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特許7383420画像処理装置、記録装置、画像処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】画像処理装置、記録装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/20 20060101AFI20231113BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20231113BHJP
   B41J 5/30 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
G06T1/20 B
G06T1/00 510
B41J5/30 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019147566
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028765
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晃順
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-039929(JP,A)
【文献】特開2011-118779(JP,A)
【文献】国際公開第2019/053915(WO,A1)
【文献】特開2012-160824(JP,A)
【文献】特開2013-122748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 5/00- 5/52
B41J 21/00-21/18
G06T 1/00- 1/40
G06T 3/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録装置に供給する画像データを生成するための画像処理を行う画像処理装置であって、
入力画像データを分割した分割画像データに所定の画像処理を施す複数のモジュールを備え、前記複数のモジュールそれぞれの処理後の画像データを、所定の前記モジュールを介して出力する画像処理グループと、
複数の前記画像処理グループが並列に接続され、各々の前記画像処理グループから出力された処理後の画像データを取得する取得手段と、
前記複数のモジュールのうち正常な処理が行われないエラーモジュールを検知する検知手段と、
複数の前記画像処理グループの中で画像処理に使用することが可能な使用可能グループを前記検知手段が検知した結果に基づいて設定し、前記分割画像データの画像処理を前記使用可能グループに実行させる制御手段と、
を備え
前記制御手段は、複数の前記画像処理グループのうち、前記取得手段に対して通信可能であり、かつ正常な画像処理を可能とする正常モジュールを少なくとも1つ備える画像処理グループを前記使用可能グループとして定め、
前記使用可能グループに前記エラーモジュールが存在したとき、当該エラーモジュールが属する使用可能グループにおける前記正常モジュールのみによって前記分割画像データの画像処理を実行し、
前記制御手段は、前記エラーモジュールが存在する前記使用可能グループの画像処理速度が、前記正常モジュールのみを備えた前記使用可能グループの画像処理速度と均等になるように、前記エラーモジュールが存在する使用可能グループによって処理すべき前記分割画像データのデータ量を定めることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
記録装置に供給する画像データを生成するための画像処理を行う画像処理装置であって、
入力画像データを分割した分割画像データに所定の画像処理を施す複数のモジュールを備え、前記複数のモジュールそれぞれの処理後の画像データを、所定の前記モジュールを介して出力する画像処理グループと、
複数の前記画像処理グループが並列に接続され、各々の前記画像処理グループから出力された処理後の画像データを取得する取得手段と、
前記複数のモジュールのうち正常な処理が行われないエラーモジュールを検知する検知手段と、
複数の前記画像処理グループの中で画像処理に使用することが可能な使用可能グループを前記検知手段が検知した結果に基づいて設定し、前記分割画像データの画像処理を前記使用可能グループに実行させる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記画像処理グループによって前記分割画像データを処理する処理速度を取得する速度取得手段と、
取得した処理速度に対して画像処理装置の記録速度を設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
記録装置に供給する画像データを生成するための画像処理を行う画像処理装置であって、
入力画像データを分割した分割画像データに所定の画像処理を施す複数のモジュールを備え、前記複数のモジュールそれぞれの処理後の画像データを、所定の前記モジュールを介して出力する画像処理グループと、
複数の前記画像処理グループが並列に接続され、各々の前記画像処理グループから出力された処理後の画像データを取得する取得手段と、
前記複数のモジュールのうち正常な処理が行われないエラーモジュールを検知する検知手段と、
複数の前記画像処理グループの中で画像処理に使用することが可能な使用可能グループを前記検知手段が検知した結果に基づいて設定し、前記分割画像データの画像処理を前記使用可能グループに実行させる制御手段と、
前記エラーモジュールが検知された場合、記録媒体の給送が第1の時間間隔で実行されるための制御を実行し、前記エラーモジュールが検知されなかった場合、前記給送が前記第1の時間間隔より短い第2の時間間隔で実行されるための制御を実行する実行手段と、 を備え、
前記画像処理が実行された前記画像データに基づいて、前記給送された記録媒体に対して印刷が実行されることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記複数の画像処理グループのうち、前記取得手段に対して通信不能であり、かつ正常な画像処理が行われないモジュールを前記エラーモジュールとして検知することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像処理グループは、前記取得手段に接続されるモジュールと、当該モジュールに直列に接続される少なくとも1つのモジュールとを含み構成されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記複数の画像処理グループのうち、前記正常モジュールのみを備える前記画像処理グループを正常グループとし、前記入力画像データを前記正常グループの数で分割した前記分割画像データを、前記正常グループに実行させることを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記使用可能グループに備わる前記正常モジュールのメモリの使用量を取得し、当該取得した前記メモリの使用量に応じた分割数で前記入力画像データを分割することにより前記分割画像データを生成することを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記メモリの使用量が所定の使用量を超える場合には、全ての画像処理グループの数で前記入力画像データを分割することにより前記分割画像データを生成し、前記メモリの使用量が前記所定の使用量を超えていない場合には、前記正常グループの数で前記入力画像データを割することにより前記分割画像データを生成することを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記制御手段は、複数の前記正常グループの中から、入力画像データによって表される画像のサイズに応じた数の前記正常グループを選択し、当該選択された正常グループ数で前記入力画像データを分割することにより生成された分割画像データの画像処理を、前記正常グループに実行させることを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記制御手段は、各前記画像処理グループに備わる複数のモジュールのうち、一部のモジュールを使用モジュールとし、かつ他のモジュールを未使用モジュールとし、前記使用モジュールの中に前記エラーモジュールが存在した場合には当該エラーモジュールが属する画像処理グループとは異なる画像処理グループに属する前記未使用モジュールに前記エラーモジュールに対応する画像処理を実行させることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記制御手段は、少なくとも前記取得手段に接続されたモジュールが前記正常モジュールであるとき、当該正常モジュールを備えるグループを前記使用可能グループとして定めることを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記制御手段は、複数の前記画像処理グループのうち、前記取得手段に対して通信可能であり、かつ正常な画像処理を可能とする正常モジュールを少なくとも1つ備える画像処理グループを前記使用可能グループとして定め、
前記使用可能グループに前記エラーモジュールが存在したとき、当該エラーモジュール
が属する使用可能グループにおける前記正常モジュールのみによって前記分割画像データ
の画像処理を実行することを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記画像処理グループに備えられた複数の前記モジュールは、入力画像データに含まれる複数の色成分データの画像処理をそれぞれ実行することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記画像処理グループによって前記分割画像データを処理する処理速度が取得する速度取得手段と、
取得した処理速度に対して画像処理装置の記録速度を設定する設定手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記エラーモジュールが検知された場合、記録媒体の給送が第1の時間間隔で実行されるための制御を実行し、前記エラーモジュールが検知されなかった場合、前記給送が前記第1の時間間隔より短い第2の時間間隔で実行されるための制御を実行する実行手段を備え、
前記画像処理が実行された前記画像データに基づいて、前記給送された記録媒体に対して印刷が実行されることを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項16】
転写胴に備えられた複数の転写体のうち少なくとも1つに、前記画像処理が実行された前記画像データに基づく画像が形成され、
少なくとも1つの前記転写体に形成された画像が、前記給送された記録媒体に転写され、
前記給送が前記第1の時間間隔で実行されるための制御が実行された場合、前記複数の転写体のうち第1の数の転写体が使用されるよう制御され、前記給送が前記第2の時間間隔で実行されるための制御が実行された場合、前記複数の転写体のうち前記第1の数より多い第2の数の転写体が使用されるよう制御されることを特徴とする請求項3または15に記載の画像処理装置。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置によって画像処理された画像データに基づき記録媒体への記録を行う記録手段と、
前記記録手段を制御する記録制御手段と、を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項18】
前記記録制御手段は、請求項17に記載の記録装置に備わる速度取得手段により取得された処理速度に応じて、前記記録手段による記録速度を制御することを特徴とする請求項17に記載の記録装置。
【請求項19】
コンピュータを、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として動作させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画像処理モジュールを用いて画像処理を行う画像処理装置、記録装置、画像処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理の高速化を図る方法として、複数の処理部を直列あるいは並列に接続して分散処理する方法が知られている。特許文献2では、画像処理の処理性能を向上させるため、同一機能を持つ複数の画像処理モジュールをPCIeスイッチ等の画像データの取得部に接続し、各画像処理モジュールによって、画像データの並列処理を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-323159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、一つでも画像処理モジュールにエラーが発生すると処理全体が停止するという課題がある。
【0005】
本発明は、複数のモジュールの中にエラーが発生した場合にも画像処理の継続することが可能な画像処理技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、記録装置に供給する画像データを生成するための画像処理を行う画像処理装置であって、入力画像データを分割した分割画像データに所定の画像処理を施す複数のモジュールを備え、前記複数のモジュールそれぞれの処理後の画像データを、所定の前記モジュールを介して出力する画像処理グループと、複数の前記画像処理グループが並列に接続され、各々の前記画像処理グループから出力された処理後の画像データを取得する取得手段と、前記複数のモジュールのうち正常な処理が行われないエラーモジュールを検知する検知手段と、複数の前記画像処理グループの中で画像処理に使用することが可能な使用可能グループを前記検知手段が検知した結果に基づいて設定し、前記分割画像データの画像処理を前記使用可能グループに実行させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記複数の画像処理グループのうち、前記取得手段に対して通信可能であり、かつ正常な画像処理を可能とする正常モジュールを少なくとも1つ備える画像処理グループを前記使用可能グループとして定め、前記使用可能グループに前記エラーモジュールが存在したとき、当該エラーモジュールが属する使用可能グループにおける前記正常モジュールのみによって前記分割画像データの画像処理を実行し、前記制御手段は、前記エラーモジュールが存在する前記使用可能グループの画像処理速度が、前記正常モジュールのみを備えた前記使用可能グループの画像処理速度と均等になるように、前記エラーモジュールが存在する使用可能グループによって処理すべき前記分割画像データのデータ量を定めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、本発明は、複数のモジュールの中にエラーが発生した場合にも画像処理の継続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】記録装置の概要図である。
図2】記録ユニットの斜視図である。
図3】記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図4】画像処理部の構成を示すブロック図である。
図5】ASICの接続状態及びASICのグループ構成の一例を示す図ある。
図6】1つのグループにおけるデータの流れを示す図である。
図7】記録装置における転写胴、及びその周辺部分を拡大して示す図である。
図8】ASICにエラーが発生した状態を示す図である。
図9】第1実施形態における画像処理の手順を示すフローチャートである。
図10】ASICにエラーが発生した状態を示す図である。
図11】第2実施形態における画像処理の手順を示すフローチャートである。
図12】ASICにエラーが発生した状態を示す図である。
図13】第3実施形態における画像処理の手順を示すフローチャートである。
図14】ASICにエラーが発生した状態を示す図である。
図15】第4実施形態における画像処理の手順を示すフローチャートである。
図16】ASICにエラーが発生した状態を示す図である。
図17】第5実施形態における画像処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図中、同一部分には同一符号を付す。
【0010】
[記録装置]
図1は本発明の一実施形態に係る記録装置1を概略的に示した正面図である。本実施形態における記録装置1は、転写体40を介して記録媒体Pにインク像を転写することで記録物P’を製造する、枚葉式のインクジェットプリンタによって構成されている。記録装置1は、画像形成部1Aと、搬送部1Bとを含む。本実施形態では、X方向、Y方向、Z方向が、それぞれ、記録装置1の幅方向(全長方向)、奥行き方向、高さ方向を示している。記録媒体PはX方向に搬送される。
【0011】
本明細書において「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれる。よって「記録」は、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体]としてシート状の用紙を想定する。よって、以下の説明では、記録媒体の給送を、「給紙」とも言う。また、記録媒体は、紙の他、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。インクの成分については、特に限定はないが、本実施形態では、色材である顔料、水、樹脂を含む水性顔料インクを用いる場合を想定する。
【0012】
(画像形成部)
画像形成部1Aは、記録ユニット3、転写ユニット4および周辺ユニット5A~5D、および、供給ユニット6を含む。
【0013】
<記録ユニット>
図1および図2に示すように、記録ユニット(記録手段)3は、複数の記録ヘッド30と、キャリッジ31とを含む。図2は記録ユニット3の斜視図である。記録ヘッド30は、転写体40に液体インクを吐出し、転写体40上に記録画像としてインク像を形成する。
【0014】
本実施形態の場合、各記録ヘッド30は、Y方向に延設されたフルラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの記録媒体の画像記録領域の幅分をカバーする範囲に吐出口が配列されている。記録ヘッド30は、その下面に、吐出口が形成されている吐出面を有している。吐出面は、微小隙間(例えば数mm)を介して転写体40の表面と対向している。本実施形態の場合、転写体40は円軌道上を循環的に移動する構成を有する。このため、複数の記録ヘッド30は、転写体40の中心から放射状に配置されている。
【0015】
各吐出口内にはインクを吐出するための吐出エネルギー発生素子(以下、吐出素子ともいう)が設けられている。吐出素子は、例えば、吐出口内に圧力を発生させて吐出口内のインクを吐出させる素子である。吐出素子としては、例えば電気-熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する素子、電気-機械変換体(ピエゾ)によってインクを吐出する素子、静電気を利用してインクを吐出する素子(ヒータ)等が挙げられる。高速で高密度の記録の観点からは電気-熱変換体を利用した吐出素子を用いることが有効である。
【0016】
本実施形態の場合、記録ヘッド30は、9つ設けられている。各記録ヘッド30は、互いに異なる種類のインクを吐出する。異なる種類のインクとは、例えば、色材が異なるインクであり、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク等のインクである。1つの記録ヘッド30は1種類のインクを吐出するが、1つの記録ヘッド30が複数種類のインクを吐出する構成であってもよい。このように複数の記録ヘッド30を設けた場合、そのうちの一部が色材を含まないインク(例えば画質向上液)を吐出してもよい。
【0017】
キャリッジ31は、複数の記録ヘッド30を支持する。各記録ヘッド30は、吐出面側の端部がキャリッジ31に固定されている。これにより、吐出面と転写体40との表面の隙間をより精密に維持することができる。キャリッジ31は、案内部材RLの案内によって、記録ヘッド30を搭載しつつ変位可能に構成されている。本実施形態の場合、案内部材RLは、Y方向に延設されたレール部材であり、X方向に離間して一対設けられている。キャリッジ31のX方向の各側部にはスライド部32が設けられている。スライド部32は案内部材RLと係合し、案内部材RLに沿ってY方向にスライドする。
【0018】
<転写ユニット>
図1を参照して転写ユニット4について説明する。転写ユニット4は、転写胴41と圧胴42とを含む。これらの胴は、Y方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。図1において、転写胴41および圧胴42の内側に示した円弧状の矢印は、これらの回転方向を示しており、転写胴41は時計回りに、圧胴42は反時計回りに回転する。
【0019】
転写胴41は、その外周面で転写体40を支持する支持体である。転写体40は、転写胴41の外周面上に、周方向に連続的にあるいは間欠的に設けられる。連続的に設けられる場合、転写体40は無端の帯状に形成される。間欠的に設けられる場合、転写体40は、有端の帯状をなす複数のセグメントに分けて形成される。各セグメントは転写胴41の外周面に等ピッチで円弧状に配置することができる。
【0020】
転写胴41の回転により、転写体40は円軌道上を循環的に移動する。転写胴41の回転位相により、転写体40の位置は、吐出前処理領域R1、吐出領域R2、吐出後処理領域R3およびR4、転写領域R5、転写後処理領域R6に区別することができる。転写体40はこれらの領域を循環的に通過する。
【0021】
吐出前処理領域R1は、記録ユニット3によるインクの吐出前に転写体40に対する前処理を行う領域であり、周辺ユニット5Aによる処理が行われる領域である。本実施形態の場合、画質向上を図るための反応液が付与される。吐出領域R2は記録ユニット3が転写体40にインクを吐出してインク像を形成する領域である。吐出後処理領域R3およびR4はインクの吐出後にインク像に対する処理を行う処理領域である。吐出後処理領域R3は周辺ユニット5Bによる処理が行われる領域であり、吐出後処理領域R4は周辺ユニット5Cによる処理が行われる領域である。転写領域R5は転写ユニット4により転写体40上のインク像が記録媒体Pに転写される領域である。転写後処理領域R6は、転写後に転写体40に対する後処理を行う領域であり、周辺ユニット5Dによる処理が行われる領域である。
【0022】
圧胴42は、その外周面が転写体40に圧接される。圧胴42の外周面には、記録媒体Pの先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。グリップ機構は圧胴42の周方向に離間して複数設けてもよい。記録媒体Pは圧胴42の外周面に密接して搬送されつつ、圧胴42と転写体40とのニップ部を通過するときに、転写体40上のインク像が転写される。
【0023】
<周辺ユニット>
周辺ユニット5A~5Dは転写体40の周囲に配置されている。本実施形態の場合、周辺ユニット5A~5Dは、それぞれ付与ユニット、吸収ユニット、加熱ユニット、清掃ユニットである。
【0024】
付与ユニット5Aは、記録ユニット3によるインクの吐出前に、転写体40上に反応液を付与する機構である。反応液は、インクを高粘度化する成分を含有する液体である。吸収ユニット5Bは、転写前に、転写体40上のインク像から液体成分を吸収する機構である。インク像の液体成分を減少させることで、記録媒体Pに記録される画像のにじみ等を抑制することができる。吸収ユニット5Bは、例えば、インク像に接触してインク像の液体成分の量を減少させる液吸収部材を含む。
【0025】
加熱ユニット5Cは、転写前に、転写体40上のインク像を加熱する機構である。インク像を加熱することで、インク像中の樹脂が溶融し、記録媒体Pへの転写性が向上する。清掃ユニット5Dは、転写後に転写体40上を清掃する機構である。清掃ユニット5Dは、転写体40上に残留したインクや、転写体40上のごみ等を除去する。
【0026】
<供給ユニット>
供給ユニット6は、記録ユニット3の各記録ヘッド30にインクを供給する機構である。供給ユニット6はインクを貯留する貯留部TKを備える。貯留部TKは、メインタンクとサブタンクとによって構成されてもよい。各貯留部TKと各記録ヘッド30とは流路6aで連通し、貯留部TKから記録ヘッド30へインクが供給される。流路6aは、貯留部TKと記録ヘッド30との間でインクを循環させる流路であってもよく、供給ユニット6はインクを循環させるポンプ等を備えてもよい。
【0027】
<搬送部>
搬送部1Bは、積載部に積載された記録媒体Pを転写ユニット4へ給送する。転写ユニット4に給送された記録媒体Pに対して、インク像が転写される(すなわち、記録される)。その後、搬送部1Bは、インク像が転写された記録物P’を転写ユニット4から排出する。搬送部1Bは、給送ユニット(給送手段)7、複数の搬送胴8、8a、2つのスプロケット8b、チェーン8cおよび回収ユニット8dを含む。図1において、搬送部1Bにおける後述の搬送胴8、8a内に付した円弧状の矢印は、搬送胴8、8aの回転方向を示し、外側の矢印は記録媒体Pまたは記録物P’の搬送経路を示している。記録媒体Pは給送ユニット7から転写ユニット4へ搬送され、記録物P’は転写ユニット4から回収ユニット8dへ搬送される。給送ユニット7側を搬送方向で上流側と呼び、回収ユニット8d側を下流側と呼ぶ場合がある。
【0028】
給送ユニット7は、複数の記録媒体Pが積載される積載部を含むと共に、積載部から一枚ずつ記録媒体Pを、最上流の搬送胴8に給送する給送機構を含む。各搬送胴8、8aはY方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。各搬送胴8、8aの外周面には、記録媒体P(または記録物P’)の先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。各グリップ機構は、隣接する搬送胴間で記録媒体Pが受け渡されるように、その把持動作および解除動作が制御される。
【0029】
2つの搬送胴8aは、記録媒体Pの反転用の搬送胴である。記録媒体Pを両面記録する場合、表面への転写後に、圧胴42から下流側に隣接する搬送胴8へ記録媒体Pを渡さずに、搬送胴8aに渡す。記録媒体Pは、2つの搬送胴8aを経由して表裏が反転され、圧胴42の上流側の搬送胴8を経由して再び圧胴42へ渡される。これにより、記録媒体Pの裏面が転写胴41に面することになり、裏面にインク像が転写される。
【0030】
チェーン8cは、2つのスプロケット8b間に架け渡されている。2つのスプロケット8bのうち、一方は駆動スプロケットであり、他方は従動スプロケットである。駆動スプロケットの回転によりチェーン8cが循環的に走行する。チェーン8cには、その長手方向に離間して複数のグリップ機構が設けられている。グリップ機構は、記録物P’の端部を把持する。下流端に位置する搬送胴8からチェーン8cのグリップ機構に記録物P’が渡される。グリップ機構に把持された記録物P’はチェーン8cの走行により回収ユニット8dへ搬送され、把持が解除される。これにより記録物P’が回収ユニット8d内に積載される。
【0031】
<後処理ユニット>
搬送装置1Bには、後処理ユニット10A、10Bが設けられている。後処理ユニット10A、10Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’に対して後処理を行う機構である。後処理ユニット10Aは、記録物P’の表面に対する処理を行い、後処理ユニット10Bは、記録物P’の裏面に対する処理を行う。
【0032】
<検査ユニット>
搬送装置1Bには、検査ユニット9A、9Bが設けられている。検査ユニット9A、9Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’の検査を行う機構である。本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。検査ユニット9Aは、連続的に行われる記録動作中に、記録画像を撮影する。検査ユニット9Aが撮影した画像に基づいて、記録画像の色味などの経時変化を確認し、画像データあるいは記録データの補正の可否を判断することができる。本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、圧胴42の外周面に撮像範囲が設定されており、転写直後の記録画像を部分的に撮影可能に配置されている。検査ユニット9Aにより全ての記録画像の検査を行ってもよいし、所定数毎に検査を行ってもよい。
【0033】
本実施形態の場合、検査ユニット9Bも、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。検査ユニット9Bは、テスト記録動作において記録画像を撮影する。検査ユニット9Bは、記録画像の全体を撮影し、検査ユニット9Bが撮影した画像に基づいて、記録データに関する各種の補正の基本設定を行うことができる。本実施形態の場合、チェーン8cで搬送される記録物P’を撮影する位置に配置されている。検査ユニット9Bにより記録画像を撮影する場合、チェーン8cの走行を一時的に停止して、その全体を撮影する。検査ユニット9Bは、記録物P’上を走査するスキャナであってもよい。
【0034】
<制御ユニット>
次に、記録装置1の制御ユニット13について説明する。図3は記録装置1の制御ユニット13のハード構成を示すブロック図である。制御ユニット13は、上位装置(DFE(Digital Front End Processor))HC2に通信可能に接続されている。また、上位装置HC2はホスト装置HC1に通信可能に接続されている。
【0035】
ホスト装置HC1では、記録画像の元になる原稿データが生成、あるいは保存される。ここでの原稿データは、例えば、文書ファイルや画像ファイル等の電子ファイルの形式で生成される。この原稿データは、上位装置HC2へ送信され、上位装置HC2では、受信した原稿データを制御ユニット13で利用可能なデータ形式(例えば、RGBで画像を表現するRGBデータ)に変換する。変換後のデータは、画像データとして上位装置HC2から制御ユニット13へ送信される。制御ユニット13は受信した画像データに基づき、記録動作を開始する。
【0036】
本実施形態の場合、制御ユニット13は、メインコントローラ13Aと、エンジンコントローラ13Bとに大別される。メインコントローラ13Aは、処理部131、記憶部132、操作部133、画像処理部134、通信I/F(インターフェース)135、バッファ136および通信I/F137を含む。なお、制御ユニット13は、本実施形態における記録装置の記録動作を制御する記録制御手段としての機能を果す。エンジンコントローラ13Bは、本実施形態の供給装置としての機能を果す。さらに、処理部131や記憶部132によって、画像処理装置1の各部を制御するためのコンピュータが構成されている。
【0037】
処理部131は、CPU等のプロセッサである。処理部131は、記憶部132に記憶されたプログラムを実行し、メインコントローラ13A全体の制御を行う。記憶部132は、RAM、ROM、ハードディスク、SSD等の記憶デバイスである。記憶部132には、CPUが実行するプログラムや、データが格納される。また、記憶部132は、CPUが処理を実行する際に使用するワークエリアを提供する。操作部133は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力デバイスであり、ユーザの指示を受け付ける。
【0038】
画像処理部134は、例えば画像処理プロセッサを有する電子回路である。バッファ136は、例えば、RAM、ハードディスクまたはSSDにより構成されている。I/F135は上位装置HC2との通信を行い、I/F137はメインコントローラ13Aとエンジンコントローラ13Bとの通信を行う。
【0039】
図4は、画像処理部134の構成を示すブロック図である。画像処理部134は画像処理コントローラ400、PCI Express(登録商標、以下PCIeとも記載する)スイッチ410、PCIeスイッチ411、及び画像処理を行う複数の画像処理モジュール(ASIC)420~445により構成される。画像処理コントローラ400には、画像処理を行う複数のASICがPCIeスイッチを介して接続されている。ここでは、複数のASICを接続するためのPCIeスロット数を確保するため、複数(図4では2個)のPCIeスイッチ410、411が画像処理コントローラ400に接続されている。画像処理コントローラ400は、種々の演算、制御を行う制御手段としての機能を有し、後述のASICにおけるメモリ容量の算出手段としての機能、及び記録速度もしくは記録可能速度を算出して取得する速度取得手段としての機能も果たす。さらに、画像処理コントローラ400とPCIeスイッチ410、411とにより、ASICへデータを送信する送信手段、及びASICからのデータを取得する取得手段を構成している。なお、本実施形態では画像処理装置134内の通信は全てPCIe通信であるが、これに限定するものでなく、USB、LAN等の性能を満たすものであれば、他の通信手段を用いてもよい。
【0040】
以下、本実施形態の画像処理部134に設けられた複数のASICによって実行される画像処理の手順を説明する。図5は、複数のASICの接続状態、及び各ASICによるASICのグループ構成の一例を示す図である。本例では、3個のASICを直列に接続した画像処理グループ(以下、単にグループという)が、8個のグループa~hが設けられている。つまり、合計24個のASICが設けられている。8個のグループa~hのうち、4つのグループa~dがPCIeスイッチ410に接続され、他の4個のグループe~hがPCIe411に接続されている。
【0041】
また、24個のASICは、PCIeスイッチに近い位置から順に、グループ(1)、グループ(2)、グループ(3)に分けられている。すなわちPCIeスイッチ410または411に接続されている8つのASICによってグループ(1)が構成されている。また、グループ(1)のASICに接続されている8つのASICによってグループ(2)が構成されている。さらに、グループ(2)のASICに接続されている8個のASICによってグループ(3)が構成されている。これら3個のグループ(1)~(3)は、それぞれ入力画像データに含まれる異なる色成分データの処理を行う。
【0042】
また、本例では、入力画像データ500を24個のASICで分散して画像処理を行う。すなわち、形成すべき画像を8つの領域(以下、バンド領域ともいう)に分割し、入力画像データ500を、各領域に対応する8つの分割画像データ(以下、バンドデータとも言う)に分割する。各バンド領域に対応する分割画像データ(バンドデータ)の画像処理は、グループ(a)から(h)のそれぞれで担当する。バンドデータはさらに色分割され、グループ(1)から(3)に属するそれぞれのASICで所定の色成分データ毎に画像処理を行う。なお、具体的な処理については後述するが、グループ(1)ではCyan(C)とMagenta(M)の画像データが生成され、グループ(2)ではYellow(Y)とBlack(K)の画像データが生成される。さらに、グループ(3)ではLightCyan(Lc)とLightMagenta(Lm)とGray(Gy)の画像データが生成される。
【0043】
以上のように、本例における画像処理部134に設けられたASIC群は、直列数3、並列数8の接続構成を有している。但し、ASIC群を構成するASICの数、直列数及び並列数は、図5に示す例に限定されない。処理する画像データのデータ量、色の種類などに限定されない。
【0044】
図6は、前述のグループ(a)~(h)の中の1つのグループにおけるデータの流れを示す図であり、画像処理コントローラ400から転送された入力画像データと、ASIC420、421、422によって処理された結果データが示されている。以下では、入力画像データをRGBデータ、結果データをCMYKLcLmGy(C:Cyan、M:Magenta、Y:Yellow、K:Black、Lc:LightCyan、Lm:LightMagenta、Gy:Gray)データとして説明する。
【0045】
画像処理コントローラ400には、上位装置HC2から転送されてきたRGB(R:Red、G:Green、B:Blue)データ600が保存されている。このRGBデータ600がPCIeスイッチ410を経由してASIC420に転送される。ASIC420は、転送されてきたRGBデータ600に対して画像処理を実施してCMデータ611を生成すると同時に、ASIC421にRGBデータ600を転送する。ASIC420はCMデータ611の生成を完了した後、PCIeスイッチ410を経由して画像処理コントローラ400に出力する。
【0046】
ASIC421に転送されたRGBデータ600は、画像処理を実施してYKデータ612を生成すると同時に、ASIC422にRGBデータ600を転送する。ASIC421はYKデータ612の生成を完了した後、ASIC420に転送する。ASIC420は、ASIC421から転送されたYKデータ612を、PCIeスイッチ410を経由して画像処理コントローラ400に出力する。
【0047】
ASIC422は、ASIC421から転送されたRGBデータ600に対して画像処理を実施し、LcLmGyデータ613を生成する。ASIC422はLcLmGyデータ613の生成を完了した後、LcLmGyデータ613をASIC421に転送する。ASIC421は転送されたLcLmGyデータ613をASIC420に転送する。ASIC420は転送されたLcLmGyデータ613を、PCIeスイッチ410を経由して画像処理コントローラ400に出力する。画像処理コントローラ400は、以上のようにしてASIC420から転送されてきたCMデータ611,YKデータ612,LcLmGyデータ613を統合してCMYKLcLmGyデータ610を生成する。
【0048】
なお、ASIC420、ASIC421、ASIC422は、同一のバンド領域の色成分データを生成するものであるため、各ASICには、同一のRGBデータが入力される。例えば、ASIC420では、C、Mの2色、ASIC421ではY、Bの2色、ASIC422では、Lc、Lm、Gyの3色の色成分データをそれぞれ生成するが、これらは同一の画像を表現する色成分であるため、同一のRGBデータが入力される。
【0049】
また、本実施形態では、RGBデータに対して画像処理を実施して、CM、YK、LcLmGyデータを生成する画像処理モジュールとして、ASIC(ASIC420、ASIC421、ASIC422)を用いた。しかし、CM、YK、LcLmGyデータを生成する画像処理モジュールは、ASICに限定されるものではない。FPGA(Field programmable Gate Array)やGPU(Graphics Processing Unit)等、画像処理可能なモジュールであれば他のモジュールを適用することも可能である。
【0050】
また、ASIC420、ASIC421、ASIC422で生成する画像データの色、色数、及び色の組み合わせは、図6に示す例に限定されない。各ASICによって生成する画像データの色、色数、及び色の組み合わせを変更することも可能である。例えば、ASIC420でC,の2色の画像データを、ASIC421でY,M、Lmの3色の画像データを、ASIC422でLc,Gyの2色の画像データを、それぞれ生成するようにすることも可能である。さらに結果データに含まれる色は、C、M、Y、K、Lc、Lm、Gy以外にBlueであってもよく、各ASICで生成する画像データの色は、特に限定されない。
【0051】
本実施形態では、ASIC420、ASIC421、ASIC422の間で入力画像データ及び結果データを順次転送する、所謂バケツリレー方式で通信を行っている。しかし、ASIC420とASIC422とが直接通信を行ってもよく、特に通信方法は限定されない。
【0052】
また、本実施形態では、グループ(1)、グループ(2)、グループ(3)の全3グループにて色分割を行い、並列処理を実施している。3グループとした理由は、画像処理装置として求められる画像処理速度を満たす最小限の構成だからである。求められる画像処理速度を満たすことが可能であれば、2グループでも良いし、4グループでもよく、特にグループ数は限定されない。
【0053】
図7は、本実施形態における記録装置1における転写胴41及びその周辺部分を拡大して示す図である。転写胴41には、4つの円弧状の転写体401、402、403、404が取り付けられている。各転写体401~404の長さは同一に定められている。各転写体401~404には、記録ヘッド30(30C、30M、30Y、30K、30Lc、30Lm、30Gy、30I)から吐出されたインクが着弾し、画像が形成される。なお、記録ヘッド30Iは画像の品質を向上させるための画質向上液を吐出する記録ヘッドである。各転写体に形成された画像は、転写体401~404と、圧胴42との間を通過する用紙に転写される。本実施形態では、転写体401に対して用紙1枚分の画像が記録される。
【0054】
記録速度の変更を行う場合、本実施形態の記録装置1では、転写胴41及び圧胴42の回転速度を変化させず、使用する転写体の数を変更する。例えば、4つの転写体401~404を使用し、各転写体に対して1枚ずつ用紙が供給されるタイミングで給紙を行う場合を最大の記録速度とする。これに対し、2つの転写401と404のみを使用し、転写401と404に対して1枚ずつ用紙が供給されるようなタイミングで給紙を行うことにより、最大の記録速度の2分の1の記録速度に変更することができる。さらに、転写401のみを使用し、かつ転写401にのみ1枚の用紙を給送するようなタイミングで給紙を行うことにより、記録速度を最大の記録速度の1/に変更することができる。
【0055】
このような方式によって記録速度の変更を行うことにより、各用紙への記録時間を一定に保つことができ、均一な画像品質を維持することが可能になる。但し、画像品質に大きな影響が生じない場合には、記録ヘッド30の駆動周波数、転写胴41及び圧胴42の回転速度を変化させることによって、記録速度を変更するようにすることも可能である。
【0056】
次に、画像処理部134を構成する画像処理ユニット発生時によって本実施形態において実行される画像処理方法を説明する。本実施形態では、図4に示すように、画像処理部134に設けられた複数(本例では24個)の画像処理モジュール(ASIC)のエラーを検知し、エラーが発生しているASICの位置・個数に応じた処理を行う。すなわち、画像処理エラーが発生したASICが存在していた場合に、グループa~hのうち、正常なASIC(正常モジュール)によって構成されるグループで画像処理を分担して画像データの生成を行う。
【0057】
エラー状態のASICがエラー状態にあるか否かは、初期化もしくは画像処理中に、各ASICに対してコマンドや処理要求等を送信できたか否かによって判断することができる。また、コマンドや処理要求等を送信した後一定時間応答がなかった時にも、ASICがエラー状態にあると判断することができる。具体的には、図4において、ASIC421からASIC422に対して初期化要求を送れなかった場合は、ASIC422がエラー状態にあると判断し、その旨を、ASIC420を経由して画像処理コントローラ400に通知する。画像処理コントローラ400は、ASIC422がエラー状態にあることをメモリに記録し、次回の画像処理時には、メモリに記録されている内容から、エラー状態にある画像処理モジュールを知ることが可能になる。
【0058】
また、別の例としては、画像処理コントローラ400が、例えば、ASIC420に対して、初期化要求を送ったが一定時間応答がない場合がある。この場合にも、ASIC420にエラーが発生していると判断する。本実施形態では、ASIC420にエラーが発生している場合には、画像処理コントローラ400に対してASIC421及びASIC422が、直接通信しない構成となっている。従って、ASIC421及びASIC422に対して処理の要求を送ることが不可能となる。そのため、ASIC420にエラーが発生している場合、本実施形態では、ASIC421及びASIC422もエラー状態として扱い、画像処理コントローラ400のメモリに記録する。
【0059】
上記の説明では、コマンドや処理要求等を送信できなかった場合、もしくは送信した後に一定時間応答がなかった場合をエラーとして判断する例について述べた。しかし、画像処理後のCMYKLcLmGyデータのうち、特定の色の画像データが画像処理コントローラ400に送られて来ない場合に、その特定の色の処理を担当する画像処理モジュールにエラーが発生している、との判断を行うようにしてもよい。つまり、エラーの発生している画像処理モジュール(ASIC)を判定することができる方法であれば、いかなる方法も適用可能であり、その具体的な処理は特に限定されない。
【0060】
以下、図8及び図9を参照しつつ、本実施形態において実施される画像処理をより詳細に説明する。図8は画像処理部134に設けられている複数の画像処理モジュール(ASIC)のうち、ASIC427にエラーが発生し、その他の画像処理モジュールが正常な状態にある場合を示している。この場合、ASIC427と共に同一画像領域の処理を担当するグループc(斜線部801の中に示されるグループ)の使用を停止する。その他のグループaとグループb、及びグループd~グループhの合計7つのグループは、正常に画像処理を行うことが可能な正常グループである。よって、これら7つのグループを使用可能グループして定め、これらのグループにより分担して画像処理を行う。
【0061】
図9は、本実施形態によって実行される画像処理の手順を示すフローチャートである。なお、本実施形態及びその他の実施形態で使用するフローチャートにおいて、各工程番号の前に付したSの文字は、ステップを意味している。処理部131からの画像処理の開始要求を受けると(S810)、エラー発生中の画像処理モジュール(ASIC)があるか否かの判定を行う(S811)。この判定は、前述のように、初期化もしくは既に実行された画像処理中に、エラー発生状態にあると判定されたASICの有無、及びエラー状態のASICの位置を、画像処理コントローラ400のメモリに記録された内容を確認することによって行う。
【0062】
S811においてエラー発生中のASICが存在しないと判定した場合には、画像処理を正常に行うことが可能な正常グループの数Nとして、全グループ数(図8に示す例では、「8」)を設定する(S821)。次にS815では、記録ヘッドの不吐ノズルを補完するために設けられた不吐補間ルックアップテーブル(以下、不吐補間LUT)を、正常グループ数N(=8)で分割する。そして、N分割した不吐補間LUTを、対応する各正常グループに転送する(S816)。
【0063】
次にS817では、各バンド数に対応させて入力画像データをN分割(8分割)し、その分割画像データを各正常グループに転送する(S818)。その後、各正常グループの各ASICにおいて画像処理を実行し(S819)、全てのASICで処理が終了したところで、一連の処理を終了する(S820)。
【0064】
一方、S811において、エラー状態のASICが存在すると判定された場合には、そのASICが存在するグループ以外のグループ(正常グループ)の数Nを設定する(S812)。次にS813では、S812で設定した正常グループ数が「0)であるか否かを確認する。ここで、正常グループ数が「0」であると判定した場合には、S825へ移行してエラーを通知し、一連の処理を終了する(S820)。
【0065】
またS813において、正常グループ数が「0」でないと判定した場合はS814へ移行し、画像処理部134によって行う処理速度の判定処理を行う。記録動作を行うために必要とされる画像処理速度(必要処理速度)以上であるかを判定する(S814)。具体的には、転写胴41が基準速度で回転するとき、先行する転写体への記録開始タイミングから、次の転写体への記録開始タイミングまでの時間内に、1枚の用紙に記録するための画像データの画像処理が完了するような画像処理速度以上であるかを判定する。つまり、ここで言う必要処理速度とは、基準速度で回転する転写胴41に設けられた4つの転写体401~403のそれぞれに連続的に画像を記録することを可能とする画像処理速度を意味する。
【0066】
S814の判定の結果、画像処理速度が必要処理速度以上であると判定された場合(YESである)と判定された場合には、正常なグループの数Nを分割数として設定し、前述のS815~S820の処理を行う。図8に示す例であれば、使用するグループ数Nを「7」に設定する。本実施形態の場合、使用するグループ数が「7」であれば、使用するグループ数が「8」の場合と同様の記録速度を得ることができる。すなわち、4つの転写体401~404に連続的に記録を行うことが可能である。このため、S814以降は、前述のS815~S820の処理を行う。
【0067】
また、S812において設定された正常なグループ数Nが「6」であり、分割数が「6」に設定された場合、本実施形態では、画像処理速度が必要処理速度を下回る。このためS814からS822へと処理が移行する。S822では、現在設定されている記録速度を低下させることが許容されるか否かの確認を行う。確認方法は特に限定されない。例えば、事前に設定されていた記録速度の許容範囲を参照してもよいし、このタイミングでUIを通してユーザに確認してもよい。そして、記録速度の低下が許容されない場合には、S825のエラー通知を行い、処理を終了する(S820)。また、記録速度の低下が許容される場合には、現在の画像処理速度によって記録可能な速度を計算により取得し(S823)、取得した記録速度に応じて使用する転写体の選択を行うと共に、給紙タイミングの変更を行う(S824)。
【0068】
正常なグループ数が6の場合、本実施形態においては4つの転写体401~404のうち、2つの転写体401と403、または転写体402と404を用いる。さらに、給紙は2回に1回のタイミングで行う。これにより、全体的な記録速度は、分割数が「8」に設定された場合に対して2分の1となる。その後は、分割数Nを6として、S815~S820の処理を行う。
【0069】
以上のように、本実施形態では、複数の画像処理モジュール(ASIC)の中にエラーが発生した場合、エラーの発生したASICを含むグループ以外の正常なグループに、画像データの処理を分配して処理を行う。このため、画像処理が停止することによって記録動作が停止することはなくなり、良好なスループットを得ることができる。
【0070】
また、本実施形態では、処理モジュールの並列化及び直列化両方の手段を取り入れたハイブリットな構成を有している。このため、データ線の増大、及びデータの取得手段を構成するPCIeスイッチ410、411のポート数の増大を抑制することが可能になる。このため、並列処理より処理の高速化を図りつつ回路規模の増大を抑制することが可能になる。
【0071】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、図10及び図11を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においても、図1ないし図6の構成を同様に備えるものとする。本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、エラーの発生していない画像処理モジュール(ASIC)からなる正常グループで画像処理を分担する。但し、正常なグループが少なく、画像処理を行うASICのメモリが不足する場合もある。本実施形態では、このような場合に対応する処理を実施する。
【0072】
図10は、画像処理モジュール(ASIC)425、427、429、436、441にエラーが発生し、その他の画像処理モジュールが正常な状態にある例を示している。本例の場合、エラー状態にあるASIC425、427、429、436、441を含むグループb、c、e、f、h(斜線部920、921、922に位置するグループ)の使用を停止する。そして、画像処理時には、正常なグループa、d、gの合計3個のグループに分担して画像処理を行う。本例のように、正常なグループ数が少ない場合、正常なグループ内の各ASICに設けられたメモリのサイズ(記憶容量)が、当該メモリの使用量に対して不足することがある。
【0073】
図11は、本実施形態によって実施される画像処理の手順を示すフローチャートである。図11において、S910~S913及びS915において実施する処理は、第1実施形態におけるS810~S813及びS821において実施する処理と同様であり、これらの処理についての重複説明は省略する。
【0074】
S913において正常グループ数が「0」でないと判定した場合には、各正常グループ内の各ASICに設けられたメモリの使用量がメモリサイズを超過したかを判定する(S914)。ここで、メモリ使用量が、当該メモリのサイズを超過していないときは、使用グループ数Nを正常グループ数とした状態を維持したまま、画像処理部134における画像処理速度が必要処理速度以上であるかを判定する(S917)。この判定処理は、第1実施形態において説明したS814の処理と同様である。
【0075】
一方、S914において、ASICのメモリサイズをメモリ使用量が超過すると判定した場合は、Nを全グループ数(本例では「8」)に設定し(S916)、S917へ移行する。なお、各ASICのメモリのサイズは、入力画像データを全グループ数で分割した場合のメモリ使用量以上に予め定められている。
【0076】
S917において、画像処理部134の処理速度が必要処理速度を上回ると判定した場合(YESの場合)には、図10に示す入力画像データ900及び不吐補LUTをN分割(8分割)する(S918、S919)。その後、S920及びS921において、画像処理が行われていない未処理の画像データ901と当該画像データに対応する不吐補完LUT901を、正常なグループa、d、gに転送する。次にS922では、転送された不吐補完LUTを使用して未処理の画像データ901に対する画像処理を実施する。この後、S923では画像データ全体の処理が終了したか否かを確認する。図10に示すように、3つのバンドデータ(分割画像データ)901を処理した時点では、画像データ902及び画像データ903が未処理の状態にある。このため、S920に戻ってS920~923の処理を繰り返し、図10に示す未処理のバンドデータ902及び903の画像処理を行う。この後、画像データ901~903の処理が全て完了した時点で、一連の処理が終了する(S923、S924)。
【0077】
図10の例に示すような正常なグループが3つの状態では、処理速度が必要処理速度を下回る可能性が高い。つまり、S916においてNOと判定される可能性が高い。処理速度が必要処理速度を下回ると判定された場合には、現在設定されている記録速度を低下させることが許容されるか否かを確認する処理を行う(S925)。ここで、記録速度を低下させることが許容されない場合には、エラーを通知する処理を行い(S928)、一連の処理を終了(S924)。これに対し、記録速度の低下が許容される場合には、画像処理速度に応じて低下させるべき記録速度を計算し(S926)、使用する転写体の選択を行うと共に、給紙タイミングの変更を行う(S927)。
【0078】
正常なグループ数が「3」の場合、4つの転写体401~404のうち、1つの転写体を用い、給紙を4回に1回のタイミングで行う。これにより、全体的な記録速度は4分の1となる。その後は前述した、S918~S923の処理を行う。
【0079】
以上のように、本実施形態では、正常なグループが少なく、画像処理を行うASICのメモリが不足する場合にも、全ての画像データに対する処理を実施することが可能になり、記録動作を継続的に実施することができる。これにより、良好なスループットを得ることができる。また、装置の小型化、配線の削減、及びPCIeスイッチ410、411のポート数の低減などの効果も第1実施形態と同様に得られる。
【0080】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を、図12及び図13を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においても、図1ないし図6の構成を同様に備えるものとする。本実施形態は、小サイズの用紙を用いる場合に好適な処理を行う。使用する用紙が小サイズの場合、本実施形態では、画像処理部134に設けられている複数の画像処理モジュール(ASIC)のうち、一部のASICを使用することで画像データの処理を実施することが可能である。例えば、A3の用紙を用いて記録を行う場合には、図12に示すように、画像処理部134のうちグループc~fまでの4グループを用いることで必要処理速度を達成することが可能である。但し、図12に示す例では、ACIC427にエラーが発生した状態を示している。この場合、画像処理ではASIC427を含むグループcは使用しない。
【0081】
図13は、本実施形態における画像処理の手順を示すフローチャートである。画像処処理開始の要求を受けると(S1050)、使用グループ数Mと、正常グループ数Nを設定する(S1051)。図12に示す例では、使用グループ数Mを4、正常グループ数Nを7に設定する。ここで、使用グループ数Mと正常グループ数Nとの比較を行い、正常グループ数Nが使用グループ数M以上であれば、S1053へ移行してLを全グループ数とする。次いで、S1054において、正常グループの中から使用するグループを選択する。
【0082】
本例では、グループb、及びグループd~fを選択する。この後、先に設定した全グループ数L(本例ではL=8)で不吐補間LUTを分割し(S1055)、選択した使用グループのそれぞれに対し、対応する不吐補間LUTを転送する(S1056)。また、S1057において画像データを、使用グループ数M(本例ではM=4)で分割し(S1057)、選択した使用グループのそれぞれに対し、対応する分割画像データを転送する。その後、各使用グループにおいて画像データに対する画像処理を実施し、一連の処理を終了する(S1060)。
【0083】
一方、S1052において、正常グループ数Nが使用グループ数Mより少ないと判定した場合には、正常グループが「0」であるか否かの判定を行う(S1061)。判定の結果、正常なグループが「0」である場合にはエラーを通知し(S1070)、処理を終了する(S1060)。また、正常グループが「0」でないと判定した場合には、S1062において画像処理部134の処理速度が、記録動作を行うために必要とされる処理速度(必要処理速度)以上であるかを判定する。ここで、処理速度が必要処理速度以上であると判定した場合には、不吐補間LUTの中で必要な領域及び画像データをN分割する(S1063、S1064)。本例では処理速度が必要処理速度以上となるため、不吐補間LUT及び画像データをN分割(4分割)する(S1063、S1064)。そして、分割した不吐補間LUT及び画像データを正常グループのそれぞれに転送する(S1065、S1066)。その後、不吐補間LUTを使用して画像データの画像処理を正常グループの各正常モジュールで実施し、一連の処理を終了する(S1060)。
【0084】
また、使用グループ数Mが正常グループ数Nより多く、正常グループ数Nが少数である場合、例えば、正常グループ数が「2」である場合には、画像処理部134の処理速度が必要処理速度を下回る可能性が高い。このように処理速度が必要処理速度を下回る場合には、記録速度を低下させることが許容されるか否かを確認する(S1062)。ここで、記録速度を低下させることが許容されない場合には、S1070でエラーを通知した後、一連の処理を終了する(S1060)。また、記録速度の低下が許容される場合には、現在の処理速度と必要処理速度とに基づき、記録を行うことが可能な速度(記録可能速度)を計算により取得する(S1068)。さらに、取得した記録可能速度に基づいて使用する転写体の選択と、給紙タイミングの変更を行う(S1069)。正常グループ数が「2」の場合、使用する転写体は4つのうち2つを選択し、給紙は2回に1回のタイミングで行う。これにより、全体的な記録速度は2分の1となる。その後はS1063~S1066の処理を経てS1059の画像処理を行い、一連の処理を終了する(S1060)。
【0085】
以上のように、本実施形態によれば、第1または第2の実施形態と同様に、装置の小型化、配線の削減、及びPCIeスイッチ410、411のポート数の低減などの効果を得ることができる。さらに、小サイズの用紙を使用する際には、エラーが発生した画像処理モジュール(ASIC)を含むグループの使用を避けて、正常なグループのみを用いて継続的に画像処理を実施することが可能になる。このため、複数の記録媒体に対する記録動作を連続的に実施することが可能になり、スループットの向上を図ることができる。
【0086】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を、図14及び図15を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においても、図1ないし図6の構成を同様に備えるものとする。本実施形態における記録装置1は、図1及び図2に示すように、7色のインクを用いて画像を形成することが可能な構成を有する。しかし、記録モードには、7色のインク全てを用いず、使用するインク色を制限して画像を記録することも可能である。本実施形態では、このように使用するインク色を制限して記録を行う場合に好適な処理を行う。
【0087】
使用するインクを4色に制限して記録を行うモードを設定した場合、処理を行う色数が少ないため、図14に示すように、斜線が付された領域1104の中に位置する画像処理モジュール(ASIC)のみを使用する。すなわち、グループ(1)及びグルー(2)のASICのみを使用する。グループ(1)は2色(例えば、C、の2色)の画像データを処理し、グループ(2)は他の2色(例えば、Y、Kの2色)の画像データを処理する。なお、グループ(3)は、さらに他の3色(例えば、Lc、Lm、Gyの3色)の画像データの処理を想定して設けられているが、ここでは、4色のインクのみを扱うため、このグループ(3)の画像処理モジュール(ASIC)は使用しない。
【0088】
また、図14に示す例では、グループ(2)に属するASIC427がエラー状態となっている場合を示している。本来、ASIC427にエラーが発生していない場合には、画像データ1100の中の一部の画像データ(バンドデータ1105)は、グループcに属するASIC426及びASIC427を用いて処理を行う。しかし、本例では、ASIC427がエラー状態にあるため、使用されていないグループ3の中の1つのASIC(例えば、ASIC422)を使用して画像データの処理を行う。
【0089】
図15は、本実施形態において実施される画像処理の手順を示すフローチャートである。画像処理の要求を受けると(S1150)、使用するASIC(図14の領域1104内のASIC)の中に、エラー状態のASICが存在するかを判定する(S1151)。この後、使用するASICの中にエラー状態のASICが存在しない場合は、入力画像データ1100の処理を行う全グループ(本例ではグループa~hの8グループ)の数である「8」をNの値として設定する(S1153)。この後、S115において不吐補LUTをN分割(8分割)し、S115において分割した不吐補LUTを対応するASICにそれぞれ転送する。さらにS1160において、入力画像データ1100についてもN分割(8分割)し、分割画像データ(バンドデータ)を対応するASICにそれぞれ転送(S1161)する。なお、4色のインクを使用する本例では、8分割された不吐補完LUT及び画像データ(バンドデータ)は、それぞれ対応するグループa~hに属し、かつグループ(1)およびグループ(2)に属するASICに転送される。
【0090】
また、S1151においてエラーが発生している画像処理モジュール(ASIC)が存在すると判定された場合には、未使用なASICのうち、正常なモジュールが存在するかの確認を行う(S1152)。ここで、未使用なASICとは、グループ(3)に属するASICを指す。また正常なASICとは、PCIeスイッチ(410、411)を介して画像処理コントローラ400(図14では図示せず(図4参照))との間でデータの通信が可能な状態にあり、かつ正常な画像処理が可能なASICを指す。具体的には、グループ(3)のASICの中で、エラー状態のASIC427に接続されて通信不能な状態にあるASIC428を除いた、他のASIC(例えばASIC422等)が未使用かつ正常なASICに該当する。
【0091】
S1152において正常かつ未使用なASICが存在しないと判定された場合には、エラーを通知し(S1167)、処理を終了する(S1163)。また、正常かつ未使用なASICが存在すると判定された場合には、S1154において未使用かつ正常なモジュールの数L(図14の例では「7」)を設定すると共に、使用ASICの中でエラー状態にあるASICの数M(図14の例では「1」)を設定する。さらに、Nの値を全グループ数(図14の例では、グループa~hの数である「8」)を設定する。
【0092】
この後、S1155において、LとMの比較を行う。ここで、正常な未使用モジュール数Lがエラー状態にあるASICの数Mより少ない場合は、エラーを通知し(S1167)、処理を終了する(S1163)。また、正常な未使用モジュール数Lがエラー状態にあるASICの数Mより多い場合は、画像処理部134における画像処理速度が必要処理速度以上であるかを判定する(S1156)。この判定処理は、第1実施形態において説明したS814の処理と同様である。S1156において、画像処理速度が必要処理速度以上であると判定された場合には、S1157において使用するモジュールを選択し、前述のS1158~S1163の処理を実施する。
【0093】
一方、図14に示す例では、グループaに対して、グループaが担当する画像データに対する画像処理と、エラー状態にあるグループcのASIC42が担当する予定であった画像データの処理を行う。このため、画像処理134全体の処理速度が必要処理速度を下回る可能性がある。処理速度が必要処理速度を下回る場合には、記録速度低下を低下させることが許容されるか否かを確認する(S1164)。記録速度の低下が許容されない場合は、S1167にてエラーを通知し、処理を終了する(S1163)。また、記録速度の低下が許容される場合は、記録可能速度を計算し(S1165)、使用する転写体の選択、及び給紙タイミングの変更を行う(S1166)。この場合、使用する4つの転写体のうち、2つの転写体を用い、給紙は2回に1回のタイミングで行う。これにより、全体的な記録速度は2分の1となる。その後は、前述したS1158~S1163の処理を行う。
【0094】
以上のように、本実施形態によれば、第1または第2の実施形態と同様に、装置の小型化、配線の削減、及びPCIeスイッチ410、411のポート数の低減などの効果を得ることができる。さらに、使用するインクの色を制限して記録動作を行う場合には、使用していない画像処理モジュール(ASIC)を用いて全ての画像データの処理を行う。このため、複数の記録媒体に対する記録動作を連続的に実施することが可能になり、スループットの向上を図ることができる。
【0095】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を、図16及び図17を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においても、図1ないし図6の構成を同様に備えるものとする。図16は、画像処理部134に設けられている複数の画像処理モジュール(ASIC)の中にエラー状態のモジュール(例えばASIC427)が含まれる場合を示している。この場合、エラー状態のASIC427に直列に接続されているASICのうち、斜線部分1203に含まれるASIC428は、PCIeスイッチ410に直接接続されていない。このため、ASIC428自体が正常であったとしても、ASIC427がエラー状態にあるため、ASIC428は画像処理コントローラ400との間で通信を行うことができない。つまり、使用不可のASICとなる。
【0096】
一方、エラー状態のASICに接続されたASIC426は、PCIeスイッチ410に直接接続されているため、画像処理コントローラ400との通信が可能である。このため、ASIC426は使用可能モジュールである。そこで、本実施形態では、ASIC426427428によって構成されたグループcで担当する画像データ(バンドデータ)120の画像処理を、ASIC426のみで行う。但し、グループcに対応する画像データの処理を1つのASIC426のみで行うため、入力画像データ1200において、グループcに割り当てる画像データ量を網線領域120のように他のバンドデータより少なくする。
【0097】
以下、図17に示すフローチャートに基づき、本実施形態において実施される画像処理の手順を説明する。画像処理要求を受けると(S1250)、エラー発生中の画像処理モジュール(ASIC)が存在するかを判定する(S1251)。エラー状態のASICが存在しない場合には、全グループ(本例ではグループa~hの8グループ)の数である「8」をNの値として設定する(S1252)。
【0098】
次いで、S1253及びS1254において、不吐補間LUT及び画像データをN分割(8分割)する。そして、分割した画像データのうち、未処理のLUT及び分割した画像データを各グループに転送する(S1255及びS1256)。その後、S1257において画像処理を実施し、一連の処理を終了する(S1269)。
【0099】
一方、S1251にてエラーモジュールが存在していた場合、Nの値を、正常なグループ数に設定し(S1259)、Mの値を、使用可能なエラー発生グループ数に設定する(S1259、S1260)。ここで使用可能なエラー発生グループとは、同一のグループ内にエラー状態のASICが1つまたは複数存在しているが、少なくともPCIeに接続されているASICが正常であるグループを意味する。図16においては、グループcがこの使用可能なエラー発生グループに該当する。よって、図16に示す例ではNの値が「7」、Mの値が「1」に設定される。
【0100】
次にS1261では、N及びMの値がいずれも「0」であるかを判定する。仮にN及びMの値が「0」である場合(YESの場合)、正常なASICが存在しないため、エラー通知を行い(S1273)、処理を終了する(S1269)。また、S1261の判定結果がNOである場合にはS1262へ移行し、Mの値が「0」であるかを判定する。S1262においてMの値が「0」であると判定した場合には、分割数をNとして、前述したS1253~S1257の処理を行った後、一連の処理を終了する(S1269)。
【0101】
また、S1262においてMが0でないと判定された場合には、S1263において各グループの処理速度が均等になるように不吐補完LUT及び画像データを分割する。この後、画像処理部134における処理速度を計算し、処理速度が必要処理速度を下回っているかを判定する(S1264)。処理速度が必要処理速度を下回っていない場合(Yes)の場合には、未処理の不吐補完LUT及び画像データ(バンドデータ)を、対応するグループに転送し(S1265、S1266)、画像処理を実施する(S1267)。
【0102】
画像処理を実施した後、エラー発生グループの画像処理が完了しているかを確認し、終了していれば一連の処理を終了する(S1269)。図16に示す例では、3つのASICを有するグループcの処理を、1つのASIC426で行う。そのため、グループcはS1265~S1268の処理を3回繰り返した後、処理を終了する(S1269)。
【0103】
このように、図16に示す例では、本来、3つのASIC426、427、428で行う画像処理を、1つのASIC427のみで行うことから、処理速度が必要処理速度を下回る可能性が高い。S1264において処理速度が必要処理速度を下回ると判定された場合には、記録速度を低下させることが許容されるかを確認する(S1270)。記録速度の低下が許容される場合には、現在の処理速度で記録動作を実行することが可能な記録速度(記録可能速度)を計算により取得し(S1271)、取得した結果に応じて使用する転写体の選択及び給紙タイミングの変更を行う(S1272)。この場合、4つの転写体のうち1つの転写体が選択され、給紙は4回に1回のタイミングで行われる。これにより、全体的な記録速度は4分の1となり、現在の処理速度で対応可能となる。その後、前述したS1265~S1268の処理を行い、処理を終了する(S1269)。また、S1270において記録速度の低下が許容されないと判定された場合には、エラー通知を行ない(S1273)、処理を終了する(S1269)。
【0104】
以上のように、本実施形態によれば、第1または第2の実施形態と同様に、装置の小型化、配線の削減、及びPCIeスイッチ410、411のポート数の低減などの効果を得ることができる。さらに、エラー状態のASICを含むグループであっても、通信及び画像処理を可能とする正常なASICを含む場合には、そのグループを使用可能グループとして扱い、正常なASICを用いて画像処理を実施する。これによれば全ての画像データの処理を行うことが可能になる。従って、複数の記録媒体に対する記録動作を連続的に実施できる可能性が高まり、スループットの向上を図ることができる。また、装置の小型化、配線の削減、及びPCIeスイッチ410、411のポート数の低減などの効果を得ることもできる。
【0105】
[他の実施形態]
上記実施形態では、記録ユニット3が複数の記録ヘッド30を有するが、一つの記録ヘッド30を有する記録装置にも適用可能である。また、本発明を適用する記録装置としては、フルラインヘッドを用いて記録を行うフルライン方式を採用するものに限定されない。例えば、記録ヘッド30を吐出口の配列方向と交差する方向に主走査させながら記録を行うシリアル方式を採る記録装置にも本発明は適用可能である。
【0106】
また、上記実施形態では、転写体40を転写胴41の外周面に設けたが、転写体40を無端の帯状に形成し、これを循環的に走行させる方式を採ることも可能である。さらに、本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、画像処理コントローラなどの制御手段を、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0107】
また、上記実施形態では、画像処理装置を構成する画像処理部134が、処理速度に基づいて記録装置1における記録可能速度(記録速度)の取得(算出)を行い、取得した記録可能速度に従ってエンジンコントローラ13Bが記録速度の制御を行う。しかし、記録速度の取得を画像処理装置ではなく、エンジンコントローラ13Bによって実行することも可能である。すなわち、記録速度の取得手段は、本発明に係る画像処理装置において必須の手段ではなく、取得手段を含まない画像処理装置においても、画像処理装置としての所期の目的は達成可能である。
【0108】
また、ユーザによる設定、あるいは記録装置に定められた記録条件あるいは記録動作中の状態などに基づき、上記第1実施形態から第5実施形態の処理を、選択的に実行するようにしても良い。例えば、画像データのデータ量、使用する用紙のサイズ、使用するインク色の数、エラーが発生した画像処理モジュールの位置などの条件に基づいて、上記第1実施形態ないし第5実施形態に示した処理を選択的に実行するようにしてもよい。
【0109】
さらに、上記各実施形態では、複数の記録媒体に対して連続的に記録動作を行う場合を例に採り説明したが、本発明は単一の記録媒体に対して記録動作を行う場合にも有効である。
【符号の説明】
【0110】
1 記録装置
134 画像処理部(画像処理装置)
420~443 ASIC(モジュール)
a~h グループ(画像処理グループ)
400 画像処理コントローラ(制御手段、検知手段)
410、411 PCIeスイッチ
13B エンジンコントローラ(記録制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17