(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 35/04 20060101AFI20231113BHJP
A01B 33/12 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
A01B35/04 B
A01B33/12 B
(21)【出願番号】P 2020097134
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】岩松 淳司
(72)【発明者】
【氏名】黒田 将仁
(72)【発明者】
【氏名】森 圭佑
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-211998(JP,A)
【文献】実開昭56-158104(JP,U)
【文献】特開2016-178940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 27/00 - 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘作業をする耕耘体と、
前記耕耘体を覆う上下位置変更可能な耕耘カバー体と、
前記耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、
前記耕耘カバー体及び前記整地体間に架設され、前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段と
、
前記整地体の接地圧を調整する接地圧調整手段とを備え、
前記接地圧調整手段に対する着脱部材の着脱により、前記耕耘カバー体の上下位置を変更しても前記整地体の待機姿勢が一定に維持される
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
耕耘作業をする耕耘体と、
前記耕耘体を覆う上下位置変更可能な耕耘カバー体と、
前記耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、
前記耕耘カバー体及び前記整地体間に架設され、前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段と、
前記整地体の接地圧を調整する接地圧調整手段とを備え、
前記持上アシスト手段は、アシストオン状態及びアシストオフ状態に選択的に切換可能となっており、
前記接地圧調整手段に対する着脱部材の着脱により、前記耕耘カバー体の上下位置を変更しても前記整地体の待機姿勢が一定に維持される
ことを特徴とする農作業機。
【請求項3】
耕耘カバー体は、一方側取付部を有し、
整地体は、他方側取付部を有し、
持上アシスト手段は、その一方側が前記耕耘カバー体の前記一方側取付部に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体の前記他方側取付部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1
又は2記載の農作業機。
【請求項4】
着脱部材は、カラーである
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持上アシスト手段に不具合が生じるのを防止できる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された農作業機が知られている。この従来の農作業機は、例えばトラクタ等の走行車に連結される機体と、この機体に設けられ耕耘作業をする耕耘体と、この耕耘体を覆う耕耘カバー体と、この耕耘カバー体に設けられ耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、この整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備え、この持上アシスト手段は、その一方側が機体に取り付けられかつその他方側が整地体に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば耕耘爪の変更に応じて耕耘カバー体の上下位置を変更した際に、持上アシスト手段に不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、持上アシスト手段に不具合が生じるのを防止できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の農作業機は、耕耘作業をする耕耘体と、前記耕耘体を覆う上下位置変更可能な耕耘カバー体と、前記耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、前記耕耘カバー体及び前記整地体間に架設され、前記整地体の持ち上げをアシストする持上アシスト手段とを備えるものである。
【0007】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、耕耘カバー体は、一方側取付部を有し、整地体は、他方側取付部を有し、持上アシスト手段は、その一方側が前記耕耘カバー体の前記一方側取付部に取り付けられ、かつ、その他方側が前記整地体の前記他方側取付部に取り付けられているものである。
【0008】
請求項3記載の農作業機は、請求項2記載の農作業機において、耕耘カバー体の一方側取付部は、側面視で機体のフレーム部の下方に配置されているものである。
【0009】
請求項4記載の農作業機は、請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機において、耕耘カバー体の上下位置を変更しても整地体の待機姿勢が一定に維持されるものである。
【0010】
請求項5記載の農作業機は、請求項4記載の農作業機において、整地体の接地圧を調整する接地圧調整手段を備え、前記接地圧調整手段に対する着脱部材の着脱により、耕耘カバー体の上下位置を変更しても前記整地体の待機姿勢が一定に維持されるものである。
【0011】
請求項6記載の農作業機は、請求項4記載の農作業機において、整地体の接地圧を調整する接地圧調整手段を備え、前記接地圧調整手段が有する位置変更部材の位置変更により、耕耘カバー体の上下位置を変更しても前記整地体の待機姿勢が一定に維持されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、持上アシスト手段に不具合が生じるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の平面図である。
【
図5】同上農作業機の部分側面図で、(a)は耕耘カバー体の下位置状態の図であり、(b)は耕耘カバー体の上位置状態の図である。
【
図6】同上農作業機の部分側面図で、(a)は耕耘カバー体の下位置状態の図であり、(b)は耕耘カバー体の上位置状態の図である。
【
図7】同上農作業機の持上アシスト手段を示す図で、(a)は耕耘カバー体の下位置状態の図であり、(b)は耕耘カバー体の上位置状態の図である。
【
図8】同上農作業機の接地圧調整手段を示す図で、(a)は耕耘カバー体の下位置状態の図であり、(b)は耕耘カバー体の上位置状態の図である。
【
図9】耕耘カバー体を上位置状態にした際にカラーを装着しなかった場合を示す図である。
【
図10】同上農作業機の接地圧調整手段(カラーを装着した状態)の平面図である。
【
図11】同上接地圧調整手段の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態について
図1ないし
図10を参照して説明する。
【0015】
図中の1は農作業機で、この農作業機1は、例えば圃場を走行可能な走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、そのトラクタの走行により進行方向(前方)に移動しながら農作業(耕耘整地作業等)を行うロータリー作業機である。
【0016】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部(農作業機昇降部)に着脱可能に連結される機体2と、この機体2に回転可能に設けられ、所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体3と、機体2に上下位置変更可能に設けられ、耕耘体3の上方部を覆う耕耘カバー体(耕耘部カバー)4と、この耕耘カバー体4の後端部に左右方向の軸(回動支点)5を中心として上下方向に回動可能に設けられ、耕耘体3の後方で整地作業をする整地体(均平板)6とを備えている。
【0017】
また、農作業機1は、耕耘カバー体4及び整地体6間に架設され、メンテナンス時等に作業者の人力による整地体6の持ち上げ(機体2に対する上方回動)をアシストする持上アシスト手段7と、機体2及び整地体6間に架設され、圃場面に対する整地体6の接地圧を調整する接地圧調整手段8とを備えている。なお、図示した例では、持上アシスト手段7は1本であり、接地圧調整手段8は4本であるが、各手段7,8の本数は任意であり、例えば持上アシスト手段7を複数本設けてもよく、また例えば接地圧調整手段8の数を1本或いは2本としてもよい。
【0018】
機体2は、トラクタの後部の3点リンク部に着脱可能に連結される3点連結部11を有している。この3点連結部11は、中央のトップマスト12と、このトップマスト12に取り付けられたトップピン(図示せず)と、左右のロワーアーム13と、このロワーアーム13に取り付けられたロワーピンと14を有している。
【0019】
機体2は、トラクタのPTO軸に接続される入力軸15を回転可能に設けたミッションケース16を有している。このミッションケース16の両側には、左右のフレーム部であるフレームパイプ17の内端部が取り付けられている。左側のフレームパイプ17の外端部(左端部)にはチェーンケース18が取り付けられ、右側のフレームパイプ17の外端部(右端部)にはブラケット19が取り付けられている。なお、各フレームパイプ17は、左右方向長手状で円筒状に形成されている。
【0020】
そして、互いに離間対向するチェーンケース18及びブラケット19間には、耕耘体3が回転可能に架設されている。換言すると、機体2は、耕耘体3を回転可能に支持する左右の耕耘体支持部材であるチェーンケース18及びブラケット19を有している。
【0021】
チェーンケース18及びブラケット19の各後端部には後側の突出板であるサイドカバー板21が後方に向かって突設され、また、チェーンケース18及びブラケット19の各前端部からは前側の突出板である側板22が前方に向かって一体に突出している。
【0022】
また、各フレームパイプ17の左右方向中間部には取付板23が取り付けられ、この取付板23よりも外側の2箇所には断面コ字状の取付枠24が取り付けられている。左右の側板22間に架設された前フレーム26には、ゲージ輪手段27が取り付けられている。
【0023】
耕耘体3は、左右のチェーンケース18及びブラケット19の下部間に回転可能に架設された左右方向の耕耘軸31を有している。耕耘軸31は、入力軸15側からの動力を伝達するチェーン等の動力伝達手段(図示せず)から動力を受けて所定方向に駆動回転する。耕耘軸31は、軸方向に間隔をおいて並ぶ複数の爪取付部32を有している。
【0024】
そして、耕耘軸31の各爪取付部32には、通常は第1耕耘爪(一の爪である標準爪)33が着脱可能に取り付けられているが、圃場等によっては第1耕耘爪33に比べて回転径が大きい第2耕耘爪(他の爪であるオプション爪)34を着脱可能に取り付けることがある。
【0025】
第2耕耘爪34の回転径Rは、第1耕耘爪33の回転径rよりも大きい(r<R)。このため、耕耘爪33,34の変更(付け替え)に応じて、機体2に対する耕耘カバー体4の上下位置(上下方向の位置)を変更する必要が生じる。
【0026】
耕耘カバー体4は、耕耘体3の上方部を覆う上方へ凸の湾曲板状で左右方向長手状のカバー本体板41を有し、このカバー本体板41の後端部には、複数の蝶番42を介して整地体6が上下方向に回動可能に取り付けられている。カバー本体板41の左右方向両端部には、カバー側板43が取り付けられている。カバー本体板41の左右方向中間部のうち機体2の取付板23に対応する2箇所には、吊板44が取り付けられている。カバー本体板41の左右方向中間部のうち持上アシスト手段7に対応する1箇所には、断面コ字状の取付枠45が取り付けられている。
【0027】
取付枠45は、カバー本体板41の前後方向中央部の上面に固定的に立設されている。取付枠45は、互いに離間対向する左右対をなす対向板部45aと、これら両対向板部45aの前端部同士を連結する連結板部45bとを有している。各対向板部45aの上部には複数の孔部76が形成されている。各対向板部45aの下部には後方突出状で側面視三角状の突出部分40が形成され、この突出部分40が整地体取付板部52に固定されている。また、取付枠45は、側面視で機体2のフレームパイプ17の下方に配置されている。なお、当該取付枠45によって耕耘カバー体4の一方側取付部46が構成されている。
【0028】
そして、耕耘カバー体4は、取付具(例えばボルト及びナット等)47によって機体2に上下位置変更可能に取り付けられている。つまり、耕耘カバー体4は、機体2への取付位置の変更により、第1耕耘爪33に対応する下位置状態及び第2耕耘爪34に対応する上位置状態に選択的に変更可能となっている。
【0029】
耕耘カバー体4の下位置状態(第1状態)とは、下位置用孔48を利用して耕耘カバー体4が機体2に対して下位置(第1位置である標準位置)に位置するように取り付けられた状態である。耕耘カバー体4の上位置状態(第2状態)とは、上位置用孔49を利用して耕耘カバー体4が機体2に対して上位置(第1位置よりも上方の第2位置であるオプション位置)に位置するように取り付けられた状態である。
【0030】
下位置用孔48及び上位置用孔49は、チェーンケース18、ブラケット19、サイドカバー板21、側板22及び吊板44に形成されている。そして、左端のカバー側板43は、取付具47によってチェーンケース18、サイドカバー板21及び側板22に下位置及び上位置へ変更可能に取り付けられている(
図5参照)。また、右端のカバー側板43は、取付具47によってブラケット19、サイドカバー板21及び側板22に下位置及び上位置へ変更可能に取り付けられている。中間の吊板44は、取付具47によって取付板23に下位置及び上位置へ変更可能に取り付けられている(
図6参照)。このように、機体2に対する耕耘カバー体4の取付位置は、耕耘爪33,34の回転径に応じて2つの位置に高さ調整可能(上下調整可能)である。
【0031】
整地体6は、耕耘体3の後方部を覆う左右方向長手状の整地本体板51を有し、この整地本体板51の前端部がカバー本体板41の後端部上面側の整地体取付板部52に複数の蝶番42を介して回動可能に取り付けられている。
【0032】
整地本体板51の左右方向両端部には、整地側板53が取り付けられている。整地本体板51の左右方向中間部のうち接地圧調整手段8に対応する4箇所には、左右対をなす突出板54が取り付けられている。整地本体板51の左右方向中間部のうち持上アシスト手段7に対応する1箇所には、断面コ字状の取付枠55が取り付けられている。なお、当該取付枠55によって整地体6の他方側取付部56が構成されている。
【0033】
また、持上アシスト手段7を取り付ける取付枠(他方側取付部56)55は、
図4に示すように、例えば整地本体板51の背面(耕耘体3と対向する側とは反対側の面)に溶接等により固定されたコ字枠部材57と、このコ字枠部材57に取付具(例えばボルト及びナット等)59で着脱可能に取り付けられた板部材58とで構成されている。
【0034】
さらに、整地体6の下端部における左右両端部には延長整地体60が設けられている。この延長整地体60は、支軸50を中心とする回動により作業状態及び非作業状態に選択的に切換可能となっている。
【0035】
持上アシスト手段(アシスト機構)7は、耕耘カバー体4及び整地体6間に架設されている。つまり、持上アシスト手段7は、その一方側(前側)が耕耘カバー体4の一方側取付部46である取付枠45に回動可能に取り付けられ、かつ、その他方側(後側)が整地体6の他方側取付部56である取付枠55に回動可能に取り付けられている。
【0036】
それゆえ、機体2に対する耕耘カバー体4の上下位置を変更しても、耕耘カバー体4、整地体6及び持上アシスト手段7の3つの位置関係が変わらないため、当該持上アシスト手段7には不具合が生じない。
【0037】
持上アシスト手段7は、例えば伸縮可能な付勢体であるガススプリング61の付勢力を利用して作業者の人力による整地体6の持ち上げをアシストするものである。なお、図示した例では、ガススプリング61は1本であるが、本数は任意であり、例えば複数本のガススプリングを持上アシスト手段7内に収納した構成でもよい。
【0038】
また、持上アシスト手段7は、操作部材である操作レバー62の操作により、ガススプリング61が整地体6を上方側に付勢するアシストオン状態及びガススプリング61が整地体6を上方側に付勢しないアシストオフ状態に選択的に切換可能となっている。すなわち例えば、操作レバー62の一方向への回動によりアシストオフ状態となり、操作レバー62の他方向への回動によりアシストオン状態となる。
【0039】
ここで、
図3等に示すように、持上アシスト手段7は、耕耘カバー体4の一方側取付部46に回動可能に取り付けられた細長筒状の長尺体63と、この長尺体63に対してその長手方向に沿って移動可能(例えばスライド可能)な細長筒状の移動体64と、整地体6の他方側取付部56に回動可能に取り付けられた環状の回動体65とを有している。
【0040】
そして、メンテナンスの際等のアシストオン状態時には、移動体64は、例えばガススプリング61の付勢力及び作業者の人力(軽い力)に基づく整地体6の上方回動に応じて、長尺体63に対して回動体65とともに前方側に移動する。なお、ガススプリング61の付勢力のみで、整地体6が所定の上限位置まで上方回動するようにしてもよい。
【0041】
長尺体63は、前後方向に長手状でかつ筒状のもので、両端部には孔部71,72が形成され、前後方向中間部には長孔部73が形成され、内部にはガススプリング61が収納されて覆われている。このガススプリング61は、窒素ガス等の高圧ガスが封入された本体部61aと、この本体部61a内に対して出入りするロッド部61bとを有している。この図示した例では、ガススプリング61の向きは、ロッド部61bが前側に位置する向きであるが、前後逆の向きにして取り付けてもよい。
【0042】
そして、長尺体63の前端部は、耕耘カバー体4の一方側取付部46に軸(ピン)75を介して回動可能に取り付けられている。つまり、長尺体63の前端部の孔部71と一方側取付部46である取付枠45の孔部(複数の中から選択された一の孔部)76とに軸75が挿入され、この軸75を中心として長尺体63が回動可能となっている。
【0043】
長尺体63の後端部には、ガススプリング61の後端部が軸(ピン)77を介して連結されている。ガススプリング61の前端部は、長孔部73に移動可能に挿通された軸(ピン)78を介して、移動体64の前端部に連結されている。
【0044】
移動体(アウターパイプ)64は、長尺体(インナーパイプ)63と同様、前後方向に長手状でかつ筒状のもので、移動体64が長尺体63の外周側にスライド可能に設けられ、この移動体64の外周側に回動体65がスライド可能に設けられている。また、移動体64は、アシストオン状態時に回動体65に当接してこの回動体65を前方側に押す環状の鍔部(突出部)81を有している。
【0045】
回動体65は、円形状の挿通孔82が形成された環状部83と、この環状部83の左右両側に突設された軸部84とを有している。左右の軸部84は、整地体6の他方側取付部56に回動可能に取り付けられている。つまり、整地体6の他方側取付部56である取付枠55に形成された孔部85に回動体65の軸部84が回動可能に嵌入されている。環状部83の挿通孔82には、移動体64、長尺体63及びガススプリング61が挿通されている。
【0046】
また、回動体65には、操作レバー62がオン位置及びオフ位置に回動可能に取り付けられるとともに、その操作レバー62の回動を規制する規制板88が取り付けられている。この規制板88には、操作レバー62が挿通されたレバー挿通孔89が形成されている。
【0047】
そして、操作レバー62がオフ位置に位置すると、操作レバー62と長尺体63の後端面63aとの当接により、長尺体63に対する移動体64の移動が規制される。他方、操作レバー62がオン位置に位置すると、操作レバー62と長尺体63の後端面63aとの当接解除により、長尺体63に対する移動体64の移動が許容される。その結果、この状態時、すなわちアシストオン状態時において、作業者は、軽い力で整地体6を上限位置まで持ち上げることが可能である。
【0048】
接地圧調整手段(調整機構)8は、整地体6の下限位置(待機姿勢)を決める整地体下限位置決め手段を兼ねたもので、機体2及び整地体6間に架設されている。つまり、接地圧調整手段8は、その一方側(前側)が機体2の一方側取付部である取付枠24に回動可能に取り付けられ、かつ、その他方側(後側)が整地体6の他方側取付部である突出板54に回動可能に取り付けられている。
【0049】
そして、この接地圧調整手段8では、当該接地圧調整手段8に対する着脱部材であるカラー91の着脱により、機体2に対する耕耘カバー体4の上下位置を変更しても、整地体6の待機姿勢(自重による垂下がり姿勢である立ち姿勢)が一定(略一定を含む)に維持される。なお、カラー91は、例えば短円筒状の筒状部材である。
【0050】
ここで、
図8ないし
図10等に示すように、接地圧調整手段8は、機体2の取付枠24に回動可能に取り付けられた連結ロッド92と、整地体6の突出板54に回動可能に取り付けられ、連結ロッド92がロッド挿通孔94に挿通されたタンブラ93とを有している。
【0051】
また、接地圧調整手段8は、第1スプリングエンド96と、第2スプリングエンド97と、押えばね98と、緩衝ばね99と、ストッパ100と、ロッドエンド101とを有している。
【0052】
ロッドエンド101は、連結ロッド92の後端部の近傍に溶接等により固定されており、タンブラ93が緩衝ばね99及び第2スプリングエンド97を介してロッドエンド101に当接することで、整地体6の下限位置での姿勢、すなわち待機姿勢が決まる(
図8(a)を参照)。しかし、カラー91を連結ロッド92に装着した場合には、タンブラ93が緩衝ばね99、カラー91及び第2スプリングエンド97を介してロッドエンド101に当接することで整地体6の待機姿勢が決まる(
図8(b)を参照)。なお、カラー91の取付位置(装着位置)は、図示した例(緩衝ばね99及び第2スプリングエンド97間の位置)には限定されず、任意であり、例えばカラー91を第2スプリングエンド97及びロッドエンド101間の位置に取り付けてもよい。
【0053】
そして、
図8(a)及び(b)から明かなように、耕耘カバー体4の下位置状態及び上位置状態のいずれの場合であっても整地体6の待機姿勢は一定であり、この待機姿勢の整地体6と耕耘体3との間には所定の大きさ以上の空間部103が存在する。
【0054】
これに対し、例えば
図9に示すように、耕耘カバー体4の上位置状態時にカラー91を装着しなかった場合には、整地体6の待機姿勢が下がり、空間部103が確保されず、その結果、整地体6が耕耘体3に干渉するおそれがある。なお、連結ロッド92に対する円筒状のカラー91の着脱は、連結ロッド92を機体2の取付枠24から取り外して行う。例えば連結ロッド92を取り付けたままカラー91の着脱ができるように、弾性変形可能なC字状やコ字状のカラー等を用いてもよい。
【0055】
連結ロッド92は、第1スプリングエンド96のピン部96aが挿入される複数の第1孔部106と、第2スプリングエンド97のピン部97aが挿入される複数の第2孔部107と、ストッパ100のピン部100aが挿入されるストッパ用孔部108とを有している。
【0056】
ストッパ100のピン部100aは、作業者が整地体6を上限位置まで持ち上げた際にストッパ用孔部108に自動的に挿入されてロックされる。このロック解除は、ストッパ100のレバー部100bの操作により行う。各スプリングエンド96,97は、ピン部96a,97aを連結ロッド92の孔部106,107に対して出し入れするためのレバー部(図示せず)を有しており、このレバー部は本体部96b,97bに上下方向にスライド可能に設けられている。
【0057】
また、連結ロッド92の前端部には取付孔部111が形成され、この取付孔部111と取付枠24の孔部112とに軸(ピン)113が挿入され、この軸113を中心として連結ロッド92が回動可能となっている。さらに、タンブラ93は、左右両側に取付部115を有し、この各取付部115は整地体6の突出板54に形成された孔部116に回動可能に嵌入されている。
【0058】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0059】
トラクタに連結した農作業機1を使用して耕耘整地作業をする場合には、作業者は、持上アシスト手段7をアシストオフ状態に設定するともに、圃場条件等に応じて接地圧調整手段8のスプリングエンド96,97を所望位置に位置決めする。
【0060】
また、標準爪である第1耕耘爪33で作業する際には耕耘カバー体4は下位置状態のままでよいが、オプション爪である第2耕耘爪34で作業する際においては、耕耘カバー体4を下位置状態から上位置状態に変更する。
【0061】
耕耘カバー体4を下位置状態から上位置状態に変更しても、耕耘カバー体4、整地体6及び持上アシスト手段7の3つの位置関係は変わらず(
図7を参照)、かつ、下限位置に位置した整地体6の待機姿勢も変わらずに一定である(
図8を参照)。ただし、当該変更の際には、カラー91を接地圧調整手段8の連結ロッド92の所定位置に取り付ける必要がある。
【0062】
そして、トラクタの走行により農作業機1を移動させると、耕耘体3が耕耘作業をし、その後方で、整地体6が整地作業をし、圃場面がきれいに均される。
【0063】
また、例えば爪交換や洗浄等のメンテナンス時には、作業者は、持上アシスト手段7をアシストオフ状態からアシストオン状態に変更する。すると、作業者は、軽い力で整地体6を上限位置まで簡単に持ち上げることができ、当該整地体6をストッパ100により上限位置にロックできる。
【0064】
そして、農作業機1によれば、持上アシスト手段7が耕耘カバー体4及び整地体6間に架設されているため、持上アシスト手段7で作業者の負担軽減を図ることができるばかりでなく、耕耘カバー体4の上下位置を変更しても耕耘カバー体4、整地体6及び持上アシスト手段7の3つの位置関係が変わらず、持上アシスト手段7に損傷(変形を含む)等の不具合が生じるのを防止できる。すなわち例えば耕耘カバー体4の上位置状態時に長孔部73の後端部に整地体6の全重量が作用して長尺体63が損傷することや長尺体63が耕耘カバー体4に干渉して損傷すること等を適切に防止できる。
【0065】
また、接地圧調整手段8に対するカラー91の着脱により、耕耘カバー体4の上下位置を変更しても整地体6の待機姿勢が一定に維持されるため、例えば耕耘カバー体4の上位置状態時に整地体6が耕耘体3の第2耕耘爪34に干渉して損傷すること等を適切に防止できる。
【0066】
さらに、カラー91を用いることでその分部品点数は増えるが、例えばトラクタのバック走行時に整地体6が畦等に当たって前方側に押されても、カラー91でその力を受けるため、第2スプリングエンド97の損傷等を防止できる。
【0067】
なお、農作業機1は、
図11に示すように、部品点数の増加を避けるべく、接地圧調整手段8が有する位置変更部材である第2スプリングエンド(後側のスプリングエンド)97の前後方向の位置変更により、耕耘カバー体4の上下位置を変更しても整地体6の待機姿勢が一定(略一定を含む)に維持される構成としてもよい。
【0068】
この
図11に示す接地圧調整手段8の連結ロッド92には、整地体6の待機姿勢を一定に維持するための姿勢維持用孔部120がロッドエンド101の近傍位置に形成されている。そして、この
図11に示す場合には耕耘カバー体4の上位置状態時において、作業者は、カラー91を連結ロッド92に取り付ける代わりに、第2スプリングエンド97のピン部97aを姿勢維持用孔部120に挿入すればよい。
【0069】
また一方、持上アシスト手段は、ガススプリングを用いたものには限定されず、例えばコイルばね等の付勢体を用いたもの等でもよい。
【0070】
さらに、農作業機は、1本ものには限定されず、例えば3分割された折畳式でもよく、また第1整地体(均平板)及び第2整地体(レーキ)等からなる整地体を備える代掻装置等でもよい。
【0071】
また、耕耘カバー体は、上下2つの位置(下位置、上位置)のみに位置変更可能なものには限定されず、例えば3つ以上の位置に変更可能なものでもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 農作業機
2 機体
3 耕耘体
4 耕耘カバー体
6 整地体
7 持上アシスト手段
8 接地圧調整手段
17 フレーム部であるフレームパイプ
46 一方側取付部
56 他方側取付部
91 着脱部材であるカラー
97 位置変更部材である第2スプリングエンド