IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルメンタム オペレーションズ エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】回折光学素子用多層薄膜積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20231113BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20231113BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231113BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B1/118
B32B7/023
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018135183
(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公開番号】P2019035947
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】62/546,174
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/837,990
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515288122
【氏名又は名称】ルーメンタム オペレーションズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Lumentum Operations LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ジョン マイケル ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン バッグナルド
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-187139(JP,A)
【文献】特開2004-062200(JP,A)
【文献】特開2008-102488(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005020944(DE,A1)
【文献】特開2007-234094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 1/118
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成される、特定の波長範囲に対する第1反射防止構造体と、
前記第1反射防止構造体の一部分の上に堆積される少なくとも1つの層と、
前記少なくとも1つの層上に形成される、前記特定の波長範囲に対する第2反射防止構造体と、を有し、
前記第1反射防止構造体の第1表面と前記第2反射防止構造体の第2表面との間の深さ、前記第1反射防止構造体の第1の有効屈折率、前記第2反射防止構造体の第2の有効屈折率、および前記少なくとも1つの層の第3の屈折率は、前記特定の波長範囲を含む特定の波長に対して位相遅延を伴う回折光学素子が形成されるよう選択され、
前記少なくとも1つの層は、シリコン層又は水素化シリコン層を含み、
前記第2の有効屈折率は、前記第3の屈折率と異なり、
前記第1反射防止構造体は、互いに異なる対応する屈折率を備えた、2以上の層を含み、
前記第1反射防止構造体は、前記第2反射防止構造体に対するエッチングストップ層である最上層を有し、
前記エッチングストップ層を含む前記第1反射防止構造体及び前記第2反射防止構造体は、屈折率3.1~3.9の材料及び屈折率1.4~1.5の材料の2種の材料の交互層から構成される、光学素子。
【請求項2】
前記第1反射防止構造体は、前記基板の第1側に形成され、かつ前記基板の第2側に形成された反射防止被膜をさらに有する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記少なくとも1つの層、前記第1反射防止構造体、または前記第2反射防止構造体のうち少なくとも1種が、薄膜堆積を用いて形成される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1反射防止構造体は、第1のシリコン層および第1の二酸化ケイ素層を含み、
前記少なくとも1つの層は、第2のシリコン層を含み、
前記第2反射防止構造体は、第2の二酸化ケイ素層を含み、かつ
前記特定の波長範囲は、840nmと860nmとの間である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記2種の材料は、シリコンおよび二酸化ケイ素から構成される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
前記2種の材料は、水素化シリコンおよび二酸化ケイ素から構成される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1反射防止構造体は、第1の材料の第1の層および第2の材料の第2の層から形成され、
前記少なくとも1つの層は、前記第1の材料の第3の層から形成され、かつ
前記第2反射防止構造体は、前記第2の材料の第4の層および前記第1の材料の第5の層から形成される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項8】
前記第1反射防止構造体は、前記基板の第1側に形成され、かつ
前記基板の第2側に形成される、他の特定の波長範囲に対する第3の反射防止構造体と、
前記第3の反射防止構造体の一部分の上に堆積された他の少なくとも1つの層と、
前記他の少なくとも1つの層に形成される、前記他の特定の波長範囲に対する第4の反射防止構造体と、をさらに有する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1反射防止構造体および前記第2反射防止構造体は、2段階型のレリーフ・プロファイルを形成する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第1反射防止構造体は、第1のシリコン層および第1の二酸化ケイ素層を含み、
前記少なくとも1つの層は、第2のシリコン層を含み、
前記第2反射防止構造体は、第2の二酸化ケイ素層を含み、かつ
前記特定の波長範囲は、930nmと950nmとの間である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項11】
前記第1反射防止構造体は、第1のシリコン層および第1の二酸化ケイ素層を含み、
前記少なくとも1つの層は、第2のシリコン層を含み、
前記第2反射防止構造体は、第2の二酸化ケイ素層を含み、かつ
前記特定の波長範囲は、1540nmと1560nmとの間である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項12】
前記特定の波長範囲は、840nmと940nmとの間である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項13】
前記深さは、λ/4と3λ/4との間であり、当該λは前記特定の波長範囲を表わす、請求項1に記載の光学素子。
【請求項14】
前記光学素子の有効屈折率は、2.0と3.0との間である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項15】
前記位相遅延は、π位相遅延である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項16】
前記位相遅延は、非π位相遅延である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項17】
基板と、
第1の有効屈折率を有し、かつ第1の2以上の異なる屈折率を備える第1の2以上の層から形成される、前記基板上に堆積された第一組の層と、
特定の屈折率を有し、前記第一組の層の一部分の上に堆積される少なくとも1つのスペーサー層と、
第2の有効屈折率を有し、かつ第2の2以上の異なる屈折率を備える第2の2以上の層から形成される、前記少なくとも1つのスペーサー層上に堆積される第二組の層と、を有し、
前記第一組の層は、特定の波長で第1反射防止構造体を前記基板上に形成し、
前記第一組の層、前記少なくとも1つのスペーサー層および前記第二組の層は、前記基板上の特定の波長で第2反射防止構造体を一括して前記基板上に形成し、かつ前記特定の波長に対する特定の位相遅延を備えた回折光学素子を前記基板上に形成し、
前記第二組の層の第1表面と前記第一組の層の第2表面との間の深さが前記特定の位相遅延を形成し、
前記第1反射防止構造体は、前記第2反射防止構造体に対するエッチングストップ層である最上層を有し、
前記少なくとも1つのスペーサー層は、シリコン層又は水素化シリコン層を含み、
前記エッチングストップ層を含む前記第1反射防止構造体及び前記第2反射防止構造体は、屈折率3.1~3.9の材料及び屈折率1.4~1.5の材料の2種の材料の交互層から構成される、光学素子。
【請求項18】
前記第1反射防止構造体および前記第2反射防止構造体は、前記基板の第1側上に形成され、前記基板の第2側上に形成される反射防止被膜をさらに含む、請求項17の光学素子。
【請求項19】
ウエハ上に複数の層を堆積し、当該堆積によって特定の波長に対する第1反射防止構造体を、前記特定の波長に対する前記第1反射防止構造体および第2反射防止構造体の一部分の上に形成される少なくとも1つの層の下で形成し、
前記第2反射防止構造体の有効屈折率は、前記少なくとも1つの層の屈折率とは異なり、
前記第1反射防止構造体は、互いに異なる対応する屈折率を備える2以上の層を含み、
前記第2反射防止構造体は、前記少なくとも1つの層の頂点部に形成され、
前記複数の層のうちの一部の層をエッチングして、2段階型のレリーフ・プロファイルを形成すること、を含む方法であって、
前記エッチングは、前記第1反射防止構造体と前記第2反射防止構造体との間に特定の波長範囲に対して位相遅延の伴った回折光学素子を形成し、
前記第1反射防止構造体は、前記第2反射防止構造体に対するエッチングストップ層である最上層を有し、
前記少なくとも1つの層は、シリコン層又は水素化シリコン層を含み、
前記エッチングストップ層を含む前記第1反射防止構造体及び前記第2反射防止構造体は、屈折率3.1~3.9の材料及び屈折率1.4~1.5の材料の2種の材料の交互層から構成されること、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄膜積層体に関する。特に、本開示のいくつかの実施態様は、回折光学素子(DOE)用多層薄膜積層体に関するものであり、当該多層薄膜積層体におけるエッチングされた領域および非エッチング領域間に特定の位相遅延を付与し、かつ特定の波長範囲に対する反射防止被膜を付与する、回折光学素子(DOE)用多層薄膜積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回折光学素子(DOE)は、ビームを指向するために用いることができる。例えば、回折レンズ、スポットアレイ照明、スポットアレイ発生器、フーリエアレイ発生器などのDOEは、ビームの分割、ビームの成形、ビーム焦点の絞りなどに用いることができる。DOEは、マルチキャストスイッチ、波長選択性スイッチ、身振り認識システム、モーションセンシングシステムなどと一体化することができる。
【0003】
表面レリーフ型DOEとして、多段階型の表面レリーフ・プロファイルを選択してもよい。例えば、表面レリーフ型DOEとして、2段階型(バイナリー構造とも称する。)の表面レリーフ・プロファイルを選択してもよい。多段階型の表面レリーフ・プロファイルを選択して、連続型の表面レリーフ・プロファイルに近似させ、またDOEを製造するためにフォトリソグラフィー法および/またはエッチング法が使用できるようにしてもよい。2段階型の薄膜積層体は、例えば、回折レンズといった1次のバイナリー構造のDOEを作製することに使用してもよい。DOEに使用される材料によっては、閾値より大きいエッチング深さが要求されうるため、これにより、DOEを製造するためのエッチング時間が結果的にかかることになる。
【0004】
いくつかの可能な実施形態によると、光学素子は、基板を含んでもよい。前記光学素子は、前記基板上に形成される、特定の波長範囲に対する第1反射防止構造体を含んでもよい。前記光学素子は、前記第1反射防止構造体の一部の上に堆積される少なくとも1層を含んでもよい。前記光学素子は、前記少なくとも1層上に形成される、前記特定の波長範囲に対する第2反射防止構造体を含んでもよい。前記第1反射防止構造体の第1表面と前記第2反射防止構造体の第2表面との間の深さ、前記第1反射防止構造体の第1の屈折率、前記第2反射防止構造体の第2の屈折率、および前記少なくとも1つの層の第3の屈折率は、前記特定の波長範囲に対して位相遅延を伴う回折光学素子が形成されるよう選択される。
【0005】
いくつかの可能な実施形態によると、本発明の方法は、ウエハ上に複数の層を堆積することを含んでもよい。前記堆積は、特定の波長に対する第1反射防止構造体を、前記特定の波長に対する第2反射防止構造体の下に形成してもよい。前記方法は、複数の層のうち一部の層をエッチングして、2段階型のレリーフ・プロファイルを形成することを含んでもよい。前記エッチングは、前記第1反射防止構造体と前記第2反射防止構造体との間の前記特定の波長範囲に対して特定の位相遅延を伴う回折光学素子が形成されるようにしてもよい。
【0006】
いくつかの可能な実施形態によると、本発明の方法は、薄膜堆積技術を用いてウエハ上に複数の薄膜を堆積することを含んでもよい。前記複数の薄膜を堆積することは、特定の波長に対する第1反射防止構造体を堆積すること、および前記第1反射防止構造体を堆積した後、特定の波長に対する第2反射防止構造体を堆積することを含んでもよい。前記方法は、前記ウエハの複数の領域を定めた所定の一連の遷移点に基づきマスクをパターニングすることを含んでもよい。前記方法は、複数の層のうち一部の層をエッチングして、前記マスクに基づき2段階型のレリーフ・プロファイルを形成することを含んでもよい。前記エッチングは、前記第1反射防止構造体と前記第2反射防止構造体との間の前記特定の波長範囲に対してπ位相遅延を伴う回折光学素子を形成されてもよい。前記方法は、前記マスクを除去することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本明細書に記載されている実施例の概要を示すダイアグラムである;
図2図2Aおよび2Bは、本明細書に記載されている実施例に関連した特徴を示すダイアグラムである;
図3図3Aおよび3Bは、本明細書に記載されている実施例に関連した特徴を示すダイアグラムである;
図4図4A-4Cは、本明細書に記載されている実施例を示すダイアグラムである;
図5図5は、本明細書に記載されている実施例を構成するための例示的な工程を示すフローチャートである;
図6図6Aおよび6Bは、図5に記載されている例示的な工程に関連した実施例を示すダイアグラムである;
図7図7は、本明細書に記載されている実施例を製造するための例示的な工程を示すフローチャートである;
図8図8Aおよび8Bは、図7に記載されている例示的な工程に関連した実施例を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明の実施例について、図面を参照しながら説明する。異なる図面における同一の参照番号は、同一または類似の要素を特定することに差し支えないであろう。
【0009】
回折光学素子(DOE)は、フォトリソグラフフィ法および/またはエッチング法を用いて製造してもよい。例えば、連続型の表面レリーフ・プロファイルに近似する目的で、多段階型の表面レリーフ・プロファイルがDOEに選ばれてもよく、そして、DOEの表面はエッチングされて、またはパターン化されて多段階型の表面レリーフ・プロファイルを形成してもよい。前記多段階型の表面レリーフ・プロファイルは、DOEを通過するビームに対して位相遅延を引き起こすために使用されてもよい。回折レンズなどの1次バイナリー構造のDOEに関しては、前記2段階型の表面レリーフ・プロファイルを採用することで約40%の回折効率を達成することができる。しかしながら、回折効率は、光学コミュニケーションシステム、身振り認識システム、モーションセンシングシステムなどといった光学システムにおけるDOEの利用に必要な閾値未満であってもよい。さらには、例えば、身振り認識システムにおける眼の損傷の誘発を回避する目的で、光学系として0次項の光を低減するいくつかのシステムについては、有利な効果が認められうる。
【0010】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、2段階型のDOEに閾値回折効率を付与してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、2段階型(またはバイナリー構造とも称する)のDOEに閾値外形サイズ(例えば、波長の閾値量)を付与して、DOEの一部分間にπ位相遅延を与えてもよい。さらには、DOEは、閾値未満の選択した表面レリーフ・プロファイルを製造するためにエッチング深さと関連付けられてもよく、それによって、結果的にはアスペクト比の低減、エッチング時間の削減、および/またはDOEの製造コスト(DOEを製造するための他の技術に関連する)の削減をもたらすことになる。さらには、DOEの層は反射防止機能を当該DOEに付与してもよく、DOEの層は一体化したエッチングストップ層を当該DOEに付与してもよく、さらには、DOEの層は当該DOEに対する特定の操作波長範囲に選ばれた材料などを含んでもよい。本明細書中のいくつかの実施形態は、DOEを構成するおよび/または製造する方法を提供してもよい。薄膜堆積技術を用いることを踏まえて、位相遅延は、光学系として0次項の光を低減できるほど極めて高精度に制御されてもよい、例えば、薄膜堆積技術では、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、0.1%未満等の公差を伴ってもよい。同様に高精度に制御された公差を備えた他の製造技術も本明細書に記載したDOEの構成に適用してもよい。
【0011】
図1は、本明細書中に記載した実施例100の概略図である。図1は、表面レリーフ型DOE格子および集光レンズをスポットアレイ照明(スポットアレイ発生器とも称する)として用いたスポットアレイ発生器の一例を示すものである。
【0012】
図1で示すように、波長λの入射平面波110は、表面レリーフ型DOE格子120に向けられている。いくつかの実施形態では、表面レリーフ型DOE格子120は、2段階型のDOE(バイナリー構造のDOEとも称する)のような多段階型の表面レリーフ・プロファイルを有するDOEであってもよい。いくつかの実施形態では、表面レリーフ型DOE格子120は、例えば、シリコン(Si)と二酸化ケイ素(SiO)との交互層、水素化ケイ素(Si:H)と二酸化ケイ素との交互層等を含んでもよい。いくつかの実施態様では、表面レリーフ型DOE格子120の層は、表面レリーフ型DOE格子120のエッチングされた領域および表面レリーフDOE格子120のエッチングされていない領域に反射防止機能を付与するように構成してもよい。いくつかの実施態様において、表面レリーフ型DOE格子120の層(例えば、二酸化ケイ素層)は、表面レリーフ型DOE格子120の製造中にエッチングストップ機能を付与してもよい。いくつかの実施態様において、入射平面波110は、約800ナノメートル(nm)~約1100ナノメートル(nm)の範囲の波長、約800nm~約1000nmの範囲の波長、約830nm~約1000nmの範囲の波長、約850nm~約1000nmの範囲の波長、約915nm~約1000nmの範囲の波長、約940nm~約1000nm等の範囲の波長を有してもよい。表面型レリーフDOE格子120に関する更なる詳細は、本明細書に記載されている。
【0013】
図1において更に示すように、表面レリーフ型DOE格子120は、入射平面波110を回折して、波面130(例えば、入射平面波110の回折次数)を焦点レンズ140の方に指向させる。焦点レンズ140は、焦平面160から焦点距離150離間している。いくつかの実施態様において、実施例100は、身振り認識システムに使用され、そして、焦平面160は、身振り認識の対象体であってもよい。あるいは、焦平面160は、目標体(例えば、モーションセンシングシステムに対する目標体)またはコミニケイション対象体(例えば、光学コミュニケーションシステムに対する対象体)などであってもよい。
【0014】
図1において更に示すように、波面130の向きを変えて波面170を形成する焦点レンズ140に基づいて、複数のスポットアレイパターンが焦平面160に形成されうるように、波面170が焦平面160の方に指向される。いくつかの実施形態では、表面リリーフ型DOE格子120を使用して、1次元のスポットアレイを作製してもよい。いくつかの実施形態では、表面リリーフ型DOE格子120を使用して、2次元のスポットアレイを作製してもよい。このようにして、表面リリーフ型DOE格子は、スポットアレイ照明として使用され、入射平面波110からスポットアレイを焦平面160に作製し、これにより身振り認識システム、モーションセンシングシステムおよび光学コミュニケーションシステム等の実現を可能にする。
【0015】
上記したように、図1は、単なる例示として供されるものである。他の例も可能であり、また図1に関して記載されている内容と異なってもよい。
【0016】
図2Aおよび2Bは、それぞれDOEに関連する特徴に付随するダイアグラム200および250である。図2Aおよびダイアグラム200によって示すように、連続型のレリーフ・プロファイルは、一連の不連続な段階に量子化(細分化)されうるため、フォトリソグラフィーおよび/またはエッチング処理を用いてDOEを製造することが可能となる。
【0017】
図2Aおよび参照番号202により更に示すように、連続型のレリーフ・プロファイルは、約100%の回折効率(1次構造の場合)を伴うことができ、第2のピッチ位置dxから第1のピッチ位置0に対して、2πの位相遅延が連続的に増加するよう施してもよい。参照番号204により示すように、前記連続型のレリーフ・プロファイルを、2段階型のレリーフ・プロファイル(バイナリー構造レリーフ・プロファイルとも称する)に近似してもよい。前記2段階型のバイナリー構造レリーフ・プロファイルは、約40.5%の回折効率(1次構造の場合)を伴うことができ、ピッチ位置0からピッチ位置0.5dxまでの領域であるDOEの第1領域に対する、ピッチ位置0.5dxからピッチ位置dxまでの領域であるDOEの第2領域でπの位相遅延を付与してもよい。
【0018】
図2Aおよび参照番号206により更に示すように、前記連続型のレリーフ・プロファイルを、4段階型のレリーフ・プロファイルに近似してもよい。当該4段階型のレリーフ・プロファイルは、約81%の回折効率(1次構造の場合)を伴うことができ、0から0.25dxまでの領域であるDOEの第1領域に対する、ピッチ位置0.25dxからピッチ位置0.5dxまでの領域であるDOEの第2領域でπ/2の位相遅延を付与してもよく、前記DOEの第1領域に対する、ピッチ位置0.5dxからピッチ位置0.75dxまでの領域であるDOEの第3領域でπの位相遅延を付与してもよく、さらには、前記DOEの第1領域に対する、ピッチ位置0.75dxからピッチ位置dxまでの領域であるDOEの第4領域で3π/2の位相遅延を付与してもよい。
【0019】
図2Aおよび参照番号208により更に示すように、前記連続型のレリーフ・プロファイルを、8段階型のレリーフ・プロファイルに近似してもよい。当該8段階型のレリーフ・プロファイルは、約95%の回折効率(1次構造)を伴うことができ、DOEの各領域(例えば、0から0.125dxまでのDOEの第1領域に対して、0.125dxから0.25dxまでの第2領域でπ/4、0.25dxから0.375dxまでの第3領域でπ/2、0.375dxから0.5dxまでの第4領域で3π/4など)でそれぞれπ/4ずつ位相遅延を付与してもよい。いくつかの実施形態では、別の回折効率を備えた別の構成を用いてもよい。例えば、2次、4次、10次、100次、1000次等の回折光を用いた構造を使用することで、1次光構造に対して回折効率を向上させることができる。+/-100次などの場合、約65%~約80%の回折効率を2段階型のレリーフ・プロファイルで達成されうる。
【0020】
図2Bおよびダイアグラム250により更に示すように、2段階型のレリーフ・プロファイルは、エッチングされていない領域252およびエッチングされた領域254を複数備えたDOEに使用されてもよい。いくつかの実施形態では、エッチングされていない領域252は、エッチングされた領域254に対してπ位相遅延を伴っている。いくつかの実施形態では、エッチングされていない領域252は、空気界面に対するシリコン(Si)として薄膜屈折率ntfを伴っている。いくつかの実施形態では、エッチングされた領域254は、位相遅延を伴っていない。換言すると、エッチングされていない領域252は、エッチングされた領域254に対してπ位相遅延が付随されている。いくつかの実施形態では、エッチングされた領域254は、空気界面に対する基板(例えば、シリコン)として薄膜屈折率nairを伴っている。いくつかの実施形態では、エッチングされた領域254およびエッチングされていない領域252のそれぞれのグループは一体化して、幅dxを伴ってもよく、さらにDOEは、全幅N*dxを伴ってもよい、前記式中Nは、エッチングされた領域254およびエッチングされていない領域252のそれぞれのグループの総数を表わす整数値(例えば、1、2、3、4、5など)である。
【0021】
上記したように、図2Aおよび図2Bは、単なる例示として供されるものである。他の例も可能であり、図2Aおよび図2Bに関して記載されている内容と異なってもよい。
【0022】
図3Aおよび3Bは、それぞれDOEに関する特徴に付随するダイアグラムである。図3Aが示すDOE300は、π位相遅延を付与するように構成される、図2Bにおける2段階型のレリーフ・プロファイルのDOEに対応する。
【0023】
図3Aに示すように、DOE300は、基板305を含んでもよい。いくつかの実施形態では、基板305は、ガラス基板、溶融シリカ基板等であってもよい。例えば、基板305が、厚さ約200ミリメートル、屈折率nsubが1.45の溶融シリカ基板でもよい。いくつかの実施形態では、反射防止被膜310が基板305の表面に堆積されていてもよい。例えば、図3Aに示すように、一組のシリコンおよび二酸化ケイ素の交互層が基板表面上に堆積され、かつ本明細書で記載するようにレリーフ・プロファイルを形成してパターン化されていてもよく、そして反射防止被膜310が基板305の底表面を被覆してもよい。
【0024】
図3Aにおいて更に示すように、一組のシリコン層315および一組の二酸化ケイ素層320は、基板305の表面上に堆積されてもよい。例えば、シリコン層315-1は、基板305上に堆積され、そして二酸化ケイ素層320-1が、シリコン層315-1上に堆積されてもよい。シリコン層315-1および二酸化ケイ素層320-1は、一対の整合層325-1を形成してもよい。同様に、シリコン層315-2は二酸化ケイ素層320-2上に堆積されてもよく、そして一対の整合層325-2を形成してもよい。図3Aに示したように、シリコン層315-3は、整合層325-1および整合層325-2との間に堆積されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、整合層325-1および整合層325-2は、DOE300の透過度を上げる目的で反射防止被膜を形成してもよい。いくつかの実施形態では、DOEは、空気界面に露出されてもよい。例えば、DOE300の第1表面(例えば、整合層325-1の表面および整合層325-2の表面)およびDOE300の第2表面(例えば、反射防止被膜310の表面)は、屈折率nair 1.0の空気界面に露出されてもよい。レリーフ深さhは、以下の式に基づき算出することができる。
【数1】
上記式中、λは、DOE300などのDOE用の基準の照明波長である。レリーフ深さを低減する目的で、シリコンなどの比較的高屈折率の材料を選択してもよく、いくつかの実施形態では、レリーフ深さhが、約0.5マイクロメートル(μm)のエッチング(例えば、エッチング330)であるという結果に帰着しうる。いくつかの実施形態では、前記レリーフ深さは、約λ/4から約λ/2の間であってよく、前記λは、特定の位相遅延が生じうる特定波長、例えば約940nm、840~940nmの間の波長などを表わし、例えば、π位相遅延の場合は、有効屈折率が2.0から3.0の間、特に、有効屈折率が2.2等で生じる。いくつかの実施形態では、層は、DOE300の透過率を上げるために屈折率と適応させてもよい。例えば、3.5と1.45とのそれぞれの屈折率が、3.1~3.9の間の閾値量および1.4~1.5の間の閾値量のそれぞれの閾値量内にあることを基に、シリコン層315および二酸化ケイ素層320を選択してもよい。このように、他のDOEと比較してレリーフ深さが低減することを踏まえると、本明細書に記載した実施形態は、製造公差の改善を可能にするものである。
【0026】
図3Bおよびダイアグラム350により示すように、約2.0の屈折率を示しうる、五酸化タンタルおよびシリコンナイトライドなどの薄膜被覆材料を他の材料として選択してもよい。ダイアグラム350で更に示すように、DOE300の層へのシリコン薄膜の使用を踏まえると、2段階型、4段階型、8段階型または連続型におけるそれぞれのレリーフ・プロファイルのレリーフ深さは、他の材料選定と比較して低減されている。例えば、公称照明波長1550nmでの2段階型のレリーフ・プロファイルにおけるπ位相遅延については、二酸化ケイ素は約1.55μmのレリーフ深さと関連付けられてよく、五酸化タンタルおよびシリコンナイトライドは、約0.78μmのレリーフ深さと関連付けられてよく、さらにシリコンは、約0.31μmのレリーフ深さと関連付けられてよい。
【0027】
上記したように、図3Aおよび図3Bは、単なる例示として供されるものである。他の例も可能であり、図3Aおよび図3Bに関して記載されている内容と異なってもよい。
【0028】
図4A~4Cは、それぞれDOE400/400’/400’’の実施例を示すダイアグラムである。図4Aが示すDOE400は、基板405、反射防止被膜410、一対のシリコン層415-1~415-3、および一組の二酸化ケイ素層420-1~420-2を含む。
【0029】
図4Aおよび参照番号425により更に示すように、二酸化ケイ素層420-1は、π位相遅延を形成するためのエッチングを可能にするエッチングストップ層であってもよい。例えば、エッチング法は、未エッチング積層体430-1および430-2がエッチングされない状態のまま残るように行われてもよく、また、当該エッチング法は、エッチング積層体435-1および435-2が、閾エッチング深さ440までエッチングされて、エッチング積層体435-1および435-2と、未エッチング積層体430-1および430-2との間にπ位相遅延を付与するように行われてもよい。いくつかの実施形態では、複数のツールを用いた多段階型エッチング法により、DOE400にエッチングを施してもよい。例えば、DOE400は、エッチングストップとして二酸化ケイ素層付きの第1シリコンエッチング、エッチングストップとしてシリコン層付きの第1二酸化ケイ素エッチング、およびエッチングストップとしてその他の二酸化ケイ素層付きの第2シリコンエッチング(例えば、反応性イオン(DRIE)エッチングツールを用いる)などを用いて製造されてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、DOE400の層は、一組の反射防止構造体を形成してもよい。例えば、層420-1および415-1は、特定の波長範囲に対する第1反射防止構造体を形成してもよく、また層415-2および420-2は、前記特定の波長範囲に対する第2反射防止構造を形成してもよく、それにより2段階型のレリーフ・プロフィールを形成するものである。あるいは、層415-2は、第2反射防止構造体を形成してもよい。前記第2反射防止構造体は、前記第1反射防止構造体(例えば、未エッチング積層体430上)の上に形成されてもよく、かつ前記第1反射防止構造体(例えば、層420-1)は、前記第2反射防止構造体を形成するためのエッチングに対するエッチングストップ層であってもよい。いくつかの実施形態では、層415-3、層415-3および層420-2の両方の層等の少なくとも1つの層が、第1反射防止構造体および第2反射防止構造体の間に存在してもよい。このように、エッチングされた領域への配置交替は、DOEの透過性を変更しない限りDOE400の特性を変えるよう施されてもよい。いくつかの実施形態では、第1反射防止構造体および第2反射防止構造体は、別の層として分離しなくてもよい。いくつかの実施形態では、層415-3が、その他の機能をDOE400に付与してもよく、また当該その他の機能として、特定の位相遅延(例えば、π位相遅延)および反射防止機能をDOE400対してさらに付与してもよい。いくつかの実施形態では、全体として、DOE400の反射防止構造体がDOEを形成するものである。
【0031】
いくつかの実施形態では、それぞれの層が、特定の厚さになるよう関連づけられてもよい。例えば、層1(例えば、シリコン層415-1)が約209ナノメートル(nm)の厚さになるよう関連づけられていてもよく;層2(例えば、シリコン層420-1)が162ナノメートル(nm)の厚さになるよう関連づけられていてもよく;層3(例えば、シリコン層415-3)が、238ナノメートル(nm)の厚さになるようここでは関連づけられていてもよく、層4(例えば、シリコン層420-2)が、254ナノメートル(nm)の厚さになるようここでは関連づけられていてもよく、および層5(例えば、シリコン層415-2)が、20ナノメートル(nm)の厚さになるようここでは関連づけられていてもよい。いくつかの実施形態では、DOE400が、特定のピッチ445(区切りとも称する)であるdxと関連づけられていてもよい。例えば、ピッチ445は、約1ミクロンから約1000ミクロンであってもよい。いくつかの実施形態では、キャッピング層が、5番目の層(例えば、別の二酸化ケイ素層)上に形成されてもよく、当該5番目の層は、基板405を含むウエハを切断する間に、ロバスト性を改良してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記反射防止構造体が反射防止機能を付与する特定波長において特定の位相遅延(例えば、π位相遅延)を引き起こすように、DOE400の層の厚さ、ピッチ445の大きさ、反射防止構造体および/またはその前記層等の屈折率を選択してもよい。例えば、前記第1反射防止構造体が、第1の(有効)屈折率1.5になるように関連づけられてもよく、前記第2反射防止構造体が、第2の(有効)屈折率3.5になるように関連づけられてもよく、さらには前記第1反射防止構造体および前記第2反射防止構造体(例えば、層415-3)の間に存在する一組の層が、第3の(有効)屈折率3.5になるように関連づけられてもよい。あるいは、前記特定波長は、約1540nmおよび1560nmの間の波長範囲を含んでもよい。参照番号450により示されるように、基板405の第1側に入射光が照射されることに基づいて、一連の回折光の次数(回折光の次数 -2、-1、0、1、2など)がDOE400により付与される。
【0033】
図4Bにおいて示すように、DOE400’は、基板405の第1側上に形成された第1回折光学素子および基板405の第2側上に形成された第2回折光学素子を含む。それぞれの回折光学素子は、一組のシリコン層415-1~415-3および一組の二酸化ケイ素層429-1~420-2を含む。参照番号455-1および455-2に示すように、入射光がDOE400’に照射されることによって、第2回折光学素子は、第1組の回折光強度次数を、基板405を介して第1回折光学素子へ指向させ、そして前記第1回折光学素子は、DOE400’から第2組の回折光強度次数を付与されようにする。このように、基板405が第1回折光学素子および第2回折光学素子の配置を維持することによって、自由空間光学系またはピック・アンド・プレイス器を使用するといった別の技術と比べて、配置維持における困難性が低減される。
【0034】
図4Cに示すように、DOE400’’は、基板405表面上に形成された第1反射防止構造体および前記第1反射防止構造体の一部の表面上に形成された第2反射防止構造体を含む(前記第1反射防止構造体および前記第2反射防止構造体との間に形成される1以上の層は除く)。例えば、前記第1反射防止構造体および前記第2反射防止構造体は、特定の波長、例えば、930nmと950nmとの間の波長範囲に対する反射防止機能を付与してもよく、さらには、特定の位相遅延、例えばπ位相遅延を当該特定波長において付与してもよい。いくつかの実施形態では、DOE400’’の層は、特定の厚さに関連づけられてもよい。例えば、層1は、約121nmの厚さに関連付けられてもよく、層2は、約107nmの厚さに関連付けられてもよく、層3は、約130nmの厚さに関連付けられてもよく、層4は、約258nm等の厚さに関連付けられてもよい。
【0035】
本明細書に記載された実施例のいくつかは、4層または5層などの特定の層数の観点について記載されているが、例えば、6層(例えば、シリコン/二酸化ケイ素層の交互の6層)、7層、10層、20層などの他の層数であっても実施可能である。
【0036】
上記で説明したように、図4A~4Cで表わす実施形態は、単なる例示として供されるものである。他の例でも実施可能であり、図4A~4Cに関して記載されている内容と異なってもよい。
【0037】
図5は、DOEを構成するための例示的な工程500のフローチャートである。いくつかの実施形態では、図5に示す1以上の工程ブロックがクライアント装置によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、図5に示す1以上の工程ブロックが別の装置、またはサーバーデバイスなどのクライアントデバイスを含む、もしくは別のデバイス群によって実行されてもよい。図6Aおよび6Bは、図5に示す例示的な工程500に関する実施例600のダイアグラムである。
【0038】
図5に示すように、工程500は、積層体用の材料を決定するステップを含んでもよい(ブロック505)。例えば、クライアント装置は、積層体用の材料を決定してもよい。いくつかの実施形態では、クライアント装置は、積層体用の材料を識別する入力データを受け取るようにしてもよい。例えば、DOEの設計中、設計者は、一連の設計基準に基づいて1組の被膜材料を選択してもよい。いくつかの実施形態では、被膜材料の集合には、シリコン、水素化シリコン、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、シリコンナイトライド、これらの組み合わせなどを含んでもよい。いくつかの実施形態では、設計基準の集合には、DOEの波長範囲、材料の屈折率、材料の透過率などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、積層体は多層積層体であってもよい。例えば、図6Aに示すように、積層体は、溶融シリカ基板、ガラス基板などの上に堆積された、シリコンと二酸化ケイ素との交互薄膜の5層の積層体であってもよい。
【0039】
図5において更に示されるように、工程500は、積層体のパターン化されていない薄膜領域に対する反射率を決定するステップ(ブロック510)を含んでもよい。例えば、クライアント装置は、積層体のパターン化されていない薄膜領域の反射率を決定してもよい。いくつかの実施形態では、クライアント装置は、第1の領域および第2の領域の反射率を識別する入力データを受け取ってもよい。図6Aの参照番号605によって示されるように、例えば、設計者は、基板およびシリコンと二酸化ケイ素との交互の薄膜層の第1対を含む積層体の第1の領域に対する反射率を決定してもよい。この第1の領域を、AR0と称してもよい。この場合、図6Aの参照番号610によって示されるように、設計者は、基板、シリコンと二酸化ケイ素との交互の薄膜層の第1対、シリコン薄膜層、およびシリコンと二酸化ケイ素との交互の薄膜層の第2対を含む積層体の第2の領域に対する反射率を決定してもよい。この第2の領域を、ARπと称してもよい。別々のパターン化されていない積層体としてのAR0およびARπに基づいて、反射率、透過度、および位相遅延は、AR0およびARπそれぞれに対して薄膜理論を用いることで求められ、これにより、回折理論を用いて行われた最適化計算と比べて改善された効率と共に全体の最適化の使用が可能になる。この方法であれば、DOEに適する構成を最適化するためにクライアント装置を使った計算資源の稼働率は、他の技術と比較して低減されうる。
【0040】
図5において更に示すように、工程500は、積層体の領域に対する反射率を最小限化するための関数を定義するステップ(ブロック515)を含んでもよい。例えば、クライアント装置は、積層体の領域に対する反射率を最小限化するための関数を定義するステップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記関数は、メリット関数、コスト関数などであってもよい。例えば、クライアント装置は、関数を識別する入力データを受け取ってもよく、当該関数を最適化(例えば、最小化)することにより、AR0とARπとの間に維持されるπ位相遅延を備えた積層体の領域に対する反射率が減少する結果となりうる。この方法であれば、クライアント装置は、特定の波長範囲に対する閾値レベルに至るまでの透過度、例えば、少なくとも約80%、約90%、約95%、約99%などの透過度を改善することができる。
【0041】
図5において更に示すように、工程500は、厚さを最適化するための層を選択するステップ(ブロック520)を含んでもよい。例えば、クライアント装置は、厚さを最適化するための層を選択するステップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、クライアント装置は、少なくとも1つの層を識別する入力データを受け取ってもよい。例えば、設計者は、図6A(例えば、整合層1および2と、整合層4および整合層5との間に挟まれたシリコン層)に示す層3の厚さを最適化することを選択してもよく、また、層1、2、4、5に関する厚さを特定して、層3の厚さに関するDOEの反射率の最適化を可能にしてもよい。いくつかの実施形態では、層の厚さは、以下の一連の式に基づいて求めることができる。
【数2】

上記式中、Δφは、選択された位相遅延(例えば、π)を表わし、κは、一定値(例えば、層3の)を表わし、hは、層iのレリーフ深さを表わし、nは、層iの屈折率を表わし、さらに、λは、DOEの公称照明波長を表わす。このようにして、クライアント装置は、DOEの他の層の厚さに基づいて選択された位相遅延を得るために、例えば、層3の厚さを計算することができる。
【0042】
図5において更に示すように、工程500は、最適化のため層の厚さを選択するステップ(ブロック525)を含んでもよい。例えば、クライアント装置は、最適化のため層の厚さを選択するステップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、クライアント装置は、ランダムに厚さを選択してもよい。例えば、クライアント装置は、ランダムに選択する方法を用いて、層1、2、4、および5に関する層の厚さを選択し、層3の層厚の決定が可能となるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、クライアント装置は、最適化法により厚さを選択するなどの非ランダムに選択する方法を用いてもよい。
【0043】
図5において更に示すように、工程500は、最適化法を適用するステップ(ブロック530)を含んでもよい。例えば、クライアント装置は、最適化法を適用するステップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、クライアント装置は、DOEの反射率を最適化するための模擬アニーリングを用いてもよい。例えば、クライアント装置は、模擬アニーリング法および最急降下アルゴリズム法を行って、反射率が最適化(例えば、最小化)されるように層厚を構成するためのコスト関数を最適化してもよい。いくつかの実施形態では、クライアント装置は、閾値基準(例えば、50%超の透過性、80%超の透過性、90%超の透過性、95%超の透過性、99%超の透過性、99.5%超の透過性などの透過性の閾値レベルが算出される)が満たされるまで最適化法を行ってもよい。
【0044】
図5において更に示すように、工程500は、最適化法の結果の構成を解析するステップ(ブロック535)を含んでもよい。例えば、クライアント装置は、DOEに関する遷移点を決定して表面レリーフ・プロファイルを決定してもよい。図6Aおよび参照番号615に示すように、最適化の結果は、DOEに対して最適化された特性を識別してもよい。いくつかの実施形態では、クライアント装置は、偶数次数およびゼロ次数が抑制された構成(偶数次数欠落(EOM)構成とも称されうる)を分析してもよい。例えば、図6Aおよび図6Bに関して示されるように、クライアント装置は、回折理論解析を決定して、1×4スポットアレイ発生器に関するDOEへのレリーフ・プロファイルを決定してもよい。この場合、DOEは、一連の遷移点625を備える区切り620に関するレリーフ・プロファイルを含む。例えば、遷移点625-1は、0dxに配置されてよく、遷移点625-2は、0.054dxに配置されてよく、遷移点625-3は、0.277dxに配置されてよく、遷移点625-4は0.5dxに配置されてよく、ここでdxは区切り620の幅を表わす。いくつかの実施態様では、クライアント装置は、DOEを含むスポットアレイ照明器の構成に基づいて、遷移点を識別する情報を受け取ってもよい。いくつかの実施形態では、クライアント装置は、スポットアレイ照明器の構成に基づいて遷移点を自動的に決定してもよい。図6Aおよび図6Bに関して更に示されるように、各遷移点は、レリーフ深さ最小値とレリーフ深さ最大値との間の遷移、および、位相遅延の最小値(0)と位相遅延の最大値(π)との間の遷移に対応する。
【0045】
いくつかの実施形態では、クライアント装置は、電磁気回折理論解析を実行してもよい。例えば、クライアント装置は、ビームの横電界(TE)偏光部分と、ビームの横磁界(TM)偏光部分の回折効率を決定してもよい。第1の閾値(すなわち、連続型のレリーフ・プロファイルの回折効率の第1の閾値より大きくまたは第1の閾値であり、例えば、10%以内、5%以内、2%以内などの閾値内)を満たすTE偏光およびTM偏光に関する回折効率に基づいて、および第2の閾値(すなわち、第2の閾値未満であり、例えば、10%未満、5%未満、2%未満など)を満たす0次の回折効率に基づいて、
クライアント装置は、DOEに関する構成が一連の設計基準を満たしていると判断してもよい。
【0046】
図5において更に示されるように、工程500は、出力データを提供するステップ(ブロック540)を含んでもよい。例えば、クライアント装置は、DOEの製造を可能にするために、DOEに関する構成(例えば、レリーフ・プロファイル)を識別する出力データを提供してもよい。いくつかの実施形態では、クライアント装置は、構成を識別する前記出力データを格納し、DOE等の製造を起動するために前記DOEに関する構成を識別する前記出力データをサーバ装置に提供してもよい。
【0047】
図5は、工程500の例示的なブロックを示しており、いくつかの実施形態では、工程500は、図5に示されたものと比べて、追加したブロック、より少ないブロック、異なるブロック、または異なるように改変したブロックを含んでもよい。あるいは、工程500のブロックのうちの2つ以上が並行して実行されてもよい。上記に示したように、図6Aおよび図6Bは、単なる一例として提示されたものである。他の例も可能であり、図6Aおよび図6Bに関して記載した内容と異なっていてもよい。
【0048】
図7は、DOEを製造するための例示的な工程700のフローチャートである。図8Aおよび図8Bは、図7に示される例示的な工程700と対比した実施例800を示すダイアグラムである。
【0049】
図7に示すように、工程700は、基板上に一組の層を堆積するステップ(ブロック710)を含んでもよい。例えば、図8Aおよび参照番号810に関して示されるように、一組のシリコン層および二酸化ケイ素層のような複数の薄膜が、ガラス基板または溶融シリカ基板などの基板上に堆積されて、特定の波長に対する第1反射防止構造体および特定の波長に対する第2反射防止構造体を堆積させてもよい。いくつかの実施形態では、一組の層は、基板上に堆積された、シリコンおよび二酸化ケイ素層の第1対、シリコン層、およびシリコン層および二酸化ケイ素層の第2対を含んでもよい。いくつかの実施形態では、反射防止被膜と、シリコンおよび二酸化ケイ素が交互する層との間に基板が配置されるように、前記基板の別の表面上に反射防止被膜が堆積されてもよい。いくつかの実施形態では、反射防止構造体は、基板の第1側および基板の第2側に堆積されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの層として、別の材料集合、例えば五酸化タンタル系材料、シリコンナイトライド系材料などを使用することができる。
【0050】
図7に更に示されるように、工程700は、一組の層における層上にマスクを堆積するステップ(ブロック720)を含んでもよい。例えば、図8Aおよび参照番号820に関して示されるように、マスク層がシリコン層を覆うように、マスク層は、シリコンおよび二酸化ケイ素層の第2対におけるシリコン層上に堆積されてもよい。いくつかの実施形態では、マスクに関する材料は、シリコンエッチングおよび二酸化ケイ素エッチングに対する閾選択性または閾抵抗性と関連するように選択されてもよい。
【0051】
図7において更に示されるように、工程700は、マスクをパターン化するステップ(ブロック730)を含んでもよい。例えば、図8Aおよび参照番号830に関して示されるように、マスク層は、DOEに関する構成に基づいてパターニングされてもよい。この場合、マスク層は、図4に関して、エッチングされていない積層体430に対応するDOEの部分を覆うようにパターニングされ、そして、図4に関して、エッチングされた積層体435と対応するDOEの部分を除去する。この場合、図5に関して本明細書で説明されるように、DOEを構成することを踏まえて、マスクのパターンが決定されてもよい。例えば、マスクは、DOE対して決められた遷移点に基づいてパターニングされる。
【0052】
図7において更に示すように、工程700は、マスクのパターニングに基づいたレリーフ・プロファイルを形成するために、層の一部をエッチングするステップ(ブロック740)を含んでもよい。例えば、図8Bおよび参照番号840に関して示されるように、パターニングされたマスクに被覆されていない層の組の一部は、シリコンエッチング、二酸化ケイ素エッチングなどを用いて除去されてもよい。この場合、レリーフ・プロファイルは、一組の層の一部に形成される。いくつかの実施形態では、エッチングは、層の全組よりも少なく除去されるように行われる。例えば、図4に関して、層3-5の部分を除去するためにエッチングが行われる。この場合、二酸化ケイ素(例えば、層2の二酸化ケイ素)は、DOEに対してエッチングストップ機能を発揮してもよい。
【0053】
図7にさらに示すように、工程700は、マスクを除去するステップ(ブロック750)を含んでもよい。例えば、図8Bおよび参照番号850に関して示されるように、マスクは除去されてもよい。この場合、パターニングされた基板上に層の組を残すことにより、層の一部を除去したDOEの部分と、層の一部を除去していないDOEの部分との間にπ位相遅延が付与されるものである。
【0054】
図7に更に示されるように、工程700は、マスクを除去することに基づいてウエハ仕上げを行うステップ(ブロック760)を含んでもよい。例えば、DOEを試験してもよく、DOEを複数の別個のDOE(例えば、複数のDOEをパターン化したウエハが、複数の別個のDOEに切断してもよい)に切断してもよく、さらには、DOEは、光デバイス内に包含させるようにパッケージングされてもよい。いくつかの実施形態では、ウエハは200ミリメートル(mm)×0.725mmのウエハであってもよい。
【0055】
この通り、シリカウエハをエッチングして表面レリーフ・プロファイルを生成するステップと、前記表面レリーフ・プロファイルを反射防止被膜などで被覆するステップと、を含む別の技術と比較すると、反射防止薄膜層がコーティングされたウエハを提供することによって、製造のための工程数が減少することになる。さらに、工程数を減らすことで、他の技術と比較してコスト、サプライチェーンの困難性などを低減することができる。
【0056】
図7は、工程700の例示的なブロックを示しており、いくつかの実施形態では、工程700は、図7に示されたものと比べて、追加したブロック、より少ないブロック、異なるブロック、または異なるように改変したブロックを含んでもよい。あるいは、工程700のブロックのうちの2つ以上が並行して実行されてもよい。上記に示したように、図8Aおよび図8Bは、単なる一例として提示されたものである。他の例も可能であり、図8Aおよび図8Bに関して記載した内容と異なっていてもよい。
【0057】
この通り、2段階型のレリーフ・プロファイルにエッチングされたシリコン層(例えば、水素化シリコン層)と二酸化ケイ素層との交互層を含む薄膜積層体を備えたDOEは、設計されおよび/または製造される。さらに、DOEの層は、反射防止特性、統合されたエッチングストップ特性などを付与するように設計されてもよい。さらに、設計は、ゼロ次の電力を制御することができる薄膜プロセス堆積を使用して実行されてもよい。いくつかの実施形態では、計算技術に基づく非回折理論を用いてDOEを設計してもよく、それによりDOEに関する設計を決定するための処理リソースを削減することができる。さらには、薄膜堆積技術およびエッチング技術を使用することに基づいて、DOEを製造するための製造工程の数を減らすことができ、それによって、DOEを製造するための他の技術に比べて時間およびコストを削減することができる。
【0058】
前述の開示は、例示および説明を提供するが、網羅的であること、または実施形態を開示された厳密な形態に限定することを意図するものではない。上記の開示に照らして、変更および変形が可能であり、または変更および変形は、実施形態の態様から取得されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態が、閾値に関連して本明細書で説明されている。本明細書で使用されるように、閾値を満たすことは、その値が、閾値より大きく、閾値より多く、閾値より高く、閾値以上であり、閾値未満であり、閾値より小さく、閾値より低い、閾値以下であり、または閾値と等しいなどである、ことを意味するものである。
【0060】
本明細書で説明されるシステムおよび/または方法は、異なる形態のハードウェア、ファームウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実施され得ることが明らかであろう。これらのシステムおよび/または方法を実施形態するために使用される実際の特殊化された制御ハードウェアまたはソフトウェアコードは、実施形態を限定するものではない。したがって、システムおよび/または方法の動作および挙動は、特定のソフトウェアコードを参照することなく本明細書に記載されているが、本明細書の記載に基づいてシステムおよび/または方法を実施するようにソフトウェアおよびハードウェアを設計することができる。
【0061】
特許請求の範囲に記載し明細書中には、特徴の特定の組合せを説明しているとしても、これらの組合せは、可能な実現の開示を限定することは意図していない。実際に、これらの特徴の多数は、特許請求の範囲に具体的に記載していない、及び/または明細書中に具体的に開示していない方法で組み合わせることができる。以下に挙げる各従属請求項は1つの請求項のみに従属することがあるが、可能な実現の開示は、各従属請求項を特許請求の範囲中の他のあらゆる請求項と組み合わせたものを含む。
【0062】
本明細書中に用いる要素、動作、または命令は、明示的にそのように記載していなくても、重要または不可欠なものとして解釈するべきでない。また、本明細書中に用いる「1つの」等は、1つ以上の項目を含むことを意図しており、「1つ以上の」と互換的に用いることができる。さらに、本明細書中に用いる「集合」は、1つ以上の項目(例えば、関係する項目、無関係な項目、関係する項目と無関係な項目との組合せ)を含むことを意図しており、「1つ以上の」と互換的に用いることができる。1つ以上の項目を意図している場合、「1つの」または同様な文言を用いる。また、本明細書中に用いる「有する」、「有している」等は、制約のない語であることを意図している。さらに、「基づく」は、特に断りのない限り「部分的に基づく」ことを意味することを意図している。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B