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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 370
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019051720
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020151106
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 正則
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】Xiaolei Song, et al.,CEST Phase Mapping Using a Length and Offset VARied Sturation (LOVARS) Scheme,Magnetic Resonance in Medicine,2012年,68,pp.1074-1086
【文献】Todd C. Soesbe, et al.,SWIFT-CEST: A New MRI Method to Overcome T2 Shortening Caused by PARACEST Contrast Agents,Magnetic Resonance in Medicine,2012年,68,pp.816-821
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の長さの継続時間中、第1の飽和パルスを印加したのち、複数のデータ収集を実行するシーケンス制御部を備え、
前記シーケンス制御部は、第2の長さの継続時間中、第2の飽和パルスを印加したのち、前記複数のデータ収集のうち一つのデータ収集を行う第1の処理と、前記第2の長さの継続時間とは異なる継続時間である第3の長さの継続時間中、第3の飽和パルスを印加したのち、前記複数のデータ収集のうち一つのデータ収集を行う第2の処理とを、それぞれ少なくとも1回ずつ実行し、
撮像対象の組織に応じて、前記シーケンス制御部が前記第1の処理と前記第2の処理とを実行するパターンを算出する制御部を更に備え、
前記シーケンス制御部は、前記制御部が算出した前記パターンに基づいて、前記第1の処理と前記第2の処理とを実行し、
前記制御部は、前記パターンをパルスシーケンスの実行中に変更し、
前記シーケンス制御部は、前記制御部が変更した前記パターンに基づいて、前記パルスシーケンスを実行する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記シーケンス制御部は、前記複数のデータ収集とは別に更にデータ収集を実行し、
前記制御部は、更に実行された前記データ収集により得られた縦磁化の回復度合いに応じて、前記パターンをパルスシーケンスの実行中に変更する、請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数のデータ収集により得られた縦磁化の回復度合いに応じて、前記パターンをパルスシーケンスの実行中に変更する、請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
記第1の長さは、前記第2の長さ及び前記第3の長さより長い、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1の飽和パルス、前記第2の飽和パルス及び前記第3の飽和パルスは、CEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)パルスである、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記第1の処理及び前記第2の処理は、いずれもk空間中心のデータ収集を含むものであり、
前記シーケンス制御部は、前記第1の処理及び前記第2の処理を交互に行って前記複数のデータ収集を実行する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
記第1の飽和パルスは、縦磁化を定常状態に移行するために印加されるパルスであり、
前記第2の飽和パルス及び前記第3の飽和パルスは、前記定常状態を維持するために印加されるパルスである、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
記第1の処理は、k空間中心のデータ収集を含み、
前記第2の処理は、前記k空間中心以外のデータ収集を含み、
前記第2の長さの継続時間は、前記第3の長さの継続時間より長い継続時間である、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
記シーケンス制御部は、前記複数のデータ収集を、EPI(Echo Planar Imaging)法による3次元撮像を用いて実行する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
記シーケンス制御部は、前記複数のデータ収集を、2次元マルチスライス撮像により実行する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングの方法として、CEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)法が知られている。CEST法は、プロトン交換によるコントラストを利用した画像法であり、例えばデータ収集前に高いB1強度の飽和パルスを、周波数を変化させながら印加して撮像していくことで、プロトンの化学交換を画像化する方法である。
【0003】
しかしながら、飽和パルスが印加された後時間が経過すると、縦磁化が時間とともに回復し、CEST効果が減少してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-175829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、CEST効果を維持しながら磁気共鳴イメージングを行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部を備える。シーケンス制御部は、第1の長さの継続時間中、第1の飽和パルスを印加したのち、複数のデータ収集を実行する。シーケンス制御部は、第2の長さの継続時間中、第2の飽和パルスを印加したのち、複数のデータ収集のうち一つのデータ収集を行う第1の処理と、第2の長さの継続時間とは異なる継続時間である第3の長さの継続時間中、第3の飽和パルスを印加したのち、複数のデータ収集のうち一つのデータ収集を行う第2の処理とを、それぞれ少なくとも1回ずつ実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を示す図である。
図2A図2Aは、実施形態に係る背景について説明した図である。
図2B図2Bは、実施形態に係る背景について説明した図である。
図3A図3Aは、実施形態に係る背景について説明した図である。
図3B図3Bは、実施形態に係る背景について説明した図である。
図4図4は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。
図5A図5Aは、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
図5B図5Bは、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
図5C図5Cは、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
図6図6は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。
図7図7は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により得られる結果の一例を示した図である。
図8A図8Aは、比較例に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
図8B図8Bは、比較例に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
図8C図8Cは、比較例に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ここで、互いに同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0009】
(実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源(図示しない)と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120(シーケンス制御部)と、画像処理装置130とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120及び画像処理装置130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0010】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源は、静磁場磁石101に電流を供給する。別の例として、静磁場磁石101は、永久磁石でもよく、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源を備えなくてもよい。また、静磁場電源は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられてもよい。
【0011】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grである。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
【0012】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御回路106は、画像処理装置130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0013】
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信回路108からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信回路108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア(Larmor)周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。
【0014】
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号(以下、必要に応じて、「MR信号」と呼ぶ)を受信する。受信コイル109は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
【0015】
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。
【0016】
受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路110は、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、受信回路110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。
【0017】
シーケンス制御回路120は、画像処理装置130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110が磁気共鳴信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御回路120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。なお、シーケンス制御回路120が実行するパルスシーケンスの詳細については、後述する。
【0018】
さらに、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを画像処理装置130へ転送する。
【0019】
画像処理装置130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、画像の生成等を行う。画像処理装置130は、メモリ132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、インタフェース機能131、制御機能133、及び画像生成機能136を備える。
【0020】
第1の実施形態では、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136にて行われる各処理機能は、コンピューターによって実行可能なプログラムの形態でメモリ132へ記憶されている。処理回路150はプログラムをメモリ132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。なお、図1においては単一の処理回路150にて、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136にて行われる処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路150が各プログラムを実行する場合であってもよい。別の例として、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、図1において、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136は、それぞれ受付部、制御部、画像生成部の一例である。また、シーケンス制御回路120は、シーケンス制御部の一例である。
【0021】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0022】
また、メモリ132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路106、送信回路108、受信回路110等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。
【0023】
処理回路150は、インタフェース機能131により、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信し、シーケンス制御回路120から磁気共鳴データを受信する。また、磁気共鳴データを受信すると、インタフェース機能131を有する処理回路150は、受信した磁気共鳴データをメモリ132に格納する。
【0024】
メモリ132に格納された磁気共鳴データは、制御機能133によってk空間に配置される。この結果、メモリ132は、k空間データを記憶する。
【0025】
メモリ132は、インタフェース機能131を有する処理回路150によって受信された磁気共鳴データや、制御機能133を有する処理回路150によってk空間に配置されたk空間データ、画像生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、メモリ132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
【0026】
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、制御機能133を有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
【0027】
処理回路150は、制御機能133により、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、制御機能133を有する処理回路150は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、制御機能133を有する処理回路150は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。
処理回路150は、画像生成機能136により、k空間データをメモリ132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。
【0028】
次に、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の背景について簡単に説明する。
【0029】
磁気共鳴イメージングの方法として、CEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)法が知られている。CEST法は、プロトン交換によるコントラストを利用してデータを収集する方法であり、アミド基(-NH)、ヒドロキシル基(-OH)、アミノ基(-NH)などのいわゆる交換可能プロトンから自由水プロトンへの磁化移動に関するデータを収集する。CEST法によると、アミド基、アミノ基等の存在量を知ることにより、例えば脳腫瘍のグレーディング評価を行うことができる。
【0030】
図2A及び図2Bを用いて、典型的なCEST法のパルスシーケンスについて説明する。
【0031】
図2A及び図2Bは、実施形態に係る背景について説明した図である。図2Aに、シーケンス制御回路120が実行するパルスシーケンスの一例が記載されている。
【0032】
シーケンス制御回路120は、データ収集のためのパルスシーケンス実行を行うデータ収集期間12に先だつ準備期間11において、飽和パルス1を印加する。一例として、シーケンス制御回路120は、例えば自由水の共鳴周波数から、所定の周波数、例えば+3.5ppmだけ周波数シフトを行いながら印加されたパルスであるCESTパルスを、飽和パルス1として印加する。
【0033】
ここで、アミド基プロトンの共鳴周波数は、自由水プロトンの共鳴周波数を基準として+3.5ppmであるため、アミド基プロトンは、+3.5ppmの周波数のCESTパルスにより、励起され信号値が変化する。
【0034】
ここで、アミド基プロトンなど、高分子に束縛されたプロトンと、自由水プロトンとの間には化学交換(Chemical Exchange)が存在するため、化学交換により、励起された周波数に係るプロトンの信号値の変化が、自由水プロトンの信号値の変化に引き継がれる。従って、自由水プロトンの信号値が変化する。かかる自由水プロトンの信号値の変化は、CESTパルスにより励起されるプロトンの濃度が多いほど大きくなるので、自由水プロトンの信号値の測定を通じて、例えばアミド基プロトンなど所定のプロトンの濃度を知ることができる。
【0035】
シーケンス制御回路120は、データ収集期間12において、データ収集を行う。一例として、シーケンス制御回路120は、例えばEPI(Echo Planar Imaging)法により、RFパルス2の印加後に生成されるエコー生成期間の間、データ収集3を行うことにより、データ収集を行う。なお、EPI法はマルチエコーシーケンスであり、データ収集は、複数回のデータ収集にわけて行われる。
【0036】
このように、例えば、+3.5ppmの周波数のCESTパルスが飽和パルス1として印加され、データ収集期間12にデータ収集が行われると、当該CESTパルスの周波数に対応する分子の化学交換の情報を含んだ情報を収集することができる。
【0037】
なお、図2Aでは、印加される飽和パルス1の周波数を固定して、準備期間11とデータ収集期間12とを含む1セットの収集が行われる場合について説明したが、通常、印加される飽和パルス1の周波数を少しずつ変えながら、これらの収集が合計で複数セット行われる。例えば、シーケンス制御回路120は、印加される飽和パルス1の周波数1を、-6.0ppmから+6.0ppmまで、0.5ppm刻みで変えながら、合計で25セットの収集を行う。
【0038】
図2Bに、図2Aのパルスシーケンスが実行された時の自由水プロトンの縦磁化5の時間変化が示されている。縦磁化5は、準備期間11の間、飽和パルス1の影響で減少する。一方、データ収集期間12の間においては、飽和パルス1の印加がなされていないため、縦磁化5はゆるやかに回復する。従って、CEST効果は減少する。
【0039】
従って、CEST効果の減少を防ぐために、データ収集期間12の間に、シーケンス制御回路120が飽和パルスを印加することも考えられる。図3A及び図3Bを用いてかかる状況について説明する。
【0040】
図3A及び図3Bは、実施形態に係る背景について説明した図である。図3Aには、データ収集期間12に飽和パルスを印加する場合に、シーケンス制御回路120が実行するパルスシーケンスの一例が記載されている。
【0041】
かかる場合、シーケンス制御回路120は、データ収集期間12の前には飽和パルス1を印加しない。シーケンス制御回路120は、図2Aと同様に、データ収集期間12において、例えばEPI(Echo Planar Imaging)により、RFパルス2の印加後に生成されるエコー生成期間の間、データ収集3を行うことにより、データ収集を行う。シーケンス制御回路120は、データ収集期間12において、複数回に分けてデータ収集3を行う。
【0042】
ここで、データ収集期間12において、シーケンス制御回路120は、所定の周波数のCESTパルスを、飽和パルス4として、複数回にわけて行われる各データ収集のうち、それぞれのRFパルス2の印加及びデータ収集3の前に印加する。ここで、所定の周波数とは、例えば、+3.5ppmの周波数であり、当該周波数は、データ収集期間12の間を通じて固定される。図3Aに示されているように、飽和パルス4は、データ収集期間12の間、繰り返し印加され、飽和パルス4とデータ収集3とが入れ子とされる。飽和パルス4の印加期間では、典型的には数十ms程度である。
【0043】
なお、図3Bには、一つの周波数に対応するデータ収集のみが示されているが、図2Aの場合と同じように、シーケンス制御回路120は、周波数を少しずつ変えながら、複数セットのデータ収集を行う。
【0044】
図3Bに、図3Aのパルスシーケンスが実行された時の自由水プロトンの縦磁化5の時間変化が示されている。一定の時間に達した後は、縦磁化5は、繰り返し印加される飽和パルス4の印加によって定常状態に達し、縦磁化が維持されるので、CEST効果の減少は少なくなる。
【0045】
一方で、縦磁化5が定常状態に達するまでに過渡期6においては、データ収集3の間に縦磁化5の大きな変化が存在するので、画像ボケやゴースト等が生じ画質が低下する場合がある。また、飽和パルス4の存在により、撮像時間が増加する。
【0046】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、かかる背景に鑑みたものである。
具体的には、磁気共鳴イメージング装置100は、シーケンス制御回路120を備える。シーケンス制御回路120は、第1の長さの継続時間中、第1の飽和パルスを印加したのち、複数のデータ収集を実行する。シーケンス制御回路120は、第2の長さの継続時間中、第2の飽和パルスを印加したのち、複数のデータ収集のうち一つのデータ収集を行う第1の処理と、第2の長さの継続時間とは異なる継続時間である第3の長さの継続時間中、第3の飽和パルスを印加したのち、複数のデータ収集のうち一つのデータ収集を行う第2の処理とを、それぞれ少なくとも1回ずつ実行する。かかる構成により、データ収集開始後にCEST効果を維持しながら磁気共鳴イメージングを行うことができる。
【0047】
かかる処理の詳細について、図4図5A図5C及び図6を用いて説明する。図4は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。より具体的には、CEST撮像の対象となる周波数、すなわち飽和パルスの周波数を一つに固定した場合に、当該周波数に係るCEST撮像を行うためにシーケンス制御回路120が実行する処理の流れを示している。また、図5Aは、シーケンス制御回路120が実行するパルスシーケンスの一例を示している。
【0048】
なお、通常、複数の周波数に亘ってCEST撮像が行われるので、シーケンス制御回路120は、各周波数について、図4に示されたパルスシーケンスを実行するが、この点については図6を用いて改めて説明する。
【0049】
はじめに、ステップS100において、図5Aに示されるように、シーケンス制御回路120は、データ収集のためのパルスシーケンス実行を行うデータ収集期間12に先だつ準備期間11において、第1の飽和パルス1を印加する。例えば、シーケンス制御回路120は、自由水の共鳴周波数から、所定の周波数だけ周波数シフトを行いながら印加されたパルスであるCESTパルスを、第1の飽和パルス1として印加する。例えばシーケンス制御回路120は、自由水の共鳴周波数から、+3.5ppmの周波数のCESTパルスを、第1の長さの継続時間中、第1の飽和パルス1として印加する。第1の飽和パルス1は、典型的には、縦磁化を定常状態に移行するための比較的長い時間、例えば1秒程度印加される。
【0050】
ここで、「第1の長さの継続時間中、第1の飽和パルス1を印加する」とは、第1の長さの継続時間を有する1個の第1の飽和パルス1を印加する場合でもあってもよいし、継続時間が短い複数個の飽和パルスが複数個印加され、全体として、第1の長さの継続時間を有する第1の飽和パルス1が印加されると考えられる場合であってもよい。以下、第2の飽和パルス4a、第3の飽和パルス4b等も同様に、飽和パルスが印加される継続時間とは、1個の飽和パルス単独で当該継続時間を構成している場合、複数の飽和パルスが全体として当該継続時間を構成している場合の、いずれの場合であってもよい。
【0051】
図5Bに、シーケンス制御回路120が図5Aのパルスシーケンスを実行した時の自由水プロトンの縦磁化5の時間変化が示されている。縦磁化5は、準備期間11の間、第1の飽和パルス1の影響を受けて減少する。換言すると、第1の飽和パルス1は、縦磁化を定常状態に移行するために印加されるパルスである。
【0052】
図4及び図5Aに戻り、ステップS100においてシーケンス制御回路120が第1の飽和パルス1を印加したのち、シーケンス制御回路120は、ステップS110において、データ収集期間12において、複数のデータ収集を実行する。シーケンス制御回路120は、例えばEPI(Echo Planar Imaging)法による3次元撮像を用いて、複数のデータ収集を実行する。例えば、シーケンス制御回路120は、データ収集期間12において、RFパルス2a、2b、2c、2dを印加し、それぞれのRFパルスの印加後に生成されるエコー生成期間に、データ収集3a、3b、3c、3dをそれぞれ実行することにより複数のデータ収集を実行する。
【0053】
ここで、シーケンス制御回路120は、2種類以上の飽和パルスを組み合わせながら複数のデータ収集をデータ収集期間12において実行する。例えば、シーケンス制御回路120は、第2の長さの継続時間7a中、第2の飽和パルス4aを印加したのち、複数のデータ収集のうち一つのデータ収集3cを行う第1の処理8と、第2の長さの継続時間7aとは異なる継続時間である継続時間7b中、第3の飽和パルス4bを印加したのち、複数のデータ収集のうち一つのデータ収集3bを行う第2の処理9とを、それぞれ少なくとも1回ずつ実行する。ここで、これら2種類以上の飽和パルス、すなわち第2の飽和パルス4a及び第3の飽和パルス4bは、第1の飽和パルス1と同じ周波数を励起するCESTパルスである。
【0054】
図5Bに示されているように、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100においては、自由水プロトンの縦磁化5の値は、データ収集期間12中は、図5Cからもわかるように、概ね一定となる。なお、図5Cは、図5Bにおける自由水プロトンの縦磁化5の時間範囲20における拡大図である。すなわち、データ収集期間12中においては、第2の飽和パルス4a及び第3の飽和パルス4bにより、縦磁化の定常状態が維持される。すなわち、第2の飽和パルス4a及び第3の飽和パルス4bは、縦磁化の定常状態を維持するためにシーケンス制御回路120によって印加されるパルスである。
【0055】
このように、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100によると、第2の飽和パルス4a及び第3の飽和パルス4bにより、図5Cに示されるように縦磁化5の定常状態が維持されるので、図2Bとは異なり、CEST効果の減少が抑制される。従って、データ収集期間12中においてもCEST効果が低下せず、良好な磁気共鳴イメージングを行うことができる。換言すると、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、縦磁化を定常状態に移行するための比較的長い時間、例えば1秒程度の時間印加される飽和パルスである第1の飽和パルス1と、定常状態になった縦磁化5の回復を最小限にするために、組み合わされて印加される複数の飽和パルスにより、撮像時間の延長を最小限にしつつCEST効果の高い状態を維持することができる。
【0056】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100によれば、このように、例えば、3次元収集など、高いCEST効果を長時間維持する必要性が高い収集などにおいても、CEST効果を維持しながら磁気共鳴イメージングを行うことができる。
【0057】
以上、飽和パルスの周波数を一つに固定した場合に、当該周波数に係るCEST撮像を行うためにシーケンス制御回路120が実行する処理について説明した。続いて、複数の周波数に亘ってCEST撮像を行う場合にシーケンス制御回路120が行う処理について、図6を用いて説明する。
【0058】
はじめに、ステップS200において、シーケンス制御回路120は、第1の飽和パルス1の周波数を変化させながら、当該周波数に対応する、図4のステップS100~S110で説明したパルスシーケンスを実行する。例えば、シーケンス制御回路120は、自由水の共鳴周波数を基準として、例えば-6.0ppmから+6.0ppmの範囲の所定の周波数で、CESTパルスの周波数を0.5ppm刻みで変化させながら、ステップS100~ステップS110のパルスシーケンスをそれぞれ実行する。この場合、シーケンス制御回路120は、第1の飽和パルス1の周波数が-6.0ppmの図5Aのパルスシーケンスを実行して、-6.0ppmの周波数に対応するデータを収集し、続いて第1の飽和パルス1の周波数が-5.5ppmの図5Aのパルスシーケンスを実行して、-5.5ppmの周波数に対応するデータを収集し、以下同様のパルスシーケンスを順次実行し、+6.0ppmの周波数に対応するデータを収集する。これによりシーケンス制御回路120は、-6.0ppm、-5.5ppm、…、+5.5ppm、+6.0ppmの周波数に対応するデータを収集する。続いて、処理回路150は、画像生成機能136により、シーケンス制御回路120が収集したこれらのデータに基づいて、Zスペクトルを-6.0ppmから+6.0ppmの範囲で生成する。ここで、Zスペクトルとは、CESTパルス印加後にデータ収集を行った時の信号強度を、印加したCESTパルスの周波数の関数として表したスペクトルのことを指す。
【0059】
続いて、ステップS210において、処理回路150は、ステップS200において生成されたZスペクトルに基づいて、CEST効果の大きさを表すデータを生成する。一例として、処理回路150は、Zスペクトルに基づいて、MTRasym(Magnetization Transfer Ratio Asymmetry)スペクトルを、CEST効果の大きさを表すデータとして作成する。MTRasymスペクトルは、Zスペクトルの、自由水の共鳴周波数に対する非対称性を表す量である。Zスペクトルの非対称性、例えば、周波数が+xのときの信号値と周波数が-xのときの信号値との差は、周波数が+xまたは周波数が-xの周波数に交換プロトンが存在する場合に大きくなることから、CEST効果の大きさを表すデータとなる。なお、周波数が「x ppm」の時のMTRasymスペクトルは、周波数「-x ppm」のCESTパルスを印加した時の信号強度が「S」であり、それとは対称な位置にある周波数「+x ppm」のCESTパルスを印加した時の信号強度が「S」であり、CESTパルスを何も印加しなかった時の信号強度が「S」とすると、例えば、「(S-S)/S」の式により算出できる。
【0060】
続いて、図7を用いて、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置により得られる結果の例について説明する。図7は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100及び、比較例に係る磁気共鳴イメージング装置により得られた、白質(White Matter)及び灰白質(Gray Matter)における+3.5ppmにおけるMTRasymスペクトルを表している。具体的には、点32は、実施形態に係る方法における灰白質のMTRasymスペクトル、点30は、比較例に係る方法における灰白質のMTRasymスペクトル、点33は、実施形態に係る方法における白質のMTRasymスペクトル、点31は、比較例に係る方法における白質のMTRasymスペクトルを表す。
【0061】
図8A図8Cは、比較例に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。図8Aは、比較例に係るパルスシーケンスが示されている。比較例においては、シーケンス制御回路120は、準備期間11中、第1の飽和パルス1を印加し、データ収集期間中12にも更に飽和パルスを印加するが、データ収集期間中12に印加する飽和パルスの種類は1種類である。図8Bに、シーケンス制御回路120が図8Aのパルスシーケンスを実行した時の自由水プロトンの縦磁化5の時間変化が示されている。縦磁化5は、準備期間11の間、第1の飽和パルス1の影響を受けて減少し、定常状態が生成されるが、図8Cに示されているように、比較例に係る磁気共鳴イメージング装置においては、自由水プロトンの縦磁化5の値は、データ収集期間12中、緩やかに回復してしまい、従ってCEST効果が、データ収集期間12中に複数の飽和パルスを組み合わせる場合と比較して小さくなる。ここで、図8Cは、図8Bにおける自由水プロトンの縦磁化5の時間範囲30における拡大図である。
【0062】
図7に戻り、灰白質、白質いずれにおいても、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、比較例に係る磁気共鳴イメージング装置と比較して、周波数が+3.5ppmにおけるMTRasymスペクトルの値が大きくなっている。CEST効果が高いほどMTRasymスペクトルの値は高くなる傾向があるため、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、比較例と比較して、高いCEST効果を維持できることがわかる。
【0063】
以上述べたように、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100によれば、例えば、3次元収集など、高いCEST効果を長時間維持する必要性が高い収集などにおいても、CEST効果を維持しながら磁気共鳴イメージングを行うことができる。
【0064】
(実施形態の変形例)
実施形態は、上述の例に限られない。
【0065】
シーケンス制御回路120がステップS110において実行する複数のデータ収集を実行するパルスシーケンスは、EPI法によるものに限られず、例えばグラジエントエコー系の他のパルスシーケンスであってもよい。また、当該パルスシーケンスは、3次元撮像に係るパルスシーケンスに限られない。一例として、シーケンス制御回路120は、ステップS110において、当該複数のデータ収集を、2次元マルチスライス撮像により実行してもよい。
【0066】
また、シーケンス制御回路120は、例えば狙いとする蛋白質の種類や、撮像対象の組織等に応じて、第2の飽和パルス4aを印加する処理を含む第1の処理8と、第3の飽和パルス4bを印加する処理を含む第2の処理9との組み合わせのパターンを選択してもよい。すなわち、処理回路150が、制御機能133により、撮像対象の組織に応じて、例えば撮像対象の組織のT1緩和時間やT緩和時間に応じて、シーケンス制御回路120が第1の処理8と第2の処理9とを実行するパターンを算出する。また、処理回路150が制御機能133により算出したパターンに基づいて、シーケンス制御回路120がパルスシーケンスを実行してもよい。例えば、処理回路150は、制御機能133により、撮像対象の組織に応じて、CEST効果の大きさが所定の基準値以上になるような第1の処理8と第2の処理9とのパターンであって、撮像時間が最も短くなるようなパターンを、シーケンス制御回路120が実行するパターンとして算出してもよい。
【0067】
また、シーケンス制御回路120は、縦磁化の緩和をリアルタイムでモニタリングし、それに基づいて、第2の飽和パルス4aを印加する処理を含む第1の処理8と、第3の飽和パルス4bを印加する処理を含む第2の処理9との組み合わせのパターンを選択してもよい。ここで、縦磁化のモニタリングの方法としては、収集するデータそのものを利用して縦磁化をモニタリングしても良いし、また、別途パルスシーケンスを実行することにより、縦磁化をモニタリングしてもよい。
【0068】
前者の場合、シーケンス制御回路120は、データ収集期間12中に実行されるパルスシーケンスにより得られたデータから、例えば1ライン分のk空間データを抽出し、当該k空間データを用いて、縦磁化の緩和を大まかに推定する。処理回路150は、制御機能133により、このようにして推定した縦磁化の値、すなわちデータ収集期間12中に実行された複数のデータ収集により得られた縦磁化の回復度合いに応じて、第1の処理8と、第2の処理9との組み合わせのパターンをパルスシーケンスの実行中に変更する。シーケンス制御回路120は、処理回路150が制御機能133により変更した当該パターンに基づいて、パルスシーケンスを実行する。
【0069】
また、後者の場合、シーケンス制御回路120は、例えばデータ収集期間12中に実行される複数のデータ収集とは別に更にデータ収集を実行する。処理回路150は、制御機能133により、更に実行されたデータ収集により得られた縦磁化の回復度合いに応じて、第1の処理8と、第2の処理9との組み合わせのパターンをパルスシーケンスの実行中に変更する。シーケンス制御回路120は、処理回路150が制御機能133により変更した当該パターンに基づいて、パルスシーケンスを実行する。
【0070】
また、シーケンス制御回路120は、データ収集期間12中に実行するパルスシーケンスの種類に応じて、データ収集期間12中に実行する、第2の飽和パルス4aを印加する処理を含む第1の処理8と、第3の飽和パルス4bを印加する処理を含む第2の処理9との組み合わせのパターンを選択してもよい。
【0071】
例えば、シーケンス制御回路120は、k空間中心を含むデータ収集と、k空間中心を含むデータ収集以外のデータ収集とで、印加する飽和パルスの継続時間を変化させてもよい。例えば、第2の飽和パルス4aを印加する処理を含む第1の処理8が、k空間中心のデータ収集を含み、第3の飽和パルス4bを印加する処理を含む第2の処理9が、k空間中心以外のデータ収集を含む場合を考える。このような場合、第2の飽和パルス4aの印加時間である第2の継続時間7aが、第3の飽和パルス4bの印加時間である第3の継続時間7bより長い継続時間となるようなパルスシーケンスを、シーケンス制御回路120は実行する。これにより、画質の寄与が大きいk空間中心のデータ収集が行われている時に、より大きなCEST効果を維持することができ、トータルの撮像時間を短く保ちながら、画質を維持することができる。
【0072】
このような第1の処理8と第2の処理9との組み合わせのパターンが有効だと考えられるパルスシーケンスの例としては、例えば、シーケンス制御回路120がFFE(Fast Field Echo)シーケンスを用いて複数のデータ収集を行う場合等が挙げられる。
【0073】
また、別の例として、第2の飽和パルス4aを印加する処理を含む第1の処理8と、第3の飽和パルス4bを印加する処理を含む第2の処理9が、いずれもk空間中心のデータ収集を含むものである場合を考える。このような場合、シーケンス制御回路120は、第1の処理及び第2の処理を交互に行って複数のデータ収集を行う。これにより、シーケンス制御回路120が収集する複数のデータ収集のそれぞれが、いずれも均等にCEST効果を維持した収集となり、画質が安定する。
【0074】
このような第1の処理8と第2の処理9との組み合わせのパターンが有効だと考えられるパルスシーケンスの例としては、例えば、EPI法に係るパルスシーケンス等が挙げられる。
【0075】
(プログラム)
また、上述した実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用コンピューターが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100による効果と同様の効果を得ることも可能である。上述した実施形態で記述された指示は、コンピューターに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピューター又は組み込みシステムが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピューターは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100と同様の動作を実現することができる。また、コンピューターがプログラムを取得する場合又は読み込む場合は、ネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
【0076】
また、記憶媒体からコンピューターや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピューター上で稼働しているOS(Operating System)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(Middleware)等が、上述した実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。更に、記憶媒体は、コンピューターあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LAN(Local Area Network)やインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。また、記憶媒体は1つに限られず、複数の媒体から、上述した実施形態における処理が実行される場合も、実施形態における記憶媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0077】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の磁気共鳴イメージング装置によれば、データ収集開始後にCEST効果を維持しながら磁気共鳴イメージングを行うことができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
120 シーケンス制御回路
150 処理回路
131 インタフェース機能
133 制御機能
136 画像生成機能
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図8C