(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】光束制御部材、発光装置、面光源装置および表示装置
(51)【国際特許分類】
F21V 5/00 20180101AFI20231113BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20231113BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20231113BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20231113BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20231113BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231113BHJP
【FI】
F21V5/00 510
F21S2/00 481
F21S2/00 482
F21V5/04 100
G02B5/00 Z
G02B17/08
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019217289
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】持田 俊彦
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/164790(WO,A1)
【文献】特開2015-233124(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157166(WO,A1)
【文献】特開2018-029182(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163357(WO,A1)
【文献】特開2008-305923(JP,A)
【文献】特開2014-063718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0003059(US,A1)
【文献】特開2020-064181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/00
F21V 5/04
F21S 2/00
G02B 5/00
G02B 17/08
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子から出射された光の配光を制御するための光束制御部材であって、
前記光束制御部材の裏側に前記光束制御部材の中心軸と交差するように配置されており、前記発光素子から出射された光を前記光束制御部材の内部に入射させるための入射面と、
前記光束制御部材の表側に前記中心軸と交差するように配置されており、前記入射面で入射した光を出射させるための
、滑らかに続く面である出射面と、
前記光束制御部材の裏側に前記入射面を取り囲むように配置されており、前記入射面で入射し、かつ前記出射面でフレネル反射した光を前記中心軸から離れる方向に向かって反射させるための傾斜面を有する反射部と、
を有し、
前記中心軸を含む前記光束制御部材の断面において、前記出射面のうち、前記発光素子の発光中心から出射され、前記入射面で入射し、かつ前記出射面および前記傾斜面で順次反射した光が到達する領域は、前記出射面の最大高さ位置から前記出射面の外縁へ向かう方向において、前記出射面の任意の点における接線の傾きの微分値が0になる部分、または前記微分値の正負が逆転する部分を含
み、
前記微分値が0になる部分は、前記中心軸から離れるにつれて前記光束制御部材の裏側に向かうように傾斜し、
前記微分値の正負が逆転する部分は、前記出射面の外周部に存在し、前記出射面の最大高さ位置から前記出射面の外縁へ向かう方向において1か所である、
光束制御部材。
【請求項2】
前記光束制御部材の裏側に配置されている裏面と、
前記出射面の外縁と前記裏面の外縁との間に配置され、前記中心軸から離れる方向に延在する鍔部と、
をさらに有する、請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項3】
前記光束制御部材の裏側に配置されている裏面をさらに有し、
前記出射面と前記光束制御部材の裏面とは接続している、
請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項4】
発光素子と、
前記発光素子上に配置された請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の光束制御部材と、
を有する、発光装置。
【請求項5】
前記発光素子は、天面および側面から光を出射する、請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の発光装置と、
前記発光装置から出射された光を拡散させつつ透過させる光拡散板と、
を有する、面光源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の面光源装置と、
前記面光源装置から出射された光を照射される表示部材と、
を有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から出射された光の配光を制御する光束制御部材に関する。また、本発明は、前記光束制御部材を有する発光装置、前記発光装置を有する面光源装置、および前記面光源装置を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの透過型画像表示装置では、近年、光源として複数の発光素子を有する、直下型の面光源装置が使用されている。
【0003】
たとえば、直下型の面光源装置は、基板、複数の発光素子、複数の光束制御部材(レンズ)および光拡散部材を有する。複数の発光素子は、基板上にマトリックス状に配置されている。各発光素子の上には、各発光素子から出射された光を基板の面方向に拡げる光束制御部材が配置されている。光束制御部材から出射された光は、光拡散部材(例えば光拡散板)により拡げられ、被照射部材(例えば液晶パネル)を面状に照らす。
【0004】
特許文献1に示されるような、従来の光束制御部材は、発光素子から出射された光が入射する入射面と、入射面から入射した光を外部に出射する出射面と、出射面でフレネル反射した光を反射させるための反射面とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1は特許文献1に示されるような、従来の光束制御部材30における光の制御を示す。従来の光束制御部材30では、出射面33でフレネル反射した光は反射面45で反射されて、出射面33に向かう。
図1に示されるように、反射面45で反射された光の一部は、出射面33で直上に向けて出射されるおそれがある。
【0007】
一般に、面光源装置では輝度ムラが生じることを抑制することが求められ、また、近年、面光源装置の薄型化が求められている。輝度ムラが生じることを抑制するためには、発光素子からの光を光束制御部材が広い範囲に均一に拡げるようにした方がよく、直上に向かう光が出射面で出射することを抑制することが好ましい。一方、面光源装置を薄型化するためには、光束制御部材を薄くする必要があり、光束制御部材を薄くすると発光素子からの光を広い範囲に均一に拡げるように制御することが難しくなる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、光束制御部材が薄くなることが求められたとしても、出射面でフレネル反射した光が直上に向かうことを抑制できる光束制御部材を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記の光束制御部材を有する発光装置、面光源装置および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光束制御部材は、発光素子から出射された光の配光を制御するための光束制御部材であって、前記光束制御部材の裏側に前記光束制御部材の中心軸と交差するように配置されており、前記発光素子から出射された光を前記光束制御部材の内部に入射させるための入射面と、前記光束制御部材の表側に前記中心軸と交差するように配置されており、前記入射面で入射した光を出射させるための出射面と、前記光束制御部材の裏側に前記入射面を取り囲むように配置されており、前記入射面で入射し、かつ前記出射面でフレネル反射した光を前記中心軸から離れる方向に向かって反射させるための傾斜面を有する反射部と、を有し、前記中心軸を含む前記光束制御部材の断面において、前記出射面のうち、前記発光素子の発光中心から出射され、前記入射面で入射し、かつ前記出射面および前記傾斜面で順次反射した光が到達する領域は、前記出射面の最大高さ位置から前記出射面の外縁へ向かう方向において、前記出射面の任意の点における接線の傾きの微分値が0になる部分、または前記微分値の正負が逆転する部分を含む。
【0011】
本発明に係る発光装置は、発光素子と、前記発光素子上に配置された本発明に係る光束制御部材と、を有する。
【0012】
本発明に係る面光源装置は、本発明に係る発光装置と、前記発光装置から出射された光を拡散させつつ透過させる光拡散板と、を有する。
【0013】
本発明に係る表示装置は、本発明に係る面光源装置と、前記面光源装置から出射された光を照射される表示部材と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、光束制御部材が薄くなることが求められたとしても、出射面でフレネル反射した光が直上に向かうことを抑制できる光束制御部材、ならびに前記光束制御部材を有する発光装置、面光源装置および表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、従来の従来の光束制御部材における光の制御を示す。
【
図2】
図2A,Bは、実施の形態1に係る面光源装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3A,Bは、実施の形態1に係る面光源装置の構成を示す断面図である。
【
図5】
図5A~Dは、実施の形態1に係る光束制御部材の構成を示す図である。
【
図6】
図6A~Dは、実施の形態1に係る光束制御部材において、裏側の傾斜面に複数の凸条がある場合の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る光束制御部材における出射面の形状を説明するための図である。
【
図8】
図8A~Fは、実施の形態1に係る面光源装置の1つの発光装置についての照度分布の測定結果を示す図である。
【
図9】
図9A~Dは、実施の形態2に係る光束制御部材の構成を示す図である。
【
図10】
図10A~Dは、実施の形態2に係る光束制御部材において、裏側の傾斜面に複数の凸条がある場合の構成を示す図である。
【
図11】
図11A、Bは、実施の形態2に係る光束制御部材の構成を説明するための図である。
【
図12】
図12A、Bは、実施の形態2に係る面光源装置の1つの発光装置についての照度分布の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、本発明の面光源装置の代表例として、液晶表示装置のバックライトなどに適する面光源装置について説明する。これらの面光源装置100は、面光源装置からの光を照射される表示部材(被照射部材)102(例えば液晶パネル)と組み合わせることで、表示装置100’として使用されうる(
図2B参照)。
【0017】
[実施の形態1]
(面光源装置および発光装置の構成)
図2~4は、実施の形態に係る面光源装置の構成を示す図である。
図2Aは、平面図であり、
図2Bは、正面図である。
図3Aは、
図2Bに示されるA-A線の断面図であり、
図3Bは、
図2Aに示されるB-B線の断面図である。
図4は、
図3Bの一部を拡大した部分拡大断面図である。
【0018】
図2,3に示されるように、実施の形態に係る面光源装置100は、筐体110、複数の発光装置200および光拡散部材120を有する。複数の発光装置200は、筐体110の底板112上にマトリックス状に配置されている。底板112の内面は、拡散反射面として機能する。また、筐体110の天板114には、開口部が設けられている。光拡散部材120は、この開口部を塞ぐように配置されており、発光面として機能する。発光面の大きさは、特に限定されないが、例えば約400mm×約700mmである。
【0019】
図4に示されるように、複数の発光装置200は、それぞれ基板210上に固定されている。複数の基板210は、それぞれ筐体110の底板112上の所定の位置に固定されている。複数の発光装置200は、それぞれ発光素子220および光束制御部材300を有している。
【0020】
発光素子220は、面光源装置100の光源であり、基板210上に実装されている。発光素子220は、例えば白色発光ダイオードなどの発光ダイオード(LED)である。また、発光素子220の種類は、特に制限されないが、天面および側面から光を出射する発光素子(例えば、COB型発光ダイオード)などが、本発明の実施の形態に係る発光装置において好適に用いられる。
【0021】
光束制御部材300は、発光素子220から出射された光の配光を制御する拡散レンズであり、基板210上に固定されている。光束制御部材300は、その中心軸CAが発光素子220の光軸LAに一致するように、発光素子220の上に配置されている。なお、後述する光束制御部材300の入射面320および出射面330はいずれも回転対称(本実施の形態では円対称)であり、かつこれらの回転軸は一致する。この入射面320および出射面330の回転軸を「光束制御部材の中心軸CA」という。また、「発光素子の光軸LA」とは、発光素子220からの立体的な出射光束の中心の光線を意味する。発光素子220が実装された基板210と光束制御部材300の裏面350との間には、発光素子220から発せられる熱を外部に逃がすための隙間が形成されている。
【0022】
光束制御部材300は、一体成形により形成されている。光束制御部材300の材料は、所望の波長の光を通過させ得る材料であれば特に限定されない。たとえば、光束制御部材300の材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂(EP)などの光透過性樹脂、またはガラスである。
【0023】
本実施の形態に係る面光源装置100は、光束制御部材300の構成に主たる特徴を有する。そこで、光束制御部材300については、別途詳細に説明する。
【0024】
光拡散部材120は、光拡散性を有する板状の部材であり、発光装置200からの出射光を拡散させつつ透過させる。通常、光拡散部材120は、液晶パネルなどの被照射部材とほぼ同じ大きさである。たとえば、光拡散部材120は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、スチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂(MS)などの光透過性樹脂により形成される。光拡散性を付与するため、光拡散部材120の表面に微細な凹凸が形成されているか、または光拡散部材120の内部にビーズなどの光拡散子が分散している。
【0025】
本実施の形態に係る面光源装置100では、各発光素子220から出射された光は、光束制御部材300により光拡散部材120の広範囲を照らすように拡げられる。各光束制御部材300から出射された光は、さらに光拡散部材120により拡散される。その結果、本実施の形態に係る面光源装置100は、面状の被照射部材(例えば液晶パネル)を均一に照らすことができる。
【0026】
(光束制御部材の構成)
図5A~Dは、実施の形態1に係る光束制御部材300の構成を示す図である。
図5Aは平面図であり、
図5Bは
図5AのA-A線に沿う断面図であり、
図5Cは底面図であり、
図5Dは正面図である。
図5Bでは、ハッチングを省略している。
【0027】
図5A~Dに示されるように、光束制御部材300は、凹部310、入射面320、出射面330、裏面350、反射部360および鍔部370を有する。
【0028】
凹部310は、光束制御部材300の裏側(発光素子220側)の中央部に形成されている。凹部310の内面は、入射面320として機能する。入射面320は、発光素子220(
図4参照)から出射された光の大部分を、その進行方向を制御しつつ光束制御部材300の内部に入射させる。したがって、光束制御部材300は、入射面320が発光素子220と対向するように配置される。入射面320は、光束制御部材300の中心軸CAと交わり、中心軸CAを軸として回転対称(円対称)である。凹部310の形状は、特に限定されないが、例えば半長球(楕円の長軸を回転軸として得られた回転楕円体を短軸に沿って2つに分割した形状)である。
【0029】
出射面330は、光束制御部材300の表側(光拡散部材120側)に、鍔部370から突出するように形成され、光束制御部材300の中心軸と交差するように配置される。出射面330は、光束制御部材300内に入射した光を、進行方向を制御しつつ外部に出射させる。出射面330は、中心軸CAを軸として回転対称(円対称)である。
【0030】
本実施の形態では、出射面330は、光束制御部材300の表側において、中心軸CAを中心とする所定範囲(中心軸CAの近傍)に配置された第1出射面330aと、第1出射面330aを取り囲むように配置された第2出射面330bと、第2出射面330bを取り囲むように配置された第3出射面330cとを有する(
図5B参照)。本実施の形態では、第1出射面330aは、光拡散部材120に対して凹形状の滑らかな曲面であり、第2出射面330bは、光拡散部材120に対して凸形状の滑らかな曲面であるが、第1出射面330aおよび第2出射面330bの形状はこれに限定されない。本実施の形態では、第3出射面330cは、出射面330の外周部に位置し、第2出射面330bと鍔部370の天面とを滑らかに接続している。第3出射面330cの形状については、この後別途説明する。
【0031】
裏面350は、光束制御部材300の裏側に配置され、凹部310の開口縁部から径方向(中心軸CAに垂直な方向)に延在する平面である。裏面350は、発光素子220から出射された光のうち、入射面320から入射しなかった光を、光束制御部材300内に入射させる。
【0032】
反射部360は、光束制御部材300の裏側において、入射面320(凹部310)を取り囲むように配置され、発光素子220から出射され、出射面330でフレネル反射した光を反射させるための傾斜面364を有する(
図5B参照)。本実施の形態では、反射部360は、円環状の溝として形成されており、中心軸CAを含む断面における断面形状は略V字状である(
図5B参照)。V字を形成する2つの面のうち内側の面は、中心軸CAと略平行であるのに対し、外側の面は、中心軸CAに対し所定の角度(例えば30°)で傾いている傾斜面364である。反射部360の傾斜面364は、入射面320で入射し、かつ出射面330でフレネル反射した光を中心軸CAから離れる方向に向かって反射させる。したがって、傾斜面364は、中心軸CAに向かうにつれて表側に向かうように傾斜している。
【0033】
反射部360の位置は、特に限定されないが、発光素子220の発光中心から出射され、入射面310で入射し、かつ出射面330(主として第1出射面330aおよび第2出射面330b)でフレネル反射した光が多く到達する領域であることが好ましい。反射部360は、光束制御部材300において、光束制御部材300で最も高い部分より外側(中心軸CAから離れた位置)に配置されることが好ましい。
【0034】
出射面330から到達した光の反射率を向上させる観点から、上述した傾斜面364には、複数の凸条390(全反射プリズム)が形成されていてもよい。
図6A~Dは、複数の凸条390を有する第1変形例に係る光束制御部材400の構成を示す図である。
図6Aは平面図であり、
図6Bは
図6AのA-A線に沿う断面図であり、
図6Cは底面図であり、
図6Dは正面図である。
図6Bでも、ハッチングを省略している。なお、第1変形例において、実施の形態1と同様の構成については同様の符号を付してその説明を省略する。
【0035】
複数の凸条390は、底面視したときに、光束制御部材400の中心軸CAに対して放射状(回転対称)に配置されている。
図6Cに示されるように各凸条390は、平面状の第1傾斜面391と、平面状の第2傾斜面392と、第1傾斜面391と第2傾斜面392との交線である稜線393とを有しており、全反射プリズムのように機能する。
図6Bに示されるように、凸条390の稜線393を含む仮想直線は、稜線393よりも表側(光拡散部材120側)の位置で中心軸CAと交わる。すなわち、各凸条390は、裏側(発光素子220側)よりも表側(光拡散部材120側)の方が中心軸CAに近づくように、中心軸CAに対し所定の角度(例えば30°)で傾いている。反射部360に到達した光は、いずれかの凸条390の2つの面(第1傾斜面391および第2傾斜面392)で順次反射して、出射面330(主として第3出射面330c)に向かう光となる。
【0036】
鍔部370は、出射面330(第3出射面330c)の外縁と裏面350の外縁との間に配置され、中心軸CAから離れる方向に延在する。370の形状は、略円環状である。鍔部370を設けることで、光束制御部材300の取り扱いおよび位置合わせが容易になる。鍔部370の厚みは、特に限定されず、出射面330の必要面積や鍔部370の成形性などを考慮して決定される。
【0037】
光束制御部材300は複数の脚部380を有していてもよい(
図4参照)。複数の脚部380は、裏面350から突出している略円柱状の部材である。複数の脚部380は、発光素子220に対して適切な位置に光束制御部材300を支持する。
【0038】
ここで、出射面330の外周部に配置された第3出射面330cの形状について説明する。第3出射面330cは、中心軸CAを含む光束制御部材300の断面(
図5B、
図6B参照)において、発光素子220の発光中心から出射され、入射面320で入射し、かつ出射面330および傾斜面364で順次反射した光が到達する領域に配置されている。第3出射面330cは、傾斜面364から到達した光が光束制御部材300の直上に向かわないように構成されている。具体的には、中心軸CAを含む光束制御部材300の断面(
図5B、
図6B参照)において、第3出射面330cは、出射面330の最大高さ位置から出射面330の外縁へ向かう方向において、出射面330の任意の点における接線の傾きの微分値が0になる部分、または前記微分値の正負が逆転する部分を含む。
【0039】
図7は、上記の出射面330の断面形状を説明するための図である。
図7に示されるように、出射面330でフレネル反射した光は、反射部360の傾斜面364で反射し、出射面330(第3出射面330c)に到達する。ここで、
図7に示されるように、出射面330の上方領域(第2出射面330bおよび第3出射面330cの上部)では、出射面330の最大高さ位置から出射面330の外縁へ向かうにつれて、出射面330の接線の傾きは、徐々に大きくなる。すなわち、この領域では接線の傾きの微分値は正である。
【0040】
一方、
図7に示されるように、出射面330の下方領域(第3出射面330cの下部)では、出射面330の最大高さ位置から出射面330の外縁へ向かうにつれて、出射面330の接線の傾きは、徐々に小さくなる。すなわち、この領域では接線の傾きの微分値は負である。このように、傾斜面364で反射した光が到達する出射面330において、出射面330の最大高さ位置から出射面330の外縁へ向かう方向において、出射面330の任意の点における接線の傾きの微分値の正負が逆転する領域が存在する。出射面330が接線の傾きの微分値の正負が逆転する領域(第3出射面330c)を含むことによって、
図7に示されるように、反射部360の傾斜面364から出射面330(第3出射面330c)に到達した光は、水平に近い方向に出射される。なお、
図7では光束制御部材300の断面図の左側の部分について説明したが、右側の部分では上記の正負が入れかわることになる。しかしながら、断面図の右側においても、出射面330(第3出射面330c)が接線の傾きの微分値の正負が逆転する領域を含むことは同様である。
【0041】
また、上記では接線の傾きの微分値の正負が逆転する場合を説明したが、出射面330は、接線の傾きの微分値が0になる領域を含んでもよい。この接線の傾きの微分値が0になる領域とは、接線の傾きが変化しないということであり、出射面330の断面形状が直線になっている領域を有することを意味する。
【0042】
(面光源装置における照度分布)
図5に示される、実施の形態1に係る光束制御部材300を有する発光装置について光拡散部材120上の照度分布を測定した。また、比較のため、
図1に示される従来の光束制御部材30(接線の傾きの微分値の正負が逆転する領域を含む第3出射面を含まない)を有する発光装置についても光拡散部材120上の照度分布を測定した。
【0043】
今回の測定では、以下のようにパラメーターを設定した。
(パラメーター)
・発光素子220の発光面の1辺の長さ:約0.9mm(対角線の長さ:約1.3mm)
・光束制御部材300の外径:φ13mm
・入射面320となる凹部310の開口径:φ4mm
・光束制御部材300と光拡散部材120の間隔(光学距離OD):約3.6mm
【0044】
図8A~Fは測定結果を示す。横軸は光束制御部材の中心軸CA(光軸LA)からの距離を示し、縦軸は照度を示している。
図8Aは、上記の条件下における照度分布を示す。
図8Bは、
図8Aの測定結果について、距離が0mmのときの照度が1となるように正規化した結果を示す。
【0045】
図8Aから、従来の光束制御部材30と、実施の形態1に係る光束制御部材300とを比べると、実施の形態1に係る光束制御部材300の方が、光束制御部材の直上付近における照度がより低いことがわかる。また、
図8Bから、従来の光束制御部材30と、実施の形態1に係る光束制御部材300とを比べると、実施の形態1に係る光束制御部材300の方が照度の半値幅が拡がっており、光をより拡げていることがわかる。
【0046】
図8C、Dは、上記の条件下で光学距離を3.5mmに変更したときの照度分布を示し、
図8E、Fは上記の条件下で光学距離10mmに変更したときの照度分布を示す。
図8Dは、
図8Cの測定結果について、距離が0mmのときの照度が1となるように正規化した結果を示す。
図8Fも、同様に、
図8Eの測定結果について、距離が0mmのときの照度が1となるように正規化した結果を示す。
【0047】
図8Cと
図8Eとの比較から明らかなように、光学距離が3.5mmとより短い
図8Cおよび
図8Dの方が、光学距離が10mmとより長い
図8Eおよび
図8Fよりも、従来の光束制御部材30と、実施の形態1に係る光束制御部材300との結果の差が大きかった。これらのことから、本実施の形態に係る光束制御部材300は、光学距離がより短いところでより光を拡げる効果が高いことがわかった。すなわち、実施の形態1に係る光束制御部材300は、薄い面光源装置において特に有用であると考えられる。
【0048】
[実施の形態2]
(面光源装置および発光装置の構成)
実施の形態2に係る面光源装置および発光装置は、実施の形態1に係る光束制御部材300の代わりに実施の形態2に係る光束制御部材500を有する点において異なる。そこで、本実施の形態では、実施の形態2に係る光束制御部材500についてのみ説明する。
【0049】
(光束制御部材の構成)
図9A~Dは、実施の形態2に係る光束制御部材500の構成を示す図である。
図9Aは平面図であり、
図9Bは
図9AのA-A線に沿う断面図であり、
図9Cは底面図であり、
図9Dは正面図である。
図9Bでは、ハッチングを省略している。
【0050】
実施の形態2に係る光束制御部材500は、出射面330と裏面350とが接続しており、鍔部370を有さない点のみで実施の形態1に係る光束制御部材300と異なる。そこで、実施の形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。ここで、出射面と裏面とが接続するとは、出射面と裏面との間に鍔部等の他の部材を介していないことを意味する。
【0051】
なお、実施の形態2に係る光束制御部材500においても、傾斜面364には、複数の凸条390(全反射プリズム)が形成されていてもよい。
図10A~Dは、複数の凸条390を有する、実施の形態2の第1変形例に係る光束制御部材600の構成を示す図である。
図10Aは平面図であり、
図10Bは
図10AのA-A線に沿う断面図であり、
図10Cは底面図であり、
図10Dは正面図である。
図10Bでも、ハッチングを省略している。実施の形態2の第1変形例に係る光束制御部材600は、複数の凸条390を有する点のみで、実施の形態2と異なる。そこで、実施の形態2と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
(面光源装置における照度分布)
図11A、Bは、鍔部370を有する従来の光束制御部材と、鍔部370を有さない実施の形態2に係る光束制御部材500の違いを説明するための図である。
【0053】
図11Aに示されるように、従来の光束制御部材では鍔部370があるため、光が鍔部370に当たるとやや上方へ散乱気味に出射されてしまう。一方、
図11Bに示されるように、光束制御部材500では鍔部370がないため、光がまっすぐ進み、輝度ムラが生じることがより抑制されると考えられる。なお、実施の形態2に係る光束制御部材500は、天面および側面から光を出射する発光素子(例えば、COB型発光ダイオード)が、発光素子220として採用された場合に特に有用であると考えられる。
【0054】
図9に示される、実施の形態2に係る光束制御部材500を有する発光装置について照度分布を測定した。また、比較のため、従来の光束制御部材であって鍔部370を有さない光束制御部材を有する発光装置についても照度分布を測定した。
【0055】
今回の測定では、以下のようにパラメーターを設定した。
(パラメーター)
・発光素子220の発光面の1辺の長さ:約0.9mm(対角線の長さ:約1.3mm)
・光束制御部材500の外径:φ13mm
・入射面320となる凹部310の開口径:φ4mm
・光束制御部材500と光拡散部材120の間隔(光学距離OD):約3.6mm
【0056】
図12A、Bは測定結果を示す。横軸は光束制御部材の中心軸CA(光軸LA)からの距離を示し、縦軸は照度を示している。
図12Aは、上記の条件下における照度分布を示す。
図12Bは、
図12Aの測定結果について、距離0mmのときの照度が1となるように正規化した結果を示す。
【0057】
図12Aから、従来の光束制御部材30と、実施の形態2に係る光束制御部材500とを比べると、実施の形態2に係る光束制御部材500の方が、光束制御部材の直上付近における照度がより低いことがわかる。また、
図12Bから、従来の光束制御部材30と、実施の形態2に係る光束制御部材500とを比べると、実施の形態2に係る光束制御部材300の方が照度の半値幅が拡がっており、光をより拡げていることがわかる。
【0058】
また、
図12A、B(実施の形態2)と、
図8A、B(実施の形態1)とを比較すると、
図12A、Bの方が、光がより拡がっていた。これは、実施の形態2に係る光束制御部材500では鍔部370がないため、より光が拡がるためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の光束制御部材、発光装置および面光源装置は、例えば、液晶表示装置のバックライトや一般照明などに適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 面光源装置
100’ 表示装置
102 表示部材(被照射部材)
110 筐体
112 底板
114 天板
120 光拡散部材
200 発光装置
210 基板
220 発光素子
30、300、400、500、600 光束制御部材
310 凹部
320 入射面
33、330 出射面
330a 第1出射面
330b 第2出射面
330c 第3出射面
350 裏面
360 反射部
370 鍔部
380 脚部
390 凸条
391 第1傾斜面
392 第2傾斜面
393 稜線
45、364 傾斜面
CA 中心軸
LA 光軸