d】本発明に係る組織アンカーの第17の実施形態を示す図である。
図32a】既知の3D印刷技術を使用して製造された本発明に係る1対の組織アンカーを示す図である。
図32b図33に示す組織アンカーの形成パーツとして3D印刷されたマイクロニードルの配列の拡大図である。
図33】本発明の組織アンカーの生体力学的試験のための組織床を示す図である。
図34a】試験目的のために生産されたいくつかの試作組織アンカーの下面を示す図である。
図34b図34aに示す組織アンカー上で実施された試験の結果を示す図である。
図35a】本発明に係る組織アンカー上で実施された機械的試験手順を示す図である。
図35b図35aに示す試験の結果を示す図である。
図36】マイクロニードル配列試料の顕微鏡的概略図(上)、対応する輪郭(中)、および、本発明に係る組織アンカー上に見られマイクロニードルとの比較目的のためのマイクロニードルの貫入深さを示す組織構造画像である。
図37】本発明に係る組織アンカー上で使用するよう構成されたマイクロニードル配列(上)、対応する輪郭(中)、およびマイクロニードルの貫入深さを示す組織構造画像の概略図である。
図38】本発明に係る組織アンカーの一実施形態上で実施された試験の組織構造結果を示す図である。
図39】本発明に係る組織アンカーの一実施形態の生体外適用を示す図である。
図40】ボランティアの右腕の三角筋粗面に対する本発明の組織アンカーの一実施形態の埋入を示す図である。
図41図40に示す組織アンカーの取り付けに対する皮膚の時間的応答を示す図である。
図42a】ウェット電極(左)、および、本発明の一実施形態に係る組織アンカーにより画定される電極(右)を示す図である。
図42b図42aに示す電極および組織アンカーから得られたEMGデータを示す図である。
図43a】本発明に係る組織アンカーの第17の代替的実施形態を示す図である。
図43b】本発明に係る組織アンカーの第17の代替的実施形態を示す図である。
図43c】本発明に係る組織アンカーの第17の代替的実施形態を示す図である。
図43d】本発明に係る組織アンカーの第17の代替的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
添付する図面のうちの図1図7をここで参照すると、本発明の好適な実施形態に係る、例えば皮膚、硬膜、血管、腸壁、または、身体の外部または内部に配置される任意の他の組織における切開部などの創傷閉鎖用途に特に適した、様々な外科的、医療的、および診断的な適用において使用するための、全体が10で示される組織アンカーが示されている。加えて、このアンカーは、所望の位置における近傍の組織に対する手術装置およびインターベンショナル装置(図示せず)の取り付けを、または、負傷後の組織の再付着を、支援するために使用され得る。組織アンカー10は、組織、骨、または任意の他の好適な生体基質に対して使用され得、薬物送達などの用途において、または、バイオセンサを固定するために、および、経皮的電気神経刺激(TENS)、および/または、筋電図検査(EMG)ならびに心電図検査(ECG)としても知られる、筋肉など組織における電気活動の測定のために、使用され得る。
【0052】
組織アンカー10は、任意の好適な物質(例えば、ポリマー、金属、または物質の複合物)で形成され得る本体12を含み、例えば生体吸収性物質を、または組織内方成長を促進するために部分的または全体的に多孔性を示す物質を、含み得る。特定の寸法には限定されないが、図示される典型的な実施形態では本体12は、長手方向軸LLに沿って測定された9mmの領域の長さと、長手方向軸LLに対して垂直に測定された6mmの領域の幅と、長さおよび幅の両方に対して垂直な2.5mmの領域の厚さと、を有する。これらの寸法はもちろん、特に特定の外科的適用に適合するために変動し得る。参照がより容易となるよう、今後、長さに沿った測定は「X」座標と呼ばれ、幅に沿った測定は「Y」座標と呼ばれ、深さに沿った測定は「Z」座標と呼ばれるであろう。
【0053】
本体12は第1区域14および第2区域16を含む。後に詳しく説明されるように、第1区域14および第2区域16は、第1方向において互いに対して、および図1a、図1b、図1cに示される非展開状態と図2a、図2b、図2cに示される展開状態との間で、移動可能である。第1区域14および第2区域16は、互いに対して相互に係合可能であり、図示の実施形態では、第1区域14は、本体12の開端部から長手方向に延長し閉端部20において終端する中央溝部18を画成する。この中央溝部18は第1区域14の対向部分を架橋し、それにより、溝部18の両側にあるこれらの対向部分を互いに対して接合するよう機能する。したがって図示の実施形態では、第1区域14は実質的にC字形状またはU字形状であるということができる。第2区域16は溝部18内に摺動可能に受容される形状および寸法を有する。第2区域16には、それぞれの側方側面に沿ってキー22が設けられている一方で、溝部18のそれぞれの側面壁部には、その中に対応するキー溝24が設けられていると好適である。もちろん、第1区域14と第2区域16との間の相対運動を可能にするための任意の他の好適な配列または構成が用いられ得ることは理解されるであろう。図示の実施形態では第1区域および第2区域が互いに対して可逆的に移動可能である一方で、他の実施形態では、移動は不可逆的であり得る。
【0054】
第1区域14および第2区域16の両方はそれぞれ少なくとも1つの突起体を、好適には、第1区域14から突き出る6つの逆刺またはマイクロニードル26の形態にある、および第2区域16から突き出る6つの逆刺またはマイクロニードル28の形態にある、複数の突起体を、含む。それぞれの場合では、逆刺26および28はそれぞれ、第1区域14および第2区域16の下面または組織接触表面30から延長する。逆刺26および28の各逆刺は、組織接触表面30に画成された根底部32と、それぞれの逆刺26および28の自由端に設けられた鋭利なまたは尖頭状の先端部34と、を含む。任意の他の好適な構成が用いられ得るが、好適な実施形態では、逆刺26および28は、根底部32から先端部34まで均一にテーパする。しかし均一なテーパは、他で詳細に説明するように、逆刺26および28を組織に完全に容易に挿入する点において有利であることが見出されている。
【0055】
逆刺26および28は、組織接触表面30が存在する「X」平面に対して鋭角αで傾斜し、第1区域14と第2区域16との間の相対運動の方向(本体12の長手方向軸LLに対して実質的に平行である「第1」方向とも呼ばれる)としての逆刺26および28の主要軸に沿って根底部32から先端部34まで主に同一方向に延長する。換言すると逆刺26および28は「Z」寸法成分よりも大きい「X」寸法成分を有すると言うことができる。
【0056】
逆刺26および28は好適には、図示の好適な実施形態では、およそ2mmの根底部32から先端部34までの軸方向長さLの寸法と、およそ0.9mmの「Z」座標長さの寸法(これ以後はLと呼ばれる)と、を有する、いわゆる「マイクロニードル」の形態にある。逆刺26および28の好適な角度傾斜αは「X」平面に対して15度~50度の範囲、より好適には20度~30度の範囲、最も好適にはおよそ26.5度であることが見出されている。各逆刺26および28の「X」座標長さLおよび「Z」座標長さLの両方は、各平面に対する角度傾斜に応じて変動するであろう。もちろん、これらの寸法が代表的な値であること、および、特に異なる手術もしくは医療用途または組織種類に適合するために変動し得ることは、理解されるであろう。逆刺26および28の寸法は任意の所与の部分にわたって変動し得る。例えば、周辺部に位置する逆刺は中心に位置する逆刺よりも長さが短くてもよく、またはその逆が成り立ってもよい。同様に、逆刺の長さおよびアスペクト比は複数の平面において変動し得る。
【0057】
逆刺26および28は、第1区域14から突出する逆刺26は、第2区域16から突出する逆刺28と全般に逆方向に延長するよう配列および配向される。このように逆刺26は逆刺28に対して実質的に対面または対向する。少なくとも組織アンカー10が展開状態および/または非展開状態のいずれかにあるとき(最も好適には展開状態にあるとき)逆刺26のうちの少なくとも1つの逆刺26が逆刺28のうちの少なくとも1つの逆刺28と重なり合うことも好適である。加えて、第1区域14および第2区域16が等しい個数の逆刺26および28を有するときに最大の固着が達成されることも見出されている。図示の実施形態では、この本数はもちろん変動し得るが、第1区域14および第2区域16はそれぞれ6つの逆刺26および28を有する。逆刺26および28は好適には、逆刺26および28の任意の一方の先端部34が、近傍の逆刺26および29の根底部32に対してちょうど到達するかまたは軽微に重なり合う(換言すると、近傍の逆刺26および28間の間隔がおよそLとなるよう逆刺が直線状に配列される)よう、「X」方向において互いに離間する。好適な実施形態では、第1区域14上の逆刺26の列と第2区域上の逆刺28の近傍の列との間の「Y」間隔は、好適には、第2区域16の逆刺28間の「Y」間隔の1.5倍である。この距離は、使用時に組織アンカー10により係合される組織に対する剪断損傷を回避するにあたり効果的であることが見出されている。第1区域14および第2区域16が非展開状態と展開状態との間で互いに対して移動される距離は好適にはLの2.5倍であるが、例えばLの2倍以下であってもよい。
【0058】
逆刺26および28は、最初に、最少侵襲的に組織に対して逆刺26および28を押し付けるために、本体12の組織接触表面30を組織上の固着部位に対し下方に押圧することにより、アンカー10が固定される少なくとも組織Tの上方層または領域に貫入するよう、配置される。組織アンカー10は、図3で示されるように非展開状態でアンカー部位に適用される。逆刺26および28が組織Tに対して係合されると、第1区域14および第2区域16は図4で示されるように部分的に展開された状態へと互いに対して移動される。非展開状態から部分的に展開された状態への第1区域14および第2区域16の最初の相対的移動の結果として、図4で示されるように逆刺26および28が組織に引き込まれることとなる。この相対的移動の距離は、逆刺26および28の全長が組織Tに引き込まれるよう、好適にはLの2倍である。この時点で逆刺26および28は組織に完全に挿入され、次に、第1区域14および第2区域16は図5で示されるような完全に展開された状態にさらに移動される。この最終的な移動により、逆刺26および28により係合される組織(例えば皮膚の場合にはコラーゲンネットワーク)に非破壊的な剪断変形が生じ、それにより後に説明するように、組織に対する堅牢な固着部を達成するために組織と逆刺26および28とに能動的に係合し、かつ、複数の平面における力に抗する能力を有する、局所的な弾性変形が効果的に形成される。この最終的な移動の距離は、必要に応じてこれらの距離がもちろん変動し得ることを理解した上で、好適にはLの0.5倍である。この距離は、組織Tに対していかなる損傷も生じさせない一方で必要なレベルの保持を提供するにあたり十分な剪断変形を、逆刺26および28により包囲されるかまたは作用される組織に生じさせることが見出されている。
【0059】
図6および図7を参照すると、組織アンカー10は、それぞれの逆刺26および28のそれぞれの下方に直接的に1つずつ、組織接触表面30に形成された凹陥部35を含み得る。凹陥部35は、各逆刺26および28の挿入により移動された組織の少なくとも一部がそれぞれの凹陥部35内に受容されることを可能にし、それにより逆刺26および28のそれぞれの完全な挿入を可能にすることにより、組織に対する第1区域14および第2区域16の改善された固着を支援する。凹陥部35は、各逆刺26および28の全長または作業長さLも効果的に増加させるが、普通であれば組織接触表面30の下方に部分的に収容されるであろう根底部32を完全に露出させる。使用時に各凹陥部35に含まれる組織の体積は、組織が本体12に対して効果的に噛み合うかまたは絡み合うため、アンカー10の横方向移動を防止する機能も有する。凹陥部35の寸法は変動し得る。図7では、円形の断面エリアを有する逆刺またはマイクロニードル26および28が示されている一方で、図8では、三角形の断面エリアを有する代替的な逆刺またはマイクロニードル26および28が示されている。したがって、様々な他の代替的な断面エリアが逆刺26および28に対して用いられ得ることが理解されるべきである。
【0060】
加えて、記載の実施形態は組織接触基部を有する一方で、細長いマイクロニードルが直径において段階的変化を示す代替的な実施形態が考えられる。係るマイクロニードルは、組織接触表面と、マイクロニードルが組織へとさらに前進することを防止するための固い肩部と、を効果的に画成する。このように本体は、外側の組織層に対して高い位置に着座し得る。このことは、パッチアンドポーク(patch-and-poke)用途の場合と同じく薬物送達に対して有利となり得る。
【0061】
第1区域14および第2区域16を展開状態に保持するために、組織アンカー10は、第2区域16の上方表面に形成された、溝部18内で摺動する実質的に円形のタブ36aの形状を有するロック手段と、溝部18の閉端部に形成された対応した形状および寸法を有するソケット36bであって、第2区域16が例えば図2aで示すように完全に第1区域14へと移動されたときにタブ36aを受容および保持するソケット36bと、を含む。ソケット36bは、溝部18がソケット36bに進入する地点がタブ36aの進入に対する軽微な制限を画成するよう、溝部18の幅または「Y」寸法よりわずかに大きい直径を有する。このように、第1区域14および第2区域16が互いに対して移動されたときにタブ36aが最初に溝部18へと押し込まれると、第1区域14の対向部分は、溝部18がわずかに大きいタブ36aを収容するために「Y」方向において互いから離間する方向に強制的に弾性変形されるであろう。この弾性変形は第1区域14の逆刺26を移動させ、係る移動は、マイクロニードルの挿入および埋入の効率を向上させ得る。次にタブ36aは溝部18に沿って移動した後、ソケット36bに到達および進入する。その時点で、第1区域14の弾性は溝部18を通常サイズに逆戻りさせ、それによりタブ36aはソケット36b内に保持される。この過程は組織アンカー10を開放するために必要に応じて逆転され得る。このようにしてタブ36aおよびソケット36bは、展開状態に組織アンカー10を保持するために第1区域14に対して第2区域16をロックする簡単かつ効果的な手段として機能する。タブ36aおよびソケット36bが、好適には可逆的に第1区域14および第2区域16を互いに対してロックするよう、代替的に動作可能である任意の他の機能的代替物と置き換えられ得ることは、当業者により理解されるであろう。
【0062】
組織アンカー10が比較的小さい寸法を有するため、第2区域16に対して第1区域14を移動させるために、本体12は、1対の凹部37aおよび37bが上方表面上に、第1区域14および第2区域16のそれぞれに対して1つずつ、提供され得る。これらの凹部37aおよび37bは、ニードルノーズプライヤなどの工具(図示せず)により係合され得る。その先端部は、第1区域14および第2区域16を非展開状態と展開状態との間で操作するために使用され得る。任意の他の好適な機能的代替物がこの動作を達成するために用いられ得ることも理解されるであろう。
【0063】
逆刺26および28の対向する組を提供することにより、アンカー10がその上で展開される組織の局所的領域は、剪断変形を印加し、それにより組織アンカー10を定位置に堅牢に固定するために、効果的に捕捉され、重なり合う逆刺26および28の間で軽微に押圧および伸長される。特に組織アンカー10が展開状態に移動されるとき、本体12の下方にある組織の局所的領域は、第2区域16に対して第1区域14が移動され、その結果として、好適には重なり合う逆刺28に対する逆刺26の移動により、伸縮自在に変形または押圧および伸長される。組織のこの弾性的な剪断変形の結果として、組織により反応的力が逆刺26および28に対して印加され、それにより逆刺26および28の周囲における組織が能動的に係合および保持される。その結果として、逆刺26および28は必要な保持を達成するために顕著な深さまで貫入する必要はなく、この寸法は必要に応じて変動し得るが、根底部32から先端部34まで例えば0.1~5mmの範囲の長さを、および、1000μmより小さい貫入深さLを、有し得る。結果として、皮膚ベースの適用に対して、逆刺26および28は、多くの痛覚受容体および血管の深さまで貫入することがないような寸法を有し得る。逆刺26および28のサイズが小さくなることは、硬膜破砕および硬膜損傷の修復などにおけるように組織の全層の貫入が忌避される外科的創傷閉鎖適用においてさらに有利である。
【0064】
皮膚または他の基質上の定位置おいて係合されると、組織アンカー10は、様々な機能(例えば縫合糸、外科用メッシュ、バイオセンサ、および任意の他の好適な外科用もしくは医療用装置またはシステムの固定)がそこを介して実施され得るアンカー点として使用され得る。加えて組織アンカー10は、組織アンカー10が薬物送達システムとして使用されることが可能となるよう、1つまたは複数のマイクロニードル(図示せず)が提供され得る。逆刺26および28のうちの1つまたは複数の逆刺がこれらのマイクロニードルとして二重の機能を有し得る。この場合、逆刺26および28は、逆刺26および28により貫入された組織への薬物送達を支援するための1つまたは複数の内腔を含み得る。同様に、逆刺26および28のうちの1つまたは複数の逆刺は、経皮的電気神経刺激(TENS)を、および/または、組織における電気活動の測定(例えば筋肉、別に筋電図検査(EMG)および心電図検査(ECG)としても知られる)を、実施するために用いられ得る。係る用途では1つまたは複数の逆刺26および28は、導電性物質(好適には金属)で形成または被覆され得る。逆刺26および28が組織に貫入すると、アンカー10は、従来の表面ベースのシステムよりも改善された電気信号測定値を提供し、それに加えて反復的測定は、アンカー10の位置が組織上で固定されるため、改善された確度をもたらす。
【0065】
加えて、非展開状態から展開状態への移動を支援するため、組織アンカー10は、互いに対して完全に係合されるよう第1区域14および第2区域16を付勢するために第1区域14と第2区域16との間で作用するよう配置された簡単なバネなどの付勢手段(図示せず)を含み得る。
【0066】
好適な適用では、組織アンカー10は、図9図12で示されるように創傷閉鎖システム50を形成するために配列状で用いられる。係る適用に対して、組織アンカー10のそれぞれは、本体12上に提供されるかまたは本体12に対して一体形成された(好適には、外科医により容易にアクセスされるよう、第1区域14に対して一体成形され、本体12の外側に位置される)少なくとも1つの小穴38を含む。小穴38の個数および/または位置が必要に応じて変動し得ることは、もちろん理解されるであろう。加えて小穴38は、縫合糸などをアンカー10に繋ぐかまたは別様に固定するよう適応された任意の他の機能的に代替する結合装置(例えば嵌頓型の結合装置)と置き換えられ得る。図示の実施形態では、小穴38は第1区域14の一方の横方向縁部に沿って提供される。組織アンカー10は、1組の組織アンカー10が創傷Wの両側に提供される状態で、皮膚または他の組織Tに対して切開部または創傷Wの周りに展開される。組織アンカー10のうちの各組織アンカー10は、各組織アンカーの長手方向軸LLが、図示のように、創傷の主要軸に対して実質的に平行に整列されるよう、向けられる。しかしアンカー10は、長手方向軸LLが創傷Wに対して実質的に垂直に配置される状態で、展開されてもよい。その場合、小穴38は好適には本体12のより短い側部上に再配置されるであろう。それにより小穴38が創傷Wに対して対向することとなる。
【0067】
アンカー10は、図9で示されるように、各アンカー10の小穴38が創傷Wに対して好適に対向する状態で、非展開状態で組織に適用される。したがって創傷の一方の側にあるアンカー10は、創傷Wの対向する側上にあるアンカー10に対して逆方向に配置される。逆刺26および28が組織Tに貫入する状態で組織T上に配置されると、アンカー10は、図10で示されるように第1区域14に対して第2区域16を摺動させることにより、展開状態に移動される。組織アンカーが展開状態に置かれることにより、組織アンカー10のうちの各組織アンカー10が定位置において能動的に固定される。その時点で、縫合糸Sの形状にある張力部材が、第1アンカー10の小穴38に通され、次に、創傷Wを跨いで対向するアンカー10に通され、創傷Wを逆方向に斜方に跨いで、最初に縫合糸Sが通されたアンカー10に隣接するアンカー10に通され、組織アンカー10の配列全体が縫合糸Sにより捕捉されるまで、これが継続される。次に、図12で示されるように創傷Wの対向する側部を圧着状態へと引き寄せるために、縫合Sに張力が印加される。次に縫合糸Sは、創傷Wを閉止姿勢で保持するために、好適に固定される。対向する組の逆刺26および28間での組織Tの局所的変形により、これらのアンカー10のうちの各アンカー10を能動的に保持することは、各アンカー10が複数の平面における力に対抗可能となることを保証し、それにより、張力が与えられた縫合糸Sにより印加される力に対抗しながらも各アンカー10が定位置に留まることが保証される。
【0068】
ここで図13および14を参照すると、組織アンカー10の配列を展開する過程を簡略化するために、創傷閉鎖システム50は、組織アンカー10の配列を事前決定された位置および配向に保持するよう適応されたテンプレート60を含み得る。このテンプレート60は単一の構成要素として、したがって単一のステップで、組織Tに貼り付けられ得る。テンプレート60は例えば単一の長方形または他の形状を有するフレーム70を含み得、このフレーム70に対して、これらの組織アンカー10のうちの各組織アンカー10は、例えば、これらの組織アンカー10のうちの全組織アンカー10が組織Tに対して係合された後フレーム70および/または組織アンカー10から素早くかつ容易に破断または別様に切り離されるよう設計された破砕可能要素80により、固定される。
【0069】
創傷閉鎖システム50に対する展開過程をさらに簡略化するために、上述の縫合糸Sは、組織アンカー10がフレーム70から解放されるとただちに創傷Wを閉止するために縫合糸Sに張力が印加されることが可能となるよう、様々な組織アンカー10間において事前決定された構成で事前配置され得る。
【0070】
代替的な方法体系では、創傷閉鎖システム50は、その手順が完了すると閉止システム50がただちに切開部を閉鎖するために利用され得るよう、テンプレート60の有無に関わらず、手術手順の一部として、形成されるよう提案される切開の部位の周辺に事前展開され得る。したがって、手術手順の実施に要する時間が短縮されることに加えて、閉鎖システム50は、切開部の対向する側部を切開以前の位置へと互いに対して正確に再整列させ、それにより美容的成果が顕著に改善される手段としても機能するであろう。理想的には、アンカー10の各列は、創傷が開かれている間に手術開窓部を通ってアンカー10が損失されることを防止するよう機能する相互連結部材(図示せず)を有するであろう。
【0071】
代替的に創傷閉鎖システム50は、可撓性を有するポリマーシート(図示せず)などの形状におけるテンプレートを含み得る。このポリマーシートには、シート下面に接着剤が塗布されており、組織アンカー10の配列が事前決定された配列(例えば図9図12で示される2次元マトリックス)で固定されている。使用時、外科医は、組織アンカー10が組み込まれたシートを手術部位に置き、アンカー10が、計画された切開部位の周りの2つの均等的に離間された列に展開されるよう、シートを皮膚または他の組織に接着させる。アンカー10がそのように配置されて展開状態に保たれた後、次に外科的切開が形成され、ポリマーシートが組織から剥離されると、アンカー10が定位置に残される。再び、手術手順が完了すると、次に外科医が、創傷縁部を操作および接近させ、上述のように張力が印加された縫合糸Sもしくは任意の他の好適な張力部材を、または、アンカー10間で創傷Wを跨いで延長する架橋要素(図示せず)を、使用して閉鎖が達成される。組織アンカー10は、アンカー10の展開を支援するために、個別的に接着性のテープまたは帯状細片(図示せず)上に提供されてもよい。
【0072】
係る創傷の好都合かつ正確な閉鎖をさらに支援するために、組織アンカー10および創傷閉鎖システム50の様々な側面が変更され得る。例えば上述のように、組織アンカー10の配列に対して、組織アンカー10の対向する列間で延長する縫合糸または機能的に代替的な張力部材もしくは架橋要素(図示せず)が事前に搭載されてもよい。本体12上における小穴38の位置は、創傷の縁辺の接近を改善するために、調整可能であり得る。追加的または代替的に、縫合糸には、上述の結節点(図示せず)と各組織アンカー10の小穴38との間の噛み合いの性質により、創傷の縁辺および接近が漸進的に調整されることを可能にするために、縫合糸の長さに沿って事前決定された間隔で結節点のような結び目が提供され得る。それにより、従来の手段により縫合糸をアンカー10に別様に固定することが不必要となる。組織アンカー10の形状および構成も、特定の外科的適用に適合させるために、変動され得る。例えば組織アンカーの本体は、逆刺の組を上述のように非展開状態と展開状態との間で移動させるために、巻かれていない状態と巻かれた状態との間で移動し得る湾曲表面として画成され得る。
【0073】
図15図31では、本発明に係る組織アンカーのいくつかの代替的実施形態が示されている。これらの代替的実施形態のうちの各実施形態では、同様の構成要素は同様の参照番号が付されており、特記なき限り、同様の機能を実行する。
【0074】
図15では、全体が110で示される組織アンカーの第1の代替的実施形態が示されている。アンカー110は再び互いに対して可逆的に移動可能な第1区域114および第2区域116を含み、第1区域114および第2区域116上に等しい個数の逆刺を含み、これは対称的として定義される。
【0075】
図16では、全体が210で示される、本発明に係る組織アンカーの第2の代替的な実施形態が示されている。アンカー210は、互いに対して移動可能な第1区域214および第2区域216を含み、第2区域216は第2区域216から突き出る単一の逆刺のみを有し、これは非対称的と定義される。
【0076】
図17a~図17dでは、全体が310で示される、本発明に係る組織アンカーの第3の実施形態の様々な図が示されている。組織アンカー310は、互いに対して可逆的に移動可能な第1区域314および第2区域316を含む。第1区域314は、逆刺326の配列を含み、第2区域316も逆刺328の配列を含む。第1の実施形態とは異なり、第1区域314上の逆刺326は組織アンカー310の下面に対して実質的に垂直に延長し、その一方で、第2区域316上の逆刺328は第1区域314の逆刺326に向かって傾斜されている。
【0077】
図18a~図18fでは、全体が410で示される、本発明に係る組織アンカーの第4の実施形態の様々な図が示されている。組織アンカー410は第1区域414を含む。組織アンカー410の間に、第1区域414に対して移動可能な第2区域416が配置されている。第1区域414は傾斜逆刺426の配列を含み、その一方で、第2区域416は、実質的に垂直に延長する逆刺428のより大きい配列を含む。
【0078】
図19a~図19dでは、全体が510で示される、本発明に係る組織アンカーの第5の代替的実施形態の様々な図が示されている。組織アンカー510は、第1区域514およびそれに対して移動可能な第2区域516を含むが、この実施形態では、第2区域516は、第1区域514上に設けられたいくつかのキー溝524であって、第2区域516の1対のガイド棒522がその内部に捕捉されるキー溝524により、2段階経路に沿って移動するよう制約されている。図19bでは、非展開状態にある組織アンカー510が示され、図19cでは、第2区域516が展開状態へと部分的に移動され、かつ、第1段階の相対的移動が完了した状態にある、組織アンカー510が示され、その一方で図19dでは、完全に展開された状態にある組織アンカー510が示されている。この完全に展開された状態では、第2区域516は、キー溝524により画成される相対的移動の第2段階の横断を完了した状態にある。
【0079】
図20a~図20eでは、全体が610で示される、本発明に係る組織アンカーの第6の代替的実施形態の様々な図が示されている。この代替的な実施形態では、組織アンカー610は医療装置(特にグルコース測定器)として構成される。アンカー610は、内側および外側のディスク状構成要素からなる第1区域614を含み、これらのディスク状構成要素間に、第2区域616が捕捉されている。第2区域616は第1区域614の内側部分と外側部分との間に配置された環状帯の形状を有する。第1区域614および第2区域616は、第1区域614上の逆刺626の配列および第2区域616上の逆刺628の対応する配列が移動するよう、同心円状に配置され互いに対して可逆的に移動または回転可能である。組織アンカー610は追加的に、アンカー610の下面から突き出るフィラメントまたはプローブ40を含む。プローブ40は、アンカー610が患者の皮膚などの展開部位に固定されると、必要な医療的機能(例えば血糖値の監視など)を実施するために、皮膚または他の組織内に挿入および保持される。任意の他の形状のプローブまたはセンサが代替的または追加的に組織アンカー610上に提供され得ることが、もちろん理解されるであろう。
【0080】
図21a~図21dでは、全体が710で示される本発明に係る組織アンカーの第7の実施形態の様々な図が示されている。1対のアンカー710が、例えば患者の腕など(例えば中心静脈線など)の上の定位置に点滴を保持するためにカニューレCをその内部に受容および保持するよう適応された架台45により、一緒にリンクまたは架橋されている。これらのアンカー710のうちの各アンカー710は、前述のように患者の皮膚上で定位置に固着される。
【0081】
図22a~図22dでは、全体が810で示される本発明に係る組織アンカーの第8の実施形態の様々な図が示されている。この実施形態の組織アンカー810は、特定の用途に適合するために非常に低いプロファイルを有するよう設計されており、シート状の形状を有する第1区域814および第2区域816を含み、好適には、例えば金属などの物質のシートから必要な形状を打ち抜きおよび加圧することにより製造される。図22aおよび22cでは、非展開状態にある組織アンカー810が示され、図22cでは、展開の準備において組織基質の上方表面上に置かれたアンカー810が示され、その一方で、図22bおよび図22dでは、展開状態にあるアンカー810が示され、図22dでは、組織基質に固着されたアンカー810が示されている。アンカー810は、第2区域816を形成するシートから部分的に押し出されたタブ36aを含み、その一方で、第1区域814は、展開状態または構成において互いに対して第1区域および第2区域をロックするために、対応した形状を有し対応して配置された、タブ836aを受容するために物質から完全に打ち抜かれたソケット36bを含む。
【0082】
図23b~図23eでは、全体が910で示される本発明に係る組織アンカーの第9の実施形態の様々な図が示されている。組織アンカー910は、以前の実施形態の組織アンカー810に対して、構築および構成において類似し、低いプロファイルを提供するために平坦なシート状の物質から形成された、第1区域914および第2区域916を有する。しかし組織アンカー910は、例えば、医療装置などの内腔を介して、制限されたアクセスを有する部位にアンカー910を導入するために長手方向軸LLが直線状である図23aで図示される巻かれた構成と、長手方向軸が曲線状である図23b~図23eで図示される巻かれていない構成と、の間で移動されるよう設計されている。アンカー910を巻かれた構成に保持するために「Y」方向における曲率を有するアンカー910が形成される。したがってアンカー910を巻かれていない構成に移動させるためには「Z」方向に力を印加することが要求されるであろう。図23b~図23cでは、巻かれず展開されていない状態にあるアンカー910が示され、その一方で、図23dおよび図23eでは、巻かれず展開された状態にあるアンカー910が示されている。巻かれていない構成ではアンカー910は「X」方向に長手方向軸LLに沿って湾曲され、アンカー910が固定されることになっている組織の表面が同様の曲率を有する(例えば腸などの壁部)用途において使用されるよう意図されている。アンカー910の第1区域914および第2区域916における様々な開口部または穿孔は、巻かれた構成と巻かれていない構成との間の移動を支援するために、アンカー910の可撓性を向上させる。この機能が任意個数の代替的方法で達成され得ることが、もちろん理解されるであろう。
【0083】
図24a~図24dでは、全体が1010で示される本発明の第10の実施形態に係る組織アンカーの様々な図が示されている。この実施形態のアンカー1010は、第8の実施形態のアンカー810に対して設計および構築において非常に類似しているが、再び、非常に低いプロファイルを有する一方で湾曲した組織表面に好ましくはより良好に形状一致するために、「Y」方向における曲率または凹状側面を含む。アンカー1010の第1区域1014および第2区域1016は再び好適にはシート状物質から形成され、最も好適には、シートメタルなどから圧断または別様に形成される。次に、逆刺1026および1028は、組織に対してアンカー1010を保持するために非展開状態から展開状態に移動されたときに前述の組織の剪断変形を達成するよう動作可能な対向する配列を提供するために、単に外向きに「Z」方向に湾曲され得る。
【0084】
図25a~図25dでは、全体が1110で示される本発明に係る組織アンカーの第11の実施形態が示されている。この第11の実施形態は、効果的に、アンカー1110が図25a~図25cで図示される巻かれた構成と、図25dで図示される巻かれていない構成と、の間で移動可能である、さらなる代替的な実施形態である。巻かれた構成ではアンカー1110は円筒形状へと丸められる。それによりアンカー1110は、カテーテル(図示せず)などの送達装置の内腔を通して展開されるにあたり好適な形状となり、展開部位に配置されると、アンカー1110は巻かれていない構成へと移動され、この構成では、管状の巻かれた構成が、非展開状態から展開状態への移動の準備において、平板状シートへと外向きに開かれる。次にアンカー1110は、固着を達成するために組織へと逆刺1126および1128を埋入するために第1区域1114および第2区域1116を互いに対して移動させることにより図25dで示される非展開構成から展開構成へと移動され得る。
【0085】
図26a~図26dでは、全体が1210で示される本発明に係る組織アンカーの第12の実施形態が示されている。アンカー1210は、遥かに大きい表面積を画成し、この表面エリア上には、対向する逆刺1226および1228の配列が配列されており、この対向する逆刺の配列は、様々な使用(例えば以前の実施形態に係る組織アンカーのうちの1つまたは複数の組織アンカーを試験するなど)に対する試験基板として機能するために、実物または人工の組織(図示せず)の層がその上に保持される支持体として使用されることが意図されたものである。アンカー1210の第1区域1214および1216は、複数の噛み合い部分を含み、以前の実施形態の全部と同様に、アンカー1210を、図25a、図25cおよび図25dで示される非展開状態と、図25bで示される展開状態と、の間で移動させるために、アンカー1210の長手方向軸LLに対して平行な第1方向において互いに対して移動可能である。使用時、組織の層は、アンカー1210が非展開構成にある状態で逆刺1226および1228の配列の上方におかれ、次に第1区域1226および第2区域1228は、アンカー1210を展開状態に移動させるために、互いに対して移動される。これにより、逆刺1226および1228が組織に引き込まれ、それにより組織の層がアンカー1210上で堅牢に保持される。次にこの組織は、上述のように試験基板として使用され得る。組織アンカー1210は、後に詳述されるように、試験がその上で実施可能となるよう、組織基質に対して堅牢かつ硬質の裏板またはプラットフォームを提供する。
【0086】
図27a~図27dでは、全体が1310で示される本発明に係る組織アンカーの第13の実施形態が示されている。この第13の実施形態は、逆刺1326および1328が存在しない領域が存在する点の他は第12の実施形態と実質的に同等である。逆刺が存在しない領域は、試験目的のために特定の外科的または医療的シナリオをシミュレートするために、使用時に1つまたは複数の医療または手術装置が、アンカー1310に固定された組織の層を直接的に通り抜けることを可能にするために使用され得る。
【0087】
図28a~図28iでは、全体が1410で示される、本発明に係る組織アンカーの第14の実施形態の様々な図が示されている。組織アンカー1410は、第1区域1414と、第1区域1414に対して係合可能であり、かつ、図28c、図28d、ならびに図28gで図示される非展開状態と図28e、図28f、ならびに図28iで図示される展開状態との間で移動可である能第2区域1416を含む本体1412を含む。第1区域1414が図28aでは分離状態で図示され、その一方で、第2区域1416が図28bでは分離状態で図示されている。非展開状態では、第1区域1414上の逆刺1426は、第2区域1416上の逆刺1428に対して「Z」方向において異なる高さに配置される。非展開状態から展開状態に展開することにより、逆刺1426および1428の両方は互いに向かって「X」方向に移動され、「Z」方向において位置合わせされる。
【0088】
図29a~図29dでは、全体が1510で示される本発明に係る組織アンカーの第15の実施形態の様々な使用が示されている。アンカー1510は、円形配列に配置され、かつ、径方向内向きに向けられた逆刺1526を有する第1区域1514と、再び逆刺1526に対して同心円状で円形配列に配置されているが逆刺1526に向かって径方向外向きに向けられた逆刺1528を有する第2区域1516と、を有する、本体1512を含む。図示の特定的な実施形態では、アンカー1510を図29aおよび図29cで図示される非展開構成から図29bおよび図29dで図示される展開状態に移動させるために、第1区域1514は静止状態に留まり、その一方で、第2区域1516は径方向外向きに移動される。その一方で、アンカー1510は、アンカー1510が非展開状態と展開状態との間で移動されるにつれて第1区域1514および第2区域1516の両方が移動されるよう構成され得ることが理解されるであろう。
【0089】
図30a~図30dでは、全体が1610で示される本発明に係る組織アンカーの第16の実施形態が示されている。この実施形態では、いくつかの逆刺1626が、固着を改善するために「Y」方向における角度傾斜の形態における特定の方向的偏向を有する。より詳細には、この方向的偏向は、図11および図12で示される用途などの用途において、逆刺1626が固定された組織から逆刺1626が引き抜かれることに対する抵抗を増加させるよう機能する。係る用途では、アンカーが固定された組織の表面の上方で作用する横方向の力が、展開されたアンカー1610に印加され、それにより、組織から逆刺1626および1628を引き抜くよう作用する回転力またはトルクが効果的に生成されてしまう。比較目的のために、図30aでは、逆刺1626に対する角度オフセットまたは方向的偏向を有さないアンカー1610が示されており、したがってこのアンカー1610は上述のトルクに対する抵抗において改善を提供しないであろう。係るトルクは、縫合糸などを固定するためのアンカー1610上に設けられた小穴1638を介して印加されるであろう。図30bでは、逆刺1626の先端部が第2区域1616の逆刺1628から離間するよう外向きに回転された状態で第1区域1614の逆刺1626が整列されているアンカー1610が図示されている。図30cでは、小穴1638が配置されたアンカー1610の側部に向って全部の逆刺1620が回転された状態のアンカー1610が図示されている。図30dでは、逆刺1626の全部が逆刺1628に向かって内向きに回転された状態のアンカー1610が図示されている。逆刺1626の様々な方向的偏向から得られる改善については、後に詳述するように図34bで示されている。第2区域1616の逆刺1628も等しく回転偏向を示し得る。
【0090】
図31a~図31dでは、全体が1710で示される本発明に係る組織アンカーの第17の実施形態が示されている。この実施形態ではアンカー1710は、図31aおよび図31cで図示される非展開状態と図31bおよび図31dで図示される展開状態との間で互いに対して移動可能な第1区域1714および第2区域1716を含む本体1712を含む。アンカー1710は、第1区域1714の逆刺1726および第2区域1716の逆刺1728が非展開状態では「Y」方向に重なり合う状態にあり、展開状態へと移動するにつれて逆刺1726および1728の組が互いに離間する方向に動くという点で、以前の実施形態のアンカーに対して実質的に逆方向に動作する。一方、逆刺1726および1728は非展開状態で重なり合うため、展開状態への移動は、以前の実施形態を参照して前述したように組織における堅牢な保持を達成するために、依然として逆刺1726および1728により包囲されるかまたは作用される組織に対して同じ剪断変形を印加する効果を有する。
【0091】
図43a~図43dでは、全体が1810で示される本発明に係る組織アンカーの第18の実施形態が示されている。このアンカー1810は、アンカー1810の本体1812の第1区域1814および第2区域1816上にそれぞれ提供されたマイクロニードル1826および1828を介して薬物を送達する際に使用されるよう特に意図されたものである。アンカー1810は、以前の実施形態を参照して前述したものと実質的に同様な手法で組織基質(例えば皮膚)に固着されるよう設計されている。したがってマイクロニードル1826および1828は、図43aおよび図43bで図示される非展開状態から図43cで図示される展開状態までアンカー1810を移動させることを通して組織に埋入される。マイクロニードル1826および1828のうちの少なくとも一部または好適には全部は、再吸収可能薬物溶出マイクロニードルを含み、したがってアンカー1810は、組織に吸収される以前の時間的期間にわたり薬物を送達するためにマイクロニードル1826および1828が本体1812から剪断されて離脱し、それにより、組織内に埋入された状態で残留することが可能となるよう、設計されている。したがって展開の方法は、互いに対して第1区域1814および第2区域1816を、マイクロニードル1826および1828を埋入するにあたり要求される地点を越えて追加的に移動させることを含む。この追加的な移動させることにより、本体1812からマイクロニードル1826および1828が、図43dで図示されているように剪断されて離脱されることとなる。従ってこれらのマイクロニードル1826および1828のうちの各マイクロニードルには、区域1814および1816を追加的に移動させる際に隣接組織が必要以上に剪断変形されることを防止するために、この剪断破損を支援するよう設計された脆弱点が設けられてもよい。マイクロニードル1826および1828の剪断は、アンカー1810に設計された他の好適な代替的機構(図示せず)を使用して等しく達成され得る。
【0092】
実験結果例
本発明の組織アンカーの上述の実施形態のうちのいくつかの試作品が、様々な外科的適用および医療適用における組織アンカーの効力を試験することに加えてアンカーの製造性を試験するために、作られた。これらの結果について、これから説明する。
【0093】
実施例1-マイクロニードルを利用するアンカーの製作
微細成形およびレプリカ成形の技術を含む、本発明の様々な実施形態に係る組織アンカーにおいて利用される微細構造およびマイクロニードルの配列を生産するための多数の好適な方法が存在する。この事例では、マイクロニードルを利用する組織アンカーは、一般に使用され、容易に再現される3D印刷技術(ドイツ国、ConceptLaser GmBH)を使用して医療グレード316Lステンレス鋼から生産された。3D印刷された非電解研磨マイクロニードルの例が図32aで示されている。本発明の2つの実施形態が、後続の試験のために生産され、異なる意図された臨床応用のために最適化された。実施形態Aでは、基質からのマイクロニードル先端部の高さ(L)および皮膚への最大垂直貫入深さは1000μmに制限された。実施形態Bでは、基質からのマイクロニードル先端部の設計高さ(L)は750μmに制限された。任意の層状堆積3D高速試作品製造技術(金属またはポリマー)が、マイクロニードル部品の幾何学的形状にいくつかの制限(結果的に生成されるマイクロニードル先端部の解像度またはシャープネスに対する制限を含む)を課すことは認められている。生産された部品上での平均マイクロニードル先端部半径は、光学撮影および分析技術を使用して、およそ20μmであると推定された。したがって、基質からの丸められたマイクロニードル先端部までの、結果的に生成される高さは、実施形態Aに対しては、およそ900μm、実施形態Bに対しては、およそ690μmであると推定された。
【0094】
実施形態AおよびBは図32aで示されるように合計で12個のマイクロニードルを示した。これらのマイクロニードルは基質から26.5度に向けられた。実施形態Aおよび実施形態Bに対するマイクロニードルの長さ(L)および基部直径は、それぞれ、2.24mmおよび600μmと、1.68mmおよび450μmであった。マイクロニードルのX間隔およびY間隔はそれぞれ2.5mmおよび1mmに設定され、その一方で、摺動するマイクロニードルの内側列と外側列との間の横方向間隔は1.5mmに設定された。実施形態Aおよび実施形態Bに対してそれぞれ1mmおよび0.75mm(マイクロニードル長さ(L)のX成分の50%に対応する)の並進による重ね合わせを用いることにより、剪断変形がこのゾーンにおける組織に対して印加された。
【0095】
ブタの皮膚におけるマイクロニードルに基づく組織アンカーの生体外生体力学的試験を支援するために、本発明に係る組織アンカーの変形体が、組織床の形状において、皮膚試料を試験機に固定する手段として、図26a~図26eを参照して説明した実施形態に基づいて、開発された。実施例2および実施例3の試験において利用された組織床およびアンカー部品は、ポリマー高速試作品作成技術(Form2、Formlabs)を使用して準備された。マイクロニードル先端部の結果的に生成された半径は前述の光学撮影および分析技術を使用して15μmであると推定された。試作組織床が図33で示されている。ブタの皮膚は、組織学的、生理学的、および生体力学的特性がヒトの皮膚に類似することが示されており、医療研究に対する良好な類似物として提案されているため、ブタの皮膚が生体外試験媒体として選択された。
【0096】
実施例2-人工皮膚における装置の生体外機械的試験
逆刺の方向的偏向の効果が図34aおよび図34bで示されるように人工皮膚類似物(Syndaver labs、米国フロリダ州)において検査された。試験方法が実施例3において説明された。図34aでは、逆刺に対する異なる方向的偏向を有する3つの異なる組織アンカーの皮膚接触側面が図示され、その一方で、図34bでは、各アンカーが組織から強制的に引き抜かれる前に耐えることが可能であった平均最大力が示されている。逆刺が小穴に向かって方向的に偏向する右に示されたアンカーが引き抜きに対して最大の抵抗を示したことは明らかである。
【0097】
実施例3-ブタの皮膚における装置の生体外機械的試験
以下の研究では、皮膚に対して垂直かつマイクロニードルの整列に対して横方向におけるブタの皮膚に付着された実施形態Aおよび実施形態Bの生体外機械的固着強度を数値化するために事前分析が実施された。無関連の実験のために屠殺されたミニブタから採取された試験装置がブタの皮膚に取り付けられた。組織はただちに生理食塩水が浸漬されたガーゼで包まれ、採取当日に冷凍され、試験日に解凍された。組織試料は、実施例Aおよび図26ならびに図33で説明された組織試験プラットフォームに機械的に固定され、図35で示されるように電気機械式試験機(Hounsfield、Tinius Olsen)の下方架台に取り付けられた。実施形態AおよびBは皮膚上に展開され、ある長さの網目状ポリエステル縫合糸(#2 Ethibond、Ethicon)を介して試験機のクロスヘッドに固定された1kNロードセルに取り付けられた。試料は、10mm/分の移動速度で破壊的に試験され、力-移動データが継続的に記録された。50mmのゲージ長さが全試験に対して維持された。各種類のN=6のマイクロニードルアンカーが各方向において試験され、その結果が図35bで示されている。
【0098】
これらの結果は、マイクロニードルに基づく装置(実施形態AおよびB)は効果的にブタの皮膚を把持する能力を有することを示し、係る装置が、皮膚の他にも他の柔らかい生体組織および固い生体組織において使用するための機械的アンカーとして機能し得ることを示している。実施形態Aの構成要素部品(第1区域14および第2区域16)は横方向および垂直方向においても個別的に試験され、それぞれ14.7±0.5N(区域14)および5.7±2N(区域16)の最終的な力値がもたらされた。このことは、区域14および区域16が本発明にしたがって組織に係合されたとき良好な相乗効果作用が生じることを意味する。
【0099】
実施例4-ブタの皮膚への挿入の生体外組織構造評価
以下の研究は、新鮮凍結されたブタ組織への実施形態Aのマイクロニードルの貫入深さを推定するために実施された。対照として、標準的マイクロニードル配列(MNA)が開発され、3D金属プリンタ(ドイツ国、Concept Laser GmbH)を使用して316Lステンレス鋼に印刷された。これらの対照的MNA装置は、実施形態A(試験群)の個々のマイクロニードルと同一の長さおよび基部直径寸法を示すマイクロニードルの5×5配列から構成された。マイクロニードルの長さLおよび基部直径は、それぞれ2.24mmおよび600μmに設定され、X間隔およびY間隔は等しく1.5mmであった。
【0100】
無関連の実験のために屠殺されたミニブタから採取された試験装置がブタの皮膚に取り付けられた。組織はただちに生理食塩水が浸漬されたガーゼで包まれ、試験当日に冷凍および解凍された。実施形態A装置は、ハンドヘルド型平行顎部ペンチを使用して取り付けられた。MNAは、12.5N、25N、および50Nの3つの異なる力レベルを使用するハンドヘルド型フォースゲージ(ドイツ国、Sauter)を使用して基部の下面に垂直力を印加することにより、皮膚上に展開された。インサイチュで試験装置を有する組織試料は、後続の組織構造処理のために10%リン酸塩緩衝ホルマリン(Sigma- Aldrich)においてただちに固定された。48時間の固定の後、試験装置は組織から手動で取り外され、組織ブロックはパラフィン包埋のために準備された。ミクロトームが、マイクロニードル軸と一致する皮膚表面に対して垂直な平面において6μm厚さの区域における各パラフィン包埋されたブロックの全層を通して並進するために使用された。次に、スライドは、自動化スライド染色装置(Leica)を使用してヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色され、透過型顕微鏡(Leica)を使用して撮影された。各マイクロニードル先端部を含むマイクロニードルの各列と一致する最少で40の個々の区域が得られた。
【0101】
連続画像がImageJ(NIH)にインポートされ、倍率変更が適用され、組織内へのニードルの垂直貫入深さが、図36および図37で示されるように測定された。各マイクロニードル先端部の周囲の最少で40の区域が、組織貫入の最大深さ(マイクロニードル先端部に対応する)が確実に捕捉されるよう、分析された。
【0102】
結果
12.5Nの力(5×5配列におけるマイクロニードルあたり平均で0.5N)で埋入されたMNA試料は、固定の間インサイチュに維持されず、組織構造試験は、マイクロニードル貫入を表さなかった。このことは、この力レベルがニードル挿入を生成するにあたり十分ではなかったことを示すものである。残りの試験群および状態に対する結果は図38に示されている。
【0103】
これらの結果は、実施形態Aが、ワクチンおよび薬物送達用途において使用される硬質の5×5配列のマイクロニードルに対しては適切となるであろう2つの異なるレベルの力においてMNAよりも皮膚の貫入においてより効果的であったことを示す。図38で示される実施形態Aに対する組織構造結果は、およそ103%の前縁部が組織に曝露されたことを明らかにした。このことは、各マイクロニードルの基部に存在する凹陥部が埋入の際に一定量の移動された組織を捕捉したことを示すものである。実施形態A試料の組織構造結果は、非前縁部の背後に無損傷の角質層を一貫して明らかにした。このことは、対抗する列のマイクロニードルの相対運動により皮膚に印加された引っ張り力が、展開の初期段階の間に、即時的な機械的固着を促進したこと、およびマイクロニードル先端部の皮膚に沿った相対滑りが存在しなかったことを示すものである。
【0104】
実施例5-体外ブタモデルにおける創傷閉鎖用途
以下の実施例は、選択的創傷の閉鎖におけるマイクロニードルに基づくアンカーの創傷閉鎖効率を評価するために実施された事前体外動物研究を概説するものである。
【0105】
図39で示されるように、実施形態A版の組織アンカーが無関連の実験のために屠殺されたミニブタの背側面に適用された。8つの組織アンカーがおよそ22~24mmの間隔で直線の周りに対称的に配置された。次に、外科的創傷をシミュレートするために切開部が形成された。次に、より深い層が連続縫合により閉じられ、引き続き、個々の組織アンカーの開かれた小穴に縫合糸を通すことにより、表面的皮膚の閉鎖が行われた。
【0106】
結果
図39における結果は、マイクロニードルに基づく組織アンカーが、臨床現場において計画された切開部を迅速かつ堅牢に減少させるための低侵襲的手段を提供し、それにより、治癒を促進する皮膚縁部の外翻を生成することを示すものである。
【0107】
実施例6-事前のヒト研究
以下の実施例は、ヒトのボランティアにおける実施形態Bの生体内性能を推定するために実施された事前のヒト研究を概説するものである。この研究の目的は以下の通りである。
・装置の適用が痛みを生成するかどうかを評価すること
・装置により誘導される炎症性反応を監視すること
・装置の接着を試験すること
・装置の取り外しが痛みを生成するかどうかを評価すること
【0108】
3D印刷された316Lステンレス鋼版の実施形態Bは、電解研磨され、イソプロピルアルコールにおいて超音波分解され、蒸留水において洗浄され、オートクレーブにおいて蒸気滅菌された。腕骨(上腕)の三角筋粗面上方の皮膚が剃毛され、アルコールワイプを使用して生育不能な細胞および油分が除去された。消毒クリーム(Bepanthen)がエリアに塗布され、乾燥された。5つの組織アンカーが、図40で示されるように近位から遠位に延長する直線状に皮膚に適用された。その際、ボランティアは、0~10の視覚的アナログスケール上で装置のそれぞれの挿入に関連付けられた痛みを評価するよう言われた。これらの装置は被覆されない状態で残され、ボランティアは取り付け部位に対するケア指示を与えられた。
【0109】
実施形態Aのマイクロニードルに基づく組織アンカーの適用および即時除去に対する初期皮膚応答を評価するために、位置1における装置がおよそ10分後に取り外された(時間0部位-図41における最上)。装置の長期着用に対する組織応答は3、5、7、および9日後に、これらの時間点のうちの各時間において単一の装置を取り外すことにより、評価された。不快感/痛み、炎症性反応、および、装置配置の安定性が、ボランティアにより装置が装着されたことが9日間にわたり日ごとに観察され、その後、初期装置配置後、日ごとに最大32日まで観察された。適用部位は医療包帯などで保護されなかった。
【0110】
結果
ボランティアは、装置の適用時に軽度の疼痛を報告した(0~10の視覚的アナログスケール上でおよそ1~2)。適用後15分以内で疼痛は消滅し、次に装置は、皮膚に対する適用の期間(3~9日間の範囲)において疼痛をもたらさなかった。観察は日ごとに実施され、すべての装置は、適用の期間全体にわたり皮膚に対してしっかりと固く取り付けられているように見受けられ、感染または有害な効果はまったく観察されなかった。実施形態Bに対して、時間0において装置の配置後、皮膚に紅斑が現れた。マイクロニードルに対応する小さい穿刺創傷が観察されたが、係る創傷は出血を生じさせなかった。実施形態B版の装置は3~9日の範囲にわたり皮膚上に留まった。装置が3日、5日、7日、および9日目に取り外されると、紅斑に加えて腫脹(浮腫)が観察された。ボランティアは、3日、5日、7日、および9日目の装置の取り外しの際、最少疼痛または無疼痛を報告した(0~10の視覚的アナログスケール上で0~1)。すべて場合において、図41で示されるように、およそ2~4週間後に皮膚の正常な外見が戻った。
【0111】
概要
まとめると、本研究の結果は、装置がほとんど疼痛なしで皮膚に適用され得ること、および、数日にわたり皮膚に対してしっかりと取り付けられた状態に留まり得ることを示した。このデータおよび他のデータは、本マイクロニードルに基づく装置が、ヒトの皮膚に固着する従来の方法に対する魅力的な代替物を表すことを強く支持する。
【0112】
実施例7-ヒトのボランティアにおける筋電図検査(EMG)
以下の実施例は、上腕二頭筋の等尺性収縮の間のEMG測定用電極として使用された場合の実施形態Bのマイクロニードルアンカーの機能性を示すために実施された事前のヒトの研究を概説するものである。特に、この研究の目的は、(1)実施形態Bが標準的ウェット電極により測定されるEMG信号を再生可能であるかを判定すること、および(2)2つの電極の収縮中の強度(Vrm)および信号対雑音比(SNR)を判定すること、であった。
【0113】
測定は標準的な図42aの左側および右側にそれぞれ示されているように、ウェットAg/AgClのバイポーラペアおよび実施形態B電極を使用して実施された。記録の前に、表面から育成不能な細胞および油分を除去するためのアルコールワイプを用いた部位の軽微な摩擦および洗浄を含む標準的皮膚貫入技術が利き腕に対して実施された。実験の間、被術者は、8.5kgの重量を支持しながら、および無負荷状態で、腕を90度の湾曲で維持した。この実験から得られた結果は図42bの左側および右側に示されている。
【0114】
結果
2秒窓の間の収縮中の同一の被術者に適用された各装置に対するEMGデータは、分析され、基礎(弛緩)状態に対して正規化され、標準的ウェット電極および実施形態B電極に対して、0.2698mVおよび20.90871dBと、0.3274mVおよび30.04483dBと、のVrmおよびSNR比が生成された。このデータは、実施形態BがEMG信号を信頼性をもって測定するために使用され得ることを示すものである。
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