(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】特にロケット・エンジンのための燃焼チャンバ構造物
(51)【国際特許分類】
F02K 9/64 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
F02K9/64
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019129399
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-06-09
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519253890
【氏名又は名称】アリアングループ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ArianeGroup GmbH
【住所又は居所原語表記】Robert-Koch-Strasse 1 82024 Taufkirchen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ゲッツ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ガイア
(72)【発明者】
【氏名】トーベン ビルク
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ デ ボン
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-301168(JP,A)
【文献】特開2004-132361(JP,A)
【文献】特開昭61-058957(JP,A)
【文献】米国特許第03460759(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0058770(US,A1)
【文献】西独国特許出願公告第01118539(DE,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/64; 3/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼チャン
バを囲み、複数の第1の冷却剤チャネ
ルおよび複数の第2の冷却剤チャネ
ルを有する高温ガス
壁であって、前記複数の第1の冷却剤チャネ
ルおよび前記複数の第2の冷却剤チャネ
ルは、前記高
温ガス
壁の第1の長手方向端
部から、該第1の長手方向端
部とは反対側の、前記高温ガス
壁の第2の長手方向端
部まで延びる、高温ガス
壁と、
第1の冷却剤チャン
バを形成する第1のマニフォル
ド、および前記第1の冷却剤チャン
バから流体的に分離された第2の冷却剤チャン
バを形成する第2のマニフォル
ドであって、前記高温ガス
壁の前記第1の長手方向端
部に設けられ、前記高温ガス
壁の周方向に延びる、第1のマニフォル
ドおよび第2のマニフォル
ドと、
前記第1のマニフォルドおよび前記複数の第1の冷却剤チャネルを備える第1の冷却回路と、
前記第2のマニフォルドおよび前記複数の第2の冷却剤チャネルを備える第2の冷却回路と、
を備え、
前記第1の冷却剤チャン
バは、
第1の冷却剤を前記複数の第1の冷却剤チャネルに分配するために、前記複数の第1の冷却剤チャネ
ルの各々と流体接続され、前記第2の冷却剤チャン
バは、
第2の冷却剤を前記複数の第2の冷却剤チャネルに分配するために、前記複数の第2の冷却剤チャネ
ルの各々と流体接続され
、前記第1の冷却回路と前記第2の冷却回路とが、流体的に互いに分離される、燃焼チャンバ構造
物。
【請求項2】
前記第1のマニフォル
ドは、
前記第1の冷却剤を前記第1の冷却剤チャネ
ルに分配するように構成され、
前記第2のマニフォル
ドは、
前記第2の冷却剤を前記第2の冷却剤チャネ
ルに分配するように構成され、
前記第1の冷却剤は前記第2の冷却剤とは異なる、請求項1に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項3】
前記第1のマニフォル
ドおよび前記第2のマニフォル
ドは、前記燃焼チャン
バを前記周方向に囲む、請求項1または2に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項4】
前記第1のマニフォル
ドおよび前記第2のマニフォル
ドは、第1の入
口および第2の入
口をそれぞれ有し、
前記第1のマニフォル
ドの前記第1の冷却剤チャン
バの内径は、前記第1の入
口からの距離の増加に伴って減少し、ならびに/または
前記第2のマニフォル
ドの前記第2の冷却剤チャン
バの内径は、前記第2の入
口からの距離の増加に伴って減少する、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項5】
前記第1のマニフォル
ドは、前記燃焼チャンバ構造
物の径方向において、前記第2のマニフォル
ドの外側に形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項6】
前記第1の冷却剤チャネ
ルおよび前記第2の冷却剤チャネ
ルは、前記高温ガス
壁の前記第2の長手方向端部において、前記燃焼チャン
バと流体接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項7】
前記第1の冷却剤チャネ
ルは、前記高温ガス
壁の前記第2の長手方向端
部において、追加の第1の冷却剤チャン
バの中に開口し、
前記第2の冷却剤チャネ
ルは、前記高温ガス
壁の前記第2の長手方向端部において、追加の第2の冷却剤チャンバの中に開口している、請求項1から6のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項8】
前記高温ガス
壁の前記第2の長手方向端部で、
前記第1の冷却剤の第1の出口開口
部が前記周方向に等間隔で設けられ、
前記第2の冷却剤の第2の出口開口
部が前記周方向に等間隔で設けられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項9】
前記第1の冷却剤チャネ
ルおよび前記第2の冷却剤チャネ
ルは、前記高温ガス
壁の全ての位置において、前記燃焼チャン
バでの燃焼プロセスによって前記高温ガス
壁に供給される熱と、前記第1および第2の冷却剤によって前記高温ガス
壁から消散される熱との間の、最適な関係が実現されるように構成および配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項10】
前記高温ガス
壁の前記周方向における前記第1の冷却剤チャネ
ル同士間の距離と、
前記高温ガス
壁の前記周方向における前記第2の冷却剤チャネ
ル同士間の距離と、
前記燃焼チャンバ構造
物の軸方向に対する、前記第1の冷却剤チャネ
ルおよび/または前記第2の冷却剤チャネ
ルの向きと、
前記第2の冷却剤チャネ
ルに対する前記第1の冷却剤チャネ
ルの向きと、
前記第1の冷却剤チャネ
ルおよび/または前記第2の冷却剤チャネ
ルの、前記燃焼チャン
バからの径方向の距離と、
のうちの少なくとも1つは、前記高温ガス
壁の異なる位置によって変化する、請求項1から9のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項11】
前記高温ガス
壁の少なくともある領域において、前記複数の第1の冷却剤チャネ
ルのうちの1つの第1の冷却剤チャネ
ルが、前記複数の第2の冷却剤チャネ
ルのうちの1つの第2の冷却剤チャネ
ルに隣接し、かつ所定の距離を置いて、前記高温ガス
壁の周方向に設けられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項12】
前記高温ガス
壁の少なくともある領域において、隣接する第1の冷却剤チャネ
ルおよび第2の冷却剤チャネ
ルは、前記第1の長手方向端
部から前記第2の長手方向端
部まで延びるとき、前記燃焼チャンバ構造
物の長手方向
軸に対して、ある角度を形成する、請求項11に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項13】
前記第1の長手方向端
部から前記第2の長手方向端
部まで軸方向に延びるとき、
前記第1の冷却剤チャネルから前記第2の冷却剤チャネ
ルまでの距離が変化する、請求項11または12に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項14】
前記高温ガス
壁の少なくともある領域において、前記複数の第1の冷却剤チャネ
ルおよび前記複数の第2の冷却剤チャネ
ルは、前記高温ガス
壁の周方向に交互に設けられる、請求項1から13のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項15】
前記複数の第1の冷却剤チャネ
ルのうちの少なくとも1つ、および/または前記複数の第2の冷却剤チャネ
ルのうちの少なくとも1つは、前記第1の長手方向端
部から前記第2の長手方向端
部へ延びるとき、前記燃焼チャン
バから径方向に変化する距離を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項16】
前記高温ガス
壁の少なくともある領域において、前記燃焼チャン
バからの第1の冷却剤チャネ
ルまたは第2の冷却剤チャネ
ルの径方向の距離は、前記第1の冷却剤チャネ
ルまたは前記第2の冷却剤チャネ
ルに隣接する別の第1の冷却剤チャネ
ルまたは第2の冷却剤チャネ
ルの距離とは異なり、
前記第1の冷却剤チャネ
ルまたは前記第2の冷却剤チャネ
ルは、隣接する前記第1の冷却剤チャネ
ルまたは前記第2の冷却剤チャネ
ルに重なるように形成され、それによって、重なり合う冷却剤チャネ
ルが、同じ外周位置に設けられ、前記重なり合う冷却剤チャネルのうちの一
方は、前記重なり合う冷却剤チャネ
ルのうちの他
方から径方向外側に設けられる、請求項1から15のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【請求項17】
排他的に前記第1の冷却剤および前記第2の冷却剤のみによって冷却されるように構成される、請求項1から16のいずれか一項に記載の燃焼チャンバ構造
物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼チャンバ構造物、特にロケット・エンジンのための燃焼チャンバ構造物に関する。燃焼チャンバ構造物は、高温ガス壁を備える。高温ガス壁は、燃焼チャンバを囲み、高温ガス壁の第1の長手方向端部から、第1の長手方向端部とは反対側の、高温ガス壁の第2の長手方向端部まで延びた冷却剤チャネルを有する。原理上、この燃焼チャンバ構造物は、ロケット・エンジンの特殊な領域だけではなく、航空機構造など他の領域にも利用することができる。
【背景技術】
【0002】
ロケット・エンジンの燃焼チャンバ構造物において、連続的に生じる燃焼プロセスは、一般には3000℃を超える非常に高い温度、および一般には150バールよりも大きい非常に高い圧力を生じさせる。したがって、燃焼チャンバ構造物は、これらの高温および高圧に耐えるよう設計されなければならない。
【0003】
耐熱性の要件を満たすために、燃焼チャンバ構造物は通例冷却され、それによって燃焼チャンバ構造物の燃焼プロセスにより発生した熱を消散させる。燃焼チャンバ構造物を冷却するための、既知の冷却方法は、例えば放射冷却、アブレーティブ冷却、およびフィルム冷却である。供給された推進剤のうちの1つが、高温ガス面の外表面に形成された冷却剤チャネルによって誘導されるか、または高温ガス壁内に形成された冷却剤チャネルによって誘導される循環冷却が、さらに知られている。冷却剤チャネルから現出した後、推進剤は燃焼チャンバに供給される。推進剤を冷却剤チャネルに分配し、冷却剤チャネルから推進剤を再び集積するマニフォルドが設けられる。これらの既知の方法を、単独または組み合わせて使用することができる。
【0004】
これらの既知の冷却方法は、例えば放射冷却の場合には非常に高価な材料を使用する必要があるか、または、例えばアブレーティブ冷却もしくはフィルム冷却の場合にはパワー損失をもたらし得る。さらに、燃焼チャンバ構造物を冷却するために供給された推進剤の内の1つを使用する循環冷却は、特に8kNよりも小さい推力クラスのエンジンにおける燃焼チャンバ構造物の場合、燃焼チャンバ構造物を十分に冷却するよう適合されないことが多い。したがって、別の冷却方法が必要とされる。
【0005】
第2のタイプのヒート・シンクを設けること、例えば上述の既知の冷却方法のうちの2つを、燃焼チャンバ構造物の特定の領域それぞれに設けることによって、燃焼プロセスで発生した熱を十分に消散させる必要性に応じることができる。したがって、2つのタイプのヒート・シンクを、燃焼チャンバ構造物の軸方向のみに交互に並べることができ、それによって燃焼チャンバ構造物の特定の領域のみを、ヒート・シンクのうちの1つによって冷却することができる。さらに、2つのタイプのヒート・シンクを軸方向に交互に設けることによって、いくつかの冷却ギャップを生じさせるが、これは、例えば高温ガス壁を局所的に過熱させる危険をもたらす。異なるタイプのヒート・シンクを交互に設けることによる別の結果、特定の冷却方法の有利な特性を、燃焼チャンバ構造物のそれぞれの特定の領域にしか適用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
耐熱性の要件を満たし、その一方で製造が安価で、かつ燃焼チャンバ構造物のいかなる重大なパワー損失ももたらさない燃焼チャンバ構造物が、提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の特徴を有する燃焼チャンバ構造物が提供される。
【0008】
開示する燃焼チャンバ構造物は、高熱ガス壁を備える。この高熱ガス壁は、燃焼チャンバを囲み、複数の第1の冷却剤チャネルおよび複数の第2の冷却剤チャネルを有する。複数の第1および第2の冷却剤チャネルは、高熱ガス壁の第1の長手方向端部から、第1の長手方向端部とは反対側の、高温ガス壁の第2の長手方向端部まで延びる。開示する燃焼チャンバ構造物は、第1の冷却剤チャンバを形成する第1のマニフォルドと、第1の冷却剤チャンバから流体的に分離された第2の冷却剤チャンバを形成する第2のマニフォルドと、をさらに備える。第1および第2のマニフォルドは、高温ガス壁の第1の長手方向端部に設けられ、高温ガス壁の周方向に延びる。開示する燃焼チャンバ構造物において、第1の冷却剤チャンバは、複数の第1の冷却剤チャネルの各々と流体接続され、第2の冷却剤チャンバは、複数の第2の冷却剤チャネルの各々と流体接続される。
【0009】
開示する燃焼チャンバ構造物は、燃焼チャンバ構造物における燃焼プロセスの熱を消散させるために、2つの別個の冷却回路を備える。第1の冷却回路は、互いに流体接続された、第1のマニフォルドと、第1の冷却剤のための第1の冷却剤チャネルとを備える。第2の冷却回路は、互いに流体接続された、第2のマニフォルドと第2の冷却剤のための第2の冷却剤チャネルとを備える。第1の冷却回路および第2の冷却回路は、互いに流体的に離されている。したがって、開示する燃焼チャンバ構造物において、燃焼プロセスで生成された熱は、2つの別個の冷却回路における第1および第2の冷却剤に発散され、それによって、流体的に離された2つの冷却剤の合計質量流量を、熱を消散させるために使用することができる。したがって、2つの冷却剤の合計質量流量が使用されることから、燃焼チャンバの十分な冷却を、例えば8kNよりも小さい推力クラスのエンジンの燃焼チャンバ構造物においても提供することができる。第1および第2の冷却剤チャネルが、高温ガス壁の軸方向の全延長、すなわち第1の長手方向端部から第2の長手方向端部にわたって延びるので、燃焼チャンバ構造物は、燃焼チャンバ構造物の軸方向において、いかなる冷却ギャップも有することなく、軸方向の全延長にわたって十分に冷却され得る。さらに、高い製造コストおよび/またはパワー損失をもたらすことがある、放射冷却、フィルム冷却、および/またはアブレーティブ冷却などの追加の冷却方法は必要としない。
【0010】
第1および第2のマニフォルドは、高温ガス壁と共に一片の部品として具現化され得る。第1および第2のマニフォルドは、例えば高温ガス壁への溶接などの適切な方法によって高温ガス壁に装着される、別個の部品としても具現化され得る。
【0011】
高温ガス壁は、燃焼チャンバに面する、すなわち高温ガスに接触する内面と、燃焼チャンバ構造物の外側環境に接触する外面と、を備える。高温ガス壁の内側において、複数の第1および第2の冷却剤チャネルが形成される。複数の第1および第2の冷却剤チャネルは、互いから流体的に離されている。第1および第2の冷却剤チャネルを伴う高温ガス壁は、一片の部品として、例えば3D印刷によって製造されてよく、または、内側ジャケット(「ライナ」)と内側ジャケットの外面に配設される外側ジャケット(「ジャケット」)とによって形成されてよい。内側ジャケットと外側ジャケットとを伴う構成において、第1および第2の冷却剤チャネルは、内側ジャケットの外面に形成され、内側ジャケットを覆う外側ジャケットによって封止され得る。内側ジャケットの外面における第1および第2の冷却剤チャネルは、例えば内側ジャケット材料をミリングすることによって形成され得る。
【0012】
1つの展開例において、第1のマニフォルドは、第1の冷却剤を第1の冷却剤チャネルに分配するように構成され、第2のマニフォルドは、第2の冷却剤を第2の冷却剤チャネルに分配するように構成される。第1の冷却剤は第2の冷却剤とは異なる。第1の冷却剤および第2の冷却剤は、例えば2つの推進剤、すなわち燃料および酸化剤であってよく、燃料および酸化剤の両方の合計質量流量を、燃焼チャンバ構造物の軸方向の全長にわたる熱を吸収するために使用することができる。
【0013】
別の展開例において、第1および第2のマニフォルドは、燃焼チャンバを周方向に囲む。したがって、第1および第2のマニフォルドは、高温ガス壁の全外周の周りに設けられる。第1および第2のマニフォルドは、第1の冷却剤および第2の冷却剤を、第1の冷却剤チャネルおよび第2の冷却剤チャネルにそれぞれ分配するように、燃焼チャンバを完全に囲む。第1の冷却剤チャネルおよび第2の冷却剤チャネルは、高温ガス壁の全外周の周りを冷却するように、高温ガス壁の全外周の周りに設けられる。
【0014】
別の展開例において、第1および第2のマニフォルドは、第1の入口および第2の入口をそれぞれ有する。第1のマニフォルドの第1の冷却剤チャンバの内径は、第1の入口からの距離の増加に伴って減少し、および/または第2のマニフォルドの第2の冷却剤チャンバの内径は、第2の入口からの距離の増加に伴って減少する。それぞれの冷却剤チャンバの内径を、それぞれの入口からの距離の増加に伴って減少させることによって、マニフォルドの全ての箇所における一定の流体速度を保証することができ、最適な注入外形となる。さらに、それぞれのマニフォルドが、一定の内径を伴う冷却剤チャンバを有する場合と比較して、マニフォルドを形成するために必要な材料が少ないので、それぞれのマニフォルド、したがってまた燃焼チャンバ構造物の重量は小さくなる。
【0015】
さらに別の展開例において、第1のマニフォルドは、燃焼チャンバ構造物の径方向に、第2のマニフォルドの外側に形成される。したがって、第1のマニフォルドは、第2のマニフォルドよりも高温ガス壁から離れて突出し、そのため第2のマニフォルドよりも燃焼チャンバからさらに離れて位置される。このように、第1のマニフォルドおよび第2のマニフォルドは、省スペースかつコンパクトに設けられる。
【0016】
1つの実施形態において、第1および第2の冷却剤チャネルは、高温ガス壁の第2の長手方向端部において、燃焼チャンバと流体接続される。このようにして、第1および第2の冷却剤を推進剤として燃焼チャンバに搬送することができる。例えば、燃料および酸化剤が、燃焼チャンバの中に搬送される前に、第1および第2の冷却剤としてそれぞれ使用される。このように、燃焼チャンバ構造物は、循環方式のみで冷却することができる。
【0017】
1つの構成において、第1の冷却剤チャネルは、高温ガス壁の第2の長手方向端部において、追加の第1の冷却剤チャンバの中に開口しており、第2の冷却剤チャネルは、高温ガス壁の第2の長手方向端部において、追加の第2の冷却剤チャンバの中に開口している。この構成において、第1の冷却剤および第2の冷却剤は、燃焼チャンバに搬送される前に、追加の冷却剤チャンバにそれぞれ集積される。
【0018】
燃焼チャンバ構造物の別の展開例において、高温ガス壁の第2の長手方向端部で、第1の冷却剤の第1の出口開口部が、周方向に等間隔で設けられ、第2の冷却剤の第2の出口開口部が、周方向に等間隔で設けられる。第1の出口開口部は、第1の冷却剤チャネルと流体接続され、第2の出口開口部は第2の冷却剤チャネルと流体接続される。このように、両方の冷却剤を、外周の周りで対称に冷却剤チャネルから出るよう導くことができる。第1の冷却剤および第2の冷却剤は、第1および第2の出口開口部を介して、追加の第1および第2の冷却剤チャンバに入ってよい。1つの実施形態において、第1および第2の冷却剤は、好ましくは追加の冷却剤チャンバを介して、高温ガス壁の第2の長手方向端部に接続された注入ヘッドの中に導かれる。第1および第2の冷却剤は、対称に注入ヘッドの中に導かれるので、ドームの下流における注入ヘッドの外形を単純にすることができる。例えば、注入ヘッドの中へ、第1および第2の冷却剤を注入するための追加のマニフォルドが必要ないので、燃焼チャンバ構造物の重量および複雑さを軽減させる。
【0019】
別の展開例において、第1の冷却剤チャネルおよび第2の冷却剤チャネルは、高温ガス壁の全ての箇所において、燃焼チャンバでの燃焼プロセスによって高温ガス壁に供給される熱と、第1および第2の冷却剤によって高温ガス壁から消散される熱との間の、最適な関係が実現されるように、構成および配置される。それによって、燃焼チャンバ構造物の性能およびパワーを向上させ、局所的な過熱の危険を軽減させる。
【0020】
したがって、第1および第2の冷却剤チャネルの構成および/または配置を、高温ガス壁において存在する条件に適合させることができる。これは、第1および第2の冷却剤に固有の特性を利用することによって成し得る。例えば、第1の冷却剤の熱容量、熱伝導率、および第1の冷却剤の熱抵抗は、第2の冷却剤の熱容量、熱伝導率、および第2の冷却剤の熱抵抗とは、異なる場合がある。したがって、例えば第1および第2の冷却剤チャネルを、より高い温度の高温ガス壁の箇所において、これらの高い温度に対する抵抗力がある限り、第1および第2の冷却剤のうち、より高い熱容量およびより高い熱伝導率を伴う冷却剤が誘導されるように、構成および配置することができる。
【0021】
したがって、この別の展開例において、高温ガス壁の箇所における第1および第2の冷却剤チャネルの配置および構成は、それらが高温ガス壁の別の箇所にあるので、好ましくは同じではない。具体的には、第1および第2の冷却剤チャネルの構成および配置を、高温ガス壁の全ての箇所において、任意に設計することができる。より具体的には、第1および第2の冷却剤チャネルが、第1の長手方向端部から第2の長手方向端部まで延びるとき、いかなる望ましくないギャップおよび/またはエッジも設けられることなく、第1および第2の冷却剤チャネルの構成および配置を確実に変えることができる。それによって、高温ガス壁の全ての箇所、すなわち高温ガス壁の軸方向および周方向の両方において、燃焼チャンバでの燃焼プロセスによって高温ガス壁に供給される熱と、第1および第2の冷却剤によって高温ガス壁から消散される熱との間の最適な関係が実現され得る。
【0022】
構成および配置を、燃焼チャンバでの燃焼プロセスによって高温ガス壁に供給される熱と、第1および第2の冷却剤によって高温ガス壁から消散される熱との間の最適な関係が実現されるように、第1の冷却剤チャネルおよび第2の冷却剤チャネルの各々に独立して適合させることができる。構成および配置を、第1および第2の冷却剤チャネルの相互作用が、燃焼チャンバでの燃焼プロセスによって高温ガス壁に供給される熱と、第1および第2の冷却剤によって高温ガス壁から消散される熱との間の最適な関係を生じさせるように、適合させることができる。
【0023】
1つの展開例において、高温ガス壁の周方向における第1の冷却剤チャネル同士間の距離と、高温ガス壁の周方向における第2の冷却剤チャネル同士間の距離と、燃焼チャンバ構造物の軸方向に対する、第1の冷却剤チャネルおよび/または第2の冷却剤チャネルの向きと、第2の冷却剤チャネルに対する第1の冷却剤チャネルの向きと、第1の冷却剤チャネルおよび/または第2の冷却剤チャネルの幅寸法と、第1の冷却剤チャネルおよび/または第2の冷却剤チャネルの、燃焼チャンバからの径方向の距離と、のうちの少なくとも1つは、高温ガス壁の異なる位置によって変化する。第1および第2の冷却剤チャネルの上記の特性は、好ましくは、燃焼チャンバでの燃焼プロセスによって高温ガス壁に供給される熱と、第1および第2の冷却剤によって高温ガス壁から消散される熱との間の最適な関係が実現されるように、変化する。
【0024】
高温ガス壁の周方向における、第1または第2の冷却剤チャネルのうちの一方の間の距離を変化させることによって、高温ガス壁の特定の領域における、第1または第2の冷却剤によって吸収される熱の量は変化し得る。第1の冷却剤チャネルおよび/または第2の冷却剤チャネルの幅寸法を変化させることによって、同様の効果を実現させることができ、これはさらに加えて、それぞれの冷却剤チャネルを流れ抜ける冷却剤の流速を変化させる。燃焼チャンバ構造物の軸方向に対する、第1の冷却剤チャネルおよび/または第2の冷却剤チャネルの向きを変化させることによって、高温ガス壁にわたって複数の冷却剤チャネルに不均等にインプットされた熱を再分配することを可能にする。さらに、例えば第1の冷却剤チャネル同士間の距離および/または第2の冷却剤チャネル同士間の距離を、高温ガス壁の異なる位置において燃焼チャンバから径方向に変化させることによって、高温ガス壁からそれぞれの冷却剤までの、熱の流れを変化させることが可能になる。第2の冷却剤チャネルに対する第1の冷却剤チャネルの向きを変化させることは、例えば第1と第2の冷却剤チャネルとの間の距離を変化させること、ならびに、高温ガス壁の第1の位置において実質的に平行方向に延びる第1および第2の冷却剤チャネルが、高温ガス壁の第2の位置において互いに重なり合うこと、を含包し得る。このように、例えば冷却剤チャネルの冷却剤の冷却能力が使い果たされたときに、冷却剤チャネルを燃焼チャンバから離れるように誘導し、この離れるように誘導された冷却剤チャネルが、隣接する冷却剤チャネルの背後、すなわち燃焼チャンバから径方向外側に位置されることによって、隣接する冷却剤チャネルの冷却剤に「切り替える」ことが可能になる。
【0025】
燃焼チャンバ構造物の別の展開例において、高温ガス壁の少なくとも一部の領域で、複数の第1の冷却剤チャネルのうちの1つの第1の冷却剤チャネルが、複数の第2の冷却剤チャネルのうちの1つの第2の冷却剤チャネルに隣接し、かつ所定の距離を置いて、高温ガス壁の周方向に設けられる。したがって、加熱された高温ガス壁の限定された領域の熱を、第1の冷却剤および第2の冷却剤の両方に分配し、それによって第1の冷却剤および第2の冷却剤両方の特性を利用することが可能になる。
【0026】
隣接する第1および第2の冷却剤チャネルは、第1の長手方向端部から第2の長手方向端部へ延びるとき、燃焼チャンバ構造物の軸方向に実質的に平行な方向に延びてよい。すなわち、隣接する第1および第2の冷却剤チャネルは、第1の長手方向端部から第2の長手方向端部へ延びるとき、燃焼チャンバ構造物の径方向に高温ガス壁の形状に従いながら、実質的に直線に延びてよい。
【0027】
別の展開例の1つの実施形態において、高温ガス壁の少なくともある領域で隣接する第1および第2の冷却剤チャネルは、第1の長手方向端部から第2の長手方向端部へ延びるとき、燃焼チャンバ構造物の長手方向軸に対して、ある角度を形成する。この実施形態において、少なくともある領域またはいくつかの領域で隣接する第1および第2の冷却剤チャネルは、第1の長手方向端部から第2の長手方向端部へ直線で延びるのではなく、軸方向の延長に加えて、隣接する第1および第2の冷却剤チャネルは、燃焼チャンバ構造物の軸方向に対してある角度を形成するように、燃焼チャンバ構造物の長手方向軸の周りに屈曲される。このように、高温ガス壁にわたる熱の不均衡、すなわち高温ガス壁の周方向にわたる熱の不均衡は、複数の冷却剤チャネルの冷却剤、詳細には第1および第2の冷却剤の両方に再分配することができる。
【0028】
別の展開例において、隣接する第1および第2のチャネルは、第1の長手方向端部から第2の長手方向端部へ延びるとき、互いに対して一定の距離を有し得る。別の展開例において、第1の冷却剤チャネルから隣接する第2の冷却剤チャネルまでの距離は、第1の長手方向端部から第2の長手方向端部へ延びるときに変化してもよい。このように、高温ガス壁の限定された領域において、第1および第2の冷却剤によって吸収される熱の量は、変化させることができる。
【0029】
高温ガス壁の少なくともある領域において、複数の第1および第2の冷却剤チャネルは、高温ガス壁の周方向に交互に設けられる。したがって、第1の冷却剤チャネルは、2つの第2の冷却剤チャネルによって隣接され、その逆で、第2の冷却剤チャネルは、2つの第1の冷却剤チャネルによって隣接される。
【0030】
代替の構成において、冷却剤チャネルを領域ごとに周方向に配置することが可能である。したがって、1つまたは複数の第1の冷却剤チャネルを備える領域の後ろに、1つまたは複数の第2の冷却剤チャネルを備える領域が続き、その後に再び、1つまたは複数の第1の冷却剤チャネルを備える領域が続く。例えば、2つの第1の冷却剤チャネルの後に1つの第2の冷却剤チャネルが続き、1つの第2の冷却剤チャネルの後に2つの冷却剤チャネルが再び続く。または、別の代替例として、2つの第1の冷却剤チャネルの後に2つの第2の冷却剤チャネルが続き、2つの第2の冷却剤チャネルの後に2つの第1の冷却剤チャネルが再び続く。第1の冷却剤は燃料であってよく、第2の冷却剤は酸化剤であってよい。
【0031】
燃焼チャンバ構造物の別の構成において、複数の第1の冷却剤チャネルのうちの少なくとも1つ、および/または複数の第2の冷却剤チャネルのうちの少なくとも1つは、第1の長手方向端部から第2の長手方向端部へ軸方向に延びるとき、燃焼チャンバから径方向に変化する距離を有する。したがって、第1の冷却剤および/または第2の冷却剤は、高温ガス壁の内面から離れるように誘導されるか、または高温ガス壁の内面に向かって誘導される。燃焼チャンバからの径方向の距離を変化させることによって、加熱された高温ガス壁から冷却剤チャネル内の冷却剤に伝達された熱の量を変化させ、高温ガス壁の局所条件に適合させることができる。
【0032】
別の展開例において、高温ガス壁の少なくともある領域で、燃焼チャンバからの第1または第2の冷却剤チャネルの径方向の距離は、第1または第2の冷却剤チャネルに隣接する別の第1または第2の冷却剤チャネルの距離とは異なる。第1または第2の冷却剤チャネルは、隣接する第1または第2の冷却剤チャネルに重なるように形成され、それによって、重なり合う冷却剤チャネルは同じ周方向位置に設けられ、重なり合う冷却剤チャネルのうちの一方は、重なり合う冷却剤チャネルのうちの他方から径方向外側に設けられる。したがって、この構成により、冷却剤チャネルの冷却剤の冷却能力が使い果たされたときに、冷却剤チャネルを燃焼チャンバから離れるよう誘導し、この離れるよう誘導された冷却剤チャネルが、隣接する冷却剤チャネルの背後、すなわち燃焼チャンバから径方向外側に位置されることによって、隣接する冷却剤チャネルの冷却剤に「切り替える」ことが可能になる。離れるよう誘導される冷却剤チャネルは、第1または第2の冷却剤チャネルであってよく、重ねられる冷却剤チャネルは、第1または第2の冷却剤チャネルであってよい。
【0033】
1つの展開例において、燃焼チャンバ構造は、第1の冷却剤および第2の冷却剤のみによって冷却されるように構成される。したがって、例えばフィルム冷却、アブレーティブ冷却、または放射冷却など、他の冷却方法は提供されない。燃焼チャンバ構造物は、循環方式のみで冷却される。したがって、1つの展開例による燃焼チャンバ構造は、製造コストおよびパワー損失の点で有利である。
【0034】
本明細書で説明される解決策の追加の利点、詳細、および特徴は、以下の例示的な実施形態の説明、および図面から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】燃焼チャンバ構造物の例示的な実施形態の斜視図である。高温ガス壁の一部が、高温ガス壁の外周に沿った縦断面で示される。
【
図2】
図1の燃焼チャンバ構造物の下方領域における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に示される燃焼チャンバ構造物10は、燃焼チャンバ14を囲む高温ガス壁12を有する。高温ガス壁12は、
図1では下方の長手方向端部である、第1の長手方向端部16と、
図1では上方の長手方向端部である、高温ガス壁12の反対側端部に位置される第2の長手方向端部18とを有する。さらに、高温ガス壁12は、燃焼チャンバ14内で高温ガスと接触するよう設けられた内面60と、燃焼チャンバ構造物の外側環境に接触するよう設けられた外面61とを有する(
図2も参照)。まず、
図1における高温ガス壁の下方の長手方向端部16について、第1のマニフォルド20および第2のマニフォルド22が設けられる。第1のマニフォルド20および第2のマニフォルド22は、高温ガス壁12の全周縁部に沿って設けられる。したがって、第1のマニフォルド20および第2のマニフォルド22は、燃焼チャンバ14を完全に囲む。
【0037】
高温ガス壁12は、一片の部品として具現化されてよく、または、例えば外側ジャケットを内側ジャケットに取り付けるなど、互いに接続されるいくつかの個々の部品によって形成されてもよい。
【0038】
図1に示す燃焼チャンバ構造物10は、
図1において、実際の燃焼チャンバを備える上方の第1の部分24と、
図1において、第1の部分と隣接し、拡張ノズルのノズル拡張部を備える、下方の第2の部分26とを有する。ノズル・スロートを備えた、より小さい径の中間部分28が、実際の燃焼チャンバを伴う第1の部分24と、ノズル拡張部を伴う第2の部分26との間に形成される。本開示において、高温ガス壁12によって囲まれる全ての空間を燃焼チャンバ14と指定する。
【0039】
図1に示す実施形態において、第1のマニフォルド20、第2のマニフォルド22、および高温ガス壁12は、一片の部品として形成される。しかし他の実施形態において、第1のマニフォルド、第2のマニフォルド、および高温ガス壁は、別個の部品として具現化することができる。詳細には、第1のマニフォルドおよび第2のマニフォルドは、例えばこれらを高温ガス壁に溶接することによって、高温ガス壁に装着させてもよい。さらに、それぞれのマニフォルドの一方のハーフシェルを、高温ガス壁で予め形成させてよく、その後、他方のハーフシェルを、例えば溶接または、ねじ留めによって、予め形成されたハーフシェルに装着させる。
【0040】
第1のマニフォルド20は、燃焼チャンバ14を囲む第1の冷却剤チャンバ30を形成し、第2のマニフォルド22は、燃焼チャンバ14を囲む第2の冷却剤チャンバ32を形成する。第1の冷却剤チャンバ30は、第1の冷却剤を受け入れるために設けられ、第2の冷却剤チャンバ32は、第2の冷却剤を受け入れるために設けられる。この目的のため、第1のマニフォルド20は第1の入口ポート34を備え、第2のマニフォルド22は第2の入口ポート36を備える。例示的な実施形態において、第1のマニフォルド20の第1の冷却剤チャンバ30の内径は、第1の入口ポート34からの距離の増加に伴って減少し、第2のマニフォルド22の第2の冷却剤チャンバ32の内径は、第2の入口ポート36からの距離の増加に伴って減少する。
【0041】
図1でも確認できるように、第1のマニフォルド20は、第2のマニフォルド22よりも燃焼チャンバ14から離れて位置される。したがって、第1のマニフォルド20は、第2のマニフォルド22に対して径方向外側に位置される。さらに、第1のマニフォルド20は、燃焼チャンバ構造物10を隣接する構成要素に装着するための、装着手段38を備える。具体的には、装着手段38を、燃焼チャンバ構造物10を拡張ノズルまたは拡張ノズルの一部に装着するために設けてもよい。示した例示的な実施形態において、装着手段38は、第1のマニフォルド20の外側周縁部40に設けられる。装着手段38は、各々が装着穴44を備え、周方向に設けられる複数の装着構造物42として、具現化される。装着穴44は、ねじを受け入れるためのものであり、それによって燃焼チャンバ構造物10を、隣接する構成要素に装着することができる。隣接する構成要素は、拡張ノズルのノズル拡張部の延長部分であってよい。この場合、第2の部分26は、拡張ノズルのノズル拡張部の一部であってよい。
【0042】
第1のマニフォルド20は、センサを第1のマニフォルド20すなわち燃焼チャンバ構造物に接続するための、センサ・ポート46をさらに備える。装着され得るセンサの例として、動圧計測、静圧計測、および侵入型温度計測のためのセンサが挙げられる。第2のマニフォルド22は、
図1には示さないが、1つまたは複数のセンサを接続するための、1つまたは複数のセンサ・ポートも含んでよい。
【0043】
高温ガス壁12は、複数の冷却剤チャネル50、52をさらに備える。複数の冷却剤チャネル50、52は、第1の長手方向端部16から第2の長手方向端部18まで延びる空洞として、高温ガス壁12の内側に形成される。複数の冷却剤チャネル50、52は、互いに流体的に分離された2つの冷却回路の一部である。具体的には、第1の冷却回路は、第1のマニフォルド20および複数の第1の冷却剤チャネル50を備え、第2の冷却回路は、第2のマニフォルド22および複数の第2の冷却剤チャネル52を備える。第1のマニフォルド20は、第1の冷却剤を第1の冷却剤チャネル50の各々に分配するために、第1の冷却剤チャネル50の各々と流体接続される。第2のマニフォルド22は、第2の冷却剤を第1の冷却剤チャネル52の各々に分配するために、第2の冷却剤チャネル52の各々と流体接続される。したがって、第1の冷却剤チャネル50および第2の冷却剤チャネル52も、互いに流体的に離されている。
【0044】
第1および第2のマニフォルド20、22の構成、ならびに第1および第2のマニフォルド20、22の、第1および第2の冷却剤チャネル50、52への接続は、それぞれ
図2を参照してさらに詳細に説明する。
図2は、第1および第2のマニフォルド20、22、および、燃焼チャンバ構造物10の径方向に、第1および第2のマニフォルド20、22と隣接した高温ガス壁12の領域を通る、縦断図である。
図2に示すような例示的な実施形態において、高温ガス壁12は、下方の第1の長手方向端部16において、外周に円環状の隆起部54を備える。この円環状の隆起部54の内部に、第1のマニフォルド20の第1の冷却剤チャンバ30と、第2のマニフォルド22の第2の冷却剤チャンバ32とが形成される。さらに、
図2の縦断図において、第1のマニフォルド20が第1の冷却剤チャネル50のうちの1つと流体接続される、流路56が示される。流路56は、円環状の隆起部54の底部に形成される。対応する流路が、第2の冷却剤チャンバ32を、示された第1の冷却剤チャネル50に隣接する第2の冷却剤チャネル52に流体接続するため、円環状の隆起部54の底部に形成される。対応する流路は、示された流路56に対して周方向にずれているため、
図2の縦断図では確認できない。このように、第1の冷却剤チャネル50の各々、および第2の冷却剤チャネル52の各々は、対応する流路56によって、第1のマニフォルド20および第2のマニフォルド22にそれぞれ流体接続される。対応する流路56は、周方向に互いから離隔され、円環状の隆起部54の中に形成される。
【0045】
再び
図1を参照すると、高温ガス壁12の第1の長手方向端部16から第2の長手方向端部18までの、冷却剤チャネル50、52の進路と、互いに対する冷却剤チャネル50、52との配置は、高温ガス壁12の全体にわたって均一ではない。具体的には、第1の冷却剤チャネル50および第2の冷却剤チャネル52は、高温ガス壁12の全ての位置において、燃焼チャンバ14での燃焼プロセスによって高温ガス壁12に供給される熱と、第1および第2の冷却剤チャネル50、52によって高温ガス壁12から消散される熱との間の最適な関係が実現されるように、構成および配置される。
【0046】
図1の例示的な実施形態において、第1および第2の冷却剤チャネル50、52は、燃焼チャンバ構造物10の下方の第2の部分26における高温ガス壁12に、交互に形成される。したがって、第1の冷却剤チャネル50は、2つの第2の冷却剤チャネル52によって隣接され、第2の冷却剤チャネル52は、2つの第1の冷却剤チャネル50によって隣接される。下方の第2の部分26の高温ガス壁12において、隣接する第1および第2の冷却剤チャネル50、52は、高温ガス壁12の周方向に互いに距離を置いて配置される。第1および第2の冷却剤チャネル50、52は、燃焼チャンバ構造物10の長手方向軸Lの周りに等間隔で設けられる。しかし、高温ガス壁12の第1の長手方向端部16から、ノズル・スロートを形成する高温ガス壁12の中間部28への方向に沿って見ると、隣接する第1および第2の冷却剤チャネル50、52間の距離は減少する。より具体的には、隣接する第1および第2の冷却剤チャネル50、52間の距離は、連続的に減少する。
【0047】
さらに、下方の第2の部分26の高温ガス壁12において、第1および第2の冷却剤チャネル50、52が、第1の長手方向端部16から第2の長手方向端部18へ延びるとき、燃焼チャンバ構造物10の軸方向に実質的に平行な方向に延びる。すなわち第1の長手方向端部16から第2の長手方向端部18へ延びるときに、燃焼チャンバ構造物10の径方向に高温ガス壁12の形状に従いながら、実質的に直線に延びる。したがって、第1および第2の冷却剤チャネル50、52の進路は、長手方向面(すなわち長手方向軸Lを含む面)に投影されるとき、長手方向軸Lに実質的に平行となる。
【0048】
対照的に、燃焼チャンバ構造物10の上方の第1の部分24の高温ガス壁12において、第1および第2の冷却剤チャネル50、52は、中間部分28から第2の長手方向端部18まで延びるとき、燃焼チャンバ構造物10の長手方向軸Lに対してある角度(0°より大きい)を形成する。したがって、第1および第2の冷却剤チャネル50、52は、(長手方向面に投影されるときに)長手方向軸Lに平行に直線で延びるのではなく、軸方向の延長に加えて、第1および第2の冷却剤チャネル50、52は、燃焼チャンバ構造物10の長手方向軸Lに対してある角度を形成するように、燃焼チャンバ構造物10の長手方向軸Lの周りに屈曲される。このように、高温ガス壁12にわたる熱の不均衡、すなわち高温ガス壁12の周方向の熱の不均衡は、複数の冷却剤チャネル50、52の冷却剤、詳細には第1および第2の冷却剤の両方に再分配することができる。
【0049】
さらに
図1の例示的な実施形態において、第1および第2の冷却剤チャネル50、52は長手方向軸Lの周りに同じ程度に屈曲されるのではなく、第2の冷却剤チャネル52の方が、長手方向軸Lの周りにより大きく屈曲される。したがって、上方の第1の部分24を形成する高温ガス壁12の領域において、第2の冷却剤チャネル52は第1の冷却剤チャネル50に重なる。重なる領域において、重なる第2の冷却剤チャネル52は、重ねられる側の第1の冷却剤チャネル50と同じ外周位置に設けられる。径方向において、重なる第2の冷却剤チャネル52は、重ねられる側の第1の冷却剤チャネル50よりもさらに外側に位置される。したがって、重なる第2の冷却剤チャネル52は、燃焼チャンバ14から、または高温ガス壁12の内面60からさらに離れて位置される。したがって、隣接する第1の冷却剤チャネル50に重なることができるように、第2の冷却剤チャネル52は、第2の長手方向端部18の方向に延びるときに、燃焼チャンバ14までの距離または高温ガス壁12の内面60までの距離が連続的に増加するように、高温ガス壁12に形成されるか、または設けられる。第2の長手方向端部18への方向に延びるとき、第1の冷却剤チャネル50は、燃焼チャンバ14までの距離もしくは高温ガス壁12の内面60までの距離が一定になるように、または燃焼チャンバ14までの距離もしくは高温ガス壁12の内面60までの距離が連続的に減少するように、高温ガス壁12に形成されるかまたは設けられる。
【0050】
重なり合うことで、第2の冷却剤チャネル52の第2の冷却剤の冷却能力が使い果たされたときに、第2の冷却剤チャネル52を燃焼チャンバ14から離れるよう誘導し、この離れるよう誘導された第2の冷却剤チャネル52が、隣接する第1の冷却剤チャネル50の背後、すなわち燃焼チャンバ14から径方向外側に位置されることによって、隣接する第1の冷却剤チャネル50の第1の冷却剤に「切り替える」ことが可能になる。
【0051】
上方の第1の部分24を形成し、実質的に一定の外径を有する、高温ガス壁12の領域において、第1の冷却剤チャネル50は等間隔で配置され、第2の冷却剤チャネル52も等間隔で配置される。対照的に、隣接する第1および第2の冷却剤チャネル50、52間の距離は、上述のように隣接する第1および第2の冷却剤チャネル50、52が互いに重なり合う限り、第2の長手方向端部16の方向に向かって減少する。
【0052】
図1でさらに確認できるように、いくつかの第1および/または第2の冷却剤チャネル50、52の規則的な進路が、いくつかの所定の箇所で妨げられ、ここにおいて、いくつかの第1および第2の冷却剤チャネル50、52は凸部62を形成する。凸部62は、燃焼チャンバ構造物10のこれらの所定の箇所に位置付けられた構成要素の周りに延びるように形成される。これらの構成要素は、例えばセンサ要素または点火要素であってよい。このように、特定の構成要素を、燃焼チャンバ構造物のこれらの所定の箇所で冷却の干渉をもたらすことなく、特定の構成要素に最適な位置に設置することが可能となる。
【0053】
上方の第2の長手方向端部18において、高温ガス壁12は、高温ガス壁12の周方向に延びる追加の第1の冷却剤チャンバ64を形成する。追加の第1の冷却剤チャンバ64は、高温ガス壁12に形成された環状の溝66によって具現化される。環状の溝66は、高温ガス壁12に囲まれた内部空間のすぐ近傍にある。第1の冷却剤チャネル50は、管状の溝66に設けられた第1の出口開口部68を介し、上方の第2の長手方向端部18において、追加の第1の冷却剤チャンバ64の中に開口している。
【0054】
図1には示されないが、追加の第1の冷却剤チャンバ64を制限する別の壁を、上方の第2の長手方向端部で燃焼チャンバ構造物10に装着され得る注入ヘッドによって、設けることができる。第1の冷却剤を、注入ヘッドによって燃焼チャンバ14の中に導入することができる。詳細には、第1の冷却剤は、第1の冷却剤チャネル50から第1の出口開口部68を介して追加の第1の冷却剤チャンバ64の中に、さらには例えば径方向ボアによって注入ヘッドの中に搬送される。注入ヘッドから、第1の冷却剤はさらに燃焼チャンバ14の中に搬送される。したがって例示的な実施形態において、追加の第1の冷却剤チャンバ64は、集積チャンバおよび分配チャンバの両方として機能する。したがって、追加の第1の冷却剤チャンバ64は、分配チャンバとして機能する第1および第2の冷却剤チャンバ30、32よりも小さい体積を有する。
【0055】
注入ヘッドを燃焼チャンバ構造物10に装着するために、燃焼チャンバ構造物10は、上方の第2の長手方向端部18において、装着穴72が設けられた1つの装着フランジ70または複数の装着フランジ70を備える。
【0056】
第2の冷却剤チャネル52は、高温ガス壁12の側周面74において、第2の出口開口部76を介して高温ガス壁12から出る。第2の冷却剤チャネル52は、側周面74において、追加の第2の冷却剤チャンバの中に開口している。追加の第2の冷却剤チャンバは、
図1には示されない。追加の第2の冷却剤チャンバは、側周面74およびマニフォルド・リングによって形成される壁によって形成され得る。マニフォルド・リングは、燃焼チャンバ構造物の一部であってよく、注入ヘッドも、注入ヘッドを燃焼チャンバ構造物に装着することによって形成された空洞によって形成され得る。追加の第2の冷却剤チャンバから、第2の冷却剤は、例えば径方向ボアを介して注入ヘッドの中に直接注入されてよく、または、例えばパイプもしくは管によって、注入ヘッドの中に戻る前に、第2の冷却剤は集積されて燃焼チャンバ構造物の外側に誘導されてよい。
【0057】
第1および第2の冷却剤が、径方向ボアを介して注入ヘッドの中に直接誘導される場合、第1および第2の冷却剤のための径方向ボアのそれぞれは、軸方向にずらされてよく(すなわち軸方向に異なる高さに設けられる)、または軸方向に同じ高さに、注入ヘッドおよび/または燃焼チャンバの周方向に、交互に設けられる。それぞれの径方向ボアが異なる高さに設けられる場合、第1および第2の冷却剤チャンバも、軸方向に異なる高さに設けられてよい。
【0058】
追加の第1の冷却剤チャンバ64の中への第1の冷却剤の出口開口部68、および追加の第2の冷却剤チャンバの中への第2の冷却剤の出口開口部76の両方は、燃焼チャンバ構造物10の周方向に等しく離隔される。このように、両方の冷却剤は、外周まわりに対称に、冷却剤チャネル50、52を出て、第1および第2の冷却剤チャンバの中に入れることができる。そこから注入ヘッドの中に、例えば燃焼チャンバ構造物の軸方向に異なる高さに設けられ、周方向に規則的に設けられた径方向ボアによって、入れることができるので、外形を簡単にすることができる。例えば、第1および第2の冷却剤が対称に出て注入ヘッドの中に入るので、より大きい体積の必要性を(例えば所謂「ドーム」によって)省くことができ、重量および複雑さの軽減をもたらす。
【0059】
開示される燃焼チャンバ構造物において、第1の冷却剤および第2の冷却剤の両方の合計質量流量を、燃焼チャンバ14を冷却するために利用することができ、冷却性能の向上をもたらす。第1の冷却剤および第2の冷却剤は、燃料および酸化剤などの2つの推進剤であってよく、第1および第2の冷却剤の合計質量流量は、燃焼チャンバへ搬送され得る。したがって、燃焼効率の低減を生じさせることになるフィルム冷却の場合などのように、パワー損失をもたらす別のヒート・シンクを設けることなく、燃焼チャンバ構造物を、小さい推力クラスの燃焼チャンバ構造物のエンジンにおいても、十分に冷却することができる。
【0060】
第1および第2の冷却剤チャネル50、52は、燃焼チャンバ構造物の全軸方向長にわたって、冷却剤の質量流量が一定になるように構成されてよく、これもより良好な冷却性能をもたらす。
【0061】
開示する燃焼チャンバ構造物10において、第1および第2の冷却剤チャネル50、52は、高温ガス壁12の全ての位置、すなわち軸方向および周方向の両方において、燃焼チャンバ14での燃焼プロセスによって高温ガス壁12に供給される熱と、第1および第2の冷却剤によって高温ガス壁12から消散される熱との間の最適な関係が実現されるように、構成かつ配置される。これを実現するために、例えば第1および/もしくは第2の冷却剤チャネル50、52の進路および/もしくは外形を、任意の好適な方法で連続的に変化させてもよく、ならびに/または、高温ガス壁の厚さを連続的に変化させてもよい。開示する燃焼チャンバ構造物10は、任意の別の冷却方法の必要性を排除する。すなわち開示する燃焼チャンバ構造物10は、循環方式のみで冷却され得る。