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特許7383434魚肉入りパン様食品及び魚肉入りパン様食品の製造方法
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  • 特許-魚肉入りパン様食品及び魚肉入りパン様食品の製造方法 図1
  • 特許-魚肉入りパン様食品及び魚肉入りパン様食品の製造方法 図2
  • 特許-魚肉入りパン様食品及び魚肉入りパン様食品の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】魚肉入りパン様食品及び魚肉入りパン様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/34 20060101AFI20231113BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20231113BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20231113BHJP
【FI】
A21D2/34
A21D13/00
A23L17/00 101Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019167069
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021040583
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000141509
【氏名又は名称】株式会社紀文食品
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳人
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 祐磨
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-008267(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106035480(CN,A)
【文献】特開昭52-154556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩摺り効果の付されない魚肉すり身と全卵とでん粉とを含有し、気泡をともなう組織を有し、焼成されている、魚肉入りパン様食品であって、前記魚肉すり身と前記全卵と前記でん粉とは、それらの含有量が、前記魚肉入りパン様食品の焼成前の生地の状態で、前記魚肉すり身が4~30質量%、前記全卵が10~80質量%、前記でん粉が5~40質量%であり、100mLの水を基準として比重100としたときの比重が50~70である、魚肉入りパン様食品
【請求項2】
前記塩摺り効果の付されない魚肉すり身は、食塩の添加量を0.5質量%以下として調製した魚肉すり身である、請求項1記載の魚肉入りパン様食品。
【請求項3】
塩摺り効果の付されない魚肉すり身と全卵とでん粉とを含有する生地に撹拌により含気させる撹拌含気工程と、前記含気した生地を焼成する焼成工程とを有する、魚肉入りパン様食品の製造方法であって、前記生地は、前記魚肉すり身を4~30質量%、前記全卵を10~80質量%、前記でん粉を5~40質量%含有するものであり、100mLの水を基準として比重100としたときの比重が50~70である魚肉入りパン様食品を得る、魚肉入りパン様食品の製造方法
【請求項4】
前記塩摺り効果の付されない魚肉すり身は、食塩の添加量を0.5質量%以下として調製した魚肉すり身である、請求項記載の魚肉入りパン様食品の製造方法。
【請求項5】
前記焼成工程において、前記生地を型に入れてから焼成する、請求項3又は4記載の魚肉入りパン様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚肉入りパン様食品及び魚肉入りパン様食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚肉練製品として知られる伊達巻は、魚肉すり身に卵と砂糖を混ぜて練りあげ、型にいれて焼成したのち、巻いて棒状にして製造されている。例えば、特許文献1においては、外観が美しく、購買意欲をそそられる、流れ模様入り伊達巻及びその製造法が開示されている。従来、魚肉練製品である伊達巻は、しっとりとした食感で、パン類とは異なる食感であった。
【0003】
一方、近年、糖質オフダイエットや小麦アレルギー回避の点から、小麦粉の配合量が低減されたパン類の開発が盛んである。例えば、特許文献2には、小麦グルテンを配合しない米粉パンの製造において、原料として魚肉すり身を配合することにより、生地の粘弾力を向上し、パン酵母の発酵により発生する炭酸ガスの保持力を高め、焼き上げ製品のボリュームを大きくし、製品食感のねっちり感が少なく、米粉とすり身の良好な味・風味の米粉パンが得られる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-279767号公報
【文献】特開2014-64536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パン類は、特許文献2に記載の魚肉入り米粉パンの製造方法にもみられるように、生地を混捏し、その生地中でのイースト発酵により、焼き上がりの内相に気泡をともなう組織を形成させるのが一般的であった。しかしながら、生地の混捏や発酵工程などの作業が煩雑であるという側面があった。
【0006】
本発明の目的は、魚肉を利用して、生地の混捏工程や発酵工程などの煩雑な作業なく、より簡便な作業により、食パンと同じような食感を有する食品を得ることができる、魚肉入りパン様食品及び魚肉入りパン様食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究した結果、魚肉すり身を含む原料を十分に含気させて生地を得、それを焼成することによって、食パンと同じような食感を有するパン様食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、その第1の観点では、魚肉すり身と全卵とでん粉とを含有し、気泡をともなう組織を有し、焼成されている、魚肉入りパン様食品を提供するものである。
【0009】
上記魚肉入りパン様食品においては、該食品は、100mLの水を基準として比重100としたときの比重が50~70であることが好ましい。
【0010】
また、上記魚肉入りパン様食品においては、焼成前の生地の状態で、魚肉すり身を4~30質量%、全卵を10~80質量%、でん粉を5~40質量%含有することが好ましい。
【0011】
また、上記魚肉入りパン様食品においては、前記魚肉すり身は、食塩の添加量を0.5質量%以下として調製した魚肉すり身であることが好ましい。
【0012】
一方、本発明は、その第2の観点では、魚肉すり身と全卵とでん粉とを含有する生地に撹拌により含気させる撹拌含気工程と、前記含気した生地を焼成する焼成工程とを有する、魚肉入りパン様食品の製造方法を提供するものである。
【0013】
上記魚肉入りパン様食品の製造方法においては、100mLの水を基準として比重100としたときの比重が50~70である魚肉入りパン様食品を得るものであることが好ましい。
【0014】
また、上記魚肉入りパン様食品の製造方法においては、前記生地は、魚肉すり身を4~30質量%、全卵を10~80質量%、でん粉を5~40質量%含有することが好ましい。
【0015】
また、上記魚肉入りパン様食品の製造方法においては、前記魚肉すり身は、食塩の添加量を0.5質量%以下として調製した魚肉すり身であることが好ましい。
【0016】
また、上記魚肉入りパン様食品の製造方法においては、前記焼成工程において、前記生地を型に入れてから焼成することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、魚肉すり身と全卵とでん粉とを含有する生地を、撹拌により含気させたうえ、焼成することにより、パン酵母による発酵の必要なく、簡便な作業により、食パンと同じような食感を有する魚肉入りパン様食品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】試験例1において調製した魚肉入りパン様食品の各例を示す写真である。
図2】試験例2において調製した調製例2の魚肉入りパン様食品の一例と、試験例1において調製した調製例1-1の魚肉入りパン様食品の一例とを並べて示す写真である。
図3】試験例3において調製した魚肉入りパン様食品の各例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる魚肉入りパン様食品は、魚肉すり身と全卵とでん粉とを含有する生地を、撹拌により含気させたうえ、焼成することにより得られる。そして、小麦粉等の配合がなくとも、食パンと同じようなパン様の食感を有するものである。
【0020】
本発明に用いる魚肉すり身は、魚肉練製品に一般的に用いられる魚種のものであればよく、特に制限はない。例えば、イトヨリ、スケトウダラ、グチ、イトヨリダイ、キントキダイ、ヒメジ、エソ、カマス、ホッケ、キチジ、ワラズカ、サケ、パシフィックホワイティング等が挙げられる。魚体から採肉、水晒、脱水してなる生すり身の形態のものを使用することもできるし、これに更に糖類等の安定剤を添加したうえ冷凍されてなる冷凍すり身の形態のものを使用してもよい。また、魚肉の質量に対して1~3質量%程度の量で食塩を添加して擂潰することで、魚肉の蛋白質を変性させてより粘性質にする、いわゆる塩摺りの処理を施したうえで用いてもよい。ただし、塩摺りによって魚肉すり身のゲル化能力を高められるためと考えられるが、後述の実施例によれば、かえって焼成後の焼成物の表面にワレが生じやすくなってしまうので、魚肉すり身としては塩摺りしないものを用いることがより好ましい。具体的には、使用する魚肉すり身中の食塩の添加量を0.5 質量%以下として調製した魚肉すり身が好ましい。
【0021】
本発明に用いる全卵は、鶏卵等の食用であればよく、特に、その素材上の形態・種類に制限はない。例えば、液卵、粉末卵等の形態のものも使用可能である。
【0022】
本発明に用いるでん粉は、食用に供されるでん粉であればよく、特に制限はない。例えば、タピオカでん粉、馬鈴薯でん粉、小麦でん粉、コーンスターチ、米でん粉、蕨でん粉等が挙げられる。でん粉は、生でん粉を用いてもよく、酸化処理、リン酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸処理、アルカリ処理等の化学的処理や、湿熱処理、ボールミル処理、微粉砕処理等の物理的処理や、酵素処理などによる改質を施したうえで用いてもよい。あるいはそれらの2種以上の処理を施したものを使用してもよい。
【0023】
上記でん粉は、難消化性澱粉(レジスタントスターチ)に属するでん粉であってもよい。これによれば、糖質制限を目的にした、より好適な食品となすことができる。すなわち、難消化性澱粉は、消化吸収を受けにくい食用の澱粉をいう。より具体的には、食物繊維の含量が50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更により好ましくは70質量%以上である食用の澱粉をいう。食物繊維の定量法としては、プロスキー法(No.985.29, Total Dietary Fiber in Foods, "Official Method of Analysis", AOAC, 15th ed., 1990, P.1105-1106)、酵素HPLC法(AOAC2001.03)、などが知られ、上記範囲を満たす難消化性澱粉であるかどうかは、それらの方法を用いて判断できる。
【0024】
難消化性澱粉としては市販品を使用することもできる。例えば、タピオカ由来のレジスタントスターチとして「ノベロース 3490」(商品名、イングレディオンジャパン株式会社製)、小麦由来のレジスタントスターチとして「ノベロースW」(商品名、イングレディオンジャパン株式会社製)、こめ由来のレジスタントスターチとして「ノベロース8490」(商品名、イングレディオンジャパン株式会社製)、などが挙げられる。
【0025】
糖質制限効果を付与するためには、難消化性澱粉の含有量は、上記でん粉として該でん粉の50質量%以上を占めるようにすることが好ましく、75質量%以上を占めるようにすることがより好ましい。また、上記でん粉の全てを難消化性澱粉としてもよい。
【0026】
本発明においては、魚肉すり身と全卵とでん粉とを含有する生地を、縦型ミキサー、ピンミキサー等の撹拌手段に供して、含気させる。生地への含気により、焼成後に内相が気泡をともなう組織となり、パン用の食感を呈するようになる。
【0027】
また、後述する実施例で示されるように、焼成後の焼成物が食パンと同じようなパン様の食感を呈するようにするには、生地中に魚肉すり身の配合が必要であり、その配合量としては、他の原料の配合量との兼ね合いもあり特に厳密な制限ではないが、焼成前の生地中に4質量%以上含まれていることが好ましく、6質量%以上含まれていることがより好ましく、8質量%以上含まれていることが更により好ましい。魚肉すり身の配合量の上限は、必要的な制限ではないが、他の原料の配合量との兼ね合いからは、例えば、焼成前の生地中に30質量%以下含まれるようにすることが典型的であり、25質量%以下含まれるようにすることがより典型的であり、22質量%以下含まれるようにすることが更により典型的である。
【0028】
また、後述する実施例で示されるように、焼成後の焼成物が食パンと同じようなパン様の食感を呈するようにするには、上記魚肉すり身と同様に、生地中に全卵の配合が必要であり、その配合量としては、他の原料の配合量との兼ね合いもあり特に厳密な制限ではないが、焼成前の生地中に10質量%以上含まれていることが好ましく、20質量%以上含まれていることがより好ましく、25質量%以上含まれていることが更により好ましい。全卵の配合量の上限は、必要的な制限ではないが、他の原料の配合量との兼ね合いからは、例えば、焼成前の生地中に80質量%以下含まれるようにすることが典型的であり、70質量%以下含まれるようにすることがより典型的である。なお、粉末状の卵原料素材を使用する場合の配合量は、基の生の卵に含まれる含有量まで水で戻した量を基準とするようにする。
【0029】
また、後述する実施例で示されるように、焼成後の焼成物が食パンと同じようなパン様の食感を呈するようにするには、上記魚肉すり身及び全卵と同様に、生地中にでん粉の配合が必要であり、その配合量としては、他の原料の配合量との兼ね合いもあり特に厳密な制限ではないが、焼成前の生地中に5質量%以上含まれていることが好ましく、7.5質量%以上含まれていることがより好ましく、15質量%以上含まれていることが更により好ましい。でん粉の配合量の上限は、必要的な制限ではないが、他の原料の配合量との兼ね合いからは、例えば、焼成前の生地中に40質量%以下含まれるようにすることが典型的であり、35質量%以下含まれるようにすることがより典型的である。
【0030】
上記生地には、水、食塩のほか、本発明にかかる作用効果に影響を与えない範囲で所望の副原料を含有せしめてもよい。副原料としては、例えば、砂糖、ソルビトール等の糖類、重合リン酸塩等の塩類、カゼイン等の乳加工品、豆腐、豆乳、分離あるいは濃縮大豆粉等の大豆加工品、大豆油、菜種油等の油脂、香料、呈味料、pH調整剤、着色料、炭酸Ca、乳酸Ca、クエン酸Ca、グルコン酸Ca、酢酸Ca等のカルシウム含有製剤、トランスグルタミナーゼ含有製剤等の物性改良剤などが挙げられる。
【0031】
生地の焼成は、パン類の製造と同じくオーブン等の手段で150~250℃、10~30分間などの条件で行えばよい。また、生地に保形性がない場合には、生地を耐熱性の材質からなる型に入れ、オーブン等の手段で焼成すればよい。
【0032】
本発明により得られる魚肉入りパン様食品は、その比重としては、100mLの水を基準として比重100としたときの比重が50~70であることが好ましく、比重が55~70であることがより好ましく、比重が55~65であることが更により好ましい。なお、焼成後の焼成物の比重は、上記した生地と同様に、メスシリンダー内に水を入れ、これに更にサンプルを入れたときの体積変化を測定して、別途測定した当該サンプルの重量を除す方法などにより測定することができる。
【実施例
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
[試験例1]
(生地調製)
表1に示す原料を使用して魚肉入り食品の生地を調製した。
【0035】
【表1】
【0036】
調製例1-1としては、魚肉すり身に対して9w/w%となる量で食塩を添加して、魚肉すり身に対する塩摺り効果が得られるようにした。具体的には、表1に示す配合で、魚肉すり身、全卵(全量155質量部のうちの120質量部)、食塩を混合し、フードプロセッサー(商品名「MK-K48P」、パナソニック株式会社)を使用して、3分間攪拌した後に、残りの全卵(全量155質量部のうちの35質量部)、砂糖、タピオカでん粉、水を加えて更に3分間攪拌した。
【0037】
調製例1-2としては、食塩を配合せず、それ以外は調製例1-1と同様にして生地を調製した。
【0038】
次いで、縦型ミキサー(商品名「ケンミックスKMM770」、株式会社愛工舎製作所)を使用して、2分間撹拌し、生地に含気させた。
【0039】
なお、上記生地の調製は、原料混合物の品温が5~15℃の範囲内であるようにして、温度環境が高温になり過ぎないようにしながら行った。
【0040】
(生地焼成)
含気した生地を耐熱容器に入れて、ガス式オーブンを使用して、180℃で、20分間焼成した。図1には、調製例1-1及び調製例1-2のそれぞれについて、得られた焼成物を写真で示す。
【0041】
(食感評価)
得られた焼成物について、電子レンジで600W20秒の加熱後、5人のパネラーによる食感の官能評価を行った。評価は、食パン様の食感を感じるかどうかについて、下記基準による段階的な点数付けすることにより行った。
【0042】
(評価基準)
4点 食パンと同等の食感
3点 食パンとほぼ同等の食感
2点 食パンと若干の差異はあるが許容範囲(カステラやホットケーキ)
1点 食パンと相違する食感
結果を表2にまとめて示す。
【0043】
【表2】
【0044】
その結果、食塩を相当量配合し、魚肉すり身に対して塩摺り効果を付して調製した調製例1-1の焼成物や、食塩を配合しない調製例1-2の焼成物は、いずれも、食パン様の食感を有する魚肉入り食品であった。また、外観形状について、図1にみられるように、食塩を配合しないで調製した調製例1-2のほうが、魚肉すり身に対して塩摺り効果を付して調製した調製例1-1よりも、表面にワレが生じにくい傾向がみられた。
【0045】
[試験例2]
表3に示す原料を使用して魚肉入り食品の生地を調製した。
【0046】
【表3】
【0047】
具体的には、調製例2として、表3に示す配合で、魚肉すり身、全卵(全量155質量部のうちの120質量部)を混合し、フードプロセッサー(商品名「MK-K48P」、パナソニック株式会社)を使用して、3分間攪拌した後に、残りの全卵(全量155質量部のうちの35質量部)、砂糖、タピオカでん粉、食塩、水を加えて更に3分間攪拌した。なお、本試験例における調製例2の原料配合は、試験例1における調製例1-1の配合と同じであり、食塩の添加量としても魚肉すり身に対して9w/w%となる量で食塩を添加しているが、添加順序の態様が試験例1における調製例1-1とは異なるために、魚肉すり身には塩摺り効果は付与されないと考えられた。
【0048】
次いで、縦型ミキサー(商品名「ケンミックスKMM770」、株式会社愛工舎製作所)を使用して、2分間撹拌し、生地に含気させた。
【0049】
生地の焼成とその後の食感評価は、試験例1と同様にして行い、得られた食感評価の結果と、更に外観形状について、同じ原料配合であり、試験例1における調製例1-1の場合と、比較した。
【0050】
結果を表4にまとめて示す。また、図2には、調製例2及び調製例1-1のそれぞれについて、得られた焼成物を写真で示す。
【0051】
【表4】
【0052】
その結果、食塩を相当量配合するものの、原料の混合撹拌の態様により、魚肉すり身に対して塩摺り効果が付されないようにして調製した調製例2の焼成物は、試験例1において、食塩を相当量配合し、魚肉すり身に対して塩摺り効果を付して調製した調製例1-1の焼成物と同様に、食パン様の食感を有する魚肉入り食品であった。また、外観形状については、図2にみられるように、食塩を相当量配合するものの、原料の混合撹拌の態様により、魚肉すり身に対して塩摺り効果が付されないようにして調製した調製例2のほうが、試験例1で調製した調製例1-1の焼成物よりも、表面にワレが生じにくい傾向がみられた。
【0053】
[試験例3]
表5に示すように、原料として各種のでん粉を使用した以外は、試験例1の調製例1-1と同様にして、魚肉入り食品を調製した。その際、焼成後の焼成物について、その比重を測定した。比重の測定は、対象物から切断片を作成し重量を測定後、それを水の入ったシリンダーに入れて体積の増加分を測定して、更に100mLの水(室温:25℃)を基準として、その比重を100としたときの相対値に換算し、対象物の密度(重量/体積)に基づいて算定した。
【0054】
【表5】
【0055】
得られた焼成物について、5人のパネラーにより食感の官能評価を行った。評価は、下記基準により、タピオカでん粉を使用した調製例3-1と、他のでん粉原料を使用したときの食感の比較により行った。
【0056】
(評価基準)
○ 調製例3-1との比較においてパンとして食感に差がない
× 調製例3-1との比較においてパンとして食感に差がある
結果を表6にまとめて示す。また、図3には、調製例3-1~5のそれぞれについて、得られた焼成物を写真で示す。
【0057】
【表6】
【0058】
その結果、タピオカでん粉に代えて、馬鈴薯でん粉、小麦でん粉、ワキシーコーンスターチ、レジスタントスターチ(リン酸架橋処理タピオカでん粉)など、他のでん粉を配合した各例の焼成物であっても、いずれも、食パン様の食感を有する魚肉入り食品が得られた。
【0059】
[試験例4]
表7に示すように、原料として魚肉すり身の配合量を変化させた以外は、試験例1の調製例1-1と同様にして、魚肉入り食品を調製し、食感評価を行った。
【0060】
【表7】
【0061】
結果を表8にまとめて示す。
【0062】
【表8】
【0063】
その結果、魚肉すり身を配合しない調製例4-1では、パンとは異なる食感であった。魚肉すり身は、焼成前の生地中に4~24質量%の範囲で配合することにより、食パン様の食感を有する魚肉入り食品が得られた。
【0064】
[試験例5]
表9に示すように、原料として全卵の配合量を変化させた以外は、試験例1の調製例1-1と同様にして、魚肉入り食品を調製し、食感評価を行った。
【0065】
【表9】
【0066】
結果を表10にまとめて示す。
【0067】
【表10】
【0068】
その結果、全卵を配合しない調製例5-1では、パンとは異なる食感であった。全卵は、焼成前の生地中に10~80質量%の範囲で配合することにより、食パン様の食感を有する魚肉入り食品が得られた。
【0069】
[試験例6]
表11に示すように、原料としてでん粉の配合量を変化させた以外は、試験例1の調製例1-1と同様にして、魚肉入り食品を調製し、食感評価を行った。
【0070】
【表11】
【0071】
結果を表12にまとめて示す。
【0072】
【表12】
【0073】
その結果、でん粉を配合しない調製例6-1では、パンとは異なる食感であった。でん粉は、焼成前の生地中に5~40質量%の範囲で配合することにより、食パン様の食感を有する魚肉入り食品が得られた。
【0074】
[試験例7]
表13に示す原料配合とした以外は、試験例1の調製例1-1と同様にして、魚肉入り食品を調製した。
【0075】
【表13】
【0076】
得られた焼成物について、5人のパネラーにより食感の官能評価を行った。評価は、卵白を使用した調製例7-1と、全卵を使用した調製例7-2とを、食パンと同じような食感か得られたかどうか、あるいは食パン様とはいえずにスフレのような食感であるかどうかを、下記基準A,Bのとおり相互に比較することにより行った。
【0077】
(評価基準A)
・スフレ様食感、ソフトでくちどけあり、パン様食感ではない
○ そうである
△ ややそうである
× そうではない
(評価基準B)
・パン様食感、ソフトで程よい粘りあり、スフレ様食感ではない
○ そうである
△ ややそうである
× そうではない
結果を表14にまとめて示す。
【0078】
【表14】
【0079】
その結果、全卵に代えて卵白を使用すると、スフレ様のソフトで脆い食感となってしまい、食パン様の食感を有する魚肉入り食品は得られなかった。
図1
図2
図3