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特許7383400超音波診断装置、スキャン制御方法及びスキャン制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】超音波診断装置、スキャン制御方法及びスキャン制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20231113BHJP
   A61B 8/06 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
A61B8/14
A61B8/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019096564
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020188976
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西原 財光
(72)【発明者】
【氏名】掛江 明弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 功太
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0088644(US,A1)
【文献】特開平02-147052(JP,A)
【文献】特開平06-090952(JP,A)
【文献】特開2012-192077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電振動子が所定の曲率に沿って配列された超音波プローブと、
扇状のスキャンを実行する第1のスキャンモードと、超音波の送受信の深度を前記超音波プローブの送受信面に近い第1の深度範囲と前記第1の深度範囲よりも深い第2の深度範囲とに分けた場合に、各深度範囲の開始点からの距離を基準として対応する前記第1の深度範囲における深度と前記第2の深度範囲における深度との間での走査線間隔の差を前記第1のスキャンモードよりも小さく、かつ、0よりも大きくした第2のスキャンモードと、を実行するように前記複数の圧電振動子を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数の圧電振動子の配列方向における第1の位置の圧電振動子の駆動に与える遅延より、前記第1の位置よりも前記配列方向の中心に近い第2の位置の圧電振動子の駆動に与える遅延を大きくすることで前記第2のスキャンモードを実行する、超音波診断装置。
【請求項2】
前記制御部は、観察条件に応じて、前記第1のスキャンモードと前記第2のスキャンモードとを切り替える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記観察条件は、スキャン範囲を含み、
前記制御部は、前記スキャン範囲に応じて前記第1のスキャンモードと前記第2のスキャンモードとを切り替える、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記観察条件は、観察モードを含み、
前記制御部は、前記観察モードがBモードである場合には前記第1のスキャンモードに切り替え、前記観察モードがドプラモードである場合には前記第2のスキャンモードに切り替える、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
複数の圧電振動子が所定の曲率に沿って配列された超音波プローブにおける前記複数の圧電振動子を制御して、扇状のスキャンを実行する第1のスキャンモードと、超音波の送受信の深度を前記超音波プローブの送受信面に近い第1の深度範囲と前記第1の深度範囲よりも深い第2の深度範囲とに分けた場合に、各深度範囲の開始点からの距離を基準として対応する前記第1の深度範囲における深度と前記第2の深度範囲における深度との間での走査線間隔の差を前記第1のスキャンモードよりも小さく、かつ、0よりも大きくした第2のスキャンモードとを実行する、
ことを含み、
前記複数の圧電振動子の配列方向における第1の位置の圧電振動子の駆動に与える遅延より、前記第1の位置よりも前記配列方向の中心に近い第2の位置の圧電振動子の駆動に与える遅延を大きくすることで前記第2のスキャンモードを実行する、スキャン制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のスキャン制御方法をコンピュータに実行させるスキャン制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置、スキャン制御方法及びスキャン制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波検査は、技師または医師が超音波プローブを被検体の体表上で操作して、人体内部の組織構造、血流等の情報を得ることによって実施される。例えば、技師や医師は、診断部位や診断内容に応じて、超音波を送受信する超音波プローブを体表上で操作することによって被検体内を超音波で走査して、組織構造を示す超音波画像や、血流等の情報を示す超音波画像を収集する。
【0003】
このような超音波検査においては、診断を適切に行うため、複数種類の超音波プローブが用いられる。例えば、腹部などを広範囲にスキャンするために、複数の圧電振動子が扇状に配置されたコンベックスプローブが用いられる。また、例えば、末梢血管や表在臓器などをスキャンするために、複数の圧電振動子が直線状に配置されたリニアプローブが用いられる。ここで、このような複数種類の超音波プローブは、超音波検査中に用途に応じて切り替えて用いられる場合がある。
【0004】
また、リニアプローブでは、走査線の角度を制御する種々の技術が知られている。例えば、リニアプローブにおける視野幅の狭さを補うために、走査線の角度を制御して視野幅を確保するトラペゾイドスキャン(台形スキャン、ベクタスキャン)が知られている。また、例えば、体表に並行する血管の血流状態を観察し易くするために、リニアプローブの走査線を血管の走行方向に対して直交させるように制御するオブリークスキャン(斜めスキャン)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-154980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、超音波検査のスループットを向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の超音波診断装置は、超音波プローブと、制御部とを備える。超音波プローブは、複数の圧電振動子が所定の曲率に沿って配列される。制御部は、扇状のスキャンを実行する第1のスキャンモードと、第1深度における走査線間隔と前記第1深度よりも深部の第2深度における走査線間隔との差を前記第1のスキャンモードよりも小さくした第2のスキャンモードと、を実行するように前記複数の圧電振動子を制御する。前記制御部は、前記複数の圧電振動子の配列方向における第1の位置の圧電振動子の駆動に与える遅延より、前記第1の位置よりも前記配列方向の中心に近い第2の位置の圧電振動子の駆動に与える遅延を大きくすることで前記第2のスキャンモードを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係る第1のスキャンモードの一例を説明するための図である。
図2B図2Bは、第1の実施形態に係る第2のスキャンモードの一例を説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るコンベックスプローブである超音波プローブを模式的に示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る第2のスキャンモードにおける走査線の制御の一例を説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る画像生成機能による座標変換の一例を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る第2のスキャンモードで生成される超音波画像の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、第2の実施形態に係る第2のスキャンモードの一例を説明するための図である。
図9図9は、その他の実施形態に係る超音波画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願に係る超音波診断装置、スキャン制御方法及びスキャン制御プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る超音波診断装置、スキャン制御方法及びスキャン制御プログラムは、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態における超音波診断装置について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ2と、ディスプレイ3と、入力インターフェース4と、装置本体5とを有し、超音波プローブ2と、ディスプレイ3と、入力インターフェース4とが装置本体5と通信可能に接続される。
【0011】
超音波プローブ2は、装置本体5に含まれる送受信回路51に接続される。超音波プローブ2は、例えば、プローブ本体に複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、送受信回路51から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ2は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ2は、プローブ本体において、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ2は、装置本体5と着脱自在に接続される。ここで、本実施形態に係る超音波プローブ2は、複数の圧電振動子が所定の曲率に沿って配列されたコンベックス型の超音波プローブである。
【0012】
超音波プローブ2から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ2が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
なお、超音波プローブ2は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブや、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブであり、被検体Pを3次元でスキャンすることが可能である。
【0014】
ディスプレイ3は、超音波診断装置1の操作者が入力インターフェース4を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体5において生成された超音波画像や表示情報等を表示したりする。また、ディスプレイ3は、装置本体5の処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。また、ディスプレイ3は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。
【0015】
入力インターフェース4は、所定の位置(例えば、関心領域等)の設定や、画像の表示方向の設定、数値の入力、モードの切り替え等を行うための操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース4は、トラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース4は、後述する処理回路55に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し処理回路55へと出力する。なお、本明細書において入力インターフェース4は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路55へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0016】
装置本体5は、送受信回路51と、Bモード処理回路52と、ドプラ処理回路53と、メモリ54と、処理回路55とを有する。図1に示す超音波診断装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ54へ記憶されている。送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53、及び、処理回路55は、メモリ54からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0017】
送受信回路51は、パルス発生器、送信遅延回路、パルサ等を有し、超音波プローブ2に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ2から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ2に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0018】
なお、送受信回路51は、後述する処理回路55の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0019】
また、送受信回路51は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延回路、加算器等を有し、超音波プローブ2が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0020】
Bモード処理回路52は、送受信回路51から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0021】
ドプラ処理回路53は、送受信回路51から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。本実施形態の移動体は、血管内を流動する血液や、リンパ管内を流動するリンパ液等の流体である。
【0022】
なお、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理回路52は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路53は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。3次元のBモードデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに位置する反射源の反射強度に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。また、3次元のドプラデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに、血流情報(速度、分散、パワー)の値に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。
【0023】
メモリ54は、処理回路55が生成した表示用の超音波画像を記憶する。また、メモリ54は、Bモード処理回路52やドプラ処理回路53が生成したデータを記憶する。また、メモリ54は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。
【0024】
処理回路55は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路55は、図1に示す制御機能551、画像生成機能552、及び、表示制御機能553に対応するプログラムをメモリ54から読み出して実行することで、種々の処理を行う。ここで、制御機能551は、制御部の一例である。また、画像生成機能552は、画像生成部の一例である。
【0025】
制御機能551は、入力インターフェース4を介して操作者から入力された各種設定要求や、メモリ54から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53の処理を制御する。また、制御機能551は、コンベックスプローブである超音波プローブ2によって送信される走査線の送信方向を変化させることで、第1のスキャンモード(コンベックススキャンモード)と、第2のスキャンモード(リニアスキャンモード)とを切り替える。なお、第1のスキャンモードと第2のスキャンモードについては、後に詳述する。
【0026】
画像生成機能552は、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成機能552は、Bモード処理回路52が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。Bモード画像データは、超音波走査された領域内の組織形状が描出されたデータとなる。また、画像生成機能552は、ドプラ処理回路53が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。ドプラ画像データは、超音波走査された領域内を流動する流体に関する流体情報を示すデータとなる。
【0027】
ここで、画像生成機能552は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像を生成する。具体的には、画像生成機能552は、超音波プローブ2による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像を生成する。ここで、本実施形態の画像生成機能552は、第1のスキャンモード及び第2のスキャンモードに応じた座標変換を行う。なお、この座標変換については、後に詳述する。
【0028】
また、画像生成機能552は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成機能552は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0029】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成機能552が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像である。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0030】
更に、画像生成機能552は、Bモード処理回路52が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のBモード画像データを生成する。また、画像生成機能552は、ドプラ処理回路53が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のドプラ画像データを生成する。3次元のBモードデータ及び3次元のドプラデータは、スキャンコンバート処理前のボリュームデータとなる。すなわち、画像生成機能552は、「3次元のBモード画像データや3次元のドプラ画像データ」を「3次元の超音波画像データであるボリュームデータ」として生成する。
【0031】
更に、画像生成機能552は、ボリュームデータをディスプレイ3にて表示するための各種の2次元画像データ(超音波画像)を生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうことができる。
【0032】
表示制御機能553は、メモリ54が記憶する表示用の超音波画像をディスプレイ3にて表示するように制御する。また、制御機能551は、各機能による処理結果をディスプレイ3にて表示するように制御する。例えば、制御機能551は、表示情報をディスプレイ3にて表示するように制御する。
【0033】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波検査のスループットを向上させることを可能にする。具体的には、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、コンベックスプローブである超音波プローブ2で第1のスキャンモード(コンベックススキャンモード)と、第2のスキャンモード(リニアスキャンモード)とを切り替えて実行することで、超音波プローブの持ち替えを要する検査頻度を低減し、超音波検査のスループットを向上させる。
【0034】
上述したように、超音波検査では、観察対象の特性に応じて、適したプローブが使い分けられる。特に、コンベックスプローブを用いる場合、その形状特性から、深部における走査線間隔が広くなり、方位方向の空間分解能が相対的に悪くなるため、リニアプローブに持ち替えて検査される場合があった。また、コンベックスプローブでは、走査線が扇状で角度が異なるため、体表に並行する血管の血流状態を観察する際に、血流が一定方向であっても血流に対する走査線の角度が変わることとなる。すなわち、超音波プローブ2に近づく血流に向かう走査線と、超音波プローブ2から遠ざかる血流に向かう走査線とがあり、血流の表示が一定の方向にならない場合があった。そのため、体表に並行する血管の血流状態を観察する際には、リニアプローブに持ち替えて検査される。
【0035】
このように、超音波検査では、超音波プローブの持ち替えを要する場合があり、超音波プローブの持ち替えにより検査のスループットが低下する場合がある。そこで、本願では、コンベックスプローブによってリニアプローブと同様のリニアスキャンを実行することで、超音波プローブの持ち替えを低減し、超音波検査のスループットを向上させる。
【0036】
以下、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の詳細について説明する。制御機能551は、扇状のスキャンを実行する第1のスキャンモードと、超音波プローブ2の送受信面近傍の位置における走査線間隔と送受信面近傍の位置よりも深部の位置における走査線間隔との差を第1のスキャンモードよりも小さくした第2のスキャンモードとを実行するように複数の圧電振動子を制御する。具体的には、制御機能551は、送信超音波を形成するための各レートパルスに対して与える遅延時間を変化させるように送受信回路51を制御することで、第1のスキャンモードと第2のスキャンモードを実行するように制御する。
【0037】
図2Aは、第1の実施形態に係る第1のスキャンモードの一例を説明するための図である。例えば、制御機能551は、図2Aに示すように、走査線(超音波ビーム)を扇状に送信する第1のスキャンモードを実行するように、超音波プローブ2の圧電振動子を制御する。具体的には、制御機能551は、図2Aに示すように、超音波プローブ2の送受信面近傍の位置における走査線の間隔「a」よりも、深部の位置における走査線の間隔「b」が広い、第1のスキャンモードを実行させる。すなわち、制御機能551は、コンベックスプローブを用いた通常のスキャンである第1のスキャンモードを実行させる。
【0038】
かかる場合には、例えば、送受信回路51は、制御機能551による制御のもと、走査線(超音波ビーム)の送信に用いる圧電振動子の数及び位置と、曲率中心を基準とした走査線の走査角度とに基づく圧電振動子ごとの遅延量を、各圧電振動子に対応する各レートパルスに対して与えることで、1つの走査線を形成させる。送受信回路51は、各走査線を送信するための圧電振動子に対して上述した遅延制御を行うことで、第1のスキャンモードを実行させる。なお、この遅延制御に関する制御情報(例えば、各走査線を形成するための遅延量など)は、メモリ54に記憶されており、第1のスキャンモードを実行する際に、読み出されて利用される。
【0039】
一方、第2のスキャンモードでは、制御機能551は、超音波プローブ2の送受信面近傍の位置における走査線間隔と送受信面近傍の位置よりも深部の位置における走査線間隔との差が第1のスキャンモードよりも小さくなるように制御する。すなわち、制御機能551は、送受信面近傍の位置における走査線間隔と深部の位置における走査線間隔との差が、第1のスキャンモードにおける差「b-a」よりも小さくなるように、複数の圧電振動子を制御する。
【0040】
図2Bは、第1の実施形態に係る第2のスキャンモードの一例を説明するための図である。例えば、制御機能551は、図2Bに示すように、送受信面近傍の位置における走査線間隔を「a'」、送受信面近傍の位置よりも深部の位置における走査線間隔を「a'」とするように制御する。すなわち、制御機能551は、送受信面近傍の位置における走査線間隔と送受信面近傍の位置よりも深部の位置における走査線間隔とが同一となるように、複数の圧電振動子を制御する。換言すると、制御機能551は、コンベックスプローブである超音波プローブ2を用いたリニアスキャンを実行するように制御する。
【0041】
かかる場合には、例えば、送受信回路51は、処理回路55により実現される制御機能551による制御のもと、走査線(超音波ビーム)の送信に用いる圧電振動子の数及び位置と、隣接する走査線との間隔とに基づく圧電振動子ごとの遅延量を、各圧電振動子に対応する各レートパルスに対して与えることで、1つの走査線を形成させる。
【0042】
以下、遅延量の求め方について、図3を参照して説明する。図3は、第1の実施形態に係るコンベックスプローブである超音波プローブ2を模式的に示す図である。ここで、図3においては、「A」が超音波プローブ2に備えられた圧電振動子の位置に対応するビーム起点位置を示し、「B」が遅延量を計算する対象となる遅延計算対象位置を示し、「C」が超音波プローブ2の曲面の曲率中心を示す。また、図3においては、「F」がフォーカス位置を示し、「r」が曲率半径を示し、「f」がフォーカス深さを示す。また、図3においては、「θ」がプローブ中心からビーム起点位置Aまでの角度を示し、「φ」がプローブ中心から遅延計算対象位置Bまでの角度を示す。
【0043】
図3では、ビーム起点位置Aの真下にあるフォーカス位置Fにビームを収束させる場合について説明する。かかる場合には、処理回路55は、超音波ビームを送受信する場合の遅延計算対象位置Bにおけるビーム起点位置Aに対する遅延時間を下記のように計算する。まず、図3におけるX軸方向における遅延計算対象位置Bとビーム起点位置Aとの距離xは以下の式(1)にて表すことができる。
【0044】
【数1】
【0045】
ここで、角度φは曲率中心Cと遅延計算対象位置Bとを結ぶ線分と曲率中心CからY軸方向におろした線分との成す角度であり、角度θは曲率中心Cとビーム起点位置Aとを結ぶ線分と曲率中心CからY軸方向におろした線分との成す角度である。また、図3におけるY軸方向における遅延計算対象位置Bとビーム起点位置Aとの距離yは以下の式(2)にて表すことができる。
【0046】
【数2】
【0047】
処理回路55は、上記の式(1)及び式(2)に従い、距離x及び距離yを計算する。さらに、処理回路55は、ビーム起点位置Aとフォーカス位置Fとの距離f、距離xおよび距離yを用いて、遅延計算対象位置Bとフォーカス位置Fとの距離IBFを以下の式(3)によって求める。なお、フォーカス位置Fは既知の位置である。
【0048】
【数3】
【0049】
ここで、ビーム起点位置Aとフォーカス位置Fとの距離IAFは、フォーカス深さfであるため、処理回路55は、フォーカス位置Fへ集束するビーム起点位置Aを起点とする超音波ビームを送受信する場合のビーム起点位置Aに対する遅延計算対象位置Bの遅延時間dABを、以下の式(4)に従って算出する。なお、式(4)における「v」は音速を示す。
【0050】
【数4】
【0051】
遅延計算対象位置Bからの送信超音波は、ビーム起点位置Aからの送信超音波に比べて、フォーカス位置FにおいてdAB分遅延するため、処理回路55は、ビーム起点位置Aからの送信超音波をdAB分遅延するように送受信回路51を制御することで、フォーカス位置Fにおける超音波到達の遅延を少なくすることが可能となる。
【0052】
ここで、図3における位置Bと位置Aとの間の圧電振動子をビーム起点位置とすれば、ビーム起点位置を位置Aとした場合に比べて、位置Bと位置Aとの間の圧電振動子の位置からのビームに与える遅延量が小さくなることは図3から明らかである。すなわち、処理回路55は、複数の圧電振動子の配列方向における中心に近づくほど、圧電振動子の駆動に遅延を大きく与えるように送受信回路51を制御する。送受信回路51は、各走査線を送信するための圧電振動子に対して上述した遅延制御を行うことで、第2のスキャンモードを実行させる。
【0053】
図4は、第1の実施形態に係る第2のスキャンモードにおける走査線の制御の一例を説明するための図である。なお、図4においては、説明の便宜上、走査線L1とプローブの曲面の頂点における走査線L2のみを示しているが、実際には、その他多数の走査線によって走査される。例えば、図4に示す走査線L1を形成する場合、送受信回路51は、上述した遅延量を、走査線L1を形成するために用いる圧電振動子に対するレートパルスに与える。ここで、送受信回路51は、走査線L1を形成するために複数の圧電振動子を用いる場合において、配列方向の中心に近い圧電振動子ほど遅延を与えるように制御する。換言すると、送受信回路51は、走査線L1の形成においては、配列方向における外側の圧電振動子ほど早く駆動するように遅延制御する。
【0054】
また、例えば、図4に示す走査線L2を形成する場合、送受信回路51は、上述した遅延量を、走査線L2を形成するために用いる圧電振動子に対するレートパルスに与える。ここで、送受信回路51は、走査線L2を形成するために複数の圧電振動子を用いる場合において、配列方向における中心が最も遅く、両側に向かって外側の圧電振動子ほど早く駆動するように遅延制御する。なお、この遅延制御に関する制御情報(例えば、各走査線を形成するための遅延量など)は、メモリ54に記憶されており、第2のスキャンモードを実行する際に、読み出されて利用される。
【0055】
このように、制御機能551は、コンベックスプローブを用いて、通常のスキャンと、リニアスキャンを実行するように制御することができる。ここで、第1のスキャンモードと、第2のスキャンモードは、技師や医師などの操作者が任意に切り替えることができ、また、観察条件に応じて自動で切り替えることもできる。
【0056】
例えば、入力インターフェース4が、操作者から切り替え操作を受け付けることで、第1のスキャンモードと第2のスキャンモードとが切り替わる。一例を挙げると、操作者は、超音波プローブ2(コンベックスプローブ)を用いた通常のスキャン(第1のスキャンモード)により、広範囲を観察し、深部の細かい部分を観察する際に、入力インターフェース4(例えば、ボタンなど)を操作して第2のスキャンモードに切り替える。これにより、操作者は、超音波プローブ2を持ち替えることなく、リニアスキャンと同様の深部の画像を観察することができる。
【0057】
また、観察条件はスキャン範囲を含み、制御機能551は、スキャン範囲に応じて第1のスキャンモードと第2のスキャンモードとを切り替える。一例を挙げると、制御機能551は、被検体情報に含まれるスキャン対象部位に基づいて、スキャン範囲を推定し、推定したスキャン範囲が閾値より広範囲の場合には第1のスキャンモードに切り替え、推定したスキャン範囲が閾値より狭い場合には、第2のスキャンモードに切り替える。また、例えば、制御機能551は、設定されたフォーカス位置に基づいて深さ方向のスキャン範囲を識別し、フォーカス位置が閾値より浅い場合には第1のスキャンモードに切り替え、フォーカス位置が閾値より深い場合には第2のスキャンモードに切り替える。なお、上述したスキャン範囲に応じたモードの切り替えは、あくまでも一例である。例えば、超音波画像上でスキャン範囲が設定され、設定されたスキャン範囲に応じて、第1のスキャンモードと第2のスキャンモードとが切り替えられてもよい。
【0058】
また、例えば、観察条件は観察モードを含み、制御機能551は、Bモードデータ収集時に第1のスキャンモードでスキャンするように制御し、ドプラデータ収集時に第2のスキャンモードでスキャンするように制御する。一例を挙げると、制御機能551は、Bモードデータを収集するための操作を受け付けた場合に、第1のスキャンモードに切り替える。また、制御機能551は、ドプラデータを収集するための操作を受け付けた場合に、第2のスキャンモードに切り替える。
【0059】
画像生成機能552は、複数の圧電振動子によって受信された反射波信号に基づく各走査線信号列に対して座標変換を行うことで、表示用の超音波画像を生成する。例えば、第1のスキャンモードで収集された走査線信号列に対して、通常のコンベックスプローブによる走査に応じた座標変換を行うことで、表示用の超音波画像を生成する。
【0060】
一方、第2のスキャンモードでスキャンを実行した場合、画像生成機能552は、リニアスキャンによる走査に応じた座標変換を行う。ここで、本実施形態では、コンベックスプローブによってリニアスキャンを実行していることから、単純にリニアスキャンによる走査に応じた座標変換を行っただけでは正確な座標変換を行うことができない。すなわち、コンベックスプローブでは、複数の圧電振動子が所定の曲率に沿って配置されていることから、画像生成機能552は、所定の曲率に基づく変換を含む座標変換を行うことで、表示用の超音波画像を生成する。
【0061】
図5は、第1の実施形態に係る画像生成機能552による座標変換の一例を説明するための図である。例えば、画像生成機能552は、図5に示すように、超音波プローブ2の先端位置P1から各走査線の始点位置までの距離を走査線ごとに算出する。一例を挙げると、画像生成機能552は、複数の圧電振動子の曲率に基づいて、走査線L3の始点位置P2を算出する。そして、画像生成機能552は、先端位置P1から走査線L3の始点位置P2までの距離「d」を算出する。そして、画像生成機能552は、走査線L3の信号に対してリニアスキャンによる走査に応じた座標変換を行うとともに、距離「d」に基づく座標変換を行う。
【0062】
画像生成機能552は、各走査線に対して、上記した曲率に基づく変換を含む座標変換を行うことで、表示用の超音波画像を生成する。なお、各走査線における先端位置P1から始点位置までの距離は、オフセット値としてメモリ54に記憶させることができる。すなわち、画像生成機能552は、第2のスキャンモードでは、走査線信号列と、リニアスキャンに応じた座標変換方式と、オフセット値とをメモリ54から読み出して座標変換を行うことで、表示用の超音波画像を生成する。なお、メモリ54に格納される走査線信号列のデータ(Bモードデータ、或いは、ドプラデータ)には、収集された超音波プローブの情報(例えば、コンベックスプローブなど)と、収集されたモード(例えば、第2のスキャンモードなど)が対応付けられる。
【0063】
表示制御機能553は、画像生成機能552によって生成された表示用の超音波画像をディスプレイ3に表示させるように制御する。図6は、第1の実施形態に係る第2のスキャンモードで生成される超音波画像の一例を示す図である。例えば、表示制御機能553は、図6に示すように、コンベックスプローブでリニアスキャンを行った超音波画像を表示させる。ここで、図6に示す超音波画像は、走査線間隔が深部でも広がっていない(密になっている)リニアスキャンで収集されたものであることから、通常のコンベックスプローブによるスキャンと比較して、深部における方位分解能が改善されたものとなっている。
【0064】
次に、図7を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理について説明する。図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。ここで、図7におけるステップS101~S103、S106、S107は、処理回路55がメモリ54から制御機能551に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。ステップS104及びステップS108は、処理回路55がメモリ54から画像生成機能552に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。ステップS105は、処理回路55がメモリ54から表示制御機能553に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。
【0065】
図7に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1では、処理回路55が、第2のスキャンモードへの切り替え操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、切り替え操作を受け付けた場合には(ステップS101、肯定)、処理回路55は、第2のスキャンモードに応じた遅延制御により超音波を送受信して(ステップS102)、反射波データをメモリ54に格納する(ステップS103)。
【0066】
そして、処理回路55は、超音波プローブ2の曲率に応じたオフセットと、リニアの座標変換方式とに基づいて、メモリに格納された反射波データを座標変換して(ステップS104)、超音波画像をディスプレイ3に表示させる(ステップS105)。
【0067】
一方、ステップS101において、第2のスキャンモードへの切り替え操作を受け付けていない場合には(ステップS101、肯定)、処理回路55は、第1のスキャンモードに応じた遅延制御により超音波を送受信して(ステップS106)、反射波データをメモリ54に格納する(ステップS107)。
【0068】
そして、処理回路55は、コンベックスの座標変換方式に基づいて、メモリに格納された反射波データを座標変換して(ステップS108)、超音波画像をディスプレイ3に表示させる(ステップS105)。
【0069】
上述したように、第1の実施形態によれば、超音波プローブ2は、複数の圧電振動子が所定の曲率に沿って配列される。制御機能551は、扇状のスキャンを実行する第1のスキャンモードと、超音波プローブ2の送受信面近傍の位置における走査線間隔と送受信面近傍の位置よりも深部の位置における走査線間隔との差を第1のスキャンモードよりも小さくした第2のスキャンモードとを実行するように複数の圧電振動子を制御する。制御機能551は、複数の圧電振動子の配列方向における第1の位置の圧電振動子の駆動に与える遅延より、第1の位置よりも配列方向の中心に近い第2の位置の圧電振動子の駆動に与える遅延を大きくすることで第2のスキャンモードを実行する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、送受信面近傍の位置よりも深部の位置における走査線間隔を送受信面近傍の位置における走査線間隔に近づけ、深部での方位分解能を向上させることができ、超音波プローブの持ち替えの頻度を低減させ、超音波検査のスループットを向上させることを可能にする。
【0070】
また、第1の実施形態によれば、制御機能551は、送受信面近傍の位置における走査線間隔と送受信面近傍の位置よりも深部の位置における走査線間隔とが同一となるように、複数の圧電振動子を制御する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、コンベックスプローブを用いたリニアスキャンを可能にする。
【0071】
また、第1の実施形態によれば、画像生成機能552は、複数の圧電振動子によって受信された反射波信号に基づく各走査線信号列に対して、所定の曲率に基づく変換を含む座標変換を行うことで、表示用の超音波画像を生成する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、コンベックスプローブを用いたリニアスキャンにおいて、表示用の超音波画像を正確に生成することを可能にする。
【0072】
また、第1の実施形態によれば、制御機能551は、観察条件に応じて、第1のスキャンモードと第2のスキャンモードとを切り替える。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、検査に応じて適したスキャンモードでスキャンを実行することを可能にする。
【0073】
また、第1の実施形態によれば、観察条件はスキャン範囲を含み、制御機能551は、スキャン範囲に応じて第1のスキャンモードと第2のスキャンモードとを切り替える。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、スキャン範囲に応じて適したスキャンモードでスキャンを実行することを可能にする。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、観察条件は観察モードを含み、制御機能551は、観察モードがBモードである場合には第1スキャンモードに切り替え、観察モードがドプラモードである場合には第2のスキャンモードに切り替える。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、観察モードに応じて適したスキャンモードでスキャンを実行することを可能にする。
【0075】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、第2のスキャンモードとして、走査線の間隔を一定にしてプローブ直下の被検体の深さ方向をスキャンする場合について説明した。第2の実施形態では、走査線の間隔を一定にして、斜めに角度を変化させるオブリークスキャンを実行する場合について説明する。
【0076】
第2の実施形態に係る制御機能551は、送受信面近傍の位置における走査線間隔と送受信面近傍の位置よりも深部の位置における走査線間隔とを同一とし、かつ、複数の圧電振動子によって送受信される走査線の角度を変化させる。図8は、第2の実施形態に係る第2のスキャンモードの一例を説明するための図である。例えば、制御機能551は、図8に示すように、送受信面近傍の位置における走査線間隔を「a'」、送受信面近傍の位置よりも深部の位置における走査線間隔を「a'」とするように制御し、かつ、各走査線の角度を傾けたオブリークスキャンを実行するように複数の圧電振動子を制御する。
【0077】
かかる場合には、例えば、送受信回路51は、制御機能551による制御のもと、走査線(超音波ビーム)の送信に用いる圧電振動子の数及び位置と、隣接する走査線との間隔と、傾ける角度とに基づく圧電振動子ごとの遅延量を、各圧電振動子に対応する各レートパルスに対して与えることで、1つの走査線を形成させる。送受信回路51は、各走査線を送信するための圧電振動子に対して上述した遅延制御を行うことで、第2のスキャンモードを実行させる。なお、走査線を傾ける角度は、任意に設定することができる。
【0078】
制御機能551は、第1の実施形態と同様に、第1のスキャンモードと、上記した第2のスキャンモードとを、操作者による切り替え操作、及び、観察条件に応じて切り替えることができる。ここで、制御機能551は、第1のスキャンモード、被検体の深さ方向をスキャンする第2のスキャンモード(第1の実施形態で説明した第2のスキャンモード)、及び、上記した第2のスキャンモード(第2の実施形態で説明したオブリークスキャンモード)を、操作者による切り替え操作、及び観察条件に応じて、任意に切り替えることができる。
【0079】
例えば、制御機能551は、体表に並行する血管の血流状態を観察するためのドプラデータの収集時に、上記したオブリークスキャンの第2のスキャンモードに切り替えることで、血流に向かう走査線の方向を一定にすることができ、血流表示を正しく行うことを可能にする。
【0080】
第2の実施形態に係る画像生成機能552は、第2のスキャンモードでは、走査線信号列と、オブリークスキャンに応じた座標変換方式と、オフセット値とをメモリ54から読み出して座標変換を行うことで、表示用の超音波画像を生成する。
【0081】
上述したように、第2の実施形態によれば、制御機能551は、送受信面近傍の位置における走査線間隔と送受信面近傍の位置よりも深部の位置における走査線間隔とを同一とし、かつ、複数の圧電振動子によって送受信される走査線の角度を変化させる。従って、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、コンベックスプローブを用いたスキャンにおいて、体表に並行する血管の血流表示を一定にすることができ、超音波プローブの持ち替えの頻度を低減させ、超音波検査のスループットを向上させることを可能にする。
【0082】
(その他の実施形態)
さて、これまで第1及び第2の実施形態について説明したが、上述した第1及び第2の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0083】
上述した第1及び第2の実施形態では、第1のスキャンモード及び第2のスキャンモードをそれぞれ別々に行う場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、スキャンする領域ごとにスキャンモードを切り替える場合でもよい。
【0084】
図9は、その他の実施形態に係る超音波画像の一例を示す図である。例えば、制御機能551は、図9における領域R1及び領域R3を第1のスキャンモードでスキャンし、領域R2を第2のスキャンモードでスキャンするように制御する。これにより、第2のスキャンモードでは表示されない領域を観察することができ、診断効率を向上させることを可能にする。
【0085】
上述した実施形態では、リニアスキャンを実行するように、コンベックスプローブである超音波プローブ2の走査線を制御する場合について説明した。しかしながら、本願に係る超音波診断装置1は、扇状にスキャンした走査線信号列からリニア状の画像を生成することもできる。かかる場合には、例えば、画像生成機能552は、収集した走査線信号列を用いて、全深度、全方位にピクセル単位で焦点を合わせるように再構成することで、コンベックスプローブによって収集した扇状のデータからリニアスキャンを実行した場合と同様の超音波画像を生成することができる。
【0086】
また、上述した実施形態では、第2のスキャンモードとして、走査線間隔が深度方向で一定になるように制御する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第1のスキャンモードにおける送受信面近傍の位置における走査線間隔と深部の位置における走査線間隔との差をより小さくしたスキャンを、第2のスキャンモードとしてもよい。
【0087】
かかる場合には、送受信回路51は、制御機能551による制御のもと、走査線の送信に用いる圧電振動子の数及び位置と、曲率中心を基準とした走査線の走査角度とに基づく圧電振動子ごとの遅延量を、各圧電振動子に対応する各レートパルスに対して与える。ここで、その他の実施形態に係る送受信回路51は、走査線の走査角度がより狭くなるように算出された遅延量を、各圧電振動子に対応する各レートパルスに対して与える。
【0088】
また、図1では、上述した各処理機能が単一の処理回路55によって実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路55は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路55が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0089】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0090】
なお、上記の実施形態の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0091】
また、上述した実施形態で説明したスキャン制御方法は、あらかじめ用意されたスキャン制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このスキャン制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このスキャン制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0092】
以上、説明したとおり、実施形態によれば、超音波検査のスループットを向上させることを可能にする。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0094】
1 超音波診断装置
55 処理回路
551 制御機能
552 画像生成機能
553 表示制御機能
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9