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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】車両用内装品
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20231113BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20231113BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231113BHJP
   B60K 37/00 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B60R7/04 C
B32B3/30
B32B27/00 Z
B60K37/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019236304
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104716
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】榎園 貴史
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-151041(JP,A)
【文献】特開2013-184603(JP,A)
【文献】特開2017-071382(JP,A)
【文献】特開2010-036839(JP,A)
【文献】特開2019-209578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00- 7/14
B60K 35/00-37/06
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の基材部と、前記基材部の少なくとも一部を被覆する表皮部とを有し、前記表皮部は、前記基材部よりも軟質の合成樹脂を含む車両用内装品であって、
縫製糸により形成されるとともに前記表皮部の表面を加飾する加飾縫製部が設けられ、
前記加飾縫製部は、前記縫製糸が前記表皮部の表面から前記基材部の裏面まで貫通する部分を有し、
前記表皮部は、前記基材部を被覆する表皮本体部と、前記加飾縫製部が形成されるとともに前記縫製糸を貫通させる貫通孔部を含む加飾対象部とを有し、
前記表皮部における前記加飾対象部の厚さは、前記表皮本体部の厚さよりも小さく設定され
前記表皮部の前記表皮本体部は、気泡を有する発泡樹脂を含み、
前記表皮部の前記加飾対象部は、前記表皮本体部と同じ材質の発泡樹脂を含み、
前記加飾対象部の前記発泡樹脂は、前記表皮本体部よりも発泡倍率が低い低発泡で、又は気泡を含まない無発泡で形成されている
ことを特徴とする車両用内装品。
【請求項2】
前記基材部は、前記表皮部に対向する基材表面と、前記基材表面の反対側に配される基材裏面とを有し、
前記基材表面は、前記表皮部における前記表皮本体部の厚さと、前記加飾対象部の厚さとの違いに対応する凹凸形状を有する
請求項1記載の車両用内装品。
【請求項3】
前記基材部における前記基材表面から前記基材裏面までの厚さは、前記表皮部における前記加飾対象部の設置位置に対応して変化している請求項2記載の車両用内装品。
【請求項4】
前記基材部の前記基材裏面は、前記基材表面の前記凹凸形状に対応する凹凸形状を有する請求項2記載の車両用内装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の基材部と、基材部の少なくとも一部を被覆する表皮部とを有する車両用内装品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室には、インストルメントパネル、コンソールボックス、ドアトリムといった内装品(車両用内装品)が取り付けられている。これらの内装品は、一般的に、意匠性や質感を向上させるため、所定形状に形成された基材部が、クッション性を有する表皮部で被覆された構造を有する。
【0003】
また、このような車両用内装品においては、その意匠性若しくは装飾性を高めるために、又は、内装品に高級感を与えるために、内装品に対して縫製加工を施すことによって、その縫製加工で形成されるステッチ柄が、表皮部の表面(外面)に加飾縫製部として設けられることがある。また、例えば特開2018-47736号公報(特許文献1)には、加飾縫製部が設けられた内装品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-47736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような加飾縫製部(ステッチ柄)が設けられた従来の車両用内装品においては、表皮部の一部が、一般的に、クッション性を有する発泡樹脂により形成されている。このため、例えば図5に、従来の一般的な車両用内装品70の一例を示すように、基材部71と表皮部72とを有する内装品70に縫製加工を行って加飾縫製部(ステッチ)73を形成した場合、クッション性を有する表皮部72が軟らかいため、加飾縫製部73を形成する縫製糸74の張力等の影響により、縫製加工時に表皮部72に形成される針孔75が縫製糸74によって引っ張られる。
【0006】
その結果、図5(a)に示したように、表皮部72の針孔75の間隔D1が簡単に拡がって大きくなるため、車両用内装品70の見栄えを損なうこと、又は外観品質を低下させることがあった。更に、表皮部72の針孔75が大きくなることによって、表皮部72に表皮切れ等の損傷を生じさせる虞も考えられる。
【0007】
そこで、従来では、上述のように針孔が縫製糸によって広がることを抑制するために、例えば図6に基材部81及び表皮部82を有する別の車両用内装品80を示すように、表皮部82を形成するクッション体(発泡樹脂)86と表皮材87との間に、クッション体86の表面の硬度を高めるウレア材を塗布することによって薄い樹脂層88が設けられることがある。
【0008】
このような硬度の高い樹脂層88を形成することにより、表皮部82に加飾縫製部83が形成されても、クッション体86の表面におけるクッション性を抑えて、縫製糸84の張力等によって表皮部82に設けられた針孔85が拡がることを抑制できるため、表皮部82の針孔85の間隔D2を小さくすることが可能となる(図6を参照)。
【0009】
しかし、クッション体86の表面にウレア材を塗布して樹脂層88を形成する場合、ウレア材が必要となるため、材料コストの増大を招く。また、クッション体86の成形工程において、ウレア材を塗装する工程が増え、また、ウレア材の塗装のためにマスキング治具が必要になる。このため、内装品80の製造コストを高騰させるとともに、製造効率の低下を招く要因となっていた。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、加飾縫製部が表皮部に設けられても、外観品質の低下を抑制することが可能で、且つ、安価に且つ容易に製造することが可能な車両用内装品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明により提供される車両用内装品は、合成樹脂製の基材部と、前記基材部の少なくとも一部を被覆する表皮部とを有し、前記表皮部は、前記基材部よりも軟質の合成樹脂を含む車両用内装品であって、縫製糸により形成されるとともに前記表皮部の表面を加飾する加飾縫製部が設けられ、前記加飾縫製部は、前記縫製糸が前記表皮部の表面から前記基材部の裏面まで貫通する部分を有し、前記表皮部は、前記基材部を被覆する表皮本体部と、前記加飾縫製部が形成されるとともに前記縫製糸を貫通させる貫通孔部を含む加飾対象部とを有し、前記表皮部における前記加飾対象部の厚さは、前記表皮本体部の厚さよりも小さく設定され、前記表皮部の前記表皮本体部は、気泡を有する発泡樹脂を含み、前記表皮部の前記加飾対象部は、前記表皮本体部と同じ材質の発泡樹脂を含み、前記加飾対象部の前記発泡樹脂は、前記表皮本体部よりも発泡倍率が低い低発泡で、又は気泡を含まない無発泡で形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る車両用内装品において、前記基材部は、前記表皮部に対向する基材表面と、前記基材表面の反対側に配される基材裏面とを有し、前記基材表面は、前記表皮部における前記表皮本体部の厚さと、前記加飾対象部の厚さとの違いに対応する凹凸形状を有することが好ましい。
【0013】
この場合、前記基材部における前記基材表面から前記基材裏面までの厚さは、前記表皮部における前記加飾対象部の設置位置に対応して変化していることが好ましい。
また、前記基材部の前記基材裏面は、前記基材表面の前記凹凸形状に対応する凹凸形状を有していても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用内装品によれば、縫製糸による加飾縫製部が表皮部に設けられていても、発泡体の表面にウレア材を塗布することなく、縫製加工時に表皮部に形成される針孔(貫通孔部)を拡がり難くすることができるため、外観品質が低下することを抑制でき、且つ、安価に且つ容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る車両用内装品を模式的に示す斜視図である。
図2】(a)は、図1に示した車両用内装品の要部を示す平面図であり、(b)は、同車両用内装品の要部における加飾縫製部に沿った断面を模式的に示す断面図である。
図3図2の(a)に示したIII-III線における断面を模式的に示す断面図である。
図4】変形例に係る車両用内装品の要部における断面を模式的に示す断面図である。
図5】(a)は、従来の車両用内装品の要部を示す平面図であり、(b)は、同車両用内装品の要部における加飾縫製部に沿った断面を模式的に示す断面図である。
図6】(a)は、従来の別の車両用内装品の要部を示す平面図であり、(b)は、同車両用内装品の要部における加飾縫製部に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【0018】
図1は、本実施形態に係る車両用内装品であるコンソールボックス用のリッド部を模式的に示す斜視図である。図2の(a)は、図1に示したリッド部の要部を示す平面図であり、(b)は、リッド部の要部における加飾縫製部に沿った断面を模式的に示す断面図である。図3は、図2の(a)に示したIII-III線における断面を模式的に示す断面図である。
【0019】
本実施形態に係る車両用内装品は、図1に示すように、自動車などの車両の車室内に設けられるコンソールボックスの蓋体として用いられるリッド部1である。このリッド部1は、適切な厚さを有して形成されているとともに、上側から見た平面視において略矩形の形状を呈する。この場合、リッド部1の平面視において、リッド部1の長手方向を前後方向とし、長手方向に直交する方向を左右方向又は幅方向とする。また、リッド部1の表面(上面)及び裏面(下面)に直交する方向を上下方向とする。
【0020】
本実施形態のリッド部(車両用内装品)1は、平坦な表面(第1表面)と、上面の反対側に配される平坦な裏面(第2表面)と、左右の側端面とを有する。また、リッド部1の前端部及び後端部には、リッド部1の表面から前方及び後方に向けて下り傾斜するように配される前端面及び後端面を有する。この場合、リッド部1は、表面と裏面との間の厚さ寸法を一定の大きさにして形成されている。リッド部1の厚さ寸法は、リッド部1の表面から裏面までの上下方向における寸法を言い、また、リッド部1の肉厚と言い換えることもできる。リッド部1の表面と、左右の側端面、前端面、及び後端面との間には、湾曲面状の稜線部が設けられている。なお本発明において、リッド部1の形状及び大きさは特に限定されるものではない。
【0021】
このリッド部1の表面(上面)には、リッド部1に装飾を加えるために、縫製加工によって形成される左右の加飾縫製部5が設けられている。本実施形態の加飾縫製部5は、上糸7及び下糸8を有する縫製糸6によって(図2及び図3を参照)、リッド部1の上面における左右側縁部に、前後方向に沿って直線状に形成されている。例えば本実施形態の場合、加飾縫製部5は、ミシンを用いた縫製加工によって本縫いで形成されており、加飾縫製部5の縫製糸6(上糸7及び下糸8)は、リッド部1の上面から下面に貫通する部分を有して配置されている。
【0022】
またリッド部1には、加飾縫製部5の縫製糸6を貫通させる貫通孔部(針孔)9が、加飾縫製部5に沿って一定の間隔で形成されており、各貫通孔部9内で、縫製糸6の上糸7と下糸8とが互いに交差して絡んでいる。このように形成される加飾縫製部5は、ラインステッチと呼ばれることもある。なお本発明において、リッド部1の形状及び大きさ、並びに、加飾縫製部5の形態(デザイン)及び形成方法は特に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態のリッド部1は、図2及び図3に示すように、合成樹脂製の基材部10と、基材部10に一体的に接合されるとともに基材部10の上面12を被覆する表皮部20とを有しており、基材部10と表皮部20の2層構造で形成されている。本実施形態の場合、表皮部20は、基材部10の上面12だけでなく、基材部10における左右の側面と前後の端面も被覆している。なお本発明において、表皮部20は、基材部10の少なくとも一部を被覆していればよい。
【0024】
基材部10は、ポリプロピレン、ABS等の剛性の高い合成樹脂により形成されており、表皮部20を支持している。この基材部10は、リッド部1の裏面を形成する下面(基材裏面)11と、リッド部1の厚さ方向において下面11の反対側に配される上面(基材表面)12とを有する。基材部10の上面12は、表皮部20に対向して配されており、また、表皮部20によって覆い隠されている。基材部10の下面11は、凹凸のない平坦な面に形成されており、それによって、リッド部1の見栄え(特に裏側から見たときの見栄え)を良好にすることができる。
【0025】
基材部10の上面12は、図3に示したように、表皮部20の後述する加飾対象部24が設けられている部分では相対的に上側に膨らみ、加飾対象部24以外の部分(すなわち、後述する表皮本体部23)では相対的に凹むように起伏する凹凸形状を備えている。言い換えると、本実施形態の基材部10は、所定の厚さ寸法を有する基材本体部13と、基材本体部13から上方に膨出する隆起部14と有しており、隆起部14の設置によって基材部10の上面12に凹凸形状が形成されている。
【0026】
この場合、隆起部14は、リッド部1の加飾縫製部5が設けられる位置に対応して、基材部10の左右側縁部に長手方向に沿って連続的に設けられている。このため、基材部10における下面11から上面12までの厚さ寸法は、表皮部20の加飾対象部24が設けられている部分で厚くなるように、加飾対象部24の設置位置に対応して変化している。
【0027】
このように基材部10の厚さが加飾対象部24の設置位置に対応して変化することにより、加飾対象部24の形成による表皮部20の厚さの変化(違い)を吸収し、リッド部1における表面及び裏面間の厚さ寸法を一定の大きさにすることができる。また、基材部10を隆起部14によって部分的に厚く形成できるため、基材部10の強度を高めることができる。
【0028】
表皮部20は、発泡樹脂により形成されるクッション部21と、クッション部21に一体的に形成されるとともに略一定の厚さを備える表皮材22とを有する。この場合、表皮部20は、クッション部21の外面が表皮材22により覆われて形成されている。本実施形態において、クッション部21は、基材部10よりも軟質で、クッション性を備えるポリウレタン発泡体によって形成されている。なお本発明において、基材部10、クッション部21、及び表皮材22の材質は特に限定されるものではなく、例えば表皮材22には、軟質の合成樹脂製フィルム材、生地、又は皮革等を用いることが可能である。
【0029】
本実施形態の表皮部20は、図3に示したように、基材部10を被覆する表皮本体部23と、加飾縫製部5が形成される加飾対象部24とを有する。本実施形態において、表皮本体部23は、表皮部20における加飾対象部24以外の部分(加飾縫製部5が設けられない部分)を言う。すなわち、表皮本体部23には加飾縫製部5が形成されないため、表皮本体部23は、加飾縫製部5の縫製糸6を貫通させるための上述した貫通孔部9を含まずに形成されている。この表皮本体部23は、例えば表皮部20の一般部23と言い換えることもできる。
【0030】
本実施形態の表皮本体部23は、複数の気泡を有する発泡樹脂により形成されている。また、表皮本体部23は、基材部10の上述した基材本体部13の上面12に設けられる第1表皮本体部23aと、第1表皮本体部23aから加飾対象部24に向けて表皮部20の厚さを漸減させる第2表皮本体部23bとを有する。この場合、第2表皮本体部23bは、加飾対象部24の左右両側に、リッド部1の長手方向に沿って設けられている。
【0031】
表皮本体部23における第1表皮本体部23aと、第2表皮本体部23bの少なくとも一部とは、適切なクッション性を確保可能な所定の厚さ寸法以上の厚さ寸法で形成されている。これにより、リッド部1の上面で良好な肌触りを得ることができる。なお本発明において、表皮部20の表皮本体部23は、本実施形態のような第2表皮本体部23bを設けずに、表皮本体部23と加飾対象部24との間に段差が設けられるように形成されてもよい。
【0032】
表皮部20における加飾対象部24は、加飾縫製部5の形成部分とその近傍部分とを含んで形成されており、一定の幅寸法(左右方向の寸法)をもってリッド部1の長手方向に沿って連続的に設けられている。また、加飾対象部24には、加飾縫製部5の縫製糸6を貫通させるための上述した複数の貫通孔部9が形成されている。
【0033】
表皮部20の加飾対象部24は、表皮本体部23の第1表皮本体部23aよりも厚さ寸法(肉厚)を小さくして形成されている。言い換えると、表皮部20は、加飾対象部24の厚さを部分的に薄くして形成されている。この場合、加飾対象部24の厚さ寸法は、表皮本体部23の厚さ寸法の5%以上50%以下の大きさで形成されていることが好ましい。また具体的に、加飾対象部24の厚さ寸法は、0.5mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0034】
上述のような厚さ寸法で加飾対象部24が形成されていることによって、加飾対象部24におけるクッション部21の硬度を後述するように効果的に高めることができる。また、クッション部21のRIM成形工程において、基材部10と表皮材22との間の狭い空間に発泡樹脂を円滑に導入してクッション部21(加飾対象部24)を安定して成形できる。
【0035】
この場合、クッション部21の加飾対象部24は、表皮本体部23と同じ材料(同じ発泡樹脂)であるウレタン樹脂を用いて形成されるものの、加飾対象部24が上述のように薄く形成されることにより、クッション部21の成形時に、加飾対象部24の成形部分ではウレタン樹脂の発泡が抑制される(ウレタン樹脂が発泡し難くなる)。それにより、この加飾対象部24は、表皮本体部23(特に、第1表皮本体部23a)よりも発泡倍率が低い低発泡のウレタン樹脂により、又は、気泡を含まない無発泡のウレタン樹脂により形成される。このように加飾対象部24が低発泡又は無発泡で形成されることにより、クッション部21の硬度が部分的に高められている。
【0036】
次に、上述した実施形態に係るリッド部1を製造する方法について説明する。
先ず、リッド部1の基材部10を、合成樹脂の成形(射出成形)を行うことによって、上述した所定の形状を有するように作製する。基材部10の成形は、従来から一般的に知られている方法で行うことが可能である。
【0037】
次に、表皮部20の成形を行うために所定形状のキャビティ空間を有する成形金型を準備する。そして、準備した金型に対し、事前に成形した基材部10と、表皮部20に用いられる表皮材22とを所定の位置に挿入して保持し、その後、ポリウレタンの原料を高圧噴射によって衝突混合させながら金型内に注入する反応射出成形(RIM成形)を行うことによって、表皮部20のクッション部21を形成する。このようなRIM成形を行うことにより、上述した基材部10と表皮部20とが接合して一体化された一次成形品が作成される。
【0038】
その後、得られた一次成形品に対して、ミシンによる縫製加工を行うことによって、その一次成形品に上述した縫製糸6の加飾縫製部5を形成する。このとき、加飾縫製部5は、一次成形品における表皮部20の加飾対象部24が形成されている左右の各側縁部に、一次成形品の長手方向に沿って形成される。
以上のような工程を行うことによって、図1に示したような加飾縫製部5が設けられた本実施形態のリッド部1が製造される。
【0039】
なお本発明において、リッド部1を製造する方法及び手段は特に限定されるものではない。例えば本発明では、以下のような工程によってリッド部1が製造されてもよい。
先ず、RIM成形を行ってクッション部21を上述したような適宜の形状に成形し、次に、得られたクッション部21に表皮材22を被せて覆うように取り付けることによって表皮部20を作製する。続いて、得られた表皮部20を、別途に成形された基材部10に重ねて貼り付ける。その後、上述したようなミシンによる縫製加工を表皮部20及び基材部10に行うことによって、縫製糸6の加飾縫製部5を形成する。このような工程を行うことによっても、図1に示した本実施形態のリッド部1を製造することが可能である。
【0040】
そして、上述のような方法により製造される本実施形態のリッド部1は、クッション部21の表面に例えば図6に示したようなウレア材を設けることなく製造されているため、例えばウレア材の形成に要する時間及び費用を削減でき、その結果、リッド部1を容易に且つ安価に製造することができる。
【0041】
更に、上記工程によって製造された本実施形態のリッド部1においては、表皮部20の加飾縫製部5が形成されている加飾対象部24が、表皮部20の表皮本体部23よりも薄く形成されている。更に、その加飾対象部24のクッション部21が、上述したように低発泡又は無発泡のウレタン樹脂で形成されている。これにより、リッド部1の表皮部20では、表皮部20の表皮本体部23が適切なクッション性を保持して従来と同様の質感を出すことができるとともに、表皮部20の加飾対象部24では硬度が部分的に増大している。
【0042】
従って、上述のような表皮部20の加飾対象部24のみに加飾縫製部5が形成された本実施形態のリッド部1では、図2に示したように、クッション部21の表面にウレア材が設けられていなくても、加飾縫製部5の縫製糸6に生じる張力等の影響によって、表皮部20に設けられた貫通孔部(針孔)9の間隔Dが長手方向に拡がることを抑制して、その間隔Dを小さく保持することができる。このため、本実施形態のリッド部1では、表皮部20に形成された針孔が目立たない、又は目立ち難い優れた外観品質を得ることができる。
【0043】
なお、上述した実施形態のリッド部1では、基材部10の厚さを、表皮部20の加飾対象部24が設けられる位置に対応して変化(増大)させることにより、リッド部1の裏面が平坦に形成され、また、基材部10の強度が高められている。しかし本発明において、リッド部1の裏面の形状は特に限定されるものではない。
【0044】
例えば本発明の基材部は、基材部の基材裏面(リッド部の裏面)に、基材裏面から上側に窪むような凹部が、表皮部の加飾対象部の設置位置に対応して設けられるように厚さを変化させて形成されていてもよい。更に本発明では、例えば図4に示すように、基材部10aの基材裏面11a(リッド部の裏面)を、基材部10aの基材表面12aの凹凸形状に対応する凹凸形状を有するように形成することも可能である。すなわち、基材部10aの基材裏面(下面)11aを、基材表面(上面)12aの凹凸形状に追随する凹凸形状に形成することも可能である。なお、図4に示す表皮部20は、上述したリッド部1の表皮部20と同様に形成されている。
【0045】
図4に示したように基材部10aを形成することにより、ミシンによる縫製加工を行って縫製糸6の加飾縫製部5を形成する際に、ミシン針を表皮部20及び基材部10aに刺し通し易くすることができる。このため、加飾縫製部5の縫製加工の作業性を向上させることができる。また、縫製糸6の下糸8を、基材部10aの下面に設けた凹部15に収容して保持できるため、縫製糸6の位置を安定させることができる。また、凹部15に収容された下糸8が、その他の物品又は部材に接触し難くなるため、下糸8の摩耗や切断を生じさせ難くすることができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、加飾縫製部5が設けられる車両用内装品が、コンソールボックスのリッド部1である場合について説明している。しかし、実施形態のリッド部1は、本発明の車両用内装品の一例であり、本発明の車両用内装品には、例えばインストルメントパネル、ドアトリム、ピラーガーニッシュ、アームレスト、コンソールボックス、グローブボックス、及び、オーディオやカーナビ等の周囲に設けられるガーニッシュなどの自動車の車室に装備される各種内装品(部品)が含まれており、これらの内装品に対しても本発明を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 リッド部(車両用内装品)
5 加飾縫製部
6 縫製糸
7 上糸
8 下糸
9 貫通孔部(針孔)
10,10a 基材部
11,11a 下面(基材裏面)
12,12a 上面(基材表面)
13 基材本体部
14 隆起部
15 凹部
20 表皮部
21 クッション部
22 表皮材
23 表皮本体部(一般部)
23a 第1表皮本体部
23b 第2表皮本体部
24 加飾対象部
D 貫通孔部(針孔)の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6