(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】任意染色植物の製造方法及び任意染色植物の製造装置並びに真空チャンバ
(51)【国際特許分類】
A01N 3/00 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
A01N3/00
(21)【出願番号】P 2019098727
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】517303100
【氏名又は名称】株式会社EGサイクル
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100207619
【氏名又は名称】渡辺 知晴
(72)【発明者】
【氏名】前川 進吉
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-203815(JP,A)
【文献】特開2007-12567(JP,A)
【文献】特開2007-012567(JP,A)
【文献】特開平3-81206(JP,A)
【文献】特開平9-169601(JP,A)
【文献】特開昭62-212301(JP,A)
【文献】特開平4-360801(JP,A)
【文献】特開2016-199503(JP,A)
【文献】特開2004-89872(JP,A)
【文献】特開2020-133978(JP,A)
【文献】特表2016-524518(JP,A)
【文献】特開2008-81463(JP,A)
【文献】特開2010-168291(JP,A)
【文献】特開2012-41323(JP,A)
【文献】特開2018-150647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に貯留された脱色液に脱色前の植物を漬ける工程と、
容器内に貯留された染色液に脱色後の植物を漬ける工程と、
真空引きされる真空チャンバであって、底板と、当該底板の外周縁に立設され、上面開口部を設ける側板と、前記上面開口部を開閉する天板と、前記天板を支えるための突っ支い部材と、を備えた真空チャンバ内に前記容器をセッティングする工程と、
セッティングされた前記容器に貯留された脱色液に脱色前の植物を漬けた後に、又はセッティングされた前記容器に貯留された染色液に脱色後の植物を漬けた後に、前記真空チャンバ内を10
-5Pa~0.1Paの真空で脱色した後、10
-5Pa~0.1Paの真空で着色する工程と、
を含んでいる任意染色植物の製造方法。
【請求項2】
底板と、当該底板の外周縁に立設され、上面開口部を設ける側板と、前記上面開口部を開閉する天板と、前記天板を支えるための突っ支い部材と、を備え、脱色前の植物が漬けられる脱色液、又は脱色後の植物が漬けられる染色液を貯留するための容器をセッティングする真空チャンバと、
前記真空チャンバ内を10
-5Pa~0.1Paの雰囲気とする真空引き手段と、
を備えている任意染色植物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生花や枝葉などを含む植物自体にない色を楽しめるように花弁等を着色した任意染色植物を製造するための任意染色植物の製造方法及び任意染色植物の製造装置並びに真空チャンバに関する。ここで、任意染色植物とは、任意の色に染められた植物という意味である。
【背景技術】
【0002】
生花にない色を楽しめるように花弁等を着色した任意染色植物として、プリザーブドフラワーが普及している。プリザーブドフラワーは、脱色液によって生花を脱色する工程と、染色液によって生花を着色する工程と、着色された生花を乾燥する工程と、を経て製造される。
【0003】
脱色液は、エタノールなどのアルコールを主成分としている。生花は、脱色液に5~6時間漬けられることで脱色される。染色液は、グリセリンと水と任意の色の色素を混ぜた液体で、任意の色にすることができる。脱色された生花は、染色液に12~24時間漬けられることで着色される。着色された生花は、風通しのよい場所で3日間程度乾燥されることで、プリザーブドフラワーが完成する。
【0004】
複数枚の花弁等のそれぞれに異なる色を簡単に着色できるようにしたプリザーブドフラワーの製造方法が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたプリザーブドフラワーの製造方法では、生花を着色するに先立って、茎を軸方向に沿って複数に分割する。分割された茎の各端部は、異なる色の染色液に漬けられる。こうすることで、各花弁には、異なる色が着色される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたプリザーブドフラワーの製造方法を含めてプリザーブドフラワーは、染色液が花弁の表面に例えば12時間以上かけて滲出することで着色される。したがって、プリザーブドフラワーを製造する従来の方法は、生産性が悪い。このことが一因で、プリザーブドフラワーは高価なものになっている。また、花弁等が厚すぎる生花は、染色液が花弁の表面に滲出しにくいことから、着色に時間がかかるだけでなく、所望の色に着色できないなど、プリザーブドフラワーのような任意染色植物に不向きとなる。前記したように任意染色植物とは、任意の色に染められた植物という意味である。プリザーブドフラワーは、任意染色植物の一種である。
【0007】
本発明は、種々の生花を短時間で着色できるようにした任意染色植物の製造方法及び任意染色植物の製造装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、任意染色植物の製造装置をはじめとした種々の装置に利用可能であり、変形しにくいようにした真空チャンバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る任意染色植物の製造方法は、容器内に貯留された脱色液に脱色前の植物を漬ける工程と、容器内に貯留された染色液に脱色後の植物を漬ける工程と、真空引きされる真空チャンバ内に前記容器をセッティングする工程と、セッティングされた前記容器に貯留された脱色液に脱色前の植物を漬けた後に、又はセッティングされた前記容器に貯留された染色液に脱色後の植物を漬けた後に、前記真空チャンバ内を高真空とする工程と、を含んでいる。
【0009】
本発明に係る任意染色植物の製造装置は、脱色前の植物が漬けられる脱色液、又は脱色後の植物が漬けられる染色液を貯留するための容器をセッティングする真空チャンバと、前記真空チャンバ内を高真空の雰囲気とする真空引き手段と、を備えている。
【0010】
前記任意染色植物の製造装置において、前記真空チャンバは、底板と、当該底板の外周縁に立設され、上面開口部を設ける側板と、前記上面開口部を開閉する天板と、を備えている。
この場合において、前記真空チャンバは、前記天板を支えるための突っ支い部材を備えている、ことが好ましい。
【0011】
本発明に係る真空チャンバは、高真空の雰囲気とされる真空チャンバであって、底板と、当該底板の外周縁に立設され、上面開口部を設ける側板と、前記上面開口部を開閉する天板と、前記上面開口部を閉じた天板を支える突っ支い部材を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、種々の植物を短時間で着色できるようにした任意染色植物の製造方法及び任意染色植物の製造装置を提供することができる。
また、本発明によれば、任意染色植物の製造装置のみならず種々の目的の装置に応用可能であり、変形しにくいようにした真空チャンバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る真空チャンバを含む本発明に係る任意染色植物の製造装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る真空チャンバであって、本発明に係る任意染色植物製造装置に備えられた真空チャンバの一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る真空チャンバに付属するクランパの一実施形態であって、(a)は天板が開いている状態を示す正面図であり、(b)は天板が閉じている状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る任意染色植物の製造方法及び任意染色植物の製造装置並びに真空チャンバの一実施形態について図面を参照しながら説明する。一実施形態では、任意染色植物の一例としてプリザーブドフラワーについて説明する。プリザーブドフラワーは、生花にない色を楽しめるように花弁等を着色した切花である。生花には、茎や枝などの花軸の先端部又は中間部に萼(がく)を介して複数枚の花弁が付いている。
【0015】
プリザーブドフラワーは、花軸が短く切られた生花を脱色する工程や、着色する工程などの工程を経て製造される。生花を脱色する工程においては、脱色液が使用される。生花を着色する工程においては、染色液が使用される。脱色液や染色液は、例えば少なくとも2~3本の生花を漬ける大きさの容器131(
図1参照)内に貯留される。容器131の上面には、生花が浮き上がらないようにするため、通気性を有する蓋(図示せず)が被せられる。
【0016】
脱色液としては、例えばエタノールなどが使用される。染色液は、グリセリンと水と任意の色の色素を混ぜて作られる。脱色液や染色液に漬けられた生花は、プリザーブドフラワーの製造装置を使用して花弁や花軸などが脱色され、着色される。
【0017】
図1に示すように、任意染色植物の製造装置1は、複数台(
図1では2台を図示)の容器131をセッティングする真空チャンバ(以下、「チャンバ」という。)11と、このチャンバ11内を高真空の雰囲気とする真空引き手段12とを備えている。高真空とは、好ましくは10
-5Pa~0.1Paの範囲で周囲よりも減圧された状態のことである。
【0018】
図2及び
図3に示すように、チャンバ11は、対峙している一対の平板(例えば、底板111と、天板112)と、底板111の周縁に立設された側板113とを備えている。底板111と天板112は、例えば、正方形状に形成されている。側板113は、長方形状に形成されている。側板113の短辺は、例えば長辺の半分の長さとされている。底板111又は天板112を形成する素材(製造部材)が正方形の平板であれば、この平板を二分割することで側板113を得ることができるため、製造部材を増やさないことで製造コストがアップしないようにすることができる。側板113は、底板111が正方形であると、当然ながら4枚で構成されている。
【0019】
底板111の周縁に立設された4枚の側板113は、隣り合った側板113の端縁同士が接合し、上面開口部110aを有する升状に形成されている。底板111と各側板113及び各側板113同士は、チャンバ11内が気密になるように溶接されている。このように升状に溶接された底板111と側板113とを以下、「本体110」という。底板111と天板112と側板113は、例えば、ステンレス鋼で形成されている。
【0020】
天板112は、荷吊装置(詳しくは後述する。)20によって昇降することで本体110の上面開口部110aを開閉する。天板112の下面には、外周縁に沿う平面視ロ字状のパッキン(図示せず)が固定されている。天板112が下降して、本体110の上面の開口部を閉じた状態において、
図3に示すようなクランパ140(
図1及び
図2において図示せず)を締め付けることで、パッキンが側板113の上端面に密着し、チャンバ11内が気密になる。
【0021】
クランパ140は、チャンバ11に付属するもので、固定部材141と、押さえ部材142と、軸部143と、締結部材144とを備えている。
図3においては、クランパ140が対向した一対の側板113にのみ描かれているが、実際には4枚の側板113に備えられる。また、各側板には、一つのクランパ140が備えらえてもよいが、複数のクランパ140が備えられることが好ましい。
【0022】
固定部材141は、側板113の上端部に固定される基部(採番せず)と、この基部の上端縁から外向きに突出した張出部(採番せず)とを備えている。基部は、側板113に溶接や接着剤などによって固定されてもよいし、磁石などによって着脱自在に固定されてもよい。押さえ部材142は、軸部143によって固定部材141の張出部に連結され、固定部材141に向き合う下向きの姿勢と、本体110の上面開口部を閉じた状態の天板112の上面に重なる横向きの姿勢とに転換する。締結部材144は、押さえ部材142が横向きの姿勢となって天板112を押さえた状態を維持するように押さえ部材142と固定部材141の張出部とを挟みつける。
【0023】
天板112が本体110の上面開口部110aを閉じた状態において、天板112の自重やチャンバ11内の真空引きによって、天板112が下方に撓まないようにするため、底板111の中心には、支柱となる突っ支い部材(以下、「ステー」という。)114が立てられている。ステー114の頂部が閉じられた天板112の下面を支える。ステー114は、天板112が撓まないような所定の長さ(高さ)とされるだけでなく、天板112がわずかに撓むような短めの長さとしてもよい。すなわち、ステー114の長さは、コストアップの一因となるような厳密な精度を要求されない。
【0024】
1枚の側板113の任意の位置には、真空引きするための排気口115と、真空破壊するための給気口116とが設けられている。
図1と
図2において、排気口115と給気口116とは、異なった位置に設けられている(位置関係が対応していない)が、いずれの位置であってもよく、異なった側板113に設けられていてもよい。排気口115には、真空引き手段12が接続される。
【0025】
真空引き手段12は、真空エジェクタ付きの真空発生器121と、この真空発生器121とチャンバ11の排気口115とを接続する排気管122と、この排気管122の途中に取り付けられた真空計123及び排気用開閉バルブ124とを備えている。真空発生器121としては、例えば、真空ポンプが使用される。
【0026】
給気口116には、給気管125が接続される。給気管125の端末には、給気用開閉バルブ126が接続されている。給気用開閉バルブ126は、常時、閉じられ、チャンバ11内の真空状態を解除する真空破壊するときに開かれる。給気用開閉バルブ126とチャンバとの途中には、真空スイッチ127が接続されている。真空スイッチ127と真空発生器121とは、信号線128によって接続されている。真空発生器121は、信号線128によって接続された真空スイッチ127によって自動運転される。すなわち、真空スイッチ127は、チャンバ11内の真空度が漏れによる真空破壊により、設定値Aよりも低真空になるとONされ、設定値Bよりも高真空になるとOFFされる。設定値A及び設定値Bは運転していく過程で決める。
【0027】
本体110の底板111上には、脱色する工程において脱色液を貯留した容器131がセッティングされ、さらに、染色する工程において染色液を貯留した容器131がセッティングされる。
【0028】
以上のように構成された任意染色植物の製造装置1は、作業室2内に設置される。
図1に示すように、作業室2には、固定式の荷吊装置20が設置されている。荷吊装置20は、巻上げ機(ウィンチ)であり、作業室2の天井3に固定された本体部211と、本体部211内に巻き取られた状態から引き出された状態とされるワイヤーやチェーンのような索状体212と、索状体212の下端部に取り付けられたフック214とを備えている。
【0029】
索状体212が本体部211内から引き出されたり、巻き戻されたりすることで、フック214が下降したり、上昇したりする。チャンバ11の天板112の上面には、フック214に引っ掛けられるアイボルトのような吊りピース117が取り付けられている。したがって、チャンバ11の天板112は、荷吊装置20が操作されることで本体110の上方に揚がったり、上面開口部110aを閉じるように下ったりする。
【0030】
ここで、このような任意染色植物の製造装置1を使用してプリザーブドフラワーを製造する方法について説明する。まず、チャンバ11の天板112を本体110の上面開口部110aを開けた状態として、脱色液L1を貯留していない容器131をチャンバ11内にセッティングする。このとき、
図3(a)に示すように、クランパ140の締結部材144は外され、押さえ部材142は下向きの姿勢となっている。
【0031】
次に、容器131内に脱色液L1を貯留する。脱色液L1内に脱色前の生花F1を漬ける。ただし、脱色前の生花F1が容器131内に入れられた後に、容器131内に脱色液L1が貯留されてもよい。いずれにしても、容器131の上面には、通気性のある蓋が被せられる。
【0032】
次に、荷吊装置20を使用し、フック214に引っ掛けられた状態の天板112を下降し、天板112が本体110の上面開口部110aを閉じる。そして、
図3(b)に示すように、クランパ140の押さえ部材142を横向きの姿勢とし、締結部材144によって押さえ部材142が天板112の上面を押さえつけるようにする。このとき、パッキンによって、天板112と本体110とは、隙間なく密着する。天板112の下面中心部は、ステー114の頂部に当たることで、下向きに撓むことがない。
【0033】
次に、真空引き手段12の真空発生器121を作動させ、チャンバ11内を真空引きする。チャンバ11は、本体110が溶接によって気密にされ、天板112がパッキンによって本体110と密着していることから、高真空の雰囲気とされる。チャンバ11内が所定の高真空となっているかどうかは、真空計123で監視する。チャンバ11内は、真空スイッチ127による真空発生器121の自動運転により、所定の高真空の状態を維持する。
【0034】
このようにして高真空の雰囲気とされたチャンバ11内において、脱色液L1に漬けられた脱色前の生花F1は、水分や色素が抜け出ることで、脱色される。チャンバ11内が高真空の雰囲気とされることで、脱色前の生花F1は、大気圧、例えば1気圧の雰囲気内で脱色液に漬けられるよりも短時間で脱色される。脱色前の生花F1は、容器131に蓋が被せられていることで、脱色液から浮き出ることがない。蓋は、通気性を有することで、脱色前の生花F1に対する真空引きの障害とならない。
【0035】
このようにして脱色前の生花F1が脱色されると、真空発生器121を停止し、真空破壊する。すなわち、給気管125に接続された給気用開閉バルブ126を開けることで、作業室2内の空気を給気管125からチャンバ11内に流入させる。そして、クランパ140の締結部材144を外し、横向きの姿勢の押さえ部材142を下向きの姿勢として、押さえ部材142が天板112を押さえていない状態とする。次に、荷吊装置20を操作して、天板112を本体110の上方に揚げることで、チャンバ11を開ける。
【0036】
次に、脱色後の生花F2をチャンバ11内から取り出す。容器131に被さっている蓋を取った後、脱色後の生花F2を脱色液L1から抜いてもよいし、脱色液L1に漬けられたままの脱色後の生花F2を容器131ごとチャンバ11内から取り出してもよい。
【0037】
次に、脱色後の生花F2を染色液L2によって染色する。そのため、チャンバ11の天板112が本体110の上面開口部110aを開けた状態として、染色液L2を貯留していない容器131をチャンバ11内にセッティングする。
【0038】
容器131内には、染色液L2が貯留される。染色液L2内には、脱色後の生花F2が漬けられる。ただし、容器131内に脱色後の生花F2が入れられた後、容器131内に染色液L2を貯留してもよい。いずれにしても、容器131の上面には、通気性のある蓋が被せられる。
【0039】
次に、本体110の上面開口部110aが天板112によって閉じられる。次に、チャンバ11内が真空引き手段12によって高真空の雰囲気とされる。チャンバ11内が高真空の雰囲気とされても、ステー114の頂部が天板112に当たることで、天板112は下向きに撓まない。
【0040】
チャンバ11内の容器131内の染色液L2に漬けられた脱色後の生花F2は、染色液L2によって着色される。チャンバ11内が高真空の雰囲気とされていることにより、染色液L2は、例えば、1~2時間で脱色後の生花F2に染み込む。このようにして生花は、任意の色に着色される。
【0041】
このようにして脱色後の生花F2が着色されると、真空発生器121を停止し、真空破壊する。チャンバ11の天板112が開けられた後、チャンバ11内から着色された生花(採番せず)が取り出される。容器131に被さっている蓋を取った後、着色された生花を染色液L2から抜いてもよいし、染色液L2に漬けられたままの着色された生花を容器131ごとチャンバ11内から取り出してもよい。
【0042】
着色された生花は、風通しのよい場所で3日間程度乾燥されることで、プリザーブドフラワーが完成する。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形改良等は本発明に含まれるものである。
【0044】
例えば、チャンバ11は、升状の本体110と正方形状の天板112とを組み合わせたものに限定することなく、有底円筒状の本体110と円盤状の天板112とを組み合わせたものとしてもよい。この本体110の底板111及び天板112は、ドーム形状の鏡板とすることで、ステー114を備えないようにすることができる。
【0045】
ステー114を備える場合は、支柱状のものに限定することなく、一方の側板113から他方の側板113に架け渡されるような梁であってもよいし、天板112から垂下させたものとしてもよい。天板112や底板111が正方形であっても、剛性が大きければ、任意染色植物の製造装置1は、ステー114を備えなくてもよい。
【0046】
チャンバ11は、天板112が昇降することなく、1枚の側板113が開閉するようにしてもよい。この場合は、開閉する1枚の側板113と、この側板113に対向する側板113とに突っ支い部材が挟まれるようにしてもよい。こうすることで、チャンバ11内が高真空の雰囲気とされても、開閉する側板113が内向きに大きく撓まないようにすることができる。
【0047】
前記実施形態では、容器131がチャンバ11内にセッティングされた後に脱色液L1や染色液L2を容器131内に貯留した。しかし、脱色液L1や染色液L2を貯留した容器131をチャンバ11内にセッティングしてもよい。
【0048】
前記実施形態では、チャンバ11内の全ての容器131に脱色液L1を貯留したり、染色液L2を貯留したりした。しかし、脱色するための時間と着色するための時間とが同じ場合は、チャンバ11内の一方の容器131内に脱色液L1を貯留したままとし、他方の容器131内に染色液L2を貯留したままとしてもよい。この場合は、脱色液L1や染色液L2は、劣化するまで使い回すことができる。
【0049】
前記実施形態では、脱色前の生花F1を脱色した後に、脱色後の生花F2を着色した。しかし、この任意染色植物の製造装置1は、脱色前の生花F1を脱色するだけ、あるいは、脱色後の生花F2を着色するだけのために使用してもよい。
【0050】
前記実施形態では、脱色前の生花F1,脱色後の生花F2からプリザーブドフラワーを製造した。しかし、任意染色植物の製造装置1及び任意染色植物の製造方法は、脱色前の生花F1及び脱色後の生花F2に限らず、枝葉を含む種々の植物に対して着色することができる。
【0051】
前記実施形態では、チャンバ11は、プリザーブドフラワーを製造するために使用した。しかし、チャンバ11は、プリザーブドフラワーを製造する装置以外に、真空引きが必要とされる種々の装置(例えば、食品や医薬品などを製造したり保管したりする装置)で使用可能である。
【0052】
以上まとめると、本発明が適用される任意染色植物の製造方法及び任意染色植物の製造装置1は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態をとることができる。
【0053】
すなわち、本発明に係る任意染色植物の製造方法は、
容器131内に貯留された脱色液L1に脱色前の植物F1を漬ける工程と、
容器131内に貯留された染色液L2に脱色後の植物F2を漬ける工程と、
真空引きされる真空チャンバ11内に前記容器131をセッティングする工程と、
セッティングされた前記容器131に貯留された脱色液L1に脱色前の植物F1を漬けた後、又はセッティングされた前記容器131に貯留された染色液L2に前記脱色後の植物F2を漬けた後に、前記真空チャンバ11内を高真空とする工程と、
を含んでいる。
【0054】
この任意染色植物の製造方法によれば、脱色前の植物F1が脱色液L1に漬けられることにより、脱色前の植物F1に含まれたポリフェノールなどの成分を抽出し、脱色することができる。脱色後の植物F2からは、所望の色に着色した任意染色植物を製造することができるだけでなく、任意染色植物の美しさを長期間保つようにすることができる。
【0055】
また、この任意染色植物の製造方法によれば、脱色前の植物F1が漬けられる脱色液L1、又は脱色後の植物F2が漬けられる染色液L2を貯留する容器131が真空チャンバ11内にセッティングされ、真空チャンバ11内が高真空とされることにより、脱色液L1に漬けられた脱色前の植物F1を短時間で脱色することができる、又は染色液L2に漬けられた脱色後の植物F2を短時間で着色することができる。
【0056】
本発明に係る任意染色植物の製造装置は、
脱色前の植物F1が漬けられる脱色液L1、又は脱色後の植物F2が漬けられる染色液L2を貯留するための容器131をセッティングする真空チャンバ11と、
前記真空チャンバ11内を高真空の雰囲気とする真空引き手段12と、
備えている。
【0057】
この任意染色植物の製造装置によれば、脱色前の植物F1が漬けられる脱色液L1を貯留するための容器131、又は脱色後の植物F2が漬けられる染色液L2を貯留するための容器131をセッティングする真空チャンバ11内が真空引き手段12によって高真空とされる。
【0058】
本発明に係る任意染色植物の製造装置において、
前記真空チャンバ11は、底板111と、当該底板111の外周縁に立設され、上面開口部110aを設ける側板113と、前記上面開口部110aを開閉する天板112と、を備えている。
【0059】
この任意染色植物の製造装置によれば、底板111と側板113と天板112とによって、容易にチャンバ11を製造することができる。
【0060】
前記本発明に係る任意染色植物の製造装置において、
前記真空チャンバ11は、前記天板を支えるための突っ支い部材114を備えていてもよい。
【0061】
この任意染色植物の製造装置によれば、チャンバ11内が高真空の雰囲気とされることで、底板111と天板112とが内向きに撓むような応力が作用しても、突っ支い部材114が底板111と天板112との間に挟まれることで、底板111と天板112とが内向きに撓まないようにする(変形しにくくする)ことができる。したがって、チャンバ11内が真空引きされたりされなかったりが繰り返されても、底板111と天板112とが疲労せず、長寿命化を図ることができる。
【0062】
本発明に係る真空チャンバ11は、
高真空の雰囲気とされる真空チャンバ11であって、
底板111と、当該底板111の外周縁に立設され、上面開口部110aを設ける側板113と、前記上面開口部110aを開閉する天板112と、前記上面開口部110aを閉じた天板112を支える突っ支い部材114とを備えている。
【0063】
本発明に係る真空チャンバ11によれば、チャンバ11内が高真空の雰囲気とされることで、底板111と天板112とが内向きに撓むような応力が作用しても、突っ支い部材114が底板111と天板112との間に挟まれることで、底板111と天板112とが内向きに撓まないようにする(変形しにくくする)ことができる。したがって、真空チャンバ11内が真空引きされたりされなかったりが繰り返されても、底板111と天板112とが疲労せず、長寿命化を図ることができる。チャンバ11は、プリザーブドフラワーを製造する装置以外に、真空引きが必要とされる種々の装置(例えば、食品や医薬品などを製造したり保管したりする装置)で使用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・・・任意染色植物の製造装置
11・・・・任意染色植物製造用の真空チャンバ
110a・・上面開口部
111・・・底板(平板)
112・・・天板(平板)
113・・・側板
114・・・突っ支い部材(ステー)
12・・・・真空引き手段
131・・・容器
2・・・・・作業室
F1・・・・脱色前の生花(植物)
F2・・・・脱色後の生花(植物)
L1・・・・脱色液
L2・・・・染色液