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特許7383376船外機、及び船外機のシャフトの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】船外機、及び船外機のシャフトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/00 20060101AFI20231113BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20231113BHJP
   F16C 3/02 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
B63H20/00 100
F16D1/02 210
F16C3/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018201505
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020066379
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 有希
(72)【発明者】
【氏名】雪嶋 賢司
【合議体】
【審判長】藤井 昇
【審判官】中村 則夫
【審判官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-214162(JP,A)
【文献】特開2006-103554(JP,A)
【文献】特開2016-70378(JP,A)
【文献】特開平5-337736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H20/00,F16D1/02,F16C3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸を含むエンジンと、
前記エンジンを収納するエンジンカウルと、
前記エンジンカウルの下方に配置されたアッパハウジングと、
前記エンジンカウル又は前記アッパハウジング内に配置された第1のスプラインと、
前記アッパハウジングの下方に配置されたロアハウジングと、
前記第1のスプラインと噛み合う第2のスプラインを含み、前記ロアハウジングから上方に延びるシャフトと、
前記エンジンから下方に延びるドライブ軸と、
前記ドライブ軸と交差する方向に延びるプロペラ軸と、
前記ドライブ軸と前記プロペラ軸とに接続され、前記ドライブ軸から前記プロペラ軸に伝達される回転の方向を切り替えるシフト機構と、
を備え、
前記シャフトは、前記シフト機構に接続されており、前記シフト機構を動作させるように構成されており、
前記第2のスプラインは、前記シャフトの外周面に設けられ、
前記第2のスプラインは、前記シャフトの上端に設けられた先端部と、前記先端部の下方に設けられた本体部とを含み、
前記第2のスプラインにおいて、前記先端部における周方向の溝幅は、前記本体部の略全長における周方向の溝幅よりも大きく、
前記先端部における周方向の溝幅と、前記本体部の略全長における周方向の溝幅とは、前記本体部のスプラインのピッチ円上での幅を意味し、前記先端部における周方向の溝幅は、前記本体部のスプラインのピッチ円上での幅の最大値であり、
前記ドライブ軸は、前記クランク軸とスプラインにより嵌合しており、
前記第2のスプラインの嵌合長さは、前記ドライブ軸の前記クランク軸との嵌合長さよりも短く、
前記第2のスプラインは、前記ドライブ軸の上端よりも下方に位置する、
船外機。
【請求項2】
前記先端部における径方向の前記溝の深さは、前記シャフトの前記上端から下方に向かって小さくなる、
請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記第2のスプラインにおいて、前記先端部における周方向の溝幅は、前記本体部における周方向の溝幅よりも10%以上大きい、
請求項1又は2に記載の船外機。
【請求項4】
前記ドライブ軸は、前記アッパハウジング内において継ぎ目なく伸びている、
請求項1から3のいずれかに記載の船外機。
【請求項5】
前記クランク軸は、第3のスプラインを含み、
前記ドライブ軸は、前記第3のスプラインと噛み合う第4のスプラインを含み、
前記ロアハウジングが、前記エンジンカウル及び前記アッパハウジングに組み付けられる時には、前記ロアハウジングから延びている前記ドライブ軸と前記シャフトとのうち、先に前記ドライブ軸の前記第4のスプラインが、前記クランク軸の前記第3のスプラインに噛み合わされた後、前記シャフトの前記第2のスプラインが前記第1のスプラインに噛み合わされる、
請求項1から4のいずれかに記載の船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機、及び船外機のシャフトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機は、例えば特許文献1に示すように、エンジンと、エンジンカウルと、アッパハウジングと、ロアハウジングとを備えている。エンジンカウルは、エンジンを収納する。アッパハウジングは、エンジンカウルの下方に配置される。ロアハウジングは、アッパハウジングの下方に配置される。また、船外機は、シフト軸、或いはドライブ軸などのシャフトを備えている。シャフトは、ロアハウジングから上方に延びている。エンジンカウル又はアッパハウジング内には、第1のスプラインが配置されている。シャフトの上端には第1のスプラインと噛み合う第2のスプラインが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-214162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船外機の組立時に、ロアハウジングをアッパハウジングに取り付けるときがある。ロアハウジングがアッパハウジングから取り外された状態では、シャフトは、ロアハウジングに組み付けられており、ロアハウジングから上方に延びている。作業者は、ロアハウジングを移動させて、シャフトの上端をアッパハウジング内に挿入する。そして、作業者は、第1のスプラインと第2のスプラインと噛み合わせると共に、ロアハウジングをアッパハウジングに取り付ける。
【0005】
しかし、第1のスプラインと第2のスプラインとの位置が合っていない場合には、第2のスプラインを第1のスプラインに噛み合わせ難く、ロアハウジングをアッパハウジングに取り付けることが困難になる。特に、船外機を水平、或いは大きく傾けた状態で、ロアハウジングをアッパハウジングに取り付けるときには、第1のスプラインと第2のスプラインとの位置合わせを事前に行っても、ロアハウジングを傾けたときにシャフトが回転してしまうことがある。その場合、第1のスプラインと第2のスプラインとの位置がズレてしまい、ロアハウジングをアッパハウジングに取り付けることが困難になる。
【0006】
本発明は、船外機において、ロアハウジングのアッパハウジングへの取り付けを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、船外機であって、エンジンと、エンジンカウルと、アッパハウジングと、第1のスプラインと、ロアハウジングと、シャフトとを備える。エンジンカウルは、エンジンを収納する。アッパハウジングは、エンジンカウルの下方に配置される。第1のスプラインは、エンジンカウル又はアッパハウジング内に配置される。ロアハウジングは、アッパハウジングの下方に配置される。シャフトは、第1のスプラインと噛み合う第2のスプラインを含み、ロアハウジングから上方に延びる。第2のスプラインは、先端部と本体部とを含む。先端部は、シャフトの上端に設けられる。本体部は、先端部の下方に設けられる。第2のスプラインにおいて、先端部における周方向の溝幅は、本体部における周方向の溝幅よりも大きい。
【0008】
第2の態様は、船外機であって、エンジンと、エンジンカウルと、アッパハウジングと、第1のスプラインと、ロアハウジングと、シャフトとを備える。エンジンカウルは、エンジンを収納する。アッパハウジングは、エンジンカウルの下方に配置される。第1のスプラインは、エンジンカウル又はアッパハウジング内に配置される。ロアハウジングは、アッパハウジングの下方に配置される。シャフトは、第1のスプラインと噛み合う第2のスプラインを含み、ロアハウジングから上方に延びる。第2のスプラインは、先端部と本体部とを含む。先端部は、シャフトの上端に設けられる。本体部は、先端部の下方に設けられる。第2のスプラインにおいて、先端部における溝の底の径は、本体部における溝の底の径よりも小さい。
【0009】
第3の態様は、船外機のシャフトの製造方法であって、以下の工程を備える。第1の工程は、シャフトの端部から、シャフトの軸線方向に所定の第1範囲を切削することで、スプラインを形成する第1加工を実施することである。第2の工程は、第2加工を実施することである。第2加工では、シャフトの端部から、シャフトの軸線方向に所定の第1範囲よりも小さい所定の第2範囲を、スプラインの周方向の溝幅が第1加工による溝幅よりも大きくなるように切削する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、第1のスプラインと第2のスプラインとの位置がずれていても、先端部において第2のスプラインを第1のスプラインに容易に噛み合わせることができる。それにより、ロアハウジングのアッパハウジングへの取り付けが容易になる。また、第2のスプラインにおいて本体部が第1のスプラインに噛み合った状態では、第1のスプラインと第2のスプラインとの結合のガタツキを小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る船外機の側面図である。
図2】アッパハウジングから取り外されたロアハウジングを示す側面図である。
図3】第2シャフトの上端部を示す側面図である。
図4】第2シャフトの上端部を示す上面図である。
図5図4におけるV-V断面図である。
図6】第2シャフトの製造方法を示す図である。
図7】第2シャフトの製造方法を示す図である。
図8】船外機の組立方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る船外機1の側面図である。図1に示すように、船外機1は、エンジン2と、ドライブ軸3と、プロペラ軸4と、シフト機構5と、エンジンカウル6と、アッパハウジング7と、ロアハウジング8とを含む。なお、以下の説明において、前後左右上下の各方向は、船外機1の前後左右上下の各方向を意味するものとする。
【0013】
エンジン2は、船舶1を推進させる推進力を発生させる。エンジン2は、エンジンカウル6内に配置されている。エンジン2は、クランク軸9を含む。クランク軸9は鉛直方向に延びている。ドライブ軸3は、クランク軸9と別体である。ドライブ軸3は、クランク軸9に接続されている。ドライブ軸3は、エンジン2から下方に延びている。プロペラ軸4は、ドライブ軸3と交差する方向に延びている。プロペラ軸4は、前後方向に延びている。プロペラ軸4は、シフト機構5を介して、ドライブ軸3に接続されている。プロペラ軸4には、プロペラ10が接続される。
【0014】
アッパハウジング7は、エンジンカウル6の下方に配置されている。ロアハウジング8は、アッパハウジング7の下方に配置されている。ロアハウジング8は、アッパハウジング7と別体である。ドライブ軸3は、アッパハウジング7及びロアハウジング8内に配置されている。プロペラ軸4とシフト機構5とは、ロアハウジング8内に配置されている。
【0015】
シフト機構5は、ドライブ軸3からプロペラ軸4へ伝達される動力の回転方向を切り換える。シフト機構5は、複数のギアと、ギアの噛み合いを変更するクラッチとを含む。例えば、シフト機構5は、前進ギア11と後進ギア12とクラッチ13とを含む。前進ギア11と後進ギア12とは、ドライブ軸3に取り付けられたベベルギア14と噛み合っている。クラッチ13は、前進ギア11と後進ギア12とを選択的にプロペラ軸4に係合させる。クラッチ13は、前進位置と後進位置と中立位置とに移動可能に設けられる。
【0016】
クラッチ13は、前進位置において、前進ギア11とプロペラ軸4とを係合させる。それにより、プロペラ軸4を前進方向に回転させるように、ドライブ軸3の回転がプロペラ軸4に伝達される。クラッチ13は、後進位置において、後進ギア12とプロペラ軸4とを係合させる。それにより、プロペラ軸4を後進方向に回転させるように、ドライブ軸3の回転がプロペラ軸4に伝達される。クラッチ13が中立位置では、前進ギア11及び後進ギア12は共にプロペラ軸4に対して解放される。
【0017】
船外機1は、シフト部材17とシフトアクチュエータ18とを含む。シフト部材17は、シフト機構5に接続されており、シフト機構5を動作させるように構成されている。詳細には、シフト部材17は、クラッチ13に接続されている。シフト部材17は、シフトアクチュエータ18によって駆動されることで、クラッチ13を前進位置と後進位置と中立位置とに移動させる。シフト部材17はシャフトであり、シフト部材17が、シフト部材17の軸線周りに所定方向に回転することで、クラッチ13は、前進位置から中立位置を通り後進位置に移動する。シフト部材17が反対方向に回転することで、クラッチ13は、後進位置から中立位置を通り前進位置に移動する。
【0018】
シフトアクチュエータ18は、シフト部材17に接続されており、シフト部材17を駆動する。シフトアクチュエータ18は、例えば電動モータである。シフトアクチュエータ18は、シフト部材17を駆動することで、クラッチ13を前進位置と後進位置と中立位置とに切り換える。シフトアクチュエータ18は、通信線を介して、図示しないシフト操作子に接続されている。シフト操作子は、例えばレバーであり、前進位置と中立位置と後進位置との間で移動可能に設けられる。シフト操作子は、シフト操作子15の位置に応じて、電気信号を出力する。シフトアクチュエータ18は、シフト操作子から電気信号に応じて、シフト部材17を駆動する。なお、シフト部材17は、シフトケーブルを介してシフト操作子に接続されてもよい。シフト操作子の操作に応じたシフトケーブルの押し引きの動作によって、シフト部材17が駆動されてもよい。
【0019】
シフト部材17は、第1シャフト21と第2シャフト22とを含む。第1シャフト21と第2シャフト22とは、互いに別体である。第1シャフト21は、シフトアクチュエータ18に接続されている。第2シャフト22は、シフト機構5に接続されている。第1シャフト21と第2シャフト22とは、スプラインによって互いに連結されている。詳細には、第1シャフト21は、第1のスプライン23を含む。第1のスプライン23は、第1シャフト21の下端部に設けられている。第1シャフト21は、第1シャフト21の下端に設けられた孔を含み、孔の内周面に第1のスプライン23が設けられている。第1のスプライン23は、アッパハウジング7内に配置されている。ただし、第1のスプライン23は、エンジンカウル6内に配置されてもよい。
【0020】
第2シャフト22は、第2のスプライン24を含む。第2のスプライン24は、第2シャフト22の上端部に設けられている。第2のスプライン24は、第2シャフト22の外周面に設けられている。第2シャフト22の上端部は、第1シャフト21の下端部の孔に挿入されている。第1のスプライン23と第2のスプライン24とが噛み合うことで、第1シャフト21と第2シャフト22とは、互いに連結されている。
【0021】
上述したクランク軸9は、第3のスプライン25を含む。第3のスプライン25は、クランク軸9の下端部に設けられている。クランク軸9は、クランク軸9の下端に設けられた孔を含み、孔の内周面に第3のスプライン25が設けられている。第3のスプライン25は、エンジンカウル6内に配置されている。ただし、第3のスプライン25は、アッパハウジング7内に配置されてもよい。
【0022】
ドライブ軸3は、第4のスプライン26を含む。第4のスプライン26は、ドライブ軸3の上端部に設けられている。第4のスプライン26は、ドライブ軸3の外周面に設けられている。ドライブ軸3の上端部は、クランク軸9の下端部の孔に挿入されている。第3のスプライン25と第4のスプライン26とが噛み合うことで、クランク軸9とドライブ軸3とは、互いに連結されている。
【0023】
図2は、アッパハウジング7から取り外されたロアハウジング8を示す側面図である。図2に示すように、ドライブ軸3と第2シャフト22とは、ロアハウジング8の上面から上方に延びている。第2シャフト22の上端は、ドライブ軸3の上端よりも下方に位置している。第2シャフト22の第2のスプライン24は、ドライブ軸3の第4のスプライン26よりも下方に位置している。第2のスプライン24の嵌合長さは、ドライブ軸4の嵌合長さよりも短い。
【0024】
図3は、第2シャフト22の上端部を示す側面図である。図4は、第2シャフト22の上端部を示す上面図である。図5は、図4におけるV-V断面図である。図3に示すように、第2のスプライン24は、先端部31と本体部32とを含む。先端部31は、第2シャフト22の上端に設けられている。本体部32は、先端部31の下方に設けられている。第2シャフト22の軸線方向(A1)において、先端部31は、本体部32よりも短い。先端部31は、第2シャフト22の上端に向かって先細りの形状を有している。
【0025】
図4に示すように、第2のスプライン24において、先端部31における溝33の周方向の幅W1は、本体部32における溝34の周方向の幅W2よりも大きい。好ましくは、第2のスプライン24において、先端部31における溝33の周方向の幅W1は、本体部32における溝34の周方向の幅W2よりも10%以上大きい。より好ましくは、第2のスプライン24において、先端部31における周方向の溝33幅W1は、本体部32における周方向の溝34幅W2よりも25%以上大きい。なお、ここでいう溝33の周方向の幅W1と溝34の周方向の幅W2は、本体部32のスプラインのピッチ円φW上での幅を意味するもので、幅W1についてはその最大値とする。
【0026】
図5に示すように、先端部31における溝33の径方向の深さD1は、第2シャフト22の上端から下方に向かって小さくなる。すなわち、第2のスプライン24において、先端部31における溝33の底の径φ1は、第2シャフト22の上端から下方に向かって大きくなる。第2のスプライン24において、先端部31における溝33の底の径φ1は、本体部32における溝34の底の径φ2よりも小さい。
【0027】
図6及び図7は、第2シャフト22の製造方法を示す図である。まず、図6に示すように、第2シャフト22の端部に第1加工が実施される。第1加工では、第2シャフト22の端部から第2シャフト22の軸線方向(A1)に第1範囲R1をホブ盤によって切削することで、第2シャフト22に第2のスプライン24の本体部32が形成される。詳細には、第2シャフト22を第2シャフト22の軸心A1周りに回転させ、且つ、ホブ盤のホブカッター100をホブカッター100の回転中心C1周りに回転させながら、ホブカッター100を第2シャフト22の軸線方向(A1)に移動させる。
【0028】
第1加工の後、図7に示すように、第2シャフト22の端部に第2加工が実施される。なお、第1加工の前に、第2シャフト22の端部に面取りが施される。
【0029】
第2加工では、第2シャフト22の端部から第2シャフト22の軸線方向(A1)に所定の第2範囲R2をホブ盤によって切削することで、第2シャフト22に第2のスプライン24の先端部31が形成される。所定の第2範囲R2は、第2シャフト22の軸線方向(A1)において、第1範囲R1よりも小さい。
【0030】
詳細には、第1加工と同様に、第2シャフト22を第2シャフト22の軸線周りに回転させ、且つ、ホブ盤のホブカッター100をホブカッター100の回転中心C1周りに回転させながら、ホブカッター100を第2シャフト22の軸線方向(A1)に移動させる。ただし、第2加工でのホブカッター100の回転中心C1’は、第1加工でのホブカッター100の回転中心C1よりも、第2シャフト22の軸心A1に近づけられている。それにより、第2加工で形成されたスプラインの周方向の溝幅が、第1加工で形成されたスプラインの周方向の溝幅よりも大きくなる。また、第2加工で形成されたスプラインの溝の底の径は、第1加工で形成されたスプラインの溝の底の径よりも小さくなる。なお、第2加工で用いられるホブカッター100は、第1加工で用いられるホブカッター100と同じでよい。
【0031】
図8は、船外機1の組立方法を示す図である。図8に示すように、例えば、船外機1の上体1aが水平に倒された状態で、冶具200に支持される。船外機1の上体1aは、エンジンカウル6、アッパハウジング7、クランク軸9、及び第1シャフト21を含む。ロアハウジング8は、ドライブ軸3と第2シャフト22とを含む。ロアハウジング8を船外機1の上体1aに取り付けるときには、まずドライブ軸3がアッパハウジング7内に挿入される。そして、ドライブ軸3の第3のスプライン25が、クランク軸9の第4のスプライン26に噛み合わされる。それにより、ドライブ軸3がクランク軸9に連結される。
【0032】
なお、ドライブ軸3の第3のスプライン25が、クランク軸9の第4のスプライン26に、うまく噛み合わないときには、ドライブ軸3、或いはロアハウジング8の位置を微調整することで、第3のスプライン25を第4のスプライン26に噛み合わせることができる。第3のスプライン25を第4のスプライン26に噛み合わせた後、第2シャフト22の第2のスプライン24が第1シャフト21の第1のスプライン23に噛み合わされる。それにより、第2シャフト22が第1シャフト21に連結される。
【0033】
以上説明した本実施形態に係る船外機1では、第2のスプライン24において、先端部31における溝33の周方向の幅W1は、本体部32における溝34の周方向の幅W2よりも大きい。また、第2のスプライン24において、先端部31における溝33の底の径φ1は、本体部32における溝34の底の径φ2よりも小さい。そのため、第1のスプライン23と第2のスプライン24との位置がずれていても、先端部31において第2のスプライン24を第1のスプライン23に容易に噛み合わせることができる。それにより、ロアハウジング8のアッパハウジング7への取り付けが容易になる。また、第2のスプライン24において本体部32が第1のスプライン23に噛み合った状態では、第1のスプライン23と第2のスプライン24との結合のガタツキを小さく抑えることができる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
上記の実施形態では、第2のスプライン24は、シフト部材17の第2シャフト22に設けられている。しかし、第2のスプライン24は、ドライブ軸3に設けられてもよい。或いは、第2のスプライン24と同様の構造が、シフト部材17の第2シャフト22とドライブ軸3との両方に設けられてもよい。
【0036】
上記の実施形態では、第1加工と第2加工とは共通のホブカッター100で行われている。しかし、第1加工と第2加工とは別のホブカッター100で行われてもよい。或いは、第1加工と第2加工との少なくとも一方が、ホブカッター100以外の切削機械によって行われてもよい。
【0037】
上記の実施順序については、第1加工を実施した後に第2加工が実施される。しかし、第2加工を実施した後、第1加工が実施されてもよい。また、第2加工と第1加工とが連続的に実施されてもよい。
【0038】
船外機1の上体1aへのロアハウジング8の組み付けは、船外機1の上体1aが水平方向に対して傾斜した状態で行われてもよい。或いは、船外機1の上体1aへのロアハウジング8の組み付けは、船外機1の上体1aが鉛直方向に立った状態で行われてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、船外機において、ロアハウジングのアッパハウジングへの取り付けを容易にすることができる。
【符号の説明】
【0040】
2 エンジン
3 ドライブ軸
4 プロペラ軸
5 シフト機構
6 エンジンカウル
7 アッパハウジング
8 ロアハウジング
9 クランク軸
22 第2シャフト
23 第1のスプライン
24 第2のスプライン
25 第3のスプライン
26 第4のスプライン
31 先端部
32 本体部
100 ホブカッター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8