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特許7383385搬送計画生成装置、搬送計画生成システム及び搬送計画生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】搬送計画生成装置、搬送計画生成システム及び搬送計画生成方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/20 20180101AFI20231113BHJP
   G06Q 50/26 20120101ALI20231113BHJP
【FI】
G16H40/20
G06Q50/26
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019044886
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020149215
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山地 圭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 紗佳
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/065113(WO,A1)
【文献】特開2001-325689(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016249(WO,A1)
【文献】特開2018-077750(JP,A)
【文献】特開2017-213951(JP,A)
【文献】特開2018-110304(JP,A)
【文献】特開2004-038881(JP,A)
【文献】特開2019-021179(JP,A)
【文献】特開2017-033108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
要救助者がいる現場の位置および当該要救助者の少なくとも一方に関する要救助者情報を取得する情報取得部と、
病院への受け入れの可否を識別する受入可否情報を含む病院情報を取得する病院情報取得部と、
前記情報取得部により取得された前記要救助者情報と、前記病院情報取得部により取得された前記病院情報とに基づいて、前記要救助者の受入先となる病院を検索する検索部と、
前記検索部により検索された前記病院に対応する搬送計画情報を救急隊に提供する提供部と、を備え、
前記情報取得部は、前記要救助者がいる現場に前記救急隊が到着する前に、前記要救助者情報を取得するアプリケーションを当該現場にいる通報者に提供し、当該アプリケーションを実行させて前記通報者の操作により得られた前記要救助者情報を取得する、
搬送計画生成装置。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記要救助者がいる現場の位置を表す情報を含む前記要救助者情報と、救急隊の位置を表す情報と当該救急隊の現場への移動の可否を識別する情報とを含む救急隊情報とを取得し、現場への移動が可能な救急隊のうち現場に最も近い救急隊に、当該現場への出動を要請する出動要請メッセージを提供する、
請求項1に記載の搬送計画生成装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記要救助者がいる現場の位置を表す情報を含む前記要救助者情報を取得し、
前記病院情報取得部は、前記受入可否情報とともに前記病院の位置を表す情報を含む前記病院情報を取得し、
前記検索部は、前記要救助者情報と前記病院情報とに基づいて、受入可能な病院の中から前記現場に近い病院を検索する、
請求項1または2に記載の搬送計画生成装置。
【請求項4】
前記検索部は、前記受入可能な病院の中から前記現場に最も近い病院を検索し、
前記提供部は、前記検索部により検索された前記病院に対して予約処理を行う、
請求項3に記載の搬送計画生成装置。
【請求項5】
前記検索部は、前記受入可能な病院の中から、前記現場に近い順に複数の病院を検索し、
前記提供部は、前記検索部により検索された前記複数の病院に対応する搬送計画情報を救急隊に提供して、当該救急隊に前記要救助者の受入先となる病院を選択させる、
請求項3に記載の搬送計画生成装置。
【請求項6】
前記提供部は、前記検索部により検索された前記複数の病院に対して仮予約処理を行い、前記救急隊によって前記複数の病院の中から選択された前記受入先となる病院に対して本予約処理を行い、前記救急隊により前記複数の病院の中から選択されなかった病院に対して仮予約の取り消し処理を行う、
請求項5に記載の搬送計画生成装置。
【請求項7】
前記情報取得部は、前記要救助者の状態を識別する情報および前記要救助者の受入先を特定する情報の少なくとも一方を含む前記要救助者情報を取得し、
前記病院情報取得部は、前記受入可否情報とともに前記病院の位置を表す情報を含む前記病院情報を取得し、
前記検索部は、前記要救助者情報と前記病院情報とに基づいて、受入可能な病院の中から、前記要救助者の状態および前記要救助者の受入先の少なくとも一方に対応する病院を検索する、
請求項1または2に記載の搬送計画生成装置。
【請求項8】
前記検索部は、前記受入可能な病院の中から一の病院を検索し、
前記提供部は、前記検索部により検索された前記一の病院に対して予約処理を行う、
請求項7に記載の搬送計画生成装置。
【請求項9】
前記検索部は、前記受入可能な病院の中から、複数の病院を検索し、
前記提供部は、前記検索部により検索された前記複数の病院に対応する搬送計画情報を救急隊に提供して、当該救急隊に前記要救助者の受入先となる病院を選択させる、
請求項7に記載の搬送計画生成装置。
【請求項10】
前記提供部は、前記検索部により検索された前記複数の病院に対して仮予約処理を行い、前記救急隊によって前記複数の病院の中から選択された前記受入先となる病院に対して本予約処理を行い、前記救急隊により前記複数の病院の中から選択されなかった病院に対して仮予約の取り消し処理を行う、
請求項9に記載の搬送計画生成装置。
【請求項11】
前記情報取得部は、前記要救助者が複数いる場合、当該複数の要救助者それぞれについて、前記要救助者の状態を識別する情報を含む前記要救助者情報を取得し、前記複数の要救助者それぞれについて取得された前記要救助者の状態に基づいて、当該複数の要救助者それぞれについて搬送の優先順位を付し、
前記検索部は、前記優先順位に基づいて、受入可能な病院の中から前記受入先となる病院を検索する、
請求項1または2に記載の搬送計画生成装置。
【請求項12】
前記情報取得部は、前記要救助者情報を取得する無人移動体を現場に移動させ、当該現場に到着した前記無人移動体により得られた前記要救助者情報を取得する、
請求項1または2に記載の搬送計画生成装置。
【請求項13】
前記情報取得部は、前記要救助者の撮影画像、生体情報、および当該撮影画像と生体情報との少なくとも一方に基づく診断結果の少なくとも何れかを、前記要救助者の状態を識別する情報を前記要救助者情報として取得する、
請求項12に記載の搬送計画生成装置。
【請求項14】
救急隊端末と、
前記救急隊端末と通信可能な搬送計画生成装置と、を備え、
前記搬送計画生成装置は、要救助者がいる現場の位置および当該要救助者の少なくとも一方に関する要救助者情報を取得する情報取得部と、病院への受け入れの可否を識別する受入可否情報を含む病院情報を取得する病院情報取得部と、前記情報取得部により取得された前記要救助者情報と、前記病院情報取得部により取得された前記病院情報とに基づいて、前記要救助者の受入先となる病院を検索する検索部と、前記検索部により検索された前記病院に対応する搬送計画情報を救急隊に提供する提供部と、を備え、
前記情報取得部は、前記要救助者がいる現場に前記救急隊が到着する前に、前記要救助者情報を取得するアプリケーションを当該現場にいる通報者に提供し、当該アプリケーションを実行させて前記通報者の操作により得られた前記要救助者情報を取得する、
搬送計画生成システム。
【請求項15】
要救助者がいる現場の位置および当該要救助者の少なくとも一方に関する要救助者情報を取得する情報取得工程と、
病院への受け入れの可否を識別する受入可否情報を含む病院情報を取得する病院情報取得工程と、
前記情報取得工程で取得された前記要救助者情報と、前記病院情報取得工程により取得された前記病院情報とに基づいて、前記要救助者の受入先となる病院を検索する検索工程と、
前記検索工程により検索された前記病院に対応する搬送計画情報を救急隊に提供する提供工程と、を有し、
前記情報取得工程は、前記要救助者がいる現場に前記救急隊が到着する前に、前記要救助者情報を取得するアプリケーションを当該現場にいる通報者に提供し、当該アプリケーションを実行させて前記通報者の操作により得られた前記要救助者情報を取得する、
コンピュータが備える各機能が実行する搬送計画生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、搬送計画生成装置、搬送計画生成システム及び搬送計画生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
119番通報を受け付ける通信センターでは、通報者からの通報に応じて、救助を要する者(要救助者)がいる現場への出動を救急隊に要請する。現場に到着した救急隊は、要救助者の症状や容態等を判断してから要救助者の受入先となる病院を探す。しかし、救急隊が現場に到着後、受入先となる病院が決まらない、いわゆるたらい回しがされ、要救助者の搬送の遅れが生じることがある。搬送の遅れは人命にかかわるため対策が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-213951号公報
【文献】国際公開第2013/065113号
【文献】特開2017-210078号公報
【文献】特開2009-075952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、要救助者の搬送の遅れを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る搬送計画生成装置は、要救助者がいる現場の位置および当該要救助者の少なくとも一方に関する要救助者情報を取得する情報取得部と、病院への受け入れの可否を識別する受入可否情報を含む病院情報を取得する病院情報取得部と、前記情報取得部により取得された前記要救助者情報と、前記病院情報取得部により取得された前記病院情報とに基づいて、前記要救助者の受入先となる病院を検索する検索部と、前記検索部により検索された前記病院に対応する搬送計画情報を救急隊に提供する提供部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る搬送計画生成システムの概要を説明するための図である。
図2図2は、図1に示した搬送計画生成システムの構成を示す図である。
図3図3は、図2に示した搬送計画生成装置の構成を示す図である。
図4図4は、図3に示した救急隊情報テーブルの構成を示す図である。
図5図5は、図3に示した病院情報テーブルの構成を示す図である。
図6図6は、図2に示した搬送計画生成装置が実行する出動要請処理の手順を示すフローチャートである。
図7図7は、図6に示した出動要請処理において生成される要救助者情報テーブルの構成を示す図である。
図8図8は、図4に示した救急隊情報テーブルが更新された例を示す図である。
図9図9は、図5に示した病院情報テーブルが更新されるまでの処理の手順を示すフローチャートである。
図10図10は、図2に示した搬送計画生成装置が実行する受入先決定処理の手順を示すフローチャートである。
図11図11は、図10に示した受入先決定処理において生成される要救助者情報テーブルの構成を示す図である。
図12図12は、図10に示した受入先決定処理において生成される病院情報テーブルの構成を示す図である。
図13図13は、図9に示した手順とは異なる手順で病院情報テーブルが更新されるまでの処理を示す図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る搬送計画生成装置が実行する要救助者情報を取得する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら、搬送計画生成装置、搬送計画生成システム及び搬送計画生成方法の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1に示すように、搬送計画生成システム1は、救助を要する者(要救助者)がいる現場への出動を救急隊に要請してから救急隊が到着するまでの間の時間を有効に利用して、この間に要救助者の受入先の病院を決定するシステムである。
【0009】
搬送計画生成システム1は、図2に示すように、消防局の通報センターに設置された搬送計画生成装置100と、救急隊が所有する救急隊端末200と、病院に設置された病院端末300とを備える。
【0010】
搬送計画生成装置100は、要救助者がいる現場からの通報に応じて、現場への出動を要請する救急隊を決定する。例えば、搬送計画生成装置100は、通報者からの通報の際に取得する現場の位置情報に基づいて、待機中の救急隊の中から現場に最も近い救急隊を特定し、特定した救急隊に現場への出動を要請する。なお、ここでいう「近い」とは距離的な要素以外に時間的な要素を含んでもよい。つまり、直線距離で近いという概念のほか、道路交通的に近い(時間的に早い)という概念を含む。また、図2においては、要救助者と通報者とが異なる場合の例が示されているが、要救助者と通報者とは同一人物でもよい。また、要救助者の居場所は、屋内、屋外のいずれでもよい。
【0011】
また、搬送計画生成装置100は、要救助者の受入先となる病院を決定し、決定した病院を救急隊に提供する。例えば、搬送計画生成装置100は、要救助者を受入可能な病院の中から、現場に最も近い病院を受入先として特定する。なお、ここでいう「近い」とは距離的な要素以外に時間的な要素を含んでもよい。つまり、直線距離で近いという概念のほか、道路交通的に近い(時間的に早い)という概念を含む。搬送計画生成装置100は、特定した病院を救急隊に通知するとともに、特定した病院に要救助者が搬送される旨の連絡を行うことにより受入先の病院を予約する。
【0012】
図3を参照して、搬送計画生成装置100の構成を説明する。搬送計画生成装置100は、入力インタフェース110と、ディスプレイ120と、通信インタフェース130と、記憶回路140と、処理回路150とを有する。
【0013】
入力インタフェース110は、マウス、キーボード等の入力装置から構成される。入力インタフェース110は、操作者の各種操作を受け付け、操作者の操作に対応する電気信号を処理回路150に供給する。
【0014】
ディスプレイ120は、有機EL(OEL:Organic Electro-Luminescence)ディスプレイや液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等の表示装置から構成される。ディスプレイ120は、処理回路150の制御のもと、各種画像データを表示する。
【0015】
通信インタフェース130は、NIC(Network Interface Card)等の通信装置から構成される。通信インタフェース130は、処理回路150の制御のもと、救急隊端末200、病院端末300、携帯端末400と通信を行う。
【0016】
記憶回路140は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置から構成される。また、記憶回路140には、救急隊情報テーブル141、病院情報テーブル142、および制御プログラム143が記憶されている。
【0017】
救急隊情報テーブル141は、救急隊のリストを有する。例えば、消防署が市内に1つある場合、市内および隣接市内で構成される救急隊のリストが管理される。
【0018】
図4に示すように、救急隊情報テーブル141は、救急隊毎に、救急隊識別情報、通信先情報、現在位置情報、状況情報等を有する。
【0019】
救急隊識別情報は、救急隊を一意に識別する固有の情報である。図4に示した「E1」~「En」は、救急隊の固有IDである。救急隊識別情報は、搬送計画生成装置100と救急隊端末200との間で行われる通信に基づいて更新される。
【0020】
通信先情報は、救急隊端末200と通信を行うための情報であり、例えば、IP(Internet Protocol)アドレスやMAC(Media Access Control)アドレス等が挙げられる。図4に示した「E1A」~「EnA」は、それぞれ、救急隊端末200と通信を行うための通信先情報である。通信先情報は、搬送計画生成装置100と救急隊端末200との間で行われる通信に基づいて更新される。
【0021】
現在位置情報は、救急隊端末200の現在位置を表す情報であり、例えば、救急隊端末200に備えられたGPS(Global Positioning System)、Wi-Fi(Wireless Fidelity)機能等により取得される。図4に示した「E1L」~「EnL」は、それぞれ、救急隊端末200の現在位置を表す。現在位置情報は、搬送計画生成装置100と救急隊端末200との間で行われる通信に基づいて更新される。
【0022】
状況情報は、救急隊の状況を表す情報であり、「待機中」、「現場移動中」、「現場」、「病院移動中」等が挙げられる。状況情報は、例えば、救急隊端末200を使用する救急隊の操作によって変更される。状況情報は、搬送計画生成装置100と救急隊端末200との間で行われる通信に基づいて更新される。
【0023】
図3に示した病院情報テーブル142は、病院のリストを有する。例えば、消防署が市内に1つある場合、市内および隣接市内に設けられた病院のリストが管理される。
【0024】
図5に示すように、病院情報テーブル142は、病院毎に、病院識別情報、通信先情報、残り受入可能情報、位置情報、管轄エリア情報、診療科情報等を有する。
【0025】
病院識別情報は、病院を一意に識別する固有の情報である。図5に示した「H1」~「Hm」は、それぞれ、病院の固有IDである。病院識別情報は、搬送計画生成装置100と病院端末300との間で行われる通信に基づいて更新される。
【0026】
通信先情報は、病院端末300と通信を行うための情報であり、例えば、IPアドレスやMACアドレス等が挙げられる。図5に示した「H1」~「Hm」は、それぞれ、病院端末300と通信を行うための通信先を表す。通信先情報は、搬送計画生成装置100と病院端末300との間で行われる通信に基づいて更新される。
【0027】
残り受入可能情報は、病院が受入可能な患者の残り人数や残りリソースを表す情報である。残り受入可能情報は、搬送計画生成装置100と病院端末300との間で行われる通信に基づいて更新される。例えば、図4に示した「8人(10%)」は、病院「H1」が受入可能な患者の残り人数や残りリソースを表す。
【0028】
位置情報は、病院の位置を表す情報であり、例えば、住所が挙げられる。図5に示した「H1L」~「HmL」は、それぞれ、病院の住所を表す。位置情報は、搬送計画生成装置100と病院端末300との間で行われる通信に基づいて更新される。
【0029】
管轄エリア情報は、消防署が管轄するエリアを表す情報である。例えば、病院「H1」、「H2」、「Hm」は管轄エリア「HJ12」に属し、病院「H3」、「H4」は管轄エリア「HJ34」に属している。
【0030】
診療科情報は、病院の診療科目を表す情報である。診療科目としては、内科、外科、整形外科、放射線科、産婦人科等が挙げられる。
【0031】
図3に示した制御プログラム143は、処理回路150により実行されるプログラムである。
【0032】
処理回路150は、搬送計画生成装置100の各構成を制御することにより、搬送計画生成装置100を全体的に制御する。処理回路150は、記憶回路140に記憶された制御プログラム143を実行することにより、情報取得機能151、病院情報取得機能152、検索機能153、提供機能154として機能する。なお、処理回路150は、複数の独立したプロセッサを構成してもよく、各プロセッサにより制御プログラム143が実行されることにより、情報取得機能151、病院情報取得機能152、検索機能153、提供機能154が実現されてもよい。
【0033】
なお、「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable GateArray:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成してもよい。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、各実施形態のプロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0034】
以上のように構成された搬送計画生成装置100が行う処理動作を説明する。搬送計画生成装置100が行う処理は、要救助者がいる現場への出動を要請する救急隊を決定する出動要請処理と、出動を要請した救急隊に要救助者の受入先の病院を提供する受入先決定処理とに、大きく分けられる。
【0035】
図6を参照して出動要請処理を説明する。例えば、要救助者に何等かの発作がおきた場合、要救助者は、携帯端末400を用いて通報センターの搬送計画生成装置100に通報する(ステップS101)。
【0036】
搬送計画生成装置100の情報取得機能151は、要救助者情報を取得する(ステップS102)。要救助者情報は、現場の住所(位置)、通報者の氏名、連絡先、通報時刻等を有する。具体的には、情報取得機能151は、通報センターのオペレータと通報者との会話から、現場の住所(位置)、通報者の氏名、連絡先等を音声認識により抽出して取得する。また、情報取得機能151は、通報センターに通報があった時刻(通報時刻)を取得する。なお、現場の住所は、オペレータと通報者との会話から抽出する代わりに、携帯端末400の発信位置を表す情報(基地局情報)を基に取得されてもよい。
【0037】
情報取得機能151は、ステップS102で取得した要救助者情報を通報IDと対応付けて要救助者情報テーブル144を生成する(ステップS103)。情報取得機能151は、例えば図7に示すように、通報ID「1405」、現場の位置「○○県○○市○○丁目○○番○○マンション○○号」、通報者氏名「甲」、通報者連絡先「090-****-****」、通報時刻「16:00」等を有する要救助者情報テーブル144を生成する。
【0038】
ステップS104において、情報取得機能151は、要救助者情報テーブル144と、記憶回路140に記憶された救急隊情報テーブル141とに基づいて、待機中の救急隊の中から現場に最も近い救急隊を特定する。具体的には、図4に示した救急隊情報テーブル141に含まれる救急隊のうち状況情報が「待機中」で、要救助者情報テーブル144に示された現場に最も近い救急隊「E4」を特定する。なお、ここでいう「近い」とは、直線距離で近いという概念のほか、道路交通的に近い(時間的に早い)という概念を含む。情報取得機能151は、予め設定またはユーザによって選択された検索方法に従って、距離的に最も近い救急隊または道路交通的に最も近い(時間的に早い)救急隊を特定する。情報取得機能151は、特定した救急隊「E4」の通信先「E4A」に、現場への出動を要請するメッセージ(以下、出動要請メッセージと記載する)を送信する。出動要請メッセージには、要救助者情報テーブル144に含まれた要救助者情報が含まれる。この場合、救急隊「E4」の救急隊端末200には出動要請メッセージが受信され、救急隊「E4」は、要救助者情報に含まれる現場の位置(ここでは「○○県○○市○○丁目○○番○○マンション○○号」)を参照して、現場への移動を開始する。
【0039】
なお、このとき、救急隊「E4」は、救急隊端末200を用いて、自己の救急隊情報に含まれる状態情報を「待機中」から「現場移動中」に変更するとともに、現在位置情報を変更し、変更後の救急隊情報を搬送計画生成装置100に送信する。そして、変更後の救急隊情報を受信した搬送計画生成装置100の情報取得機能151は、図8に示すように、救急隊情報テーブル141を更新する。
以上により出動要請処理が終了する。
【0040】
つづいて、受入先決定処理を説明する。搬送計画生成装置100の病院情報取得機能152は、病院端末300との間で行われる通信に基づいて、病院情報テーブル142を更新する。例えば、図9に示すように、複数の病院(「H1」~「Hm」)それぞれに対応する病院端末300は、自己の残り受入可能情報を含む病院情報を搬送計画生成装置100に送信する(ステップS201)。病院情報取得機能152は、複数の病院端末300からそれぞれ送信された病院情報を受信し、病院情報テーブル142を更新する(ステップS202)。なお、病院端末30との間で行われる通信は、定期的に、または、病院端末300において病院情報が変更されたタイミングの何れでもよい。これにより、搬送計画生成装置100は、病院の残り受入可能情報が管理される。
【0041】
搬送計画生成装置100の検索機能153は、図10に示すように、要救助者情報テーブル144と、記憶回路140に記憶された病院情報テーブル142とに基づいて、要救助者の受入先の病院を決定する(ステップS301)。具体的には、図5に示した病院情報テーブル142に含まれる残り受入可能情報および位置情報を参照し、受け入れが可能で、要救助者情報テーブル144に示された現場の位置に最も近い病院を検索する。例えば、病院「H4」の位置情報「H4L」が現場の位置に最も近く、現時点で受入可能であれば(1人受入可能)、当該病院「H4」が受入先に決定される。なお、ここでいう「近い」とは、直線距離で近いという概念のほか、道路交通的に近い(時間的に早い)という概念を含む。情報取得機能151は、予め設定またはユーザによって選択された検索方法に従って、距離的に最も近い病院または道路交通的に最も近い(時間的に早い)病院を特定する。
【0042】
提供機能154は、出動要請処理において生成された要救助者テーブル144に、ステップS301で決定された病院(ここでは「H4」)の病院情報を含ませることにより搬送計画情報を生成する(ステップS302)。この場合、図7に示した要救助者テーブル144は図11に示すように更新される。
【0043】
そして、提供機能154は、出動要請処理において現場への出動を要請した救急隊に、生成した搬送計画情報を送信することにより、決定された受入先の病院を通知する(ステップS303)。具体的には、提供機能154は、出動要請処理で特定した救急隊「E4」の通信先「E4A」に、要救助者の受入先の病院「H4」を通知するメッセージ(以下、受入先予約メッセージと記載する)を送信する。受入先予約メッセージには、搬送計画情報が含まれる。この場合、救急隊「E4」の救急隊端末200には、受入先予約メッセージが受信され、救急隊「E4」は、受入先の病院「H4」の情報を参照できる。
【0044】
また、提供機能154は、決定した病院「H4」の病院端末300と通信を行い、救急隊「E4」の救急隊情報を含む予約メッセージを病院端末300に送信する。病院端末300は、予約メッセージを受信すると、当該予約メッセージに含まれる救急隊情報を基に予約処理を行う。これにより、病院「H4」は、救急隊「E4」の救急隊情報を参照でき、これから到着する救急隊「E4」の情報を知ることができる。なお、この予約処理が正常に行われた場合(予約できた場合)、病院「H4」における残り受入可能情報は変更される(1人分減少する)。また、この場合、図5に示した病院情報テーブル142も図12に示すように更新される。
【0045】
また、病院「H4」の病院端末300は、予約完了メッセージを搬送計画生成装置100に送信してもよい。この場合、搬送計画生成装置100の提供機能154は、救急隊「E4」の救急隊端末200に、病院「H4」で受入の予約が完了したメッセージを送信する。この場合、救急隊「E4」の救急隊端末200には、予約完了メッセージが受信され、予約が完了したことを確認できる。なお、提供機能154は、当該予約完了メッセージが受信された後に上記搬送計画情報を救急隊端末200に通知してもよい。
以上により受入先決定処理が終了する。
【0046】
以上、第1の実施形態によれば、通報者からの通報によって取得される現場の位置を基に、当該現場の近くにいる救急隊に出動を要請し、当該現場の近くで受入可能な病院の情報を救急隊に提供できる。現場に救急隊が到着するまでの間に、要救助者の受入先である病院を決定、予約できるので、要救助者のたらい回しを防ぎ、要救助者の搬送の遅れを防止できる。
【0047】
なお、上記実施形態では、搬送計画生成装置100が病院端末300との間で通信を行うことにより、病院の予約をとる例を説明したが、搬送計画生成装置100から搬送計画情報を受信した救急端末200が病院端末300との間で通信を行うことにより、病院の予約をとるようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、搬送計画生成装置100の検索機能153は、現場の位置と、病院情報テーブル142に記録された病院の位置(住所)とを考慮して、要救助者の受け入れが可能な病院を検索しているが、これに限定されない。例えば、検索機能153は、更に、病院情報テーブル142に記録された管轄エリアを考慮して、要救助者の受け入れが可能な病院を検索してもよい。
【0049】
(第1の変形例)
第1の実施形態において、搬送計画生成装置100の検索機能153は、受入可能な病院のうち現場に最も近い病院「H4」を受入先の病院として決定したが、これに限定されない。例えば、搬送計画生成装置100の検索機能153は、図13に示すように、受入可能な病院のうち現場に近い所定数の病院を問い合わせて(ステップS211)、病院情報を受信することによって(ステップS212)、所定数の病院を受入先の候補として検索し、これを救急端末200に提供することにより、救急隊に受入先の病院を選択させてもよい。
【0050】
具体的には、搬送計画生成装置100の検索機能153は、図5に示した病院情報テーブル142に含まれる残り受入可能情報および位置情報を参照し、受入可能で、要救助者情報テーブル144に示された現場の位置に近い所定数(例えば3つ)の病院を検索する。
【0051】
そして、例えば、現場の位置に近い順に、病院「H4」、「H3」、「H2」が検索機能153により特定された場合(ステップS301)、提供機能154は、出動要請処理において生成された要救助者テーブル144に、病院「H4」、「H3」、「H2」の病院情報を含ませることにより搬送計画情報を生成する(ステップS302)。
【0052】
提供機能154は、現場への出動を要請した救急隊(例えば「E4」)の救急端末20に、生成した搬送計画情報を送信することにより、受入先の「候補」(仮予約メッセージ)を通知する(ステップS303)。搬送計画情報には、受入先の候補の病院「H4」、「H3」、「H2」が含まれ、救急端末20には当該候補の病院が表示される。
【0053】
また、提供機能154は、受入先の「候補」として通知された病院「H4」、「H3」、「H2」の各病院端末300と通信を行い、救急隊「E4」の救急隊情報を含む仮予約メッセージを送信する。各病院端末300は、仮予約メッセージを受信すると、当該仮予約メッセージに含まれる救急隊情報を基に仮予約処理を行う。なお、この仮予約処理が正常に行われた場合(仮予約できた場合)、病院「H4」、「H3」、「H2」における残り受入可能情報は変更される(1人分減少する)。また、この場合、図5に示した病院情報テーブル142も同様に更新される。
【0054】
一方、救急隊「E4」は、救急隊端末200に表示された受入先の候補の中から受入先の病院(例えば「H4」)を選択して決定する。この決定がされた場合、搬送計画情報に含まれた病院の候補(「H4」、「H3」、「H2」)から、選択されなかった病院(「H3」、「H2」)を除外して搬送計画情報を更新する。
【0055】
また、救急端末200は、受入先の病院を決定した旨を通知する本予約メッセージを搬送計画生成装置100に送信する。搬送計画生成装置100の提供機能154は、救急端末200から受信した本予約メッセージを基に、要救助者テーブル144を更新する。また、救急端末200は、本予約メッセージを基に、仮予約処理した各病院端末300との間で通信を行い、本予約処理を行う。
【0056】
例えば、提供機能154は、救急隊「E4」により決定された病院「H4」の病院端末300に、救急隊「E4」の救急隊情報を含む本予約メッセージを送信する。本予約メッセージを受信した病院端末300は、当該本予約メッセージに含まれる救急隊情報を基に本予約処理を行う。これにより、病院「H4」は、救急隊「E4」の救急隊情報を参照でき、これから到着する救急隊「E4」の情報を知ることができる。
【0057】
一方、提供機能154は、救急隊「E4」により選択されなかった病院「H3」、「H2」の病院端末300に仮予約取り消しメッセージを送信する。仮予約取り消しメッセージを受信した病院端末300は、先の仮予約処理により変更した残り受入可能情報を元の状態に戻す(1人分増加する)。これにより、仮予約の取り消し処理が行われる。
【0058】
このように、受入可能な病院のうち現場に近い所定数の病院を受入先の候補として救急端末200に提供し、救急隊に受入先の病院を選択させてもよい。なお、上記変形例では、病院端末200が、選択した受入先の病院を搬送計画生成装置100に通知することで受入先の病院の本予約処理および仮予約の取り消し処理を行う例を説明したが、病院端末200が受入れ先の候補として通知された各病院の病院端末300と通信を行うことにより、上記本予約処理および仮予約の取り消しを行ってもよい。
【0059】
(第2の変形例)
第1の実施形態においては、病院情報テーブル142に含まれる残り受入可能情報を基に、要救助者を受入可能な病院を特定する例を説明したが、これに限定されない。搬送計画生成装置100の病院情報取得機能152は、情報取得機能151が要救助者情報を取得したときに、現場に近い病院の病院端末300から順に、要救助者の受入可否を問い合わせてもよい。
【0060】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、要救助者がいる現場の位置を基に要救助者の受入先の病院を決定する例を説明したが、第2の実施形態では、要救助者の状態(症状や容態等)を識別する情報および要救助者の受入先を特定する情報(通院している病院名・診療科(かかりつけの病院・診療科)、持病、既往歴等)の少なくとも一方を基に、要救助者の受入先として適切な病院を決定する例を説明する。
【0061】
具体的には、搬送計画生成装置100の情報取得機能151は、現場に最も近い救急隊に、現場への出動を要請するメッセージ(出動要請メッセージ)を送信した後、図14に示すように、先に取得した通報者の連絡先である携帯端末400に、要救助者情報取得用のアプリケーションのダウンロード先を示す情報(URL等)を、要救助者情報テーブル144に含まれる通報ID(図7に示した「1405」)とともに通知し、当該アプリケーションのダウンロードを要求する(ステップS401)。要救助者情報取得用のアプリケーションは、例えば、要救助者の状態を識別する情報(症状や容態等)を取得するプログラムや、要救助者の受入先を特定する情報(通院している病院名・診療科(かかりつけの病院・診療科)、持病、既往歴等)を記入するためのフォーマットデータ等が含まれる。
【0062】
通報者は、携帯端末400を操作して、要救助者情報取得用のアプリケーションをダウンロードする(ステップS402)。また、通報者は、携帯端末400にダウンロードしたアプリケーションを実行し、要救助者情報を取得する(ステップS403)。
【0063】
例えば、実行されるアプリケーションに含まれるプログラムに基づいて、通報者は、携帯端末400によって要救助者を撮影する。なお、撮影画像は動画、静止画のどちらでもよい。また、携帯端末400は、撮影画像に加えて、または撮影画像の代わりに、要救助者の脈拍、血圧、体温等の生体情報を取得してもよい。さらに、携帯端末400は、要救助者の撮影画像や生体情報を基に要救助者の診断を行い、その結果を出力する。このように取得された撮影画像、生体情報および診断結果は、要救助者の状態を識別する情報であり、これも要救助者情報として使用される。
【0064】
また、例えば、実行されるアプリケーションに含まれるフォーマットデータに基づいて、通報者は、携帯端末400を用いて、要救助者が通院している病院・診療科、持病・既往歴等を記入する操作を行う。これらの情報は、要救助者の受入先を識別する情報であり、これも要救助者情報として使用される。
【0065】
携帯端末400は、このように取得された要救助者情報を、上記アプリケーションとともに通知された通報ID(図7に示した「1405」)と合わせて搬送計画生成装置100に送信する(ステップS404)。
【0066】
搬送計画生成装置100の情報取得機能151は、携帯端末400から要救助者情報を受信し(ステップS405)、当該要救助者情報を要救助者情報テーブル144に含ませることにより、要救助者情報テーブル144を更新する(ステップS406)。その他、情報取得機能151は、通報センターのオペレータと通報者との会話から音声認識により抽出される、要救助者の状態(症状や容態等)や要救助者の受入先を識別する情報を要救助者情報として、要救助者情報テーブル144に含ませてもよい。
【0067】
そして、受入先決定処理においては、搬送計画生成装置100の検索機能153は、上記処理により更新された要救助者情報テーブル144と、記憶回路140に記憶された病院情報テーブル142とに基づいて、要救助者の受入先の病院を決定する。例えば、検索機能153は、要救助者の状態(症状や容態)に対応する診療科を有する病院を、病院情報テーブル142から検索し、該当した病院の残り受入可能情報を参照することにより受入可能な病院を受入先として決定する。また、検索機能153は、携帯端末400から通知された要救助者の受入先に対応する病院を、病院情報テーブル142から検索し、該当した病院の残り受入可能情報を参照することにより受入可能な病院を受入先として決定する。
【0068】
その後は、第1の実施形態と同様に、提供機能154は、搬送計画情報を生成して要救助者テーブル144を更新する。また、提供機能154は、現場への出動を要請した救急隊に、生成した搬送計画情報を送信することにより、決定された受入先の病院を通知する。なお、提供機能154は、携帯端末400から通知された要救助者の状態を識別する情報(要救助者の撮影画像、生体情報)を搬送計画情報に含ませてもよい。これにより、救急隊は、現場に到着する前に要救助者の状態を確認、把握でき、現場に到着してからの要救助者への処置を効率よく行うことができる。
【0069】
さらに、提供機能154は、決定した病院の病院端末300と通信を行い、現場への出動を要請した救急隊の救急隊情報を含む予約メッセージを病院端末300に送信する。病院端末300は、予約メッセージを受信すると、当該予約メッセージに含まれる救急隊情報を基に予約処理を行う。これにより、受入先として決定された病院は、救急隊の救急隊情報を参照でき、これから病院に到着する救急隊を知ることができる。なお、この予約処理が正常に行われた場合(予約できた場合)、病院における残り受入可能情報は変更される(1人分減少する)。また、この場合、図5に示した病院情報テーブル142も図12に示すように更新される。
【0070】
以上、第2の実施形態によれば、現場に救急隊が到着するまでの間に、要救助者の状態を識別する情報や、要救助者の受入先を特定する情報を取得し、当該取得した情報を基に、要救助者の受入先として適切な病院を決定、予約できる。これにより、要救助者のたらい回しを防ぎ、要救助者の搬送の遅れを防止できる。
【0071】
なお、上記実施形態の通報時において携帯端末400にアプリケーションが既にダウンロードされている場合は、上記実施形態で説明したアプリケーションをダウンロードする処理を省略してもよい。この場合、携帯端末400は、通報時に通報者の操作に従ってアプリケーションを実行して、要救助者の状態を識別する情報や、要救助者の受入先を特定する情報を取得し、取得した情報と、現場の住所(位置)、通報者の氏名、連絡先、通報時刻等とを要救助者情報として搬送計画生成装置100に送信する。
【0072】
また、上記実施形態では、要救助者の受入先となる病院を決定するために、要救助者の状態を識別する情報や要救助者の受入先を特定する情報を取得したが、要救助者の受入先を決定し、救急隊に出動要請メッセージを送信した後に、要救助者の状態を識別する情報や要救助者の受入先を特定する情報を取得してもよい。この場合、提供機能154は、取得した情報を追加の搬送計画情報として、現場に移動中の救急隊に送信する。これにより、救急隊は、現場に到着する前に要救助者の状態を確認、把握でき、現場に到着してからの要救助者への処置を効率よく行うことができる。
【0073】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、要救助者が1人の場合を説明したが、第3の実施形態では、要救助者が複数人(例えば3人)いて、それぞれの要救助者の状態(症状や容態等)が異なる場合の例を説明する。
【0074】
図6に示した出動要請処理において、搬送計画生成装置100の情報取得機能151は、要救助者情報を取得する(ステップS102)。例えば、情報取得機能151は、現場の住所(位置)、通報者の氏名、連絡先、通報時刻等を要救助者情報として取得する。情報取得機能151は、通報センターのオペレータと通報者との会話内容や、携帯端末400との間で行われる通信に基づいて取得する。具体的には、情報取得機能151は、通報センターのオペレータと通報者との会話の中から、現場の住所(位置)、通報者の氏名、連絡先等を音声認識により抽出して取得する。また、情報取得機能151は、通報センターに通報があった時刻(通報時刻)を取得する。なお、現場の住所は、オペレータと通報者との会話の中から抽出する代わりに、携帯端末400の発信位置を表す情報(基地局情報)を基に取得されてもよい。
【0075】
また、情報取得機能151は、第2の実施形態で説明した要救助者情報取得用のアプリケーションを実行することにより、複数の要救助者それぞれについて、要救助者の状態を識別する情報(症状や容態等)を取得する。例えば、通報者は、携帯端末400の内蔵のカメラによって、複数の要救助者それぞれを撮影し、各撮影画像を取得する。また、撮影画像に加えて、または撮影画像の代わりに、各要救助者の脈拍、血圧、体温等の生体情報を取得してもよい。さらに、携帯端末400は、要救助者の撮影画像や生体情報を基に要救助者の診断を行い、その結果を出力してもよい。このように複数の要救助者それぞれについて取得された撮影画像、生体情報および診断結果は、要救助者の状態を識別する情報であり、これも要救助者情報として使用される。なお、情報取得機能151は、通報センターのオペレータと通報者との会話の中から抽出される、要救助者の状態(症状や容態等)を要救助者情報として使用してもよい。
【0076】
また、情報取得機能151は、それぞれの要救助者の状態を識別する情報に基づいて、各要救助者について搬送の優先順位を付し、これを要救助者情報として使用してもよい。例えば、要救助者が3人いた場合、それぞれの要救助者の状態(症状や容態)を定量的に識別し、状態が悪い要救助者から順に付される優先順位(1位~3位)を要救助者情報として使用してもよい。
【0077】
そして、情報取得機能151は、取得した要救助者情報を通報IDと対応付けて要救助者情報テーブル144を生成する(ステップS103)。
【0078】
受入先決定処理においては、搬送計画生成装置100の検索機能153は、上記処理により生成された要救助者情報テーブル144と、記憶回路140に記憶された病院情報テーブル142とに基づいて、要救助者の受入先の病院を決定する。例えば、検索機能153は、要救助者情報テーブル144に含まれる優先順位に従って、状態が悪い要救助者から順に、受入先となる病院を決定、予約する。なお、各要救助者の受入先となる病院の決定、予約は、第1または第2の実施形態で説明した処理を行えばよい。
【0079】
ここで、要救助者が複数人の場合、受入先となる病院が要救助者間で異なると搬送効率が悪くなる。よって、検索機能153は、ステップS301において要救助者の受入先の病院を決定する際は、全ての要救助者(ここでは3人)を受け入れ可能な病院を優先的に選択した方がよい。
【0080】
そして、検索機能153は、全ての要救助者を受入可能な病院がないと判別した場合、予約完了していない要救助者について受入可能な他の病院の検索を行う。さらに、この場合、現場に移動している救急隊以外に、待機中となっている救急隊を追加で要請してもよい。この場合は、第1の実施形態で説明したように、情報取得機能151は、要救助者情報テーブル144と、記憶回路140に記憶された救急隊情報テーブル141とに基づいて、待機中の救急隊の中から現場に最も近い救急隊を特定し、特定した救急隊の救急隊端末200に出動要請メッセージを送信する。
【0081】
その後は、第1の実施形態と同様、提供機能154は、搬送計画情報を生成して要救助者テーブル144を更新する。また、提供機能154は、現場への出動を要請した救急隊に、各要救助者の搬送計画情報を送信することにより、決定された受入先となる病院を通知する。なお、提供機能154は、携帯端末400から通知された各要救助者の状態を識別する情報(要救助者の撮影画像、生体情報)および優先順位を搬送計画情報に含ませてもよい。これにより、救急隊は、現場に到着する前に複数の要救助者それぞれの状態を確認、把握できるので、現場に到着してからの要救助者への処置を効率よく行うとともに、要救助者の取り違えミスを防ぐことができる。さらに、複数の要救助者がいる場合でも、優先順位を参照することにより、どの要救助者から処置していくべきかの判断がしやすい。
【0082】
以上、第3の実施形態によれば、要救助者が複数人の場合でも、現場に救急隊が到着するまでの間に取得される要救助者の状態を識別する情報に基づいて、搬送の優先順位を付すことができ、当該優先順位に基づいて、要救助者の受入先となる病院を決定、予約できる。また、搬送計画情報には、複数の要救助者のそれぞれの状態を識別する情報(要救助者の撮影画像、生体情報)が含まれるので、現場に到着してからの要救助者への処置を効率よく行うとともに、要救助者の取り違えミスを防ぐことができる。これにより、要救助者のたらい回しを防ぎ、要救助者の搬送の遅れを防止できる。
【0083】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第2および第3の実施形態で説明した要救助者情報取得用のアプリケーションの代わりに、ドローン等の無人移動体を使用し、現場に救急隊が到着するまでの間に、無人移動体によって現場にいる要救助者の状態を識別する情報を取得する例を説明する。
【0084】
第1の実施形態で説明したように、図6に示した出動要請処理において、搬送計画生成装置100の情報取得機能151は、待機中の救急隊の中から現場に最も近い救急隊を特定し、特定した救急隊の救急隊端末200に出動要請メッセージを送信する。このとき、情報取得機能151は、無人移動体にも現場の住所を設定し、当該無人移動体を現場に向けて移動させる。また、情報取得機能151は、要救助者情報テーブル144に含まれる通報ID(図7に示した「1405」)を無人移動体に設定する。
【0085】
無人移動体は、現場に到着すると、要救助者の状態(症状や容態)を識別する情報を取得する。ここで、無人移動体には、当該情報を取得する構成として、画像を撮影する撮影部(カメラ)、脈拍、血圧、体温等の生体情報を測定する生体情報測定部、要救助者の撮影画像や生体情報を基に要救助者の診断を行い、その結果を出力する診断支援部が備えられている。撮影部により取得された撮影画像、生体情報測定部により取得された生体情報、および診断支援部により取得された診断結果は、それぞれ要救助者の状態を識別する情報であり、要救助者情報として使用される。無人移動体は、このように取得された要救助者情報を、設定された通報ID(図7に示した「1405」)と合わせて搬送計画生成装置100に送信する(ステップS404)。
【0086】
搬送計画生成装置100の情報取得機能151は、無人移動体から受信された要救助者情報を基に要救助者情報テーブル144を更新する。その後は、第2の実施形態で説明したように、検索機能153は、要救助者の受入先の病院を決定し、提供機能154は、現場への出動を要請した救急隊に受入先の病院を通知する。
【0087】
その他、無人移動体には、例えば、救急物資や表示装置等をさらに備えてもよい。救急物資としては、AED(Automated External Defibrillator)や救急箱などが挙げられる。AEDは、心肺停止の可能性がある要救助者に対して使用される。救急箱には、応急処置を行うための包袋やガーゼなどが入れられている。表示装置は、救急物資の使用方法、及び、救急隊が現場に到着するまでの応急処置を通報者にレクチャーする端末である。例えば、表示端末は、通報者の簡単な操作により、AEDの操作を説明するための動画を出力したり、止血の方法などを説明するための動画を出力したりすることができる。
【0088】
以上、第4の実施形態によれば、無人移動体によって、現場に救急隊が到着するまでの間に、要救助者の状態を識別する情報を取得し、当該取得した情報を基に、要救助者の受入先として適切な病院を決定、予約できる。これにより、要救助者のたらい回しを防ぎ、要救助者の搬送の遅れを防止できる。
【0089】
なお、上記実施形態は、第3の実施形態で説明したように要救助者が複数人の場合でも実施できる。この場合、搬送計画生成装置100は、通報者から通知された要救助者の人数と、撮影画像に含まれる要救助者の人数とが異なるとき(要救助者が通報者本人である場合や要救助者の中に通報者本人が含まれている場合は、撮影画像に含まれる要救助者の人数が通報者から通知された要救助者の人数と同じ数という条件を満たさないとき/要救助者が通報者本人ではない場合や要救助者の中に通報者本人が含まれない場合は、撮影画像に含まれる要救助者の人数が通報者から通知された要救助者の人数より1多いという条件を満たさないとき)は、撮影画像に含まれる要救助者の人数に基づいて、第1から第3の実施形態で説明した受入先決定処理を行うとよい。
【0090】
以上、説明したとおり、各実施形態によれば、要救助者の搬送の遅れを防止することができる。
【0091】
なお、各実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0092】
また、各実施形態で説明した方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0093】
本発明の実施形態を説明したが、本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本発明の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0094】
100 搬送計画生成装置
150 処理回路
151 情報取得機能
152 病院情報取得機能
153 検索機能
154 提供機能
図1
図2
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図5
図6
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