(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】排気浄化装置及び該排気浄化装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20231113BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20231113BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
F01N3/08 G
F01N11/00
B01D53/94 222
B01D53/94 400
(21)【出願番号】P 2019188267
(22)【出願日】2019-10-14
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 圭輔
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0208670(US,A1)
【文献】特開2015-82884(JP,A)
【文献】特開平6-233450(JP,A)
【文献】特開2017-66952(JP,A)
【文献】特開2021-38697(JP,A)
【文献】特開2015-59458(JP,A)
【文献】特開2009-185755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 11/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)の排気ガスを浄化する排気浄化触媒(12)と、該排気浄化触媒(12)の上流側に還元剤を添加する還元剤添加弁(11)と、前記内燃機関(1)の冷却媒体を循環させて前記還元剤添加弁(11)を冷却する冷却装置(30)と、を備える排気浄化装置(10)であって、
前記排気浄化装置(10)を制御する制御装置(40)と、
前記冷却装置(30)に設けられ、前記内燃機関(1)が運転されているときに、前記内燃機関(1)の駆動力により駆動されて前記冷却媒体を循環させる主ポンプ(33)と、
前記冷却装置(30)に設けられ、前記内燃機関(1)が停止されているときに、前記内燃機関(1)の駆動力によらず電力により駆動されて前記冷却媒体を循環させる補助ポンプ(34)と、
を備え、
前記制御装置(40)は、
前記内燃機関(1)が始動されるときに、当該内燃機関(1)が始動される旨を特定可能な始動関連情報を取得する取得部(41)と、
前記補助ポンプ(34)が作動可能な状態であるか否かを診断する作動診断の制御を実行する実行部(42)と、
を備え、
前記実行部(42)は、前記取得部(41)により前記始動関連情報が取得された場合に、
前記制御装置(40)内に備えられたFETの駆動により前記補助ポンプ(34)を少なくとも所定期間にわたり駆動させるテスト駆動の制御を実行しつつ、前記作動診断の制御を実行
し、前記テスト駆動において、前記FETのドレイン(D)とソース(S)との間の電圧降下値であるDS電圧(Vds)が基準電圧値(V_th3)未満である場合、前記補助ポンプ(34)が作動可能であると診断する様構成されてなり、
前記基準電圧値(V_th3)は、前記補助ポンプ(34)の電気配線が正常に接続されている時の前記ドレイン(D)と前記ソース(S)との間の電圧降下値よりも高い値として設定される
排気浄化装置。
【請求項2】
前記実行部(42)は、前記内燃機関(1)の運転を開始させるためのスイッチ(7)の操作が行われた後から当該内燃機関(1)の運転を停止させるためのスイッチ(7)の操作が行われるまでの期間において、前記内燃機関(1)が最初に始動されるときに、前記テスト駆動の制御を実行しつつ、前記作動診断の制御を実行する
請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記排気浄化装置(10)は、
前記補助ポンプ(34)が作動可能な状態であるか否かを報知する報知装置(50)を備え、
前記実行部(42)は、前記作動診断において前記補助ポンプ(34)が作動可能な状態でない旨が判定された場合に、前記報知装置(50)により前記補助ポンプ(34)が作動可能な状態でない旨を報知させる報知制御を実行する
請求項1または2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記実行部(42)は、前記作動診断において、前記補助ポンプ(34)にバッテリ短絡が生じている可能性があるか否かを特定し、前記補助ポンプ(34)にバッテリ短絡が生じている可能性があると特定された場合に、前記補助ポンプ(34)が作動可能な状態でない旨を判定する
請求項1~3のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記実行部(42)は、前記補助ポンプ(34)が駆動されていない期間において、前記補助ポンプ(34)の電源配線に断線またはグランド短絡が生じている可能性があるか否かを特定し、断線またはグランド短絡が生じている可能性があると特定された場合に、前記補助ポンプ(34)が作動可能な状態でない旨を判定する
請求項1~4のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記実行部(42)は、前記補助ポンプ(34)が作動可能な状態でない旨が判定された後、
前記補助ポンプ(34)を駆動させる制御信号を前記FETのゲート(G)に対して出力させないように制御し、前記補助ポンプ(34)が駆動されることを防止する
請求項1~5のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項7】
内燃機関(1)の排気ガスを浄化する排気浄化触媒(12)と、該排気浄化触媒(12)の上流側に還元剤を添加する還元剤添加弁(11)と、前記内燃機関(1)の冷却媒体を循環させて前記還元剤添加弁(11)を冷却する冷却装置(30)と、を備える排気浄化装置(10)であって、
前記排気浄化装置(10)を制御する制御装置(40)と、
前記冷却装置(30)に設けられ、前記内燃機関(1)が運転されているときに、前記内燃機関(1)の駆動力により駆動されて前記冷却媒体を循環させる主ポンプ(33)と、
前記冷却装置(30)に設けられ、前記内燃機関(1)が停止されているときに、前記内燃機関(1)の駆動力によらず電力により駆動されて前記冷却媒体を循環させる補助ポンプ(34)と、
を備える前記排気浄化装置(10)の制御方法であって、
前記内燃機関(1)が始動されるときに、当該内燃機関(1)が始動される旨を特定可能な始動関連情報を取得する取得ステップと、
前記補助ポンプ(34)が作動可能な状態であるか否かを診断する作動診断の制御を実行する実行ステップと、
を備え
前記制御装置(40)は、
前記実行ステップにおいて、前記取得ステップにより前記始動関連情報が取得された場合に、
前記制御装置(40)内に備えられたFETの駆動により前記補助ポンプ(34)を少なくとも所定期間にわたりテスト駆動させる制御を実行しつつ、前記作動診断の制御を実行
し、前記テスト駆動において、前記FETのドレイン(D)とソース(S)との間の電圧降下値であるDS電圧(Vds)が基準電圧値(V_th3)未満である場合、前記補助ポンプ(34)が作動可能であると診断する様構成されてなり、
前記基準電圧値(V_th3)は、前記補助ポンプ(34)の電気配線が正常に接続されている時の前記ドレイン(D)と前記ソース(S)との間の電圧降下値よりも高い値として設定される
排気浄化装置(10)の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスを浄化する排気浄化装置及び該排気浄化装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の排気浄化装置として、例えば、車両用のディーゼルエンジン等の内燃機関の排気通路内に配置されてアンモニア(NH3)を吸着して窒素酸化物(NOx)を還元するSCR触媒と、NH3を供給するために還元剤(例えば、尿素水溶液(尿素水))をSCR触媒の上流側の排気通路内に添加する還元剤添加弁と、還元剤を貯蔵タンクから還元剤添加弁に供給する還元剤供給装置等を備える尿素SCRシステムがある。このような尿素SCRシステムでは、例えば、内燃機関の冷却水を該内燃機関の駆動力により駆動されるポンプまたは電力により駆動される電動ポンプにより循環させて還元剤添加弁を冷却する冷却装置が付設されており、高温の排気ガスに曝される還元剤添加弁の温度及び当該還元剤添加弁内の還元剤の温度の上昇を抑制する構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の排気浄化装置では、内燃機関の停止に伴って該内燃機関の駆動力により駆動されるポンプの駆動が停止されるが、該内燃機関の停止後には、電動ポンプを駆動させることにより内燃機関の冷却水を循環させて還元剤添加弁を冷却する。しかし、電動ポンプが作動可能な状態でない場合、例えば、電動ポンプの配線に短絡や断線が生じた場合や電動ポンプに故障が生じている場合等でも、内燃機関の停止後であって該電動ポンプが作動されるときまで、当該電動ポンプが作動可能な状態でないことが検出されず、内燃機関の停止後において還元剤添加弁を冷却するときに電動ポンプが作動せず、還元剤添加弁が冷却されない虞がある。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、内燃機関の冷却水循環系に設けられ、還元剤添加弁を冷却するために電力により駆動される補助ポンプが作動可能な状態か否かを判定することができる排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る排気浄化装置は、内燃機関(1)の排気ガスを浄化する排気浄化触媒(12)と、該排気浄化触媒(12)の上流側に還元剤を添加する還元剤添加弁(11)と、前記内燃機関(1)の冷却媒体を循環させて前記還元剤添加弁(11)を冷却する冷却装置(30)と、を備える排気浄化装置(10)であって、前記排気浄化装置(10)を制御する制御装置(40)と、前記冷却装置(30)に設けられ、前記内燃機関(1)が運転されているときに、前記内燃機関(1)の駆動力により駆動されて前記冷却媒体を循環させる主ポンプ(33)と、前記冷却装置(30)に設けられ、前記内燃機関(1)が停止されているときに、前記内燃機関(1)の駆動力によらず電力により駆動されて前記冷却媒体を循環させる補助ポンプ(34)と、を備え、前記制御装置(40)は、前記内燃機関(1)が始動されるときに、当該内燃機関(1)が始動される旨を特定可能な始動関連情報を取得する取得部(41)と、前記補助ポンプ(34)が作動可能な状態であるか否かを診断する作動診断の制御を実行する実行部(42)と、を備え、前記実行部(42)は、前記取得部(41)により前記始動関連情報が取得された場合に、前記補助ポンプ(34)を少なくとも所定期間にわたり駆動させるテスト駆動の制御を実行しつつ、前記作動診断の制御を実行する構成である。
【0007】
このような構成によれば、排気浄化装置(10)の制御装置(40)は、取得部(41)により始動関連情報が取得された場合、すなわち内燃機関が始動される場合に、実行部(42)により補助ポンプ(34)のテスト駆動の制御を実行させつつ当該補助ポンプ(34)の作動診断の制御を実行させるので、内燃機関(1)が停止されて主ポンプ(33)の駆動が停止された以降において冷却媒体を循環させるために補助ポンプ(34)を作動させる以前に、当該補助ポンプ(34)が作動可能な状態か否かを診断することができる。
【0008】
本発明に係る排気浄化装置の制御方法は、内燃機関(1)の排気ガスを浄化する排気浄化触媒(12)と、該排気浄化触媒(12)の上流側に還元剤を添加する還元剤添加弁(11)と、前記内燃機関(1)の冷却媒体を循環させて前記還元剤添加弁(11)を冷却する冷却装置(30)と、を備える排気浄化装置(10)であって、前記排気浄化装置(10)を制御する制御装置(40)と、前記冷却装置(30)に設けられ、前記内燃機関(1)が運転されているときに、前記内燃機関(1)の駆動力により駆動されて前記冷却媒体を循環させる主ポンプ(33)と、前記冷却装置(30)に設けられ、前記内燃機関(1)が停止されているときに、前記内燃機関(1)の駆動力によらず電力により駆動されて前記冷却媒体を循環させる補助ポンプ(34)と、を備える排気浄化装置(10)の制御方法であって、前記内燃機関(1)が始動されるときに、当該内燃機関(1)が始動される旨を特定可能な始動関連情報を取得する取得ステップと、前記補助ポンプ(34)が作動可能な状態であるか否かを診断する作動診断の制御を実行する実行ステップと、を備え前記制御装置(40)は、前記実行ステップにおいて、前記取得ステップにより前記始動関連情報が取得された場合に、前記補助ポンプ(34)を少なくとも所定期間にわたりテスト駆動させる制御を実行しつつ、前記作動診断の制御を実行する構成である。
【0009】
このような構成によれば、排気浄化装置(10)の制御方法では、取得ステップにおい始動関連情報が取得された場合、すなわち内燃機関(1)が始動される場合に、実行ステップにおいて補助ポンプ(34)のテスト駆動の制御を実行しつつ当該補助ポンプ(34)の作動診断の制御を実行するので、内燃機関(1)が停止されて主ポンプ(33)の駆動が停止された以降において冷却媒体を循環させるために補助ポンプ(34)を作動させる以前に、当該補助ポンプ(34)が作動可能な状態か否かを診断することができる。
【0010】
尚、本発明は、本発明の請求項に記載された発明特定事項のみを有するものであって良いし、本発明の請求項に記載された発明特定事項とともに該発明特定事項以外の構成を有するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る排気浄化装置について説明するための図である。
【
図2】補助ポンプの作動診断について説明するための図である。
【
図3】排気浄化装置の制御方法について説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る排気浄化装置及び排気浄化装置の制御方法の実施形態の例について図面を用いて説明する。尚、以下で説明する実施形態の構成、動作等は、一例であり、本発明は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、以下では、同一の又は類似する説明を、適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付することを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、図示を適宜簡略化又は省略している。
【0013】
本実施形態に係る排気浄化装置は、内燃機関(例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等)の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化する尿素SCRシステムとして適用することができる。本実施形態では、内燃機関として車両用のディーゼルエンジンを例に説明するが、本発明が特にこれに限定されるものではなく、例えば、建設機械や発電機等に用いられる内燃機関の排気浄化装置として適用することができる。
【0014】
<実施形態>
[内燃機関の排気系について]
本実施形態に係る内燃機関1の排気系について、
図1に基づいて説明する。本実施形態に係る内燃機関1は、車両に搭載されるディーゼルエンジンである。
【0015】
図1に示すように、内燃機関1の排気系には、排気管2が接続されており、当該排気管2内には、内燃機関1でのポスト噴射等によって当該排気管2内に供給された未燃燃料を酸化反応させて酸化熱を発生させる酸化触媒3が設けられている。酸化触媒3は、公知のもの、例えば、アルミナに白金を担持させたものに所定量のセリウム等の希土類元素を添加したもの等を用いることができる。
【0016】
酸化触媒3の下流側には、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ4(以下、DPF:Diesel particulate filterと呼ぶ場合がある)が設けられている。DPF4に流入する排気ガスは、当該DPF4の上流側において酸化触媒により発生される酸化熱により昇温されて、DPF4を加熱することができるようになっている。DPF4は、公知のもの、例えば、セラミック材料から構成されたハニカム構造のフィルタ等を用いることができる。
【0017】
DPF4の下流側には、排気管2内に還元剤を添加する還元剤添加弁11、アンモニア(NH3)を吸着して排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を選択的に浄化する排気浄化触媒12(以下、SCR触媒:Selective Catalytic Reduction Catalystと呼ぶ場合がある。)が設けられている。SCR触媒12よりも上流側にDPF4が設けられていることにより、SCR触媒12にPMが付着するおそれがないようになっている。SCR触媒12は、例えば、NH3の吸着機能を有し、かつ、NOXを選択的に還元可能なゼオライト系の還元触媒を用いることができる。
【0018】
また、排気管2内には、DPF4と還元剤添加弁11との間の排気ガス中のNOx濃度を検出するNOx濃度センサ13、還元剤添加弁11とSCR触媒12との間の排気ガスの温度を検出する温度センサ14、SCR触媒12の下流側の排気ガスの温度を検出する温度センサ15、SCR触媒12の下流側の排気ガス中のNOx濃度を検出するNOx濃度センサ16が、それぞれ排気管2内の所定位置に配置されている。
【0019】
内燃機関1の制御装置5(以下、ECU:Engine Control Unitと呼ぶ場合がある。)は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサユニット等で構成される。ECU5は、DPF4に堆積したPMを強制的に燃焼させてDPF4を再生するDPF再生処理の制御を行うことが可能である。DPF再生処理として、例えば、該内燃機関1の燃料噴射弁(図示略)から排気管2内に未燃燃料を供給するポスト噴射制御等を行う。ポスト噴射制御が行われることにより、酸化触媒3に未燃燃料が供給され、当該未燃燃料の酸化反応により酸化熱が発生されて排気ガスが昇温される。そして、昇温された排気ガスによりDPF4が500℃~600℃程度に昇温され、DPF4に堆積しているPMが燃焼されるようになっている。
【0020】
酸化触媒3では、ポスト噴射制御により未燃燃料が供給された後、供給されたすべての未燃燃料が酸化反応し終えるまで酸化熱が発生し続けるので、ポスト噴射制御により供給される未燃燃料量に応じた期間にわたり排気ガスが昇温され続けることとなる。また、未燃燃料の酸化反応が終了した後も、酸化触媒3から排気ガスへの放熱等により当該酸化触媒3が所定温度に低下するまでの期間にわたり、排気ガスが昇温され続けることとなる。そして、酸化触媒3での酸化反応等により、PMを燃焼させることが可能な所定温度以上に排気ガスが昇温されている期間中は、DPF4において堆積しているPMが燃焼される際に発生する燃焼熱により、排気ガスが昇温され続けることとなる。これにより、DPF4の下流側の還元剤添加弁11は、ポスト噴射制御が行われてDPF4の再生処理が行われる場合には、該ポスト噴射制御により供給される未燃燃料量に応じた期間にわたり、DPF再生処理が行われていない期間中よりも高温の排気ガスに曝されることがある。
【0021】
尚、DPF再生処理は、上術のポスト噴射制御の例に限られず、DPF4に流入される排気ガスの温度を、DPF4に堆積したPMを燃焼させることが可能な温度(例えば、500℃~600℃程度)に昇温させることができる構成であれば良い。例えば、ポスト噴射に拠らずに酸化触媒3に未燃燃料を供給する装置を利用してDPF再生処理を行う構成でも良い。また、バーナや電熱線等の加熱装置を用いて直接DPF4を加熱することでPF再生処理を行う構成でも良い。
【0022】
[排気浄化装置について]
本実施形態に係る内燃機関1の排気浄化装置10について、
図1及び
図2に基づいて説明する。排気浄化装置10は、内燃機関1から排出される排気ガス中のNOxを浄化する装置であり、前述のSCR触媒12と還元剤を用いてNOxを浄化する尿素SCRシステムとして構成される。
【0023】
図1に示すように、排気浄化装置10は、前述のSCR触媒12、NOx濃度センサ13、16、温度センサ14、15、還元剤添加弁11を備える還元剤供給装置20、内燃機関1の冷却媒体(冷媒)を循環させて還元剤添加弁11を冷却する冷却装置30、排気浄化装置10を制御する制御装置40(以下、DCU:Dosing Control Unitと呼ぶ場合がある。)、警告灯及びスピーカ(図示略)を備え所定の報知を行う報知装置50等により構成される。
【0024】
還元剤供給装置20は、SCR触媒12の上流側の排気管2内に還元剤を添加する還元剤添加弁11と、還元剤としての尿素水溶液(尿素水)を貯蔵する貯蔵タンク21と、該貯蔵タンク21内の還元剤を還元剤添加弁11に供給するための還元剤通路22(22a~22c)と、該還元剤通路22に設けられ還元剤を圧送する圧送ポンプ23、還元剤通路22内の還元剤流路を切り換える機能を持つリバーティングバルブ24等を備える。
【0025】
還元剤通路22は、貯蔵タンク21と圧送ポンプ23とを接続する第1還元剤通路22aと、圧送ポンプ23と還元剤添加弁11とを接続する第2還元剤通路22b、第2還元剤通路22bと貯蔵タンク21とを接続する第3還元剤通路22cを含む。また、第1還元剤通路22aには、還元剤流路を、貯蔵タンク21から還元剤添加弁11へ向かう順方向と、還元剤添加弁11から貯蔵タンク21へ向かう逆方向とに相互に切り換える機能を持ったリバーティングバルブ24が設けられ、第2還元剤通路22bには、該第2還元剤通路22b内の圧力を検出する圧力センサ25が設けられ、第3還元剤通路22cには、オリフィス26が設けられている。
【0026】
還元剤添加弁11は、DCU40から出力される制御信号によって開状態(ON状態)または閉状態(OFF状態)に制御されるON‐OFF弁であり、開状態に制御されているときに、還元剤を排気管2内に噴射して添加する一方、閉状態に制御されているときに、還元剤を排気管2内に添加しないようになっている。当該還元剤添加弁11は、DCU40により例えばDUTY制御され、開状態とされる期間と閉状態とされる期間がそれぞれ所定の長さに制御されることにより、所定タイミングで所定量の還元剤を排気管2内に添加することができる。
【0027】
還元剤添加弁11を構成する電子部分や樹脂部分等は比較的熱に弱く、その耐熱温度Tlimは140℃~150℃程度である一方、内燃機関1の通常作動時における排気ガス温度は、200℃~300℃程度である。排気浄化装置10は、内燃機関1の冷却媒体を循環させて還元剤添加弁11を冷却する冷却装置30を備える。
【0028】
冷却装置30は、内燃機関1の冷媒を利用して還元剤添加弁11を冷却する装置である。
図1に示すように、冷却装置30は、ウォータージャケット31、冷媒通路32(32a~32d)、主ポンプ33、補助ポンプ34、流量制御弁35等を備える。
【0029】
ウォータージャケット31は、還元剤添加弁11において還元剤を添加するノズル部分を覆う形状に成形されており、当該ウォータージャケット31の内部に還元剤添加弁11を挿入することができるようになっている。また、ウォータージャケット31には、冷媒導入口31aと冷媒排出口31bが設けられているとともに、当該冷媒導入口31aから冷媒排出口31bに連通する冷媒通路(図示略)が形成されており、冷媒導入口31aに供給された冷媒が冷媒通路内を流れて、冷媒排出口31bから排出される。ウォータージャケット31の内部を冷媒が流れることで、当該ウォータージャケット31に挿入された還元剤添加弁11の電子部品(例えば、電磁ソレノイド等)や樹脂カバー、ノズル部分などの比較的熱に弱い部材が冷却される。
【0030】
ウォータージャケット31の冷媒導入口31a及び冷媒排出口31bはそれぞれ冷媒通路32に接続されている。冷媒通路32は、冷媒導入口31aと補助ポンプ34とを接続する第1冷媒通路32aと、補助ポンプ34と主ポンプ33とを接続する第2冷媒通路32b、主ポンプ33と冷媒排出口31bとを接続する第3冷媒通路32cと、第2冷媒通路32b及び第3冷媒通路32cにそれぞれ設けられた分岐部を流量制御弁35を介して接続する第4冷媒通路32dとを含む。第2冷媒通路32b及び第3冷媒通路32cのうち主ポンプ33の周辺部分の冷媒通路は、内燃機関1の冷却装置(例えば、ファン、ラジエター、等)により冷却されることにより、冷媒通路32内の冷媒が所定温度に冷却される。
【0031】
主ポンプ33は、内燃機関1の駆動力によって駆動されるポンプであり、内燃機関1が運転状態であるときに駆動され、内燃機関1の運転が停止されること伴って駆動が停止される。補助ポンプ34は、内燃機関1が搭載されている車両に設けられたバッテリ(図示略)等にから供給される電力により駆動される電動ポンプであり、内燃機関1の運転状態に依存せず駆動可能である。補助ポンプ34は、後述のDCU40により作動状態と停止状態に適宜制御される。主ポンプ33及び補助ポンプ34の少なくとも一方が作動状態に制御されることにより、冷媒を内燃機関1側から第1冷媒通路32a、第2冷媒通路32bを介してウォータージャケット31の冷媒導入口31aに供給し、ウォータージャケット31の冷媒排出口31bから排出される冷媒を第3冷媒通路32cを介して内燃機関1側へ戻すように循環させることができる。
【0032】
流量制御弁35は、DCU40から出力される制御信号に基づいて開状態及び閉状態に制御される開閉弁である。流量制御弁35が開状態であるときには、主ポンプ33または補助ポンプ34の少なくとも一方が駆動されることで、第4冷媒通路32dに冷媒が流れる状態となる一方、流量制御弁35が閉状態であるときには、第4冷媒通路32dに冷媒が流れない状態となる。当該流量制御弁35が開状態及び閉状態のいずれの状態であっても、主ポンプ33または補助ポンプ34が駆動されることで、冷媒通路32内の還元剤は、第1~第3冷媒通路32a~32cを通り循環される。
【0033】
尚、本実施形態に係る冷却装置30は、冷媒通路が形成されたウォータージャケット31を備え、冷媒通路を流れる冷媒により還元剤添加弁11が冷却される構成であるが、例えば、ウォータージャケット31が冷媒通路とともに放熱フィンを備え、冷媒通路を流れる冷媒による冷却効果及び放熱フィンからの放熱による冷却効果に還元剤添加弁11が冷却される構成でも良い。還元剤添加弁11が冷媒及び放熱フィンにより冷却される構成では、特に高温に曝されるノズル部分を効果的に冷却することができる。
【0034】
DCU40は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサユニット等で構成され、
図1に示すように、例えば、排気浄化装置10の制御に関する情報等を取得する取得部41と、排気浄化装置10の制御等を実行する実行部42と、実行部42での各種制御において用いられる情報を記憶する記憶部43とを備える。当該DCU40は、内燃機関1の運転を開始させるときに後述のスイッチ7が操作されたことに伴って通電が開始されて作動が開始され、当該内燃機関1の運転を停止させるときにスイッチ7が操作されたことに伴って作動が停止される。尚、DCU40の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されても良く、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等で構成されても良い。また、DCU40は、例えば、1つであっても良く、また、複数に分かれていても良い。また、本実施形態では、DCU40とECU5は、それぞれ異なる制御装置により構成されるが、DCU40とECU5とが同じ制御装置により構成されても良い。
【0035】
DCU40には、例えば、前述の排気浄化装置10が備える各種センサ(NOx濃度センサ13、16、温度センサ14、15、圧力センサ25等)、排気浄化装置10が搭載される車両のCAN6(Controller Area Network)、内燃機関1の運転を開始させるとき及び当該内燃機関1の運転を停止させるときに運転者等により操作されるスイッチ7(例えば、内燃機関1の運転を開始または運転を停止させるときに操作されるボタンスイッチ、所定キーが挿入されて回転操作されるいわゆるキースイッチ等)等が接続されており、取得部41は、各種センサにより出力される情報、CAN6上に存在する情報、スイッチ7の操作状況を示す情報等を取得すること、取得した情報を実行部42、記憶部43へ出力することができる。
【0036】
CAN6には、ECU5等が接続されており、DCU40の取得部41は、CAN6を介してECU5と通信することにより、内燃機関1の制御に関する情報等を取得することができる。内燃機関1の制御に関する情報には、例えば、燃料噴射量や噴射タイミングの情報、内燃機関1が備える各種センサ(例えば、内燃機関の回転数Neを検出する回転数センサ、車両の車速を検出する車速センサ、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ等)により検出される情報等が含まれる。
【0037】
また、DCU40には、例えば、前述の排気浄化装置10が備える各種装置(還元剤添加弁11、圧送ポンプ23、リバーティングバルブ24、補助ポンプ34、流量制御弁35等)等が接続されており、実行部42は、各種装置の動作の制御、CAN6上または記憶部43への各種情報の出力を実行することができる。実行部42は、各種装置の動作の制御として、例えば、還元剤添加弁11を開閉制御する開閉制御、還元剤添加弁11内及び還元剤通路22内に還元剤を圧送するために圧送ポンプ23を駆動させる圧送制御、冷媒通路32内の冷媒を循環させるために補助ポンプ34を駆動させる冷却制御等を行う。
【0038】
図2に示すように、DCU40の内部には、FET44(Field Effect Transistor)が設けられている。FET44のゲートGには、実行部42での制御に基づいて出力され、補助ポンプ34の駆動状態を制御するための制御信号が入力されるようになっており、制御信号の入力状況に応じてFET44のソースSとドレインDの間が通電状態または非通電状態に制御されるようになっている。FET44のソースSは、グランドGdに接続されて接地されている。FET44のドレインDは、所定電源(図示略)に接続されて、所定電圧値の参照電圧Vrが印加される。また、ドレインDは、DCU40の外部の装置が接続される端子40aに接続されている。
【0039】
端子40aには、前述の補助ポンプ34を駆動させるための電気配線(電源配線)の負極側が接続されている。当該補助ポンプ34の電気配線(電源配線)の正極側は、DCU40の外部の装置が接続される端子40bに接続されており、DCU40内部の回路を介して、排気浄化装置10が搭載される車両のバッテリ(図示略)の正極側に接続されて、当該バッテリにより所定電圧値のバッテリ電圧Vbaが印加される。
【0040】
実行部42は、FET44のゲートGに対して制御信号を出力して、FET44のソースSとドレインDの間を通電状態に制御することにより、補助ポンプ34を駆動状態に制御することができる一方、FET44のソースSとドレインDの間を非通電状態に制御することで、補助ポンプ34を停止状態に制御することができるようになっている。
【0041】
尚、本実施形態では、DCU40の端子40aに補助ポンプ34の電気配線が接続される構成であるが、補助ポンプ34は、リーレーを介して端子40aに接続される構成でも良く、リーレー等を介さずに端子40aに直接接続される構成でも良い。
【0042】
また、本実施形態では、DCU40は、内燃機関1の運転を開始させるとき及び当該内燃機関1の運転を停止させるときに運転者等により操作されるスイッチ7の出力状況に応じて始動、停止する構成、すなわち内燃機関1の始動停止のためのスイッチと共通のスイッチの出力状況に応じてDCU40が始動停止される構成であるが、DCU40は、内燃機関1の始動停止のためのスイッチとは異なる所定のスイッチ類を備え、当該スイッチ類の出力状況に基づいてDCU40への通電が開始されて作動が開始されたり、停止されたりする構成でも良い。
【0043】
[DCUの動作について]
本実施形態に係るDCU40が行う排気浄化装置10の制御について説明する。DCU40は、スイッチ7が操作されたことに伴って作動が開始されると、まず、記憶部43における所定の記憶領域を初期化して予め定められた初期値を設定する等の初期処理を実行する。そして、初期処理が完了した後に、排気浄化装置10の制御(例えば、取得部41より取得される各種情報等に基づいて所定量の還元剤を排気管2内に添加するために実行部42が還元剤添加弁11の開閉状態を制御する開閉制御、取得部41より取得される各種情報等に基づいて還元剤添加弁11内及び還元剤通路22内に還元剤を圧送するために実行部42が圧送ポンプ23の駆動状態を制御する圧送制御、取得部41より取得される各種情報等に基づいて還元剤添加弁11及び還元剤通路22の内部の還元剤を貯蔵タンク21に回収するように実行部42が圧送ポンプ23の駆動状態及びリバーティングバルブ24による還元剤流路の切り替え状態を制御する回収制御、取得部41より取得される各種情報等に基づいて冷媒通路32内を循環される冷媒の流量を調整するために実行部42が流量制御弁35の開閉状態を制御するオン-オフ制御、実行部42が補助ポンプ34を駆動制御して冷媒通路32内の内燃機関1の冷媒を循環させる冷却補助制御等)を行うことが可能である。
【0044】
開閉制御では、実行部42は、取得部41により取得される情報(例えば、NOx濃度センサ16により出力されるNOx濃度情報、内燃機関1の回転数Ne等)に基づいて、排気管2へ添加する還元剤の添加量を算出する。そして、算出された添加量に応じて還元剤添加弁11を開閉させる制御を実行する。開閉制御では、算出された添加量の還元剤を添加させるために、例えば、還元剤の添加量に応じた所定の時間間隔で還元剤添加弁11を開状態及び閉状態に制御するDUTY制御が行われることにより、所定タイミングで所定量の還元剤が添加される。開閉制御が実行されることにより、所定タイミングで所定量の還元剤が還元剤添加弁11から排気管2へ添加されて、NH3がSCR触媒12へ供給される。
【0045】
圧送制御では、実行部42は、取得部41により取得される情報(例えば、内燃機関1の運転を開始させるためにスイッチ7が操作された旨を示す情報、内燃機関1の回転数Ne等)に基づいて、内燃機関1が運転中にあるとことが特定される場合に、第2還元剤通路22b内の圧力を所定値に維持するように圧送ポンプ23を駆動させる制御を実行する。圧送制御が実行されることにより、還元剤添加弁11及び還元剤通路22の内部に還元剤が充填されて、還元剤添加弁11より還元剤を添加することが可能な状態とされる。
【0046】
回収制御では、実行部42は、取得部41により取得される情報(例えば、内燃機関1の運転を終了させるスイッチが操作された旨を示す情報や内燃機関1の回転数Ne等)に基づいて、内燃機関1の運転が停止されることが特定される場合に、圧送ポンプ23の駆動状態及びリバーティングバルブ24による還元剤流路の切り替え状態を制御して還元剤添加弁11及び還元剤通路22の内部の還元剤を貯蔵タンク21に回収させる制御を行う。回収制御が実行されることにより、還元剤添加弁11及び還元剤通路22の内部で還元剤が固化して流路が詰まってしまうこと等を防止できる。
【0047】
オン-オフ制御では、実行部42は、取得部41により取得される情報(例えば、CAN6を介して取得される外気温度等)に基づいて、貯蔵タンク21内の還元剤が凍結する虞があるか否かを判定する。例えば、CAN6を介して取得される外気温度を、予め定められた基準温度(例えば、還元剤の凝固点よりも所定値高い温度等)と比較し、貯蔵タンク21内の還元剤が凍結する虞があると判断される場合に、流量制御弁35に対して開状態に制御する制御信号を出力して、第4冷媒通路32dに冷媒が流れる状態に制御する。これにより、貯蔵タンク21内の還元剤を冷媒により加温することができ、当該貯蔵タンク21内の還元剤が凍結したり、還元剤の凍結による体積膨張に起因して還元剤添加弁11、貯蔵タンク21、還元剤通路22、主ポンプ33、補助ポンプ34等が損傷したりすることを防止する。また、オン-オフ制御では、実行部42は、取得部41により取得される情報(例えば、貯蔵タンク21の温度、貯蔵タンク21内の還元剤の温度等)に基づいて、貯蔵タンク21内の還元剤が凍結している虞があるか否かを判定する。例えば、貯蔵タンク21内の還元剤の温度を、予め定められた基準温度(例えば、還元剤の凝固点の温度等)と比較し、貯蔵タンク21内の還元剤が凍結している虞があると判断される場合に、流量制御弁35に対して開状態に制御する制御信号を出力して、第4冷媒通路32dに冷媒が流れる状態に制御する。これにより、貯蔵タンク21内の還元剤を冷媒により加温して解凍する。
【0048】
尚、流量制御弁35は、DCU40により開度が制御されることにより第4冷媒通路32dに流れる冷媒の流量を調整することが可能な流量調整弁により構成されても良い。流量制御弁35が流量調整弁である構成では、DCU40は、各種センサ等により取得される所定情報(例えば、内燃機関1の回転数Ne、温度センサ14により出力される温度情報等)に応じて、流量調整弁の開度を制御する構成とすることにより、冷媒通路32内に循環される冷媒の流量を適宜制御して、還元剤添加弁11及び当該還元剤添加弁11内の還元剤の温度を所定範囲(例えば、還元剤添加弁11の温度が耐熱温度Tlimよりも低い70℃~80℃程度)に制御して、還元剤添加弁11の温度が耐熱温度Tlimよりも高まることを防止できる。
【0049】
冷却補助制御では、後述するように、実行部42は、取得部41により取得される情報に基づいて、主ポンプ33の駆動が停止されることにより、還元剤添加弁11の温度が耐熱温度Tlimよりも高まる可能性がある場合に、補助ポンプ34を駆動させて内燃機関1の運転が停止される後も冷媒通路32内の冷媒の循環を継続させる制御や、当該補助ポンプ34が作動可能な状態であるか否かを診断する制御を実行する。
【0050】
[冷却補助処理について]
本実施形態に係るDCU40が行う冷却補助制御について、
図3に基づいて説明する。
【0051】
DCU40は、取得部41により取得される情報(例えば、スイッチ7が出力する情報)に基づいて、スイッチ7が操作されて内燃機関1の運転が開始されることが特定された以後、スイッチ7が操作されて内燃機関1の運転が停止されることが特定されるまでの期間(以下、単位期間と呼ぶ場合がある)中において、所定時間間隔(例えば、10m秒間隔等)で当該冷却補助制御を繰り返し行う。
【0052】
図3に示すように、冷却補助制御では、まず、取得部41は、補助ポンプ34が作動可能な状態であるか否かを診断する作動診断が前回行われた際の診断結果を特定可能な診断情報を取得する(S01)。診断情報は、後述するS07のステップにおいて作動診断が行われることで記憶部43に記憶されるようになっている。診断情報が記憶される記憶部43の記憶領域は、DCU40が作動している期間(スイッチ7が操作されてDCU40の作動が開始されたときから、スイッチ7が操作されてDCU40の作動が停止されるときまでの期間)にわたり診断情報の内容を保持できるようになっている。当該診断情報が記憶される記憶部43の記憶領域は、前述の初期処理によりDCU40の作動が開始されたときに初期化されて、初期値として、補助ポンプ34が作動可能な状態である旨を示す値が設定されるようになっている。尚、診断情報が記憶される記憶部43の記憶領域は、DCU40が作動していない期間において診断情報の内容を保持可能な構成(例えば、いわゆるROMなどの不揮発性の記憶手段である構成等)でも良いし、DCU40の作動停止に伴って診断情報の内容が消失される構成(例えば、いわゆるRAMなどの揮発性記憶手段である構成)でも良い。
【0053】
取得部41により診断情報が取得された後、実行部42は、当該診断情報に基づいて、前回の作動診断において補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨が診断されたか否かを判定する(S02)。そして、S02のステップにおいて、補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨の診断がされていると判定された場合(Y)には、冷却補助制御を終了させる。
【0054】
一方、S02のステップにおいて、補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨の診断がされていないと判定された場合(N)には、取得部41は、ECU5により内燃機関1の停止制御が行われるか否かを特定可能な停止関連情報(内燃機関1の運転を停止させるためにスイッチ7が操作されたことに伴い当該内燃機関1の運転を停止させる旨を特定可能な情報、内燃機関1の作動が一時的に停止される制御(例えば、いわゆるアイドリングストップ制御等)が行われる旨を特定可能な情報、内燃機関1の回転数Ne等)をCAN6上から取得し、実行部42は、当該停止関連情報に基づいて、ECU5により内燃機関1の作動を停止させる制御が行われるか否かを判定する(S04)。
【0055】
S04のステップにおいて、内燃機関1の作動を停止させる制御が行われないと判定された場合(N)(例えば、内燃機関1を作動させる作動制御が継続される場合、内燃機関1の作動が停止された状態が継続される場合等)には、取得部41は、ECU5により内燃機関1の始動制御が行われるか否かを特定可能な始動関連情報(例えば、ECU5により内燃機関1の始動制御が行われる旨を示すフラグ情報、内燃機関1の運転を開始させるためにスイッチ7が操作された旨を特定可能な情報等)をCAN6上から取得する(S05)。
【0056】
尚、S05のステップにおいて、取得部41により取得される始動関連情報は、内燃機関1の始動制御が行われるか否かを特定可能な情報であれば良く、内燃機関1の始動制御が行われるか否かを特定可能にECU5が直接的に出力する情報でも良いし、始動制御が行われるか否かを間接的に特定可能な情報(例えば、内燃機関1が始動される際に制御されるセルモータ等の各種装置を作動させる制御が行われるか否かを示す情報、当該セルモータ等の各種装置の制御信号等)でも良い。
【0057】
S05のステップにおいて取得部41により始動関連情報が取得された後、実行部42は、当該始動関連情報に基づいてECU5により内燃機関1の始動制御が行われるか否かを判定する(S06)。S06のステップにおいて内燃機関1の始動制御が行われると判定された場合(Y)は、取得部41は、スイッチ7の出力情報を取得し(S07)、実行部42は、当該出力情報等に基づいて内燃機関1の運転を開始させるためにスイッチ7が操作されたか否かを判定する(S08)。そして、S08のステップにおいて内燃機関1の運転を開始させるためにスイッチ7が操作されたことが特定される場合(Y)には、内燃機関1の運転開始に伴い内燃機関1の始動制御が行われる旨、すなわち内燃機関1の運転が開始されてから当該運転が終了されるまでの単位期間において、最初に始動制御が行われるタイミングであると判定し、予め定められた所定期間(作動診断にて診断結果が取得されるために十分な期間であり、例えば、5秒間等)にわたり補助ポンプ34を駆動させるテスト駆動制御を行う(S09)。
【0058】
テスト駆動制御では、実行部42は、所定のタイマAを初期化した後、当該タイマをカウントアップさせて所定時間を計測する制御を開始させるとともに、補助ポンプ34を駆動させるための制御信号をFET44のゲートGに対して出力する制御を開始させる。そして、実行部42は、タイマに基づいて前述の所定期間(作動診断にて診断結果が取得されるために十分な期間)が経過したことが特定されるときまで、FET44に対して制御信号を出力する制御を継続させ、当該所定期間が経過したことが特定されるときに、FET44への制御信号の出力を停止させるように制御する。このように、テスト駆動制御では、単位期間中にて最初に内燃機関1の始動制御が行われる場合に、作動診断にて診断結果が取得されるために十分な所定期間にわたり、FET44のゲートGに対して出力することにより、当該所定期間にわたり補助ポンプ34を駆動させる。
【0059】
S09のステップにおいてテスト駆動制御が開始された後、すなわち補助ポンプ34が作動されている状態で、実行部42は、作動診断を行う作動診断制御の制御を行う(S10)。また、実行部42は、S06のステップにおいて内燃機関1の始動制御が行われないと判定された場合(N)、S08のステップにおいて内燃機関1の始動制御が行われるが単位期間での最初の始動制御ではないと判定された場合(N)、すなわち補助ポンプ34が作動されていない状態でも作動診断制御の制御を行う(S10)。
【0060】
作動診断制御では、まず、実行部42は、取得部41にFET44のドレインDとソースSとの間のDS電圧Vdsを取得させる。そして、実行部42は、補助ポンプ34が駆動中であるか否かを、例えば、FET44のゲートGへの制御信号の出力状況に基づいて判定する。そして、補助ポンプ34が駆動中でない場合(例えば、前述のテスト駆動制御により補助ポンプ34が駆動される前の期間や、当該テスト駆動制御が終了した後の期間(例えば、排気浄化装置10の通常の作動期間中)等)には、DS電圧Vdsの値を予め定められた第1基準電圧値V_th1及び第2基準電圧値V_th2と比較する。
【0061】
第1基準電圧値V_th1は、端子40aに接続されている外部配線がグランドGdに短絡しているグランド短絡状態(以下、SCG状態と呼ぶ場合がある。)であるときにおけるFET44のドレインD及びソースS間での電圧降下値よりも若干高い値(例えば、2V等)に設定されている。第2基準電圧値V_th2は、前述の第1基準電圧値V_th1よりも高い値であり、かつ、端子40aに電気負荷が接続されていないオープンロード状態(例えば、電気負荷となる補助ポンプ34の電気配線が端子40aに接続されていない状態、端子40a及び補助ポンプ34の間の電気配線が断線している状態等、以下、OL状態と呼ぶ場合がある。)であるときにおけるFET44のドレインD及びソースS間での電圧降下値よりも若干低い値(例えば、前述の参照電圧Vr以下の値等)に設定されている。
【0062】
そして、実行部42は、DS電圧Vdsの値が第1基準電圧値V_th1以上であり、かつ第2基準電圧値V_th2以上である場合には、補助ポンプ34が作動可能な状態であると診断する。その後、当該状態が所定時間(例えば、500m秒)にわたり継続されたときに、当該補助ポンプ34が作動可能な状態である旨を示す診断情報(OK)を記憶部43に記憶させるとともに、当該診断情報(OK)をCAN6上へ出力する。補助ポンプ34の電気配線(電源配線)の正極側にバッテリ電圧Vbaが印加され、補助ポンプ34の電気配線(電源配線)の負極側に端子40aが接続されており、かつ補助ポンプ34の電気配線においてバッテリから端子40aまでの間に断線やグランド短絡が生じていない状態では、バッテリ電圧Vbaに応じた電圧値、すなわち第1基準電圧値V_th1及び第2基準電圧値V_th2よりも大きな電圧値がDS電圧Vdsとして取得されるので、診断結果として、補助ポンプ34が作動可能な状態である旨の判定がされるようになっている。
【0063】
一方、実行部42は、DS電圧Vdsの値が第1基準電圧値V_th1未満である場合には、SCG状態であり、補助ポンプ34が作動可能な状態でないと診断する。その後、当該状態が所定時間(例えば、500m秒)にわたり継続されたときに、当該補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨を示す診断情報(NG_SCG)を記憶部43に記憶させるとともに、当該診断情報(NG_SCG)をCAN6上へ出力する。
【0064】
DCU40の内部回路では、FET44のドレインD及び端子40aに参照電圧Vrが印加される。しかし、SCG状態が発生しているときには、参照電圧Vrの印加に伴って発生する電流は、FET44のドレインD及びソースS間にはほとんど流れず、当該FET44のドレインD及びソースS間よりも電気抵抗の低い端子40a及び外部配線を介してグランドGdへ流れることとなり、FET44のドレインD及びソースS間での電圧降下値は、微小な値(例えば、0V~2V程度)となる。よって、第1基準電圧値V_th1として、SCG状態においてFET44のドレインD及びソースS間で生じ得る電圧降下値よりも高い値を設定することで、当該第1基準電圧値V_th1を用いてSCG状態を判定することができる。
【0065】
また、実行部42は、DS電圧Vdsの値が第1基準電圧値V_th1以上であり、かつ第2基準電圧値V_th2未満である場合には、OL状態であり、補助ポンプ34が作動可能な状態でないと診断する。その後、当該状態が所定時間(例えば、500m秒)にわたり継続されたときに、当該補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨を示す診断情報(NG_OL)を記憶部43に記憶させるとともに、当該診断情報(NG_OL)をCAN6上へ出力する。
【0066】
DCU40の内部回路では、FET44のドレインD及び端子40aに参照電圧Vrが印加されるが、OL状態が発生しているときには、参照電圧Vrの印加に伴って発生する電流は、端子40a外へは流れず、FET44のドレインD及びソースS間を流れ、ソースSに接続されているグランドGdへ流れることにより、FET44のドレインD及びソースS間では、参照電圧Vrに相当する電圧降下が生じる。よって、第2基準電圧値V_th2として、OL状態においてFET44のドレインD及びソースS間で生じ得る電圧降下値、すなわち参照電圧Vrの値よりも低い値、かつ前述の第1基準電圧値V_th1よりも高い値を設定することで、当該第2基準電圧値V_th2を用いてOL状態を判定することができる。
【0067】
作動診断制御では、補助ポンプ34が駆動中である場合には、DS電圧Vdsの値を予め定められた第3基準電圧値V_th3と比較する。第3基準電圧値V_th3は、補助ポンプ34の電気配線が断線やバッテリ短絡等がなく端子40aに正常に接続されており、かつ補助ポンプ34が正常に駆動している正常状態であるときにおけるFET44のドレインD及びソースS間での電圧降下値よりも若干高い値に設定されている。
【0068】
そして、実行部42は、DS電圧Vdsの値が第3基準電圧値V_th3未満である場合には、補助ポンプ34が作動可能な状態であると診断する。その後、当該状態が所定時間(例えば、500m秒)にわたり継続されたときに、当該補助ポンプ34が作動可能な状態である旨を示す診断情報(OK)を記憶部43に記憶させるとともに、当該診断情報(OK)をCAN6上へ出力する。
【0069】
一方、DS電圧Vdsの値が第3基準電圧値V_th3以上である場合には、端子40aにバッテリ電圧Vbaが負荷を介さずに端子40aに印加されているバッテリ短絡状態(以下、SCB状態と呼ぶ場合がある。)または、何らかの原因で正常状態よりも高い異常な過電圧が端子40aに印加されている過電圧状態(OV状態と呼ぶ場合がある。)であり、補助ポンプ34が作動可能な状態でないと診断する。その後、当該状態が所定時間(例えば、500m秒)にわたり継続されたときに、当該補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨を示す診断情報(NG_SCB)を記憶部43に出力して記憶させるとともに、当該診断情報(NG_SCB)をCAN6上へ出力する。
【0070】
補助ポンプ34の電気配線が断線やバッテリ短絡等がなく端子40aに正常に接続されており、かつ補助ポンプ34が正常に駆動している正常状態であるときには、バッテリ電圧Vbaは、補助ポンプ34及びFET44のドレインD-ソースS間に、それぞれの電気抵抗値の比率に応じて分圧されて印加されるので、FET44のドレインD-ソースS間では、バッテリ電圧Vbaの値よりも低い電圧降下が生じる。一方、SCB状態が発生しているときには、FET44のドレインD-ソースS間では、バッテリ電圧Vbaが印加されることとなるので、正常状態に比較して高い電圧降下が生じることとなる。また、OV状態が発生しているときには、正常状態であるときよりも高い値の電圧がFET44のドレインD-ソースS間に印加されるので、正常状態に比較して高い電圧降下が生じることとなる。よって、第3基準電圧値V_th3として、正常状態であるときにFET44のドレインD及びソースS間で生じ得る電圧降下値よりも若干高い値を設定することで、当該第3基準電圧値V_th3を用いてSCB状態またはOV状態であることを判定することができる。
【0071】
S10のステップにおいて作動診断制御を開始させた後、実行部42は、前述のS09のステップにおいて開始されたタイマAの値に基づいて、テスト駆動制御により補助ポンプ34を駆動させる所定期間が経過したか否かを判定し(S11)、当該所定期間が経過していないと判定した場合(N)は、S09のステップに戻り、当該テスト駆動制御による補助ポンプ34の駆動制御及び動作診断の制御を継続させる一方、の当該所定期間が経過したと判定した場合(Y)は、FET44のゲートGへの制御信号の出力を停止させて補助ポンプ34の駆動を停止させるように制御するとともに、タイマAによる所定期間の計測を終了させる(S12)。
【0072】
そして、取得部41は、記憶部43に記憶されている診断情報を取得し(S13)、実行部42は、取得部41により取得された診断情報に基づいて補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨が診断されたか否かを判定する(S14)。S14のステップにおいて、補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨の診断がされていないと判定された場合(N)には、冷却補助制御を終了させる一方、補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨の診断がされている判定された場合(Y)には、補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨を報知装置50により報知させる報知制御を行う(S15)。
【0073】
報知制御では、実行部42は、補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨を報知させるための制御信号を報知装置50に対して出力する。報知装置50は、実行部42より当該制御信号を受信することで、例えば、当該報知装置50が搭載されている車両が備える所定の警告灯(図示略)を点灯状態に制御するとともに、当該車両が備える所定のスピーカ(図示略)から所定の警告音出力させる制御等を行うことにより、補助ポンプが作動可能な状態でない旨を車両の運転者等に報知する。尚、報知装置50において、補助ポンプが作動可能な状態でない旨を車両の運転者等に報知する態様は、警告灯を点灯状態に制御することのみでも良いし、スピーカから警告音出力させるのみでも良いし、警告灯やスピーカ以外の報知手段を用いて補助ポンプが作動可能な状態でない旨を報知する構成でも良い。
【0074】
実行部42は、S15のステップにより報知制御を開始させた後、冷却補助処理を終了させる。報知装置50では、DCU40からの制御信号に基づいて警告灯を点灯状態に制御した後、所定期間(例えば、車両の運転者等により警告灯が点灯状態である旨が認識されるために十分な期間、補助ポンプ34に異常がない旨が特定されるまでの期間)にわたり当該警告灯の点灯状態が継続されることが好ましい。
【0075】
前述のS04のステップにおいてCAN6上から取得される停止関連情報に基づき、ECU5により内燃機関1の作動を停止させる制御が行われると判定した場合(Y)(例えば、内燃機関1の運転を停止させるためにスイッチ7が操作されたことに伴い当該内燃機関1の運転を停止させる制御が行われる場合、内燃機関1の作動が一時的に停止される制御(例えば、いわゆるアイドリングストップ制御等)が行われる場合等)には、取得部41は、SCR触媒12の温度情報(例えば、温度センサ14、15の出力情報の遷移等に基づいて推定されるSCR触媒12の温度等)、還元剤添加弁11に関する温度情報(例えば、温度センサ14の出力情報に基づき特定される還元剤添加弁11の周囲の温度等)、CAN6上より取得される内燃機関1に関する制御情報(例えば、DPF4の再生処理が実施されているか否かを特定可能な情報、内燃機関1への燃料の噴射に関する情報、内燃機関1の作動が停止された時からの経過時間を示す情報等)等のうち少なくとも1つの情報を取得する(S16)。そして、実行部42は、取得部41により取得された情報に基づき、還元剤添加弁11に熱害(例えば、高温に曝されることにより損傷が生じること、還元剤の固化により還元剤添加弁11内の還元剤通路が詰まること等)が生じる可能性のある状況であるか否かを判定する(S17)。
【0076】
S17のステップにおいて、還元剤添加弁11に熱害が生じる可能性のある状況であると判定した場合(Y)、例えば、SCR触媒12の温度情報に基づいてSCR触媒12の温度が予め定められた所定の閾値よりも高い場合、還元剤添加弁11に関する温度情報に基づき当該還元剤添加弁11の温度が予め定められた所定の閾値よりも高い、内燃機関1に関する制御情報に基づきDPF4の再生処理が実施されており、酸化触媒3及びDPF4の下流側の還元剤添加弁11の温度が上昇する状況であることが特定される場合等には、実行部42は、補助ポンプ34を駆動させる補助ポンプ駆動制御を行う(S18)。補助ポンプ駆動制御では、実行部42はFET44のゲートGに対して補助ポンプ34を駆動させる制御信号を出力させることを継続して行う。実行部42は、当該補助ポンプ駆動制御を行うことにより、内燃機関1の作動状況にかかわらず、補助ポンプ34の駆動により内燃機関1の冷媒の循環を継続させて、還元剤添加弁11を冷却することができる。
【0077】
S18のステップにおいて補助ポンプ駆動制御が開始された後、取得部41は、SCR触媒12の温度情報、還元剤添加弁11に関する温度情報、内燃機関1に関する制御情報、等のうち少なくとも1つの情報を新たに取得する(S19)。そして、実行部42は、取得部41により取得された情報に基づき、還元剤添加弁11に熱害が生じる状況でなくなったか否かを判定し(S20)、未だ還元剤添加弁11に熱害が生じる状況であると判定した場合(N)には、S19のステップへ戻り、補助ポンプ駆動制御を継続し(S18~S20)、還元剤添加弁11に熱害が生じる状況でなくなったと判定した場合(Y)に、当該補助ポンプ駆動制御を終了させるとともに冷却補助制御を終了させる。
【0078】
[排気浄化装置の動作の作用効果について]
本実施形態に係る排気浄化装置10は、SCR触媒12の上流側の排気管2内に還元剤を添加する還元剤添加弁11を備えており、当該還元剤添加弁11は、例えば、還元剤添加弁11の上流側に配置されているDPF4を再生するDPF再生処理が内燃機関1のECU5により行われる場合に、DPF再生処理が行われていない通常時に比較して高温の排気ガスに曝されることがある。
【0079】
これに対して、排気浄化装置10は、内燃機関1の駆動力により駆動される主ポンプ33または電力により駆動される補助ポンプ34により内燃機関1の冷媒循環させることで還元剤添加弁11を冷却する冷却装置30を備える構成である。そして、当該排気浄化装置10の制御装置であるDCU40は、内燃機関1の作動されている期間においては、内燃機関1の駆動力を利用して主ポンプ33が駆動されることを利用して内燃機関1の冷媒を循環させて還元剤添加弁11を冷却する。また、内燃機関1の停止に伴って主ポンプ33の駆動が停止されるが、該内燃機関1の運転が停止後される場合であって、例えば、DPF再生処理が継続されることにより還元剤添加弁11の温度が耐熱温度Tlimよりも高まる可能性がある場合には、補助ポンプ34を電力で駆動させて作動させることにより内燃機関1の冷却水を循環させることにより、内燃機関1の運転が停止された後も還元剤添加弁11を冷却することができるようになっている。
【0080】
しかし、補助ポンプ34が作動可能な状態でない場合、例えば、補助ポンプ34の配線に断線状態(OL状態)やグランド短絡状態(SCG状態)が生じた場合や補助ポンプ34内で故障が生じてバッテリ短絡状態(SCB状態)や過電圧状態(OV状態)が発生している場合等でも、内燃機関1の停止後であって該補助ポンプ34が作動されるときまで、当該補助ポンプ34が作動可能な状態でないことが検出されず、内燃機関1の停止後において還元剤添加弁11を冷却するときに補助ポンプ34が作動せず、還元剤添加弁11が冷却されない虞がある。特に、補助ポンプ34が作動状態に制御されているときでなくては検出が困難である補助ポンプ34のバッテリ短絡状態(SCB状態)や過電圧状態(OV状態)について、補助ポンプ34が作動されるときまで検出されない虞がある。
【0081】
これに対して、本実施形態に係るDCU40は、補助ポンプ34を駆動制御して内燃機関1の冷媒を循環させる冷却補助制御を行うことが可能であり、当該冷却補助制御において、DCU40の実行部42は、取得部41により取得される始動関連情報に基づいて内燃機関1の作動を開始させる始動制御が行われると判定した場合(S06)、かつ、取得部41により取得されて出力されるスイッチ7の出力情報に基づいて、内燃機関1の運転を開始させるためにスイッチ7が操作されたことにより単位期間(内燃機関1の運転を開始させるためのスイッチ7の操作が行われた後から当該内燃機関1の運転を停止させるためのスイッチ7の操作が行われるまでの期間)において最初に始動制御が行われると判定した場合に(S08)、補助ポンプ34を駆動させるテスト駆動制御を行いつつ(S09)、補助ポンプ34が作動可能な状態であるか否かを診断する作動診断の制御を行う(S10)。これにより、単位期間の最初に始動制御が行われるときに作動診断を行うことができ、当該単位期間の終了時、すなわち内燃機関1の運転が停止されて主ポンプ33の駆動が停止された以降において補助ポンプ34を作動させる以前に、当該補助ポンプ34が作動可能な状態であるか否かを診断することができる。
【0082】
尚、本実施形態では、冷却補助制御において、実行部42は、内燃機関1の作動を開始させる始動制御が行われると判定し、かつ、単位期間において最初に始動制御が行われると判定した場合に、テスト駆動制御を行いつつ作動診断の制御を行う構成であるが、実行部42は、少なくとも内燃機関1の作動を開始させる始動制御が行われると判定した場合に、テスト駆動制御を行いつつ作動診断の制御を行う構成でも良い。このような構成では、単位期間において最初に始動制御が行われると判定される場合に限られず、内燃機関1が始動される毎にテスト駆動制御及び作動診断の制御を行うことにより、内燃機関1が停止されて主ポンプ33の駆動が停止された以降において補助ポンプ34を作動させる以前に、当該補助ポンプ34が作動可能な状態か否かを診断することができ、当該診断の頻度を高めることができる。
【0083】
また、本実施形態では、冷却補助制御において、実行部42は、単位期間において最初に始動制御が行われると判定した場合に、テスト駆動制御を行いつつ作動診断の制御を行う構成であるが、実行部42は、単位期間において最初に始動制御が行われるタイミング以外のいずれかのタイミングで、少なくとも一度、テスト駆動制御を行いつつ作動診断の制御を行う構成でも良い。このような構成でも、本実施形態に係る構成と同様に、内燃機関1の運転が停止されて主ポンプ33の駆動が停止された以降において補助ポンプ34を作動させる以前に、当該補助ポンプ34の作動診断を行うことができる。
【0084】
また、本実施形態では、冷却補助制御において、DCU40の取得部41は、スイッチ7の出力情報を取得し、実行部42は、当該出力情報に基づいて、内燃機関1の運転を開始させるためにスイッチ7が操作されたことが特定される場合に、内燃機関1の運転開始に伴い当該内燃機関1の始動制御が行われると判定する構成であるが、実行部42は、スイッチ7の出力情報以外の情報を用いて、内燃機関1の運転開始に伴い内燃機関1の始動制御が行われるか否かを判定する構成でも良く、例えば、CAN6上から取得される内燃機関1の制御に関する情報(例えば、ECU5により出力され、内燃機関1の運転開始に伴い内燃機関1の始動制御が行われる旨を特定可能な情報、ECU5により出力されるスイッチ7の出力情報等)に基づいて、内燃機関1の運転開始に伴い内燃機関1の始動制御が行われるか否かを判定する構成でも良い。
【0085】
DCU40の実行部42は、内燃機関1の作動を開始させる始動制御が行われると判定した場合(S06)、かつ、単位期間(内燃機関1の運転を開始させるためのスイッチ7の操作が行われた後から当該内燃機関1の運転を停止させるためのスイッチ7の操作が行われるまでの期間)において最初に始動制御が行われると判定した場合に(S08)、テスト駆動制御を行いつつ(S09)、作動診断の制御を行うので(S10)、当該単位期間中において主ポンプ33により冷媒の循環が開始される前であって、冷媒を循環させるための負荷が比較的大きい状態であるときに、補助ポンプ34のテスト駆動制御を行って作動診断を行うことができる。また、当該単位期間中において、例えば、アイドリングストップ制御等により内燃機関1の作動が頻繁に停止及び始動されるような場合に、当該内燃機関1が始動される毎にテスト駆動制御が行われて補助ポンプ34が作動されることを回避することができ、当該補助ポンプ34の作動頻度を低減して作動による劣化を軽減できる。
【0086】
DCU40の実行部42は、作動診断において補助ポンプ34が作動可能な状態でないと診断されたことが特定される場合に(S14)、その旨を報知装置50により報知する(S15)。これにより、補助ポンプ34が作動可能な状態でない場合に、当該補助ポンプ34が作動可能な状態となるように修理すること等を促すことができる。
【0087】
DCU40の実行部42は、作動診断の制御において診断結果として補助ポンプ34が作動可能な状態であるか否かを特定可能な診断情報をCAN6上に出力するので、当該DCU40が搭載される車両が備える各種装置(例えば、ECU5等)は、補助ポンプ34の診断結果を参照することができる。
【0088】
DCU40の実行部42は、単位期間において最初に始動制御が行われると判定した場合に、補助ポンプ34のテスト駆動制御を行いつつ作動診断の制御を行う。すなわち補助ポンプ34が駆動されている作動状態において作動診断を行うので、当該作動診断において、補助ポンプ34について駆動制御が行われているときに特定可能となる事項、例えば、補助ポンプ34でバッテリ短絡状態(SCB状態)または過電圧状態(OV状態)が生じている可能性があるか否かを特定することができる。そして、実行部42により、補助ポンプ34に関してバッテリ短絡状態(SCB状態)または過電圧状態(OV状態)等が生じている可能性が特定される場合に、補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨を診断することができる。
【0089】
DCU40の実行部42は、内燃機関1の作動を開始させる始動制御が行われないと判定した場合(S06)、内燃機関1の始動制御が単位期間における最初の始動制御でないと判定した場合に(S08)、テスト駆動制御を行わず、作動診断の制御を行う。すなわち、補助ポンプ34が駆動されていない作動状態において作動診断を行うので、当該作動診断おいて、補助ポンプ34について駆動制御が行われていないときに特定可能となる事項、例えば、補助ポンプ34に関して断線状態、オープンロード状態(OL状態)、グランド短絡状態(SCG状態)等が生じている可能性があるか否か等を特定することができる。そして、実行部42により、補助ポンプ34に関して断線状態、オープンロード状態(OL状態)、グランド短絡状態(SCG状態)等が生じている可能性が特定される場合に、補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨を診断することができる。
【0090】
DCU40の実行部42は、冷却補助制御の開始時に、前回の作動診断により設定される診断情報を参照して補助ポンプ34が作動可能な状態でないか否かを判定し(S02)、補助ポンプ34が作動可能な状態でないと判定した場合には、補助ポンプ34のテスト駆動制御(S09)及び補助ポンプ駆動制御(S19)を行わず、冷却補助制御を終了させる。これにより、実行部42は、作動診断において補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨が判定された後は(S10)、補助ポンプ34を駆動させる制御信号をFET44のゲートGに対して出力させないように制御し、補助ポンプ34への通電を制限して、補助ポンプ34が作動可能な状態でないときに当該補助ポンプ34が作動されることを防止することができる。
【0091】
尚、本実施形態では、冷却補助制御において、実行部42は、補助ポンプ34が作動可能な状態でないと判定した場合に、補助ポンプ34のテスト駆動制御(S09)及び補助ポンプ駆動制御(S19)を行わないことで、補助ポンプ34が作動可能な状態でないときに当該補助ポンプ34への通電を制限する構成であるが、例えば、DCU40や補助ポンプ34等が当該補助ポンプ34の駆動のための通電を遮断する遮断装置等を備え、作動診断により補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨の診断がされた以降は、当該遮断装置により補助ポンプ34の駆動のための通電が遮断されることで、補助ポンプ34への通電が制限される構成でも良い。このような構成では、作動診断により補助ポンプ34が作動可能な状態でない旨の診断がされた以降に、例えば、補助ポンプ34を駆動させる制御信号が誤動作等によりFET44に対して出力されるようなことが生じても、補助ポンプ34が作動されることを防止することができる。
【0092】
以上、本発明の実施形態の例を説明してきたが、本発明はこの実施形態の例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0093】
1 内燃機関
4 DPF
7 スイッチ
11 還元剤添加弁
12 SCR触媒
32 冷媒通路
33 主ポンプ
34 補助ポンプ
40 DCU
41 取得部
42 実行部
50 報知装置