(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】バルーンカテーテルのインピーダンス位置測定値のスケーリング
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20231113BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019094328
(22)【出願日】2019-05-20
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ドロン・モシェ・ルドウィン
(72)【発明者】
【氏名】アビグドール・ローゼンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】アハロン・ツルゲマン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・メイデル
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0234564(US,A1)
【文献】特開2015-100706(JP,A)
【文献】国際公開第2016/205807(WO,A1)
【文献】特開2016-147018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20
18/08 - 18/16
A61N 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
シャフト、前記シャフトの遠位端に装着された膨張可能なバルーン、前記膨張可能なバルーン
の赤道上に配置された複数の電極、並びに前記バルーンの両側の前記シャフト上に装着された第1及び第2の
感知電極を備える、バルーンカテーテルと、
プロセッサであって
、
前記シャフト上に装着された前記第1及び第2の
感知電極の位置を示す
位置信号を受信するように、かつ
前記受信した
位置信号に基づいて、及び前記第1の
感知電極と前記第2の
感知電極との間の既知の距離に基づいて、前記バルーン上に配置された前記複数の電極
の位置を計算するように構成されたプロセッサと、を備え
、
前記プロセッサが、
前記シャフトの前記遠位端に配置された磁気センサから、前記遠位端の方向を示す1つ又は2つ以上の方向信号を受信することと
、
前記位置信号に基づいて、前記
第1及び第2の感知電極の
平均位置を
計算することと、
前記方向信号に基づいて、前記カテーテルの遠位端の方向を推定することと、
前記計算された平均位置を前記カテーテルの前記遠位端の前記推定された方向に投影することにより、前記第1及び第2の感知電極の推定中心位置を計算することと、
(i)前記計算された推定中心位置、(ii)前記カテーテルの前記遠位端の前記推定された方向、及び、(iii)前記第1の
感知電極と前記第2の
感知電極との間の前記既知の距離に基づいて、前記第1及び第2の
感知電極
の前記位置を
補正するための変位を計算することと、
前記計算された変位
、及び、膨張した前記バルーンの前記赤道の既知の直径に基づいて、前記
複数の電極の前記位置をスケーリングすることと、によって、前記
複数の電極の前記位置を計算するように構成されている
、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記
第1及び第2の感知電極の前記位置、並びに前記カテーテルの遠位端の前記方向、並びに前記第1及び第2の
感知電極の前記変位を並行して計算することによって、前記
複数の電極の前記位置を計算するように構成されている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
カテーテルの遠位端に装着された膨張可能なバルーンの赤道上に配置された複数の電極の位置を計算するための方法であって、
プロセッサ
が、前記バルーンの両側の前記カテーテルのシャフト上に装着された第1及び第2の
感知電極の位置を示す位置信号を受信することと、
前記プロセッサが、前記受信した位置信号に基づいて、及び前記第1の
感知電極と前記第2の
感知電極との間の既知の距離に基づいて、前記バルーン
の赤道上に配置された前記複数の電極の前記位置を計算することと、を含
み、
前記プロセッサが、前記
複数の電極の前記位置を計算することが、
前記プロセッサが、前記シャフトの前記遠位端に配置された磁気センサから、前記遠位端の方向を示す1つ又は2つ以上の方向信号を受信することと
、
前記プロセッサが、前記位置信号に基づいて、前記
第1及び第2の感知電極の
平均位置を
計算することと、
前記プロセッサが、前記方向信号に基づいて、前記カテーテルの遠位端の方向を推定することと、
前記プロセッサが、前記計算された平均位置を前記カテーテルの前記遠位端の前記推定された方向に投影することにより、前記第1及び第2の感知電極の推定中心位置を計算することと、
前記プロセッサが、(i)前記計算された推定中心位置、(ii)前記推定された方向、及び、(iii)前記第1の
感知電極と前記第2の
感知電極との間の前記既知の距離に基づいて、前記第1及び第2の
感知電極
の前記位置を
補正するための変位を計算することと、
前記プロセッサが、前記計算された変位
、及び、膨張した前記バルーンの前記赤道の既知の直径に基づいて、前記
複数の電極の前記位置をスケーリングすることと、を含む
、方法。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記
複数の電極の前記位置を計算することが、
前記プロセッサが、前記
第1及び第2の感知電極の前記位置、前記カテーテルの遠位端の前記方向、並びに前記第1及び第2の
感知電極の前記変位を並行して計算することを含む、請求項
3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、生体内のプローブ位置を追跡することに関し、具体的には、電気ベースの位置測定値を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
挿入管、カテーテル、及びインプラントなどの体内プローブの位置を追跡することは、多くの医療処置に必要とされている。例えば、米国特許出願公開第2014/0095105号は、1つ若しくは2つ以上の全体的な変換関数若しくは補間関数、及び/又は1つ若しくは2つ以上の局所変換関数の決定を含むことができる、電流ベースの座標システムを補正及び/又はスケーリングするためのアルゴリズムについて記載している。全体的及び局所変換関数は、全体的な計量テンソル及びいくつかの局所計量テンソルを計算することにより決定され得る。計量テンソルは、カテーテルにおける空間が近いセンサ間の所定の距離及び測定された距離に基づいて計算され得る。
【0003】
別の例としては、米国特許出願公開第2007/0016007号は、対象の体腔内に導入されるように適合されたプローブを含む位置感知システムについて記載している。プローブは、磁界トランスデューサと、少なくとも1つのプローブ電極と、を有する。制御ユニットは、磁界トランスデューサを使用してプローブの位置座標を測定するように構成される。制御ユニットはまた、少なくとも1つのプローブ電極と、対象の体表面上の1つ又は2つ以上の点との間のインピーダンスを測定する。測定された位置座標を使用して、制御ユニットは、測定されたインピーダンスを較正する。
【0004】
米国特許出願公開第2012/0302869号は、体内で医療装置をナビゲートするためのシステム及び方法を記載している。このシステムは、対応する第1及び第2の座標系内の医療装置上の電気的及び磁気的位置センサの動作位置を判定するように構成された電子制御ユニット(ECU)を含む。第1及び第2の座標系は、電界ベースの位置決めシステム及び磁界ベースの位置決めシステムによって、それぞれ画定されている。磁気的位置センサは、電気位置センサに近接して配置されている。ECUは、第2の座標系内の磁気的位置センサの動作位置に応答して、第1の座標系内の磁気的位置センサに対するマッピングされた位置を生成する、動作位置を相関させるマッピング機能を適用するように更に構成されている。ECUは、磁気的位置センサのマッピングされた位置に応答して、第1の座標系内の電気的位置センサについて調整された動作位置を判定する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、プロセッサにおいて、(i)カテーテルの遠位端に装着された膨張可能なバルーン上に配置された複数の電極、並びに(ii)バルーンの両側のカテーテル上のシャフトに装着された第1及び第2の電極の位置を示す位置信号を受信することを含む方法を提供する。バルーン上に配置された複数の電極の位置は、受信した位置信号に基づいて、及び第1の電極と第2の電極との間の既知の距離に基づいて計算される。
【0006】
いくつかの実施形態では、電極の位置を計算することは、シャフトの遠位端に配置された磁気センサから、遠位端の方向を示す1つ又は2つ以上の方向信号を受信することと、(i)位置信号、(ii)方向信号、及び(iii)第1の電極と第2の電極との間の既知の距離に基づいて、電極の位置を計算することと、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、電極の位置を計算することは、位置信号に基づいて、2つの感知電極の位置を推定することを含む。カテーテルの遠位端の方向は、方向信号に基づいて推定される。第1及び第2の電極をカテーテルの遠位端の方向に沿った正確な位置に持っていく、第1及び第2の電極の変位は、第1の電極と第2の電極との間の既知の距離に基づいて計算される。電極の位置は、計算された変位に基づいてスケーリングされる。
【0008】
いくつかの実施形態では、電極の位置を計算することは、2つの感知電極の位置、並びにカテーテルの遠位方向、並びに第1及び第2の電極の変位を並行して計算することを含む。
【0009】
本発明の実施形態によれば、バルーンカテーテルと、プロセッサと、を含む、システムが、更に提供されている。バルーンカテーテルは、シャフトと、シャフトの遠位端に装着された膨張可能なバルーンと、膨張可能なバルーン上に配置された複数の電極と、バルーンの両側のシャフト上に装着された第1及び第2の電極と、を含む。プロセッサは、膨張可能なバルーン上に配置された複数の電極、並びにシャフト上に装着された第1及び第2の電極の位置を示す信号を受信するように、かつ受信した信号に基づいて、及び第1の電極と第2の電極との間の既知の距離に基づいて、バルーン上に配置された複数の電極の位置を計算するように構成されている。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、シャフトと、膨張可能なバルーンと、第1及び第2の電極と、を含む、バルーンカーテルも提供されている。膨張可能なバルーンは、シャフトの遠位端に装着されている。第1及び第2の電極は、バルーンの両側のシャフト上に装着されており、かつ第1及び第2の電極のそれぞれの位置を示す電気信号を伝送するように構成されている。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮すると、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による、有効電流位置(Active Current Location、ACL)のサブシステム及び磁気感知サブシステムを含む、カテーテルベースの位置追跡及び切除システムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、
図1のバルーンカテーテルの概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、
図2のバルーンカテーテル上の様々な基準点の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、インピーダンスによって測定された位置をスケーリングするための方法の概略図である。
【
図5】本発明の実施形態による、インピーダンスによって測定された位置をスケーリングするための方法を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
以下に記載されている本発明の実施形態は、膨張可能なバルーンカテーテルの遠位端に装着された電極から受信された位置指示信号を使用する、位置追跡方法及びシステムを提供する。電極は、膨張可能なバルーン上に、及び/又はそれに近接して配置されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、電極の一部は、切除に使用され、他の電極は、電気生理学的感知に使用されている。様々な電極の位置は、電極によって生成された電気信号に基づいて追跡することができる。これらの電気的位置指示信号は、患者の皮膚に取り付けられた体表面電極に対して測定される。
【0015】
いくつかの実施形態では、電気的位置追跡方法は、インピーダンス信号を感知することに依存しているが、他の実施形態では、本方法は、電圧信号を感知することに依存している。別の実施形態では、電気的位置追跡方法は、カテーテル電極によって伝送され、患者の皮膚に取り付けられた体表面電極(パッチ)によって測定された電流の分布の割合に依存している。
【0016】
電流分布測定値を適用するシステムの一例は、Biosense-Webster(カリフォルニア州、アーバイン)によって作製されているCarto(登録商標)3システムである。
【0017】
以下の説明では、Carto(登録商標)3システムは、電気信号ベースの位置追跡システムの一例として機能する。Carto(登録商標)3システムは、有効電流位置(ACL)のインピーダンスベースの位置追跡方法を適用する。いくつかの実施形態では、上記のACL方法を使用して、位置追跡システム内のプロセッサは、バルーンカテーテルの位置及び配向を推定する。
【0018】
いくつかの実施形態では、磁気センサを含まないカテーテルを可視化するために、プロセッサは、独立電流位置(Independent Current Location、ICL)方法と称される、ACLの上に追加の電気信号ベースの方法を適用する。ICL方法では、プロセッサは、ある体積のバルーンカテーテルの各ボクセルについて、局所スケーリング係数を計算する。この係数は、投げなわ形状のカテーテルのような、既知の空間的関係を有する複数の電極を備えたカテーテルを使用して決定される。しかしながら、(例えば、数ミリメートルにわたる)正確な局所スケーリングをもたらすが、ICLは、そのサイズが、約数センチメートルであるバルーンカテーテルに適用されるときには、それほど正確ではない。切除電極によって生成された位置信号は、典型的には、粗すぎてそれら自体では有用ではない(例えば、それらは切除電極の大きな面積に起因して空間に広がっている)。
【0019】
開示された本発明のいくつかの実施形態では、プロセッサは、バルーンの両側のカテーテルのシャフトに装着された第1及び第2の電極を使用して、ICL測定値を正確にスケーリングする。以後「感知電極」とも呼ばれる第1及び第2の電極は、小面積の電極であり、したがって、正確なスケーリング係数を示すためにプロセッサによって正確に処理されることができる局所化された位置信号を生成する。これら2つの電極間の距離は、既知であり、かつ大きいので、バルーンのような大きな構造の電流ベースの位置計算を正確にスケーリングする(即ち、ICLを適用する)のに好適である。
【0020】
このような2つの電極を使用して開示されたICL方法は、切除電極のような様々な要素の空間内の物理的分布の歪みのない表現を提供する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の電極からの既知の距離及び位置信号に基づいて、プロセッサは、バルーンカテーテル上に配置された様々な要素の位置をスケーリングする。
【0021】
場合によっては、ACL方法及びICL方法を使用することは、依然として臓器内部(例えば、心室内)のバルーンの正しい配向を判定するのに十分に正確ではない可能性がある。バルーンの配向は、シャフト点の遠位端の長手方向軸が向いている空間内の方向として画定される。結果として、切除電極の配向を表す赤道は、例えば、電極によって切除される肺静脈の開口部に対して、何らかの不明な角度で傾斜することがある。医師は、バルーンを正確に開口部に面するように方向付けるために、その配向を十分正確に知る必要がある。
【0022】
したがって、更なる改善として、いくつかの実施形態では、プロセッサはまた、カテーテルの遠位端に結合された位置センサの磁気的位置追跡測定値を使用する。この測定値は、カテーテルの角度配向の正確な測定値を与えるので、特に有効である。プロセッサは、配向を計算し、その情報を使用して、切除電極の推定位置及び配向を更に精緻化する。
【0023】
一実施形態では、プロセッサは、ACL計算、ICL計算、及び磁気方向計算を並行して実行する。
【0024】
上記の位置及び配向追跡段階(即ち、ACL、ICL、及び磁気方向)を組み合わせることによって、本発明の実施形態は、バルーンカテーテルを操作する医師が、a)カテーテルを使用して解剖学的に正確な電気生理学的データを収集すること、及びb)例えば、心臓の左心房内側の肺静脈の小孔を均一に切除するように、バルーンを心室のような腔内側に方向付けることを可能にする。
【0025】
開示された技術は、バルーンカテーテルの位置及び配向を追跡するための追加の手段を組み込む必要性を排除し得、したがって、バルーンカテーテル、並びにそれらを操作する追跡及び切除システムを単純化することができる。例えば、開示された技術は、バルーンカテーテルの遠位端に追加の位置感知要素を装着すること、及びそのような追加の位置感知要素を操作するための追加のサブシステムに対する潜在的な必要性を省略することができる。
【0026】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、有効電流位置(ACL)のサブシステム及び磁気感知サブシステムを含む、カテーテルベースの位置追跡及び切除システム20の概略図である。システム20は、シャフト22の遠位端に装着された、挿入
図25内に見られるバルーンカテーテル40の位置を判定するために使用される。典型的には、バルーンカテーテル40は、例えば、左心房において心臓組織を空間的に切除するなどの治療処置に使用される。
【0027】
システム20は、バルーンカテーテル40の配向(即ち、シャフト22の遠位端によって画定された空間内の方向)を判定することができる。位置及び方向を測定するために、バルーンカテーテル40は、バルーン(
図2に示す)の両側のシャフト22に装着された第1及び第2の感知電極と、磁気センサ50と、をそれぞれ組み込んでいる。第1及び第2の感知電極、並びに磁気センサ50は、シャフト22を通って延びているワイヤによって、コンソール24内の様々なドライバ回路に接続されている。
【0028】
医師30は、カテーテルの近位端の近くのマニピュレータ32を使用して、及び/又はシース23からの偏向を使用して、シャフト22を操作することによって、バルーンカテーテル40を患者28の心臓26内の標的位置に誘導する。バルーンカテーテル40は、シース23を通じて折り畳まれた構成で挿入され、バルーンがシース23から引っ込められた後にだけ、バルーンカテーテル40は、その意図された機能的形状を取り戻す。バルーンカテーテル40を折り畳まれた構成で収容することにより、シース23はまた、標的位置への途中で血管外傷を最小限に抑える働きをする。
【0029】
コンソール24は、プロセッサ41、典型的には汎用コンピュータ、並びにケーブル39を通って患者28の胸部及び背部に延びているワイヤによって取り付けられているような例示的なACLシステムに見られるACL表面電極49(以後、「ACLパッチ49」と呼ばれる)から、信号を受信するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路44を備える。
【0030】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、様々な電極から受信した位置信号を使用して、心室内などの臓器内のバルーンカテーテルの位置を推定する。一実施形態では、プロセッサは、以前に取得した磁気的位置較正位置信号を用いて(即ち、ACL方法を使用して)、電極から受信した位置信号を相関させて、心室内のバルーン位置を推定する。
【0031】
電流分布比率に基づいて位置が計算されるICL方法は、電流ベースのICL空間の非線形的性質に起因して、誤差を有する可能性があり、バルーンカテーテルの歪んだ形状を示し得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ41は、投げなわ形状のカテーテルの電極間の既知の小スケール距離に基づいて、並びに大スケール距離に基づいて、それら自体は、バルーンの端部における第1及び第2の電極間の既知の距離に基づいて、開示されたICL方法を更に適用して、バルーンカテーテルの形状を正確な形状にスケーリングする。
【0032】
いくつかの実施形態では、プロセッサ41は、心臓26内のバルーンカテーテル40に装着された第1及び第2の感知電極の位置座標を正確に判定する。プロセッサ41は、他の入力の中でも、測定されたインピーダンス、又は感知電極とACLパッチ49との間の電流分布の割合に基づいて(即ち、上述のACL及びICL方法を使用して)位置座標を判定する。コンソール24は、心臓26内のカテーテル位置の遠位端を示すディスプレイ27を駆動する。
【0033】
システム20を使用する電極位置感知方法は、様々な医療的用途に、例えば、Biosense-Webster Inc.(カリフォルニア州、アーバイン)により製造されているCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第7,756,576号、同第7,869,865号、及び同第7,848,787号に詳細に記述され、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
コンソール24は、磁気感知サブシステムを更に備える。患者28は、ユニット43によって駆動される磁界発生器コイル42を含むパッドによって生成された磁界内に置かれる。コイル42によって生成された磁界は、磁気センサ50内に方向信号を生成し、次いで、これは、対応する電気入力としてプロセッサ41に提供され、これらを使用してバルーンカテーテル40の配向を計算し、ACL及びICL方法を使用して導出された位置を補正する。
【0035】
外部磁界を使用するこの位置感知方法は、様々な医療用途に、例えば、Biosense Webster Inc.により製造されているCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第WO96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記述され、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
プロセッサ41は、本明細書に述べられる機能を実施するために、通常はソフトウェアにプログラムされる。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又は代替的に若しくは付加的に、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一過性の有形媒体上で提供及び/若しくは記憶されてもよい。
【0037】
図1は、簡潔性かつ明瞭性のため、開示される技術に関連する要素のみを示す。システム20は、典型的に、開示される技術には直接関連せず、したがって
図1及び対応する説明から意図的に省略されている、追加のモジュール及び要素を備える。システム20の要素及び本明細書に記載される方法は、マルチアームカテーテル(例えば、Biosesne-Webster製のPentaray(登録商標))などの多数の種類の多電極カテーテルを使用して位置感知するため及び/又は切除を制御するために適用されてもよい。
【0038】
バルーンカテーテルのインピーダンス位置測定値のスケーリング
図2は、本発明の一実施形態による、
図1のバルーンカテーテル40の概略図である。見られるように、バルーン40は、長手方向軸51を画定するシャフト22の遠位端に装着されている。バルーン40の球体形状の原点である軸51上の中心点58は、バルーン40の公称位置を画定する。
図2に示す例では、第1及び第2の感知電極は、それぞれ近位電極52a及び遠位電極52bと示されている。見られるように、2つの感知電極は、バルーン40の両側のシャフト22上に装着されている。加えて、近位電極52aのすぐ近位に装着された磁気的位置センサ50が見られる。また、感知電極52a及び52bと比較して大きな面積を占めているバルーン40上の円周内に配置された切除電極55も見られる。
【0039】
典型的には、配置された切除電極は、バルーンの赤道に沿って均等に分布され、この赤道は、シャフト22の遠位端の長手方向軸に対して垂直に整列されている。いくつかの実施形態では、開示されたICLスケーリング方法を使用して、電極55のICLで測定された位置は、例えば、赤道上の正確に離間された位置にスケーリングされる。
【0040】
任意選択的な実施形態では、ICLを適用するプロセッサは、切除電極55が生成する粗い位置信号を追加的に使用することによって、スケーリング係数の精度を更に改善する。
【0041】
図2に示されている図は、単に概念を明確化する目的のために選択されている。感知電極の他の構成が可能である。磁気センサ50には、追加の機能が含まれてもよい。明確にするために、洗浄ポートなど、本発明の開示された実施形態に関連しない要素は省略されている。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態による、
図2のバルーンカテーテル上の様々な基準点の概略図である。基準点の位置は、例えば、プロセッサに記憶された電気解剖学的マップに画定された座標系内に提示されてもよく、システムは、バルーン40の空間内の位置を相関させる。
【0043】
近位電極52aは、位置62aに位置し、一方、遠位電極52bは、位置62bに位置している。磁気センサ50は、位置60aに位置し、一方、上述したように、センサ50は、シャフト22の方向に平行(即ち、軸51に平行)である方向60bを示すことができる。切除電極55の広い面積にもかかわらず、軸51に直交する平面内に埋め込まれた赤道64上の位置65の形態で、空間内の電極の一貫した有用な表現が可能である。換言すれば、バルーンが完全に膨張したときに、位置65は、バルーン40の最大横断直径を有する円上にある。バルーン40の公称位置は、赤道64の中心でもある中心点58によって画定される。
【0044】
図3において見られるように、距離62abは、近位電極52aと遠位電極52bとの間の既知の距離である。見られるように、位置65は、位置62aと62bとの間の距離62abのほぼ中間にある点67aで、軸51と交差する平面内にある。したがって、中心位置67aは、距離62abの中間に非常に近い。以下に示すように、本発明の実施形態を使用して、バルーン40の中心位置67a及び方向60b、並びにその様々な要素の位置は、バルーンが心室内にある間に測定される。
【0045】
位置67aは、ACL方法で処理された感知電極52a及び52bからの位置信号を使用して推定される。方向60bは、磁気センサ50からの信号を使用して、磁気追跡サブシステムによって推定される。位置65などの要素位置のスケーリングは、以下に詳述するように、電極間の機械的距離の知識と共に、ICL方法で感知電極からの位置信号を処理することによって行われる。
【0046】
図4は、本発明の一実施形態による、インピーダンスによって測定された位置をスケーリングする方法の概略図である。
図4は、ICL方法によって得られた近位電極52aの位置59a及び遠位電極52bの位置59bを示す。測定された位置59a及び59bは、
図3の基準点62a及び62bと比較して不正確であり、これは、方向59cの推定値を、(方向60bである)実際のものからある角度だけθずらす原因となる。それに対応して、電極55によって包囲されている、計算された赤道は、その正確な方向に対してある角度だけθ不正に傾斜している。加えて、感知電極52aと52bとの間の距離59cも不正確であり、赤道上の電極の測定された位置もスケール外である(例えば、赤道が間違った半径を有する)ことを示している。上述の誤差は、例えば、切除電極55の位置及び配向を、切除の目的のために、肺静脈の小孔の円周上などで、電気解剖学的マップによってマッピングされた組織位置と正確に相関させることを妨害する。
【0047】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、磁気センサ50によって提供された信号から方向60bを導出する。プロセッサは、測定された位置59a及び59bから平均位置を計算し、その平均位置を方向60bに投影して、感知電極間の既知の距離に基づいて推定中心位置68を得る。補正変位66a及び66bは、感知電極52a及び52bの測定された位置をスケーリングするために計算される。補正変位は、方向60bに沿った電極位置と、距離によってスケーリングされた位置62a’及び62b’とを、その2つの間の正確な距離62abに整列させる。
【0048】
結果として得られる補正された電極位置62a’及び62b’は、ICL方法によって推定された平均位置内の中心位置、即ち中心点58の誤差67だけ、実際の位置62a及び62bに対して軸51に沿ってわずかな平行移動を依然として有し得る。したがって、誤差67は、実際の公称位置58と、ACLによって推定された位置68との間の誤差によって画定される。ICLによって推定された中心位置での誤差67は、プロセッサが、開示されたACL、ICL、及び磁気方向段階に基づいて、電極55(図示せず)の十分に正確な赤道位置を推定することができ、したがって、例えば、これらの位置を組織の電気解剖学的マップと十分に正確に相関させることができるため、許容可能である。
【0049】
図5は、本発明の実施形態による、インピーダンスによって測定された位置をスケーリングするための方法を概略的に示すフロー図である。プロセスは、ACL位置決めステップ70において、プロセッサ41が、ACL方法を使用して電極52a及び52bの公称位置を計算することから始まる。次に、プロセッサ41は、磁気方向計算ステップ71において、磁気センサ50からの信号に基づいて、方向60bを計算する。計算ステップ72において、プロセッサ41は、補正変位66a及び66bを導出し、導出された変位を使用して、補正ステップ73において、正確な方向60bに垂直な平面内の正確なバルーン直径の赤道に電極55の位置を回転させ、かつスケーリングする。
【0050】
図5に示す例示的なフロー図は、純粋に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。代替の実施形態では、追加の計算が適用されてもよい。電極55の位置を電気解剖学的マップと相関させるなどの追加のステップが続いてもよい。
【0051】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれた文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な一部とみなすものとする。
【0052】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
プロセッサにおいて、(i)カテーテルの遠位端に装着された膨張可能なバルーン上に配置された複数の電極、並びに(ii)前記バルーンの両側の前記カテーテルのシャフト上に装着された第1及び第2の電極の位置を示す位置信号を受信することと、
前記受信した位置信号に基づいて、及び前記第1の電極と前記第2の電極との間の既知の距離に基づいて、前記バルーン上に配置された前記複数の電極の前記位置を計算することと、を含む、方法。
(2) 前記電極の前記位置を計算することが、前記シャフトの前記遠位端に配置された磁気センサから、前記遠位端の方向を示す1つ又は2つ以上の方向信号を受信することと、(i)前記位置信号、(ii)前記方向信号、及び(iii)前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記既知の距離に基づいて、前記電極の前記位置を計算することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記電極の前記位置を計算することが、
前記位置信号に基づいて、前記2つの感知電極の前記位置を推定することと、
前記方向信号に基づいて、前記カテーテルの遠位端の方向を推定することと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記既知の距離に基づいて、前記第1及び第2の電極を前記カテーテルの遠位端の前記方向に沿った正確な位置に持っていく、前記第1及び第2の電極の変位を計算することと、
前記計算された変位に基づいて、前記電極の前記位置をスケーリングすることと、を含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記電極の前記位置を計算することが、前記2つの感知電極の前記位置、前記カテーテルの遠位端の前記方向、並びに前記第1及び第2の電極の前記変位を並行して計算することを含む、実施態様3に記載の方法。
(5) システムであって、
シャフト、前記シャフトの遠位端に装着された膨張可能なバルーン、前記膨張可能なバルーン上に配置された複数の電極、並びに前記バルーンの両側の前記シャフト上に装着された第1及び第2の電極を備える、バルーンカテーテルと、
プロセッサであって、
前記膨張可能なバルーン上に配置された前記複数の電極の位置、並びに前記シャフト上に装着された前記第1及び第2の電極の位置を示す信号を受信するように、かつ
前記受信した信号に基づいて、及び前記第1の電極と前記第2の電極との間の既知の距離に基づいて、前記バルーン上に配置された前記複数の電極の前記位置を計算するように構成されたプロセッサと、を備える、システム。
【0053】
(6) 前記プロセッサが、前記シャフトの前記遠位端に配置された磁気センサから、前記遠位端の方向を示す1つ又は2つ以上の方向信号を受信することと、(i)前記位置信号、(ii)前記方向信号、及び(iii)前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記既知の距離に基づいて、前記電極の前記位置を計算することと、によって、前記電極の前記位置を計算するように構成されている、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサが、
前記位置信号に基づいて、前記2つの感知電極の前記位置を推定することと、
前記方向信号に基づいて、前記カテーテルの遠位端の方向を推定することと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記既知の距離に基づいて、前記第1及び第2の電極を前記カテーテルの遠位端の前記方向に沿った正確な位置に持っていく、前記第1及び第2の電極の変位を計算することと、
前記計算された変位に基づいて、前記電極の前記位置をスケーリングすることと、によって、前記電極の前記位置を計算するように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサが、前記2つの感知電極の前記位置、並びに前記カテーテルの遠位端の前記方向、並びに前記第1及び第2の電極の前記変位を並行して計算することによって、前記電極の前記位置を計算するように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(9) バルーンカテーテルであって、
シャフトと、
前記シャフトの遠位端に装着された膨張可能なバルーンと、
第1及び第2の電極であって、前記バルーンの両側の前記シャフト上に装着され、前記第1及び第2の電極のそれぞれの位置を示す電気信号を伝送するように構成されている、第1及び第2の電極と、を備える、バルーンカテーテル。
(10) 前記バルーンの外部表面上に配置された切除電極を備える、実施態様9に記載のバルーンカテーテル。
【0054】
(11) 前記シャフトの前記遠位端に配置されており、かつ前記遠位端の方向を示す1つ又は2つ以上の方向信号を生成するように構成されている、磁気センサを備える、実施態様9に記載のバルーンカテーテル。