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特許7383477ポリエステルフィルム用の表面処理されたフィラー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム用の表面処理されたフィラー
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231113BHJP
   C09C 1/02 20060101ALI20231113BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20231113BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20231113BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20231113BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20231113BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20231113BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
C08J5/18
C09C1/02
C09C3/10
C09C3/08
C08J3/22 CFD
C08K9/04
C08L67/00
C08K3/26
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2019533452
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2017083449
(87)【国際公開番号】W WO2018114891
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】16206028.9
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/439,517
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルナー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】クネル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ティンクル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,カルステン・ウド
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-272793(JP,A)
【文献】特開2015-086241(JP,A)
【文献】特開2012-148905(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104736646(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C09C 1/02
C09C 3/10
C09C 3/08
C08J 3/22
C08K 9/04
C08L 67/00
C08K 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層又は多層ポリエステルフィルムであって、前記フィルムの少なくとも1つの層が、前記層の総重量に基づいて、20.0~70重量%未満の範囲の量の少なくとも1種のポリエステル及び30超~80.0重量%の範囲の量の表面処理されたフィラー材生成物を含み、前記表面処理されたフィラー材生成物が、
A)0.5μm~3.0μmの範囲の重量中央粒径d50を有する少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材、並びに
B)前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層であって、
i.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
ii.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる、少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iii.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
iv.i.~iii.に記載の材料の混合物、
を含む、処理層
を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物が、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて、0.1~2.3重量%の量で前記処理層を含み、
前記フィルムの、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、前記表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材をさらに含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材が、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、炭酸バリウム、硫酸カルシウム及び硫酸バリウムから選択されるアルカリ金属塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものを、前記層の総重量に基づいて1~10重量%の量で含み、
前記フィルムが、
a)1.8~2.4g/cm の範囲の密度、及び/又は
b)50%以上の不透明度、
を有する、単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記フィルムの、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、前記表面処理されたフィラー材生成物を前記層の総重量に基づいて、30.01~80.0重量%の量で含む、請求項1に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記フィルムの、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、前記表面処理されたフィラー材生成物を前記層の総重量に基づいて、30.1~78.0重量%の量で含む、請求項1に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリエステルが、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、バイオベースポリエステル、ポリエステルリサイクル材料及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記フィルムの、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、前記少なくとも1種のポリエステルを前記層の総重量に基づいて、20.0~69.99重量%の範囲の量で含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記フィルムの、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、前記少なくとも1種のポリエステルを前記層の総重量に基づいて、22.0~69.9重量%の範囲の量で含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材が、湿式又は乾式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材である、請求項1~6のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材が、湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラーである、請求項1~6のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項9】
前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材が、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、又はそれらの混合物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材が、天然粉砕炭酸カルシウムである、請求項1~8のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材が、
a)0.5μm~2.5μmの重量中央粒径d50、及び/又は
b)15μm以下のトップカット粒径d98、及び/又は
c)全粒子の少なくとも15重量%が、0.5μm未満の粒径を有するような細かさ、及び/又は
d)ISO 9277による窒素及びBET法を用いて測定して、0.5~150m/gの比表面積(BET)
を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材が、
a)0.5μm~2.0μmの重量中央粒径d50、及び/又は
b)10μm以下のトップカット粒径d98、及び/又は
c)全粒子の少なくとも20重量%が、0.5μm未満の粒径を有するような細かさ、及び/又は
d)ISO 9277による窒素及びBET法を用いて測定して、0.5~50m/gの比表面積(BET)
を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項13】
前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の前記処理層が、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/若しくはその塩反応生成物を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項14】
前記表面処理されたフィラー材生成物が、前記処理層を、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて、0.2~2.0重量%の量で含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項15】
前記表面処理されたフィラー材生成物が、前記処理層を、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて、0.4~1.9重量%の量で含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項16】
前記フィルムの、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、熱可塑性ポリマーをさらに含み、前記熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィン、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリケトン、ポリスルホン、フルオロポリマー、ポリアセタール、アイオノマー、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、並びにそれらの共重合樹脂及び混合物からなる群から選択され、熱可塑性ポリマーが、前記少なくとも1種のポリエステル中に分散されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項17】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリオレフィンであり、該ポリオレフィンが架橋剤で架橋されたものである、請求項16に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項18】
前記フィルムの、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、前記熱可塑性ポリマーを前記層の総重量に基づいて、0.1~29.9重量%の量で含む、請求項16又は17に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項19】
前記フィルムの、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、前記熱可塑性ポリマーを前記層の総重量に基づいて、1~28重量%の量で含む、請求項16又は17に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項20】
前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、
a)1.8~2.35g/cmの範囲の密度、及び/又は
b)55%以上の不透明度、
を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項21】
前記フィルムが、光安定剤、蛍光増白剤、青色染料、ブロッキング防止剤、白色顔料及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項22】
前記フィルムが、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む層であり、2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシベンゾトリアゾール、有機ニッケル化合物、サリチル酸エステル、桂皮酸エステル誘導体、レゾルシノールモノベンゾエート、オキサニリド、ヒドロキシ安息香酸エステル、立体障害アミン及びトリアジンからなる群から選択される光安定剤、及び/又はポリエステルに可溶な青色染料を含む、請求項21に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項23】
キャストフィルム、インフレートフィルム、ダブルバブルフィルム又は一軸配向ポリエステルフィルムである、請求項1~22のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルム。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルムを製造するための方法であって、以下の工程:
a)少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む組成物を提供する工程、並びに
b)工程a)の組成物からフィルムを形成する工程、
を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物が、
A)0.5μm~3.0μmの範囲の重量中央粒径d50を有する少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材、並びに
B)前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層であって、
i.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
ii.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iii.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
iv.i.~iii.に記載の材料の混合物、
を含む、処理層
を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物が、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて、0.1~2.3重量%の量で前記処理層を含み、
前記フィルムの、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、前記表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材をさらに含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材が、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、炭酸バリウム、硫酸カルシウム及び硫酸バリウムから選択されるアルカリ金属塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものを、前記層の総重量に基づいて1~10重量%の量で含み、
前記フィルムが、
a)1.8~2.4g/cm の範囲の密度、及び/又は
b)50%以上の不透明度、
を有する、単層又は多層ポリエステルフィルムを製造するための方法。
【請求項25】
工程a)で提供される前記組成物が、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を混合及び/又は混練して混合物を形成し、得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られるマスターバッチであるか、又は前記少なくとも1種のポリエステルと前記表面処理されたフィラー材生成物とを混合及び/又は混練して混合物を形成し、前記得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られるコンパウンドである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程a)で提供される前記組成物が、前記表面処理されたフィラー材生成物を、マスターバッチ又はコンパウンドの総重量に基づいて、30超~85重量%の量で含むマスターバッチ又はコンパウンドである、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
工程a)で提供される前記組成物が、前記表面処理されたフィラー材生成物を、マスターバッチ又はコンパウンドの総重量に基づいて、35~80重量%の量で含むマスターバッチ又はコンパウンドである、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項28】
工程a)の少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む前記組成物が、前記表面処理されたフィラー材生成物を前記少なくとも1種のポリエステルの重縮合過程に添加することによって得られる、請求項2427のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記表面処理されたフィラー材生成物の添加が、前記少なくとも1種のポリエステルの重縮合過程の前又は後である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
方法工程a)及びb)を同時に実施する、請求項2429のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を押出機に直接添加し、工程b)を実施することにより、前記方法工程a)及びb)を同時に実施する、請求項2429のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
工程b)で得られた前記フィルムを縦方向(MD)又は横方向(TD)のうちの一方向のみに延伸する工程c)をさらに含む、請求項2431のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記層の総重量に基づいて、20.0~70重量%未満の範囲の量の少なくとも1種のポリエステル及び30超~80.0重量%の範囲の量の表面処理されたフィラー材生成物を含む少なくとも1つの層を含む単層又は多層ポリエステルフィルムにおける、前記表面処理されたフィラー材生成物のボイド形成剤としての使用であって、前記表面処理されたフィラー材生成物が、
A)0.5μm~3.0μmの範囲の重量中央粒径d50を有する少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材、並びに
B)前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層であって、
i.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
ii.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iii.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
iv.i.からiii.に記載の材料の混合物、
を含む、処理層
を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物が、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて、0.1~2.3重量%の量で前記処理層を含み、
前記フィルムの、前記少なくとも1種のポリエステル及び前記表面処理されたフィラー材生成物を含む前記層が、前記表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材をさらに含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材が、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、炭酸バリウム、硫酸カルシウム及び硫酸バリウムから選択されるアルカリ金属塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものを、前記層の総重量に基づいて1~10重量%の量で含み、
前記フィルムが、
a)1.8~2.4g/cm の範囲の密度、及び/又は
b)50%以上の不透明度、
を有する、使用。
【請求項34】
請求項1~23のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルムを含む物品であって、包装製品、食品接触用途、紙又はガラスの被覆、断熱材、ソーラー、海洋又は航空用途、科学、電子若しくは音響用途、グラフィックアート、フィルター製品、化粧品、家庭用品イメージング、記録媒体、又は熱転写画像形成又は工業製品からなる群から選択される物品。
【請求項35】
請求項34に記載の単層又は多層ポリエステルフィルムを含む物品であって、前記包装製品が可撓性包装製品であり、前記ソーラー用途が光起電性の前面又はバックシートであり、前記科学、電子若しくは音響用途がディスプレイ、ワイヤ、ケーブル、無線周波数識別、フレキシブル回路であり、前記グラフィックアートがラベル、ストーンペーパー、バッグ、パッケージ、箱、本、小冊子、パンフレット、ポイントカード、名刺、グリーティングカード、段ボール、封筒、食品トレイ、ラベリング、ゲーム、タグ、雑誌、標識、広告板、文房具、日記、パッド又はノートブック、又はホログラム、であり、前記記録媒体が印画紙、X線フィルムであり、前記熱転写画像形成又は工業製品がコンデンサー、剥離シート、ガラス繊維パネル、ラミネートフィルム、ホットスタンプ箔又は断熱外装である物品。
【請求項36】
請求項1~23のいずれか一項に記載の単層又は多層ポリエステルフィルムの使用であって、包装製品、食品接触用途、紙又はガラスの被覆、断熱材、ソーラー、海洋又は航空用途、科学、電子若しくは音響用途、グラフィックアート、フィルター製品、化粧品、家庭用品イメージング、記録媒体、又は熱転写画像形成又は工業製品における使用。
【請求項37】
請求項36に記載の単層又は多層ポリエステルフィルムの使用であって、前記包装製品が可撓性包装製品であり、前記ソーラー用途が光起電性の前面又はバックシートであり、前記海洋又は航空用途、科学、電子若しくは音響用途がディスプレイ、ワイヤ、ケーブル、無線周波数識別、フレキシブル回路であり、前記グラフィックアートがラベル、ストーンペーパー、バッグ、パッケージ、箱、本、小冊子、パンフレット、ポイントカード、名刺、グリーティングカード、段ボール、封筒、食品トレイ、ラベリング、ゲーム、タグ、雑誌、標識、広告板、文房具、日記、パッド又はノートブック、及びホログラムであり、前記記録媒体が印画紙、X線フィルムであり、前記熱転写画像形成又は工業製品がコンデンサー、剥離シート、ガラス繊維パネル、ラミネートフィルム、ホットスタンプ箔又は断熱外装である使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単層又は多層ポリエステルフィルム、前記単層又は多層ポリエステルフィルムの製造方法、前記単層又は多層ポリエステルフィルムにおけるボイド形成剤としての表面処理されたフィラー材生成物の使用、前記単層又は多層ポリエステルフィルムを含む物品、並びに包装製品、断熱材、ソーラー、海洋又は航空用途、科学、電子又は音響用途、ワイヤ、ケーブル、無線周波数識別、フレキシブル回路、グラフィックアート、ストーンペーパー、ホログラム、フィルター製品、化粧品、家庭用品イメージング、記録媒体又は工業製品における前記単層又は多層ポリエステルフィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キャストフィルム、インフレートフィルム、ダブルバブルフィルム、一軸及び二軸配向ポリエステルフィルムなどのポリエステルフィルムは、多種多様な用途、特に包装製品、断熱材、ソーラー、海洋又は航空用途、科学、電子又は音響用途、ワイヤ、ケーブル、無線周波数識別、フレキシブル回路、グラフィックアート、ストーンペーパー、ホログラム、フィルター製品、化粧品、家庭用品イメージング、記録媒体又は工業製品に使用されている。
【0003】
配向ポリエステルフィルムが発泡剤(化学薬品又はガス)又はボイド形成剤の添加により製造できることは周知である。例えば、成形品は、ボイド形成剤、すなわち、延伸時にボイドを形成する少量の粒子又は非相溶性ポリマーをブレンドすることによってフィルム全体にわたってミクロボイドを形成することができる。この方法は「ボイド化」と呼ばれ、「空洞化(cavitating)」又は「ミクロボイド化」と呼ばれることもある。ボイドは典型的には、約5~約50重量%の有機又は無機の小さな粒子又は「包含物」(当技術分野では「ボイド化」剤又は「空洞化」剤と呼ばれる)をマトリックスポリマーに組み込み、少なくとも一方向における延伸によってポリマーを配向させることによって得られる。延伸中に、小さな空洞又は「ミクロボイド」がボイド形成剤の周囲に形成される。ボイドがポリマーフィルムに導入されると、結果として生じるボイド化フィルムは、非ボイド化フィルムよりも低い密度を有するだけでなく、不透明になり、紙様表面を生じる。この表面はまた、印刷適性が向上するという利点を有する。すなわち、表面は、非ボイド化フィルムよりもかなり大きな受容能力により多くのインクを受容することができる。いずれの場合も、物品中に小さなボイド/孔が生じることにより、密度の低下、不透明度及び断熱特性の増加、並びにボイドによる光の散乱のため、別の紫外線吸収剤を必要とせずに固有の紫外線遮断がもたらされる。ミクロボイド化物品は、特にそのような物品が包装用途、例えばラベルとして使用される場合には特に、全体的なフィルムコストがより低く、分離/再利用がより容易になるという追加の利点を有する(例えばUS7297755B2参照)。
【0004】
原則として、ボイドの形成は、フィルム調製中、特に長手方向に延伸中のポリマーとボイド形成剤との間の界面におけるマイクロクラックの発生に基づく。その後の横方向の延伸中に、これらの微細な長手方向の亀裂は裂開され、空気で満たされた閉じた中空の空間を形成する。それゆえ、同時配向中のボイドの生成は、順次配向中よりも過度に困難であることはもっともであると思われる。実際、CaCO又はPBTのような一般的なポリプロピレンと非相溶性の粒子が、同時配向時にボイドを全く発生させないか、又は選択的な粒子形状若しくは粒径でのみそれらを発生させる(例えばWO03/033574を参照)ことが現実として現れている。それゆえ、この方法のために、発泡剤を用いてボイドを発生させるための代替技術が開発された。
【0005】
ボイド化ポリエステルフィルムが典型的にはポリエステルポリマーとボイド形成剤(炭酸カルシウムなどの有機材料又は無機フィラー)とのブレンドを含み、該フィルムのキャスティング又はブローイングとそれに続く2種の異なる温度における2つの直交方向への延伸又は引き延ばしによって前記ブレンドからフィルムを形成することによって製造されることは理解されよう。
【0006】
当技術分野において、無機フィラー材、特に炭酸カルシウム含有フィラー材を添加することによってポリエステルフィルムの機械的及び光学的性質を改良するためのいくつかの試みがなされてきた。例えば、EP0554654A1号は、二軸配向され、再度縦方向に配向され、並びにフィルムの少なくとも一方の表面上に形成されたコーティング層を有し、前記コーティング層が、ガラス転移温度が少なくとも20℃の水溶性又は水分散性ポリエステル樹脂を少なくとも50重量%含有するポリエステル樹脂フィルムについて言及している。再延伸時にコーティング層が加熱ロールへ付着することを防ぐために、前記コーティング層は無機粒子又は有機粒子を含有してもよい。そのような粒子は、ブロッキング防止又は滑り特性を改善するように作用することが記載されている。
【0007】
同様に、DE4313510A1は、全厚が4μm以下で少なくとも一方のフィルム表面の粗さがRa30nm未満であり、少なくとも一方のフィルム表面の表面ガス流動抵抗がt≦ad[秒](式中、a=0~10,000[秒/μm]、b=3.0~0、及びd(フィルム全厚)≦4μmである)である、配向された単層又は多層フィルムに関する。フィルムは、第一(I)及び第二(II)粒子を含有してもよい。第一粒子は単分散性であり、1.0~1.2のアスペクト比を有する。
【0008】
EP1052269A1は、厚さが1~500μmで、主成分として結晶性熱可塑性樹脂を含み、さらに紫外線安定剤及び白色顔料を含有する、二軸配向フィルムに言及している。
【0009】
EP1612237A1は、少なくとも500ppmの顔料を含有し、少なくとも20重量%の同種の再生材料が添加されている熱可塑性二軸配向フィルムを言及している。フィルムは単層であっても、又は多層であってもよく、好ましくは10~300μmの厚さである。
【0010】
K.Nevalainen et al., “Voiding behaviour and microstructure of a filled polyester film”;Materials Chemistry and Physics 92 (2005)540-547は、ポリエチレンテレフタレートからの充填ポリエステルフィルムのボイド化挙動に言及している。使用したフィラーは、1~2μmの間の平均粒径を有する硫酸バリウムであった。
【0011】
K.Nevalainen et al.,“The microstructure of polyethylene terephthalate matrix near to a void under uniaxial draw”;Materials Chemistry and Physics 101(2007)103-111は、ボイドに直接隣接するマトリックスの特性決定を記載している。特に、それは一軸延伸PETフィルム及び5μmサイズの球状ガラスビーズフィラーの周囲に形成されたボイドについて言及している。
【0012】
A.Sudar et al.,“The mechanism and kinetics of void formation and growth in particulate filled PE composites”;Polymer letters, Vol.1,No.11(2007),763-772は、PE中のボイドの形成が特にマトリックスの性質に依存する、すなわち、ソフトマトリックスでは、同じ変形及びフィラー含有量で、より大きな固有弾性率を有するポリマー中よりボイドの数は少なく、ボイドのサイスが大きいことを記載している。
【0013】
しかしながら、記載されているフィルムは、低密度及び高い不透明度を有する微多孔フィルムを製造するためのポリエステルフィルムの製造中に適切なボイドをフィルム破損なしに製造することが困難であるという欠点を有する。
【0014】
上記の1つの解決策は、単層又は多層の二軸配向ポリエステルフィルムについて言及している国際特許出願PCT/EP2016/078466に開示されており、当該出願において、フィルムの少なくとも1層は、層の総重量に基づいて70~99.9重量%の範囲の量の少なくとも1種のポリエステル及び0.1~30重量%の範囲の量の表面処理されたフィラー材生成物を含み、前記表面処理されたフィラー材生成物は、A)0.5μm~2.5μmの範囲の重量中央粒径d50を有する少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材、並びにB)前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層であって、i.1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又はii.少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又はiii.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又はiv.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又はv.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又はvi.i.~v.に記載の材料の混合物、を含む、処理層を含み、前記表面処理されたフィラー材生成物は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて0.1~2.3重量%の量で処理層を含む。
【0015】
しかしながら、国際特許出願PCT/EP2016/078466号は、高いフィラー含有量、すなわち30重量%超を有するポリエステルフィルムについては全く言及していない。
【0016】
したがって、高いフィラー含有量、低い密度及び高い不透明度で微多孔構造を有するポリエステルフィルムを提供することは、当業者にとって依然として興味深いものである。さらに、機械的及び光学的性質を高レベルに維持し、環境に優しいフィルムを提供することが望まれており、これは一方では成長して元の状態に戻る原料及び/又はリサイクル材料から製造され、他方では環境に優しい方法で処分される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第7297755号明細書
【文献】国際公開第2003/033574号
【文献】欧州特許出願公開第0554654号明細書
【文献】独国特許出願公開第4313510号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1052269号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1612237号明細書
【文献】国際出願番号PCT/EP2016/078466
【非特許文献】
【0018】
【文献】K.Nevalainen et al.,“Voiding behaviour and microstructure of a filled polyester film”;Materials Chemistry and Physics 92(2005)540-547
【文献】K.Nevalainen et al.,“The microstructure of polyethylene terephthalate matrix near to a void under uniaxial draw”;Materials Chemistry and Physics 101(2007)103-111
【文献】A.Sudar et al.,“The mechanism and kinetics of void formation and growth in particulate filled PE composites”;Polymer letters,Vol.1,No.11(2007),763-772
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、微多孔構造を有するポリエステルフィルムを提供することにある。高いフィラー含有量で微多孔構造を有するポリエステルフィルム又は対応する層を提供することもまた望ましいであろう。また、低密度、特にボイド形成剤として硫酸バリウム又は二酸化チタンを使用して対応するフィルム又は層に対して典型的に達成される密度を下回る密度で微多孔構造を有するポリエステルフィルム又は対応する層を提供することが望ましいであろう。不透明な外観を有するポリエステルフィルム又は層を提供することもまた望ましいであろう。フィルム/層の破損なしに製造することができるポリエステルフィルム又は層を提供することもまた望ましいであろう。良好な機械的及び光学的性質を有するポリエステルフィルム又は層を提供することもまた望ましいであろう。一方では成長して元の状態に戻る原料及び/又はリサイクル材料から製造され、他方では環境に優しい方法で処分できる環境に優しいポリエステルフィルム又は層を提供することもまた望ましいであろう。
【0020】
本発明の別の目的は、ポリエステルフィルム又は層用の無機ボイド形成剤を提供することである。ポリエステルフィルム/層用途において良好な分散特性及び配合性能を示す、ポリエステルフィルム又は層用の無機ボイド形成剤を提供することもまた望ましいであろう。フィルム又は層に低密度を付与する、ポリエステルフィルム又は層用の無機ボイド形成剤を提供することもまた望ましいであろう。ポリエステルフィルム又は層の調製時にフィルム/層の破損を引き起こさない無機ボイド形成剤を提供することもまた望ましいであろう。高いフィラー含有量を可能にする、ポリエステルフィルム又は層用の無機ボイド形成剤を提供することもまた望ましいであろう。引張強度、破断点伸び又は弾性率などの良好な機械的性質を付与する、ポリエステルフィルム又は層用の無機ボイド形成剤を提供することもまた望ましいであろう。フィルム又は層に不透明な外観を付与する、ポリエステルフィルム又は層用の無機ボイド形成剤を提供することもまた望ましいであろう。
【0021】
前述及び他の目的は、本明細書の独立請求項に定義された主題によって解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一態様により、単層又は多層ポリエステルフィルムが提供される。単層又は多層ポリエステルフィルムは、層の総重量に基づいて20.0~70重量%未満の範囲の量の少なくとも1種のポリエステル及び30超~80.0重量%の範囲の量の表面処理されたフィラー材生成物を含む少なくとも1つの層を含み、前記表面処理されたフィラー材生成物は、
A)0.5μm~3.0μmの範囲の重量中央粒径d50を有する少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材、並びに
B)前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層であって、
i.1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は
ii.少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は
iii.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iv.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
v.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
vi.i.~v.に記載の材料の混合物、
を含む、処理層を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて、0.1~2.3重量%の量で処理層を含む。
【0023】
さらなる態様によれば、本明細書で定義される単層又は多層ポリエステルフィルムを製造するための方法であって、以下の工程:
a)少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む組成物を提供する工程、並びに
b)工程a)の組成物からフィルムを形成する工程、
を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物が、
A)0.5μm~3.0μmの範囲の重量中央粒径d50を有する少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材、並びに
B)前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層であって、
i.1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は
ii.少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は
iii.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iv.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
v.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
vi.i.~v.に記載の材料の混合物、
を含む、処理層を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物が、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて、0.1~2.3重量%の量で処理層を含む方法が提供される。
【0024】
本発明のさらに別の態様によれば、本明細書で定義される単層又は多層ポリエステルフィルムにおける、ボイド形成剤としての表面処理されたフィラー材生成物の使用であって、
前記表面処理されたフィラー材生成物が、
A)0.5μm~3.0μmの範囲の重量中央粒径d50を有する少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材、並びに
B)前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層であって、
i.1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は
ii.少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は
iii.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iv.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
v.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
vi.i.~v.に記載の材料の混合物、
を含む、処理層を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物が、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて、0.1~2.3重量%の量で処理層を含む、表面処理されたフィラー材生成物の使用が提供される。
【0025】
本発明のさらに別の態様によれば、本明細書で定義される単層又は多層ポリエステルフィルムを含む物品であって、包装製品、好ましくは可撓性包装製品、食品接触用途、紙又はガラスの被覆、断熱材、ソーラー、好ましくは光起電性の前面又はバックシート、海洋又は航空用途、科学、電子若しくは音響用途、好ましくはディスプレイ、ワイヤ、ケーブル、無線周波数識別、フレキシブル回路、グラフィックアート、好ましくはラベル、ストーンペーパー、好ましくはバッグ、パッケージ、箱、本、小冊子、パンフレット、ポイントカード、名刺、グリーティングカード、段ボール、封筒、食品トレイ、ラベリング、ゲーム、タグ、雑誌、標識、広告板、文房具、日記、パッド又はノートブック、及びホログラム、フィルター製品、化粧品、家庭用品イメージング、記録媒体、好ましくは印画紙、X線フィルム又は熱転写画像形成又は工業製品、好ましくはコンデンサー、剥離シート、ガラス繊維パネル、ラミネートフィルム、ホットスタンプ箔又は断熱外装からなる群から選択される物品が提供される。
【0026】
本発明のさらに別の態様によれば、本明細書で定義される単層又は多層ポリエステルフィルムの、包装製品、好ましくは可撓性包装製品、食品接触用途、紙又はガラスの被覆、断熱材、ソーラー、好ましくは光起電性の前面又はバックシート、海洋又は航空用途、科学、電子若しくは音響用途、好ましくはディスプレイ、ワイヤ、ケーブル、無線周波数識別、フレキシブル回路、グラフィックアート、好ましくはラベル、ストーンペーパー、好ましくはバッグ、パッケージ、箱、本、小冊子、パンフレット、ポイントカード、名刺、グリーティングカード、段ボール、封筒、食品トレイ、ラベリング、ゲーム、タグ、雑誌、標識、広告板、文房具、日記、パッド又はノートブック、及びホログラム、フィルター製品、化粧品、家庭用品イメージング、記録媒体、好ましくは印画紙、X線フィルム又は熱転写画像形成又は工業製品、好ましくはコンデンサー、剥離シート、ガラス繊維パネル、ラミネートフィルム、ホットスタンプ箔又は断熱外装における使用が提供される。
【0027】
本発明の有利な実施形態は、本明細書及びさらに対応する従属請求項に定義されている。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、フィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、前記表面処理されたフィラー材生成物を層の総重量に基づいて30.01~80.0重量%の範囲の量で含み、好ましくは30.1~78.0重量%、より好ましくは30.5~75.0重量%、さらにより好ましくは31.0~73.0重量%、最も好ましくは35.0~70.0重量%の範囲の量で含む。
【0029】
別の実施形態によれば、少なくとも1種のポリエステルは、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、バイオベースポリエステル、ポリエステルリサイクル材料及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
さらに別の実施形態によれば、フィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、少なくとも1種のポリエステルを層の総重量に基づいて20.0~69.99重量%、より好ましくは22.0~69.9重量%の範囲の量で含む。
【0031】
一実施形態によれば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、湿式又は乾式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材であり、好ましくは湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラーである。本発明の前述の態様に関連して、湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材を使用することが特に企図される、又は好ましい。
【0032】
別の実施形態によれば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、又はそれらの混合物であり、好ましくは天然粉砕炭酸カルシウムである。
【0033】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、a)0.5μm~2.5μm、好ましくは0.5μm~2.0μm、さらにより好ましくは0.5μm~1.8μm、最も好ましくは0.6μm~1.8μmの重量中央粒径d50、及び/又はb)15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは7.5μm以下、さらにより好ましくは7μm以下、最も好ましくは6.5μm以下のトップカット粒径d98、及び/又はc)全粒子の少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、さらにより好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは30~40重量%が0.5μm未満の粒径を有するような細かさ、及び/又はd)ISO 9277による窒素及びBET法を用いて測定して、0.5~150m/g、好ましくは0.5~50m/g、より好ましくは0.5~35m/g、最も好ましくは0.5~15m/gの比表面積(BET)を有する。
【0034】
一実施形態によれば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物(好ましくは前記少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸は、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸及びそれらの混合物からなるカルボン酸群から選択される)、及び/又は置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0035】
別の実施形態によれば、表面処理されたフィラー材生成物は、処理層を、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて0.2~2.0重量%、好ましくは0.4~1.9重量%、最も好ましくは0.5~1.8重量%の量で含む。
【0036】
さらに別の実施形態によれば、フィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は熱可塑性ポリマー、好ましくは架橋剤で架橋されたものをさらに含み、前記熱可塑性ポリマーはポリオレフィン(好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン及びそれらの混合物から選択される)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリケトン、ポリスルホン、フルオロポリマー、ポリアセタール、アイオノマー、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル並びにそれらの共重合樹脂及び混合物からなる群から選択され、少なくとも1種のポリエステル中に分散されている。
【0037】
一実施形態によれば、フィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、熱可塑性ポリマーを層の総重量に基づいて0.1~29.9重量%、好ましくは1~28重量%、より好ましくは2~26重量%、さらにより好ましくは3~25重量%、さらにより好ましくは4.5~23重量%、最も好ましくは4~20重量%の範囲の量で含む。
【0038】
別の実施形態によれば、フィルム、好ましくは表面処理されたフィラー材生成物を含む少なくとも1つの層は、a)1.8~2.4g/cm、好ましくは1.8~2.35g/cm、より好ましくは1.85~2.3g/cm、最も好ましくは1.9~2.25g/m の範囲の密度、及び/又はb)50%以上、好ましくは55%以上、最も好ましくは60%以上の不透明度、を有する。
【0039】
さらに別の実施形態によれば、フィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材、好ましくはアルミナ、シリカ、二酸化チタン、アルカリ金属塩、例えば炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム及びそれらの混合物からなる群から選択されるものを、好ましくは層の総重量に基づいて1~10重量%の量でさらに含む。
【0040】
一実施形態によれば、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、光安定剤、好ましくは2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシベンゾトリアゾール、有機ニッケル化合物、サリチル酸エステル、桂皮酸エステル誘導体、レゾルシノールモノベンゾエート、オキサニリド、ヒドロキシ安息香酸エステル、立体障害アミン及びトリアジン、より好ましくは2-ヒドロキシベンゾトリアゾール及びトリアジン、最も好ましくはヒドロキシ-フェニル-トリアジン、蛍光増白剤、青色染料、好ましくはポリエステルに可溶な青色染料、ブロッキング防止剤、白色顔料及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を含む。
【0041】
別の実施形態によれば、フィルムはキャストフィルム、インフレートフィルム、ダブルバブルフィルム又は一軸配向ポリエステルフィルムである。
【0042】
一実施形態によれば、本発明の方法の工程a)で提供される組成物は、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を混合及び/又は混練して混合物を形成し、得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られるマスターバッチであるか、又は少なくとも1種のポリエステルと表面処理されたフィラー材生成物とを混合及び/又は混練して混合物を形成し、得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られるコンパウンドである。
【0043】
本方法の別の実施形態によれば、工程a)で提供される組成物は、表面処理されたフィラー材生成物を、マスターバッチ又はコンパウンドの総重量に基づいて30超~85重量%、好ましくは35~80重量%、より好ましくは40~70重量%の量で含むマスターバッチ又はコンパウンドである。
【0044】
本方法のさらに別の実施形態によれば、工程a)の少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む組成物は、表面処理されたフィラー材生成物を、好ましくは前記少なくとも1種のポリエステルの重縮合過程の前又は後に添加することによって得られる。
【0045】
本方法の一実施形態によれば、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を、工程b)を実施する押出機に直接添加して、方法工程a)及びb)が同時に実施される。
【0046】
本方法の別の実施形態によれば、本方法は、工程b)で得られたフィルムを縦方向(MD)又は横方向(TD)のうちの一方向のみに延伸する工程c)をさらに含む。
【0047】
少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物並びに存在するならば他の任意選択の添加剤は、適切なミキサー、例えばヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサーなどを用いて混合することができる。別の実施形態によれば、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を、工程b)を実施する押出機に直接添加して、方法工程a)及びb)が同時に実施される。さらに別の実施形態によれば、工程a)の少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む組成物は、表面処理されたフィラー材生成物を、好ましくは前記少なくとも1種のポリエステルの重縮合過程の前又は後に、添加することによって得られる。
【0048】
本発明の目的のために、以下の用語は以下の意味を有することを理解されたい。
【0049】
キャストフィルム法は、スロット又はフラットダイを通して溶融したそれぞれのポリマーを押し出して、薄い溶融シート又はフィルムを形成することを含む。このフィルムは、エアナイフ又はバキュームボックスからの送風によって、(通常は水冷及びクロムメッキされた)チルロールの表面に「ピン留め」又は「固定」される。フィルムは直ちに急冷され、次いで巻き取る前にその縁がスリットされる。速い急冷能力のために、キャストフィルムは一般にインフレートフィルムよりはるかに優れた光学的性質を有し、より高いライン速度で製造することができる。しかしながら、それは、縁取りのためにスクラップが多くなり、横方向のフィルムの配向が非常に少ないという欠点を有する。
【0050】
「一軸配向」ポリエステルフィルムという用語は、フィルムが一軸配向フィルムであること、すなわちフィルムが縦方向(MD)又は横方向(TD)、好ましくは縦方向(MD)に延伸過程を受けていることを示し、それにより一軸配向フィルムが得られる。
【0051】
本発明の意味における「フィルム」は、その長さ及び幅と比較して小さい厚さ中央値を有する、材料のシート又は層である。例えば、「フィルム」という用語は、0.5~2000μm、好ましくは4~1500μm、より好ましくは5~1300μm、最も好ましくは6~1000μm例えば8~500μmの厚さ中央値を有する、材料のシート又は層を指すことができる。フィルムは単層又は多層フィルムの形態である。
【0052】
「単層」フィルムとは、1層のみからなるフィルムを指す。「多層」フィルムとは、互いに隣接する2以上の層、例えば2~10層、好ましくは3層からなるフィルムを指す。多層フィルムが3層フィルムである場合、このフィルムはフィルム構造A-B-A又はA-B-Cを有することができる。多層フィルムにおいて、コア層はボイド化されることが好ましい。
【0053】
本発明の要旨における「粉砕炭酸カルシウム含有フィラー」という用語は、少なくとも1つの粉砕工程を含む方法によって製造された炭酸カルシウム含有フィラーを意味する。「粉砕炭酸カルシウム含有フィラー」は、「湿式粉砕」又は「乾式粉砕」であってよく、本発明の意味における「湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー」は、20~80重量%の間の固形分を有する水性懸濁液中での少なくとも1つの粉砕工程を含む方法によって製造される粉砕炭酸カルシウム含有フィラーであり、「乾式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー」は、80超~100重量%までの固形分を有する水性懸濁液中での少なくとも1つの粉砕工程を含む方法によって製造される粉砕炭酸カルシウム含有フィラーである。
【0054】
本発明の意味における「微多孔フィルム」又は「微多孔層」という用語は、微小孔の存在に起因してガス及び水蒸気の通過を可能にするポリエステルフィルム又は対応する層を指す。ポリエステルフィルム又は層の「微小孔」の存在は、その水蒸気透過速度(WVTR)によって測定することができ、これはg/(m日)で特定される。例えば、ポリマーフィルム又は層は、それが100g/(m日)未満のWVTRを有する場合、「微多孔」であると見なすことができる。WVTRは、ASTM E398に従って、Lyssy L80-5000測定装置を用いて決定することができる。
【0055】
本発明の意味における用語「低密度」は、1.8~2.4g/cm、好ましくは1.8~2.35g/cm、より好ましくは1.85~2.3g/cm、最も好ましくは1.9~2.25g/m の密度を有する単層又は多層ポリエステルフィルム、又は対応する層を指す。
【0056】
本発明の目的のために、用語「炭酸カルシウム含有フィラー材」は、炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて少なくとも80重量%の炭酸カルシウムを含む材料を指す。
【0057】
本発明の意味における「天然粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、石灰石、大理石、ドロマイト又はチョークなどの天然源から得られ、粉砕、篩い分け及び/又は例えば、サイクロンや分類器による分別などの湿式処理によって処理された炭酸カルシウムである。
【0058】
本発明の意味における「改質炭酸カルシウム」(MCC)は、内部構造の改変又は表面反応生成物を有する天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウム、すなわち「表面反応炭酸カルシウム」を特徴とし得る。
【0059】
「表面反応炭酸カルシウム」は、炭酸カルシウムと、表面上に不溶性、好ましくは少なくとも部分的に結晶性の、酸のアニオンのカルシウム塩とを含む材料である。好ましくは、不溶性カルシウム塩は炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面から伸展している。前記アニオンの前記少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を形成するカルシウムイオンは、主に出発炭酸カルシウム材料に由来する。MCCは、例えば、US2012/0031576A1、WO2009/074492A1、EP2264109A1、EP2070991A1、又はEP2264108A1に記載されている。
【0060】
本発明の意味における用語「表面処理されたフィラー材生成物」は、炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部にコーティング層を得るように、表面処理剤と接触された炭酸カルシウム含有フィラー材を指す。
【0061】
用語「乾燥」炭酸カルシウム含有フィラー材は、フィラー材の重量に対して0.3重量%未満の水を有するフィラー材であると理解される。含水率(「残留総含水量」に等しい)は、フィラー材を220℃に加熱し、蒸気として放出させ、窒素ガス流(100ml/分)を用いて単離した含水量をカールフィッシャー電量測定装置で決定する、カールフィッシャー電量測定法(Coulometric Karl Fischer measurement method)に従って決定される。
【0062】
「ポリマー組成物」という用語は、少なくとも1種の添加剤(例えば、少なくとも1種のフィラー)と、ポリマー生成物の製造に使用され得る少なくとも1種のポリエステル材料とを含む複合材料を指す。
【0063】
本出願の意味における用語「ポリマーマスターバッチ」(=又は「マスターバッチ」)又は「ポリマーコンパウンド」(=又は「コンパウンド」)は、(組成物の総重量に基づいて)30重量%超を意味する比較的高いフィラー含有量を有する組成物に関する。「ポリマーマスターバッチ」又は「ポリマーコンパウンド」は、より高いフィラー含有量を達成するために、加工中に未充填又は低充填ポリエステルに添加することができる。したがって、本明細書で使用される用語「ポリマー組成物」(=「組成物」)は、「ポリマーマスターバッチ」及び「ポリマーコンパウンド」の両方を含む。
【0064】
本発明の意味において鉱物フィラーの「比表面積」(m/g)という用語は、当業者に周知の、吸着ガスとして窒素を使用するBET法を用いて決定される(ISO 9277:2010)。次いで、鉱物フィラーの総表面積(m)は、比表面積に処理前の鉱物フィラーの質量(g)を掛けることによって得られる。
【0065】
本明細書を通して、炭酸カルシウム含有フィラーの「粒径」は、その粒径分布によって記載される。値dは、粒子のx重量%がdより小さい直径を有する直径を表す。これは、d20値は、全粒子の20重量%の粒径がそれより小さく、d98値は、全粒子の98重量%の粒径がそれより小さいことを意味する。d98値は「トップカット」とも呼ばれる。したがって、d50値は、重量中央粒径、すなわち全粒子の50重量%がこの粒径よりも小さい。本発明の目的のために、粒径は、他に示さない限り、重量中央粒径d50として示す。重量中央粒径d50値又はトップカット粒径d98値を決定するために、米国Micromeritics社製のSedigraph 5100装置を使用することができる。この方法び装置は当業者には知られており、フィラー及び顔料の粒度を決定するために一般的に使用される。測定は0.1重量%のNa水溶液中で行われる。サンプルは高速撹拌機を用いて分散され、超音波処理される。
【0066】
本発明の目的のために、液体組成物の「固形分」は、全ての溶媒又は水が蒸発した後に残っている材料の量の尺度である。
【0067】
本発明の意味における「懸濁液」又は「スラリー」は、不溶性固体及び水、並びに任意選択的にさらなる添加剤を含み、通常大量の固体を含有し、したがってそれが形成される液体よりも粘性が高く、より高い密度となり得る。
【0068】
本発明の要旨における「処理層」とは、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の表面処理剤の層、好ましくは単層を指す。「処理層」は、表面処理剤として、i.1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又はii.少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又はiii.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又はiv.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又はv.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又はvi.i.~v.に記載の材料の混合物を含む。
【0069】
「含む(comprising)」という用語が本説明及び特許請求の範囲において使用される場合、それは、機能的に主に重要である、又はあまり重要ではない他の特定されていない要素を排除するものではない。本発明の目的のために、用語「からなる(consisting of)」は、用語「含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると考えられる。これ以降、ある群が少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示すると理解されるべきである。
【0070】
「含む(including)」又は「有する(having)」という用語が使用されるときはいつでも、これらの用語は上記で定義した「含む」と同等であることを意味する。
【0071】
単数名詞に言及する際に、不定冠詞又は定冠詞、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「この(the)」が使用される場合、特に明記されていない限り、その名詞の複数形も含まれる。
【0072】
「得ることができる(obtainable)」又は「定義することができる(definable)」及び「得られる(obtained)」又は「定義される(defined)」のような用語は、互換的に用いられる。これは、例えば、文脈が他のことを明確に指示しない限り、「得られる」という用語は、例えば、実施形態が、例えば、「得られる」という用語に続く工程の順序によって得なければならないことを示す意味のものではないが、そのような限定された理解は、好ましい実施形態として「得られる」又は「定義される」という用語に常に含まれる。
【0073】
本発明の単層又は多層ポリエステルフィルムは、少なくとも1種のポリエステルを、フィルムの総重量に基づいて20.0~70重量%未満の範囲の量で含み、表面処理されたフィラー材生成物を30超~80.0重量%の範囲の量で含む少なくとも1つの層を含む。表面処理されたフィラー材生成物は、A)0.5μm~3.0μmの範囲の重量中央粒径d50を有する少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材、並びにB)前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層であって、i.1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又はii.少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又はiii.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又はiv.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又はv.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又はvi.i.~v.に記載の材料の混合物、を含む、処理層、を含む。表面処理されたフィラー材生成物は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて、0.1~2.3重量%の量の処理層を含む。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下の詳細において、本発明の生成物の好ましい実施形態をさらに詳細に説明する。これらの技術的詳細及び実施形態は、前記単層又は多層ポリエステルフィルムを製造するための本発明の方法、並びに前記単層又は多層ポリエステルフィルム及び表面処理されたフィラー材生成物の本発明の使用にも適用されることは理解されよう。
【0075】
<ポリエステル>
本発明の単層又は多層ポリエステルフィルムは、少なくとも1種のポリエステルを含む少なくとも1つの層を含む。ポリマーが単層又は多層ポリエステルフィルム、特にキャストフィルム、インフレートフィルム、ダブルバブルフィルム又は一軸配向ポリエステルフィルムの調製に適している限り、前記少なくとも1種のポリエステルは特定の材料に限定されないことは理解されよう。当業者は、単層又は多層ポリエステルフィルムの所望の用途に従ってポリエステルを選択することができる。
【0076】
本発明の1つの要件は、少なくとも1種のポリエステルと表面処理されたフィラー材生成物が同じ層に存在することである。したがって、表面処理されたフィラー材生成物は、少なくとも1種のポリエステル中に分散している。
【0077】
したがって、多層ポリエステルフィルムは、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む少なくとも1つの層を含む。多層ポリエステルフィルムがポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む2つ以上の層を含む場合、2つ以上の層は同じであっても異なっていてもよく、例えば、少なくとも1種のポリエステルと表面処理されたフィラー材生成物との量が異なっていてもよいことは理解されよう。
【0078】
「少なくとも1種の」ポリエステルという表現は、そのポリエステルが1種類以上のポリエステルを含む、好ましくはそれからなることを意味することは理解されよう。
【0079】
したがって、少なくとも1種のポリエステルは1種類のポリエステルであり得ることに留意すべきである。又は、少なくとも1種のポリエステルは、2種類以上のポリエステルの混合物であり得る。例えば、少なくとも1種のポリエステルは、2種類のポリエステルの混合物のように、2種類又は3種類のポリエステルの混合物であり得る。
【0080】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種のポリエステルは、1種類のポリエステルを含み、好ましくはそれからなる。
【0081】
一般に、「ポリエステル」という用語は、少なくとも部分的にはジオールとジカルボン酸との縮合重合によって得られるポリマーを意味する。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、又はセバシン酸を用いることができる。ジオールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、又はシクロヘキサンジメタノールを用いることができる。
【0082】
加えて又は若しくは、少なくとも1種のポリエステルは、部分的又は完全にバイオベースのポリエステル、すなわちモノマーが再生可能なバイオマス供給源に由来するポリエステルであり得る。モノマーの例としては、生物由来化合物を使用することによって製造できるものが挙げられる。例えば、モノマーとしては、フルクトースを使用することによって製造することができるエチレングリコール(EG)、フランジカルボン酸(FDCA)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。バイオベースポリエステルを調製するのに適しているさらなるモノマーは、例えば、WO2014/100265 A1に記載されており、当該出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
加えて又は若しくは、少なくとも1種のポリエステルはポリエステルリサイクル材料、例えば、PETリサイクルの流れからのPETボトルスクラップなどのPETリサイクル材料である。
【0084】
したがって、本発明のポリエステルは、好ましくは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ポリエチレンナフタレン-1,5-ジカルボキシレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート/ビベンゾエート又は上記のモノマーから誘導された別の組み合わせ又はこれらのポリエステルの混合物である。例えば、使用可能なポリエステルは、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、バイオベースポリエステル、ポリエステルリサイクル材料及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0085】
ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)及びそれらの混合物が好ましい。最も好ましくは、少なくとも1種のポリエステルはポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0086】
これらのポリエステルはホモポリマーであっても、又はコポリマーであってもよい。共重合させる成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール又はポリアルキレングリコールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸又は2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸を用いることができる。
【0087】
好ましい実施形態では、ポリエステルは、ポリエステルの総重量に基づいて少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2重量%の、ジオールとの縮合によるモノマーイソフタル酸由来の単位も含有する。
【0088】
本発明のポリエステルは、好ましくは、ISO 1628-1に従って(デカリン中135℃で)測定して、0.5~1.4dl/g、より好ましくは0.65~1.0dl/g、最も好ましくは0.65~0.85dl/gの固有粘度を有する。例えば、本発明のポリエステルは、ISO 1628-1に従って(デカリン中135℃で)測定して、0.78~0.82dl/gの固有粘度を有する。
【0089】
一実施形態では、ポリエステルは、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定して、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも140℃、例えば140~180℃の範囲の結晶化温度(T)を有する。
【0090】
加えて又は若しくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の総重量に基づいて、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、最も好ましくは1.2重量%以下の量のジエチレングリコールを含む。
【0091】
少なくとも1種のポリエステルは、好ましくは非晶質又は結晶性ポリエステル、例えば結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)であることは理解されよう。
【0092】
単層又は多層ポリエステルフィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、前記少なくとも1種のポリエステルを層の総重量に基づいて20.0~70重量%未満の範囲の量で含む。
【0093】
一実施形態によれば、単層又は多層ポリエステルフィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物製品を含む層は、前記少なくとも1種のポリエステルを層の総重量に基づいて20.0~69.9重量%、より好ましくは22.0~69.9重量%、さらにより好ましくは25.0~69.5重量%、さらにより好ましくは27.0~69.0重量%、最も好ましくは30.0~65.0重量%の量で含む。
【0094】
単層又は多層ポリエステルフィルムの少なくとも1つの層が熱可塑性ポリマーをさらに含む場合、フィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、前記少なくとも1種のポリエステルを層の総重量に基づいて22.0~69.9重量%、好ましくは25.0~69.5重量%、さらにより好ましくは27.0~69.0重量%、最も好ましくは30.0~65.0重量%の量で含む。
【0095】
<表面処理されたフィラー材生成物>
本発明の単層又は多層ポリエステルフィルムの少なくとも1つの層はまた、表面処理されたフィラー材生成物を含み、前記表面処理されたフィラー材生成物は少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材を含む。表面処理されたフィラー材生成物は、請求項1に定義され、以下により詳細に記載されるいくつかの本質的な特徴を有する。
【0096】
少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、湿式又は乾燥粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材である。好ましくは、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材である。
【0097】
一般に、粉砕工程は、任意の従来の粉砕装置を用いて、例えば、粉砕が主に二次体との衝突から生じるような条件下で、すなわち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃式ミル、縦型ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、パルベライザー、シュレッダー、デクランパー(de-clamper)、ナイフカッター、又は当業者に知られている他のそのような機器の1つ以上において実施することができる。
【0098】
少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材が湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材である場合、湿式粉砕工程は、自己粉砕が生じるような条件下で、及び/又は水平ボールミル粉砕によって、及び/又は当業者に知られている他のそのような方法によって行うことができる。このようにして得られた処理された粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材を洗浄し、周知の方法によって、例えば凝集、濾過又は強制蒸発によって乾燥前に脱水することができる。次の乾燥工程は、噴霧乾燥などの単一工程で、又は例えば、関連する含水量を、少なくとも1種の湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて約0.5重量%以下のレベルに低減させるために、湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材に第1の加熱工程を適用することによる、少なくとも2工程で行うことができる。フィラーの残留総含水量は、カールフィッシャー電量滴定法により測定することができ、195℃のオーブンで水分を放出し、それをKF電量計(Mettler Toledo Coulometric KF Titrator C30とMettler oven DO 0337との組み合わせ)に、乾燥Nを100ml/分で10分間使用して連続的に通過させることによって測定することができる。残留総含水量は、検量線を用いて決定することができ、またサンプルなしの10分のガス流のブラインドを考慮に入れることができる。残留全含水量は、少なくとも1種の湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材に第2の加熱工程を適用することによってさらに低減することができる。前記乾燥が複数の乾燥工程によって行われる場合、第1工程は熱風流中で加熱することによって行われてもよく、一方、第2の及びさらなる乾燥工程は好ましくは対応する容器内の雰囲気が表面処理剤を含む間接加熱によって行われる。少なくとも1種の湿式粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材を、不純物を除去するために選鉱工程(浮遊選鉱、漂白又は磁気分離工程など)に供することも一般的である。
【0099】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、水平ボールミルで粉砕され、続いて周知の噴霧乾燥法を使用することによって乾燥される材料である。
【0100】
本発明の意味における少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)、沈降炭酸カルシウム(PCC)、改質炭酸カルシウム(MCC)、表面処理された炭酸カルシウム又はそれらの混合物の中から選択されるフィラー材を指す。
【0101】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)であり、より好ましくは粉砕炭酸カルシウム-炭酸塩含有フィラーは湿式粉砕天然炭酸カルシウムである。
【0102】
GCCは、石灰石又はチョークのような堆積岩から、又は変成岩大理石から採掘され、例えば粉砕、篩い分け及び/又は例えば、サイクロンや分類器による湿式形態の分別などの処理を介して処理された天然に存在する形態の炭酸カルシウムであると理解されよう。本発明の一実施形態では、GCCは、大理石、チョーク、ドロマイト、石灰石及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0103】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境中での二酸化炭素と石灰との反応の後の沈降によって、又はカルシウムイオン及び炭酸イオン源の水中での沈降によって、又はカルシウムイオンと炭酸イオン、例えばCaCl及びNaCOの溶液からの沈降によって得られる合成材料である。PCCを製造するさらなる可能な方法は、石灰ソーダ法、又はPCCがアンモニア製造の副生成物であるソルベー法である。沈降炭酸カルシウムは、3つの主要な結晶形:カルサイト、アラゴナイト及びバテライトで存在し、これらの結晶形のそれぞれに多くの異なる多形(晶癖)が存在する。カルサイトは、偏三角面体(S-PCC)、菱面体晶(R-PCC)、六角柱状晶、ピナコイド、コロイド結晶(C-PCC)、立方晶及び柱状晶(P-PCC)などの典型的な晶癖を有する三方晶構造を有する。アラゴナイトは、双晶六角柱状結晶の典型的な晶癖、並びに薄い細長い角柱状、湾曲したブレード状、鋭いピラミッド状、のみ状の結晶、分枝樹及びサンゴ又は紐状の形態の多様な取り合わせを有する斜方晶系構造である。バテライトは六方晶系に属する。得られたPCCスラリーは、機械的に脱水し、乾燥することができる。
【0104】
改質炭酸カルシウムは、内部構造が改質されたGCC若しくはPCC、又は表面反応GCC若しくはPCCを特徴とし得る。表面反応炭酸カルシウムは、水性懸濁液の形態のGCC又はPCCを提供し、前記懸濁液に酸を添加することによって調製することができる。適切な酸は、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、又はそれらの混合物である。次の工程では、炭酸カルシウムを気体二酸化炭素で処理する。硫酸又は塩酸などの強酸が酸処理工程に使用される場合、二酸化炭素はその場で自動的に形成されるであろう。若しくは又は加えて、二酸化炭素は外部供給源から供給することができる。表面反応炭酸カルシウムは、例えば、US2012/0031576A1、WO2009/074492A1、EP2264109A1、EP2070991A1、又はEP2264108A1に記載されている。
【0105】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は大理石、より好ましくは湿式粉砕大理石である。
【0106】
少なくとも1種の炭酸カルシウム含有フィラー材中の粉砕炭酸カルシウムの量は、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて少なくとも80重量%、例えば少なくとも95重量%、好ましくは97~100重量%の間、より好ましくは98.5~99.95重量%の間であることは理解されよう。
【0107】
少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、好ましくは粒状材料の形態であり、製造される製品の種類に関与する材料に従来使用されているような粒径分布を有していてよい。一般に、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材が0.5~3.0μmの範囲の重量中央粒径d50値を有することが本発明の1つの特別な要件である。例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、0.5μm~2μm、好ましくは0.5μm~2μm、さらにより好ましくは0.5μm~1.8μm、最も好ましくは0.6μm~1.8μm、例えば約0.8μm又は約1.7μmの重量中央粒径d50を有する。
【0108】
少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、15μm以下のトップカット(d98)を有することが好ましい。例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、10μm以下、好ましくは7.5μm以下、より好ましくは7μm以下、最も好ましくは6.5μm以下のトップカット(d98)を有する。
【0109】
少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の重量中央粒径d50値及びトップカット(d98)が特定の比率を満たすことは理解されよう。例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、0.1~0.4、好ましくは0.1~0.3、最も好ましくは0.2~0.3の、重量中央粒径d50値とトップカット(d98)との比[d50/d98]を有する。
【0110】
加えて又は若しくは、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、全粒子の少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、さらにより好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは30~40重量%が0.5μm未満の粒径を有するような細かさを有する。
【0111】
一実施形態では、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、
i)0.5μm~3.0μm、好ましくは0.5μm~2μm、より好ましくは0.5μm~2μm、さらにより好ましくは0.5μm~1.8μm、最も好ましくは0.6μm~1.8μmの重量中央粒径d50、及び
ii)15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは7.5μm以下、さらにより好ましくは7μm以下、最も好ましくは6.5μm以下のトップカット粒径d98、及び
iii)全粒子の少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、さらにより好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは30~40重量%が0.5μm未満の粒径を有するような細かさ、
を有する。
【0112】
例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、
i)0.6μm~1.8μmの重量中央粒径d50、及び
ii)6.5μm以下のトップカットd98及び
iii)全粒子の30~40重量%が0.5μm未満の粒径を有するような細かさ
を有する。
【0113】
さらに、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、ISO 9277に従う窒素及びBET法を用いて測定して、0.5~150m/gのBET比表面積を有することが好ましいことは理解されよう。例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、ISO 9277に従う窒素及びBET法を用いて測定して、0.5~50m/g、より好ましくは0.5~35m/g、最も好ましくは0.5~15m/gの比表面積(BET)を有する。
【0114】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、0.5μm~3.0μm、好ましくは0.5μm~2μm、より好ましくは0.5μm~2μm、さらにより好ましくは0.5μm~1.8μm、最も好ましくは0.6μm~1.8μm、例えば約0.8μm又は約1.7μmの重量中央粒径d50を有する大理石であることが好ましい。この場合、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、ISO 9277に従う窒素及びBET法を用いて測定して、0.5~150m/g、好ましくは0.5~50m/g、より好ましくは0.5~35m/g、最も好ましくは0.5~15m/gのBET比表面積を示す。
【0115】
本発明によれば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて1重量%以下の残留含水量を有する。少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材に応じて、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材は、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて0.01~1重量%、好ましくは0.01~0.2重量%、より好ましくは0.02~0.15重量%、最も好ましくは0.04~0.15重量%の残留総含水量を有する。
【0116】
例えば、粉砕及び噴霧乾燥大理石が少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材として使用される場合、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の残留総含水量は、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて0.01~0.1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.02~0.08重量%、最も好ましくは0.04~0.07重量%である。PCCが少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材として使用される場合、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の残留総含水量は、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて0.01~0.2重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05~0.17重量%、最も好ましくは0.05~0.10重量%である。
【0117】
本発明によれば、表面処理されたフィラー材生成物は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上に処理層をさらに含む。
【0118】
処理層は、
i.1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は
ii.少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は
iii.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iv.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
v.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
vi.i.~v.に記載の材料の混合物、
を含む。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、表面処理されたフィラー材生成物は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部の上に処理層を含み、ここで前記処理層は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。
【0120】
本発明の意味における「リン酸モノエステル」という用語は、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される1つのアルコール分子でモノエステル化されたo-リン酸分子を指す。
【0121】
本発明の意味における「リン酸ジエステル」という用語は、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族の同一又は異なるアルコールから選択される2つのアルコール分子でジエステル化されたo-リン酸分子を指す。
【0122】
本発明の意味における用語「1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンドの塩反応生成物」は、炭酸カルシウム含有フィラー材と、1種以上のリン酸モノエステル及び1種以上のリン酸ジエステル及び任意選択的にリン酸とを接触させることによって得られる生成物を指す。前記塩反応生成物は、適用された1種以上のリン酸モノエステル及び1種以上のリン酸ジエステル及び任意選択的にリン酸と、フィラー材、好ましくは少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0123】
リン酸のアルキルエステルは、特に界面活性剤、潤滑剤及び帯電防止剤として業界で周知である(Die Tenside;Kosswig und Stache, Carl Hanser Verlag Munchen,1993)。
【0124】
種々の方法によるリン酸のアルキルエステルの合成及びリン酸のアルキルエステルを用いた鉱物の表面処理は、例えば、Pesticide Formulations and Application Systems:15th Volume;Collins HM,Hall FR,Hopkinson M,STP1268;Published:1996、US3,897,519A、US4,921,990A、US4,350,645A、US6,710,199B2、US4,126,650A、US5,554,781A、EP1092000B1及びWO2008/023076A1から当業者には周知である。
【0125】
「1種以上」のリン酸モノエステルという表現は、1以上の種類のリン酸モノエステルがリン酸エステルブレンド中に存在し得ることを意味することは理解されよう。
【0126】
したがって、1種以上のリン酸モノエステルは、1種類のリン酸モノエステルであってもよいことに留意すべきである。又は、1種以上のリン酸モノエステルは、2種類以上のリン酸モノエステルの混合物であってもよい。例えば、1種以上のリン酸モノエステルは、2種類のリン酸モノエステルの混合物のように、2種類又は3種類のリン酸モノエステルの混合物であってもよい。
【0127】
本発明の一実施形態において、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0128】
本発明の一実施形態において、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30の、飽和の、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、飽和の、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0129】
本発明の一実施形態において、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、飽和の直鎖脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。又は、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、飽和の分枝鎖脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0130】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステルは、ヘキシルリン酸モノエステル、ヘプチルリン酸モノエステル、オクチルリン酸モノエステル、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ノニルリン酸モノエステル、デシルリン酸モノエステル、ウンデシルリン酸モノエステル、ドデシルリン酸モノエステル、テトラデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノ-エステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0131】
例えば、1種以上のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステルは、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステルである。
【0132】
「1種以上」のリン酸ジエステルという表現は、1種類以上のリン酸ジエステルが、表面処理材生成物の処理層及び/又はリン酸エステルブレンド中に存在し得ることを意味することは理解されよう。
【0133】
したがって、1種以上のリン酸ジエステルは、1種類のリン酸ジエステルであってもよいことに留意すべきである。又は、1種以上のリン酸ジエステルは、2種類以上のリン酸ジエステルの混合物であってもよい。例えば、1種以上のリン酸ジエステルは、2種類のリン酸ジエステルの混合物のように、2種類又は3種類のリン酸ジエステルの混合物であってもよい。
【0134】
本発明の一実施形態において、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される2つの脂肪アルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0135】
リン酸をエステル化するために使用される2つのアルコールは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族の、同一又は異なるアルコールから独立して選択され得ることが理解されよう。言い換えれば、1種以上のリン酸ジエステルは、同じアルコールに由来する2つの置換基を含んでもよく、又はリン酸ジエステル分子は、異なるアルコールに由来する2つの置換基を含んでもよい。
【0136】
本発明の一実施形態において、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30の、飽和の、直鎖又は分枝鎖の同一又は異なる脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、飽和の、直鎖又は分枝鎖の同一又は異なる脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0137】
本発明の一実施形態において、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、同一又は異なる、飽和直鎖脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。又は、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、同一又は異なる、飽和分枝鎖脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0138】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸ジエステルは、ヘキシルリン酸ジエステル、ヘプチルリン酸ジエステル、オクチルリン酸ジエステル、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ノニルリン酸ジエステル、デシルリン酸ジエステル、ウンデシルリン酸ジエステル、ドデシルリン酸ジエステル、テトラデシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0139】
例えば、1種以上のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸ジエステルは、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステルである。
【0140】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択され、並びに1種以上のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0141】
例えば、炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、1種のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。この場合、1種のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステルを含む群から選択され、1種のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステルを含む群から選択される。
【0142】
少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部が、1種のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む場合、1種のリン酸モノエステルと1種のリン酸ジエステルとのアルコール置換基は同じであることが好ましいことは理解されよう。例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル及びその塩の反応生成物と2-エチルヘキシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。又は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。又は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、ヘキサデシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物とヘキサデシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。又は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、オクタデシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物とオクタデシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。又は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。
【0143】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、2種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と2種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。この場合、2種以上のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステルを含む群から選択され、2種以上のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステルを含む群から選択される。
【0144】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、2種のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と2種のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、ヘキサデシルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。
【0145】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部上のリン酸エステルブレンドは、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とを特定のモル比で含む。特に、処理層及び/又はリン酸エステルブレンド中の、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのモル比は、1:1~1:100であり得る。
【0146】
本発明の意味における「1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのモル比」という用語は、リン酸モノエステル分子の分子量の合計及びその塩反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の合計対リン酸ジエステル分子の分子量の合計及びその塩反応生成物中のリン酸ジエステル分子の分子量の合計を指す。
【0147】
一実施形態によれば、リン酸エステルブレンド中の1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのモル比は、1:1~1:100、好ましくは1:1.1~1:80、より好ましくは1:1.1~1:60、さらにより好ましくは1:1.1~1:40、さらにより好ましくは1:1.1~1:20、最も好ましくは1:1.1~1:10である。
【0148】
加えて又は若しくは、処理層のリン酸エステルブレンドは、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物を、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのモル合計に基づいて1~50モル%の量で含む。例えば、処理層のリン酸エステルブレンドは、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物を、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのモル合計に基づいて10~45モル%の量で含む。
【0149】
本発明の一実施形態によれば、
I)1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族のアルコールから選択される1つのアルコール分子でモノエステル化されたo-リン酸分子からなり、
II)1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族の同一又は異なる脂肪アルコールから選択される2つのアルコール分子でジエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0150】
本発明の一実施形態では、処理層のリン酸エステルブレンドは、1種以上のリン酸トリエステル及び/又はリン酸並びにその塩反応生成物をさらに含む。
【0151】
本発明の意味における「リン酸トリエステル」という用語は、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族の同一又は異なるアルコールから選択される3つのアルコール分子でトリエステル化されたo-リン酸分子を指す。
【0152】
「1種以上」のリン酸トリエステルという表現は、1以上の種類のリン酸トリエステルが、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部に存在し得ることを意味することは理解されよう。
【0153】
したがって、1種以上のリン酸トリエステルは、1種類のリン酸トリエステルであってもよいことに留意すべきである。又は、1種以上のリン酸トリエステルは、2種類以上のリン酸トリエステルの混合物であってもよい。例えば、1種以上のリン酸トリエステルは、2種類のリン酸トリエステルの混合物のように、2種類又は3種類のリン酸トリエステルの混合物であってもよい。
【0154】
本発明の一実施形態において、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族の同一又は異なるアルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族の同一又は異なる脂肪アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0155】
リン酸をエステル化するために使用される3つのアルコールは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30の、不飽和又は飽和、分枝鎖又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから独立して選択され得ることが理解されよう。言い換えれば、1種以上のリン酸トリエステル分子は、同じアルコールに由来する3つの置換基を含んでもよく、又はリン酸トリエステル分子は、異なるアルコールに由来する3つの置換基を含んでもよい。
【0156】
本発明の一実施形態において、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30の、飽和の、直鎖又は分枝鎖の同一又は異なる脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、飽和の、直鎖又は分枝鎖の同一又は異なる脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0157】
本発明の一実施形態において、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、飽和の直鎖脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。又は、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の総量がC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の、飽和の分枝鎖脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0158】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸トリエステルは、ヘキシルリン酸トリエステル、ヘプチルリン酸トリエステル、オクチルリン酸トリエステル、2-エチルヘキシルリン酸トリエステル、ノニルリン酸トリエステル、デシルリン酸トリエステル、ウンデシルリン酸トリエステル、ドデシルリン酸トリエステル、テトラデシルリン酸トリエステル、ヘキサデシルリン酸トリエステル、ヘプチルノニルリン酸トリエステル、オクタデシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸トリエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0159】
例えば、1種以上のリン酸トリエステルは、2-エチルヘキシルリン酸トリエステル、ヘキサデシルリン酸トリエステル、ヘプチルノニルリン酸トリエステル、オクタデシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸トリエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0160】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと、並びに任意選択的にリン酸及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと、並びにリン酸及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。
【0161】
又は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、並びに任意選択的にリン酸及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、並びにリン酸及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。
【0162】
少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部が、1種以上のリン酸トリエステルを含むリン酸エステルブレンドを含む場合、前記リン酸エステルブレンドが、1種以上のリン酸トリエステルを、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと、並びにリン酸及びその塩反応生成物とのモル合計に基づいて10モル%以下の量で含むことが好ましい。例えば、リン酸エステルブレンドは、1種以上のリン酸トリエステルを、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと、並びにリン酸及びその塩反応生成物とのモル合計に基づいて8モル%以下、好ましくは6モル%以下、より好ましくは4モル%以下、例えば0.1~4モル%の量で含む。
【0163】
加えて又は若しくは、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部が、リン酸及びその塩反応生成物を含むリン酸エステルブレンドを含む場合、前記リン酸エステルブレンドが、リン酸及びその塩反応生成物を、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと、並びにリン酸及びその塩反応生成物とのモル合計に基づいて10モル%以下の量で含むことが好ましい。例えば、リン酸エステルブレンドは、リン酸及びその塩反応生成物を、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと、並びにリン酸及びその塩反応生成物とのモル合計に基づいて8モル%以下、好ましくは6モル%以下、より好ましくは4モル%以下、例えば0.1~4モル%の量で含む。
【0164】
リン酸エステルブレンドが、リン酸及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸トリエステルとをさらに含む場合、リン酸及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルとのリン酸エステルブレンド中のモル比が、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと、並びにリン酸及びその塩反応生成物とのモル合計に基づいて、≦10モル%:≦40モル%:≧40モル%:≦10モル%であることが好ましい。
【0165】
本発明の意味における「リン酸及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルとのモル比」という用語は、リン酸分子の分子量の合計及びその塩反応生成物中のリン酸分子の分子量の合計対リン酸モノエステル分子の分子量の合計及びその塩反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の合計対リン酸ジエステル分子の分子量の合計及びその塩反応生成物中のリン酸ジエステル分子の分子量の合計対リン酸トリエステル分子の分子量の合計を指す。
【0166】
リン酸エステルブレンドが、少なくとも1種のフィラー材、好ましくは少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材と、1種以上のリン酸モノエステル及び1種以上のリン酸ジエステル及び任意選択的にリン酸とを接触させることにより得られる塩反応生成物を含んでもよいことは理解されよう。そのような場合、リン酸エステルブレンドは、好ましくはリン酸モノエステルの1種以上のカルシウム塩、マグネシウム塩及び/又はアルミニウム塩並びにリン酸ジエステルの1種以上のカルシウム塩、マグネシウム塩及び/又はアルミニウム塩並びに任意選択的にリン酸の1種以上のカルシウム塩、マグネシウム塩及び/又はアルミニウム塩などの塩反応生成物を含む。好ましくは、リン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩、並びにリン酸ジエステルの1種以上のカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩、並びに任意選択的にリン酸の1種以上のカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩などの塩反応生成物を含む。
【0167】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及び任意選択的にリン酸は、一価及び/又は二価及び/又は三価のカチオンの1種以上の水酸化物並びに/又は一価及び/又は二価及び/又は三価のカチオンの弱酸の1種以上の塩によって、少なくとも1種のフィラー材、好ましくは少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材が調製される前に、少なくとも部分的に中和することができる。二価及び/又は三価のカチオンの1種以上の水酸化物は、Ca(OH)、Mg(OH)、Al(OH)及びそれらの混合物から選択され得る。
【0168】
加えて又は若しくは、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及び任意選択的にリン酸が、1種以上の水酸化物及び/又は一価カチオンの弱酸の1種以上の塩によって少なくとも部分的に中和される場合、一価カチオンの量は、1種以上のリン酸モノエステル及び1種以上のリン酸ジエステル及び任意選択的にリン酸中の酸性基のモル合計に基づいて10モル%以下であることが好ましく、中和するための1種以上の水酸化物及び/又は1種以上の一価カチオンの弱酸の塩は、LiOH、NaOH、KOH、NaCO、LiCO、KCO及びそれらの混合物から選択することができる。
【0169】
本発明の一実施形態において、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及び任意選択のリン酸の部分中和に使用される二価カチオンは、そのようなカチオンの弱酸の塩、好ましくは炭酸塩及び/又はホウ酸塩、例えば炭酸カルシウムに由来する。
【0170】
本出願の意味における「弱酸」という用語は、ブレンステッドローリー酸、すなわち、pKが2超、好ましくは4~7であることを特徴とするHイオン供与体を指す。
【0171】
したがって、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩、並びにリン酸ジエステルの1種以上のカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩、並びに任意選択的にリン酸の1種以上のカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩などの塩反応生成物をさらに含み得る。加えて又は若しくは、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のアルミニウム塩、及びリン酸ジエステルの1種以上のアルミニウム塩、及び任意選択的にリン酸の1種以上のアルミニウム塩などの塩反応生成物をさらに含む。加えて又は若しくは、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のリチウム塩、及びリン酸ジエステルの1種以上のリチウム塩、及び任意選択的にリン酸の1種以上のリチウム塩などの塩反応生成物をさらに含む。加えて又は若しくは、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のナトリウム塩、及びリン酸ジエステルの1種以上のナトリウム塩、及び任意選択的にリン酸の1種以上のナトリウム塩などの塩反応生成物をさらに含む。加えて又は若しくは、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のカリウム塩、及びリン酸ジエステルの1種以上のカリウム塩、及び任意選択的にリン酸の1種以上のカリウム塩などの塩反応生成物をさらに含む。
【0172】
1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及び任意選択的にリン酸が、1種以上の水酸化物及び/又は一価カチオンの弱酸の1種以上の塩によって少なくとも部分的に中和される場合、処理層及び/又はリン酸エステルブレンドは、1種以上のリン酸モノエステル及び1種以上のリン酸ジエステル及び任意選択的にリン酸中の酸性基のモル合計に基づいて10モル%以下の量の一価カチオンを含むことが好ましい。
【0173】
本発明の一実施形態では、処理層のリン酸エステルブレンドは、本発明の1種以上のリン酸モノエステル、1種以上のリン酸ジエステル及び任意選択の1種以上のリン酸トリエステル及び/又はリン酸に対応しない追加の表面処理剤をさらに含んでもよい。
【0174】
一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルとその塩反応生成物とのモル比は、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは70:30~90:10である。
【0175】
本発明の意味における「1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルとその塩反応生成物とのモル比」という用語は、リン酸モノエステル分子の分子量の合計及び/又はリン酸ジエステル分子の分子量の合計対リン酸モノエステルの塩反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の合計及び/又はリン酸ジエステルの塩反応生成物中のリン酸ジエステル分子の合計を指す。
【0176】
少なくとも1つのリン酸エステルブレンド及びコーティングに適した化合物で処理された表面処理されたフィラー材生成物を調製するための方法は、例えば、EP2770017A1に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0177】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理されたフィラー材生成物は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部の上に処理層を含み、ここで前記処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物を含む。
【0178】
例えば、処理層は、炭素原子の総量がC4~C24の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0179】
本発明の意味における飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸の「塩反応生成物」という用語は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材を少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸と接触させることによって得られる生成物を指す。前記反応生成物は、適用された少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸の少なくとも一部と、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0180】
本発明の意味における脂肪族カルボン酸は、1種以上の直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和及び/又は脂環式カルボン酸から選択され得る。好ましくは、脂肪族カルボン酸はモノカルボン酸であり、すなわち、脂肪族カルボン酸は単一のカルボキシル基が存在することを特徴とする。前記カルボキシル基は、炭素骨格の末端に配置される。
【0181】
本発明の一実施形態では、脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸は飽和非分枝鎖カルボン酸から選択され、すなわち、脂肪族カルボン酸はペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコリシン酸、リグノセリン酸及びそれらの混合物からなるカルボン酸の群から選択されることが好ましい。
【0182】
本発明の別の実施形態では、脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸は、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸は、オクタン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0183】
例えば、脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸はオクタン酸又はステアリン酸である。好ましくは、脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸はステアリン酸である。
【0184】
一実施形態では、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸とその塩反応生成物とのモル比は、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは70:30~90:10である。
【0185】
本発明の意味における「少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸とその塩反応生成物とのモル比」という用語は、飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸の分子量の合計対塩反応生成物中の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸の分子量の合計を指す。
【0186】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理されたフィラー材は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部の上に処理層を含み、ここで前記処理層は、少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0187】
これに関して、少なくとも1種の脂肪族アルデヒドは表面処理剤を表し、任意の直鎖、分枝鎖又は脂環式の、置換又は非置換の、飽和又は不飽和脂肪族アルデヒドから選択することができる。前記アルデヒドは、好ましくは、炭素原子数が6以上、より好ましくは8以上となるように選択される。さらに、前記アルデヒドは、一般に、14以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下の炭素原子数を有する。好ましい一実施形態では、脂肪族アルデヒドの炭素原子数は6~14の間、好ましくは6~12の間、さらに好ましくは6~10の間である。
【0188】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの脂肪族アルデヒドは、炭素原子数が6~12の間、より好ましくは6~9の間、最も好ましくは8又は9となるように選択されることが好ましい。
【0189】
脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、(E)-2-ヘキセナール、(Z)-2-ヘキセナール、(E)-3-ヘキセナール、(Z)-3-ヘキセナール、(E)-4-ヘキセナール、(Z)-4-ヘキセナール、5-ヘキセナール、ヘプタナール、(E)-2-ヘプテナール、(Z)-2-ヘプテナール、(E)-3-ヘプテナール、(Z)-3-ヘプテナール、(E)-4-ヘプテナール、(Z)-4-ヘプテナール、(E)-5-ヘプテナール、(Z)-5-ヘプテナール、6-ヘプテナール、オクタナール、(E)-2-オクテナール、(Z)-2-オクテナール、(E)-3-オクテナール、(Z)-3-オクテナール、(E)-4-オクテナール、(Z)-4-オクテナール、(E)-5-オクテナール、(Z)-5-オクテナール、(E)-6-オクテナール、(Z)-6-オクテナール、7-オクテナール、ノナナール、(E)-2-ノネナール、(Z)-2-ノネナール、(E)-3-ノネナール、(Z)-3-ノネナール、(E)-4-ノネナール、(Z)-4-ノネナール、(E)-5-ノネナール、(Z)-5-ノネナール、(E)-6-ノネナール、(Z)-6-ノネナール、(E)-6-ノネナール、(Z)-6-ノネナール、(E)-7-ノネナール、(Z)-7-ノネナール、8-ノネナール、デカナール、(E)-2-デセナ-ル、(Z)-2-デセナ-ル、(E)-3-デセナ-ル、(Z)-3-デセナ-ル、(E)-4-デセナ-ル、(Z)-4-デセナ-ル、(E)-5-デセナ-ル、(Z)-5-デセナール、(E)-6-デセナール、(Z)-6-デセナール、(E)-7-デセナール、(Z)-7-デセナール、(E)-8-デセナール、(Z)-8-デセナール、9-デセナール、ウンデカナール、(E)-2-ウンデセナ-ル、(Z)-2-ウンデセナ-ル、(E)-3-ウンデセナ-ル、(Z)-3-ウンデセナ-ル、(E)-4-ウンデセナ-ル、(Z)-4-ウンデセナ-ル、(E)-5-ウンデセナ-ル、(Z)-5-ウンデセナール、(E)-6-ウンデセナ-ル、(Z)-6-ウンデセナ-ル、(E)-7-ウンデセナ-ル、(Z)-7-ウンデセナ-ル、(E)-8-ウンデセナ-ル、(Z)-8-ウンデセナ-ル、(E)-9-ウンデセナール、(Z)-9-ウンデセナール、10-ウンデセナール、ドデカナール、(E)-2-ドデセナール、(Z)-2-ドデセナール、(E)-3-ドデセナール、(Z)-3-ドデセナール、(E)-4-ドデセナール、(Z)-4-ドデセナール、(E)-5-ドデセナール、(Z)-5-ドデセナール、(E)-6-ドデセナール、(Z)-6-ドデセナール、(E)-7-ドデセナール、(Z)-7-ドデセナール、(E)-8-ドデセナール、(Z)-8-ドデセナール、(E)-9-ドデセナール、(Z)-9-ドデセナール、(E)-10-ドデセナール、(Z)-10-ドデセナール、11-ドデセナール、トリデカナール、(E)-2-トリデセナール、(Z)-2-トリデセナール、(E)-3-トリデセナール、(Z)-3-トリデセナール、(E)-4-トリデセナール、(Z)-4-トリデセナール、(E)-5-トリデセナール、(Z)-5-トリデセナール、(E)-6-トリデセナール、(Z)-6-トリデセナール、(E)-7-トリデセナール、(Z)-7-トリデセナール、(E)-8-トリデセナール、(Z)-8-トリデセナール、(E)-9-トリデセナール、(Z)-9-トリデセナール、(E)-10-トリデセナール、(Z)-10-トリデセナール、(E)-11-トリデセナール、(Z)-11-トリデセナール、12-トリデセナール、ブタデカナール、(E)-2-ブタデセナール、(Z)-2-ブタデセナール、(E)-3-ブタデセナール、(Z)-3-ブタデセナール、(E)-4-ブタデセナール、(Z)-4-ブタデセナール、(E)-5-ブタデセナール、(Z)-5-ブタデセナール、(E)-6-ブタデセナール、(Z)-6-ブタデセナール、(E)-7-ブタデセナール、(Z)-7-ブタデセナール、(E)-8-ブタデセナール、(Z)-8-ブタデセナール、(E)-9-ブタデセナール、(Z)-9-ブタデセナール、(E)-10-ブタデセナール、(Z)-10-ブタデセナール、(E)-11-ブタデセナール、(Z)-11-ブタデセナール、(E)-12-ブタデセナール、(Z)-12-ブタデセナール、13-ブタデセナール及びそれらの混合物からなる脂肪族アルデヒドの群から選択することができる。好ましい実施形態では、脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、(E)-2-ヘキセナール、(Z)-2-ヘキセナール、(E)-3-ヘキセナール、(Z)-3-ヘキセナール、(E)-4-ヘキセナール、(Z)-4-ヘキセナール、5-ヘキセナール、ヘプタナール、(E)-2-ヘプテナール、(Z)-2-ヘプテナール、(E)-3-ヘプテナール、(Z)-3-ヘプテナール、(E)-4-ヘプテナール、(Z)-4-ヘプテナール、(E)-5-ヘプテナール、(Z)-5-ヘプテナール、6-ヘプテナール、オクタナール、(E)-2-オクテナール、(Z)-2-オクテナール、(E)-3-オクテナール、(Z)-3-オクテナール、(E)-4-オクテナール、(Z)-4-オクテナール、(E)-5-オクテナール、(Z)-5-オクテナール、(E)-6-オクテナール、(Z)-6-オクテナール、7-オクテナール、ノナナール、(E)-2-ノネナール、(Z)-2-ノネナール、(E)-3-ノネナール、(Z)-3-ノネナール、(E)-4-ノネナール、(Z)-4-ノネナール、(E)-5-ノネナール、(Z)-5-ノネナール、(E)-6-ノネナール、(Z)-6-ノネナール、(E)-7-ノネナール、(Z)-7-ノネナール、8-ノネナール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0190】
他の好ましい実施形態では、少なくとも1種の脂肪族アルデヒドは飽和脂肪族アルデヒドである。この場合、脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、ブタデカナール及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、飽和脂肪族アルデヒドの形態の少なくとも1種の脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール及びそれらの混合物からなる群から選択される。例えば、飽和脂肪族アルデヒドの形態の少なくとも1種の脂肪族アルデヒドは、オクタナール、ノナナール及びそれらの混合物から選択される。
【0191】
2種の脂肪族アルデヒド、例えばオクタナールとノナナールなどの2種の飽和脂肪族アルデヒドの混合物が本発明に従って使用される場合、オクタナールとノナナールとの重量比は70:30~30:70、より好ましくは60:40~40:60である。本発明の特に好ましい一実施形態では、オクタナールとノナナールとの重量比は約1:1である。
【0192】
本発明の意味における少なくとも1種の脂肪族アルデヒドの「塩反応生成物」という用語は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材を少なくとも1種の脂肪族アルデヒドと接触させることによって得られる生成物を指す。前記反応生成物は、適用された少なくとも1種の脂肪族アルデヒドと、少なくとも1種のフィラー材、好ましくは少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0193】
一実施形態では、少なくとも1種の脂肪族アルデヒドとその塩反応生成物とのモル比は、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは70:30~90:10である。
【0194】
本発明の意味における「少なくとも1種の脂肪族アルデヒドとその塩反応生成物とのモル比」という用語は、脂肪族アルデヒドの分子量の合計対塩反応生成物中の脂肪族アルデヒドの分子量の合計を指す。
【0195】
少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及びコーティングに適した化合物で処理された表面処理されたフィラー材生成物を調製するための方法は、例えば、EP2390285A1に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0196】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理されたフィラー材は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部の上に処理層を含み、ここで、前記処理層は、置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0197】
「無水コハク酸」という用語は、ジヒドロ-2,5-フランジオン、コハク酸無水物又はコハク酸オキシドとも呼ばれ、分子式Cを有し、コハク酸の酸無水物である。
【0198】
本発明の意味における「一置換」無水コハク酸という用語は、1つの水素原子が別の置換基で置換されている無水コハク酸を指す。
【0199】
本発明の意味における「一置換」コハク酸という用語は、1つの水素原子が別の置換基で置換されているコハク酸を指す。
【0200】
少なくとも1種の一置換無水コハク酸の「塩反応生成物」という用語は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材を1種以上の一置換無水コハク酸と接触させることによって得られる生成物を指す。前記塩反応生成物は、適用された一置換無水コハク酸から形成される一置換コハク酸と、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面に位置する反応性分子との間に形成される。又は、前記塩反応生成物は、少なくとも1種の一置換無水コハク酸と共に任意選択的に存在する一置換コハク酸と、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0201】
例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層は、置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物を含む。より好ましくは、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層は、置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30、さらにより好ましくは少なくともC~C20、最も好ましくはC~C18の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0202】
より正確には、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層は、置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30、好ましくはC~C30、より好ましくは少なくともC~C20、最も好ましくはC~C18の直鎖脂肪族基である基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物を含む。加えて又は若しくは、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層は、置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30、好ましくはC~C30、より好ましくは少なくともC~C20、最も好ましくはC~C18の分枝鎖脂肪族基である基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物を含む。加えて又は若しくは、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層は、置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30、好ましくはC~C20、最も好ましくはC~C18の脂肪族環式基である基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0203】
置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及びコーティングに適した化合物で処理された表面処理されたフィラー材生成物の調製方法は、WO2016/023937A1に記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0204】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理されたフィラー材生成物は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部の上に処理層を含み、処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0205】
好ましいポリジアルキルシロキサンは、例えばUS2004/0097616A1に記載されている。最も好ましいのは、ポリジメチルシロキサン、好ましくはジメチコン、ポリジエチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサン並びに/又はそれらの混合物からなる群から選択されるポリジアルキルシロキサンである。
【0206】
例えば、少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンは、好ましくはポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0207】
少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンは、好ましくは、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部上の前記ポリジアルキルシロキサンの総量が1000ppm未満、より好ましくは800ppm未満、最も好ましくは600ppm未満であるような量で存在する。例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部上のポリジアルキルシロキサンの総量は、100~1000ppm、より好ましくは200~800ppm、最も好ましくは300~600ppm、例えば400~600ppmである。
【0208】
少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層は、好ましくは、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖若しくは分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、並びに/又は置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物を含む。より好ましくは、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物を含む。
【0209】
一実施形態では、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部上の処理層は、上記材料の混合物、好ましくは2種の材料の混合物を含む。
【0210】
したがって、後処理層が処理層上に存在してもよい。
【0211】
本発明の意味における「後処理層」は、処理層とは異なり得る表面処理剤の層、好ましくは単層を指し、「後処理層」は「処理層」上に位置する。
【0212】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面処理は2工程で行われ、第1工程は、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンド、又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖若しくは分枝鎖カルボン酸、又は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド、又は置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸による、処理層形成のための処理を含み、並びに第2工程は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンによる後処理層形成のための処理を含む。
【0213】
別の実施形態では、表面処理は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材を、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンド、又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖若しくは分枝鎖カルボン酸、又は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド、又は置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸と、少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンとにより、処理層形成のために同時に処理することによって行われる。
【0214】
さらに、表面処理は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材を、最初にポリジアルキルシロキサンで処理し、続いて1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンド、又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖若しくは分枝鎖カルボン酸、又は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド、又は置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸で処理することによって行われ得る。
【0215】
好ましくは、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0216】
したがって、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部上の処理層は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物、及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含み、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0217】
又は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝カルボン酸及びその塩反応生成物を含み、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0218】
又は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物を含み、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0219】
又は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部上の処理層は、置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物を含み、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0220】
より好ましくは、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖若しくは分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、又は置換基中の炭素原子の総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物を含み、最も好ましくはそれらからなり、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含み、より好ましくはそれからなる。例えば、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝カルボン酸及びその塩反応生成物を含み、最も好ましくはそれらからなり、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含み、より好ましくはそれからなる。
【0221】
一実施形態によれば、リン酸エステル、1種以上のリン酸モノエステル、1種以上のリン酸ジエステルのブレンド、又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖若しくは分枝鎖カルボン酸、少なくとも1種の脂肪族アルデヒド、又は少なくとも1種の一置換無水コハク酸の塩反応生成物は、1種以上のそれらのカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩である。
【0222】
したがって、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材生成物は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材及び以下を含む処理層
i.1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物、及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は
ii.少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は
iii.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iv.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸、及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
v.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
vi.i.~v.に記載の材料の混合物、
を含むか、好ましくはそれらからなる。
【0223】
処理層は、前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上に形成される。
【0224】
本発明の1つの要件は、表面処理されたフィラー材生成物が、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて0.1~2.3重量%の量で処理層を含むことである。
【0225】
一実施形態によれば、表面処理されたフィラー材生成物は、処理層を、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて0.2~2.0重量%、好ましくは0.4~1.9重量%、最も好ましくは0.5~1.8重量%の量で含む。
【0226】
処理層は、好ましくは、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は前記材料の混合物の、表面処理されたフィラー材生成物の表面上の総重量が、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材1m当たり、0.05~1重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%、最も好ましくは0.15~0.25重量%であることを特徴とする。
【0227】
本発明の一実施形態では、処理層は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は前記材料の混合物の、表面処理されたフィラー材生成物の表面上の総重量が、少なくとも1種の炭酸カルシウム含有フィラー材1m当たり、0.1~5mg、より好ましくは0.25~4.5mg、最も好ましくは1.0~4.0mgであることを特徴とする。
【0228】
表面処理されたフィラー材生成物は、好ましくは250℃以上の揮発開始温度を特徴とすることは理解されよう。例えば、表面処理されたフィラー材生成物は、260℃以上又は270℃以上の揮発開始温度を特徴とする。一実施形態では、表面処理されたフィラー材生成物は、250℃~400℃、好ましくは260℃~400℃、最も好ましくは270℃~400℃の揮発開始温度を特徴とする。
【0229】
加えて又は若しくは、表面処理されたフィラー材生成物は、25~350℃の間で0.25質量%未満、好ましくは0.23質量%未満、例えば、0.04~0.21質量%、好ましくは0.08~0.15質量%、より好ましくは0.1~0.12質量%の総揮発分を特徴とする。
【0230】
さらに、表面処理されたフィラー材生成物は、低吸水性を特徴とする。表面処理されたフィラー材生成物の吸湿性は、約+23℃(±2℃)の温度において、その総表面水分レベルが乾燥炭酸カルシウム含有フィラー材1g当たり1mg未満であるようなものであることが好ましい。例えば、表面処理されたフィラー材生成物は、+23℃(±2℃)の温度の後で、乾燥炭酸カルシウム含有フィラー材1g当たり0.1~1mg、より好ましくは0.2~0.9mg、最も好ましくは0.2~0.8mgの吸湿性を有する。
【0231】
加えて又は若しくは、表面処理されたフィラー材生成物は、沈降法を用いて+23℃(±2℃)で測定して、水:エタノールの体積比が8:2未満の親水性を有する。例えば、表面処理されたフィラー材生成物は、沈降法を用いて+23℃(±2℃)で測定して、水:エタノールの体積比が7:3未満の親水性を有する。
【0232】
単層又は多層ポリエステルフィルムの少なくとも一層は、表面処理されたフィラー材生成物を特に高い含有量で含むことは理解されよう。したがって、単層又は多層ポリエステルフィルムの少なくとも1層は、表面処理されたフィラー材生成物を層の総重量に基づいて30超~80.0重量%の量で含む。
【0233】
一実施形態によれば、単層又は多層ポリエステルフィルムの少なくとも1層は、表面処理されたフィラー材生成物を層の総重量に基づいて30.01~80.0重量%、好ましくは30.1~78.0重量%、より好ましくは30.5~75.0重量%、さらにより好ましくは31.0~73.0重量%、最も好ましくは35.0~70.0重量%の量で含む。
【0234】
本発明の一態様によれば、上記の表面処理されたフィラー材生成物は、単層又は多層ポリエステルフィルム中のボイド形成剤として使用される。
【0235】
<単層又は多層ポリエステルフィルム>
本発明によれば、単層又は多層ポリエステルフィルムであって、層の総重量に基づいて20.0~70重量%未満の範囲の量の少なくとも1種のポリエステル及び30超~80.0重量%の範囲の量の表面処理されたフィラー材生成物を含み、前記表面処理されたフィラー材生成物が、
A)0.5μm~3.0μmの範囲の重量中央粒径d50を有する少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材、並びに
B)前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層であって、
i.1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は
ii.少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は
iii.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iv.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
v.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
vi.i.~v.に記載の材料の混合物、
を含む、処理層を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物が、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて、0.1~2.3重量%の量の処理層を含む、単層又は多層ポリエステルフィルムが提供される。
【0236】
既に上述したように、特に高いフィラー含有量、すなわち高い含有量の表面処理されたフィラー材生成物を有する単層又は多層ポリエステルフィルムを調製できることが有利に見出された。したがって、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、前記表面処理されたフィラー材生成物を層の総重量に基づいて30超~80.0重量%の量で含み、好ましくは30.01~80.0重量%、より好ましくは30.1~78.0重量%、さらにより好ましくは30.5~75.0重量%、さらにより好ましくは31.0~73.0重量%、最も好ましくは35.0~70.0重量%の量で含む。
【0237】
単層又は多層ポリエステルフィルムは、任意の種類のポリエステルフィルムであり得る。好ましくは、単層又は多層ポリエステルフィルムはキャストフィルム、インフレートフィルム、ダブルバブルフィルム又は一軸配向ポリエステルフィルムである。より好ましくは、単層又は多層ポリエステルフィルムはキャストフィルム又は一軸配向ポリエステルフィルムである。最も好ましくは、単層又は多層ポリエステルフィルムは一軸配向ポリエステルフィルムである。
【0238】
例えば、用語「一軸配向」ポリエステルフィルムは、キャストフィルムを縦方向(MD)又は横方向(TD)のうちの一方向にのみ延伸することによって得られるフィルムを指す。
【0239】
単層又は多層ポリエステルフィルムは、特に表面処理されたフィラー材生成物を含まないフィルムと比較して低密度を特に特徴とする。したがって、単層又は多層ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、好ましくは1.8~2.4g/cm、好ましくは1.8~2.35g/cm、より好ましくは1.85~2.3g/cm、最も好ましくは1.9~2.25g/m の密度を有する。
【0240】
一実施形態によれば、単層又は多層ポリエステルフィルムの厚さ中央値、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層の厚さ中央値は、0.5~2000μm、好ましくは4~1500μm、より好ましくは5~1300μm、最も好ましくは6~1000μm、例えば8~500μmである。
【0241】
一実施形態によれば、単層又は多層ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、0.5~2000μm、好ましくは4~1500μm、より好ましくは5~1300μm、最も好ましくは6~1000μm、例えば8~500μmの厚さ中央値及び1.8~2.4g/cm、好ましくは1.8~2.35g/cm、より好ましくは1.85~2.3g/cm、最も好ましくは1.9~2.25g/m の密度を有する。
【0242】
ポリエステルフィルムは単層又は多層フィルムであることは理解されよう。
【0243】
多層ポリエステルフィルムの場合、このフィルムは互いに隣接している、すなわち直接接触している2以上の層、例えば2~10層、好ましくは3層からなる。多層フィルムが3層フィルムである場合、このフィルムは好ましくはフィルム構造A-B-A又はA-B-Cを有する。多層フィルムでは、コア層がボイド化されている、すなわち層が少なくとも1種のポリエステルと表面処理されたフィラー材生成物とを含むことが好ましい。一実施形態では、多層フィルムは、2つの隣接する層の間に配置されているバリア層を含む。本出願の意味における「バリア層」とは、包装された商品を様々な外部の影響から保護するために使用される拡散バリア、例えば、酸素及び/又は水蒸気バリアを指す。
【0244】
バリア層は、この目的に適していることが当技術分野において知られている任意の材料であってよい。例えば、バリア層は、アルミニウム層、Al層、SiO層、エチレンビニルアルコール層、ポリ(ビニルアルコール)層、ポリ塩化ビニリデン層、ポリプロピレン層、好ましくは配向ポリプロピレン層、ポリエチレン層、好ましくは配向ポリエチレン層、ポリエステルバリア層、例えばHOSTAPHAN(R)ブランドで販売されているもの及びそれらの混合物であり得る。
【0245】
単層又は多層ポリエステルフィルム、特に表面処理されたフィラー材生成物を含む層の厚さ中央値は、製造される製品に応じて広い範囲で変わり得ることは理解されよう。
【0246】
例えば、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、他の個々の層、すなわち少なくとも1種のポリエステル及び/又は表面処理されたフィラー材生成物を含まない層より厚さが大きいことが好ましい。又は、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、前記他の層、すなわち少なくとも1種のポリエステル及び/又は表面処理されたフィラー材生成物を含まない層、好ましくは少なくとも1種のポリエステルと表面処理されたフィラー材生成物とを含まない層と同じ厚さである。
【0247】
好ましくは、単層又は多層ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、0.5~2000μm、好ましくは4~1500μm、より好ましくは5~1300μm、最も好ましくは6~1000μm、例えば8~500μmの厚さ中央値を有する。
【0248】
単層又は多層ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、バランスのとれた微多孔性フィルム/層であることが有利である。すなわちボイドの形成を制御することによって、高いフィラー含有量で低密度及び不透明な外観を有する微多孔性フィルム又は層が提供される。
【0249】
したがって、単層又は多層ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、好ましくは、
a)1.8~2.4g/cm、好ましくは1.8~2.35g/cm、より好ましくは1.85~2.3g/cm、最も好ましくは1.9~2.25g/m の範囲の密度、及び/又は
b)50%以上、好ましくは55%以上、最も好ましくは60%以上の不透明度、
を有する。
【0250】
例えば、単層又は多層ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、好ましくは、
a)1.8~2.4g/cm、好ましくは1.8~2.35g/cm、より好ましくは1.85~2.3g/cm、最も好ましくは1.9~2.25g/m の範囲の密度、又は
b)50%以上、好ましくは55%以上、最も好ましくは60%以上の不透明度、
を有する。
【0251】
特記しない限り、本明細書に記載の機械的及び光学的性質は、本明細書の以下に記載の実施例の節に従って調製される、すなわち二軸ラボストレッチャー(Model Maxi Grip 750S Bi-axial Laboratory Stretching Frame、Dr.Collin GmbH、Germany)を使用して記載された条件下で調製される1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層又はフィルムについて言及している。したがって、異なる条件下で調製されたポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層又はフィルムについての結果は、本明細書で定義された機械的性質及び光学的性質から逸脱する可能性があることは理解されよう。
【0252】
さらに、単層又は多層ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、フィルム、特に層の機械的性質が高レベルに保たれるので有利である。
【0253】
さらに、単層又は多層ポリエステルフィルム、好ましくは表面処理されたフィラー材生成物を含む少なくとも1層は微多孔性であり、良好な光学的性質を有することは理解されよう。
【0254】
一実施形態によれば、単層又は多層ポリエステルフィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、熱可塑性ポリマー、好ましくは架橋剤で架橋されたものをさらに含む。熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ポリオレフィン、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリケトン、ポリスルホン、フルオロポリマー、ポリアセタール、アイオノマー、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル並びにそれらの共重合樹脂及び混合物からなる群から選択される。
【0255】
したがって、単層又は多層ポリエステルフィルムが熱可塑性ポリマーを含む場合、前記熱可塑性ポリマーは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物と同じ層に存在する。
【0256】
単層又は多層ポリエステルフィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層における熱可塑性ポリマーの存在は、それが有機ボイド形成剤として作用し、したがってフィルム又は層の調製中にボイドの形成を改善するので有利である。しかしながら、熱可塑性ポリマーは、典型的には、フィルム又は層の不透明な外観を高めることを助けはしない。
【0257】
熱可塑性ポリマーは少なくとも1種のポリエステルには溶解しないことに留意されたい。したがって、少なくとも1種のポリエステルは連続相、すなわちマトリックスを形成し、熱可塑性ポリマーはその中に分散しており、すなわち分散相を形成している。
【0258】
使用され得るポリオレフィンは、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0259】
ポリオレフィンはコポリマーであっても又はホモポリマーであってもよいが、後者が特に好ましい。
【0260】
ポリオレフィンがコポリマーである場合、前記ポリオレフィンは、好ましくは、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレンメチルアクリレートコポリマー、エチレンブチルアクリレートコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0261】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリプロピレン、好ましくはプロピレンホモポリマーである。
【0262】
ポリオレフィンである熱可塑性ポリマーは、好ましくはISO 1133に従って測定して1~20g/10分、好ましくは1~15g/10分、より好ましくは1~10g/10分、最も好ましくは1~5g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃;2.16kg)を有する。
【0263】
加えて又は若しくは、ポリオレフィンである熱可塑性ポリマーは、好ましくは0.920g/cm未満、より好ましくは0.910g/cm未満、さらにより好ましくは0.800~0.920g/cm、さらにより好ましくは0.850~0.910g/cm、最も好ましくは0.880~0.910g/cmの範囲の密度を有する。
【0264】
ポリプロピレンなどのポリオレフィンがボイド形成剤として使用される場合、前記ポリオレフィンはしばしば十分に分散せず、ボイドの均一な分布を得るために例えばカルボキシル化ポリエチレンなどの相溶化剤を必要とし得ることに留意すべきである。ボイド化フィルムを製造するために少なくとも1種のポリエステルと共に使用される場合、ポリオレフィンもまたポリエステルフィルムの表面張力を低下させる傾向があり、それによってフィルムの印刷適性が低下する。ポリオレフィンは室温で少なくとも1種のポリエステルよりも柔らかく、それは時として全体のフィルム弾性率を許容できないレベルまで低下させる。最後に、ポリオレフィンは比較的非効率的なボイド形成剤であり、必要な密度減少を達成するために大量のものが必要とされ、それは表面の粗さ不足及び印刷に問題をもたらし、したがって単層フィルムにポリオレフィンを使用することは困難となる。
【0265】
本発明の意味における環状オレフィンコポリマー(COC)は、エチレンと、ビシクロアルケン及びトリシクロアルケンからなる群から選択される少なくとも1種の環状オレフィンとのコポリマーを指す。
【0266】
環状オレフィンコポリマー(COC)の代表例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、1-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、6-エチルビシクロ[2.2,1]ヘプタ-2-エン、6-n-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、6-i-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、7-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、2-メチル-トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、5-メチル-トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、トリシクロ[4.4.0.12,5]-3-デセン及び10-メチル-トリシクロ[4.4.0.12,5]-3-デセンが挙げられる。
【0267】
使用可能なポリアミドは、好ましくはポリアミド6(ナイロン6とも呼ばれる)又はポリアミド66(ナイロン66とも呼ばれる)である。
【0268】
例えば、熱可塑性ポリマーはポリプロピレン、好ましくはプロピレンホモポリマーである。
【0269】
単層又は多層ポリエステルフィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、熱可塑性ポリマーを層の総重量に基づいて0.1~29.9重量%、好ましくは1~28重量%、より好ましくは2~26重量%、さらにより好ましくは3~25重量%、さらにより好ましくは4.5~23重量%、最も好ましくは4重量%~20重量%の量で含む。
【0270】
一実施形態では、単層又は多層ポリエステルフィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、表面処理されたフィラー材生成物の量より少ない量で熱可塑性ポリマーを含む。例えば、単層又は多層ポリエステルフィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、熱可塑性プラスチックを、表面処理されたフィラー材生成物の総重量に基づいて少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%、表面処理されたフィラー材生成物の量を下回る量で含む。
【0271】
加えて又は若しくは、フィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材をさらに含む。好ましくは、表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材は、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、アルカリ金属塩、例えば炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。無機フィラー材としては硫酸バリウムが特に好ましい。
【0272】
単層又は多層ポリエステルフィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層における、表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材の存在が、それが無機ボイド形成剤として作用し、したがってフィルムの調整中にボイドの形成をさらに改善するので有利であることは理解されよう。さらに、表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材は、フィルム又は層の不透明な外観をさらに高める。
【0273】
しかしながら、フィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層が、前記表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材をさらに含む場合、この無機フィラー材の量は典型的には前記表面処理されたフィラー材生成物の量より少ない。
【0274】
例えば、フィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、前記表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材を、層の総重量に基づいて1~10重量%の量で含む。
【0275】
一実施形態では、単層又は多層ポリエステルフィルムの、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、前記表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材を、前記表面処理されたフィラー材生成物の総重量に基づいて少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%、前記表面処理されたフィラー材生成物の量を下回る量で含む。
【0276】
表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材の重量中央粒径d50は、好ましくは表面処理されたフィラー材生成物の重量中央粒径d50と同様である。したがって、表面処理されたフィラー材生成物とは異なる無機フィラー材は、好ましくは0.5μm~3.0μm、好ましくは0.5μm~2.5μm、より好ましくは0.5μm~2μm、さらに好ましくは0.5μm~1.8μm、最も好ましくは0.6μm~1.8μmの範囲の重量中央粒径d50を有する。
【0277】
加えて又は若しくは、単層又は多層ポリエステルフィルムは、製造されるフィルムにおいて添加剤として通常使用される添加剤をさらに含んでもよい。有利には、それらは溶融前に予めポリマー又はポリマー混合物に添加される。又は、前記化合物をマスターバッチに添加することができる。
【0278】
例えば、単層又は多層ポリエステルフィルムは、光安定剤、蛍光増白剤、青色染料、ブロッキング防止剤、白色顔料、及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を含む。
【0279】
好ましくは、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、光安定剤、蛍光増白剤、青色染料、ブロッキング防止剤、白色顔料、及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を含む。
【0280】
紫外線安定剤又は紫外線吸収剤である光安定剤は、光誘起分解の物理的及び化学的過程に介入することができる化学添加剤であることが理解される。カーボンブラック及び他の顔料は光の悪影響からある程度の保護を与えることができるが、これらの物質は退色又は変色を引き起こすので白色フィルムには不適切である。白色フィルムに適した唯一の添加剤は、安定化されるフィルムに全く色又は変色を与えないか、又は極めて低いレベルの色又は変色しかもたらさない有機化合物又は有機金属化合物である。適切な紫外線安定剤である光安定剤は、180~380nm、好ましくは280~350nmの波長範囲の紫外線の光の少なくとも70%、好ましくは80%、特に好ましくは90%を吸収する。特に好適なものは、260~300℃の温度範囲において熱的に安定である、すなわち分解せず、ガスの放出を引き起こさないものである。適切な紫外線安定剤である光安定剤の例は、2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシベンゾトリアゾール、有機ニッケル化合物、サリチル酸エステル、桂皮酸エステル誘導体、レゾルシノールモノベンゾエート、オキサニリド、ヒドロキシ安息香酸エステル、立体障害アミン及びトリアジンであり、好ましくは2-ヒドロキシベンゾトリアゾール及びトリアジンである。最も好ましくは、光安定剤はヒドロキシフェニルトリアジン(Tinuvin(R)1577、BASF、Ludwigshafen、Germany)である。使用される光安定剤の量は、典型的には、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層の総重量に基づいて10~50000ppm、好ましくは20~30000ppm、最も好ましくは50~25000ppmである。
【0281】
フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層に存在するさらなる添加剤は、所望ならば蛍光増白剤である。本発明による蛍光増白剤は、約360~380nmの波長範囲の紫外線を吸収することができ、並びにこれを可視の、より長波長の青紫色光として再び放出することができる。適切な蛍光増白剤は、ビスベンゾオキサゾール、フェニルクマリン及びビステリルビフェニル(bissterylbiphenyl)、特にフェニルクマリン、及び特に好ましくはトリアジン-フェニルクマリン(Tinopal(R)、BASF、Ludwigshafen、Germany)である。使用される蛍光増白剤の量は、典型的には、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層の総重量に基づいて、10~50000ppm、好ましくは20~30000ppm、最も好ましくは50~25000ppmである。
【0282】
適切な白色顔料は、好ましくは二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カオリン及びシリカであり、二酸化チタン及び硫酸バリウムが好ましい。二酸化チタン粒子は、アナターゼ又はブルッカイト又はルチルで構成されてよく、好ましくはアナターゼよりも高い隠蔽力を有するルチルで主に構成される。好ましい実施形態では、二酸化チタン粒子の95重量%がルチルである。白色顔料の重量中央粒径d50は、典型的には表面処理されたフィラー材生成物の重量中央粒径d50より小さく、したがって白色顔料はボイド形成剤としては作用しない。白色顔料の重量中央粒径d50は、0.10~0.30μmの範囲内であることが好ましい。フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層中の白色顔料の量は、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層の総重量に基づいて0.3~25重量%が有用である。
【0283】
加えて又は若しくは、青色染料、好ましくはポリエステルに可溶の青色染料もまた、それが有用であれば、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層に添加することができる。例えば、実績のある青色染料は、コバルトブルー、群青及びアントラキノン染料、特にスダンブルー2(BASF、Ludwigshafen、Germany)から選択される。使用される青色染料の量は、典型的には、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層の総重量に基づいて10~10000ppm、好ましくは20~5000ppm、最も好ましくは50~1000ppmである。
【0284】
加えて又は若しくは、ブロッキング防止剤もまた、それが有用であれば、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層に添加することができる。典型的なブロッキング防止剤は、無機及び/又は有機粒子、例えば表面処理されたフィラー材生成物とは異なる炭酸カルシウム、非晶質シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、カーボンブラック、二酸化チタン、カオリン、又は架橋ポリマー粒子、例えばポリスチレン、アクリレート、PMMA粒子、又は架橋シリコーンである。4.0~12.0μm、好ましくは6.0~10.0μmの平均粒径(加重平均)を有する白雲母もまた特に適している。一般に知られているように、雲母は小板状ケイ酸塩からなり、そのアスペクト比は5.0~50.0の範囲にあることが好ましい。2種以上の異なるブロッキング防止剤の混合物又は同じ組成を有するが異なる粒径を有するブロッキング防止剤の混合物も添加剤として選択することができる。粒子は、押出中にそれぞれの有利な濃度でフィルムの個々の層のポリマーに直接又はマスターバッチによって添加することができる。
【0285】
ブロッキング防止剤は、好ましくは外層、すなわち表面処理されたフィラー材生成物を含まない層に添加される。ブロッキング防止剤の量は概して、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層の総重量に基づいて0.01~1重量%である。
【0286】
添加剤として使用される化合物は、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層中に存在し得ることは理解されよう。多層フィルムの場合、添加剤として使用される化合物は、少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層中に及び/又は追加の層の少なくとも1つ中に存在することができる。
【0287】
本発明の単層又は多層ポリエステルフィルムは、当技術分野において公知の任意の方法によって製造することができる。一実施形態よれば、単層又は多層ポリエステルフィルムを製造するための方法は、以下の工程:
a)少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む組成物を提供する工程、並びに
b)工程a)の組成物からフィルムを形成する工程、
を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物は、
A)0.5μm~3.0μmの範囲の重量中央粒径d50を有する少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材、並びに
B)前記少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の表面上の処理層であって、
i.1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は
ii.少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分枝鎖カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は
iii.少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iv.置換基中の炭素原子総量が少なくともC~C30の直鎖、分枝鎖、脂肪族及び環式の基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる少なくとも1種の一置換無水コハク酸及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
v.少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
vi.i.~v.に記載の材料の混合物、
を含む、処理層を含み、
前記表面処理されたフィラー材生成物は、少なくとも1種の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の総乾燥重量に基づいて0.1~2.3重量%の量で処理層を含む。
【0288】
方法工程a)で提供される少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物の組成物は、少なくとも1種のポリエステルと表面処理されたフィラー材生成物とを混合及び/又は混練して、混合物を形成することによって得られるマスターバッチ又はコンパウンドであり得る。少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物、及び存在するならば他の任意選択の添加剤は、適切なミキサー、例えばヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサーなどを用いて混合及び/又は混練することができる。配合工程は、適切な押出機を用いて、好ましくは二軸スクリュー押出機(共回転又は逆回転)によって、又は任意の他の適切な連続配合装置、例えば、連続式混練機(Buss)、連続式ミキサー(Farrel Pomini)、リング押出機(Extricom)などによって行うことができる。押出からの連続ポリマー塊は、水中ペレット化、偏心ペレット化及び水環ペレット化による(ホットカット)ダイフェースペレット化、又は水中での(低温切断)ストランドペレット化及び押出ポリマー塊をペレットに形成する従来のストランドペレット化のいずれかによってペレット化することができる。したがって、コンパウンドはペレット、ビーズ、又は顆粒の形態であり得る。
【0289】
好ましくは、方法工程a)で提供される少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物の組成物は、少なくとも1種のポリエステルと表面処理されたフィラー材生成物とを混合及び/又は混練して混合物を形成し、得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られるマスターバッチ又はコンパウンドであり得る。例えば、連続ペレット化は水中で行われる。
【0290】
任意選択的に、配合工程は、密閉式(バッチ式)ミキサー、例えば、バンバリーミキサー(HF Mixing Group)又はブラベンダーミキサー(Brabender)を使用する不連続法又はバッチ法でも行うことができる。
【0291】
一実施形態によれば、マスターバッチ又はコンパウンドは、表面処理されたフィラー材生成物を、マスターバッチ又はコンパウンドの総重量に基づいて30重量%超、好ましくは30超~85.0重量%、より好ましくは30.01~85.0重量%、さらにより好ましくは30.1~85.0重量%、さらにより好ましくは30.5~85.0重量%、さらにより好ましくは31.0~85.0重量%、最も好ましくは35.0~80.0重量%、例えば40~70重量%の量で含む。
【0292】
方法工程a)で提供される組成物が、好ましくは、PETフレークなどのポリエステルフレークを使用することによって調製されることは理解されよう。これに関して、ポリエステルフレーク、例えば、PETフレークは、水分を除去するために工程a)の組成物を調製する前に予備乾燥される。例えば、PETフレークなどのポリエステルフレークは、90℃で6時間予備乾燥される。
【0293】
任意の実施形態によれば、方法工程a)で提供される組成物は、上記の添加剤/化合物のうちの1種以上をさらに含む。
【0294】
マスターバッチ又はコンパウンドは、同一又は異なるポリエステル(マスターバッチ又はコンパウンド中のマトリックスとして使用されるもの)及び/又は上述した1種以上の添加剤と、方法工程b)が実施される前に混合されることが好ましい。好ましい実施形態によれば、マスターバッチ又はコンパウンドは、同一のポリエステル(マスターバッチ又はコンパウンド中のマトリックスとして使用されるもの)と、方法工程b)が実施される前に混合される。
【0295】
一実施形態では、添加剤として通常使用される添加剤、例えば、光安定剤、蛍光増白剤、青色染料、ブロッキング防止剤、白色顔料及びそれらの混合物がマスターバッチに添加される。
【0296】
又は、方法工程a)及びb)は同時に実施される。好ましくは、方法工程a)及びb)は、少なくとも1種のポリエステル、より好ましくは予備乾燥ポリエステルフレーク、例えば予備乾燥PETフレークと、表面処理されたフィラー材生成物、より好ましくは乾燥した表面処理されたフィラー材生成物とを押出機に直接添加して、方法工程b)を実施することで同時に行われる。すなわち、方法工程a)で提供される少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物の組成物は、表面処理されたフィラー材生成物、好ましくは乾燥した表面処理されたフィラー材生成物と、少なくとも1種のポリエステル、より好ましくは予備乾燥ポリエステルフレーク、例えば予備乾燥PETフレークとを押出機に直接添加して、方法工程b)を実施することによって得られる。
【0297】
又は、工程a)の少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む組成物は、表面処理されたフィラー材生成物を少なくとも1種のポリエステルの重縮合過程に添加することによって得られる。すなわち、工程a)の少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む組成物は、表面処理されたフィラー材生成物を、少なくとも1種のポリエステルの重縮合過程の前又はその間又はその後のいずれかに添加することによって得られる。例えば、工程a)の少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む組成物は、表面処理されたフィラー材生成物を、少なくとも1種のポリエステルの重縮合過程の前又はその後のいずれか、好ましくはその後に添加することによって得られる。したがって、工程a)の少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む組成物は、そのまま使用できる組成物として提供することができる。
【0298】
ポリエステルリサイクル材料などの材料は本発明の表面処理されたフィラー材生成物を既に含有していてもよいことは理解されよう。したがって、この実施形態では、方法工程a)で追加的に添加される表面処理されたフィラー材生成物の量は、単層又は多層ポリエステルフィルムにおいて表面処理されたフィラー材生成物を所望量に到達させるために、適宜より低い量に適合させることができる。
【0299】
方法工程b)は、ポリマーフィルムを製造するために使用される任意の周知の技術によって実施することができる。適切なフィルム押出技術の例は、インフレートフィルム押出又はキャストフィルム押出である。
【0300】
したがって、方法工程b)は好ましくは押出法である。
【0301】
フィルムを形成するための好ましい押出法では、方法工程a)で提供された少なくとも1種のポリエステルと表面処理されたフィラー材生成物との溶融組成物は、スロットダイを通して、実質的に非晶質のプレフィルムの形態で押し出され、チルロールで急冷される。
【0302】
一実施形態では、本方法は、工程b)で得られたフィルムを縦方向(MD)又は横方向(TD)のうちの一方向のみに延伸する工程c)をさらに含む。
【0303】
一軸配向フィルムを調製する場合、工程b)で得られたフィルムの延伸は縦方向(MD)又は横方向(TD)、好ましくは縦方向(MD)に行われる。
【0304】
延伸工程c)は、当技術分野において公知の任意の手段によって実施することができる。延伸工程c)を実施するためのそのような方法及び装置は、例えばLISIMとして知られているように、当技術分野において知られている。LISIM手順は、EP1112167及びEP0785858に詳細に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0305】
延伸工程の間に、ポリエステルは表面処理されたフィラー材生成物の表面から離層することがあり、それによって単層又は多層ポリエステルフィルム中にボイドが形成される。
【0306】
延伸は一工程で行ってもよく、又は数工程で行ってもよい。一実施形態によれば、方法工程c)は1~10回行われる。
【0307】
延伸倍率は、得られるフィルムの高延伸時のフィルム破れ及び通気性や水蒸気透過性を決定するため、過度に高い延伸倍率及び過度に低い延伸倍率は避けることが望ましい。一実施形態によれば、方法工程c)において、工程b)で得られたフィルムは、各方向に1.2~6倍、より好ましくは1.2~4倍の延伸倍率に延伸される。
【0308】
好ましくは、延伸工程c)は、工程b)で得られたフィルムを
a)縦方向(MD)に2~6、好ましくは3~4.5の延伸倍率で、又は
b)横方向(TD)に2~5、好ましくは3~4.5の延伸倍率で
延伸することで行われる。
【0309】
一実施形態によれば、方法工程c)は、T+10℃~T+60℃の範囲の延伸温度(T=ガラス転移温度)で行われる。
【0310】
本発明の発明者らは、本発明による単層又は多層ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層が特に高いフィラー含有量を有することを見出した。さらに、ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、低密度で非常に微多孔性であり、特にこの密度はボイド形成剤として硫酸バリウム又は二酸化チタンを使用するフィルム又は層で通常達成される密度より低い。さらに、ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、不透明な外観を有し、フィルム/層を破損することなく調製することができる。さらに、単層又は多層ポリエステルフィルム、特に少なくとも1種のポリエステル及び表面処理されたフィラー材生成物を含む層は、引張強度、破断点伸び又は弾性率などの良好な機械的性質並びに光沢及び透過率などの光学的性質を提供する。
【0311】
本発明による単層又は多層ポリエステルフィルムは多くの異なる用途に使用することができる。一実施形態によれば、単層又は多層ポリエステルフィルムは、包装製品、好ましくは可撓性包装製品、食品接触用途、紙又はガラスの被覆、断熱材、ソーラー、好ましくは光起電性の前面又はバックシート、海洋又は航空用途、科学、電子若しくは音響用途、好ましくはディスプレイ、ワイヤ、ケーブル、無線周波数識別、フレキシブル回路、グラフィックアート、好ましくはラベル、ストーンペーパー、好ましくはバッグ、パッケージ、箱、本、小冊子、パンフレット、ポイントカード、名刺、グリーティングカード、段ボール、封筒、食品トレイ、ラベリング、ゲーム、タグ、雑誌、標識、広告板、文房具、日記、パッド又はノートブック、及びホログラム、フィルター製品、化粧品、家庭用品イメージング、記録媒体、好ましくは印画紙、X線フィルム又は熱転写画像形成又は工業製品、好ましくはコンデンサー、剥離シート、ガラス繊維パネル、ラミネートフィルム、ホットスタンプ箔又は断熱外装に使用される。
【0312】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明による単層又は多層ポリエステルフィルムを含む物品であって、包装製品、好ましくは可撓性包装製品、食品接触用途、紙又はガラスの被覆、断熱材、ソーラー、好ましくは光起電性の前面又はバックシート、海洋又は航空用途、科学、電子若しくは音響用途、好ましくはディスプレイ、ワイヤ、ケーブル、無線周波数識別、フレキシブル回路、グラフィックアート、好ましくはラベル、ストーンペーパー、好ましくはバッグ、パッケージ、箱、本、小冊子、パンフレット、ポイントカード、名刺、グリーティングカード、段ボール、封筒、食品トレイ、ラベリング、ゲーム、タグ、雑誌、標識、広告板、文房具、日記、パッド又はノートブック、及びホログラム、フィルター製品、化粧品、家庭用品イメージング、記録媒体、好ましくは印画紙、X線フィルム又は熱転写画像形成又は工業製品、好ましくはコンデンサー、剥離シート、ガラス繊維パネル、ラミネートフィルム、ホットスタンプ箔又は断熱外装からなる群から選択される物品が提供される。
【0313】
本発明の範囲及び対象は、本発明の特定の実施形態を例示することを意図する非限定的な以下の実施例に基づいてよりよく理解されるであろう。
【実施例
【0314】
1 測定方法及び材料
以下に、実施例で実施した測定方法及び材料について説明する。
【0315】
<固有粘度>
固有粘度は、DIN ISO 1628/1及びDIN ISO 1628/5、1999年10月に準拠して(135℃においてデカリン中で)測定する。
【0316】
<MFR
MFR は、ISO 1133(230℃、荷重2.16kg)に従って測定する。
【0317】
<結晶化温度T
結晶化温度は、Mettler-Toledo「Polymer DSC装置(Mettler-Toledo(Schweiz)GmbH、Switzerland)での示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。結晶化曲線は、30℃~225℃の間で10℃/分の冷却及び加熱スキャンの間に得た。結晶化温度は吸熱及び発熱のピークと見なした。
【0318】
<粒径>
未処理の粉砕炭酸カルシウム含有フィラー材の粒子分布は、米国のMicromeritics社製のSedigraph 5100を使用して測定した。方法及び機器は当業者には知られており、フィラー及び顔料の粒度を決定するために一般に使用されている。測定は0.1重量%のNa水溶液中で行った。サンプルを高速撹拌機を用いて分散させ、超音波処理した。
【0319】
<比表面積(BET)>
本明細書を通して、フィラー材の比表面積(m/g)は、当業者に周知のBET法(吸着ガスとして窒素を使用)を用いて決定した(ISO 9277:2010)。
【0320】
<灰分>
マスターバッチ及びフィルムの灰分[重量%]は、焼却炉に570℃で2時間入れた焼却るつぼ中でサンプルを焼却することによって決定した。灰分は、残留無機残渣の総量として測定した。
【0321】
<フィルム厚>
フィルム厚は、デジタル測定スライドMitutoyo IP 66(Mitutoyo Europe GmbH、Neuss、Germany)を使用して決定した。測定値はμmで報告した。
【0322】
<フィルム又は層の密度>
密度は、正確な面積(100mm×100mm)のフィルムを切断して、化学天秤で秤量した試験片から決定した。平均フィルム厚は、フィルム表面全体にわたって割り当てられた9つの厚さ測定値をとることによって決定した。密度を計算し、[g/cm]で報告した。これらの値から、平均収量(m/kg)及び単位重量(g/m)も計算できる。
【0323】
<吸湿量>
本発明の意味における「吸湿性」という用語は、フィラーの表面に吸収された水分の量を意味し、相対湿度10及び85%の雰囲気にそれぞれ+23℃(±2℃)の温度で2.5時間曝露後の、mg水分/gの乾燥した処理された鉱物フィラー生成物として決定される。処理された鉱物フィラー生成物を最初に相対湿度10%の雰囲気に2.5時間保持し、次いで雰囲気を相対湿度85%に変え、そこでサンプルをさらに2.5時間保持する。次いで、相対湿度10%~85%の間の重量増加を使用して、吸湿量をmg水分/gの乾燥した処理フィラー生成物として計算する。装置のブランク値は、0.15~0.2mg/g、例えば0.19mg/gであると決定した。本出願における結果は、正味値、すなわち測定値からブランク値を引いたものである。
【0324】
<親水性>
フィラーの「親水性」は、+23℃で、前記水/エタノール混合物の表面に置かれた前記フィラーの大部分の沈降に必要な水/エタノール混合物の体積/体積基準の水対エタノールの最小比を、家庭用の茶こしを通過させて決定することによって評価する。体積/体積基準は、それらを一緒に混合する前の両方の別々の液体の体積に関連し、ブレンドの体積収縮を含まない。+23℃における評価は、+23℃±2℃の温度を指す。
【0325】
“Handbook of Chemistry and Physics”,84th edition,David R.Lide,2003(first edition 1913)に記載のように、23℃(±2℃)において8:2の体積比の水/エタノール混合物は典型的には41mN/mの表面張力を有し、6:4の体積比の水/エタノール混合物は典型的には26mN/mの表面張力を有する。
【0326】
<総揮発分の測定>
本出願の目的のために、フィラーに関連し、25~350℃の温度範囲にわたって放出される「総揮発分」は、熱重量(TGA)曲線で読み取られるような温度範囲にわたるフィラーサンプルの質量損失%によって特徴付けられる。
【0327】
TGA分析方法は、質量損失及び揮発開始温度に関する情報を非常に正確に提供し、一般的な知識である。例えば、“Principles of Instrumental analysis”,fifth edition, Skoog,Holler,Nieman,1998(first edition 1992) in Chapter 31 pages 798 to 800、及び他の多くの一般に知られている参考文献に記載されている。本発明では、熱重量分析(TGA)は、500±50mgのサンプル及び70ml/分の空気流量下、20℃/分の速度で25~350℃の走査温度を基準にしてMettler Toledo TGA 851を使用して行う。
【0328】
当業者は、TGA曲線を以下のように分析することにより「揮発開始温度」を決定することができるであろう:TGA曲線の一次導関数を得て、150~350℃の間のその上の変曲点を特定する。水平線に対して45°を超える接線傾斜値を有する変曲点のうち、200℃を超える関連する最低温度を有する変曲点を特定する。一次微分曲線のこの最低温度変曲点に関連する温度値が、「揮発開始温度」である。
【0329】
TGA曲線上で放出された「総揮発分」は、Stare SW 9.01ソフトウェアを使用して決定する。このソフトウェアを使用して、元の試料に対する質量損失を%値で得るために、最初に曲線を元のサンプル重量に対して正規化する。その後、25~350℃の温度範囲を選択し、選択した温度範囲にわたる質量損失%を得るために水平ステップ(ドイツ語では「Stufe horizontal」)オプションを選択する。
【0330】
<不透明度>
不透明度の測定は、DIN53146に従って、Byk-Gardner Spectro-Guide(Byk-Gardner GmbH、Germany)を使用して、白黒基材上のフィルムサンプルの白色度を測定することによって行った。不透明度は、2つの測定値のコントラスト比である。単位はパーセントで、完全に不透明な材料が100%の不透明度値を有する。
【0331】
<水蒸気透過速度(WVTR)>
ポリエステルフィルムのWVTR値は、ASTM E398に従って、Lyssy L80-5000(PBI-Dansensor A/S、Denmark)測定装置を用いて測定した。
【0332】
2 材料
CC1(本発明):天然粉砕炭酸カルシウム、Omya International AG、Switzerlandから市販されているストーンフィード(d50:0.8μm;d98:3μm、0.5μm未満の粒子の含有量=35%)、天然粉砕炭酸カルシウムの総重量に基づいて1.7重量%のステアリン酸(Sigma-Aldrich、Crodaから市販されている)で表面処理。BET:8.5m/g。
【0333】
CC2(本発明):天然粉砕炭酸カルシウム、Omya International AG、Switzerlandから市販されているストーンフィード(d50:0.8μm;d98:3μm、0.5μm未満の粒子の含有量=35%)、天然粉砕炭酸カルシウムの総重量に基づいて1.7重量%のアルケニル無水コハク酸(CAS[68784-12-3]、濃度93%超)で表面処理。BET:8.5m/g。
【0334】
CC3(本発明):天然粉砕炭酸カルシウム、Omya International AG、Switzerlandから市販されているストーンフィード(d50:1.7μm;d98:6μm、0.5μm未満の粒子の含有量=12%)、天然粉砕炭酸カルシウムの総重量に基づいて1.0重量%のステアリン酸(Sigma-Aldrich、Crodaから市販されている)で表面処理。BET:3.4m/g。
【0335】
CC4(本発明):天然粉砕炭酸カルシウム、Omya International AG、Switzerlandから市販されているストーンフィード(d50:1.7μm;d98:6μm、0.5μm未満の粒子の含有量=12%)、天然粉砕炭酸カルシウムの総重量に基づいて0.7重量%のアルケニル無水コハク酸(CAS[68784-12-3]、濃度93%超)で表面処理。BET:3.4m/g。
【0336】
CC5(本発明):天然粉砕炭酸カルシウム、Omya International AG、Switzerlandから市販されているストーンフィード(d50:1.7μm;d98:6.5μm、2μm未満の粒子の含有量=57%)、天然粉砕炭酸カルシウムの総重量に基づいて1重量%のステアリン酸(Sigma-Aldrich、Crodaから市販されている)で表面処理。BET:4m/g。
【0337】
CC6(本発明):天然粉砕炭酸カルシウム、Omya International AG、Switzerlandから市販されているストーンフィード(d50:2.6μm;d98:15μm、2μm未満の粒子の含有量=38%)、天然粉砕炭酸カルシウムの総重量に基づいて0.6重量%のステアリン酸(Sigma-Aldrich、Crodaから市販されている)で表面処理。BET:2.5m/g。
【0338】
CC7(比較用):天然粉砕炭酸カルシウム、Omya International AG、Switzerlandから市販されている(d50:5μm;d98:20μm)、天然粉砕炭酸カルシウムの総重量に基づいて0.5重量%のステアリン酸(Sigma-Aldrich、Crodaから市販されている)で表面処理。BET:2.1m/g。
【0339】
CC8(比較用):天然粉砕炭酸カルシウム、Omya International AG、Switzerlandから市販されている(d50:5μm;d98:30μm)、表面処理なし。BET:2.1m/g。
【0340】
CC1~CC7の表面処理は、EP2722368A1に記載されている方法を使用することによって行ってきた。
【0341】
P1:ポリエチレンテレフタレート(PET)、Equipolymers GmbH、Germanyから市販されているLighterC93PET(固有粘度:0.8±0.02dl/g、最低結晶化度50%、融点247℃、供給業者により提供された技術データシートによる)。
【0342】
3 実施例
[実施例1-マスターバッチの調製]
炭酸カルシウムフィラーCC1~CC8及びポリマーP1を含有するポリプロピレンマスターバッチを、実験室規模のBussニーダー(Buss PR46、Buss AG、Switzerland製)で連続的に調製した。ポリマーP1を予備乾燥して、その後160℃のオーブンで4時間処理した。調製したマスターバッチの組成及びフィラー含有量を下記の表1にまとめる。正確なフィラー含有量は灰分によって決定した。
【0343】
【表1】
【0344】
マスターバッチMB1~MB6は良好な品質で製造することができたが、マスターバッチMB7及びMB8は配合が困難であり、得られたペレットは劣悪な品質であった。
【0345】
[実施例2-マスターバッチによるポリエステルキャストフィルムの製造]
キャストフィルムは、直径30mm幅のTダイを有する二軸スクリュー押出機及び温度制御されたチルロールを有する巻き取りシステム備えたCollin Laboratory Film Line(Dr.Collin GmbH、Germany)で調製した。冷却されたロールをTダイから20mm離して、厚さ約1000μmのポリエステルシートを製造した。押出機及びダイの温度は実験を通して一定であった。ダイ温度は270℃に設定し、ライン速度は0.5m/分であった。マスターバッチ又はポリマーを純ポリマーP1と混合して、表2に示す濃度のキャストフィルムを得た。
【0346】
【表2】
【0347】
表2に示すフィルムは全てキャストフィルムであり、これらは視覚的に良好な外観を有する良好な品質で製造された。
【0348】
[実施例3-直接押出によるポリエステルキャストフィルムの調製]
キャストフィルムは、直径30mm幅のTダイを有する二軸スクリュー押出機及び温度制御されたチルロールを有する巻き取りシステム備えたCollin Laboratory Film Line(Dr.Collin GmbH、Germany)で調製した。冷却されたロールをTダイから20mm離して、厚さ約1000μmのポリプロピレンシートを製造した。押出機は、押出中に原料から来る揮発性物質及び水分を除去するための真空排気システムを備えている。押出機及びダイの温度は実験を通して一定であった。ダイ温度は270℃に設定し、ライン速度は0.5m/分であった。マスターバッチ又はポリマーを純ポリマーP1と混合して、表2に示す濃度のキャストフィルムを得た。
【0349】
【表3】