(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20230101AFI20231113BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20231113BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231113BHJP
【FI】
G06Q10/10 310
G06Q50/08
G06T7/00 300F
(21)【出願番号】P 2019230409
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】金児 裕美
(72)【発明者】
【氏名】平尾 明子
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-207105(JP,A)
【文献】特開2007-094962(JP,A)
【文献】特開2019-016098(JP,A)
【文献】特開2003-090130(JP,A)
【文献】特開2019-148946(JP,A)
【文献】特開2009-210403(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0325089(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0155058(US,A1)
【文献】特開2004-005237(JP,A)
【文献】特開2018-049421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象に対する作業の進捗を表す情報を提示する情報処理装置であって、
前記作業対象を含む現実空間を撮影した画像データをもとに生成された、第1の撮影日時に対応する前記現実空間を表す第1の画像を取得する、第1の画像取得部と、
前記作業対象に対する前記作業の進捗の基準となる、前記現実空間を表す第2の画像を取得する、第2の画像取得部と、
前記第1の画像と前記第2の画像とを対比することによって、前記第1の撮影日時における前記作業の進捗率を求める評価部と、
前記進捗率を表す情報を生成し出力する出力部と
、
を具備
し、
前記評価部は、前記第1の画像に含まれる、エッジと面で構成される複数の第1の物体と、前記複数の第1の物体の各々に対応する、前記第2の画像に含まれる、エッジと面で構成される複数の第2の物体とを識別し、前記複数の第1の物体と前記複数の第2の物体の対応するもの同士を対比することによって前記各物体間の類似度を算出し、物体の種類毎にあらかじめ設定された重みを用いて前記各物体間の類似度の加重平均を算出することによって前記作業の進捗率を求める情報処理装置。
【請求項2】
前記物体の種類毎にあらかじめ設定された重みを記憶した評価テーブルを更に具備し、
前記評価部は、前記各物体間の類似度の加重平均を算出するのに用いる前記重みを決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記第1の画像および前記第2の画像からそれぞれ特徴を抽出し、抽出された前記各特徴を対比することによって前記第1の
物体と前記第2の
物体との類似度を算出し、算出された前記類似度に基づいて前記作業の進捗率を求める、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記類似度が所定のしきい値を下回る場合に、前記第1の画像および前記第2の画像のうちの少なくとも一方において前記第1または第2の物体を強調表示させるための情報を生成し出力する、請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第2の画像が、前記第1の撮影日時における、仮想空間内の前記作業対象に対する予想進捗を表す画像である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1の画像が、前記画像データをもとに作成された、前記現実空間を2次元的または3次元的に表す画像であり、
前記第2の画像が、前記画像データをもとに作成された、前記第1の撮影日時とは異なる第2の撮影日時に対応する前記現実空間を2次元的または3次元的に表す画像である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第2の画像が、前記作業が完了した状態に対応する、仮想空間内の前記作業対象を表す画像である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
作業対象に対する作業の進捗を表す情報を提示する情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記作業対象を含む現実空間を撮影した画像データをもとに生成された、第1の撮影日時に対応する前記現実空間を表す第1の画像を取得する過程と、
前記作業対象に対する前記作業の進捗の基準となる、前記現実空間を表す第2の画像を取得する過程と、
前記第1の画像と前記第2の画像とを対比することによって、前記第1の撮影日時における前記作業の進捗率を求める過程と、
前記進捗率を表す情報を生成し出力する過程と
、
を具備
し、
前記進捗率を求める過程は、前記第1の画像に含まれる、エッジと面で構成される複数の第1の物体と、前記複数の第1の物体の各々に対応する、前記第2の画像に含まれる、エッジと面で構成される複数の第2の物体とを識別し、前記複数の第1の物体と前記複数の第2の物体の対応するもの同士を対比することによって前記各物体間の類似度を算出し、物体の種類毎にあらかじめ設定された重みを用いて前記各物体間の類似度の加重平均を算出することによって前記作業の進捗率を求める情報処理方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項
7の何れか一項に記載の情報処理装置の各部による処理をプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一態様は、作業対象に対する作業の進捗を表す情報を提示する情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場や建築現場では、作業の進捗を管理するために、現場の写真や動画を撮影することが一般的に行われている。管理者は、例えば、目視で写真や動画を見て作業の進捗を評価する。
【0003】
ここで、建築現場で撮影された画像を、進行管理やトラブル処理等のため、専用のホームページに送信して管理する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、建築現場や不動産物件等において360°カメラで施工記録の写真を撮影することも知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】株式会社レゴリス、“「RICOH THETA(リコーシータ)」と連携、施工記録を360°写真で/「国交省営繕工事電子納品対応」をリリース”、[online]、2019年12月13日検索、インターネット<URL: https://spider-plus.com/news/update/231/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、管理者は、現場で撮影された画像から、経験に基づいて、頭の中で作業の進捗を評価していた。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、経験に頼ることなく簡易にかつ的確に作業の進捗を把握できるようにする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためにこの発明の第1の態様は、作業対象に対する作業の進捗を表す情報を提示する情報処理装置にあって、上記作業対象を含む現実空間を撮影した画像データをもとに生成された、第1の撮影日時に対応する上記現実空間を表す第1の画像を取得する第1の画像取得部と、上記作業対象に対する上記作業の進捗の基準となる、上記現実空間を表す第2の画像を取得する第2の画像取得部と、上記第1の画像と上記第2の画像とを対比することによって、上記第1の撮影日時における上記作業の進捗率を求める評価部と、上記進捗率を表す情報を生成し出力する出力部と、を具備し、上記評価部は、上記第1の画像に含まれる、エッジと面で構成される複数の第1の物体と、上記複数の第1の物体の各々に対応する、上記第2の画像に含まれる、エッジと面で構成される複数の第2の物体とを識別し、上記複数の第1の物体と上記複数の第2の物体の対応するもの同士を対比することによって上記各物体間の類似度を算出し、物体の種類毎にあらかじめ設定された重みを用いて上記各物体間の類似度の加重平均を算出することによって上記作業の進捗率を求めるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の第1の態様によれば、情報処理装置によって、特定の日時において現実空間を撮影した画像データをもとに生成された画像と、作業の進捗の基準となる画像とが取得され、それらを対比することによって、特定の日時における作業の進捗率が求められ、提示される。
これにより、管理者の経験に頼ることなく、作業の進捗を把握し、客観的な評価を行うことができる。
【0010】
すなわちこの発明の各態様によれば、作業の進捗を簡易にかつ的確に把握できるようにする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置を備えたシステムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置を備えたシステム全体の処理シーケンスを示す図である。
【
図5】
図5は、カメラにより現実空間を撮影するイメージを示す図である。
【
図6】
図6は、ユーザ端末に表示される場所選択画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、ユーザ端末に表示される日時選択画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、ユーザ端末に表示される撮影画像表示画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、ユーザ端末に表示される対比画面の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、ユーザ端末に表示される対比画面の他の例を示す図である。
【
図11】
図11は、ユーザ端末に表示される進捗評価結果の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、進捗評価に使用されるテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[一実施形態]
(構成)
(1)システム
図1は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置1を含むシステム全体の構成を示す図である。
このシステムは、ネットワークNWを介して、情報処理装置1と、カメラCD1,CD2,...,CDm(以下、総称して「カメラCD」と言う)と、ユーザ端末UT1,UT2,...,UTn(以下、総称して「ユーザ端末UT」と言う)とを互いに通信可能に接続する。なお、情報処理装置1には、任意の数のカメラCDおよび任意の数のユーザ端末UTが接続されてよい。
【0013】
ユーザ端末UTは、例えば、ブラウザまたはそれに代わるアプリケーションを備える、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末などのクライアント端末である。ユーザ端末UTは、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等を用いた表示デバイスを備えるか、またはそのような表示デバイスと組み合わせて用いられる。一実施形態によれば、ユーザ端末UTは、例えば、建築業者、不動産販売業者、住宅事業者などによって、建築工事やリフォーム工事などの作業の進捗を管理・評価するために使用される。ユーザ端末UTはまた、作業対象である住宅の所有者などにより、作業の進捗を確認するために使用されてもよい。
【0014】
カメラCDは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の固体撮像デバイスを用いたものである。カメラCDは、作業対象を含む現実空間を撮影できるものであれば、静止画または動画撮影機能を有するデジタルカメラ、パノラマカメラ、360度カメラなど、任意のカメラであってよい。カメラCDはまた通信機能を備えるものであってもよい。一実施形態によれば、カメラCDによって撮影された静止画または動画(以下、単に「画像」と言う)は、撮影した日時を表す情報(以下、「日時情報」)および撮影した現実空間を識別する情報(以下、「場所情報」)を付加されて、画像データとして情報処理装置1に送信される。場所情報は、画像の撮影者等が手作業により付加するものであってもよいし、GPS情報などの位置情報として自動的に付加されるものであってもよい。画像データはさらに、撮影したカメラCDを識別する情報を含んでもよい。
【0015】
画像データは、カメラCDからネットワークNWを介して情報処理装置1に直接送信されてもよいし、ユーザ端末UTを経由して送信されてもよい。なお、カメラCDとユーザ端末UTは、カメラ機能を備えるスマートフォンのように一体のものであってもよい。カメラCDは、撮影のたびに画像データを送信してもよいし、画像データをカメラCDのメモリに蓄積し、一定期間または一定量ごとに送信してもよい。
【0016】
ネットワークNWは、例えば、インターネットに代表されるIP網と、このIP網に対しアクセスするための複数のアクセス網とから構成される。
【0017】
(2)情報処理装置
情報処理装置1は、例えばクラウド上に配置されたサーバ装置であり、作業対象を含む現実空間を撮影した画像データに基づいて、当該作業対象に対する作業の進捗を評価し、進捗を表す情報を出力する。一実施形態によれば、作業とは、建築工事、内装工事および設備工事など、建物に関係する作業である。ただしこれらに限定されるものではなく、情報処理装置1は、あらかじめ設定された期限やスケジュールに従って実行される、他の作業にも適用可能である。一実施形態によれば、作業対象は、建物における工事の対象であり、例えば、柱、桁、梁、天井、壁、床、電気設備、ガス管、水道管、光ファイバーケーブル、空調・給排気設備などである。しかし、やはりこれらに限定されるものではなく、情報処理装置1は、作業の対象となるあらゆるものに適用可能である。一実施形態によれば、現実空間は、これら作業対象を含む任意の空間を言う。
【0018】
一実施形態によれば、情報処理装置1は、Webサーバの機能を有し、専用のWebサイトを介して、ユーザに対し、工事の作業対象を撮影した写真や作業の進捗を表す情報の閲覧を可能にするサービスを提供する。
【0019】
(2-1)ハードウェア構成
図2は、情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
情報処理装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサ20Aを有する。そして、このハードウェアプロセッサ20Aに対し、プログラムメモリ20B、データメモリ30、および通信インタフェース(I/F)10を、バス40を介して接続したものとなっている。
【0020】
通信インタフェース10は、1つ以上の有線または無線の通信インタフェースを含む。通信インタフェース10は、ネットワークNWを介して、カメラCDおよびユーザ端末UTをはじめとする他の外部機器との間で情報の送受信を可能にする。有線インタフェースとしては、例えば有線LANが使用され、また無線インタフェースとしては、例えば無線LANやBluetooth(登録商標)などの小電力無線データ通信規格を採用したインタフェースが使用される。
【0021】
プログラムメモリ20Bは、記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM等の不揮発性メモリにより構成され、一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムを格納している。
【0022】
データメモリ30は、記憶媒体として、例えば、HDDまたはSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリにより構成され、例えば、情報処理の過程で取得および作成された各種データを記憶するために用いられる。
【0023】
(2-2)ソフトウェア構成
図3は、この発明の一実施形態に係る情報処理装置1のソフトウェア構成を、
図2に示したハードウェア構成と関連付けて示した機能ブロック図である。制御ユニット20は、上記ハードウェアプロセッサ20Aと、上記プログラムメモリ20Bとを含む。
通信インタフェース10は、外部装置から種々のデータをネットワーク経由で受信する受信部11と、外部装置へ種々のデータをネットワーク経由で送信する送信部12とを含む。例えば、受信部11は、カメラCDから画像データを受信し、これを制御ユニット20に渡す。受信部11はまた、ユーザ端末UTからユーザ要求を受信し、制御ユニット20に渡す。このユーザ要求は、例えばHTTP(Hyper Text Transport Protocol)リクエストであってよい。画像データを受信する受信部とユーザ要求を受信する受信部は別個に設けられてもよい。送信部12は、出力部として、制御ユニット20から出力される応答メッセージを受け取り、これを要求元のユーザ端末UTに送信する。この応答は、例えばHTTPレスポンスであってよい。
【0024】
データメモリ30の記憶領域には、画像データ記憶部31と、テーブル記憶部32とが設けられている。
【0025】
画像データ記憶部31は、カメラCDによって撮影された画像データまたはそれに基づいて生成された種々の画像データを記憶するために使用される。画像データは、日時情報および場所情報に紐づけて記憶される。
【0026】
テーブル記憶部32は、進捗率を求めるために用いられる評価テーブルを記憶するために使用される。
【0027】
なお、記憶部31~32は必須の構成ではなく、クラウドに配置されたデータベースサーバ等の記憶装置に設けられたものであってもよい。
【0028】
制御ユニット20は、ソフトウェアによる処理機能部として、画像処理部21と、ユーザ要求受付部22と、表示用画像取得部23と、進捗評価部24と、表示データ生成部25とを備えている。これらの処理機能部は、いずれもプログラムメモリ20Bに格納されたプログラムを、上記ハードウェアプロセッサ20Aに実行させることにより実現される。制御ユニット20は、また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(field-programmable gate array)などの集積回路を含む、他の多様な形式で実現されてもよい。
【0029】
画像処理部21は、受信部11から画像データを受け取り、それらをデータメモリ30に書き込む。一実施形態によれば、画像処理部21は、画像データから日時情報および場所情報を抽出し、所定の処理を行ってから、それらの画像データを日時情報および場所情報に紐づけて画像データ記憶部31に格納する。
【0030】
ユーザ要求受付部22は、受信部11からユーザ要求を受け取り、解析して、要求に応じた処理を行う。一実施形態によれば、ユーザ要求は、特定のWebページの閲覧に必要なデータの取得要求、特定の画像の取得要求、および作業の進捗の評価要求を含む。ユーザ要求受付部22は、ユーザ要求を受け取り、必要な識別情報を抽出して、表示用画像取得部23に渡す。
【0031】
表示用画像取得部23は、ユーザ要求受付部22から受け取った情報に基づき、必要な画像を取得または生成して、進捗評価部24または表示データ生成部25に渡す処理を行う。一実施形態によれば、表示用画像取得部23は、特定の場所および日時に対応する画像の取得要求を受け取り、画像データ記憶部31から対応する画像データを読み出して、表示データ生成部25に渡す。または、表示用画像取得部23は、作業の進捗の評価要求を受け取り、進捗を評価するために必要な画像データを画像データ記憶部31から読み出して進捗評価部24に渡す。
【0032】
進捗評価部24は、表示用画像取得部23から受け取った画像データをもとに、作業の進捗を評価し、評価結果を表示データ生成部25に渡す処理を行う。一実施形態によれば、進捗評価部24は、表示用画像取得部23から受け取った2つの画像データを対比し、それらの類似度を算出する。そして、進捗評価部24は、算出された類似度に基づき、作業の進捗を表す情報として作業の進捗率を求めて、その進捗率を含む評価結果を表示データ生成部25に渡す。進捗率は、作業の進捗の程度をパーセンテージで表すもので、すべての作業が完了した状態を基準として求められてもよいし、各評価時点において期待される作業の状態を基準として求められてもよい。
【0033】
表示データ生成部25は、表示用画像取得部23から受け取った画像データに基づき、ユーザ要求に応じた表示データを含む応答メッセージを生成して、送信部12に渡す処理を行う。表示データ生成部25はまた、進捗評価部24から評価結果を受け取り、ユーザに提示するための表示データを含む応答メッセージを生成して、送信部12に渡す処理を行う。表示データは、文字列および画像を含み得る。
【0034】
(動作)
次に、以上のように構成された情報処理装置1を含むシステム全体の動作の概要を説明する。
図4は、そのようなシステム全体の処理シーケンスの一例を示す図である。
【0035】
(1)画像の収集・蓄積
はじめに、情報処理装置1は、カメラCDから現実空間を撮影した画像データを収集し、蓄積する。なお、
図4では便宜上カメラCDを1つだけ示しているが、情報処理装置1は、複数のカメラCDから画像データを収集することができる。
【0036】
矢印C1において、カメラCDは、工事現場の作業者等の操作により、作業対象を含む現実空間を撮影し、生成した画像データを情報処理装置1に送信する。
【0037】
一実施形態によれば、カメラCDは、スマートフォンと連携して動作可能な360度カメラである。360度カメラは、例えば、前後方向に180度を超える超広角の魚眼レンズを備え、同時に前後方向の画像または映像を撮影することができる。360度カメラはまた、撮影した前後方向の画像をもとに、傾き補正、歪み補正、色補正等を含む前処理を行ったのち、いわゆる「イメージスティッチング(Image Stitching)技術」により画像をつなぎ合わせて、360度の全天球画像データを生成することができる。
【0038】
図5は、360度カメラであるカメラCDが、作業対象を含む現実空間として、建築工事中の建物内の空間TGを撮影して画像データを生成するイメージを示す。カメラCDは、空間TGの任意の位置に固定され、スマートフォンを介した遠隔操作により前後方向の画像を撮影し、その前後方向の画像を、上記イメージスティッチングによりつなぎ合わせ、360度画像データを生成する。生成された360度画像データは、その撮影日時を表す情報とともに、例えばWiFi機能によってカメラCDからスマートフォンに転送される。画像データには、スマートフォンのユーザ(例えば、上記作業者)によって撮影場所を識別する場所情報を付加される。場所情報は、例えば、住所、建物名、部屋番号、緯度経度、高さなどを含んでよい。またこれらのうちのいくつかの情報は、カメラCD自体によって自動的に画像データに付加されてもよい。画像は、特定の空間TGについて、例えば空間TGの中央付近など、一か所で撮影されてもよいし、所定の間隔ずつ移動しながら複数の位置で撮影されてもよい。
【0039】
スマートフォンは、ユーザの操作を受けて、例えば専用のWebページに画像データをアップロードすることによって、情報処理装置1に画像データを送信する。送信される各画像データは、上記のように、少なくとも場所情報および日時情報を含む。送信される画像データはまた、撮影したカメラCDまたはスマートフォンを識別する情報ならびに撮影位置に関するGPS情報を含み得る。
【0040】
情報処理装置1は、カメラCD(またはスマートフォン)から画像データを受信すると、ステップS101において、画像処理部21の制御の下、受信した画像データを場所情報および日時情報に紐づけて画像データ記憶部31に記憶させる。例えば、画像データは、場所情報として「A県A市,Xマンション,102号室」、日時情報として「2019年6月X日」に紐づけて記憶される。
【0041】
ここで、一実施形態によれば、画像処理部21は、同日に近接する撮影位置で撮影された複数の画像データから特徴を抽出し、互いに関連付けることによって、現実空間を表す仮想的な3D空間モデルを生成することもできる。画像処理部21は、360度画像データに加えて、または代わりに、生成された3D空間モデルを画像データ記憶部31に記憶させることもできる。
【0042】
このように、情報処理装置1は、カメラCDから画像データを受け取るたびに、必要な処理を行ってから画像データ記憶部31に記憶させる。なお、情報処理装置1は、受信した2次元(2D)画像(写真)データを2Dデータのまま蓄積するようにしてもよい。また、上記で説明した複数の画像をつなぎ合わせるスティッチング処理は、情報処理装置1が行うものであってもよい。
【0043】
さらに一実施形態によれば、画像データ記憶部31には、場所情報に紐づけて、建物または部屋のレイアウト(間取り)を表すレイアウトデータも記憶される。画像データは、生成された3次元(3D)空間モデルに基づき、上記レイアウトに関連付けられる。レイアウトデータは、例えば、情報処理装置1が画像データまたは3D空間モデルをもとに市販の間取り作成ソフトウェア等を用いて作成するものであってもよい。または、情報処理装置1が、画像データまたは3D空間モデルから抽出される特徴に基づき、あらかじめ記憶されたレイアウトデータに画像データを関連付けてもよい。あるいは、情報処理装置1のオペレータが、任意のタイミングで画像データ記憶部31に格納された画像データを読み出し、手動でレイアウトデータに関連付けてもよい。
【0044】
以上のような処理により情報処理装置1にすでに一定量の画像データが収集・蓄積されているという前提で、後続の動作について以下で説明する。
【0045】
(2)初期画面の提供
情報処理装置1は、ユーザ端末UTからの要求に応答して、蓄積された画像の閲覧サービスを提供することができる。画像の閲覧に使用されるユーザ端末UTは、画像データをアップロードするために使用されるユーザ端末と同じものであっても異なるものであってもよい。以下の例では、ユーザ端末UTが、例えば建築会社に設置され進捗管理者によって操作される、ディスプレイを備えるパーソナルコンピュータであり、ユーザUSは上記進捗管理者であるものとして説明する。
【0046】
ユーザUSが、例えばある作業現場について作業の進捗を確認しようとする。ユーザUSは、そのような確認の目的で、情報処理装置1が提供するWebページを閲覧するために、
図4の破線矢印U1において、パーソナルコンピュータUTを操作し、ブラウザを起動する。すると、パーソナルコンピュータUTのブラウザは、情報処理装置1に対し、当該Webページの取得要求を送信する。
【0047】
ステップS102において、情報処理装置1は、受信部11により、パーソナルコンピュータUTのブラウザからWebページの取得要求を受信する。受信部11は、ユーザ要求受付部22にこの取得要求を渡す。ユーザ要求受付部22は、取得要求から必要な情報、例えば、要求に係るWebページの情報およびパーソナルコンピュータUTのブラウザ情報を抽出し、表示用画像取得部23に渡す。表示用画像取得部23は、要求されたWebページのHTMLファイルをデータメモリ30内の記憶部(図示せず)から読み出し、表示データ生成部25に渡す。表示用画像取得部23はまた、要求されたWebページの表示に必要な画像データがあれば、データメモリ30から読み出し、表示データ生成部25に渡す。表示データ生成部25は、上記HTMLファイルを含む応答メッセージを生成して送信部12に渡す。
【0048】
ステップS103において、送信部12は、受け取った応答メッセージをパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。
【0049】
メッセージを受信したパーソナルコンピュータUTのブラウザは、D1において、受信したHTMLファイルに基づき、対応するWebページを表示する。
【0050】
図6は、情報処理装置1が提供するWebページの表示イメージの一例を示す。
図6の例では、ページ60において、ボックス61に建物の名称「Xマンション」および住所「A県A市・・・」が表示され、ボックス62にその建物の外観の写真が表示される。同様に、ボックス63には別の建物の名称「YYビル」および住所「B県B市・・・」が表示され、ボックス64にその建物の外観の写真が表示される。一実施形態によれば、ボックス62および64にはそれぞれ他のWebページへのリンクが設定されており、ユーザUSは、例えばマウス等の入力デバイスを用いてマウスポインタ80を操作し、いずれかのボックス内をクリックすることによって、閲覧を希望する建物を選択することができる。建物名のボックス61および63にリンクが設定されてもよい。またWebページを表示する際に、ユーザごとにその権限に応じて閲覧対象が制限されるようにしてもよい。なお、マウスポインタ80は例示にすぎず、ユーザ端末UTがスマートフォンであればタッチパネルを介して選択されてもよいし、マウス操作以外にも、キーボード操作、音声入力、視線入力、ジェスチャ入力など他の操作により入力されてもよい。
【0051】
(3)評価対象の選択
図4の破線矢印U2は、上記のようなユーザUSによる対象の選択操作を示す。例えば、
図6に示したように、ユーザUSがボックス62に表示された「Xマンション」を選択した場合、パーソナルコンピュータUTのブラウザは、このユーザの選択操作を受け付けて、リンク先のページを閲覧するための情報を再び情報処理装置1に要求する。
【0052】
ステップS104において、情報処理装置1は、受信部11により、パーソナルコンピュータUTのブラウザからこの取得要求を受信する。受信部11は、ユーザ要求受付部22にこの取得要求を渡す。
【0053】
次いでステップS105において、情報処理装置1は、ユーザ要求受付部22の制御の下、取得要求から必要な情報、例えば、リンク先のページの情報を抽出して表示用画像取得部23に渡す。
【0054】
ステップS106において、情報処理装置1は、表示用画像取得部23の制御の下、データメモリ30からリンク先のページのHTMLファイルおよび必要な画像データを読み出して、表示データ生成部25に渡す。一実施形態によれば、表示用画像取得部23は、必要な画像データとして、閲覧対象とする部屋番号および閲覧対象とする日時情報をユーザUSに指定させるための画像データを取得する。表示データ生成部25は、表示用画像取得部23から受け取った情報をもとに応答メッセージを生成して送信部12に渡す。
【0055】
ステップS107において、送信部12は、受け取った応答メッセージをパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。
【0056】
応答メッセージを受信したパーソナルコンピュータUTのブラウザは、D2において、受信したHTMLファイルに基づき、対応するWebページを表示する。
【0057】
図7は、そのようなWebページの表示イメージの一例を示す。
図7の例では、Webページ65において、ボックス66に表示中の建物の名称および住所「Xマンション,A県A市・・・」が表示され、選択ボックス67に閲覧可能な部屋番号「101号室,102号室,・・・」が表示される。部屋番号に限らず、フロア単位で閲覧可能としてもよい。またユーザごとに閲覧権限を設定してもよい。
【0058】
図7に示したように、ユーザUSにより閲覧対象として「102号室」が選択されると、ボックス68に、「Xマンションの102号室」について閲覧可能な画像の有無が時系列で表示される。この例では、黒塗りの下向き三角形がその日時に撮影された画像が存在することを示す。例えば、ユーザUSがマウスポインタ80をいずれかの三角形に合わせることによって、該当する日時情報がポップアップ表示され、さらに三角形をクリックすることによって当該日時を閲覧対象として選択することができる。
【0059】
より詳細には、
図7において、ユーザUSによりパーソナルコンピュータUTのブラウザを介して「102号室」が選択されると、再び
図4の矢印U2、ステップS104~ステップS107およびD2に関して説明したのと同様の処理が行われる。例えば、情報処理装置1のユーザ要求受付部22が、取得要求から場所情報「Xマンション,102号室」を抽出し、表示用画像取得部23が、画像データ記憶部31から場所情報「Xマンション,102号室」に紐づけられた閲覧可能なすべての画像の日時情報を読み出す。そして、表示データ生成部25が、この日時情報をユーザUSが時間軸上で閲覧できるような表示を生成し、送信部12を介してパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。パーソナルコンピュータUTのブラウザは、D2において
図7のボックス68に示したような時間軸表示を表示する。
【0060】
同様に、
図7のボックス68を介して、ユーザUSがさらに「6月X日」を閲覧対象として選択すると、再び
図4の矢印U2、ステップS104~ステップS107に関して説明したのと同様の処理を経て、D2において、パーソナルコンピュータUTのブラウザに「6月X日」の「Xマンション102号室」に対応する画像を含むWebページが表示される。
【0061】
図8は、そのようなWebページの表示イメージの一例を示す。
図8の例では、Webページ70において、ボックス71に閲覧中の建物の場所情報「Xマンション102号室」および住所「A県A市・・・」が表示され、ボックス72に閲覧中の画像の日時情報「2019年6月X日」が表示される。ボックス73には、当該場所情報および日時情報に対応する画像データ(以下、「撮影画像」)が表示される。撮影画像は、特定の場所および特定の日時における作業対象を含む現実空間を撮影した画像データをもとに作成された任意の画像であってよい。この例では、撮影画像は、360度画像データから任意のアングルを切り取って作成された画像である。
【0062】
またこのとき、上述のようにあらかじめ作成され記憶されたレイアウトデータに基づき、「Xマンション102号室」のレイアウト表示がされるようにしてもよい。レイアウト表示には、例えば各部屋で撮影された画像データへのリンクが設定されてもよい。
【0063】
(4)対比画像の取得・表示
次に、ユーザUSが、指定した場所および日時における作業の進捗を視覚的に知りたい場合、例えばWebページ70にGUI部品として表示された「比較」ボタン701を選択することができる。比較ボタン701には、例えば、画像を比較可能に表示するためのWebページへのリンクが設定される。
【0064】
図4の破線矢印U3は、そのようなユーザ要求がパーソナルコンピュータUTのブラウザを介して入力されたことを示す。この入力を受け取ったパーソナルコンピュータUTのブラウザは、表示中の画像に係る日時情報および場所情報とともに上記要求を情報処理装置1に送信する。
【0065】
ステップS108において、情報処理装置1は、受信部11により、パーソナルコンピュータUTからユーザ要求を受信する。
【0066】
ステップS109において、情報処理装置1は、ユーザ要求受付部22の制御の下、この要求を受け付け、必要な情報を抽出して表示用画像取得部23に渡す。一実施形態によれば、ユーザ要求受付部22は、必要な情報として、リンク先のページを指定する情報と、ユーザ要求がパーソナルコンピュータUTに入力された時点でそのブラウザに表示されていた撮影画像との対比に用いるべき画像(以下、「対比画像」)に関する情報が含まれる。対比画像は、作業対象に対する作業の進捗の基準となる画像である。例えば、対比画像は、作業対象に対する作業が完了した状態を表す画像であり、完成予想図または完成予想3Dモデルをもとに作成された画像であってよい。完成予想図は、BIM(Building Information Modeling)データまたはCAD(Computer-Aided Design)データであってもよい。
【0067】
あるいは、対比画像は、作業スケジュールをもとに作成された当該日時に対応する画像、例えば、その日時に見込まれる予想進捗を仮想空間内で表現した画像であってもよい。このような対比画像は、例えば、あらかじめBIMデータやCADデータを用いて複数の時点における作業の進捗を表す画像として作成され記憶されたものであってもよいし、作業スケジュールをもとに機械学習等により自動作成されたものであってもよい。同様に、当該日時において作業がここまで進んでいるべきだ、作業対象がこのような状態にあるべきだという進捗を表す任意の画像が用いられてよい。対比画像はまた、作業工程ごとの完成状態を表す画像であってもよい。
【0068】
あるいは、対比画像は、撮影画像と同じ現実空間(例えば、同じ建物の同じ部屋)を、撮影画像とは異なる日時に撮影した画像であってもよい。対比画像はまた、任意の撮影日時に同じ建物または類似の建物内の他の部屋を撮影した画像であってもよい。
【0069】
対比画像は、場所情報または場所情報と日時情報に紐づけて、あらかじめ画像データ記憶部31に記憶される。対比画像が完成予想図である場合、撮影画像の日時情報を問わず、特定の場所情報(例えばXマンション102号室)について1つの対比画像を記憶してもよいし、または複数の場所情報(例えばXマンション内の複数の部屋)について共通の対比画像を記憶してもよい。どのような対比画像を用いるかは、情報処理装置1の管理者等により任意に設定されてよい。以下では、対比画像として部屋ごとにコンピュータグラフィックスの完成予想図が設定されているものとする。
【0070】
表示用画像取得部23は、ユーザ要求受付部22から受け取った表示中の撮影画像の場所情報に基づき、画像データ記憶部31から対比画像としての完成予想図データを読み出す。
【0071】
ステップS110において、情報処理装置1は、リンク先のページのHTMLファイルに加えて、表示中の撮影画像と、読み出した対比画像とを含む、Webページの表示に必要な応答メッセージを生成する。
【0072】
ここで、情報処理装置1は、表示データ生成部25の制御の下、撮影画像と対比画像の3D空間におけるカメラアングルおよびカメラ位置を調整してもよい。そのような調整処理の一例として、両画像から特徴を抽出し、表示する2D画像内で特徴の角度や大きさを一致させるように調整する処理が考えられる。そのような特徴を抽出する方法の一例として、エッジや色変化を検出する方法がある。エッジや色変化の検出は、任意の方法で行われてよい。例えば、カラー画像をグレースケール画像に変換し、一定のバイアスをかけてから2値画像を得ることによって、エッジや色変化を検出することが可能である(例えば、特開2014-219781号公報参照)。
【0073】
あるいは、あらかじめ窓、壁、床、天井など対象画像内に存在し得る物体を認識できるように学習させたモデルを用いて画像内の物体認識を行い、それらの対応付けに基づいて画像処理を行うことも考えられる。あるいは、カメラCDによる撮影の際に、あらかじめ用意された対比画像に応じて撮影条件を調整するようにしてもよい。
【0074】
必要に応じて以上の調整を行ったのち、表示データ生成部25は、応答メッセージを生成して送信部12に渡す。
【0075】
ステップS111において、情報処理装置1は、送信部12は、受け取った応答メッセージをパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。
【0076】
メッセージを受信したパーソナルコンピュータUTのブラウザは、D3において、画像の埋め込まれた対応するWebページを表示する。
【0077】
図9は、そのようなWebページの表示イメージの一例を示す。ページ75には、左側に撮影画像100が、右側に対比画像200が並べて表示される。この例では、撮影画像100は、2019年6月X日に撮影された360度画像に基づいて生成された3D空間の一部を切り取った画像であり、撮影日時情報101が重ねて表示される。撮影画像100にはまた、現実空間に存在する正面の大窓102、左側の小窓103およびまだ壁クロスが貼られていない石膏ボード104が映っている。この例では、対比画像200は、撮影画像100と対比可能に大きさおよびアングルを調整された当該部屋の完成予想図に基づく画像であり、完成予想図であることを示す情報201が重ねて表示される。対比画像200にはまた、正面の大窓202および左側の小窓203も示されている。対比画像200においては、撮影画像100に映る石膏ボード104は表示されず、壁クロスが貼られている。
【0078】
撮影画像100として表示される画像は、360度カメラではない通常のカメラによって撮影された写真(2D画像)であってもよい。撮影画像100は、完成予想図に対応させるために、撮影された画像データを調整(拡大、縮小、トリミング等)することによって作成されたものであってもよい。対比画像200は、上述のように、コンピュータグラフィックスに基づく画像であってもよいし、同じ建物の他の部屋や他の類似の建物で撮影された静止画または動画に基づくものであってもよい。
【0079】
一実施形態によれば、情報処理装置1は、撮影画像100および対比画像200を、カメラのアングルを変更して再表示させることができる。例えば、
図9においてユーザUSが撮影画像100の左辺付近、例えば、小窓103のあたりをマウスポインタ80を介してクリックしたとする。この場合、パーソナルコンピュータUTのブラウザは、左方へのアングル変更の指示入力を受け付けたと判断し、左方へのアングル変更を要求する信号を生成してそれを情報処理装置1に送信する。この信号を受信した情報処理装置1は、ユーザ要求受付部22および表示用画像取得部23の制御の下、撮影画像100および対比画像200のそれぞれについて、3D空間においてカメラのアングルを90度左方向に回転させて切り取った画像を作成する処理を行う。これらの画像は、あらかじめ複数のアングルの画像として用意されたものでもよい。そして情報処理装置1は、表示データ生成部25により、作成した画像を含むメッセージを生成して再びパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。パーソナルコンピュータUTのブラウザは、受信したメッセージをもとに表示を生成する。上記処理は、例えば
図4のU3、S108~S111およびD3に関して説明したのと同様に行うことができる。
【0080】
図10は、上記アングル変更指示後にパーソナルコンピュータUTのブラウザに再表示されるイメージの一例を示す。
図10のページ75には、
図9と同様に、撮影画像100と対比画像200とが並べて表示される。撮影画像100および対比画像200は、いずれも
図9に示した3D空間に対してアングルを90度左方向に回転させて切り取った画像を表す。
図9では左方に表示されていた小窓103および203が、
図10では正面に表示される。撮影画像100にはその中央付近に壁クロス未施工の石膏ボード104が表示される。
【0081】
図10に示したWebページ75はさらに、進捗の評価を指示するためのGUI部品である「進捗評価」ボタン81を含む。ユーザUSがマウスポインタ80を介して進捗評価ボタン81をクリックすると、パーソナルコンピュータUTのブラウザから情報処理装置1に対して進捗の評価開始を要求する信号が送信される。
図4の破線矢印U4は、ユーザUSがパーソナルコンピュータUTのブラウザにこの要求を入力したことを示す。ステップS112において、情報処理装置1は、ユーザ要求受付部22の制御の下、この要求を受け付け、以下のように進捗の評価を開始する。
【0082】
(5)進捗の評価
まずステップS113において、情報処理装置1は、進捗評価部24の制御の下、進捗を評価するために用いるべき2つの画像を特定し、それらを対比する処理を行う。一実施形態によれば、進捗評価部24は、進捗評価ボタン81が押された時点でパーソナルコンピュータUTのブラウザによって表示されていた撮影画像100および対比画像200の識別情報を取得し、それらを対比の対象として特定し、対比処理を行う。
【0083】
例えば、進捗評価部24は、対比処理の一例として2つの画像の類似度を算出する。類似度の算出には、例えば、SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)、AKAZE(Accelerated-KAZE)、SURF(Speed-Up Robust Features)、ORB(Oriented BRIEF)、BRISK(Binary Robust Invariant Scalable Keypoints)等のアルゴリズムが使用される。この場合、進捗評価部24は、上記アルゴリズムを使用して2つの画像から特徴点をそれぞれ抽出し、抽出された各特徴点間の距離を求めることによって、類似度を算出する。
【0084】
進捗評価部24はまた、背景差分法を用いて2つの画像間の相違を検出することもできる。その際、上記SIFT、AKAZE、SURF、ORB、BRISK等のアルゴリズムを使用して特徴点マッチングを行ってから背景差分法を用いてもよい。これにより、例えば、
図10における撮影画像100および対比画像200の相違点として、石膏ボード104がむき出しになった壁クロス未施工箇所を容易に検出することができる。
【0085】
対比処理の別の例として以下のような各種手法も採用することができる。第1の手法は、入力画像に対して物体認識を行う学習済みのCNN(Convolutional Neural Network)の隠れ層から特徴量を抽出し、類似度を算出するものである。第2の手法は、各画像の画素値のヒストグラムを作成し、それらを対比することによって類似度を算出するものである。第3の手法は、各画素値の相関係数を得ることによって画像間の類似度を算出するものである。第4の手法は、各画素のRGB値それぞれの平均値を画像ごとに算出し、それらの距離に基づいて類似度を算出するものである。
【0086】
あるいは、進捗評価部24は、上記で説明したエッジ検出を行ってもよい。すなわち、進捗評価部24は、両画像を2値化して、エッジ検出を行い、検出されたエッジの長さ、角度、画素数等を比較することによって、類似度を算出することができる。また、あらかじめ多数の画像データを用いて類似度を出力するように学習させた学習済みモデルを用いて、類似度を算出してもよい。あるいは、各画像を複数のセグメントに分割し、分割されたセグメントごとに、上記様々な方法のいずれかを用いて類似度を算出するようにしてもよい。
【0087】
次いで、ステップS114において、情報処理装置1は、進捗評価部24の制御の下、算出された類似度に基づいて、作業の進捗を評価する処理を行う。一実施形態によれば、進捗評価部24は、算出された類似度に基づき、作業の進捗を表す情報として進捗率を求める。進捗率は任意の方法で求められてよい。例えば、進捗評価部24は、算出された類似度(例えば、パーセンテージで算出される)をそのまま進捗率の値としてもよい。あるいは、進捗評価部24は、まず天井、床、壁、窓などの物体認識を行い、認識された物体ごとに上記類似度算出方法により類似度を算出するようにしてもよい。そして、物体ごとに算出された類似度を加算平均することによって、あるいはあらかじめ設定された重み付けを用いて加重平均することによって、全体の進捗率を求めるようにしてもよい。
【0088】
ステップS115において、情報処理装置1は、表示データ生成部25の制御の下、評価結果として上記進捗率をユーザに提示するための表示データを含む応答メッセージを生成する。
【0089】
そしてステップS116において、情報処理装置1は、送信部12を介して、応答メッセージをパーソナルコンピュータUTのブラウザに送信する。
【0090】
パーソナルコンピュータUTのブラウザは、D4において、受信したメッセージに基づき、Webページを表示することができる。
【0091】
図11は、パーソナルコンピュータUTのブラウザにより表示される、評価結果を表示するイメージの一例である。ボックス82に、作業の進捗を表す情報として「進捗率は約70%です」と表示されている。
【0092】
作業の進捗を表す情報は、文字だけに限られない。例えば、特に相違する箇所(類似度が低い箇所)を強調表示するようにしてもよい。
図11の例では、特に類似度が低い箇所を示すため、撮影画像100および対比画像200上で、まだクロスが貼られていない石膏ボード104に対応する部分がそれぞれ破線105,205で囲まれて強調表示されている。これは、例えばまず物体認識を行い、認識された物体ごとに類似度を算出し、類似度を所定のしきい値と比較することにより、類似度が所定のしきい値を下回る物体を識別することによって実施される。そして、表示データ生成部25が、類似度がしきい値を下回る物体に対し、当該物体を強調表示するための表示を生成して、上記画像に重ねて表示させる。
【0093】
図12は、進捗評価部24が進捗率を求めるために使用し得る評価テーブルの一例を示す。評価テーブルは、画像データから認識可能な物体ごとにあらかじめ設定された重み係数を指定するもので、例えば情報処理装置1の管理者によりテーブル記憶部32に記憶される。進捗評価部24は、例えば、認識された物体ごとに類似度を算出し、算出した類似度にこのテーブルで指定された重みを乗じて物体ごとの進捗率を求めることができる。
図12の評価テーブルの例では、「対象」は、認識可能な物体を指し、例えば、窓、天井、床、壁・・・等が含まれる。「重み係数」は、物体(対象)ごとに重要度などを考慮してあらかじめ任意に設定され、例えば0以上1以下の値に設定される。ただしこれに限るものではなく、重み係数は1よりも大きな値でもよいし、全重み係数の和は1であってもよいし1でなくてもよい。「類似度」は上記のように進捗評価部24によって算出される物体ごとの類似度である。「進捗率」は、ここでは物体ごとの進捗率を表し、例えば「類似度」に「重み係数」を乗じることによって求められる。
図12の例では、窓について類似度が83%と算出され、窓の重み係数があらかじめ0.8と設定されているので、窓に対する作業の進捗率は83×0.8=66.4%と算出される。なお、物体ごとの進捗率は必ずしも求めなくてもよい。
【0094】
さらに、進捗評価部24は、評価テーブルを用いて全体の進捗率を求めることができる。例えば、進捗評価部24は、物体ごとに算出された類似度の加重平均として全体の進捗率を求める。
図12の例では、各物体の類似度に重み係数を乗じて物体ごとの進捗率(66.4%,94.0%,85.5%,15.0%,...)を算出し、これらの進捗率の和を重み係数の和で除算することによって((66.4+94.0+85.5+15.0+・・・)/(0.8+1+0.95+0.75+・・・))、全体の進捗率「70.2%」を得る。あるいは各物体の進捗率の和を物体の数の和で除算してもよい。あるいは単に各物体の類似度の加算平均を求めて、全体の進捗率としてもよい。さらに他のテーブルや他の数式を用いて進捗率を求めてもよい。
【0095】
(効果)
以上詳述したように、この発明の一実施形態では、作業対象に対する作業の進捗を表す情報を提示する情報処理装置にあって、上記作業対象を含む現実空間を撮影した画像データをもとに生成された、第1の撮影日時に対応する上記現実空間を表す第1の画像を取得し、上記作業対象に対する上記作業の進捗の基準となる、上記現実空間を表す第2の画像を取得し、上記第1の画像と上記第2の画像とを対比することによって、上記第1の撮影日時における上記作業の進捗率を求め、作業対象に対する作業の進捗を表す情報として上記進捗率を表す情報を出力するようにした。
【0096】
これにより、対象を撮影した画像に基づき、評価者の経験や主観に依存しない客観的な進捗評価を行うことができる。画像を撮影場所および日時情報に紐づけて蓄積しているので、ユーザが指定した場所および日時に基づいて容易に撮影画像を抽出し、その時点における作業の進捗率を求めることができる。
【0097】
また、進捗率を求めるにあたっては、上記第1の画像および上記第2の画像から特徴を抽出し、抽出した特徴を対比することによって上記第1の画像と上記第2の画像との類似度を算出し、上記類似度に基づいて上記作業の進捗率を求めることもできる。これにより、画像類似度の算出による、安定した客観的な評価結果を得ることができる。
【0098】
また、進捗率を求めるにあたっては、上記第1の画像に含まれる第1の物体と、上記第2の画像に含まれる上記第1の物体に対応する第2の物体とを識別し、上記第1の物体と上記第2の物体との類似度を算出し、算出された上記類似度に基づいて上記作業の進捗率を求めることもできる。このように、画像内の物体認識が可能な場合には、2つの画像内で認識された対比し得る物体間の類似度を算出して、算出された類似度に基づき進捗率を求める。これにより、より明確な基準を用いて進捗率を求めることが可能となる。
【0099】
また、物体認識が可能な場合、2つの画像間の類似度が所定のしきい値を下回る物体に対しては、それらを強調表示させることも可能である。これにより、ユーザに対し、類似度が低い物体を明確に提示することができ、進捗が遅れている対象の特定など、作業の進捗の評価に役立てることができる。
【0100】
また、進捗率を評価するために、撮影した画像と対比すべき画像としてBIM画像やCAD画像のような仮想空間内の画像を使用してもよい。対比画像は、完成予想図に対応するものであってもよいし、作業計画または作業スケジュールに含まれる各工程が完了した状態を表すものであってもよい。または対比画像は、特定の時点において予想される作業の進捗を表すものであってもよい。あるいは、例えば、工事開始時点や、1か月ごとに撮影された画像など、同じ現実空間を異なる日時に撮影した画像であってもよい。対比画像は、特定の場所および日時において作業の進捗がどのような状態であるべきかを表す任意の画像であってよい。撮影画像および対比画像は、2次元的表示であっても3次元的表示であってもよい。
【0101】
このように多種多様な画像を利用できるので、作業または評価の対象や内容、目的等に応じて、最適な対比画像を用いて進捗を評価することができる。また、適切な対比画像を用いて撮影画像と並べて表示することにより、作業スケジュールにおいてどのような進捗状況にあるかを視覚的により的確に確認することができる。
【0102】
[他の実施形態]
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、情報処理装置1は、必ずしも360度画像データを用いる必要はなく、また必ずしも3D空間モデルを作成する必要もない。情報処理装置1は、対比画像との対比が可能な静止画を収集することによって上記実施形態を実現することができる。
【0103】
また、進捗率の算出に上記のような評価テーブルを使用する場合、工事の内容や工法ごとに異なるテーブルを用意してもよい。あるいは、類似度を算出せず、認識可能な物体ごとに単に「作業未了/作業完了」の2択判定を行い、その判定結果に応じて進捗率を求めるようにしてもよい。
【0104】
あるいは、評価テーブルではなく回帰式を用意し、工事の内容や工法ごとに重回帰分析によってあらかじめ係数を算出して用いてもよい。例えば以下のような回帰式を使用することが考えられる。
Y=α1X1+α2X2+α3X3+・・・
式中、Yは算出される進捗率であり、X1,X2,X3,...は、各物体の画像類似度である。係数α1,α2,α3,...は、重回帰分析によってあらかじめ算出してもよいし、建材・資材メーカーや施工業者から提供される資料をもとに情報処理装置1の管理者が任意に設定してもよい。
【0105】
また
図6~
図11に示した表示イメージは一例にすぎず、多様なバリエーションが可能である。いくつかの表示を組み合わせてもよいし、いくつかの表示を省略してもよい。例えば、
図8に示したような比較ボタン701を押すことによってただちに進捗率が表示されてもよい。また、ユーザUSが指定するたびに画像を読み出して進捗率を求めるのではなく、各撮影画像についてあらかじめ完成予想図との対比により進捗率を求めておき、ユーザUSが場所と日時を指定するとあらかじめ算出された進捗率が表示されるようにしてもよい。
【0106】
上記実施形態では、情報処理装置1がいくつかの機能部を含むものとして説明したが、これらは各機能部の実装の一例に過ぎない。例えば、1つの装置に実装されると説明された複数の機能部が複数の別々の装置に亘って実装されることもあり得るし、逆に複数の別々の装置に亘って実装されると説明された機能部が1つの装置に実装されることもあり得る。また上記実施形態において説明された各機能部は、回路を用いることで実現されてもよい。回路は、特定の機能を実現する専用回路であってもよいし、プロセッサのような汎用回路であってもよい。
【0107】
また、以上で説明した各処理の流れは、説明した手順に限定されるものではなく、いくつかのステップの順序が入れ替えられてもよいし、いくつかのステップが同時並行で実施されてもよい。また、以上で説明した一連の処理は、時間的に連続して実行される必要はなく、各ステップは任意のタイミングで実行されてもよい。
【0108】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、例えば汎用のコンピュータに搭載されたプロセッサを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【0109】
要するにこの発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0110】
1…情報処理装置
10…通信インタフェース(I/F)
11…受信部
12…送信部
20…制御ユニット
20A…ハードウェアプロセッサ
20B…プログラムメモリ
21…画像処理部
22…ユーザ要求受付部
23…表示用画像取得部
24…進捗評価部
25…表示データ生成部
30…データメモリ
31…画像データ記憶部
32…テーブル記憶部
40…バス
60,65,70,75…Webページ
701…比較ボタン
80…マウスポインタ
81…進捗評価ボタン
100…撮影画像
200…対比画像
CD,CD1,CD2,CDm…カメラ
UT,UT1,UT2,UTn…ユーザ端末
TG…空間