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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】低青色光ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20231113BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20231113BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231113BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20231113BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231113BHJP
   F21V 9/08 20180101ALI20231113BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20231113BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20231113BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
G09F9/30 349B
G09F9/30 349Z
G09F9/30 365
G09F9/33
G02F1/1335 505
H01L33/00 L
H10K59/10
F21V9/08 200
F21V9/32
F21V9/40 400
G02B5/20
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018147286
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2019109489
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】62/541,444
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/712,019
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512019354
【氏名又は名称】ソラア インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SORAA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン ジェイ.エフ. デイビッド
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0273717(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0188711(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0243379(US,A1)
【文献】特開2012-064860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
G02F 1/13-1/141
1/15-1/19
H05B 33/00-33/28
44/00
45/60
H10K 50/00-99/00
H01L 33/00-33/64
G02B 5/00-5/32
F21V 1/00-15/04
23/00-37/00
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ光を放出するためのディスプレイであって、
400~430nmのピーク波長を有するソース光を放出するための少なくとも1つの光源と、
前記ソース光の経路に配置されたフィルタであって、少なくとも短フィルタ、中間フィルタ、および長フィルタを備え、前記短フィルタは、前記ソース光からの短い一次光を透過するように構成され、前記短フィルタは400~430nmの範囲内の第1の波長及び500nm以上の範囲内の第2の波長を透過し、前記短フィルタは、400~430nm内の第1の極大値、450~490nm(または440~500nm)内の極小値、及び500~550nm内の第2の極大値を特徴とする短フィルタスペクトルパワー分布(SPD)を有する短フィルタ透過を有し、前記短フィルタSPDは380~780nmの短フィルタパワー及び440~500nmの青色パワーを有し、前記青色パワーは前記短フィルタパワーの20%未満であり、前記短フィルタ透過が知覚的に青色であるように構成されたフィルタと、
前記フィルタに光結合され、少なくとも白色モードで前記ディスプレイ光を放出するように構成され、ディスプレイ白色光を放出し、前記ディスプレイ白色光が前記短フィルタからの知覚的に青色の光、前記中間フィルタからの緑色光、及び前記長フィルタからの赤色光を備え、前記ディスプレイ白色光は白色SPDを有し、前記白色SPDは380~780nmの白色パワー及び440~500nmの青色パワーを有し、前記青色パワーは前記白色パワーの5%未満であるディスプレイスクリーンと
を備えたディスプレイ。
【請求項15】
前記緑色蛍光体がβサイアロン緑色蛍光体である、請求項14に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、いずれも参照によって本願に組み込まれる、2017年8月4日に出願された米国特許仮出願第62/541,444号および2017年9月21日に出願された米国特許出願第15/712,019号に基づくものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、携帯用デバイス、テレビ、または他の一般的な電子デバイスのための一般的なLCDディスプレイは、ソース光を供給するための光源、ソース光の原色を透過するためのフィルタ、およびフィルタを通るソース光の透過を選択的に変調するための光変調器を備える。現代の一般的なディスプレイにおける光源は、ソリッドステート発光体(たとえばLED、レーザ、またはOLED)、および場合によってはたとえば蛍光体および量子ドットなどの光変換材料を備える。フィルタは、一般的に青色、緑色、および赤色である原色を透過するように構成され、多くの場合、画素に配置され、各画素は、原色の各々を透過するためのフィルタを備える。光変調器は一般的に、電気制御型液晶である。そのようなディスプレイおよびそれらの部品は、当該技術において周知である。
【0003】
本明細書において特に対象となるのは、450~480nm付近のピーク発光を有する青色原色の発光である。図1は、アップル社のiPhone(LED光源を有するLCD)およびサムスン社のGalaxy(OLEDスクリーン)という2つの電話機のディスプレイによって放出される白色スペクトルを示し、ここでは強い青色原色が良好な色域および高効率をもたらす。しかし、これらのディスプレイにおける高レベルの青色光は、ユーザの概日サイクルに及ぼす影響による懸念をもたらす。
【0004】
出願人は、米国特許出願14/996,143号において説明するように、青色放射が実質的になくともスペクトルが実質的に白色に見えるように構成され得ることを発見した。簡略化のために、そのようなスペクトルは本明細書において、青色フリーと称される。青色フリー発光体は、人間の概日サイクルに及ぼす影響が少ないという理由で望ましく、これはたとえば、入眠前の夜間において重要である。
【0005】
青色フリー発光体の利点にもかかわらず、ディスプレイデバイスにおいて青色放射の欠如は問題がある。第1に、青色範囲において優先的な吸収を有する波長変換材料を励起するためには、青色ポンプLEDが好適である。第2に、青色放射の欠如は、色域に悪影響を及ぼし得る。第3に、一般的なディスプレイの物理的構成は、紫色発光体の存在との適合性を持たないことがある。
【0006】
したがって、青色フリーであり、かつ優れた性能で良好な色域を提供するディスプレイシステムへのニーズがある。本発明は、特にこのニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【0007】
以下は、本発明のいくつかの態様の基本的理解を提供するために本発明の簡略化した概要を提示するものである。この概要は、本発明の広範囲に及ぶ概観ではない。本発明の鍵となる/重要な要素を識別すること、または本発明の範囲を画定することは意図されていない。唯一の目的は、後述する詳細な説明への前置きとして、本発明の概念を簡略化形式で提示することである。
【0008】
本発明の1つの態様は、良好な色域を有する青色フリーディスプレイを提供することである。特に、ディスプレイの短波長フィルタは、紫色光、および紫色よりも長い波長を有する光の第2の部分、たとえばシアンまたは緑色光の透過を可能にするように構成される。紫色光および光のこの第2の部分の結合は、青色範囲内(たとえば450~480nm)の主波長を有するように構成され、それによって、飽和紫色ではなく飽和青色として知覚される短い原色を有するスクリーンを提供する。すなわち、出願人は、紫色光をより高波長の光と結合することによって知覚的に青色の発光を生成し、青色フリーでありながらディスプレイの「青色」原色が青色に見え得ることを認めている。出願人は、そのようなディスプレイが優れた色域を有することを発見した。特に、いくつかの実施形態は、sRGB、NTSC、Adobe RGB、DCI‐P3、Rec2020、および当該技術において知られる他の規格を含む標準規格色域に実質的に合致または完全に合致することができる。
【0009】
したがって、1つの実施形態において、ディスプレイは、(a)ソース光を放出するための光源と、(b)ソース光の経路に配置された、短フィルタ、中間フィルタ、および長フィルタを少なくとも備えるフィルタとを備え、短フィルタは、ソース光からの短い一次光を透過するように構成され、短い一次光は、知覚的に青色であるように、400~440nmの波長を有する紫色部分および440nmを上回る波長を有する少なくとも第2の部分を備え、短い一次光は、380~780nmの短い一次パワーおよび440~500nmの青色パワーを有する短い一次SPDを有し、青色パワーは短い一次パワーの5%未満である。
【0010】
本発明の他の態様は、青色フリーでありながら効率的な青色フリーディスプレイのためのソース光を提供することである。特に出願人は、実質青色放射を放出する任意の種がない場合、紫色ポンプを有する青色選択的材料の様々な構成における非常に適した性能/効率を発見した。特定の理論に捉われることなく、出願人は、この予想外の高効率が、予想を裏切って青色選択的材料の荷重を中程度にとどめることに起因し得ると考える。実際、人間の視覚系の紫色放射に対する(青色と比べて)低い感度によって、青色フリー発光体のホワイトバランスのため、すなわち、たとえばD65または他の高CCT色度などディスプレイに適した値の色度を目標にするためには高い紫色漏洩が必要である。この高い紫色漏洩は、中程度の蛍光体荷重を必要とするので、パッケージ効率は高く、たとえば60%、70%、80%、または90%以上に保たれる。
【0011】
したがって、いくつかの実施形態において、光源は、(a)400~430nmの範囲内のピーク波長を有するポンプ光を放出する紫色ソリッドステート発光体を少なくとも備える1または複数のソリッドステート発光体と、(b)ポンプ光の一部を吸収し、その一部を変換光に変換するように構成され、ピーク波長における第1の吸収係数および450nmにおける第2の吸収係数を有し、第1の吸収係数が第2の吸収係数の70%未満である第1の波長変換材料を少なくとも備える1または複数の波長変換材料とを備え、1または複数のソリッドステート発光体および1または複数の波長変換材料は、第1の波長変換材料が440~490nmの光を実質的に吸収しないように構成され、放出光は、本質的に青色光がない実質白色光である。
【0012】
他の実施形態において、高効率青色フリー発光体は、量子ドット(Qドット)と結合した紫色ポンプ発光体を備える。出願人は、短波長ポンプ発光体の使用は、Qドットと結合した場合に予想外の利益を有することを発見した。これによって、Qドットの荷重量における大幅な低減が可能であるので、システムはより安全になり、規制に準拠し得る。特定の理論に捉われることなく、出願人は、この荷重量の低減が、(1)短波長における高い吸収、および(2)長波長に変換する必要のある光の割合が少ないことを意味する、青色フリースペクトルに必要な高い紫色漏洩の結果であると確信する。また他の実施形態において、高効率青色フリー発光体は、短波長光(一般的に紫色)に関して高い吸収を有するが長波長(一般的に青色、緑色、および赤色)に関して非常に低い吸収を有する波長変換材料と結合した紫色ポンプ発光体を備える。本開示の観点から、当業者には更に他の実施形態が明らかである。
【0013】
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】2つの電話機のディスプレイによって放出される白色スペクトルを示す。
【0015】
図2A】青色選択的材料を励起する青色ポンプLEDを示す。
【0016】
図2B】青色蛍光体を励起する紫色ポンプLEDを示す。
【0017】
図2C】青色光を実質的に放出せず短波長光を放出し、青色発光種がない状態で青感性波長変換材料を励起するポンプ光源を示す。
【0018】
図3A】所与の青色選択的材料に関する実験データを示す。
【0019】
図3B】狭小赤色蛍光体の発光を示す。
【0020】
図4】紫色LED、βサイアロン緑色蛍光体、およびKSF赤色蛍光体を備える発光体によって放出される実験的スペクトルを示す。
【0021】
図5】標準的な窒化物赤色蛍光体を用いる青色フリースペクトルを示す。
【0022】
図6図4のSPDと同様であるが、425nmにおけるピークを有する紫色ポンプLEDを用いる場合のSPDを示す。
【0023】
図7】プランク式で5000K、6000K、8000K、10000Kの相関色温度(CCT)で目標とされる、図6のSPDと同様のSPDを示す。
【0024】
図8】量子ドット変換器の吸収および発光スペクトルを示す。
【0025】
図9】紫色ポンプLED、(約30nmのFWHMを有する)緑色量子ドット蛍光体、およびKSF赤色蛍光体を備える実施形態に関するモデル化SPDを示す。
【0026】
図10】紫色ポンプLED、(約30nmのFWHMを有する)緑色量子ドット蛍光体、および(約30nmのFWHMを有する)赤色量子ドット蛍光体を備える実施形態に関するモデル化SPDを示す。
【0027】
図11】そのような紫色選択的材料に関して起こり得る吸収および発光スペクトルを示す。
【0028】
図12】400~440nmの範囲における様々なポンプピーク波長を有する実施形態に関するLERおよび青色分画を示す。
【0029】
図13A】紫色ポンプLED(ピーク波長423nm)、βサイアロン緑色蛍光体(ピーク波長537nm)、およびKSF赤色蛍光体を備える白色LEDによって放出される、(色フィルタが適用される前の)スペクトルパワー分布SPD0を示す。
【0030】
図13B】(xy)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびDCI‐P3規格色域(実線)を示す。
【0031】
図13C】(u’v’)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびDCI‐P3規格色域(実線)を示す。
【0032】
図14A図13Aと同様であるが、500~520nmの範囲におけるシアン/緑色放射も透過する別の短フィルタを利用するモデル化実施形態を示す。
【0033】
図14B】(xy)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびDCI‐P3規格色域(実線)を示す。
【0034】
図14C】(u’v’)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびDCI‐P3規格色域(実線)を示す。
【0035】
図14D図14Aのシステムに関する短波長原色のSPDを示す。
【0036】
図15】sRGB色域に準拠しD65白色点を有する市販のLCDのスペクトル特性を示す。
【0037】
図16図13および図14と同じ蛍光体(βサイアロンおよびKSF)に加えて青色ポンプLEDと、DCI‐P3色域に合致するように適合されたフィルタとを有するディスプレイのスペクトル特性を示す。
【0038】
図17A】紫色ポンプLEDと、βサイアロンおよびKSF発光体とを有し、異なるフィルタを用いる、図14Aと同様のモデル化実施形態を示す。
【0039】
図17B】(xy)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびRec2020規格色域(実線)を示す。
【0040】
図17C】(u’v’)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびRec2020規格色域(実線)を示す。
【0041】
図18A】量子ドット、または(III族窒化物、またはAlInGaAsP、または他の半導体化合物に基づく)直射式緑色LEDを含む、図17Aよりも更に狭小な緑色発光体を用いるモデル化実施形態を示す。
【0042】
図18B】(xy)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびRec2020規格色域(実線)を示す。
【0043】
図18C】(u’v’)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびRec2020規格色域(実線)を示す。
【0044】
図19A】緑色および赤色量子ドット(FWHM30nm、ピーク527nmおよび638nm)と、優れた性能でRec2020の緑色および赤色原色に厳密に合致するための適切なフィルタとを用いるモデル化実施形態を示す。
【0045】
図19B】(xy)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびRec2020規格色域(実線)を示す。
【0046】
図19C】(u’v’)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびRec2020規格色域(実線)を示す。
【0047】
図20A】紫色、緑色、および赤色発光体を有する画素を示す。
【0048】
図20B】紫色、青色、緑色、および赤色発光体を有する画素を示す。
【0049】
図20C】透明ディスプレイの簡略化断面図を示す。
【0050】
図20D】1方向に沿った1つの型のコンタクトおよび他の方向に沿った他の型のコンタクトを示すLEDの斜視図を示す。
【0051】
図20E】両方のLEDコンタクト層がnドープされるようにpドープ材料上にトンネル接合が形成されたLEDの斜視図を示す。
【0052】
図20F】波長平均化スキームを示す。
【0053】
図20G図20Fのスキームに対応する画素レイアウトを示す。
【0054】
図20H】短い紫色および赤色および長い緑色および青色、またはその逆を有する画素を示す。
【0055】
図21】420nmにおける紫色発光体および緑色発光体を有するシステムに関する(xy)色空間を示す。
【0056】
図22】4つの発光体システムが、より広い色域を得るために4つの発光体を利用し得ることを示す。
【0057】
図23A】色均一性のためにLED1およびLED2からの光が混合する混色領域およびそれに続くディスプレイ領域を備えるエッジリットディスプレイの上面図を示す。
【0058】
図23B図23Aのディスプレイに対応する断面図を示す。
【0059】
図24】(xy)色空間、黒体軌跡、3000K~10000Kの黒体軌跡における様々なCCT、およびLED1およびLED2による発光の下での図23Bのディスプレイの白色色度を示す。
【0060】
図25図23BのLED1が青色/シアンである実施形態を示す。
【0061】
図26A】局所的波長変換材料を有する色副画素を備えたディスプレイの断面図を示す。
【0062】
図26B】局所的波長変換材料を有する色副画素を備えた導波管に結合された紫色ポンプLEDを有するディスプレイを示す。
【0063】
図26C】一部または全ての副画素に光結合された色フィルタを示す。
【0064】
図26D】青色および紫色ポンプLEDの両方が導波管に結合され、Qドットが紫色光および青色光の両方を吸収することができる変形例を示す。
【0065】
図27】本発明の光源の1つの実施形態の略図を示す。
【0066】
図28A】3つの色フィルタとともに、LEDによって放出されるSPD0を示す。
【0067】
図28B】(xy)色図、および28aの構成の場合に結果として生じる色域(破線三角形)を示し、比較のためにDCIP3参照色域(完全な三角形)も示される。
【0068】
図28C図28Bと同じであるが、(u’v’)色図において作図されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図23を参照すると、本質的に青色フリーであるディスプレイ光を発するためのディスプレイ2300の1つの実施形態が示される。ディスプレイ2300は、ソース光を発するための光源2301、およびソース光の経路に位置するフィルタ2302を備える。フィルタ2302は、少なくとも短、中間、および長フィルタ2302a、2302b、および2302cをそれぞれ備える。短フィルタは、ソース光からの短い一次光を透過するように構成される。短い一次光は、知覚的に青色であるように、400~440nmの波長範囲を有する紫色部分に加えて440nmを上回る波長を有する第2の部分を少なくとも備える。短い一次光は、380~780の全体パワーおよび440~500nmの青色パワーを有する短い一次SPDを有し、青色パワーは、全体SPDパワーの20%未満である。この実施形態において、光源は青色フリー光を発するように構成され、あるいはフィルタは青色光を遮断するように構成される。しかしいずれの実施形態においても、短い一次光は、(440~500nmの範囲の)青色波長を有する光を本質的に含まないにもかかわらず、青色に見える。
【0070】
図27を参照すると、青色フリー光を発するための光源2700の別の実施形態が示される。光源2700は、400~430nmの範囲のピーク波長を有するポンプ光2720を発する少なくとも1つの紫色ソリッドステート発光体2701aを備える1または複数のソリッドステート発光体2701を備える。光源は、ポンプ光の一部2720aを吸収し、その一部を変換光2721に変換するように構成された第1の波長変換材料2702aを少なくとも備える1または複数の波長変換材料2702も備える。第1の波長変換材料は、ピーク波長における第1の吸収係数、および450nmにおける第2の吸収係数を有し、第1の吸収係数は第2の吸収係数の70%未満である。ソリッドステート発光体および1または複数の波長変換材料は、第1の波長変換材料が実質的に440~490nmの光を吸収しないように構成される(これは、この波長範囲内の吸収係数が高いにもかかわらず、この波長範囲において材料が吸収することができる光が実質的にないことを意味する)。放出光は、本質的に青色フリーであるが、実質白色光である。1つの実施形態において、1または複数の波長変換材料2702は、放出光が第2の部分を備えるように、ポンプ光の第2の部分2702bを漏洩するように構成される。
【0071】
本発明の特徴を詳細に提示する前に、出願人は、青色フリーディスプレイに関する考慮を以下で説明する。以下、例外が明記されない限り、ディスプレイの出力光または出力スペクトルパワー分布(SPD)が言及される場合、これは、昼白色に発光するように設定された場合にディスプレイによって放出される正味の光/SPDとして理解すべきである。一般的なディスプレイにおいて、これは、標準光D65の色度に近い色度を有する白色スペクトルであってよい。このSPDは、場合によっては、ディスプレイ内の発光体(たとえばLED)によって放出されるスペクトルパワー分散(「SPD0」)とは異なる(たとえば側部結合LCDディスプレイの場合、SPD0は、導波管、液晶、偏光子、色フィルタ、背面反射体、および場合によってはディスプレイ内の他の光学素子の透過によって更に変調される)。当業者は、光学システムの透過を考慮に入れて、所望の出力SPDが得られるようにどのようにSPD0を目標にするかを知る。
【0072】
また、色目標は、様々な等色関数(CMF)を用いて計算され得る。従来の色目標は、1931 2°CMFを用いる。しかしこれらは、特に短波長において不正確であることが知られている。青色フリースペクトルを放出するディスプレイに関して、大部分の放射が紫色範囲内である場合、これらのCMFは乏しい知覚色度をもたらし得る(たとえば色度は、名目上は正確であるにもかかわらず、ピンクが強く見える)。その代りに、短波長における高精度を有する様々なCMFが用いられ得る。考えられる選択肢は、1964 10°CMF、または2006CMFとも呼ばれる、2°、10°、および他の視野角で使用可能な新たなCIE生理学関連CMFを含む。特に、視野角は、ディスプレイの予測視聴条件に合致するように選択され得る。これらのCMFを用いる色目標に関する更なる詳細は、参照によって組み込まれた米国特許出願第15/633,425号に記載され得る。例外が明記されない限り、本出願において説明され特許請求対象となる色度は、1964 10°CMFを用いて計算され、「実質白色光」という用語は、1964 10°CMFを用いて計算された場合、(xy)空間において黒体軌跡から0.03未満の距離内の色度を有する光を指す。また、実施形態は、(緑味をもたらす)黒体軌跡より上ではなく(ピンク味をもたらす)黒体軌跡付近またはそれより下である色度を有することが望ましく、これは、前者が後者よりも好適であることを研究が示したためである。したがって、「好適な白色光」という用語は、(a)(xy)空間において黒体軌跡から0.05未満の距離だけ黒体軌跡より下、または(b)(xy)空間において黒体軌跡から0.01未満の距離だけ黒体軌跡より上のいずれかであり、これらの色度は、1964 10°CMFを用いて計算される。
【0073】
また、本明細書で用いられる場合、本質的に青色フリー光、青色光が本質的にない/欠如した光、または実質青色がない光という用語は、青色光成分が僅少である任意の光(白色またはその他)を指す。1つの実施形態において、これらの用語は、知覚的白色光(青色フリー白色光)を指し、光がSPDによって特徴付けられ、440~500nmの波長範囲におけるSPDのラジオメトリックパワーが380~780nmの範囲におけるSPDのラジオメトリックパワーの5%未満であることを意味する。1つの実施形態において、これらの用語は、知覚的青色光(青色フリー青色光)を指し、光がSPDによって特徴付けられ、440~500nmの波長範囲におけるSPDのラジオメトリックパワーが380~780nmの範囲におけるSPDのラジオメトリックパワーの20%未満であることを意味する。
発光体および波長変換材料
【0074】
ディスプレイにおいて青色成分を低減するための1つのアプローチは、ディスプレイの光源において放出される青色成分を低減することを伴う。1つの特定の実施形態において、紫色ソリッドステート発光体は、青色選択的波長変換材料とともに用いられる。以下の説明は特に紫色LEDに言及するが、これは例示目的のためであり、たとえばレーザOLED、スーパールミネッセントLED、量子ドット活性発光体(場合によってはQLEDと呼ばれる)を有するOLEDなど他の発光体も適用可能である。
【0075】
波長変換材料の選択は、青色ポンプLEDの場合、当該技術におい周知であるが、紫色ポンプLEDの使用は予想外の結果をもたらす。いくつかの波長変換材料は、青色範囲における大きな吸収、および紫色範囲における小さな吸収を特徴とする。したがって、これらの青色選択的材料は多くの場合、青色ポンプLEDとともに用いられ、一般的には、青色放射が放出される発光体(たとえば、青色蛍光体からの青色放射が青色選択的材料をポンプすることができる、紫色ポンプLEDおよび青色蛍光体)において用いられ、青色放射は主に青色選択的材料をポンプする。
【0076】
図2は、青色選択的材料の一般的な使用を2つの事例において示す。図2Aは、青色選択的材料を励起する青色ポンプLEDを示す。青色選択的材料の吸収は、青色範囲において最大値を有し、紫色範囲において低い値を有する。青色選択的材料は、橙色/赤色範囲で発光する。この構成において、青色ポンプLEDは、青色選択的材料の吸収の最大値付近になるよう選択されている。他の蛍光体(たとえば緑色、黄色など)は、明確性のために図示されないが、存在してよい。図2Bは同様の構成を示すが、紫色ポンプLEDが青色蛍光体を励起する。その後、紫色LEDおよび青色蛍光体の組み合わせが、青色選択的材料を励起する。青色蛍光体は、青色選択的材料によって著しく吸収される。
【0077】
対照的に、青色放射がほとんどまたは全く発生しない発光体において、青色選択的材料は使用に適さないことが理解され得る。実際、紫色LEDによって青色選択的材料をポンプするために、(吸収の減少により)材料の荷重を大幅に増加させることが予想され、それによって散光および低い光学効率がもたらされる。しかし意外にも出願人は、実質青色放射を放出する任意の種が存在しない場合における、紫色ポンプを有する青色選択的材料の様々な構成における適切な性能/効率を発見した。
【0078】
この高効率は、青色選択的材料の荷重が、予想を裏切って中程度であるという事実に起因すると考えられ得る。実際、紫色放射に対する人間の視覚系の感度が(青色に比べて)低いことにより、青色フリー発光体のホワイトバランスのために(すなわち、色度をディスプレイに適した値、たとえばD65または他の高CCT色度の色度を目標にするために)高い(たとえば20、30、40、50、60、または70%以上の)紫色漏洩が必要である。紫色漏洩は、430nm未満、または400nm~430nmの範囲内、または380nm~440nmの範囲内であるSPDのパワーの一部であってよい。
【0079】
この高い紫色漏洩は、中程度の蛍光体荷重を必要とするので、パッケージ効率は高いままである。実際、特定の実施形態において、白色パワー対紫色パワーの比は高い(たとえば40、50、60、70、または80%以上)。明確性のために、この比は、以下の数量に基づいて定義される。紫色パワーは、紫色LEDによって蛍光体へ供給されるパワーであり、蛍光体がLED周囲の高指数バインダ内にある場合、紫色パワーは、紫色LEDによって透明カプセル化媒体(たとえば約1.4または1.5の光学指数を有するシリコンなど)内へ放出されるパワーにも等しく、これは、当該技術において既知であるように、紫色光が適切に抽出されるようなドーム型カプセル化を用いて紫色LEDをカプセル化することによって実験的に測定することができる。「白色」パワーは、蛍光体を有するLEDによって外側世界へ放出される実際のパワーであり、蛍光体を通って漏洩するポンプ光および蛍光体変換光の結合を備える(「白色」という用語は、この発光が必ずしも白色であることを必要とせず、波長変換が生じた後の発光を単純に意味する)。この比は、パッケージ効率、ストロークシフト、および蛍光体の量子収率という3つの項の積である。特定の実施形態において、パッケージ効率は60、70、80、または90%以上であり、ストロークシフトは70、80、または90%以上であり、累積量子収率は70、80、90、または95%以上であると推定される(高いパッケージ効率値は、上述した高い紫色漏洩に部分的に起因する)。
【0080】
したがって、いくつかの実施形態は、青色光を実質的に放出せず短波長光(たとえば紫色光)を放出するポンプ光源、青色選択的波長変換材料、および青色光を実質的に放出するための種がないことという特徴によって特徴付けられる。これは、図2Cの構成に対応する。この場合、紫色ポンプLEDは、青色発光種(ポンプLEDまたは蛍光体)が存在しない状態で青色選択材料を励起する。
【0081】
図3Aは、所与の青色選択材料、KSFとも呼ばれる狭小赤色蛍光体(KSiF:Mn4+)に関する実験データを示す。この蛍光体は、450nm付近で最大吸収を有し、400nm付近で吸収の極小値を有する。最小値は最大値の約10%であり、400nmにおける吸収は450nmにおける吸収の約10%であることを意味する。
【0082】
意外にも、この低い吸収にもかかわらず、出願人は、KSFを有する高効率青色フリー発光体を構成し、実験によって高性能を証明することができた。
【0083】
図3Bは更に、MFG材料システムを含む、他の狭小赤色発光体が利用され得ることを示す。図3Bは、KSFおよびMFGの発光スペクトル(またはSPD)を比較する。2つの蛍光体はそれぞれ約630nmおよび660nmにおいて主発光ピークを有する。これらの値はいずれも、(たとえば以下で説明するようにルーメン効率と色域とのトレードオフに依存して)特定の用途に関して役立ち得る。したがって、いくつかの実施形態は、10nm(または20nm、30nm、40nm、50nm、60nm)未満のFWHMおよび620~650nmの範囲内または630nm(または600nm、610nm、620nm、640nm、650nm、660nm)から+/-5nmの範囲内であるピーク波長を有する青色選択的狭小赤色発光体を利用する。
【0084】
青色選択的波長変換器を用いるいくつかの実施形態は、他の波長変換材料、たとえばポンプ光源によって光励起される緑色(または黄色)蛍光体を更に備える。場合によっては、青色選択的材料は、そのような緑色蛍光体からの光を実質的に吸収することができる(たとえば、緑色蛍光体のピーク発光波長において、青色吸収と実質的に等しい高い吸収を有する)。他の場合、対照的に、青色選択的材料は、緑色蛍光体によって放出される光に関して比較的低い吸収を有する。場合によっては、青色選択的材料は、大部分がポンプ光によって、あるいは大部分が緑色蛍光体からの光によって、または実質的に両方によって励起される。状況(すなわち、青色選択的材料の荷重を最小にするか、量子収率損失を招くカスケードポンピングイベントを最小にするか)に依存して、これらの構成のいずれかが有利になり得る。図3Aから分かるように、KSFの場合、緑色/黄色範囲における吸収は非常に低い(たとえば吸収は500nmを上回る波長に関してピーク値の5%未満であり、図2Aに示されないほど低い)。
【0085】
図4は、紫色ポンプLED、βサイアロン緑色蛍光体、およびKSF赤色蛍光体を備える発光体によって放出される実験的スペクトルを示す。この実験において、蛍光体スラリーの相対重量負荷は、シリコン100mg(紫色ポンプLEDの場合に良好な信頼性を提供するメチルシリコンを使用)KSF16mg、βサイアロン1.5mgである。これは、16%の相対KSF負荷(すなわち、シリコンに対する重量)を特徴とし得る。他の実施形態において、青色選択的材料の相対負荷は低または中程度であってよく、100%未満、50%未満、25%未満、15%未満、10%未満、5%未満であってよい。
【0086】
図4の実験において、KSFをポンプするための青色種が存在しないにもかかわらず、発光体の効率は高い。白色発光体は、(80Cおよび160A.cm-2の駆動電流において)114mWの光放射を放出し、カプセル化ポンプLEDは、同じ条件下で142mWの紫色放射を放出する。したがって、白色パワー対紫色ポンプパワーの比は80%である。この数字は、パッケージ効率、ストロークシフト、および正味量子収率の3項の積である。ストロークシフトは91%である。累積量子収率は98%、パッケージ効率は90%と推定される。上述したように、この高効率は、青色フリー発光体のホワイトバランスのために必要な高い紫色漏洩(図4の実験に関して70%)を生成するためにKSF蛍光体の荷重が中程度にとどまるという事実に起因し得る。ただし、累積蛍光体量子収率の正確な推定は難しいが、パッケージ効率の推定値が下限であるように電流ブレークダウンは楽観的な値を用いており、95%の楽観的でない量子収率推定値は、約94%という更に高いパッケージ効率に変換される。
【0087】
比較のために、図5は、標準的な窒化物赤色蛍光体を用いる青色フリースペクトルを示す。窒化物の赤色は、紫色ポンプLEDによって励起されやすい。この発光体の性能は、図4の発光体の性能とほぼ等しい(図5における白色出力は、図4における113.9mWに対し114.7mWである)。これは、青色選択的赤色蛍光体の使用がレガシ赤色蛍光体に比べて性能における不利をもたらさないことを実証する。一方、狭小幅のKSFは、以下で説明するように、ルーメンおよび色域のために有益である。
【0088】
図4および図5のSPDはいずれも(u’=0.2、v’=0.43)を色目標とし、これは、ディスプレイの出力においてD65白色点を得るために適した色度であってよい。
【0089】
青色選択的材料の他の例は、たとえばMFGなど他の狭小赤色蛍光体、および何らかのガーネット緑色および黄色蛍光体(場合によっては、そのようなガーネットに特有の吸収スペクトルに依存して、YAGおよびLuAGおよびそれらの組み合わせ、一般的には[GaLuY]AGを含む)を含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、青色選択的材料は、青色範囲430~480nmにおけるピーク吸収として定義される青色吸収、およびポンプ光源のピーク波長(たとえば400nm、405nm、410nm、415nm、420nm、425nm、430nm)におけるポンプ吸収という、光吸収係数の2つの値によって特徴付けられる。青色吸収は、ポンプ吸収よりも実質的に高い。たとえば、少なくとも5(または1.5、2、3、10、20)倍高い。たとえば図3Aは、KSFの場合、青色吸収は、400nmにおける吸収よりも約10倍高く、420nmにおける吸収よりも2倍高く、430nmにおける吸収よりも1.5倍高いことを示す。同じように、ポンプ吸収は、青色吸収の最大50%(または70%、30%、10%、5%)である。
【0091】
同様のスペクトル特徴を有する他のSPDが存在する。数値モデリングによって、出願人は、そのようなSPDを調査した。たとえば図6は、発光体の種類を含む、図4のSPDと同様の特徴を示す。ただし、紫色ポンプLEDは425nmにおいてピークを有し、色度はD65(すなわちx=0.3127、y=0.3290)を目標とする。このSPDは、約40%の紫色漏洩(ここでは、合計SPDパワーに対する400~450nmの範囲内のSPDパワーの割合として定義される)を有する。
【0092】
図7は、プランク式で5000K、6000K、8000K、および10000Kの相関色温度(CCT)で目標とされる、図6と同様の一連のSPDを示す。CCTが増加すると、紫色パワーは増加し、赤色パワーは減少する。したがって、発光体によって放出される生スペクトルであるSPD0は、最終的に放出されるSPDが図6に示すものの1つ、一般的には所望のCCTおよび色度のSPDと一致するように、ディスプレイシステム全体の光透過を考慮に入れて構成され得る。
【0093】
いくつかの実施形態は、青色放射がない、または本質的に青色フリーであることを特徴とするスペクトルパワー分布(SPD)を放出するディスプレイシステムである。これは、以下の基準の1つによって表され得る。
【0094】
(1)青色選択的材料の吸収のピーク付近(たとえば+/-5nm、または+/-10nm、または+/-20nm)の極小値、および紫色範囲(たとえば400~430nmまたは410~425nm)内の極小値。
【0095】
(2)紫色範囲(たとえば400~430nmの範囲)内のピーク値の5%(または20%、10%、1%、0.5%、0.1%)未満である、青色選択的材料のピーク吸収波長における強度。これは図4のSPDの場合であり、(KSFの吸収がピークである)450nmにおける強度は、(413nmにおける)ピーク紫色値の1%である。
【0096】
(3)440nm(または445nm、450nm、455nm、460nm、465nm、470nm、475nm、480nm)付近、または青色選択的材料のピーク吸収波長の+/-10nm(または5nm、20nm、25nm、30nm)範囲内の極小値。これは図4のSPDの場合であり、470~480nm付近の極小値を有する。
【0097】
(4)380~780nmの範囲における平均値の5%未満である、440nm(または445nm、450nm、455nm、460nm、465nm、470nm、475nm、480nm)付近の強度。これは図4のSPDの場合であり、470nmにおける強度は、380~780nmの範囲における平均値の2.4%である。
【0098】
(5)380~780nmの範囲における統合パワーの3%未満である、440~480nm(または440~500nm)の範囲における統合パワー。これは、図4のSPDの場合であり、440~500nmの範囲における統合パワーは、380~780nmの範囲における統合パワーの約1.6%である。
【0099】
明確性のために、他の特徴付けが明記されない限り、青色フリー白色スペクトルはSPDによって特徴付けられ、440~500nmの波長範囲におけるSPDのラジオメトリックパワーは、380~780nmの範囲におけるSPDのラジオメトリックパワーの5%未満である。この値は、特に(5000Kを超える)ディスプレイ用途において用いられる高CCTにおいて、標準的な青色LEDベースの白色スペクトルとは対照的であり、そのようなスペクトルは多くの場合、440~500nmの範囲内のスペクトルコンテンツの20%より多くを有する。
【0100】
典型的な実施形態は、415~430nmの範囲内の発光ピークを有する紫色ポンプLED、たとえばKSFなどの青色選択的狭小赤色蛍光体、520~560nmの範囲内の発光ピークを有する狭小緑色蛍光体を備える発光体である。
【0101】
別の典型的な実施形態は、415~430nmの範囲内のピークポンプ波長を有する紫色ポンプLEDと、ピークポンプ波長における吸収がピーク吸収波長における吸収の最大70%であるように、青色範囲430~480nmにおけるピーク吸収波長を有する第1の波長変換材料と、第2の波長変換材料とを備える発光システム(たとえばディスプレイ)であり、システムは、光変換材料が実質的にポンプLEDによって励起され、他の任意の放射源によって実質的に励起されないように構成され(特に、システムは、第1の波長変換材料をポンプするように構成されるピーク吸収波長において実質的に光を放出する放射源を所有せず)、それによってシステムは、実質白色光を放出する。この実施形態は、70%を上回るパッケージ効率を特徴とする。
【0102】
上記は、青色選択的材料および青色フリー発光体に焦点を当てたが、同じ概念が、青色以外の波長範囲で用いられ得る。たとえば、緑色発光体なしで非緑色ポンプ光源と組み合わせて優先的に緑色光を吸収する蛍光体を有する、未だ予期されない緑色フリー光源を想起するために、本教示を用いてよい。
【0103】
いくつかのディスプレイ用途において、量子ドット(Qドット)は、狭小な線幅(たとえば20nmまたは30nmまたは40nmまたは60nm未満のFWHMなど)を有し、たとえばサイズ選択によってその波長が精密に合わせられるため、望ましい。これらの特性は、ディスプレイの色域を最適化するために役立ち得る。
【0104】
Qドットに関連する化学的性質は、以下の化合物および派生物質を備える。グループII‐VI(Cdベース):CdS/CdSe/CdTe/ZnSe/ZnS、グループIII‐V(Cdフリー):InP/ZnS、およびグループI‐III‐VI2(Cdフリー):CuInS2/CuInSe2/ZnS。
【0105】
一方、Qドットは難題を呈示する。いくつかのQドットは、たとえばカドミウムなどの有害重金属を備え得る。これらは、ディスプレイにおけるポンプ波長に関する通常範囲内である、青色範囲における低~中程度の吸収を有し得る。それによって、高荷重のQドットは十分にポンプ光を吸収するために必須であり得るが、そのような大量の有害材料は問題となり、禁止されることもある。
【0106】
出願人は、短いポンプ発光体の使用が、Qドットと併用した時に意外な利益をもたらすことを発見した。したがって、実施形態は、長波長ポンプLED(たとえば青色LED)ではなく紫色ポンプLEDを用いる。これは、Qドットの荷重における大幅な低減を可能にし、システムをより安全にし、規制に準拠するものにし得る。この荷重の低減は、1)(以下で説明するように)短波長における高い吸収、および2)長波長に変換しなければならない光の割合が低いことを意味する、青色フリースペクトルに必要な高い紫色漏洩という2つの要因から生じる。
【0107】
図8は、量子ドット変換器の吸収および発光スペクトルを示す。この例において、発光は、約30nmのFWHMを有する。重要なことに、そのような材料の製造業者は、Qドットのピーク発光波長が、それらの吸収スペクトルから独立してシフトされ得ることを示している。したがって、図8に示す発光スペクトルは例示であり、より短いまたは長い波長にシフトされ得る。吸収スペクトルは、より短い波長に伴って段階的に増加する。450nmにおいて1に正規化される吸収の場合、吸収は430nmにおいて約1.25、および400nmにおいて約1.5である。これらの高い吸収値は、より短い波長のポンプが利用されるとQドットの荷重が低減され得ることを意味する。
【0108】
いくつかの実施形態において、Qドットは、青色吸収およびポンプ吸収によって特徴付けられ、ポンプ吸収は、青色吸収よりも実質的に高い。青色吸収は、青色波長範囲、または440~460nmの範囲内、または450nmにおけるピーク吸収であってよい。ポンプ吸収は、ポンプLEDのピーク発光波長における吸収であってよい。ポンプ吸収は、青色吸収よりも少なくとも1.2、1.3、1.5、2、3、5、または10倍高くあってよい。
【0109】
図9は、紫色ポンプLED、(約30nmのFWHMを有する)緑色量子ドット蛍光体、およびKSF赤色蛍光体を備える実施形態に関してモデル化されたSPDを示す。このSPDは、D65付近を色目標とし、ディスプレイの出力は、適切なフィルタを用いるとD65である。
【0110】
図10は、紫色ポンプLED、(約30nmのFWHMを有する)緑色量子ドット蛍光体、および(約30nmのFWHMを有する)赤色量子ドット蛍光体を備える実施形態に関してモデル化されたSPDを示す。このSPDは、D65付近を色目標とし、ディスプレイの出力は、適切なフィルタを用いるとD65である。
【0111】
いくつかの実施形態は、QD材料の荷重を抑えることにより、80%(または75%、85%、90%)を超えるパッケージ効率を特徴とする。
【0112】
いくつかの実施形態において、波長変換材料は、(たとえばシリコンなどの)バインダとの混合物に組み込まれる。この混合物は、バインダに対する各成分の重量負荷によって特徴付けられ得る(すなわち、50%の赤色蛍光体負荷は、赤色蛍光体の重量がバインダの重量の50%であることを意味する)。いくつかの実施形態は、1またはいくつかの量子ドットを備え、その荷重は10%未満(または100%、20%、5%、1%、0.1%、0.01%、または0.001%未満)である。場合によっては、重金属量(たとえばCd量など)が100pm未満(すなわち0.01%未満)であるように荷重が選択される。
【0113】
いくつかの実施形態において、Qドットは、たとえば100us、10us、1us、100ns、10ns、または1ns未満の短い発光立下り時間を有する。これは、ディスプレイのリフレッシュレートを制限し得る、10ms以上の立下り時間を伴ういくつかの蛍光体と対照的である。
【0114】
場合によっては、短波長光(一般的に紫色)に関して高い吸収を有するが長波長(一般的に青色、緑色、および赤色)に関して非常に低い吸収を有する波長変換材料を利用することが有利であり得る。
【0115】
図11は、そのような紫色選択的材料に関して起こり得る吸収および発光スペクトルを示す。吸収は、約425nmにおいて最大値を有し、450nmにおける吸収は425nmにおける吸収の約10%である。材料のピーク発光波長は、吸収スペクトルと無関係に構成され得るので、紫色光を優先的に吸収するが青色、緑色、黄色、橙色、赤色を含む任意波長で発光する材料をもたらす。この材料は、(システム内の発光種からの放射とともに、日光などの外側光源からの放射を含む)他の放射を実質的に吸収することなく、425nmポンプLEDとともに用いられ得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、紫色選択的材料は、400~430nmまたは350~430nmの範囲内、または一般的には430nmを下回る吸収ピークを特徴とする。紫色選択的材料は、長波長、たとえば450nm(または500nm、550nm、600nm、または650nm)における吸収よりも少なくとも2(または少なくとも1.5、5、10、20、または100)倍高い、紫色ポンプピーク波長における吸収を有してよい。
【0117】
1つの実施形態において、ディスプレイシステムは、430nmを下回るピークポンプ波長を有する紫色ポンプLEDを有し、かつ、ピークポンプ波長における吸収が450nmにおける吸収と比べて少なくとも10倍高い紫色選択的波長変換材料を有する。
【0118】
紫色選択的材料は、たとえば蛍光体、量子ドット、または半導体ベースの材料であってよい。その(電子帯構造を含む)電気および光特性は、(たとえば、張力、材料組成、ドーピング、界面化学、サイズを設定することによって)吸収および発光を調整するために設計され得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、ポンプ発光体は、紫色LED(またはOLED、レーザダイオード、スーパールミネッセントLED、量子ドット活性領域を有するOLEDなどを含む他のソリッドステート発光体)である。一般に、短いピーク波長は青色範囲における放射量を減少させる(これは、たとえば紫色LEDの長波長尾端部に起因する)というトレードオフが存在し、これは青色フリー発光体に関して望ましい。一方、人間の視覚系は、より長い紫色波長に対して感度が高いので、ディスプレイの出力SPDの放射発光効率(LER)は、ピーク波長が長いと増加する。
【0120】
図12は、このトレードオフを示す。これは、400~440nmの範囲における様々なポンプピーク波長を有する青色フリー白色光実施形態に関するLERおよび青色分画を示す。これらは、D65を色目標とした、LEDポンプ、30nmのFWHMおよび527nmにおけるピークを有する量子ドット緑色、およびKSF赤色蛍光体を有するSPDに関する。青色分率は、合計SPDパワーに対する440~500nmの範囲内(実際には、380~780nmの範囲内)のSPDパワーの比として定義される。
【0121】
ピーク波長が増加すると、LERは急速に増加する。425nmを上回ると、青色分画も急速に増加する。比較のために、レガシ発光体(すなわち、450nmに青色ポンプLEDを有し、同じ蛍光体および色度を有する発光体)に関する青色分画は約20~30%である。したがって、(5%以下の青色分画を有する)430nmを下回るピーク波長を有する発光体は、レガシ発光体よりも大幅に低い青色分画を提供する。
【0122】
LERと青色分率との相対的重要性に依存して、好適なピーク波長が選択され得る。たとえば、415~430nmまたは417~428nmまたは420~425nmの範囲内の(または実質的には420nmまたは425nmにおける)ピークは、比較的高いLERおよび低い青色分画を提供するため、適切であってよい。425nmにおけるピークは、高いLER(レガシ発光体の値の約90%)および低い青色分画(レガシ発光体の値の25%)を提供し得る。
【0123】
1つの事例において、LERは、約200lm/Woptより上(従来のシステムの66%以上)でなくてはならず、440~500nmの範囲内のSPDの割合は、4%未満(従来のシステムの15%未満)でなくてはならない。したがって、ピークポンプ波長に関して417~428nmの範囲が選択され得る。
【0124】
好適な波長範囲に関するこの論述は、紫色ソリッドステート発光体のスペクトル幅に依存する。狭小発光体(たとえばレーザダイオードなど)は、440~500nmの範囲内の発光を有さずに長いピーク波長で構成され得るので、狭小発光体の場合、青色含有量を増加させずにLERを増加させることにより、ピーク波長は430nmまたは435nmまたは430~439nmの範囲内であってよい。
【0125】
いくつかの実施形態において、ポンプ発光体および波長変換材料は、ディスプレイの(色フィルタを含む)光学システムの効果を更に考慮に入れ、上記教示に従って共に構成される。
【0126】
いくつかの実施形態において、ディスプレイの光学素子は紫色光に関して低い吸収を有することが考慮される。たとえば、導波管はPMMAで作られ、または、0.1cm~1(または1cm~1、0.01cm~1、0.001cm~1、0.0001cm~1)未満のピークポンプ波長における光吸収係数を有する。様々な光学素子(液晶、偏光子、レンズなど)は紫色光を透過するものであり、そのような光学素子のフィルムを通る(ピークポンプ波長における)紫色光のシングルパス透過は、50%、75%、80%、90%、95%より上であってよい(偏光子の場合、これは偏光子に沿った偏光の最大透過に関係する)。いくつかの光学素子は紫色光を反射するものであり(導波管における反射フィルム、DLP反射体など)、ポンプピーク波長における反射率は、80%(または90%、95%、98%)より上であってよい。
【0127】
フィルタを有するいくつかの実施形態において、紫色範囲(たとえば約410~430nmの範囲)における中程度の吸収を有する材料およびフィルタを使用することが考慮される。実際、紫色光は、不所望の青色およびシアン光に代替し得るので、本発明の実施形態に必要な態様であり得る。本発明のいくつかの実施形態において、(フィルタ、導波管、ディフューザ、偏光子、および他の素子に起因し得る)ディスプレイシステムの合計透過は、420nm~450nmの間で50%未満(または20%未満、10%未満)変化する。いくつかの実施形態において、約410~約430nmの範囲におけるディスプレイシステムの合計透過は、20%より上、50%より上、80%より上である。
【0128】
フィルタ
【0129】
以下の論述は、ディスプレイがそのような色フィルタを用いる場合の、ディスプレイのフィルタに部分的に関係する。上述したように、フィルタは、たとえば広帯域スペクトルをいくつかの原色に変換するための色フィルタを備える。よく知られる例は、青色、緑色、および赤色原色を有するLCDディスプレイである。そのようなディスプレイの色フィルタは、それぞれ短フィルタ、中間フィルタ、および長フィルタと称される。従来のLCDディスプレイにおいて、これらは、青色、緑色、および赤色フィルタにそれぞれ対応する。しかし実施形態に関して、短フィルタは一般的に、紫色波長を透過するように適合されなければならない。また、そのようなディスプレイの原色(すなわち、ディスプレイの画素が1つのフィルタを完全に透過し他のフィルタを遮断する場合に放出される光)は、短い、中間、および長い原色と呼ばれる。ただし、以下の論述の一部はより一般的であり、色フィルタを有するLCD以外のディスプレイ技術、または3つ以上の静的原色を有するディスプレイに関係してよいことを理解すべきである。
【0130】
以下において、色フィルタの透過に関する簡略化された近似が用いられる。全てのフィルタは、幅25nmにわたる波長(0~1)で透過が直線的に変化するエリアによって連結された0および1の透過のプラトーを有するものと想定される。そのような傾斜は、良好に設計された色フィルタによって実現可能である。この近似は、(尾端部および先端部を含む)現実のフィルタの透過における細部、および1より下の透過を無視するものであるが、実現可能な色域を予測するには十分に現実的である。当業者には、本教示をどのように現実世界の色フィルタに適合するかが分かる。
【0131】
良好な光学効率を保ちながら大きな色域を実現することが望ましい。これは、青色フリー発光体の場合、原則的に自明ではなく、その理由は以下を含み得る。
【0132】
(1)ポンプLEDは青色ではなく紫色である。それによって色域の青色点が紫色へシフトするので、飽和青色は利用できない。従来の短フィルタが使用される場合、名目上の飽和青色を表示しようとする試みは、実際は飽和紫色として出現し、色歪みをもたらす。
【0133】
(2)上述したように、高色域に関して望ましいいくつかの狭小蛍光体は、青色選択的吸収体でもあり、これらは紫色ポンプLEDとの適合性がないと予想され得る。
【0134】
しかし、出願人は、適切に構成された青色フリー発光体によって十分に大きい色域を得ることが可能であることを発見した。特に、いくつかの実施形態は、sRGB、NTSC、Adobe RGB、DCI‐P3、Rec2020、および当該技術において既知である他の規格を含むいくつかの標準規格色域に実質的に合致または完全に合致することができる。上述した本発明の1つの態様は、いくつかの青色選択的蛍光体が、実際は紫色LEDによる効率的なポンピングのために構成され得ることである。これは、たとえばKSFおよびMFGなどの狭小赤色蛍光体を含む。したがってこれらは、飽和赤色のための赤色蛍光体として用いることができる。上述した他の態様は、飽和緑色/赤色のための緑色/赤色蛍光体として緑色および/または赤色量子ドットを用いることである。
【0135】
また他の態様は、色フィルタの適切な設計である。特に、短フィルタは、紫色光の透過、および、たとえばシアンまたは緑色光など紫色よりも長い波長を有する第2の部分のいくらかの透過を可能にするように設計され得る。紫色光および光のこの第2の部分の結合は、青色範囲(たとえば450~480nm)における主波長を有し、それによって飽和紫色ではなく飽和青色として知覚される短い原色を有するスクリーンを提供するように構成され得る。すなわち、1つの実施形態において、本発明は、知覚的に青色であるが本質的には青色がない光を放出するためのフィルタに関する。
【0136】
最も標準的な色域は、主波長が450~480nm(または440~490nm)の範囲内であり、ほとんどの場合460~470nmの範囲内である短い原色を有する。これは、知覚的青色光に対応する。本発明の実施形態は、(たとえば430nmを下回る)短いピーク波長を有する紫色ポンプ発光体の使用にもかかわらず、同様の主波長を有する短い原色を実現する。明確性のために、例外が明記されない限り、本明細書における主波長は、(xy)色空間において、D65白色点に関して計算される。
【0137】
図13および図14は、この概念を示すモデル化システムである。図13Aは、紫色ポンプLED(ピーク波長423nm)、βサイアロン緑色蛍光体(ピーク波長537nm)、およびKSF赤色蛍光体を備える白色LEDによって放出された、(色フィルタが適用される前の)スペクトルパワー分布SPD0を示す。また図13Aは、3つの色フィルタも示す(短:破線、中間:点線、長:点鎖線)。図13Bは、(xy)色図を示し、結果として生じる色域(破線)およびDCI‐P3規格色域(実線)を示す。この場合、短フィルタは単純に、紫色ピークを完全に透過するように設計される。その結果、短い原色が青色ではなく紫色である色域が生じ、名目上の「飽和青色」は飽和紫色として表示される。これは(特に飽和青色の正確なレンダリングが求められる場合)望ましくない。図13Cは、青色/紫色の相違がより明らかな(u’v’)色図において、図13Bと同じデータを示す。
【0138】
明確性のために、例外が明記されない限り、色域カバレージは(xy)色空間において計算される。DCI‐P3色域の90%カバレージは、ディスプレイが、合計エリアが(xy)空間においてDCI‐P3色域のエリアの90%である色域を有することを意味する。
【0139】
明確性のために、LEDベースのSPDに関して、「パワー」という用語は、例外が明記されない限り、当該技術において知られるようなラジオメトリックパワーを指すものとする。明確性のために、LEDベースのSPDに関して、「合計パワー」という用語は、例外が明記されない限り、(一般に、SPDにおけるほぼ全てのパワーである)380~780nmの範囲内の統合ラジオメトリックパワーを指すものとする。
【0140】
図14は、図13と同様であるが、500~520nmの範囲内のシアン/緑色放射も透過する別の短フィルタを利用する。これは、紫色から青色の主波長へ短波長原色の色度をシフトさせる。その結果生じる原色は、DCI‐P3規格の青色原色とほぼ一致する。また、中間フィルタおよび長フィルタは、(中間原色および長い原色に対応する)色域の赤色および緑色頂点もDCI‐P3に準拠するように構成される。その結果、このシステムは、紫色ポンプLEDの使用にもかかわらず、DCI‐P3色域にほぼ準拠する。ここでSPD0は、3つのフィルタ全てが十分に透過させる場合、D65の色度を有するように構成される。色域エリアに関して、実施形態は、((xy)において計算すると)DCI‐P3の99%である色域または((u’v’)において計算すると)DCI‐P3の96%を有する。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態は一般に、短い原色の主波長が、ポンプLEDの主波長よりも長くシフトされるように、透過がシアン/緑色レジメに及ぶ短フィルタを有することによってこの概念を利用する。たとえば図14において、紫色LEDは主波長413nmを有するが、短い原色は約470nmの主波長を有する。
【0142】
いくつかの実施形態において、500nmにおける短フィルタの透過は、紫色LEDのピーク波長における透過の50%(または80%、30%)以上である。いくつかの実施形態において、短い原色は、ラジオメトリックパワーの10%(または50%、20%)以上が紫色ポンプ発光体から生じるものではないスペクトルを放出する。いくつかの実施形態において、発光体は、430nm未満(または428nm未満または417~428nmの範囲内)のピーク波長を有するポンプLEDを有するが、ディスプレイの短い原色は、440nmより上、または460nmより上、または440~490nmの範囲内の主波長を有する。主波長は、色彩科学において知られるように、スクリーンの白色点(図14の例におけるD65)に関して計算される。
【0143】
いくつかの実施形態において、紫色LEDのピーク波長と短い原色の主波長との差は20nm、30nm、40nm、または50nm以上である。たとえばピーク波長は425nmであり、主波長は465nmである。これは、短い原色の主波長が多くの場合LEDのピーク波長から10nmの範囲内である、青色ポンプLEDを有する標準的なディスプレイと対照的である。
【0144】
いくつかの実施形態において、短い原色は、青色放射がないにもかかわらず知覚的に青色である(すなわち、これは「青色フリー青色原色」である)。この青色放射の欠如は、短い原色のSPDによって特徴付けることができる。たとえば図14の実施形態に関して、短い原色のSPDは、440~500nmの範囲におけるパワーが、380~780nmの範囲における合計パワーの7.5%となり、450~490nmの範囲におけるパワーが、380~780nmの範囲における合計パワーの2.2%となるようなものである。したがっていくつかの実施形態において、440~500nmの範囲におけるSPDのパワーは、380~780nmの範囲におけるSPDのパワーの20%(または15%、10%、5%、2%)未満であり、450~490nmの範囲におけるSPDのパワーは、380~780nmの範囲におけるSPDのパワーの8%(または5%、3%、1%)未満である。比較として、青色LEDベースのディスプレイの短い原色は、440~500nmの範囲におけるパワーの約70~95%を有し得る。
【0145】
これは、図14のシステムに関する短波長原色のSPDを示す図14Dに示される。この場合、380~780nmの範囲におけるSPDの合計パワーに関して、パワーの82%が400~440nm(紫色成分)の範囲内にあり、7.5%が440~500nm(青色成分)の範囲内にあり、10.6%が500~550nm(緑色成分)の範囲内にある。SPDは更に、400~430nmの範囲における第1の最大値、450~490nm(または440~500nm)の範囲における極小値、および500~550nmの範囲における第2の最大値によって特徴付けられる。
【0146】
実施形態は、SPDが50%(または60%、70%、80%、90%)以上の紫色成分(400~440nmの範囲)および5%(または3%、8%、10%、12%、15%、20%)以上の緑色成分(500~550nmの範囲)を有する短波長原色を有してよい。
【0147】
短い原色におけるこの青色光の欠如の結果、いくつかの実施形態は更に、本出願のどこかで説明するように、それらの白色発光(たとえばD65の色度に対応して、3原色が十分に透過する場合の3原色の合計)が青色フリー白色スペクトルであるという事実によって特徴付けられる。たとえばSPD1は、合計パワーの4%である、440~500nmの範囲内の青色成分を有する。
【0148】
いくつかの実施形態において、短い原色は、SPDが青色主波長における放射を実質的に含まないにもかかわらず青色主波長を有する。たとえば主波長におけるSPDの値は、ピーク値の3%(または1%または0.5%)未満である。
【0149】
効率は、ディスプレイを設計する際の重要事項であり、すなわち高い色域は効率を犠牲にして得られてはならない。これを数値化するために、出願人は、以下のようにディスプレイの放射発光効率(LERD)を定義する。ディスプレイの発光体(たとえばLED部品)がスペクトルSPD0を放出するものとする。その後SPD0はディスプレイシステム内に注入され、色フィルタおよびLCDによって透過される。システムは、白色点に設定されると、原色の総和(すなわち、それらが十分に透過する場合に色フィルタの各々によってフィルタされたSPD0)であるスペクトルSPD1を放出する。多くの場合、SPD0およびフィルタは、SPD1が、(どこかで論述されるように、適切な等色関数を用いて目標とされる)たとえばD65などの目標色度を有するように構成される。ディスプレイのユーザは、SPD1によって放出されたルーメンを知覚する。出願人は、LERDを、SPD1におけるルーメンをSPD0の光パワーで割った比率として定義する。よってLERDは、光ワットごとのルーメンで表される。これは、LED光源に関してLER(放射の等価輝度)の等価物であるが、フィルタの透過が更に考慮に入れられる。LERDを最大化することはLERを最大化することと同じではないので、この違いは重要である。ただし、現実世界のディスプレイにおいて、ディスプレイ内の他の光学素子の透過および各フィルタは(100%の透過の場合でも、対応する画素はディスプレイエリアの1/3しかカバーしないので)最大で光パワーの1/3しか透過しないという事実も考慮される。これらの考慮事項は、ここで論述されるLERDを数値定数で乗算するが、本発明の一般教示は、現実世界のディスプレイに容易に適合することができる。また、(フィルタを有さない)直視型ディスプレイの場合、LERおよびLERDは同一であってよいことに留意する。
【0150】
比較点として、出願人は、市販のLCDディスプレイ(sRGB色域に準拠し、D65白色点を有するアップル社のiPhoneスマートフォン)を測定した。図15は、測定されたディスプレイ特徴、SPD0(ディスプレイ内の側面発光型LED部品の発光)および(本明細書で論述される理想的なフィルタとの整合性のために最大透過1に正規化された)フィルタ透過を示す。SPD0は、LED発光体が青色ポンプLEDおよびガーネット緑黄色蛍光体を備えることを示す。このシステムに関して、LERD=241lm/Wである。これは、中程度の色域および単純な蛍光体のセットを有する効率的な従来技術システムに関するLERDとは桁違いである。
【0151】
他の比較点として、出願人は、青色ポンプLED(450nmにおけるピーク)を有するディスプレイをモデル化することによって、図13および図14と同じ蛍光体(βサイアロンおよびKSF)、およびDCI‐P3色域に合致するように適合されたフィルタを設計した。図16はこのシステムを示し、SPD0および色フィルタを図示する。このシステムに関して、LERD=304lm/Wであり、白色スペクトルSPD1は、合計パワーの27%である、440~500nmの範囲内の青色含有量(統合パワー)を有する。また、短い原色は、440~500nmの範囲における統合パワーが合計パワーの81%であるSPDを有する。
【0152】
比較のため、図14の実施形態はLERD=258lm/Wを有し、SPD1は、合計パワーの4%である、440~500nmの範囲内の青色含有量を有する。したがってこの実施形態は、LERDにおける中程度の損失(従来技術の85%)および大幅に低い青色含有量(従来技術の15%)を伴って、高色域青色ポンプ従来技術システムと同様の色域を提供する。
【0153】
図14の実施形態は、DCI‐P3の色域に実質的に合致する。いくつかの実施形態は、たとえばRec2020色域規格に近い、更に高い色域を実現する。これは、色フィルタの追加的な設定(フィルタは、原色の発光の尾端部を切り落として純度を増大することができる)、および量子ドットを含む発光体の適切な選択によって実現され得る。
【0154】
図17は、紫色ポンプLEDと、βサイアロンおよびKSF発光体とを有する、図14と同様のモデル化実施形態を示す。ディスプレイの白色点はD65である。緑色蛍光体ピーク波長およびフィルタは、特に緑色および赤色原色に関して、Rec2020色域に近くなるように構成される。この実施形態の色域は、(xy)空間においてRec2020の92%、(u’v’)空間においてRec2020の89%である。LERDは140lm/Wである。この中程度の値は、狭小緑色フィルタを用いる必要性によって生じるので、緑色蛍光体からの発光の一部は失われる。
【0155】
この点を更に改善するために、いくつかの実施形態は、量子ドット、または(III族窒化物、またはAlInGaAsP、または他の半導体化合物に基づく)直射式緑色LEDを含む、更に狭小な緑色発光体を用いる。
【0156】
図18は、そのような実施形態を示す。この実施形態は、緑色量子ドット(FWHM30nm、ピーク527nm)、および優れた性能でRec2020の緑色および赤色原色に厳密に合致するための適切なフィルタを用いる。LERDは208lm/Wである。この高効率は、狭小緑色発光体によって実現される。Rec2020に対する色域エリアは、(xy)において91%および(u’v’)において86%である。
【0157】
様々な狭小赤色発光体も用いられ得る。KSFに加えて、赤色量子ドットまたは(AlInGaAsPのIII族窒化物、または他の半導体化合物に基づく)直射式赤色発光体が適し得る。
【0158】
図19は、そのような実施形態を示す。この実施形態は、緑色および赤色量子ドット(FWHM30nm、ピーク527nmおよび638nm)、および優れた性能でRec2020の緑色および赤色原色に厳密に合致するための適切なフィルタを用いる。LERDは204lm/Wである。この高効率は、狭小緑色発光体によって実現される。Rec2020に対する色域エリアは、(xy)において91%および(u’v’)において87%である。
【0159】
いくつかの実施形態は、(xy)または(u’v’)色空間のいずれかにおいて計算された場合、DCI‐P3の色域エリアの95%以上(または80%、85%、90%、または100%以上)である色域エリアを有する。いくつかの実施形態は、(xy)または(u’v’)色空間のいずれかにおいて計算された場合、Rec2020の色域エリアの95%(または80%、85%、90%、100%)以上である色域エリアを有する。
【0160】
いくつかの実施形態は、sRGBまたはDCI‐P3またはRec2020を含む標準規格色域の原色の色度に実質的に合致する色度である原色を有する。この文脈において用いられる場合、実質的とは、2つの色度(すなわち、実施形態の原色および標準規格色域の原色)が、1964 10°CMFを用いて計算した場合、互いに0.03未満の(xy)距離内にあることを意味する。他の実施形態において、実施形態の短い原色は、DCI‐P3またはRec2020の青色原色から0.1未満(または0.05未満、0.02未満、0.01未満、0.005未満、0.001未満)の距離DxyまたはDu’v’内にある。この距離は、上述したように、適切な等色関数を用いて計算され得る。同様に、実施形態の中間(長い)原色は、DCI‐P3またはRec2020などの標準規格色域の緑色(赤色)原色から所定の距離内にあってよい。
【0161】
上記の論述は、1の透過を有する簡略化色フィルタを考えるものであるが、より現実的な色フィルタを用いて同様の結果を得ることができる。特に、現実のディスプレイにおいて、短波長フィルタは多くの場合、最も低い透過を有し、長波長フィルタは多くの場合、最も高い透過を有する。
【0162】
図28は、そのような状況に対応する実施形態を示す。図28は、図14と同様(同じ蛍光体、色度、色域など)であるが、短波長フィルタが60%のピーク透過を有し、中間波長フィルタが80%のピーク透過を有し、長波長フィルタが100%のピーク透過を有するものである。発光体のスペクトルSPD0は、補償により所望の色特性をもたらすために、これらの透過(図14よりも多くの紫色および緑色)に単純に適合される。
【0163】
システム実装/ソフトウェア
【0164】
ディスプレイシステムにおいて上述した青色フリー発光体の実装が、以下でハードウェアおよびソフトウェア両方に関して論述される。青色フリー動作モードは、一日のうちの一部の時間帯において望ましいが、他の時間帯にはそうではないことがある。たとえば日中、青色光を放出するスクリーンは許容できるが、夜間において、青色フリー発光が好適であり得る。この選択は、効率を含む様々な考慮事項に基づくものであり、青色含有SPDは高いLERDまたは良好な色域を有し、青色放射が許容可能な時間帯において好ましい。
【0165】
いくつかの実施形態において、発光システムは、青色含有SPD(SPD1)および青色フリーSPD(SPD2)を放出することができる。2つのSPDは、異なるCCTまたは実質的に同じCCTを有してよい。いくつかの実施形態において、システムは、SPD1とSPD2との間で調整する能力を有するディスプレイスクリーンを備える。
【0166】
調整は、様々な入力によって制御され得る。これはユーザによって制御され得る。たとえばユーザは、(たとえば1秒または数秒、または1分または数分、または1時間または数時間などの所定の時間にわたって)SPD2に遷移するモード(たとえば夜間モード)をアクティブ化することができる。
【0167】
調整は、環境測定によっても制御され得る。たとえば(たとえば電話機に組み込まれたフォトダイオードなどの光検出器によって測定され得る)光が十分に暗い時、ディスプレイは、輝度および青色光量を同時に低減する。あるいはシステムは、周囲光の色温度を推測し青色レベルを適合する(たとえば、4000Kまたは3000K未満の低いCCTは青色フリー発光をトリガしてよい)ことができる、(たとえば電話機/タブレットにおけるCCDカメラなどの)カメラを有する。ディスプレイのCCTは、周囲光CCTに基づいて決定されてもよい。
【0168】
調整は更に、ユーザ挙動または行動の測定によって制御され得る。これは、生体測定(体温、心拍数、瞳孔拡張など)、またはある位置でのユーザの行動、移動、および存在の測定、デバイス(たとえばスマートフォン)における操作、特定の言語およびジェスチャの測定を含む。これらの測定は、適切なデバイスによって提供され得る。この情報に基づいて、プロセッサは、ユーザが疲れていること、または逆に(たとえば所望の睡眠スケジュールに基づいて)ユーザが疲労しているべき時間にその兆候を示さないことを決定してよい。それに応じて、ディスプレイによって放出される光は、青色光および強度の増減によって調整され得る。
【0169】
そのような応答は、ユーザの状態にスペクトルを合致させ(たとえば、ユーザが眠気を感じ、または入眠に備える場合、概日サイクルを低下させ)、ユーザの状態を緩和する(たとえば眠気を検出し、それを軽減するために概日刺激を増加させる)ために利用され得る。場合によっては、応答は、ユーザの挙動とともに、他の測定可能な条件、またはたとえば一日における時間帯、天候および/または天候の変化、屋外光の量などの合図によって決定されてよい。場合によっては、合図は、ユーザの挙動を監視する他の「スマート」システム(他の電気製品、スマートフォン、または他の電子デバイス)から得られてよく、合図はその後、上記スマートシステムと照明システムとの間で、たとえばスマートホームハブによって使用可能になるネットワークなどのネットワーク(有線または無線)を介して伝達され得る。場合によっては、合図は、たとえばユーザのスマートフォンなどのシステムによって記録されている、たとえばユーザが起床した時間またはユーザの過去の睡眠パターンなどユーザの過去の挙動に関連する。
【0170】
調整は、単純なソフトウェア入力によって制御されてもよく、(日光スケジュールに関連し得る)特定の時間にシフトが起こってよい。たとえばスクリーンは、夜明けにSPD1に遷移し、日暮れにSPD2に遷移する。遷移は、ユーザにとって明らかではないように一定期間(たとえば数分~1時間など)にわたって継続してよい。またシフトは、ユーザ嗜好に基づいてもよい。場合によっては、シフトは、ユーザの所望の/習慣的な起床時間および就寝時間を含むユーザ習慣に基づく。
【0171】
1つの実施形態において、ユーザは、所望の起床時間Twを指定する。照明システムが(たとえばTwの1時間前に開始する)Tw付近の所定の時間窓において発光する場合、システムはSPD1を放出する。他の実施形態において、Twは、ユーザが目覚まし時計を設定することによって設定される。たとえば目覚まし時計が午前7時に設定された場合、Twは午前7時に設定される。場合によっては、システムは、SPD2を放出する条件が満たされるまで、日中を通してSDP1の放出を維持する。
【0172】
1つの実施形態において、ユーザは、所望の就寝時間Tsを指定する。照明システムが(たとえばTsの2時間前に開始する)Ts付近の所定の時間窓において発光する場合、システムはSPD2を放出する。場合によっては、システムは、SPD1を放出する条件が満たされるまで、夜間を通してSDP2の放出を維持する。
【0173】
1つの実施形態において、システムは、ユーザの起床時間の1時間(または2時間あるいは30または15分)前に開始し、ユーザの就寝時間の2時間(あるいは3または1時間)前に終了する時間領域においてSPD1を放出し、それ以外ではSPD2を放出する。
【0174】
いくつかの実施形態において、遷移時間および他のディスプレイ発光特性を決定するために、機械学習(教師付きまたは教師なし)が用いられる。たとえば教示フェーズにおいて、最初にユーザが情報を入力し、これは、いつ青色フリーモードを所望するかを示すこと、または青色フリーモードを一時的に非アクティブ化(「スヌーズ」)すること、またはディスプレイの輝度を設定することによるものを含む。この入力は、ディスプレイ輝度およびスペクトル透過のタイミングを精密化するために機械学習アルゴリズムによって用いられる。たとえば、システムは、これらの設定を特定の合図に関連付けるように学習し、その後、調整は合図に応答して(たとえば手動でトリガされるのではなく)自動的に実行される。学習は、たとえばニューラルネットワークを介して、および/またはベイズ推定を用いてなど、当業者に既知である様々な機械学習技術によって実現され得る。
【0175】
上記シナリオの特定の例は以下のとおりである。ユーザは、就寝前の数時間、ルーティン(たとえば何らかの規則性を持って反復的に行われる一連の動作)に従う。そのようなルーティンは、食卓を離れること、歯を磨くこと、テレビの視聴などを含んでよい。このルーティンのデータは、様々な電気製品(テレビ、歯ブラシ、移動センサ)によって収集され、無線プロトコルを介して照明システムに伝達される。教示フェーズにおいて、ユーザはまた、概日刺激を低減するように照明システムのスペクトルを調整し、たとえばユーザは、就寝前の数時間、照明システムを非刺激的設定にする。システムがこれらの設定をルーティンの1または複数の合図、およびおおよその時間と関連付けると、ユーザの就寝前、概日応答の低減を促すように自動的に調整が生じる。逆に、概日システムを刺激するように朝に調整が生じてもよい。
【0176】
上記論述は2つのSPDに言及するものであるが、より多くのSPDおよびSPDの継続的遷移を有する一般的な実施形態が考えられ得る。
【0177】
いくつかの実施形態において、放出光の選択に関する情報は、いくつかのシステム間で交換/共有される。これは、いくつかの発光システムが光スペクトルスケジュールに協定する(たとえば室内照明、スマートフォン、およびテレビの全てが夜間に青色フリーモードに切り替わる)ために役立ち得る。照明システムは、放出するSPDに関する情報を他のシステムから得てよい(これは無線通信を介して起こり得る)。ユーザは、自身の電話機、コンピュータ、またはスマートウォッチなどのデバイス上で(起床時間および就寝時間を含む)嗜好を指定してよい。このデバイスはその後、発光デバイスを含む他のデバイスと情報を共有する。たとえばテレビまたは白熱灯が電話機からの情報を受け取り、この情報に基づいて青色フリーSPDに遷移してよい。空間内に何人かのユーザ(たとえば住居を共有する家族など)がいる場合、共有の発光素子は、何人かのユーザからの情報に基づく共通照明ポリシに設定され得る。たとえば、同じ住居内の2人の人間が異なる睡眠時間Ts1およびTs2を有する場合、共有照明システム(共有テレビ、リビングルームの照明など)は、(「最初に眠る人」が青色光に影響を及ぼされないように)Ts1およびTs2の早い方によって決定された時間に青色フリーモードになってよい。2人の人間が部屋を共有しており、そのうちの1人が自身の電話機において、彼らが睡眠モードをトリガしたいと所望することを示した場合、共有照明システムは全て青色フリーモードになる。一方、非共有発光システム(個人用電話機、個室内の照明)は、各個人に基づくスケジュールを有してよい。そのようなポリシの決定は、クラウド上で、またはコンピュータシステムによってローカルに(ホーム内で)行われ得る。
【0178】
場合によっては、ユーザは、自身の睡眠パターンを変更したいと所望していることを示す。たとえばユーザは、旅行に備えて自身の概日サイクルを早い時間にフェーズシフトしたいと所望する。これは、朝より早い時間に青色光を提供することによって実現され得る。すると照明システムは、ユーザの通常起床時間より前に青色光を放出するように設定される。
【0179】
上記の例は、家庭用の設定を想定したものであるが、自動または「スマート」調整を有するそのような実施形態は、たとえば専門的状況など他の状況において用いることもできる。たとえばオフィス設定において、照明システムは、使用されるアクティビティを監視し、それに応じて青色含有量を増加するように適合してよく、あるいは青色含有量は、朝に増加され、就業日の終わり付近に低減され、または(天候および季節によって変化し得る)外光条件を補足するように適合され得る。システム調整は、単純なタイミングスキームに従ってよく、あるいは就業者の挙動を考慮に入れてもよい。また実施形態は、夜間就業者施設、長距離移動(たとえば航空機のフライトなど)、老人用介護施設を含む、睡眠パターンが影響を及ぼされる他の状況において用いられてもよい。
【0180】
専門的状況において、照明スケジュールは、所与のオフィス/場所全体に適用されてよく、あるいはユーザのために更にカスタマイズされてもよい。たとえば、コンピュータスクリーンによって放出される青色光の量は、被雇用者ごとに、彼らの個人的スケジュールまたは(夜間/日中シフトを含む)就業スケジュールに従って個々に調整され得る。
【0181】
ディスプレイアーキテクチャ
【0182】
様々なディスプレイアーキテクチャが本発明の機能を果たし得る。これは、直下型ディスプレイ、投射型ディスプレイ、および(エッジリットおよびバックリットを含む)導波管ベースのディスプレイを含む。
【0183】
直下型ディスプレイは、画素レベルで個々の発光体を有する。一般的に、各画素は複数の色付き発光体を備える。たとえば各画素は、複数のLEDまたはOLEDを備えてよい。典型的な実施形態において、発光体の1つは紫色発光体であり、430nm未満の波長を有する。これらの実施形態は、紫色発光体を用いる代わりに440~470nm付近のピーク波長を有する青色発光体を用いる従来技術とは異なる。出願人によって高効率なLED発光体が開発されており、有利に用いられ得る。OLED発光体に関して、紫色発光は、紫色発光有機層を有する「直射」OLED発光、またはたとえば紫色発光量子ドットなどの有機マトリックスに組み込まれた発光種のいずれかから得られ得る。
【0184】
高効率紫色発光体は、動作条件下で50%(または60%、70%、80%)以上の壁コンセント効率を特徴としてよい。動作基準温度は通常、25C~100Cの範囲内である。動作電流密度は、少数の発光体を有する標準的ディスプレイに関して高く(すなわち、3~300A.cm-2または10~100A.cm-2の範囲内、または35A.cm-2または50A.cm-2または100A.cm-2)、小型の発光体を有する直視型ディスプレイに関して非常に低く(すなわち、1~10uA.cm-2または10~100uA.cm-2または100~1000uA.cm-2の範囲内)なり得る。
【0185】
直下型ディスプレイは一般的に、各画素に赤色および緑色発光体も備える。図20aは、紫色、緑色、および赤色発光体2001、2002、2003を有する画素2000を示す。赤色および緑色発光体は、直射式発光体または波長変換型であってよい。
【0186】
また、実施形態は、紫色発光体に加えて青色(またはシアン)発光体を備えてよく、その結果、4発光体システム(紫色、青色、緑色、赤色)を形成する。図20bは、紫色、青色、緑色、および赤色発光体2011、2012、2013、2014を有する画素2010を示す。青色フリーモードにおいて、紫色発光体が発光し、青色発光体は発光しない。青色発光体は、青色フリーモードが必要ではない「日中モード」において用いられ得る。場合によっては、日中モードにおいて、青色発光体が発光し、紫色発光体は発光しない。
【0187】
各画素における発光体は、小さくあって(たとえば、1um、5um、10um、50u、または100um未満の特徴的な横サイズを有して)よい。静電、電磁、スタンピング、印刷などを含む、そのようなLEDの(ピックアンドプレースを含む)取扱いに関する適切な技術が用いられ得る。
【0188】
発光体およびディスプレイは、実質的に透明であってよい。部分的透明OLEDスクリーンは既知であり、実施形態は、高い透明性および(高輝度のために好ましい)無機LEDを有する透明ディスプレイを可能にすることによってこれに改良を加える。これは、たとえば拡張現実などの用途に役立ち得る。場合によっては、ディスプレイは、LEDが機械的に結合されたクリア光学部材を有する(LEDは部材に組み込まれ、または取り付けられ得る)。この部材は剛性または可撓性であってよい。LED自体は実質的に透明であり、透明な基板およびエピタキシャル層を含む。特に、III族窒化物エピタキシャル層は、可視範囲にわたり実質的に透明であってよい(発光層を別とするが、これは小さい吸収を引き起こすほどの薄さでよい)。透明基板のための材料は、GaN(および他のIII族窒化物基板)、サファイア、酸化ガリウム、SiCを含む。LEDコンタクトは、TCO(ITO、ZnO、GaOxなど)を含む透明なコンタクトを備えてよい。これは、限られた面積を有する小区画の金属コンタクトを備えてよい。
【0189】
透明性は、450~650nmの範囲内で平均化した場合、LED面積全体で80%(または70%、90%、95%)以上の光透過によって特徴付けられ得る。また透明性は、(たとえば金属コンタクトなどの)不透明素子が、LED設置面積のうち、たとえば10%(または20%、5%、2%)未満など限られた面積を占めることも必要とする。
【0190】
図20Cは、透明ディスプレイ2020の簡略化断面図を示す。システムは、透明部材2021に組み込まれる。ここで、LED2020は縦型デバイスであり、nおよびpコンタクト(不図示)はLEDの両面にある(そのような透明LEDは吸収/絶縁基板を排除することによって、またはたとえばGaNまたはGaOxなどの透明導電性基板を用いることによって実現され得る)。透明底部電極2023は、一方の種類のコンタクト(いわゆるn)と接し、透明上部電極2024は、他方の種類のコンタクト(いわゆるp)と接する。簡略化のために、一種類のLEDのみが示されるが、LEDは一般に様々な発光波長を有し、紫色LEDを備えてよい。様々な色のLEDが様々な電極に接する。簡略化のために、図20Cにおいて、電極は一方向に沿って示されるが、当該技術において既知であるように、2つの電極は格子レイアウトを有してよい(すなわち、一方の電極が画素の横列方向にあり、他方の電極が画素の縦列方向にある)。LED間の空間は空気のまま残されてよく、あるいは反射を低減し透明性を増加させるために高指数媒体によって優先的に充填されてもよい。いくつかの実施形態において、LED間の空間は、1.4または1.8より高い光学指数、またはLEDの光学指数から1未満の範囲内の指数を有する透明媒体によって実質的に充填される。たとえばLEDは約2.4の指数を有するGaNベースであり、媒体は約1.8の指数を有するスピンオンガラスである。
【0191】
図20Dは、1つの方向に沿った1つの型のコンタクトおよび他の方向に沿った他の型のコンタクトを示すLED2040の斜視図を示す。ここで、nコンタクト2041は底部にあり、pコンタクト2042は上部にある。透明コンタクトは更に他の部品(たとえばTFTおよび画素アドレッシングのためのキャパシタなど)に接する。金属パッド2043は、このコンタクトを補助するために存在してよい。LEDチップにおける透明コンタクトによって、または活性領域2045の両面におけるLEDチップ内のドープ層2044によって電流広がりがもたらされ得る。
【0192】
GaNの場合、pドープ材料における広がりは通常乏しく、これはnドープ材料とのトンネル接合コンタクトを用いることによって改善され得る。図20Eがこれを示す。トンネル接合2047は、両方のLEDコンタクト層がnドープ2046されるように、pドープ材料2044上に形成される。ここで、材料は、底部コンタクトがLEDの上部から横方向構成で生じるようにエッチングされる(ただし縦方向構成もトンネル接合スキームを用いることができる)。両方のnドープ層においてコンタクトが形成される。これらは金属または透明コンタクトであってよい。電流広がりはnドープ材料において良好であるため、小さいコンタクトが適し得る。良好なn広がりは、バルクドープ基板によって、または(1E19cm-3または1E20cm-3以上のキャリア密度を有する)高度にドープされた材料によって可能になり得る。
【0193】
図20Eは、LEDの1つの寸法に沿って上部コンタクトが伸び、他の方向にわたって底部コンタクトが伸びる横方向ダイ構成において、格子コンタクトスキームがどのように実現され得るかを示す。透明材料は、上部コンタクトおよび底部コンタクトを分離する機械的支持のためにLED周囲に飛散してよい。図20Eの横方向スキームは、トンネル接合なしで用いられてもよく、上部コンタクトが実質的に全てのpドープ材料とのコンタクトを成し、LEDのn側のみに実質的電流広がりを有する。フリップチップダイ構成が用いられてもよい。
【0194】
画素の選択的アドレッシングは、各画素における(TFTを含む)トランジスタによって実現され得る。これらのTFTのサイズは、それらの光吸収を最小にするように選択され得る。あるいは、TFTは実質的に透明であってよい。これらは、GaNおよびIII族窒化物材料、または他の透明半導体(エピタキシャルまたは非エピタキシャル)、または有機材料に基づいてよい。各画素における電荷は、キャパシタによって維持され得る。これらのキャパシタのサイズは、それらの光吸収を最小にするように選択され得る。あるいは、キャパシタは実質的に透明であってよい。90%を上回る光透過を有するキャパシタが論証された。TFTおよびキャパシタは、エピタキシ、スパッタリング、薄膜蒸着、電子ビーム蒸着、原子層堆積、パルス層堆積などを含む様々な技術によって形成され得る。
【0195】
LEDは、他の処理を受けてよい。たとえば、漏電を防ぐためにLEDの側壁に保護層が形成され得る。そのような保護層は、LEDのウェハ処理中に堆積され得る(たとえばこれらは、たとえば化学蒸着、パルス層堆積、原子層堆積、吹付け、吹付け塗装などのプロセスを用いて、LEDの個片化後に側壁に堆積され得る)。反射防止層がディスプレイの表面に形成され得る。2つの電極がLEDの同一側面にあり、絶縁層(たとえば誘電層)によって互いに分離されたジオメトリを含む、他のジオメトリも可能である。1つの実施形態において、LEDは、バルクIII族窒化物基板上に成形される。他の実施形態において、LEDは、たとえばガラスまたはサファイアまたは酸化ガリウムなどの透明材料上に成形またはスパッタリングされる。
【0196】
いくつかの実施形態において、ディスプレイは実質的に透明であり、400~700nmの範囲内の波長において、または450~650nmの範囲にわたって平均化されると、ディスプレイを通る50%(または10%、70%、80%、90%、95%)以上のシングルパス透過を特徴とする。この反射率は、いくつかの画素を平均化するディスプレイの大面積(たとえば1mmまたは10mmまたは1cm以上)にわたって取られた平均であってよい。平均は、ディスプレイの平面(または局所面)に垂直な方向において取られてよい。平均は、ディスプレイ面積の10%(または1%、5%、50%)以上の面積にわたって取られてよい。いくつかの実施形態において、ディスプレイの各部品を通るシングルパス透過は、400~700nmの範囲内の波長において、または450~700nmの範囲にわたって平均化されると、50%(または10%、70%、80%、90%、95%)以上である。1つの実施形態において、ディスプレイの表面に局所的に垂直な方向を通る光透過は、ディスプレイ表面の5%以上の面積にわたり平均化されると、波長範囲450~650nmにわたる平均で80%以上である。いくつかの実施形態において、透明ディスプレイは少なくとも3原色(たとえば緑色、赤色、および紫色/青色)を備え、各原色LEDはIII族窒化物材料を備える。
【0197】
いくつかの実施形態において、各画素に余剰発光体が存在する。たとえば、各画素は、各色の2つのLED(すなわち2つの紫色、2つの緑色など)を有する。これは信頼性のために役立ち、1つの発光体が故障または劣化した場合、他方の発光体は、画素に関して更に均一な光出力を維持するために補償することができる。この余剰は、波長の平均化によって色の一貫性およびダイ使用収率を高めるためにも用いられ得る。一般的なLED製造プロセスを考えると、LEDごとのピーク波長標準偏差は、ウェハ上およびウェハごとの変動によって5nm(場合によっては10nm、20nm)を上回る。ディスプレイ画素における波長は、より一貫性を持つ必要があり、たとえば全ての緑色発光体は、ディスプレイ全体で色が均一に見えるように、選択された緑色波長の+/-1nm(または0.5nm、2nm、5nm)範囲内でなくてはならない。画素ごとに1つの発光体のスキームにおいて、製造されたLEDの大部分は、そのような色の一貫性を満たすために廃棄されなければならない。画素ごとに2つの発光体のスキームにおいて、平均波長が所望の目標に近付くように、両方のLEDのピーク波長が結合され得る。たとえば、目標ピーク波長がラムダ0である場合、各画素は、2つのスペクトルの結合が実質的にラムダ0であるピーク波長を有するように、約ラムダ0+1nmのピーク波長を有する発光体と、約ラムダ0-1nmのピーク波長を有する発光体とを結合してよい(たとえば+/-2nm、+/-3nm、+/-5nm、+/-10nmなど、他のビニングステップが用いられてもよい)。
【0198】
図20Fは、波長平均化スキームを示す。この図は、(たとえば目標ピーク波長から約+/-5nmのピーク波長を有する)短いLEDおよび長いLEDのスペクトルを示す。2つのLEDの平均は、目標に近く、所定の許容可能波長範囲内、たとえば目標ピーク波長から+/-1nm(または0.5nm、2nm、3nm)のピーク波長を有する。
【0199】
画素ごとに1つに発光体のスキームにおいて、色均一性における厳しい要件にもかかわらずLEDダイ使用率を高めるために同様のアプローチが用いられてもよく、隣接する画素内のLEDが「補償する」ピーク波長を有してよい。たとえば、1つの画素が、ピーク波長ラムダ0+2nmの緑色LEDを有し、隣接する画素が、ピーク波長ラムダ0-2nmの緑色LEDを有する。スクリーン解像度が十分に小さい場合、知覚される緑色は近隣画素にわたって平均化され、より良い知覚色均一性が生じ得る。このスキームは、画素の各原色について用いることができる。
【0200】
図20Gは、対応する画素レイアウトを示す。この図は、9つの画素2051~5059のセットを示す。各画素は4つの発光体(紫色、青色、緑色、赤色)を有する。各原色に関するディスプレイの目標ピーク波長は、V、B、G、およびRと表記される。+1および-1の表記は、目標ピーク波長よりも(たとえば+/-1、または他の数量分)それぞれ長い/短いピーク波長を有するLEDを表す。図20Gにおいて、全ての原色に関して短波長および長波長の画素が互い違いに配置される。たとえば図20Hに示すように、他のレイアウトが用いられてもよい。図20Hにおいて、画素2061~2066は、短い紫色および赤色と長い緑色および青色、またはその逆を有する。更に他のレイアウトも考えられ得る。この概念は、たとえば紫色、緑色、赤色、または青色、緑色、赤色といった3原色ディスプレイを含む、他の数の原色を有する直視型ディスプレイにおいて用いることができる。
【0201】
いくつかの実施形態は、(たとえばDE2000色差測定によって測定した場合)可知差である1より大きいピクセルごとの波長差を有するが、可知差である1を下回る(飽和原色を表示した時に)知覚されるスクリーン色均一性を有する。
【0202】
ダイ配置に関して、この波長平均化スキームは、たとえば2つの波長ビニングLEDテープのように、(各色につき)2群のLEDを有し、各画素に各群からのダイを配置することによって実現され得る。あるいはLEDは、中間レベルで結合(たとえば同じLEDテープ上に互い違いに配置)され、ダイが順次取り付けられてよい。
【0203】
直視型ディスプレイは、4つの発光体があるにもかかわらず、3原色システム(すなわち、色空間において三角形の色域を有する)として作用するように構成され得る。これは、日中モードおよび青色フリーモードが実質的に同様の色域を有するように構成され得る。特に、青色フリーモードの場合でも、システムは、飽和した短い原色が表示される時、(紫色光ではなく)知覚的青色光を放出し得る。これは、飽和した短い原色を放出する画素の主波長が紫色範囲から青色範囲へ引き出されるように、緑色原色からの放射の適量を紫色原色からの放射と混合することによって実現され得る。この効果のために、いくつかの実施形態において、青色フリーモードにおいて画素は、青色発光体からの放射がなく、紫色発光体から放射の大部分、および緑色発光体から1%(または2%、5%、10%)以上30%(または5%、10%)未満の放射を備える短い原色スペクトルを放出する。
【0204】
図21はこれを示す。この図は、緑色発光体および420nmの紫色発光体を有するシステムに関する(xy)色空間を示す。短い原色の発光に寄与する緑色発光体からの少量の放射を可能にすることによって、この原色は、破線に沿って知覚的青色に移動する。
【0205】
あるいは、4発光体システムは、より広い色域を得るために4つの発光体を利用してよい。たとえばシステムは、青色フリーモードにおいて標準的な三角形状色域を有する3原色システム(紫色、緑色、青色)、および日中モードにおいて四辺形色域形状を有する4原色システムであってよい。図22はこれを示す。この場合、第4の発光体は、追加の色域を提供するための青色、シアンまたはシアン緑色発光体として選択され得る。この主波長は、480~520nmまたは470~500nmの範囲内であってよい。
【0206】
投射型ディスプレイは、画像を投射する遠隔光源を有してよい。画像は、ユーザが見ているスクリーン(または他の物体)上に、あるいはユーザの目に直接(たとえば網膜に画像を形成して)投射され得る。関連するシステムは、大型シアター/会議用プロジェクタからヘッドアップディスプレイ、(たとえば電話機またはハンドヘルドデバイスに組み込まれた)個人用途向けマイクロプロジェクタ、たとえば仮想現実および拡張現実眼鏡/ヘッドセットまで、様々なシステムを含む。発光体は、LEDまたはOLEDであってよいが、場合によっては望ましい指向性を有する(レーザおよびスーパールミネッセントLEDを含む)他のソリッドステート発光体であってもよい。
【0207】
一般的に、システムは、青色フリースペクトルを放出するための430nm未満のピーク波長を有する紫色発光体、赤色発光体、および緑色/黄色発光体を備える。これは、上述した直下型ディスプレイと同様、青色/シアン発光体を備えてよい。
【0208】
導波管結合型ディスプレイは、導波管のエッジまたは背面に光結合された発光体を備えてよく、色付き画素を生成するために色フィルタおよび液晶を利用してよい。LCDディスプレイの例は一般的に、偏光子を有する液晶(LC)が各副画素において光を透過および遮断することができ、薄膜トランジスタが液晶の状態を制御する、アクティブマトリックスディスプレイである。
【0209】
場合によっては、導波管結合型ディスプレイは、青色フリー発光体のみ(たとえば緑色および赤色蛍光体をポンプする紫色LED、または直射式紫色、緑色、および赤色LEDの組み合わせ、または他の同様の組み合わせなど)を備える。よってディスプレイは、色域の観点から静的ディスプレイである。
【0210】
他の事例において、ディスプレイは、青色光を放出する能力も有する。たとえばディスプレイは、2種類の発光体、(いくらかの青色放射を放出する)LED1および(青色フリー発光体である)LED2を備える。
【0211】
図23Aは、LED1およびLED2 2312、2313からの光が色均一性のために混合する混色領域2311、およびそれに続くディスプレイ領域2314を備えるエッジリットディスプレイ2300の上面図を示す。
【0212】
図23Bは、ディスプレイ2300の対応する断面図を示す。ディスプレイ領域2314は、短波長、中間波長、および長波長副画素2320a~2320fを有する。各々は、光を透過/遮断するための(偏光子を有する)液晶2321a~2321fおよび色フィルタ2302a、2302b、2302c、2302a’、2302b’、2302c’を有する。
【0213】
場合によっては、LED1およびLED2はいずれも実質的に白色の発光体である(これらの発光は、ディスプレイシステムによる十分な透過後に実質的に白色であることを意味する)。日中モードにおいて、LED1が発光する。青色フリーモードにおいて、LED2のみが発光する。LED1およびLED2は、同じ導波管/色フィルタ/LCに結合され、あるいは2つの別の導波管/色フィルタ/LC(たとえば積層導波管)を有してよい。LED1および2、および色フィルタのスペクトルは、ディスプレイが日中モードおよび青色フリーモードの両方において所望の発光を有するように共に構成され得る。たとえば、色点/CCTおよび色域は、2つのモードが知覚的に同様であるように、両方のモードにおいて実質的に同様であってよい。あるいはCCTは、青色フリーモードにおいてより低い値に低減されてよく、それによって概日同調を更に低減することができる。たとえば日中モードにおいて、システムは、6500KのCCTおよび450~470nm付近のピーク発光を有する白色点を有し、夜間モードにおいて、システムは、5000K未満(または4000K未満、3000K未満)のCCTを有する青色発光および白色点を有する。
【0214】
図24は、そのような実施形態を示す。これは、(xy)色空間、黒体軌跡、3000K~10000Kの黒体軌跡における様々なCCT、およびLED1およびLED2による発光下でのディスプレイの色度を示す。ここで、これらの発光は、10000Kおよび3000KのそれぞれのCCTを有するプランク式である。LED1およびLED2の両方が発光すると、ディスプレイは、ディスプレイ軌跡として示される様々なCCTを発光してよい(勿論ディスプレイのCCTは色フィルタを調整することによって更に修正され得る)。
【0215】
他の事例において、LED1は直射式青色/シアンLEDであり、LED2は、430nm未満のピークを有する紫色ポンプLED、緑色蛍光体、および赤色蛍光体を備える、(システム透過が含まれた後)実質的に白色の発光体である。青色フリーモードにおいて、LED2のみが発光する。日中モードでは、LED1も発光する。
【0216】
図25はそのような実施形態を示す。図25図24と同様であるが、LED1が青色/シアンである。低/高純度LED1に対応する2つの可能性が示される。また様々な主波長も参照のために示される。
【0217】
他の事例において、LED1は、青色/シアンLED、緑色蛍光体、および赤色蛍光体を有し、LED2は、430nm未満のピークを有する直射式紫色ポンプLEDである。日中フリーモードにおいて、LED2のみが発光する。日中モードでは、LED1も発光する。
【0218】
他の事例において、システムは、一般的に紫色、青色/シアン、緑色/黄色、および橙色/赤色という4つの発光体を有する。青色フリーモードにおいて、青色/シアン発光体は発光しない。日中モードにおいて、紫色発光体は発光してもしなくてもよい。
【0219】
上述した実施形態のいくつかにおいて、動作モードは、紫色および青色LEDの両方が発光すると生じ得る。紫色および/または青色出力が制御されるように、LEDおよび液晶フィルタに時間変調が適用され得る。たとえば1つの事例において、システムは、青色フリーLED(紫色LED、緑色蛍光体、赤色蛍光体)および直射式青色LEDを有する。青色フリーモードにおいて、青色フリーLEDのみがオンである。日中モードにおいて、青色フリーLEDのみがオンであり、ディスプレイの緑色および赤色画素が透過し青色画素が遮断している第1の期間、および直射式青色LEDのみがオンであり、青色画素のみが透過している第2の期間が存在する。そのような動作の場合、紫色光は、日中モードにおける発光から除外され得る。標準的な3原色ディスプレイを維持しながら紫色発光と青色発光とを区別するために他の時間変調スキームが適用され得る。これらの事例のいくつかにおいて、発光体および液晶の変調速度は、変調がユーザに不可視であるほど高速である。たとえばLEDおよび液晶は、100ms、50ms、10ms、5ms、2ms、1ms、0.5ms、0.1ms、0.01ms未満の特性時間(中間階調応答速度)で、オンおよびオフ状態の間で切り換わることができる。
【0220】
また他の実施形態において、導波管結合型ディスプレイは、上述したように、4つの色フィルタを有し、4原色システムである。
【0221】
いくつかの実施形態は、画素レベルの局所的色変換を有する。これらは、対応する従来技術の局所変換ディスプレイに対する改善を提供する。いくつかの従来技術ディスプレイは、導波管の表面に画素としてレイアウトされた量子ドットの層を用いる。
【0222】
図26Aは、そのような従来技術ディスプレイ2600を示す。図26Aは、(ディスプレイの表面全体で何回も繰り返され得る)いくつかの色副画素2601を有するディスプレイ2600の断面図を示す。ディスプレイは、青色ポンプLED2603に結合された導波管2602を有する。各画素は、ポンプ光を透過するための液晶2604を有する。いくつかの画素は、波長変換のための赤色または緑色量子ドット(または他の蛍光体)を有し、他の画素は青色透過のためにクリアである。このアプローチのいくつかの欠点は、(1)周囲青色光が量子ドットを励起し、不所望の蛍光発光をもたらすこと(これは特に明るい日光において断言される)、および(2)変換光が両方向に放出され、導波管方向における損失を招くことである。当該技術において既知である、液晶の周囲の偏光子およびディスプレイ背面の反射体を含む他の光学素子は、簡略化のために図26Aから省略される。
【0223】
出願人は、紫色ポンプLEDの使用が、画素レベルの色変換を伴うディスプレイにおいて有利であり、青色フリー発光を可能にし得ることを発見した。したがって、実施形態は、紫色ポンプLEDおよび波長変換材料(たとえば量子ドットなど)を利用する。場合によっては、これらは、紫色光を高度に吸収するが青色光および/またはより長い波長の吸収が低いように構成された(上述したような)紫色選択的材料である。
【0224】
図26Bはそのような実施形態を示す。紫色ポンプLED2613は導波管2612に連結される。画素2611は、光を遮断または透過するための液晶2614を有する。いくつかの画素は、緑色および赤色Qドット2616、2617、および任意選択的に青色Qドット2615を含む量子ドット2615~2616を有する(他の波長変換器が一部または全ての画素に用いられてもよい)。これらの波長変換材料の一部は、紫色選択的材料であってよい。任意選択的に、他のいくつかの画素は、紫色透過を可能にするためにクリアである(すなわちQドットを有さない)。長波長反射フィルタ2618は、導波管とQドットとの間に設けられ得る。このフィルタは、ポンプ光を実質的に透過するが、Qドットからの発光を実質的に反射するように構成され得る。たとえば、フィルタは、ポンプピーク波長において90%(または80%、95%)以上の透過を有し、緑色Qドット(および/または赤色Qドット、青色Qドット)のピーク波長において90%(または80%、95%)以上の反射を有する。このフィルタによって、より多くの変換光が、導波管内で後方散乱して失われるのではなくディスプレイ外へ放出されることが可能である。短波長反射(または吸収)フィルタ2619は、色付き画素の上に設けられ得る。このフィルタは、ポンプ光を実質的に反射/吸収するが、Qドットからの発光を実質的に透過するように構成され得る。たとえば、フィルタは、ポンプピーク波長において最大10%(または20%、5%、2%、1%)の透過を有し、緑色Qドット(および/または赤色Qドット、青色Qドット)のピーク波長において90%(または80%、95%)以上の透過を有する。このフィルタは、周囲光がQドットを励起することを防ぎ、また、他の原色におけるポンプ光の漏洩を軽減することによって変換光のスペクトル純度を高める。このフィルタは、ポンプ波長よりも短い波長における放射、特に、日光に存在しQドットを励起し得る紫外放射(すなわち400nm未満または380nm未満)を遮断してもよい。
【0225】
場合によっては、色フィルタは、一部または全ての副画素と光結合される。たとえば、図26Cのディスプレイ2630において、青色副画素2631は青色フィルタ2632を有し、緑色および赤色副画素についても同様である。各フィルタは、本出願において開示されるように、発光体のスペクトルを更に成形し、色域を制御するように構成されてよい。
【0226】
場合によっては、実施形態は、青色副画素を有さず、紫色、緑色、および赤色副画素のみを有する。そのような場合、ポンプ光と変換光との間にスペクトル重複がないまたはほとんどないため、短波長および長波長反射フィルタを構成することが容易になり得る。
【0227】
図26Aに示すジオメトリに対する変形例が可能である。エアギャップ(すなわちエアスペーサ)または(たとえば1.3または1.2未満の指数などの)低指数層が、反射フィルタと他の素子との間に存在してよい。これは、ダイクロイックフィルタの反射率が角度依存的であり、通常、高指数媒体から得られる光よりも空気から得られる光が多い場合により均一であるため、ダイクロイックフィルタに関して望ましい。Qドットと導波管との間に設けられたエアギャップは、導波管に向かって後方へ放出された変換光の量を制限するためにも役立ち得る。いくつかの層の順序は入れ替えることができる。ジオメトリは平面的である必要はなく、湾曲または可撓性であってよい。
【0228】
図26Dは、青色および紫色ポンプLED2651、2652の両方が導波管2653に結合され、Qドット2654、2655が紫色光および青色光両方を吸収することができるディスプレイ2650の変形例を示す。青色と紫色との間でポンプLEDをトグル切換えすることにより、ディスプレイは、日中モードと青色フリーモードとの間で切り換わる。この場合、短波長反射フィルタ2656は、青色光および紫色光を反射し、長波長反射フィルタ2657は、紫色光および青色光を透過してよい。図26Dにおいて、紫色光および青色光の両方がクリア副画素によって透過され得る。変形例において、青色および紫色クリア副画素が存在する。紫色副画素は、青色光の透過を遮断するための色フィルタを有し、青色副画素は、紫色光の透過を遮断するための色フィルタを有する。図26Dにおいて、青色および紫色ポンプLEDが導波管の両エッジに示されるが、1またはいくつかのエッジに散在するLEDを含む他のレイアウトが可能である。
【0229】
いくつかの実施形態において、紫色光を透過する副画素は、紫色光のごく一部を変換し、主波長を増加するためのシアン緑色蛍光体を更に備える。
【0230】
また他の変形例において、青色および紫色ポンプLEDの両方が導波管に結合されるが、Qドットのみが実質的に紫色光を吸収する。青色光は、日中モードにおいてクリア画素における透過のために用いられるのみである。
【0231】
発光体構成
【0232】
ディスプレイアーキテクチャにかかわらず、発光体は様々な物理的構成およびレイアウトを有してよい。
【0233】
ポンプLEDは、1または複数の波長変換材料(たとえば、シリコンを含むマトリックス/バインダにおける、またはドライフィルムまたはバインダを有するフィルムを含むフィルムにおける蛍光体/量子ドットなど)と光結合され得る。これらの波長変換材料は、ポンプ放射の一部を変換し、ポンプ放射と変換された放射とを結合した発光をもたらすために用いられ得る。
【0234】
場合によっては、実質的に全てのポンプ放射が変換されてよく、たとえば緑色発光体は、ポンプ放射の90%(または95%、98%、99%、99.5%)より多くを吸収および変換するように構成された波長変換材料とポンプLEDとを結合することによって得られてよく、また、ポンプ放射を抑制するために波長選択的フィルタ(染料/色素フィルタ、吸収フィルタ、ダイクロイックフィルタ)が用いられてよく、その結果、大部分が変換された放射から成る発光が生じ、あるいは変換された放射がフィルタされた発光体の合計放射の90%(または95%、98%、99%、99.5%)より多い。
【0235】
波長変換材料は、ポンプLEDと物理的に接し(すなわちポンプLEDに直接堆積され)てよく、あるいはポンプLEDは、空気および/または光学素子および/または導波管内を移動するポンプ放射によって波長変換材料と遠隔結合してよい(たとえば、ポンプLEDは導波管に結合され、導波管は、導波管表面における量子ドット増強フィルムなどのフィルム、または導波管エッジにおける蛍光体バー、または各画素の平面に形成されるか導波管の大面積を覆ってよい波長変換材料の区画を備える)。
【0236】
白色発光を得るために複数の発光体が結合され得る(たとえばRGBスキームにおいて、または実質白色発光体が色付き発光体と結合する)。
【0237】
1つの実施形態において、システムは2セットの発光体を有する。一方のセットは、蛍光体を有するポンプLEDを備える。他方のセットは、蛍光体を有するまたは有さないポンプLEDを備える。
【0238】
1つの実施形態において、システムは、少なくとも3セットの色付き発光体(たとえば紫色、緑色、および青色など)を有する。
【0239】
1つの実施形態において、いくつかの発光体が存在する。発光体による発光は混合され、結合発光となる。この結合発光はその後、色フィルタおよび遮光素子(たとえば液晶など)によって局所的にフィルタされ、画像を形成する。LCDスクリーンは、そのような構成の一例である。
【0240】
1つの実施形態において、いくつかの発光体(たとえば紫色、緑色、および青色など)が存在する。各発光体による発光は、光学素子(たとえばDLPまたは高速適応光学素子など)によって導かれ、画像を形成する。レーザ(またはスーパールミネッセントLED)プロジェクタは、そのような構成の一例である。
【0241】
1つの実施形態において、各画素にいくつかの発光体(たとえば紫色、緑色、および青色など)が存在する。各発光体の強度は、画像を形成するために各画素において変調される。直視型LEDまたはOLEDスクリーンは、そのような構成の一例である。
【0242】
1つの実施形態において、少なくとも1つのポンプLEDは、ポンプ光が伝搬する導波管に連結され、波長変換材料は、導波管を通る伝搬後に励起される。たとえばいくつかの色を有する波長変換材料は、遮光素子(たとえば液晶など)とともに、導波管上の各画素に配置される。たとえばポンプLEDは紫色であり、各画素は緑色蛍光体区画、赤色蛍光体区画、青色蛍光体区画、および(紫色光の直接透過を可能にするための)蛍光体のない区画を有し、各区画は、これをオンまたはオフにするための液晶を有する。
【0243】
本出願は一般にディスプレイシステムに関するが、本出願の教示の一部は、一般照明システムを含む発光システムに幅広く関連する。一部の教示は、青色フリー発光体に加えて、青色光を有する発光体に関連してよい。同様に、上記記載は例示的であり限定的ではないこと、および本発明の主旨から逸脱することなく当業者によって明らかな変更が行われ得ることを理解すべきである。したがって本明細書は、そのような代替例、変更例、および均等物を、以下の特許請求の範囲において定義される本発明の主旨および範囲に含まれ得るものとして包括することが意図されたものである。


図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
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図5
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図7
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図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
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図17B
図17C
図18A
図18B
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