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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】カッタ
(51)【国際特許分類】
   B26B 27/00 20060101AFI20231113BHJP
   B23D 29/02 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B26B27/00 Z
B23D29/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020168251
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060660
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】592061843
【氏名又は名称】フジ矢株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】小谷 幸宜
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 篤史
(72)【発明者】
【氏名】諸江 道明
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-183462(JP,A)
【文献】特開平08-336677(JP,A)
【文献】実開平05-021869(JP,U)
【文献】実開昭58-152267(JP,U)
【文献】実開昭55-132111(JP,U)
【文献】米国特許第06305087(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 27/00
B23D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象物である樹脂パイプ(30)を受ける円弧状に窪んだ受け部(6)を有する第1の把手(4)と、
その第1の把手(4)にピボット結合させた動刃(2)と、
その動刃(2)を開閉させる第2の把手(5)を備え、
前記第2の把手(5)を前記第1の把手(4)から離反する方向に操作して前記動刃(2)を全開させ、
さらに、前記第2の把手(5)を前記第1の把手(4)に接近する方向に操作して前記動刃(2)を閉じ、
その閉じる動刃(2)によって前記受け部(6)で支えた前記樹脂パイプ(30)を切断する片刃式のパイプカッタであって、
前記動刃(2)の刃面(2a)には、前記樹脂パイプ(30)の断面が通過する軌跡上であって、前記動刃(2)の全閉時に前記受け部(6)と重なり合う位置にのみ、前記断面との接触を回避するための横長長円形の透孔(2b)または凹部(2c)が設けられている、パイプカッタ。
【請求項2】
前記第2の把手(5)を前記動刃(2)につなぐリンク機構(9)と、
前記動刃(2)と一体に形成されたラチェットギヤ(3)と、
前記ラチェットギヤ(3)の歯(3a)に噛合するラチェット爪(10)と、
前記ラチェットギヤ(3)の戻り回転を阻止するストッパ爪(11)を具備し、
前記動刃(2)と前記第1の把手(4)及び前記第1の把手(4)と前記第2の把手(5)は、それぞれが異なる箇所でピボット結合され、
前記ラチェット爪(10)と前記ストッパ爪(11)は、前記第2の把手(5)に設けられ、
前記第2の把手(5)の初回の開き動作により前記リンク機構(9)経由で前記ラチェットギヤ(3)が引き動かされて閉じていた前記動刃(2)が全開し、
前記第2の把手(5)の閉じ動作により前記ラチェットギヤ(3)の歯(3a)に係止した前記ラチェット爪(10)が前記ラチェットギヤ(3)を回転させて前記動刃(2)が閉じ方向に動き、
前記第2の把手(5)の開閉操作の繰り返しにより前記ラチェットギヤ(3)の歯(3a)に対する前記ラチェット爪(10)の係止位置が徐々にずれ、前記受け部(6)で支えた前記樹脂パイプ(30)への前記動刃(2)の切り込み量が増大して樹脂パイプ(30)の切断がなされるように構成された請求項1に記載のパイプカッタ。
【請求項3】
前記動刃(2)の刃面(2a)には、フッ素樹脂含有無電解ニッケルメッキからなる皮膜が形成されている、請求項1または2に記載のパイプカッタ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片刃式のカッタ、特に樹脂パイプを切断する片刃式のパイプカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂パイプを切断するためのパイプカッタとして、特許文献1~3などに記載されたものが知られている。
【0003】
これらの文献に記載されたパイプカッタは、動刃を有し、静刃の無い片刃式の鋏に似たカッタである。その片刃式パイプカッタの従来品の一例を図6から図8に示す。
【0004】
図6のパイプカッタ1Aは、ラチェットギヤ3を有する動刃2と受け部6を有する第1の把手4をピボット7で結合し、さらに、第1の把手4と対をなす第2の把手5を第1の把手4にピボット8で結合している。
【0005】
受け部6は、鋏の静刃に代わる部材であって、凹形に湾曲したパイプ支持面の中央に動刃の入り込むスリット(図示せず)を有する。
【0006】
また、2本のリンク9a、9bをヒンジピン9cでつないだリンク機構9を介して動刃2に第2の把手5を連結し、さらに、第2の把手5にラチェットギヤ3の歯3aに噛合するラチェット爪10と、ラチェットギヤ3の戻り回転を阻止するストッパ爪11を設けている。
【0007】
ラチェット爪10はバネ12によって、また、ストッパ爪11はバネ13によって共にラチェットギヤ3の歯3aに噛合する方向に付勢されている。
【0008】
動刃2と一体のラチェットギヤ3は、ピボット7を中心にした円弧上に外周面があり、その外周面に歯3aが配列されている。また、ラチェットギヤ3の一部は、内周面を持ち、その内周面に、受け部6に固定されたストッパピン14に受け止められるストッパ15が設けられている。
【0009】
そしてさらに、リンク機構9のリンク9aは、第2の把手5にヒンジピン17を用いてつながれ、リンク9bは動刃2にヒンジピン18を用いてつながれている。
【0010】
このように構成されたパイプカッタ1Aは、第2の把手5を開くと、リンク機構9を介して動刃2が引っ張られ、図7のように、その動刃2がピボット7を支点に回転し、所定位置まで開く。
【0011】
この状態で受け部6に切断対象のパイプがセットされる。受け部6は、パイプ支持面6aが凹形に湾曲しており、そこに、切断対象の樹脂パイプ30が挿入される。
【0012】
その後、第2の把手5が操作され、その第2の把手5が閉じられるときにラチェット爪10がラチェットギヤの歯3aに係止し、ラチェットギヤ3を押して回転させる。その回転により動刃2が図8に示すように、樹脂パイプ30に切り込まれて行く。
【0013】
このとき、ストッパ爪11は、回転するラチェットギヤ3に押し動かされて歯3aとの係合が解ける位置に逃げる。
【0014】
第2の把手5の操作による動刃2の切り込みは、第2の把手5を再度開くときにラチェットギヤ3の歯3aに対するラチェット爪10の係止位置が1歯~2歯程度ずれ、次に行う第2の把手5の閉操作時に、ラチェットギヤ3がずれた分押されて回転する。
【0015】
これにより、第2の把手5の操作による動刃2の樹脂パイプ30への切り込みが徐々に進行し、図8の状態となって樹脂パイプ30を切断することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】実開昭53-105090号公報
【文献】実開昭54-83683号公報
【文献】実開昭58-117263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この種のパイプカッタでは、樹脂パイプ30の切り込みに従って形成される断面が、動刃2の刃面に接触しながら切断作業が進行するため、摺動抵抗が生じ、切断作業に余計な力を要することとなる。
また、樹脂パイプ30の断面に不要な荷重がかかることから、意図しない方向に割れたりひびが入ったりする問題がある。
このような問題は、切断対象物がパイプに限られず、片刃式のカッタ全般に生じる。
【0018】
そこで本発明の解決すべき課題は、片刃式のカッタにおいて、その刃面の切断対象物の断面が接触することに伴う摺動抵抗を減じ、切断作業に要する力を低減するとともに切断対象物に割れ等が生じることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するため、発明にかかる片刃式のカッタを、切断対象物の受け部を有する第1の把手と、その第1の把手にピボット結合させた動刃と、その動刃を開閉させる第2の把手を備え、前記第2の把手を前記第1の把手から離反する方向に操作して前記動刃を全開させ、さらに、前記第2の把手を前記第1の把手に接近する方向に操作して前記動刃を閉じ、その閉じる動刃によって前記受け部で支えた切断対象物を切断する片刃式のカッタであって、前記動刃の刃面には、前記切断対象物の断面が通過する軌跡上に、前記断面との接触を回避するための透孔または凹部が設けられている構成としたのである。
【0020】
発明にかかる片刃式のカッタにおいて、前記第2の把手を前記動刃につなぐリンク機構と、前記動刃と一体に形成されたラチェットギヤと、前記ラチェットギヤの歯に噛合するラチェット爪と、前記ラチェットギヤの戻り回転を阻止するストッパ爪を具備し、前記動刃と前記第1の把手及び前記第1の把手と前記第2の把手は、それぞれが異なる箇所でピボット結合され、前記ラチェット爪と前記ストッパ爪は、前記第2の把手に設けられ、前記第2の把手の初回の開き動作により前記リンク機構経由で前記ラチェットギヤが引き動かされて閉じていた前記動刃が全開し、前記第2の把手の閉じ動作により前記ラチェットギヤの歯に係止した前記ラチェット爪が前記ラチェットギヤを回転させて前記動刃が閉じ方向に動き、前記第2の把手の開閉操作の繰り返しにより前記ラチェットギヤの歯に対する前記ラチェット爪の係止位置が徐々にずれ、前記受け部で支えた切断対象物への前記動刃の切り込み量が増大して切断対象物の切断がなされるように構成されているのが好ましい。
【0021】
また、発明にかかる片刃式のカッタの切断対象物は特に限定されないが、樹脂パイプとし、前記受け部は円弧状に窪んだ受け部であるパイプカッタとして構成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
発明にかかるカッタを以上のように動刃の刃面の切断対象物の断面が通過する軌跡上に、断面との接触を回避するための透孔または凹部が設けられている構成を採用したので、切断対象物の既に切断が終わった箇所と動刃との摺動抵抗が減じられ、切断作業に要する力を低減することが可能となる。
また切断対象物の断面にかかる荷重が減じられることから、意図しない方向に割れたり、ヒビが入ったりする事態が阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態のパイプカッタの、動刃を全開した状態における側面図
図2】実施形態のパイプカッタの、動刃を半開した状態に置ける縦断面図
図3】実施形態のパイプカッタの、動刃を全閉した状態に置ける縦断面図
図4】(a)は動刃の側面図、(b)は(a)の矢印断面図、(c)は他の例における(a)の矢印断面図
図5】動刃の他の例の側面図
図6】従来のパイプカッタの、動刃を全開した状態における側面図
図7】従来のパイプカッタの、動刃を半開した状態における側面図
図8】従来のパイプカッタの、動刃を全閉した状態における側面図の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1から図3に示したパイプカッタ1は、樹脂パイプを切断するのに用いられ、特に大径の樹脂パイプ30を切断するのに適している。
【0025】
パイプカッタ1は、ラチェットギヤ3を有する動刃2と、受け部6を有する第1の把手4と、その第1の把手4と対をなす第2の把手5と、その第2の把手5を動刃2につなぐリンク機構9と、前記ラチェットギヤ3の歯3aに噛合するラチェット爪10と、ラチェットギヤ3の戻り回転を阻止するストッパ爪11を備える。
【0026】
動刃2は、炭素工具鋼などで形成された刃であって、傷んで切れ難くなったら刃を研ぎ直したものや新しいものへと交換される。ラチェットギヤ3は、その動刃2と一体のギヤである。このラチェットギヤ3は、ピボット7を支点にして回転する扇型のギヤになっている。
【0027】
そのラチェットギヤ3は、ピボット7を中心にしたに円弧上に外周面があり、その外周面に歯3aが配列されている。
【0028】
図示のように、ラチェット爪10はバネ12によって、また、ストッパ爪11はバネ13によって共にラチェットギヤ3の歯3aに噛合する方向に付勢されている。また、動刃2は、ピボット7を用いて第1の把手4にピボット結合されており、第2の把手5は第1の把手4にピボット8を用いてピボット結合されている。
【0029】
さらに、ラチェット爪10はピボット8を用いて、ストッパ爪11は第1、第2の把手を結合させたヒンジピン16を用いて、それぞれ第2の把手5に回動可能に取り付けられている。
【0030】
リンク機構9は、2本のリンク9a、9bをヒンジピン9cでつないだものであり、リンク9aは第2の把手5にヒンジピン16を用いて連結され、リンク9bは動刃2にヒンジピン18を用いて連結されている。
【0031】
第1、第2の把手4、5を閉じた位置に保持するためのフックタイプの開き止め具19は、第1の把手4の後端部に設けられている。開き止め具19は、図ではフックタイプで構成されているが、玉鎖などで構成されていてもよい。
【0032】
図4(a)および(b)に示すように、パイプカッタ1の動刃2には、その左右の刃面2a間を貫通する長円形の透孔2bが設けられている。
かかる透孔2bは、パイプ30の断面が通過する軌跡上に位置しており、その断面と刃面2aとの接触が回避または抑制されるようになっている。
このため、パイプ30の既切断箇所(断面)が動刃2の刃面2aと擦れて摺動抵抗が発生することが抑制され、切断作業の要する力が軽減されるとともに、パイプに余計な荷重がかかって割れやヒビが生じる事態が防がれている。
なお、透孔2bは少なくとも一部がパイプ30の断面が通過する軌跡上に位置する限りにおいて、その形状は限定されず、たとえば図5のように、左右一対の半円形としてもよい。
また、透孔2bに替えて、図4(c)のように、左右の刃面2aのパイプ30の断面が通過する軌跡上に、その断面と刃面2aとの接触が回避または抑制されるような凹部2cを設けてもよい。
ここで、透孔2bや凹部2cは、これらが存在しない場合に比べて、パイプ30との接触面積が50%以下になるように、大きさ、形成位置、形状等を調整すると、良好な接触回避または抑制効果を発揮することができる。
【0033】
この動刃の刃面2aには、さらに、フッ素樹脂含有無電解ニッケルメッキ(Ni-Bメッキ)などの皮膜を形成することができる。
このように皮膜を形成することで、パイプ切断時の摺動抵抗がさらに減じられ、たとえば、パイプ30が樹脂製の内パイプ31と外パイプ32の間に発泡材からなる断熱層33を充填した複合パイプであっても、その断熱層33を潰したり欠損させたりせずに、良好に切断することが可能になる。
【0034】
実施形態のパイプカッタ1の構成は以上のようであり、次にその使用方法について説明する。
まず、第2の把手5の初回の開き動作によりリンク機構9経由でラチェットギヤ3が引き動かされて回転し、閉じていた動刃2が一気に全開する。
【0035】
つぎに、第2の把手5の閉じ動作により、ラチェットギヤ3の歯3aに係止したラチェット爪10がラチェットギヤ3を押して回転させる。その回転に伴い、動刃2が閉じ方向に動いて、円弧状に窪む受け部6に支えられたパイプ30に切り込まれて行く。
パイプ30の断面は動刃2の刃面2a上に位置するがここに透孔2bが存在するため、その断面と刃面2aとの接触面積が減じられている。
【0036】
その後、第2の把手5が連続的に開閉され、その開閉操作の繰り返しによってラチェットギヤ3の歯3aに対するラチェット爪10の係止位置が徐々にずれて行く。
【0037】
この動作により受け部6で支えたパイプ30への動刃2の切り込み量が少しずつ増大し、ついには刃先が受け部6のパイプ支持面6aに設けられたスリットに没入してパイプ30が完全に切断されることになる。
【0038】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
【0039】
実施形態では、大径樹脂パイプを切断するのに好適なパイプカッタとして、ラチェットギヤ、リンク機構、ラチェット爪などを用いたものを示したが、これらを省略し、小径樹脂パイプを切断するのに好適なものとして、動刃2を第2の把手5に一体に設け、その動刃2を第1の把手4にピボット7で結合させ、第2の把手5が梃比のみを利用して入力を増幅させて動刃2を作動させる構成としてもよい。
【0040】
また実施形態では、切断対象物を樹脂パイプ30としたが、切断対象物はこれに限定されない。切断対象物の形状に応じて、受け部6の形状等は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 実施形態のパイプカッタ
1A 従来のパイプカッタ
2 動刃
2a 刃面
2b 透孔
2c 凹部
3 ラチェットギヤ
3a 歯
4 第1の把手
5 第2の把手
6 受け部
6a パイプ支持面
7 ピボット
8 ピボット
9 リンク機構
9a リンク
9b リンク
9c ヒンジピン
10 ラチェット爪
11 ストッパ爪
12 バネ
13 バネ
14 ストッパピン
15 ストッパ
16 ヒンジピン
17 ヒンジピン
18 ヒンジピン
19 開き止め具
30 樹脂パイプ
31 内パイプ
32 外パイプ
33 断熱層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8