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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20231113BHJP
   H02G 3/14 20060101ALI20231113BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20231113BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20231113BHJP
【FI】
H02G3/16
H02G3/14
H05K7/14 A
H01R12/71
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019185065
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021061700
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】榛地 陽
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一栄
(72)【発明者】
【氏名】松永 貴士
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-329413(JP,A)
【文献】特開平11-289178(JP,A)
【文献】特開2016-163530(JP,A)
【文献】実開平4-127691(JP,U)
【文献】特開2014-139976(JP,A)
【文献】特開2003-142207(JP,A)
【文献】特開2012-104413(JP,A)
【文献】特開平8-219124(JP,A)
【文献】特開2007-5142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H02G 3/14
H05K 7/14
H01R 12/71
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を保持する端子ホルダが基板に固定された基板ユニットと、
前記基板ユニットを収容するための開口が形成された有底筒状のケース体と、
前記ケース体に取り付けられて前記開口を塞ぐカバー体と、を備え、
前記ケース体及び前記カバー体は、相互に対向する内面にそれぞれ前記端子ホルダを挟んで支持する支持部を有し、
前記基板ユニットは、前記端子ホルダの側壁に取り付けられて該端子ホルダと前記基板とを固定する固定金具を有し、
前記固定金具は、少なくとも前記ケース体または前記カバー体のいずれか一方の前記支持部の端面と前記端子ホルダとの間に介在されて、前記端子ホルダに生じる応力により変形する弾性変形部を一体に含んで構成されたことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記弾性変形部は、前記固定金具の一部を折り曲げて形成され、前記端子ホルダに接触する平坦部と、前記支持部の端面側に膨出して該端面に接触する膨出部とを含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記固定金具は、該固定金具の中央部に一部を切り起して形成され、前記端子ホルダに形成された位置決め溝に係止される位置決め片を含んで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に基板ユニットを収容した電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、端子を保持する端子ホルダが基板に固定された基板ユニットを、ケース体に収容して該ケース体の開口をカバー体で塞いだ電気接続箱が知られている。この種の電気接続箱では、基板ユニットの基板をケース体及びカバー体の各内面で挟んで支持することで、ねじなどの固定具を不要としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-95930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板をケース体及びカバー体の各内面で挟んで支持する構造では、各部品の寸法公差や、温度変化に伴う各部品の膨張や収縮によって、基板がケース体内でがたついたり、基板に過大な応力が作用するおそれがある。このため、ケース体内に基板ユニットを固定する点について更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、ケース体内に基板ユニットを適正に固定することができる電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、端子を保持する端子ホルダが基板に固定された基板ユニットと、基板ユニットを収容するための開口が形成された有底筒状のケース体と、ケース体に取り付けられて開口を塞ぐカバー体と、を備える。これらケース体及びカバー体は、相互に対向する内面にそれぞれ端子ホルダを挟んで支持する支持部を有し、基板ユニットは、端子ホルダの側壁に取り付けられて該端子ホルダと基板とを固定する固定金具を有する。この固定金具は、少なくともケース体またはカバー体のいずれか一方の支持部の端面と端子ホルダとの間に介在されて、端子ホルダに生じる応力により変形する弾性変形部を一体に含んだ構成とする。
【0007】
上記電気接続箱では、前記弾性変形部は、前記固定金具の一部を折り曲げて形成され、前記端子ホルダに接触する平坦部と、前記支持部の端面側に膨出して該端面に接触する膨出部とを含んで構成されるものとすることができる。
【0008】
また、上記電気接続箱では、前記固定金具は、該固定金具の中央部に一部を切り起して形成され、前記端子ホルダに形成された位置決め溝に係止される位置決め片を含んで構成されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電気接続箱は、ケース体及びカバー体が相互に対向する内面にそれぞれ端子ホルダを挟んで支持する支持部を備える。また、基板ユニットは、端子ホルダの側壁に取り付けられて該端子ホルダと基板とを固定する固定金具を有し、この固定金具は、少なくともケース体またはカバー体のいずれか一方の支持部の端面と端子ホルダとの間に介在されて、端子ホルダに生じる応力により変形する弾性変形部を一体に含んでいる。このため、電気接続箱は、弾性変形部が各部品の公差範囲内での寸法差や、温度変化に伴う寸法変化を吸収することにより、基板ユニットの基板への過剰な応力を抑制することができる。この結果、電気接続箱は、ケース体内に基板ユニットを適正に固定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す分解斜視図である。
図2図2は、電気接続箱のケース体の内側を示す斜視図である。
図3図3は、基板ユニットの概略構成を示す分解斜視図である。
図4図4は、端子ホルダの圧入部にペグを圧入する前の側面図である。
図5図5は、端子ホルダの圧入部にペグを圧入した後の側面図である。
図6図6は、電気接続箱の側断面図である。
図7図7は、参考例に係る端子ホルダとペグとを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「幅方向X」といい、第2方向を「高さ方向Y」といい、第3方向を「奥行き方向Z」という。ここでは、幅方向Xと高さ方向Yと奥行き方向Zとは、相互に直交する。奥行き方向Zは、典型的には、後述するケース体、基板ユニット及びカバー体の組み付け方向に相当する。この場合、奥行き方向Zは、各ケース体、基板ユニット及びカバー体を組み付けた際に発生する応力方向にも相当する。また、高さ方向Yは、典型的には、後述する圧入部に対するペグの圧入方向に相当する。以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る電気接続箱の概略構成を示す分解斜視図である。図2は、電気接続箱のケース体の内側を示す斜視図である。図3は、基板ユニットの概略構成を示す分解斜視図である。図4は、端子ホルダの圧入部にペグを圧入する前の側面図である。図5は、端子ホルダの圧入部にペグを圧入した後の側面図である。
【0013】
本実施形態に係る電気接続箱100は、例えば、自動車等の車両に搭載されて他の電子機器と接続される電子機器である。電気接続箱100は、図1に示すように、ケース体1と、基板ユニット2と、カバー体3とを備えて構成される。基板ユニット2は、ケース体1とカバー体3とで形成される空間内に収容されている。
【0014】
ケース体1は、電気絶縁性の合成樹脂により一体成形される。ケース体1は、図1及び図2に示すように、幅方向Xの寸法が高さ方向Yの寸法よりも大きく、一端側に開口11が形成された有底角筒状に形成されている。ケース体1は、開口11を通じて、基板ユニット2を内方の収容空間12に挿入して収容する。ケース体1の他端(開口11の反対)側には底壁13が形成され、この底壁13の中央部には、該底壁13を奥行き方向Zに貫通するコネクタ接続開口14が形成される。このコネクタ接続開口14には、ケース体1内に収容された基板ユニット2の後述する端子21が露出するように配置され、相手方のコネクタ(不図示)と電気的に接続される。
【0015】
ケース体1の内部には、図2に示すように、該ケース体1の幅方向Xの両側に位置する側壁15の内面15Aにそれぞれ一対のガイド部16が形成されている。これらガイド部16は、両側壁15の内面15Aをそれぞれ奥行き方向Zに沿って延在し、基板ユニット2の基板20を収容空間12内に案内する。ケース体1内に収容された基板ユニット2の基板20は、一対のガイド部16上に載置される。また、コネクタ接続開口14の両側には、それぞれ底壁13の内面13Aから奥行き方向Zに沿って突出した一対のケース側支持部(支持部)17が形成されている。図2では、一方のケース側支持部17しか示されていないが、コネクタ接続開口14の両側方に一対のケース側支持部17がそれぞれ形成される。これらケース側支持部17の先端側の端面17Aはそれぞれ平坦面に形成されている。また、上記した両側壁15の開口11側に位置する外面15Bには、それぞれカバー体3を係止して保持するための爪部18が形成されている。
【0016】
カバー体3は、電気絶縁性の合成樹脂により一体成形される。カバー体3は、図1に示すように、幅方向Xの寸法が高さ方向Yの寸法よりも大きく、一端側に開口31が形成された有底角筒状に形成されている。カバー体3の開口31は、ケース体1の開口11よりも僅かに大きく形成されてカバー体3の内側にケース体1の開口11側の端部(一端)側が進入することにより、ケース体1とカバー体3とが嵌合する。カバー体3の開口31側に位置する側壁32にはロック部33が形成され、このロック部33の爪部(不図示)とケース体1の爪部18とが係止することにより、ケース体1とカバー体3との嵌合状態をロック(固定保持)する。
【0017】
カバー体3の他端(開口31の反対)側には底壁34が形成される。カバー体3をケース体1に嵌合した際に、この底壁34の内面34Aは、奥行き方向Zでケース体1の底壁13の内面13Aと対向する。このため、ケース体1の底壁13の内面13A、及びカバー体3の底壁34の内面34Aは、それぞれ相互に対向する内面となる。
【0018】
底壁34の内面34Aには、この内面34Aから奥行き方向Zに沿って突出した一対のカバー側支持部(支持部)35が形成されている。これらカバー側支持部35は、カバー体3の開口31側の端部(一端)よりも奥行き方向Zに大きく突出しており、カバー側支持部35の先端側の端面35Aはそれぞれ平坦面に形成されている。また、カバー側支持部35は、上記したケース側支持部17に対応する位置に設けられている。このため、カバー体3をケース体1に嵌合した際に、カバー側支持部35は、ケース体1の収容空間12内に進入し、各カバー側支持部35の端面35Aと各ケース側支持部17の端面17Aとがそれぞれ対向して配置される。
【0019】
これらカバー側支持部35及びケース側支持部17は、それぞれ収容された基板ユニット2の端子ホルダ22を挟んで支持するものであり、基板ユニット2の奥行き方向Z側の位置決めを行う。
【0020】
基板ユニット2は、図1及び図3に示すように、基板20と、複数の端子21と、端子ホルダ22と、ペグ(固定金具)23とを備えて構成される。基板20は、例えば、いわゆるプリント回路基板である。基板20は、その表面や内部に形成された回路を有する。また、基板20の表面には、電子部品(不図示)のリード線や端子が回路に半田付け等により電気的に接続されることで電子部品が実装されている。
【0021】
基板20は、図3に示すように、該基板20に形成された回路と端子21とを電気的に接続する複数の端子用スルーホール20Aと、ペグ(固定金具)23を基板20に固定するためのペグ用スルーホール20Bとを備える。端子用スルーホール20A及びペグ用スルーホール20Bは、高さ方向Yに沿って基板20を貫通して形成される。なお、基板20は、プリント回路基板に限らず、絶縁性の樹脂材料の内部に導電性の金属材料のバスバが内蔵されたいわゆるインサートバスバ基板であってもよい。
【0022】
複数の端子21は、それぞれ基板20と相手側コネクタとを電気的に接続する。各端子21は、全体が導電性を有する金属材料等によって棒状に形成され、表面に導電性のめっき等が施されている。端子21は、一端側の接続端子部21Aと、他端側の実装端子部21Bと備える。端子21は、略L字状に屈曲されており、接続端子部21Aに対して実装端子部21Bが直交する方向へ延在されている。図3の例では、接続端子部21Aは、奥行き方向Zに沿って延在し、実装端子部21Bは、高さ方向Yに沿って延在している。実装端子部21Bは、それぞれ先端が基板20の端子用スルーホール20Aに挿入されて半田付け等によって回路に電気的に接続される。
【0023】
端子ホルダ22は、端子保持部40と一対のペグ保持部41とを備えて電気絶縁性の合成樹脂により一体成形される。端子保持部40は、幅方向Xに沿って延在し端子21を保持する。端子保持部40には、該端子保持部40を奥行き方向Zに沿って貫通する複数の保持貫通孔40Aが形成される。端子保持部40は、複数の保持貫通孔40Aにそれぞれ端子21の接続端子部21Aが背面側(カバー体3側)から圧入されることで端子21を保持する。接続端子部21Aは、ケース体1内に収容された際に、コネクタ接続開口14に連結された相手方のコネクタと電気的に接続される。なお、これらの端子21は、端子ホルダ22を成形する際に、インサート成形によって端子ホルダ22の端子保持部40に一体化させても良い。
【0024】
ペグ保持部41は、端子保持部40の幅方向Xの両端部にそれぞれ設けられている。各ペグ保持部41は、奥行き方向Zに沿って、ケース体1側及びカバー体3側にそれぞれ突出して形成されたブロック体であり、端子ホルダ22の側壁に相当する。各ペグ保持部41は、上記したカバー側支持部35及びケース側支持部17によって、それぞれ挟まれて支持される部位であり、ペグ保持部41の奥行き方向Zにおけるケース体側端面(一方の端面)41A、及びカバー体側端面(他方の端面)41Bは、それぞれ平坦面に形成されている。
【0025】
また、各ペグ保持部41には、それぞれペグ23が圧入される圧入部42が一体に形成されている。この圧入部42は、図3図5に示すように、各ペグ保持部41の内壁41Cと、この内壁41Cと一体に設けられた外壁41Dとの間に形成された圧入溝に相当するものである。圧入部42は、各ペグ保持部41の上端及び下端(一部)がそれぞれ開口されており、この圧入部42には、図3に破線矢印Y1で示すように、上端側から下端側(基板20側)に向けてペグ23が圧入されて保持される。ここで、圧入部42の上端側は、圧入方向Y1の上流側であり、基板20と反対側に位置する。また、圧入部42の下端側は、圧入方向Y1の下流側であり、基板20側に位置する。
【0026】
また、圧入部42は、下流側の開口が上流側の開口よりも幅狭に形成されている。このため、圧入部42に圧入されたペグ23は、圧入方向Y1の所定の位置で位置決めされる。圧入部42の開口幅の方向は、圧入方向と直交する方向であり、奥行き方向Zに相当する。
【0027】
ペグ23は、図3図5に示すように、金属製の平板を折り曲げて一体に形成されている。ペグ23は、略矩形状に形成された本体51と、この本体51の下端から圧入方向Y1下流側に突出する一対の固定部52とを備える。また、ペグ23は、本体51の上端側の側端から圧入方向Y1下流側に延びる弾性変形部53と、本体51の一部を切り起して形成された位置決め片54とを備える。ペグ23の下端は、圧入する際の先端側、すなわち圧入方向Y1の下流側となる。反対に、ペグ23の上端は、圧入する際の基端側、すなわち圧入方向Y1の上流側となる。
【0028】
固定部52は、ペグ23が圧入部42に圧入された状態で、圧入部42の下端から基板20側に向けて突出して配置され、基板20に設けられたペグ用スルーホール20Bに挿入されて半田付けされる。このように固定部52を基板20に固定することにより、ペグ23を介して端子ホルダ22が基板20上に固定される。
【0029】
弾性変形部53は、金属製の平板を折り曲げて形成される。この弾性変形部53は、ペグ23が圧入部42に圧入された状態で、端子ホルダ22における各ペグ保持部41のケース体側端面(一方の端面)41Aに配置される。弾性変形部53は、図5に示すように、ケース体側端面41Aに接触する一対の平坦部53A、53Aと、これら平坦部53A、53Aの間に配置され、奥行き方向Zに沿ってケース体側端面41Aから離間する方向に膨出する膨出部53Bとを備える。本実施形態では、膨出部53Bが平坦部53A、53Aに対して、奥行き方向Zに変形することにより、弾性変形部53は、ペグ保持部41(端子ホルダ22)に対して奥行き方向Zに生じる応力を吸収する。
【0030】
位置決め片54は、本体51の中央部に略コ字状の切り込みを入れ、この切り込みの内側の長方形の板部分を、ペグ23の圧入方向Y1と略平行となるように切り起こした切り起こし片によって構成されている。この位置決め片54は、図4及び図5に示すように、ペグ23を圧入部42に圧入する際に、圧入部42の一部を構成するペグ保持部41の内壁41Cに圧入方向Y1に沿って形成された位置決め溝43に係止される。これにより、ペグ23は、圧入部42に対して開口幅方向、すなわち奥行き方向Zへの位置決めがなされる。位置決め片54は、本体51の中央部の一部を切り起しているため、ペグ23を必要以上に大きく形成する必要がなく、ペグ23の材料費を加工費とともに抑えて、ペグ23を安価に製造することができる。
【0031】
次に、上記した弾性変形部53を備えたペグ23の作用について説明する。図6は、電気接続箱の側断面図である。電気接続箱100のケース体1内に基板ユニット2が収容されると、ケース体1にカバー体3が嵌合される。また、ケース体1とカバー体3とはロック部33(図1)などにより嵌合状態が保持される。
【0032】
ケース体1内では、図6に示すように、基板ユニット2は、基板20が一対のガイド部16上に載置されて支持されるとともに、端子ホルダ22の各ペグ保持部41がカバー側支持部35及びケース側支持部17によって、それぞれ挟まれて支持される。これらペグ保持部41の圧入部42には、それぞれペグ23が圧入されており、これらのペグ23は、それぞれケース側支持部17の端面17Aとペグ保持部41のケース体側端面41Aとの間に介在される弾性変形部53を一体に備えて構成されている。
【0033】
これらの弾性変形部53は、ケース側支持部17の端面17A側に膨出する膨出部53Bを含み、各ペグ保持部41に生じる応力により変形して該応力を吸収する。従って、電気接続箱100は、ケース体1、基板ユニット2及びカバー体3の各部品の公差範囲内での寸法差を吸収することができるとともに、例えば、車両の振動によって生じる応力や、車両が走行する地域の寒暖差(温度変化)に伴う寸法変化によって生じる応力を吸収することができる。これにより、基板ユニット2の基板への過剰な応力を抑制できるため、ケース体1内に基板ユニット2を適正に固定することができ、ひいては、信頼性の高い電気接続箱100を実現することができる。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態に係る電気接続箱100は、端子21を保持する端子ホルダ22が基板20に固定された基板ユニット2と、基板ユニット2を収容するための開口11が形成された有底筒状のケース体1と、ケース体1に取り付けられて開口11を塞ぐカバー体3と、を備える。これらケース体1及びカバー体3は、相互に対向する内面13A、34Aにそれぞれ端子ホルダ22のペグ保持部41を挟んで支持するケース側支持部17及びカバー側支持部35を有する。基板ユニット2は、端子ホルダ22のペグ保持部41に圧入されて端子ホルダ22と基板20とを固定するペグ23を有する。このペグ23は、ケース側支持部17の端面17Aとペグ保持部41のケース体側端面41Aとの間に介在されて、ペグ保持部41に生じる応力により変形する弾性変形部53を一体に含んで構成されている。このため、電気接続箱100は、弾性変形部53がケース体1、基板ユニット2及びカバー体3の各部品の公差範囲内での寸法差や、温度変化に伴う寸法変化を吸収することにより、基板ユニット2の基板への過剰な応力を抑制することができる。この結果、電気接続箱100は、ケース体1内に基板ユニット2を適正に固定することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、弾性変形部53は、ペグ23の一部を折り曲げて形成され、ペグ保持部41に接触する平坦部53Aと、ケース側支持部17の端面17A側に膨出して該端面17Aに接触する膨出部53Bとを含んで構成されるため、弾性変形部53を簡素な構成で形成することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、ペグ23は、本体51の中央部に一部を切り起して形成され、ペグ保持部41の内壁41に形成された位置決め溝43に係止される位置決め片54を含んで構成されるため、ペグ23を必要以上に大きく形成する必要がなく、ペグ23の材料費を加工費とともに抑えて、ペグ23を安価に製造することができる。
【0037】
なお、本発明に係るコネクタは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態では、弾性変形部53は、ケース側支持部17の端面17Aとペグ保持部41のケース体側端面41Aとの間に介在された構成を説明したがこれに限らない。例えば、カバー側支持部35の端面35Aとペグ保持部41のカバー側端面41Bとの間に介在される弾性変形部を備えた構成としてもよいし、上記した両方の弾性変形部を備えてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、弾性変形部53は、ペグ保持部41に接触する平坦部53Aと、ケース側支持部17の端面17A側に膨出して該端面17Aに接触する膨出部53Bとを備える構成としたが、ペグ保持部41への応力によって変形して応力を吸収できるのであれば、他の構成としてもよい。
【0039】
また、参考例として図7に示すように、ペグ保持部41の圧入部42に、本体51の中央部に一部を切り起して形成した位置決め片54を備えたペグ123を圧入する構成を採用することもできる。この参考例では、ペグ123は、上記した弾性変形部を備えていない。位置決め片54は、本体51の中央部に略コ字状の切り込みを入れ、この切り込みの内側の長方形の板部分を、ペグ23の圧入方向Y1と略平行となるように切り起こした切り起こし片によって構成されている。この位置決め片54は、図7に示すように、ペグ123を圧入部42に圧入する際に、圧入部42の一部を構成するペグ保持部41の内壁41Cに圧入方向Y1に沿って形成された位置決め溝43に係止される。この参考例によっても、位置決め片54は、本体51の中央部の一部を切り起しているため、ペグ123を必要以上に大きく形成する必要がなく、ペグ123の材料費を加工費とともに抑えて、ペグ123を安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ケース体
2 基板ユニット
3 カバー体
13 底壁
13A 内面
16 ガイド部
17 ケース側支持部(支持部)
17A 端面
20 基板
21 端子
22 端子ホルダ
23、123 ペグ(固定金具)
34 底壁
34A 内面
35 カバー側支持部(支持部)
35A 端面
40 端子保持部
41 ペグ保持部
41A ケース体側端面
41B カバー側端面
42 圧入部
43 位置決め溝
51 本体
52 固定部
53 弾性変形部
53A 平坦部
53B 膨出部
54 位置決め片
100 電気接続箱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7