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  • 特許-制動制御装置 図1
  • 特許-制動制御装置 図2
  • 特許-制動制御装置 図3
  • 特許-制動制御装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
B60T8/17 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019106938
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020199828
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】古今 惇也
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143462(JP,A)
【文献】特開2018-023212(JP,A)
【文献】特開2014-213770(JP,A)
【文献】特開2012-106661(JP,A)
【文献】特開平07-300065(JP,A)
【文献】特開平07-096828(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009026432(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007021755(DE,A1)
【文献】特開2018-083573(JP,A)
【文献】特開2007-253715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/17
B60L 7/10
B60W 10/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとモータより駆動可能とし前記モータの出力側にリターダを備えた車両に搭載され、前記車両の制動制御を行う制動制御装置において、
前記モータによる制動と前記リターダによる制動を切り替えて制動制御を行う制動制御部と、
前記リターダの制動力を演算する制動力演算部と、を備え、
前記制動制御部は、前記リターダによる制動から前記モータによる制動に切り替えるときに、前記モータによる制動の制動力が、前記制動力演算部により演算された前記リターダの制動力となるように、前記モータを作動させ、前記モータによる制動から前記リターダによる制動に切り替えるときに、当該切り替えを行う前の前記モータによる制動の制動力が、前記制動力演算部により演算された前記リターダの制動力となるように、前記モータを作動させる、制動制御を行う、
制動制御装置。
【請求項2】
前記制動力演算部は、前記リターダの温度に基づいて前記リターダの制動力を演算する、請求項に記載の制動制御装置。
【請求項3】
前記制動力演算部は、前記リターダの作動時間を用いて前記リターダの温度を推定し、その推定された前記リターダの温度に基づいて前記リターダの制動力を演算する、
請求項に記載の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に搭載される制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の制御装置として、例えば、特開2000-213770号公報に記載されるように、エンジンとモータにより走行駆動可能なハイブリッド車両に搭載され、モータを駆動させるインバータを制御する制御装置が知られている。この制御装置は、アクセルペダルが開放操作された際に開放速度に応じて回生トルクの強さを調整することで、運転者の要求する減速トルクを得ようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-213770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この制御装置において、モータによる制動(回生制動)とモータの出力側に設けられるリターダによる制動を併用することが考えられる。ところが、車両の制動時において、モータによる制動とリターダによる制動の切り替えが適切に行えないおそれがある。例えば、モータによる制動からリターダによる制動による制動に切り替える場合、リターダによる制動力はリターダの温度によって変動する。このため、リターダの温度を加味せずにモータによる制動を行うと、モータによる制動力が不適切となり、制動の切替により制動力が急激に変化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、車両の制動力の変動を抑制してモータによる制動とリターダによる制動の切り替えが適切に行える制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る制動制御装置は、エンジンとモータより駆動可能としモータの出力側にリターダを備えた車両に搭載され、車両の制動制御を行う制動制御装置において、モータによる制動とリターダによる制動を切り替えて制動制御を行う制動制御部を備え、制動制御部は、モータによる制動及びリターダによる制動の一方から他方に制動を切り替えるときに、一方の制動の制動力と他方の制動の制動力を一致させるように制動制御を行うように構成される。この制動制御装置によれば、モータによる制動及びリターダによる制動の一方から他方を切り替えて制動制御を行う場合、一方の制動の制動力と他方の制動の制動力を一致させるように制動制御を実行する。このため、モータによる制動及びリターダによる制動の一方から他方を切り替えたときに車両の制動力の変動を抑制することができる。
【0007】
また、本発明に係る制動制御装置において、リターダの制動力を演算する制動力演算部を備え、制動力演算部により演算されたリターダの制動力を用いて、モータによる制動及びリターダによる制動の一方から他方を切り替えて制動制御を行ってもよい。この場合、制動力演算部によりリターダの制動力を演算することにより、リターダの制動力を正確に認識することができる。このため、モータによる制動及びリターダによる制動の一方から他方を切り替えたときに車両の制動力の変動を適切に抑制することができる。
【0008】
また、本発明に係る制動制御装置において、制動力演算部は、リターダの温度に基づいてリターダの制動力を演算してもよい。この場合、温度によって変動するリターダの制動力を正確に認識することができる。このため、モータによる制動及びリターダによる制動の一方から他方を切り替えたときに車両の制動力の変動を適切に抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係る制動制御装置において、制動力演算部は、リターダの作動時間を用いてリターダの温度を推定し、その推定されたリターダの温度に基づいてリターダの制動力を演算してもよい。この場合、リターダの作動時間に基づいてリターダの温度を推定し、その推定されたリターダの温度に基づいてリターダの制動力を演算する。リターダの温度を計測することなく、温度によって変動するリターダの制動力を正確に認識することができる。このため、モータによる制動及びリターダによる制動の一方から他方を切り替えたときに車両の制動力の変動を適切に抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両の制動力の変動を抑制してモータによる制動とリターダによる制動の切り替えを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る制動制御装置の構成概要を示すブロック図である。
図2図1の制動制御装置における制動力設定の制御マップを示す図である。
図3図1の制動制御装置における制動力設定の制御マップを示す図である。
図4図1の制動制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る制動制御装置1の構成概要を示すブロック図である。図1に示すように、制動制御装置1は、エンジン2とモータ4より駆動可能としモータ4の出力側にリターダ6を備えた車両に搭載され、車両の制動制御を行う装置である。車両は、例えばパラレル式のハイブリッド車両であり、バス、トラックなどの大型車両である。エンジン2の出力軸にはクラッチ3の入力軸が連結されている。クラッチ3の出力軸にはモータ4の回転軸が連結されている。モータ4の回転軸は、変速機5の入力軸が連結されている。変速機5の出力軸は、プロペラシャフト11が連結されている。プロペラシャフト11には、差動機構12及び駆動軸13を介して左右の駆動輪14が連結されている。また、変速機5の出力軸には、リターダ6が取り付けられている。
【0014】
エンジン2は、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジンなどの内燃機関である。クラッチ3は、エンジン2とモータ4の機械的な接続及び接続切離しを行う。モータ4は、電動機及び発電機として機能し、例えばモータジェネレータが用いられる。モータ4は、インバータ7の制御信号を受けて作動する。インバータ7は、バッテリ8と電気的に接続され、バッテリ8の電力を用いてモータ4を作動させる。バッテリ8は、直流電圧を出力する充電可能な蓄電器である。インバータ7は、モータ4を駆動動力源として機能させる場合、バッテリ8の直流電力を交流電力に変換してモータ4に供給する。変速機5は、エンジン2及びモータ4の動力をトルク、回転数及び回転方向を変えて駆動輪14側へ伝達する機構であり、例えばオートマチックトランスミッションが用いられる。
【0015】
リターダ6は、車両を減速させるブレーキ機器であり、例えば永久磁石式のものが用いられる。リターダ6は、いわゆるミッションリターダであり、変速機5の内部に組み込まれていてもよい。このリターダ6は、例えば、複数の永久磁石を有するステータ及び変速機5の出力軸と一体となって回転するロータを備えている。リターダ6は、永久磁石の磁束をロータへ作用させることにより作動状態(オン状態)となり、ロータに渦電流を生じさせて制動力を発生する。一方、リターダ6は、永久磁石の磁束のロータへの作用を低減することにより非作動状態(オフ状態)となり、制動力を解除する。リターダ6は、温度に応じて制動力が変化する。例えば、常温に対して高い温度状態になると、リターダ6が発揮する制動力が低下する。すなわち、リターダ6が高温になるほどリターダ6の制動力が低下する。これは、高温によりリターダ6の構成部品が熱膨張し、ステータとロータの距離が離れ、ロータへ磁束の作用が低減するためである。
【0016】
制動制御装置1には、ECU(Electronic Control Unit)9を備えている。ECU9は、制動制御装置1を制御する電子制御ユニットであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)を含むコンピュータを主体として構成されている。ECU9は、エンジン2、クラッチ3、モータ4、変速機5、リターダ6及びインバータ7と電気的に接続されている。例えば、ECU9と、エンジン2、クラッチ3、モータ4、変速機5、リターダ6及びインバータ7とは、CAN(Controller Area Network)通信によりデータの入出力を行ってもよい。
【0017】
ECU9は、運転者の運転操作に基づいてモータ4の制動(回生制動)又はリターダ6の制動を実行させる。例えば、ECU9は、運転者がブレーキ操作を行い又はアクセル操作を解除した時などに、必要に応じてモータ4による制動又はリターダ6による制動を実行する。具体的には、ECU9は、バッテリ8の充電が必要な場合にはモータ4による制動を行い、バッテリ8の充電が完了したらモータ4による制動からリターダ6の制動に切り替える。また、ECU9は、リターダ6の制動中においてバッテリ8の充電が必要な場合には、リターダ6による制動からモータ4による制動に切り替える。このとき、リターダによる制動力とモータ4による制動力に差があると、制動の切替時に制動力が急激に変動し車両のドライバビリティが悪化する。このため、制動の切替時に、リターダによる制動力とモータ4による制動力との差を低減することが求められる。
【0018】
ECU9には、制動力演算部91及び制動制御部92が設けられている。制動力演算部91は、リターダ6の温度に基づいてリターダ6の制動力の演算(推定、検出)を行う。リターダ6は温度によって発生する制動力が異なることから、制動力演算部91は、リターダ6の温度に応じてリターダ6の制動力を演算する。例えば、ECU9は、リターダ6の温度、ロータの回転数に応じたリターダ6の制動力マップを記憶しており、リターダ6の温度及びロータの回転数に基づいてリターダ6の制動力を演算する。ロータの回転数は、変速機5の出力軸の回転数と同じである。リターダ6の温度は、例えば、リターダ6が作動している場合、リターダ6の作動時間を用いて推定すればよい。作動時間は、作動継続している時間である。一方、リターダ6が作動停止している場合、リターダ6の温度は、リターダ6の作動していた時間及び作動停止から経過時間を用いて推定すればよい。
【0019】
制動制御部92は、モータ4による制動とリターダ6による制動を切り替えて制動制御を行う。制動制御部92は、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方を切り替えるときに、他方の制動の制動力を一方の制動の制動力を一致させるように制動制御を行う。例えば、制動制御部92は、制動力演算部91により演算されるリターダ6の制動力を用いて、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方を切り替えて制動制御を行う。具体的には、リターダ6による制動からモータ4による制動に切り替える場合、制動制御部92は、リターダ6の温度に基づいて制動力演算部91が演算したリターダ6の制動力に対しモータ4による制動力が一致するようにインバータ7を作動させて制動制御を行う。これにより、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方を切り替えたときに車両の制動力の変動を抑制することができる。
【0020】
図2及び図3は、制動力の設定するための制御マップの一例を示したものである。図2はリターダ6が高温時の制御マップ、図3は、リターダ6が低温時(常温時)の制御マップである。図2及び図3に示すように、制動制御部92は、リターダ6の温度に応じた制御マップを複数記憶しており、これらの制御マップを用いて制動を切り替えるときの制動力を決定している。例えば、制動制御部92は、リターダ6の温度に応じて制動力(制動トルク)を設定するための制御マップを決定する。そして、制動制御部92は、制御マップを用いて、変速機5のギア比(ギア段)及びモータ4の回転数を用いて制動切替時における制動力を設定する。これにより、リターダ6の制動力とモータ4による制動力が一致するように制動力の切り替えが行える。
【0021】
図2及び図3において、ギア比ごとに複数の制動トルク(負のトルク値)が表示されている。ギア比が高いほど制動トルクが大きくなっている。また、図2の高温時の制動力に比べて、図3の低温時の制動力は高くなっている。なお、図2及び図3では、制動トルクの設定の概要を示しており、制動トルクが五つのギア比について表示されているが、それ以上の制動トルクについて表示されていてもよい。また、制御マップの一例として、高温時の制御マップと低温時の制御マップを示したが、異なる温度に応じて三つ以上の制御マップが用いられてもよい。
【0022】
制動力演算部91及び制動制御部92は、例えば、それぞれの機能を果たすプログラムをECU9に導入することにより構成される。また、制動力演算部91及び制動制御部92は、物理的に個別の制御ユニットとしてECU9に設けられていてもよい。
【0023】
次に、本実施形態に係る制動制御装置1の動作について説明する。
【0024】
図4は、制動制御装置1の動作を示すフローチャートである。図4の各制御処理は、例えばECU9により繰り返して実行される。
【0025】
まず、図4のステップS10(以下、単に「S10」という。以下のステップについても同様とする。)に示すように、制動の切り替えが必要であるか否かが判定される。例えば、運転者のブレーキ操作により車両の制動が行われモータ4又はリターダ6を用いた制動が行われた場合において、リターダ6による制動からモータ4による制動へ切り替えが必要であるか否か、または、モータ4による制動からリターダ6による制動へ切り替えが必要であるか否かが判定される。
【0026】
例えば、リターダ6による制動が行われている場合、バッテリ8の充電が必要となったときには、リターダ6による制動からモータ4による制動へ切り替えが必要であると判定される。これに対し、リターダ6による制動が行われている場合、バッテリ8の充電が不要であるときには、リターダ6による制動からモータ4による制動へ切り替えが必要でないと判定される。
【0027】
一方、モータ4による制動が行われている場合、バッテリ8の充電が不要となったときには、モータ4による制動からリターダ6による制動へ切り替えが必要であると判定される。これに対し、モータ4による制動が行われている場合、バッテリ8の充電が必要であるには、モータ4による制動からリターダ6による制動へ切り替えが必要でないと判定される。
【0028】
S10にて制動の切り替えが必要でないと判定された場合、制動を切り替えることなく 継続して制動が行われる(S12)。例えば、リターダ6による制動が行われている場合、リターダ6による制動が継続して行われる。一方、モータ4による制動が行われている場合、モータ4による制動が継続して行われる。
【0029】
これに対しS10にて制動の切り替えが必要であると判定された場合、温度推定処理が行われる(S14)。温度推定処理は、リターダ6の温度を推定する処理である。例えば、制動力演算部91は、リターダ6の作動時間を用いてリターダ6の温度を推定する。具体的には、リターダ6による制動からモータ4による制動に切り替える場合、制動力演算部91は、リターダ6が作動していた時間を用いてリターダ6の温度を推定する。一方、モータ4による制動からリターダ6による制動に切り替える場合、制動力演算部91は、リターダ6が作動していた時間及びリターダ6の作動停止からの経過時間を用いてリターダ6の温度を推定する。
【0030】
次に、S16に制御処理が移行し、制動力演算処理が行われる。制動力演算処理は、リターダ6の制動により発生する制動力を演算する処理である。例えば、制動力演算部91は、S14にて推定されたリターダ6の温度に基づいてリターダ6の制動力を演算する。
【0031】
そして、S18に制御処理が移行し、制動切替処理が行われる。制動切替処理は、モータ4による制動力とリターダ6による制動力を一致させるようにして、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方に制動を切り替える処理である。例えば、制動制御部92は、S16にて演算されたリターダ6の制動力を用い、モータ4による制動力とリターダ6による制動力を一致させて、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方に制動を切り替える。
【0032】
具体的には、リターダ6による制動からモータ4による制動に切り替える場合、制動制御部92は、モータ4による制動力がS16にて演算されたリターダ6の制動力となるようにインバータ7を作動させる。一方、モータ4による制動からリターダ6による制動に切り替える場合、制動制御部92は、制動切替を行う前のモータ4による制動力がS16にて演算されたリターダ6の制動力となるようにインバータ7を作動させる。そして、制動制御部92は、モータ4による制動からリターダ6による制動に切り替える。これにより、モータ4による制動とリターダ6による制動を切り替えるときに、制動力の変動が抑制される。
【0033】
S18の制動切替処理及びS12の制動継続処理を終えたら、図4の一連の制御処理を終了する。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る制動制御装置1によれば、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方を切り替えて制動制御を行う場合、一方の制動の制動力と他方の制動の制動力を一致させるように制動制御を実行する。このため、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方を切り替えたときに車両の制動力の変動を抑制することができる。従って、車両のドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0035】
例えば、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方を切り替える場合に、モータ4による制動力とリターダ6による制動力が一致していないと、制動の切り替え時に車両の制動力が急激に変動することとなる。これに対し、本実施形態に係る制動制御装置1では、モータ4による制動力とリターダ6による制動力を一致させて制動の切り替えが行われる。このため、制動の切り替えによる制動力の急激な変動を抑制することができるのである。
【0036】
また、本実施形態に係る制動制御装置1によれば、リターダ6の制動力を演算する制動力演算部91を備え、制動力演算部91により演算されたリターダ6の制動力を用いて、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方を切り替えて制動制御を行っている。このため、制動力演算部91によりリターダ6の制動力を演算することにより、リターダ6の制動力を正確に認識することができる。このため、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方を切り替えたときに車両の制動力の変動を適切に抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る制動制御装置1において、リターダ6の温度に基づいてリターダ6の制動力が演算される。このため、温度によって変動するリターダ6の制動力を正確に認識することができる。従って、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方を切り替えたときに、車両の制動力の変動を適切に抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る制動制御装置1において、リターダ6の作動時間に基づいてリターダの温度が推定され、その推定されたリターダ6の温度に基づいてリターダ6の制動力が演算される。このため、リターダ6の温度を計測することなく、温度によって変動するリターダ6の制動力を正確に認識することができる。このため、モータ4による制動及びリターダ6による制動の一方から他方を切り替えたときに車両の制動力の変動を適切に抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明に係る制動制御装置の一実施形態を説明したものであり、本発明に係る制動制御装置は上記実施形態に記載されたものに限定されない。本発明に係る制動制御装置は、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で上記実施形態に係る制動制御装置を変形し、又は他のものに適用したものなどであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…制動制御装置、2…エンジン、3…クラッチ、4…モータ、5…変速機、6…リターダ、7…インバータ、8…バッテリ、9…ECU、91…制動力演算部、92…制動制御部。
図1
図2
図3
図4