(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】マイクロ流体力学ベースの3Dバイオプリンティングのためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20231113BHJP
C12N 1/00 20060101ALN20231113BHJP
C07K 5/00 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
C12M1/26
C12N1/00 F
C07K5/00
(21)【出願番号】P 2019561747
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 IB2018052189
(87)【国際公開番号】W WO2018207037
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-09
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514285966
【氏名又は名称】キング アブドラ ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】ハウサー, シャーロット エー.イー.
(72)【発明者】
【氏名】ラウフ, サカンダー
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/137380(WO,A1)
【文献】特表2016-530874(JP,A)
【文献】特開2016-079190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリに保存された描写から3D物体(352)をプリントするためのデバイス(100、200A、200B、344A、344B)であって、
-バイオインク溶液を取り込むように構成された第1の入口(112、212)、
-前記バイオインク溶液のゲル化を誘導することができる緩衝液を取り込むように構成された第2の入口(114、214)、
-分散物を取り込むように構成された第3の入口(116、216)、
-ヒドロゲルを得るために前記バイオインク溶液、前記緩衝液、および前記分散物を混合するための流体ダクト(110A、110B、210)、および
-前記3D物体(352)を構築するためにヒドロゲルを排出するように構成されたノズル(122、222)
を含み、
前記分散物が
ペプチドマイクロ粒
子を含み、そして
複数の細胞型が前記
ペプチドマイクロ粒
子に封入され、そして/または前記
ペプチドマイクロ粒
子の表面上に固定化される、デバイス。
【請求項2】
前記流体ダクト(110、210)が、バイオインク-分散物混合物を得るために前記バイオインク溶液および分散物を混合するための第1の領域ならびに前記バイオインク-分散物混合物を前記緩衝液と混合するための第2の領域を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記分散物が細胞培養培地を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記流体ダクト(110A、110B、210)を加熱するように構成された加熱モジュール(220)をさらに含み、
そして/またはマイクロミキサー(240)をさらに含む、請求項1から
3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記流体ダクト(210)を照射するように構成された1つまたは複数の発光体(230)をさらに含む、請求項1から
4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記発光体(230)が、第1の波長を有する第1のLEDおよび前記第1の波長と異なる第2の波長を有する第2のLEDを含む、請求項
5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記バイオインク溶液が、少なくとも1つのペプチドを含み、前記ペプチドが、以下:
a)Z
o-X
nBX
mW-Z’
p、および
b)Z
o-WX
mBX
n-Z’
p
(式中、
ZはN末端保護基であり、Z’はC末端保護基であり、ここで、oおよびpは、0および1から独立して選択され;
Xは、各存在で独立して、イソロイシン、ノルロイシン、ロイシン、バリン、アラニン、グリシン、ホモアリルグリシン、およびホモプロパルギルグリシンから選択される脂肪族アミノ酸であり、ここで、nおよびmは、0、1、および2から独立して選択される整数であり、但し、m+n≦2であり、
Bは、フェニルアラニンおよびトリプトファンから選択される芳香族アミノ酸であるか、前記芳香族アミノ酸の脂肪族対応物であり、前記脂肪族対応物は、シクロヘキシルアラニン、4-ヒドロキシ-シクロヘキシルアラニン、3,4-ジヒドロキシシクロヘキシルアラニンから選択され、
Wは、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、5-N-エチル-グルタミン(テアニン)、シトルリン、チオ-シトルリン、システイン、ホモシステイン、メチオニン、エチオニン、セレノメチオニン、テルロメチオニン、トレオニン、アロトレオニン、セリン、ホモセリン、チロシン、ヒスチジン、アルギニン、ホモアルギニン、オルニチン、N(6)-カルボキシメチルリジン、2,4-ジアミノ酪酸(Dab)、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、およびN(6)-カルボキシメチルリジンから選択される極性アミノ酸であり、
前記極性アミノ酸は、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、トレオニン、メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、オルニチン(Orn)、2,4-ジアミノ酪酸(Dab)、および2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)からなる群から選択される)から選択される一般式を有する、請求項1から
6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記バイオインク溶液、分散物、および緩衝液がマイクロ流体チャネル(110B、210)中で混合される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ヒドロゲルが空気圧および/またはマイクロ流体ポンプ(340)を用いて排出される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記3D物体(352)が3Dソース物体(310)のスキャンに基づいて構築される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記細胞培養培地が複数の細胞型を含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項12】
前記バイオインク溶液の前記ゲル化が前記
バイオインク溶液の即時ゲル化である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記即時ゲル化を誘導することができる緩衝液が、リン酸緩衝生理食塩水または塩(単数または複数)を含む緩衝液(単数または複数)である、請求項
12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスが生理学的条件下に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記バイオインク溶液が、請求項
7に規定されるペプチド溶液である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記デバイスが、第1のエアブラシ(401)および第2のエアブラシ(402)と共に使用されるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスが、前記バイオインク溶液および前記緩衝液を表面上に直接噴霧する
ように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記バイオインク溶液がペプチド溶液である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記ヒドロゲルがペプチドヒドロゲルである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記マイクロミキサー(240)が流体ダクト(110A、110B、210)内にある、請求項
4に記載のデバイス。
【請求項21】
前記表面
が創傷部位である、請求項
17に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ノズル(122、222)がマイクロ流体チャネル(110B、210)を含む、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、3D物体を構築するためのデバイスおよび方法に関する。本発明は、さらに、ヒドロゲルを得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
3Dプリンティングテクノロジーを、例えば、医薬分野および組織工学分野において組織様構造体を構築するために適用することができる。一般に、これらの方法は、3Dバイオプリンティングと呼ばれる。典型的には、合成(例えば、ポリマー)または天然のプリンティングインクが使用される。また、アルギネートなどの植物由来材料を使用することができる。特に、天然材料を使用する場合、バッチ毎に大きなばらつきがある可能性があり、このばらつきは、バイオプリントされた3D構造体の再現性および持続可能性に影響を及ぼす。
【0003】
3Dバイオプリンティングでは、通常、3Dでプリントするためにプレポリマー粘稠溶液が使用され、プリント後、3D構築物の重合のためにイニシエーターまたは(UVまたは可視)光のいずれかが使用される。バイオインクが3Dバイオプリンティングに適切であるためには、いくつかの重要な要因がある。これらの要因には、生体適合性、生物模倣構造、生分解性、多孔度、および機械的強度が含まれる。
【0004】
近年、3Dバイオプリンティングは進歩しているが、3D物体をプリントするためのデバイスおよび方法は依然として改善の余地がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の目的は、3D物体を構築するためのデバイスおよび方法であって、3D物体を構築するためのデバイスおよび3D物体を構築するための方法が先行技術の1つまたは複数の問題を克服する、デバイスおよび方法を提供することである。
【0006】
本発明の第1の態様は、メモリに保存された物体の描写(representation)から3D物体を構築するためのデバイスであって、
-バイオインク溶液、特にペプチド溶液を取り込むように構成された第1の入口、
-前述のバイオインク溶液のゲル化、好ましくは、前述のバイオインク溶液の即時ゲル化を誘導することができる緩衝液を取り込むように構成された第2の入口、
-分散物を取り込むように構成された第3の入口、
-ヒドロゲル、特にペプチドヒドロゲルを得るために前述のバイオインク溶液、前述の緩衝液、および前述の分散物を混合するための流体ダクト、および
-前述の3D物体を構築するためにヒドロゲル、特にペプチドヒドロゲルを排出するように構成されたノズル
を含むデバイスを提供する。
【0007】
デバイスは、所望の三次元構造を有する3D物体を構築するようにノズルをガイドする3Dアームを含み得る。物体の描写を保存するメモリは、デバイスの一部であり得る。他の実施形態では、メモリは、デバイスの外部メモリである。
【0008】
好ましくは、デバイスは、2つまたはそれを超えるアームを含み、これらのアームは、三次元に移動することができ、少なくとも2つまたは3つの軸を含み得る。複数のロボットアームを組み込むことにより、異なる材料を同時にプリントすることが可能であり、したがって、総プリント時間を短縮することができる。
【0009】
実施形態では、第1の入口を、バイオインク溶液を有するタンクに取り付けることができ、そして/または第2の入口を、緩衝液を有するタンクに取り付けることができる。緩衝液は、特に、リン酸緩衝液であり得る。
【0010】
バイオインクは、細胞外基質環境を模倣する材料を指す。バイオインクは、哺乳動物細胞の接着、増殖、および分化を支持するのに適切であり得る。バイオインクは、さらなる製造プロセス(例えば、3Dプリンティング)中にフィラメントとして堆積する能力を有し得る。
【0011】
バイオインク溶液は、ペプチドが天然アミノ酸配列ではなく合成アミノ酸配列から作製されたペプチド溶液であり得る。かかるバイオインクは、身体様材料に酷似させることができ、したがって、免疫学的問題および炎症の可能性が回避される。
【0012】
流体ダクトは、マイクロ流体チャネルであり得る。特に、流体ダクトの直径は、1000μm未満、好ましくは200μm未満であり得る。
【0013】
第1の態様のデバイスを、ペプチドベースのバイオインクと共に使用することができ、このデバイスは、3Dバイオプリンティングのための固有かつ新規の組み合わせを提供する。ペプチドベースのバイオインクの利点は、これらのインクが合成アミノ酸配列であり、身体様材料に酷似していることである。特に、即時ゲル化が可能な優れた物理的および化学的性質を有する、天然ではない合成の、対費用効果の高いペプチドバイオインクを提供することができる。
【0014】
物体の描写は、バイオインク溶液と緩衝液との間の混合レベルについての情報を含み得る。例えば、描写は、物体の第1の領域において、バイオインク溶液と緩衝液との間で2:1の比を使用すべきであり、第2の領域の領域において、バイオインク溶液と緩衝液との間で1:1の比を使用すべきであるという情報を含み得る。
【0015】
描写はまた、ペプチドヒドロゲルを排出するために使用すべき圧力または流速についての情報を含み得る。
【0016】
第1の態様のデバイスを使用して、適切なpH、イオン組成、および容積モル濃度を用いた最適な生理学的環境で3Dの組織足場または構造体を作製することができ、したがって、ネイティブな細胞の機能が保護され、化学的イニシエーターまたは光重合(UV光または可視光での処理)を使用する既存の印刷デバイスを超える利点が得られる。
【0017】
ペプチドバイオインクはまた、3D構造体中に、種々の機能を果たすことができる異なる材料(例えば、ペプチド微粒子(マイクロ粒子)またはナノ粒子、金ナノ粒子または銀ナノ粒子、ナノワイヤ、グラフェン、カーボンナノチューブ、および量子ドット)をプリントすることが可能である。例えば、構築された構造体を、ペプチドヒドロゲルの画像化、センシング、触媒作用、および機械的性質の変化のために使用することができる。ナノ材料プリントの多用途性は、量子ドットのプリントおよび3Dプリントされた構造体中の銀ナノ粒子のin-situ合成によって証明される。
【0018】
第1の態様のデバイスは、材料科学分野および生体医用工学分野(再生医学、組織工学、創傷治癒(創傷部位でのプリンティング)、組織および臓器のプリンティング、補綴学、医療移植片、in vitroモデル、ならびに薬物試験およびバイオセンシングのための3D組織モデルなど)において適用することができる。
【0019】
第1の態様のデバイスを、プリントした組織構築物を直ちに必要とする患者に提供するために、手術室で手術中に直接使用することもできる。第1の態様のデバイスに基づいたプラットフォームは、プリンティングデバイスが物体の画像を撮影し、これを使用者の仕様にしたがってプリントすることが可能な3D画像再構築システムも含み得る。
【0020】
好ましくは、ノズルは流体ダクトを含む。好ましくは、流体ダクトは、ノズル内に配置されている。例えば、流体ダクトを、ノズルの軸に沿って配置することができる。流体ダクトを、ノズルの内側で終了するように配置することができる。
【0021】
第1の態様の3D物体をプリントするためのデバイスの第1の実装では、流体ダクトは、バイオインク-分散物混合物を得るためにバイオインク溶液および分散物を混合するための第1の領域ならびにバイオインク-分散物混合物を緩衝液と混合するための第2の領域を含む。
【0022】
第1の態様の3D物体をプリントするためのデバイスの第2の実装では、分散物は、細胞培養培地を含む。細胞培養培地は、例えば、初代ヒト皮膚線維芽細胞を含むことができる。
【0023】
好ましくは、細胞培養培地は、複数の細胞型を含む。他の実施形態では、細胞培養培地は、たった1つの細胞型を含む。
【0024】
第1の態様の3D物体をプリントするためのデバイスの第3の実装では、分散物は、マイクロ粒子および/またはナノ粒子、好ましくはペプチドマイクロ粒子、ペプチドナノ粒子、銀ナノ粒子、金ナノ粒子、ナノワイヤ、量子ドット、および/またはカーボンナノチューブを含む。
【0025】
異なる薬物を装填したペプチドマイクロ粒子またはナノ粒子を、3Dプリントした構造体中の薬物送達を制御するために使用することができる。銀ナノ粒子、金ナノ粒子、ナノワイヤ、量子ドット、およびカーボンナノチューブなどの他のタイプのナノ粒子を使用する利点は、これらのナノ粒子が3Dプリントしたペプチドヒドロゲル構造体に画像化能、センシング能、および触媒能を付与することができることである。
【0026】
第1の態様の3D物体をプリントするためのデバイスの第4の実装では、複数の細胞型がペプチドマイクロ粒子中に封入され、そして/またはペプチドマイクロ粒子上、特に、ペプチドマイクロ粒子表面上に固定化される。
【0027】
ペプチドマイクロビーズ中の複数の細胞の封入およびその後のペプチドヒドロゲルを用いた3Dプリンティングの利点により、3D構築物中に異なる細胞型を正確に配置可能である。これにより、3Dバイオプリントした構築物に必要な3Dプリントした構築物の血管新生を増加させることが可能である。
【0028】
第1の態様の3D物体をプリントするためのデバイスのさらなる実装では、デバイスは、マイクロ流体の流体ダクトを加熱するように構成された加熱モジュールをさらに含む。
【0029】
加熱モジュールは、ノズルまたは加熱ジャケット周囲を包むように巻きつけたコイルを含み得る。加熱モジュールを、流体ダクトを60℃超、好ましくは80℃超まで加熱するように構成することができる。
【0030】
第1の態様のデバイスのさらなる実装では、デバイスは、マイクロミキサーをさらに含む。前述のマイクロミキサーを使用して、3Dバイオプリントした構築物の全域に細胞がより均一に分布するようにペプチド/バイオインク溶液および細胞の混合を強化することができる。前述のマイクロミキサーを、バイオインク溶液および細胞/分散物を混合するために流体ダクト中、特に、前述の第1の領域中に配置して、バイオインク-分散物混合物を得ることができる。
【0031】
デバイスはまた、加熱モジュールおよびマイクロミキサーを含み得る。
【0032】
第1の態様のデバイスのさらなる実装では、デバイスは、マイクロ流体の流体ダクトを照射するように構成された1つまたは複数の発光体をさらに含む。
【0033】
発光体を、他の構成要素を加熱することなくペプチドヒドロゲルを加熱するように構成することができるか、より迅速なゲル化のための化学的プロセスを開始するために使用することができる。特に、流体ダクトを、発光体からの光が流体ダクトを通過することができるか、ノズル出口の端部に光の焦点を合わせることができるように透明な材料で取り囲むことができる。
【0034】
第1の態様の3D物体をプリントするためのデバイスのさらなる実装では、発光体は、第1の波長を有する第1のLEDおよび前述の第1の波長と異なる第2の波長を有する第2のLEDを含む。
【0035】
デバイスを、第1および第2のLEDを個別に切り替えられるように構成することができる。したがって、異なる光吸収スペクトルを有する流体ダクト中の異なる構成要素を、個別に加熱または活性化することができる。
【0036】
第1の態様の3D物体をプリントするためのデバイスのさらなる実装では、バイオインク溶液は、1つまたはいくつかのペプチドを含み、前述のペプチドは、好ましくは、以下:
a)Zo-XnBXmW-Z’p、および
b)Zo-WXmBXn-Z’p、
(式中、
ZはN末端保護基であり、Z’はC末端保護基であり、ここで、oおよびpは、0および1から独立して選択され;
Xは、各存在で独立して、イソロイシン、ノルロイシン、ロイシン、バリン、アラニン、グリシン、ホモアリルグリシン、およびホモプロパルギルグリシンから選択される脂肪族アミノ酸であり、ここで、nおよびmは、0、1、および2から独立して選択される整数であり、但し、m+n≦2であり、
Bは、フェニルアラニンおよびトリプトファンから選択される芳香族アミノ酸であるか、前述の芳香族アミノ酸の脂肪族対応物であり、前述の脂肪族対応物は、シクロヘキシルアラニン、4-ヒドロキシ-シクロヘキシルアラニン、3,4-ジヒドロキシシクロヘキシルアラニンから選択され、
【0037】
Wは、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、5-N-エチル-グルタミン(テアニン)、シトルリン、チオ-シトルリン、システイン、ホモシステイン、メチオニン、エチオニン、セレノメチオニン、テルロメチオニン、トレオニン、アロトレオニン、セリン、ホモセリン、チロシン、ヒスチジン、アルギニン、ホモアルギニン、オルニチン、リジン、N(6)-カルボキシメチルリジン、ヒスチジン、2,4-ジアミノ酪酸(Dab)、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、およびN(6)-カルボキシメチルリジンから選択される極性アミノ酸であり、
前述の極性アミノ酸は、好ましくは、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、トレオニン、メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、オルニチン(Orn)、2,4-ジアミノ酪酸(Dab)、および2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)からなる群から選択される)から選択される一般式を有する。
【0038】
かかるペプチドの例は、IVZK、IVFK、IVYK、およびFIVKなどである。アルギネートも使用することができる。
【0039】
実験において、これらの構成要素が3Dプリンティングに特に適切であることが示された。
【0040】
本発明の第2の態様は、3D物体をプリントする方法、好ましくは、3D物体をプリントするin situ方法を指す。前述の方法は、
-バイオインク溶液、特にペプチド溶液、細胞培養培地、および前述のバイオインク溶液のゲル化を誘導することができる緩衝液を混合して、ヒドロゲル、特にペプチドヒドロゲルを得る、混合する工程、および
-前述のヒドロゲル、特に前述のペプチドヒドロゲルをノズルから排出させて、3D物体を構築する、排出する工程を含む。
【0041】
本発明の第2の態様の方法を、本発明の第1の態様の3D物体をプリントするためのデバイスによって実施することができる。本発明の第2の態様の方法のさらなる特徴または実装により、本発明の第1の態様およびその異なる実装形態にしたがって3D物体をプリントするためのデバイスの機能を発揮することができる。
【0042】
第2の態様の3D物体をプリントする方法の第1の実装では、混合する工程を、流体ダクト、特にマイクロ流体チャネル中で実施し、ここで、好ましくは、ノズルは流体ダクトを含む。
【0043】
流体ダクトは、構成要素間の混合が改善される要素を流体ダクト内に含み得る。例えば、要素を、流体ダクト内に乱流が生じて混合を改善することができるように構成することができる。
【0044】
第2の態様の3D物体をプリントする方法自体の第2の実装において、または第2の態様の第1の実装によれば、ノズルは、マイクロ流体の流体ダクトを含む。
【0045】
第2の態様の3D物体をプリントする方法自体の第3の実装において、または第2の態様の前述の実装のうちのいずれかによれば、ペプチドヒドロゲルを排出するために空気圧および/またはマイクロ流体ポンプを使用する。
【0046】
第2の態様の3D物体をプリントする方法自体の第4の実装において、または第2の態様の前述の実装のうちのいずれかによれば、前述の方法は、3Dソース物体をスキャンする初期工程をさらに含む。
【0047】
3Dソース物体の3Dスキャンを得ることにより、前述の方法は、ソース物体に酷似する標的物体を作製することができ、したがって、3Dコピー法としての役割を果たし得る。
【0048】
第2の態様の3D物体をプリントする方法自体の第5の実装において、または第2の態様の前述の実装のうちのいずれかによれば、細胞培養培地は複数の細胞型を含む。
【0049】
第2の態様の3D物体をプリントする方法のさらなる実装では、分散物は、マイクロ粒子および/またはナノ粒子、好ましくは、ペプチドマイクロ粒子、ペプチドナノ粒子、銀ナノ粒子、金ナノ粒子、ナノワイヤ、量子ドット、および/またはカーボンナノチューブを含む。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明の方法を、生理学的条件下で行う。
【0051】
本発明の方法で用いる即時ゲル化を誘導することができる緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水または塩(単数または複数)(塩化ナトリウムまたは塩化カルシウムなど)を含む緩衝液(単数または複数)であり得る。
【0052】
3D物体をin situでプリントする方法の1つの実装では、バイオインク溶液は、上記定義のペプチド溶液である。
【0053】
本発明のさらなる態様は、ヒドロゲルを得る方法であって、
-バイオインク溶液、特にペプチド溶液を、第1の入口(410)を介して第1のエアブラシ(401)中に供給する工程、
-前述のバイオインク溶液のヒドロゲル、特にペプチドヒドロゲルへの即時ゲル化を誘導することができる緩衝液を、第2の入口(420)を介して第2のエアブラシ(402)中に供給する工程、および
-前述のバイオインク溶液および前述の緩衝液を、前述の第1のおよび前述の第2のエアブラシ(401、402)のノズル(411、421)を介して、表面上の同一部位に同時に吹き付け、それにより、前述のヒドロゲル、特に前述のペプチドヒドロゲルを作製する、吹き付ける工程
を含む方法を指す。
【0054】
ヒドロゲルを得る方法の第1の実装では、バイオインク溶液は、本明細書の上記に規定されるペプチド溶液である。
【0055】
ヒドロゲルを得る方法のさらなる実装では、即時ゲル化を誘導することができる緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水または塩(単数または複数)(塩化ナトリウムまたは塩化カルシウムなど)を含む緩衝液(単数または複数)である。
【0056】
ヒドロゲルを得る方法のさらなる実装では、エアブラシを、本発明の第1の態様として本明細書の上記に規定されるデバイスと共に使用する。
【0057】
エアブラシを、本明細書中に規定される本発明のデバイスと共に使用することができる。エアブラシを、ハンドヘルドデバイスとして使用することもできる。
【0058】
バイオインク溶液および緩衝液を、好ましくは、ヒドロゲルを形成する表面(創傷部位など)上に直接噴霧する。
【0059】
特に、エアブラシを、表面(創傷部位など)上へのペプチドヒドロゲルの直接噴霧のための
図4A、4B、および4Cに示すロボットアームなどのデバイスと共に使用することができる。エアブラシアセンブリを、表面(創傷部位など)上にペプチドヒドロゲルを直接噴霧するためのハンドヘルドデバイスとして使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
発明の実施形態の技術的特徴をより明確に例証するために、実施形態の説明のために提供した添付の図面を以下に示す。以下の説明中の添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態にすぎず、特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態の修正が可能である。
【
図1-1】
図1Aは、3Dバイオプリンターを使用したペプチドヒドロゲル形成の略図である。
図1Bは、マイクロ流体ポンプに取り付けることができる3つの異なる入口を含むマイクロ流体プリントノズルの2枚の写真である。
図1Cは、ロボットアーム上に装着した特別に設計されたホルダー中のマイクロ流体プリンティングデバイスを示す。
図1Dは、3Dバイオプリンターを使用したIVZKペプチドバイオインクおよびヒト皮膚線維芽細胞を含むプリントした構造体を示す。
【
図1-2】
図1Eは、3D物体を構築するためのデバイスの略図である。
【
図2】
図2は、3D物体を構築するための2つのデバイスを示し、ここで、第1のデバイスは加熱ユニットを含み、第2のデバイスは光処理モジュールを含む。
【
図3】
図3Aは、
図1Aにも示したペプチドバイオインクの3Dバイオプリンティングのために開発したデバイス/ノズルの略図である。
図3Bは、3Dバイオプリントした構築物の全域に細胞がより均一に分布するようにペプチドおよび細胞の混合を強化するために使用することができるマイクロミキサー(240)を含むデバイス/ノズルの略図である。
図3C~Hは、デバイス/ノズルの異なる領域、すなわち、以下: (C)マイクロミキサー(240)および主ノズル、 (D)マイクロミキサー(240)、緩衝液ノズル、および主ノズル、 (E)緩衝液ノズルおよび主ノズル、 (F)ヒドロゲルを形成するための細胞、ペプチド、および緩衝液の混合、(G)および(H)必要に応じてペプチドゲル化プロセスの温度を制御するための、デバイス/ノズル(A)および(B)上のマイクロヒーター(220)分解図を示す。
【
図4-1】
図4Aは、異なるペプチドまたは細胞型のプリントのための複数のノズルを備えた複数のロボットアームを含む3Dバイオプリンタープラットフォームの略図である。
【
図4-2】
図4B ロボットアーム3Dバイオプリンティングの装備。この図は、バイオセーフティキャビネット内の、マイクロ流体ポンプ、ロボットアーム、およびプリンティングノズルを示すロボット3Dバイオプリンターの写真を示す。全てのバイオプリンティング実験を、バイオセーフティキャビネット内で実施した。
【
図4-3】
図4C 3D構造体を作製するための、市販のデュアルアームロボットシステム上に設置し、マイクロ流体ポンプと一体化したバイオプリンティングノズルの模式図。3Dスキャナは、構造体をスキャンし、情報をコンピュータに送信し、コンピュータ内のソフトウェアが3D構造体の画像を再構築する。次いで、ロボットアームが3D構造体のデザインにしたがってノズルを移動させて最終的な3D形状を作製する。ステージは温度制御されており、可動式で異なる方向に移動し、異なる方向に回転することもできる。
【
図5】
図5は、ペプチドベースのバイオインク(IVFKおよびIVZK)の円形、四角形、格子、およびレター/テキストなどの異なる形状への印刷適性を示す。全図中のスケールバーは10mmである。
【
図6】
図6Aおよび6Bは、ペプチドベースのバイオインク(IVZK)を使用してバイオプリントしたヒト皮膚線維芽細胞の蛍光共焦点顕微鏡法の2Dおよび3D画像である。
【
図7】
図7は、バイオインクとしてIVFKペプチド、IVZKペプチド、およびアルギネートを使用して3Dバイオプリントしたヒト皮膚線維芽細胞におけるATPレベルから測定した細胞生存度アッセイである。
【
図8】
図8 3Dバイオプリントしたペプチドヒドロゲル中のナノ材料のin-situ合成および封入。
図8Aは、3DバイオプリントしたIVZKペプチドバイオインクの内側にin-situで生成した銀ナノ粒子を示す。1mM硝酸銀溶液をIVZKバイオインクと混合後、UV曝露によるバイオプリンティングを254nmで10分間行った。バイオプリントされたテキストの黄色がかった色は、銀ナノ粒子の形成に起因する。
図8B、Cは、銀ナノ粒子の透過型電子顕微鏡法(TEM)画像を示す。imageJを使用してTEM画像から計算した平均直径は4.4nmであった。
図8D、E 365nmでのUV励起を使用しない場合(D)および使用した場合(E)の、ペプチド溶液中に緑色量子ドットを封入した後の3DバイオプリントしたIVZKペプチドバイオインク。
図8F 足場内側のペプチド繊維上に吸着している緑色量子ドットからの放出を示し、3Dバイオプリントしたペプチドバイオインク(IVZK)の繊維状網を明確に示している共焦点顕微鏡法画像。
【
図9-1】
図9は、ヒト皮膚線維芽細胞の代表的な蛍光共焦点顕微鏡法画像を示す。
【
図9-2】
図9は、ヒト皮膚線維芽細胞の代表的な蛍光共焦点顕微鏡法画像を示す。
【
図10】
図10は、3Dプリントしたペプチドヒドロゲル構築物の走査型電子顕微鏡法研究を示す。
【
図11-1】
図11A 異なる細胞培養日数でIVFK、IVZK、およびアルギネート-ゼラチンの各バイオインクを使用して3DバイオプリントしたHDFn細胞の蛍光共焦点顕微鏡法画像(核を青色で示し、F-アクチンを赤色で示し、ビンキュリンを緑色で示す)。
【
図11-2】
図11B 細胞を培地中で21日間培養した後の1日目および21日目にプリントしたヒドロゲルの写真。
図11C 種々の時点でIVFK、IVZK、およびアルギネート-ゼラチンの各バイオインクで3DバイオプリントしたHDFn細胞の3D細胞生存度アッセイ。
【
図12】
図12A 異なる細胞培養日数でIVZKバイオインクおよびアルギネート-ゼラチンバイオインクを使用して3Dバイオプリントしたヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)の蛍光共焦点顕微鏡法画像(核を青色で示し、F-アクチンを赤色で示し、ビンキュリンを緑色で示す)。
図12B 種々の時点でIVZKバイオインクおよびアルギネート-ゼラチンバイオインクで3DバイオプリントしたBM-MSC細胞の3D細胞生存度アッセイ。
【
図13-1】
図13A エアブラシを使用してペプチドおよびリン酸緩衝液の両方を噴霧するための作用様式の略図。エアブラシのノズルは、ペプチド溶液およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の両方の流れがノズルから排出され、一定の位置で組み合わされてペプチドヒドロゲルが作製されるような角度に整列されている。
【
図13-2】
図13B Perspexシートから作製されたケーシング中に、両ノズルからの流れが1つの位置で合流するような角度で組み立てられた2つのエアスプレーブラシのノズルの写真。1つのノズルはペプチド溶液(5mg/ml IVZK)を含み、第2のノズルはリン酸緩衝液(10×)を含んでいた。
【
図13-3】
図13C シリコン表面に噴霧したペプチドヒドロゲルの走査型電子顕微鏡写真(SEM)。SEM画像により、ペプチド繊維網の形成が確認された。
【発明を実施するための形態】
【0061】
実施形態の詳細な説明
図1Aは、3Dバイオプリンターを使用したペプチドヒドロゲル形成の略図である。バイオインク溶液および異なる細胞型を含む細胞培養培地を、第1の領域で混合する。次いで、混合物を、マイクロ流体の流体ダクトである第2の領域中にて緩衝液と混合してゲル化を誘導し、ペプチドヒドロゲルを形成する。次いで、ペプチドヒドロゲルを出口ノズルから排出する。緩衝液は、リン酸緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))であり得る。
【0062】
生物学的適用のためにペプチドバイオインクを使用する利点には、非身体様材料(例えば、ポリマー)または天然であるがヒトをバックグラウンドとしない不明確な材料(甲殻類、植物などに由来するアルギネート)(バッチ毎に大きなばらつきがあり、バイオプリントした3D構造体の持続可能性に影響を及ぼす)と比較して、天然の身体様特徴に類似することが含まれる。また、生体官能化は、ポリマー構造体よりもペプチド化合物に円滑に適合し、付与することができる。ペプチドバイオインクはまた、異なる材料(例えば、ペプチドマイクロ粒子またはナノ粒子、金ナノ粒子または銀ナノ粒子、ナノワイヤ、グラフェン、カーボンナノチューブ、および量子ドット)に添加し、引き続いて3D構造体にプリントすることが可能であり、それにより、種々の機能を発揮することができる。例えば、構築された構造体を、ペプチドヒドロゲルの画像化、センシング、薬物送達、触媒、および機械的性質の調整のために使用することができる。
【0063】
図1Bは、マイクロ流体ポンプに取り付けることができる3つの異なる入口を含むマイクロ流体プリントノズルの写真である。3D構築物全体に細胞を均一に分布させるためのノズルを取り付けた内径250μmの管ループ中に細胞を予め装填した。
【0064】
図1Cは、3D構造体をプリントすることができる市販のロボットアーム上に装着した特別に設計されたホルダー中のマイクロ流体プリンティングデバイスを示す。ペトリ皿に接近したノズルニードルは、ペプチドヒドロゲルバイオインクを3D円形にプリントするために使用される。
【0065】
図1Dは、3Dバイオプリンティングデバイスを使用してプリントしたIVZKペプチドバイオインクおよびヒト皮膚線維芽細胞を含む構造体を示す。
【0066】
図1Eは、3D物体を構築するためのデバイス100を詳細に示す。このデバイスは、バイオインク溶液、リン酸緩衝生理食塩水、および分散物(例えば、細胞培養培地)を取り込むための3つの入口112、114、116を含む。3つの入口112、114、116は、流体ダクト110に取り付けられており、流体ダクト110は、第1の部分110Aおよび第2の部分110Bを含む。第1の入口112由来のバイオインク溶液および第3の入口116由来の分散物が共に第1の部分110Aに運ばれる。次いで、これら2つの構成要素の混合物が第2の部分110Bを押し進み、第2の入口114由来のリン酸緩衝液と合流する。第2の部分110Bは、出口ノズル122に向かうマイクロ流体の流体ダクトを形成し、ここで混合物がデバイス100から排出される。本明細書中の流体ダクトという用語は、バイオインクおよび他の構成要素を導くか運搬し、他の構成要素(単数または複数)と混合することができる任意の管、カナル、パイプ、または導管を指す。
【0067】
図2は、3D物体を構築するための2つのデバイス200A、200Bを示す。両方のデバイスは、バイオインク溶液を取り込むための第1の入口212、リン酸緩衝生理食塩水を取り込むための第2の入口214、および細胞培養培地に溶解した異なる細胞型を取り込むための第3の入口216を含む。デバイス200A、200Bはまた、ノズル222内に配置した流体ダクト210を含む。流体ダクト210は、バイオインク溶液、リン酸緩衝生理食塩水、および細胞培養培地を受け取る。3つの構成要素を流体ダクト内で混合してペプチドヒドロゲルを得る。次いで、ペプチドヒドロゲルがノズル222の出口から排出される。
【0068】
第1のデバイス200Aは、加熱ユニット220を含み、この加熱ユニットは、ノズル222周囲を包み、したがって、流体ダクト210を包んでいる加熱ワイヤを含む。
【0069】
第2のデバイス200Bは、発光体230を含み、この発光体は、ノズル内の流体ダクト210を照射するように構成されている。ノズル222は、完全に透明な材料から作製されている。他の実施形態では、流体ダクト内の材料に光を照射することができるように、ノズル222の一部のみが透明である。
【0070】
図3は、デバイス/ノズルの異なるデザインを示す。2タイプのデバイス/ノズルを使用してペプチドを3Dバイオプリントすることができる。デバイス/ノズル1(
図3A、
図1Aにも示す)は、2つの混合領域を含む。第1の領域では、ペプチド溶液および細胞を含む細胞培養培地が混合され、第2の領域では、PBSが導入されてペプチドの即時ゲル化が誘導され、その結果、細胞がペプチドヒドロゲル内に封入される(
図3A)。原理上は、この方法を使用して任意の細胞型を3Dバイオプリンティングのために使用することができる。デバイス/ノズル2(
図3B)は、マイクロミキサー(240)を含み、このマイクロミキサーは、ペプチドおよび細胞の混合を強化して3D構築物の内側により均一に細胞を分布させることができる。
図3C~Fは、異なるデバイス/ノズル領域のさらなる詳細を示す。
図3Gおよび
図3Hは、
図3Aおよび
図3Bに示すデバイス/ノズル上の、デバイス/ノズルの温度を制御するためのマイクロヒーター(220)のアセンブリを示す。
【0071】
図4Aは、異なるペプチド型または細胞型のプリントのためのプリンティングデバイス344A、344Bを備えた2つのロボットアーム342A、342を含む3Dバイオプリンティングプラットフォーム300の略図である。
図4Aに示すプリンティングデバイス344A、344Bを、
図2に示すように実装することができる。
【0072】
3Dバイオプリンティングプラットフォーム300は、プリントすべき物体310をスキャンするように構成された3Dスキャナ320を含む。物体310のスキャン後、3Dスキャナは、物体の描写322を、ロボットアーム342A、342B、マイクロ流体ポンプ340、およびプリンティングデバイス344A、344Bを制御するための制御モジュール330に伝送する。プリンティングデバイス344A、344Bは、加熱および冷却する自動化ステージ350上に標的物体352をプリントするように配置されている。自動化ステージ350は、例えば、ペトリ皿または多穴プレート中にプリントするための複数のホルダーを含み得る。本発明の3Dプリンティングおよびデバイスおよび方法が任意の特定のまたは具体的な3Dパターンや3D物体に制限されないことに留意されたい。本発明を、任意の3D物体のために使用することができる。
【0073】
プリンティングデバイス344A、344Bは、フレキシブルチューブ346を介してマイクロ流体ポンプに取り付けられている。3つの構成要素をプリンティングデバイス344A、344B中で混合することができるように、3つの構成要素の各々に1つの管が存在する。
【0074】
他の実施形態では、単一のロボットアームは、複数のノズルを備えることができる。2つのみのロボットアームを
図4Aに示す。複数の細胞型をプリントするためのさらなるロボットアームを含めることができる。
【0075】
プリンティングプラットフォーム300を、ペプチドベースのバイオインクと組み合わせて使用することができ、異なる細胞型または他の生体化合物を優れた生体適合性を有する3D構造体に連続的にプリントすることが可能である。
【0076】
プリンティングプロセスは、マイクロ流体ポンプまたは空気圧を使用してバイオインク溶液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、および異なる細胞型(例えば、ヒト皮膚線維芽細胞)を含む細胞培養培地を個別の流体ダクト中に移動させ、混合後、細胞を含むペプチドベースのヒドロゲルが3Dバイオプリンティング用のノズルまたは出口から押し出される工程に基づき得る。
【0077】
ロボットアーム342A、342Bは、ノズルから押し出されたペプチドバイオインクを使用して、3Dスキャナによって送信された物体情報をプリンするために、3Dデザインに応じてX、Y、およびZ方向に移動する。2つから3つまたはそれを超えるロボットアームの組み合わせを使用して、複数のペプチドバイオインクを並行してプリントすることができるか、複数の細胞型を同時または異なる時間間隔で1つずつプリントすることができる。さらに、3D構造体をプリントするために、1つのロボットアーム上に、例えば、2つまたは3つのノズルを装着することができる。このような方法で、機能が完全な臓器/組織構築物に必要な複数の細胞機能を単一の3Dバイオプリントした構造体中に導入することができる。
【0078】
ロボットアーム342A、342Bの各々は、4つのヒンジ345A、345Bを含み、したがって、プリンティングデバイス344A、344Bを配置するときに高い可動性が得られる。
【0079】
現在利用できる3Dバイオプリンターは、主にリニアシステム(インクジェットバイオプリンターシステムなど)に基づいており、このシステムは三次元xyz移動に制限される。したがって、これらのシステムにより3自由度(DOF)または3軸システムが得られる。ロボットシステムは、DOF数を増加させることによって可動性を増大させることができるというリニアシステムを超える利点を有する。ロボットシステムは、3軸ロボットから4軸ロボットなど、最大7軸ロボットにすることが可能である。
図4Aのシステムは、2つのロボットアームを有し、したがって、さらなる自由度が得られ、リニアシステムまたは1ロボットアームシステムと比較したときに移動角度を追加することが可能である。
図4Aのシステムの変形形態では、ロボットアームのベースもアーム自体の周囲を回転することができ、13軸または14軸のプリンティングシステムに可動性が増大される。
【0080】
ロボットアームに迅速な回転運動が組み込まれているので、本システムは、より迅速で円滑なプリントが可能である。自由度を追加することにより、プリントされたバイオマテリアルの品質が向上する。複数のロボットアームに、異なるタイプのバイオインクまたは細胞型をプリントするための複数のノズルを具備することができる。ロボットアームはまた、既存の3Dバイオプリンターよりも小型であり、より容易に運搬できる。これは、異なる手術室で操作する場合のプリンターの輸送において有利である。このシステムを、形成手術、再建手術、および美顔整形手術に適用するために使用することができる。
【0081】
図4Bは、ポンプを使用した市販のロボットアーム上のデバイス/ノズルの別の組込み例を示す。さらなる例としてこの装備を使用してヒト皮膚線維芽細胞をIVZKおよびIVFKペプチド溶液と共に3Dバイオプリントした。
【0082】
より詳細には、ロボットアーム3Dバイオプリンターを使用して、正常ヒト皮膚線維芽細胞(HDFn)の3Dバイオプリンティングを行った。マイクロ流体ポンプ、プリンティングノズル、およびロボットアームを一体化することによってバイオプリンターを開発した(
図4B)。市販のロボットアーム3Dプリンター(Dobot Magician,Dobot)を、ロボットアームのポリマー押出し機をバイオプリンティングノズルと交換することによってバイオプリンターに変換した。マイクロ流体プリントノズルを、異なる内径を有する2つの異なる注射針を使用して調製した(
図4B)。主ニードル(18ゲージ)は内径=840μmを有し、上部ニードルは、内径80μm(34ゲージ)および外径190μmを有する。主ニードルの側部に2つの穴を作製し、細胞を流すためのPTFE管の外径と同一のサイズの穴を作製することにより、内径304μmのPTFE管(PTFE#30AWG薄肉チューブ,Cole Parmer)を、主ノズルの片側から挿入した。ニードルの反対側に、内径550μmのPTFE管(PTFE#24AWG薄肉チューブ、Cole Parmer)を挿入し、ペプチド溶液を流すために使用した。透明なエポキシを使用して管および上部ノズルを密封した。プリンティングノズルは、3つの入口および1つの出口を有する。異なる直径のニードルの組み合わせを使用して、異なる直径を有する異なるプリンティングノズルを調製することもできる。ペプチド溶液および細胞培養培地(異なる細胞型を含む)の入口のための管を、両方の流体をこの領域で混合することができるように主ニードルの側壁に挿入した。第2のニードル(34G)を、このニードル由来の溶液(10×PBS)が他の2つの溶液と混合して主ニードルの端部付近にペプチドヒドロゲルが作製されるように、上部から主ニードル(18ゲージ)の内側に挿入した。主ニードルの長さは2.5cmであり、細胞を有する緩衝液およびペプチドの混合領域は、およそ2.0cmであった。細胞を有する緩衝液およびペプチドの混合領域を、ペプチドヒドロゲルが作製されるように調整することができる。長さ2.0cmは、ノズル内側のペプチドヒドロゲルの形成に応じて変動させることができる。
【0083】
3D構造体を作製するためにマイクロ流体ポンプと一体化した市販のデュアルアームロボットシステムを使用したさらなる装備を
図4Cに示す。3Dスキャナは、構造体をスキャンし、情報をコンピュータに送信し、コンピュータ内のソフトウェアが3D構造体の画像を再構築する。次いで、ロボットアームが3D構造体のデザインにしたがってノズルを移動させて最終的な3D形状を作製する。ステージは温度制御されており、可動式で異なる方向に移動し、異なる方向に回転することもできる。
【0084】
さらに、IVZKおよびIVFKなどのペプチドを、エアスプレーノズルの組み合わせを使用して、異なる表面上に直接噴霧することもできる。
図13Aは、両方の溶液(ペプチド溶液およびリン酸緩衝生理食塩水)が一定の位置で合流してペプチドヒドロゲルを形成するような角度で2つのエアブラシノズルを使用して噴霧するシステムの略図を示す。
図13Bは、かかるエアスプレーノズルの例を示す。
図13Cは、シリコンウエハー上に噴霧したIVZKペプチドの走査型電子顕微鏡法(SEM)画像を示す。SEM画像は、エアスプレーノズルを使用したペプチド繊維網の形成を明確に示していた。異なるペプチドを単独か異なる細胞型と組み合わせて創傷表面上に自動的に直接コーティングするために、スプレーノズルを、ロボットアームシステム(
図4A~Cに示すシステムなど)上に組み込むことができる。スプレーノズルを、創傷上に直接噴霧するためのハンドヘルドデバイスとして使用することもできる。
【0085】
3D/4Dバイオプリンティング法を使用した技術の例を示すための実験を行った。
【0086】
ペプチド溶液およびリン酸緩衝液の調製
全てのペプチド(Bachem,Germany)溶液を、異なる量のペプチド(IVFKおよびIVZK)を1mlのMilli-Q水に溶解し、ボルテックスによって30秒間混合して均一な溶液を得ることによって新たに調製した。この実施例では、15mgの各ペプチドをMilli-Q水に溶解した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、10倍濃縮)をSigmaから入手し、プリンティングプロセスで入手時の状態で使用した。
【0087】
IVFKおよびIVZKペプチドの相対分子質量はそれぞれ546.71および552.76であり、純度は97.1%および97.2%(HPLC法によって決定)であった。
【0088】
細胞培養
新生児ヒト皮膚線維芽細胞(HDFn、C0045C)を、Thermo Fisher Scientific,USAから購入した。これらの細胞を、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補足した培地106(Thermo Fisher Scientific,USA)を使用して最初に培養した。T175またはT75の細胞培養フラスコ(Corning,USA)を使用して、95%空気および5%CO2を有する加湿インキュベーター中にて37℃で細胞を維持した。およそ80%コンフルエンスでのトリプシン処理によって細胞を継代した。細胞培養培地を48時間毎に置換した。
【0089】
マイクロ流体プリントノズルの作製
マイクロ流体プリントノズルを、直径100μm、150μm、230μm、300μm、450μm、500μm、600μm、700μm、800μm、1mm、および1.2mmから選択される異なる内径を有する4つの異なる注射針を使用して調製した。プリンティングノズルは、3つの入口および1つの出口を有する。各溶液(粘度)に応じて、または、書き込まれている構造体よりも薄いか広い構造体がプリントされる結果に応じて、異なる直径のニードルの組み合わせを使用して、異なる直径を有する異なるプリンティングノズルを調製することができる。出口を含む中央のニードルの両側面に2つの穴を作製した。ペプチド溶液および細胞培養培地(異なる細胞型を含む)の入口のためのニードルを、両方の流体をこの領域で混合することができるように主ニードルに挿入した。特定の長さを有する第3のニードルを、このニードル由来の溶液(10×PBS)が他の2つの溶液と混合してペプチドヒドロゲルが作製されるように、上部から挿入した。
【0090】
プリンティング手順
プリンティングは、ペプチド溶液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、および異なる細胞型などの3つの異なる構成要素を含む。ペプチドに関して、異なる濃度のIVZKペプチドまたはIVFKペプチドの溶液を、異なる量のペプチド(例えば、15mg)を秤量し、1ml Milli-Q水に溶解することによって調製した。第2の溶液は、10×PBSを含んでいた。第3の溶液は、細胞培養培地中に初代ヒト皮膚線維芽細胞を含んでいた(例えば、500μlのDMEM細胞培養培地中に400万個の細胞を含む)。初代ヒト皮膚線維芽細胞を使用して細胞プリンティングを示した。初代ヒト皮膚線維芽細胞の場合について記載のように、他の細胞型をプリンティングプロセスに同様に組み込むことができる。3つ全ての溶液を、異なる流速でシリンジポンプを使用してノズルに圧送した。バイオインクをゲル化させる界面で3つの溶液が合流し、プリンティングノズルの出口からペプチドヒドロゲルが排出されるように流速を調整した。特定の実験では、使用した流速は、皮膚線維芽細胞を含む細胞培養培地については20μl/分、ペプチド溶液については25μl/分、および10×PBSについては20μl/分であった。直径約10mmおよび厚さ約2mmの簡潔な環構造が、多層様式でのペプチドヒドロゲルの堆積によってプリントされた。異なる構造、例えば、円形および四角形および格子を、3Dプリンターまたはロボットアーム3Dプリンターを移動させることによって直ちにプリントした。
【0091】
図5は、ペプチドベースのバイオインク(IVFKおよびIVZK)の円形および四角形、格子、またはレター/テキストなどの異なる形状への印刷適性を示す。
【0092】
構築物を、35mm組織培養ペトリ皿上にプリントした。バイオプリンティング後、構築物を、ペプチドバイオインクの自己集合をさらに促進するためにバイオセーフティキャビネット中に3分間入れた。次いで、構築物を、培養培地で2回または3回穏やかに洗浄した。各皿に、3mLの培養培地を添加し、加湿インキュベーター中にて37℃、5%CO2で培養した。予め決定していた時点で、構築物を取り出し、3Dアッセイおよび蛍光共焦点顕微鏡法研究のための細胞の細胞骨格染色を実施した。
【0093】
走査型電子顕微鏡法(SEM)分析
SEM分析のために、ペプチドヒドロゲルリングを、シリコンウエハー小片(20×20mm)上に直接3Dプリントした。試料を最初に3.7%パラホルムアルデヒド溶液を用いて30分間固定した。次いで、ペプチドヒドロゲルリングを、異なる濃度のエタノール(10、20、30、40、50、60、70、80、90、99.8%)で逐次洗浄してヒドロゲルから水を除去した。試料を、臨界点乾燥機で乾燥させてエタノールを蒸発させ、ヒドロゲルの構造を保存した。この後にスパッタコーターを使用して4nmのPt/Pd金属でコーティングした。最後に、それぞれ10kVおよび2kVの加速電圧を使用したQuanta 3D FEG SEM/FIB顕微鏡およびMagellan(商標)XHR SEMを使用して試験した。
【0094】
細胞骨格染色
ヒト皮膚線維芽細胞を含む3D円形構築物の細胞骨格染色を、培養1、3、7、および14日後に異なる時間間隔で行った。簡潔に述べれば、3D構築物を3.7%パラホルムアルデヒド溶液で30分間処理して細胞を固定した。その後、細胞を冷細胞骨格緩衝液(3mM MgCl2、300mMスクロース、および0.5%TritonX-100を含むPBS溶液)中で10分間インキュベートして細胞膜を透過処理した。透過処理した細胞を、ブロッキング緩衝液(5%FBS、0.1%Tween-20、および0.02%アジ化ナトリウムを含むPBS)中にて37℃で30分間インキュベートし、その後にFITC-ファロイジン(1:200)中にて37℃で1時間インキュベートした。さらに、構築物をDAPI中にて37℃で1時間インキュベートして、細胞の核を対比染色した。蛍光共焦点顕微鏡法(Zeiss LSM 710倒立共焦点顕微鏡,Germany)を使用して、3D構築物中の標識したヒト皮膚線維芽細胞を画像化した(
図6を参照のこと)。
【0095】
図6Aは、ペプチドベースのバイオインク(IVZK)を使用してバイオプリントしたヒト皮膚線維芽細胞の蛍光共焦点顕微鏡法画像を示す。
図6Bは、ペプチドベースのバイオインク(IVZK)を使用してバイオプリントしたヒト皮膚線維芽細胞の蛍光共焦点顕微鏡法3D画像を示す。
【0096】
14日間にわたる進捗を、
図9に示す。特に、
図9は、ペプチドベースのバイオインク(IVZK)を使用してバイオプリントしたヒト皮膚線維芽細胞の代表的な蛍光共焦点顕微鏡法画像(左パネル)およびペプチドベースのバイオインク(IVZK)を使用してバイオプリントしたヒト皮膚線維芽細胞の蛍光共焦点顕微鏡法3D画像(右パネル)を示す。細胞を、蛍光顕微鏡法研究のためにF-アクチン(緑色)および核(青色)について染色した。IVZKを使用してプリントした構造体を、1、3、5、7、および14日間培養した。2Dおよび3Dの共焦点顕微鏡法画像を、同一試料上の異なる位置で撮影した。
【0097】
さらなる実験では(
図11Aおよび
図12Aを参照のこと)、培養1、3、7、14、および21日後に免疫染色を実施した。簡潔に述べれば、細胞を3.7%パラホルムアルデヒド溶液で30分間固定し、冷細胞骨格緩衝液(3mM MgCl
2、300mMスクロース、および0.5%TritonX-100を含むPBS溶液)中で10分間インキュベートして細胞膜を透過処理した。透過処理した細胞を、ブロッキング緩衝液中にて37℃で30分間インキュベートした。ブロッキング緩衝液は、5%FBS、0.1%Tween-20、および0.02%アジ化ナトリウムを含むPBSを含む。次の工程では、細胞を、抗ビンキュリン(1:100)溶液中にて37℃で1時間インキュベートし、抗マウスIgG(全分子)-FITCおよびローダミン-ファロイジン(1:200)中にて37℃で1時間さらにインキュベートした。最後に、細胞を、DAPI中にて37℃で10分間インキュベートして、核を対比染色した。蛍光色素処理した細胞を、レーザー走査型共焦点顕微鏡(Zeiss LSM710倒立共焦点顕微鏡,Germany)を使用して画像化した。(Sundaramurthi et al.,RSC Adv.,2015,5,69205‐69214)。
【0098】
3D細胞増殖アッセイ
図7は、バイオインクとしてIVFKペプチド、IVZKペプチド、およびアルギネートを使用して3Dバイオプリントしたヒト皮膚線維芽細胞におけるATPレベルから測定した細胞生存度アッセイを示す。
【0099】
CellTiter-Glo(登録商標)発光3D細胞生存度アッセイを、異なる培養日数後(1、3、7、および14日後)にヒト皮膚線維芽細胞を含む3Dプリントした構築物に対して行った。この方法を使用したATPの定量により、構築物中に存在する代謝的に活性な細胞についての情報が得られる。各時点後、3D構築物を、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で2回洗浄した。等量のCellTiter-Glo(登録商標)発光試薬および新鮮な細胞培養培地を試料に添加した。内容物を2分間混合して3Dヒドロゲル構築物を消化し、さらに10分間インキュベートした。最後に、プレートリーダー(PHERAstar FS,Germany)を使用して発光を記録した(
図7を参照のこと)。
【0100】
また、CellTiter-Glo(登録商標)発光3D細胞生存度アッセイを実施して、3Dヒドロゲル中のヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSC)の生存数を決定した。各時点後、hBMSCと共に培養したヒドロゲルを、DPBSで2回洗浄した。新鮮な培地を各ウェルに添加し、等量のCellTiter-Glo(登録商標)発光試薬もゲルに添加した。内容物を5分間混合してヒドロゲルを消化し、次いで、30分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートリーダー(PHERAstar FS,Germany)を使用して発光を記録した(
図12Bを参照のこと)。
【0101】
3D構築物中のナノ材料の組込みおよびin situ合成
本発明者らは、ペプチドバイオインク内にナノ材料をプリントすることによる、四量体ペプチドを使用した3Dバイオプリンティング法の多用途性を示す。
図8Aは、3Dバイオプリントした構築物の内側への銀ナノ粒子のin-situ合成を示す。ペプチドバイオインクにより銀イオンに十分な核形成部位が得られ、UV照射後、3D構築物の内側に銀ナノ粒子が形成された。銀ナノ粒子の形成は、透明なバイオプリントしたテキストと比較して(
図5、下のパネル)、3Dバイオプリントしたテキストにおいて黄色がかった色として出現した(
図8A)。
【0102】
図8Bおよび8Cは、IVFKペプチドバイオインクの3Dプリントした構築物中の銀ナノ粒子のin-situ合成によって調製された銀ナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す。3D構造体を、IVFKペプチドおよび硝酸銀(1mM)の混合物を使用してプリントし、その後にUV光照射を使用して、銀ナノ粒子を生成した。
【0103】
図8Fは、プリントした構造体に異なるナノ材料を組み込むことができることを示す、ペプチドバイオインク(IVZK)を使用して3Dプリントした緑色量子ドットの蛍光共焦点顕微鏡法画像を示す(
図8Dおよび8Eも参照のこと)。これは、ペプチドベースのバイオインクを使用して3Dプリントした構造体中にナノ材料をin-situ合成することができることを示す。
【0104】
量子ドットおよびナノ粒子などの異なるナノ材料を、このプリンティング法を使用して3Dペプチドヒドロゲル中に組み込むことができる。一例として、ストレプトアビジン修飾CdSe/ZnS量子ドット(QD525,Invitrogen)をペプチド溶液と混合し、前述と同一の手順を使用して3Dプリントした。蛍光共焦点顕微鏡法(Zeiss LSM 710倒立共焦点顕微鏡,Germany)を使用して、構築物中の量子ドットの存在を確認した(
図8F)。量子ドットの励起波長は405nmであり、発光極大波長は525nmであった(緑色)。別の例では、銀ナノ粒子を、UV処理(254nm)を使用して3Dペプチドヒドロゲル構築物中にin situで生成した。硝酸銀溶液(AgNO
3、1mM)をペプチド溶液と混合し、プリント後、UV光(254nmで10分間)を使用して、構築物中に銀ナノ粒子を生成した(
図8Bおよび8C)。この場合、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の代わりに100mMトリス緩衝液(pH 8.5)を使用した。
【0105】
透過型電子顕微鏡法(TEM)研究
TEM研究を、300kV放出銃を備えたFEI Titan G2 80-300CTを使用して行った。in situで生成した銀ナノ粒子を含む3D構築物のTEM試料を、清潔な綿棒を使用して炭素コーティングした銅格子上に3D構築物のほんの一部を移すことによって調製した。格子を、通常の風乾で一晩乾燥後、画像化した(
図8Bおよび8C)。
【0106】
図10は、3Dプリントしたペプチドヒドロゲル構築物の走査型電子顕微鏡法研究を示す。環を示すための低倍率画像を得るために(上)、Quanta 3D FEG SEM/FIB顕微鏡を使用した(10kV)。高解像度画像を得るために、Magellan(商標)XHR SEMを使用した(2kV)。
【0107】
さらに、ヒト皮膚線維芽細胞(HDFn)を、直径約8mmおよび厚さ1.2mmの簡潔な環状構造体に多層様式で3Dバイトプリントした。3Dバイオプリントした構築物を、21日目まで培養して、ペプチドバイオインクの生体適合性を試験した。コントロールとして、市販の3Dバイオプリンターを用いて、HDFnを、バイオインクとしてアルギネート-ゼラチン使用して同一の3D円形に3Dバイオプリントした。蛍光共焦点顕微鏡法画像は、3Dバイオプリントしたヒト皮膚線維芽細胞の細胞骨格染色を示した(
図11A)。アクチン網から明らかなように、IVFKおよびIVZKでバイオプリントしたHDFn細胞が、アルギネート-ゼラチンと比較して、培養21日後の拡大が優れていることが認められた(
図11A)。培養14日後および21日後に、IVZKにおいて、F-アクチンは、十分に拡大し、進展し、明白であったが、IVFKにおいては、F-アクチンは高密度であったが、あまり明白ではなかった。培養14日後および21日後に、アルギネート-ゼラチンにおけるF-アクチン発現は、IVFKおよびIVZKと比較して、相対的に低く、あまり明白ではなかった。
【0108】
細胞培養後の3Dバイオプリントした構築物の形状忠実性は、3Dバイオプリントした構築物の品質を査定するための別の極めて重要なパラメーターである。ペプチドバイオインクを用いてプリントした環構造体は、その形状を培養21日後に維持していた(
図11B)。さらに、3D細胞生存度アッセイ(
図11C)を実施して、バイオプリントした構築物が3DでHDFn細胞の増殖を支持する可能性を定量的に評価した。これらの結果は、全てのバイオプリントした構築物が時間依存性に細胞増殖が増加することを示した。細胞数は、IVZK、IVFK、およびアルギネート-ゼラチンの間で培養7日目まで類似していた(
図11C)。培養14日後および21日後に、IVFKおよびIVZK中の細胞増殖は類似していたが、アルギネート-ゼラチンよりは高かった。これは、アルギネート-ゼラチンバイオインクと比較してIVFKおよびIVZKのナノ繊維状構造体が未変性ECMに類似することに起因して、IVFKおよびIVZKが細胞に自然な指示を送り、分裂および成長のためのより広い表面積を提供することを示す。また、これらのペプチドヒドロゲルは、より多くの細胞に適応し、そして生存度を維持するのに十分な多孔度を有する。対照的に、アルギネート-ゼラチンは、ナノ繊維状の構造を保有せず、また、in vitroでより迅速に分解する。
【0109】
本発明者らの3Dバイオプリンティング法の多用途性および他の細胞型にも使用される可能性を示すために、本発明者らは、IVZKバイオインクを使用してヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSC)を3Dバイオプリントし、これをアルギネート-ゼラチンバイオインクと比較した。蛍光共焦点顕微鏡法および3D生存度アッセイは、ペプチドバイオインクがアルギネート-ゼラチンバイオインクと比較してより良好に細胞増殖させることを示した(
図12)。
【0110】
ペプチドスプレー
2つのエアスプレーブラシのノズルを、Perspexシートから作製されたケーシング中に、両ノズルからの流れが1つの位置で合流するような角度で組み立てた(
図13AおよびB)。1つのノズルはペプチド溶液(5mg/ml IVZK)を含み、第2のノズルはリン酸緩衝液(10×)を含んでいた。両方の流れがシリコンウエハー表面上で遭遇したときにペプチドヒドロゲルが形成された。噴霧したペプチド足場を乾燥させ、最後に、走査型電子顕微鏡法を使用して画像化して、ペプチドヒドロゲルの繊維状網を研究した(
図13C).
【0111】
図4A、4B、および4Cに示すように、創傷部位などの表面上にペプチドヒドロゲルを直接噴霧するために、エアブラシを、ロボットアームなどのデバイスと共に使用することができる。エアブラシアセンブリを、表面(創傷部位など)上にペプチドヒドロゲルを直接噴霧するためのハンドヘルドデバイスとして使用することもできる。
【0112】
前述の説明は本発明の実装様式のみを記載しており、本発明の範囲をこれに制限しない。当業者は、任意の変形または置換を容易に行うことができる。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲の保護範囲の影響下にあるものとする。