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特許7383327針状アルミナ粒子集合体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】針状アルミナ粒子集合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/441 20220101AFI20231113BHJP
   C01F 7/34 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
C01F7/441
C01F7/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023110551
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2023003091
(32)【優先日】2023-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399127625
【氏名又は名称】浅田化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 太一
(72)【発明者】
【氏名】筒井 義也
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030771(JP,A)
【文献】特開2012-036034(JP,A)
【文献】特開2010-105846(JP,A)
【文献】特開2003-054941(JP,A)
【文献】特許第6991632(JP,B1)
【文献】特許第7017283(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00-17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状アルミナ粒子集合体であって、
前記針状アルミナ粒子集合体の一次粒子が、短軸の長さ(α)0.05~1μm、長軸の長さ(β)0.08~10μmおよびアスペクト比(β)/(α)1.5~100を有し、前記針状アルミナ粒子集合体の二次凝集体が、粒度分布測定においてD50 5~50μmおよびD90 300μm以下、比表面積120~400m /gおよび精製亜麻仁油試験による吸油性試験において100~400ml/100gを有し、
前記針状アルミナ粒子集合体のアルミナ粒子が少なくともγアルミナを含み、かつ不純物であるFe、Mg、Ca及びSiの量が0.01質量%未満であることを特徴とする針状アルミナ粒子集合体。
【請求項2】
(1)水溶性アルミニウム化合物(A)と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアおよびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ化合物(B)と、をpH5~8の範囲で反応して水酸化アルミニウムゲルを合成する工程、
(2)工程(1)で得られた水酸化アルミニウムゲルを洗浄した後、含有水分率が45~70重量%に乾燥する工程、
(3)工程(2)で得られた乾燥した水酸化アルミニウムゲルを再度水に分散し、ギ酸をアルミニウム1モルに対して1.5~3モルの量で添加して反応してギ酸アルミニウムを形成する工程、
(4)得られたギ酸アルミニウムを乾燥後、粉砕および焼成して針状アルミナ粒子集合体を製造する工程、
を包含し、
工程(3)の水酸化アルミニウムゲルとギ酸との反応が、30~60℃で0.5~4時間加熱攪拌することにより行われ、
工程(4)の乾燥が、振動乾燥機、ドラムドライヤ、気流乾燥機、棚段乾燥機またはコニカルドライヤーを用いて、温度80~120℃の範囲で行われ、
工程(4)の焼成が、粉砕物をアルミナ製るつぼ、アルミナ製匣鉢に入れて600~1000℃で1~7時間焼成し、焼成環境が大気中、窒素中、真空中または不活性ガス中で行われ、
前記工程(4)のギ酸アルミニウムが、Fe含有量70ppm以下、Ca含有量70ppm以下、Mg含有量70ppm以下およびSi含有量70ppm以下を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の針状アルミナ粒子集合体の製造方法。
【請求項3】
工程(1)の水溶性アルミニウム化合物(A)が、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウムのいずれか単独または混合物である、請求項2記載の針状アルミナ粒子集合体の製造方法。
【請求項4】
工程(2)の水酸化アルミニウムゲルの洗浄が、水酸化アルミニウムゲルをろ過器で脱水して水酸化アルミニウムゲルケーキを得た後、水酸化アルミニウムゲルケーキの加水洗浄を複数回行ったのち、乾燥することにより行われる、請求項2または3記載の針状アルミナ粒子集合体の製造方法。
【請求項5】
工程(4)の粉砕が、ポットミル、ボールミル、石臼式粉砕機、ピンミルまたはハンマーミルで行われ、それらが粉状物と接する部分が樹脂またはアルミナである、請求項2または3記載の針状アルミナ粒子集合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針状アルミナ粒子集合体、特に不純物が少なく、比表面積および吸油性の高い針状アルミナ粒子集合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
針状のアルミナは各種方法で作製されている。例えば、アルミニウム塩と炭酸水素アンモニウム中で予め、酸もしくは塩基を加えて60~150℃の温度で1~140時間加熱熟成し、前駆体としてアンモニウムアルミニウム炭酸水酸化物を合成し、400~1000℃で焼成する方法(特許文献1:特開昭63-147820号公報)、アルミニウム水酸化物またはアルミニウム水和物に炭酸水素アンモニウム中を加えて60~150℃の温度で1~140時間加熱熟成し、前駆体としてアンモニウムアルミニウム炭酸水酸化物を合成し、その前駆体を400~1000℃で焼成する方法(特許文献2:特開昭63-147821号公報)、針状のアルミナ前駆体粒子にシリカやエチルシリケート等を少量添加し、焼成をおこなうことで針状のアルミナ粒子もしくは針状のアルミナ系酸化物をえる方法(特許文献3:特開平5-43225号公報)、マグネシウムのプロピオン酸塩もしくは硫酸塩を水酸化アルミニウムと一定の混合比にし、水の存在下で180~250℃で水熱合成をおこなうことにより、針状ベーマイトを得る方法(特許文献4:特許3930273号)、水性アルカリ溶液におけるアルミニウムアルコラートをpH8.5以上、50~95℃で加水分解を行い、置換カルボン酸またはカルボン酸塩の存在且つ加圧下で130~220℃で少なくとも2時間熟成工程を行うことで薄板状もしくは針状ベーマイト粒子を得る方法(特許文献5:特許5132149号)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-147820号公報
【文献】特開昭63-147821号公報
【文献】特開平5-43225号公報
【文献】特許3930273号
【文献】特許5132149号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2記載の方法は、60~150℃の濃度で熟成を1~140時間実施することになっており、低温で熟成を行うと熟成時間が非常にかかること、一方で高温にて熟成する際には炭酸水素アンモニウムが熟成温度で分解しやすいため、密閉容器やオートクレーブを使用することになっているが、内圧が上がるため耐圧容器が必須となり、製造設備が大がかりになること及び生産性が悪化することが課題となる。また製造工程中に洗浄工程が設けられていないため、これらの文献に記載の実施例に記載のようにアルミニウムミョウバン等を使用すると硫黄元素が系内に残留し、焼成時にSOxを多量に発生させることや焼成体にも硫黄元素を多量に含む危険性がある課題がある。
【0005】
特許文献3記載の方法は、針状のアルミナ前駆体粒子にシリカやエチルシリケートを少量添加することで針状アルミナ粒子を作製する方法が記載されているが、系内にシリカが入ることにより、針状のアルミナ粒子は得られるかもしれないが、アルミナ純度が落ちる課題があり、シリカの影響でアルミナとは異なる結晶相ができ、欠陥となる。
【0006】
特許文献4記載の方法は、マグネシウムのプロピオン酸塩もしくは硫酸塩と水酸化アルミニウムを水存在下で180~250℃で水熱合成をする方法が記載されているが、水熱合成を行うため、耐圧性の反応容器が必要であり、設備が大がかりになること及び生産性が悪化することが考えられる。また、マグネシウムのプロピオン酸塩もしくは硫酸塩を使用しており、洗浄工程もないため、焼成時にマグネシウムがコンタミ(不純物金属元素)として入ることが予測され、アルミナと異なる結晶相ができ、欠陥となる。
【0007】
特許文献5記載の方法は、水性アルカリ溶液におけるアルミニウムアルコラートをpH8.5以上、50~95℃で加水分解を行い、置換カルボン酸またはカルボン酸塩の存在且つ加圧下で130~220℃で熟成工程を経ており、水熱合成を行うため、耐圧性の反応容器が必要であり、設備が大がかりになること及び生産性が悪化する。また、水性アルカリ溶液におけるアルミニウムアルコラートを使用しているため、アルミニウムアルコラートの反応性が高いため、反応の制御が難しく、安定して所望の薄板状もしくは針状ベーマイト粒子を得ることが難しい。
【0008】
上記の問題点を鑑みて、本発明の目的は、不純物が少なく、比表面積および吸油性の高い針状アルミナ粒子集合体およびその効率的な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は以下の態様を提供する:
[1]
針状アルミナ粒子集合体であって、
前記針状アルミナ粒子集合体の一次粒子が、短軸の長さ(α)0.05~1μm、長軸の長さ(β)0.08~10μmおよびアスペクト比(β)/(α)1.5~100を有し、前記針状アルミナ粒子集合体の二次凝集体が、粒度分布測定においてD50 5~50μmおよびD90 300μm以下、比表面積120~400 /gおよび精製亜麻仁油試験による吸油性試験において100~400ml/100gを有し、
前記針状アルミナ粒子集合体のアルミナ粒子が少なくともγアルミナを含み、且つ不純物であるFe、Mg、Ca及びSiの量が0.01質量%未満であることを特徴とする針状アルミナ粒子集合体。
[2]
(1)水溶性アルミニウム化合物(A)と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアおよびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ化合物(B)と、をpH5~8の範囲で反応して水酸化アルミニウムゲルを合成する工程、
(2)工程(1)で得られた水酸化アルミニウムゲルを洗浄した後、含有水分率が45~70重量%に乾燥する工程、
(3)工程(2)で得られた乾燥した水酸化アルミニウムゲルを再度水に分散し、ギ酸をアルミニウム1モルに対して1.5~3モルの量で添加して反応してギ酸アルミニウムを形成する工程、
(4)得られたギ酸アルミニウムを乾燥後、粉砕および焼成して針状アルミナ粒子集合体を製造する工程を包含し、
工程(3)の水酸化アルミニウムゲルとギ酸との反応が、30~60℃で0.5~4時間加熱攪拌することにより行われ、
工程(4)の乾燥が、振動乾燥機、ドラムドライヤ、気流乾燥機、棚段乾燥機またはコニカルドライヤーを用いて、温度80~120℃の範囲で行われ、
工程(4)の焼成が、粉砕物をアルミナ製るつぼ、アルミナ製匣鉢に入れて600~1000℃で1~7時間焼成し、焼成環境が大気中、窒素中、真空中または不活性ガス中で行われ、
前記工程(4)のギ酸アルミニウムが、Fe含有量70ppm以下、Ca含有量70ppm以下、Mg含有量70ppm以下およびSi含有量70ppm以下を有する、
ことを特徴とすることを包含する[1]に記載の針状アルミナ粒子集合体の製造方法。
[3]
工程(1)の水溶性アルミニウム化合物(A)が、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウムのいずれか単独または混合物である、[2]記載の針状アルミナ粒子集合体の製造方法。
[4]
工程(2)の水酸化アルミニウムゲルの洗浄が、水酸化アルミニウムゲルをろ過器で脱水して水酸化アルミニウムゲルケーキを得た後、水酸化アルミニウムゲルケーキの加水洗浄を複数回行ったのち、乾燥することにより行われる、[2]または[3]記載の針状アルミナ粒子集合体の製造方法。
[5]
工程(4)の粉砕が、ポットミル、ボールミル、石臼式粉砕機、ピンミルまたはハンマーミルで行われ、それらが粉状物と接する部分が樹脂またはアルミナである、[2]または[3]記載の針状アルミナ粒子集合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の針状アルミナ粒子集合体は、不純物(例えば、Fe、Ca、Mg、Si等)をほとんど含まず、一次粒子が針状で一次粒子が集合した二次粒子からなる針状アルミナ粒子集合体を提供することが可能である。また、本発明の針状アルミナ粒子集合体は、アルミナとしては非常に高い比表面積及び吸油量を持つことが確認できた。本発明の針状アルミナ粒子集合体は、主要原料としてFe、Ca、Mg、Siの含有量の少ないギ酸アルミニウムを基に乾燥条件、焼成条件、粉砕条件の最適化を図ることにより、製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られた針状アルミナ粒子集合体の15,000倍のSEM(走査型電子顕微鏡)画像である。
図2】実施例1で得られた針状アルミナ粒子集合体の2,500倍のSEM(走査型電子顕微鏡)画像である。
図3】実施例1で得られた針状アルミナ粒子集合体のX線回折図である。
図4】比較例3で得られた針状アルミナ粒子集合体のX線回折図である。
図5】比較例6で得られた針状アルミナ粒子集合体のX線回折図である。
図6】実施例1で得られた針状アルミナ粒子集合体の粒度分布を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(定義)
本明細書中において、数値範囲、具体的には「x~y」はx以上y以下(xおよびyは共に数値を表す。)を表現している。
【0013】
(針状アルミナ粒子集合体の説明)
本発明では、針状アルミナ粒子集合体を提供する。本発明の針状アルミナ粒子集合体は、一次粒子が、短軸の長さ(α)0.05~1μm、長軸の長さ(β)0.08~10μmおよびアスペクト比(β)/(α)1.5~100を有し、
前記針状アルミナ粒子集合体の二次凝集体が、粒度分布測定においてD50 5~50μmおよびD90 300μm以下、比表面積120~400 /gおよび精製亜麻仁油試験による吸油性試験において100~400ml/100gを有し、
前記針状アルミナ凝集粒子が少なくともγアルミナを含み、且つ不純物が少ないことを特徴とする。
【0014】
本発明の針状アルミナ粒子集合体は、針状アルミナ粒子(一次粒子)が凝集したもの(集合体または二次粒子)であり、一次粒子は針状であるので、長軸と短軸があり、短軸の長さ(α)0.05~1μm、好ましくは0.08~0.9μmで、より好ましくは0.1~0.8μmである。長軸の長さ(β)0.08~10μm、好ましくは0.1~9μm、最も好ましくは0.2~8μmである。また、本発明の針状アルミナ粒子の一次粒子は、アスペクト比(β)/(α)1.5~100が好ましく、より好ましく4~90である。
【0015】
本発明の針状アルミナ粒子集合体は、通常、上記一次粒子が凝集して集合体(凝集体)を形成している。本発明の針状アルミナ粒子集合体は、粒度分布測定において、D50が5~50μm、好ましく6~45μm、より好ましくは7~40μmである。D90は300μm以下、好ましくは60μm~300μmであり、具体的には70μm~250μm、より具体的には80μm~200μmである。粒度分布は、本発明の実施例ではレーザー回折式粒度分布計(マルバーン・パナリティカル製マスターサイザー3000)で測定することにより得られる。D50は、平均粒子径であり、D50が5μmより小さいものは、粉体の流動性が悪くなって、取り扱いが難しくなる。50μmを超えると粒径が大きいので使用用途が減少する。D90は粒子の90%の取り得る粒子径を意味し、D90が60μm未満になると粒子の流動性が悪くなり、取扱いが難しくなり、作業性が悪化する課題がある。一方で300μmを超えると、粒径が大きいので使用用途が減少する。
【0016】
本発明の針状アルミナ粒子集合体は、比表面積120~400m/g、好ましくは150~380m/g、より好ましくは170~350m/gを有する。比表面積はある物体について単位質量あたりの表面積のことである。本発明の実施例では比表面積は、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(マイクロトラックベル株式会社製、BELSORP MAX2)にてNで測定した。比表面積は、多い程、中空度や多孔質度が高まるが、本発明のアルミナ粒子は、400 /gを超えることは少なく、表面活性が高くなりすぎて、室温における安定性が低下する。120 /gより少ないと高い比表面積を要求する触媒担持体等の用途に対して比表面積が小さいので、適さなくなる。
【0017】
本発明の針状アルミナ粒子集合体は、精製亜麻仁油試験による吸油性試験において100~400ml/100g、好ましくは120~380ml/100g、より好ましくは150~350ml/100gである。本発明では、吸油量はJISH5101-13-1の精製あまに油法の吸油性試験に準拠して測定され、吸油量が多い程表面積が多くなる。吸油量が100ml/100gより少ないと、高い吸油性が要求される用途には吸油性が十分でなく適さない課題があり、400ml/100gを超えると過剰に油分を吸収するため、例えば化粧品等の他配合剤油分を吸収してしまい、狙いの滑らかさ等の化粧品に求められる機能が出せなくなる課題がある。
【0018】
本発明の針状アルミナ粒子集合体は、少なくともγアルミナを含むものであり、αアルミナを含まないか、殆ど含まない。また、本発明の針状アルミナ粒子集合体は、アルミナ製造時に使用する原料の不純物や製造機器等から混入する不純物を少なくするので、アルミナ自体に不純物(例えば、Fe、Ca、Mg、Si等の元素)が非常に少ない。針状アルミナ粒子集合体の不純物量を測定するのは、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光光度計で測定するが、アルミナ粒子集合体は溶解することが難しいので、測定ができない。従って、アルミナ粒子集合体自体の不純物の測定ではなく、下記で説明する針状アルミナ粒子集合体の製造方法の最終段階で得られるギ酸アルミニウムの不純物量を測定することにより、特定している。ギ酸アルミニウムの不純物量が最終の針状アルミナ粒子集合体の不純物量を表していると、推定することができる。本発明の針状アルミナ粒子集合体は、不純物の量が少ないので、純度が高いアルミナの用途に使用できると共に、新たな用途も考慮される。尚、針状アルミナ粒子集合体の不純物量は、例えばSEM(走査型電子顕微鏡:日本電子株式会社製JCM-7000)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定することが可能であるが、本発明で得られた針状アルミナ粒子集合体は不純物量(具体的には、Fe、Ca、Mg、Siの量)がほぼ測定できないほど低く、具体的な値として測定できない。
【0019】
(針状アルミナ粒子集合体の製造方法)
本発明の針状アルミナ粒子集合体は、以下の製造方法で製造することができる:
(1)水溶性アルミニウム化合物(A)と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアおよびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ化合物(B)と、をpH5~8の範囲で反応して水酸化アルミニウムゲルを合成する工程、
(2)工程(1)で得られた水酸化アルミニウムゲルを十分洗浄した後、含有水分率が45~70重量%に乾燥する工程、
(3)工程(2)で得られた乾燥した水酸化アルミニウムゲルを再度水に分散し、ギ酸をアルミニウム1モルに対して1.5~3モルの量で添加して反応してギ酸アルミニウムを形成する工程、
(4)工程(3)で得られたギ酸アルミニウムを乾燥後、粉砕および焼成して針状アルミナ粒子集合体を製造する工程。
【0020】
本発明の針状アルミナ粒子集合体の製造方法の工程(1)は、水溶性アルミニウム化合物(A)とアルカリ化合物(B)とをアルカリ環境下、即ち、pH5~8で反応することである。この工程(1)で使用する水溶性アルミニウム化合物(A)としては硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウムのいずれか単独もしくは混合物を選択して使用可能であり、より好ましくは硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムのいずれか1つまたは混合物が好ましい。
【0021】
上記工程(1)に使用するアルカリ化合物(B)は、具体的に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの単独もしくは混合物であり、反応はpH 5~8の範囲、より好ましくはpH5.5~7.5、更に好ましくはpH6~7で非晶質の水酸化アルミニウムゲルを合成することが必要である。反応時のpHが5未満になると酸性側にpHがあるため、非晶質の水酸化アルミニウムゲルが得られにくくなる。一方でpHが8を超えると工程(3)において水に再分散し、ギ酸を入れてギ酸アルミニウムを合成する際に水酸化アルミニウムゲルが溶解しなくなることがある。
【0022】
本発明の針状アルミナ粒子集合体の製造方法における工程(2)は、上記工程(1)で得られた水酸化アルミニウムゲルを十分洗浄した後、含有水分率45~70重量%に乾燥することである。この工程(2)の水酸化アルミニウムゲルの洗浄は、水酸化アルミニウムゲルをろ過器で脱水して水酸化アルミニウムゲルケーキを得た後、水酸化アルミニウムゲルケーキの加水洗浄を複数回行ったのち、乾燥することにより行われる。水酸化アルミニウムゲルケーキの洗浄は、十分に行う必要あり、具体的には洗浄を2~10回、好ましくは3~8回行うことが必要である。より好ましくは4~7回洗浄することが好ましい。水酸化アルミニウムゲルの洗浄が2回未満であった場合は、水酸化アルミニウムゲルケーキ内に原料の水溶性アルミニウム化合物由来の陰イオンが残り、次の工程(3)においてギ酸を投入した際に反応が十分進まなくなることがある。一方で10回を超えて実施すると水酸化アルミニウムゲルケーキの洗浄は十分できるものの、排水が増加し、かつ生産性が悪化する傾向がある。
【0023】
上記工程(2)における洗浄後の脱水工程において非晶質の水酸化アルミニウムゲルの水分率は40~70%に脱水乾燥することが好ましい。より好ましくは水分率50~65%が好ましい。乾燥後の水分率が40%未満になると工程(3)での水への再溶解が難しくなり、かつギ酸を添加した際の反応性が悪く反応が十分に進まない傾向がある。一方で乾燥後の非晶質の水酸化アルミニウムゲルの水分率が70%を超える場合においては、遠心分離機、連続ろ過機、加圧連続ろ過機で脱水した後の水分率が多いため、ケーキを取り出す際に、取り扱いが難しく、収率が悪化する。
【0024】
上記工程(2)における水酸化アルミニウムゲル洗浄後の脱水工程において非晶質の水酸化アルミニウムゲルの水分率は45~70%が好ましく、脱水工程だけで狙いの水分率の水酸化アルミニウムゲルが得られない場合には、棚段乾燥機、振動乾燥機、真空乾燥機で所定の水分率の水酸化アルミニウムゲルになるように乾燥してもよい。
【0025】
本発明の針状アルミナ粒子集合体を製造する工程(3)は、工程(2)で得られた乾燥した水酸化アルミニウムゲルを再度水に分散し、次にギ酸をアルミニウム1モルに対して1.5~3モル、好ましくは1.8~2.8モル、より好ましく1.9~2.5モルの量で添加して、反応させてギ酸アルミニウムを形成する工程である。この工程(3)において、ギ酸の添加量が1.5モルより少ない場合は化学量論比率的にアルミニウムと反応するギ酸量が少なくなるため、水酸化アルミニウムゲルの分散体が占める割合が多いため、所望のギ酸アルミニウムが得られなくなる。一方、ギ酸の量が3モルよりも多い場合、反応に関与しないギ酸が多数残ること及びアルミニウム1モルに対して、3モルのギ酸が反応したギ酸アルミニウムができてしまい、水及び水溶性溶媒に不溶になってしまうことがある。
【0026】
上記工程(3)において、水酸化アルミニウムゲルを水に再分散し、ギ酸をアルミニウム1モルに対して、1.5~3モル添加し、30~60℃で0.5~4時間加熱攪拌を行う必要がある。反応温度が30℃未満の場合は反応速度が遅く反応時間を非常に長く要する傾向にある。一方、反応温度が60℃を超えるとギ酸の揮発が起こるようになり、化学量論的に狙いのギ酸アルミニウムを得ることができなくなることがある。反応時間が0.5時間より短い場合は反応が十分に進まず、所望のギ酸アルミニウムが合成できない課題があり、4時間を超えると反応時間が長すぎるため、生産性が悪化する課題がある。
【0027】
本発明においては、工程(3)で得られたギ酸アルミニウムが、不純物が少ない状態、特にFe含有量70ppm以下、Ca含有量70ppm以下、Mg含有量70ppm以下およびSi含有量70ppm以下にすることが重要である。より具体的にはこれらの元素を好ましくは60ppm以下、より好ましくは40ppm以下に制限することが好ましい。ギ酸アルミニウムが不純物(具体的には、Fe、Ca、MgまたはSi)を、70ppmを超えて含有すると、焼成時にアルミナ以外の異なる結晶相を形成することや着色等の不良を発生させる原因になる。
【0028】
本発明の針状アルミナ粒子集合体の製造方法おける工程(4)は、工程(3)で得られたギ酸アルミニウムを乾燥後、粉砕および焼成して針状アルミナ粒子集合体を製造する工程である。工程(3)で得られたギ酸アルミニウムの乾燥は、ギ酸アルミニウムの液を適当な乾燥機(具体的には、振動乾燥機、ドラムドライヤ、気流式乾燥機、棚段乾燥機)で温度80~120℃で乾燥することが必要である。乾燥温度が80℃未満であると、水や水溶性溶媒の揮発が十分でなく、焼成時に大きな凝集体を発生させることがある。一方、120℃を超えると水及び水溶性溶媒の突沸が過剰に起こること及びギ酸の沸点を超えるために長時間当該温度にさらすことで、ギ酸アルミニウムの劣化を招き、焼成時に針状アルミナ粒子集合体が得られなくなる課題がある。
【0029】
本発明の針状アルミナ粒子集合体の製造方法の工程(4)の粉砕は、種々の粉砕機、具体的にはポットミル、ボールミル、石臼式粉砕機、ピンミルまたはハンマーミルで行われるのが好ましい。本発明では、粉砕時に金属などのコンタミ(不純物金属元素)を防止するために、粉砕機の接粉部が樹脂、アルミナ、アルミナ溶射でアルミナコーティングを施した材料等を利用していることが望ましい。
【0030】
本発明の針状アルミナ粒子集合体の製造方法の工程(4)の焼成は、るつぼや匣鉢に入れて600~1000℃で、より好ましくは650~950℃で1~7時間の範囲でバッチ炉、昇降炉、プッシャー炉、コンベア炉で焼成することが望ましい。焼成が600℃未満で行われると、γアルミナ相ができず、ギ酸アルミニウムの残炭が残るため、針状アルミナ粒子集合体を合成することができない。一方、1000℃以上で焼成してしまうとαアルミナ相が結晶相として出てきてしまい、比表面積や吸油量が急激に下がってしまい、所望の針状アルミナ粒子集合体を得ることができなくなる。焼成時間は1時間未満であれば所望の結晶相が形成されるまでの時間が不足し、7時間を超えてしまうと昇温~降温までの時間が非常にかかり生産性が悪化する課題がある。焼成は、針状形状を壊さないように行う必要があり、針状形状を維持できないロータリーキルン等は適当ではない。
【0031】
上記の焼成は、ギ酸アルミニウムをアルミナ製るつぼやアルミナ製匣鉢等に入れて焼成するのが好ましい。るつぼや匣鉢にジルコニアやムライト、炭化シリコン(SiC)等を用いると焼成時に不純物混入の原因となり、針状アルミナ粒子集合体に異なる結晶相を形成することや着色等を発生させる原因になり不良を発生させる可能性がある。
【0032】
工程(4)の焼成において、焼成時の雰囲気は、所定の焼成設定温度、設定時間で焼成を実施した際に有機分が消失するか所望のアルミナ結晶相が適切に形成されるのであれば、大気、窒素中、真空中、不活性ガス中等のいずれを選定しても問題ない。雰囲気が不適であると焼成中に有機分が十分に気化せず、残留炭素として粒子に残り、欠陥となることや結晶相を所望のように形成できず、欠陥になる課題がある。
【0033】
本発明の針状アルミナ粒子集合体の製造方法の全工程において、使用する溶媒は水及び/または水溶性の溶剤の単独もしくは混合物を使用することができる。水溶性の溶媒とは、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等から選定されるものである。
【0034】
本発明で使用する各種設備の接液、接粉部には、不純物(例えば、Fe、Si、Ca、Mgの金属類)を低減または排除するために、不純物金属を放出しない材料、具体的には繊維強化プラスチック(FRP)、ステンレス鋼(SUS316またはSUS316L)、耐食金属(ハステロイ等)、耐熱塩化ビニル、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフルオロテトラエチレン、アルミナ、ジルコニア、ジルコニア溶射、アルミナ溶射、テフロン(登録商標)ライニング等の材質が用いられる。
【実施例
【0035】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものと解釈してはならない。
【0036】
以下の実施例、比較例で示すアルミニウム1モルに対するギ酸のモル数の計算方法について以下に記載する。
アルミニウムの原子量:27、酸素の原子量:16、水素の原子量:1、ギ酸の分子量:46(HCOOH)、水酸化アルミニウムの分子量:78とする。
水酸化アルミニウムゲル中の水分をQ(%)とし、水酸化アルミニウムゲル添加量をY(g)、ギ酸の添加量をR(g)とする。
(1)水酸化アルミニウム中のアルミニウムのモル数(η)は以下の式で計算される。
η=Y×(1-Q/100) ×(27/(78))/27
(2)ギ酸のモル数(ε)は以下の式で計算される。
ε=R×(95/100)/46
よってアルミニウム1モルあたりのギ酸のモル数はε/ηで計算される。
【0037】
(実施例1)
3リットル(L)のセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン(登録商標)製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成する。その際のpHは6.6であった。
【0038】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、得られたケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、得られたケーキ(水酸化アルミニウムゲル)を取り出した。その際の水分率を水分計にて測定すると63.5%であった。
【0039】
次に3Lのセパラブルフラスコに得られた水酸化アルミニウムゲル(水分率63.5重量%)43.8g計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に、水酸化アルミニウムゲル溶液を攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分加熱攪拌を行った。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRP(繊維強化プラスチック)バットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させた。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.77モルであった。
【0040】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得た。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、700℃で3時間焼成を実施し、針状アルミナ粒子集合体を得た。
【0041】
得られた針状アルミナ粒子集合体について、粒度分布を下記のように測定してD50およびD90を表1に記載する。また、針状アルミナ粒子集合体について、比表面積、吸油量を以下に記載のように行った。結果を表1に示す。表1には、結晶相も記載した。結晶相はX線回折(SmartLab 9kW;株式会社リガク製)の結果を基に記載した。
【0042】
針状アルミナ粒子集合体の粒度分布はレーザー回折式粒度分布計(マスターサイザー3000;マルバーン・パナリティカル製)で乾式測定したD50、D90のデータを示す。
【0043】
水酸化アルミニウムゲルの水分率測定は水分率測定機(MX50;株式会社エーアンドディー製)で105℃、60分の条件で測定し、結果を表1に記載した。
【0044】
比表面積は高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORP MAX2;マイクロトラックベル株式会社製)にてNで測定したデータを示す。
【0045】
吸油量はJIS H5101-13-1の精製あまに油法に準拠して実施した結果を表1に示す。
【0046】
乾燥させたギ酸アルミニウムについて、ギ酸アルミニウムを精製水で1重量%水溶液にし、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光光度計(5110 ICP-OES;アジレントテクノロジー製)を用いてFe、Mg、CaおよびSiの量を測定した。結果を表2に記載する。
【0047】
実施例1で得られた針状アルミナ粒子集合体のSEM(走査型電子顕微鏡:日本電子株式会社製JCM-7000)画像(図1は15000倍のSEM画像、図2は2500倍のSEM画像)を載せる。針状アルミナ粒子集合体の不純物量(Fe、Mg、Ca及びSiの量)については、SEM(走査型電子顕微鏡:日本電子株式会社製JCM-7000)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表5に示す。
【0048】
(実施例2)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、24%水酸化ナトリウム水溶液16.0gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは7.0であった。
【0049】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、得られたケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、得られたケーキ(水酸化アルミニウムゲル)を取り出した。その際の水分率を水分計にて測定すると62%であった。
【0050】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル(水分率62重慮%)43.8g計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に、水酸化アルミニウムゲル溶液を攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分加熱攪拌を行った。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させた。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.66モルであった。
【0051】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得た。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、700℃で3時間焼成を実施し、針状アルミナ粒子集合体を得た。
【0052】
実施例1と同様に、粒度分布からD50およびD90を測定して結果を表1に記載する。また、実施例1と同様に、比表面積、吸油量および結晶相を測定し、結果を表1に示す。更に、ギ酸アルミニウムについて、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表2に示す。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表5に示す。
【0053】
(実施例3)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.6であった。
【0054】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、得られたケーキ(水酸化アルミニウムゲル)を取り出した。その際の水分率を水分計にて測定すると63.5%であった。
【0055】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率63.5重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に、水酸化アルミニウムゲル溶液を攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分間加熱攪拌を行った。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させた。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.77モルであった。
【0056】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得た。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、850℃で3時間焼成を実施し、針状アルミナ粒子集合体を得た。
【0057】
実施例1と同様に、粒度分布からD50およびD90を測定して結果を表1に記載する。また、実施例1と同様に、比表面積、吸油量および結晶相を測定し、結果を表1に示す。更に、ギ酸アルミニウムについて、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表2に示す。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表5に示す。
【0058】
(実施例4)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの塩化アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア30.0gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.2であった。
【0059】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、得られたケーキ(水酸化アルミニウムゲル)を取り出した。その際の水分率を水分計にて測定すると61%であった。
【0060】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率61重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に、水酸化アルミニウムゲル溶液を攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分間加熱攪拌を行う。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させた。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.59モルであった。
【0061】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得た。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、700℃で3時間焼成を実施し、針状アルミナ粒子集合体を得た。
【0062】
実施例1と同様に、粒度分布からD50およびD90を測定して結果を表1に記載する。また、実施例1と同様に、比表面積、吸油量および結晶相を測定し、結果を表1に示す。更に、ギ酸アルミニウムについて、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表2に示す。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表5に示す。
【0063】
(実施例5)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.6であった。
【0064】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、得られたケーキ(水酸化アルミニウムゲル)を取り出した。その際の水分率を水分計にて測定すると62%であった。
【0065】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率62重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に、水酸化アルミニウムゲル溶液を攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分間加熱攪拌を行う。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させた。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.66モルであった。
【0066】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得た。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、850℃で3時間焼成を実施し、針状アルミナ粒子集合体を得た。
【0067】
実施例1と同様に、粒度分布からD50およびD90を測定して結果を表1に記載する。また、実施例1と同様に、比表面積、吸油量および結晶相を測定し、結果を表1に示す。更に、ギ酸アルミニウムについて、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表2に示す。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表5に示す。
【0068】
(実施例6)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.6であった。
【0069】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、得られたケーキ(水酸化アルミニウムゲル)を取り出した。その際の水分率を水分計にて測定すると62%であった。
【0070】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率62重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に、水酸化アルミニウムゲル溶液を攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後60℃で60分間加熱攪拌を行った。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させる。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.66モルであった。
【0071】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得た。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、700℃で3時間焼成を実施し、針状アルミナ粒子集合体を得た。
【0072】
実施例1と同様に、粒度分布からD50およびD90を測定して結果を表1に記載する。また、実施例1と同様に、比表面積、吸油量および結晶相を測定し、結果を表1に示す。更に、ギ酸アルミニウムについて、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表2に示す。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表5に示す。
【0073】
(実施例7)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.6であった。
【0074】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄する操作を5回繰り返す。その後、ケーキである水酸化アルミニウムゲルを取り出し、100℃設定の棚段乾燥機で3時間乾燥を実施した。その際の水分率を水分計にて測定すると55.6%であった。
【0075】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率55.6重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分間加熱攪拌を行った。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させた。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.28モルであった。
【0076】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得た。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、700℃で3時間焼成を実施し、針状アルミナ粒子集合体を得た。
【0077】
実施例1と同様に、粒度分布からD50およびD90を測定して結果を表1に記載する。また、実施例1と同様に、比表面積、吸油量および結晶相を測定し、結果を表1に示す。更に、ギ酸アルミニウムについて、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表2に示す。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表5に示す。
【0078】
(実施例8)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.5であった。
【0079】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、得られたケーキ(水酸化アルミニウムゲル)を取り出した。その際の水分率を水分計にて測定すると56.5%であった。
【0080】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率56.5重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に、水酸化アルミニウムゲル溶液を攪拌しながら95%ギ酸32.0gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分間加熱攪拌を行った。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させた。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.71モルであった。
【0081】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得た。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、700℃で3時間焼成を実施し、針状アルミナ粒子集合体を得た。
【0082】
実施例1と同様に、粒度分布からD50およびD90を測定して結果を表1に記載する。また、実施例1と同様に、比表面積、吸油量および結晶相を測定し、結果を表1に示す。更に、ギ酸アルミニウムについて、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表2に示す。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表5に示す。
【0083】
(実施例9)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.5であった。
【0084】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、得られたケーキ(水酸化アルミニウムゲル)を取り出した。その際の水分率を水分計にて測定すると55.6%であった。
【0085】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率55.6重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に、水酸化アルミニウムゲル溶液を攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分間加熱攪拌を行った。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させた。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.28モルであった。
【0086】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得た。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、700℃で6時間焼成を実施し、針状アルミナ粒子集合体を得た。
【0087】
実施例1と同様に、粒度分布からD50およびD90を測定して結果を表1に記載する。また、実施例1と同様に、比表面積、吸油量および結晶相を測定し、結果を表1に示す。更に、ギ酸アルミニウムについて、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表2に示す。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表5に示す。
【0088】
(比較例1)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア50gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは8.2であった。
【0089】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄する操作を5回繰り返す。その後、ケーキである水酸化アルミニウムゲルを取り出す。その際の水分率を水分計にて測定すると64.2%であった。
【0090】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率64.2重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液の形成を試みた。
【0091】
しかし、得られた水酸化アルミニウムゲルは、pHが既定の範囲外であるため、水に再分散することができず、粒度分布、比表面積、吸油量および結晶相を測定できなかった。表3には、そのことを記載した。同じく、ギ酸アルミニウムを形成することができなかったので、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)も測定不可であった。そのことも表4に記載した。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表6に示す。
【0092】
(比較例2)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.6であった。
【0093】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、ケーキである水酸化アルミニウムゲルを取り出し、100℃設定の乾燥機で8時間水酸化アルミニウムゲルの乾燥を行った後、その際の水分率を水分計にて測定すると43.0%であった。
【0094】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率43.0重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲルを溶解させる。更に攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分間加熱攪拌を行う。アルミニウム1モルに対してギ酸は1.77モルであった。
【0095】
得られた水酸化アルミニウムゲルは、水に再分散することができず、粒度分布、比表面積、吸油量および結晶相を測定できなかった。表3には、そのことを記載した。同じく、ギ酸アルミニウムを形成することができなかったので、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)も測定不可であった。そのことも表4に記載した。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表6に示す。
【0096】
(比較例3)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.6であった。
【0097】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、ケーキである水酸化アルミニウムゲルを取り出した。その際の水分率を水分計にて測定すると63.5%であった。
【0098】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率63.5重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分間加熱攪拌を行う。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させた。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.77モルであった。
【0099】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得る。当該ギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、1100℃で3時間焼成を実施した。
【0100】
実施例1と同様に、粒度分布からD50およびD90を測定して結果を表3に記載した。また、実施例1と同様に、比表面積、吸油量および結晶相を測定し、結果を表3に示す。更に、ギ酸アルミニウムについて、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表4に示す。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表6に示す。
【0101】
(比較例4)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.6であった。
【0102】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、ケーキである水酸化アルミニウムゲルを取り出した。その際の水分率を水分計にて測定すると63.5%であった。
【0103】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率63.5重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分間加熱攪拌を行う。合成されたギ酸アルミニウム水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させる。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.77モルであった。
【0104】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得る。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、500℃で3時間焼成を実施した。
【0105】
得られたギ酸アルミニウム粉体の最終焼成時に残炭が残り、粒度分布、比表面積、吸油量および結晶相の測定はできなかった。そのことを表3に記載した。ギ酸アルミニウムについて、不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表4に示す。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表6に示す。
【0106】
(比較例5)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成した。その際のpHは6.6であった。
【0107】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、ケーキである水酸化アルミニウムゲルを取り出す。その際の水分率を水分計にて測定すると63.5%であった。
【0108】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率63.5重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲルを溶解させる。更に攪拌しながら95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後90℃で60min加熱攪拌を行った。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.77モルであった。
【0109】
上述のように実験したが、水酸化アルミニウムゲルが析出して合成ができなかった。そのことを表3に記載した。同じく、ギ酸アルミニウムの不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)の測定も不可であった。そのことも表4に記載した。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表6に示す。
【0110】
(比較例6)
3Lのセパラブルフラスコに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム1kgを計量し、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、28%アンモニア28.4gを少しずつ添加し、水酸化アルミニウムゲルを合成する。その際のpHは6.6であった。
【0111】
得られた水酸化アルミニウムゲル液を有孔式バスケットタイプの遠心分離機にろ布としてPS26カレンダータイプを取り付けた中に投入し、回転数2500rpmで1分間遠心分離し、遠心分離機を停止後、1kgの水を追加して回転数2500rpmで1分間遠心分離し、ケーキを洗浄した。洗浄の操作を5回繰り返した。その後、ケーキである水酸化アルミニウムゲルを取り出す。その際の水分率を水分計にて測定すると63.5%であった。
【0112】
次に3Lのセパラブルフラスコに水酸化アルミニウムゲル43.8g(水分率63.5重量%)計量し、精製水を257.5g加え、テフロン製の攪拌羽根をつけた撹拌機を用いて150rpmで攪拌しながら、水酸化アルミニウムゲル溶液を形成した。更に攪拌しながら、炭酸マグネシウムを5.0g投入後、95%ギ酸27.5gを少しずつ投入し、投入後40℃で60分間加熱攪拌を行った。合成された水溶液をFRPバットに広げ、100℃設定の棚段乾燥機にて12時間乾燥させる。アルミニウム1モルに対してギ酸は2.77モルであった。
【0113】
乾燥させたギ酸アルミニウムを3Lポリ容器に投入し、直径20mmのアルミナボール1kgを投入し、回転数300rpmで6時間乾式粉砕を行い、ギ酸アルミニウム粉体を得る。得られたギ酸アルミニウム粉体をアルミナるつぼに投入し、850℃で3時間焼成を実施した。
【0114】
得られたギ酸アルミニウム粉体を焼成し、粒度分布を測定しD50およびD90を表1に記載した。結晶相はγアルミナとマグネシウムを含む異なる相となった。そのことを表3に記載した。ギ酸アルミニウムの不純物量(Fe、Mg、CaおよびSiの量)を測定し、結果を表4に記載した。針状アルミナ粒子集合体の不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)については、SEM(走査型電子顕微鏡)に搭載されているEDS(エネルギー分散型X線分光法)で測定を実施し、結果を表6に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
表中、「n.d.」は0.01質量%未満であることを意味する。
【0120】
【表6】
表中、「n.d.」は0.01質量%未満であることを意味する。
【0121】
表1に示すように実施例1~9はいずれもγ-アルミナを示すことが確認された。実施例1~9ともに比表面積で120~400m/gの範囲にあることを示し、吸油量も100~400ml/100gの範囲にあることが確認でき、粒度分布も所望の針状アルミナ集合体ができていることが確認できた。更に、表2にみられるようにギ酸アルミニウムにおけるFe、Ca、Mg、Si量も少なく制御されており、所望の針状アルミナ集合体ができていることが確認された。表5にみられるように針状アルミナ粒子集合体に含まれる不純物(Fe、Mg、Ca及びSi)量は「n.d.」、即ち0.01質量%未満であることが確認でき、不純物が少ないことを裏付ける結果となった。
【0122】
また、図1および図2のSEM(走査型電子顕微鏡)画像にみられるように、一次粒子が針状のアルミナであり、二次粒子として一次粒子の集合体ができていることが確認された。
【0123】
図3図4および図5は実施例1、比較例3および比較例6のX線回折(SmartLab 9kW:株式会社リガク製)測定を実施した結果をしめす。
【0124】
比較例1、比較例2、比較例4および比較例5は所望のギ酸アルミニウムを合成することができず、焼成して評価するに至らなかった。
【0125】
比較例3はギ酸アルミニウムの合成はできたものの焼成温度が高く、γアルミナからαアルミナへの相転移している部分が表3、図4より確認された。また、表3にみられるようにその影響により、比表面積の低下及び吸油量の低下も確認され、所望のものができていないことが確認された。
【0126】
比較例6は炭酸マグネシウムを添加して合成したものになる。結果として表4に見られるようにMg量が非常に増大し、かつ図5に見られるようにアルミナではなく、マグネシウムとアルミニウムの複合酸化物と予測されるX線回折結果を示しており、所望のアルミナがえられていないことが確認された。また表6に見られるようにEDSによる測定においてマグネシウムが10.1質量%の量で検出されており、不純物となるMgが多い結果となった。
【0127】
図6は実施例1の針状アルミナ粒子集合体の粒度分布結果を示す図である。図6に示すように実施例1は複数の山を持つ粒度分布を示しており、これは針状アルミナ粒子集合体であるため、乾式の粒度分布で測定する際において、一次粒子が針状の形状を持ち、二次粒子として一次粒子が集合した構造を持つため、形状由来の影響によって、複数の山をもつ粒度分布結果を示していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によれば、主要原料としてFe、Ca、Mg、Siの含有量少ないギ酸アルミニウムを基に乾燥条件、焼成条件、粉砕条件の最適化を図ることにより、Si、Ca、Mgといった不純物をほとんど含まず、一次粒子が針状で一次粒子が集合した二次粒子からなる針状アルミナ粒子集合体を提供することが可能である。また本発明の針状アルミナ粒子集合体は、アルミナとしては非常に高い比表面積及び吸油量を持つという特徴があることも確認できた。
【0129】
本発明による針状アルミナ粒子集合体は、耐熱性、耐熱衝撃性、耐薬品性、常温及び高温強度特性、軽量性などに優れているため、各種フィルター(ガス分離、固体分離、除菌、除塵など)、触媒担体、吸音材、断熱材、センサーなどとして重要な材料であり、非常に高い比表面積、吸油性を持つため、前記に加えてスクラブ、化粧品への油分調整剤、各種研磨剤、樹脂やゴムの軽量化配合剤等としての利用が可能である。
【要約】
【課題】 本発明の目的は、不純物が少なく、比表面積および吸油性の高い針状アルミナ粒子集合体およびその効率的な製造方法を提供するものである。
【解決手段】 本発明は、針状アルミナ粒子集合体であって、
前記針状アルミナ粒子集合体の一次粒子が、短軸の長さ(α)0.05~1μm、長軸の長さ(β)0.08~10μmおよびアスペクト比(β)/(α)1.5~100を有し、前記針状アルミナ粒子集合体の二次凝集体が、粒度分布測定においてD50 5~50μmおよびD90 300μm以下、比表面積120~400m/gおよび精製亜麻仁油試験による吸油性試験において100~400ml/100gを有し、
前記針状アルミナ粒子集合体のアルミナ粒子が少なくともγアルミナを含み、かつ不純物が少ないことを特徴とする針状アルミナ粒子集合体およびその製造方法を提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6