(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】防災監視システム用受信機
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20231113BHJP
G08B 25/14 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
G08B17/00 G
G08B17/00 L
G08B25/14 A
(21)【出願番号】P 2019140630
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】平本 稔
(72)【発明者】
【氏名】石川 長志
(72)【発明者】
【氏名】魚住 広樹
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-083927(JP,A)
【文献】特開2000-259972(JP,A)
【文献】実開平07-036287(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C1/00-21/02
G08B17/00
23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象区域内に設置されている端末機器からの信号に応じてイベントの発生を検知可能な制御基板を内蔵し一面が開口した箱状本体と、検知されたイベントの発生およびイベントに対応した情報を表示可能であるとともに入力操作可能な操作表示部を有し前記箱状本体の開口を閉鎖するように取り付けられる前面パネルと、からなる筐体を備えた防災監視システム用受信機であって、
前記前面パネルには、開口部および該開口部の縁に沿った枠体が設けられ、
前記開口部の一部を閉塞可能なカバーが、前記前面パネルに一辺を支点として回動可能に装着され、
前記前面パネルの前記カバーで覆われている部位にはスイッチ類が配置され、
前記前面パネルの前記枠体の互いに対向する一対の壁部には、前記カバーの側部に対応する位置にそれぞれ縦方向の長孔が形成され、
一対の前記長孔には、板状の不正防止部材の両端部がそれぞれ挿入され、
前記前面パネルが前記箱状本体の開口を閉鎖した状態において、前記不正防止部材が前記カバーの回動を阻止するように構成されていることを特徴とする防災監視システム用受信機。
【請求項2】
前記不正防止部材には一対のスリットが形成され、前記長孔に端部が挿入された前記不正防止部材の前記一対のスリットが前記枠体の一対の壁部に嵌合されることで前記不正防止部材の横方向への移動が阻止されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の防災監視システム用受信機。
【請求項3】
前記前面パネルの裏面には、前記長孔に対応して、前記長孔に端部が挿入された前記不正防止部材の縦方向への移動を阻止する移動阻止手段が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の防災監視システム用受信機。
【請求項4】
前記前面パネルの前記カバーで覆われていない部位には、前記制御基板がイベントの発生を検知した際に有効にされる第1スイッチ群が配置され、
前記前面パネルの前記カバーで覆われている部位には、電源投入中常時有効にされる
スイッチを含む第2スイッチ群が配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の防災監視システム用受信機。
【請求項5】
前記
電源投入中常時有効にされるスイッチは、当該受信機の試験時もしくは点検時に操作されるスイッチと、イベントの発生時に防災監視システムの所定の設備を作動させるために操作されるスイッチと、動作モードを設定するスイッチであることを特徴とする請求項4に記載の防災監視システム用受信機。
【請求項6】
前記前面パネルには、当該前面パネルの閉状態を維持するための錠前が設けられ、
前記錠前は、キーを不要としコインもしくは工具で開錠することが可能な錠前により構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の防災監視システム用受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災感知器や発信機等からの信号を受信して火災を警報する火災受信機のような防災監視システム(火災報知システムを含む)に用いられる受信機に関し、特に受信機の前面パネルの設けられているスイッチ類を覆うカバーの誤操作防止機構に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火災受信機には、発生した火災等のイベントの発生場所(地区)やイベントの内容を表示する情報表示部、警報音を発するスピーカ、各種スイッチ類などが設けられている。また、有事の際に操作が必要なスイッチ群および表示部と試験や点検時に必要なスイッチ群および表示部とが分けられて配置されており、そのうち試験や点検時に必要なスイッチ群および表示部は、誤操作を防止するためのカバーで覆ったり、開閉可能な子扉の内側に設置したりして、通常時はスイッチを操作できないようにしている場合がある。なお、試験や点検時に必要なスイッチには、火災報知設備が動作する際の動作を決める各種モード設定も含まれる。
【0003】
火災受信機は、一般に、感知器からの火災信号を受けて火災の発生を当該建築物のビル管理者に知らせる機能を有しており、通常、防災センターや管理室等の特殊な部屋に設置されていることが多いが、小規模なビル等の施設では、受信機の取り扱いを許可された関係者以外の第三者が立ち入ることがある場所に設置されることもある。
第三者が立ち入ることがある場所に設置されている火災受信機にあっては、第三者がカバーや子扉を開けていたずらをしたり不正に操作したりすることで、誤った報知がなされたり必要なときに正常動作しない事が発生したりするおそれがある。そこで、受信機の操作部に設けられているカバーや子扉に鍵を付加することも考えられるが、そのようにすると、火災発生の知らせを受けて消防士が駆け付けた際や取り扱いを許可されたビル管理者等の関係者が鍵を忘れたような場合には、カバーや子扉を開けて内側のスイッチ類を操作することができない事態が生じることが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、防災受信機に、スイッチ群を覆うリッド(カバー)を簡単に開閉できないようにするための被覆板(カバー)を設けて、スイッチに対するいたずらを防止することができるようにした発明が提案されている(特許文献1)。
特許文献1に記載されている技術は、火災受信機の表示操作部とリッドの一部を覆う被覆板と被覆板を支持するガイドレールを表示操作部とリッドにそれぞれ設けることで、表示操作部の操作とリッドの開操作を禁止する構成としたものである。この技術を適用した場合、いたずら防止には効果があるが、被覆板をネジで固定する構造であるので、工具を使用しないと被覆板を外すことができない。
【0006】
そのため、有事が発生した際に、ビル管理者や消防士が必要なスイッチを操作しようとした際にネジ固定が障害となる上、メーカにとっては被覆板とガイドレールを設けたいたずら防止対策品とそれらを持たない通常品とを作り分ける必要があるため、コストアップを招くという課題がある。また、表示操作部を覆う被覆板を両面テープで止着することも考えられるが、そのようにすると再利用したい場合に両面テープを剥がして表面を清浄処理する必要があり、再利用が容易に出来ないという課題が生じる。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、第三者によるスイッチ類のいたずらや不正操作を防止するとともに、ビル管理者や点検作業者にとっては必要な操作や作業を行う上で何ら障害とならない防災監視システム用受信機を提供することにある。
本発明の他の目的は、いたずら防止対策品と対策をしていない通常品と作り分けることが容易であり、作り分けに伴うコストの上昇を抑えることができる防災監視システム用受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本出願に係る発明は、
監視対象区域内に設置されている端末機器からの信号に応じてイベントの発生を検知可能な制御基板を内蔵し一面が開口した箱状本体と、検知されたイベントの発生およびイベントに対応した情報を表示可能であるとともに入力操作可能な操作表示部を有し前記箱状本体の開口を閉鎖するように取り付けられる前面パネルと、からなる筐体を備えた防災監視システム用受信機であって、
前記前面パネルには、開口部および該開口部の縁に沿った枠体が設けられ、
前記開口部の一部を閉塞可能なカバーが、前記前面パネルに一辺を支点として回動可能に装着され、
前記前面パネルの前記カバーで覆われている部位にはスイッチ類が配置され、
前記前面パネルの前記枠体の互いに対向する一対の壁部には、前記カバーの側部に対応する位置にそれぞれ縦方向の長孔が形成され、
一対の前記長孔には、板状の不正防止部材の両端部がそれぞれ挿入され、
前記前面パネルが前記箱状本体の開口を閉鎖した状態において、前記不正防止部材が前記カバーの回動を阻止するように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有する受信機によれば、前面パネル(親扉)が箱状本体の開口を閉鎖した状態で、板状の不正防止部材がカバー(子扉)と重なることでカバーの回動を阻止するため、カバーを開けて内側のスイッチ類を操作することができず、第三者によるスイッチ類のいたずらや不正操作を防止することができる。
また、前面パネルを開放して不正防止部材を抜き取るとカバーを回動させることができ、カバーを開けて内側のスイッチ類を操作することができるので、ビル管理者や点検作業者にとっては必要な操作や作業を行う上で何ら障害とならない。
【0010】
さらに、カバーの回動を阻止する不正防止部材は簡単に抜き取ることができる構成であるため、いたずら防止対策品と対策をしていない通常品と作り分けることが容易であり、作り分けに伴うコストの上昇を抑えることができるとともに、復旧後に再利用することも容易となる。
また、不正防止部材を設けない受信機は、不正防止部材を挿通するための長孔にグロメット等を挿入しておくことで、防塵や防水を行うことができるとともに、長孔を目立ちにくくすることができるため美観を損なうこともない。
【0011】
ここで、望ましくは、前記不正防止部材には一対のスリットが形成され、前記長孔に端部が挿入された前記不正防止部材の前記一対のスリットが前記枠体の一対の壁部に嵌合されることで前記不正防止部材の横方向への移動が阻止されるように構成する。
かかる構成によれば、不正防止部材を横方向へ移動させることができないため、前面パネルを閉じた状態のままで不正防止部材を抜き取ることができず、第三者がカバーを開けて内側のスイッチ類をいたずらしたり不正操作したりするのを防止することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記前面パネルの裏面には、前記長孔に対応して、前記長孔に端部が挿入された前記不正防止部材の縦方向への移動を阻止する移動阻止手段が設けられているようにする。
かかる構成によれば、不正防止部材を縦方向へ移動させることができないため、前面パネルを閉じた状態のままで不正防止部材を抜き取ることができず、第三者がカバーを開けて内側のスイッチ類をいたずらしたり不正操作したりするのを防止することができる。また、前面パネルを開いて移動阻止手段を解除させると不正防止部材を抜き取ることができるようになるため、ビル管理者や点検作業者にとっては必要な操作や作業を行う上で何ら障害とならない。
【0013】
さらに、望ましくは、前記前面パネルの前記カバーで覆われていない部位には、前記制御基板がイベントの発生を検知した際に有効にされる第1スイッチ群が配置され、
前記前面パネルの前記カバーで覆われている部位には、電源投入中常時有効にされるスイッチを含む第2スイッチ群が配置されているようにする。
【0014】
上記のような構成を有する受信機によれば、カバーで覆われていない部位に配設されている第1スイッチ群は、火災等のイベントの発生を検知した際に有効にされるので、受信機が取り扱いを許可された関係者以外の第三者が立ち入ることがある場所に設置されている場合に、第三者がスイッチ類をいたずらで操作しても装置は何の反応もしないので、誤った報知や表示がなされるのを回避することができる。また、電源投入中常時有効にされる第2スイッチ群はカバーの内側に配置されているので、第三者がこれらのスイッチ類をいたずらしたり不正操作したりするのを防止することができる。
【0015】
ここで、前記電源投入中常時有効にされるスイッチは、当該受信機の試験時もしくは点検時に操作されるスイッチと、イベントの発生時に防災監視システムの所定の設備を作動させるために操作されるスイッチと、動作モードを設定するスイッチとする。
これらのスイッチは、むやみに操作されるとシステムが誤った報知や表示をするおそれがあるが、カバーで覆われている部位に配設されているため、第三者により操作されるのを防止することができ、装置の信頼性が向上する。
【0016】
また、望ましくは、前記前面パネルには、当該前面パネルの閉状態を維持するための錠前が設けられ、
前記錠前は、キーを不要としコインもしくは工具で開錠することが可能な錠前により構成する。
かかる構成によれば、第三者によるいたずらを防止しつつ、火災発生の知らせを受けて駆け付けた消防士やキーを忘れた関係者がコインや工具を使用してカバーを開けることで、内側のスイッチを操作できるため、消防士やビル管理者等の関係者が必要な操作を行うことができなくなるような事態が発生するのを回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防災監視システム用受信機によれば、第三者によるスイッチ類のいたずらや不正操作を防止するとともに、ビル管理者や点検作業者にとっては必要な操作や作業を行う上で何ら障害とならないようにすることができる。また、いたずら防止対策品と対策をしていない通常品と作り分けることが容易であり、作り分けに伴うコストの上昇を抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る受信機を適用して有効な火災受信機の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】実施形態の火災受信機において子扉を開いた状態を示す斜視図である。
【
図3】実施形態の火災受信機における前面パネルの構成例を示す正面図である。
【
図4】実施形態の火災受信機の前面パネルに不正防止プレートを取り付けた状態を示すもので、(A)火災受信機の斜視図、(B)は前面パネルの背面の構成例を示す斜視図である。
【
図5】前面パネルの背面の枠体の長孔と不正防止プレートの詳細な構成を示す斜視図である。
【
図6】前面パネルの背面の枠体の長孔に不正防止プレートを挿入した後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の火災受信機は、建物の一角に設置され、建物内に設けられた感知器や発信機からの火災信号を受信し、地区音響装置を鳴動させて火災の発生を音響で知らせるとともに、当該火災受信機の前面パネルに設けられているランプ等の表示により火災の発生を報知する機能を有する。
【0020】
図1に示すように、火災受信機は一面(前面)が開口した箱状をなす金属製の本体20と、その一側部(図では右側)にヒンジ21A,21Bによって開閉可能に取り付けられた金属製の前面パネル10とを備え、前面パネル10と本体20とによって受信機の筐体が構成されている。
図1および
図2に示されているように、本実施例の火災受信機の前面パネル10は中央に開口部10aが形成され、この開口部10aに各種の表示と入力操作を行うための操作表示パネル10Aが設けられている。
【0021】
本実施例の火災受信機(P型)の操作表示パネル10Aには、
図3に示すように、火災発報した回線や感知器線断線が発生した回線を表示する火報回線用の地区表示窓12、火災が発生した場所や防排煙端末等の作動した場所を表示する防排煙回線用の地区表示窓13が設けられている。地区表示窓12と13は、それぞれの地区回線ごとに火災の発生又は防排煙端末(排煙ダンパーや防煙シャッター等)の作動を報知する複数のランプと、それぞれのランプに対応した地区名もしくは設置個所を文字にて示す表示欄(表示プレート)とによって構成されている。
【0022】
また、操作表示パネル10Aには、電源の投入状態や火災発報、発信機信号の入力など火災受信機の動作状態を各種ランプの点灯で表示する主操作部11と、火災の発生等を知らせるスピーカ14、受信機の音響を停止させるための押ボタン15aやベル(地区音響)を停止させるための押ボタン15bを備えた音響操作部15、受信機の動作モードや各種試験が実施された際の結果等の情報を表示するドットマトリクス型VFD(蛍光表示管)もしくはLCD(液晶表示装置)などからなる情報表示部16、表示内容を変更するためのシフトボタンなどを有する表示操作部17、受信機の火災内容・異常内容などを情報表示部16に表示させて確認するため情報ボタン18aおよび情報ランプ18bを有する情報操作部18などが設けられている。
上記表示操作部17には、順送り用のシフトボタン17a、逆送り用のシフトボタン17b、操作を1つ前の段階に戻すための戻りボタン17c、処理を確定させるための決定ボタン17dが設けられている。
【0023】
また、火災受信機の前面パネル10の下部には、電池試験の開始を指令する電池試験スイッチボタン19Aや火災試験の開始を指令する火災試験スイッチボタン19B、試験からの復旧を指令する試験復旧ボタン19C、火災試験からの復旧を指令する火災復旧ボタン19D、点検時に火災時の防排煙連動を停止させておくスイッチボタン19E、点検時に消火栓ポンプ起動連動を停止させておくスイッチボタン19F、火災時の非常放送移信連動を停止させておくスイッチボタン19G、火災時の移信(他設備に火災信号を送出する機能)を停止させておくスイッチボタン19H、点検時や火災時に操作して目的とする防排煙設備を作動または復帰させるためのスイッチボタン19Iなどを有する内部操作部19が設けられている。
【0024】
さらに、前面パネル10には、上記内部操作部19の前方を覆うように、樹脂パネルからなる操作部カバーとしての子扉22が設けられており、子扉22の内側にある上記スイッチボタン19A~19Iが簡単に操作されてしまうのを防止できるように構成されている。
図2に示すように、子扉22は、下端部に設けられたヒンジを中心にして前後に開閉可能に構成されている。なお、子扉22は透明でも非透明でもよい。
また、図示しないが、上記操作部(11、17、18)からの指令入力を受けて各表示部(11、16、18)やスピーカ14を駆動する制御基板が、火災受信機の筐体(10、20)の内部に設置されている。さらに、商用交流電源の停電時に上記制御基板等へ電源を供給する予備電源装置が火災受信機の筐体内部に設けられている。
【0025】
上記主操作部11、表示操作部17および情報操作部18に設けられている各種スイッチ類は、筐体内部すなわち前面パネル10の内側に設けられて上記各表示部の表示制御を行う制御基板によって、イベント発生の際にのみ操作が有効にされるように構成されている。
一方、子扉22の内側には、主として制御基板によっていつでも操作が受け付けられる点検作業や試験時に操作されるスイッチボタンおよび受信機の動作モード設定のために操作されるスイッチボタンが配設されている。つまり、本実施形態の受信機においては、いたずらや不正により操作されても支障のないスイッチボタンは、子扉22の上方において前面パネル10の表面に露出した状態で配設され、いたずらや不正操作されると支障のあるスイッチボタンは子扉22の内側に配設されている。
【0026】
さらに、本実施形態の受信機においては、
図1に示すように、前面パネル10の開口部10aを構成する内側壁に縦方向の長孔10bが形成されている。図示しないが、対向する内側壁に縦方向の長孔が形成されている。そして、
図4(A)に示すように、これらの長孔10bに、子扉22の前方に配設されて子扉22を開閉することができないようにする不正防止プレート24の左右両縁部が挿入されている。
なお、
図4(B)に示すように、前面パネル10の背面側には、開口部10aに対応した矩形状の枠体23が設けられており、この枠体23の両側壁23A,23Bに上記長孔10bまたは、対応する長孔23a,23bが形成されており、長孔10b(23a,23b)に挿入された不正防止プレート24の左右両縁部が枠体23の両側壁23A,23Bから外側に突出するように構成されている。
【0027】
上記枠体23の内側には、表示ランプや押しボタンスイッチなどが実装されたプリント配線基板からなる操作表示基板を備えた操作表示パネル31が取り付けられ、操作表示パネル31の前面は、押しボタン等のマークを印刷した例えばメンブレンシートのような樹脂シートにより被覆されている。
また、前面パネル10の開口側の側部には、シリンダーキーのような錠前25が設けられており、この錠前25にコイン等を差し込んで開錠すると、
図4(B)に示すように、前面パネル10を回動させて本体20の前面を解放できるように構成されている。
【0028】
次に、
図5および
図6を用いて、不正防止プレート24と該不正防止プレート24の両側縁が挿入される長孔を有する枠体23の内側壁23A,23Bの詳細な構造について説明する。
図5に示すように、不正防止プレート24は枠体23の側壁23A,23Bの間隔により少し長い横幅を有し、左右両端から少し内側の位置には枠体23の側壁23A,23Bの間隔と同一の間隔をおいて、一対のスリット22a,22bが下辺から中間高さ位置まで形成されている。
【0029】
一方、枠体23の側壁23A,23Bには、不正防止プレート24の厚みとほぼ同一の幅を有し不正防止プレート24の縦幅Hよりも若干長い長さを有する長孔23a,23bがそれぞれ形成されている。なお、長孔23a,23bの下端は、不正防止プレート24のスリット22a,22bの長さに相当する高さ位置である。不正防止プレート24の左右両端を枠体23の長孔23a,23bに挿入した後、スリット22a,22bを枠体23の側壁23A,23Bに嵌合させるようにして下方へ移動させると、
図6に示すように、不正防止プレート24の下辺が枠体23の下側壁23Cの上面に接触し、不正防止プレート24は横方向への移動ができない状態になる。
【0030】
また、枠体23の一方の側壁23Aには、長孔23aの中央よりやや下寄りの位置に、例えばローレットネジのような止めネジ26Aと該止めネジ26Aを保持するL字部材26Bとからなる留め金具26が設けられており、不正防止プレート24のスリット22a,22bを枠体23の側壁23A,23Bに嵌合させた後、止めネジ26Aを回して不正防止プレート24の上部を押圧することで、不正防止プレート24の上方への移動およびガタツキを防止できるように構成されている。
図示しないが、枠体23の反対側の側壁23Bにも同様な留め金具を設けても良い。また、不正防止プレート24の上部に、止めネジ26Aが螺合するネジ穴を形成するようにしても良い。
【0031】
図5および
図6に示すような不正防止プレート24を設けた火災受信機は、受信機の取り扱いを許可された関係者以外の第三者が立ち入ることがある場所に設置されるのに適した製品であり、管理者以外の者が子扉22を開けようとしても、不正防止プレート24によって子扉22の回動すなわち開放が阻止されるため内側に配設されているスイッチボタン19A~19Iを操作することはできない。従って、第三者のいたずらや不正によるスイッチの操作を防止することができる。
【0032】
一方、建物の防災センターや中央管理室に設置される火災受信機は、
図1および
図2に示すように、不正防止プレート24は設けられていない。不正防止プレート24が設けられない受信機の前面パネル10の開口部内側の長孔10bには、細長い形状のグロメットを挿入しておくようにするのが望ましい。これにより、埃や水などの異物の進入を防止するとともに美観(意匠性)が損なわれないようにすることがきる。
【0033】
上記のように本実施例においては、不正防止プレート24を設けたいたずら防止対策品と不正防止プレート24を持たない通常品を作り分けるに当たっては、前面パネル10の開口部内側の長孔(10b,23a,23b)に不正防止プレート24を挿入するかグロメットを挿入するかを選択するだけで良いので、作り分けが容易であるとともに大幅なコストアップを回避することができる。
【0034】
上記のように、本実施例の火災受信機においては、子扉22の下端側にヒンジを設けて開閉可能に構成するとともに、前面パネル10の裏面には、子扉22の前方側を覆うように不正防止プレート24を設けているため、前面パネル10を閉めて錠前25を施錠すると、子扉22の開放不能にすることができる。そのため、子扉22を開いて内部のスイッチ類を操作するいたずらや不正を防止することができる。
【0035】
また、錠前25を開錠して前面パネル10を開いてから、前面パネル10の裏面の留め金具26の止めネジ26Aを緩めて上げて不正防止プレート24を上方へ移動させて引き抜くと子扉22を開くことができるようになるため、子扉22を開いて内部のスイッチ類を操作することができる。従って、錠前25を開錠するキーを保有するビル管理者等の関係者によるスイッチ操作を可能にしつつ関係者以外の第三者によるスイッチ操作を防止することができる。
【0036】
なお、子扉22の内側にはビル管理者や点検作業者が操作するスイッチ類のみを配設しても良いが、子扉22の内側に消防士が操作するスイッチ類を設けている場合には、錠前25としてコイン錠を使用することで、火災発生の知らせを受けて駆け付けた消防士や関係者がコインや工具を使用して前面パネル10を開け、止めネジ26Aを緩めて不正防止プレート24を引き抜いて子扉22を開けることで、スイッチを操作することができる。
また、防災センターや管理室等の特殊な部屋に設置される火災受信機にはキーが不要なコイン錠を設けた前面パネル(不正防止プレートなし)を設け、第三者が立ち入ることがある箇所に設置される火災受信機にはキーを必要とする錠前および不正防止プレート24を設けた前面パネルを設けることにより、製品を作り分けるようにしても良い。
【0037】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、不正防止プレート24として板状の部材を用いているが、内側に開口を有する額縁状の部材を用いるようにしても良い。また、前記実施形態では、子扉22は前面パネル(親扉)10の前面側に設けられているが、本体20側に設けられていても良い。その場合にも、不正防止プレート24を前面パネル10に設けることで、子扉22の開放を防止することができる。
【0038】
さらに、前記実施形態では、子扉22が下辺を支点として回動可能に設けられているが、上辺あるいは左右いずれかの辺を支点として回動可能に設けられていても良い。
また、以上の説明では、本発明をP型火災受信機に適用した場合を例にとって説明したが、本発明はP型火災受信機に限定されず、R型火災受信機その他監視システムを構成可能な受信機に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 前面パネル(筐体)
11 主操作部
12 火報回線用の地区表示窓
13 防排煙回線用の地区表示窓
14 スピーカ
15 音響操作部
16 情報表示部(表示装置)
17 表示操作部
18 情報操作部
19 内部操作部
20 本体(筐体)
22 子扉(カバー)
23 枠体
23a,23b 長孔
24 不正防止プレート(不正防止部材)
25 錠前
26 留め金具