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特許7383480修飾ナノポア、それを含む組成物、およびそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】修飾ナノポア、それを含む組成物、およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/645 20060101AFI20231113BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20231113BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231113BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20231113BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20231113BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20231113BHJP
   C12N 15/16 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
C07K14/645
C12Q1/6869 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
G01N33/50 P
G01N27/00 Z
C12N15/16 ZNA
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019543264
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 GB2018050379
(87)【国際公開番号】W WO2018146491
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】62/457,483
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤシンゲ,ラクマル
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス,エリザベス ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】シング,プラティク ラジ
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-527191(JP,A)
【文献】Christopher A. Christensen,Isolation and Use of the Aeromonas hydrophila Secretin ExeD for Nanopore Analysis,A Thesis Submitted to the College of Graduate Studies and Research In Partial Fulfillment of the Requirements for the Degree of Masters of Science In the Department of Biochemistry University of Saskatchewan Saskatoon,2016年,1-105,https://harvest.usask.ca/bitstream/handle/10388/7517/CHRISTENSEN-THESIS-2016.pdf
【文献】Nico Nouwen et al.,Secretin PulD: Association with pilot PulS, structure, and ion-conducting channel formation,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,1999年,Vol. 96、No. 14,8173-8177
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00
C12Q 1/00
C12M 1/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物の有無を検出し、かつ/または試料中の分析物を特徴付ける方法であって、前記方法は、
膜中に配置されたセクレチンナノポアを前記試料と接触させることと、前記膜にわたって電圧勾配を印加することと、前記ナノポアを通るイオン電流フローを検出することと、を含み、
ここで、前記セクレチンナノポアは、1つ以上の荷電改変アミノ酸修飾を含む修飾セクレチンナノポアであり、前記1つ以上の荷電改変修飾は、中性アミノ酸または正に荷電したアミノ酸での負に荷電したアミノ酸の置換を含み、
前記修飾セクレチンナノポアは、修飾GspDであり、
前記修飾セクレチンナノポアは、配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み、ここで、
(i)D117もしくはT118~T139のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K122、D126、R133、およびE135のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD117、T118、T139、およびK140のうちの1つ以上がPで置換されている;かつ/または
(ii)F218がより小さいアミノ酸で置換され、N213および/またはN214がより小さいアミノ酸で置換され、D215が荷電していないアミノ酸で置換され、G199およびG227がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている;かつ/または
(iii)前記セクレチンナノポアの内腔からのセクレチンサブユニットポリペプチドが、
- Y125-GSG-R133またはY125-SGS-R133、
- F218A、
- D215S、
- N213G/N214S、
- N213S/N214G、または
- N213G/N214S/D215Sを含む、方法。
【請求項2】
前記修飾セクレチンナノポアが、シス開口部とトランス開口部との間で前記膜を通って延在する内腔を画定する内腔表面を含み、前記内腔表面が1つ以上のアミノ酸修飾を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 前記シス開口部が、60Å~120Åの範囲の直径を有する;および/または
- 前記トランス開口部が、40Å~100Åの範囲の直径を有する;および/または
- 前記修飾セクレチンナノポアが、約7.5Å~25Åの直径を有する狭窄部を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記荷電改変修飾が、正に荷電したアミノ酸での負に荷電したアミノ酸の置換である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記修飾セクレチンナノポアが、疎水性アミノ酸での中性アミノ酸の置換を含む1つ以上のアミノ酸修飾をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(i)前記GspDがキャップゲートを含まない、および/または
(ii)前記GspDの中央ゲートが、アミノ酸をより小さな側基を有するアミノ酸で置換するように、かつ/または負に荷電したアミノ酸を中性アミノ酸もしくは正に荷電したアミノ酸で置換するように修飾されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
複数の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを含む、修飾セクレチンナノポアであって、
前記修飾セクレチンナノポアは、修飾GspDであり、
前記修飾セクレチンナノポアは、配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み、ここで、
(i)D117もしくはT118~T139のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K122、D126、R133、およびE135のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD117、T118、T139、およびK140のうちの1つ以上がPで置換されている;かつ/または
(ii)F218がより小さいアミノ酸で置換され、N213および/またはN214がより小さいアミノ酸で置換され、D215が荷電していないアミノ酸で置換され、G199およびG227がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている;かつ/または
(iii)前記セクレチンナノポアの内腔からのセクレチンサブユニットポリペプチドが、
- Y125-GSG-R133またはY125-SGS-R133、
- F218A、
- D215S、
- N213G/N214S、
- N213S/N214G、または
- N213G/N214S/D215Sを含む、修飾セクレチンナノポア。
【請求項8】
請求項7に記載の修飾セクレチンナノポアをコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項9】
修飾セクレチンナノポアをコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドであって、
前記修飾セクレチンナノポアは、修飾GspDであり、
前記修飾セクレチンナノポアは、配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み、ここで、
(i)D117もしくはT118~T139のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K122、D126、R133、およびE135のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD117、T118、T139、およびK140のうちの1つ以上がPで置換されている;かつ/または
(ii)F218がより小さいアミノ酸で置換され、N213および/またはN214がより小さいアミノ酸で置換され、D215が荷電していないアミノ酸で置換され、G199およびG227がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている;かつ/または
(iii)前記セクレチンナノポアの内腔からのセクレチンサブユニットポリペプチドが、
- Y125-GSG-R133またはY125-SGS-R133、
- F218A、
- D215S、
- N213G/N214S、
- N213S/N214G、または
- N213G/N214S/D215Sを含む、ポリヌクレオチド。
【請求項10】
修飾セクレチンナノポアを含む膜が内部に配置された水溶液を収容するチャンバを含む装置であって、前記修飾セクレチンナノポアがシス開口部とトランス開口部との間で前記膜を通って延在する内腔を画定する内腔表面を含み、
前記修飾セクレチンナノポアは、修飾GspDであり、
前記修飾セクレチンナノポアは、配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み、ここで、
(i)D117もしくはT118~T139のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K122、D126、R133、およびE135のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD117、T118、T139、およびK140のうちの1つ以上がPで置換されている;かつ/または
(ii)F218がより小さいアミノ酸で置換され、N213および/またはN214がより小さいアミノ酸で置換され、D215が荷電していないアミノ酸で置換され、G199およびG227がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている;かつ/または
(iii)前記セクレチンナノポアの内腔からのセクレチンサブユニットポリペプチドが、
- Y125-GSG-R133またはY125-SGS-R133、
- F218A、
- D215S、
- N213G/N214S、
- N213S/N214G、または
- N213G/N214S/D215Sを含む、装置。
【請求項11】
前記水溶液中に存在する分析物をさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記分析物がポリヌクレオチドである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドに結合したポリヌクレオチド結合タンパク質をさらに含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、またはポリメラーゼである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が、前記ナノポアの前記シス開口部またはトランス開口部と接触または共有結合している、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
分析物の検出および/または特徴付けのための、修飾セクレチンナノポアの使用であって、
前記修飾セクレチンナノポアは、修飾GspDであり、
前記修飾セクレチンナノポアは、配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み、ここで、
(i)D117もしくはT118~T139のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K122、D126、R133、およびE135のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD117、T118、T139、およびK140のうちの1つ以上がPで置換されている;かつ/または
(ii)F218がより小さいアミノ酸で置換され、N213および/またはN214がより小さいアミノ酸で置換され、D215が荷電していないアミノ酸で置換され、G199およびG227がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている;かつ/または
(iii)前記セクレチンナノポアの内腔からのセクレチンサブユニットポリペプチドが、
- Y125-GSG-R133またはY125-SGS-R133、
- F218A、
- D215S、
- N213G/N214S、
- N213S/N214G、または
- N213G/N214S/D215Sを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
セクレチンの修飾形態または変異体形態、およびそれを含む組成物が本明細書に提供される。例えば、標的分析物、例えば標的ポリヌクレオチドを特徴付けるために修飾形態または変異体形態のセクレチンおよび組成物を使用する方法もまた提供される。セクレチンおよびセクレチン内腔内に提供される酵素を含む組成物もまた本明細書に提供される。
【背景技術】
【0002】
膜貫通ポア(例えば、ナノポア)は、小分子または折り畳まれたタンパク質を同定し、単一分子レベルで化学的または酵素的反応をモニタリングするために使用されてきた。人工膜中に再構成されたナノポアを横切るDNAの電気泳動移動は、DNAシーケンシングおよびバイオマーカー認識などの実用的用途に非常に有望である。しかしながら、負に荷電したアミノ酸に面した内部表面を有するナノポアを通る二本鎖または一本鎖DNAの移動は効率的ではない。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、一般に、セクレチンをナノポアとして使用する分析物検出に関する。本開示は、一般に、修飾ナノポアに関する。いくつかの実施形態において、本開示は、修飾セクレチンナノポアおよびサブユニットポリペプチド、それを含む組成物または装置、ならびにそれらの使用を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される修飾セクレチンナノポアは、ナノポアを横切る分析物、例えばポリヌクレオチドまたはタンパク質などの負に荷電したまたは疎水性バイオポリマーの効率的な捕捉および/または移動を促進するので、分析物検出および分析に有用である。したがって、本明細書に記載のセクレチンナノポア、例えば修飾セクレチンナノポアは、分析物、例えば標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを特徴付けるために、および他の好適な用途に使用することができる。したがって、さらなる実施形態において、分析物、例えば標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを特徴付けるための方法および組成物が本明細書に記載される。
【0004】
本開示の一態様は、例えば膜中に配置された修飾セクレチンナノポアを特徴とする。修飾セクレチンナノポアは、シス開口部とトランス開口部との間で膜を通って延在する内腔を画定する内腔表面を含み、内腔表面は1つ以上のアミノ酸修飾を含む。アミノ酸修飾の例には、荷電改変(charge-altering)修飾(例えば、正に荷電したアミノ酸アミノ酸での負に荷電したアミノ酸の置換)、その疎水性を変化させるアミノ酸修飾(例えば、疎水性アミノ酸での中性アミノ酸の置換)、セクレチンにおける開口部、例えば狭窄部またはゲートのサイズを変化させるアミノ酸修飾(例えば、天然に存在するアミノ酸(複数可)よりも小さい基または大きい基を有する1つ以上のアミノ酸の置換、または開口部を狭める1つ以上のアミノ酸の欠失)、ゲート開口部を妨害または阻むアミノ酸修飾(より剛性のアミノ酸(複数可)での1つ以上の可動性のアミノ酸の置換など)、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0005】
修飾セクレチンナノポアのシス開口部およびトランス開口部は、用途(例えば、標的ポリヌクレオチドなどの分析物の検出および/または分析)の必要性に適した任意のサイズの直径を有し得る。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアのシス開口部は、60Å~120Åの範囲の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアのトランス開口部は、40Å~100Åの範囲の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアの狭窄部は、約7.5Å~25Åの直径を有し得る。
【0006】
任意の種類のセクレチンを使用して、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアを生成し得る。例えば、いくつかの態様において、セクレチンはII型分泌系であり得る(例えば、限定するものではないが、GspD)。いくつかの実施形態において、セクレチンはIII型分泌系であり得る(例えば、限定するものではないが、YscCおよびInvG)。いくつかの実施形態において、セクレチンはIV型分泌系であり得る(例えば、限定するものではないが、PilQ)。
【0007】
セクレチンがInvGであるいくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、(N1またはN0ドメインを有しないInvGのアミノ酸配列に対応する)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドをさらに含み得る。これらの実施形態において、内腔表面は、内腔内に狭窄部をさらに画定することができ、狭窄部は、配列番号1のアミノ酸D28、E225、R226、および/またはE231において1つ以上のアミノ酸修飾(例えば荷電改変修飾)を有する。そのようなアミノ酸修飾の例には、(i)D28N/Q/T/S/G/R/K、(ii)E225N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/K、(iii)R226N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/K/V、(iv)E225の欠失、(v)R226の欠失、および(vi)E231N/Q/T/A/S/G/P/H/R/Kが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポア、内腔表面は、アミノ酸E41、Q45、またはE114において1つ以上のアミノ酸修飾を有する捕捉部分を含み得、このアミノ酸修飾の例には、(i)Q45R/K、(ii)E41N/Q/T/S/G/R/K、および(iii)E114N/Q/T/S/G/R/Kが含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
修飾セクレチンナノポアは、ホモ多量体であってもよく(例えば、ナノポア内の全てのサブユニットが同じである)、またはヘテロ多量体であってもよい(例えば、少なくとも1つのサブユニットがナノポア内の他のものと異なる)。修飾セクレチンナノポアは、標的分析物(例えば、ポリヌクレオチド)を通過させることを可能とするのに十分な大きい内腔を形成するのに十分な任意の数のサブユニットポリペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、9~20個のサブユニットポリペプチドを含み得、少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、または最大で全部)のサブユニットポリペプチドが本明細書に記載のアミノ酸修飾のうちの1つ以上を含む。
【0009】
したがって、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド、および修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドもまた、本明細書に提供される。
【0010】
例えば、一態様において、修飾GspDセクレチンナノポアは、配列番号36に記載のセクレチンドメインのアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含むサブユニットポリペプチドを含む。
【0011】
Vibrio choleraeおよびEscherichia coli ETEC由来のGspDのセクレチンドメインはキャップゲートを含む。Escherichia coli K12などのいくつかのGspDサブユニットポリペプチドを含む他のII型分泌系セクレチンサブユニットポリペプチドは、キャップゲートを含まない。修飾セクレチンナノポアは、一態様において、キャップゲートを含まないものであり得る。配列番号36に記載のセクレチンドメインは、56位と77位との間にキャップゲートを含む。例えば、配列番号36に記載のセクレチンドメインは、キャップゲートの全部または一部を欠失するように修飾してもよく、例えば、配列番号36のD55またはT56~T77の全部もしくは一部のアミノ酸を欠失させてもよい。あるいは、修飾GspDセクレチンナノポアは、天然でキャップゲートを欠如していてもよい。配列番号36のD55またはT56~T77のアミノ酸は、配列番号32のD371またはT372~T393のアミノ酸に対応する。
【0012】
GspDの中央ゲートは、アミノ酸をより小さな側基を有するアミノ酸で置換するように、かつ/または負に荷電したアミノ酸を中性または正に荷電したアミノ酸で置換するように修飾され得る。配列番号36に記載のセクレチンドメインは、配列番号32の460位および473位に対応する144位と157位との間の中央ゲートを含む。修飾GspDセクレチンナノポアのセクレチンドメインは、配列番号36に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み得、(i)D55もしくはT56~T77のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K60、D64、R71、およびE73のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD55、T56、T77およびK78のうちの1つ以上がPで置換され、かつ/あるいは(ii)F156がより小さいアミノ酸で置換され、N151および/またはN152がより小さいアミノ酸で置換され、D153が荷電していないアミノ酸で置換され、G137およびG165がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている。例えば、修飾セクレチンGspDナノポアにおいて、Y63~R71が欠失されおよび/またはGSGもしくはSGSで置換されてもよく、F156がAで置換されてもよく、D153がSで置換されてもよく、かつ/あるいはN151およびN152がそれぞれ独立してGまたはSで置換されてもよい。配列番号36のD55、T56、K60、Y63、D64、R71、E73、T77、K78、G137、N151、N152、D153、F156、およびG165は、配列番号32に記載の全長GspDアミノ酸配列のD371、T372、K376、Y379、D380、R387、E389、T393、K394、G453、N467、N468、D469、F472、およびG481に対応する。修飾セクレチンGspDナノポアは、一態様において、配列番号33、34、および/または35に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むサブユニットポリペプチドを含む。
【0013】
修飾GspDセクレチンナノポアのセクレチンドメインは、配列番号35に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み得、(i)D55もしくはT56~T77のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K60、D64、R71、およびE73のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD55、T56、T77およびK78のうちの1つ以上がPで置換され、かつ/あるいは(ii)F156がより小さいアミノ酸で置換され、N151および/またはN152がより小さいアミノ酸で置換され、D153が荷電していないアミノ酸で置換され、G137およびG165がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている。例えば、修飾セクレチンGspDナノポアにおいて、Y63~R71が欠失されおよび/またはGSGもしくはSGSで置換されてもよく、F156がAで置換されてもよく、D153がSで置換されてもよく、かつ/あるいはN151およびN152がそれぞれ独立してGまたはSで置換されてもよい。配列番号35のD55、T56、K60、Y63、D64、R71、E73、T77、K78、G137、N151、N152、D153、F156、およびG165は、配列番号32に記載の全長GspDアミノ酸配列のD371、T372、K376、Y379、D380、R387、E389、T393、K394、G453、N467、N468、D469、F472、およびG481に対応する。
【0014】
修飾GspDセクレチンナノポアのセクレチンドメインは、配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み得、(i)D117もしくはT118~T139のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K122、D126、R133、およびE135のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD117、T118、T139、およびK140のうちの1つ以上がPで置換され、かつ/あるいは(ii)F218がより小さなアミノ酸で置換され、N213および/またはN214がより小さなアミノ酸で置換され、D215が荷電していないアミノ酸で置換され、G199およびG227がそれぞれ独立して未修飾またはAもしくはVで置換されている。例えば、修飾セクレチンGspDナノポアにおいて、Y125~R133が欠失されおよび/またはGSGまたはSGSで置換されてもよく、F218がAで置換されてもよく、D215がSで置換されてもよく、かつ/あるいはN213およびN214がそれぞれ独立してGまたはSで置換されてもよい。配列番号34のD117、T118、K122、Y125、D126、R133、E135、T139、K140、G199、N213、N214、D215、F218、およびG227は、配列番号32に記載の全長GspDアミノ酸配列のD371、T372、K376、Y379、D380、R387、E389、T393、K394、G453、N467、N468、D469、F472、およびG481に対応する。
【0015】
修飾GspDセクレチンナノポアのセクレチンドメインは、配列番号33に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み得、(i)D132もしくはT133~T154の全部もしくは一部のアミノ酸が欠失もしくは置換され、K137、D141、R148、およびE150のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD132、T133、T154、およびK155のうちの1つ以上がPで置換され、かつ/あるいは(ii)F233がより小さいアミノ酸で置換され、N228および/またはN229がより小さいアミノ酸で置換され、D230が荷電していないアミノ酸で置換され、G214およびG242がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている。例えば、修飾セクレチンGspDナノポアにおいて、Y140~R148が欠失されおよび/またはGSGもしくはSGSで置換されてもよく、F233がAで置換されてもよく、D230がSで置換されてもよく、かつ/あるいはN228およびN229がそれぞれ独立してGまたはSで置換されてもよい。配列番号33のD132、T133、K137、Y140、D141、R148、E150、T154、K155、G214、N228、N229、D230、F233、およびG242は、配列番号32に記載の全長GspDアミノ酸配列のD371、T372、K376、Y379、D380、R387、E389、T393、K394、G453、N467、N468、D469、F472、およびG481に対応する。例えば、一態様において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、(N1またはN0ドメインを有しないInvGのアミノ酸配列に対応する)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、配列番号1のD28、E41、E114、Q45、E225、R226、およびE231から選択されるアミノ酸(複数可)において1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、荷電改変アミノ酸修飾)を含む。1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、荷電改変アミノ酸修飾)は、以下のうちの1つ以上を含み得る:(i)D28N/Q/T/S/G/R/K、(ii)E225N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/K、(iii)R226N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/K/V、(iv)E225の欠失、(v)R226の欠失、および(vi)E231N/Q/T/A/S/G/P/H/R/K。他のアミノ酸修飾には、(i)Q45R/K、(ii)E41N/Q/T/S/G/R/K、および/または(iii)E114N/Q/T/S/G/R/Kが含まれるが、これらに限定されない。そのようなアミノ酸修飾は、ナノポア(例えば、D28、E41、E114、および/またはQ45における変異)による分析物、例えばポリヌクレオチドの捕捉を増強し、および/または分析物、例えばポリヌクレオチドとナノポア(例えば、E225および/またはR226における変異)の狭窄部との相互作用を改善し得る。別の態様において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、(N1およびN0ドメインを含むWT InvGのアミノ酸配列に対応する)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、配列番号2のD199、E212、E285、Q216、E396、R397、およびE402から選択されるアミノ酸(複数可)において1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、荷電改変アミノ酸修飾)を含む。そのようなアミノ酸修飾の非限定的な例には、(i)D199N/Q/T/S/G/R/K、(ii)E396N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/K、(iii)R397N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/K/V、(iv)E396の欠失、(v)R397の欠失、(vi)E402N/Q/T/A/S/G/P/H/R/Kが含まれる。他のアミノ酸修飾には、(i)Q216R/K、(ii)E212N/Q/T/S/G/R/K、および(iii)E285N/Q/T/S/G/R/Kが含まれるが、これらに限定されない。そのようなアミノ酸修飾は、ナノポア(例えば、D199、E212、E285、および/またはQ216における変異)による分析物、例えばポリヌクレオチドの捕捉を増強し、および/または分析物、例えばポリヌクレオチドとナノポア(例えば、E396および/またはR397における変異)の狭窄部との相互作用を改善し得る。
【0016】
さらなる態様は、エンドペプチダーゼ切断部位を含む修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドを特徴とする。この態様において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、(N1およびN0を含むWT InvGのアミノ酸配列に対応する)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、エンドペプチダーゼ切断部位は、配列番号2の170位と171位との間または171位と172位との間に挿入されている。いくつかの実施形態において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、D199、E212、E285、Q216、E396、R397、およびE402から選択されるアミノ酸(複数可)において1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、荷電改変アミノ酸修飾)をさらに含み得る。そのようなアミノ酸修飾の非限定的な例には、(i)D199N/Q/T/S/G/R/K、(ii)E396N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/K、(iii)R397N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/K/V、(iv)E396の欠失、(v)R397の欠失、(vi)E402N/Q/T/A/S/G/P/H/R/Kが含まれる。他のアミノ酸修飾には、(i)Q216R/K、(ii)E212N/Q/T/S/G/R/K、および(iii)E285N/Q/T/S/G/R/Kが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
本開示のさらなる態様は、セクレチンナノポアおよびナノポアの内腔内に提供される酵素を含む組成物を提供する。組成物は膜内に配置され得る。
【0018】
例えば、標的分析物、例えば標的ポリヌクレオチドの特徴付けに使用するための装置もまた本開示の範囲内である。装置は、本明細書に記載のセクレチンナノポアの任意の実施形態を含む膜が水溶液中に配置された該水溶液を収容するチャンバを含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、装置は水溶液中に存在する分析物をさらに含み得る。例示的な分析物には、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、および/またはリガンドが含まれるが、これらに限定されない。装置が水溶液中にポリヌクレオチドを含むいくつかの実施形態において、装置は、例えば、ポリヌクレオチドに任意選択で結合しているヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、またはポリメラーゼを含むがこれらに限定されない、ポリヌクレオチド結合タンパク質をさらに含むことができる。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、膜のシス側またはトランス側にあり得、例えば、ナノポアのシス開口部またはトランス開口部と(例えば、イオン性および/または疎水性相互作用により)接触し、またはこれと共有結合する。
【0020】
本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアおよび装置は、様々なバイオセンサー、またはポリヌクレオチドシーケンシングおよび/もしくはタンパク質検出に限定されない分析物検出の用途に使用することができる。したがって、修飾セクレチンナノポアおよび装置を使用するための方法もまた本明細書に提供される。例えば、本方法は、本明細書に記載の装置の一実施形態を得ることと、装置内に配置された膜のシス側またはトランス側で分析物を水溶液に添加することと、を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、膜にわたって電圧勾配を印加することによってナノポアを通るイオン電流フローを誘導することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、印加された電圧勾配下でナノポアを通るイオン電流フローを検出することをさらに含み、このイオン電流フローを分析物の存在を決定するために使用することができる。
【0021】
本方法がポリヌクレオチドの特徴付けに使用される場合、本方法は、膜のシス側またはトランス側で水溶液中のポリヌクレオチド結合タンパク質(例えば、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、および/またはポリメラーゼ)を添加することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチド分析物に結合し、例えば、非共有相互作用(例えば、イオン性および/もしくは疎水性相互作用)ならびに/または共有結合により、ナノポアのシス開口部またはトランス開口部と任意選択で相互作用し得る。
【0022】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載されている。本開示の他の特徴または利点は、以下の図面およびいくつかの実施形態の詳細な説明から明らかであり、ならびに添付の特許請求の範囲からも明らかであろう。
【0023】
図面の簡単な説明
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに実証するために含まれ、それらの特定の態様は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面のうちの1つ以上を参照することによってよりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1-1】インジェクチソーム基底小体(injectisome basal body)のCry-EM構造および単離されたセクレチンを示す図である。(左パネル)基底小体再構築物の中央断面図(暗灰色で輪郭が描かれ、秩序性の低い(less-ordered)特徴を強調するために低レベルで薄灰色で輪郭が描かれている)および単離したセクレチン(青)。PrgH、PrgK、およびInvGのドメイン注釈は左側上に表示され、これまでに解明された単量体ドメインの構造は右側上に表示されている。PrgH細胞質D1ドメイン(緑色、左下)は、この研究で使用されたPrgH130~392変異体には存在せず、基底小体に対するその正確な位置は不明である。PrgH(N末端)およびPrgK(C末端)の膜貫通ヘリックスならびにPrgKのN末端脂質化が存在するが、散在的である。(右パネル)InvG172~557(青)、PrgH171~364(緑)、PrgK20~203(橙色)、およびRosettaモデルのInvG34~171(淡青色)の精緻化構造。InvG34~557を包含する1つのモノマーは、構造ドメインに従って色付けされている:ミディアムブルー、N0~N1;コバルトブルー、N3ドメイン;シアン、外側βシート;緑色、内側βシート;橙色、セクレチンドメイン縁;赤、Sドメイン(i+1およびi+2プロモーターのβシートとの置換された相互作用に留意)。
図1-2】野生型InvG172~557セクレチンの二次構造トポロジーを示す図である。セクレチンドメインのβ鎖は、外側βバレルを形成する1、3a/3b、8、および9、内側βバレルを形成する4~7、ならびにβバレルの縁(lip)を形成する1、2、3aで番号付けされている。鎖3は、保存残基Pro371によって3aおよび3bに分かれる。各ドメインの両端に示される数値は、配列番号2に基づくドメインの最初および最後のアミノ酸位置を定義する。
図1-3】Salmonella enterica由来の野生型InvGセクレチン(例えば、配列番号2に基づく)および配列番号10の97~646位のVibrio cholerae由来の野生型GspDセクレチンの二次構造トポロジーを示す図である。図は、InvGナノポアおよびGspDナノポアのシス開口部およびトランス開口部の異なるドメインおよび寸法を示す。ナノポアの配向は、(天然状態におけるような)ナノポアのOM領域が本明細書に記載のように膜中に位置付けるようにするものである。
図1-4】Vibrio cholerae(PDB:5wq8)およびE. coli(PDB:5wq7)由来のGspDの構造を示す図である。各GspD構造の1つのサブユニットはシアンで色付けされている。
図2-1】CsgGナノポアとInvGナノポアとの比較を示す図である。上段はCsgGおよびInvGナノポアの上面図を示し、下段はCsgGおよびInvGナノポアの側面図を示す。CsgGナノポアは9個のモノマーまたはサブユニットを有し、InvGナノポアは15個のモノマーまたはサブユニットを有する。しかしながら、CsgGおよびInvGの両方のナノポアは、内腔内に直径がほぼ同じ狭窄部を有する。
図2-2】CsgGナノポアとInvGナノポアとの比較を示す図である。上段はCsgGおよびInvGナノポアの上面図を示し、下段はCsgGおよびInvGナノポアの側面図を示す。CsgGナノポアは9個のモノマーまたはサブユニットを有し、InvGナノポアは15個のモノマーまたはサブユニットを有する。しかしながら、CsgGおよびInvGの両方のナノポアは、内腔内に直径がほぼ同じ狭窄部を有する。
図3】InvGおよびCsgGのナノポアプロファイルを示す図である。X軸は、InvGおよびCsgGナノポアの内部ポア半径プロファイルを示す:-60(膜側/トランス開口部)および+60(シス開口部)は、ポアの高さに対する任意数である。0が中央値である。Y軸は、X軸の各位置に対するポアの内腔の実半径をオングストロームで示している。
図4】CsgGおよびInvGのナノポアの狭窄部の比較を示す図である。上段は、CsgGおよびInvGナノポアの側面図を示す。下段は、CsgGおよびInvGポアの狭窄部内に存在するアミノ酸を示す。CsgGおよびInvGの両方のナノポアは、直径がほぼ同じ狭窄部を有しているが、CsgGナノポアの狭窄部は(野生型配列に基づいて)51位、55位、および56位において3個のアミノ酸を有し、InvGナノポアの狭窄部は(配列番号2に基づいて)396位および397位において2個のアミノ酸を有する。
図5】ポリヌクレオチド結合タンパク質(ヘリカーゼまたはポリメラーゼなどのDNA結合酵素)対CsgGおよびInvGのナノポアの相対サイズを示す図である。InvGナノポアの開口部はCsgGナノポアの開口部よりもはるかに広いので、ポリヌクレオチド結合タンパク質(例えば、ヘリカーゼまたはポリメラーゼなどのDNA結合酵素)は異なる向きでInvGおよびCsgGナノポアと相互作用し得る。
図6】InvGナノポアと相互作用するポリヌクレオチド結合タンパク質(例えば、ヘリカーゼまたはポリメラーゼなどのDNA結合酵素)の(異なる視点からの)上面図を示す。左側のパネルでは、内側の点線は図4のInvG(右側のパネル)の下側の点線に対応し、外側の点線は図4のInvG(右側のパネル)の上側の点線に対応する。
図7】ナノポアを形成するために使用することができるInvGサブユニットポリペプチドにおける変異の例示的な組み合わせを示す。図に示されているアミノ酸位置は配列番号2に基づく。
図8】InvGナノポアにおける図7に示される変異の相対位置を示す図である。ナノポアはN0またはN1ドメインを有しない一方、図中に示されるアミノ酸位置は配列番号2に基づく。
図9-1】GspDセクレチンナノポアとInvGセクレチンナノポアとの間の構造相同性を示す図である。
図9-2】GspDセクレチンナノポアとInvGセクレチンナノポアとの間の構造相同性を示す図である。
図10】Vibrio cholerae由来のGspDのアミノ酸配列を示し、結晶構造から失われている、すなわち当該技術分野では結晶構造が決定されていない、アミノ酸配列の領域を強調してある。図に示されているアミノ酸位置は配列番号32に基づく。
図11】Vibrio choleraeのGspDのドメイン構造を示す図である。図に示されているアミノ酸位置は配列番号32に基づく。
図12】Vibrio cholerae由来のGspDの構造を示し、N3狭窄部およびキャップならびに中央ゲートの位置を強調している図である。図に示されているアミノ酸位置は配列番号32に基づく。
図13】Vibrio cholerae由来のGspDのアミノ酸配列においてG453およびG481によって形成されたねじれを示す図である。
図14】ベースラインとして使用されるGspD-Vch-(WT-del(1-239)/(265-282)-H6(C)変異体の電気生理学的特徴を示す図である。A)500mM KCl、25mMリン酸緩衝液(pH7)中、-180mVでの開口したポアの電流。B)25mV交流電位ステップ(alternating potential step)での-25mV~-200mVおよび25mV~200mVの範囲のIV曲線。
図15-1】25mV交流電位ステップでの-25mV~-200mVおよび25mV~200mVの範囲の異なるGspD変異体のIV特性を示す図である。A)GspD-Vch-(WT-del(1-239)/(265-282)-H6(C)。B)GspD-Vch-(WT-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)/(Y379-GSG-R387))。C)GspD-Vch-(WT-F472A-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))。D)GspD-Vch-(WT-D469S-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))。E)GspD-Vch-(WT-N467G/N468S-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))。F)GspD-Vch-(WT-N467S/N468G-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))。G)GspD-Vch-(WT-N467G/N468S/D469S-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))。
図15-2】25mV交流電位ステップでの-25mV~-200mVおよび25mV~200mVの範囲の異なるGspD変異体のIV特性を示す図である。C)GspD-Vch-(WT-F472A-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))。D)GspD-Vch-(WT-D469S-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))。
図15-3】25mV交流電位ステップでの-25mV~-200mVおよび25mV~200mVの範囲の異なるGspD変異体のIV特性を示す図である。E)GspD-Vch-(WT-N467G/N468S-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))。F)GspD-Vch-(WT-N467S/N468G-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))。G)GspD-Vch-(WT-N467G/N468S/D469S-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))。
図16】GspD-Vch-(WT-del(1-239)/(265-282)-H6(C)変異体を通るDNAの移動を示す図である。A)470mM KCL、25mM HEPES、11mM ATP、および10mM MgCl2(pH)8.0中、-180mVでの開口したポアの電流。B)アダプターにライゲーションされたラムダ3.6kb DNAの添加により、電流トレース(trace)において明らかなノイズの多いパターンが示される。DNAがポア内部にある場合、電流スパイクが増加する。C)ノイズの多いパターンの画像を拡大すると、開口したポアの電流の低下が示され、これはポアを通って移動するDNAである。
図17-1】GspDポア内部で一価ストレプトアビジンが結合したビオチン化静的(static)鎖のモデルを示す図である。A)ポアの頂部にあるストレプトアビジン分子。B)狭窄部ゲートの上のポア内部にあるストレプトアビジン分子。
図17-2】GspDポア内部で一価ストレプトアビジンが結合したビオチン化静的(static)鎖のモデルを示す図である。A)ポアの頂部にあるストレプトアビジン分子。B)狭窄部ゲートの上のポア内部にあるストレプトアビジン分子。
図18-1】GspD-Vch-(WT-N467G/N468S-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))によるストレプトアビジン結合ビオチン化静的鎖の捕捉を示す図である。A)単一のGspDポア中で1時間静的鎖実験を行い、15分間の対照の開口したポアの実験から始めて、15分後に3つの静的鎖ONLA19798、AH71、およびAH72をそれぞれチップを通して流す。B)約250pAの電流を有する開口したポアの対照トレース。C)ONLA19798の添加により、開口したポアからの静的鎖が即座に捕捉されたことが示される。D)AH71の添加により、開口したポアから静的鎖が捕捉されたことが示される。E)AH72の添加によってもまた、静的鎖の捕捉が示される。
図18-2】GspD-Vch-(WT-N467G/N468S-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))によるストレプトアビジン結合ビオチン化静的鎖の捕捉を示す図である。A)単一のGspDポア中で1時間静的鎖実験を行い、15分間の対照の開口したポアの実験から始めて、15分後に3つの静的鎖ONLA19798、AH71、およびAH72をそれぞれチップを通して流す。B)約250pAの電流を有する開口したポアの対照トレース。C)ONLA19798の添加により、開口したポアからの静的鎖が即座に捕捉されたことが示される。D)AH71の添加により、開口したポアから静的鎖が捕捉されたことが示される。E)AH72の添加によってもまた、静的鎖の捕捉が示される。
図18-3】GspD-Vch-(WT-N467G/N468S-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))によるストレプトアビジン結合ビオチン化静的鎖の捕捉を示す図である。A)単一のGspDポア中で1時間静的鎖実験を行い、15分間の対照の開口したポアの実験から始めて、15分後に3つの静的鎖ONLA19798、AH71、およびAH72をそれぞれチップを通して流す。B)約250pAの電流を有する開口したポアの対照トレース。C)ONLA19798の添加により、開口したポアからの静的鎖が即座に捕捉されたことが示される。D)AH71の添加により、開口したポアから静的鎖が捕捉されたことが示される。E)AH72の添加によってもまた、静的鎖の捕捉が示される。
【0025】
配列の簡単な説明
配列番号1は、Salmonella enterica由来の短縮型InvG(N0およびN1ドメインを有しない全長InvG)の391個のアミノ酸配列である。
【0026】
配列番号2は、Salmonella enterica由来の野生型InvG(N0およびN1ドメインを含む全長InvG)の572個のアミノ酸配列である。最初の171個のアミノ酸はN0ドメインおよびN1ドメインに対応する。
【0027】
配列番号3は、Salmonella enterica由来の野生型InvGのアミノ酸配列であり、TEV切断部位(ENLYFQG)がN1およびN2ドメイン(最初の171個のアミノ酸)の後のアミノ酸172~178に付加されている。
【0028】
配列番号4は、Escherichia coli(K12株)由来のGspD(>sp|P45758|GSPD_ECOLI II型分泌系タンパク質D OS=Escherichia coli(K12株)GN=gspD PE=2 SV=2)のアミノ酸配列である。
【0029】
配列番号5は、>tr|Q7BRZ9|Q7BRZ9_YERENセレクチンYscC OS=Yersinia enterocolitica GN=yscC PE=3 SV=1のアミノ酸配列である。
【0030】
配列番号6は、>sp|Q04641|MXID_SHIFL外膜タンパク質MxiD OS=Shigella flexneri GN=mxiD PE=1 SV=1のアミノ酸配列である。
【0031】
配列番号7は、>tr|A0A1C6ZHG5|A0A1C6ZHG5_PSEAI III 型分泌外膜タンパク質 PscC OS=Pseudomonas aeruginosa GN=pscC PE=3 SV=1のアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号8は、>tr|B7UMB3|B7UMB3_ECO27 T3SS 構造タンパク質EscC OS=Escherichia coli O127:H6(E2348/69/EPEC株)GN=escC PE=1 SV=1のアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号9は、>sp|D0ZWR9|SPIA_SALT1 III型分泌系外膜タンパク質SpiA OS=Salmonella typhimurium(14028s/SGSC 2262株)GN=spiA PE=2 SV=1のアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号10は、>tr|A0A1E4UJH6|A0A1E4UJH6_VIBCL II型分泌系タンパク質GspD OS=Vibrio cholerae GN=BFX10_13405 PE=4 SV=1のアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号11は、>sp|P15644|GSPD_KLEPN II型分泌系タンパク質D OS=Klebsiella pneumoniae GN=pulD PE=1 SV=1のアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号12は、>tr|X5F782|X5F782_NEIME Iv型線毛アセンブリ(pilus assembly)タンパク質PilQ OS=Neisseria meningitidis GN=pilQ PE=3 SV=1のアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号13は、>WP_071651540.1 EscC/YscC/HrcC ファミリーIII型分泌系外膜環状タンパク質[Salmonella enterica]のアミノ酸配列であり、配列番号2と97%の同一性を有する。
【0038】
配列番号14は、>WP_038392434.1III型分泌系外膜ポアInvG[Salmonella bongori]のアミノ酸配列であり、配列番号2と94%の同一性を有する。
【0039】
配列番号15は、>WP_043640872.1 III型分泌系外膜ポアInvG [Chromobacterium haemolyticum]のアミノ酸配列であり、配列番号2と69%の同一性を有する。
【0040】
配列番号16は、>WP_059765897.1 III型分泌系外膜ポアInvG[Burkholderia ubonensis]のアミノ酸配列であり、配列番号2と67%の同一性を有する。
【0041】
配列番号17は、>WP_036979259.1III型分泌系外膜ポアInvG[Providencia alcalifaciens]のアミノ酸配列であり、配列番号2と64%の同一性を有する。
【0042】
配列番号18は、>WP_051238518.1 III型分泌系外膜ポアInvG[Pseudogulbenkiania ferrooxidans]のアミノ酸配列であり、配列番号2と61%の同一性を有する。
【0043】
配列番号19は、>WP_070981539.1EscC/YscC/HrcCファミリーIII型分泌系外膜リングタンパク質[Chromobacterium vaccinii]のアミノ酸配列であり、配列番号2と61%の同一性を有する。
【0044】
配列番号20は、>WP_052429256.1 III型分泌系外膜ポアInvG[Salmonella enterica]のアミノ酸配列であり、配列番号2と60%の同一性を有する。
【0045】
配列番号21は、>WP_021564153.1 EscC/YscC/HrcC ファミリーIII型分泌系外膜環状タンパク質[Escherichia coli]のアミノ酸配列であり、配列番号2と59%の同一性を有する。
【0046】
配列番号22は、>WP_024250244.1 III型分泌系外膜ポアInvG[Shigella dysenteriae]のアミノ酸配列であり、配列番号2と56%の同一性を有する。
【0047】
配列番号23は、>WP_000694679.1 III型分泌系外膜ポアInvG[Escherichia coli]のアミノ酸配列であり、配列番号2と53%の同一性を有する。
【0048】
配列番号24は、>WP_061203566.1EscC/YscC/HrcC ファミリーIII型分泌系外膜環状タンパク質[Stenotrophomonas rhizophila]のアミノ酸配列であり、配列番号2と52%の同一性を有する。
【0049】
配列番号25は、>WP_016498773.1 EscC/YscC/HrcCファミリーIII型分泌系外膜環状タンパク質[Pseudomonas putida]のアミノ酸配列であり、配列番号2と52%の同一性を有する。
【0050】
配列番号26は、>ANI31722.1 III型分泌系外膜ポアInvG[Yersinia entomophaga]のアミノ酸配列であり、配列番号2と50%の同一性を有する。
【0051】
配列番号27は、>WP_053215251.1 EscC/YscC/HrcC ファミリーIII型分泌系外膜環状タンパク質[Yersinia nurmii]のアミノ酸配列であり、配列番号2と49%の同一性を有する。
【0052】
配列番号28は、>WP_034249407.1 EscC/YscC/HrcCファミリーIII型分泌系外膜環状タンパク質[Arsenophonus nasoniae]のアミノ酸配列であり、配列番号2と46%の同一性を有する。
【0053】
配列番号29は、>WP_006122201.1 EscC/YscC/HrcCファミリーIII型分泌系外膜環状タンパク質[Pantoea stewartii]のアミノ酸配列であり、配列番号2と42%の同一性を有する。
【0054】
配列番号30は、>KJO55878.1III型分泌系タンパク質[[Enterobacter]aerogenes]のアミノ酸配列であり、配列番号2と41%の同一性を有する。
【0055】
配列番号31は、リーダー配列を含む、Vibrio choleraeのGspDのアミノ酸配列である。
【0056】
配列番号32は、Vibrio choleraeのGspDの成熟アミノ酸配列である。
【0057】
配列番号33は、Vibrio choleraeのGspDのN3、セクレチン、およびSドメインの配列である(配列番号32のアミノ酸1~239は欠失している)。
【0058】
配列番号34は、Vibrio choleraeのGspDのN3、セクレチン、およびSドメインの配列であり、配列番号32のアミノ酸Y379~R387をアミノ酸GSGで置換することにより、N3ドメインの構成が除去されている。
【0059】
配列番号35は、Vibrio choleraeのGspDのセクレチンおよびSドメインの配列である。
【0060】
配列番号36は、Vibrio choleraeのGspDのセクレチンドメインの配列である。
【0061】
配列番号37は、>tr|A7ZRJ5|A7ZRJ5_ECO24一般的分泌経路タンパク質D OS=Escherichia coli O139:H28(E24377A/ETEC株)GN=gspD PE=1 SV=1の配列である。
【0062】
配列番号38は、>sp|P31780|GSPD_AERHY II型分泌系タンパク質D OS=Aeromonas hydrophila GN=exeD PE=3 SV=2の配列である。
【0063】
配列番号39は、>sp|P35818|GSPD_PSEAE II型分泌系タンパク質D OS=Pseudomonas aeruginosa(ATCC 15692/DSM22644/CIP104116/JCM14847/LMG12228/1C/PRS101/PAO1株) GN=xcpQ PE=1 SV=1の配列である。
【0064】
配列番号40は、>tr|A0A181X688|A0A181X688_KLEOX 一般的分泌経路タンパク質D OS=Klebsiella oxytoca GN=pulD PE=3 SV=1の配列である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
特定の膜貫通ポア(例えば、タンパク質ナノポアまたは固体状ナノポア)は、バイオポリマーを検出または特徴付けるためのセンサーとして有用である。膜貫通ポアの構造、特にポアの内腔は、バイオポリマーとポアとの間の相互作用に影響を及ぼし、したがって、バイオポリマーがポアと相互作用するときに生じる信号に由来し得る情報に影響を及ぼす。したがって、分析物、例えば、ポリヌクレオチドまたはタンパク質などの負に荷電したまたは疎水性バイオポリマーを捕捉および移動することができる新しい膜貫通ナノポアを同定する必要がある。本開示は、セクレチンナノポアが、ポリヌクレオチドマッピングもしくはシーケンシング、またはタンパク質検出などの実用的用途に有用であることを初めて提供する。
【0066】
膜貫通ポア(例えば、タンパク質ナノポアまたは固体状ナノポア)はバイオポリマーを検出または特徴付けるためのセンサーとして有用であるが、特定のナノポアを通ってバイオポリマー、例えばポリヌクレオチドが移動することは、例えばバイオポリマーがナノポアへ入るときに大きな静電気障壁があるために困難となり得る。したがって、ナノポアを横切る分析物、例えばポリヌクレオチドまたはタンパク質などの負に荷電したまたは疎水性バイオポリマーをより効率的に捕捉および/または移動させることを可能にする膜貫通ナノポアを設計する必要があり、これはポリヌクレオチドマッピングもしくはシーケンシングまたはタンパク質検出などの実用的用途に有用であり得る。
【0067】
本開示は、修飾セクレチンナノポアおよびそのサブユニットポリペプチド、それを含む組成物または装置、ならびにそれらの使用に関する。いくつかの態様において、本開示は、(例えば、修飾セクレチンナノポアを形成するための)修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドおよびそれを含むナノポアを提供する。本明細書に記載のセクレチンナノポアおよび修飾セクレチンナノポアは、分析物、例えば標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを特徴付けるなどの様々な実用的用途に使用することができる。したがって、分析物、例えば標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを特徴付けるための方法および組成物もまた本明細書に記載される。
【0068】
本明細書に記載の任意の態様のいくつかの実施形態において、セクレチンナノポアのシスおよびトランス開口部は、酵素が内腔の腔内に入ることができるようなサイズである。酵素は、例えば、ナノポアの内腔表面に結合または付着させることによって腔内に固定化されてもよいし、またはそうでなければ内腔の腔内に非固定化様式で提供されてもよい。したがって、本開示の一態様はまた、セクレチンナノポアおよび内腔内に提供される酵素を含む組成物に関する。セクレチンナノポアは、以下においてより詳細に記載されるように、野生型、または変異体形態もしくは修飾形態であり得る。酵素は、ナノポアのシス玄関部(vestibule)またはトランス玄関部に存在してもよく、シス玄関部は、シス開口部からナノポアの狭窄部まで延在する内腔の一部として定義することができ、トランス玄関部は、トランス開口部からナノポアの狭窄部まで延在する内腔の一部として定義することができる。そのような組成物は、酵素に結合するか、またはそうでなければ酵素と相互作用する小分子を検出するために使用し得る。そのような小分子と酵素との相互作用は、例えば酵素の立体配座の変化によって、ナノポアを通るイオン電流フローの変化をもたらし得る。
【0069】
修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド
本開示のいくつかの態様は、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを提供する。修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、配列が参照セクレチンアミノ酸配列の配列と異なるポリペプチドである。修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドのアミノ酸配列は、(i)シス開口部形成アミノ酸配列、(ii)内腔形成アミノ酸配列、および(iii)トランス開口部形成アミノ酸配列を含む。シス開口部形成アミノ酸配列は、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドが他のサブユニットポリペプチドと相互作用して膜中にナノポアを形成するときに、ナノポアのシス開口部の一部を形成するアミノ酸配列のうちの1つ以上の部分である。内腔形成アミノ酸配列は、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドが他のサブユニットポリペプチドと相互作用して膜中にナノポアを形成するときに、ナノポアの内腔の一部を形成するアミノ酸配列のうちの1つ以上の部分である。トランス開口部形成アミノ酸配列は、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドが他のサブユニットポリペプチドと相互作用して膜中にナノポアを形成するときに、ナノポアのトランス開口部の一部を形成するアミノ酸配列のうちの1つ以上の部分である。セクレチンナノポアのシス開口部、内腔、およびトランス開口部を形成するセクレチンアミノ酸配列の部分を同定する方法は、当該技術分野で既知である。例えば、一部が膜に埋め込まれているナノポアは、例えば、Humphrey et al.,「VMD:Visual Molecular Dynamics」J.Mol.Graphics(1996)14:33-38に記載されるVMDを使用して、および例えば、Phillips et al.,「Scalable Molecular Dynamics with NAMD」J.Comput.Chem.(2005)26:1781-1802に記載されるNAMDを使用して、既知のセレクチン構造から相同性モデリングによって構築することができる。例えば、図1Dは、Vibrio cholerae由来のGspD(PDB:5wq8)およびE.coli由来のGspD(PDB:5wq7)の構造を示し、図8は、InvGナノポアの構造およびその異なるタンパク質ドメイン、ならびにナノポアの内腔内の例示的なアミノ酸修飾の対応位置を示していることを参照のこと。
【0070】
本明細書で使用する場合、「参照セクレチンアミノ酸配列」との用語は、セクレチンナノポアサブユニットの既知のアミノ酸配列を指す。例えば、II型、III型、またはIV型分泌系の任意のセクレチンサブユニットを含むがこれらに限定されない、種々の形態のセクレチンナノポアサブユニットが当該技術分野で既知である。II型分泌系の非限定的な例には、GspD、PulD、およびpIVが含まれる。III型分泌系の例にはInvG、MxiD、YscC、PscC、EscC、およびSpiAが含まれるが、これらに限定されない。IV型分泌系の非限定的な例にはPilQが含まれる。参照セクレチンアミノ酸配列は、II型、III型、もしくはIV型分泌系のメンバーの既知のアミノ酸配列またはその一部であり得る。例えば、参照セクレチンアミノ酸配列は、野生型GspD、PulD、pIV、PilQ、InvG、MxiD、YscC、PscC、EscC、SpiA、ExeD、またはXcpQの少なくとも一部分に対応するアミノ酸配列であり得、この部分は、セクレチンドメイン、Sドメイン、N2ドメイン、N3ドメインおよび/または別の関連するドメインのうちの1つ以上を含む。例えば、いくつかの実施形態において、この部分は、セクレチンドメイン、Sドメイン、およびN3ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、この部分は、セクレチンドメイン、Sドメイン、N3ドメイン、およびN2ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、この部分は、セクレチンドメインおよびSドメインを含み得る。セクレチンナノポアの様々なドメインが当該技術分野で既知である。例えば、図1Cは、Salmonella enterica由来のInvGおよびVibrio cholerae由来のGspDの異なるドメインを示す。いくつかの実施形態において、参照セクレチンアミノ酸配列は、当該技術分野で既知である、全長野生型GspD(例えば、配列番号4、配列番号10、配列番号31、もしくは配列番号37(全て、シグナル配列を含む)、または配列番号32(リーダーペプチドなし)に記載される)、PulD(例えば、配列番号11または配列番号40に記載される)、pIV、PilQ(例えば、配列番号12に記載される)、InvG(例えば、配列番号2および13~30に記載される)、MxiD(例えば、配列番号6に記載される)、YscC(例えば、配列番号5に記載される)、PscC(例えば、配列番号7に記載される)、EscC(例えば、配列番号8に記載される)、SpiA(例えば、配列番号9に記載される)、ExeD(例えば、配列番号38に記載される)、またはXcpQ(例えば、配列番号39に記載される)に対応するアミノ酸配列であり得る。いくつかの実施形態において、参照セクレチンアミノ酸配列は、配列番号1~40に記載のアミノ酸配列であり得る。いくつかの実施形態において、参照セクレチンアミノ酸配列は、例えば、Worrall et al.「Near-Atomic-Resolution Cryo-EM analysis of the Salmonella T3S Injectisome Basal Body」Nature(2016)540:597-601に記載されるような、野生型InvGナノポアサブユニットポリペプチドまたはその変異体のアミノ酸配列であり得る。いくつかの実施形態において、参照セクレチンアミノ酸配列は、例えば、Yan et al.「Structural insights into the secretin translocation channel in the type II secretion system」Nature Structural&Molecular Biology(2017)doi:10.1038/nsmb.3350に記載されるような、GspDナノポアサブユニットポリペプチドまたはその変異体のアミノ酸配列であり得る。当該技術分野で既知の任意の天然セクレチン配列またはそのバリアントを参照セクレチンアミノ酸配列として使用することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、参照セクレチンアミノ酸配列は、野生型GspD(例えば、配列番号36、配列番号35、または配列番号33)などのセクレチンの、セクレチンドメイン、セクレチンドメインおよびSドメイン、またはセクレチンドメイン、Sドメイン、およびN3ドメインに対応するアミノ酸配列、あるいはN3ドメインの狭窄部位が欠失または置換されているGspDのセクレチンドメイン、Sドメイン、およびN3ドメインに対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号34に記載される)であり得る。ポアを形成する任意の天然の短縮型セクレチン配列またはそのバリアントは、参照セクレチンアミノ酸配列として使用することができる。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、任意の天然セクレチンのアミノ酸配列、例えば参照セクレチンアミノ酸配列(例えば配列番号1~40)のいずれかと異なるアミノ酸配列を有し、選択された天然セレクチンに対して、例えば参照セクレチンアミノ酸配列のいずれかに対して(例えば、配列番号1~40のうちのいずれか1つに対して)1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40)アミノ酸修飾を含む。例えば、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、天然セクレチンのアミノ酸配列、例えば、参照セクレチンアミノ酸配列のいずれか(例えば、配列番号1~40のうちのいずれか)と少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列、またはその任意の構造もしくは機能性フラグメント(例えば、本明細書に記載のセクレチンの任意のフラグメント、部分、もしくはドメイン、例えば、図1Aまたは1Bに示される任意のフラグメント、部分、もしくはドメイン)を含み得、天然セクレチンに対して、例えば参照セクレチンに対して(例えば、配列番号1~40のうちのいずれか1つに対して)少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30もしくはそれ以上、および最大40)のアミノ酸修飾、またはその任意の構造もしくは機能性フラグメント(例えば、本明細書に記載のセクレチンの任意のフラグメント、部分、もしくはドメイン、例えば、図1Aもしくは1Bに示される任意のフラグメント、部分、もしくはドメイン)を含む。アミノ酸修飾(複数可)は、例えば、膜の組み込みを促進し、オリゴマー化を促進し、サブユニットの合成を促進し、ナノポアの安定性を促進し、分析物の捕捉を促進し、分析物の放出を促進し、ナノポアを通る分析物の移動を促進し、分析物の検出またはシグナル品質を改善し、ポリマー(例えば、ポリヌクレオチド配列)の分析を容易にするように選択することができる。いくつかの実施形態において、アミノ酸修飾(複数可)は、ナノポアへの分析物捕捉を促進するため、ナノポアを通る分析物の移動を促進するため、かつ/またはシグナル品質を改善させるなどの分析物の検出を改善させるための修飾(複数可)を含み得る。そのようなアミノ酸修飾(複数可)の例には、本明細書に記載の正に荷電した置換および疎水性アミノ酸置換が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
相同性を決定するために、当該技術分野における標準的な方法が使用され得る。例えば、UWGCG Packageは、例えばそのデフォルト設定で使用されて、相同性を計算するために使用され得るBESTFITプログラムを提供する(Devereux et al(1984)Nucleic Acids Research12,p387-395)。例えば、Altschul S. F.(1993)J Mol Evol36:290-300、Altschul,S.F et al(1990)J Mol Biol215:403-10に記載されるように、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用して、相同性を計算するか、または配列を並べる(同等の残基または対応する配列を同定する(典型的には、それらのデフォルト設定において))ことができる。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に利用可能である。配列同一性は、ペアワイズ配列アラインメントを使用することによって決定し得る。Needleman-Wunschアルゴリズムなどのグローバルアライメント技術、またはSmith-Watermanアルゴリズムなどのローカルアライメント法を使用して、配列アライメントを決定し得る。構造アラインメントを構築するための距離行列(distance matrix)アラインメントであるDALI(http://ekhidna.biocenter.helsinki.fi/dali_server/start)、またはダイナミックプログラミングに基づく構造アラインメント方法であるSSAP(逐次構造アラインメントプログラム)などの、構造相同性を決定するための様々な技術が存在する。後者の例は、CATH http://www.cathdb.info/である。
【0074】
いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、セクレチンドメイン、Sドメイン、およびN3ドメインを含む野生型InvGセクレチンの少なくとも一部分に対応するアミノ酸配列と少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、InvGセクレチンは、例えば、Salmonella、Chromobacterium、Burkholderia、Providencia、Pseudogulbenkiania、Escherichia、Shigella、Stenotrophomonas、Pseudomonas、Yersinia、Arsenophonus、Pantoea、およびEnterobacterなどの細菌を含むがこれらに限定されない、任意の種から得ることができる。異なる種由来の全長InvGセクレチン(N0およびN1ドメインを含む)のアミノ酸配列は、配列番号2および13~32ならびに37~40に記載されている。一実施形態において、InvGセクレチンはSalmonellaから得ることができる。例えば、いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、N1またはN0ドメインを有しないSalmonella由来の野生型InvGセクレチンに対応する配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含み得、配列番号1に記載のアミノ酸配に対して、少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40)のアミノ酸修飾(例えば、本明細書に記載されるように)を含む。あるいは、修飾セクレチンナノポアは、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含み得、配列番号2に記載のアミノ酸配に対して、少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40)のアミノ酸修飾(例えば、本明細書に記載されるように)を含む。理論に束縛されることを望まないが、InvGセクレチンのN1およびN0ドメインを除去することにより、修飾セクレチンナノポアが分析物、例えば標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出または特徴付けるために使用される場合、修飾セクレチンナノポアのシグナル対ノイズ比が改善され得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、セレクレチンドメイン、Sドメイン、およびN3ドメインを含む野生型GspDセクレチンの少なくとも一部分に対応するアミノ酸配列と少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、GspDセクレチンは、例えば、Vibrio、Escherichia、Aeromonas、Pseudomonas、およびKlebsiellaなどの細菌を含むがこれらに限定されない、任意の種から得ることができる。異なる種由来の全長GspDセクレチン(N0およびN1ドメインを含む)のアミノ酸配列は、配列番号4、10、31、32、および37に記載されている。一実施形態において、GspDセクレチンはVibrio choleraeから得ることができる。例えば、いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、配列番号32、33、34、35、または36に記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含み得る。修飾セクレチンナノポアは、配列番号32、33、34、35または36に記載のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含み得、配列番号32、33、34、35、または36に記載のアミノ酸配に対して、少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40)のアミノ酸修飾(例えば、本明細書に記載されるように)を含む。あるいは、GspDセクレチンはE.coliから得ることができ、またはII型セクレチンは、例えばKlebsiella oxytoca由来のPulD、例えばPseudomonas aeruginosa由来のXcpQ、もしくは例えばAeromonas hydrophila由来のExeDであり得る。例えば、いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、配列番号37、38、39、もしくは40の成熟部分、配列番号37、38、39、もしくは40に記載のアミノ酸配列のN3ドメイン、セクレチンドメイン、およびSドメイン、配列番号37、38、39、もしくは40に記載のアミノ酸配列のセクレチンドメインおよびSドメイン、または配列番号37、38、39、もしくは40に記載のアミノ酸配列のセクレチンドメインに記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含み得る。修飾セクレチンナノポアは、配列番号32、33、34、35、または36に記載のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含み得、配列番号37、38、39、もしくは40に記載のアミノ酸配列、配列番号37、38、39、もしくは40に記載のアミノ酸配列のN3ドメイン、セクレチンドメイン、およびSドメイン、配列番号37、38、39、もしくは40に記載のアミノ酸配列のセクレチンドメインおよびSドメイン、または配列番号37、38、39、もしくは40に記載のアミノ酸配列のセクレチンドメインに対して、少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40)のアミノ酸修飾(例えば、本明細書に記載されるように)を含む。これらの配列番号中のN3、セクレチン、およびSドメインのアミノ酸は、(Yan et al.「Structural insights into the secretin translocation channel in the type II secretion system」Nature Structural&Molecular Biology(2017)doi:10.1038/nsmb.3350に対する補足注意におけるように)配列を配列番号31とアラインさせることによって決定することができる。
【0076】
図1Bは、配列番号2の172~557位由来の野生型InvGセクレチンの二次構造トポロジーを示し、番号の付いたドメインは、β鎖およびループ領域に対応する2つの番号の付いたドメイン間の領域(図1B中の矢印の付いた線に示される)に対応する。単に例示として、ドメイン4(アミノ酸381~393)およびドメイン5(アミノ酸400~417)はβ鎖に対応し、ドメイン4と5との間の領域(アミノ酸393~400)はループ領域に対応する。
【0077】
図11は、β鎖、αヘリックス、およびループ領域を示す、野生型GspDセクレチン(配列番号32)の二次構造トポロジーを示している。
【0078】
図1Cは、Vibrio cholerae由来の野生型InvGセクレチンおよび野生型GspDセクレチン(配列番号10の97~646位または配列番号32から)の二次構造トポロジーを示す。配列番号32に示すVibrio cholerae GspDのアミノ酸配列において、アミノ酸1~99はN0ドメインを形成し、アミノ酸100~163はN1ドメインを形成し、アミノ酸164~238はN2ドメインを形成し、アミノ酸239~314はN3ドメインを形成し、アミノ酸317~588はセクレチンドメインを形成し、アミノ酸589~650はSドメインを形成する。
【0079】
いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40のアミノ酸修飾)を、1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)の、外側βバレルを形成するセクレチンドメイン(「外側βバレル形成ドメイン」)のβ鎖、例えば、図1Bに示される番号1、3a/3b、8、および9のドメインのβ鎖、または図11に示されるβ10、β11、β14、β15、β20およびβ21に対して行うことができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40のアミノ酸修飾)を、1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)の、外側βバレル形成ドメイン間のループ領域(例えば、図1Bまたは図11に示される)に対して行うことができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40のアミノ酸修飾)を、1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)の、内側βバレルを形成するセクレチンドメイン(「内側βバレル形成ドメイン」)のβ鎖、例えば、図1Bに示される番号4、5、6、および7のドメインのβ鎖、または図11に示されるβ16、β17、β18、およびβ19に対して行うことができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40のアミノ酸修飾)を、1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)の、内側βバレル形成ドメイン間のループ領域に対して行うことができる。例えば、いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8つのアミノ酸修飾)を、図1Bに示される内側βバレル形成ドメイン4および5間のループ領域に対して行うことができる。例えば、いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8つのアミノ酸修飾)を、図11に示される中央ゲートを形成する内側βバレル形成ドメインβ16およびβ17間のループ領域に対して行うことができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、最大40のアミノ酸修飾)を、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアのトランス開口部部分を形成するβ鎖に対応する、1つ以上(例えば、1、2、または3つ)の、βバレルの縁を形成するドメイン(「βバレル縁形成ドメイン」)、例えば、図1Bに示される番号1、2、および3aのドメイン、または図11に示されるβ12、β13、α7、α8のドメインに対して行うことができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40のアミノ酸修飾)を、1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)の、βバレル縁形成ドメイン間のループ領域に対して行うことができる。例えば、いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、または5つのアミノ酸修飾)を、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアのトランス開口部の少なくとも一部を形成する、図1Bに示されるβバレル縁形成ドメイン1および2間のループ領域(アミノ酸331~335)または図11中のβ12およびβ13(キャップゲート)間のループに対して行うことができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40のアミノ酸修飾)を、図1Bまたは図11に定義されるN3ドメイン内の1つ以上のβ鎖および/またはループ領域に対して行うことができる。例えば、いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、または5つのアミノ酸修飾)を、配列番号2のアミノ酸216~268によって定義されるループ領域に対して行うことができる。例えば、いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、または5つのアミノ酸修飾)を、GspDのN3ドメインの狭窄部位(例えば、配列番号32のアミノ酸N265~E282)に対して行うことができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、最大40のアミノ酸修飾)を、図1Bまたは図11に定義されるSドメイン内の1つ以上のβ鎖および/またはループ領域に対して行うことができる。
【0083】
したがって、いくつかの実施形態において、修飾ナノポアセクレチンナノポアは、(i)InvGまたはGspDセクレチンの外側βバレル形成ドメインおよび/またはその間のループ領域、(ii)InvGまたはGspDセクレチンの内側βバレル形成ドメインおよび/またはその間のループ領域、(iii)InvGもしくはGspDセクレチンのβバレル縁形成ドメインおよび/またはその間のループ領域、(iv)InvGまたはGspDセクレチンのSドメインおよび/またはその間のループ領域、ならびに(v)InvGまたはGspDセクレチンのN3ドメインおよび/またはその間のループ領域を有するサブユニットポリペプチドを含み得、β鎖および/またはループ領域は、例えば、ナノポア内の位置、ならびに/または分析物および/もしくは酵素との相互作用の程度に応じて、異なる数および/または種類のアミノ酸修飾を有し得る。例えば、外側βバレル形成ドメインおよび/またはその間のループ領域のそれぞれのアミノ酸配列は、それぞれ独立して、配列番号2、または配列番号4、32、もしくは37に記載の対応するドメインのアミノ酸配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む(100%を含む))同一であり得る。内側βバレル形成ドメインおよび/またはその間のループ領域のそれぞれのアミノ酸配列は、それぞれ独立して、配列番号2、または配列番号4、32、もしくは37に記載の対応するドメインのアミノ酸配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む(100%を含む))同一であり得る。βバレル縁形成ドメインおよび/またはその間のループ領域のそれぞれのアミノ酸配列は、それぞれ独立して、配列番号2、または配列番号4、32、もしくは37に記載の対応するドメインのアミノ酸配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む(100%を含む))同一であり得る。Sドメイン内の各ドメインおよび/またはその間のループ領域のアミノ酸配列は、それぞれ独立して、配列番号2、または配列番号4、32、もしくは37に記載の対応するドメインのアミノ酸配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む(100%を含む))同一であり得る。N3ドメイン内の各ドメインおよび/またはその間のループ領域のアミノ酸配列は、配列番号2、または配列番号4、32、もしくは37に記載の対応するドメインのアミノ酸配列と少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む(100%を含む))同一であり得る。得られた修飾ドメインが修飾ナノポアの内腔を通る分析物の捕捉および/または移動に悪影響を及ぼさないという条件で、各ドメインは異なるパーセントのアミノ酸同一性を有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、外側βバレル形成ドメインは、配列番号2、または配列番号4、32、もしくは37に記載の対応するドメインのアミノ酸配列と80%以下(例えば、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下を含む)のアミノ酸同一性をもたらす、多数のアミノ酸変異を許容し得るが、内側βバレル形成ドメインはより高いアミノ酸同一性を維持し、例えば、内側βバレル形成ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ独立して、少なくとも約80%以上(少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%以上を含む(100%を含む))であり得る。いくつかの実施形態において、N3ドメインの少なくとも1つのループ領域(例えば、配列番号2のアミノ酸216~268、または配列番号4、32、もしくは37によって定義されるループ領域)は、配列番号2または配列番号4、32、もしくは37に記載の対応するドメインのアミノ酸配列と80%以下(例えば、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下を含む)のアミノ酸同一性をもたらす、(例えば、酵素/ナノポア相互作用を改善するための)多数のアミノ酸変異を許容し得るが、内側βバレル形成ドメインはより高いアミノ酸同一性を維持し、例えば、内側βバレル形成ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ独立して、少なくとも約80%以上(少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%以上を含む(100%を含む))であり得る。
【0084】
当業者は、本明細書に記載のセクレチンナノポアに対する様々な種類の修飾(例えば、限定するものではないが、セクレチンナノポアの異なるドメインに対するアミノ酸修飾)が、本明細書に記載のセクレチンナノポアに対する高い構造相同性を有する任意の他のセクレチンナノポアに適用できることを容易に認識するであろう。単に例示として、配列番号4および37、ならびに10、31および32は、それぞれEscherichia coliおよびVibrio cholerae由来のGspDに関する。EMBL-EBIによって提供されるEMBOSS Needleヌクレオチドアラインメントアルゴリズムhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/nucleotide.htmlを使用して、ペアワイズアラインメントによって計算すると、例えば、配列番号4と配列番号10との間の配列同一性は41.6%であり、例えば、配列番号4および配列番号10のセクレチンドメイン間の配列同一性は44.2%であり、類似性は62.7%である。2つの構造間の配列同一性は低くてもよいが、それらは両方とも、例えばセクレチンドメイン、Sドメイン、N3ドメイン、N2ドメイン、およびN1ドメインを含む類似の構造ドメインを有することから高い構造相同性を共有する。
【0085】
N末端ドメインを欠如した短縮型セクレチンサブユニットポリペプチドは、ポアを形成することができる。したがって、本発明の修飾セクレチンナノポアは、いくつかの実施形態において、短縮型セクレチンナノポアである。短縮型セクレチンナノポアは、典型的には、N3ドメイン、セクレチンドメインおよびSドメイン、セクレチンドメインおよびSドメイン、またはセクレチンドメインを含み得る。
【0086】
したがって、いくつかの実施形態において、セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、内側バレル形成サブドメインおよび外側バレル形成サブドメインを含むβバレル形成ドメインを含むセクレチンドメインを含み、各サブドメインはβシートからなり、外側βバレルは典型的には約6つのβシートを含み、および/または内側バレルは典型的には約4つのβシートを含む。外側βバレルは、例えば図11に示すように、典型的には2つのβシート間に2つのαヘリックスをさらに含み得る。セクレチンナノポアにおいて、外側バレルは典型的には膜にまで及び、内側バレルは典型的にはポアの内腔に隣接している。内側バレルは、典型的には中央ゲートを含む。中央ゲートは、典型的には内側バレルを形成する2つのβシート間のループである。中央ゲートは、典型的にはポア中に延在して、ポアのサイズを狭める。中央ゲートは、本明細書に記載の中央ゲートループに存在するアミノ酸を改変し、ポアの特性を変えることによって改変することができる。中央ゲートは可動性であり得、例えば中央ゲートは開くことが可能であり得る。中央ゲートは、一定の狭窄部サイズを維持するように剛性であり得、例えば中央ゲートループは閉じていてもまたは部分的に閉じていてもよい。セクレチンナノポアのβバレルはまた縁を含み得、第1の縁は内側βバレルとは膜の反対側で膜から突出している。第2の縁は、第1の縁に対して内側βバレルの反対側にあってもよい。βバレルの第1の縁は、典型的には2つのαヘリックスおよび2つのβシートからなる。βシートは、キャップゲートを形成するループ領域によって連結されていてもよく、またはβシートを連結するループは短くてもよく、ゲートを形成しなくてもよい。キャップゲートは可動性であってもよく、例えばキャップゲートは開くことが可能であり得る。キャップゲートは、一定の狭窄部サイズを維持するために剛性であってもよく、例えばキャップゲートは閉じていてもまたは部分的に閉じていてもよい。いくつかの実施形態において、βバレルの第1の縁は、βシートを含まず、ループによって連結される2つのαヘリックスを含み得る。これらの実施形態において、サブユニットポリペプチドはキャップゲートを含まないナノポアを形成する。βバレルの第2の縁は、2つのαヘリックスを含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、セクレチンドメインに加えて、Sドメインを含み得る。Sドメインは2つのαヘリックスを含み得る。αヘリックスのうちの1つは、典型的にはセクレチンナノポアのβバレルと相互作用する。Sドメインは典型的にはポアの外側に(すなわちポアの内腔から離れて)位置する。
【0088】
いくつかの実施形態において、セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、セクレチンドメイン、および任意選択でSドメインに加えて、N3ドメインを含み得る。N3ドメインは典型的にはβバレルおよびαヘリックス、例えば3~6つのβバレルおよび2~3つのαヘリックスからなり、例えば、図11に示される3つのβバレルおよび2つのαヘリックス、または図1Bに示される6つのβバレルおよび3つのαヘリックスからなる。N3ドメインは、ポアの内腔に狭窄部を形成し得る。N3ドメインは、N3ドメインがポアを狭窄しないように修飾され得る。N3ドメインは、狭窄部のサイズを増加または減少するように修飾され得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドのアミノ酸配列は、内腔形成アミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40のアミノ酸修飾)を含む。アミノ酸修飾は、参照セクレチンアミノ酸配列と比較して、ナノポアを通る分析物(例えば、二本鎖または一本鎖DNAなどのポリヌクレオチド)の捕捉および/または移動の頻度が改善されるように選択される。
【0090】
いくつかの実施形態において、アミノ酸修飾は荷電改変修飾であり得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸修飾は正に荷電したアミノ酸置換である。本明細書で使用される「正に荷電したアミノ酸置換」との用語は、例えばpH7.0~8.0(例えばpH8.0)で、室温、例えば20~25℃で検出される、参照アミノ酸の正味の正電荷を増加させるかまたは正味の負電荷を減少させる参照アミノ酸に対する修飾を指す。例えば、正に荷電したアミノ酸置換には、(i)負に荷電したアミノ酸をより小さい負に荷電した(less negatively charged)アミノ酸、中性アミノ酸、または正に荷電したアミノ酸で置き換えること、ii)中性アミノ酸を正に荷電したアミノ酸で置換すること、または(iii)正に荷電したアミノ酸をより大きい正に荷電した(more positively-charged)アミノ酸で置換することが含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、正に荷電したアミノ酸置換には、負に荷電したアミノ酸の欠失または正に荷電したアミノ酸の付加が含まれ得る。いくつかの実施形態において、正に荷電したアミノ酸置換には、負電荷を中和する1つ以上の負に荷電したアミノ酸の1つ以上の化学修飾が含まれ得る。例えば、1つ以上の負に荷電したアミノ酸をカルボジイミドと反応させてもよい。
【0091】
正に荷電したアミノ酸は、溶液中のアミノ酸が正味の正電荷を有するように溶液のpHよりも高い等電点(pI)を有するアミノ酸である。例えば、pH7.0~8.0(例えば、pH8.0)および室温(例えば、20~25℃)で検出される正に荷電したアミノ酸の例には、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、およびリジン(K)が含まれるが、これらに限定されない。負に荷電したアミノ酸は、溶液中のアミノ酸が正味の負電荷を有するように溶液のpHよりも低いpIを有するアミノ酸である。pH7.0~8.0(例えばpH8.0)および室温、例えば20~25℃で検出される負に荷電したアミノ酸の例には、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、セリン(S)、グルタミン(Q)が含まれるが、これらに限定されない。中性アミノ酸は、溶液中のアミノ酸が正味電荷を有しないように溶液のpHと同じ等電点(pI)を有するアミノ酸である。中性アミノ酸は、極性、非極性、または疎水性アミノ酸であり得る。アミノ酸のpI値は当該技術分野で既知である。目的のアミノ酸のpI値を溶液のpHと比較することによって、当業者は、溶液中に存在するアミノ酸が正に荷電したアミノ酸、中性アミノ酸、または負に荷電したアミノ酸であるかを容易に決定するであろう。アミノ酸は天然アミノ酸または合成アミノ酸であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、アミノ酸修飾は、アミノ酸の疎水性を変化させるための修飾であり得る。そのような修飾には、例えば、pH7.0~8.0(例えばpH8.0)および室温、例えば20~25℃で検出したときに、その疎水性を変化させる参照アミノ酸に対する修飾が含まれる。例えば、アミノ酸修飾は、参照アミノ酸を疎水性アミノ酸、例えば疎水性側鎖を有するアミノ酸で置換することであり得る。疎水性アミノ酸の例には、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W)が含まれる。例えば、アミノ酸修飾は、疎水性アミノ酸で中性アミノ酸を置換することであり得る。アミノ酸の疎水性インデックスは当該技術分野で既知である。疎水性スケールは、アミノ酸残基の相対的疎水性を定義する値である。値が正であるほど、タンパク質のその領域に位置するアミノ酸はより疎水性になる。アミノ酸は天然アミノ酸または合成アミノ酸であり得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、アミノ酸修飾は、アミノ酸のサイズを変えるための修飾であり得る。そのような修飾には、サイズ、例えば側鎖のサイズを変化させる参照アミノ酸に対する修飾が含まれる。例えば、アミノ酸修飾は、大きい側鎖を有する参照アミノ酸をより小さい側鎖を有するアミノ酸で置換することであり得る。非常に大きなアミノ酸の例には、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、およびチロシン(Y)が含まれる。大きなアミノ酸の例には、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、リジン(K)、およびアルギニン(R)が含まれる。中程度のサイズのアミノ酸の例には、バリン(V)、ヒスチジン(H)、グルタミン酸(E)、およびグルタミン(Q)が含まれる。小さいアミノ酸の例には、システイン(C)、プロリン(P)、トレオニン(T)、アスパラギン酸(D)、およびアスパラギン(N)が含まれる。非常に小さいアミノ酸の例には、セリン(S)、グリシン(G)、およびアラニン(A)が含まれる。例えば、アミノ酸修飾は、非常に大きいアミノ酸を大きい、中程度の、小さい、または非常に小さいアミノ酸で置換することであり得る。例えば、アミノ酸修飾は、大きなアミノ酸を中程度の、小さい、または非常に小さいアミノ酸で置換することであり得る。例えば、アミノ酸修飾は、中程度のアミノ酸を小さいまたは非常に小さいアミノ酸で置換することであり得る。より小さいアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸または合成アミノ酸であり得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、(N1またはN0ドメインを有しないInvGのアミノ酸配列に対応する)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を含む修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドであり、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、配列番号1のD28、E41、E114、Q45、E225、R226、およびE231から選択されるアミノ酸(複数可)において、少なくとも1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つのアミノ酸修飾)を含む。アミノ酸修飾は、正に荷電したアミノ酸置換または参照アミノ酸の疎水性を変化させるための修飾であり得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸修飾は、以下のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つ)を含み得る:(i)D28N/Q/T/S/G/R/K、(ii)E225N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/K、(iii)R226N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/K/V、(iv)E225の欠失、(v)R226の欠失、および(vi)E231N/Q/T/A/S/G/P/H/R/K。いくつかの実施形態において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、配列番号1のQ45、E41、およびE114から選択されるアミノ酸(複数可)において1つ以上のアミノ酸修飾を含み得る。例えば、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、以下のアミノ酸修飾のうちの1つ以上(例えば、1、2、または3つ)を含み得る:(i)Q45R/K、(ii)E41N/Q/T/S/G/R/K、および(iii)配列番号1のE114N/Q/T/S/G/R/K。アミノ酸XおよびYの間の「/」記号は、参照アミノ酸がアミノ酸Xまたはアミノ酸Yに修飾されてもよいことを意味する。配列番号1に基づくアミノ酸の位置は、修飾(例えば、アミノ酸の付加または欠失)が配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端またはその内部で行われた場合にはシフトすると理解されるべきである。単に例示として、配列番号2のN末端が、配列番号1のN末端から欠失されたInvGナノポアのN0およびN1ドメインに対応するさらなる171個のアミノ酸を含むという点で、配列番号2は配列番号1と異なる。したがって、当業者は、配列番号1のアミノ酸位置D28、E41、E114、Q45、E225、R226、およびE231が、配列番号2のアミノ酸位置D199、E212、E285、Q216、E396、R397、およびE402に対応することを容易に認識するであろう。
【0095】
いくつかの実施形態において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列と約40%以上(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列、および図7に示されるアミノ酸修飾のうちの1つまたは任意の組み合わせを含む。例えば、いくつかの実施形態において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸置換E225N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/KおよびR226の欠失を含み得る。いくつかの実施形態において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、E225アミノ酸の欠失ならびにアミノ酸置換E231N/Q/T/A/S/G/P/H/R/KおよびQ45R/Kを含み得る。図7に示すアミノ酸配列(配列番号2に基づく)は、配列番号1のアミノ酸位置に対応するように調整されることに留意すべきである。2つのアミノ酸配列をアラインさせる方法は当該技術分野で既知である。したがって、当業者は、配列番号2に提供されるアミノ酸位置に基づいて配列番号1の対応するアミノ酸位置を容易に同定することができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸修飾と約40%以上(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列、および図7に示されるアミノ酸修飾のうちの1つまたは任意の組み合わせを含む。
【0097】
別の態様において、セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドのアミノ酸配列、例えば、配列番号2または4~30(N1およびN0ドメインを含む野生型(WT)セクレチンのアミノ酸配列に対応する)に記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%以上(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を含む、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドであって、エンドペプチダーゼ切断部位がセクレチンナノポアサブユニットポリペプチドのN3ドメインの上流に挿入されている、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態において、エンドペプチダーゼ切断部位は、セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド(例えば、InvGナノポアサブユニットポリペプチド)のN1ドメインとN3ドメインとの間に挿入されている。他の実施形態において、エンドペプチダーゼ切断部位は、N1ドメインとN2ドメインとの間に挿入されている(例えば、GspDまたはPulDナノポアサブユニットポリペプチド)。そのような修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、ポリペプチドの発現後に、対応するエンドペプチダーゼ切断部位を標的とするエンドペプチダーゼを使用してN1および/またはN0ドメインの除去を可能にする。例えば、N0およびN1ドメインの切断は、発現および精製される全長タンパク質を適切なエンドペプチダーゼで処理することによって行うことができる。
【0098】
本明細書中で使用する場合、「エンドペプチダーゼ切断部位」との用語は、非末端アミノ酸の結合を(例えば、分子内で)切断または切断するタンパク質分解酵素であるエンドペプチダーゼによって認識および切断されるペプチド配列を指す。種々のエンドペプチダーゼおよびそれらの対応する切断部位は当該技術分野で既知である。例えば、そのような情報は、web.expasy.org/peptide_cutter/peptidecutter_enzymes.htmlでオンラインで評価することができる。エンドペプチダーゼの非限定的な例には、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、サーモリシン、ペプシン、グルタミルエンドペプチダーゼ、ネプリライシン、カスパーゼ1-10、CNBr、エンテロキナーゼ、プロテイナーゼK、第Xa因子プロテアーゼ、ウシαトロンビン、タバコエッチウイルス(Tobacco Etch Virus)(TEV)プロテアーゼなどが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドに挿入されているエンドペプチダーゼ切断部位は、TEVプロテアーゼによって認識され得る。TEVプロテアーゼは、一般式E-Xaa-Xaa-T-Xaa-Q-(G/S)の線状エピトープを認識し、QとGとの間またはQとSとの間で切断が起こる。例示的なTEVプロテアーゼ切断配列は、ENLYFQGであり得る。一実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドに挿入されているエンドペプチダーゼ切断部位は、第Xa因子プロテアーゼによって認識され得る。第Xa因子は、その好ましい切断部位Ile-(GluまたはAsp)-Gly-Argにおいてアルギニン残基の後で切断する。これは、タンパク質基質の立体配座に応じて他の塩基性残基で切断する場合がある。別の実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドに挿入されているエンドペプチダーゼ切断部位は、ウシαトロンビンによって認識され得る。トロンビンは、コンセンサス配列Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Serを認識し、ArgとGlyとの間のペプチド結合を切断する。
【0099】
一態様において、配列番号2(N1およびN0ドメインを含む野生型InvGのアミノ酸配列に対応する)に記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%以上(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を含む、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドであって、エンドペプチダーゼ切断部位が配列番号2の170と171との間または171と172との間で挿入されている、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドが提供される。一実施形態において、エンドペプチダーゼ切断部位が配列番号2のD171とG172との間に挿入されている。そのような修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、ポリペプチドの発現後に、対応するエンドペプチダーゼ切断部位を標的とするエンドペプチダーゼ使用してN1およびN0ドメインの除去を可能にする。任意の適切なエンドペプチダーゼ切断部位(例えば、本明細書中に記載されるように)を使用することができる。一実施形態において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドに挿入されているエンドペプチダーゼ切断部位は、TEVプロテアーゼによって認識され得る。例示的なTEVプロテアーゼ切断配列は、ENLYFQGであり得る。実施例2は、TEVプロテアーゼ切断部位を含む修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドの発現および精製のための例示的方法を提供する。
【0100】
いくつかの実施形態において、エンドペプチダーゼ切断部位を含む修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、図7に示される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)のアミノ酸修飾を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸置換E396N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/KおよびR397の欠失を含み得る。いくつかの実施形態において、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、E396アミノ酸の欠失ならびにアミノ酸置換E402N/Q/T/A/S/G/P/H/R/KおよびQ216R/Kを含み得る。
【0101】
例えば、一態様において、修飾GspDセクレチンナノポアは、配列番号36に記載のセクレチンドメインのアミノ酸配列と少なくとも約40%以上(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸を有するセクレチンを含むサブユニットポリペプチドを含む。
【0102】
Vibrio choleraeおよびEscherichia coli ETEC由来のGspDのセクレチンドメインはキャップゲートを含む。Escherichia coli K12などのいくつかのGspDセクレチンサブユニットポリペプチドを含む他のII型分泌系サブユニットポリペプチドは、キャップゲートを含まない。修飾GspDセクレチンナノポアは、一態様において、キャップゲートを含まないものであり得る。配列番号36に記載のセクレチンドメインは、56位と77位との間にキャップゲートを含む。例えば、配列番号36に記載のセクレチンドメインは、キャップゲートの全部または一部が欠失されるように修飾されてもよく、例えば、配列番号36のD55もしくはT56~T77の全部もしくは一部のアミノ酸が欠失または置換されてもよい。あるいは、修飾GspDセクレチンナノポアは天然でキャップゲートを欠如し得る。
【0103】
GspDの中央ゲートは、アミノ酸をより小さな側基を有するアミノ酸で置換するように、かつ/または負に荷電したアミノ酸を中性または正に荷電したアミノ酸で置換するように修飾され得る。配列番号36に記載のセクレチンドメインは、配列番号32の460位と473位とに対応する144位と157位との間の中央ゲートを含む。修飾GspDセクレチンナノポアのセクレチンドメインは、配列番号36に記載のセクレチンドメインのアミノ酸配列と少なくとも約40%以上(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸を有するセクレチンドメインを含み得、(i)D55もしくはT56~T77のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K60、D64、R71、およびE73のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD55、T56、T77、およびK78のうちの1つ以上がPで置換され、かつ/あるいは(ii)F156がより小さいアミノ酸で置換され、N151および/またはN152がより小さいアミノ酸で置換され、D153が荷電していないアミノ酸で置換され、G137およびG165がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている。例えば、修飾セクレチンGspDナノポアにおいて、Y63~R71が欠失されおよび/またはGSGもしくはSGSで置換されてもよく、F156がAで置換されてもよく、D153がSで置換されてもよく、かつ/あるいはN151およびN152がそれぞれ独立してGまたはSで置換されてもよい。配列番号36のD55、T56、K60、Y63、D64、R71、E73、T77、K78、G137、N151、N152、D153、F156、およびG165は、配列番号32に記載の全長GspDアミノ酸配列のD371、T372、K376、Y379、D380、R387、E389、T393、K394、G453、N467、N468、D469、F472、およびG481に対応する。
【0104】
修飾セクレチンGspDナノポアは、配列番号36を参照して上記で定義される修飾セクレチンドメイン、N3ドメイン、およびSドメインを含み得る。修飾セクレチンGspDナノポアは、一態様において、配列番号33、34、および/または35に記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%以上(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸を含むサブユニットポリペプチドを含み得る。配列番号35は、セクレチンドメインおよびSドメインを含む。配列番号34は、セクレチンドメイン、Sドメイン、および修飾N3ドメインを含む。配列番号34は、セクレチンドメイン、Sドメイン、およびN3ドメインを含む。配列番号36を参照して言及されるアミノ酸修飾は、配列番号31~35のうちのいずれか1つの対応する位置で行われてもよい。配列番号36を参照して言及されるアミノ酸修飾はまた、配列番号4および37~40のうちのいずれか1つの対応する位置で修飾され、または配列番号4および37~40のうちのいずれか1つの部分を含む短縮型サブユニットポリペプチド、例えば、配列番号4および37~40のうちのいずれか1つのセクレチンドメイン、セクレチンドメインおよびSドメイン、またはセクレチンドメイン、Sドメイン、およびN3ドメインを含む短縮型サブユニットポリペプチドに対して行われ得る。
【0105】
例えば、修飾GspDセクレチンナノポアのセクレチンドメインは、配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%以上(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み得、(i)D117もしくはT118~T139のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K122、D126、R133、およびE135のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD117、T118、T139、およびK140のうちの1つ以上がPで置換され、かつ/あるいは(ii)F218がより小さなアミノ酸で置換され、N213および/またはN214がより小さなアミノ酸で置換され、D215が荷電していないアミノ酸で置換され、G199およびG227がそれぞれ独立して未修飾またはAもしくはVで置換されている。例えば、修飾セクレチンGspDナノポアにおいて、Y125~R133が欠失されおよび/またはGSGまたはSGSで置換されてもよく、F218がAで置換されてもよく、D215がSで置換されてもよく、かつ/あるいはN213およびN214がそれぞれ独立してGまたはSで置換されてもよい。配列番号34のD117、T118、K122、Y125、D126、R133、E135、T139、K140、G199、N213、N214、D215、F218、およびG227は、配列番号32に記載の全長GspDアミノ酸配列のD371、T372、K376、Y379、D380、R387、E389、T393、K394、G453、N467、N468、D469、F472、およびG481に対応する。
【0106】
例えば、修飾GspDセクレチンナノポアのセクレチンドメインは、配列番号35に記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%以上(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み得、(i)D55もしくはT56~T77のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K60、D64、R71、およびE73のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD55、T56、T77、およびK78のうちの1つ以上がPで置換され、かつ/あるいは(ii)F156がより小さいアミノ酸で置換され、N151および/またN152がより小さいアミノ酸で置換され、D153が荷電していないアミノ酸で置換され、G137およびG165がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている。例えば、修飾セクレチンGspDナノポアにおいて、Y63~R71が欠失されおよび/またはGSGもしくはSGSで置換されてもよく、F156がAで置換されてもよく、D153がSで置換されてもよく、かつ/あるいはN151およびN152がそれぞれ独立してGまたはSで置換されてもよい。配列番号35のD55、T56、K60、Y63、D64、R71、E73、T77、K78、G137、N151、N152、D153、F156、およびG165は、配列番号32に記載の全長GspDアミノ酸配列のD371、T372、K376、Y379、D380、R387、E389、T393、K394、G453、N467、N468、D469、F472、およびG481に対応する。
【0107】
例えば、修飾GspDセクレチンナノポアのセクレチンドメインは、配列番号33に記載のアミノ酸配列と少なくとも約40%以上(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれ以上を含む)同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み得、(i)D132もしくはT133~T154の全部もしくは一部のアミノ酸が欠失もしくは置換され、K137、D141、R148、およびE150のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD132、T133、T154、およびK155のうちの1つ以上がPで置換され、かつ/あるいは(ii)F233がより小さいアミノ酸で置換され、N228および/またはN229がより小さいアミノ酸で置換され、D230が荷電していないアミノ酸で置換され、G214およびG242がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている。例えば、修飾セクレチンGspDナノポアにおいて、Y140~R148が欠失されおよび/またはGSGもしくはSGSで置換されてもよく、F233がAで置換されてもよく、D230がSで置換されてもよく、かつ/あるいはN228およびN229がそれぞれ独立してGまたはSで置換されてもよい。配列番号33のD132、T133、K137、Y140、D141、R148、E150、T154、K155、G214、N228、N229、D230、F233、およびG242は、配列番号32に記載の全長GspDアミノ酸配列のD371、T372、K376、Y379、D380、R387、E389、T393、K394、G453、N467、N468、D469、F472、およびG481に対応する。
【0108】
本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドの任意の態様において、(上記のアミノ酸修飾以外の)さらなるアミノ酸置換、例えば最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または30の置換が参照セクレチンアミノ酸配列に対して行われ得る。保存的置換は、アミノ酸を、類似の化学構造、類似の化学的特性、または類似の側鎖量の他のアミノ酸で置き換える。導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と類似の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性、または荷電性を有し得る。代替的には、保存的置換は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに、芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入してもよい。保存的アミノ酸変化は、当該技術分野で周知であり、以下の表1に定義される20個のアミノ酸の特性に従って選択され得る。アミノ酸が類似の極性を有する場合、これはまた表2におけるアミノ酸側鎖の疎水性スケールを参照して決定し得る。
【表1】
【表2】
【0109】
参照アミノ酸配列(例えば、配列番号1~10に記載される)の1つ以上のアミノ酸残基が上記のポリペプチドからさらに欠失され得る。最大で1、2、3、4、5、10、20、または30個以上の残基が欠失され得る。
【0110】
代替的に、またはさらに、1つ以上のアミノ酸が上記のポリペプチドに付加されてもよい。参照アミノ酸配列(例えば、配列番号1もしくは2に記載される)またはそのポリペプチドバリアントもしくはフラグメントのアミノ末端またはカルボキシ末端において、伸長を行ってもよい。伸長は非常に短くてもよく、例えば、1~10アミノ酸長であってもよい。代替的には、伸長はより長くてもよく、例えば、最大で50~100個のアミノ酸であってもよい。担体タンパク質が、アミノ酸配列、例えば修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドのアミノ酸配列に融合されてもよい。他の融合タンパク質は、以下により詳細に論じられる。
【0111】
(例えば、置換、付加、または欠失によって)アミノ酸を修飾するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、参照アミノ酸は、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド中の関連する位置において参照アミノ酸のコドンを標的アミノ酸のコドンで置き換えることによって標的アミノ酸で置換されてもよい。ポリヌクレオチドは、次いで、以下に論じられるように発現され得る。アミノ酸が天然に存在しないアミノ酸である場合、これは、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを発現させるために使用されるIVTTシステム中に合成アミノアシルtRNAを含めることによって導入され得る。あるいは、これは、特定のアミノ酸について栄養要求性であるE.coli中で、それらの特定のアミノ酸の合成(すなわち天然に存在しない)類似体の存在下において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを発現させることによって導入され得る。修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドが部分的ペプチド合成を使用して生成される場合、それらはネイキッドライゲーション(naked ligation)によって生成され得る。
【0112】
本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを使用して、本明細書に記載のホモ多量体ナノポアまたはヘテロ多量体ナノポアを形成してもよい。したがって、いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、他のサブユニットポリペプチドを有するナノポアを形成する能力を保持する。修飾モノマーがナノポアを形成する能力を評価するための方法は当該技術分野で周知である。例えば、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、他の適切なサブユニットと共に両親媒性層に挿入することができ、ポアを形成するためのオリゴマー形成能力を決定することができる。サブユニットを両親媒性層などの膜内に挿入するための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、サブユニットは、それが膜に拡散され、膜に結合し機能状態を形成することによって挿入されるように、トリブロックコポリマー膜を含有する溶液中に精製された形態で懸濁され得る。あるいは、サブユニットは、M.A.Holden,H.Bayley.J.Am.Chem.Soc.2005,127,6502-6503および国際出願第PCT/GB2006/001057号(WO2006/100484として公開)に記載される「ピックアンドプレース(pick and place)」法を使用して膜に直接挿入されてもよく、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、それらがナノポアの形成を妨害しない限り、非特異的修飾を含み得る。多くの非特異的側鎖修飾が当該技術分野で既知であり、アミノ酸の側鎖に対して行われ得る。そのような修飾には、例えば、アルデヒドとの反応に続いてNaBH4で還元することによるアミノ酸の還元アルキル化、メチルアセトイミデート(methylacetimidate)によるアミジン化、または無水酢酸によるアシル化が含まれる。
【0114】
修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、当該技術分野で既知の標準的な方法を使用して生成され得る。修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、合成的にまたは組換え手段によって作製され得る。本明細書に記載のいくつかの実施形態による修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドの発現および精製のための例示的な方法は、実施例1および2に提供されている。あるいは、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、インビトロ翻訳および転写(IVTT)によって合成され得る。ポアを生成するための好適な方法は、国際出願第PCT/GB09/001690号(WO2010/004273として公開)、同第PCT/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)、または同第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)に記載されており、これらのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、D-アミノ酸を使用して生成され得る。例えば、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、L-アミノ酸とD-アミノ酸との混合物を含み得る。これは、そのようなタンパク質またはペプチドを生成するための当該技術分野における従来法である。
【0116】
いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは化学的に修飾されていてもよい。修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、任意の方法および任意の部位で化学的に修飾することができる。例えば、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、色素またはフルオロフォアの結合によって化学的に修飾され得る。いくつかの実施形態において、変異体モノマーは、好ましくは、1つ以上のシステインへの分子の結合(システイン結合)、1つ以上のリジンへの分子の結合、1つ以上の非天然型アミノ酸への分子の結合、エピトープの酵素修飾、または末端の修飾によって化学修飾される。そのような修飾を実施するための好適な方法は、当該技術分野で周知である。
【0117】
いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを含むナノポアと標的ヌクレオチドまたは標的ポリヌクレオチド配列との間の相互作用を促進する分子アダプターで化学的に修飾され得る。アダプターの存在は、ポアおよびヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列のホスト-ゲストケミストリーを改善し、それにより、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドから形成されたポアのシーケンシング能力を改善する。ホスト-ゲストケミストリーの原理は、当該技術分野で周知である。アダプターは、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列とのその相互作用を改善させるナノポアの物理的または化学的特性に対する効果を有する。アダプターは、ポアのバレルまたはチャネルの電荷を改変し得るか、またはヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド配列と特異的に相互作用するかもしくはそれらに結合し、それによりポアとのその相互作用を促進し得る。
【0118】
いくつかの態様において、分子アダプターは、環状分子、シクロデキストリン、ハイブリダイゼーションが可能な種、DNAバインダーもしくはインターカレーター(interchelator)、ペプチドもしくはペプチド類似体、合成ポリマー、芳香族平面分子、正に荷電した小分子、または水素結合が可能な小分子であり得る。
【0119】
いくつかの態様において、分子アダプターは、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドと共有結合させることができる。アダプターは、当該技術分野で既知の任意の方法を使用してナノポアと共有結合させることができる。アダプターは、典型的には、化学結合を介して結合している。分子アダプターがシステイン結合を介して結合されている場合、1つ以上のシステインを置換により修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドに導入することができる。
【0120】
他の実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、ポリヌクレオチド結合タンパク質、例えば、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、およびポリメラーゼなどの酵素に付着または結合させてもよい。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、ヘリカーゼ、例えばDNAヘリカーゼに付着または結合させてもよい。ナノポアシーケンシングでの使用に好適なヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、およびポリメラーゼの例は当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、ヘリカーゼ、例えばDNAヘリカーゼ、Hel308ヘリカーゼ(例えば、WO2013/057495に記載されるように)、RecDヘリカーゼ(例えば、WO2013/098562に記載されるように)、XPDヘリカーゼ(例えば、WO201/098561に記載されるように)、またはDdaヘリカーゼ(例えば、WO2015/055981に記載される)に付着または結合させてもよい。これは、標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法において使用し得るモジュラーシーケンシング(modular sequencing)システムを形成する。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、以下に論じられる。移動速度制御は、ポリヌクレオチド結合タンパク質の種類および/またはシステムに添加される燃料の量(ATP)によって決定され得る。例えば、二本鎖DNA分析物の移動速度は、FtsKなどの二本鎖DNAトランスロカーゼによって制御され得る。システムに添加される燃料(ATP)に応じて、標的ポリヌクレオチドの移動速度は、約30B/s~1000B/sまたは約30B/s~2000B/sであり得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドに共有結合させることができる。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、当該技術分野で既知の任意の方法を用いて修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドに共有結合させることができる。修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドおよびポリヌクレオチド結合タンパク質は、化学的に融合されてもまたは遺伝的に融合されてもよい。構築物全体が単一のポリヌクレオチド配列から発現される場合、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドおよびポリヌクレオチド結合タンパク質は遺伝的に融合される。修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドのポリヌクレオチド結合タンパク質への遺伝的融合は、国際出願第PCT/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)に論じられており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0122】
修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドは、分子アダプターおよびポリヌクレオチド結合タンパク質によって化学的に修飾され得る。
【0123】
本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドおよびナノポアなどの本明細書に記載のタンパク質のいずれも、例えば、ヒスチジン残基(hisタグ)、アスパラギン酸残基(aspタグ)、ストレプトアビジンタグ、フラッグタグ、SUMOタグ、GSTタグ、もしくはMBPタグの付加によって、またはポリペプチドがシグナル配列を天然には含有しない細胞からのポリペプチドの分泌を促進するためのシグナル配列の付加によって、それらの同定または精製を補助するように修飾され得る。遺伝的タグを導入することの代替法は、タンパク質上の天然のまたは操作された位置上にタグを化学反応させることである。これの一例は、ゲルシフト試薬を、タンパク質の外側に操作されたシステインに反応させることであろう。これは、溶血毒ヘテロオリゴマーを分離するための方法として示されている(Chem Biol.1997 Jul;4(7):497-505)。
【0124】
本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドおよびナノポアなどの本明細書に記載のタンパク質のいずれも、検出可能な標識で標識し得る。検出可能な標識は、タンパク質が検出されることを可能にする任意の好適な標識であり得る。好適な標識には、蛍光分子、放射性同位体、例えば125I、35S、酵素、抗体、抗原、ポリヌクレオチド、およびビオチンなどのリガンドが含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを含む本明細書に記載のタンパク質のいずれも、当該技術分野で既知の標準的な方法を用いて生成することができる。タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、当該技術分野における標準的な方法を使用して得られ、複製され得る。タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、当該技術分野における標準的な方法を使用して細菌宿主細胞において発現され得る。タンパク質は、組み換え発現ベクターからポリペプチドをインサイチュ発現することによって細胞内で生成され得る。発現ベクターは、任意選択で、ポリペプチドの発現を制御するために誘導性プロモーターを担持する。これらの方法は、Sambrook,J.and Russell,D.(2001).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載されている。
【0126】
タンパク質は、タンパク質生成有機体から、任意のタンパク質液体クロマトグラフィーシステムによる精製に続いて、または組み換え発現の後に大規模に生成され得る。典型的なタンパク質液体クロマトグラフィーシステムには、FPLC、AKTAシステム、Bio-Cadシステム、Bio-Rad BioLogicシステム、およびGilson HPLCシステムが含まれる。
【0127】
修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドのいずれか1つをコードするポリヌクレオチド配列もまた本明細書に提供される。
【0128】
ポリヌクレオチド配列は、当該技術分野における標準的な方法を使用して得られ、複製され得る。野生型セクレチンをコードする染色体DNAは、Salmonella typhiなどのポア生成生物から抽出され得る。ポアサブユニットをコードする遺伝子は、特異的プライマーを伴うPCRを使用して増幅され得る。増幅された配列は、次いで、部位特異的変異誘発を経ることがある。部位特異的変異誘発の好適な方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、化合連鎖反応が含まれる。修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドのいずれか1つをコードするポリヌクレオチドは、Sambrook,J.and Russell, D.(2001).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載される方法などの周知の技術を使用して作製することができる。
【0129】
得られたポリヌクレオチド配列は、次いで、複製可能な組み換えベクター、例えばクローニングベクターに組み込まれ得る。ベクターを使用して、適合する宿主細胞においてポリヌクレオチドを複製することができる。したがって、ポリヌクレオチド配列は、複製可能なベクター内にポリヌクレオチドを導入し、適合する宿主細胞内にベクターを導入し、ベクターの複製をもたらす条件下で宿主細胞を増殖させることによって作製され得る。ベクターは、宿主細胞から回収され得る。ポリヌクレオチドのクローニングのための好適な宿主細胞は、当該技術分野で既知である。
【0130】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドまたは構築物を生成する方法を含む。本方法は、修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドの任意の実施形態をコードするポリヌクレオチドを適切な宿主細胞中で発現させることを含む。ポリヌクレオチドは、好ましくは、ベクターの一部であり、好ましくは、プロモーターに作動可能に結合している。
【0131】
修飾セクレチンナノポア
本開示の一態様は、例えば、膜中に配置され、分析物、例えば標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの修飾セクレチンナノポアへの捕捉および/または修飾セクレチンナノポアを介した分析物の転位を可能にする修飾セクレチンナノポアを特徴とする。修飾セクレチンナノポアは、例えば膜中に配置され、シス開口部とトランス開口部との間で例えば膜を通って延在する内腔を画定する内腔表面を含み、この内腔表面は1つ以上のアミノ酸修飾を含む。本明細書で使用する場合、「内腔表面」との用語は、ナノポアの内部表面を指し、この表面は、溶液に曝される内腔を規定する複数のナノポアサブユニットの一連のアミノ酸を含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、セクレチンナノポアは、それぞれがβシートからなる、内側バレルサブドメインおよび外側バレルサブドメインを含むβバレルを含むセクレチンドメインを含み、各サブユニットは、典型的には、約6つのβシートおよび/または典型的には約4つのβシートを含む内側バレルを外側バレルに寄与させる。例えば図11に示されるように、各サブユニットはさらに、典型的には2つのβシートの間の2つのαヘリックスを外側βバレルに寄与させ得る。外側バレルは、典型的には膜にまで及ぶ。内側バレルは、典型的にはポアの内腔に隣接している。内側バレルは、典型的には中央ゲートを含む。中央ゲートは、典型的には各サブユニットにおいて内側バレルを形成する2つのβシート間のループから形成される。中央ゲートは、典型的にはポアの中に延在して、ポアのサイズを狭める。中央ゲートは、本明細書に記載の中央ゲートループに存在するアミノ酸を改変してポアの特性を変えることによって修飾することができる。中央ゲートは可動性であり得、例えば中央ゲートは開くことが可能であり得る。中央ゲートは、一定の狭窄部サイズを維持するように剛性であり得、例えば中央ゲートループは閉じていてもまたは部分的に閉じていてもよい。第1の縁が内側βバレルとは膜の反対側で膜から突出している、セクレチンナノポアのβバレル。βバレルの縁は、典型的には、各サブユニットポリペプチド由来の2つのαヘリックスおよび2つのβシートからなる。各サブユニットにおけるβシートはループ領域によって繋げられてもよく、ループ領域はキャップゲートを形成する。あるいは、βシートを繋げているループは短くてもよく、ゲートを形成しない。キャップゲートは可動性であってもよく、例えばキャップゲートは開くことが可能であってもよい。キャップゲートは、一定の狭窄部サイズを維持するために剛性であってもよく、例えばキャップゲートは閉じていてもまたは部分的に閉じていてもよい。いくつかの実施形態において、βバレルの第1の縁は、βシートを含まず、ループによって繋がっている2つのαヘリックスを各サブユニットから含み得る。これらの実施形態において、ナノポアはキャップゲートを含まない。第2の縁は、第1の縁に対して内側βバレルの反対側にあってもよい。βバレルの第2の縁は、各サブユニットにおいて2つのαヘリックスを含み得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、セクレチンナノポアは、セクレチンドメインに加えて、Sドメインを含み得る。Sドメインは2つのαヘリックスを含み得る。αヘリックスのうちの1つは、典型的にはセクレチンナノポアのβバレルと相互作用する。Sドメインは典型的にはポアの外側に(すなわちポアの内腔から離れて)位置する。
【0134】
いくつかの実施形態において、セクレチンナノポアは、セクレチンドメイン、および任意選択でSドメインに加えて、N3ドメインを含み得る。N3ドメインは典型的にはβバレルおよびαヘリックス、例えば3~6つのβバレルおよび2~3つのαヘリックスからなり、例えば、図11に示される3つのβバレルおよび2つのαヘリックス、または図1Bに示される6つのβバレルおよび3つのαヘリックスからなる。N3ドメインは、ポアの内腔に狭窄部を形成し得る。N3ドメインは、N3ドメインがポアを狭窄しないように修飾されてもよい。N3ドメインは、狭窄部のサイズを増加または減少するように修飾されてもよい。
【0135】
分析物を検出または特徴付けるためのナノポアとして使用されるとき、中央ゲート、キャップゲート、および/またはN3狭窄部は読み取りヘッド(read-head)として機能することができ、すなわち分析物と中央ゲート、キャップゲート、およびN3狭窄部のうちの1つ、2つ、または全てとの相互作用によって、分析物がポアと相互作用するときに得られるシグナルが改変され、したがって分析物に関する情報を得ることが可能なる。したがって、セクレチンナノポアは、1つ、2つ、または3つの読み取りヘッドを含み得る。
【0136】
アミノ酸修飾は、修飾セクレチンナノポアを通る分析物の移動を改善する、修飾セクレチンナノポア中への分析物の捕捉を改善する、および/または分析物がナノポアを通って移動するときの分析物の検出の際のシグナル品質を改善するように選択することができる。アミノ酸修飾の例は、上記の「修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド」の節に詳細に記載されている。修飾セクレチンナノポアは、一般に、内腔表面の1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上、および最大40のアミノ酸修飾)を含むが、修飾セクレチンナノポアは様々な異なる修飾のいずれかを有し得ると理解すべきである。例えば、修飾セクレチンナノポアは、膜の組み込みを促進し、オリゴマー化を促進し、サブユニット合成を促進し、ナノポアの安定性を促進し、分析物の捕捉を促進し、分析物の放出を促進し、分析物の検出を改善し、ポリマー(例えば、ポリヌクレオチド配列)の分析を容易にするなどのアミノ酸修飾(内腔または非内腔)(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70またはそれ以上、および最大100のアミノ酸修飾)を有し得る。
【0137】
単に例示として、図5は、InvGナノポアのシス開口部がより大きいゆえに、酵素が異なる配向でCsgGおよびInvGナノポアと相互作用し得ることを示す。理論によって束縛されることを望むものではないが、酵素およびナノポア開口部のサイズの違いにより(図6も参照)、酵素はナノポアの中に定着する(wedge)場合もある。ポリヌクレオチド結合問題などの酵素との相互作用を改善するようにシス開口部が操作されたCsgGナノポアと同様に、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポア(例えば、本明細書に記載のシス開口部または捕捉部分)は、酵素(例えば、ポリヌクレオチド結合タンパク質)の好ましい配向を容易にし、この好ましい配向によってノイズを減少させ、シグナルおよび精度を改善するように操作されてもよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、シス開口部は、少なくとも約30Å、少なくとも約40Å、少なくとも約50Å、少なくとも約60Å、少なくとも約70Å、少なくとも約80Å、少なくとも約90Å、少なくとも約100Åまたはそれ以上の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、シス開口部は、約150Å以下、約140Å以下、約130Å以下、約120Å以下、約110Å以下、約100Å以下、約90Å以下、約80Å以下、約70Å以下、約60Å以下、約50Å以下またはそれ以下の直径を有し得る。上記の参照範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態において、シス開口部は、約30Å~約120Åの範囲の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、シス開口部は約60Å~約120Åの範囲の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、シス開口部は約60Å~約100Åの範囲の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、シス開口部は約30Å~約80Åの範囲の直径を有し得る。一実施形態において、トランス開口部は約80Åの直径を有し得る。
【0139】
いくつかの実施形態において、トランス開口部は、少なくとも約30Å、少なくとも約40Å、少なくとも約50Å、少なくとも約60Å、少なくとも約70Å、少なくとも約80Å、約100Å、少なくとも約90Å、少なくとも約100Åまたはそれ以上の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、トランス開口部は、約150Å以下、約140Å以下、約130Å以下、約120Å以下、約110Å以下、約100Å以下、約90Å以下、約80Å以下、約70Å以下、約60Å以下、約50Å以下またはそれ以下の直径を有し得る。上記の参照範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態において、トランス開口部は約30Å~約100Åの範囲の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、トランス開口部は約40Å~約100Åの範囲の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、トランス開口部は約60Å~約100Åの範囲の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、トランス開口部は約30Å~約80Åの範囲の直径を有し得る。一実施形態において、トランス開口部は約80Åの直径を有し得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、内腔表面は内腔内の狭窄部をさらに画定し得る。内腔の直径は、ナノポアのシス開口部とトランス開口部との間で延在する軸に沿って変化し得る。単に例示として、図3は、(シス開口部とトランス開口部との間で延在する)ナノポア軸に沿ったInvGナノポアの内腔の半径プロファイルを示しており、内腔は狭窄部を含む。本明細書で使用する場合、「狭窄部」との用語は、シス開口部およびトランス開口部の両方の直径よりも小さい直径を有する内腔の一部分を指す。例えば、狭窄部は、シス開口部の直径および/またはトランス開口部の直径の約5%~20%(両端を含む)の直径を有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、狭窄部は、少なくとも約5Å、少なくとも約6Å、少なくとも約7Å、少なくとも約8Å、少なくとも約9Å、少なくとも約10Å、少なくとも約15Å、少なくとも約20Å、少なくとも約25Å、またはそれ以上の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、狭窄部は、約30Å以下、約25Å以下、約20Å以下、約15Å以下、約10Å以下、またはそれ以下の直径を有し得る。上記の参照範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態において、狭窄部は約5Å~約25Åの範囲の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、狭窄部は約7Å~約25Åの範囲の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、狭窄部は約10Å~約25Åの範囲の直径を有し得る。一実施形態において、狭窄部は約15Åの直径をを有し得る。
【0141】
狭窄部は、シス開口部とトランス開口部との間のほぼ中間に位置し得る。いくつかの実施形態において、狭窄部は、シス開口部から約30Å~約60Å離れた距離に配置され得る。いくつかの実施形態において、狭窄部は、トランス開口部から約30Å~約60Å離れた距離に配置され得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアは、例えば図3に示すように、天然のセクレチンナノポアの半径プロファイルを示す内腔を画定する内腔表面を含み得る。
【0143】
微生物(例えば細菌)中に見出される任意の形態のセクレチンを使用して、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアを生成し得る。いくつかの実施形態において、セクレチンは、II型、III型、またはIV型分泌系の任意のメンバーであり得る。II型分泌系の非限定的な例には、GspD、PulD、およびpIVが含まれる。III型分泌系の例には、InvG、MxiD、YscC、PscC、EscC、およびSpiAが含まれるが、これらに限定されない。例示的なIV型分泌系には、PilQが含まれるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、例えば上記の「修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド」の節における本明細書に記載の修飾セクレチンサブユニットポリペプチドの任意の実施形態を含み得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の本明細書に記載のアミノ酸修飾(例えば、限定するものではないが、正に荷電したアミノ酸置換および/または疎水性アミノ酸置換)が、狭窄部を画定する内腔表面の一部に存在し得る。例えば、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の本明細書に記載のアミノ酸修飾(例えば、限定するものではないが、正に荷電したアミノ酸置換および/または疎水性アミノ酸置換)が、修飾セクレチンナノポア、例えば修飾InvGナノポアの狭窄部を画定する内腔表面の一部に存在し得る。単に例示として、図1Aは、野生型InvGナノポアの狭窄部(図中に「周辺質ゲート」と表示されている)の位置を示す。いくつかの実施形態において、修飾InvGセクレチンナノポアの狭窄部は、ナノポアを通る分析物の移動を改善するための、および/または分析物がナノポアを通って移動するときの検出シグナル品質を改善するための1つ以上のアミノ酸修飾を有し得る。例えば、修飾InvGセクレチンナノポアの狭窄部は、配列番号1のアミノ酸D28、E225、R226、および/またはE231におけるアミノ酸修飾を含み得る。いくつかの実施形態において、修飾InvGセクレチンナノポアの狭窄部は、以下のアミノ酸修飾のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つ)を含み得る:(i)D28N/Q/T/S/G/R/K、(ii)E225N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/K、(iii)R226N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/K/V、(iv)E225の欠失、(v)R226の欠失、および(vi)E231N/Q/T/A/S/G/P/H/R/K。
【0145】
いくつかの実施形態において、内腔表面は、捕捉部分(例えば、分析物捕捉部分(例えば、ポリヌクレオチド捕捉部分))をさらに含み得る。本明細書で使用する場合、「捕捉部分」との用語は、1つ以上のポアサブユニットの1つ以上のアミノ酸を介して標的分析物と有利に相互作用して、ナノポアへの分析物の結合および/またはナノポアを通る分析物の移動を可能にするまたは容易にする、ナノポアの内腔表面の一部分を指す。捕捉部分は、シス開口部と修飾セクレチンナノポアの狭窄部との間に位置し得る。いくつかの実施形態において、捕捉部分は、セクレチンナノポア(例えば、II型、III型、またはIV型の分泌系)のN3ドメインに対応し得る。例えば、捕捉部分は、例えば図1Aに示されるInvGナノポアのN3ドメインまたはそのようなドメインの一部に対応し得る。図1Bは、InvGナノポアのN3ドメインを包含するペプチドドメイン(配列番号2の対応するアミノ酸位置を伴う)を示す。いくつかの実施形態において、内腔表面の捕捉部分は、狭窄部のシス開口部側に1つ以上のポアサブユニットの1個以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17個またはそれ以上のアミノ酸)を含む。
【0146】
いくつかの実施形態において、捕捉部分は、例えば図1Aに示されるInvGナノポアのN3ドメインまたはそのようなドメインの一部に対応し得、第2の狭窄部のように作用し得る図1Aに示される「周辺質狭窄」を含み得る。したがって、いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポア(例えば、修飾InvGナノポア)は、2つの狭窄部を含み、1つは上記のようにシス開口部とトランス開口部との間のほぼ中間に位置し、もう1つはナノポアのシス開口部の近くに位置する。そのような修飾クレチンナノポアは、分析物(例えば、ポリヌクレオチド)が互いに離れている2つの狭窄部位でポア内腔と相互作用する、2つの読み取りナノポアのように作用し得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、内腔表面の捕捉部分は、標的分析物(例えば、標的ポリヌクレオチド)の捕捉を改善するための1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17またはそれ以上、および最大25のアミノ酸修飾)を含み得る。単に例示として、修飾InvGセクレチンナノポアの捕捉部分は、配列番号1のアミノ酸E41、Q45、および/またはE114においてアミノ酸修飾を含み得る。いくつかの実施形態において、修飾InvGセクレチンナノポアの捕捉部分は、以下のアミノ酸修飾のうちの1つ以上(例えば、1、2、または3つ)を含み得る:(i)Q45R/K、(ii)E41N/Q/T/S/G/R/K、および(iii)E114N/Q/T/S/G/R/K。
【0148】
本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアのいずれも、ホモ多量体(例えば、ナノポア内の全てのサブユニットが同じである)またはヘテロ多量体(例えば、少なくとも1つのサブユニットがナノポア内の他のものと異なる)であり得る。修飾セクレチンナノポアは、標的ポリマー(例えば、ポリヌクレオチド)の通過を可能にするのに十分に大きい内腔を形成するのに十分な任意の数のサブユニットポリペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、約9~約20個のサブユニットポリペプチド(例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個のサブユニットポリペプチド)を含み得、ここで、サブユニットポリペプチドのうちの少なくとも1つ以上が、本明細書に記載の1つ以上のアミノ酸置換(例えば、正に荷電したアミノ酸置換および/または疎水性アミノ酸修飾)を含む。
【0149】
修飾セクレチンナノポアは、単離、実質的に単離、精製、または実質的に精製され得る。修飾セクレチンナノポアは、脂質または他のポアなどの任意の他の成分を全く含まない場合には単離または精製され得る。ポアは、それが、その意図される使用に干渉しない担体または希釈剤と混合されている場合、実質的に単離されている。例えば、ポアは、それが、10%未満、5%未満、2%未満、または1%未満の他の構成要素、例えばトリブロックコポリマー、脂質、または他のポアを含む形態で存在する場合、実質的に単離されているか、または実質的に精製されている。あるいは、修飾セクレチンナノポアのうちの1つ以上が膜中に存在し得る。好適な膜は、以下に論じられる。
【0150】
修飾セクレチンナノポアは、個々のまたは単一のポアとして存在し得る。あるいは、修飾セクレチンナノポアは、2つ以上のポアの相同または異種(heterologous)集団に存在し得る。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、例えばマイクロウェルに存在する膜中に配置された各ナノポアのようにアレイ状に配置され得る。いくつかの実施形態において、アレイは、修飾セクレチンナノポア、および当該技術分野で既知の少なくとも1つ以上の非セクレチンナノポア、例えば、限定するものではないが、CsgGナノポア(例えば、WO2016/034591に記載されるように)、α溶血素ナノポア(例えば、WO2010/004273に記載されるように)、リセニンナノポア(例えば、WO2013/153359に記載されるように)、Mspナノポア(例えば、WO2012/107778、WO2015/166275、およびWO2016/055778に記載されるように)を含み得る。
【0151】
本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアは、改善された分析物検出および/または分析を提供することができる。単に例示のために、図4は、CsgGおよびInvGナノポアの両方がほぼ同じ直径の狭窄部を有するが、CsgGナノポアの狭窄部はそれぞれ51位、55位、および56位において3つのアミノ酸を有し(野生型配列に基づく)、InvGナノポア狭窄はそれぞれ396位および397位において2つのアミノ酸を有する(配列番号2に基づく)ことを示している。さらに、CsgGナノポアの狭窄部におけるアミノ酸51はまた、アミノ酸55から少し離れている。対照的に、InvGナノポアの狭窄部におけるアミノ酸396および397は互いに隣接して位置しており、したがってより敏感な読み取りヘッドを提供する。したがって、いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアは、分析物検出および/または分析のためのより敏感な読み取りヘッドを提供することができる。
【0152】
ホモ多量体セクレチンナノポア
同一の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを含むホモ多量体ナノポアもまた本明細書に提供される。ホモ多量体ナノポアは、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドの任意の実施形態を含み得る。ホモ多量体ナノポアは、分析物、例えば標的ポリヌクレオチドおよび/または標的ポリペプチドを特徴付けるために使用することができる。本明細書に記載のホモ多量体ナノポアは、上記で論じた利点のうちのいずれかを有し得る。
【0153】
ホモ多量体ポアは、任意の数の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを含み得る。ポアは、典型的には、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20個の同一の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド、例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の同一の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを含む。
【0154】
ヘテロ多量体セクレチンナノポア
少なくとも1つの修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを含むヘテロ多量体ナノポアもまた本明細書に提供される。ヘテロ多量体ナノポアは、標的分析物、例えば標的ポリヌクレオチドおよび/または標的ポリペプチドを特徴付けるために使用することができる。ヘテロ多量体ナノポアは、当該技術分野で既知の方法(例えば、Protein Sci.2002 Jul; 11(7):1813-24)を使用して作製することができる。
【0155】
ヘテロ多量体ポアは、ポアを形成するのに十分なサブユニットポリペプチドを含有する。サブユニットポリペプチドは任意の種類であり得る。ポアは、典型的には、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20個のサブユニットポリペプチド、例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のサブユニットポリペプチドを含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、全てのサブユニットポリペプチド(例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のサブユニットポリペプチド)が修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドであり、それらのうちの少なくとも1つが他のものとは異なる。
【0157】
いくつかの実施形態において、サブユニットポリペプチドのうちの少なくとも1つは、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドではない。この実施形態において、残りのモノマーは、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドのうちのいずれか1つであり得る。したがって、ポアは、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド(複数可)を含み得る。ナノポアを形成する修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド(複数可)は、同一でもまたは異なっていてもよい。
【0158】
本明細書に記載のセクレチンナノポアの例示的な使用
修飾セクレチンナノポアは、分析物、例えば標的ポリヌクレオチド(例えば、二本鎖ポリヌクレオチドおよび/または一本鎖ポリヌクレオチド)および/または標的ポリペプチドを特徴付けるまたは検出するために使用することができる。したがって、試料中の分析物を検出するおよび/または特徴付けるための方法もまた本明細書中に提供される。本方法は、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアの任意の実施形態および膜を含む水溶液を提供することであって、修飾セクレチンナノポアは膜中に配置される、上記提供することと、膜のシス側またはトランス側で水溶液に分析物を添加することと、を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド結合タンパク質、例えばヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、および/またはポリメラーゼなどの酵素もまた、膜のシス側またはトランス側で水溶液に添加することができる。ポリヌクレオチド結合タンパク質などの酵素は、修飾セクレチンナノポアの内腔に入るか、または修飾セクレチンナノポアのシス開口部もしくはトランス開口部と(例えば、限定するものではないが、イオン性および/または疎水性相互作用により)接触し、またはこれと共有結合し得る。いくつかの実施形態において、分析物は、ポリヌクレオチド結合タンパク質などの酵素に結合し得る。分析物は、標的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、リガンド、または疎水性分子であり得る。
【0159】
いくつかの実施形態において、セクレチンナノポアを使用して、シス玄関部またはトランス玄関部内に提供される酵素に結合するか、またはそうでなければこれと相互作用し、これが酵素の立体配座の変化を引き起こす、分子を検出することができる。立体配座の変化は、ナノポアを通るイオン電流フローに変化を引き起こすことができる。そのような分子の例は薬物、抗体、ペプチド、ポリヌクレオチドなどである。薬物などの小分子と相互作用する酵素の例には、シトクロムp450酵素が含まれるが、これに限定されない。
【0160】
いくつかの実施形態において、本方法は、膜にわたって電位を印加することをさらに含み得る。印加される電位は、電圧電位であり得る。代替的には、印加される電位は、化学的電位であり得る。この例は、両親媒性層などの膜にわたって塩勾配を使用することである。塩勾配は、Holden et al.,J Am Chem Soc.2007 Jul 11;129(27):8650-5に開示されている。本方法は、典型的には、膜およびポアにわたって電圧を印加して実施され得る。使用する電圧は、典型的には、+5V~-5V、例えば+4V~-4V、+3V~-3V、または+2V~-2Vである。いくつかの実施形態において、使用する電圧は、-600mV~+600mVまたは-400mV~+400mVであり得る。使用する電圧は、好ましくは、-400mV、-300mV、-200mV、-150mV、-100mV、-50mV、-20mV、および0mVから選択される下限と、+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mV、および+400mVから独立して選択される上限と、を有する範囲内であり得る。いくつかの実施形態において、使用する電圧は、100mV~240mVの範囲内または120mV~220mVの範囲内であり得る。増加した印加される電位を使用することによって、ポアごとに異なるヌクレオチド間の識別を増加させることが可能である。
【0161】
いくつかの実施形態において、本方法は、膜にわたって電位を印加するときに、ナノポアを通過する分析物に応答した信号を検出することをさらに含み得る。信号は電気的測定および/または光学的測定であり得る。考えられる電気的測定としては、電流測定、インピーダンス測定、トンネルリング測定(Ivanov AP et al.,Nano Lett.2011 Jan 12;11(1):279-85)、およびFET測定(国際出願第WO2005/124888号)が挙げられる。光学的測定は、電気的測定(Soni GV et al.,Rev Sci Instrum.2010 Jan;81(1):014301)と組み合わせられ得る。測定は、膜貫通電流測定、例えば、ポアを通過するイオン電流の測定であり得る。代替的に、測定は、Heron al.,J.Am.Chem.Soc.,2009,131(5),1652-1653によって開示されているようなチャネルを通るイオン流を示す蛍光測定、またはFETを使用した膜にわたる電圧の測定であり得る。いくつかの実施形態において、本方法は、膜にわたる電位を印加するときに、分析物(例えば、限定するものではないが、標的ポリヌクレオチド)がナノポアを通って相互作用および/または移動するときのナノポアを通るイオン電流フローを検出することをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、本方法は、パッチクランプまたは電圧クランプを使用して実施され得る。いくつかの実施形態において、本方法は、電圧クランプを使用して実施され得る。電気的測定は、Stoddart D et al.,Proc Natl Acad Sci,12;106(19):7702-7、Lieberman KR et al,J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72、および国際出願第WO2000/28312号に記載されるような、標準的な単一チャネル記録機器を使用して行われ得る。あるいは、電気的測定は、例えば、国際出願第WO2009/077734号および国際出願第WO2011/067559号に記載されるような、マルチチャネルシステムを使用して行われ得る。
【0162】
代替の実施形態において、本方法は、膜にわたって電位を印加するときに、分析物への結合時の酵素(例えば、ポリヌクレオチド結合タンパク質またはリガンド結合タンパク質)の移動または立体構造変化を測定することによって分析物を検出することをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、分析物が酵素に結合しているとき、酵素の少なくとも一部が修飾セクレチンナノポアの内腔内に存在し得る。これらの実施形態において、ナノポアを通過するイオン電流は、分析物が結合していない酵素と比較して、分析物に結合している酵素の移動または立体配座の変化と共に変化し得る。したがって、分析物の存在および/または種類は、ナノポアにわたって生じるイオン電流および/または電流シグネチャのレベルの変化を測定することによって検出することができる。
【0163】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、修飾セクレチンナノポアおよび膜が配置されている水溶液は、金属塩、例えばアルカリ金属塩、ハロゲン化物塩、例えばアルカリ金属塩化物塩などの塩化物塩などの任意の電荷担体を含み得る。電荷担体には、イオン性液体または有機塩、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、または1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドが含まれ得る。本明細書で論じる例示的な装置において、塩はチャンバ内の水溶液中に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化セシウム(CsCl)、またはフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムとの混合物が典型的に使用される。KCl、NaCl、およびフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムとの混合物が好ましいものであり得る。電荷担体は、膜にわたって非対称であり得る。例えば、電荷担体の種類および/または濃度は、膜の各側で異なり得る。
【0164】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、修飾セクレチンナノポアおよび膜が配置されている水溶液は塩を含み得る。塩濃度は、飽和であり得る。塩濃度は、3M以下であり、典型的には、0.1~2.5M、0.3~1.9M、0.5~1.8M、0.7~1.7M、0.9~1.6M、または1M~1.4Mであり得る。塩濃度は、好ましくは、150mM~1Mである。本方法は、好ましくは、少なくとも0.3M、例えば、少なくとも0.4M、少なくとも0.5M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5M、または少なくとも3.0Mの塩濃度を用いて行われる。高い塩濃度は、高いシグナル対ノイズ比を提供し、正常な電流揺らぎのバックグラウンドに対する、ヌクレオチドの存在を示す電流の同定を可能にする。
【0165】
いくつかの実施形態において、水溶液は低イオン強度溶液であり得る。本明細書で使用する場合、「低イオン強度溶液」との用語は、例えば、1M未満、900mM未満、800mM未満、700mM未満、600mM未満、500mM未満、400mM未満、300mM未満、200mM未満、150mM未満、またはそれ以下を含む、2M未満のイオン強度を有する溶液を指す。いくつかの実施形態において、より低いイオン強度の溶液は、少なくとも約50mM、少なくとも約100mM、少なくとも約150mM、少なくとも約200mM、少なくとも約300mM、少なくとも約400mMのイオン強度を有する。少なくとも約500mM、少なくとも約600mM、少なくとも約700mM、少なくとも約800mM、少なくとも約900mM、少なくとも約1M、またはそれ以上のイオン強度を有する。上記の参照範囲の組み合わせも包含される。例えば、低イオン強度溶液は、約100mM~約600mM、または約150mM~約300mMのイオン強度を有し得る。任意の塩を使用して適切なイオン強度を有する溶液を得ることができる。いくつかの実施形態において、アルカリ塩(例えば、限定するものではないが、塩化カリウムまたは塩化ナトリウム)を低イオン強度溶液に使用することができる。
【0166】
本方法は、典型的には、緩衝液の存在下で実施される。本明細書で論じる例示的な装置において、緩衝液は、チャンバ内の水溶液中に存在する。本明細書に記載の方法において、任意の緩衝液を使用し得る。典型的には、緩衝液は、リン酸緩衝液である。他の好適な緩衝液は、HEPESおよびTris-HCl緩衝液である。本方法は、典型的には、4.0~12.0、4.5~10.0、5.0~9.0、5.5~8.8、6.0~8.7、または7.0~8.8、または7.5~8.5のpHで実施される。使用されるpHは、好ましくは、約7.5または8.0である。
【0167】
本方法は、0℃~100℃、15℃~95℃、16℃~90℃、17℃~85℃、18℃~80℃、19℃~70℃、または20℃~60℃で実施され得る。本方法は、典型的には、室温で実施される。本方法は、任意選択で、酵素機能を支持する温度、例えば約37℃で実施される。
【0168】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法を使用して、ある範囲の条件下で異なるヌクレオチドを識別することができ、これは以下の「ポリヌクレオチドの特徴付け」の節でさらに詳細に説明する。例えば、本明細書に記載の方法を使用して、シーケンシングなどの核酸の特徴付けに有利な条件下でヌクレオチドを識別することができる。本方法で使用される修飾セクレチンナノポアが異なるヌクレオチドを識別することができる程度は、印加される電位、塩濃度、緩衝液、温度、ならびに尿素、ベタイン、およびDTTなどの添加剤の存在を変えることによって制御することができる。これは、特にシーケンシングの際に、ポアの機能を微調整することを可能にする。これは、以下により詳細に論じられる。修飾セクレチンナノポアを使用して、ヌクレオチドベースによるヌクレオチドに対してではなく、1つ以上のモノマーとの相互作用からポリヌクレオチドポリマーも同定し得る。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアを使用して、例えばメチル化ヌクレオチドと非メチル化ヌクレオチドとの間で修飾塩基も区別し得る。
【0169】
図2は、CsgGナノポアが9個のモノマーまたはサブユニットを有し、InvGナノポアが15個のモノマーまたはサブユニットを有するが、両方のナノポアは直径がほぼ同じ狭窄部を有することを示す。CsgGナノポア(例えば、WO2016/034591に記載されるように)とは異なり、いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポア(例えば、限定するものではないが、InvGナノポア)を使用して、DNAおよび/またはRNAをシーケンシングすることができる。
【0170】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法を使用して、分子またはリガンドを特徴付けるおよび/もしくは検出するまたは特徴付けることができる。例えば、本明細書に記載の方法で使用される修飾セクレチンナノポアは、リガンド-酵素相互作用(例えば、核酸-タンパク質相互作用またはタンパク質-タンパク質相互作用)を特徴付けるために使用することができる。いくつかの実施形態において、ナノポアは、例えば、リガンド(例えば、核酸またはポリペプチド)に沿って結合部位の位置を走査およびマッピングすることにより、および/またはリガンドと酵素との間(例えば、タンパク質と核酸との間、またはタンパク質とタンパク質との間)の相互作用の強度を調べることによるなどの異なる感知モードを使用して、リガンド-酵素相互作用(例えば、タンパク質-核酸相互作用またはタンパク質-タンパク質相互作用)を調べるために使用することができる。いくつかの実施形態において、核酸またはタンパク質の天然の電荷を利用して、核酸-タンパク質複合体またはタンパク質-タンパク質複合体に電気泳動力を加えてもよい。例えば、いくつかの態様において、DNA-タンパク質相互作用は、タンパク質ナノポアを通る単一DNA分子の電圧駆動スレッディング(threading)を使用して評価し得る。そのような実施形態において、個々のDNAタンパク質複合体(例えば、DNA-エキソヌクレアーゼI複合体、DNA-ヘリカーゼ複合体、DNA-クランプ複合体)に加えられる電気力は2つの分子を引き離し得るが、同時にイオン電流変化を使用して複合体の解離速度を評価し得る。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される修飾セクレチンナノポアは、核酸、および転写因子、酵素、DNAパッケージングタンパク質などの他の核酸結合タンパク質を含む、核酸-タンパク質相互作用の検出および特徴付けに使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される修飾セクレチンナノポアは、リガンドおよび他のリガンド結合タンパク質を含むタンパク質-タンパク質相互作用の検出および特徴付けに使用され得る。
【0171】
いくつかの実施形態において、例えば図6に示すように、酵素(例えば、限定するものではないが、ポリヌクレオチド結合タンパク質)の少なくとも一部が修飾セクレチンナノポアの内腔に入ることができる。ナノポア内部での酵素の局在化は、酵素の望ましくない動きを制限し、したがって改善されたシグナルをもたらし得る。例えば、ClyAナノポアで示されるように(例えば、国際特許出願公開第WO2014/153625号および同第WO2016/166232号に記載されるように)、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアは、少なくとも一部がナノポア内部に存在する酵素への分析物の結合の動きを測定によって分析物を検出するために使用され得る。InvGナノポアなどのセクレチンナノポアの狭窄部はClyAナノポアの狭窄部よりも非常に小さいので、そのような事象から生じるシグナルはInvGナノポアなどのセクレチンナノポアでより顕著であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアおよび方法は、新しい分野の分子試験を提供することができる。
【0172】
ポリヌクレオチド特徴付け
本開示の別の態様は、標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法を提供する。本方法は、(a)水溶液中に、本明細書に記載の任意の実施形態による修飾セクレチンナノポアおよび膜を提供することであって、修飾セクレチンナノポアは膜中に存在する、上記提供することと、(b)工程(a)の水溶液中に標的ポリヌクレオチドを添加することと、(c)ナノポアにわたって電位を印加している間に、修飾セクレチンナノポアを通るイオンフローを測定することであって、イオンフローの測定値は標的ポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を示す、上記測定することと、を含む。いくつかの実施形態において、標的ポリヌクレオチドは水溶液のシス側に添加される。いくつかの実施形態において、標的ポリヌクレオチドは水溶液のトランス側に添加される。いくつかの実施形態において、水溶液は、本明細書に記載の装置の一実施形態に存在する。
【0173】
標的ポリヌクレオチドはまた、鋳型ポリヌクレオチドまたは目的のポリヌクレオチドとも呼ばれ得る。
【0174】
ポリヌクレオチド
核酸等のポリヌクレオチドは、2つ以上のヌクレオチドを含む高分子である。ポリヌクレオチドまたは核酸は、任意のヌクレオチドの任意の組み合わせを含み得る。ヌクレオチドは、天然であっても人工であってもよい。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、酸化またはメチル化されてもよい。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、損傷していてもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジンダイマーを含んでもよい。かかるダイマーは、典型的には、紫外線による損傷に関連付けられ、皮膚メラノーマの主因である。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、例えば標識またはタグによって修飾され得る。好適な標識は、以下に記載される。ポリヌクレオチドは、1つ以上のスペーサを含み得る。
【0175】
ヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基、糖、および少なくとも1つのリン酸基を含有する。核酸塩基および糖は、ヌクレオシドを形成する。
【0176】
核酸塩基は、典型的には、複素環である。核酸塩基には、プリンおよびピリミジン、より具体的には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、およびシトシン(C)が含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
糖は、典型的には、五炭糖である。ヌクレオチド糖には、リボースおよびデオキシリボースが含まれるが、これらに限定されない。糖は、好ましくは、デオキシリボースである。
【0178】
ポリヌクレオチドは、好ましくは、以下のヌクレオシド、デオキシアデノシン(dA)、デオキシウリジン(dU)および/またはチミジン(dT)、デオキシグアノシン(dG)、ならびにデオキシシチジン(dC)を含む。
【0179】
ヌクレオチドは、典型的には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、典型的には、一リン酸、二リン酸、または三リン酸を含有する。ヌクレオチドは、3個超のリン酸、例えば4または5個のリン酸を含み得る。リン酸は、ヌクレオチドの5’または3’側に結合し得る。ヌクレオチドには、アデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、チミジン一リン酸(TMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、5-メチルシチジン一リン酸、5-ヒドロキシメチルシチジン一リン酸、シチジン一リン酸(CMP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、およびデオキシメチルシチジン一リン酸が含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、dCMP、およびdUMPから選択される。
【0180】
ヌクレオチドは、脱塩基であってもよい(すなわち、核酸塩基を欠如していてもよい)。ヌクレオチドはまた、核酸塩基および糖を欠如していてもよい。
【0181】
ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、任意の様式で互いに結合され得る。ヌクレオチドは、典型的には、核酸と同様に、それらの糖およびリン酸基によって結合される。ヌクレオチドは、ピリミジンダイマーと同様に、それらの核酸塩基を介して接続され得る。
【0182】
ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドの少なくとも一部は、好ましくは、二本鎖である。
【0183】
ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの核酸であり得る。ポリヌクレオチドは、DNAの1本の鎖にハイブリダイズされたRNAの1本の鎖を含むことができる。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の合成核酸、例えば、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはヌクレオチド側鎖を有する他の合成ポリマーであり得る。PNA骨格は、ペプチド結合によって連結した繰り返しN-(2-アミノエチル)-グリシン単位で構成されている。GNA骨格は、ホスホジエステル結合によって連結した繰り返しグリコール単位で構成されている。TNA骨格は、ホスホジエステル結合によって共に連結した繰り返しトレオース糖で構成されている。LNAは、上記のように、リボース部分における2’酸素および4’炭素を接続する余分な架橋を有するリボヌクレオチドから形成される。
【0184】
ポリヌクレオチドは、最も好ましくは、リボ核酸核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)である。
【0185】
ポリヌクレオチドは、任意の長さであり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500ヌクレオチドまたはヌクレオチド対の長さであり得る。ポリヌクレオチドは、1000以上のヌクレオチドもしくはヌクレオチド対、5000以上のヌクレオチドもしくはヌクレオチド対の長さ、または100000以上のヌクレオチドもしくはヌクレオチド対の長さであり得る。
【0186】
任意の数のポリヌクレオチドを調査することができる。例えば、本明細書に記載の方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100、またはそれ以上のポリヌクレオチドの特徴付けに関し得る。2個以上のポリヌクレオチドを特徴付ける場合、それらは、異なるポリヌクレオチドであってもよいし、または2例の同じポリヌクレオチドであってもよい。
【0187】
ポリヌクレオチドは、天然であっても人工であってもよい。例えば、本方法を使用して、製造されたオリゴヌクレオチドの配列を確かめることができる。本方法は、典型的には、インビトロで実施される。
【0188】
ポリヌクレオチドは、タンパク質または分析物などの結合種を含み得る。ポリヌクレオチドはハイブリダイズしたプローブを含み得る。
【0189】
特徴付け
本方法は、ポリヌクレオチドの2、3、4、または5つ以上の特徴を測定することを伴い得る。1つ以上の特徴は、好ましくは、(i)ポリヌクレオチドの長さ、(ii)ポリヌクレオチドの同一性、(iii)ポリヌクレオチドの配列、(iv)ポリヌクレオチドの二次構造、および(v)ポリヌクレオチドが修飾されているか否かから選択される。{i}、{ii}、{iii}、{iv}、{v}、{i,ii}、{i,iii}、{i,iv}、{i,v}、{ii,iii}、{ii,iv}、{ii,v}、{iii,iv}、{iii,v}、{iv,v}、{i,ii,iii}、{i,ii,iv}、{i,ii,v}、{i,iii,iv}、{i,iii,v}、{i,iv,v}、{ii,iii,iv}、{ii,iii,v}、{ii,iv,v}、{iii,iv,v}、{i,ii,iii,iv}、{i,ii,iii,v}、{i,ii,iv,v}、{i,iii,iv,v}、{ii,iii,iv,v}、または{i,ii,iii,iv,v}などの(i)~(v)のうちの任意の組み合わせが本明細書に記載の方法に従って測定され得る。(i)~(v)の異なる組み合わせは、第2のポリヌクレオチドと比較して、第1のポリヌクレオチドについて測定され得、上記に列挙された組み合わせのいずれかが含まれる。
【0190】
(i)について、ポリヌクレオチドの長さは、例えば、ポリヌクレオチドとポアとの間の相互作用の数またはポリヌクレオチドとポアとの間の相互作用の持続時間を決定することによって測定され得る。
【0191】
(ii)について、ポリヌクレオチドの同一性は、いくつかの方法で測定され得る。ポリヌクレオチドの同一性は、ポリヌクレオチドの配列の測定と併せて、またはポリヌクレオチドの配列の測定を伴わずに測定され得る。前者は簡単であり、ポリヌクレオチドが配列決定され、それにより同定される。後者は、いくつかの方法で行うことができる。例えば、ポリヌクレオチド中の特定のモチーフの存在が測定され得る(ポリヌクレオチドの残りの配列を測定することなく)。代替的には、本方法における特定の電気的および/または光学的シグナルの測定は、特定の供給源から得られるものとしてポリヌクレオチドを同定することができる。
【0192】
(iii)について、ポリヌクレオチドの配列は、前述のように決定することができる。好適なシーケンシング方法、特に電気的測定を使用するシーケンシング方法は、Stoddart D et al.,Proc Natl Acad Sci,12;106(19):7702-7、Lieberman KR et al,J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72、および国際出願第WO2000/28312号に記載されている。
【0193】
(iv)について、二次構造は、様々な方法で測定され得る。例えば、方法が電気的測定を伴う場合、二次構造は、滞留時間の変化またはポアを通過する電流の変化を使用して測定され得る。これは、一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチドの領域を識別することを可能にする。
【0194】
(v)について、任意の修飾の存在または不在が測定され得る。本方法は、好ましくは、メチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つ以上のタンパク質によって、または1つ以上の標識、タグ、もしくはスペーサによってポリヌクレオチドが修飾されているか否かを決定することを含む。特異的修飾は、ポアとの特異的相互作用をもたらすことになり、これは下記の方法を使用して測定することができる。例えば、メチルシオチン(methylcyotsine)は、各ヌクレオチドとのその相互作用中にポアを通過する電流に基づき、シトシンと区別され得る。
【0195】
標的ポリヌクレオチドを、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアのうちのいずれか1つと接触させる。ポアは、典型的には、膜内に存在する。好適な膜は、以下に論じられる。本方法は、ポアが膜内に存在する膜/ポアシステムを調査するために好適な任意の装置を使用して実施することができる。本方法は、膜貫通ポア感知のために好適な任意の装置を使用して実施することができる。例えば、装置は、水溶液を含むチャンバと、チャンバを2つの区画に分ける障壁とを備える。障壁は、典型的には、ポアを含有する膜が形成される孔を有する。代替的には、障壁は、ポアが存在する膜を形成する。
【0196】
本方法は、国際出願第PCT/GB08/000562号(WO2008/102120として公開)に記載されている装置を用いて実施することができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0197】
様々な異なる種類の測定を行うことができる。これは、電気的測定および光学的測定を含むが、これらに限定されない。可能な電気的測定には、電流測定、インピーダンス測定、トンネリング(tunneling)測定(Ivanov AP et al.,Nano Lett.2011 Jan 12;11(1):279-85)、およびFET測定(国際出願第WO2005/124888号)が挙げられる。光学的測定は、電気的測定(Soni GV et al.,Rev Sci Instrum.2010 Jan;81(1):014301)と組み合わせられ得る。測定は、膜貫通電流測定、例えば、ポアを通過するイオン電流の測定であり得る。代替的に、測定は、Heron al.,J.Am.Chem.Soc.,2009,131(5),1652-1653によって開示されているようなチャネルを通るイオン流を示す蛍光測定、またはFETを使用した膜にわたる電圧の測定であり得る。
【0198】
電気的測定は、Stoddart D et al.,Proc Natl Acad Sci,12;106(19):7702-7、Lieberman KR et al,J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72、および国際出願第WO2000/28312号に記載されるような、標準的な単一チャンネル記録機器を使用して行うことができる。あるいは、電気的測定は、例えば、国際出願第WO2009/077734号および国際出願第WO2011/067559号に記載されるような、マルチチャネルシステムを使用して行われ得る。
【0199】
本方法は、膜にわたって印加される電位を用いて実施される。印加される電位は、電圧電位であり得る。代替的には、印加される電位は、化学的電位であり得る。この例は、両親媒性層などの膜にわたって塩勾配を使用することである。塩勾配は、Holden et al.,J Am Chem Soc.2007 Jul 11;129(27):8650-5に開示されている。いくつかの実例において、ポリヌクレオチドの配列を推定または決定するために、ポアに対してポリヌクレオチドが移動する間の、ポアを通過する電流が使用される。これは鎖シーケンシングとして記載され得る。
【0200】
本方法は、ポアに対してポリヌクレオチドが移動する間の、ポアを通過する電流を測定することを伴う。したがって、本方法に使用される装置はまた、電位を印加し、膜およびポアにわたる電気シグナルを測定することができる電気回路を含み得る。本方法は、パッチクランプまたは電圧クランプを使用して実施され得る。本方法は、好ましくは、電圧クランプの使用を伴う。
【0201】
本方法は、ポアに対してポリヌクレオチドが移動するときのポアを通過する電流を測定することを伴う。膜貫通タンパク質ポアを通るイオン電流を測定するための好適な条件は、当該技術分野で既知であり、本明細書にも提供されている。
【0202】
ポリヌクレオチド結合タンパク質などの酵素
いくつかの実施形態において、分析物(例えば標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)を特徴付ける方法は、酵素が分析物(例えば、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)に結合するように、ポリヌクレオチド結合タンパク質などの酵素を分析物を含む水溶液中に添加することを含み得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド結合タンパク質などの酵素への分析物(例えば標的ポリヌクレオチド)の結合は、修飾セクレチンナノポアを通る分析物(例えば標的ポリヌクレオチド)の移動を制御し、それによって分析物(例えば標的ポリヌクレオチド)を特徴付ける。いくつかの実施形態において、リガンド結合タンパク質などの酵素に結合する分析物(例えば、標的ポリペプチドまたはリガンド)の移動を測定して、分析物を検出し、および/または分析物と酵素との相互作用を特徴付けることができる。
【0203】
ポリヌクレオチド結合タンパク質:ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチドに結合し、ポアを通るポリヌクレオチドの移動を制御することができる任意のタンパク質であり得る。ポリヌクレオチド結合タンパク質の例には、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、DNAクランプなどが含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド結合タンパク質およびポアと任意の順序で接触し得る。ポリヌクレオチドが、ヘリカーゼなどのポリヌクレオチド結合タンパク質およびポアと接触される場合、ポリヌクレオチドはまず、タンパク質と複合体を形成することが好ましい。ポアにわたって電圧が印加されると、ポリヌクレオチド/タンパク質複合体は次いで、ポアと複合体を形成し、ポアを通るポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0204】
ポリヌクレオチド結合タンパク質を使用する方法における任意のステップは、典型的には、遊離ヌクレオチドまたは遊離ヌクレオチド類似体、およびポリヌクレオチド結合タンパク質の作用を促進する酵素補因子の存在下で実施される。
【0205】
ヘリカーゼ(複数可)および分子ブレーキ(複数可)
一実施形態において、本方法は、
(a)ポリヌクレオチドに結合した1つ以上のヘリカーゼおよび1つ以上の分子ブレーキを有するポリヌクレオチドを提供することと、
(b)膜中に存在する修飾セクレチンナノポアを含む低イオン強度溶液中にポリヌクレオチドを添加し、1つ以上のヘリカーゼおよび1つ以上の分子ブレーキが一緒となり、その両方がポアを通るポリヌクレオチドの移動を制御するように、ポアにわたって電位を印加することと、
(c)ナノポアにわたって電位を印加している間に、ポリヌクレオチドがポアに対して動くときに修飾セクレチンナノポアを通るイオンフローを測定することであって、イオンフローの測定値はポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を示す、上記測定し、それによってポリヌクレオチドを特徴付けることと、を含む。この種の方法は、国際出願第PCT/GB2014/052737号(WO2015/110777として公開)に詳細に論じられており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0206】

本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアは、膜中に存在し得る。分析物(例えば、標的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンド)を特徴付ける方法において、分析物(例えば、標的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンド)を、典型的には、膜中の修飾セクレチンナノポアと接触させる。任意の膜を使用し得る。好適な膜は、当該技術分野で周知である。膜は、好ましくは、両親媒性層である。両親媒性層は、親水および親油特性の両方を有する、リン脂質などの両親媒性分子から形成された層である。両親媒性分子は、合成または天然であり得る。非天然型両親媒性物質および単分子層を形成する両親媒性物質は、当該技術分野で既知であり、例えば、ブロックコポリマー(Gonzalez-Perez et al.,Langmuir,2009,25,10447-10450)が含まれる。ブロックコポリマーは、2つ以上のモノマーサブユニットが共に重合されて単一ポリマー鎖を作成する、ポリマー材料である。ブロックコポリマーは、典型的には、各モノマーサブユニットによって寄与される特性を有する。しかしながら、ブロックコポリマーは、個々のサブユニットから形成されたポリマーが保有しない固有の特性を有し得る。ブロックコポリマーは、モノマーサブユニットのうちの1つが疎水性または親油性である一方で他のサブユニット(複数可)が水性媒体中で親水性であるように操作することができる。この場合、ブロックコポリマーは、両親媒性特性を保有し得、生体膜を模倣する構造を形成し得る。ブロックコポリマーは、ジブロック(2つのモノマーサブユニットからなる)であり得るが、3つ以上のモノマーサブユニットから構築されて、両親媒性物質として挙動するより複雑な配置でもあり得る。コポリマーは、トリブロック、テトラブロック、またはペンタブロックコポリマーであってもよい。膜は、好ましくは、トリブロックコポリマー膜である。
【0207】
古細菌二極性テトラエーテル脂質は、脂質が単分子層膜を形成するように構築される天然型脂質である。これらの脂質は、一般に、厳しい生物環境で生き残る好極限性細菌、好熱菌、好塩菌、および好酸球において見出される。それらの安定性は、最終二分子層の融合性質から得られると考えられている。一般モチーフ親水性-疎水性-親水性を有するトリブロックポリマーを作成することによってこれらの生物学的存在を模倣するブロックコポリマーを構築することは簡単である。この材料は、脂質二分子層と同様に挙動するモノマー膜を形成し、ベシクルから層状膜に至るまで幅広い相挙動を包含し得る。これらのトリブロックコポリマーから形成された膜は、生体脂質膜に対していくつかの利点を有する。トリブロックコポリマーは合成されるので、正確な構造を慎重に制御して、膜を形成するための、ならびにポアおよび他のタンパク質と相互作用するための正しい鎖長および特性を提供することができる。
【0208】
ブロックコポリマーはまた、脂質サブ材料として分類されないサブユニットから構築されてもよく、例えば、疎水性ポリマーは、シロキサンまたは他の非炭化水素系モノマーから作製され得る。ブロックコポリマーの親水性サブセクションはまた、低いタンパク質結合特性を保有し得、これは、生の生体試料に曝露されたときに高度に耐性である膜の作成を可能にする。このヘッドグループ単位はまた、非分類脂質ヘッド基に由来してもよい。
【0209】
トリブロックコポリマー膜はまた、生体脂質膜と比較して増加した機械的および環境的安定性、例えば、はるかに高い動作温度またはpH範囲を有する。ブロックコポリマーの合成性質は、ポリマーベースの膜を幅広い用途のためにカスタマイズする基盤を提供する。
【0210】
膜は、最も好ましくは、国際出願第PCT/GB2013/052766号(WO2014/064443として公開)またはPCT/GB2013/052767(WO2014/064444として公開)に開示される膜のうちの1つであ、これらのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0211】
両親媒性分子は、分析物(例えば、標的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンド)の結合を容易にするように化学的に修飾または官能化され得る。
【0212】
両親媒性層は、単分子層または二分子層であり得る。両親媒性層は、典型的には、平面である。両親媒性層は、湾曲してもよい。両親媒性層は、支持されてもよい。
【0213】
両親媒性膜は、典型的には天然には移動性であり、約10-8cm s-1の脂質拡散速度を有する2次元流体として本質的に作用する。これは、ポアおよび結合した分析物(例えば、標的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンド)が典型的には両親媒性膜内を移動することができることを意味する。
【0214】
膜は、脂質二分子層であり得る。脂質二分子層は、細胞膜のモデルであり、幅広い実験研究のための優秀な基盤として働く。例えば、脂質二分子層は、単一チャネル記録による膜タンパク質のインビトロ調査のために使用することができる。代替的には、脂質二分子層は、幅広い物質の存在を検出するためのバイオセンサーとして使用することができる。脂質に二分子層は、任意の脂質二分子層であり得る。好適な脂質二分子層には、平面脂質二分子層、支持二分子層、またはリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。脂質二分子層は、好ましくは、平面脂質二分子層である。好適な脂質二分子層は、国際出願第PCT/GB08/000563号(WO2008/102121として公開)、国際出願第PCT/GB08/004127号(WO2009/077734として公開)、および国際出願第PCT/GB2006/001057号(WO2006/100484として公開)に開示され、これらのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0215】
いくつかの実施形態において、分析物(例えば、標的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンド)を本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアのうちのいずれか1つを含む膜に結合させることができる。本方法は、分析物(例えば、標的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンド)を本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアのうちのいずれか1つを含む膜に結合させることを含み得る。1つ以上のアンカーを使用して、分析物(例えば、標的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンド)を膜に結合させるのが好ましい。分析物(例えば、標的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンド)を任意の既知の方法を用いて膜に結合させ得る。
【0216】
二本鎖ポリヌクレオチドシーケンシング
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは二本鎖であり得る。ポリヌクレオチドが二本鎖である場合、本方法は、好ましくは、接触工程の前に、ヘアピンアダプターをポリヌクレオチドの一末端にライゲーションすることをさらに含む。次いで、ポリヌクレオチドが本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアと接触もしくは相互作用するときにまたはその前に、ポリヌクレオチドの2本の鎖を分離し得る。2本の鎖は、ポアを通るポリヌクレオチドの移動が、ヘリカーゼなどのポリヌクレオチド結合タンパク質または分子ブレーキによって制御される間に分けられてもよい。これは、国際出願第PCT/GB2012/051786号(WO2013/014451として公開)に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。このようにして二本鎖構造体の両方の鎖を結び付け、調べることにより、特徴付けの効率および精度が増す。
【0217】
ラウンドザコーナー(Round the corner)シーケンシング
好ましい実施形態において、標的二本鎖ポリヌクレオチドは、一末端にヘアピンループアダプターを提供され、本方法は、該ポリヌクレオチドの両方の鎖がポアを通って移動するように該ポリヌクレオチドを本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアのいずれか1つと接触させることと、該ポリヌクレオチドの両方の鎖がポアに対して移動するときに1つ以上の測定値を取ることであって、測定値は該ポリヌクレオチド鎖の1つ以上の特徴を示す、上記測定値を取り、これによって、該標的二本鎖ポリヌクレオチドを特徴付けることと、を含む。上記の実施形態のいずれも、この実施形態に同等に適用される。
【0218】
リーダー配列
接触工程前に、本方法は、好ましくは、ポアに優先的に入るリーダー配列をポリヌクレオチドに結合させることを含む。リーダー配列は本明細書に記載の方法のいずれかを容易にする。リーダー配列は、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアのいずれか1つに優先的に入り、それによってナノポアを通るポリヌクレオチドの移動を容易にするように設計される。リーダー配列を使用して、上記のようにポリヌクレオチドを1つ以上のアンカーに結合することもできる。
【0219】
修飾ポリヌクレオチド
特徴付けの前に、ポリメラーゼが標的ポリヌクレオチドを鋳型として使用して修飾ポリヌクレオチドを形成する条件下でポリヌクレオチドをポリメラーゼおよび遊離ヌクレオチドの集団と接触させることにより、標的ポリヌクレオチドを修飾してもよく、ポリメラーゼは、修飾ポリヌクレオチドを形成するときに標的ポリヌクレオチド中のヌクレオチド種のうちの1つ以上を異なるヌクレオチド種で置換する。修飾ポリヌクレオチドは次いで、ポリヌクレオチドに結合した1つ以上のヘリカーゼ、およびポリヌクレオチドに結合した1つ以上の分子ブレーキを提供される。この種の修飾は、国際出願第PCT/GB2015/050483号に記載され、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。上記のポリメラーゼのいずれかを使用することができる。
【0220】
鋳型ポリヌクレオチドは、ポリメラーゼが鋳型ポリヌクレオチドを鋳型として使用して修飾ポリヌクレオチドを形成する条件下でポリメラーゼと接触される。かかる条件は、当該技術分野で既知である。例えば、ポリヌクレオチドは、典型的には、New England Biolabs(登録商標)からの緩衝液などの市販のポリメラーゼ緩衝液中でポリメラーゼと接触される。プライマーまたは3’ヘアピンは、典型的には、ポリメラーゼ伸長のための核形成点として使用される。
【0221】
膜貫通ポアを使用するポリヌクレオチドの特徴付け、例えばシーケンシングは、典型的には、k個(kは正の整数である)のヌクレオチドからなるポリマー単位(すなわち、「k-マー」)を分析することを伴う。これは、国際出願第PCT/GB2012/052343号(WO2013/041878として公開)に論じられており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。異なるk-マーについての電流測定間に明確な分離があることが望ましいものの、これらの測定の一部が重複することは一般的である。特に、k-マー中のポリマー単位の数が多い(すなわち、kの値が大きい)場合、異なるk-マーによって生成された測定値を分析することが難しくなり得、ポリヌクレオチドに関する情報の取得、例えば、ポリヌクレオチドの基礎の配列の推定に不利益となる。隠れマルコフモデルまたはリカレントニューラルネットワークの使用など、様々なアルゴリズムを用いて配列を特徴付けることができる。国際特許出願第PCT/GB2015/050776号(WO2015/140535として公開)およびPCT/GB2015/053083(WO2016/059427として公開)などに開示されている方法を使用して、配列を参照配列に対してアラインさせることができ、これらのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0222】
標的ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチド種を、修飾ポリヌクレオチド中の異なるヌクレオチド種で置き換えることによって、修飾ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドにおけるものとは異なるk-マーを含有する。修飾ポリヌクレオチド中の異なるk-マーは、標的ポリヌクレオチド中のk-マーとは異なる電流測定値を生成することができ、そのため、修飾ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドとは異なる情報を提供する。修飾ポリヌクレオチドからのさらなる情報は、標的ポリヌクレオチドの特徴付けをより容易にすることができる。いくつかの場合において、修飾ポリヌクレオチド自体が、特徴付けることがより容易である場合がある。例えば、修飾ポリヌクレオチドは、それらの電流測定値間の増加した分離もしくは明確な分離を有するk-マー、または減少したノイズを有するk-マーを含むように設計され得る。
【0223】
ポリメラーゼは、好ましくは、修飾ポリヌクレオチドを形成する際に、標的ポリヌクレオチド中のヌクレオチド種のうちの2つ以上を異なるヌクレオチド種で置き換える。ポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチド中の2つ以上のヌクレオチド種の各々を固有のヌクレオチド種で置き換え得る。ポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチド中の2つ以上のヌクレオチド種の各々を同じヌクレオチド種で置き換え得る。
【0224】
標的ポリヌクレオチドがDNAである場合、修飾中の異なるヌクレオチド種は、典型的には、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、もしくはメチルシトシンとは異なる核酸塩基を含み、かつ/またはデオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシシチジン、もしくはデオキシメチルシチジンとは異なるヌクレオシドを含む。標的ポリヌクレオチドがRNAである場合、修飾ポリヌクレオチド中の異なるヌクレオチド種は、典型的には、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、もしくはメチルシトシンとは異なる核酸塩基を含み、かつ/またはアデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、もしくはメチルシチジンとは異なるヌクレオシドを含む。異なるヌクレオチド種は、上記のユニバーサルヌクレオチドのいずれかであり得る。
【0225】
ポリメラーゼは、1つ以上のヌクレオチド種を、1つ以上のヌクレオチド種に不在である化学基または原子を含む異なるヌクレオチド種で置き換えることができる。化学基は、プロピニル基、チオ基、オキソ基、メチル基、ヒドロキシメチル基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、ベンジル基、プロパルギル基、またはプロパルギルアミン基であり得る。
【0226】
ポリメラーゼは、1つ以上のヌクレオチド種を、1つ以上のヌクレオチド種中に存在する化学基または原子を欠く異なるヌクレオチド種で置き換えることができる。ポリメラーゼは、ヌクレオチド種のうちの1つ以上を、改変された電気陰性度を有する異なるヌクレオチド種で置き換えることができる。改変された電気陰性度を有する異なるヌクレオチド種は、好ましくは、ハロゲン原子を含む。
【0227】
本方法は、好ましくは、核酸塩基を修飾ポリヌクレオチド中の1つ以上の異なるヌクレオチド種から選択的に除去することをさらに含む。
【0228】
他の特徴付け方法
別の実施形態において、ポリメラーゼがヌクレオチドをポリヌクレオチドに組み込むときに放出される標識種を検出することによって、ポリヌクレオチドは特徴付けされる。ポリメラーゼは、ポリヌクレオチドを鋳型として使用する。各標識種は、各ヌクレオチドに特異的である。ヌクレオチドがポリメラーゼによってポリヌクレオチド(複数可)に付加されるときにリン酸標識種が順次放出されるように、ポリヌクレオチドを本明細書に記載の修飾セクレチンナノポア、ポリメラーゼ、および標識ヌクレオチドと接触させ、リン酸種は各ヌクレオチドに特異的な標識を含有する。ポリメラーゼは、上記のもののいずれかであり得る。リン酸標識種はポアを使用して検出され、それによりポリヌクレオチドを特徴付ける。この種類の方法は、欧州出願第13187149.3号(EP2682460として公開)に開示されている。上記に論じられる実施形態のいずれかを、この方法に等しく適用する。
【0229】
試料
検出または特徴付けされる分析物を含む任意の好適な試料を本明細書に記載の任意の方法のいずれかに供し得る。本明細書に記載の方法は、分析物を含むことが既知であるかまたは分析物を含むことが疑われる2つ以上の試料に対して実施され得る。あるいは、本方法は、試料中の存在が既知であるかまたは予想される2つ以上の分析物の同一性を確認するために、2つ以上の試料に対して実施され得る。いくつかの実施形態において、本方法は、二本鎖ポリヌクレオチドを一本鎖ポリヌクレオチドから区別するために試料に対して実施され得る。
【0230】
第1の試料および/または第2の試料は生物学的試料であり得る。本明細書に記載の方法は、任意の生物または微生物から得られたかまたは抽出された少なくとも1つの試料を使用して、インビトロで実施され得る。第1の試料および/または第2の試料は非生物学的試料であり得る。非生物学的試料は流体試料であり得る。非生物学的試料の例としては、外科用流体、水、例えば飲料水、海水、または河川水、および臨床検査用の試薬が挙げられる。
【0231】
第1の試料および/または第2の試料は、典型的には、本明細書に記載の方法において使用される前に、例えば、遠心分離によって、または不必要な分子もしくは赤血球などの細胞を濾過して取り除く膜を通過させることによって処理される。第1の試料および/または第2の試料は、採取直後に測定され得る。第1の試料および/または第2の試料はまた、典型的には、アッセイ前には好ましくは-70℃未満で保存され得る。
【0232】
キット
本開示の別の態様はまた、例えば標的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンドなどの標的分析物を特徴付けるためのキットを提供する。キットは、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアのうちのいずれか1つおよび膜の成分を含む。膜は、好ましくは、構成要素から形成される。修飾セクレチンナノポアは、好ましくは膜中に存在する。キットは、上に開示される膜、例えば両親媒性層またはトリブロックコポリマー膜のいずれかの構成要素を含み得る。
【0233】
キットは、ポリヌクレオチド結合タンパク質またはリガンド結合タンパク質などの酵素をさらに含み得る。
【0234】
キットは、分析物(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンド)を膜に結合させるための1つ以上のアンカーをさらに含み得る。
【0235】
キットは、上記の実施形態のいずれかを実施することを可能にする1つ以上の他の試薬または器具をさらに含み得る。このような試薬または器具には、以下のうちの1つ以上が含まれ得る:好適な緩衝液(複数可)(水溶液)、例えば対象から試料を得るための手段(容器もしくは針を含む器具など)、タンパク質もしくはポリヌクレオチドを増幅および/または発現させるための手段、あるいは電圧またはパッチクランプ装置。試薬は、流体試料が試薬を再懸濁するように、乾燥状態でキット内に存在してもよい。キットはまた、任意選択で、キットを本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにおいて使用できるようにする指示書、または本方法が使用され得る生物に関する詳細を含み得る。
【0236】
装置
本明細書に記載の別の態様は、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはリガンドなどの標的分析物を特徴付けるための装置も提供する。装置は、本明細書に記載の複数の修飾セクレチンナノポアおよび複数の膜を含む。いくつかの実施形態において、複数の修飾セクレチンナノポアは複数の膜中に存在する。いくつかの実施形態において、修飾セクレチンナノポアおよび膜の数は等しい。一実施形態において、単一の修飾セクレチンナノポアが各膜中に存在する。
【0237】
いくつかの実施形態において、装置は、本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアを含む膜が内部に配置された水溶液を含むチャンバ(例えば、マイクロウェル)を含む。いくつかの実施形態において、装置は、チャンバのアレイ(例えば、マイクロウェルのアレイ)を含み得、それらの各々が本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアを含む膜が内部に配置された水溶液を含む。いくつかの実施形態において、装置は、チャンバのアレイ(例えば、マイクロウェルのアレイ)を含み得、それらの各々がナノポアを含む膜が内部に配置された水溶液を含む。これらの実施形態において、少なくとも1つのナノポアが本明細書に記載の修飾セクレチンナノポアであり、残りのナノポアは当該技術分野で既知の非セクレチンナノポア、例えば、限定するものではないが、CsgGナノポア(例えば、WO2016/034591に記載されるように)、α溶血素ナノポア(例えば、WO2010/004273に記載されるように)、リセニンナノポア(例えば、WO2013/153359に記載されるように)、Mspナノポア(例えば、WO2012/107778、WO2015/166275、およびWO2016/055778に記載されるように)を含み得る。したがって、2つ以上の種類のナノポアがそのようなアレイ中に存在し得る。
【0238】
いくつかの実施形態において、装置は水溶液中に分析物をさらに含み得る。分析物がポリヌクレオチドであるいくつかの実施形態において、装置は、ポリヌクレオチド結合タンパク質、例えば、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、またはポリメラーゼをさらに含み得る。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチドに結合し得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド結合タンパク質は膜のシス側にあり得、ポリヌクレオチド結合タンパク質はナノポアのシス開口部と(例えば、イオン性および/または疎水性相互作用により)接触し、またはこれと共有結合し得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド結合タンパク質は膜のトランス側にあり得、ポリヌクレオチド結合タンパク質はナノポアのトランス開口部と(例えば、イオン性および/または疎水性相互作用により)接触し、またはこれと共有結合し得る。
【0239】
装置は、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するための指示書をさらに含むことができる。装置は、アレイまたはチップなどのポリヌクレオチド分析のための任意の従来の装置であり得る。例えば標的ポリヌクレオチドを特徴付けるための方法を参照して上記で論じた実施形態のいずれも、本明細書に記載の装置に等しく適用可能である。装置は、本明細書に記載のキットに存在する特徴のいずれかをさらに含み得る。
【0240】
いくつかの実施形態において、装置は、例えば標的ポリヌクレオチドなどの標的分析物を特徴付けるための本明細書に記載の方法のいずれかを実施するように設定される。
【0241】
一実施形態において、装置は、(a)複数の修飾セクレチンナノポアおよび膜を支持することができ、ポアおよび膜を使用してポリヌクレオチドの特徴付けを行うように操作可能である、センサーデバイス、(b)特徴付けを行うための材料を送達するための少なくとも1つのポートを含む。
【0242】
あるいは、一実施形態において、装置は、(a)複数の修飾セクレチンナノポアおよび膜を支持することができ、ポアおよび膜を使用してポリヌクレオチドの特徴付けを行うように操作可能である、センサーデバイス、および(b)特徴付けを行うための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバを含む。
【0243】
別の実施形態において、装置は、(a)膜ならびに複数の修飾セクレチンナノポアおよび膜を支持することができ、ポアおよび膜を使用してポリヌクレオチドの特徴付けを行うように操作可能である、センサーデバイス、(b)特徴付けを行うための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバ、(c)少なくとも1つのリザーバからセンサーデバイスへ材料を制御可能に供給するように構成された流体システム、および(d)それぞれの試料を受け取るための1つ以上の容器を含むことができ、流体システムは1つ以上の容器からセンサーデバイスへ試料を選択的に供給するように構成される。
【0244】
装置は、国際出願第PCT/GB08/004127号(WO2009/077734として公開)、PCT/GB10/000789(WO2010/122293として公開)、国際出願第PCT/GB10/002206号(WO2011/067559として公開)、または国際出願第PCT/US99/25679号(WO00/28312として公開)に記載されている装置のいずれかであり得る。
【0245】
さらに詳述しなくても、当業者は、上記の説明に基づいて本開示を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単に例示として解釈されるべきであり、いかなる意味においても本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用された刊行物は全て、本明細書で参照された目的または主題のために参照により組み込まれる。
【0246】
実施例1.修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド、例えば、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドの例示的な発現および精製方法
C末端ヘキサ-ヒスチジン(His)タグを有する修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド(例えば、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30またはそれ以上、および最大50の本明細書に記載のアミノ酸修飾)を有する配列番号1または2に記載のアミノ酸配列)をコードする遺伝子を含有するアンピシリン耐性pT7ベクター、およびInvHタンパク質(InvGの発現を増強する20Kdタンパク質)をコードする遺伝子を含有するカナマイシン耐性pRhamベクターを、C43 DE3 pLysS細胞に共形質転換し、アンピシリン(100μg/ml)およびカナマイシン(30μg/ml)の両方を含有する寒天プレート上でプレートアウトし(plated out)、37℃で一晩増殖させた。単一コロニーを使用して、アンピシリン(100μg/ml)およびカナマイシン(30μg/ml)の両方を含有するTB培地の100mlのスターター培養物を播種した。培養物を250rpm、37℃で18時間増殖させた。15mlのスターター培養物を使用して、アンピシリン(100μg/ml)およびカナマイシン(30μg/ml)の両方を含有する500mlのTB培地に播種し、600nmのODが0.6に達するまで培養物を250rpm、37℃で増殖させた。温度を18℃に下げ、培養物を1時間低温にして平衡化させた。IPTGを0.5mMの最終濃度まで添加し、ラムノースを0.2%まで添加してタンパク質生成を誘導した。培養物を250rpm、18℃で18時間インキュベートした。培養物を6000gで20分の遠心分離により採集した。細胞ペレットを、ペレット1gあたり7.5mlの25mM HEPES、500mM NaCl、15mMイミダゾール、プロテアーゼ阻害剤、25単位/mlベンゾナーゼヌクレアーゼ、0.01%DDM(pH7.5)に再懸濁することによって溶解し、均一になるまで混合した。次いで、再懸濁したペレットを超音波処理(20秒間オンを15サイクル/20秒間オフを15サイクル)により溶解した。溶解物を50,000gで1時間の遠心分離により分離した。上清を0.22μmフィルターを通して濾過し、1mLのHisトラップ粗製カラムに適用した。25mM HEPES、500mM NaCl、15mMイミダゾール、0.01%DDM(pH7.5)をローディング緩衝液として使用し、25mM HEPES、500mM NaCl、75mMイミダゾール、0.01%DDM(pH7.5)を洗浄緩衝液として使用し、25mM HEPES、500mM NaCl、500mMイミダゾール、0.01%DDM(pH7.5)を溶出緩衝液として使用し、製造業者の指示書に従ってAKTAシステムによってタンパク質を精製した。
【0247】
SDS Pageを実施して、正しいタンパク質が存在していることを確認した。次に溶出画分をプールし、例えば30kD MWCO Amiconスピンカラムを通して濃縮した。25mM HEPES、500mM NaCl、0.001%DDM(pH7.5)を緩衝液Aとして使用し、製造者の指示書に従って、S200increaseカラムのSECクロマトグラフィーにタンパク質を運び進めた。目的のタンパク質が適切な分子量画分における単一ピークとして溶出された。例えば、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、約40kDa~約70kDaの分子量を有し得る(これは、SECクロマトグラフィーの溶出条件に応じて変わり得る)。溶出画分をプールし、サーモシェーカー中で穏やかに混合しながらレシチンリポソームと共に37℃で3時間インキュベートした。次いで、試料を20,000Gで20分間回転させ、上清を捨て、ペレットを25mM HEPES、500mM NaCl、0.1%SDS(pH7.5)に再懸濁した。再懸濁後、試料を60℃で15分間加熱し、20,000gで10分間回転させた。上澄みを製造業者の指示書に従ってSW TOSOH G4000カラム上でのSECに運び進め、オリゴマーを選択した。
【0248】
実施例2.エンドペプチダーゼ切断部位を含む修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドの例示的な発現および精製方法
タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位などのエンドペプチダーゼ切断部位を含む、C末端ヘキサ-ヒスチジン(His)タグを有する修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチド(例えば、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30またはそれ以上、および最大50の本明細書に記載のアミノ酸修飾)を有する配列番号3に記載のアミノ酸配列)をコードする遺伝子を含有するアンピシリン耐性pT7ベクターをC43 DE3 pLysS細胞に形質転換し、アンピシリン(100μg/ml)を含有する寒天プレートでプレートアウトした。単一コロニーを用いて、アンピシリン(100μg/ml)を含有するTB培地の100mlのスターター培養物を播種した。培養物を250rpm、37℃で18時間増殖させた。15mlのスターター培養物を使用して、アンピシリン(100μg/ml)を含む500mlのTB培地に接種し、600nmのODが0.6に達するまで250rpm、37℃で培養物を増殖させた。温度を18℃に下げ、培養物を1時間低温にして平衡化させた。IPTGを0.5mMの最終濃度まで添加してタンパク質生成を誘導した。培養物を250rpm、18℃で18時間インキュベートし、6000gで20分間の遠心分離によって採集した。細胞ペレットを、ペレット1gあたり7.5mlの25mM HEPES、500mM NaCl、15mMイミダゾール、プロテアーゼ阻害剤、25単位/mlベンゾナーゼヌクレアーゼ、および0.01%DDM(pH7.5)に再懸濁することによって溶解し、均一になるまで混合した。次いで、再懸濁したペレットを超音波処理(20秒間オンを15サイクル/20秒間オフを15サイクル)により溶解した。溶解物を50,000gで1時間の遠心分離により分離した。上清を0.22μmフィルターを通して濾過し、1mlのHisトラップ粗製カラムに適用した。25mM HEPES、500mM NaCl、15mMイミダゾール、および0.01%DDM(pH7.5)をローディング緩衝液として使用し、25mM HEPES、500mM NaCl、75mMイミダゾール、および0.01%DDM(pH7.5)を洗浄緩衝液として使用し、25mM HEPES、500mM NaCl、500mMイミダゾール、および0.01%DDM(pH7.5)を溶出緩衝液として使用して、製造業者の指示書に従ってAKTAシステムによってタンパク質を精製した。
【0249】
SDS Pageを実施して、正しいタンパク質が存在していることを確認した。次いで、溶出画分をプールし、30kD MWCO Amiconスピンカラムを通して濃縮した。25mM HEPES、500mM NaCl、および0.001%DDM(pH7.5)を緩衝液Aとして使用して、製造者の指示書に従って、S200increaseカラムのSECクロマトグラフィーにタンパク質を運び進めた。目的のタンパク質が適切な分子量画分における単一ピークとして溶出された。例えば、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドは、約40kDa~約70kDaの分子量を有し得る(これは、SECクロマトグラフィーの溶出条件に応じて変わり得る)。溶出画分をプールした。Hisタグ付きTEVプロテアーゼを0.2mg/mlの最終濃度まで添加し、試料を4℃で18時間インキュベートして、ベクター配列内のエンドペプチダーゼ切断部位の上流に位置するペプチドドメイン(例えば、InvGタンパク質のN0およびN1ドメイン)を修飾セクレチンナノポアサブユニットの残部から除去した。試料をトラップカラムに再適用し、フロースルーを回収した。フロースルー画分を、サーモシェーカー中で穏やかに混合しながらレシチンリポソームと共に37℃で3時間インキュベートした。次いで、試料を20,000Gで20分間回転させ、上清を捨て、ペレットを25mM HEPES、500mM NaCl、および0.1%SDS(pH7.5)に再懸濁した。再懸濁後、試料を60℃で15分間加熱し、20,000gで10分間回転させた。上澄みを製造業者の指示書に従ってSW TOSOH G4000カラム上でのSECに運び進め、オリゴマーを選択した。
【0250】
実施例3.GspD変異体の設計、発現、および精製
配列番号32に示されるVibrio cholerae GspD配列を出発配列として使用して、GspD変異体を以下の表に示されるように設計した。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】

【表7】

【表8】
【0251】
NEB pure expressキットを使用して、GspD変異体をインビトロで発現および精製した。反応は以下に示すように設定した。
【表9】
【0252】
最初の反応混合物の体積は25μLであった。反応混合物をサーモミキサー中で37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、チューブを22000gで10分間遠心分離し、その上清を捨てた。ペレット中に存在するタンパク質を1×laemmli緩衝液に再懸濁し、5%Tris-HClゲル中で55Vで一晩泳動した。次いでゲルを乾燥し、Carestream(登録商標)Kodak(登録商標)BioMax(登録商標)MRフィルムに一晩曝した。次いでフィルムを処理し、ゲル中のタンパク質を視覚化した。タンパク質のオリゴマーバンドをゲルから切り取り、100mM Tris、50mM NaCl、0.1% zwittergent(pH8)に再懸濁した。
【0253】
実施例4.電気生理学的設定
実験の設定は、2つの工程、i)単一のGspD変異体ナノポアが挿入されたバルクコポリマー膜の複数のウェルを含み、シーケンシングの準備ができたチップを調製すること、およびii)シーケンシングのためにチップに添加されるDNA試料を調製することを伴った。両工程の材料および方法を以下に説明する。
【0254】
GspD変異体をインビトロで発現させ精製し、100mM Tris、50mM NaCl、0.1% zwittergent(pH8)を含む緩衝液中で保存した。これらの変異体ポアを、25mM Kリン酸塩、150mMフェロシアン化カリウム(II)、150mMフェリシアン化カリウム(III)(pH8.0)緩衝液を用いて1:1000に希釈し、チップに添加して、各ウェルに単一のポアを得た。ポア挿入後、チップを1mLの25mM Kリン酸緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム(II)、150mMフェリシアン化カリウム(III)(pH8.0)緩衝液で洗浄して、過剰のGspDポアを除去した。必要に応じて、25mVの交流電位ステップで-25mV~-200mVおよび25mV~200mVの範囲の異なる電位で電流を記録するスクリプトを使用して、IV曲線測定を行った。470mM KCl、25mM HEPES、11mM ATP、および10mM MgCl2、pH8.0を含有する500mLのシーケンシングミックスで各チップを2回流した。これでシーケンシングのためのチップの準備が整う。
【0255】
一方、3.6kb実験のために、DNA試料をシーケンシング用に調製した。1μgのDNA分析物を、40nMのアダプターミックス(アダプターに予め結合されたE8ヘリカーゼ酵素を含有する)および平滑末端TAリガーゼと共に10分間インキュベートした。次いで、Spri精製を使用して、ライゲーション混合物を精製して、ライゲーションされていない遊離アダプターを除去した。ライゲーションされた最終混合物を、40mM CAPS pH10、40mM KCl、400nMコレステロールテザーを含有する25μLの溶出緩衝液中に溶出した。各チップについて、6μlのDNA-アダプターのライゲーションされたミックスを、シーケンシングミックス(75μlの最終体積)と混合し、シーケンシングのためにチップに添加した。その後、実験を180mVで6時間行った。
【0256】
静的鎖実験のために、ビオチン化静的鎖を一価ストレプトアビジンと共に1:1の比で10分間インキュベートした。静的鎖を470mM KCL、25mM HEPES(pH8)中で1mM最終濃度にした。次いで、静的鎖実験のために150μlの鎖をチップに添加した。静的鎖実験に使用したポアは、GspD-Vch-(WT-N467G/N468S-Del((N1-K239)/(N265-SGS-E282)))であった。
【0257】
結果を以下の表および図14~19に示す。ベースラインのポアは、GspD-Vch-(WT-del(N1-K239)/(N265-SGS-E282)))である。このポアをベースラインとして選択した。このポアは、N3ドメインから2つのドメイン(1~238)および狭窄部位265~282を欠失した後でもIVTTにおいて発現する。これは、C13緩衝液中において-180mVで約200pAの開口したポアであるが、開口したポアの電流増加の頻繁なスパイクが見られる。これは、ポアが負電位では開口した状態を保ち、正電位では閉じた状態を保つような非対称IV曲線非対称を有する。これは、電位の増加と共に開口したポアの電流が増加する非線形I-V曲線を有する。
【表10】
【表11】
【0258】
他の実施形態
本明細書に開示される全ての特徴は任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示される各特徴は、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられてもよい。したがって、他に明示的に述べられていない限り、開示された各特徴は、包括的な一連の同等または類似の特徴の一例にすぎない。
【0259】
上記の説明から、当業者は本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、本開示の真意および範囲から逸脱することなく、本開示を様々な使用および条件に適合させるために本開示の様々な変更および修正を行うことができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内である。
【0260】
均等物
本発明のいくつかの実施形態を本明細書で記載および示してきたが、当業者は、機能を果たすための、ならびに/あるいは本明細書に記載の結果および/または1つ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を想定し、そのような変形および/または改変のそれぞれは、本明細書に記載の本発明の実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般には、当業者は、本明細書に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は本発明の教示が使用される特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載の特定の本発明の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または日常を超えない実験を使用して確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例示としてのみ提示されており、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明は具体的に記載されおよび特許請求の範囲に記載されている以外にも実施され得ることを理解すべきである。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載のそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関する。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法のうちの任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法が互いに矛盾しない場合、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
【0261】
本明細書で定義および使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書中の定義、および/または定義された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0262】
本明細書に開示される全ての参考文献、特許および特許出願は、それぞれが引用されている主題に関して参照により組み込まれ、場合によっては文書全体を包含し得る。
【0263】
本明細書および特許請求の範囲で使用された不定冠詞「a」および「an」は、そうでないことが明確に示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0264】
本明細書および特許請求の範囲で使用された「および/または」という句は、そのように結合された要素、すなわち場合によっては接続的に存在し、他の場合には非接続的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味する。「および/または」で列挙された複数の要素は、同じように解釈されるべきであり、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」である。「および/または」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素が、そのような具体的に特定された要素に関連するかまたは無関係であるかにかかわらず、任意選択で存在し得る。したがって、非限定的な例として、「含む」などの開放式の言語と共に使用されたときの「Aおよび/またはB」への言及は、一実施形態において、Aのみ(任意選択でB以外の他の要素を含む)、別の実施形態において、Bのみ(任意選択でA以外の他の要素を含む)、さらに別の実施形態において、AおよびBの両方(任意選択で他の要素を含む)などを指すことができる。
【0265】
本明細書および特許請求の範囲で使用されたように、「または」は、上で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離するとき、「または」または「および/または」は包括的、すなわち、少なくとも1つの、しかし複数の要素のリストの包含も含むものとして解釈されるものとし、および、任意に、リストに含まれていない追加の項目もある。明確に逆が指示されている用語のみが、例えば「のうちの1つのみ」または「のうちの正確に1つ」、または特許請求の範囲で使用された場合は「からなる」が、多数またはリストされた要素のうち正確に1つの要素のみの包含を示す。一般に、本明細書で使用する「または」との用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちの正確に1つ」などの排他性の用語が先行する場合には、排他的な選択肢(すなわち、「両方ではなく、どちらか一方」)としてのみ解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用する場合の「から本質的になる」は、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0266】
本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、「少なくとも一つ」という句は、1または2以上の要素のリストを参照する場合、要素のリスト中の任意の1または2以上の要素から選択された少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであり、必ずしも、要素リスト内に具体的にリストされた全ての要素の各々を少なくとも1つ含む必要はなく、要素リスト中の要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義はまた、「少なくとも一つ」という句が言及する要素リスト中で具体的に同定されている要素以外に、具体的に同定された要素と関連するか関連しないかに関わらず、要素が任意選択で存在し得ることを許容する。しがたって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または等価に「AまたはBの少なくとも1つ」、または等価に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)とは、1つの実施形態においては、少なくとも1つの、および任意選択で2つ以上のAを含み、Bは存在しないこと(および任意選択でB以外の要素を含むこと)であり、別の実施形態においては、少なくとも1つの、および任意選択で2つ以上のBを含み、Aは存在しないこと(および任意選択でA以外の要素を含むこと)、さらに別の実施形態においては、少なくとも1つの、および任意選択で2つ以上のAと、少なくとも1つの、および任意選択で2つ以上のBの両方を含むこと(および任意選択で別の要素を含むこと)を指し得る。
【0267】
そうでないことが明確に示されていない限り、2つ以上の工程または行為を含む本特許請求の範囲に記載の任意の方法において、方法の工程または行為の順序は方法の工程または行為が記載されている順序に限定されないことも理解されるべきである。

本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
膜中に配置された修飾セクレチンナノポアであって、前記修飾セクレチンナノポアはシス開口部とトランス開口部との間で前記膜を通って延在する内腔を画定する内腔表面を含み、前記内腔表面が1つ以上のアミノ酸修飾を含む、修飾セクレチンナノポア。
[2]
前記1つ以上のアミノ酸修飾が、荷電改変修飾を含む、上記[1]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[3]
前記荷電改変修飾が、正に荷電したアミノ酸での負に荷電したアミノ酸の置換である、上記[2]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[4]
前記1つ以上のアミノ酸修飾が、疎水性アミノ酸での中性アミノ酸の置換を含む、上記[1]または[2]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[5]
前記シス開口部が、60Å~120Åの範囲の直径を有する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポア。
[6]
前記トランス開口部が、40Å~100Åの範囲の直径を有する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポア。
[7]
前記セクレチンナノポアが、約7.5Å~25Åの直径を有する狭窄部を含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポア。
[8]
前記セクレチンがII型分泌系である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポア。
[9]
前記セクレチンがGspDである、上記[8]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[10]
配列番号36に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含むサブユニットポリペプチドを含む、上記[9]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[11]
配列番号34または35に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含む、上記[9]または[10]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[12]
前記GspDがキャップゲートを含まない、上記[9]~[11]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポア。
[13]
前記GspDの中央ゲートが、アミノ酸をより小さな側基を有するアミノ酸で置換するように、かつ/または負に荷電したアミノ酸を中性アミノ酸もしくは正に荷電したアミノ酸で置換するように修飾されている、上記[9]~[12]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポア。
[14]
配列番号36に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含むサブユニットポリペプチドを含み、(i)D55もしくはT56~T77のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K60、D64、R71、およびE73のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD55、T56、T77、およびK78のうちの1つ以上がPで置換され、かつ/あるいは(ii)F156がより小さいアミノ酸で置換され、N151および/またはN152がより小さいアミノ酸で置換され、D153が荷電していないアミノ酸で置換され、G137およびG165がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている、上記[13]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[15]
Y63~R71が欠失されおよび/またはGSGもしくはSGSで置換され、F156がAで置換され、D153がSで置換され、かつ/あるいはN151およびN152がそれぞれ独立してGまたはSで置換されている、上記[14]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[16]
前記セクレチンがIV型分泌系である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポア。
[17]
前記セクレチンがPilQである、上記[16]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[18]
前記セクレチンがIII型分泌系である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポア。
[19]
前記セクレチンがYscCである、上記[18]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[20]
前記セクレチンがInvGである、上記[18]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[21]
(N1またはN0ドメインを有しないInvGのアミノ酸配列に対応する)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含む、上記[20]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[22]
前記内腔表面が、前記内腔内の狭窄部をさらに画定し、前記狭窄部が、配列番号1のアミノ酸D28、E225、R226、および/またはE231において1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、荷電改変修飾)を有する、上記[20]または[21]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[23]
前記狭窄部の前記1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、荷電改変修飾)が、以下のうちの1つ以上を含む、上記[22]に記載の修飾セクレチンナノポア:
i.D28N/Q/T/S/G/R/K、
ii.E225N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/K、
iii.R226N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/K/V、
iv.E225の欠失、
v.R226の欠失、および
vi.E231N/Q/T/A/S/G/P/H/R/K。
[24]
前記内腔表面が、アミノ酸E41、Q45、またはE114において1つ以上のアミノ酸修飾を有する捕捉部分を含む、上記[20]~[22]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポア。
[25]
前記捕捉部分が、以下のアミノ酸修飾のうちの1つ以上を含む、上記[24]に記載の修飾セクレチンナノポア:
i.Q45R/K、
ii.E41N/Q/T/S/G/R/K、および
iii.E114N/Q/T/S/G/R/K。
[26]
(N1またはN0ドメインを有しないInvGのアミノ酸配列に対応する)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドであって、前記修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドが、配列番号1のD28、E41、E114、Q45、E225、R226、およびE231から選択されるアミノ酸(複数可)において1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、荷電改変アミノ酸修飾)を含む、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチド。
[27]
前記1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、荷電改変アミノ酸修飾)が、以下のうちの1つ以上を含む、上記[26]に記載の修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチド:
i.D28N/Q/T/S/G/R/K、
ii.E225N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/K、
iii.R226N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/K/V、
iv.E225の欠失、
v.R226の欠失、および
vi.E231N/Q/T/A/S/G/P/H/R/K。
[28]
以下のアミノ酸修飾のうちの1つ以上を含む、上記[26]または[27]に記載の修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチド:
i.Q45R/K、
ii.E41N/Q/T/S/G/R/K、および
iii.E114N/Q/T/S/G/R/K。
[29]
(N1およびN0ドメインを含むWT InvGのアミノ酸配列に対応する)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドであって、前記修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドが、配列番号2のD199、E212、E285、Q216、E396、R397、およびE402から選択されるアミノ酸(複数可)において1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、荷電改変アミノ酸修飾)を含み、かつ/またはエンドペプチダーゼ切断部位が配列番号2の170位と171位との間もしくは171位と172位との間に挿入されている、修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチド。
[30]
前記1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、荷電改変アミノ酸修飾)が、以下のうちの1つ以上を含む、上記[29]に記載の修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチド:
i.D199N/Q/T/S/G/R/K、
ii.E396N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/R/K、
iii.R397N/Q/T/A/S/G/P/H/F/Y/K/V、
iv.E396の欠失、
v.R397の欠失、および
vi.E402N/Q/T/A/S/G/P/H/R/K。
[31]
以下のアミノ酸修飾のうちの1つ以上を含む、上記[29]または[30]に記載の修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチド:
i.Q216R/K、
ii.E212N/Q/T/S/G/R/K、および
iii.E285N/Q/T/S/G/R/K。
[32]
配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含む、修飾GspDナノポアサブユニットポリペプチド。
[33]
配列番号33に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するサブユニットポリペプチドを含む、上記[32]に記載の修飾GspDナノポアサブユニットポリペプチド。
[34]
前記GspDがキャップゲートを含まない、上記[32]または[33]に記載の修飾GspDナノポアサブユニットポリペプチド。
[35]
前記GspDの中央ゲートが、アミノ酸をより小さな側基を有するアミノ酸で置換するように、かつ/または負に荷電したアミノ酸を中性もしくは正に荷電したアミノ酸で置換するように修飾されている、上記[32]~[34]のいずれか一項に記載の修飾GspDナノポアサブユニットポリペプチド。
[36]
配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するセクレチンドメインを含み、(i)D55もしくはT56~T77のアミノ酸の全部もしくは一部が欠失もしくは置換され、K59、K60、R63、Q66、Q69、K71、Q74、およびQ75のうちの1つ以上が荷電していないアミノ酸で置換され、ならびに/またはD55、T56、T57、およびK394のうちの1つ以上がPで置換され、かつ/あるいは(ii)F157がより小さいアミノ酸で置換され、N152および/またはN153がより小さいアミノ酸で置換され、D154が荷電していないアミノ酸で置換され、G453およびG481がそれぞれ独立して未修飾であるかまたはAもしくはVで置換されている、上記[32]~[35]のいずれか一項に記載の修飾GspDナノポアサブユニットポリペプチド。
[37]
Y379-GSG-R387またはY379-SGS-R387、F472A、D469S、N467G/N468S、N467S468G、N467G/N468S/D469Sである、上記[14]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[38]
上記[26]~[31]のいずれか一項に記載の修飾InvGナノポアサブユニットポリペプチドまたは上記[32]~[37]のいずれか一項に記載の修飾GspDナノポアサブユニットポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
[39]
上記[26]~[31]のいずれか一項に記載の複数の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドまたは上記[32]~[37]のいずれか一項に記載の複数の修飾GspDナノポアサブユニットポリペプチドを含む、修飾セクレチンナノポア。
[40]
9~20個の前記修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドを含む、上記[39]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[41]
各モノマーが、上記[26]~[31]または[32]~[37]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドである、上記[40]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[42]
異なるモノマーを含み、前記モノマーのうちの少なくとも1つが上記[26]~[31]または[32]~[37]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポアサブユニットポリペプチドである、上記[40]に記載の修飾セクレチンナノポア。
[43]
セクレチンナノポアを含む膜が内部に配置された水溶液を収容するチャンバを含む装置であって、前記セクレチンナノポアがシス開口部とトランス開口部との間で前記膜を通って延在する内腔を画定する内腔表面を含む、装置。
[44]
前記セクレチンナノポアが修飾セクレチンナノポアであり、前記内腔表面が1つ以上のアミノ酸修飾を含む、上記[43]に記載の装置。
[45]
前記修飾セクレチンナノポアが、上記[1]~[25]および[39]~[42]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポアである、上記[44]に記載の装置。
[46]
前記水溶液中に存在する分析物をさらに含む、上記[43]~[45]のいずれか一項に記載の装置。
[47]
前記分析物がポリヌクレオチドである、上記[46]に記載の装置。
[48]
前記ポリヌクレオチドに結合したポリヌクレオチド結合タンパク質をさらに含む、上記[47]に記載の装置。
[49]
前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、またはポリメラーゼである、上記[48]に記載の装置。
[50]
前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が前記膜の前記シス側にある、上記[48]または[49]に記載の装置。
[51]
前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が、前記ナノポアの前記シス開口部と接触または共有結合している、上記[50]に記載の装置。
[52]
前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が前記膜の前記トランス側にある、上記[48]または[49]に記載の装置。
[53]
前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が、前記ナノポアの前記トランス開口部と接触または共有結合している、上記[52]に記載の装置。
[54]
上記[43]~[45]のいずれか一項に記載の装置を得ることと、分析物を前記膜の前記シス側または前記トランス側で前記水溶液に添加することと、を含む、方法。
[55]
前記分析物がポリヌクレオチドである、上記[54]に記載の方法。
[56]
ポリヌクレオチド結合タンパク質を前記膜の前記シス側で前記水溶液に添加することをさらに含み、前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が前記ポリヌクレオチドに結合する、上記[55]に記載の方法。
[57]
前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が、前記ナノポアの前記シス開口部と接触もしくは共有結合しているか、または前記ナノポアのシス玄関部内にある、上記[56]に記載の方法。
[58]
ポリヌクレオチド結合タンパク質を前記膜の前記トランス側で前記水溶液に添加することをさらに含み、前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が前記ポリヌクレオチドに結合する、上記[55]に記載の方法。
[59]
前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が、前記ナノポアの前記トランス開口部と接触もしくは共有結合しているか、または前記ナノポアのトランス玄関部内にある、上記[58]に記載の方法。
[60]
前記ポリヌクレオチド結合タンパク質が、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、またはポリメラーゼである、上記[54]~[59]のいずれか一項に記載の方法。
[61]
前記膜にわたって電圧勾配を印加することによって前記ナノポアを通るイオン電流フローを誘導することをさらに含む、上記[54]~[60]のいずれか一項に記載の方法。
[62]
前記印加された電圧勾配下で前記ナノポアを通るイオン電流フローを検出することをさらに含む、上記[61]に記載の方法。
[63]
前記検出されたイオン電流フローに基づいて前記分析物の存在を決定することをさらに含む、上記[62]に記載の方法。
[64]
セクレチンナノポアおよび前記セクレチンナノポアのシスまたはトランス玄関部内に提供される酵素を含む、組成物。
[65]
前記セクレチンナノポアが野生型セクレチンナノポアである、上記[64]に記載の組成物。
[66]
前記セクレチンナノポアが修飾セクレチンナノポアである、上記[64]に記載の組成物。
[67]
前記修飾セクレチンナノポアが、上記[1]~[25]および[39]~[42]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポアである、上記[66]に記載の組成物。
[68]
前記ナノポアが、膜内に提供され、シス開口部とトランス開口部との間で前記膜を通って延在する、上記[64]~[67]のいずれか一項に記載の組成物。
[69]
分析物の検出および/または特徴付けのための、セクレチンナノポアの使用。
[70]
前記セクレチンナノポアが修飾セクレチンナノポアである、上記[69]に記載の使用。
[71]
前記修飾セクレチンナノポアが、上記[1]~[25]および[39]~[42]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポアである、上記[70]に記載の使用。
[72]
試料中の分析物の有無を検出し、かつ/または試料中の分析物を特徴付ける方法であって、膜中に配置されたセクレチンナノポアを前記試料と接触させることと、前記膜にわたって電圧勾配を印加することと、前記ナノポアを通るイオン電流フローを検出することと、を含む、方法。
[73]
前記セクレチンナノポアが修飾セクレチンナノポアである、上記[72]に記載の方法。
[74]
前記修飾セクレチンナノポアが、上記[1]~[25]および[39]~[42]のいずれか一項に記載の修飾セクレチンナノポアである、上記[73]に記載の使用。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図16
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図18-3】
【配列表】
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