(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】三次元積層方法および三次元形状物
(51)【国際特許分類】
B23K 26/34 20140101AFI20231113BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20231113BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20231113BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231113BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20231113BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2019108959
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】ニデックマシンツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若名 智宏
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0258168(US,A1)
【文献】特表2017-519106(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097298(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/215922(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/017144(WO,A1)
【文献】特開2019-137907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B29C 64/153
B33Y 10/00
B33Y 80/00
B22F 3/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物に成形層を積層させて中空形状をなす三次元形状物を形成する三次元積層方法であって、
前記加工対象物の加工面に向けて粉末材料を供給すると共に前記粉末材料に光ビームを照射して前記光ビームが照射された前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて前記成形層を形成することで内部空間が開口部を通して外部に連通する三次元形状物本体を形成する工程と、
前記三次元形状物本体を形成した後、前記開口部の端面に向けて粉末材料を供給すると共に前記粉末材料に光ビームを照射して前記光ビームが照射された前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて前記成形層を形成することで前記開口部の端面に前記開口部を閉塞するための蓋部を形成する工程と、
前記蓋部を形成した後、前記加工対象物の回転および前記開口部から前記内部空間への気体の供給により、前記内部空間の残留物を前記開口部から外部に排出する工程と、
前記内部空間の前記残留物を前記開口部から外部に排出した後、前記開口部の端面に向けて前記光ビームを照射して
前記蓋部の前記成形層を溶融固化させることで前記開口部を閉塞する工程と、
を有することを特徴とする三次元積層方法。
【請求項2】
前記開口部の端面と前記蓋部との間に所定長さの隙間が形成され、前記隙間に向けて前記光ビームを照射して前記成形層を溶融固化させることで前記隙間を閉塞することを特徴とする請求項
1に記載の三次元積層方法。
【請求項3】
前記開口部の端面と前記蓋部との間に所定長さの隙間が形成され、前記蓋部に向けて前記光ビームを照射して前記成形層を溶融固化させることで前記隙間を閉塞することを特徴とする請求項
1に記載の三次元積層方法。
【請求項4】
前記三次元形状物本体は、前記加工対象物の加工面に前記成形層を積層することで形成された第1壁部と第2壁部を有し、前記第1壁部と前記第2壁部により前記内部空間が形成されると共に、前記第1壁部の端部と前記第2壁部の端部により前記開口部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の三次元積層方法。
【請求項5】
前記開口部の前記成形層を溶融固化させて前記開口部を閉塞した後、前記開口部の閉塞部に向けて粉末材料を供給すると共に前記粉末材料に光ビームを照射して前記光ビームが照射された前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて前記成形層を形成することで被覆部を形成することを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の三次元積層方法。
【請求項6】
供給された粉末材料に光ビームを照射することで前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて形成された成形層を積層することで内部空間が開口部を通して外部に連通するように形成された三次元形状物本体と、
前記開口部の
端面に向けて前記粉末材料を供給すると共に前記粉末材料に前記光ビームを照射して前記光ビームが照射された前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて形成された蓋部の前記成形層に、前記光ビームを照射して前記蓋部の前記成形層が溶融固化することで前記開口部を閉塞する閉塞部と、
供給された粉末材料に光ビームを照射することで前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて形成された前記成形層を積層することで前記閉塞部を被覆するように形成された被覆部と、
を備えることを特徴とする三次元形状物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層により三次元形状物を製造する三次元積層方法およびこの三次元積層方法で製造された三次元形状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元形状物を製造する技術として、金属粉末材料に光ビームを照射することによって三次元形状物を製造する積層造形技術が知られている。積層造形技術としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された技術は、金属粉末材料で形成された粉末層に光ビームを照射して焼結層を形成し、それを繰り返すことによって複数の焼結層が一体として積層された三次元形状物を製造するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層造形技術により三次元形状物を製造するとき、この三次元形状物の体積が大きい場合、内部を中空形状にすることで、三次元形状物の軽量化や使用する粉末材料を低減したいという要望がある。積層造形技術では、光ビームの焦点位置を加工対象物の加工面の近傍とし、この光ビームの焦点位置に金属粉末材料を噴射する。すると、加工対象物の加工面で金属粉末材料が溶融し、凝固することで成形層が形成される。そのため、複数の積層造形技術により複数の壁部を積層して中空形状の三次元形状物を製造するとき、光ビームにより溶融しなかった金属粉末材料が三次元形状物の内部空間に入り込んでしまうおそれがある。すると、中空形状の三次元形状物は、内部に金属粉末材料が残留し、三次元形状物を装置の一部を構成する機械部品として使用した場合、装置の作動時に、金属粉末材料が異音を発生させたり、内面を摩耗させたり、または、回転体であればアンバランスを発生させたりするおそれがあるという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、中空形状をなす三次元形状物の品質の向上を図る三次元積層方法および三次元形状物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するための本開示の三次元積層方法は、加工対象物に成形層を積層させて中空形状をなす三次元形状物を形成する三次元積層方法であって、前記加工対象物の加工面に向けて粉末材料を供給すると共に前記粉末材料に光ビームを照射して前記光ビームが照射された前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて前記成形層を形成することで内部空間が開口部を通して外部に連通する三次元形状物本体を形成する工程と、前記三次元形状物本体を形成した後、前記開口部の端面に向けて粉末材料を供給すると共に前記粉末材料に光ビームを照射して前記光ビームが照射された前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて前記成形層を形成することで前記開口部の端面に前記開口部を閉塞するための蓋部を形成する工程と、前記蓋部を形成した後、前記加工対象物の回転および前記開口部から前記内部空間への気体の供給により、前記内部空間の残留物を前記開口部から外部に排出する工程と、前記内部空間の前記残留物を前記開口部から外部に排出した後、前記開口部の端面に向けて前記光ビームを照射して前記蓋部の前記成形層を溶融固化させることで前記開口部を閉塞する工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
そのため、加工対象物の加工面に成形層を形成して内部空間が開口部を通して外部に連通する三次元形状物本体を形成したとき、内部空間に粉末材料が入り込んでも、内部空間にある粉末材料などの残留物を開口部から外部に排出した後、開口部の成形層を溶融固化させて開口部を閉塞することから、内部空間に残留物のない中空形状をなす三次元形状物を製造することができる。すなわち、開口部を閉塞するとき、粉末材料を使用せずに、開口部の成形層を溶融固化させて開口部を閉塞するため、内部空間への粉末材料などの侵入が防止される。その結果、中空形状をなす三次元形状物の品質の向上を図ることができる。
【0008】
本開示の三次元積層方法では、前記三次元形状物本体を形成した後、前記開口部の端面に向けて粉末材料を供給すると共に前記粉末材料に光ビームを照射して前記光ビームが照射された前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて前記成形層を形成することで前記開口部の端面に前記開口部を閉塞するための蓋部を形成する工程を有し、前記内部空間の残留物を前記開口部から外部に排出した後、前記蓋部に向けて前記光ビームを照射して溶融固化させることで前記開口部を閉塞することを特徴とする。
【0009】
そのため、開口部の端面に開口部を閉塞するための蓋部を形成し、この蓋部に向けて光ビームを照射して溶融固化させることで開口部を閉塞することから、粉末材料を使用せずに開口部を適正に閉塞することができる。
【0010】
本開示の三次元積層方法では、前記開口部の端面と前記蓋部との間に所定長さの隙間が形成され、前記隙間に向けて前記光ビームを照射して前記成形層を溶融固化させることで前記隙間を閉塞することを特徴とする。
【0011】
そのため、開口部の端面と蓋部との間の隙間に向けて光ビームを照射して成形層を溶融固化させることで隙間を閉塞することから、光ビームにより隙間の近傍にある蓋部を溶融固化して隙間を効果的に閉塞することができる。
【0012】
本開示の三次元積層方法では、前記開口部の端面と前記蓋部との間に所定長さの隙間が形成され、前記蓋部に向けて前記光ビームを照射して前記成形層を溶融固化させることで前記隙間を閉塞することを特徴とする。
【0013】
そのため、蓋部に向けて光ビームを照射して成形層を溶融固化させることで開口部の端面と蓋部との間の隙間を閉塞することから、光ビームにより蓋部を溶融固化して隙間を効果的に閉塞することができる。
【0014】
本開示の三次元積層方法では、前記三次元形状物本体は、前記加工対象物の加工面に前記成形層を積層することで形成された第1壁部と第2壁部を有し、前記第1壁部と前記第2壁部により前記内部空間が形成されると共に、前記第1壁部の端部と前記第2壁部の端部により前記開口部が形成されることを特徴とする。
【0015】
そのため、第1壁部と第2壁部により三次元形状物本体を形成すると共に、内部空間と開口部を形成することから、三次元形状物の製造の簡素化を図ることができる。
【0016】
本開示の三次元積層方法では、前記加工対象物の回転または前記開口部から前記内部空間への気体の供給により前記内部空間の残留物を前記開口部から外部に排出することを特徴とする。
【0017】
そのため、加工対象物を回転したり、開口部から内部空間へ気体を供給したりすることで、内部空間の残留物を開口部から外部に容易に排出することができる。
【0018】
本開示の三次元積層方法では、前記開口部の前記成形層を溶融固化させて前記開口部を閉塞した後、前記開口部の閉塞部に向けて粉末材料を供給すると共に前記粉末材料に光ビームを照射して前記光ビームが照射された前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて前記成形層を形成することで被覆部を形成することを特徴とする。
【0019】
そのため、開口部の閉塞部に成形層を形成することで被覆部を形成することから、被覆部により開口部の閉塞部が被覆されることで、外観品質を向上することができる。
【0020】
また、本開示の三次元形状物は、供給された粉末材料に光ビームを照射することで前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて形成された前記成形層を積層することで内部空間が開口部を通して外部に連通するように形成された三次元形状物本体と、前記開口部の端面に向けて前記粉末材料を供給すると共に前記粉末材料に前記光ビームを照射して前記光ビームが照射された前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて形成された蓋部の前記成形層に、前記光ビームを照射して前記蓋部の前記成形層が溶融固化することで前記開口部を閉塞する閉塞部と、供給された粉末材料に光ビームを照射することで前記粉末材料の少なくとも一部を焼結または溶融固化させて形成された前記成形層を積層することで前記閉塞部を被覆するように形成された被覆部と、を備えることを特徴とする。
【0021】
そのため、三次元形状物本体の開口部の成形層が溶融固化した閉塞部により閉塞されているため、内部空間への粉末材料などの侵入が防止される。その結果、中空形状をなす三次元形状物の品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の三次元積層方法および三次元形状物によれば、中空形状をなす三次元形状物の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本実施形態の三次元積層装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、積層ヘッドの先端部の一例を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、制御装置の構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、三次元積層装置による第1壁部の製造方法を示す概略図である。
【
図5】
図5は、三次元積層装置による第2壁部の基部の製造方法を示す概略図である。
【
図6】
図6は、三次元積層装置による第2壁部の中間部の製造方法を示す概略図である。
【
図7】
図7は、三次元積層装置による第2壁部の先端部の製造方法を示す概略図である。
【
図8】
図8は、三次元積層装置による蓋部の製造方法を示す概略図である。
【
図9】
図9は、残留物の排出方法を示す概略図である。
【
図10】
図10は、三次元積層装置による蓋部の溶融方法を示す概略図である。
【
図11】
図11は、蓋部が溶融して開口部を閉塞した状態を示す概略図である。
【
図12】
図12は、三次元積層装置による蓋部の溶融方法の変形例を示す概略図である。
【
図13】
図13は、蓋部が溶融して開口部を閉塞した状態の変形例を示す概略図である。
【
図14】
図14は、三次元積層装置による被覆部の製造方法を示す概略図である。
【
図15】
図15は、製造された三次元形状物を示す概略図である。
【
図16】
図16は、三次元積層方法を示すフローチャートである。
【0024】
以下に添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0025】
図1は、本実施形態の三次元積層装置を示す模式図である。ここで、本実施形態では、水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向およびY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち、鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0026】
図1に示すように、三次元積層装置1は、基台部100に三次元形状物を製造する装置である。基台部100は、三次元形状物が形成される土台となる部材であり、三次元積層装置1で所定の位置に搬送され、加工面に三次元形成物が形成される。本実施形態の基台部100は、板状の部材である。なお、基台部100は、これに限定されない。基台部100は、三次元形状物の土台となる部材を用いてもよいし、三次元形状物を付加する部材を用いてもよい。所定の位置に三次元形成物が形成されることで、部品、製品となる部材を基台部100として用いてもよい。
【0027】
三次元積層装置1は、三次元積層室2と、予備室3と、積層ヘッド収納室4と、機械加工部収納室5と、ベッド10と、テーブル部11と、積層ヘッド12と、機械加工部13と、制御装置20と、形状計測部30と、加熱ヘッド31と、装置計測部32と、工具交換部33と、ノズル交換部34と、粉末導入部35と、基台移動部36と、空気排出部37と、ガス導入部38と、粉末回収部39とを有する。
【0028】
三次元積層室2は、接続された配管等の設計された連通部分以外が外部から密封されている筐体(チャンバー)である。なお、設計された連通部分は、密閉状態と開放状態を切り換えるバルブ等が設けられており、必要に応じて、三次元積層室2を密閉状態とすることができる。三次元積層室2は、ベッド10と、テーブル部11と、積層ヘッド12と、機械加工部13の一部と、加熱ヘッド31の一部と、装置計測部32と、工具交換部33と、ノズル交換部34とが内部に配置されている。
【0029】
予備室3は、三次元積層室2に隣接して設けられている。予備室3は、接続された配管等の設計された連通部分以外が外部から密封されている。予備室3は、外部と三次元積層室2とを接続する減圧室となっている。予備室3内には、基台移動部36が設けられている。ここで、予備室3は、三次元積層室2の接続部に、例えば、気密性を有する扉6が設けられている。また、予備室3は、気密性を有する扉7により外部と接続されている。また、予備室3には、予備室3から空気を排出する空気排出部25が設けられている。予備室3は、扉7を開くことで、外部から必要な部材を内部に搬入することができる。また、予備室3は、扉6を開くことで、三次元積層室2との間で部材の搬入、搬出を行うことができる。
【0030】
積層ヘッド収納室4は、三次元積層室2のZ軸方向上側の面に設けられている。積層ヘッド収納室4は、Z軸スライド部4aで三次元積層室2に対してZ軸方向(矢印102の方向)に移動可能な状態で支持されている。積層ヘッド収納室4は、Z軸方向下側の面がベローズ18により三次元積層室2と繋がっている。ベローズ18は、積層ヘッド収納室4のZ軸方向下側の面と三次元積層室2と繋げ、積層ヘッド収納室4のZ軸方向下側の面を三次元積層室2の一部とする。また、三次元積層室2は、ベローズ18で囲われた領域に開口が形成されている。積層ヘッド収納室4のZ軸方向下側の面とベローズ18とで囲まれた空間は、三次元積層室2と繋がり、三次元積層室2とともに密閉されている。積層ヘッド収納室4は、積層ヘッド12と、形状計測部30と、加熱ヘッド31とを支持している。また、積層ヘッド収納室4は、積層ヘッド12のノズル23を含む一部と、加熱ヘッド31の先端部24を含む一部とがZ軸方向下側の面から三次元積層室2に向けて突出している。
【0031】
積層ヘッド収納室4は、Z軸スライド部4aでZ軸方向に移動することで、保持している積層ヘッド12と、形状計測部30と、加熱ヘッド31とをZ軸方向に移動させる。また、積層ヘッド収納室4は、ベローズ18を介して三次元積層室2と接続していることで、ベローズ18がZ軸方向の移動に合わせて変形し、三次元積層室2と積層ヘッド収納室4との間の密閉状態を維持できる。
【0032】
機械加工部収納室5は、三次元積層室2のZ軸方向上側の面に設けられている。また、機械加工部収納室5は、積層ヘッド収納室4に隣接して配置されている。機械加工部収納室5は、Z軸スライド部5aで三次元積層室2に対してZ軸方向(矢印104の方向)に移動可能な状態で支持されている。機械加工部収納室5は、Z軸方向下側の面がベローズ19により三次元積層室2と繋がっている。ベローズ19は、機械加工部収納室5のZ軸方向下側の面と三次元積層室2とを繋げ、機械加工部収納室5のZ軸方向下側の面を三次元積層室2の一部とする。また、三次元積層室2は、ベローズ19で囲われた領域に開口が形成されている。機械加工部収納室5のZ軸方向下側の面とベローズ19とで囲まれた空間は、三次元積層室2と繋がり、三次元積層室2とともに密閉されている。機械加工部収納室5は、機械加工部13を支持している。また、機械加工部収納室5は、機械加工部13の工具22を含む一部がZ軸方向下側の面から三次元積層室2に向けて突出している。
【0033】
機械加工部収納室5は、Z軸スライド部5aでZ軸方向に移動することで、保持している機械加工部13をZ軸方向に移動させる。また、機械加工部収納室5は、ベローズ19を介して三次元積層室2と接続していることで、ベローズ19がZ軸方向の移動に合わせて変形し、三次元積層室2と機械加工部収納室5との間の密閉状態を維持できる。
【0034】
ベッド10は、三次元積層室2内のZ軸方向の底部に設けられている。ベッド10は、テーブル部11を支持している。ベッド10は、各種配線や配管や駆動機構が配置されている。
【0035】
テーブル部11は、ベッド10の上面に配置され、基台部100を支持する。テーブル部11は、Y軸スライド部15と、X軸スライド部16と、回転テーブル部17とを有する。テーブル部11は、基台部100を取り付けて基台部100をベッド10上で移動させる。
【0036】
Y軸スライド部15は、ベッド10に対してX軸スライド部16をY軸方向(矢印106の方向)に沿って移動させる。X軸スライド部16は、Y軸スライド部15の稼働部となる部材に固定されており、Y軸スライド部15に対して回転テーブル部17をX軸方向(矢印108の方向)に沿って移動させる。回転テーブル部17は、X軸スライド部16の稼働部となる部材に固定されており、基台部100を支持している。回転テーブル部17は、例えば、傾斜円テーブルであり、固定台17aと、回転テーブル17bと、傾斜テーブル17cと、回転テーブル17dとを有する。固定台17aは、X軸スライド部16の稼働部となる部材に固定されている。回転テーブル17bは、固定台17aに支持されており、Z軸方向と平行な回転軸110を回転軸として回転する。傾斜テーブル17cは、回転テーブル17bに支持されており、回転テーブル17bの支持されている面に直交する回転軸112を軸として回動される。回転テーブル17dは、傾斜テーブル17cに支持されており、傾斜テーブル17cの支持されている面に直交する回転軸114を軸として回転される。回転テーブル17dは、基台部100を固定している。
【0037】
このように回転テーブル部17は、回転軸110,112,114を軸として各部を回転させることで、基台部100を直交する3軸周りに回転させることができる。テーブル部11は、回転テーブル部17に固定されている基台部100を、基台部100は、Y軸スライド部15およびX軸スライド部16により、Y軸方向およびX軸方向に移動させる。また、テーブル部11は、回転テーブル部17により回転軸110,112,114を軸として各部を回転させることで、基台部100を直交する3軸周りに回転させる。テーブル部11は、さらにZ軸方向に沿って基台部100を移動させてもよい。
【0038】
積層ヘッド12は、基台部100に向けて粉末材料を噴射し、さらに噴射した粉末材料にレーザ光(光ビーム)を照射することにより粉末を溶融させて、溶融した粉末を基台部100上で固化させて成形層を形成する。積層ヘッド12に導入される粉末は、三次元形状物の原料となる材料の粉末である。本実施形態において、粉末は、例えば、鉄、銅、アルミニウムまたはチタン等の金属材料などを用いることができる。なお、粉末としては、セラミック等の金属材料以外の材料を用いてもよい。積層ヘッド12は、ベッド10のZ軸方向の上側の面に対面する位置に設けられており、テーブル部11と対面している。積層ヘッド12は、Z軸方向の下部にノズル23が設置されている。積層ヘッド12は、本体46にノズル23が装着されている。
【0039】
図2は、積層ヘッドの先端部の一例を示す縦断面図である。
【0040】
図2に示すように、ノズル23は、外管41と、外管41の内部に挿入された内管42とを有する二重管である。外管41は、管状の部材であり、先端(Z軸方向下側)に向かって径が小さくなっている。内管42は、外管41の内部に挿入されている。内管42も、管状の部材であり、先端(Z軸方向下側)に向かって径が小さくなる形状である。ノズル23は、外管41の内周と内管42の外周との間が粉末(粉末材料)Pの通過する粉末流路43となる。内管42の内周面側がレーザ光の通過するレーザ経路44となる。ここで、ノズル23が装着されている本体46は、ノズル23と同様に二重管であり、粉末流路43とレーザ経路44も同様に形成されている。積層ヘッド12は、レーザ経路44の周囲を囲うように粉末流路43が配置されている。本実施形態では、粉末流路43が、粉末を噴射する粉末噴射部となる。積層ヘッド12は、粉末導入部35から導入された粉末Pが粉末流路43を流れ、外管41と内管42との間の端部の開口であるノズル噴射口部45から噴射される。
【0041】
積層ヘッド12は、粉末Pを、所定の収束位置において所定の収束径を有するように噴射する。ここで、収束径とは、噴射された粉末Pの軌跡の径が最小になる場合の粉末Pの軌跡の径である。上述のように、ノズル23は先端に向かって径が小さくなっているので、積層ヘッド12は、粉末Pを、放射方向内側に収束するように噴射する。すなわち、積層ヘッド12は、粉末Pの軌跡が所定の収束径を有するように、粉末Pを噴射する。また、収束位置とは、噴射された粉末Pの軌跡が収束する位置である。
【0042】
また、積層ヘッド12は、光源47と光ファイバ48と集光部49とを有する。光源47は、レーザ光を出力する。光ファイバ48は、光源47から出力されたレーザをレーザ経路44に案内する。集光部49は、レーザ経路44に配置され、光ファイバ48から出力されたレーザの光路に配置されている。集光部49は、光ファイバ48から出力されたレーザ光Lを集光する。集光部49で集光されたレーザ光Lは、内管42の端部から出力される。積層ヘッド12は、集光部49を本体46に配置したが、集光部49の一部または全部をノズル23に配置してもよい。ノズル23に集光部49の一部または全部を配置した場合、ノズル23を交換することで、焦点位置を異なる位置とすることができる。
【0043】
積層ヘッド12は、中心軸Oの位置にレーザ光Lの通過するレーザ経路44が設けられ、その外側に複数の粉末流路43が設けられる。積層ヘッド12は、粉末流路43から粉末Pを噴射し、レーザ経路44からレーザ光Lを出力する。積層ヘッド12から噴射された粉末Pは、積層ヘッド12から出力されたレーザ光Lが照射される領域に侵入し、レーザ光Lの焦点Fでこのレーザ光Lによって加熱される。レーザ光Lが照射された粉末Pは溶融した後、基台部100上に到達する。溶融した状態で基台部100上に到達した粉末Pは、冷却されて固化する。これにより、基台部100上に成形層を形成する。
【0044】
ここで、本実施形態の積層ヘッド12は、光源47から出力されたレーザ光Lを光ファイバ48で案内したが、光ファイバ48に限らず他の伝送部材であってもよい。また、集光部49は、本体46に設けてもノズル23に設けても、両方に設けてもよい。本実施形態の積層ヘッド12は、効果的に加工ができるため、粉末Pを噴射する粉末流路43と、レーザ光Lを照射するレーザ経路44とを同軸に設けたがこれに限定されない。積層ヘッド12は、粉末Pを噴射する機構とレーザ光Lを照射する機構とを別体としてもよい。本実施形態の積層ヘッド12は、粉末材料にレーザ光を照射したが、粉末材料を溶解または焼結させることができればよく、レーザ光以外の光ビームを照射してもよい。
【0045】
図1に示すように、機械加工部13は、例えば、成形層等を機械加工する。機械加工部13は、ベッド10のZ軸方向の上側の面に対面する位置に設けられており、テーブル部11と対面している。機械加工部13は、Z軸方向の下部に工具22が装着されている。なお、機械加工部13は、ベッド10よりもZ軸方向上側で、テーブル部11による基台部100の移動可能範囲に設けられていればよく、配置位置は本実施形態の位置に限られない。
【0046】
【0047】
図1に示すように、制御装置20は、三次元積層装置1の各部(上述したベッド10、テーブル部11、積層ヘッド12、機械加工部13、形状計測部30、加熱ヘッド31、装置計測部32、工具交換部33、ノズル交換部34、粉末導入部35、基台移動部36、空気排出部37、ガス導入部38、粉末回収部39など)の駆動部と電気的に接続されており、三次元積層装置1の各部の動作を制御する。制御装置20は、三次元積層室2や予備室3の外部に設置されている。制御装置20は、
図3に示すように、入力部51と、制御部52と、記憶部53と、出力部54と、通信部55とを有する。入力部51と、制御部52と、記憶部53と、出力部54と、通信部55との各部は電気的に接続されている。
【0048】
入力部51は、例えば、操作パネルである。作業者は、入力部51に情報や指令等を入力する。制御部52は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびメモリである。制御部52は、三次元積層装置1の各部に、三次元積層装置1の各部の動作を制御する指令を出力する。また、制御部52には、三次元積層装置1の各部からの情報等が入力される。記憶部53は、例えば、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)等の記憶装置である。記憶部53には、制御部52で実行されることで各部の動作を制御する三次元積層装置1の運転プログラムや、三次元積層装置1の情報、または三次元形状物の設計情報等が記憶される。出力部54は、例えば、ディスプレイである。出力部54は、例えば、三次元積層装置1の各部からの情報等を表示する。通信部55は、例えば、インターネットまたはLAN(Local Area Network)等のような通信回線と通信して、通信回線との間で情報をやり取りする。なお、制御装置20は、少なくとも制御部52および記憶部53を有していればよい。制御装置20は、制御部52および記憶部53を有していれば、三次元積層装置1の各部に指令を出力することができる。
【0049】
本実施形態の三次元積層装置1による三次元積層方法は、加工対象物90に成形層を積層させて中空形状をなす三次元形状物を形成するものである。本実施形態の三次元積層方法は、加工対象物90の加工面に向けて粉末Pを供給すると共に粉末Pにレーザ光Lを照射してレーザ光Lが照射された粉末Pの少なくとも一部を焼結または溶融固化させて成形層を形成することで内部空間が開口部を通して外部に連通する三次元形状物本体を形成する工程と、内部空間の残留物を開口部から外部に排出する工程と、開口部の端面に向けてレーザ光Lを照射して成形層を溶融固化させることで開口部を閉塞する工程とを有する。
【0050】
ここで本実施形態の三次元積層装置1による一般的な三次元形状物の製造方法について説明する。
【0051】
三次元積層装置1による三次元形状物の製造方法において、
図1および
図2に示すように、本実施形態においては、加工対象物90の加工面91に三次元形状物を製造する場合として説明する。加工対象物90は、例えば、金属製の板状部材であるが、上部に三次元形状物が製造されるものであれば、形状および材料は任意である。加工対象物90は、基台部100上に取付けられる。
【0052】
制御装置20は、テーブル部11により、基台部100上の加工対象物90が積層ヘッド12のZ軸方向下方に配置されるように、基台部100を移動させる。制御装置20は、粉末導入部35から積層ヘッド12に粉末を導入し、積層ヘッド12から気体と共に粉末Pを噴射しつつ、レーザ光Lを照射する。粉末Pは、所定の収束径をもって、基台部100上の加工対象物90に向かって噴射される。レーザ光Lは、積層ヘッド12と加工対象物90との間において、所定のスポット径をもって粉末Pに照射される。ここで、粉末Pの収束径のZ軸方向での位置に対するレーザ光Lのスポット径のZ軸方向での位置および粉末Pの収束径のZ軸方向での位置におけるスポット径は、例えば、集光部49の位置を動かすことにより制御することができる。
【0053】
すなわち、積層ヘッド12は、粉末流路43に粉末Pを導入し、ノズル噴射口部45から粉末Pを噴射し、レーザ経路44からレーザ光Lを出力する。レーザ経路44からのレーザ光Lは、加工対象物90の加工面91の近傍に焦点Fが設定され、ノズル噴射口部45からの粉末Pは、このレーザ光Lの焦点に向けて噴射される。そのため、積層ヘッド12から噴射された粉末Pは、加工対象物90の加工面91にあるレーザ光Lの焦点Fでこのレーザ光Lによって加熱される。レーザ光Lが照射された粉末Pは、加工対象物90の加工面91の近傍で溶融した後、加工対象物90の加工面91に到達する。溶融した状態で加工対象物90の加工面91に到達した粉末Pは、ここで冷却されて固化される。これにより、加工対象物90の加工面91に成形層92が形成される。
【0054】
制御装置20は、テーブル部11で加工対象物90を所定の移動方向M1に移動させつつ、積層ヘッド12から加工対象物90の加工面91に対してレーザ光Lを照射すると共に粉末Pを噴射する。そのため、加工対象物90の加工面91に連続した成形層92が形成される。この場合、三次元積層装置による加工方向は、M2となる。三次元積層装置1は、このような成形層92の形成を繰り返すことによって、複数の成形層が一体として積層された三次元形状物を製造する。
【0055】
以下、本実施形態の三次元積層装置1による中空形状をなす三次元形状物の製造方法について具体的に説明する。
図4は、三次元積層装置による第1壁部の製造方法を示す概略図、
図5は、三次元積層装置による第2壁部の基部の製造方法を示す概略図、
図6は、三次元積層装置による第2壁部の中間部の製造方法を示す概略図、
図7は、三次元積層装置による第2壁部の先端部の製造方法を示す概略図、
図8は、三次元積層装置による蓋部の製造方法を示す概略図、
図9は、残留物の排出方法を示す概略図、
図10は、三次元積層装置による蓋部の溶融方法を示す概略図、
図11は、蓋部が溶融して開口部を閉塞した状態を示す概略図、
図12は、三次元積層装置による蓋部の溶融方法の変形例を示す概略図、
図13は、蓋部が溶融して開口部を閉塞した状態の変形例を示す概略図、
図14は、三次元積層装置による被覆部の製造方法を示す概略図、
図15は、製造された三次元形状物を示す概略図、
図16は、三次元積層方法を示すフローチャートである。
【0056】
図2、
図4および
図16に示すように、加工対象物は、円柱形状(または、円筒形状)をなす軸95であり、加工面である外周面96に成形層を形成する。まず、ステップS11にて、軸95の外周面96に第1壁部151を積層する。すなわち、中心軸O1を回転中心として軸95を所定速度で回転し、このとき、外周面96に向けてノズル噴射口部45から粉末Pを噴射し、レーザ経路44からレーザ光Lを出力する。すると、噴射された粉末Pが外周面96の近傍でレーザ光Lによって加熱され、溶融した粉末Pが外周面に到達する。外周面96に到達した溶融した粉末Pは、ここで冷却されて固化されることで、成形層が形成される。軸95は、連続して回転していることから、外周面96に成形層が積層されることで、軸95の外周面96に径方向および周方向に沿う所定高さの第1壁部151が形成される。
【0057】
次に、ステップS12にて、軸95の外周面96に第2壁部152を積層する。すなわち、
図2、
図5および
図16に示すように、中心軸O1を回転中心として軸95を所定速度で回転し、このとき、第1壁部151から軸方向に所定距離だけ離れた外周面96に向けてノズル噴射口部45から粉末Pを噴射し、レーザ経路44からレーザ光Lを出力する。すると、噴射された粉末Pがレーザ光Lによって溶融し、外周面96で冷却されて固化されることで、成形層が形成される。軸95は、連続して回転していることから、外周面96に成形層が積層されることで、軸95の外周面96に径方向および周方向に沿う所定高さの第2壁部152における基部153が形成される。
【0058】
軸95の外周面96に基部153が形成されると、
図2および
図6に示すように、軸95を水平線に対して所定角度(例えば、45度)だけ傾斜させ、中心軸O1を回転中心として軸95を所定速度で回転する。このとき、基部153上に向けてノズル噴射口部45から粉末Pを噴射し、レーザ経路44からレーザ光Lを出力する。すると、噴射された粉末Pがレーザ光Lによって溶融し、基部153で冷却されて固化されることで、成形層が形成される。軸95は、連続して回転していることから、基部153に成形層が積層されることで、軸95の径方向および周方向に沿う所定高さの第2壁部152における中間部154が形成される。
【0059】
軸95の基部153の中間部154が形成されると、
図2および
図7に示すように、軸95を水平線に対して所定角度(例えば、90度)だけ傾斜させ、中心軸O1を回転中心として軸95を所定速度で回転する。このとき、中間部154上に向けてノズル噴射口部45から粉末Pを噴射し、レーザ経路44からレーザ光Lを出力する。すると、噴射された粉末Pがレーザ光Lによって溶融し、中間部154で冷却されて固化されることで、成形層が形成される。軸95は、連続して回転していることから、中間部154に成形層が積層されることで、軸95の軸方向および周方向に沿う所定高さの第2壁部152における先端部155が形成される。
【0060】
軸95を異なる角度で回転しながら成形層を順に積層することで、基部153と中間部154と先端部155からなる第2壁部152が形成される。第2壁部152は、基端部か153が軸95の外周面に固定され、先端部155側が第1壁部151の先端部に近づくように屈曲し、先端部155が第1壁部151の先端部に隣接する。三次元形状物本体156は、第1壁部151と第2壁部152により構成され、第1壁部151と第2壁部152により内部空間157が形成され、第1壁部151の先端部と第2壁部152の先端部155により開口部158が形成される。
【0061】
図2、
図8および
図16に示すように、ステップS13にて、開口部158の端面、つまり、第2壁部152の先端部155に開口部158を閉塞するための蓋部159を形成する。すなわち、中心軸O1を回転中心として軸95(
図7参照)を所定速度で回転し、このとき、第2壁部152の先端部155の端面155aに向けてノズル噴射口部45から粉末Pを噴射し、レーザ経路44からレーザ光Lを出力する。すると、噴射された粉末Pがレーザ光Lによって溶融し、端面155aで冷却されて固化されることで、成形層が形成される。軸95は、連続して回転していることから、端面155aに成形層が積層されることで、軸95の軸方向および周方向に沿う所定高さの蓋部159が形成される。
【0062】
この蓋部159は、幅が第2壁部152、すなわち、蓋部159を形成した壁部の先端部155の幅よりも短く、高さが第1壁部151、すなわち、蓋部159を形成していない壁部の幅よりも短いものである。第2壁部152の先端部155の端面155aに蓋部159が形成されることで、蓋部159が開口部158に対向することから、蓋部159と開口部158の端面、つまり、第1壁部151の端面151aとの間に所定長さの隙間160が形成される。この隙間160は、レーザ光Lのスポット径よりも小さく、粉末Pの粒径より大きいものとすることが好ましい。
【0063】
図2、
図9および
図16に示すように、ステップS14にて、内部空間157の残留物を開口部158(隙間160)から外部に排出する。すなわち、ノズル噴射口部45から粉末Pを噴射すると共に、レーザ経路44からレーザ光Lを出力することで、第1壁部151、第2壁部152、蓋部159を形成したことから、ノズル噴射口部45から噴射された粉末Pの一部が溶融せずに、三次元形状物本体156の内部空間157に侵入したおそれがある。そのため、軸95を回転させることで、遠心力により内部空間157にある粉末Pなどの残留物を開口部158から外部に排出する。また、三次元形状物本体156の開口部158から内部空間157へ気体(例えば、空気や不活性ガス)を供給することにより内部空間157にある粉末Pなどの残留物を開口部158から外部に排出する。
【0064】
図2、
図10および
図16に示すように、ステップS15にて、中心軸O1を回転中心として軸95(
図7参照)を所定速度で回転し、開口部158の蓋部159に向けてレーザ光Lを照射して蓋部159の成形層を溶融して固化させることで、開口部158を閉塞する。この場合、水平方向から隙間160に向けてレーザ光Lを照射することで、
図11に示すように、蓋部159の成形層が溶融し、溶融した成形層が蓋部159の下方にある隙間160側に溶け落ちる。そして、溶融した成形層が隙間160を閉塞し、溶融した成形層が固化することで閉塞部161が形成され、隙間160が完全に閉塞される。また、
図12に示すように、鉛直方向から蓋部159に向けてレーザ光Lを照射することで、
図13に示すように、蓋部159の成形層を溶融し、溶融した成形層が蓋部159の下方にある隙間160側に溶け落ちる。そして、溶融した成形層が隙間160を閉塞し、溶融した成形層が固化することで閉塞部162が形成され、隙間160が完全に閉塞される。
【0065】
図2、
図14および
図16に示すように、ステップS16にて、中心軸O1を回転中心として軸95(
図7参照)を所定速度で回転し、このとき、第1壁部151の先端部の端面151aに向けてノズル噴射口部45から粉末Pを噴射し、レーザ経路44からレーザ光Lを出力する。すると、噴射された粉末Pがレーザ光Lによって溶融し、端面151aで冷却されて固化されることで、成形層が形成される。軸95は、連続して回転していることから、端面151aに成形層が積層されることで、軸95の径方向および周方向に沿う所定高さの被覆部163が形成される。この被覆部163は、閉塞部161,162を被覆すると共に、第1壁部151の先端部の端面151aと第2壁部152の先端部155の端面155aに固着し、第1壁部151外周面と第2壁部152の外周面が滑らかに連続される。
【0066】
その結果、
図15に示すように、供給された粉末Pにレーザ光Lを照射することで粉末Pの少なくとも一部を焼結または溶融固化させて形成された成形層を積層することで内部空間157が開口部158を通して外部に連通するように形成された三次元形状物本体156と、開口部158の成形層が溶融固化することで開口部158を閉塞する閉塞部161,162と、供給された粉末Pにレーザ光Lを照射することで粉末Pの少なくとも一部を焼結または溶融固化させて形成された成形層を積層することで閉塞部161,162を被覆するように形成された被覆部163とを備える三次元形状物を製造することができる。
【0067】
このように本実施形態の三次元積層方法にあっては、軸95の外周面96に向けて粉末Pを供給すると共に粉末Pにレーザ光Lを照射してレーザ光Lが照射された粉末Pの少なくとも一部を焼結または溶融固化させて成形層を形成することで内部空間157が開口部158を通して外部に連通する三次元形状物本体156を形成する工程と、内部空間157の粉末Pなどの残留物を開口部158から外部に排出する工程と、開口部158の端面に向けてレーザ光Lを照射して成形層を溶融固化させることで開口部158を閉塞する工程とを有する。
【0068】
そのため、軸95の外周面96に成形層を形成して内部空間157が開口部158を通して外部に連通する三次元形状物本体156を形成したとき、内部空間157に粉末Pが入り込んでも、内部空間157の粉末Pなどの残留物を開口部158から外部に排出した後、開口部158の成形層を溶融固化させて開口部158を閉塞することから、内部空間157に粉末Pなどの残留物のない中空形状をなす三次元形状物を製造することができる。すなわち、開口部158を閉塞するとき、粉末Pを使用せずに、開口部158の成形層を溶融固化させて開口部158を閉塞するため、内部空間157への粉末Pなどの侵入が防止される。その結果、中空形状をなす三次元形状物の品質の向上を図ることができる。
【0069】
本実施形態の三次元積層方法では、三次元形状物本体156を形成した後、開口部158の端面に向けて粉末P供給すると共に粉末Pにレーザ光Lを照射してレーザ光Lが照射された粉末Pの少なくとも一部を焼結または溶融固化させて成形層を形成することで開口部158の端面に開口部158を閉塞するための蓋部159を形成する工程を有し、内部空間157の粉末Pなどの残留物を開口部158から外部に排出した後、蓋部159に向けてレーザ光Lを照射して溶融固化させることで開口部158を閉塞する。そのため、粉末Pを使用せずに開口部158を適正に閉塞することができる。
【0070】
本実施形態の三次元積層方法では、開口部158の端面と蓋部159との間に所定長さの隙間160を形成し、隙間160に向けてレーザ光Lを照射して成形層を溶融固化させることで隙間160を閉塞する。そのため、レーザ光Lにより隙間160の近傍にある蓋部159を溶融固化して隙間160を効果的に閉塞することができる。
【0071】
本実施形態の三次元積層方法では、開口部158の端面と蓋部159との間に所定長さの隙間160を形成し、蓋部159に向けてレーザ光Lを照射して成形層を溶融固化させることで隙間160を閉塞する。そのため、レーザ光Lにより蓋部159を溶融固化して隙間160を効果的に閉塞することができる。
【0072】
本実施形態の三次元積層方法では、三次元形状物本体156は、軸95の外周面96に成形層を積層することで形成された第1壁部151と第2壁部152を有し、第1壁部151と第2壁部152により内部空間157を形成すると共に、第1壁部151の端部と第2壁部152の端部により開口部158を形成する。そのため、三次元形状物の製造の簡素化や軽量化を図ることができる。
【0073】
本実施形態の三次元積層方法では、軸95の回転または開口部158から内部空間157への気体の供給により内部空間157の粉末Pなどの残留物を開口部158から外部に排出する。そのため、内部空間157の粉末Pなどの残留物を開口部158から外部に容易に排出することができる。
【0074】
本実施形態の三次元積層方法では、開口部158の成形層を溶融固化させて開口部158を閉塞した後、開口部158の閉塞部161,162に向けて粉末Pを供給すると共に粉末Pにレーザ光Lを照射してレーザ光Lが照射された粉末Pの少なくとも一部を焼結または溶融固化させて成形層を形成することで被覆部163を形成する。そのため、被覆部163により開口部158の閉塞部161,162が被覆されることで、外観品質を向上することができる。
【0075】
また、本実施形態の三次元形状物にあっては、粉末Pにレーザ光Lを照射することで粉末Pの少なくとも一部を焼結または溶融固化させて形成された成形層を積層することで内部空間157が開口部158を通して外部に連通するように形成された三次元形状物本体156と、開口部158の成形層が溶融固化することで開口部158を閉塞する閉塞部161,162と、供給された粉末Pにレーザ光Lを照射することで粉末Pの少なくとも一部を焼結または溶融固化させて形成された成形層を積層することで閉塞部161,162を被覆するように形成された被覆部163とを備える。
【0076】
そのため、三次元形状物本体156の開口部158の成形層が溶融固化した閉塞部161,162により閉塞されているため、内部空間157への粉末Pなどの侵入が防止される。その結果、中空形状をなす三次元形状物の品質の向上を図ることができる。
【0077】
なお、上述の実施形態にて、加工対象物を軸95とし、軸95を回転しながら三次元積層したが、加工対象物は軸95に限るものではなく、回転または移動により中空形状をなす三次元形状物を製造してもよい。
【0078】
また、上述の実施形態にて、粉末供給部が噴射する粉末材料を金属粉末材料としたが、樹脂粉末材料等の非金属粉末材料であってもよい。また、光ビームをレーザ光としたが、電子ビームなどとしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 三次元積層装置
2 三次元積層室
3 予備室
4 積層ヘッド収納室
4a,5a Z軸スライド部
5 機械加工部収納室
6,7 扉
10 ベッド
11 テーブル部
12 積層ヘッド
13 機械加工部
15 Y軸スライド部
16 X軸スライド部
17 回転テーブル部
17a 固定台
17b 回転テーブル
17c 傾斜テーブル
17d 回転テーブル
18,19 ベローズ
20 制御装置
22 工具
23 ノズル
24 先端部
25 空気排出部
30 形状計測部
31 加熱ヘッド
32 装置計測部
33 工具交換部
34 ノズル交換部
35 粉末導入部
36 基台移動部
37 空気排出部
38 ガス導入部
39 粉末回収部
41 外管
42 内管
43 粉末流路
44 レーザ経路
45 ノズル噴射口部
46 本体
47 光源
48 光ファイバ
49 集光部
51 入力部
52 制御部
53 記憶部
54 出力部
55 通信部
90 加工対象物
91 加工面
92 成形層
95 軸
96 外周面
100 基台部
102,104,106,108 矢印
110 回転軸
151 第1壁部
151a 端面
152 第2壁部
153 基部
154 中間部
155 先端部
155a 端面
156 三次元形状物本体
157 内部空間
158 開口部
159 蓋部
160 隙間
161,162 閉塞部
163 被覆部
F 焦点
L レーザ光(光ビーム)
M1 移動方向
M2 加工方向
O,O1 中心軸
P 粉末